PDF:3.1MB - 日本体育学会第65回大会

日本体育学会第 65 回大会
期
間
2014 年 8 月 25 日(月)〜 28 日(木)
会
場
アイーナ(いわて県民情報交流センター)25 日(月)〜 26 日(火)
マリオス(盛岡地域交流センター)26 日(火)
岩手大学 27 日(水)〜 28 日(木)
主
催
一般社団法人 日本体育学会
日本体育学会第 65 回大会組織委員会
担
当
日本体育学会 東北地域
主
管
国立大学法人 岩手大学
後
援
岩手県教育委員会
盛岡市教育委員会
公益社団法人 岩手県体育協会
国立大学法人 岩手大学
岩手日報社
めんこいテレビ
テレビ岩手
NHK 盛岡放送局
IBC 岩手放送
岩手朝日テレビ
エフエム岩手
大会本部
〒 020-8550 岩手県盛岡市上田 3-18-33
国立大学法人 岩手大学 教育学部内
日本体育学会第 65 回大会事務局
FAX:019-621-6834
E-mail:[email protected]
URL:http://www.jspe65.sgk.iwate-u.ac.jp/
キャンパス内は全面禁煙です。
ご協力よろしくお願いします。
1
目 次
大会日程.....................................................................................3
07 発育発達.......................................................................42
08 測定評価.......................................................................44
学会本部・大会組織委員会共催企画
09 体育方法.......................................................................48
国際シンポジウム..............................................................7
10 保健................................................................................51
学会本部企画
11 体育科教育学..............................................................53
シンポジウム.......................................................................9
12 スポーツ人類学.........................................................56
共催企画
13 アダプテッド・スポーツ科学..............................59
日本体育学会・
(公社)全国大学体育連合
14 介護福祉・健康づくり...........................................61
共催シンポジウム...........................................................11
専門領域合同企画
シンポジウム....................................................................13
一般研究発表抄録
00 体育哲学.......................................................................65
大会組織委員会企画・地域連携企画
01 体育史...........................................................................73
学際的シンポジウム.......................................................16
02 体育社会学..................................................................85
ランチョンセミナー1..................................................21
03 体育心理学............................................................... 101
ランチョンセミナー2..................................................22
04 運動生理学............................................................... 137
実践型プログラム...........................................................22
05 バイオメカニクス................................................. 153
地域連携企画1 国際シンポジウム特別講演....23
06 体育経営管理........................................................... 173
地域連携企画2 講演..................................................23
07 発育発達.................................................................... 187
地域連携企画3 地域貢献シンポジウム.............23
08 測定評価.................................................................... 205
09 体育方法.................................................................... 229
専門領域企画
10 保健............................................................................. 281
00 体育哲学.......................................................................24
11 体育科教育学........................................................... 293
01 体育史...........................................................................28
12 スポーツ人類学...................................................... 329
02 体育社会学..................................................................32
13 アダプテッド・スポーツ科学........................... 335
03 体育心理学..................................................................34
14 介護福祉・健康づくり........................................ 345
04 運動生理学..................................................................37
05 バイオメカニクス....................................................39
06 体育経営管理..............................................................40
2
司会・座長・発表者索引............................................... 357
大会日程 1 日目【8 月 25 日(月)
】会場:アイーナ
9:00
10:00
11:00
12:00
13:00
14:00
15:00
16:00
17:00
18:00
19:00
20:00
学 会 本 部企画
大 会 組 織 委員会企画
国際シンポジウム
10:00 − 12:00
アイーナホール
国際シンポジウム
13:30 − 17:30
アイーナホール
共 催 企画
00 体育哲学
01 体育史
02 体育社会学
03 体育心理学
04 運動生理学
05 バイオメカニクス
専
06 体育経営管理
門
07 発育発達
領
域
08 測定評価
09 体育方法
10 保健
11 体育科教育学
12 スポーツ人類学
13 アダプテッド・スポーツ科学
14 介護福祉・健康づくり
※.大会初日は受付を行いません。そのまま会場にお入りください
3
大会日程 2 日目【8 月 26 日(火)
】会場:アイーナ・マリオス
9:00
10:00
11:00
12:00
13:00
本部総会
10:00 − 11:30
アイーナホール
学 会 本 部企画
14:00
15:00
16:00
17:00
18:00
シンポジウム
13:30 − 15:30
マリオス大ホール
学際的シンポジウム
16:00 − 18:00
マリオス大ホール
大 会 組 織 委員会企画
共 催 企画
00 体育哲学
アイーナ
会議室 802
運営委員会
12:00 −
13:00
01 体育史
アイーナ
研修室 813
理事会
12:00 −
13:00
02 体育社会学
マリオス
会議室 183
評議員会
12:00 −
13:00
03 体育心理学
アイーナ
研修室 817
理事会
12:00 −
13:00
アイーナ
会議室 602
理事会
12:00 −
13:00
大体連シンポジウム
13:30 − 15:30
アイーナホール
合同シンポジウム
16:00 − 18:00
アイーナホール
シンポジウム
13:30 − 15:30
マリオス大ホール
学際的シンポジウム
16:00 − 18:00
マリオス大ホール
大体連シンポジウム
13:30 − 15:30
アイーナホール
合同シンポジウム
16:00 − 18:00
アイーナホール
04 運動生理学
05 バイオメカニクス
専
06 体育経営管理
門
07 発育発達
アイーナ
研修室 814
理事会
12:00 −
13:00
08 測定評価
アイーナ
研修室 810
理事会
12:00 −
13:00
09 体育方法
マリオス
会議室 184
理事会
12:00 −
13:00
11 体育科教育学
アイーナ
研修室 811
理事会
12:00 −
13:00
12 スポーツ人類学
アイーナ
研修室 815
世話人会
12:00 −
13:00
アイーナ
研修室 816
理事会
12:00 −
13:00
領
域
10 保健
13 アダプテッド・スポーツ科学
14 介護福祉・健康づくり
4
19:00
20:00
大会日程 3 日目【8 月 27 日(水)
】会場:岩手大学
9:00
10:00
11:00
12:00
13:00
学 会 本 部企画
名誉会員
懇談会
12:00 −
13:00
大 会 組 織 委員会企画
ランチョン
セミナー①
12:00 −
13:00
14:00
15:00
16:00
17:00
18:00
地域連携企画
シンポジウム
15:30 − 17:00
銀河ホール
01 体育史
専
総会
12:00 −
13:00
シンポジウムA
10:00−12:00
一般発表
(口頭)
13:00−
14:00
一般発表
(口頭)
9:00 − 12:10
教育
E24
一般発表
(口頭)
13:00−14:30
一般発表
(ポス
ター)
13:00−13:40
02 体育社会学
農
ぽらんホール
A7
03 体育心理学
工
テクノホール
銀河ホール
22
一般発表
(口頭)
10:00−12:00
銀河ホール・22
キーノート
レクチャー①
13:00 − 14:00
テクノホール
04 運動生理学
センター A
G2 大
G22、23
シンポジウム
10:00 − 12:00
G2 大
キーノート
レクチャー
13:00 − 14:00
G2 大
05 バイオメカニクス
センター A
G1 大
06 体育経営管理
センター B
GB32
シンポジウム
10:00 − 12:00
07 発育発達
センター B
GB21
一般発表
(口頭)
10:00−12:00
08 測定評価
センター B
GB11
シンポジウム
10:00 − 12:00
09 体育方法
工
テクノホール
銀河ホール
23
門
領
域
一般発表
(口頭)
9:00−10:00
センター B
GB31
10 保健
教育
北桐ホール
E21
12 スポーツ人類学
教育
E25
13 アダプテッド・スポーツ科学
教育
E22
14 介護福祉・健康づくり
教育
E23
一般発表
(口頭)
10:50−
11:50
一般発表
(口頭)
9:30−10:45
一般発表
(口頭)
15:00−16:15
一般発表
(ポスター
口頭説明)
14:15−15:42
一般発表
(ポスター
責任着座制)
16:00−16:45
一般発表
(口頭)
13:40−17:00
総会
12:00−
13:00
総会
11:00−
12:00
シンポジウム
15:30−17:30
一般発表
(ポスター)
16:45−
17:45
一般発表(口頭)
13:30−16:42
統計相談
13:30−14:30
一般発表(口頭)
13:20−15:20
銀河ホール・23
総会
13:00−
14:00
一般発表
(口頭)
14:00−15:15
シンポジウム
13:00−15:00
北桐ホール
一般発表
(口頭)
10:00−12:00
一般発表
(ポスター)
15:40 − 17:10
一般発表
(口頭)
13:00−15:00
一般発表
(口頭)
9:00−12:00
評議員会
8:30−9:30
一般発表
(口頭)
14:10 − 15:30
テクノホール・22
総会
12:00−
12:40
キーノート
レクチャー
10:45−11:45
キーノート
レクチャー
10:00−10:50
シンポジウム
15:30 − 17:30
一般発表
(口頭)
14:00−15:20
キーノート
レクチャー
13:00−14:00
総会
11:40−
12:20
テクノホール
シンポジウム
9:30−11:30
テクノホール
一般発表
(口頭)
9:30−10:30
教育
E26
11 体育科教育学
一般発表
(口頭)
9:00 − 12:00
浅田学術奨
励賞・受賞
記念講演
16:20−17:20
一般発表
(口頭)
14:40 − 16:10
キーノート
レクチャー
14:15 −
15:15
20:00
情報交換会
18:00 − 19:30
中央食堂
共 催 企画
00 体育哲学
19:00
シンポジウム
13:00−15:00
ワークショップ
15:30−17:30
柔道場
シンポジウム
15:30−17:30
総会
15:30−
16:30
北桐ホール
キーノート
レクチャー
16:30−17:30
北桐ホール
一般発表
(口頭)
15:10−17:30
一般発表
(口頭)
13:00−15:40
一般発表
(口頭)
13:00−14:30
※
専門領域シンポジウム、キーノートレクチャー、口頭発表は各専門領域会場で行います。
※.専門領域シンポジウム、キーノートレクチャー、口頭発表は各専門領域会場で行います。
※
ポスター発表は、各指定会場で行います。1 演題に対して
1 つのパネルが準備され、すべてのポスターは発表当日のみ掲示されます。
※.ポスター発表は、各指定会場(P7)で行います。1
演題に対して
1 つのパネルが準備され、すべてのポスターは発表当日のみ掲示されます。
※.理事会等、会議室は P7 をご参照ください。
※.ランチョンセミナーの会場は P30 をご参照ください。
5
大会日程 4 日目【8 月 28 日
(木)
】会場:岩手大学
9:00
10:00
11:00
学 会 本 部企画
12:00
13:00
地域連絡
会議
11:30−
12:30
専門領域
連絡会議
12:30 −
13:30
ランチョン
セミナー②
12:00−
13:00
大 会 組 織 委員会企画
14:00
15:00
16:00
ワークショップ
クリケット講習会
13:30−15:00
17:00
18:00
若手
研究
発表
表彰
共 催 企画
00 体育哲学
01 体育史
専
一般発表
(口頭)
9:00−10:00
一般発表
(口 頭)
9:00−12:10
教育
E24
農
ぽらんホール
A7
03 体育心理学
工
テクノホール
シンポジウム
9:30−11:30
テクノホール
04 運動生理学
センター A
G2 大
一般発表
(ポスター)
10:00−
11:00
05 バイオメカニクス
センター A
G1 大
06 体育経営管理
センター B
GB32
一般発表
(口 頭)
9:00−12:20
07 発育発達
センター B
GB21
一般発表
(ポスター)
10:00−11:30
08 測定評価
センター B
GB11
09 体育方法
工
銀河ホール
22・23
領
10 保健
教育
北桐ホール
E21
12 スポーツ人類学
教育
E25
13 アダプテッド・スポーツ科学
教育
E22
14 介護福祉・健康づくり
教育
E23
総会
12:00−
13:00
A7
一般発表
(口頭)
10:05−
11:05
総会
11:40−
12:20
テクノホール
一般発表
(口頭)
13:00−15:10
キーノート
レクチャー②
13:20−14:20
テクノホール
一般発表
(ポスター)
14:30−16:00
一般発表
(口頭)
11:10−
12:10
一般発表(口頭)
13:20−15:40
一般発表
(ポスター)
13:00−14:00
シンポジウム
10:00−12:00
一般発表
(口 頭)
9:30−12:55
銀河ホール・22・23
一般発表
(口 頭)
9:00−12:00
教育
E26
11 体育科教育学
一般発表
(口 頭)
13:00−16:30
シンポジウム
10:00−12:00
ぽらんホール
一般発表
(口頭)
9:00−10:00
一般発表
(口頭)
14:40−16:10
一般発表
(口頭)
13:00−14:30
シンポジウムB
10:00−12:00
02 体育社会学
門
域
センター B
GB31
一般発表
(口頭)
9:00−11:00
一般発表
(ポスター)
14:00−16:00
一般発表
(ポスター)
13:00−15:00
一般発表
(ポスター)
11:00−
12:00
一般発表
(口頭)
13:00−16:15
一般発表
(口頭)
9:30−11:50
キーノート
レクチャー
9:30−
10:00
シンポジウム
10:00−12:00
総会
12:00−
12:30
一般発表
(ポスター)
13:30−
14:30
シンポジウム
10:00−12:00
総会
12:00−
12:30
一般発表
(ポスター)
13:00−15:00
※
専門領域シンポジウム、キーノートレクチャー、口頭発表は各専門領域会場で行います。
※.専門領域シンポジウム、キーノートレクチャー、口頭発表は各専門領域会場で行います。
※
ポスター発表は、各指定会場で行います。1 演題に対して
1 つのパネルが準備され、すべてのポスターは発表当日のみ掲示されます。
※.ポスター発表は、各指定会場(P7)で行います。1
演題に対して
1 つのパネルが準備され、すべてのポスターは発表当日のみ掲示されます。
※.理事会等、会議室は P7 をご参照ください。
※.ランチョンセミナーの会場は P30 をご参照ください。
6
19:00
20:00
学会本部(企画委員会・学会大会委員会・国際交流委員会)・
大会組織委員会共催企画
国際シンポジウム
8月 25 日(月) 10:00-17:30 アイーナ 7 階 アイーナホール
東日本大震災における学校体育と生涯スポーツの現状と展望
〈開催趣旨〉
未曾有の災害をもたらした巨大津波、原発事故により学校教育は、甚大な被害を受けました。我が国と国民は、迅速に
学校教育の機能回復につとめ、児童生徒の教育環境の復興に対応しています。しかしながら、現状復旧には、ほど遠い姿
であることは周知の事実です。被災地では、復興ロードマップをすでに歩み始めています。学校体育は、東日本大震災か
ら多くの教訓を学びました。今後のあるべき学校体育と生涯スポーツの姿と危機管理の重要性に関する科学的な情報を日
本体育学会は、世界に発信し続けます。
講 演:10:00 ~ 12:00
講演Ⅰ テーマ:
「自分の命は自分で守る」
講 師:釘子 明 氏(一般社団法人「陸前高田被災地語り部」)
講演Ⅱ テーマ:
「被災地における健康づくりの変遷・現状・課題」
講 師:藤野 恵美 氏(修紅短期大学講師)
シンポジウム:13:30 ~ 15:30
シンポジウムI:東日本大震災からの教訓;命を結ぶ絆
① 大沼 章 氏(角田市立角田小学校長)
② 佐賀 敏子 氏(盛岡市立杜陵小学校長)
コーディネーター:小野寺 昇(川﨑医療福祉大学)
シンポジウムⅡ:学校体育と生涯スポーツの復興ロード;何を見つめるのか
① 学校体育の復興と支援(筑波大学の取り組み)
征矢 英昭 氏(筑波大学)
② 地域スポーツの復興と支援(仙台大学の取り組み)
粟木 一博 氏(仙台大学)
コーディネーター:小野寺 昇(川﨑医療福祉大学)
基調講演:15:30 ~ 16:20
コーディネーター:山口 泰雄(神戸大学)
テーマ:自然災害からの教訓
紛争地域や自然災害地域における青少年のための心理・社会的介入としてのスポーツと身体活動の活用
講師:Dean M. Ravizza, Ph.D(Salisbury University)
これまで数多くの組織が、自然災害や人的災害地域において、青少年に対してスポーツ参加の支援と便益を活用するこ
とを考えてきた。こういった介入の特徴は、スポーツによる心理・社会的変化による貢献を広げるため、平和構築や紛争
の解決戦略の教育から、トラウマからの心理的回復を強調するものまで、幅広いものである。災害地域における住民のた
めの心理・社会的プログラムとして、
「開発のためのスポーツ (sport for development)」領域におけるスポーツと身体活
7
動の活用は、より総合的かつ統合的アプローチとして、急速に理解が進んでいる。紛争地域であった北ウガンダにおける
フィールドワークと複合的研究アプローチにより、本稿では、紛争地域における青少年に対するスポーツの活用事例の効
果を提示する。具体的には、複雑な人道的危機における青少年スポーツによる相互理解の促進、心理・社会的介入として
の多様なスポーツプログラムによるチャレンジの理解の獲得、そして災害への介入効果を高める重要な心理・社会的対応
としてのスポーツ・身体活動プログラムの確立への道筋を立てることである。
キーワード:紛争、自然災害、スポーツ、心理・社会的対応
Dean M. Ravizza, Ph.D., Dept. of Health & Sport Sciences and Basserman Center for Conflict Resolution, 1101 Camden
Av., Salisbury University, Maryland USA 21801
[email protected]
演者 Dr. ディーン・ラヴィッザ
米・サリスバリー大学 健康・スポーツ科学学科 准教授
専門領域:
「紛争地域における青少年スポーツ」
「開発と平和のためのスポーツ」
研究プロジェクト:
「紛争地域における青少年のためのスポーツの適用:北ウガンダのケーススタディ」
「難民のためのチームづくり:開発のツールとしてのスポーツ」
ヴァージニア州立大学大学院博士課程修了(Ph.D.)
ジョージ・メイソン大学大学院修士課程修了(M.Sc.)
UNDSS(国連安全危機課)安全危機フィールド資格 人権教育協会(HERA)子どもの権利、発達、参加及び保護コース修了
オープンディスカッション:16:30 ~ 17:30
テーマ:これからの学校体育と生涯スポーツつくり(健やかな育み)
講師:本シンポジウムの登壇者及び 3.11 を経験した留学生
コーディネーター:山口 泰雄(神戸大学)・小野寺 昇(川﨑医療福祉大学)
8
学会本部企画
シンポジウム
8月 26 日(火) 13:30-15:30 マリオス 盛岡市民文化大ホール
被災地のスポーツ・身体活動状況
座長:宮地 元彦(
(独)
国立健康・栄養研究所)
〈趣旨〉
2011 年 3 月に起こった東日本大震災から、2 年半以上が経過しました。震災直後は高齢者の身体活動不足による 健康
影響や子供たちの運動・スポーツ活動の停滞などが話題になりましたが、時間の経過とともに、身体活動・運動不足への
意識 が風化しつつあるようにも感じます。そこで、本シンポジウムでは被災地域のスポーツ・身体活動の状況とその変
化に関するエビ デンスを紹介し、議論することを目的とします。
シンポジスト及び発表テーマ
被災急性期における身体活動の変化
山内 武巳(石巻専修大学)
我々は 2010 年 9 月から 12 月まで石巻市山下地区の高齢者 29 名を対象に健康教室を実施し、健康教室終了から 3 ヶ
月が経過した 2011 年 3 月に健康行動の継続性を再確認する目的で 3 月 3 日から 2 週間の予定で身体活動量計を参加者
に手渡した。そして、1週間後に大震災がおこった。石巻市の浸水範囲概況にかかる人口は約 11.2 万人と他の被災市町
村と比較して多い地域である。本シンポジウムでは回収できた身体活動量計の結果をもとに大震災急性期の身体活動量に
ついて事例報告する。歩数は地震発生時刻以降に大幅に増加し、運動強度も高値を示した。3 月 12 日以降の身体活動量
の変化は個人間差が大きく、歩数変化と避難した場所(自宅と避難所)、震災前の体力水準等に関連性はみられなかった。
またライフライン復旧日前後において歩数が大幅に変化することはなかった。本報告は限定された地域からの結果であり、
本研究の結果が被災地域全域に該当するとは考えにくいが、身体活動量の個人間差は大震災急性期での地域活動や避難所
運営への参加の有無などが関係していたのかもしれない。
被災者の心的外傷後ストレス症状と体力
永富 良一・門間 陽樹(東北大学)
被災地においては津波による家屋等の喪失がほとんどなかった地域においても心的外傷後ストレス障害は発症してい
る。震災前の 2008 年から生活習慣関連指標と生活習慣病等の関連を追跡している仙台市内の主として中小企業の協同組
合の健康保険加入者からなるコホートにおいて 2010 年 8 月と 2011 年 8 月に健康診断を受けた 522 人を対象に東日本
大震災後の精神的ストレス(改訂版出来事インパクト尺度(IES-R))と震災前の生活習慣(喫煙、飲酒、身体活動、食習慣、
睡眠時間、歯磨き習慣)や身体状況(糖尿病、高血圧、脂質異常症などの既往歴、及び身体活動量、脚伸展パワー、握力)
との関連について解析した。震災後の PTSD 症状の有症者は男性 14.8%, 女性 16%であった。震災前に脚伸展パワーが高
い男性は震災後の PTSD 症状の程度が軽い一方、震災前に毎日飲酒をしていた男性は震災後の PTSD 症状が強い傾向がみ
られた。女性では震災前から高血圧があった場合に震災後の PTSD 症状が強くなり、男女を問わず震災前から抑うつ傾向
があった場合には PTSD 症状が強い傾向が認められた。日常から足腰を丈夫にすることを心がけ、飲酒以外にストレス解
消の手段を持ち、適切な生活習慣により生活習慣病を予防することが大規模災害時のレジエンスにつながる可能性が示唆
9
された。
震災と児童の運動習慣と体力
中村 和彦(山梨大学)
仮設住宅入居者の身体活動と健康状況
宮地 元彦・村上 晴香(
(独)
国立健康・栄養研究所)
・吉村 英一(熊本県立大学)
「岩手県における東日本大震災被災者の支援を目的とした大規模コホート研究」は、震災で大きな被害を受けた方々の
健康状態を見守り、病気の予防策や健康のための施策を考えることを目的とし、岩手県の沿岸地域(大槌町、山田町、陸
前高田市、釜石市平田地区)にお住いの約 1 万人の協力のもと実施された。この調査では、4 つの質問から被災者の身体
活動を把握した。東日本大震災約 7 か月後の 2011 年 10 月に、その妥当性と再現性を釜石市平田地区の仮設住宅にお住
まいの 74 名の方を対象に検討し、3 次元加速度計により得られた身体活動の変数との相関を検討したところ、歩数およ
び中高強度身体活動量ともに関係が認められ、中程度の再現性が確認された。その際の加速度計から得られた歩数は、男
性が 4521 歩、女性が 4533 歩であり、H18 〜 H22 年の国民健康・栄養調査で得られた岩手県の歩数、男性 7300 歩、
女性 6500 歩より低い値であった。約1年後の 2012 年 11 月に同様の測定では、歩数の中央値は減少、四分位範囲は増
加し、2011 年同様、岩手県の平均歩数よりも低かった。さらに、調査対象者 7292 名を対象に身体活動不足に影響する
要因を検討したところ、男女ともに高年齢、主観的健康観、居住場所と、女性のみで肥満、心の健康との関連が認められ
た。本シンポジウムでは、大規模コホートに基づく被災者の身体活動状況について報告する。
10
共催企画
日本体育学会・
(公社)全国大学体育連合 共催シンポジウム
8月 26 日(火) 13:30-15:30 アイーナ 7 階 アイーナホール
大学体育教員の資質向上の新しい取り組み
司会・コーディネーター:阿江 美恵子(東京女子体育大学、日本体育学会副会長)
重城 哲(日本大学、全国大学体育連合渉外部長)
〈趣旨〉
大学教育のユニバーサル化とグローバル化が進展し、学位の国際通用性や留学生獲得、情報公開などへの関心が高まっ
ている。日本でも「教育の質保証」に取り組んでいるが、その一環として、大学教員の資質・能力を維持・向上させるこ
とは重要視されており、その手段としての FD 活動は、2008 年から大学設置基準により、その実施が義務化されている。
さらに、中央教育審議会答申(2008)
・
(2012)や大学院教育振興施策要綱(2011)では、
「大学院における大学教員養
成機能(プレ FD)の強化」や「体系的 FD」への取り組みが提唱されており、実際に国立教育政策研究所では、
「FD マッ
プ」(2009)や「新任教員研修のための基準枠組」
(2010)を作成しているし、全国私立大学 FD 連携フォーラムはビデ
オ ・ オン ・ デマンドによる「実践的 FD プログラム」(2011)を開始している。
日本体育学会では 2013 年に大学体育問題特別委員会を設置し、大学体育の質向上についての検討とその実現に向けて
の取り組みを始めている。全国大学体育連合では、
指導者研修会にプレ FD やキャリア形成のプログラムを取り入れている。
筑波大学と鹿屋体育大学は大学体育指導者養成プログラムの開設準備をしている。これらの「大学体育教員の資質向上の
新しい取り組み」について、演者に報告していただき、学会員から広く意見を求め、議論したいと思う。
なお、
発表資料は印刷による配布はしないが、
全国大学体育連合ホームページ(http://daitairen.or.jp/)に掲載するので、
各自でご用意いただきたい。
シンポジスト及び発表テーマ
「体育・スポーツ学検定」
(仮称)の創設
日本体育学会大学体育問題特別委員会:委員 深澤 浩洋(筑波大学)
全国体育系大学学長・学部長会に設置された教育の質保証委員会が平成 23 年にまとめた「体育・スポーツ学分野にお
ける教育の質保証-参照基準と教育関連調査結果-」
(以下、
「参照基準」
)の実質化を図ることを目的に、体育系大学・
学部および教育学部保健体育科・専修などを卒業した学生の質を確認するための検定制度創設の検討を進めている。この
検定は、大学 4 年間の学びにおいて修得が望まれる体育、スポーツ、健康に関する知識や能力を確認することを目的に 4
年次で実施することを構想している。
(また、体育系や教育系以外の学部から大学院に進学する学生などに対し、体育・
スポーツ学に関してどのようなことを学ぶ必要があるかを知る機会を提供することにもなると考えている。)
現段階では、各大学に共通する内容と各職域(体育教員、スポーツコーチ、トレーナー、クラブマネージャーなど)に
応じた選択的な内容のそれぞれについて精査し、出題形式を検討することを課題として進めている。その手がかりとなる
のが上述の「参照基準」である。
この制度の運用に関しては、実施主体・組織、実施体制、経費の負担、本検定の活用方法などに関する検討も必要であ
ると認識している。また、既存の検定・講習制度とのすみ分けやそれらとの整合性を図ることも検討課題となってくる。
本発表はその中間報告となる予定である。体育・スポーツ・健康関連分野が社会に果たすべき貢献やこの分野における
有為な人材の確保・輩出という観点から、また現実的な側面から、ご意見やご提案、アイデアなどを会員諸氏より賜るこ
とができれば幸いである。
11
プレ FD と教養体育インターンシップ、キャリア形成支援の取り組み
全国大学体育連合:専務理事 小林 勝法(文教大学)
従来、大学体育教員になるものは、体育学部か教育学部保健体育専修を卒業し、体育系の大学院を修了したものがほと
んどであった。したがって、体育学と教育学に関する知識を持ち、教育実習を経験していた。しかし、近年は体育系学部
を卒業していない大学院生が約2割、保健体育の教員免許状を取得していない者が4割にのぼり、新任教員も同様である。
そこで、
大学体育においても他の専門と同じように、プレ FD 大学教員準備教育)や新任教員向けの FD が必要になってきた。
本学会は、大学院生向けのプログラムとして、2012 年から年次大会において院生セミナーを開催している。2012 年
度は筆者が担当し、
「大学体育の教員はどのような人材が求められているか」と題して講演した。そして、2013 年に設
置された大学体育問題特別委員会では、体育大学の大学院生が他大学で研修する教養体育インターンシップについて検討
しており、2014 年春にはその試行を行った。
筆者は、プレ FD の e ラーニング教材を作成し、公開しており、これをもとに大学教員就職セミナーを開催した。新任
教員向けにも e ラーニング教材を作成し、公開している。これらの取り組みを参考にして、各大学でもプレ FD に取り組
むことを期待している。なお、全国大学体育連合は、大学体育指導者養成研修会に大学院生を受け入れており、大学体育
研修精励賞を受賞した院生も現れている。
一般の勤労者の場合には、職能に関する資格試験があったり、職階ごとに研修会が開かれたりなど、キャリア形成を支
援する仕組みがあるが、大学教員の場合は個人に委ねられ、自己責任となっている。教育と研究だけでなく、管理運営や
社会貢献などと業務も広がり、年齢や職階によって期待される責務も変化する。長い教員人生の中では、病気や中年クラ
イシスなどのような危機も訪れる。これまでのキャリアを振り返り、今後の展望を持ち、自分の強みを活かした戦略を立
てることは重要である。そこで、
キャリア形成に関するワークシートを作成し、全国大学体育連合の研修会でワークショッ
プを開催した。従来の研修会は実技研修が中心であり、どちらかというと若手教員向けであった。今後は中堅やベテラン
なども対象にして、ライフコースに合わせたキャリア形成研修にも取り組むことを期待している。
筑波大学・鹿屋体育大学 高度大学体育指導者養成大学院共同学位プログラム
鹿屋体育大学:学長 福永 哲夫(鹿屋体育大学)
大学教員には博士号が必要
大学体育の充実のためには、大学教員を輩出する博士課程における人材養成を、従来の自然・人文・社会科学領域の手
法による研究に加えて、体育スポーツ実践等から得られる実践知を対象とした実践的研究が行える能力を養成できるプロ
グラム作りが必要である。その為に、鹿屋体育大学と筑波大学とが共同で大学院共同学位プログラムを設立した。この学
位プログラムにより、現状の博士号習得率の低い実践系体育教員の博士号習得率を高めるとともに、国内外の体育スポー
ツ科学研究の基盤を向上させることが出来ると考えられる。
これからの体育・スポーツ科学領域に求められもの
そこで養成される人材として、大学体育・スポーツ教育に関する幅広い見識と体育・スポーツ科学に関する最新の知識、
効果的なコーチング技能を兼ね備えた高度大学体育指導者が考えられる。その為に、3 年間にわたる多彩な体育スポーツ
実技指導力および実践的研究活動に関するコースワークを設定し、大学体育等の高度な実践的指導者にふさわしい専門性、
国際性、実践性を養うプログラムを作成する予定である。
実践科学研究と自然・人文・社会科学の融合
プレーヤーや指導者のスポーツに対する経験や勘は非常に貴重なものであり、これらの情報を科学的観点から公表する
ことは体育学・スポーツ科学の領域に携わる者の役割でもあろう。つまり、スポーツ現場の経験や勘を扱う学問をスポー
ツ科学の領域としても確立する必要がある。これまでの体育・スポーツ科学の領域では、自然・人文・社会のそれぞれの
研究手法を中心にスポーツを分析統合する方法が一般的に取られ、これまでの研究誌にも事例研究や実践研究の掲載例が
存在するものの、その数は非常に少ない。今後は、スポーツ現場における多くの個々の事例を対象として多くの実践事例
研究を後世に残す必要がある。
実践事例研究を体系的に集積されることによりスポーツ実践の現状が明らかになり、そこから、従来の自然・人文・社
会の手法を用いた研究のアイデアが実現し、人のスポーツ実施の全般を網羅する科学(スポーツ科学)の体系が出来上が
ると思う。
12
専門領域合同企画
(体育哲学、体育社会学、体育経営管理、体育科教育学)
8月 28 日(水) 16:00-18:00 アイーナ 7 階 アイーナホール
保健体育教師への学際的アプローチ
―保健体育教師の資質・力量とその質保障を考える−
司会・コーディネーター:清水 紀宏(筑波大学)
指定討論者:木原 成一郎(広島大学)
〈趣旨〉
昨年の体育界は、保健体育教師(以下、体育教師)による体罰死事件という悲しい出来事により年が明けた。これ以降
も、学校体育現場におけるハラスメント行為に関わる報道は後を絶たず、体育教師に対する社会的不信はかつてないほど
深刻化している。日本体育学会では、体罰 ・ 暴力を体育・スポーツ現場の根底にある問題と捉え、その根絶に向けて学術
の立場から全容解明と対応策の検討に入った。また社会問題として世間の注目を集める事象の多くは運動部活動の場面に
おいて生じているが、体育教師としての主要な力量発揮の場であり教師としての成長の起点となる学びの場であるはずの
体育授業に対しても、非常に不誠実な態度を示す教師が少なくないことも幾つかの調査で確認されている。
経験学習論によれば、専門家としての熟達化や成長は、経験からの学びに拠るところが大であるという。しかし、同じ
経験を積み重ねても学ぶ者と学ばない者がいるとともに、何を経験し、そこからいかなる学び(学びの内容や教訓)を引
き出すかは、教師としての基本的な資質(○○観や○○に対する信念)に強く影響を受けるとされる。一定の経験を積ん
だ体育教師であっても問題行動が発生するのはこのためであろう。よって、体育教師をめぐる諸問題の解決に学術の立場
から貢献するためには、体育教師の指導技術や教授方法のレベルだけでなく専門職としての基本的資質や人間性までをも
含めた教師研究の高度化と総合化を必要とする。
ところで、教師論は過去の経験論・規範論の域を脱し、経験的データを用いた学術的研究が世界的に発展してきている
分野であり、わが国でもこの分野に関心を寄せる研究者も増えてきている。また、体育教師(本シンポジウムでは中等教
育教員に限定)は、学校社会の構成員、スポーツ・健康の指導者、体育授業の実践者、そして学校体育の経営者という多
様な側面を併せ持つ存在でもあることから、日本体育学会内だけでも多くの専門領域が研究の対象とし、多くの成果を蓄
積してきている。しかしながら、これまで体育教師に関わる研究問題について領域間による学際的な対話と議論を深める
機会は少なかった。本合同シンポジウムでは、体育哲学、体育社会学、体育経営管理、体育科教育学の 4 専門領域の立
場から、各々の研究関心と研究成果そして研究課題を摺り合わせ、体育教師の高度な質保障に向けて、教員養成以前の段
階から現職教育までの長期にわたる体育教師のキャリア開発(学びと成長のプロセス)と教師教育・研修システムの再構
築について考えたい。なお、体育教師教育領域の研究は新しく開拓されつつある分野であるので、今回は 20 ~ 30 代の
若手で新進気鋭の研究者にご登壇いただき、保健体育教師の今後を展望する。
シンポジスト及び発表テーマ
教師教育論の立場から~体育教師の成長はどのように促されるか~
四方田 健二(九州共立大学)
英語圏の体育科教師教育研究では、教師の成長のプロセスやその要因を特定し理論化することを目指す研究が行われ、
議論が交わされてきた。この議論の結末は、教師の成長には個別性、多様性があることを認め、多様な理論が共存し得る
というものであった。しかし、多くの教師の成長に共通して影響する要因もみられる。とりわけ、2000 年頃以降、教師
の知識、信念、省察に関する研究に焦点が当てられてきた。加えて、教師の成長には、管理職を含めた学校内の教師相互
の協働の促進が不可欠であることが繰り返し指摘されている。教師の協働的な授業改善のシステムとして、我が国で伝統
的に行われてきた授業研究(lesson study)が海外で紹介され、成果を検証する研究例もみられる。
我が国でも、英語圏の研究成果を踏まえ、体育教師の知識、信念、省察の重要性が指摘されてきた。実際、多くの大学の
13
教員養成課程では、模擬授業を通した省察能力を身につけることが重視されている。教師の知識、信念についても、教師
の持つ知識や信念と授業実践との関連を探求する取り組みもみられる。同時に、教師の体育授業の目標観の曖昧さや中学
校、高校の保健体育教師に特徴的である部活動指導者としての教師観も問題とされてきた。
本発表では、国内外の体育科教師教育研究における教員養成及び教師の成長に関する研究の成果と課題を概観し、シン
ポジスト並びに参加者の意見交換を促す話題を提供したいと考えている。本シンポジウムを通して、各参加者が今後の研
究課題や実践に向けたアイデアを持ち帰ることができれば幸いである。
人的資源マネジメントの立場から~体育教師の質をどうマネジメントするか~
朝倉 雅史(筑波大学大学院)
体育教師は学校の体育経営における他の資源の運用主体であり、なおかつ自ら学び成長する主体性と自律性を有する経
営資源である。人材育成研究の領域では、人材の質を高めるという実践課題に対し、学習論を基盤とした経験からの学び
の解明とその支援方策が究明されている。教師の質の向上に関わってもそのプロセスの解明が目指され、実際に教員集団・
学校・教育委員会がフォーマル/インフォーマルな研修を通じて教師の学びと成長を保障しようとしている。ただし、体
育教師を他教科の教師と区別し、固有の研究対象としてきた体育教師研究の蓄積に比して「体育教師」の学びや研修に関
わる実態と課題、その特徴についての検討は端緒が開かれたばかりである。
また、人的資源を経験から学び成長する主体と捉えると、体育教師の質の向上と保障に向けたマネジメント課題は、如
何に良質な経験を研修として提供できるかに集約されがちになる。だが、ヒトの経験には常に連続性が内在しており、あ
る経験はそれ以前の経験に影響を受けつつその後の経験に影響を与える。そこで、体育教師の質をマネジメントしようと
するならば、養成・採用・現職研修の段階における経験のみならず、幼少期から現在に至る経験からの学びの蓄積、つま
り体育教師としての学びのレディネスを長期的な視点から捉える必要性が指摘できる。本報告では、体育教師を対象とし
た経験や学びに関わる調査結果を踏まえ、とりわけ体育教師の学びの特徴について考察し、体育教師の質をマネジメント
する方策と学術的な研究課題を検討したい。
社会学の立場から~体育教師はなぜ運動部活動にのめり込むのか~
中澤 篤史(一橋大学)
体育教師の多くは、教科体育の授業を行うだけでなく、運動部活動にもかかわる。運動部活動は、教育課程外の活動で
あるにもかかわらず、体育教師はボランティアとして運動部活動に積極的にかかわり、それにのめり込む場合も少なくな
い。なぜなのか。本報告では、公立中学校のフィールドワークで得られたデータを用いながら、体育教師はなぜ、どのよ
うに運動部活動にのめり込むのかを考察する。
具体的な分析課題を、分析レベルに応じて次の 3 つに設定する。1 つ目は、個人レベルにおいて、体育教師が顧問とし
て運動部活動にどうかかわるかである。ここでは、一見すると学校教育とは無関連に見えるスポーツを、教育活動の一環
として捉えようとする、体育教師の特徴的な意味づけ方を分析する。2 つ目は、人間関係レベルにおいて、体育教師が、
他教科の教師、とりわけ運動部活動の消極的な他教師にどう働きかけるかである。ここでは、スポーツ経験が無いなどの
事情から運動部活動に消極的な他教師に対する、体育教師による励ましや説得の仕方を分析する。3 つ目は、組織レベル
において、体育教師が学校全体の運動部活動の運営・管理にどうかかわるかである。ここでは、自身が顧問を務める運動
部活動だけでなく、運動部活動全体のあり方を調整する体育教師の側面について、管理職との関係や学校組織上の役割に
注目しながら分析する。分析に用いるデータは、関東圏の公立中学校のフィールドワークから収集した。発表当日は、そ
こで得られたデータを記述的に分析することを通じて、体育教師のあり方を考え直すための論点提起を目指したい。
14
身体論の立場から~「身体としての体育教師」とは何か~
坂本 拓弥(明星大学)
「一人の体育教師として、私がこの子どもたちの前に今存在している意味はあるのだろうか、そしてあるとすれば、そ
れは一体何なのだろうか。
」本発表の目的は、この根源的な問いの直接的な答えを提出することではなく、むしろ、現実
の体育授業においてこのような不安を解消しうるとすれば、それはどのようにしてなされうるのかを検討し、そこにおけ
る体育教師の存在様態を明らかにすることである。
そうすることによって、この問いに答えるための一つの手がかりを探っ
ていきたい。
上記の問いは、本人が自覚しているか否かに関わらず、若手を中心とした少なくない教師が抱えている現実的かつ切実
な問いである。それは教師の実存的な危機、もしくは不安を示すものといえる。このような不安の一つの背景には、体育
授業における指導技術や授業方略に対する過度の期待を指摘することができる。つまり、指導技術等の客観性と普遍性が
重視されればされるほど、皮肉にも、個々の体育教師の存在意義(実存)は不明瞭になっていくと考えられる。言い換え
れば、「誰もが実践できる指導技術の普及」は、同時に、その指導技術さえあれば「誰でもよい状況」を生み出す可能性
=危険性を併せ持っているということである。
「身体としての体育教師」は、そのような実存的な不安を抱える体育教師を、指導技術の担い手としてだけではなく、
現実の体育授業を生徒とともに生きている一人の身体的な存在者として捉えなおすことによって見出される。それは、従
来議論されることのなかった体育教師の一つの存在様態である。昨今多くの論者が指摘しているように、教育という場に
おいて生徒が具体的な他者とともに生き、そこで身体的な経験を積むことが重要であるならば、その生徒と日常的に関わ
り、彼らとともに生きる体育教師の身体の在り方もまた、重要な検討課題になるであろう。そして、このような試みは、
従来の体育教師論に欠けていた視点を補うとともに、体育科の教員養成段階における身体教育の必要性を示すことにもな
るであろう。
15
大会組織委員会企画
学際的シンポジウム
8月 26 日(火) 16:00-18:00 マリオス 盛岡市民文化大ホール
体育・スポーツのイーハトーヴを求めて
コーディネーター:大久保 英哲(金沢大学)
宮沢賢治の世界から学ぶ「多面体の輝き」
〈趣旨〉
2011 年の東日本大震災、原発事故と放射能汚染、昨今の東・南アジアやヨーロッパにおける領土や帰属問題の緊迫化、
日本国内にあっては秘密保護法や集団的自衛権をめぐる政治状況の緊張など、社会に深刻な危機感が広まる中で、我々体
育・スポーツ界にあっても、死亡事故、ハラスメント、体罰・暴力事件が次々と明るみに出ている。一方で 2020 年の東
京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、さまざまな準備が進められ始めている。イーハトーヴの名付け親・宮沢
賢治はこうしたわれわれの現状を見たら、何を語るのだろう。
1. 賢治の世界
賢治は不思議な人間である。科学者、教育者、農業者、画家、音楽家、工場長、詩人、文学者など「多面体の輝き」を
放つ。賢治の研究家畑山博(
『イーハトーブのセールスマン 宮沢賢治の夢と修羅』1995)は「二重螺旋構造」で賢治の
世界を読み解いている。賢治の農学校時代や羅須地人協会時代のお祭り騒ぎのように陽気にはしゃぐ活動的な賢治と、絶
望的な人間嫌いの賢治。単なる陰と陽の対比というに止まらず、二重螺旋のように組み合わされて+-(プラス・マイナ
ス)
、++(プラス・プラス)
、あるいは--(マイナス・マイナス)の組み合わせが現象しているのが賢治の世界の「多
面体の輝き」だというのである。その螺旋構造を構成する最も基本的なファクターは科学者という要素と宗教者という要
素であったろう。
①科学者としての精神
何より賢治は科学者であった。しかし科学万能主義の厚かましさはない。井上ひさし(『宮沢賢治に聞く』1995)の言
葉を借りれば、「専門という名の蛸壺に立て籠もって自分の研究成果がどう悪用されようと知ったことではないと澄まし
ているような無責任さとも無縁である。政府や企業に仕える太鼓持ち科学者でもない。」
賢治はなぜ自分の科学を独走させずにすんだのであろう。本日の基調講演者山本徳郎氏は「体育科学の発展の背後には
『棺桶つくりの眼差し』が潜んでいる」と戒められた。賢治の科学も「シンポハッタツカイリョウカイゼン」
(『クンねずみ』
)
とはしゃぎ回ることはなかった。
『グスコーブドリの伝記』ではイーハトーヴの人々が安心して生きていけるように、火
山局が科学の力でカルボナード火山を噴火させるのであるが、それにはグスコーブドリの自己犠牲が伴わねばならなかっ
た。
②宗教者としての精神
賢治の中で科学の暴走を戒める役割を果たしたのが宗教者としての側面であった。賢治の言葉を見る。「宗教は疲れて
近代科学に置換され、然も科学は冷たく暗い 芸術は今われらを離れ然もわびしく堕落したいま宗教家芸術家は真善若し
くは美を独占し販(売)るものである」
(
『農民芸術論綱要』)
賢治はこういった宗教家たちのはるか彼方にいる。だから賢治は作品の中で、銀河や星、山や獣たちと語り合えるので
ある。宗教者としての精神と科学者としての精神。「多面体の輝き」の 2 つの源泉。
③多面体の輝き
また井上ひさしが指摘したように、賢治は、人間は多面体として生きるのが良いと説いているように見える。野に立つ
農夫も四六時中農夫であってはつまらない。それでは人間として中途半端だ。朝は宗教者、夕べは科学者、夜は芸術芸能
者、そういう農夫がいてよいのではないか。科学も宗教も労働も芸能もみんな大切なもの。けれどもそれらをそれぞれが
手分けして受け持つのでは何にもならない。一人がこの四者を、自分という小宇宙の中で競い合わせることが重要だ。そ
れでこそ「輝く多面体」となる。アスリートも本来同様ではないのだろうか。
16
2.「体育・スポーツのイーハトーヴを求めて」
2011 年、教育社会学者内田良氏(現名古屋大)によって教育現場での柔道死問題が表面化した。この問題に気づき、
研究的眼差しを向け注いだのが体育・スポーツ学会ないし関係者ではなかったこと、2012 年からの武道必修化問題に有
効な対策を提言しきれない関係学会のあり方に、山本徳郎氏は「体育学・スポーツ科学の学術的貧困(病理・おめでたさ)
」
と警鐘を鳴らされた。
2020 年東京オリンピック・パラリンピックが、われわれ体育・スポーツ関係者にとって待ち遠しい大会である事は間
違いない。だがその光の部分に目をくらませられると、「体育学・スポーツ科学の学術的貧困(病理・おめでたさ)
」のま
まに、われわれはオリンピックのメダル製造工場の作業員と堕してしまうのではないか。われわれは体育・スポーツが光
と影の多面体であることを認識し、
その輝きの拠って立つ影の部分に目を向けるところから、
「体育・スポーツのイーハトー
ヴを求めて」を始めたい。
基調講演
体育・スポーツのイーハトーヴを求めて
山本 徳郎(元日本体育学会会長)
1.はじめに
今回のポスターを見ると、背景には歴史を感じさせる岩手大学農学部農業教育資料館(重文)、その前にはよく見かけ
る宮沢賢治の立ち姿の影、そしてその上に白文字で「ワレラハ イツシヨニ コレカラ何ヲ論ズルカ」と書かれている。こ
れは賢治による『農民芸術概論綱要』
(1926 年)の、序論のテーマである。われわれも、今、ここで何を論ずべきかを
提案し、しかも提案にとどまらず、その実現可能性を考えたい。
2.われわれは今、何故体育やスポーツのイーハトーヴを求めなければならないのか? 夢を語るのではない!
大会組織委員会委員長栗林徹氏は挨拶文で、
「昨今では体育・スポーツの負の部分も顕在化してきており、改めて体育・
スポーツのあり方を考えることが必要とされている・・・」という認識を示された。まず昨今顕在化した「負の部分」と
言われている最大の問題は、活動中の子どもを死に至らしめることである。われわれは、自己批判とともに厳しい視線を
そこに向けなければならない。暴力問題とも深く関連しているのだ。
2012 年 7 月に、文科省は「学校における体育活動中の事故防止について」
(報告書)を公表した。そこでは 1998 年
からの 12 年間に死亡見舞金、障害見舞金(1 級~ 3 級)を給付した事例 590 名(内死亡 470 名、障害 120 名)が示さ
れている。毎年約 40 名の子どもが「命」を、さらに 10 名が「生活」を奪われていたのである。この事実をわれわれは
知っていただろうか。この膨大な数字を前に、一瞬声を失うが、東京新聞によると「体育の授業や部活動中の事故に関す
る統計を文部科学省が公表したのは初めて」
(2012 年 7 月 4 日)だということに、更に驚かされた。いかなる理由があっ
たにせよ、文科省の隠蔽体質、そして「一片の通達で済ませてきた」怠慢を批判されても弁解の余地がないだろう。文科
省に、死亡事故をゼロにする対策はあるのだろうか。
一方で、日本体育学会をはじめ関係諸学会は、この問題とどのように取り組んできたのであろうか。オリンピックのメ
ダル争いにかかわる研究に夢中で、その陰にあった負の部分には目を向けてこなかったのではないか。われわれも文科省
の怠慢と同質だったのだ。長年この領域で生活し、世話になった者のせめてもの恩返し(罪滅ぼし)と思い、私は自己反
省と共に自分に唾をかける思いで、体育学・スポーツ科学が「学術的貧困」「お目出度い領域」であることを批判した(拙
著『教育現場での柔道死を考える―「子どもが死ぬ学校」でいいのか !?』
、かもがわ出版、
2013 年、25 頁)。学術的「良心」
の問題と同時に、日本の体育・スポーツにおける「安全文化」のレベルも問われているのだ。12 年間とは言え、590 名
もの命と生活を奪う大きな事件が生じていたことは、決して許されることではない。これが、今われわれがイーハトーヴ
を求めなければならない現状である。
3.われわれは今、何をしなければならないか? 夢に終わらせてはならない!
昨年早々問題になった桜宮高校事件や 15 名の勇気ある女子柔道選手による告発事件に見られるように、委員長をして
言わしめた「負の部分」の多くは「指導者」に原因がある。私は、何よりも指導者養成の再検討が急務だと思う。最近、
雨後の筍のように、多くの大学に体育・スポーツのコースが開設され、指導者の養成も行われている。しかしそれぞれの
大学では、運動部の競技成績による宣伝効果を期待し、学生は大学生としてまずすべき学習や研究をないがしろにして自
分の競技力向上へ終始する傾向が見られないだろうか。だとすれば、レベルの低い指導者が量産されて、前回の東京オリ
ンピック前後(1960 年代)にささやかれた「スポーツ・バカ量産体制」
(牛島秀彦『スポーツ亡国論―その狂気と現代―』
17
東洋出版、1970 年)の再来になりかねない。
学部改組の折衝中に感じたことは、文科省は各大学が何をしたいのかを聞き出そうとしていたことである。文科省は抜
本的な教員養成改革プランの発想を各大学に期待していると思う。まず体育・スポーツ関係の学長・学部長会が率先し、
その機能を生かし、学会とも協力して、可能な大学から互いに競いながら、指導者養成の改革に取り組めないだろうか。
「クーベルタンの十本の松明」は無理としても、学生の知的開発に役立つカリキュラムの充実を試み、救急救命士の資格
取得や中学・高校の体育免許は他教科も合わせて取得すること、そして国家試験を制度化して、これまでとは異質の指導
者を生み出す改革が急務ではないか。カリキュラムによっては在学年数が増えるだろうが、子どもの命に係わる指導者と
して、数年延びてもいいではないか。今のままでは横並びの特色のない金太郎飴的大学ばかりになり、少子化の中で淘汰
される運命にある。ことの重大さに気付いた大学から率先して試みたらいい。時代は変わりつつある。もはや年間 50 名
もの子どもたちを犠牲にする「子どもが死ぬ学校」「子どもが死ぬ教科」が、いつまでも義務教育の中で「必修の教科」
であり続けることは許されまい。
4.おわりに 体育・スポーツ・オリンピックの再構築を!
茨木のり子の詩集より:
「2002 年ワールドカップのあと 25 歳の青年はインタビューに答えて言った 『この頃のサッ
カーは商業主義になりすぎてしまった こどもの頃のように無心でサッカーをしてみたい』」
(茨木のり子『倚りかからず』
ちくま文庫、2013 年 12 月、球を蹴る人―N.H.に―、104 頁より)。
われわれも初心に帰り、体育・スポーツ(オリンピックも含めて)の再構築を試みようではないか。
シンポジスト及び発表テーマ
今、体育・スポーツに求められるものとは何か
友添 秀則(早稲田大学)
体育・スポーツの理想郷(イーハトーブ)は存在するのか。体育・スポーツの理想郷とはどのようなものなのか。あり
うべき理想郷を探求するには、体育・スポーツの現実を直視し、そこに横たわるアポリア(難問)と向き合い、反省的な
考察を重ね、さらに批判的な討議によってアポリア(難問)を克服し、体育・スポーツを支配する倫理を確立していくこ
とが何よりも必要である。今、体育・スポーツはどこへ行こうとしているのか。
まずは、問題状況を相対化するために、最近の問題群を挙げてみよう。高校運動部のベテラン指導者による暴力行為に
よって、高校生が自死した痛ましい事件は大きな社会問題となった。また、女子柔道のナショナルチームの指導者による
暴力行為は、全柔連の助成金の不正受給問題と関連して、人々のスポーツへの信頼を損なわせる大きな出来事となった。
JOC 調査によれば、我が国のトップアスリートの約1割が暴力を受けた経験があるという。悲しい現実であるが、ロワー
からトップに至る様々なレベルの我が国のスポーツの世界には、暴力があたかも日本のスポーツ文化を構成する一要素で
あるかのように、暴力とスポーツの親和性は高い。
「JAPANESE ONLY」と書かれた浦和レッズの一部の心許ないサポーターが掲げた人種差別的横断幕は、スタジアムの誰
からも問題視されず、クラブも試合終了後まで撤去しなかった。人種差別に鈍感なスポーツの世界の在り様が露呈したと
もいえる出来事であった。ところで、スポーツ振興や強化の財源は、税や公金にその多くを負うているが、それはスポー
ツがフェアにプレイされ、スポーツの組織のガバナンスが確立しているとの社会からの信頼を前提とする。一部の複数の
NF の役員人事を巡る抗争は、国民からのスポーツの信頼を喪失させる。
周知のように、1990 年代以降、ビジネスとスポーツが強固に結合して以来、一大スペクタクルとなった現代スポーツは、
それ自体コントロール不能な巨大な生き物の様相を呈している。現代スポーツへの人々の熱狂的な関心は、それ自体スポ
ンサー企業の格好の広告戦略のマーケットとなり、巨額のマネーが動くことになる。そして、ドーピング、八百長、環境
破壊と多様なアポリアを生み出した。今こそ、体育・スポーツで何が許され,何が許されないのか、体育・スポーツの限
界を英知を集めて議論し、
「倫理」を確立しなくてはならないのではないか。
18
国際基準に基づいたコーチングについて考える
勝田 隆(日本スポーツ振興センター)
スポーツ指導において暴力が行使される事案を受け、2013 年2月文部科学大臣は、
「スポーツ指導における暴力根絶
へ向けて」と題し、この事態を我が国のスポーツ史上最大の危機と捉え、「スポーツ指導から暴力を一掃する」という基
本原則に立ち戻る必要性を示した。そして「新しい時代にふさわしいスポーツの指導法」が確立されるよう、全力を尽く
すと表明した。これに基づき、同年4月「新しい時代にふさわしいスポーツの指導法」の在り方を明示する使命を帯びて
有識者会議(以下「タスクフォース」とする)が文部科学副大臣(スポーツ担当)の下に設置された。私はこの会議に参
加した。
ここでは、このタスクフォースの議論および報告書を参考に、「国際的に開かれたコーチング」を考える際に重要と思
われる視点について紹介したい。
1.カタカナ・ワールド
タスクフォースでは、
「スポーツの指導を行う者の役割は、競技者やチームを育成し、目標達成のために最大限のサポー
トをすること」としたうえで、
「このようなサポート活動全体を『コーチング』とし、全ての競技者やチームに対してコー
チングを行う人材を『コーチ』
」と定義し議論をすすめた。
グローバル化が拡大する今日、私たちは、オリンピックやパラリンピック、アンチ・ドーピング、そして、コーチ、コー
チングといった「カタカナ・ワールド」で、世界の人たちと共通言語をもちながら活動している。そして、今後、カタカ
ナ・ワールドとのかかわりは、さらに拡大していくものと考える。
カタカナ・ワールドに携わるということは、これを単なる言語の問題として捉えるのではなく、世界に対してオープン
マインドでいること、さらに、ことばの包摂する思想的な背景をも体内に取り込んでいくことを意味する。この態度こそ
新しい時代に求められる指導者像のひとつであると考える。
2.国際基準に基づいたコーチング教育の方向性
タスクフォースでは「グローバル化が急速に進む現在、コーチは高度な専門職として、国際的に人材が流動化している」
ことを確認し、そのうえで「諸外国の優れたコーチが我が国で活動するとともに、我が国で育成されたコーチが諸外国で
活躍することにより、人材の活発な交流が促進され、世界のコーチングに我が国が貢献することができる」との見方を示
した。そして、この国際的な交流や流動化に適切に対応するためには、我が国のコーチ育成の充実が急務」であり、その
際には「コーチング・プログラムを開発して諸外国で展開できるようにすることも必要」であると提言した。
上記の検討にあたっては、
スポーツにおけるコーチング教育関係者が連携し、
「職業」としてのコーチの地位や、その知識・
技能育成の枠組みに関する国際的な整備・向上を目指す国際非営利団体として設立された「国際コーチングエクセレンス
評議会
(ICCE: International Council for Coaching Excellence)」
の取り組みなどが参考情報として示された。ICCE では、
コー
チング全般に関する人材育成と質保証の仕組みを国際的にすすめており、コーチ教育のためのガイドラインの策定やコー
チ倫理規定(行動規範)に関する情報収集プロジェクトなどを設置し、世界各国のコーチ倫理規定(または行動規範)も
収集し分析している。
参考・引用文献
・
「スポーツ指導者の資質能力向上のための有識者会議(タスクフォース)報告書」
. スポーツ指導者の資質能力向上のた
めの有識者会議 . 文部科学省 . 2013
・
「スポーツコーチングに関する国際枠組み
(第 1.2 版)
」
. International Council for Coaching Excellence. 2013.
(日本スポー
ツ振興センター翻訳)
日本サッカー協会(JFA)と社会貢献活動
田嶋 幸三(日本サッカー協会副会長)
日本サッカー協会(以下 JFA)は、サッカーを通じて、豊かなスポーツ文化を創造し、人々の心身の健全な発達と社会
の発展に貢献することを活動理念としています。JFA のビジョンは、以下の三つです。①サッカーの普及に努め、スポー
ツをより身近にすることで、人々が幸せになれる環境を作り上げる、②サッカーの強化に努め、日本代表が世界で活躍す
ることで、人々に勇気と希望と感動を与える、③常にフェアプレーの精神を持ち、国内の、さらには世界の人々と友好を
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深め、国際社会に貢献する。この活動理念に基づいて以下のような社会貢献活動を展開しています。
1.東日本大震災復興支援
JFA は、世界中のサッカーファミリーのちからを集結し、東日本大震災で被災したサッカーファミリーが日常のサッカー
環境を取り戻せるよう様々な復興支援活動を実施しています。
2.JFA こころのプロジェクト
現代社会において、日本の子どもたちのために、日本のサッカーは、私たち大人は、何ができるかを考えたとき、仲間
と力を合わせてたたかう、相手と激しくからだでぶつかるサッカーだからこそ、相手を思いやる心やフェアプレーの精神
を重んじることになり、そんなサッカーだからこそ、子どもたちに伝えることがあるはずだと考え、学校教育の現場と力
を合わせて、子どもの心の教育に貢献していくプロジェクトです。
3.国際交流・アジア貢献活動
「サッカーを通じて子どもたちに明るい未来を与え、アジアサッカーの普及・発展につなげたい」
。JFA は、46 の国と
地域が加盟するアジアサッカー連盟(AFC)のモデル協会として、AFC 加盟協会に対するさまざまな支援活動を行ってい
ます。
4.JFA グリーンプロジェクト
子どもたちの外遊びを促し、また、人々が集う地域コミュニティの場として、芝生のグラウンドは重要な役割を担って
いると考えられます。JFA は、芝生の校庭や広場が、21 世紀のスポーツや豊かな地域社会の形成に重要な役割を果たす
と考え、J リーグとともに校庭や公共のグラウンドの芝生化を推進しています。
5.環境プロジェクト地球温暖化防止国民運動「チャレンジ 25 キャンペーン」への参加
JFA は 2005 年 6 月より、地球温暖化防止国民運動「チーム・マイナス 6%」に参加し、各種環境活動を展開してきま
した。同活動は 2010 年 1 月 14 日から「チャレンジ 25 キャンペーン」へと生まれ変わりましたが、JFA は引き続きそ
の趣旨に賛同し、本キャンペーンを推進していく考えです。
6.国連グローバル・コンパクトへの参加
JFA は 2009 年 7 月 7 日、国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト」
;経済のグローバル化に伴い、富の不
平等化が深刻化した国際社会の各種問題(貧富の差の縮小・腐敗撲滅・環境保護・社会的差別解消など)に立ち向かうべ
く創設された『国連機関・民間企業・非営利団体等のプラットフォーム』
、に国内 93 番目の企業・団体として登録され
ました。サッカークラブではスペインのFCバルセロナが登録していますが、スポーツ統括団体では JFA が世界初とな
ります。サッカーは世界中で愛されているスポーツであり、それだけに大きな影響力を持つと考えます。
スポーツが私たちに与える力:スポーツによる復興(福島)支援の事例から
川本 和久(福島大学)
東日本大震災発生から3年3ヶ月(2014 年6月現在)が経過した。福島県は、地震、津波の被害だけではなく、東京
電力福島第一原子力発電所の事故により、放射能被害とともに風評被害にもさらされることになった。
地震発生2日後、
演者は東京から福島に自家用車で戻る途中、前日まで通れなかった国道を懸命に補修する作業員の方々
の姿を目にする。周囲の状況から、恐らく自宅も被災しているであろうし、寝てもいないであったろう。
「何か、世の中
の役に立つことをしなければ」このことが、全ての始まりであった。
スポーツで出来る復興支援を考え続け、多くに人たちと行動を起こし、この3年間、様々な活動を実施した。復興支援
活動の中で子どもたちに伝えていることは「福島が元通りになるには 10 年かかる。これは大人の責任できちんとやり遂
げる。君たちは 10 年かけて、その時に社会で役立つ人材になるように一生懸命スポーツをして、勉強をして、心と体を
鍛えなさい。」である。福島の未来を託す 24.4 万人(15 歳未満人口)の子どもたちにスポーツの持つ感動を通じて夢と
希望を与えることが出来ればと考える。そして、この6月の日本陸上競技選手権開催へと繋がっていく。全国からの参加
者に「福島は普通なんだ」と感じてもらい、風評被害の一掃の一助になればと切に思う。
2011 年 3 月 11 日、東日本大震災発生以降、我々が、福島で実施してきたスポーツによる支援活動を報告する。
・負けんな、福島!立ち上がろう、福島!!復興支援陸上教室
・4時間耐久リレー
・ウォームアップジャパン from Tokyo(浜通り、中通り、会津)
・ももりんダッシュNo.1
・日本陸上競技選手権大会招致活動
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ランチョンセミナー1
協力:日本トレーニング指導者協会(JATI)
8月 27 日(水) 12:00-13:00 教育学部 E31
アジリティとファンクショナル・トレーニングの最新情報
座長:菅野 昌明(JATI 理事)
ジュニアスポーツ選手におけるアジリティの縦断的発達について
三島 隆章(JATI 調査研究委員会、八戸学院大学准教授)
サッカーやバスケットボール、バレーボールといった多くの球技スポーツでは、直線をできるだけ速く走るスピードだ
けでなく速いスピードの中で様々な方向へ動きを転換する能力、すなわち「アジリティ」がスポーツ活動において重要な
役割を果たしていると指摘されている。さらには、球技において相手をフェイント動作で抜き去るといった場面において
もアジリティが重要な役割を果たしていることから、アジリティに関与する体力要素について検討がなされてきた。
一方、アジリティの加齢に伴う発達の様相についても関心が寄せられている。ジュニア期において反復横跳びのよう敏
捷性を示す能力が急激に発達することが確かめられていることから、アジリティもジュニア期に急激に発達することが推
測される。7 歳から 15 歳のジュニアスポーツ選手を対象に、アジリティの指標であるプロアジリティ・テスト(5 m-10
m-5 m)を測定した結果、約 8 歳に速度曲線のピークが認められたが、その後、大きな速度曲線のピークは認められな
かったと報告されている。ただし、プロアジリティ・テストにおいて約 8 歳に速度曲線のピークが認められた先行研究は、
横断的な研究の結果であることに注意が必要である。そこで今回は、約 5 年にわたって行った縦断的調査によって得ら
れたジュニアアスリートにおけるアジリティの縦断的発達の様相について紹介する。
スリング系ツールにおけるトレーニング効果を探る
久村 浩(JATI 理事)
昨今、機能的な動作の獲得を目標とした「Functional Training」が注目されている。また、このトレーニングの中で提
唱されている “ 共同と分離 ” という概念からトレーニングの指導現場では、
「コア(体幹)トレーニング」が重視されている。
一方、本来リハビリテーション領域で用いられていたスリング系のトレーニングツールが、現在ではアスリートに対
する「Functional Training」や体幹の「Dynamic Stability」のトレーニングツールとして利用されている。このような
スリング系トレーニングツールは、複数のメーカーから販売されており、特徴にも若干の違いが見られ、
「Functional
Training」で提唱されている 3 面運動を可能にする用具も商品化されている。
しかし、このツールを使用した科学的なデータは乏しくエビデンスも少ないのが現状である。そこで、異なる対象者に
おけるスリングを使った自重負荷トレーニングを実施し、表面筋電図を用いた筋活動量によってトレーニング効果を検討
することを試みた。
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ランチョンセミナー2
協力:日本クリケット協会
8月 28 日(木) 12:00-13:00 教育学部 E31
クリケットブラスト~校庭から日本代表への道~
(小・中学校の授業での取り組みを通して夢の活動へ)
司会:吉中 康子(京都学園大学経営学部スポーツマネジメントコース 教授)
演者:宮地 直樹(日本クリケット協会事務局長)
〈趣旨〉
捕る・投げる・打つ・走るなどの主な動きを世界的なスポーツを使って高める特色のある授業を紹介。その国際的な特
徴を生かして、英語を取り入れたり、外国人講師の派遣など、国際交流の機会提供としても活用されております。
この活動は、学校の授業から始まり、学校単位で参加するスクールカップや個人単位で参加できる大会などを実施し、
スポーツ活動の習慣化や地域スポーツとの橋渡しを提供することを目的としております。学校の校庭を契機に、その地域
代表、国を代表するスポーツパーソンが生まれることでしょう。
主に学校の教職員、教職員研修、大学教育学部などの先生方へのこの機会を紹介させております。
英国発祥のクリケットは競技人口がサッカーに次いで世界第 2 位というインターナショナルスポーツです。特に英連
邦諸国では大人気のトップスポーツです。歴史的には「野球の原型になったスポーツ」とも言われるように、近代チーム
スポーツの中でも最も古くから確立されたスポーツであるとともに、近年は特にアジア諸国で人気が爆発している「新し
い」スポーツでもあります。
投手が投げたボールを打者が打ち返すなど野球とは基本原理は共通するものがあります。しかし、①野球とは違いファー
ルゾーンがなく、360 度どこに打ってもよい②投手は肘を曲げて投球をしてはいけない。など野球との違いも多いです。
学校で導入するメリットは、投げる・打つ・走る・捕るなどの動きを、能力差に関係なく全員で楽しめることが挙げられ
ます。日本クリケット協会では、ジュニアへの普及に力を入れており、学校の授業向けにプログラムを開発しました。こ
のプログラムを通して、体育をはじめ、国際理解、総合的学習などの授業でクリケットを実施する学校が増えていくこと
でしょう。学校の授業では、簡易化された道具やゲームなどを使って、スポーツをする喜び、チームワーク、コミュニケー
ションなどの人間性の向上や、投げる、打つ、走る、捕るなどの運動や活動を学べる教材として大好評です。道具や指導
面など、授業に導入することが比較的容易であることや、能力や性別に関係なく誰でも楽しく学べることがプログラムの
特徴です。また、外国人講師の派遣による「英語でクリケット」授業やプログラム実施校への道具の提供なども好評をい
ただいています。
この活動は、学校の授業から始まり、学校単位で参加するスクールカップや個人単位で参加できる大会などを実施し、
スポーツ活動の習慣化や地域スポーツとの橋渡しを提供することを目的としております。学校の校庭を契機に、その地域
代表、国を代表するスポーツパーソンが生まれることでしょう。
主に学校の教職員、教職員研修、大学教育学部などの先生方へのこの機会を紹介させております。この機会にぜひ体験
してください。
8/28(木)13:30 〜 15:00 はデモンストレーション・体験会をグラウンド(雨天時:第 2 体育館2F)で実施します。
是非ご参加ください。
実践型プログラム(ワークショップ:クリケット講習会)
協力:日本クリケット協会
8月 28 日(木) 13:30-15:00 グラウンド 雨天時:第 2 体育館2F
クリケットを活用するには
講師:宮地 直実(日本クリケット協会普及スタッフ)
・クリケットスタッフ
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地域連携企画 1 国際シンポジウム特別講演
協力:健康運動指導士会岩手県支部
8月 25 日(月) 10:00-12:00 アイーナホール
自分の命は自分で守る
釘子 明 氏(一般社団法人「陸前高田被災地語り部」
)
被災地における健康づくりの変遷・現状・課題
藤野 恵美 氏(修紅短期大学講師)
地域連携企画2 講演
共催:保健専門領域
8月 27 日(水) 10:45-11:45 教育学部 E26
我が国の保健科教育の課題と今後の発展に向けて
―私の保健科教育学への歩みと自省から―
司会:野津 有司(筑波大学)
演者:森 昭三(筑波大学名誉教授)
地域連携企画3 地域貢献シンポジウム
共催:岩手県教育委員会
8月 27 日(水)
15:30-17:00 銀河ホール
学校における体育のイーハトーヴを考える
~学習指導要領と授業をつなぐために~
司会:清水 将(岩手大学)
コーディネーター:佐藤 豊(鹿屋体育大学)
シンポジスト:高橋 修一(国立教育政策研究所)
高田 彬成(国立教育政策研究所)
森 良一(国立教育政策研究所)
指定討論者:千田 幸喜(岩手県教育委員会)
23
哲
専門領域企画
00 体育哲学
シンポジウムA
8月 27 日(水)
10:00-12:00 センターB棟 GB31
「スポーツ実践の思想」(2 年目)
―実践思想のパフォーマンス―
司会:田井 健太郎(長崎国際大学)
・佐々木 究(山形大学)
〈趣旨〉
「スポーツ実践の思想」と題するシンポジウムの 2 年目である。本シンポジウムでは、スポーツを巡る多様・多角的で
ありうる思索・思考の所産を、その総体とともに「スポーツの思想」と定義し、そのうち「実践」との間に直接的な影響
関係を取り持っているものをとくに「スポーツ実践の思想」として、その実相に迫ろうとするものである。第一回シンポ
ジウムでは、スポーツ実践において所与として立ち現れる思想性、あるいは実践(者)にとっていわば対抗的に現れる思
想性といったものに着眼して、
「実践の思想」の輪郭を浮き彫りにしようとした。
今回は議論の観点・焦点を、スポーツ実践を構成・構築する「論理」の側にやや引きつけて設定することで、議論をさ
らに深めていく。演者の先生方は、それぞれの営みにおいて実践への参与・参画を不可欠としつつも、これに没入するの
でなく、一定の方法論的な距離感を持って対しており、この自覚的な立ち位置によって、「スポーツ実践」を構成する背
景的な論理にまで鋭い眼差しを注がれている。それは高度に思索的でありながら、実践との密接な関わりを保持した営み
である。
「実践」
を手放さないままどこまで
「思想」
は展開されうるのか。三名の先生方の発表を手がかりに議論を深めていきたい。
ゲームの発展過程に対応したゴール型ゲーム教材の開発から
米村 耕平(香川大学)
現在、小学校における体育授業では、サッカー、バスケットボール、ハンドボール等の種目を元にした教材が取り扱わ
れている。これらは、シュート場面やルールに多少の違いはあるものの、コート上で攻守が入り乱れてお互いのゴールに
シュートを決めるという点でよく似ているためゴール型ゲームとしてまとめられている。
ゴール型ゲームにおけるゲーム様相は、
それぞれの種目により最終的に展開される型に違いがあるが、どのゴール型ゲー
ムも共通してそのゲーム様相は5段階に分けることができるとされており、ゲームに参加する者の戦術能と技能レベルに
より展開されるゲーム様相が変わってくる。そのため、指導者は学習者のゲーム様相にあわせた教材を導入することが求
められる。
しかしながら、学校体育のゴール型ゲームの授業では、ゴール前での攻防に焦点化した教材が多く導入されていること
が多い。これは、ゲーム様相の初期段階にいる学習者にゴール前の攻防を練習させても、実際のオールコートゲームでは
コート中盤でのボールの奪い合いが多くなるため学習の成果がゲームで現れることはあまり期待できないという問題を生
じさせている。
そこで本研究は、学習者のゲーム様相に応じたゴール型ゲーム教材を用いた指導プログラムを作成し、その有効性につ
いて学習者のゲームパフォーマンスの変容から検証する。
24
00 体育哲学
リズムの受肉—ボクシングジムに埋め込まれた思想
石岡 丈昇(北海道大学)
哲
ボクシングジム(場)に息づく思想は、ボクサー(個々人)に息づく思想よりも、遥かに奥深い。私が 2005 年 4 月
からの一年間、マニラの貧困地域にあるボクシングジムで住み込み調査をおこなった際に学んだことは、この点である。
場の思想は個人の思想を凌駕する。この一点だけを手放さないで、スポーツ実践の思想をトレーニングの場の分析より描
出することが、本報告の目的である。
具体的には、
マニラ首都圏パラニャーケ市にある E ボクシングジムの練習風景を写真や映像を使いながら分析する。フィ
リピンのジムでは、多くのボクサーが住み込み生活をおこなっており、通いで練習する日本のジムとは異なっている。E
ジムでは、練習時間が午後一時から三時までと決められており、この時間には東洋太平洋チャンピオンから入門間もない
素人ボクサーまでが、
一同に介して練習をおこなう。人数は 30 〜 40 名のボクサーが同時に練習することになる。報告者は、
技能レベルの異なるボクサーが数十人規模で共在するこの練習空間こそが、実は合理的な身体技法の継承を可能にしてい
ると考えている。スポーツの思想といえば、選手なり監督なりの個々人の言葉に着目するのが王道であるが、本報告では
敢えてジムという場から思想を捉えてみたい。
ポルトガルサッカーの実践思想とレンディメント―戦術的ピリオダイゼーションの思想力―
木庭 康樹(広島大学)
本発表では、UEFA チャンピオンズリーグ優勝 2 回、さらには、欧州 3 大リーグ制覇という輝かしい成績を収め、今や
世界で最も優秀なサッカー監督として呼び声の高いジョゼ・モウリーニョ氏(現チェルシー監督)が採用している「戦
術的ピリオダイゼーション periodização táctica(以下 PT と略記)」に着目し、その思想内容や思想背景、あるいはその
「思想力」の源泉について解説を行う。同理論は、ポルトガルのポルト大学元教授、ヴィトール・フラーデ氏によって、
1970 年代中頃に創案され、その思想背景には、スピノザの哲学、メルロ・ポンティの現象学、複雑系の科学、脳科学、
サイバネティックス、プラグマティズム等、様々な学問分野が複雑に絡み合いながら存在している。また、フラーデ氏に
よれば、PT は、サッカーのトレーニング理論としてだけでなく、
「集団スポーツゲームの一般理論」として、さらには「社
会認知モデル」としても機能させることが可能である。とくに、今回の発表では、一般に言われるスポーツの「パフォー
マンス performance」と集団スポーツゲームにおける「レンディメント rendimento」との違いを、PT 理解への一つの切
り口として提起し、PT の鍵概念である「複雑性 complexidade」「特異性 especificidade」「ゲームモデル modelo de jogo」
「モルフォサイクル morfociclo」等と合わせて概説していく予定である。
記念講演
8月 27 日(水)
16:20-17:20 センターB棟 GB31
浅田学術奨励賞・受賞記念講演
<スポーツ根性論>を再考する
―1960 年代における「根性」の変容と「いま」および「これから」―
司会:久保 正秋(東海大学)
演者:岡部 祐介(至誠館大学)
〈趣旨〉
「根性」とは、苦しみに耐え抜いて努力する精神力のことをさし、現在ではスポーツをはじめ日常的に使用されている
言葉であるといわれる。しかし、この「根性」という言葉に着目し、意味使用の変遷に着目した研究や、スポーツにおけ
る「根性」を取り上げ、その変容過程に着目した研究は、管見では僅少であるといえる。学術的な研究では、スポーツ心
理学の立場から「根性」の養成方法について考察した研究成果が確認できる。また、スポーツ史学の立場では、「根性」
が 1964 年の東京オリンピックを重要な契機として流行し、高度経済成長を支えた日本人の精神的支柱として定着して
25
哲
いったという見解が示されている。しかし、1960 年代における「根性」の意味使用の変容とその要因についての考察や、
スポーツにおける
「根性」
の成立および定着状況についての重点的かつ実証的な分析は十分でなかったと考えられる。
また、
1960 年代において流行した「根性」が、その後どのように変容していったのか、また、スポーツにおける「根性」が変
容していく根底にはどのような問題が含意されていたのかということについて十分な検討はなされていないといえよう。
本講演では、2013 年度浅田学術奨励賞・受賞論文『1960 年代における「根性」の変容に関する一考察:東京オリンピッ
クが果たした役割に着目して』の内容をもとにして、1960 年代以降のスポーツ実践に「根性(論)」が与えた影響について、
また、現在および今後に与えうる効力とその可能性について論じる。わが国において、競技スポーツの実践およびその教
育・指導に関連する言説に着目し、
東京オリンピック以降のスポーツにおける「根性」の変容過程を分析・検討する。また、
その変容をめぐって生起した問題との関係を、
「勝利至上主義」言説の(再)生産状況に着目しながら明確化する。さらに、
これまでの考察をふまえてスポーツにおける「根性」概念を規定し、今後のスポーツ実践において有効となりうる〈スポー
ツ根性論〉について考究する。
シンポジウムB
8月 28 日(木)
10:00-12:00 センターB棟 GB31
オリンピック・レガシー研究の現状と課題
司会:大津 克哉(東海大学)
〈趣旨〉
国際オリンピック委員会(IOC)は、2020 年夏季五輪の開催地に東京を選出した。
近年、IOC 憲章に、
「開催都市・開催国は、建設的なレガシー(遺産)を促進すること」が明記されており、大会後に
どのようなレガシーを遺せるのかという視点が重視されている。このオリンピック・レガシーが期待される分野は幅広く、
都市整備やスポーツ施設などハード面の「有形」のものだけではなく、スポーツ・健康、教育、観光・地域活性化、先進
的な都市モデル、震災復興政策などソフト面の「無形」のレガシーも求められる。IOC はそのために組織委員会にオリン
ピック・インパクト研究(OGI)を義務づけている。
本来、オリンピックは単なる景気刺激の手段ではなく、スポーツを通じた教育と平和の運動が推進される場である。成
熟した都市として、東京オリンピック ・ パラリンピックが新しい時代の理念を体現する人類の共有文化財としてどう発展
を遂げるのか、我々がその分岐点に立っていることは明白である。メダル獲得と都市インフラ整備、景気浮揚策といった
短期志向の戦略展開ではなく、大会後もレガシーを遺す方策を議論しておく必要がある。
そこで、昨今 IOC が注目しているオリンピック・レガシーという観点から、レガシー研究の原理的研究を行い、その
現状と問題点や展望など議論を深めていきたい。
オリンピック・レガシー研究に対する哲学的アプローチの意義
荒牧 亜衣(筑波大学)
現行のオリンピック競技大会招致システムでは、開催都市が、体育・スポーツ分野の発展だけでなく、大会の開催がそ
の都市全体の変容をもたらすようなレガシーを計画することを義務付けている(IOC、2012)
。この意味において、オリ
ンピック競技大会におけるレガシーは、大会を契機とした開催都市 / 国における政策課題の一つとして整理される。一方
で、レガシーの計画、実施、評価に際しては、開催都市 / 国における大会の位置づけを明確にし、克服していくべき課題
を設定するために、より多様で複合的な視点が求められる。例えば、レガシーの中心的な価値、ビジョンやコンセプトを
構想するためには、オリンピズムそのものに対する理解を深めたり、スポーツを通じた教育の意義について慎重に議論し
たりする必要がある。そこには、もちろん、大会自体が西洋のスポーツ規範によって支配されたものであるという批判も
存在する(アイヒベルク、2004)
。オリンピック競技大会が他に類をみない大規模な国際的競技大会として存在している
今、各都市 / 国における独自の意味合いについて真正面から取り組み、将来世代に残る恩恵や影響について積極的に捉え
てみたい。
26
00 体育哲学
「スポーツレガシー」の重要性と実現に向けた課題
本間 恵子(翻訳家・リサーチャー)
哲
1980 年代にオリンピックの運営に商業化が導入されてから、規模の拡大に伴うオリンピックの影響(impact)が懸念
されるようになった。さらに、90 年代に入ると持続可能な発展という概念がスポーツイベントにも取り入れられるよう
になり、こうした背景が 2002 年のレガシーに関する国際シンポジウム開催につながった。シンポジウム後、オリンピッ
クのレガシー(legacy)という概念がオリンピック関係者や研究者の間で徐々に広まってきた。従来の「impact」とは異
なり、「legacy」は未来に残す長期的かつプラス効果に言及するときにも使われる。効果はイベント目的と合致している
ことが重要である。オリンピック憲章では、オリンピズムの目標として、スポーツを通じて調和のとれた人間形成と平和
な社会を実現することが明記されている。したがって、オリンピック開催を機にスポーツ振興を一層推進すること、つま
りスポーツレガシーの形成がオリンピズムの目的の要となる。そこで、近年増えているスポーツレガシー研究の現状と課
題を考察するとともに、2000 年シドニー大会を事例に長期的なスポーツレガシー形成の具体例を紹介し、そこから日本
は何を学べるのかを検討する。
オリンピック・インパクト研究(OGI)の現状と課題
舛本 直文(首都大学東京)
IOC は 2000 年シドニー以降、オリンピックのノウハウを後の開催都市に伝達するシステム作りに着手した。1999
Transfer of Know How や 2002 Olympic Games Knowledge Services で あ る。2003 年、2010VANOCO に Olympic
Games Global Impact(OGGI)研究を義務づけた。OGGI により、経済・社会・環境の 3 分野 150 の指標について、招致
決定 2 年前から開催 2 年後まで 11 年間に 4 本の影響評価レポートを提出することになった。2007 年に Olympic Games
Impact(OGI)に名称変更され、経済、社会・文化、環境の 3 分野 120 の指標に見直され、期間が 12 年間となった。
OGI では、ベースライン・レポートを招致決定 2 年前(開催 9 年前)のデータをもとに大会 4 年前に作成し、大会前レポー
トを 2 年前に、開催時中間レポートを開催後 1 年以内に、最終レポートが開催 3 年後に変更されている。OGI では、調
査主体が OCOG のため、開催後の継続的モニタリングが不可能、比較データの種別や調査手法の不一致、精神文化側面
レガシーが手薄などの問題を抱えている。
オリンピック・レガシーのガバナンス研究の課題について
菅井 達哉(日本スポーツ振興センター)
2010 年バンクーバー大会や 2012 年ロンドン大会など近年のオリンピック・パラリンピック開催都市では、競技大会
に向けた準備段階から、
中長期的な戦略プランを持って大会後に開催都市・国に良いレガシーを遺すために政府によるリー
ダーシップやレガシー組織の設置・運営により具体的な取組みを行っている。
これらの国際的トレンドを読み解く際には、レガシーは自然発生的に起こるのではなく、オリンピック・パラリンピッ
クの開催決定を契機として、開催都市・国が、その統治構造の中でいかに施策を意思決定し、具体的・効果的な取組みを
制度化し実行に移すか、というガバナンスの問題と捉える必要がある。
2020 年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は、IOC により承認された立候補ファイルに基づき、競技会場
やインフラをはじめとした物理的なレガシーのみならず、スポーツ、教育、社会政策、環境等に関するソフトレガシーを
含むレガシーすべてについて評価と助言を行う『オリンピック・レガシー委員会』を設置するとしている。
本シンポジウムでは、近年の学識者によるオリンピック・レガシーのガバナンス研究の現状を紹介しつつ、2020 年に
向けた課題や『オリンピック・レガシー委員会』のあるべき姿について考察を深めて参りたい。
27
01 体育史
史
キーノートレクチャー
8月 27 日(水)
14:15-15:15 教育学部 E24
日本における女子体育教師史研究
司会:來田 享子(中京大学)
演者:掛水 通子(東京女子体育大学)
本レクチャーでは、明治初期から今日までの日本における女子体育教師史の全体像を体系的に明らかにする。
「女子体育」は女性観によって、男子の体育とは異なるものとして形成された。当初は外国人女性宣教師、男子体育教
師や体育を専門としない女子教師によって指導されていたが、女子体育教師の養成が始まり、次第に女子体育教師の手に
移っていった。1903(明治 36)年3月高等女学校教授要目の体操科の教授上の注意1で「體操ハ成ルヘク女教員ヲシテ
之ヲ教授セシムヘシ」と示され、女子教師のなかでも、特化した女子体育教師が教授するようになった。以後、女性観、
教育制度などの変遷とともにその役割を変化させながら存在してきた。しかし、女子体育教師が配置されない学校(例え
ば昭和 14 年高女の 18.7%)も残された。配置されても一校一人の場合が多く、男子体育教師との分業となり、女子体育
教師は中等学校では女子のみに課された唱歌遊戯や行進遊戯を受け持つことが多かった。国の施策が十分でなかったため、
女子教師から女子体育教師に特化する過程で、女子教師、体育教師から差異化されたと考えられる。次の項目順に述べて
いきたい。
1.
「女子体育」の形成
2.
「女子体育は女子指導者の手で」の考え方
3.女子体育教師誕生前後の女子体育を教えた教師たち
4.女子体育教師養成の始まり
5.女子体育教師の定着
6.明治期から昭和期旧制度期までの女子体育教師養成機関と体操科教員免許状取得者
7.女子体育教師の教育と職歴
8.男女共同参画社会における女子体育教師の役割
シンポジウム
8月 27 日(水)
15:30-17:30 教育学部 E24
スポーツの競技・種目史のこれまでとこれから―その意義と課題―
コーディネーター:鈴木 明哲(東京学芸大学)
【テーマ設定の主旨】
近年、体育・スポーツ史それぞれの研究領域は、拡散の度合いは薄めつつも、ある特定領域への深化が進行している。
中でもスポーツ競技史・種目史研究は 21 世紀に入ってから学位請求論文(博士)にまで結実するような高い研究成果を
着実に積み上げてきている注目すべき領域である。しかしながら、それゆえ個別のスポーツ競技史・種目史は深化しつつ
も、ますます微細な問題へと入り込み、ごく限られた学会員の関心対象に過ぎなくなっているのではないか。だからこそ、
スポーツ競技史・種目史研究の意義と課題を見直さなければならない。また、この問題はひとえにスポーツ競技史・種目
史研究に限定された問題ではなく、学位請求論文という重厚かつ微細な研究成果が求められる昨今、私たちの研究領域が
共有すべき問題であると思われる。とかく限定された研究テーマの中に埋没し、それを長年にわたり継続することを「是」
としがちな私たちの研究領域にとって、振り返りが必要とされるテーマである。
今回はスポーツ競技史・種目史研究に精力的に取り組み、そして一定の研究成果をあげてこられた 4 人の会員からコ
メントを頂戴するが、ここではスポーツ競技史・種目史研究への批判的まなざしを提起し、それに対して応えていただく
28
01 体育史
という明解なスタイルで進行させたい。
研究成果が袋小路に入り込んだようにますます微細となり、学会員の共通理解を得られにくいようなところに達してし
まった感があるスポーツ競技史・種目史研究は果たして体育・スポーツ史にとって意義ある研究領域として認識されてい
るのか。体育・スポーツ史という大きな枠の中で、どのような意味を有し、そしてどのような貢献をしてきたのか(これ
まで)
、あるいはこれからどのようにしていこうとするのか(これから)。素朴に投げかければ、なぜ「その種目」を継続
してきたのか、また継続していくのか。
史
スポーツ競技史・種目史研究の「これまで」と「これから」を往復しながら、4 人の会員から意義と課題に関する有益
な提言を引き出しつつ、フロアーとの意見交換を通して、私たちの「専門領域体育史」のみならず、体育科学・スポーツ
科学の進化の糧として行きたい。
種目史は通史認識の深化を促す−ホッケー史研究の成果から−
秋元 忍(神戸大学)
問題史研究を行うスポーツ史家は、
その問題との関連がほとんどないように思われるスポーツ種目をしばしば無視する。
これは方法論として当然のことかもしれない。しかしながら、特にイギリス近代スポーツ史研究において、検討されてき
た種目には顕著な偏りがあることが指摘されていることから、いまだ十分に語られていない種目に焦点を当てた歴史研究
は、問題史研究とは異なる視角から通史認識の深化に重要な貢献をなし得るはずである。本シンポジウムでは、はじめに、
上述した検討対象種目の偏りに起因するイギリス近代スポーツ史像形成の問題点について指摘する。続いて、近代スポー
ツ史像の再検討を促す可能性を含む、以下三点のイギリスホッケー史の研究成果を示す。1)アスレティシズム興隆期の
パブリックスクールにおけるホッケーの低調な実施状況。2)スポーツの組織化の展開期における、組織化されたホッケー
の様式(ユニオン・ゲーム)の制度的消滅。3)性による分離を前提とした通史認識からはこぼれ落ちてしまう、19 世
紀末以降の男女混合ホッケーの多様な展開。最後に、以上のホッケー史研究の成果を踏まえつつ、種目史研究の意義と課
題として、以下二点を主張することにしたい。1)スポーツ史研究の目的、効用が多義的なものであるとすれば、問題史
研究偏重に対する批判として、種目史研究には重要な意義を見出せる。2)問題史研究と同様に、種目史研究の成果は同
時代の全体状況の中に位置づけられるべきである。
スキー史を通してみたいもの
新井 博(びわこ成蹊スポーツ大学)
従来、スキーに関する歴史研究は、大凡世界的にみるとオーストリア、ノルウェー、ドイツ,日本、アメリカ、フランス、
イタリアといった国の順に多く行われてきたといえよう。しかし、内容的には多くの研究が通史、地方史、人物史、技術
史といったものが殆どである。特徴的な研究は総じて少ない。日本の場合においても、通史、地方史、人物史、技術史と
いった研究が多い。これらの研究のスタイルは、あくまでスキーに絞った歴史であり、大きなテーマとの絡みを問題にし
ている事は少ない。
これまでの自分の研究を振り返ると、地方史、人物史、産業史、テーマ別の歴史に取り組んできた。地方史の場合は、
福井県を中心とした北陸のスキー史、福井県大野のスキー史、樺太のスキー史といった内容である。人物史の場合は、レ
ルヒ、ヘルセット、桜庭留三郎、金井勝三郎、遠藤吉三郎といった人物に関する研究である。産業史の場合は、福井県の
スキー製造販売業、戦前の全国のスキー製造販売業者である。テーマ別では昭和初期のスポーツ振興についてスキーの側
面から眺めている。これらの背景は、地方史の視点、用具とスポーツの関係、文化史の視点を念頭に置いている。
29
バスケットボール史の観点から
及川 佑介(東京女子体育大学)
史
1. はじめに
1891 年にアメリカで生まれたバスケットボールは、1894 年には我が国に伝えられ、遊戯的(学校教材)
、競技的要
素を含みながら浸透していった。それから約 120 年経た現在では中学校・高等学校での男女の部活動数を合計した場合、
種目別にみると我が国でバスケットボール部が最も多くなっている。このように日本で人気種目となった要因の一つとし
て黎明期のバスケットボール史があると考えている。
2. これまでのバスケットボール史研究
我が国におけるバスケットボール史研究は、遊戯史、女性史、人物史・思想史、組織史、ルール史、技術史といった観
点で行われてきた。日本には成瀬仁蔵がバスケットボールを女学校の教材として用いたことが関係したのか、バスケット
ボール史研究では輿水はる海や谷釜了正らによる遊戯史研究、女性史研究からはじまった。続いて、アメリカのバスケッ
トボール史研究を中心に行った水谷豊と大川信行は、人物史・思想史、組織史、ルール史、技術史と網羅的に研究を進め
た。彼らの研究成果を追うような形で、現在のバスケットボール史研究があり、その数が増えているのは、水谷豊と大川
信行の研究が基盤になったからと考えられる。
3. これからのバスケットボール史研究
これまでのバスケットボール史研究では、技術史研究の方法論を確立して来なかったように思える。それは、技術史に
関する論文数や書籍の数が少ないことからも窺い知ることが出来る。技術史研究では、指導書や戦評、回顧録、ルール等
を資料に用いる他、当時の競技者の技術や戦術に関する認識の違いや用具・コートの変化、輸入スポーツであるための指
導書の用い方など、組み合わせて検討する必要があると考える。従って、それらを整理し、ある定めた枠の中で、技術・
戦術をみて行かなければ、技術史の研究として成立しないと考えている。これからのバスケットボール史・スポーツ種目
史は、技術史研究の方法論を確立することで、深化させることが出来るように思える。
4. おわりに
テックス・ウィンター『バスケットボールトライアングルオフェンス』(大修館書店、2007.7)が比較的最近に翻訳が
出版された。この書籍には、著者によるバスケットボールのトライアングルオフェンスというシステムプレーの一つが紹
介されている。著者にバスケットボール・システムプレーを教えたのがサム・バリーであった。サム・バリーのシステム
プレーは、1933 年頃に「バリーシステム」と称され、日本バスケットボール界の競技力向上には重要課題とされた戦術
であった。この書籍の監訳者である笈田欣治は、システムプレーについて「もう一度考える機会を持ってほしい」と述べ
ている。このように、我が国バスケットボールの黎明期には、技術・戦術をはじめ、組織作りなど、現在のバスケットボー
ルを考える上でのヒントがあるように思える。
日本テニス史研究の課題と可能性
後藤 光将(明治大学)
[日本テニス史研究の特徴] 近代テニスは、1873 年に英国のウィングフィールド少佐により発明された「スファイリス
ティーク(ローンテニス)
」を起点として全世界に広まったことは周知の事実である。近代テニスの日本への伝来の起源
に関する研究には、表孟宏の『テニスの源流を求めて』が挙げられる。表は、「いつ伝来したか」という視点で多岐に渡
る説を検証することは困難であると指摘しながらも、「継続的なテニス活動がいつ胎動し始めたか」という視点では、明
治 17 年の高等師範学校としている。伝来当初のテニスボールは、明らかに硬球であったが、明治 20 年前後から硬球の
代わりに玩具用のゴムマリが用いられるようになった。大正期に入るまで「日本のテニス」と言えばゴム球を用いたテニ
ス(ソフトテニス)を指した。日本のテニス史の特徴の一つに、硬軟の 2 種のテニスが複線的に発展し、これらが互い
に絡み合っている点が挙げられる。現在も硬式テニスは中学校体育連盟に未加盟である。これは現在のソフトテニスとい
う存在の形成には、明治中期から戦前期まで学校課外活動としての「テニス」の定位置を占めていたことに起因する。こ
れは、軟式野球と硬式野球と類似した関係ともいえる。
[種目史研究の 3 つのアプローチと可能性]
現在の日本テニス史研究は未だに整理されていない資史料が数多く存在し、
未だに発展途上の分野である。裏を返せば、それだけ研究対象として一定の価値はあると考えられる。私が考える種目史
研究の方向性には、次の 3 つのアプローチが必要と考える。1)組織を中心とした制度史的アプローチ、2)ルールの変
30
01 体育史
遷とその背景を読み解くルール史的アプローチ、3)写真・動画・用具を資史料として用いる技術史的アプローチである。
特に 3 つめの技術史的アプローチは、種目史に科せられた重要な役割と考える。より普遍的で科学的な方法論の確立を
目指すためにも、他競技の種目史研究はもちろんのこと、哲学・運動学・社会学など周辺領域学問分野の解釈・視点など
を利用する必要もあろう。
一般的に種目史は、体育史研究の中でも詳密な領域であることは間違いない。詳密な領域であるからこそ、他領域に援
用できるデータベースとしての役割を担うことも重要と考える。将来的には、体育史に留まらず様々な研究分野に発信で
史
きる役割を担う可能性もあると考える。
31
哲
史
社
心
02 体育社会学
シンポジウム
8月 28 日(木) 10:00-12:00 農学部 ぽらんホール
わが国におけるメガスポーツイベントの社会文化的意義と課題
コーディネーター:高橋 義雄(筑波大学)
〈趣旨〉
2013 年 9 月 7 日、東京が立候補している 2020 年夏季五輪・パラリンピックの開催地が決定する。これまでメガスポー
ツイベントの誘致・開催については、経済発展の手段として語られる一方で、その社会文化的意義や課題について論じら
生
バ
経
発
測
方
れることは少なかった。しかし、近年の五輪開催においては、レガシー(遺産)論を含め、その社会文化的意義が強調さ
れるようになってきている。例えば、2012 年のロンドン五輪・パラリンピックの特徴は、十全な政府の関与とレガシー
政策、障がい者スポーツの発展、スポーツが喚起する力の幅広い利用(持続可能性、教育、ボランティア、ビジネス、文
化等など)にあったとされる。ただしここで重要なのは、そこには従来のスポーツ組織の機構改革を含む、体育・スポー
ツ分野の制度的改編が行われていたことである。メガスポーツイベントを誘致・開催することが、誰にとって、いかなる
社会文化的意義をもつのか、これを契機に静かに動き出す(動き出している)ものは何か。かりに、五輪・パラリンピッ
クが開催された場合には何がどう具体的に変わるのか。本シンポジウムでは、体育・スポーツ界への中長期的影響を中心
に、メガスポーツイベントが有する社会文化的意義と課題について検討することを目的とする。
<オリンピックの遺産>の社会学-メガイベント研究の課題-
石坂 友司(奈良女子大学)
近年スポーツにおけるメガイベント研究が注目され始めている。日本においては 2020 年の東京オリンピック・パラリ
ンピックの招致・開催決定がきっかけとなっていることは言うまでもない。そもそもメガイベントについて考えるとき、
万博とオリンピックや FIFA・W 杯をはじめとしたスポーツ・メガイベントとの相違、そしてイベントごとの特殊性に注
目することが重要である(その意味において本報告ではあえてスポーツ・メガイベントと表記する)。例えば万博の付随
的位置づけにあったオリンピックは、
ここ数十年で世界最高のメガイベントとして成立するにいたった。これにともない、
立候補・開催都市の傾向にも大きな変化が見られ、オリンピックは新たなステージに突入したと考えることができる。で
保
はオリンピックが都市や国にもたらすと期待される新たな価値とはどのようなものであろうか。
オリンピックでは IOC が Legacy という概念を導入し、遺産の創造(= 伝統の発明)が行われている。そこでは開催(立
候補)都市を通じた、正(ポジティブ)の遺産のみに焦点があたり、負の遺産とも呼ぶべきものが覆い隠される事態が生
教
じている。この両者を同時にとらえる視角こそが必要である。
また、経済学を中心に展開されてきたこれまでのメガイベント研究は、経済的インパクトが主要な関心となり、当該地
域への社会的・文化的影響に関する視点を欠落させてきた。そこで生み出される施設やインフラ整備の効率性や無駄の存
人
ア
介
32
在が短期的には示されるものの、イベントが過ぎ去ってしまえば関心の外に置かれてしまう。そのようなイベントが地域
にもたらす長期的な影響の測定こそが追求されなければならない。
そこで本報告では、東京大会の開催を控えて、スポーツ・メガイベント(特にオリンピック)の開催が都市(地域)や
国にとってどのような意味をもち、また影響を与えるのかについて、1964 年の東京オリンピックや 1998 年の長野オリ
ンピックを参照しながらアプローチしていくことにしたい。
02 体育社会学
企図されたレガシー:ポスト・オリンピックの英国スポーツから
大沼 義彦(日本女子大学)
2013 年 9 月 8 日、IOC は 2020 年オリンピック・パラリンピックの東京開催を決定した。前後して、大会開催の経済
効果が叫ばれ、
またその後のレガシー(遺産)が社会文化的意義として称揚されてきた。しかし、このレガシーについては、
未だ研究のフロンティアである事に変わりがない(石坂・松林 2013)。体系的な実証研究の蓄積が進んでいないためで
ある。ただ、2012 年のロンドン大会や 2008 年の北京大会をみても、ポスト・オリンピックを見据えた競技施設配置や、
五輪開催を契機にスポーツ振興や健康づくりを進められてきていることは確かである。これを企図されたレガシーと呼び
たい。本シンポジウムでは、2012 年ロンドン大会に関連する文献等をレビューしながら、その企図されたレガシーの課
題について考えてみたい。
第一は、財政的課題である。オリンピック開催前の競技スポーツへの投資の増大や英国のスポーツ政策については、す
でに山本(2008)によって示されている。が、そのスポーツ分野への投資の行方は不透明感が残されていた。ある意味
2012 年までは聖域化されたが、その後はどうなるかという点である。また国家の役割の増大をどう考えるのかという課
題も指摘される。第二は、
社会的なスポーツ振興策の行方である。日本でいう学校体育、社会体育分野の機構改革やスポー
ツ振興が促進された。そこでは、学校と地域スポーツクラブとの連携がなされ、一流競技スポーツ選手養成というだけで
哲
史
社
心
生
なく、困難を抱えた地域に対するスポーツ支援や学習プログラムの開発(例えば、Playing for Success)なども後半にな
されていた。さらに障害者スポーツ、パラリンピックの開催についてもここに加えることができる。
こうしてみると、ロンドン大会で企図されたのは、競技スポーツ成績の改善だけではなく、コミュニティレベルのス
バ
ポーツ基盤の強化であったことがわかる。転じて東京 2020 の明日には何が見いだされるのか、という問いも浮上する。
2020 年の先にあるものの在/不在も含め、それが何を意味するのかも考えてみたい。
五輪開催のレジェンド~何を作り、残すべきか~
広瀬 一郎(スポーツ総合研究所 株式会社)
ここでは「メガ」の定義をとりあえず「社会的に大きな影響を持つ巨大な」としておき、
「2020 年の五輪開催に向け
て何をすべきか」という具体的な課題として、
「競技以外」に絞って検討を試みる。
経
発
測
第一に「都市計画」である。五輪開催都市は、例外なく大都市である。今日では大都市の都市計画は、リノベーション
的な意味を持つ。大都市であれば、既得権益が何重にも重なっているはずだから、「いざ」となると「甲論乙駁」で実施
に至るまでにかなりのエネルギーと時間がかかるだろう。「五輪開催」は、何よりもこの(ある意味では無駄な)時間と
エネルギーを省くことを可能にする。何しろ大都市のリノベーションには「決断」が必要である。
決断は、トレードオフ関係にある課題が複数存在する際に必ず必要になる。優先順位を決め、「しないこと」を決める
作業でもある。将に「戦略的対応」が求められる。「戦略」も「決断」も、従来の我が国が致命的に劣っているとされて
きた領域である。そして、
「決断」は共同体をベースにした「コンセンサス」型の決定方式とは相反し、確固たるリーダー
シップが必要である。パラダイムが変化しつつある今日の世界では「戦略」と「決断するリーダーシップ」が不可欠であ
る。非常時にリーダーシップを欠くと、被害が甚大になる点、身を以て(十分過ぎるほど)学んだはずだが、我が国は未
だにリーダーシップを育成するシステムを見いだしていない。
内部に決断能力が備わっていなければ、外圧に頼るしかない。これは企業でも社会でも同様である。五輪開催に伴って
発生する外生的な要請により都市インフラの整備に成功し、その後の経済成長に結びつけたのは、1964 年の東京五輪を
もって嚆矢をする。もっとも、この成功は「構造的な問題」の解決には至らず、今日を迎えてしまったとも言えるのだが。
方
保
教
人
「場当たり的」な対応に終始して、何とか凌いできた我が国の構造的な欠陥を解決する鍵が、「人材教育」であることは
論を待つまい。この点、
「スポーツマンシップ教育」に期待できるし、すべきであるである。「リーダーシップ育成はスポー
ツの場で」は、近代スポーツの故国の英国や米国では常識の範疇である。これが筆者の考える第二の効果であり、都市計
ア
画よりもむしろ戦略的な意義は深いと思う。
介
33
哲
史
社
心
生
バ
経
03 体育心理学
キーノートレクチャー1
8月 27 日(水) 13:00-14:00 工学部 テクノホール
体育・スポーツにおけるリーダーシップの心理学:海外研究の動向
司会:磯貝 浩久(九州工業大学)
演者:町田 萌(順天堂大学)
リーダーシップは、ビジネスや教育など様々な場面で、パフォーマンスや学習に影響を与える重要な要因として盛んに
研究がなされてきた。リーダーシップとは一般的に、個人が集団の掲げる共通目標を達成するのに影響を与えるプロセス
であると定義されている(Northhouse, 2001, p.3)。体育・スポーツ心理学でも、リーダーシップはひとつの大きな研究
領域として確立されて久しい。
ここでは、まず、体育・スポーツにおけるリーダーシップの心理学の海外研究の動向を追う。これまでの体育・スポー
ツにおけるリーダーシップ研究のほとんどは、コーチや監督といったスポーツ指導者のリーダーを対象にしたものであっ
た(e.g., Chelladurai & Saleh, 1980; Feltz et al., 1999)。しかし、最近になり、アスリートのリーダーシップについて研究
が行われるようになり(e.g., Loughead et al., 2005; Voelker et al., 2011)、キャプテンなどチーム内で影響力を持つアス
リートのリーダーは、スポーツ指導者のリーダーとは異なった影響を与える可能性が報告されている(Moran & Weiss,
2006; Price & Weiss, 2013)。スポーツ指導者のリーダーシップのみでなく、合わせて、アスリートのリーダーシップに
関しての研究の動向も見ていく。
また、発表者の国内外におけるリーダーシップに関する研究も紹介し、これからの体育・スポーツにおけるリーダーシッ
発
プ研究の課題を考える。発表者は米国大学の女性体育局員やアシスタントコーチを対象にした研究、日本のスポーツ指導
者を対象にした研究を行ってきた。また現在は、日本の大学スポーツチームを対象に、アスリートのリーダーシップに関
する研究を行っている。発表者の一連のリーダーシップに関する研究結果を参考に、未来の体育・スポーツにおけるリー
測
方
ダーシップ研究の方向性について検討を行う。さらに、発表者の米国、日本での研究・教育経験を経ての、スポーツ指導
者教育、リーダー教育に関しても提言をする。
シンポジウム
保
教
8月 28 日(木)
9:30-11:30 工学部 テクノホール
チーム力の研究:その視点と方法を探る
司会:佐々木 万丈(日本女子体育大学)
〈趣旨〉
昨年度の体育心理学専門領域シンポジウムでは、近年、日本人選手の活躍と共に語られることが多くなっている「チー
人
ム力」が取り上げられ、チーム力構築のためのコーチング事例やメンタルサポート、さらに組織心理学における階層的人
間関係の視点などから、
「チーム力」の育成方法が議論された。言わば、臨床的研究の視点から「チーム力」に迫ったシ
ンポジウムであった。本年は、引き続き「チーム力」に着目するが、そのアプローチとしては、実証的に行われる基礎的
ア
介
あるいは応用的研究の視点に立つことを考えた。最近のスポーツ集団に関する研究では、集団のパフォーマンスを予測す
る試みとして、様々な新しい視点や方法が用いられている。したがって、その成果や今後の課題を検討しておくことは、
「チーム力」の育成や効果的な発揮方法を明らかにする上で意義があると考えられる。
そこで、本シンポジウムでは3名のシンポジストにご登壇頂き、その報告をふまえて、これからの「チーム力」研究の
視点と方法を探ることにした。はじめに、スポーツチームの集団効力感などをテーマにチームパフォーマンスを研究され
ている河津先生に、最新の研究成果を報告して頂く。次に、力学系の視点からチームパフォーマンスを研究されている横
山先生に、「生きている」現象としての「チーム力」についてご報告を頂く。最後に、一般的な視点から、集団心理学が
34
03 体育心理学
ご専門の飛田先生に、
「チーム力」を考える上で重要になると考えられる集団に関連する心理的・組織的要因を整理して
頂き、その検討の視点などを指摘して頂く。
昨年のシンポジウムでキックオフされた「チーム力」研究が、今回のシンポジウムを経て、実践と研究との間の活発な
交流へと結びついていくことを期待する。
スポーツチームにおけるチームパフォーマンス予測モデル
河津 慶太(九州大学)
哲
史
社
「チーム力」
のようにチームが発揮するものとして一般的にも広く知られているのが「チームワーク」である。山口(2008)
は従来の研究で指摘されていることを整理し「チームワークとは、チーム全体の目標達成に必要な協働作業を支え、促進
するためにメンバー間で交わされる対人的相互作用であり、その行動の基盤となる心理的変数をも含む概念である。
」と
心
定義づけている。
この定義に基づき、我々はチームワークの行動的側面と心理的側面に注目しながらチームワークの下位概念を選定し、
これらのチームワーク下位概念を含んだチームパフォーマンス予測の仮説モデルを設定し、モデルに含まれる概念間の関
生
係や、それらの概念とチームパフォーマンスとの関係を分析した、その結果、チームワークの心理的な側面が、メンバー
の試合中の行動やチームパフォーマンスに影響を及ぼすことが明らかになった。また、試合以外の活動の中でのメンバー
行動が、チームワークの心理的な側面に影響を及ぼすことも明らかになった。この成果は、チーム作りの現場において、
バ
そのターゲットや介入後の評価を明確にすることに貢献できると考えられる。
本発表では、これまで我々が行ってきた研究成果を「チーム力」の観点から述べる。また、今後どのように「チーム力」
というものを研究していくか、我々の研究の課題点等を挙げながら述べていく。
力学系としてみたスポーツの「チーム力」
経
発
横山 慶子(工学院大学)
チーム内のメンバーが互いの能力を引き出し合い、予想以上の力を発揮したとき、高い「チーム力」を感じる。つまり
「チー
ム力」
とは、
構成メンバーが有する個の能力の単なる総和ではなく、メンバー間の関係性によって創られる集団の力であり、
さらに一般化すれば「多数のヒトの社会的相互作用によって創出される集団的挙動」といえるだろう。このような整理は、
「生きている」現象の時間発展の仕組み(ダイナミクス)を捉える力学系の視点によるものである。私はこうした視点から、
集団スポーツで繰り広げられるプレイヤーの時空間的な動きを計測・解析することで、プレイヤー間の連携や駆け引き(社
会的相互作用)により創出される、チームのリズムやゲームの流れ(集団的挙動)の仕組みの解明に取り組んでいる。特
に、チームの組織性に関連する検討課題では、同時に複数のプレイヤーの空間的な位置関係に気づき、先を見越して動く
ことの重要性や、パスの受け渡しの起点となるリーダー的なプレイヤーがゲーム状況に応じて交代することの重要性が示
唆された。これらは、動きのデータから示唆された結果であるが、例えばチーム内の雰囲気がゲームでのチームとしての
動きに影響することがあるように、個人レベルでの「動き」と「こころ」の非分離性が集団レベルでも存在すると仮定す
れば、メンバー間の心理的な距離関係の構築やリーダーの役割といった、いわゆる「チーム力」の強化にも関連づけられ
測
方
保
教
る結果と考えている。
力学系の視点から、スポーツする集団を「動き」と「こころ」の両側面から検討し、それらの接点を探ることで、「多
数のヒトの社会的相互作用によって創出される集団的挙動」の新たな理解が得られるかもしれない。当日は、上で紹介し
人
た研究成果に加えて、非線形性や自己組織性、階層性、自己相関性、カオスなど、多くの「生きている」現象に共通する
仕組みを手掛かりに、
「チーム力」を整理してみたい。
ア
介
35
グループ・パフォーマンス研究から「チーム力」を考える
哲
史
社
心
生
飛田 操(福島大学)
グループ・ダイナミックス研究において、集団によるパフォーマンスは、古くからの中心的な研究テーマであり、これ
まで多くの知見が積み重ねられてきた。本シンポジウムで取り上げる「チーム力」との関連では,以下の論点が重要とな
ろう。
(1)集団によるパフォーマンスは、集団成員の個人的な課題関連能力や資源によって大きく影響される。もちろん課
題関連能力が高い成員からなる集団のほうが優れたパフォーマンスを示す。この意味で、「チーム力」を向上させるため
には、成員ひとりひとりの力量の向上が必須である。
(2)集団によるパフォーマンスは、集団が取り組んでいる課題の性質や状況によって大きく影響される。課題の構造
がクイズ問題のようなものであるならば、集団成員の中に、ひとりでも正解に達する成員が存在すれば、その集団は正解
することができる。この課題構造の下では、集団によるパフォーマンスは、集団内の最も優秀な成員の課題関連能力に依
存する。一方で、チームによる登山のような課題では、集団によるパフォーマンスは、集団内の最も優秀でない成員の課
題関連能力に依存することになる。すなわち、
「チーム力」は、集団が取り組んでいる課題の構造に大きく左右される。
(3)集団によるパフォーマンスは、集団過程によって大きく影響される。集団が優れたパフォーマンスを挙げるため
には、「足の速い成員を1番に、長打力がある成員を4番に」といったように成員が保有する課題関連能力に応じて集団
バ
を体制化していく必要があり、この過程で、地位や役割が分化していく。この過程にともない、成員相互の異質性が顕在
化する。この異質性の顕在化により、成員相互のコミュニケーションや合意形成が困難となり、集団凝集性が低下する可
能性が高まる。「チーム力」向上のためには、異質性が顕在化する過程で、等質性を構築するためのリーダーシップの試
経
発
みが重要な影響を与える。
以上のことを踏まえ、
集団によるパフォーマンス研究の視点から、改めて「チーム力」について検討してみる予定である。
キーノートレクチャー2
測
方
8月 28 日(木)
13:20-14:20 工学部 テクノホール
体育学習における動機づけ研究の課題
司会:土屋 裕睦(大阪体育大学)
演者:伊藤 豊彦(島根大学)
体育学習における動機づけの問題は、児童・生徒の学習行動を説明し、理解し、あるいは促進させる上で重要な意味を
保
教
人
ア
介
持っていることから、これまで、認知、感情、欲求、環境などに着目した多くの動機づけ理論が提唱され、検討されてきた。
しかしながら、実際の授業場面では、児童・生徒個々人の動機づけは教師や仲間などの重要な他者から影響を受けてい
るだけでなく、協同学習や評価の在り方など多様な要因が相互に関連して進められることから、動機づけ理論に基づく研
究は授業実践に十分な貢献をしてこなかったという指摘がある。
たとえば、動機づけ理論の実践場面への適用の難しさを指摘したブロフィ(2011)は、動機づけ理論が自ら選択した活
動を自由に行う場合に最もあてはまるのに対して、①学校の出席は義務であること、②教師は多くの児童・生徒への対応
を求められること、③教室での失敗が個人的落胆や社会的困惑をもたらす社会的状況であること、④成績やパフォーマン
スが序列化されること、などを指摘し、学習場面の動機づけを考える上で、理論的な研究だけでなく、カリキュラムや時
間など、様々な現実の制約や多様な背景を持つ教室場面の特質を考慮する必要があることを指摘している。
一方、最近の主要な動機づけ理論である達成目標理論(Achievement Goal Theory: AGT)と自己決定理論(SelfDetermination Theory: SDT)では、それぞれ動機づけ雰囲気や自律性支援的行動など、学習を取り巻く環境要因の影響
を重視するという新たな視点を提供している。環境要因の重視の背景には、行動主義から認知的構成主義、あるいは社会
的構成主義という学習観・教育観の変化(鹿毛,2010)があると思われるが、これまでの個人への働きかけを重視して
きた動機づけ研究に、環境への働きかけという視点が加わることで、新たな成果が期待できる。
本キーノートレクチャーでは、動機づけ理論を概観した後、自らの研究を反省的に振り返りながら、体育学習に貢献す
る動機づけ研究の課題・方向性について、①ボトムアップ型研究、②動機づけに影響する環境要因、③交互作用的視点、
④体育学習における目標の多様性、などの観点から言及する予定である。
36
04 運動生理学
04 運動生理学
哲
シンポジウム
8月 27 日(水)
10:00-12:00 センターA棟 G2 大
高強度運動が骨格筋の代謝に及ぼす影響
司会:武政 徹(筑波大学・体育系)
〈趣旨〉
高強度の運動を行う際、短時間で爆発的なエネルギーを必要とする骨格筋では、嫌気的に ATP を産生するための様々
史
社
心
な分子カスケードが働き、その供給にあたる。日常生活(低強度の運動)では起こりえない反応が活性化するため、大量
の代謝産物も生じて、時にそれがパフォーマンスに影響を与え、アスリートにとっては悩ましい問題となる。
本シンポジウムでは骨格筋の嫌気的代謝産物の代表であるアンモニア、乳酸などに注目し、高強度の運動によりそれら
がどのように生成するのか、また長期間のトレーニングにより生体はどのように効率よくそれらを処理できるようになる
のかについて考えたい。高強度運動に対する生体の適応反応について、マウスやサラブレッドなどを使って分子運動生理
学的な解析を行った結果をシンポジストに提示していただく。
運動時のアンモニア代謝とパフォーマンス
生
バ
経
武田 紘平(筑波大大学院・人間総合科学研究科・体育科学専攻)
運動時の疲労はパフォーマンスに大きく影響する。疲労要因の一つに挙げられるアンモニアは運動時に骨格筋で生成さ
れる代謝産物であり、中枢性・末梢性疲労の両方に関与し、パフォーマンス低下を招いている。これまでの報告で、運動
を行うことで血中アンモニア値が上昇すること、また継続したトレーニングを行うことで血中アンモニア値の上昇が抑え
られることが明らかとなっている。しかし、骨格筋でのアンモニア代謝については不明な点が多く、運動やトレーニング
が骨格筋内のアンモニア代謝にどのような影響を与えるのかについても明らかとなっていない。疲労とパフォーマンスの
関係を考えると、骨格筋内でどのような因子がアンモニア代謝に関係しているか、運動やトレーニングがそれらの因子に
どのような影響を与えているかを検討することは非常に重要である。そこで、骨格筋内のアンモニア代謝に関連する因子
の動態について、マウスに対する一過性高強度運動、6 週間の異なる強度のトレーニングが与える影響を分子生物学的観
発
測
方
点から解析した。本講演ではこれらの実験で得られたデータを紹介し、運動時の骨格筋のアンモニア代謝、また一過性運
動や長期間のトレーニングがアンモニア代謝に関係する因子やパフォーマンスに与える影響について考える。
高強度運動が骨格筋の解糖的代謝に及ぼす影響
阿部 貴晃(東京大学大学院・農学生命科学研究科・水圏生物科学専攻)
高強度インターバルトレーニングやレジスタンストレーニングを始めとした高強度運動は、競技者の無酸素的代謝容量
(Anaerobic Capacity) を増大させ、パワー、スプリント系のパフォーマンス向上に繋がる。高強度運動による無酸素的代
保
教
人
謝容量の増大には骨格筋の解糖的代謝能力の亢進が関わっているとされており、高強度運動を繰り返し実施することで骨
格筋の筋グリコーゲン貯蔵量の増加、解糖系酵素活性の上昇がみられることが報告されている。
高強度運動が引き起こす筋グリコーゲン貯蔵量の増加や解糖系酵素活性の上昇には、グリコーゲン合成や解糖系に関わ
ア
る遺伝子の発現量上昇が関与していることが考えられるが、これらの遺伝子発現を制御するメカニズムについては、十分
な知見が得られていない。
高強度運動による解糖系亢進に関与する因子として、c-Myc (c-Myelocytomatosis oncogene) や Rip140 (Receptorinteracting protein 140)、Hif-1α (Hypoxia inducible factor-1 α ) といった転写因子が挙げられているが、運動モデルに
介
よる検証は十分に行われておらず、仮説のみにとどまっている。そこで、本研究室では強制泳運動モデルを用いて高強度
37
哲
史
社
運動が骨格筋のエネルギー代謝、特に解糖系に与える影響を分子運動生理学観点から調べている。この講演では、高強度
運動が骨格筋の解糖的代謝に及ぼす影響を、これまでの研究と本研究から得られた結果を合わせて論じる。
運動時の乳酸代謝〜グリコーゲン代謝の遺伝性疾患からサラブレッドまで〜
北岡 祐(東京大学大学院・総合文化研究科)
古くから信じられてきた「乳酸は運動パフォーマンスに悪影響を及ぼす疲労物質である」という考えは、2006 年の
Journal of Applied Physiology 誌で ”Lactic acid accumulation is an advantage/disadvantage during muscle activity” と
いう記事が、さらに 2011 年の Experimental Physiology 誌では ”Lactate: metabolic fuel or poison for racehorses?” とい
心
う記事が誌面を賑わせたように、近年の研究によって疑問視されてきている。運動時に骨格筋で産生される乳酸は、そ
こに溜まるだけの老廃物ではなく、またコリ回路(肝臓での糖新生)の基質となるだけの代謝産物でもなく、ミトコン
ドリアで酸化される重要なエネルギー源となる。乳酸の代謝にはそのトランスポーターであるモノカルボン酸輸送担体
生
(Monocarbocylate transporter: MCT)が重要な役割を果たす。骨格筋には 2 種類の乳酸トランスポーター(MCT1 と
MCT4)が存在し、これらのタンパク質量はトレーニングによって増加することが知られている。乳酸と運動パフォーマ
ンスや疲労との関係を考える上でヒントとなる可能性のある事例として、本シンポジウムでは、運動時に血中乳酸濃度の
バ
経
発
測
変化が起こらないマッカードル病(糖原病Ⅴ型)と、30 mM 以上にまで達するサラブレッドを取り上げて紹介する。
キーノートレクチャー
8月 27 日(水)
13:00-14:00 センターA棟 G2 大
運動と動脈硬化度
司会:西平 賀昭(筑波大学)
演者:前田 清司(筑波大学)
「ヒトは血管とともに老いる」という William Osler 博士の有名な言葉があるように、加齢に伴って大動脈などの中心
動脈の硬化度は増大し、老化していく。動脈硬化度の増大は、心血管疾患の独立した危険因子となる。従来、動脈硬化度
方
保
教
人
の増大は老化現象の一つと考えられていたため、定期的な運動が動脈硬化度に影響を及ぼす可能性については注目されて
いなかった。しかし、定期的な有酸素性運動には動脈硬化度を低下させる効果があることが明らかになり、運動習慣の重
要性が認識されるようになった。定期的な有酸素性運動が動脈硬化度を低下させる効果は若年者から高齢者までどの年代
でも検証されており、また高齢者では比較的低強度の有酸素性運動であってもその効果が認められている。一方、介護予
防などに有効である筋力トレーニングも動脈硬化度に影響を及ぼすことが明らかにされている。興味深いことに高強度の
筋力トレーニングは動脈硬化度を増大させることが示されている。しかし、健康の維持・増進や生活習慣病の予防・改善
などを目的として行われる中等強度の筋力トレーニングは動脈硬化度を増大させないことが明らかになっている。これら
のことから、有酸素性運動と筋力トレーニングでは、それぞれが動脈硬化度に与える影響は異なると考えられる。
近年になり、定期的な有酸素性運動が動脈硬化度を低下させるメカニズムの一部が明らかになってきた。血管内皮細胞
が産生するエンドセリン -1 や一酸化窒素(NO)は、有酸素性運動による動脈硬化度低下のメカニズムに関与している可
能性が示されている。また、定期的な有酸素性運動により、動脈の炎症が抑制されることで、動脈硬化度が低下する可能
性も示唆されている。さらには、抗老化因子として注目されている Klotho が、定期的な有酸素性運動による動脈硬化度
低下のメカニズムに関与している可能性も考えられている。一方、高強度の筋力トレーニングが動脈硬化度を増大させる
ア
介
38
メカニズムには、エンドセリン -1 や酸化ストレスが関与している可能性がある。本キーノートレクチャーでは、定期的
な運動が動脈硬化度に及ぼす影響とそのメカニズムに関する知見を中心に紹介する。
05 バイオメカニクス
05 バイオメカニクス
キーノートレクチャー
哲
8月 27 日(水)
13:00-14:00 センターA棟 G1 大
スキージャンプのバイオメカニクス的研究
司会:平野 裕一(国立スポーツ科学センター)
演者:山辺 芳(国立スポーツ科学センター)
スキージャンプの動作をスタートから着地まで概観すると、まず助走路を滑走し(助走局面)、助走路の終端付近で踏
み切り動作を行い(踏み切り局面)
、その後空中に飛び出し(飛行局面)、着地する(着地局面)という経過を辿る。これ
らの局面のなかで、スキージャンプの飛距離に影響を及ぼすと考えられている 3 局面(助走、踏み切り、飛行局面)の
技術的要因を以下に挙げてみる。
まず、助走局面においては、低くしゃがみ込んだ姿勢(クラウチング姿勢)を取ることで空気抵抗をできるだけ小さく
し、大きな助走速度(およそ 90km/h)を獲得することが重要となる。
次に、踏み切り局面においては、その後の飛行局面の飛行軌跡を高くするため、股関節および膝関節の伸展によって、
身体重心に大きな上昇速度を与えることが課題となる。この上昇速度は、踏み切り動作による床反力(助走路に対して垂
直方向の力)の積分値、すなわち力積で決定されることを考慮すると、踏み切り局面において大きな上昇速度を獲得する
ためには、大きな力積を得ることが必要であることが分かる。さらに、踏み切り局面では、身体を前傾させた飛行姿勢に
素早く移行するため、身体重心周りに前回り方向の角運動量を与えておく必要がある。一方で、股関節および膝関節の過
史
社
心
生
バ
経
剰な伸展による空気抵抗の増大によって、助走局面で得られた速度を減少させないような工夫も必要とされる。
最後に、飛行局面においては、その飛行軌跡が一つの鉛直面上であると仮定すると、飛行中の選手に作用する力は重力
と、空気から受ける揚力、抗力およびピッチングモーメントのみである。これらの空気力の大きさは飛行姿勢によって決
発
定されることを考慮すると、飛距離を最大化するためには、これらの空気力を最適化すべく姿勢制御を行うことが必要で
あることが分かる。
これらのいずれの局面においても、技術的課題は選手に作用する空気力の影響を受けていることを考慮すると、各局面
測
の技術を評価する際にも空気力学的視点が必要となる。本講演では、一流スキージャンプ選手の技術分析および風洞実験
施設を用いた技術評価・トレーニングの現状について紹介する。
方
保
教
人
ア
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39
哲
史
社
心
06 体育経営管理
キーノートレクチャー
8月 27 日(水)
10:00-12:00 センターB棟 GB32
スポーツをみる力とこれからのスポーツ振興
司会:浪越 一喜(帝京大学)
、出口 順子(東海学園大学)
〈提案趣旨〉
我が国のスポーツ振興において、スポーツへの関わり方の文化的多様性が強調されるようになり、その一つとしてみる
スポーツについても推進していくことが強く求められている。特に 2020 年東京オリンピック・パラリンピック開催に向
生
バ
経
発
け、国民の鑑賞能力を高め、より楽しくより感動的にオリンピック・パラリンピックを観戦できるようになることが期待
されるであろう。
豊かなスポーツ生活実現のために重要な
「みる」
視点を含む、文化的な生活が近年重要であるといわれる。表現は雑だが、
音・美・体と言われる人生を豊かにする教科にあっては、小学校学習指導要領において、
「音楽」及び「図画工作」では
第 1 学年より、基礎的な鑑賞能力の育成が目標となっており、音楽(第 5・6 学年)を例に挙げるならば、曲想とその変
化など特徴を感じ取って聴くこと、音楽を形づくっている要素の関わり合いを感じ取り、楽曲の構造や特徴を理解するこ
と等である。一方、教材として用いられているスポーツではどうだろうか。ルールを理解してみること、ひいきのチーム
や選手を応援したり、その雰囲気を味わうこともスポーツをみることの楽しさには違いないが鑑賞に値するとは言えない
のではないだろうか。
そこで、本シンポジウムでは、
「スポーツをみる力」に焦点を当て、スポーツをみる力とはどのような能力なのか、み
る力を考慮した番組づくりはどのように構築することがよいか、みる力を養成するにはどのような具体的な方策が求めら
れるかについて検討したいと考えている。
測
方
保
教
みる力とはどのような能力か
齊藤 隆志(日本女子体育大学)
「みる力」の議論をするには、みるスポーツを文化価値創造プロセスとして捉えていくとよいだろう。みるスポーツの
文化価値創造プロセスは①観戦中にスポーツの価値を観戦者が自らの能力を用いて自身に意味形成すること、すなわち所
与の文化価値を内面化していく相、次に②言葉や文章として他者や社会に理解可能な価値を新しく創り出すこと、すなわ
ち意味を外面化していく相、さらには③外面化された所産の文化価値が公共圏において、あるいは SNS やメディアによっ
て交錯し、いずれ発展・淘汰された新しい所与の文化価値となる三相に分けられる。
重要なことは各相で価値化するための能力が求められる点であり、今回の議論においてはこれらを総じて「みる力」と
呼ぶ。
各相に対応して、
「みる力」は四つに類型化できる。一つは所与の価値として観戦前に知っておいた方がよい事柄、つ
人
まり選手の特性、ルール・戦術・システム、歴史、規範、競技経験知など、既存の観戦価値のことで「知識」と呼ぶ。二
つめは試合を観戦し、競技展開などについて観察や解釈をとおして内面化できる力であり「観察・解釈力」と呼ぶ。三つ
めは内面化した意味内容を分析/評価し言説化やテクスト化できる力であり「評価・評論力」と呼ぶ。四つめは自他多様
ア
介
40
な評論をつなぎ論理的見解へと導くことができる力であり「知識構築力」と呼ぶ。
本シンポジウムでは各能力の育成方法やサポート方法などについてより深めていきたい。
06 体育経営管理
オリンピック報道番組制作の工夫
宮嶋 泰子(テレビ朝日)
スポーツはテレビメディアの発達ともに飛躍的に発展を遂げたと言ってもよいだろう。またテレビ技術もオリンピック
のたびにカラー放送、衛星中継、VTR放送、HD放送、デジタル放送と進化を遂げてきた。より速報性が求められるス
ポーツ番組だが、時差もあり、放送をどのように組み立てるかは一つの大きなポイントとなる。中継の演出担当者はいか
に会場で見るよりもより迫力あり臨場感が感じられる映像を作るかを工夫する。
本番のみならず、
事前の企画放送も重要だ。視聴者にとっては 4 年に一度だけ目にする競技も少なくないだろう。そんな中、
その競技の面白さを伝え、さらには選手の紹介をすることで、視聴者のオリンピックへの興味の持ち方も変わってくる。
選手やコーチがどのような工夫をして、この一瞬に臨んでいるのかを伝えるのはもちろんのこと、そのスポーツや選手や
コーチがどのような社会的環境に置かれているのかを伝えるのもテレビメディアの仕事であろう。
この機会に自らを見つめなおす意味でも、テレビメディアの仕事を振り返ってみたい。
みる力を高めるプログラムの実践例
小林 樹青(公益財団法人東京都体育協会)
東京都は、だれもが、いつでも、どこでも、いつまでも、それぞれの年齢や技術・興味・目的に応じてスポーツを楽し
哲
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バ
むことができるスポーツ都市東京の実現を目指すため、平成 20 年 7 月に「東京都スポーツ振興基本計画」を策定し、都
市づくりとスポーツという視点からスポーツの振興を図ってきた。平成 25 年 4 月には「東京都スポーツ推進計画」とし
て改定され、さらに様々な施策を推進している。そのなかで、スポーツに触れて楽しむ機会を創出するため、みるスポー
経
ツもその柱の1つに位置づけ、事業を企画・運営している。
スポーツ施設においても、従来の教室型や体験型といったプログラムサービスに加えて、施設の特性を活かした新たな
スポーツ人口の拡大のためにトップスポーツ観戦事業を実施してきた。また、施設利用団体である大会主催者が施設管理
発
者と協働し、観戦者を招待するといった取り組みもよく見られる。
一方では、障害のある人とない人がお互いのスポーツ競技への理解を深め、交歓できる機会を創出することを目的に、
都民体育大会と東京都障害者スポーツ大会といった2つの異なる競技大会の開会式を平成 24 年から合同で開催している。
測
このイベントは、みせる要素を組み込んだ新たな試みともいえる。
前述のようなこれまでの実践事例を踏まえ、スポーツを推進するうえでみるスポーツの事業意義を考えるとともに、そ
の効果をより高める事業展開のあり方を提案する。
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保
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哲
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07 発育発達
シンポジウム
8月 27 日(水)
15:30-17:30 センターB棟 GB21
運動発達を促す身体活動のエビデンス
司会:春日 晃章(岐阜大学)
大規模調査からみえる身体活動・生活習慣と体力・運動能力との関係
鈴木 宏哉(東北学院大学)
平成 24 年 3 月に策定されたスポーツ基本計画の政策目標のひとつに「今後 10 年以内に子どもの体力が昭和 60 年頃
の水準を上回ること」がある。日本における子どもの体力・運動能力の現状、そして体力・運動能力に及ぼす身体活動や
その他の生活習慣の影響を検討できる大規模調査に、文部科学省が実施する「体力・運動能力調査」と「全国体力・運動
能力、運動習慣等調査」の2つがあり、これらは政策目標の拠り所とされた。いずれも横断的データを用いた検討である
が、Population-based surveillance として経年変化を検討できるなどの価値がある。
一方、「子どもの頃のどんな身体活動経験や生活習慣がその後の体力・運動能力の健全な発達に大切なのか?」の視
点では、縦断的アプローチがなければエビデンスレベルの高い研究成果を得ることができない。諸外国では Populationbased surveillance の活用や長期追跡研究が多く行われている。本発表では日本における大規模横断データと小規模縦断
データによる体力・運動能力と身体活動やその他の生活習慣の関連性について紹介し、公的データの有効利用と縦断的ア
プローチの必要性について議論したい。
子どもにおける身体活動の実態と課題
田中 茂穂(国立健康・栄養研究所 基礎栄養研究部)
最近、日本では、(財)日本体育協会「アクティブチャイルド 60min. ─子どもの身体活動ガイドライン─」(2010 年)
や文部科学省「幼児期運動指針」
(2012 年)が発表されている。いずれも、合計 60 分/日以上、からだをしっかり動
かす(≒中高強度活動)ことを目標としている。欧米では、テレビ視聴やゲーム・パソコンなどの座位行動(sedentary
保
behavior)の弊害に関する知見に基づき、座位行動に関する内容を含む指針もつくられている。
しかし、日本の子どもの身体活動量の実態あるいはその要因に関する科学的根拠は希薄である。例えば、幼児期運動
指針が策定されて 2 年以上が経つが、未だに国あるいは都道府県などの大規模な実態調査は行われていない。これでは、
教
策定された指針を有効に活用しようとしているとは言えない。また、加速度計で検証した幼児期運動指針のガイドブック
に示された質問形式の活動量調査法の妥当性はかなり低かった。
今後、1)歩数計をはじめとする客観的な身体活動量の確立、およびそれに基づく実態把握や標準値・目標値の決定→
人
ア
介
2)それらに基づく身体活動量の変動要因の検討→3)得られた科学的根拠に基づく対策→4)成果の評価と対策の再検
討…といったサイクルが望まれる。
発育からみた発達至適時期
國土 将平(神戸大学大学院人間発達環境学研究科)
運動能力の発達は身体の発育と相互関係を持ち、運動能力にはそれぞれの発達至適時期が存在すると考えられる。宮下
(1984)は子どもの運動発達の時期を発育との相互関係という視点で図示した。大澤(2013)は、その概念図の問題点
として、発育急進期が実際の身長発育の現状と異なること、また、発育時期の性差が著しく異なるにもかかわらず、この
42
07 発育発達
点が考慮されていないことを指摘し、運動能力の発達時期ならびに身長発育を含めた発達の順序を検討している。
多くの運動は、筋力・パワーや持久力だけではなく、動作習熟を伴い、宮下のモデルが単純に当てはまるとはいえない。
そこで、いくつかの種目について、國土ら(2010)の発育モデルを適用して、発達時期のピークを検討した。その結果、
握力は一峰性の発達速度曲線を示すが、立ち幅跳びや 50 m走の記録は二峰性の発達速度曲線を示すことが示唆された。
すなわち、これらの発達は前半の速度ピークでは動作の習得による記録の急激な向上を示し、後半の速度ピークでは筋力
の向上によるものと推察される。
哲
史
これらの検証は幼児期の統計資料が不足しているのと同時に、現存する資料の検証は未だに不十分であり、今後エビデ
ンスを蓄積してゆくことが必要である。
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08 測定評価
シンポジウム1
8月 27 日(水)
10:00-12:00 センターB棟 GB11
運動介入後のフォローアップの進め方とその評価方法
座長:坂井 智明(日本ウェルネススポーツ大学)
〈趣旨〉
運動など積極的な身体活動の実践により、健康や体力が保持・向上するといったエビデンスが蓄積され、地域では “ 運
動教室 ” など健康長寿を目指したさまざまな活動が全国各地で展開されている。しかし、そのような活動の多くは限られ
生
バ
経
発
た期間で計画されており、運動効果を獲得するには活動の継続が重要であると理解しながらも、運動教室期間後の積極的
な運動実践を促す活動は少ない。実際、健康日本 21 最終評価で 1 回 30 分の運動を週 2 回、1 年以上継続している者の
割合は平均 30%程度であり、最も高値を示した 60 歳以上のグループであっても 40%程度であることも示されている。
このような現状を踏まえ、平成 25 年度から開始された健康日本 21(第二次)では、住民の運動習慣や身体活動の向上
を主目的とした環境やサービスの整備の充実を図るため、「運動しやすいまちづくり・環境整備に取り組む自治体の増加」
が指標として新たに設定された。運動と健康に関連するエビデンスの多くが運動を継続することによって得られる効果で
あることを鑑みれば、健康長寿社会の実現には運動習慣者の増加が重要と言えよう。
そこで本シンポジウムでは、地域で継続的に取り組んでいる活動のうち主催団体が異なる 3 事例について、①地方自
治体では「運動サポーターの育成」
、②自主クラブでは「高齢者サロン育成」、③ NPO 法人では「行動変容を意図したア
プローチ内容」をテーマに、地域における活動の実際と今後の展望について考察することとする。また、すべての取り組
みの課題としてヒトの諸機能の変化を反映する評価指標の選択が考えられるが、心身両面から評価できる有効な指標につ
いても提案したい。本シンポジウムを通して、
参加者が活動している地域での研究への発展に関する議論を深めることで、
運動継続に向けた生活環境や社会支援の動きが活発になればと考える。
測
方
地方自治体がおこなう運動習慣化を目指した新たな試み
坂井 智明(日本ウェルネススポーツ大学)
本シンポジウムで紹介する地方自治体は、人口 23000 人、65 歳以上の高齢者の割合が 30%に達する日本海側の小さ
保
な町である。この町では健康増進実施計画を策定し、「自らつくる元気なからだ」をスローガンに生活習慣の改善、特定
保健指導、介護予防に関する活動を実施してきた。特に、介護予防事業では、普及啓発活動、予防・支援活動を積極的に
おこなっていた。ところが事業を推進するうえで、参加者やスタッフから①参加者の活動継続、②新規参加者の開拓、③
教
活動範囲を町全域に広めるための物的・人的な資源の限界、といった課題が上げられるようになった。
そのような課題を解消するために、町独自の資格である “ 運動サポーター ” を認定することで、地域に眠っている人材
の発掘を試みた。運動サポーターとは、教室参加者に直接運動を指導するのではなく、1)家族や地域の人と一緒に運動
人
ア
介
44
する、2)運動の意義や楽しさを町民に伝える、3)町の健康増進事業を町民に伝える、4)事業運営者(町職員)を支
援する、5)運動指導者を支援する、という役割を担っている。その役割を円滑に遂行するためには、これまでの運動経
験に加えて、運動サポーターとしての技能を養う必要があったため、その養成事業として「運動サポーター養成講座」を
おこなった。この講座では、安全な運動方法を理解させた上で、
「参加者と話題づくりになるようなポイントを探索する」
、
「他者を褒めるポイントを知る」
、
「リーダー経験を積む」等をテーマに講習をおこない、コミュニケーション能力の向上
を図り、
教室参加者に「教室に来て楽しい」
「友達と一緒に身体を動かして楽しい」と感じさせることができる運動サポー
、
ターの育成を目指した。本シンポジウムでは、運動サポーター養成講座の詳細と資格取得者の活動について議論したい。
08 測定評価
高齢者同士で運動を習慣化する高齢者サロン育成の試み ―継続化を促すための工夫―
中垣内 真樹(長崎大学医歯薬学総合研究科)
少子高齢化による課題として市町村では「地域づくり・地域での支え合い」など地域活性化アプローチが求められてい
る。その手段のひとつとして運動を柱とした健康・体力づくり事業が徐々に整備されつつあり、自治体は地域特性を活か
しながら住民の運動習慣化に取り組もうとしている。しかし、多くの自治体で「スタッフ数が十分でない」、「取り組み事
業を長期間 / 経年的に継続できない」などの問題点が指摘されている(田中ら,2006)
。住民主体の運動習慣化を目的と
してボランティアの養成や運動の自主サークル化に関する実践報告がいくつかある(藪下ら,2005)。住民が身近な地域
で運動を習慣化できるコミュニティの形成、そしてそのコミュニティの活動継続の意義は大きいであろう。これまで、筆
者らは、スクエアステップエクササイズ(SEE)を用いて高齢者サロンの育成を試みてきた。また、SEE を高齢者同士で
実践できる工夫を模索してきた。
本発表では、高齢者の運動コミュニティ育成の際の工夫やコミュニティ形成後、運動をさらに継続させるための工夫に
ついて、発表者らが取り組んできた内容を紹介する。
1)既存のコミュニティに運動を導入する方法
2)運動教室から自主サークルを育成する方法
哲
史
社
心
生
3)運動リーダーを育成し、運営、指導を任せる方法
4)遠隔支援・通信講座テキストなどによる継続を促す工夫
限られたデータではあるが、これらの工夫で運動を継続化した高齢者の身体機能への効果についても言及したい。高齢
バ
者同士が習慣化できる環境を整えること(SEE を柱とした地域コミュニティの形成)は、少子高齢社会の要介護化予防の
推進の一助となり得るだろう。
健康教室終了後を見据えたアプローチ
中山 正剛(別府大学短期大学部)
・石原 一成(福井県立大学)
超高齢社会の日本において、単なる延命ではなく健康寿命を延ばすことが重要である。つまり、平均寿命と健康寿命の
差を短縮することが出来れば、個人の生活の質の低下を防ぐとともに医療費の軽減につながることは言うまでもない。健
経
発
測
康寿命を延ばし、平均寿命との差を短縮するための方策として、運動実践を主とした健康教室などが全国的に各自治体で
実施されている。本報告では、
「与えるだけの健康づくりではなく、地域住民の健康に対する意識が向上し、自主的に参
加する健康づくり」を目指した健康教室の取り組み例を紹介する。具体的には、医師会・スポーツクラブ・大学から成る
NPO 法人と自治体が協力した「市民の健康づくりに寄与するサポート体制について」、また、教室終了後、つまり運動介
入後を見据えた「行動変容を意図したアプローチ内容について」、特別な機械が無くてもできる「運動実施の可能性を広
げるための測定評価について」
、現状や課題などを含めた「教室後の自主グループについて」などを報告する。
さらに、自立した生活を送るための日常生活に必要な身体機能水準を明らかにするために、自立高齢者(自立した日常
生活を送っている高齢者)と軽度要介護者(要支援と要介護 1)の身体機能測定から得られたデータの分析結果について
も報告する。
高齢者の体力を追跡するための評価指標
方
保
教
人
田中 喜代次(筑波大学体育系)
近年、要介護化の予防に備え、高齢者の健康・元気長寿支援の一環として、短期間の運動教室を開催する自治体や団体
が増えている。要介護化予防という観点から運動教室を考えたとき、高齢者が運動実践や食生活を含めた日常生活習慣が
元気長寿に対して影響しているかを評価し、本人へフィードバックできることが望ましい。
福島県会津美里町での運動指導ボランティアによる高齢者運動教室への 5 年以上継続参加者における 10 年後の体力を
調査した際には、8 の字歩行(立つ・歩く・方向転換する・座るの組み合わせ歩行を評価)が同年齢と比較し高体力であっ
ア
介
た。茨城県八千代町にて開催してきた二次予防事業対象者の 3 ヶ月の運動教室では、脚力、握力、歩行能力、柔軟性体力、
平衡性体力といった多種多様な体力要素の改善がみられるが、日常生活動作と近似した動きの体力測定項目は 1 年後に
45
哲
史
維持傾向にあり、複雑な動きを要する項目(立つ・歩く・座るなどを組み合わせたもの)は教室開始時水準にまで戻った。
これらの結果から、複雑な動きを必要とする体力項目は、継続参加者の運動効果や虚弱高齢者の体力低下を把握するのに
有効であると言えよう。一方、長期的有効性を考える場合、加齢による体力低下は不可避であり、良好な生活習慣実践者
の体力評価方法を提案することが必要である。
発表では、前述した追跡調査結果のみならず、発表者が 25 年にわたり支援してきた運動教室参加者の長期的追跡調査
の結果や肥満者の減量効果の残存性について提示することで、心身両面から評価できる有効な指標について考察する。さ
らに、体力や食生活を日頃からセルフチェックできる方法についても提案したい。
社
シンポジウム2
心
生
8月 28 日(木)
10:00-12:00 センターB棟 GB11
健康・スポーツ分野において研究計画を策定する際に留意すべき交絡因子の取り扱い
座長:大藏 倫博(筑波大学 体育系)
〈趣旨〉
バ
ある小学校の教諭が児童の「足のサイズ」と「50m 走タイム」との間に有意な相関関係があることを見出した。そこ
で、その教諭は、「足が大きな子供は、短距離走が速い」と結論づけた。もちろん、この結論には明らかな誤りがある。
小学生において「足のサイズ(体格)
」と「50m 走タイム(体力)」の両方にもっとも強い影響をもたらすのは学年である。
経
つまり、6 年生は 1 年生に比べて足のサイズは大きいだろうし、走るのも速いということである。学年とはすなわち年齢
であり、件(くだん)の教諭は年齢という交絡因子を考慮せずに統計解析をおこなうという根本的なミスを犯したのであ
る。さすがに、年齢を調査し忘れる研究者はいないであろうが、データ収集が終わり、統計解析の段になって必要な交絡
発
因子の取り忘れに気付いたのでは手遅れである。しかし、現実には、このような後悔を経験したことのある健康・スポー
ツ分野の研究者は少なくないはずである。研究者は、研究計画策定の段階で、想定される交絡因子の情報(データ)を取
得するために入念な備えをしなければならない。
測
方
保
教
人
ア
本シンポジウムでは、研究計画策定の際に留意すべき基本的な交絡因子の取り扱い方法について解説をおこなうもので
ある。特に、統計や研究計画の策定を苦手と感じている研究初心者や大学院生を対象と考えている。したがって、シンポ
ジストには、難解な用語はできるだけ省き、分かりやすい解説を依頼している。第一登壇者の角田憲治氏には、疫学調査
に基づく横断研究と縦断研究に関する話題を提供して戴く。続く中田由夫氏からは、介入研究における交絡因子の取り扱
い方に関する解説がある。介入研究ではランダム化比較試験が最も優れた研究デザインであるが、健康・スポーツの分野
では必ずしもこの理想的なデザインを組める訳ではない。そこで、非ランダム化比較試験に付随する注意事項の解説もお
願いした。最終登壇者である原田和弘氏には、心理学の観点を踏まえ、交絡因子だけでなく、類似概念に関する解説も合
せておこなって戴く。シンポジスト 3 名は、いずれ劣らぬ当分野の新進気鋭の若手研究者である。最新の知見と豊富な
経験に基づき、受講者にとって多くの有益情報が提供されるものと期待される。
横断研究・縦断研究で留意すべき交絡因子の取り扱い
角田 憲治(公益財団法人 明治安田厚生事業団 体力医学研究所)
ヒトを対象とした横断研究や縦断研究を行う場合、交絡因子について留意する必要がある。ヒトの生活習慣(例:運動)
や健康状態(例:体力)を規定する代表的な因子には年齢や性があり、多くの研究で調整変数として投入される。しかし、
ヒトには年齢や性の他にも様々な属性があるため、各研究を行う際には、仮説検証に必要な主変数とは別に交絡になり得
る変数を併せて調査する必要がある。たとえば、体力水準と認知機能との関連性を検討する場合では、教育年数という大
きな交絡因子に留意する必要がある。高学歴な者は、体力が高く、認知機能も高いことが知られており、教育年数を調整
介
せずに体力水準と認知機能との関連性を検討した場合、実際の現象よりも強い結果を報告してしまうことになる。このよ
うに説明変数と目的変数の関連性を見ているつもりでも、そこには思わぬ交絡因子が存在し、真理とは異なる関連性を見
ている可能性がある。どのような交絡因子を調査し、調整すべきかの判断は、基本的には先行研究を参考にすることにな
るが、先行研究の交絡因子の想定が不十分な場合や、新しいテーマのため参考となる先行研究が乏しい場合も少なくない。
46
08 測定評価
このような場合は、研究者が交絡因子を想定してデータ収集のための項目を選定することになるが、ここの想定が甘いと
後で査読者に想定すべき交絡因子について指摘され、大いに後悔することになる。調査で評価・取得していない交絡因子
は、再調査によって補完することは難しいため、研究計画の段階で十分に吟味しなければならない。特に追跡研究で 5 年、
10 年かけて追跡調査する場合にベースラインで調査すべき致命的な交絡因子を取り漏らした場合は、膨大な労力、費用、
時間をかけてやってきた研究が水泡に帰す恐れがある。本シンポジウムでは、演者の経験を踏まえ、交絡因子を考慮した
質の高い研究計画の立て方、分析方法について紹介する。
介入研究を計画する際に留意すべき交絡因子の取り扱い
中田 由夫(筑波大学 医学医療系)
介入研究とは、原因と考えられる因子を人為的に加減して、観察集団における結果の発生率を調べる研究手法であり、
哲
史
社
心
介入群のみを設定する単一群試験、対照群と介入群を設定する非ランダム化比較試験やランダム化比較試験が含まれる。
一方、人為的な介入を含まない観察研究としては、横断研究や症例対照研究、コホート研究が含まれる。通常、介入研究
を実施する前には、観察研究によって介入すべき因子が明らかになっていなければならない。単一群試験は介入の実行可
生
能性を検討し、介入効果を見積もる上では有用な試験であるが、対照群を置かなければ、真の介入効果を示すことはでき
ない。ランダム化比較試験は、因果関係を証明することができる唯一の研究デザインであるが、介入が非現実的であった
り非倫理的であったりした場合には、観察研究や非ランダム化比較試験によって因果関係を推論せざるを得ない。ランダ
バ
ム化比較試験が最も優れた研究方法と言われる理由は、ランダム割付によって、選択バイアスを除去することができ、未
知および既知の交絡因子の影響も除去できるためである。選択バイアスとは、研究参加者を選ぶ際に生じる偏りのことで
あり、例えば運動群には運動好きの人が集まり、対照群には運動嫌いの人が集まった場合、選択バイアスが生じることに
なる。ランダム化比較試験においては、運動好きの人も運動嫌いの人も、対照群と介入群とに均等に割り付けられるため、
選択バイアスの除去が可能となる。交絡因子とは、予測因子と結果因子の両方に関連する因子のことであり、例えば運動
習慣(予測因子)と高血圧(結果因子)との関連を検討する際の食習慣が交絡因子にあたる。交絡因子は定量的に評価で
きれば、統計学的にその影響を調整することができるが、未知の交絡因子や評価不可能な交絡因子については調整できな
い。バイアスと交絡因子の取り扱いについて、研究計画立案の段階で留意することが肝要である。
健康スポーツ心理学分野における交絡因子と類似概念の取り扱い
原田 和弘(国立長寿医療研究センター運動機能賦活研究室)
交絡因子とは、一般的に、独立変数と従属変数との関連性を歪める因子として位置づけられている。そのため、研究デ
ザインの設計段階(例:対象集団の特性を絞る、無作為割付を行う)や、データの解析段階(例:層別解析を行う、多変
量解析で統計的に影響を補正する)で、交絡因子の影響を取り除く工夫がなされる。これらの工夫の仕方は、健康スポー
ツ心理学分野でも、他の分野と同様である。
一方、交絡因子と類似の概念であり、かつ、健康スポーツ心理学分野で頻繁に注目される概念として、媒介因子
(mediator)と調節因子(moderator, effect modifier)が挙げられる。媒介因子とは、独立変数と従属変数とを介在する
経
発
測
方
保
教
因子のことであり、調節因子とは、独立変数と従属変数との関連性の強さに影響を与える因子のことである。交絡因子、
媒介因子、調節因子は、研究を行う上での取り扱い方がそれぞれ異なる。
ただし、研究のねらいや目的によって、同じ変数が、交絡因子にも、媒介因子や調節因子にもなり得る。例えば、同分
人
野で現在検討が進んでいる、近隣環境(独立変数)が身体活動の促進(従属変数)に及ぼす影響について、動機づけとい
う変数を取り上げた場合、以下のようになる。すなわち、動機づけを交絡因子として想定すると、「動機づけの影響を取
り除いても、近隣環境は身体活動に影響するか?」という文脈に、媒介因子として想定すると「近隣環境が身体活動を促
ア
進する理由として、近隣環境が良いと動機づけが高まるためではないか?」という文脈に、また、調節因子として想定す
ると「近隣環境が身体活動に及ぼす影響の強さは、動機づけが高い人と低い人とで異なるのでは?」という文脈になる。
従って、健康スポーツ心理学分野で研究計画を策定する際は、これらの概念の相違点を把握しておくことが望ましい。
介
当日は、演者の経験例などを紹介しながら、これらの概念や研究を行う上での取り扱いや留意点などについて概説する。
47
哲
史
社
心
09 体育方法
シンポジウム
8月 27 日(水)
9:30-11:30 工学部 テクノホール
戦術研究を実践に活かすには
司会:佐藤 徹(北海道教育大学)
〈趣旨〉
コーチングにおける指導内容は、技術指導と戦術指導に大別され、とりわけボールゲーム種目において戦術は不可欠の
研究領域である。戦術に関して指導に有用な情報を得るのが戦術研究であるなら、その研究は実践(戦)に還元可能な内
生
バ
経
発
容を探るものでなければならない。
これまで戦術の研究は、実戦で現れた事象、つまりボールの移動の位置やパスの頻度など、数えられる事実の集積とそ
の統計情報が中心であった。しかし、チーム指導者がパス回数の平均値や確率だけに基づいて指揮を執っていることなど
あり得ない。どのように戦うかを決めるには、味方の個々の選手がもっている現実の力量を土台に、相手の競技力レベル
や予選か決勝かなどさまざまな試合状況に応じて、その時点で最良の道を選ぶ感性が求められる。したがって、実戦から
何を情報として取り出すかが戦術研究の核心であるといえる。
また、戦術を実行に移す選手の達成力は、高度な判断力に表れる人間固有のシンボル化能力として発達する。つまり、
同じ状況場面は二度と現れない実戦のなかで、行動の意味の類似性を有体的に察知する身体知として機能する。それ故、
戦術訓練は動物の調教のようなドリル練習とは本質的に異なった、状況判断力形成を主要課題としたトレーニング法の確
立が求められる。その基本原則は特定の競技種目を越えた一般戦術論として構築可能である。
スポーツにおいて戦術が重要であることはボールゲーム種目だけではない。しかし、競技力における重要度という点か
らみれば、個人種目、さらに漕艇や駅伝などの団体競技とは比較にならないほどボールゲームにおいては大きなウエイト
を占める。今回はボールゲームの戦術研究を中心として、達成力としての戦術力、研究成果を実戦に活用した事例、今後
測
方
保
の戦術研究の方向性ならびに一般理論の可能性について議論を行う。
戦術(達成)力の構造
中瀬 雄三(筑波大学大学院 博士課程)
スポーツ競技において、対戦相手や周囲の状況に合わせて動きかたを選択判断していく能力、すなわち “ 戦術力 ” は、
技術力や体力的要素とならんで選手のパフォーマンスを決定付ける重要な要素である。ここでいわれる戦術力とは、理論
知(動きかたの手順を頭で理解、記憶する知的な能力)ではなく、身体知ないしは実践知としての戦術力(ゲーム状況の
教
なかで適切な動きかたを実行できる能力)である。したがって、ゲームを他者的視点から観察し、動きの正否や意味が分
かるだけでは達成力としての戦術力とはいえない。戦術を考えるときには、味方および相手チームの選手の技術力や状況
を把握する能力、どのように展開していくかを構想する能力などを総体的に扱うのでなければ実践には適用できない。
人
ア
介
48
理論知としての戦術は競技スポーツにおいて勝利するために重要なことは言うまでもない。特に、指導者やコーチに
とって戦術的知識は欠かすことはできない。しかし、コーチや監督が自チームの選手の実践的な戦術力の有無を考慮せず
に、高い技術力と身体能力を有するチームが採用している流行りの戦術を自チームに取り入れても成果につながることは
ない。名門チームが採用する理論が勝利を導くのではなく、実践する選手達の達成力にささえられてはじめて戦術として
機能する。
そこで今回は、戦術力はどのような要因から成り立ち、どのような構造で達成力として機能するかという点について考
察するものである。具体的には、戦術行為は選手の体力や技術を土台として、味方および相手選手の意図の読み合いや、
状況の意味、行為の価値などが総体的に機能して実現しているという点に言及する。バスケットボールの事例を挙げなが
ら、戦術力を明らかにする手立てとしての戦術行為の意味把握の重要性について論究する。
09 体育方法
戦術研究の活用例 〜ハンドボールにおける実践例〜
栗山 雅倫(東海大学)
戦術的能力の重要性は、競技スポーツにおいて広く認知されている。また、学校体育の場においても、小学校、中学校、
および高等学校の学習指導要領において、戦術学習の重要性について明記している。その一方で、戦術的能力とは何を指
し示し、トレーニングによって如何に開発されるものか、一定の見解を見いだすに至っていないのが現状である。
トップレベルの競技者に関与する指導者の多くは、戦術的能力の重要性を認識しつつも、戦術的能力の捉え方は一定で
はない。また、その能力のトレーナビリティについても、指導者間に見解の相違が見られる。このような現状は、複数の
指導者との出会いを通し、競技ステージをあげていく競技者にとって、果たしてどのような影響を与えるのであろうか。
状況を解決する能力として、技術の遂行能力を高さや、身体的能力の高さがあげられることは明確である。しかし、ハ
ンドボールのような球技種目における状況の解決とは、絶えず対峙する相手との相対的な関係の中ではかられるものであ
る。すなわち同じような状況の出現に対し、画一的に行動を選択するのではなく、相手との関係性において、より的確な
解決策を選択出来ることが求められる。このように状況を観察、認知し、如何に行動すべきかを判断し、実行していくと
いった一連の経過において、戦術的能力を見いだすことが出来ると考えられる。
ゲーム分析や動作分析などに見られる戦術性の定量化は、現象の解釈をするにあたり極めて有用である。また、得られ
哲
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社
心
生
た分析結果により、日々のトレーニングにおいて、成功の要因のパフォーマンスへの落とし込みがはかられる。しかしな
がら、トレーニングにおいて、技術性の改善が戦術性の改善と必ずしも比例しないことを、我々は日常的に経験する。す
なわち戦術的能力の向上に向けた研究は、現象の記述のみに委ねるべきでないことは明らかである。
実践に活用できる戦術研究の方向性
會田 宏(筑波大学体育系)
スポーツにおける戦術は、状況が複雑で多様なほど大きな意味を持つ。しかし、戦術に関する先行研究の多くは、条件
バ
経
発
を統制した実験的調査や戦術行為の結果を数値に置き換えた分析を行い、異なる時期や集団から収集した多数のデータを
統計処理する手続きを採用している。その結果、戦術力のリアリティは断片化され、実践に生きる選手やコーチに納得、
受容される知は生み出せていない。
測
戦術研究において実践に活用できる知を明らかにするためには、研究の価値を普遍性から公共性へと据え替え、戦術行
為や戦術指導に関する個別の実践事例をリアリティ豊かに提示する事例研究が有用である。なぜならば、事例研究は、対
象の数が少ないがゆえに、明らかにしたい現象について様々な観点から深く調べることができ、高度で創造的な戦術行為
や戦術指導についても、状況から切り離すことなく、時間を追ってとらえることができるからである。
研究者は、事例研究で得られた知見の有効性と限界を選手やコーチ自身が判断できるように、まず、調査の内容と方法
を詳細に記述する必要がある。具体的には、いつ、どこで、誰が、どんな事象に、どういった視点から、どのような調査
をしたのか、調査内容をどのような手続きを経て事例として提示し、どのように解釈したのかについて、透明性を持って
記す必要がある。次に、戦術行為や戦術指導の実践事例を、行動そのものだけではなく文脈も含めて記述し、事例を解釈
する中から選び出された「チームや選手が違っても共通すると思われること」を明記する必要がある。
事例研究が蓄積され、
「チームや選手が違っても共通すると思われること」が他の事例とも共通することが分かったとき、
実践に活用でき、スポーツ種目をも越えた一般性を持つ戦術論、戦術指導論の構築が可能になると考えられる。
方
保
教
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49
哲
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社
ワークショップ
8月 27 日(水)
15:30-17:30 岩手大学 柔道場(第 1 体育館)
大学体育における合気道の指導実践
司会:長谷川 聖修(筑波大学)
〈提案趣旨〉
体育方法専門領域では、実践的な学びを重視する観点から「ワークショップ」を継続的に開催してきた。実践に関わる
指導者は、体育学に関わる様々な論議を深めるとともに、「からだ」「動き」を通じて学んでいくことを忘れてはならない
心
生
バ
経
発
測
方
と考える。今回は、日本文化のひとつとして、国際的にも高く評価されている「合気道」を取り上げる。そこで、合気道
の指導で実績のある小林勝法氏(心身統一合気道三段、大東流柔術初段、全剣連居合道三段)に演者をお願いした。小林
氏は、公益社団法人大学体育連合の専務理事として活躍されており、教養体育における合気道の実践的可能性についても
学びを深めることができると期待する。柔道場の畳に身を投げ、転がる体験を通じて、合気道における魅力の一端を味わっ
てほしい。
ひとりでも多くの方にネクタイを取って、本企画へ気軽に参加いただければ幸いである。もちろん、見学も可でる。
〈参加者へのお願い〉
畳の上で転がることができる恰好でご参加ください(道着の必要はありません)。
講師:小林 勝法(文教大学)
合気道は大東流柔術から発展し、昭和時代に植芝盛平(1883-1969)によって創始された比較的新しい武道である。
相手を力尽くで投げたり、倒したりはせず、相手の気を察し、それを導いて技をかける。孫子の兵法に記されている「戦
わずにして勝つ」を体現した武道と言える。
教養体育の授業では、
「合気道の術理と精神を学ぶとともに、日本に伝わる身体運動文化の価値と特質、その継承と発
展に対する理解を得ること」を目的としている。本ワークショップでは、以下のような内容を体験していただき、指導法
について検討していただきたいと思う。
・礼:人に対する挨拶だけではなく物や空間に対する礼の意義
・関節技:痛めつけることを目的としない柔の道
・合気:調和する方法
保
・気感:潜在能力開発と天人合一
・間合い:気を読む
・伝承法:遠山の目付けや明鏡止水などの極意と武道歌による伝承
教
人
ア
介
50
10 保健
10 保健
哲
キーノートレクチャー
8月 27 日(水)
10:45-11:45 教育学部 E26
我が国の保健科教育の課題と今後の発展に向けて ―私の保健科教育学への歩みと自省から―
司会:野津 有司(筑波大学)
演者:森 昭三(筑波大学名誉教授)
私が大学院への進学を考えた時、出身の体育学部には大学院がなく、教育学部の大学院を目指すしかなかった。自分の
興味関心から健康教育(保健科教育)を専攻したが、当時はこの領域を研究している大学院教員は皆無であった。修士論
文は米国の保健教育課程の研究をし、その後も諸外国の保健教育課程の研究を続けた。しかし、岡山大学在職中に学園紛
争に遭遇し、学生との対話の中で方向転換を迫られた。
その後の私の保健科教育学への歩みを自省しながら、主題と関わって次の3点から私見を述べることにする。
1.先ず、日本体育学会における保健専門領域と保健科教育の研究状況についてである。学問は分化と総合を繰り返しな
がら発展するといわれるが、この領域は果たしてどうであったのであろうか。私が所属していた昭和時代までを中
心に考える。
2.保健科教育学の確立を目指して歩んできたが、他教科の教科教育学会は創設され活発な活動を展開しているのにもか
かわらず、未だ保健科教育の全国的な研究集団、つまり日本保健科教育学会は立ち上げられていない。その理由に
ついて、自省を込めてこれまでの研究のあり方を中心に振り返る。
史
社
心
生
バ
経
3.保健授業が展開される教科は、小学校では「体育科」であり、中高校では「保健体育科」である。主に保健体育教師
が担当しており,
「1人2役」
(内山)と表現されたりしている。昭和時代に出版された保健体育科教育関係の書籍
の多くは、
「保健・体育」や「保健・体育科教育」の書名であり、体育と保健の共通認識がそれなりに図られていた。
発
しかし、今日では専門分化が進んだ成果?なのか、体育と保健とが分離独立した書名がほとんどである。どうすれ
ば両者が共通認識を持ち、
「保健と体育」との共有を図ることが可能かについて考える。
シンポジウム
8月 27 日(水)
15:30-17:30 教育学部 E26
学校における医薬品教育の実践の工夫
司会:岩田 英樹(金沢大学)
・小浜 明(仙台大学)
演者:那須 泰治(くすりの適正使用協議会)
小山 浩(筑波大学附属中学校)
高橋 菜穂子(岩手県薬剤師会くすりの情報センター)
〈趣旨〉
平成 20、21 年告示の学習指導要領に基づく保健学習は、平成 25 年度から高校においても学年進行で実施され、これ
測
方
保
教
人
により全校種で現行の学習指導要領に基づいて指導されることとなった。今回の保健における「改善の具体的事項(中央
教育審議会答申、平成 20 年)
」の一つとして、
「医薬品に関する内容」がある。改訂された学習指導要領の内容を具体的
にみると、中学校においては「医薬品は、正しく使用すること」、高校では「医薬品は、有効性や安全性が審査されており、
販売には制限があること。疾病からの回復や悪化の防止には、医薬品を正しく使用することが有効であること」が示され
た。このように医薬品に関する内容の充実が図られた背景の一つには、世界保健機関(WHO)が「自分自身の健康に責
任を持ち、
軽度な身体の不調は自分で手当てすること」という「セルフメディケーション」
(2000 年)の考え方を提示し、
その方法の一つとして医薬品の利用を挙げていることが考えられる。また、我が国では、平成 18 年の薬事法の改正によ
ア
介
り一般用医薬品の販売に関わる環境が整備されたことなどから、その購入や使用の際には、利用者自身の判断がより重要
51
哲
史
となってきたこともあると考えられる。
このような中で本シンポジウムでは、学校における医薬品教育の実践の充実に向けて、その具体的な進め方や工夫につい
て、3 名の演者から話題提供を頂き、議論をしていきたいと考えている。
那須泰治氏からは、くすりの適正使用協議会における医薬品教育の教材開発や研修会実施等の活動の成果と課題につい
てご報告いただく。本協議会では、1989 年の設立以来、医薬品に関する正しい知識や使い方等の啓発活動を精力的に展
開している。
小山浩氏からは、筑波大学附属中学校における医薬品教育の実践についてご報告をいただく。小山氏は、生命の尊重や
社
薬物乱用防止等に関する内容とも関連付けながら、医薬品教育の実践を先駆的に積み重ねてこられている。
高橋菜穂子氏からは、岩手県が全国に先駆けて実施してきた「青少年薬物乱用防止啓発事業」において中心的に指導さ
れてきた経験を生かして、現在実践されている医薬品教育に関する出前授業についてご報告いただく。
心
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11 体育科教育学
11 体育科教育学
シンポジウム
哲
8月 27 日(水) 13:00-15:00 教育学部 北桐ホール
“体育科教育学における教授・学習指導論の未来”―学習指導モデルの観点から
司会:大友 智(立命館大学)
・細越 淳二(国士舘大学)
〈趣旨〉
体育科教育学領域における国際的・国内的な研究内容や研究手法等の広がりは目覚ましい。その研究成果は、①カリ
史
社
心
キュラム論、②教授・学習指導論、③体育教師教育論、④研究方法論の 4 つの領域に整理され、学会における研究発表
や学術論文として報告されている。しかし、学校体育の存在意義を問う論議や多様な特性をもつ子どもたちへの効果的な
指導の在り方等、さらに多くの研究成果の蓄積を進める必要がある。
このような状況の下、現在の研究成果の到達点を共有し、今後の研究の展開方向について論議することは、我が国の体
育科教育学研究を一層発展させて行く上で極めて重要と考えられる。このような意図から、体育科教育学専門領域では,
昨年度から複数年をかけて、先の 4 領域を意識して、シンポジウムの企画を開始した。
昨年度の本学会のシンポジウムでは体育科のカリキュラム論に焦点を当てたが、本年度は教授・学習指導論に焦点を当
てることとした。
本シンポジウムでは、まず、①「英語圏の体育の学習指導論の変遷と現代の学習指導論に大きな影響を与えてきた代表
的な理論を概観したうえで、日本の学習指導論研究の課題」を確認する。続いて、②仲間学習(Peer Teaching)、③協同
学習(Cooperative Learning)
、④個人的・社会的責任学習(Teaching for Personal and Social Responsibility)について、
各発表者からそれぞれのモデルを整理して頂き、その実際の体育授業への適用過程と成果について、ご発表頂く。
わが国の学習指導法の展開と学習指導モデル論の概要
長谷川 悦示(筑波大学)
学習指導法(teaching method)とは、一般には、ある特定の教科内容を学習者に学ばせるための意図的・計画的な方
法をさし、教授法ともよばれる。すなわち、学習者に何を学ばせるのではなく、いかにその内容を学習者に学ばせるか、
生
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または、いかにその内容を学習者にとどけるかという方略や技術を問題としている(Rink,2009)
わが国における体育の学習指導法に関する論議は、戦後に告示されてきた学習指導要領とその背後にある教育思想や学
力観などによって大きな影響を受けて変遷してきた。各時代の学習指導要領における体育科の学習目標と取り上げられる
保
指導内容の変化は、体育の学習指導法にも大きな進展をもたらした。例えば、1950-60 年代の生活単元論や、グループ
学習の学習形態論、1970 年代以降の「めあて・ねらい学習」の学習過程論や「選択制体育」といった体育独自の学習指
導論が展開された。
教
また一方で、1980 年代後半以降、欧米の体育科教育学における学習指導法に関する研究成果がわが国にも紹介されは
じめると、優れた教師の相互作用行動やマネジメントなどの教授技術についての実証研究が活発に行われ、モストンの提
唱する学習指導スタイル論や学習指導ストラテジー論などの体系的構造的に学習指導法をとらえるようになる。さらに
1990 年代後半から 2000 年以降は戦術学習モデル、スポーツ教育モデル、協同的学習モデルなどの学習指導モデル論の
新しい学習指導法の考え方とそれに基づく授業実践が、わが国においても活発に展開されるようになってきた。
体育の学習指導法を体系的・構造的に理解することは、特に教師の教授学的知識(Pedagogical Knowledge)を発達さ
せることにつながり、大学等教員養成機関での教師教育・研修プログラムにおいて備えるべき重要な内容となる。
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仲間学習モデルの体育授業への適用過程とその成果
荻原 朋子(順天堂大学)
仲間学習(Peer Teaching)は、教師が設定した指導内容を生徒が相互に教え合う方法である。仲間学習には、次の 3
つの特徴がある。①教師が計画したモデルに従って生徒が他の生徒に教える、②教え役の生徒には、教師が行う重要な学
習指導の手続きを実施するという明確な責任が求められている、③教え役の生徒と教えられ役としての生徒の役割を教師
の指示に従って交互に演じる。
この学習指導方略は、理解すべき概念を限定した上で教える側と教えられる側を交互に経験するため、運動学習並びに
認識学習に焦点化した授業を意図している。そのため、学習者の理解度と技能の向上を促す学習指導方略として効果的で
あることが指摘されている(Metzler, 2011)
。授業中に出される課題は、往々にして一時的な情報提供に留まることが多
いが、実際には、生徒が身につけている認識を修正する必要があることや、その迫り方が重要になる。仲間学習では、教
師が責任をもって観察する視点や方法を提示すること、他人の動きを観察する視点を共有すること、さらに、それを実際
に活用して自己や他人の動きを評価する過程を保障していく。そのため、知識をより効果的に獲得、修正させ、パフォー
マンスを発揮する際に知識を有効活用できるとされている。
本発表では、
仲間学習の体育授業への適用過程とその成果として、中学校 1 年生を対象とした授業実践を紹介する。オー
バーハンドパスの技術習得およびセッターのトスアップを中心とした学習内容を設定し、10 時間単元の授業を実施した。
バ
仲間学習はオーバーハンドパスからのアタック練習を課題としたドリルゲームの際に適用した。授業への適用の際の留意
点や方法は、当日紹介する。授業の成果については、学習者が持つオーバーハンドパスの知識及びパフォーマンスとの観
点から考察する。
経
協同学習モデルの体育授業への適用過程とその成果
発
栗田 昇平(筑波大学大学院)
協同学習は、「協同的な相互依存性」の原理に基づいて行われる学習指導方法の総称である。協同学習は、異質混合の
測
小グループで行われ、その実施に際して、集団内の互恵的関係、個人の責任、集団内・個人間スキルの指導、社会的相互
作用機会の確保、グループ活動の改善手続きが授業内に組み込まれる。また、これらの 5 つの構成要素を具体化する手
段として、
「ストラクチャー」と呼ばれる一連の指導手順が用意されている。ストラクチャーには多くの種類があるため、
方
保
教
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介
協同学習には多様な実践のパターンが派生する。
協同学習に対する期待は多岐にわたるが、体育授業における協同学習の成果は、主に情意・社会的な領域に関わったも
のが顕著である。1990 年代後半から現在にかけて、英語圏では体育授業に協同学習を適用した研究が 10 論文公開され
ているが、そのうち 9 論文において協同学習が情意・社会的な領域の学習成果に肯定的な影響を与えることを報告して
いる。他方で、協同学習の適用過程は平易に進行するわけではなく、いくつかの困難とその解決の過程が生起することが
報告されている。このことは、協同学習の適用にあたり、教師と学習者の両者に特定の知識や技術が要求されるというこ
とであり、それが協同学習の恩恵にも関連していると考えられる。
これらを踏まえ、筆者は小学校 5 年生から中学校 1 年生を対象とした、協同学習のストラクチャーである「ジグゾー」
を適用した協同学習の過程を調査した。調査では、授業映像やフィールドノート、質問紙、教師へのインタビューと児童
の感想といった多元的なデータ収集法が用いられ、参加者の視点から協同学習内で生起する出来事を分析した。その結果、
教師は学習者の相互作用スキルの習熟を実感し、同様に、学習者も自身のチーム内での取り組み方の変化を実感していた。
他方で、先行研究と同様、多様な困難に直面する中で、教師が協同学習モデルに精通していく過程が観察された。
責任学習モデルの体育授業への適用過程とその成果
梅垣 明美(大阪体育大学)
責任学習モデルは、アメリカのイリノイ大学のヘリソン教授が、教育を十分に受けていない若者たちを教える中で作成
した身体活動を通して個人的、社会的な責任を取ることを教える学習指導モデルである(Hellison,2003)。
責任学習モデルの目的は、児童生徒自身が成長し幸福になるために、そして他の人を幸福にするために、児童生徒に責任
54
11 体育科教育学
を取ることを教えることである
(Hellison and Martinek, 2006)。責任学習モデルでは、4 つの理念が示されている。第 1 に、
運動学習と責任学習を統合すること、第 2 に、児童生徒に体育授業以外の場面でも責任ある行動を取るように奨めること、
すなわち転移を促すこと、第 3 に、児童生徒に権限を与えること、第 4 に、教師が児童生徒との信頼関係を築くことである。
具体的な方法は、次の通りである。第 1 に、児童生徒に守らせる行動目標を、例えば、レベル 0 からレベル 5 まで 6
段階で系統的に示した系統表を体育館の壁などに貼る。第 2 に、授業の導入時によい行動を促すような短い訓話を行い、
本時の行動目標を意識づける。第 3 に、運動学習の中でよい行動を行わせる。第 4 に、授業の後半に、授業中の行動に
哲
史
ついて、グループ、あるいは、個人で振り返らせる。第 5 に、教師は、体育授業以外のところでも児童生徒一人ひとり
と話をし、信頼関係を深めることである。
責任学習モデルは、アメリカ、ニュージーランド、スペイン、カナダなどで実践され、児童生徒の体育の授業中におけ
社
る行動改善を促すことが報告されている。日本でも、大学生と中学生を対象に実践され、このモデルの効果として、体育
の授業中における行動改善と体育授業以外での行動改善が報告されている。
キーノートレクチャー
8月 27 日(水)
16:30-17:30 教育学部 北桐ホール
教師による体育カリキュラム開発の方法
―スクール・ベイスト・カリキュラム開発に着目して―
司会:大友 智(立命館大学)
演者:丸山 真司(愛知県立大学)
心
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昨年の第 64 回日本体育学会体育科教育学シンポジウムにおいて、学校体育の「正当化問題」を視野に入れながら、体
育教師がカリキュラム開発の主体となることの意味や、目的-内容、手続き、組織という側面から教師による体育カリキュ
ラム開発をめぐる課題について報告した。その際、教師がカリキュラムを開発しようとする場合には3つのレベルのカリ
発
キュラム(制度レベル・教科論レベル・学校レベル)の相互連関とそれらの開発サイクルのプロセスに着目する必要性を
指摘した。今回の報告では、とりわけ学校レベルの体育カリキュラム開発に焦点を当て、そこでのカリキュラム開発の方
法や課題について述べてみたい。
まず第1に、カリキュラム開発研究の国際動向をレビューする。今日のカリキュラム開発研究においては、とりわけ
「学校のオートノミー」が重要なテーマとなっている。OECD によってスクール ・ ベースト ・ カリキュラム開発 ( 以下、
SBCD) が提唱され、SBCD 研究は広く普及し研究成果を上げている。SBCD というカリキュラム開発のパラダイム転換は、
カリキュラム開発への教師参加を中心にその開発過程のダイナミズムを解明する道を開いたと言われる。まず最初に、
SBCD の意義と方法について触れる。
第2に、SBCD 論に立脚すれば、カリキュラム開発は「カリキュラムを取り巻く状況・ニーズ分析―デザイン-実施 ・
調整-評価」という4つの層が連動するダイナミックなシステムとして展開される。教師が実際に学校でどのように体育
カリキュラム開発を行っているか、具体的な事例分析を通して「参加型カリキュラム開発サイクル」の方法と課題につい
て述べてみたい。
第3に、SBCD においては教師の協働的専門性に支えられる体育カリキュラム開発の組織づくりと体育教師のカリキュ
ラム開発能力の形成が重要な課題となる。最後に、体育教師のカリキュラム開発能力形成という視点からカリキュラム開
発を支える組織論について述べてみたい。
測
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哲
史
12 スポーツ人類学
キーノートレクチャー
カポエイラの固有性の創造
―リオデジャネイロにおける取り組みを手掛かりにして―
社
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8月 27 日(水)
10:00-10:50 教育学部 E25
司会:田里 千代(天理大学)
演者:細谷 洋子(四国大学)
本発表は、ブラジルの民族スポーツであるカポエイラにおいて創造されるカポエイラの固有性を検討することを目的と
生
バ
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発
する。特にリオデジャネイロを代表する団体であるアバダ・カポエイラの取り組みに着目する。
カポエイラは 350~400 年前頃に、後のブラジルとなる地で創出され、主にアフリカ出自の祖先をもつアフロ系ブラジ
ル住民によって継承されてきた。そして、多人種多民族のブラジル社会では 1930 年頃から国民統合のための文化政策が
実施され、カポエイラも二度に渡り政策に取り入れられ、2000 年代にはマイノリティ文化の表象として位置づけられた。
こうした中、発表者が 2003 年からおこなっているフィールドワークで、当団体の取り組みに変容が見受けられるように
なった。それはカポエイラの競技化と新たなゲーム種目の創造である。
競技大会は、当団体では 1997 年に第 1 回世界競技大会が開催され、その後も継続されている。そして当団体の競技
大会は「政治権力の影響を受けない」と競技規則で明文化した上で、カポエイラの芸術性を高めようとしている現状が看
取された。
一方、
当団体において 2000 年頃から「アマゾナス」という新たなゲーム種目が既存の 5 つのゲーム種目に加えられた。
カポエイラにおける身体技法は、民族楽器の奏でる音楽に合わせて行われる。そのため、様々なリズムが存在し、リズム
に応じたゲーム種目も多数確認されている。
「アマゾナス」はカポエイラ発展の礎を築いたビンバ師範によって創られた
リズムだが、元々対応したゲームは存在しなかった。そこで、当団体の創始者カミーザ師範はカポエイラの起源にちなん
測
だ「アマゾナス」のゲームを具現化し、普及させている。
本発表では、以上の事例を元に、実践者自らがカポエイラの実践において、近代スポーツの競技システムや芸術という
西洋近代的な価値基準を重ねながら、カポエイラそのものの性質をいかに読み直し、特徴付けているのかについて検討す
方
保
る。
シンポジウム
芸能のまなざし
―スポーツ人類学における日本芸能論の可能性―
教
人
8月 27 日(水)
13:00-15:00 教育学部 E25
提案者:中嶋 哲也(鹿児島大学)
・杉山 千鶴(早稲田大学)
司 会:中嶋 哲也
〈提案趣旨〉
ア
本シンポジウム企画は前年度に引き続き、芸能、あるいは芸能化という観点からスポーツの諸相、あるいは変容を考察
することがスポーツ人類学にとってどのような問題圏を切り拓く可能性をもっているのかを提起するものである。今年度
は昨年の事例紹介を踏まえ、より研究する上での概念としての可能性を探る内容にしたい。
介
前年度のシンポジウムでは芸能化という観点から各地域の武術・格闘技・プロレスを検討した。その成果として「見る」
と「見られる」という 2 つの視点から研究対象を観察するようになることが分かった。また、格闘という二者間の私的
な身体感覚に基づいた攻防が第三者の観客の視線に規定されることで、公に見栄えが良くなる演技へと変容していくこと
も分かった。
56
12 スポーツ人類学
このようにミクロな事例分析において芸能化という観点は一定度の有効性が認められたが、一方で議論を深めるには、
地域的な限定を施した方が良いという反省も出てきた。そこで本年度は地域を日本に限定してスポーツを芸能という枠組
みからいかに問題提起できるのかを考えてみたい。本シンポジウムでは具体的に武術と舞踊に注目するが、それはこの 2
つの領域が芸能に関わる文化要素を含みこんでいるためであり、芸能という下地なくしてどちらの領域の発展もみられな
かったと考えられるためである。また、本シンポジウムは武術と舞踊にとどまるものではなく、より積極的にスポーツが
芸能化する上でどのようなポテンシャルを秘めているのかについても議論が展開される。本シンポジウムではスポーツに
哲
史
おける芸能論の可能性と武術、舞踊といった具体的な対象においてどのように研究を蓄積していけるのかといった二点に
ついて議論を深めていきたいと考えている。
芸能としての武術 ―江戸時代における武術の地域化という視点―
榎本 鐘司(南山大学)
武術の深化は、実際の戦闘を契機とするだけでなく、むしろ宗教的身体修練や宗教行事、それらと未分化な遊事にも、
その契機があった。あるいはもっと積極的に、もともと武術は儀礼と未分であり、武術は本来的に辟邪性を備えた呪術で
社
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もあった、とも言える。
中世には、辟邪性を備えた武術様式が、血縁や地縁の社会的諸集団を単位として、いたるところに存在したと考えられ
る。それら点在的な武術様式のなかで実用的有効性の高いものが 14 ~ 16 世紀の戦乱のなかですくいあげられ、近世の
バ
武士社会における中央中心的武術流派の形成につながっていったと考えられる。ただし、刀狩りと身分統制によって近世
では武術が武士社会の専有物としてのみ深化を遂げた、と考えるのは誤りである。
発表者は、江戸時代の松代藩領内に伝承された無雙直傳流と称される武術について、事例報告をしている。松代藩は地
方知行制を維持し、村落に居住して生活実態は農民同様であるが身分としては武士の末端に位置する在郷足軽の子弟たち
が、将来の職能教育として集い、無雙直傳流武術の修練をしていた。松代藩領における無雙直傳流伝承の痕跡は文書資料
によって享保期まで遡ることができ、無雙直傳流という武術の内実が実用的総合武術であり、呪術技法も含んで、中世的
なものを温存した武術であること、そして、無雙直傳流は一般農民も含めた様々な社会集団によって多義的に行われてい
たこと、などが判ってきている。
士農工商の身分制度がしかれた江戸時代にあっても、武士身分に属さない人たちが、武術に親しんでいた。武術は血縁
や地縁の集団において、きわめて地域化されたものとして(少し大胆な言い方が許されるならば「地武術」として)
、当
該社会・集団の身体性や生活実態に即したものとして行われていたことを示唆したい。
沖縄近現代に創出された“武の舞”の諸相 ―琉球古武術「浜千鳥」と琉球舞踊「護身の舞」―
波照間 永子(明治大学)
沖縄には “ 武の舞 ” と称される「武術」と「舞踊」が伝承されている。前者は琉球古武術「本部御殿手」の修練法の一
つで明治期に創られた。後者は戦後間もなく誕生した創作舞踊であるが、今では琉球舞踊の主要な演目として内外で上演
されている。本報告では、
「武術」と「舞踊」という異なるジャンルで創出され、同一の呼称を持つ “ 武の舞 ” の分析を
経
発
測
方
保
教
通して沖縄芸能における舞踊と武術の関わりを考察する一助としたい。以下に両者の概要を記す。
「本部御殿手」は、第二尚氏王統第十代尚質王子・尚弘信本部朝平(1655 − 1687)を始祖とする本部御殿に伝わる武
術である。御殿手とは「王家の技」を意味し「取手」という素手術が奥義として伝えられている。「取手」は琉球舞踊の
人
女踊りと共通の技法「拝み手」
「こねり手」
「押し手」で構成される。11 代目朝勇(1857 − 1927)は、舞踊家と協働し
て武と舞の一致点を見出し御殿手の技の極致を盛り込んだ武の舞「浜千鳥」を創出した [ 上原清吉 1992]。
「浜千鳥」は
近代の名優、玉城盛重(1868-1945)が明治 20 年代に創作した舞踊である。朝勇は舞踊「浜千鳥」を学びそれを武の修
ア
練法に改編したと推察される。武の舞「浜千鳥」と琉球舞踊「浜千鳥」の比較を通して武と舞の一致点と相違点を抽出する。
琉球舞踊の男踊りは、琉球空手と日本本土の諸芸が融合し舞踊化されたといわれるが、一見すると空手の要素がどこに
あるかを見出すことは難しい。盛重の甥、玉城盛義(1889-1971)は昭和 30 年代、「護身の舞」を創作し空手そのもの
介
の技法を舞踊に導入することで舞に潜む武の要素を明示した。さらに、沖縄歌舞団率いる宮城美能留(1935-1987)は、
空手に棒・サイ・ヌンチャク等を扱う古武術を組み込んで構成した作品を世界に広く公表し一定の評価を得た。これにより、
57
哲
史
社
空手・古武術を組み込んだ舞踊は “ 武の舞 ” あるいは「護身の舞」という名称で親しまれ、今なお盛んに踊り継がれている。
“ 武の舞 ”「護身の舞」の技法と演出法の分析を通して琉球舞踊にみる武の要素の位置付けを試みる。
「見る/見られる」関係におけるスポーツの芸能化 ―折口信夫の芸能史を参照しながら―
橋本 裕之(追手門学院大学地域文化創造機構特別教授)
特異な芸能史を構想したことによって知られる折口信夫は、「見せ物の対象になる芸が芸能である」(「日本芸能史」
『折
口信夫全集』ノート編第五編、中央公論社、一九七一年、一三頁)という。芸能はあくまでも「見る/見られる」関係に
よって規定された表現でしかなく、その出自を問わないのである。じっさい、折口は「日本の芸能といふものは、もとは
心
芸能としての形をもつてゐなかつたものが、繰り返して行はれてゐるうちに、だん/\芸能化して来ました。」(「日本芸
能史六講」『折口信夫全集』第十八巻、一九六七年、四〇一頁)とも述べていた。したがって、スポーツもこうした関係
に取り込まれた結果として芸能化することは当然だろう。
生
折口はスポーツの芸能化についても、断片的な所感をいくつか残している。「例へば剣術とか柔術なんかも芸能と関係
なささうなものであるが、相撲と同じやうに発達して来る径路の最初は、同じやうなところに在つたのです。だから相撲
なども結局芸能とはなりませんでしたが、やはり芸能として取り入れようとしたこともあるのです。従つてまた柔術とか
バ
剣術とか棒術など或はやはらとかとつたりとかいふやうなものでも、舞台の上で行はれると、たちまはりや、とんぼ其他
の殺陣芸能を生み出してきた。
」とか「だから吾々の芸能に対する考へは、まだ自由に動いてゐる時代だといふことが出
来ると思ひます。従つて吾々が新しい興味を刺戟するやうなものを、例へば野球・庭球のやうなものからでも発見し、そ
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介
58
れを芸能の中に取り込むことは出来ることであると思ひます。」(「日本芸能史六講」、四〇一−四〇二頁)とか。
だが、スポーツの芸能化について検討するさいは、スポーツにまつわる「見る/見られる」関係の実際、つまりどう「見
る/見られる」のかという様態を解明することが必要だろう。スポーツは一般に勝敗を伴う競技という印象が強いが、に
もかかわらず(だからこそ?)芸能化するとしたら、どのような様態が作用しているのだろうか。いわゆる折口芸能史を
参照しながら、スポーツにまつわる「見る/見られる」関係が描き出す重層的な構造の一端に接近したい。
13 アダプテッド・スポーツ科学
13 アダプテッド・スポーツ科学
シンポジウム
8月 28 日(木)
10:00-12:00 教育学部 E22
教員免許取得における「アダプテッド体育」履修必修化を目指して
司会:内田 匡輔(東海大学)
〈趣旨〉
保健体育の教員採用試験に合格し、採用された後に、初任校が特別支援学校となり、特別支援教育をほとんど受けてこ
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なかった教員が戸惑いながら、試行錯誤し、先輩教員の背中を見ながら授業を担当している実情がある。実際、現行の保
健体育の学習指導要領には、アダプテッド体育やインクルーシブ体育の視点に立った指導内容は盛り込まれていない。特
別支援が必要な児童・生徒への指導は、すべて特別支援教育の教員養成カリキュラムに委ねられており、保健体育の教員
養成カリキュラムでは、実際に特別な配慮や支援を必要とする児童・生徒への的確な体育指導方法については、一切、そ
れらに関する文言が入っていない。特別支援学校ではなく、小中学校に通う障害のある児童・生徒が増える中、こうした
現状のままでは十分な体育指導がなされないことになる。
そこで、今回は、アダプテッド・スポーツ専門領域から、保健体育の教員養成カリキュラムに「アダプテッド体育」の
講座設定する必要性を社会にアピールするきっかけとして、“ 教員免許取得における「アダプテッド体育」履修必修化を
目指して ” と題するシンポジウムを企画した。今回は、中学校や保健体育教員養成課程をもつ大学の現状について報告し、
教員養成課程における「アダプテッド体育」履修必修化に向けたロードマップの概略についてフロアの方々と共通の認識
を持ち、具現化に向けた方策について意見交換する場を設定した。今回は初回とし、このテーマについて継続的にシンポ
ジウムを開催する予定である。
履修必修化に向けたロードマップの概略
齊藤 まゆみ(筑波大学)
2007 年 4 月から、
「特別支援教育」が学校教育法に位置づけられ、すべての学校において、障害のある幼児児童生徒
の支援をさらに充実していくこととなった。また、2014 年 1 月には日本も様々な国内法の整備(障害者基本法の改正、
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方
障害者差別解消法の制定)を行い障害者権利条約の批准が実現した。このことは、合理的配慮の提供についてより具体的
に検討すべきことを示している。従前より小中学校や高等学校にはさまざまな障害のある児童生徒が在学しており、保健
体育を担当する教員にはアダプテッド体育(APE:Adapted Physical Education)の視点をもちつつ、インクルーシブ教育
保
を実践することが、今後より一層求められるであろう。しかし、現行の教員養成課程のカリキュラムでは APE 関連科目
の履修は指定されていない。一方、学習指導要領に着目すると、新学習指導要領が小学校では 2011 年 4 月から、中学
校では 2012 年 4 月から、そして、高等学校においても 2013 年度入学生から年次進行で実施されている。小・中学校
教
ではすでに全面実施となっており、現在はその検証段階である。したがって、この時期に中央教育審議会において「APE
の必要性」が議論されるよう具体的に行動すべきである。学習指導要領の改訂と教員養成に関わる制度改正等はより密接
に連動されるものであり、APE 関連科目を教員養成段階で学ぶことができるようにするために、我々アダプテッド・スポー
ツ科学専門領域がなすべきことは何か、ロードマップをもとに提案したい。
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59
中学校の現状報告
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金山 千広(神戸女学院大学)
本報告は、2006 年に実施した中学校に在籍する障害のある生徒の体育授業に関する全国調査結果を受けて、実施種目、
授業実施形態および、教師の特別支援教育経験という 3 つの観点(草野・長曽我部 2001;吉利 2007)から、中学校に
おけるアダプテッド体育の現状と課題を明らかにするものである。全国の 1450 校を対象に郵送調査を行い、各学校にて
障害児や特別支援が必要な生徒の体育授業を直接担当する教師 1 名より回答を求めた(回収数 653、回収率 45.2%)
。回
答者の特別支援教育の平均経験年数は 4.46 年(SD; 6.49)
、
「経験無」40%、
「経験有」60%であった。また、障害のあ
る生徒の授業実施形態は、
「全て通常学級」31.2%、
「特別支援学級のみ」21.8%、
「一部の生徒が通常学級」20.5%、
「そ
の他
(特別支援学級と通常学級の TT、
複数回答など)」24.0%であった。特別支援教育の経験有教師は「特別支援学級のみ」
、
「一部の生徒が通常学級」
、
「全て通常学級」に、それぞれ 27.0%~ 22.8%と分散して属したが、経験無教師の 50%以上
は「全て通常学級」に集中した。特別支援学級での実施種目は、基本の運動や体つくり運動が上位にあり、ボール運動
が低かった。一方の通常学級では、陸上競技、ボール運動が上位を占めた。
「特別支援学級のみ」の教師は、生徒の障害
に応じた配慮や工夫を重視する一方で、障害が多様で実施できる種目が少ないと感じていた。また、インクルーシブな体
育授業での健常児への負担を懸念する傾向にあった。「全て通常学級」の教師は、クラスの生徒数と授業者数の関係から、
生徒の障害の状況に合わせた配慮や工夫が困難であるとしていた。教師の 7 割以上は、アダプテッド体育に関する研修
バ
や講演に参加した経験が無く、特別支援教育経験が無い教師では 8 割以上に及んだ。教師は、それぞれの置かれた立場
で授業に課題をもちつつ、アダプテッド体育に関する情報の必要性を感じていても、積極的に入手できていない様子が示
唆された。
経
保健体育教員養成を行っている大学におけるアダプテッド・スポーツ関連授業の現状
発
藤田 紀昭(同志社大学)
中学校および高等学校の体育教員養成を行っている大学の 2013 年現在の障害者スポーツ関連授業の実施状況を明らか
測
にすることを目的としてアダプテッド・スポーツ関連授業の実施状況に関するアンケート調査を行った。対象は体育教員
養成を行っている大学 154 大学 160 学部である。実施期間は 2013 年 6 月から 12 月までの半年間である。アンケート
回収数は 121、回収率は 75.6%であった。主な結果は次のとおりである。質問内容は大学および学部特性に関する質問、
方
保
教
人
アダプテッド・スポーツ関連授業の実施状況に関する質問、アダプテッド・スポーツ関連授業の内容に関する質問である。
調査の結果以下のようなことが明らかになった。
アダプテッド・スポーツ関連授業を開設しているところが 47.9%、開講していないところが 52.1%と半数近い大学で
当該授業が開設されていることが明らかになった。授業の実施形態は半期、講義形式、2 単位、選択としているところが
多かった。これらのうち選択科目として開設されている場合の学生の履修率は 5 割以下のところが過半数あり、関連授
業が開設されていても必ずしも多くの学生が履修しているとは限らないことが示唆された。
国公立大学と私立大学では国公立大学のほうが、学部別では教員養成系学部と経済・経営・産業系学部が、教員養成開
始年では 1999 年までに体育教員養成を始めた大学のほうがアダプテッド・スポーツ関連授業を開設しているところが少
ない傾向がみられた。これらの傾向は 2008 年の金山ら(2010)の調査結果とほぼ同様であった。
アダプテッド・スポーツ関連授業を開設している大学の 8 割以上で、障害に関する知識、アダプテッド・スポーツの
歴史と現状、アダプテッド・スポーツ指導法を授業内容として含んでいた。実技も 7 割近い大学で実施されていた。障
害者スポーツ関連授業を開設していない理由としては担当可能な教員がいないことをあげたところが多くみられた。
ア
介
60
14 介護福祉・健康づくり
14 介護福祉・健康づくり
キーノートレクチャー
哲
8月 28 日(木)
9:30-10:00 教育学部 E23
高齢者の栄養と健康
司会:小林 寛道(東京大学)
演者:樋口 満(早稲田大学スポーツ科学学術院、アクティヴ・エイジング研究所)
超高齢社会に入っている我が国において、高齢者の健康に及ぼす食生活・栄養の役割は、身体活動・運動と相まって極
めて重要であると考えられる。中年においては、メタボリックシンドロームや生活習慣病の予防という視点から、過食と
運動不足による肥満が健康課題としてしばしば取り上げられているが、高齢者ではサルコペニアやロコモティブシンド
ロームなどが健康寿命の延伸という視点から重要であり、中年と同一に、高齢者に対する栄養課題を取り扱うべきではな
い。例えば、米国の疫学研究では、習慣的に高タンパク質摂取をしている人々は低タンパク質摂取の人々よりも全死亡率
やいくつかの生活習慣病による死亡率が高いが、高齢者ではむしろ低タンパク質摂取が健康に悪い影響があると報告され
ている。また、最近我々が行った中高年男性を対象とした肥満に及ぼす遺伝素因とライフスタイルの影響に関する研究か
ら、高齢者では、肥満に及ぼす遺伝素因の影響はほとんどなく、タンパク質、脂肪、そしてアルコールの摂取など食生活
の影響が大きいことが示唆されている。これらのデータを踏まえながら、“ 元気老人 ” であるための適切な食生活・栄養
摂取について考察する。
シンポジウム
8月 28 日(木)
10:00-12:00 教育学部 E23
元気老人
司会:小林 寛道(東京大学)
97 歳で 1 年に 100 回以上ゴルフをプレイした北村正子氏(100 歳)の健康体力
田中 喜代次(筑波大学体育系)
“97 歳で年に 100 回の徒歩ゴルフ生活 ” を楽しむ骨粗鬆症の女性。90 歳のころに比べて、飛距離は落ちているものの、
相変わらずボールは真っ直ぐに飛ぶ。スコアは 60 台前半のため、若者の初心者レベルだが、50 台後半で回る時もある。
性格は落ち着いていて、会話もおっとり。転倒して骨折したら大好きなスポーツが愉しめないことを重々承知しているた
め、転倒しない生き方に徹している。その実践ぶりは健在で、転倒しない生き方、考え方は「Dr. クロワッサン 100 歳ま
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
で元気で歩く ! 転ばない歩き方 [ ムック ]」
(マガジンハウス , 2012)や「転ばないための体づくり」(宝島 , 2013)に紹
介している。100 歳を過ぎてカート使用なしのゴルフをする人は世界に何人もいないと想う。では、何歳までゴルフを
続けられるのだろうかという興味深い問いが生まれる。105 歳だろうか? 元気長寿老人の多い社会に醸成されていく
人
ことを祈念し、病を有しながらも奮闘中の現役の後期高齢世代数名(ダンス、ボウリングなど)の巧みなライフスタイル
についても紹介したい。
ア
介
61
エイジシュート 1 千回以上達成の植杉乾蔵氏の身体活動量
哲
史
竹島 伸生、竹下 俊一(鹿屋体育大学スポーツ生命科学系)
・
唐津 邦利(熊本湖東カレッジ(日本体育学会名誉会委員)
)
エイジシュートとは、ゴルフの1ラウンド(18 ホール)ストロークプレイを自身の年齢よりも少ないスコアで終了す
ることである。プロゴルファーでも中村寅吉、青木功、尾崎将司選手らが達成しているが、ホールインワン以上に困難で
社
ある。今回、紹介予定の植杉乾蔵氏(90 歳)は、平成 26 年 4 月 18 日現在で 1163 回達成している。ゴルフは週2〜
3回の頻度である。平成 23 年 11 月より身体活動量計を装着するようになり、現在まで毎日の記録を残していることか
ら、これらの結果を紹介する。装着開始の3ヶ月間では植杉さんご夫婦はほぼ一日おきにゴルフを行っていた。一日あた
心
生
バ
りの身体活動量は,ゴルフの有無で大きく異なる二層の分布であった。ゴルフ日は、歩数が 13000 歩/日、歩行距離が
8.8 km、中等度活動強度が 22 分/日であった。ゴルフをしない日の活動は低値とみられたが、1日おきのゴルフであり、
高齢 walker の歩行量 (30 km/ 週 ) と同程度であった。この3年間の活動量もほぼ一定である。ゴルフは、健康と自立維
持そして元気長寿達成の良いツールであり、植杉夫婦は共通の趣味を日々エンジョイされている理想の高齢者像といえよ
う。
「仲間作りは地域づくり」住民と創る運動教室
鈴木 玲子(東北福祉大学予防福祉健康増進推進室)
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
62
住民主導の「健康づくり運動教室」を展開して 20 年が過ぎた。柱としているエクササイズはダンベル体操である。住
民には行政の事業展開にみる縦割りや機能向上の目的指向は最優先されず、楽しくて、いつでもどこでも誰とでもそして
いつまでも続けられる環境が求められてきた。
この 20 年間、ぶれることなく、ダンベル体操を主菜とした運動メニュー創りが受け入れられているのはその環境が形
成されやすいコンテンツだからである。展開で特徴的なのは、運動支援リーダーの育成を常に念頭において開催している
ことにある。
そして各地の運動教室との交流事業を通してクラスター効果をもたらし、ネットワークを広げることにある。 今シンポジウムでは、被災地での事例も含め、高齢者の求める運動の効果は健康づくりの延長上にある人生を楽しむこと、
社会生活機能が向上であることについて詳述する予定である。
一般研究発表目次
00
体育哲学
哲
01
体育史
史
02
体育社会学
社
03
体育心理学
心
04
運動生理学
生
05
バイオメカニクス
バ
06
体育経営管理
経
07
発育発達
発
08
測定評価
測
09
体育方法
方
10
保健
保
11
体育科教育学
教
12
スポーツ人類学
人
13
アダプテッド・スポーツ科学
ア
14
介護福祉・健康づくり
介
63
64
00
体育哲学
哲
01
体育史
史
02
体育社会学
社
03
体育心理学
心
04
運動生理学
生
05
バイオメカニクス
バ
06
体育経営管理
経
07
発育発達
発
08
測定評価
測
09
体育方法
方
10
保健
保
11
体育科教育学
教
12
スポーツ人類学
人
13
アダプテッド・スポーツ科学
ア
14
介護福祉・健康づくり
介
65
哲
史
社
GB31[センター B]
8 月 27 日
9:00
哲 27 − 001
身心の一体化と活性化の論理《その一》
不安定な身心の二面性と制御可能性
○跡見 順子(東京農工大・セルツーボディダイナミクス・ラボ) 清水 美穂(東京農工大・セルツーボディダイナミクス・ラボ)
藤田 恵理(東京農工大・セルツーボディダイナミクス・ラボ) 跡見 友章(帝京科学大・医療科学部・理学療法学科)
田中 和哉(帝京科学大・医療科学部・理学療法学科)
廣瀬 昇(帝京科学大・医療科学部・理学療法学科)
体育現場における体罰 ・ 暴力問題や運動習慣の二極化現象は、競争主義や成果主義の体育 ・ スポーツ原理、最大値 / 最
高値で評価する運動機能や体力科学が体育科学の主流をなしていることと無関係ではなく、且つ体育原理の現代性喪失も
心
生
バ
経
発
測
ある。私たちは 2009 年から昨年まで本分科会において、「重力健康科学からの体育原理・身心関係・健康基盤の再構築」
と題して新しい体育学原理の背景を模索してきた。その結果をふまえ、本年からさらに一歩研究を発展させ、「身心の一
体化と活性化の人間育成論理」の有効性を検討してゆく。身心の二面性:1)身体が、生命の基本単位であり自律的に生
きる細胞と細胞が分泌した細胞外基質(結合組織等も含む細胞外環境)から成ること(それ故、細胞生存の論理の理解が
必須)
、2)不安定な身体の姿勢制御、運動開始 ・ 維持や自重 / 体幹制御の脳神経系 - 前庭系 - 筋骨格系の連係論理の理解
《言語化も含む》と意志による制御が必須であることを提案する。体育における生命(いのち)、身体、運動を人間生命科
学 ・ 脳科学から再構築し、現状の問題点をあきらかにし、教育現場における有効な方法を探ってゆきたい。
GB31[センター B]
8 月 27 日
9:30
哲 27 − 002
身心の一体化と活性化の論理《その二》
震災後の科学と女性科学者の役割・男女共同参画の加速は体育から
○清水 美穂(東京農工大・セルツーボディダイナミクス・ラボ) 藤田 恵理(東京農工大・セルツーボディダイナミクス・ラボ)
跡見 友章(帝京科学大学・医療科学部・理学療法学科) 廣瀬 昇(帝京科学大学・医療科学部・理学療法学科)
田中 和哉(帝京科学大学・医療科学部・理学療法学科) 跡見 順子(東京農工大・セルツーボディダイナミクス・ラボ)
東日本大震災・福島第一原発事故は、科学技術立国を標榜する我が国のシステムとその担い手に反省と変革を要求した。
理工系研究者・技術者 41 万人の集まりである男女共同参画学協会連絡会は平成 24 年3月、専門性を超えた多様な発想
方
保
教
人
ア
介
や視点を取り入れ、女性がもついのちある人間を視点とする視座で、持続可能な未来に向けたイノベーションを推進し男
女共同参画の加速をすることがソーシャルウィッシュに応えると位置付け、環境整備を国に対して要望した。しかしなが
ら3年を経て国も研究者も何をなし得たか。一方、世界一の長寿を誇る高齢日本女性が健康ではないという事実を踏まえ、
女性が自身を科学し、要介護にならない一生をおくる努力をすることが重要であるが、要素還元的な分子生物学を中心と
する従来の生命科学にはそれを実践する科学基盤がない。そこで我々は、身体を実際に動かすことによる運動適応と学習
という身体教育を基盤とし、文理を分けず、身心を一体としてとらえ、自分を知るための新しい人間生命科学が戦略にな
ると考える。専門研究に特化した理工系分野では達成できなかった男女共同参画が、体育からこそ加速することを期待し、
方法について議論したい。
GB31[センター B]
8 月 27 日
13:00
哲 27 − 003
ボランティア活動における「今」
○渡邉 佳(東海大学大学院)
労働は生産的なもの、余暇(レジャー)は消費するもの、次の労働に向けたものであるというような捉え方がされてい
る。常に生産へと向かう捉え方の中では、私たち自身が行う行為は目的への手段として回収され、行為そのものは希薄化
することになる。しかしながら、ボランティア活動のような自由な時間の中で、自主的に労働力を提供するような行動も
存在しており、生産性だけに回収されないその人にとっての意味があると考えられる。
66
00 体育哲学
私たちは過程と考えられる中にも、ある完結した行為をもっているのであり、私たちは常にその過程を「今」として体
験している。
それは他者からによる継起を完全に失った空想的なものではなく、
「ここにいるわたし」の生としてリアリティ
あるものである。本研究では、常に途上にある私たちが、様々なものを機会として紡いでいく「行為そのもの」という視
点から「ボランティア活動」について検討していく。
GB31[センター B]
8 月 27 日
13:30
哲 27 − 004
PBL としての大学体育
教えあい学びあいを中心に
○森田 啓(千葉工業大学)
哲
史
社
心
近年、欧米の大学では PBL(Problem-Based Learning: 問題解決型学習)が急速に普及している。教員は必要なインス
トラクションをしたうえで課題を出し、学生が自主的に学習するものである。大学体育は高校までの体育とは異なる必要
があるが、その一つの可能性は学生が中心となり、自らが主体的に課題を見出して取り組む PBL にある。
大学生は高校までの運動経験の差などにより、身体能力やモチベーションなど多くの点で二極化、多様化している。ま
た多くの場合男女共修となる。これらは従来の大学体育ではマイナスと捉えられがちであったが、PBL にとってはむしろ
好都合といえる。
大学体育において探求すべき課題は多岐にわたるが、本研究では「教えあい学びあい」を中心に、学生たちの主体的取
り組みと学習成果について考察する。
GB31[センター B]
8 月 27 日
14:00
哲 27 − 005
運動実践に内在する意味内容
技術と実践の関係についての現象学的観点からの考察
○高橋 浩二(長崎大学教育学部)
生
バ
経
発
測
本発表の目的は、技術と実践との関係についての考察から運動実践に内在する意味内容を明示することである。そのた
めに以下の事柄を考察する。すなわち、本考察における現象学的観点の必要性、「基づけ」という概念から捉えた技術と
実践の関係性、運動実践において蓄積される知及びその知から備わる技術、運動実践における「意味の自己制作」、である。
方
以上の考察から、本発表における成果は次のように示される。運動実践に内在する意味内容を現象学的観点から考察す
ることは、判断停止によって意味内容を意識する意識作用について考察することである。本考察では、主体が実践の中で
具体的な技術を用いる際に「実践の中の知」がすでに与えられていることが明らかになる。この考察によって、「実践の
中の知」の蓄積によって技術が備わること、技術が実践の組織化をもたらすことが示される。それらを基に、「実践の中
の知」の蓄積によって為される「意味の自己制作」が運動実践に内在する意味内容であることが示される。
GB31[センター B]
8 月 27 日
14:40
哲 27 − 006
心身一元論的見方に基づく発達観に関する研究
○成家 篤史(東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科) 鈴木 直樹(東京学芸大学)
保
教
人
ア
体育科・保健体育科の目標に「心と体を一体としてとらえ」(文部省、1998)という文言が加わった。これは体育を心
身一元論的な見方に基づいて考えていくことを暗示しているといえよう。すなわち、金(2011)が「心身一元論では精
神と身体の発達を一つの有機的関係で説明するが、心身二元論では身体的発達だけを主とした体育の姿が形成されなけれ
介
ばならない」と述べるように、これは体育授業の学習成果そのものを転換する視点だと考えられる。したがって、
「従来
のような脳(精神)が『体』をコントロールする(技能)という心身二元論的な考え方からの脱却」(佐久間、2011)が
67
哲
体育の授業づくりの重要な柱になる。そのため、体育授業を構想するにあたり、子どもの発達を心身一元論に基づいてと
らえる必要があると考える。そこで,本研究では、心身一元論を分析枠組みとし,子どもの発達を捉え直すことを目的と
した。詳細の結果は当日、報告する。
史
社
心
GB31[センター B]
8 月 27 日
15:10
哲 27 − 007
体育教師が発することばの身体的意味
メルロ = ポンティの言語論を手掛かりに
○坂本 拓弥(明星大学)
本研究の目的は、体育教師が授業場面で発することばを対象に、その空間性と身体との関連を明らかにすることである。
そのために、ことばと身体について独自の論を展開しているメルロ=ポンティの現象学に基づき、「身体的所作としての
生
バ
経
発
測
方
ことば」について詳細に検討する。これによって、体育教師のことばを単なる記号として捉えてきた従来の指導言語観を、
現象学的な視点から批判的に捉えなおすことが可能となるであろう。
体育教師のことばを身体的所作として捉えることは、「どのように体育教師のことばは児童・生徒に届くのか」という
問いに、新たな答えを提示しうる。なぜなら、ことばのやり取りを身体的な事象として理解することが可能となるからで
あり、これは指導言語を体育教師の身体的行為として捉えることを意味する。本研究では特に、身体の根源的な働きであ
る知覚に着目し、身体的所作としてのことばのひろがり(空間性)を「奥行き」等の鍵概念の分析を通して検討し、体育
教師のことばの身体的意味を明示していく。これによって、教員養成や教師教育における、指導言語と体育教師の身体に
関する新たな論点が提起されるであろう。
GB31[センター B]
8 月 27 日
15:40
哲 27 − 008
スポーツ集団における体罰温存の構造
S. フロイトの集団心理学への着目から
○松田 太希(広島大学大学院)
発表者は、なぜスポーツ集団の中では体罰やしごきなどの「行き過ぎ」た行為が発現し温存されてしまうのかを研究し
ている。
本発表では、そのうちの体罰を例として取り上げ、S. フロイトの『集団心理学と自我分析』における論考に着目し、体
保
教
人
ア
罰がスポーツ集団において温存されていくメカニズムを明らかにする。本発表における考察では、フロイトが指摘した
「理
想化」や「同一化」などの人間集団に特有の事態が体罰の温存と深く関わっていることが明らかにされるであろう。
GB31[センター B]
8 月 28 日
9:00
哲 28 − 009
わが国におけるレスリングをめぐる思想史的展開についての基礎的考察
八田一朗の生い立ちに着目して
○長島 和幸(福岡大学スポーツ科学部)
友添 秀則(早稲田大学スポーツ科学学術院)
わが国におけるレスリングの継続的かつ組織的な活動は、1931(昭和 6)年の早稲田大学レスリング部の創設を源流
としている。創部にあたってイニシアチブをとったのが早稲田大学柔道部に在籍していた八田一朗(1906-1983)であっ
た。その数ヶ月後には、オリンピックへの参加を目的に自ら大日本アマチュアレスリング協会を創設し、大日本体育協会
介
の認可を得た上で 1932(昭和 7)年ロサンゼルス大会フリースタイル・フェザー級に出場した。これをわが国における
レスリング発展の基点とみることができるが、以後、八田は生涯をかけてレスリングの普及、発展に尽力していった。
似て非なるもの、すなわち相撲や柔道といったわが国固有の身体運動文化が存在する中で、また、オリンピック参加へ
の熱気が高まる時代状況下、八田は如何にしてレスリングという外来スポーツを摂取していったのか。本研究では、レス
68
00 体育哲学
リングをめぐる思想史的展開の基礎的考察としてその手始めに、八田のレスリング思想の醸成基盤として、八田の家柄、
生い立ちを明らかにした。
GB31[センター B]
8 月 28 日
9:30
哲
史
哲 28 − 010
「体力」目標と東京オリンピックの因果性の研究
○別所 秀夫(広島大学大学院)
本研究の目的は、学校教育の「体力」目標と東京オリンピックという二つの事象における因果性を、デイヴィット・
ヒュームの「因果論」の議論を参照に考察することである。ヒュームの「因果論」は、原因と結果は相互に時空的に「接
社
心
近」し、
原因が結果に対して時間的に「先行」しているとする。この議論から次のことがいえる。IOC 総会は 1936 年 7 月、
1940 年の第 12 回オリンピックを東京で開催するとした。教育審議会総会は 1937 年 12 月、
「体位の向上」目標を掲げ、
その後、「体力」目標は「国策」となった。同じく、IOC 総会は 1959 年 5 月、1964 年の第 18 回オリンピックを東京で
開催するとした。この大会後、
「国民体力の向上」が「国策」とされ、1968 年学習指導要領に「体力」目標が掲げられた。
つまり、「体力」目標は、二つの東京オリンピックを「先行」にして考えることができる。しかし、ヒュームは、因果性
の説明にはこれだけでは不充分とし、
「恒常的連接」、「経験」、「印象」などの観念を持ち出し議論している。本研究では、
「恒常的連接」を児童・生徒の身体にとらえている。要するに、身体への着目(まなざし)が、「体力」目標を決定づける
といえる。
GB31[センター B]
8 月 28 日
13:00
生
バ
経
哲 28 − 011
武田千代三郎の「アマチュアリズム」再考
「競技道」との関係に着目して
○根本 想(早稲田大学スポーツ科学研究科)
友添 秀則(早稲田大学スポーツ科学学術院)
発
測
本発表は、戦前に大日本体育協会の役員として、わが国のスポーツ界にアマチュアリズムを導入した人物の一人である
武田千代三郎(1867 - 1932:以下、
「武田」
)を対象にした思想史的研究である。
これまでの研究では、1920 年代における武田の論稿を分析対象として、彼にとってのアマチュアリズムが、社会的な
方
身分・階級に基づく差別意識を持ったものであったという指摘がなされてきた。しかしながら、武田の「アマチュアリズム」
概念の形成過程についてはこれまで十分な検討がなされてきたとは言い難い。そこで、本発表では、武田の「アマチュア
リズム」概念の形成過程を明らかにする上での基礎作業として、彼の主著の一つである『理論実験競技運動』(1904)に
おいて提唱された「競技道」概念と、1920 年代以降の彼の論稿に記された「アマチュアリズム」概念との関係を明らか
にすることを目的とする。
検討の結果、武田の「アマチュアリズム」概念には、先行研究で指摘されてきた身分的な要素以外の側面も看取できた。
詳細については当日発表したい。
GB31[センター B]
8 月 28 日
13:30
哲 28 − 012
嘉納柔道思想の形成と井上哲次郎の現象即実在論
○高平 健司(筑波大学大学院)
嘉納治五郎は、柔道という言葉は、1. 攻撃防御の技術に存する根本原理であり、2. 同時に世の各般の事柄をなす上の
保
教
人
ア
介
根本原理たる精神身体の力を、最も有効に使用する道である。と定義しているが、1. は「現象」2. は「実在」に相当し
ており、1. 即 2. の関係が成立している。同様に、1.(技より帰納した)運動原理である「精力善用」は、敷衍され、2. 同
69
哲
時に世の各般の事柄をなす上での原理であるとされ、知育・徳育・体育、さらには、日常生活にまで、応用が可能である
とされるが、この「精力善用」説においても、井上哲次郎の「現象即実在論」の理論が応用されている。さらに、柔道の
「道」である「精力善用自他共栄」の形成過程においても、
「修行」と「道」との関係として、その理論が応用されている。
史
社
心
GB31[センター B]
8 月 28 日
14:00
哲 28 − 013
芸道の学習論
学びとしての身体の教育
○中澤 雄飛(国士舘大学大学院)
人間は、社会生活を営む上で当該社会に則した行動、立居振舞が求められる。すなわち、人間は身体に文化を身にまと
うことによってその社会の一員となるのであり、よって身体も文化伝達の対象とされるのである。我が国の芸道は、身体
生
バ
経
発
測
への文化の伝達を重視した教育論の一つである。芸道においては、指導者の身体を模倣することを通じて自己の身体を規
律化し、その上で自己のオリジナリティーを見出すことが目指されるが、そこでの模倣はそれ自体が意味生成への創造的
な活動とされる。そしてそれは、メディアとしての身体と模倣対象の世界との一体化により新たな自己を生成し、更なる
模倣を可能にするという一連の学びへの営みである。従って、芸道における学びとは、自己と模倣対象との隔たりを埋め
るための学習者の能動的な働きかけによって生起し、そしてそのプロセスの中で習熟へと向かうのである。そこでは、新
たな世界と出会うための学習者と指導者の関係としての身体の問題が、重要となる。本研究は、他者との関係性という視
点から、学びとしての身体とその教育可能性について検討する。
GB31[センター B]
8 月 28 日
14:40
哲 28 − 014
〈生き方としての体育哲学 Philosophy of PE as a Way of Life〉の成立へ向けた序論
体育学における〈哲学〉の位置
○林 洋輔(筑波大学・国士舘大学)
〈体育原理〉から〈体育哲学〉へと分野名が変更されてからしばらくの時間が経過した。ところがこの間、
〈原理〉と
方
〈哲学〉の実質はどのように異なるのかという問いへの回答や体育学の発展に対する〈哲学〉からの貢献の方途を問う議
論は未だ深められておらず、当の事態は結果として体育学における〈哲学〉の位置づけを不明瞭なものとしている。そこ
で本発表ではまず〈体育原理〉分野における主要な議論からこの分野の学問的な特徴を見定めるとともに、
〈原理〉と〈哲
保
教
学〉とを精確に対比させて論じたルネ・デカルトの知見を参照することに加え、
〈哲学〉の実質を〈精神の修練 Exercices
spirituels〉という観点から論じたピエール・アドの思索を踏まえつつ、体育学における〈哲学〉の果たすべき役割を明
らかにする。結論として、
〈思考の原点〉を明示する〈体育原理〉から〈生き方と行動の指針〉を明示する〈体育哲学〉
への学問的な変容が必要であり、体育・スポーツの場を生きる人間に〈生の道標〉を供する役割が〈体育哲学〉に課せら
れている。当該の知見は体育学における〈哲学〉の担うべき役割のみならず、〈哲学〉の現代的意義についての議論を広
く呼び起こすものとなる。
人
ア
介
GB31[センター B]
8 月 28 日
15:10
哲 28 − 015
体育学における成長概念の検討
デューイの成長概念を中心として
○神野 周太郎(仙台大学大学院スポーツ科学研究科)
学校教育において、児童や生徒は、多様な知識の習得や基礎的能力の育成もさることながら、様々な経験を通して、自
身の内面性を創造し、それを有意味に拡充していくだろう。このような経験は、学校教育を構成する教科体育においても
様々に起こりうる。
そして、
児童や生徒が、
このような経験によって各々の自己創造の内実的方向性を模索してゆくことを、
70
00 体育哲学
デューイは「成長」と呼んでいる。デューイの教育学において、この「成長」は、
「経験」と連動した重要な概念である
だろう。それでは、デューイの提起したこの「成長」という出来事は、体育においてどのように論じられ得るのだろうか。
ここから、デューイの提起した「経験」と密接な関係を有する「成長」それ自体に検討の焦点を当てていくことが、課
題として立ち現れてくる。そこで、本研究においては、デューイの哲学にみられる「成長」概念に焦点をあて、その分析
を通して体育学における成長概念の構成に寄与していくことを目的としたい。
GB31[センター B]
8 月 28 日
15:40
哲 28 − 016
ダンサーの魅力と身体表現に関する一考察
コンテンポラリーダンサーの「色気」に着目して
○嶋崎 綾乃(八戸学院大学)
コンテンポラリーダンスは時代を反映し社会的・文化的背景により変化し続ける舞踊であるが、日本で興り始めて約
30 年が経過し、傾向や特徴を見出せる時代になったと考えられる。創造的表現活動を行うダンサーは卓越した技能のみ
ならず、優れた感性や身体性に基づく表現力が一魅力要素として評価されている。本研究はダンサーの「色気」がどのよ
うに表現あるいは表出しているのかを明らかにすることで、コンテンポラリーダンスの魅力に関する一傾向を見出すこと
を目的とした。ダンサーへのインタビュー調査をもとに修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを行い、15 の概
念を 4 カテゴリーに分類した。現在のコンテンポラリーダンスにおける「色気」は、表現ではなく表出するものであるが、
ダンサーは画一的な「色気」に抵抗感を持ち、それを逆手にとる表現を意図的に行うことがあること、そして、人として
の豊かな内面性とジェンダーをも超えたダンサーとしての独自性が介在することによって生まれる魅力であることが明ら
かになった。感性や経験に基づいた独自の雰囲気を兼ね備えていることが、魅力的なダンサーの身体表現のひとつに含ま
れることが示唆された。
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
71
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
72
00
体育哲学
哲
01
体育史
史
02
体育社会学
社
03
体育心理学
心
04
運動生理学
生
05
バイオメカニクス
バ
06
体育経営管理
経
07
発育発達
発
08
測定評価
測
09
体育方法
方
10
保健
保
11
体育科教育学
教
12
スポーツ人類学
人
13
アダプテッド・スポーツ科学
ア
14
介護福祉・健康づくり
介
73
哲
史
E24
[教育]
8 月 27 日
9:00
史 27 − 001
幕末期の薩摩藩における軍事改革と伝統武芸
島津斉興・斉彬治世期を中心に
○竹下 幸佑(筑波大学大学院)
幕末期における諸外国からの外圧に対する軍事改革の中で、西洋式の火器を合理的に操る洋式砲術・調練を導入して徹
社
底した訓練を行うことは、当時の幕府及び諸藩の軍事上喫緊の課題であった。なかでも、薩摩藩は佐賀藩と共にその先進
性が知られており、両藩における高島流砲術の導入は幕府に先んじていた(佐藤昌介『洋学史論考』)。ここで問題となる
のが、軍事改革が行われる中で藩の方針として伝統武芸がどのように扱われ、軍事政策にどのように位置付いていたのか
心
生
ということである。いち早く洋式砲術や調練が導入されたのであれば、当然それまでの軍事政策の中心であった伝統武芸
への影響もあったはずである。本研究では、この辺りの問題を明らかにする。今村は、こうした洋式砲術・調練の導入が
最終的に伝統武芸を圧倒したこと、伝統武芸が諸藩藩校の教育課程から漸次脱落していったことを指摘しているが、諸藩
における詳細な事例は検討されていない(今村嘉雄『19 世紀に於ける日本体育の研究』
)
。薩摩藩では軍事政策の中に伝
統武芸が応用された形跡を窺うことができ、必ずしも軍事改革の西洋化即伝統武芸の衰退ではなかったことが示唆される
可能性がある。
バ
経
発
E24
[教育]
8 月 27 日
9:20
史 27 − 002
幕末長崎の絵図面史料にみる競馬場設置構想の推移
競馬場設置構想の終息から遊歩道設置への転換
○田端 真弓(大分大学)
幕末期の外国人居留地では競馬場や公園などが設置され、明治期にかけてさまざまなスポーツが実施された。横浜では
競馬が盛んに行われたことに対し、長崎ではレガッタが著名なスポーツであった。しかし、すでに明らかにされているよ
測
うに設置には至らなかったものの、長崎に滞在した外国人は彼ら自身の「運動」の場として競馬場の設置を求めていた。
これらについての交渉や議論は、当時の長崎奉行と英国公使ならびに英国の長崎領事を中心に展開され、この過程におい
て複数枚の絵図面史料が残されたのである。これらの絵図面史料は交渉の際に提示された資料とみられ、わが国における
方
保
教
人
近代スポーツ萌芽期の居留外国人のスポーツをめぐる交渉内容と施設設置構想を如実に示している。そこで本研究は、こ
れらの絵図面とこれらの関連史料を精査することによって、競馬場設置の構想とその議論の推移について考察した。また、
新たに発掘された「此度英国公使申立候競馬場并遊歩所築造入用凡積麁絵図」がいかなる時期の構想を描いたものである
かについて特定した。競馬場設置構想から遊歩道設置への転換期を明らかにした。
E24
[教育]
8 月 27 日
9:40
史 27 − 003
明治天皇巡幸と体操指導について
○藤坂 由美子(鹿屋体育大学)
明治天皇の巡幸は明治年間を通じて 97 回挙行され、地方への巡幸は 60 回を数えるという。1872 年から 1885 年に
ア
かけて、地方を中心に行われた巡幸を六大巡幸とも呼ぶ。明治天皇が臨幸した対象は、主として地方行政関係施設、軍関
係施設、産業施設、学校であった。学校においては、師範学校や外国語学校、小・中学校が対象となり、臨幸の日時に合
わせて多数の児童生徒が動員され、天皇は学校の授業や体操を天覧した。学校での授業や体操の天覧は、天皇巡幸行事の
介
通例となっていく。1876 年の東北地方巡幸の際にも、官立宮城師範学校において、体操が小学校の教員や生徒によって
披露された。この体操法は当時東京師範学校において実践されていた体操法である。しかし、体操は天覧のために師範学
校教員が俄か指導を行ったのであり、体操が日頃から小学校に定着して実施されていたのではなかったことが明らかと
なった。
74
01 体育史
E24
[教育]
8 月 27 日
10:05
史 27 − 004
『少年世界』(1895 年)に見られる古代オリンピックの理解
日本の近代体育・スポーツとの接点に注目して
○和田 浩一(フェリス女学院大学)
哲
史
日本が古代オリンピックを知ったのは、明治以降のことであった。ヨーロッパよりも後れてオリンピックを知ったこの
国は、2020 年に 4 回目の大会を開くことになった。このような日本によるオリンピックの受容過程を解明できれは、西
洋中心主義を克服する新しいオリンピズム構築のきっかけをつかむことが期待できる。1896 年のアテネ大会前年に出版
社
された『少年世界』には、古代オリンピックを紹介する「運動会の歴史及種類」という記事が掲載されている。本研究は
この記事を再検討し、古代オリンピックと日本の体育・スポーツとの一つの接点を明らかにする。4 編からなるこの記事
は、古代オリンピックと中世・近代の欧米における「運動会」
、運動の種類について述べている。著者の北水生は、日本
古来の武芸には古代オリンピックをルーツにもつ古代ギリシャの運動の「訓練的」な性格があると指摘し、当時の日本で
行われている運動は、日本古来の精神と古代ギリシャの精神、イギリスの「娯楽的」な精神とを「折衷して其粹を集めた」
ものだと評した。これは、単なる欧米の模倣ではないスポーツの自国化を認識する中で古代オリンピックを理解しようと
した言説だと言える。
E24
[教育]
8 月 27 日
10:25
史 27 − 005
明治中期三重県における小学校教材としての打球戯
伝統打球戯の復興・継承と学校教育プログラム
○山田 理恵(鹿屋体育大学)
桑名藩藩校・立教館の思想を継承した桑名義塾(明治 5 年創設の励精義塾から改称。同 34 年頃閉鎖)では、白河藩の
心
生
バ
経
発
打毬の系譜をひくと考えられる遊戯「打毬戯」が行われていた。発表者は、さらにその史料収集を進めるなかで、明治中
期三重県内にこの桑名義塾の「打毬戯」と同種の遊戯が存在していたことを示す史料を披見し得た。それは、養正高等
小学校(現三重県津市立養正小学校)訓導・近藤憲夫編『小學遊戯書』(河島文化堂:津市、明治 25 年)の叙述である。
測
編者凡例によると、
「本書ハ小學校生徒ノ身體教練ヲ計ル為此ニ適當ナル遊戯法ヲ蒐集シ傍編者ノ實歴セル所ヲ註シタル
モノ」 で、「遊戯ノ種類ハ可成新奇ノモノ」が選ばれている。114 頁から成る本書には、「男之部」 「女之部」 「男女之部」
に分けて 156 の遊戯が掲載されており、その「男之部 第三十四」が「打球」である。そこでは、この遊戯の特性と意義、
用具と遊戯法 3 種が、図を示しながら解説されている。
本研究では、当時大人数で行える小学校男子児童の最も活発な遊戯と考えられていた「打球」の形態と文化的特徴、教
材としての意義について、桑名義塾の「打毬戯」との比較も含め考察を行うこととする。
E24
[教育]
8 月 27 日
10:45
史 27 − 006
石川県に見る教師たちの「軽体操」理解
○大久保 英哲(金沢大学)
明治 13(1880)年の「鳳至・珠洲二郡教育協議会日誌」は当時の教師たちが初めて直面した「体操」科に対する困惑
や疑問を伝えている。では翌明治 14 年以後、石川県に順次導入されていった体操伝習所の「軽体操」は、そうした教師
方
保
教
人
ア
たちの困惑や疑問を解消し、期待に応えるものであったのか。こうした視点から「軽体操」の内容を点検すると共に、石
川県教育会議事録(明治 18 年、19 年、24 年)に見られる教師たちによる体操科についての議論内容を分析し、石川県
においてどのような「軽体操」理解がなされたのかを明らかにする。このことを通して、日本体育史における「軽体操」
介
の位置づけを再検討することを試みる。
75
哲
史
E24
[教育]
8 月 27 日
11:10
史 27 − 007
唱歌遊戯の成立過程に関する研究(Ⅵ)
伊澤修二の嬉戯(遊戯観)を中心として
○曽我 芳枝(東京女子大学)
これまで筆者は、体育の教材である唱歌遊戯の成立過程について『雅楽録』『芝家日記集』『豊原喜秋日記』を手がか
社
りとして主に保育唱歌遊戯の作成過程の経緯を検討してきた。周知のように保育唱歌遊戯の作成以前の明治 7 年愛知師
範学校の校長であった伊澤修二は唱歌遊戯を実践し、明治 8 年に「唱歌嬉戯ヲ興スノ件」として文部省に建議した。そ
こでは児童における唱歌遊戯の有用性について報告しており、わが国の唱歌遊戯の始まりとされている。また愛知師範
心
生
学校の『小学教則書』でも下等小学校では体操を嬉戯にかえて実施するよう教科として設けていた。こうした伊澤の唱歌
遊戯の取り組みをさらに深めるため、本研究で『雅楽録』にみられる伊澤の保育唱歌遊戯に対する意見を取り上げ検討し
た。そして留学前の児童観・遊戯観をおさえた上で帰国後の唱歌遊戯に対する変化を考察した。その結果、伊澤はクリー
ゲの『The Child』やロンゲ夫妻の『A Practical Guide to the English Kindergarten』ピーボディとマンの『Kindergarten
Guide』に影響を受けていたことが確認され、さらに明治 13 年 4 月の楽舞大演習参観の後、保育唱歌の遊戯の方向が変
化していったことが明らかになった。
バ
経
発
E24
[教育]
8 月 27 日
11:30
史 27 − 008
なぜ投手のアンダースローは今日まで受け継がれてきたのか
プロ野球創立前年(昭和 10 年)までを考察の範囲として
○鈴木 直樹(福島県南会津郡下郷町立下郷中学校)
今日、野球における投手の投球方法はオーバースロー、サイドスロー、アンダースローの三種類に分けられるのが一般
的である。ところが、伝来した当時では、投手がオーバースローで投球することは許されず、肘を伸ばして振り子のよう
測
にして下から投げなければならなかった。このころ米国では頻繁に競技規則の改正が行われ、オーバースローが認められ
たのは 1884 年のことであった。我が国でも、明治 28 年(1895 年)に第一高等学校野球部によって米国の野球規則が
初めて翻訳されたのを機に、投手がオーバースローで投球するようになっている。本研究の目的は、なぜ、投手のオーバー
方
保
教
人
スローが容認されたにも関わらず、その一方で、アンダースローという投球方法が用いられ、また、今日まで受け継がれ
てきたのかを明らかにすることである。アンダースローは容易に習得できるとは言い難く、また、窮屈な姿勢を強いられ
る投球方法でもあるため、それだけの理由がなければ今日まで受け継がれることもなかったはずである。野球が伝来した
明治のはじめからプロ野球創立の前年となる昭和 10 年(1935 年)までを考察の範囲として、その理由を明らかにしたい。
E24
[教育]
8 月 27 日
11:50
史 27 − 009
日本におけるエアロビックダンスの導入過程に関する研究
ジャッキー・ソーレンセンによる活動に着目して
○張 巧鳳(日本体育大学)
日本のスポーツの歴史を遡ってみると、健康づくりの必要性が訴えられはじめた 1980 年代前半には、アメリカで考案
ア
されたエアロビックダンスが日本へと導入された。体力づくり、健康づくりのプログラムとして画期的とみなされたエア
ロビックダンスはしだいに有酸素理論という科学的理論から離れていき、ファッション性と激しさを求める方向へと進ん
でいった。その導入過程において 1980(昭和 55)年にエアロビックダンス考案者であるジャッキー・ソーレンセンが
介
ADI 社(Aerobic Dancing.Inc)の日本支社を創設した。しかしながら、日本国内で、ジャッキー・ソーレンセンによる普
及活動に関する史料記載がほとんどされなく、
当初の様子について明らかにすることはできないままである。したがって、
本研究では、日本におけるエアロビックダンスの導入過程の一環として、1980 年代にエアロビックダンスの考案者ジャッ
キー・ソーレンセンがどの様にエアロビックダンスを日本へ紹介したかを明らかにし、そして日本におけるジャッキー・
76
01 体育史
ソーレンセンの活動がなぜ注目されていなかったのかについて検討し、外来スポーツに対する日本国内的な受容の一側面
を明らかにしようとする。
E24
[教育]
8 月 27 日
13:00
史 27 − 010
アイルランドにおけるラグビーのはじまり
トリニティ・カレッジのフットボールクラブ誕生(1854 年)から IRFU の設立(1879 年)まで
○榎本 雅之(滋賀大学)
アイルランドのラグビーは国家の枠組みを超えて一つの代表チームを作り出してきた。ただし、実情は中産階級内部に
おける水平的統合であり、階級や宗派を縦断する形の垂直的統合が図られているわけではないと言われている。アイルラ
哲
史
社
心
ンドにおけるラグビーの草創期は、ダブリン大学のトリニティ・カレッジでフットボールクラブが誕生(1854 年)し、
その関係者が各地にフットボールを広め、そしてインターナショナル・マッチ開催のために、全アイルランドを統括する
組織、アイルランド・ラグビー連盟(Irish Rugby Football Union)が設立(1879 年)される期間である。本研究では、
ここに焦点を当て、Handbook of Cricket in Ireland、全国紙 Freeman’s Journal、トリニティ・カレッジのフットボール
クラブ 150 年史などを用い、アイルランドでラグビーがどのように伝播し、普及していくのかを明らかにし、近代スポー
ツ発祥の地イングランドに地理的に隣接し、19 世紀を通じて帝国の一部であったアイランドにおけるラグビーのはじま
りについて検討する。
E24
[教育]
8 月 27 日
13:20
史 27 − 011
日本のバスケットボールにおけるゾーンディフェンスの採用過程(1930 年代~ 1940 年
代初期)
○小谷 究(日本体育大学)
本研究では、1930 年代〜 1940 年代初期の日本におけるバスケットボール競技のディフェンス戦術に着目し、1930
生
バ
経
発
測
年代にほとんど採用されることがなかったゾーンディフェンスが、1940 年代初期に採用されるようになった経緯につい
て明らかにしたい。1930 年代の日本では、ディフェンス戦術としてマンツーマンディフェンスが多くのチームに採用さ
れ、ゾーンディフェンスを採用するチームはほとんどなかった。そのため、当時のプレイヤーはゾーンディフェンスを打
方
ち破るためのオフェンス戦術であるゾーンアタックの経験を持っておらず、また、オフェンス戦術としてスクリーンプレ
イが用いられたことは、ゾーンディフェンスの有効性を発揮しやすくするものであった。さらに、1930 年代後半の日本
ではファストブレイクが多くのチームに採用されており、ゾーンディフェンスの必要性が高まっていた。このような状況
を背景として、1930 年代末頃からゾーンディフェンスを採用するチームが現れ出し、1940 年代初期にはゾーンディフェ
ンスが主要なディフェンス戦術のひとつとなった。
E24
[教育]
8 月 27 日
13:40
史 27 − 012
アメリカ人宣教師マリアナ・ヤング女史とバスケットボールの接点
○柿山 哲治(福岡大学スポーツ科学部)
保
教
人
ア
明治 35 年に撮影された活水女學校屋外体操場にバスケットゴールが設置されている史実は確認されているものの、ヤ
ング女史とバスケットボールの接点については明らかにされていない。本研究では、ヤング女史の出身校であるオハイオ
ウェスレヤン大学と卒業後4年間勤めたアレガニーカレッジにおけるバスケットボール史について調査を行った。その
介
結果、オハイオウェスレヤン大学の体育授業でバスケットボールが導入されたのは明治 30 年であり、ヤング女史は明治
26 年 6 月に当大学を卒業しているため、ここでバスケットボールと接した可能性は低いと考えられた。また、ヤング女
77
哲
史
社
心
生
バ
経
史は明治 27 年 9 月から明治 30 年 7 月までアレガニーカレッジでラテン語およびギリシャ語を担当しながら、当カレッ
ジのヒューリングスホールで教務助手を兼任していた史実が発掘された。しかも、当カレッジに体育館が設置されたのは
明治 29 年であり、それ以前は、ヒューリングスホールでバスケットボールを含めた女子の体育授業が行われていた。し
たがって、ヤング女史は、活水女學校着任直前に勤めていたアレガニーカレッジでバスケットボールと接した可能性が示
唆された。
E24
[教育]
8 月 28 日
9:00
方
1920-30 年代の学校体育における「技術」をめぐる問題
大谷武一と二宮文右衛門の著書を手がかりとして
○藤川 和俊(東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科)
学校体育史研究では、1913 年の「学校体操教授要目」作成以後、
「技術の末に走る」ことが繰返し戒められていたに
もかかわらず、実際には、1936 年の要目改正に至るまで「技術」中心の授業が行われることが多かったとされている。
このような問題について検討することは、学校体育の中心に「技術」が定着していく過程を明らかにすることにつながる
と思われるが、なぜ「技術」中心に傾倒していったのかということはこれまでほとんど明らかにされてこなかった。
そこで、本発表では、1920-30 年代の学校体育に焦点を当て、「技術」中心の授業が行われていた要因を明らかにする
ことを目的とした。そのために、当時の体育界における中心的な人物であり、二度の要目改正に携わった、大谷武一と二
宮文右衛門の著書を主な史料として検討、考察した。その結果、両者ともに「技術」が児童・生徒の運動への興味を高め
ると考えていたことが明らかとなった。つまり、このような要因に支えられ、「技術」中心の授業が定着していったと考
えられる。
発
測
史 28 − 013
E24
[教育]
8 月 28 日
9:20
史 28 − 014
戦前の北九州における小学校体育
昭和 9 ~ 14 年の北九州体育指導者協会の活動を中心として
○大熊 廣明
北九州体育指導者協会は昭和 4(1929)年に北九州 5 市(門司市、小倉市、戸畑市、若松市、八幡市)の小学校およ
び中等学校の教員によって設立された。その主な事業の一つに同協会が主催した学校体育研究会があった。本研究では、
保
教
人
ア
介
第 1 回~第 5 回(昭和 9 ~ 14 年)の学校体育研究会に関する資料を用いて、同協会の小学校体育に関する活動内容を
明らかにする。学校体育研究会では、会場校の体育紹介(学級体操の実演、課外体育の実演)
、協会指定学級の実演、体
育問題研究発表、会員座談会、講師による講評などが行われた。各研究会の要録には実演学級の体操科指導案が残されて
おり、当時の小学校の体育授業の様子を知ることができる。また、課外体育の記録からは当時の小学校における課外体育
の種目を知ることができる。さらに、体育問題研究発表の題目からは当時の教師が関心を寄せていた事柄を知ることが可
能である。そのほか、同協会会員は昭和 11 年に改正された学校体操教授要目や体育館に関する研究にも取り組み、研究
物を残している。これらの北九州体育指導者協会の活動を通して、戦前の北九州地区における小学校体育の一端を明らか
にしたい。
E24
[教育]
8 月 28 日
9:40
史 28 − 015
昭和戦前期における高等女学校・実科高等女学校体操科受持ち教員について
『中等教育諸學校職員録』
(1930年、1934年)、
『高等女學校女子實業學校職員録』
(1939年)を手懸かりに
○掛水 通子(東京女子体育大学)
本研究の目的は、昭和戦前期における高等女学校・実科高等女学校体操科受持ち教員の実態を明らかにすることである。
78
01 体育史
1930(昭和 5)年、1934(昭和 9)年発行『中等教育諸學校職員録』
、1939(昭和 14)年発行『高等女學校女子實業
學校職員録』を用いて、全国の高女・実科高女体操科受持ち男女教員配置学校数、男女別教員数、受持ち教科数、受持ち
教科名等を明らかにすることにより、女子体育教師の確立過程を検討する。
高等女学校では、体操科受持ち女子教員配置学校の割合は、昭和 5 年、9 年の 7 割 6 分から昭和 14 年には 8 割 1 分
に増加した。体操科受持ち教員中女子教員の割合は、昭和 5 年の 4 割 8 分から昭和 14 年には 5 割 5 厘となり半数を超
えた。体操科 1 科のみの受持ち女子教員の割合は、昭和 5 年の 6 割 8 分から昭和 14 年には 7 割 2 分に増加した。第二
哲
史
次改正学校体操教授要目(昭和 11 年)で、高女にも弓道、薙刀を加えても良いこととなり、昭和 14 年には弓道、薙刀
受持ち教師が増加し、弓道は男子、薙刀は女子教師が圧倒的に多かった。昭和 14 年には高女体操科受持ち男子教員中
34 人が応召中であり、女子体育教師がさらに必要とされたと考察される。
E24
[教育]
8 月 28 日
10:05
史 28 − 016
関東大震災(1923 年)後の東京市における「復興公園」の設置について
錦糸、浜町、隅田の三大公園を中心に
社
心
生
○大林 太朗(筑波大学大学院)
関東大震災(1923 年)からの帝都復興事業を通して、東京市には 55 の「復興公園」が新設された。それらは公園史
において「日本における近代的公園の先駆け」と評価され、都市計画の分野では江戸時代からの原風景を一変させた大都
市建設事業の一部として位置付けられている。
本研究はその中で、とくに運動施設(プール、競技場、野球場、テニスコート等)が整備された三大公園:隅田、浜町、
錦糸に焦点を当て、被災地の中心ともいえる東京市にスポーツ公園が設置された経緯とその展開を検討した。史料には復
興局や東京市公文書(
『公報』含む)
、新聞や『都市問題』等の雑誌を用い、①建設を主導した復興局公園課長:折下吉延
のスポーツに関する認識、②各公園の特徴と市民による利用状況の分析を試みた。
その結果、折下は「積極的なリクリエーションの場」として各公園を整備したこと、そしてそこでは学生スポーツとと
バ
経
発
もに市民対象のラジオ体操やプール解放、また「俳優野球リーグ戦」等の興行的イベントが催されていたことが判明し、
三大公園が戦前東京市における大衆スポーツの舞台として機能していたことが示唆された。
E24
[教育]
8 月 28 日
10:25
史 28 − 017
1920-30 年代の「(大日本)体育学会」について
事典用解説を念頭に
○木下 秀明
文科と理科の新大学設立に取り残された東京高等師範学校体育関係教官が「体育ノ改善進歩ヲ計ル」目的で設立したの
が、あえて「学会」と称した 1922(大正 11)年の「体育学会」である。「定款抄録」は事業の 1、2 項を「略」しているから、
主要事業は、3 項の目黑書店発行市販月刊誌『体育と競技』
(1922 年 3 月- 1940 年 12 月)編輯と、4 項「体育ニ関ス
ル講習会並ニ講演会」の一部である文部省講習会を模した夏冬休暇中の体操教員対象の講習会で、学会「会員」の参加を
優先優遇した。本会は「学会」とは名ばかりの体操教員対象の啓蒙普及団体に過ぎなかったのである。1928 年に「大日
本体育学会」と改称したのは、1924 年から体育書出版に着手した「日本体育学会」(代表真行寺吉太郎/朗生-日体卒)
を意識したからである。毎学期会員配布のパンフレット発行は、開始時期は不明だが、重荷だったようで、「大日本体育
学会パンフレット」は 1935 年の 25 号を終刊とした。初期の『体育と競技』には研究欄の確立を志向した時期もあるが、
「学会」らしい事業の「研究発表会」は、
文理科大学開学の 1929 年夏期体育講習会時の第 1 回と翌年の第 2 回だけである。
測
方
保
教
人
ア
介
79
哲
史
E24
[教育]
8 月 28 日
10:45
史 28 − 018
第 10 回極東選手権競技大会における満洲国参加問題の一考察
新聞報道を手がかりとして
○冨田 幸祐(一橋大学大学院)
極東選手権競技大会(以下極東大会)は、1934 年 5 月に行われた第 10 回大会を以て、その 20 年余りの歴史に幕を
社
閉じることとなる。その要因となったのは「満洲国」(以下「」を省略)の参加をめぐる日本と中国の相容れることのな
い対立であった。満洲国が極東大会に参加を希望して以降、日本は満洲国からの激しい要望を受けて参加を推進する一方、
中国はその参加を真っ向から反対した。大会前に開かれた上海会議では満洲国の参加は認められず、大会中に開催される
心
生
バ
経
発
総会において、今度は憲法改正問題として議論されるに至るが、解決点を見出すことは出来ずに中国が総会を途中退席し、
その行動を非難した日本がフィリピンと共に、新たに東洋選手権大会を創設することとなる。これまで満洲国の参加問題
に対する日本国内における体協以外の動きについては、わずかな団体しか明らかにされてこなかった。本報告では、これ
まで明らかにされてこなかった点、すなわち新聞各社の参加問題に対する社説や、各種団体(競技団体、右翼団体、学生
等)の動きに関して、日本と満洲国において発行されていた新聞を主な手がかりとして、明らかにし考察する。
E24
[教育]
8 月 28 日
11:10
史 28 − 019
戦時中及び戦後初期の中等学校体操科教員免許取得者について
○古川 修(東洋大学文学部)
戦前の教員検定制度は 1908(明治 41)年の「教員検定に関する規程」改正によって、ほぼ確立された。この規程は
1949(昭和 24)年 5 月、
「教育職員免許法」が公布されるまで続いた。免許制度のスタート以来、
「教員免許台帳」に
記載された体操科教員免許取得者は 2 万人をはるかに超えている。官立の養成校出身者は 7 千人を超え、無試験検定合
測
格者は 1 万 2 千人を超え、文検体操科合格者は 3 千人弱である。
「文部省年報」では 1941(昭和 16)年度から、1946
(昭和 21)年度までの 5 年間、中等学校教員免許取得者数の公表が見られない。新制度に移行する以前の体操科教員養
成に関わる全体像を掴むためには、
終戦を挟んだこの数年間の免許取得者の把握は不可欠である。そこで、
「教員免許台帳」
方
保
教
人
に記載されている 1941(昭和 16)年 4 月以降から 1950(昭和 25)年 3 月までに体操科に関わる免許取得者を抜き出し、
取得事由別に整理しようと試みた。その結果、7 千名余りの体操科教員免許取得者を明らかにできた。
E24
[教育]
8 月 28 日
11:30
史 28 − 020
戦時下における労務動員を目的とした小学校児童の結核対策
○三井 登(名寄市立大学短期大学部)
本報告は、戦時下における労務動員を目的とした小学校卒業予定者に対する結核対策(身体検査)について、文部省、
厚生省の施策に着目し、施策の成立の背景と具体的施策を明らかにすることを目的とする。小学校新卒者(以下新卒者)
に対する労務動員計画の具体化は、1939 年 9 月の職業紹介に関する通牒(厚生省職業局長より各地方長官宛)による。
ア
動員計画は新卒者を「新規重要給源」に位置づけ、厚生省は軍需工場等への就職を求めた。以後新卒者は「毎年度の労務
介
「“ 産業豆戦士 ” の中に最近結核により退職する者が少なくないので、厚生省職業局では来春学窓を巣立つ全国約五十万の
動員計画(国民動員計画)において、
つねに重要な動員の対象」
(西成田豊『労働力動員と強制連行』山川出版社、2009 年、
5 頁)となる。工場で働く新卒者の健康状態は早くも問題となり、1941 年 11 月 12 日付『朝日新聞(東京)』
(日刊)は、
就職学童を来月早々豫め一斉検診をしてから職場に送り出すことに決定」と報じた。学校を介して行われた健康な労働力
確保の為の身体検査だが、日本学校保健会編『学校保健百年史』
(第一法規出版、1973 年)は施策の意味や位置づけ等
検討していない。
80
01 体育史
E24
[教育]
8 月 28 日
11:50
史 28 − 021
近・現代における祭祀芸能に関する史的考察
奉納形態に着目して
哲
史
○松本 彰之(日本体育大学大学院)
「まつり」は、古代に生まれ中世に発展し近・現代にまで続いている。人びとにとって、神仏は重要な意味のある存在
である。人びとは、神仏から豊作・豊漁という大きな喜びを与えられ、また神仏に祈ることで自然災害や疫病災厄から免
れると信じて願う。多種多様な日本の「まつり」の原点は「神仏を迎え、もてなし、お送りする」ことである。「まつり」
社
は、神仏に喜んでもらうという人びとの思いを込めた「もてなし」である。
神とともにひとときをすごすときに、繰り返される人びとのさまざまな行為から生まれた祭祀芸能により、人びとは神
をもてなす喜びを得るだけでなく、その喜びを得る行為を芸能からさらに大きな価値あるものへ、自らが生きる証を確か
められる文化、
芸術へとして成長させてきた。本来「まつり」はいうまでもなく、人間の生活における宗教的な営みであっ
た。ゆえに、人びとはそれぞれの時代に、神仏を祀り芸能を奉納してきていたのだ。本研究では、主に近・現代において、
人びとが神仏を祀り、さまざまな祭祀芸能を奉納してきたことに焦点をあてて、その奉納の形態の意味を史的考察により
明らかにする。
E24
[教育]
8 月 28 日
13:00
心
生
バ
史 28 − 022
国民体育大会の「地方開催」への展開
石川県による第二回大会(1947)の招致運動に着目して
○村井 友樹(筑波大学大学院)
都道府県持回り開催により発展してきた国民体育大会(以下、国体)は、各都道府県のスポーツ施設やスポーツ指導体
経
発
制を充実させるなど日本のスポーツ振興に一定の貢献をしてきた。一方、都道府県持回りによる国体の開催は、国体の肥
大化や過度な選手強化に繋がってきたことも指摘されている。この賛否両論のある国体の都道府県持回り開催の始まりを
解明する一端として本研究では、従来の慣例を覆して「地方開催」の先陣となった石川県による第二回大会(1947)に
測
着目し、なぜ一地方都市の石川県が第二回大会の招致を成功させることができたのか、その要因を北国毎日新聞や宮崎資
料などを用いて探った。その結果、第一に非戦災都市。第二に大島鎌吉の貢献。第三に結核対策の訴え。第四に政府補助
金の獲得成功。第五に石川県経済界の支援という要因が石川県の第二回大会招致成功に大きな影響を与えていたことが明
らかになった。これら要因による石川県の第二回大会招致の成功は、その後の各都道府県による招致運動を活発化させ、
国体の都道府県持回り開催の確立を促したと考えられる。
E24
[教育]
8 月 28 日
13:20
保
史 28 − 023
人事院における日本レクリエーション協会指導者資格検定推薦委員会の設置に関する研究
1954(S29)年総理府経済審議庁原義綴(審総庶)をもとに
○岩佐 直樹(中京大学大学院)
方
來田 享子(中京大学)
教
人
1947 年に制定された国家公務員法は、翌年に大幅に改正され、人事院が設置された。人事院が同法に基づいて公務員に
レクリエーション活動を奨励していたことは、これまでの検討で指摘されている。この人事院の動向とレクリエーション
運動の普及を目指していた日本レクリエーション協会
(以下、
レク協)
との関わりについては検討されていない。本報告では、
ア
この点に着目し、レク協役員と人事院職員から構成され、1954 年に人事院内に設置された推薦委員会の目的と仕組みにつ
いて 1954 年の総理府経済審議庁原義綴(審総庶)を用いて検討する。検討の結果、委員会の目的は、制定から 3 年を経
たレクリエーション指導者資格検定規程を受験する公務員の窓口となり、彼らをレク協に推薦することであり、そこでは
介
一定の基準が設けられていた。この基準は実質的な指導者資格検定規程の合否判定の基準として機能していたが、公務員
への特段の配慮をするものではなかった。以上のことから 1954 年頃のレク協の普及活動の重点のひとつは指導者養成であ
81
哲
史
社
り、当時の法制度上、一定の制限があった公務員をターゲットに含めて、これが実施された可能性があることが示唆された。
E24
[教育]
8 月 28 日
13:40
史 28 − 024
1972年第11回オリンピック冬季競技大会(札幌大会)の開催準備期における滑降競技会場移転論争
IOC 理事会・総会議事録および IOC と札幌大会組織委員会との往復書簡の検討を中心に
○石塚 創也(中京大学大学院)
來田 享子(中京大学)
札幌大会の開催準備期には、恵庭岳滑降競技場の建設と自然保護をめぐる議論がなされた。大会後の競技施設の撤去と
心
跡地への植林は、オリンピック・ムーブメントにおける環境保護対策の最も初期の事例の一つとされる。一連の議論では、
滑降競技会場を恵庭岳から移転することも検討された(以下、移転論争)。先行研究では、北海道自然保護協会理事長が
滑降競技会場の移転を求める書簡を国際オリンピック委員会(以下、IOC)会長に送付したことが指摘されている。そこ
生
バ
で本研究では、移転論争の詳細を明らかにすることを目的とした。本研究の結果、移転論争は、先行研究で示された移
転を要求する書簡の送付に起因したことが明らかになった。また、移転論争は、恵庭岳の使用の是非について問われただ
けでなく、富良野のスキー場の改良をめぐる折衝をも包含していたことが示唆された。移転を要求する書簡を受けた IOC
会長は、恵庭岳の使用が札幌大会開催そのものに影響することを懸念し、これを考慮すべきかどうかを大会組織委員会に
書簡を通じて問い合わせた。このような書簡のやり取りが存在した一方で、IOC 理事会・総会では移転論争について触れ
られることはなかった。
経
発
測
E24
[教育]
8 月 28 日
14:05
史 28 − 025
16 世紀ドイツにおける剣士団体「羽剣士団」の成立事情
○楠戸 一彦(環太平洋大学)
15 世紀のドイツには、
「市民」身分の剣術師範たちが結成した「マルクス兄弟団」
(Marxbrüderschaft)と称する剣士
団体が存在した。この団体は、1487 年 8 月 10 日に神聖ローマ皇帝フリードリッヒ 3 世より、
(1)「剣術師範」の呼称権、
方
(2)
「剣術興行」
(Fechtschule)の開催権、
(3)剣術の教授権を独占的に保証された「特権状」(Privilegierter Brief)を
与えられた。この特権状は、その後レオポルド 1 世(1669)に至るまでの各皇帝によって更新された。
しかしながら、16 世紀後半になると、
「マルクス兄弟団」に所属しない剣術師範が登場し、剣術を教え、剣術興行を開
保
教
人
ア
介
催した。彼らは「羽の自由剣士」
(Freifechter von der Feder)あるいは「羽剣士」
(Federfechter)と称し、
「マルクス兄弟団」
の剣術師範と対立し、マルクス兄弟団と同様の特権状の取得を熱望した。その結果、羽剣士は 1607 年 3 月 7 日皇帝ル
ドルフ 2 世より特権状を獲得した。
本発表は、上述のような剣士団体に焦点を当て、特に羽剣士団の成立事情について考察を加える。(本研究は、科学研
究費補助金(基盤研究(C)
)
、課題番号:25350815、に基づいている。)
E24
[教育]
8 月 28 日
14:25
史 28 − 026
Charles Caldwell の Thoughts on Physical Education(1836)にみる身体教育論
身体教育における身体と精神の検討
○榊原 浩晃(福岡教育大学)
Charles Caldwell(1772-1853)は 19 世紀のアメリカの医学者であり、1796 年にペンシルヴァニア大学医学部で医学
博士の学位を取得した。1834 年に発刊された Thought of Physical Education(1834, Boston)と題する彼の著書が確認
された。その著書は 1833 年 11 月 6 日から 7 日にケンタッキー州レキシントンの教員代表大会で「身体教育の考え方
(Thoughts onPhysical Education)
」をめぐって講演した際の記録として記述されたモノグラフである。2 年後、イギリス
82
01 体育史
のエジンバラで再版された同名の著書(1836, Edinburgh)には内容がほぼ踏襲されつつも、註と文献が加筆されている。
こうした単行本を検討しなければならないのは、Samuel Smiles の初期の単行本である Physical Education(1838)の叙
述の中で Caldwell の単行本からの引用がなされ、影響が及んでいたからである。当時の英米の医学者らの専門書や彼ら
の知見が把握できる。本研究は、特に、Caldwell が主張した身体教育における身体と精神(知性や徳性を含む)の関係や
身体教育の目的と意義及び根本的な考え方を明らかにした。
E24
[教育]
8 月 28 日
14:45
史
社
史 28 − 027
オリンピック憲章における参加資格規定関連条文の変遷に関する考察
○平見 俊之(中京大学)
來田 享子(中京大学)
IOC は設立当初より、アマチュアリズムを重視し、スポーツから物質的利益を一切得ない者がアマチュアであり、アマ
チュア競技者のみがオリンピック競技大会に参加できるというという参加資格規定を確立した。しかしながら、現在では
プロフェッショナル競技者の参加を容認している。そうした流れを受けて、従来の研究では、アマチュアリズムの生成・
崩壊過程の研究に重きを置いたものが多くなっている。本研究では、1908 年から 2011 年までに発行された全 56 版の
オリンピック憲章における参加資格規定の変遷を明らかにした上で、1894 年から 1985 年までの IOC 総会、1921 年か
ら 1975 年までの IOC 理事会の議事録を中心に、参加資格規定に関する議論を検討し、参加資格規定が変更される際に
どのような議論が行われたのかについて明らかにした。その結果、社会状況の変化、関係 IF との議論の影響などを背景
にして、条文の枝葉に変化は見られたものの、IOC が、スポーツに物質的利益以外を求める競技者を大会に参加させる、
という根幹の理想には変化は加えられていなかった。この理想はクーベルタンの理想とほぼ合致した内容となっており、
IOC が求める競技者像が一貫していることを示している。
E24
[教育]
8 月 28 日
15:10
哲
生
バ
経
発
史 28 − 028
Thomas D.Wood の学校衛生と体育論をめぐる思想形成の推移
Selections from Addresses by Thomas D. Wood(1932)の資料価値の検討
○中牟田 佳奈(福岡教育大学大学院)
心
榊原 浩晃(福岡教育大学)
測
方
Thomas D.Wood はアメリカにおける新体育の提唱者として知られる。演者らは、旧福岡学芸大学(現在の福岡教育大
学)の岡部平太教授の関係資料からこれまで知られていない小冊子資料を発掘した。これは Wood のコロンビア大学の
退職記念論集ともみなされる。Wood 自身の発表論説のみを時系列に綴った中には、先行研究でも取り扱われなかった論
説も含まれている。Wood の思想形成過程をより精緻化するためには、この小冊子資料は欠かせない。Wood の新体育論
をめぐっては、これまで内外においても多くの先行研究が明らかにしてきた。小冊子資料の中でも初期の体育論の萌芽は
1893 年の論説にみられ、1903 年の論説では学校衛生が学校教育に位置づけられている。1910 年の『健康と教育』は
思想形成上では画期をなしている。さらに、健康(保健)と体育の関連は 1927 年の『新体育』にも継承されるのである。
1932 年にコロンビア大学を退職するまでの論説のいくつかをこの小冊子資料はカバーしている。本研究では、小冊子資
料そのものの価値を明らかにすると共に、Wood の学校衛生と体育論をめぐる思想形成の推移とその要点を看取した。
E24
[教育]
8 月 28 日
15:30
史 28 − 029
空白の日伯スポーツ交流
1933 年「南米派遣日本陸上選手団」の遠征
○曾根 幹子(広島市立大学)
保
教
人
ア
介
1933 年に日本移民渡伯 25 周年記念事業として実施された「南米派遣日本陸上選手団」の遠征は、わが国が南米に派
83
哲
史
遣した初の公式スポーツ選手団であり、日伯スポーツ交流の嚆矢となったが、わが国のスポーツ史において等閑に付され
たままとなっている。本研究は、先の遠征における選手らの動向や交流の実際を明らかにし、日伯スポーツ交流史の空白
を埋めることを目的としたものである。当該研究に関しては日本体育学会第 56 回大会において、研究経過報告をしたが
(p.170)、その際、外務省に報告された内容と、現地日系新聞(聖州新報社)との記事に齟齬があり、選手の動向に不確
かな箇所があることを課題としてあげた。しかし最近、現地調査によって選手が訪れたとされる「東山農場」(サンパウ
ロ州カンピーナス市)で新た資料を発掘したことから、先の課題が解明された。同時に、選手の動向に関しても、新しい
事実が判明した。本遠征を契機に始まった日伯スポーツ交流(陸上)は戦後も続き、ブラジルの陸上界に多大な影響を与
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
84
えた。その契機として先の遠征があったことが、調査結果から明らかになった。当日、詳細に報告する。
E24
[教育]
8 月 28 日
15:50
史 28 − 030
国際女子スポーツ連盟(FSFI)の消滅 / 解散時期と状況
国際陸上競技連盟関係史料および FSFI 事務局 G.Ganeux 発文書の検討から
○來田 享子(中京大学)
本報告の目的は、先行研究により複数の異なる見解が示されてきた国際女子スポーツ連盟(以下、FSFI)の消滅 / 解散
時期や当時の状況について、新たな一次史料を用い、追補することである。この問題の解明は、FSFI の消滅 / 解散前後
の各国内女子陸上競技統括組織の動向を歴史的に位置づけるためにも欠かせない。1921 年に設立された FSFI は、女性
スポーツを統括する世界初の組織であり、いわゆる「女子オリンピック大会」の開催とオリンピック大会への女子陸上
競技の採用をめぐる IOC および国際陸上競技連盟(以下、IAAF)との議論によって知られている。従来は、IAAF による
女子陸上競技統括に伴い、FSFI は 1936 〜 1937 年に消滅したとする見解や 1936 年 8 月の総会で自ら解散を決定した
とする見解が示されてきた。本報告では IAAF の関連史料と FSFI 事務局長 G.Gagneux による文書を用いた。検討の結果、
FSFI の消滅 / 解散の時期は㓛刀(2007)が指摘した「1937 年 1 月」説が有力とみられた。その一方で IAAF 側の史料から、
IAAF は FSFI にいくつかの条件を提示しつつ、1936 年度内の運営終了を求めていたことが明らかになった。
E24
[教育]
8 月 28 日
16:10
史 28 − 031
旧東ドイツスポーツ関係者の言説
K. フーンと I. ガイペルへのインタビュー調査を中心として
○寳學 淳郎(金沢大学)
本研究は、社会主義の模範と言われ、スポーツでも世界の注目を集めた東ドイツのスポーツ史を再構成するための基礎
的研究として、ドイツ再統一後 20 年以上を経た今、東ドイツスポーツ関係者にインタビュー調査を行い、彼らが東ドイ
ツスポーツ及びその周辺について語るものを検討するものである。調査は可能な限り様々な分野の数多くの関係者に実施
することが望ましいが、先ずは自叙伝的著作を著した関係者への可能性を探った。今までに彼らの自叙伝的著作の内容を
分析してきたので、彼らの生い立ちや関心が大筋理解されているからである。それにともない、調査の内容は自叙伝的著
作の内容が主となった。インタビューは 2009 年から 2012 年にドイツにおいて実施した。
今回は、東ドイツの著名なスポーツジャーナリストであった K. フーンと女性陸上選手であった I. ガイペルへの調査を
中心に発表する。東ドイツスポーツのポジティブな側面やネガティブな側面などについて、二人の言説には相異があった。
二人の東ドイツ及び再統一後のドイツにおける職業、地位、経験、立場などが強く反映していると考えられ、恣意的な言
説には慎重な取り扱いが必要と思われる。
00
体育哲学
哲
01
体育史
史
02
体育社会学
社
03
体育心理学
心
04
運動生理学
生
05
バイオメカニクス
バ
06
体育経営管理
経
07
発育発達
発
08
測定評価
測
09
体育方法
方
10
保健
保
11
体育科教育学
教
12
スポーツ人類学
人
13
アダプテッド・スポーツ科学
ア
14
介護福祉・健康づくり
介
85
哲
史
社
ぽらんホール[農]
8 月 27 日
9:00
社 27 − 001
日本人女子サッカー選手のキャリアプロセスに関する研究
○上代 圭子(東京国際大学)
東明 有美(Pass & Go Co., Ltd.)
野川 春夫(順天堂大学)
金井(2010)は、働く女性にとって結婚や出産・育児はキャリアトランジションのきっかけになるとし、伝統的性役
割観に対抗した就職の継続や再就職の場合、
両立の問題が重くのしかかるとしている。スポーツ界では未だに性役割やジェ
ンダーステレオタイプが深く根ざし、行動や態度、価値観の一部になる(渡辺 , 2009)ことから、スポーツ選手のキャ
心
生
バ
経
発
リアプロセスにも伝統的性役割観が影響し、結婚や出産を理由に引退していると思われる。
そこで本研究は、①「婚活」
「結婚」
「出産」をキーワードとして日本人女性アスリートのキャリアプロセスを明らかに
することと、② Role Exit Theory の有効性を検証することを目的に実証研究を行った。
調査方法は、Drahota & Eitzen(1998)の「The Role Exit of Professional Athletes」の調査方法を援用している。トッ
プリーグでプレー経験がある女子元サッカー選手 20 人を有意に抽出し、半構造化の直接面接調査を実施した。調査結果
を Role Exit Model のステージに当てはめ、キャリアプロセスの特徴を明らかにした。また、これらの結果を基に、Role
Exit Theory の有効性を検証するとともに、Role Exit Model の修正モデルの構築を試みた。
ぽらんホール[農]
8 月 27 日
9:25
社 27 − 002
生涯スポーツとしてのバレーボール・キャリアパターンに関する一考察
金沢市中高年トリムバレーボール連盟登録愛好者調査から
○佐川 哲也(金沢大学)
トリムバレーボールは、トリムボールを使用する 9 人制のバレーボールであり、金沢市中高年トリムバレーボール連
測
盟によって平成 2 年 10 月に創設され、毎日どこかで必ずトリムバレーボールが行われているほど石川県下に広がりつつ
ある。同連盟の愛好者を対象とした調査では、6 人制・9 人制・ソフト・トリムを経験しているバレー一筋の人から、は
じめてトリムバレーボールを体験する人まで、多様なバレーボール・キャリアパターンを確認することができた。また、
方
トリムバレーボール継続理由では、生理的欲求・社会的欲求・文化的欲求のいずれもが高い割合を示しており、運動欲求
の充足だけでない魅力を有していることが確認できた。6 人制から 9 人制へと繋がり、新たな愛好者を加えながらソフト・
トリムへと 70 歳を超えて親しむことができるバレーボールのキャリアを確認することができる。
保
教
人
ぽらんホール[農]
8 月 27 日
9:50
社 27 − 003
身体障害児のスポーツキャリア形成に向けたパラリンピアンのスポーツキャリア分析
○海老原 修(横浜国立大学教育人間科学部)
勉強ができる児童生徒が委員長はじめクラスの要職を務める学業業績と人格特性のレリバレンスは学校に内面化された
文化装置であるがその関係性は次第に色褪せる。
両者が元来異質であるからに他ならないからだ。それでもトップアスリー
ア
トがコーチングにもマネジメントにも秀でるとの信条が体育・スポーツ領域では堅持され、その妄信は専門性を否定する
虚構を構築する。近年でもトップアスリートが小学校体育に派遣される文部科学省・スポーツコミュニティの形成促進プ
ロジェクトに現出し、小学校体育の指導体系をおざなりとする事例となる。がしかし、スポーツの高度化が大衆化を先導
介
する噴火型モデルは双峰型モデルに取って代わられつつある。オリンピック選手の活躍が生涯スポーツの発展や児童生徒
の体力低下に明確な連関性をもたないと確認できるからだ。この関係性を障害者にあてはめると、高度化と大衆化がどの
ような実情にあり、いかなる方向にあるのか、不明のままである。本研究では元パラリンピアンのうち、中途障害者の発
症・受傷のスポーツキャリア分析を手がかりに、特別支援学校の実情を勘案しながら、身体障害児のスポーツキャリア形
86
02 体育社会学
成のあり方に言及する。
A7[農]
8 月 27 日
9:00
哲
社 27 − 004
日本とカナダ間における青年の野外スポーツの参加動機と阻害要因の類似・相違点について
○伊藤 央二(順天堂大学スポーツ健康医科学研究所)
岡安 功(広島経済大学)
山口 志郎(流通科学大学)
北村 薫(順天堂大学大学院)
本研究の目的は、日本とカナダ間における青年の野外スポーツの参加動機と阻害要因の類似・相違点を比較検討する
ことである。日本とカナダの学部生を対象に便宜的抽出法を用いた質問紙調査を実施した。回収数は、日本人 328 名、
史
社
心
ヨーロッパ系カナダ人 163 名であった。野外スポーツの参加動機に関しては、Markus and Kitayama(1991)の文化的
自己観の概念をもとに Walker ら(2001)が選択したレクリエーション経験選好尺度の項目を、阻害要因については、
Wilhelm Stanis ら
(2009)
の尺度を援用した。先行研究で報告された参加動機の 5 つの因子「自然」、
「自己再考」、
「自立」
「孤
、
独」
、「交流」、阻害要因の 3 つの因子「個人的」
、
「対人的」、「構造的」ごとに日本とカナダ間で類似・相違点の比較検討
を行った。文化(日本 vs. カナダ)を独立変数、参加動機・阻害要因のそれぞれの因子の平均値を従属変数としたホテリ
ングの T 二乗検定の結果、参加動機に関する「自己再考」
、
「自立」
、「孤独」の 3 因子においてカナダ人は日本人よりも
有意に高く、阻害要因に関する「対人的」と「構造的」の 2 因子において日本人はカナダ人よりも有意に高い平均値を
示していることが認められた。
A7[農]
8 月 27 日
9:25
バ
経
社 27 − 005
成人男女の実施種目とスポーツ活動歴との関係
スポーツライフ・データ 2012 の二次分析より
○大勝 志津穂(愛知東邦大学)
生
來田 享子(中京大学)
発
測
本研究では、スポーツライフ・データ 2012(SLS2012)を用いて、成人男女における過去 1 年間の実施種目とスポー
ツ活動歴との関連を明らかにする。
筆者は愛知県サッカー協会に登録する女性選手のスポーツ経験から、成人期以降にサッ
カーを始めた人が 4 割いることを明らかにし、家庭婦人バスケットボール登録者との違いを述べた。しかし、この結果
方
を深く考察するためには、より多くの対象者と種目に関する検討が必要であると考え、全国の市町村に居住する満 20 歳
以上の男女を母集団とする SLS2012 のデータを用いることとした。上記の問題関心から、中学校体育連盟・高等学校体
育連盟の登録者数が多い集団的スポーツ種目であるサッカー、バスケットボール、バレーボール、野球、ソフトボールを
分析対象とした。検討の結果、現在実施する種目を過去に運動部等において実施していなかった人の割合は、バレーボー
ル(60.0%)
、サッカー(49.5%)
、バスケットボール(48.7%)、ソフトボール(38.9%)、野球(20.7%)であり、種
目により違いがみられた。また、サッカー、野球、バスケットボールでは、性別により違いがみられた。
A7[農]
8 月 27 日
9:50
教
人
社 27 − 006
デンマークの少年サッカー活動に関する基礎調査報告
○中西 健一郎(東海大学)
白川 敦(東海大学大学院)
保
加藤 勇之助(大阪体育大学)
長島 健二朗(東海大学)
本研究は、デンマークと日本の X 市の少年サッカー活動に関する実態を調査し、その比較検討から我が国における有
ア
介
用な知見を得ることを目的とした。本研究の調査結果から獲得・推察された知見は以下のとおりである。
①デンマークの 6 ~ 12 歳の少年の 56%がサッカー協会に登録された選手であり、2009 年から 2011 年でサッカーに取
87
哲
史
り組む 6 歳~ 12 歳の少年の割合が約 12%増加している。
②デンマークの青少年サッカー選手は、X 市と比較して試合や練習に対する満足感、有能感、他者受容感が高い傾向にある。
③デンマークの青少年サッカー選手は、X 市と比較して睡眠時間が長く、日常生活において自由時間が長いことが推察さ
れる。
④デンマークでは、サッカー協会が人工芝グランドの増加を推奨し、自治体・行政の機関は気候条件によるサッカー活動
の制限を最大限排除している。
デンマークサッカー協会では、原則として 12 歳までは個々の能力に左右されず、全員平等にサッカーに取り組む環境
社
心
生
バ
経
発
を整え、競技的側面よりも社会的側面を重視している。この指導指針が、デンマーク国民の精神風土によく適合している
点も少年サッカー人口が大きく拡大している一つの要因である。
ぽらんホール[農]
8 月 27 日
10:15
社 27 − 007
日本における女子サッカーの言説分析
JFA の記事分析と女子サッカー選手の経験に着目して
○東明 有美(Pass & Go Co., Ltd.)
北村 薫(順天堂大学)
野川 春夫(順天堂大学)
上代 圭子(東京国際大学)
スポーツにおけるジェンダーは各国の社会的状況や文化などによって歴史的に構築されるものである。そして、ジェン
ダーの構築には一定の秩序を持った言語として表現される「言説」が大きな役割を果たしている。しかし日本においては、
スポーツにおけるジェンダーの構築に関する歴史的な知見が少ないのが現状である。本研究の目的は、男性優位で発展し
てきた日本のサッカー界に女性が選手として参入した過程において、女子サッカーに関する言説がどのように構築されて
きたかを明らかにすることにより、日本サッカーにおけるジェンダー構築の具体像に迫ることである。本報告では、①財
団法人日本サッカー協会(JFA)機関誌の記事(写真を含む)分析からみる女子サッカーの言説構築の変遷と、②ジェン
ダー構築への女子サッカー選手のかかわりかたの 2 点を明らかにする。そのために、① JFA 機関誌 1465 記事の言説分析、
② 1980 年代から 2012 年の期間に日本代表としての活動経験がある女性 10 名への半構造化面接法によるデータ収集を
測
方
保
教
人
ア
実施した。
ぽらんホール[農]
8 月 27 日
10:40
88
楽天イーグルス優勝の物語に関する考察
「物語」としての「スポーツの力」
○高橋 豪仁(奈良教育大学)
本研究は、2013 年における東北楽天ゴールデンイーグルスのパ・リーグ優勝と日本シリーズ優勝の翌日から 3 日間の
新聞と、日本シリーズ翌日のテレビにおいて、楽天イーグルスの優勝が如何に物語られているのかを明らかにする。新聞
については、東北地方の地方紙(東奧日報、岩手日報、秋田魁新報、山形新聞、河北新報、福島民報)および全国紙を研
究対象とした。優勝によって勇気をもらったという一般の人々の発言が使われており、こうした構成は、楽天イーグルス
の優勝を一緒に経験しているということを読者に感じさせるものであり、震災後の優勝の意味づけを一義的に示すテキス
トとなっている。また、
複数の社説において記されている苦節 9 年をかけて為し得た楽天イーグルスの優勝という物語は、
「社会の仮定法」に相当するものであり、一方で、復興の途中にある被災地の現実は「社会の直説法」
(吉見 , 1994)に
相当するものである。楽天優勝の物語は、日常的生活の延長線上に描かれたものであり、スポーツという「出来事」から
紡がれた「物語」によって現実世界が意味づけられている。こうして紡がれた「物語」にこそ「スポーツの力」があると
解釈できる。
介
社 27 − 008
02 体育社会学
ぽらんホール[農]
8 月 27 日
11:05
社 27 − 009
沖縄県におけるプロ野球キャンプ観戦の魅力に関する研究
県外観戦者に着目して
○秋吉 遼子(東京国際大学)
稲葉 慎太郎(神戸大学大学院)
山口 泰雄(神戸大学)
本研究の目的は、県外観戦者におけるプロ野球キャンプ観戦の魅力を探索的に明らかにすることである。調査は、
2014 年 2 月に沖縄県で春季キャンプを行っていた 2 球団の県外観戦者(n = 23)に対し、グラウンデッド・セオリー・
哲
史
社
アプローチを用いた。
分析の際はトライアンギュレーションを行った。プロ野球キャンプの魅力として、
「選手との関わり」
、
「沖縄の魅力」
、
「他者とのつながりから」
、
「チームに愛着がある」、
「色々なキャンプを観に行ける」、
「観戦による刺激」
、
「そ
の他」が生成された。また生成されたカテゴリーグループとカテゴリーを基に、プロ野球キャンプ観戦の魅力に関するモ
デルを検証した結果、
プロ野球キャンプの最大の魅力である「選手との関わり」や、
「沖縄の魅力」、
「チームに愛着がある」
、
「色々なキャンプを観に行ける」ことがプロ野球キャンプの魅力の要素であり、その他に、「他者とのつながり」と「その
他」の理由からプロ野球キャンプを観戦している。そして、プロ野球キャンプを観戦することで刺激を受け、キャンプ観
戦を日頃の活力にしていることが明らかになった。
ぽらんホール[農]
8 月 27 日
11:30
生
バ
社 27 − 010
プロスポーツチーム拠点地域における試合観戦者と住民のソーシャルキャピタルの比較
○工藤 康宏(順天堂大学)
心
野川 春夫(順天堂大学)
スポーツとソーシャルキャピタル(以下、SC とする)について、地域スポーツクラブと SC に関する研究(中西,
経
発
2005;長積ら,2006;行實,2009;河原,2007;Okayasu et al., 2010)やプロスポーツチームと地域愛着という視点
の研究(二宮,2010,
;二宮,2011)は散見されるものの、地域のプロスポーツチームと SC の関連や、経年的な変化
を捉えようとした研究はあまり見られない。本研究では 2012 年度に実施したプロスポーツ観戦者調査の指標を用い、観
測
戦者の SC を継続測定しその経年変化を捉えるとともに観戦者の SC と拠点地域住民の SC との比較を試みることを目的と
した。その結果、試合観戦者調査では SC 高群の方が、居住年数が長く、千葉ジェッツによって地域に望ましい変化があっ
たと感じている、という 2012 年と同様の結果が得られた。また、拠点施設近隣に住む一般的な住民よりも、プロスポー
ツチームに関心を持ち試合観戦をする住民の方が SC が高いことが推察される結果が得られた。なお、本調査は笹川スポー
ツ財団の「笹川スポーツ研究助成」の助成金を受けて実施した。
A7[農]
8 月 27 日
10:15
社 27 − 011
地域スポーツ組織による関係性創出と地域管理
「日常生活圏」と“スポーツ圏”の異同に着目して
○伊藤 恵造(秋田大学)
方
保
教
人
国や自治体による地域スポーツ振興事業は、行政区や学区などの「行政近隣」を単位として展開されている。総合型地
域スポーツクラブの全国展開を図るために、
『スポーツ振興基本計画』(文部省、2000 年)において示された数値目標も、
市区町村という行政区を単位として設定されている。こうした地域スポーツ振興事業の理論的背景となる地域スポーツ振
ア
興論は、そこで議論する「地域」の範域を問題化することなく、地域スポーツ振興事業が設定する行政区としての「地域」
をそのまま受け入れ展開されてきた。スポーツは、実践者の「日常生活圏」内で行われるものであり、そうであるがゆえ
に、地域スポーツ組織の活動やそこで形成される社会関係がさまざまな日常生活課題の解決に転用されるのだという。本
介
報告では、スポーツ実践が展開される場所とそこに集う人たちの居住地が含まれる範域としての “ スポーツ圏 ” の存在を
提示し、それらと「日常生活圏」の異同の実態を明らかにする。その上で、「日常生活圏」を越える関係性を生み出すこ
89
哲
史
社
心
とができる地域スポーツ組織が、
「行政近隣」を単位とする地域住民組織には成し得なかった公園管理活動を展開してい
ることを明らかにする。
A7[農]
8 月 27 日
10:40
社 27 − 012
「小乗」スポーツを大乗化する試み
スポーツの負の部分が顕在化する昨今、改めてスポーツが人々の幸せに貢献するあり方を考える
○倉品 康夫(早稲田大学グローバルエデュケーションセンター)
日本人は豊かさを求めてきたのに、少しも幸せになれておらず、スポーツは未だ人々を幸せにする装置として機能して
いない▲スポーツは「夢をあきらめない」勝者が生き残る弱肉強食ピラミッドを作る他者を合理的に蹴落とす訓練のため
の優れた文化装置である▲「見せる・楽しませる」商業的【見世物】スポーツの消費対象トップアスリートはスポーツに
生
バ
経
発
測
専念する「出家」集団(サンガ)である。出家アスリートの活躍に自らの生を仮託して勇気や感動を貰い、喜捨する人が「旦
那」
・
「在家」である▲宗教化したスポーツの側面として民衆をその体制に順応させる働きを持つ。現代の社会的状況にお
いて弱肉強食等のイデオロギーに順応させ、
さらに鬱状態国民にガンバリを求める働きを担っている。スポーツによる
「競
争原理」洗脳体制を「小乗」スポーツと呼ぶ▲仏教は出家者ではない俗世間の凡夫でもブッダに成れると宣言し、大乗化
して発展した。スポーツの使命実現及び発展のためにも、スポーツをアスリート(出家)及びメディア(霊媒)から解放
し、衆生・大衆が生涯にわたりスポーツとの関わりを生かし健康で文化的な生活を持続するスポーツ体験(三昧)できる
大乗化を提案したい。
A7[農]
8 月 27 日
11:05
社 27 − 013
市町村合併によるスポーツ文化の変化について
一般住民参加型種目について、静岡市を例として
○水野 勇(清水馬走囲碁道場)
いわゆる平成の大合併により、数多くの新しい市が誕生したが、合併前に行われていたスポーツが合併後にはどうなっ
方
たかについて調査してみた。
新しい静岡市は旧静岡市と旧清水市、旧由比町、旧蒲原町からなっている。旧静岡市は葵区(25.5 万人)と駿河区
(21.1 万人)に分かれ旧清水市(24.7 万人 2005 年合併)は清水区となった。さらに清水区には 2,006 年に旧蒲原町(人
保
教
人
ア
介
口 12,000)が 2008, 年に由比町(人口 9,000 人)が編入された。
合併後の葵区、駿河区(旧静岡市)と清水区(旧清水市)は合併前と同じスポーツをそのまま行っていて新静岡市とし
て統一しようという動きは余りない。
最近、旧清水市民体育大会(現清水区民体育大会)に蒲原町と由比町が参加し始めた。また旧清水市で行われていた縄
跳びテストが最近になって、スポーツ指導委員の努力により、旧静岡市にも普及しつつあるのは注目すべき現象である。
A7[農]
8 月 27 日
11:30
社 27 − 014
スポーツ政策の事業評価に関する研究
スポーツ振興事業におけるアウトカムと課題の検証
○佐々木 里菜(神戸大学大学院)
山口 泰雄(神戸大学)
本研究の目的は、文部科学省によるスポーツ振興事業のアウトカムと課題を検証することである。具体的には、文部科
学省が総合型地域スポーツクラブ(以下、総合型クラブ)などを対象に実施した「地域スポーツとトップスポーツの好循
環推進プロジェクト」に着目し、事業評価を行う。本研究では、研究 1 と研究 2 を設定した。研究 1 では、本事業の全
体評価を行うため、文部科学省による本事業の報告書(2011 ~ 2012 年度)の二次分析を実施した。研究 2 では、ケー
90
02 体育社会学
ススタディとして NPO 法人格を有する 2 つの総合型クラブの代表者を対象に、筆者が作成した事業評価項目チェックリ
ストにおける自己評価とインタビュー調査による事業評価を通して、より掘り下げた評価を行った。本研究より 4 つの
アウトカムと 3 つの課題が明らかとなった。4 つのアウトカムは、事業参加者の運動・スポーツに対する意識や姿勢の変
化、受託団体と小学校との新たな連携体制の構築、受託団体側のアスリートという人的資源の確保、アスリートのセカン
ドキャリア形成であった。3 つの課題は、事業実施のための資金不足、事業実施期間の短さ、事業受託終了後の受託団体
での事業継続であった。
ぽらんホール[農]
8 月 27 日
14:00
カヌースラローム競技における選手育成システムの構築に関する研究
ステム構築に必要な構成要因を提案することを目的とした。調査対象者は、カヌースラローム競技における欧州強豪国
(ス
ロバキア、フランス、ドイツ、スロベニア)と日本を含めた計 5 ヵ国の各国統括競技団体の強化育成担当者(スポーツディ
レクター、ナショナルコーチ)
。調査内容は、De Bosscher ら(2006)の国際競技力向上を規定する成功要因を参考に、
①選手育成プログラムと支援、②競技活動と学業の両立、③指導者の養成と確保、④トレーニング施設の 4 要因を設定し、
半構造化直接面接調査を実施した。調査結果から日本のカヌースラロームの現状を踏まえ、選手育成システムに必要な構
成要因を 3 段階に分けて提案した。第 1 段階:既存のトレーニング施設の強化、育成拠点の認定、4 年間の中期計画の策定、
育成プログラムの枠組み。第 2 段階:指導者資格制度の強化、専任のナショナルコーチ雇用、地域クラブ指導者との協力・
連携体制の確立。第 3 段階:地域の教育機関との協力体制の構築、学業との両立を可能とするサポート体制の整備、一
貫指導体制である。
社 27 − 016
エリートスポーツ政策に対する国民の受容態度の形成メカニズムとは ?
共分散構造分析を用いた因果モデルの検討
○舟橋 弘晃(早稲田大学大学院スポーツ科学研究科 / 日本学術振興会)
間野 義之(早稲田大学スポーツ科学学術院)
近年の先進諸国におけるエリートスポーツ分野への国費投資の拡大傾向を鑑みると、持続可能なエリートスポーツシステ
ムを構築していくためには「国民の受容性」という視点は不可欠である。従って、本研究の目的はエリートスポーツ政策
に対する国民の受容態度を規定する社会心理要因のメカニズムを明らかにすることとした。1050 名の社会調査モニター
から得られた 6 つの社会心理変数に関するデータの因果構造を確認的因子分析と共分散構造分析により検討した。その
結果、「エリートスポーツ政策に対する受容態度」は「自国アスリートが国際大会で活躍することがもたらす社会的/私
的ベネフィット認知」と「エリートスポーツシステムが孕むリスク認知」に規定され、さらにそれらの先行要因は「エリー
トスポーツ政策アクターの社会的信頼」と「アスリートのロールモデルとしての認識」であるという二層構造が明らかと
なった。本モデルは、信頼性、弁別的妥当性、および収束的妥当性の基準値を十分に満たし、分散の約 5 割を説明する
ことが可能であった。エリートスポーツ政策に対する社会全体の理解を高めるためには、社会的ベネフィットに働きかけ
ることが有効であることが示された。
心
野川 春夫(順天堂大学)
カヌースラローム競技の選手育成システムに着目し、強豪国における選手育成システムを比較対象とし、日本の育成シ
ぽらんホール[農]
8 月 27 日
14:25
史
社
社 27 − 015
○山田 亜沙妃(国立スポーツ科学センター)
哲
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
91
哲
史
ぽらんホール[農]
8 月 27 日
14:40
社 27 − 017
ヨーロッパにおける競技アスリートのデュアルキャリアに関する社会学的一考察
N. ルーマンの社会システム論から
○ Leitner KatrinJumiko(立教大学)
競技アスリートのセカンドキャリア問題がしばしば報告され、解決策として日本では引退後の選手に対する支援対策が
社
行われているが、十分機能しているとは言えない現状のようである。そこで本研究は、ヨーロッパで浸透しているデュア
ルキャリア、
つまりセカンドキャリアへの準備として現役から学業と競技スポーツとの両立ができる仕組みについて、
ヨー
ロッパの現状に対する N. ルーマンの社会システム論を用いて分析することを目的とした。
心
生
競技スポーツと教育制度を社会的サブシステムとして捉えてそれぞれの特徴を明らかにし、その間の構造的カップリン
グの可能性や限界を検討した。また、学生としての役割の中で二重の負担を引き受けるアスリートのソーシャル・インク
ルージョンを分析し、デュアルキャリアに必要な社会的仕組みの検討を行った。
結果として、ヨーロッパにおける競技アスリートのデュアルキャリアには、平等な依存関係である構造的カップリング
でなく、教育制度の一方的な機能付与が主流であることがわかった。また、他方の機能としての競技スポーツから教育制
度への協力内容が課題としてあげられ、国家も含めてのネットワーク作りがカギになることが指摘された。
バ
経
発
A7[農]
8 月 27 日
14:00
社 27 − 018
W. ベンヤミンの視点とスポーツメディアの可能性
『翻訳者の課題』を手掛かりとして
○上谷 浩一(大阪体育大学)
『翻訳者の課題』(1923 年)は W.ベンヤミンがボードレールの詩を翻訳した折に添えた前書きである。芸術や文学作
品を対象とした考察なのだが、そこで述べられる翻訳論は、競技者が身体で描き出したパフォーマンスを文字や音声言語
測
に置き換えて大衆に伝達する今日のスポーツメディアの在り方にも通じている。たとえばその冒頭で「芸術作品や芸術形
式が問題だというのに、それを受容する人間のことを考えていたら、作品や形式についての認識が実り豊かなものなるこ
とは決してない」とある。もちろん文学作品は読者を獲得することで社会的意味を持つのであり、スポーツでも競技者と
方
保
教
人
ア
観客が断絶することはありえない。しかしベンヤミンのこうした指摘は、受容する大衆だけでなく、スポーツメディアと
スポーツそのものとのかかわりの側へと我々の視点を導いてくれる。そして、「悪い翻訳とは、非本質的な内容を不正確
に伝えることと定義してよいだろう」
とも述べている。マスメディアを含めた大衆文化の勃興期である 20 世紀前半に生き、
その未来に警句を投じたベンヤミンに学ぶことで、今日のスポーツメディアのありかたを検討するための新たなヒントを
得たい。
A7[農]
8 月 27 日
14:25
社 27 − 019
運動場面の一人称視点映像と三人称視点映像から想起される運動感覚の相違
○信原 智之(岡山大学大学院)
近年、映像技術の発展に伴い、行為者が何を見ているのかを疑似体験できるような一人称視点映像を目にする機会が増
えた。このようなまなざしによって檜山ら(2011)は、紙漉熟練者の伝統技能を伝承するために一人称視点映像を用い
ることで、学習効果が高められることを示唆している。一方で運動学習場面においては、運動を三人称視点から観察し分
介
析する研究が多く、体育授業においても、三人称視点で運動を捉えたデジタル教材が多い。しかし、先にあげた研究のよ
うに、運動を主観的に捉えるまなざしが、子どもたちの学習効果を高めることも考えられる。よって、まず基礎的研究と
して、
一人称視点映像と三人称視点の映像から想起される運動感覚がどのように異なるのかについて検討する必要がある。
そこで本研究は、運動場面の一人称視点映像と三人称視点映像を見た際に、そこから想起される運動感覚の相違を明らか
92
02 体育社会学
にすることを目的とする。
この目的に迫るため、被験者に対し運動場面の一人称視点映像と三人称視点映像を視聴した際に、どのように運動感覚
を認識しているのかを、半構造化インタビューによって分析することとした。
A7[農]
8 月 27 日
14:40
哲
史
社 27 − 020
スポーツ場面における創造的な身体活動に関する一考察
幼少期のスポーツ実践における「演じる」行為の理論的検討から
○竹内 秀一(岡山大学大学院)
スポーツには、認知と予期の側面から構成される「状況判断」を基にした、創造性や即興性が求められる(日高 ,2006)
。
社
心
身体が即興的に動く場面について、
渡沼(2010)は、訓練によって獲得された身体知や身体図式の集積としての身体によっ
て、
「動きにおける思考」が展開されると述べる。その指摘は、河口(2011)の、
「創造を可能にするものは、動きによっ
て内在化され、記憶された現実の絶えざるイメージの再構成によって醸成されてくるもの」という指摘と類似する点が多
い。ところが、このような創造的な身体活動が発露するか否かに関しては個人差が大きい。そこで、どのようにその創造
的な身体活動が獲得されていくのかについて、幼少期のスポーツ実践を手がかりとして理論的に検討することを本研究の
目的とする。
この幼少期を問題とする背景には、
「想像のうちに自分と対象とが一体化する」
(亀山 ,2013)時期という特徴がある為
である。そこで、幼少期のスポーツ実践における「演じる」という相互作用行為に焦点をあて、E・ゴフマンの相互作用
論と H・G・ミードの自我論を鍵概念に検討することとする。
ぽらんホール[農]
8 月 28 日
13:00
バ
経
発
社 28 − 021
好循環推進プロジェクトにおける総合型地域スポーツクラブの事業への要望と成果評価
○宇都宮 大地(鹿屋体育大学大学院)
北村 尚浩(鹿屋体育大学)
生
川西 正志(鹿屋体育大学)
2010 年にスポーツ立国戦略が発表され、その重点戦略として、スポーツ界の連携・協働による「好循環」の創出が掲
測
方
げられた。さらに、運営面や指導面において周辺の地域スポーツクラブを支えることができる総合型地域スポーツクラブ
(拠点クラブ)の育成が施策目標とされている(スポーツ基本計画、2012)。
本研究は、好循環推進プロジェクトにおける総合型地域スポーツクラブの事業への要望と成果評価を明らかにすること
を目的とした。調査は、2011 年度から 2013 年度の「地域スポーツとトップスポーツの好循環推進プロジェクト」を受
託した 70 クラブを対象に 2014 年 4 月から 5 月にかけて郵送法による質問紙調査を実施した。KJ 法を用いて拠点クラ
ブ育成に関する行政からの支援策に対する要望についての自由記述を分類・整理した。成果評価はクラブ属性による比較
を行った。結果から、学校及び行政との連携・協働が図られたことや拠点クラブとしての認知度の向上、競技力向上への
貢献などが成果としてみられた。行政への要望としては小学校体育活動コーディネーター派遣の地方予算化や行政内部で
事業の情報を共有することなどが挙げられた。
ぽらんホール[農]
8 月 28 日
13:25
教
人
ア
社 28 − 022
総合型地域スポーツクラブにおけるスポーツ指導者のコンピテンシー尺度の開発
○高松 祥平(神戸大学大学院)
保
山口 泰雄(神戸大学)
介
本研究の目的は、総合型地域スポーツクラブにおけるスポーツ指導者のコンピテンシー尺度を開発することである。ま
93
哲
史
ず、総合型地域スポーツクラブに所属するスポーツ指導者 20 名からソートリスティング法を用いて総合型地域スポーツ
クラブのスポーツ指導者特有のコンピテンシー概念を抽出した。先行研究の資料分析により得られた項目を合わせ、分
析者トライアンギュレーションにより質問紙の作成を行った。12 ヶ所の総合型地域スポーツクラブのスポーツ指導者
(n=269)に対して質問紙調査を実施し、
探索的因子分析を行った結果、7 因子 35 項目が抽出された。因子はそれぞれ「マ
ナー教育」
、
「協働的アプローチ」
、
「マネジメント」、「指導力」、「クラブ外交流」、「クラブ内交流」、「安全管理」と命名さ
れた。その後、確認的因子分析を行い、χ2/df は 2.622、GFI = .77、TLI = .86、CFI = .87、RMSEA = .078 であった。
また、AVE と CR を算出し、収束的妥当性と弁別的妥当性の観点から構成概念妥当性の検証を行った。適合度指標は比較
社
心
生
バ
経
発
的良好であり、構成概念妥当性においても基準値を満たしたことから、本尺度の妥当性及び信頼性は立証されたと判断し
た。
ぽらんホール[農]
8 月 28 日
13:50
社 28 − 023
総合型地域スポーツクラブの運営評価に影響を及ぼすスポーツ・ソーシャル・キャピタルの要因に関する研究
NPO 法人格の有無による比較を通して
○稲葉 慎太郎(神戸大学大学院)
伊藤 克広(兵庫県立大学)
山口 泰雄(神戸大学)
本研究の目的は、総合型地域スポーツクラブの運営評価に影響を及ぼすスポーツ・ソーシャル・キャピタルの要因を明
らかにすることである。NPO 法人格クラブ 339 と任意団体クラブ 477 のクラブマネジャーを調査対象とし、調査項目は、
クラブ運営評価、スポーツ・ソーシャル・キャピタル、内発的動機づけであった。回収数は 439 票(回収率 53.8%)、有
効回答数は 438 票であった。分析方法としては、探索的因子分析とパス解析を採用した。結果は、スポーツ・ソーシャル・
キャピタルの因子として、社会的信頼、互酬性の規範、地域ネットワーク、スポーツ・ネットワークが抽出された。また、
NPO 法人格クラブではクラブ運営評価に社会的信頼、互酬性の規範、内発的動機づけが有意に影響を与え、任意団体ク
ラブでは社会的信頼、互酬性の規範、スポーツ・ネットワーク、内発的動機づけがクラブ運営評価に有意な影響を与えて
いた。つまり、NPO 法人格の有無に関わらず地域との信頼関係や地域スポーツ振興への規範意識がクラブ運営において
測
方
保
教
人
ア
介
94
重要であるが、
任意団体クラブではスポーツ関係者とのネットワークの有効活用がクラブ運営に影響することが示された。
ぽらんホール[農]
8 月 28 日
14:15
社 28 − 024
日本生まれの欧州型スポーツクラブ文化の検討
横浜外国人居留地のスポーツ活動の再検討
○江口 潤(産業能率大学情報マネジメント学部)
平成 7 年より先導的育成モデル事業として総合型地域スポーツクラブをスタートさせ、日本各地にスポーツクラブが
設立された。国内でスポーツクラブ文化が普及発展することが期待されたが、活動停止や解散に至るスポーツクラブが少
なくない。筆者は、日本社会の特性となる「日本的なるもの」がスポーツ文化にも影響しており、欧州に根ざしたスポー
ツクラブ文化を標榜した総合型地域スポーツクラブの受容は、単に運営財源の確保が課題ではなく、日本人と欧州人との
生活文化の本質の相違が背景にあるのではないかと推察する。本稿は、欧州型スポーツクラブの本質がいかなるものかに
ついて幕末明治期に外国人居留地に創設された日本発欧州型スポーツクラブを検討したものである。日本生まれの欧州型
スポーツクラブ文化は、本国のように、身分の絆や家族のしがらみから解き放たれ、趣味を語り合い、異なる個性や環境
の人が結集し豊かな時間を過ごすことを活動の主要な活動目的としており、クラブの運営はボランティアにより行われ、
必要の資金は会員の会費により賄われたようである。
02 体育社会学
ぽらんホール[農]
8 月 28 日
14:40
社 28 − 025
地域スポーツクラブ入会に対する子育て世代の意識
スポーツライフスタイルに着目して
○山本 浩佑(順天堂大学大学院)
高橋 季絵(順天堂大学)
野川 春夫(順天堂大学)
長登 健(順天堂大学)
渡辺 泰弘(広島経済大学)
スポーツ振興計画では、働き世代・子育て世代のスポーツ振興に向けた取り組みが必要とされている。 本研究は、子
哲
史
社
育て世代のスポーツライフスタイルに着目し、地域スポーツクラブ入会に対する意識とスポーツ振興施策への期待との関
連を明らかにすることを目的とした。本研究では、東京都内において活動拠点を主として小学校としている地域スポーツ
クラブの近隣に居住する児童の保護者に対して質問紙調査を実施した。対象地区によって違いはあるが、75%から 83%
の保護者は地域スポーツクラブの存在を知っているにもかかわらず、実際に入会して活動している者は少ない。子育て世
代をスポーツライフスタイルによって類型化し、地域スポーツクラブに対する要求、地域スポーツ振興策への期待、スポー
ツ参与形態などを比較することによって、今後の地域スポーツ振興施策の基礎資料とする。
A7[農]
8 月 28 日
13:00
社 28 − 026
中学校保健体育授業における評価をめぐる潜在的カリキュラム
○原 祐一(岡山大学)
中学校の保健体育教師は、1 クラスだけでなく複数クラスの生徒に対して授業を行う。よって教師は、進度の差はある
にせよ同様の授業内容を繰り返し行うことになる。もちろん、授業を行うわけであるから、評価を絶えずおこないながら
心
生
バ
経
発
指導していかなければならない。これらのことは、制度的な制約によってもたらされることであるが、実際の授業実践を
教師と子どもの相互行為として捉えようとすると、評価活動を通して生徒は何を学び取っているのかという問題が浮き上
がってくる。つまり、教育的意図を超えた学びが存在するのではないかということである。
測
この何を学んでいるのかというまなざし方は、潜在的カリキュラムとして研究がなされてきた(Jackson,1968)。そ
こで本研究は、先に挙げた中学校体育教師が様々なクラスの指導をしていく際になされる評価をめぐって、どのような潜
在的カリキュラムが存在するのかを明らかにすることとする。このことを明らかにするために、エスノメソドロジー的ア
プローチから迫る。
A7[農]
8 月 28 日
13:25
社 28 − 027
溢れる野性とスポーツ
公立 S 中学校におけるフィールドワーク
○田嶌 大樹(東京学芸大学大学院)
S 中学校は、平成 25 年に近隣の二つの中学校が合併して新設された学校である。開校当初 S 中学校は、生徒の反学校
方
保
教
人
的な行動によって学校の教育活動の主となる授業が成立しないような、いわゆる「教育困難校」であった。この状況は、
S 中学校のある地域の文化的特性や、新設校ゆえの教員組織の未成熟さ・生徒の混乱など、様々な要因によって生みださ
れたものであった。
ア
こうした状況の改善を目指し、学校を中心として S 中学校の職員、地区の教育委員会、T 大学といった様々な組織・人
間が直接的・間接的に関与し、学校にて教育実践が行われた。その結果、新設校ゆえの生徒・職員の状況や学校外組織の
介入による「学校内の混乱」
、
「土着の文化特性」といった要素が影響し、種々の教育実践は一つに収斂することなく、学
介
校内の状況に対して様々なベクトルに作用していった。
本発表は、これら種々の教育実践とそれに伴う学校の変容過程を、発表者のフィールドワークにより総体的に記述する
95
哲
史
社
心
ことを通して、従来学校現場においては体育授業や運動部活動においてとりわけ意識されてきたような「スポーツ」とい
う事象を、それらの枠組みを超えて改めて読み解こうとするものである。
A7[農]
8 月 28 日
13:50
社 28 − 028
特別支援教育の体育授業に影響を及ぼす教師の子ども観
○大谷 侑加(岡山大学大学院)
本研究では、特別支援教育の体育授業に焦点を当て、教師の知識や子ども観が、授業実践とどのような関係にあるのか
について明らかにすることを目的とする。
特別支援教育の体育授業は、子どもの学習を促進するための発問や教材の工夫を教師が行わなければならない。そのよ
生
バ
経
発
測
方
うな工夫には、
教師の教材に対する認識と同時に子どもに対する認識が大きく影響を及ぼしていると考えられる。さらに、
この子ども観そのものも教師がどのような知識を身につけているかによって左右される。つまり、授業の中で相互行為が
なされる際には、教師の持っているハビトゥスが色濃く表れるわけである。特に、特別支援教育においては、個々の子ど
ものニーズに合わせた対応が求められるために、教育理念との関係だけでない教育的行為を分析しなければならないので
ある。
これらのことを明らかにするために、本研究においては、特別支援教育に携わる教師に対して、子ども観に関する半構
造化インタビュー調査を実施する。また、その教師が体育授業をする際にどのような文献等を参考にしているかを調査す
ることによって、複合的に検討を行うこととした。
A7[農]
8 月 28 日
14:15
社 28 − 029
高校運動部活動における指導者と上級生からの暴力経験に関する分析
○高峰 修(明治大学)
海老原 修(横浜国立大学)
武長 理栄(笹川スポーツ財団)
本研究の目的は、高校の運動部におけるスポーツ指導や活動に伴う指導者や上級生からの暴力行為について、その実態
を探ることを目的とする。データはインターネット調査によって 2013 年 7 月 25 ~ 29 日に収集した。母集団は全国の
保
教
人
ア
介
16 ~ 19 歳の男女であり、モニター登録している約 110 万人の中から 1,438 人(男子 34.5%、女子 65.5%)が回答した。
調査時点で高校・高専に所属している者が 995 人
(69.2%)、高校を卒業し何らかの学校に所属している者が 443 人(30.8%)
であり、高校時代に運動部活動に所属している/所属していた者は 619 人(43.0%)であった。そのうち欠損値のない
559 人を分析対象とした。素手で殴る、物で殴る、蹴る、物を投げつけるといった暴力行為に暴言を加えた 5 つの言動
を指導者からまったく受けたことがない人の割合は 79.6% であり、およそ 20% にあたる人が 1 つ以上の暴力 ・ 暴言を指
導者から受けていた。上級生から 1 つ以上の暴力 ・ 暴言を受けた人の割合は 13.6% であり、上級生よりも指導者から暴力・
暴言を経験する人の割合が多かった。本調査は発表者と笹川スポーツ財団と共同で実施した。
A7[農]
8 月 28 日
14:40
社 28 − 030
体罰への社会システム論的アプローチ
○佐藤 広菜(横浜国立大学教育学研究科)
海老原 修(横浜国立大学)
大阪市立桜宮高校で起きた体罰を契機とした自殺問題、全日本柔道連盟にみる女子柔道選手への暴力的指導を契機に体
罰問題が論議されている。文部科学省や新聞社が調査に乗り出すものの、その後も顕在化する。大阪市が委嘱した弁護士
96
02 体育社会学
チームが昨年、市内の学校を調査した結果、何校もの学校で「指導の一環であり体罰ではない」として市教育委員会に一
切報告書を出していなかった。(2014 年 1 月 5 日、朝日新聞)表面的な実態調査を受け入れ、深層への接近を拒絶する
態度を社会全体が共有しているかのようだ。いじめ問題が巧妙化し、深層への接近を拒絶する仕掛けに倣うように、我々
社会がその隠蔽工作を首肯しているのかもしれない。教育の文脈で行われる暴力が特訓やしつけに転じたとき肯定的に理
解される仕組みは、軍隊や警察による暴力を制限・許容する国民国家を認知するそれに似る。この根源的な仕掛けを背景
に、体罰を容認・許容する社会構造があると考えられる。本研究は教育が体罰を許容しやすい仕組みを、通過儀礼となる
哲
史
ようなスポーツ漫画の暴力シーンに求め、その再生産の可能性を検証する。
社
第1体育館
8 月 27 日
13:00
社 27 − 101
スポーツ組織における女性の意志決定者の登用に関する研究
○佐藤 馨(びわこ成蹊スポーツ大学)
本研究は、スポーツ組織における女性の意志決定者の登用状況とそれに関する組織の考え方を明らかにすることを目的
とした。調査は JOC を介して各スポーツ団体・協会に調査協力を依頼し、郵送法による調査を平成 24 年 3 月から 4 月に渡っ
て実施した。回答は 52 団体中、50 団体から得られた(回収率 96%)。結果として、スポーツ組織における意志決定者(役
員等)には女性が非常に少なく、そのため役員登用の条件である実績や推薦によって女性の起用を望むのは厳しいと言わ
ざるを得ない。このようにスポーツ組織において女性が役員等に登用される機会が極めて少ない状況で、経験豊富な人材
を発掘することは極めて難しく、また、チャンス、経験、人脈を持たない女性が自らを意志決定者として自己認識するこ
とは困難であろう。いずれにしても、スポーツ組織において意志決定の場に相応の女性であれば起用するが、そうでなけ
れば起用しないとする組織の考え方が明らかになった。しかしながら一方で、女性はスポーツ組織の推薦等を待つだけで
なく、女性自ら組織に働きかけることも同時に必要だと思われる。
第1体育館
8 月 27 日
13:05
社 27 − 102
地域愛着とチームイメージに関する研究
―H 市スポーツイベントボランティアを対象として―
○松本 耕二(広島経済大学)
渡辺 泰弘(広島経済大学)
本研究では、プロスポーツ・チームのホームゲームのサポート活動を行う、スポーツイベントボランティア(以後、
HSIV)登録者を対象に、地域愛着とチームイメージとの関連を明らかにすることを試みた。調査方法は、HSIV 登録者
250 名を対象に質問紙調査を郵送法にて実施した。調査期間は 2013 年 11 月 14 日から月末までの 2 週間とし、203 名
(回
収率 81.2%)からの有効回答を得た。主な結果は以下の通りである。サンプルの男女比は 1:1、平均年齢は 58.1 歳で
60 歳以上が 50% と多く、現地域での居住年数は平均 27.8 年であった。HSIV への加入は「市報(31.6%)
」から情報を
入手し、「自らすすんで(79.7%)
」登録したとする割合が最も高かった。登録平均年数は 7.33 年であった。サンプルの
地域愛着(得点)とサポート活動に従事するスポーツ団体のチームイメージ(得点)との関連については、正の相関(r=.346,
p.<.001)
がみられた。また、
地域愛着の主要構成要因である地域同一性においてチームイメージ得点による差が有意であっ
た(F=6.948, df=2, p.<.001)が、地域依存性では差がみられなかった(F=2.309, df=2, n.s.)
。
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
97
哲
史
社
第1体育館
8 月 27 日
13:10
社 27 − 103
部活動を教育活動として位置づけるための課題とその解決に向けて
学習目標と学習内容の観点から
○来田 宣幸(京都工芸繊維大学)
神谷 将志(京都工芸繊維大学)
野村 照夫(京都工芸繊維大学)
吉田 浩之(琉球大学)
谷川 哲朗(京都工芸繊維大学)
梅﨑 さゆり(天理大学・京都工芸繊維大学大学院)
学校教育の中で実施されている「部活動」は、人間としての豊かな能力を涵養する可能性を持った世界でも類い希ない
優れた制度であるが、現在の部活動には、顧問による人権を無視した体罰や暴力、勝利至上主義や非科学的根性主義に基
心
生
バ
経
発
づく長時間練習など多くの問題が存在している。これらの問題の背景には、部活動は学校教育の一環として長く存在して
きたにもかかわらず、制度的基準や教育的意義の規定がなく、現場の裁量に委ねられてきた点がある。そこで、本研究で
は、教育活動を構成する「学習指導」と「生徒指導」の 2 側面のうち、学習指導側面に着目し、学習目標及び学習内容
を整理することを目的とした。学校教員及び中学生を対象として部活動を通して身につけたい内容に関する定性的・定量
的アンケート調査を実施し、概念的な整理を実施した。その結果、部活動による教育目標としては、行動や技能に関する
内容と意識や感情などに関する内容の 2 つの内容に大きく分けることができ、さらに、自分自身の達成に関する観点と
他者や集団の達成に関する観点の 2 つの観点に整理することができた。
第1体育館
8 月 27 日
13:15
社 27 − 104
ゲレンデスキーのフローに関する研究
○古橋 裕二郎(茨城大学大学院)
小林 朋寛(茨城大学大学院)
『中学校学習指導要領解説 保健体育編』
『第 2 章 保健体育科の目標及び内容 第 2 節〔体育分野〕3 内容の取扱い』
測
は、
「自然とのかかわりの深いスキー、スケートや水辺活動などの指導については、地域や学校の実態に応じて積極的に
行うに留意するものとする。
」とし、学校教育での野外運動の充実を図っている。本研究は、野外活動としてのゲレンデ
スキーに着目し、そこで生成されるフロー感覚(遊びやスポーツなどで、その世界に没入し、我を忘れて楽しんでいる時
方
保
教
人
ア
の感覚のこと)の内実を考察することを目的とした。論文の構成は、スキーの発祥、特性、基本動作(直滑降、プルーク・
ファーレン、プルーク・ボーゲン、シュテム・ターン、パラレル・ターン、ウェーデルン、コブへの対応)との関係、土
台としての自然(ゲレンデ)におけるフロー、
背景としての自然の融合、という章だてにし、それぞれの分析・検討を行った。
その結果、ゲレンデスキーにおける各基本動作で生成されるフロー感覚、また、ゲレンデスキーと自然(ゲレンデ)との
感応的同調、つまりスキーヤーと自然との触発、会得の関係が明らかになった。
第1体育館
8 月 27 日
13:20
社 27 − 105
公園イベントにおける「足の筋力測定」参加者について
○益井 洋子(東京未来大学)
都市農業公園桜まつりのイベントとして足の筋力測定を実施した。多くのイベントが実施している中の一つとしての参
加である。このまつりは桜の開花に合わせて開催され、毎年多くの人たちが来場する。「足の筋力測定」というイベント
名にし、足の筋力や運動習慣に興味を持ってもらうきっかけとなることを願っている。本研究は、足指筋力測定器を使っ
介
て足裏の筋力(足趾筋等)測定、握力器を使用して握力測定そして質問用紙の記入を行い、参加者の傾向を探ることを目
的とする。参加者は 254 名であった。男性 55 名、女性 157 名であった。年齢は 89 歳から 2 歳である。参加者で一番
多い年代は 70 歳代女性が 75 名であり、次いで 60 歳代女性 54 名である。日頃の運動実施については、週に 1 回以上運
動習慣のある人 153 名であった。足裏の筋力(足趾筋等)測定では、年代の平均値は、10 歳代男性と 20 歳代男性が高
98
02 体育社会学
い数値であった。年齢が高くなるにつれて、足の筋力の数値は低くなる傾向にあることが分かった。このようなイベント
は、運動実施が習慣化されていない人たちに対して、運動習慣の重要性を再認識する機会になると考えられる。
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
99
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
100
00
体育哲学
哲
01
体育史
史
02
体育社会学
社
03
体育心理学
心
04
運動生理学
生
05
バイオメカニクス
バ
06
体育経営管理
経
07
発育発達
発
08
測定評価
測
09
体育方法
方
10
保健
保
11
体育科教育学
教
12
スポーツ人類学
人
13
アダプテッド・スポーツ科学
ア
14
介護福祉・健康づくり
介
101
哲
史
銀河ホール
[工]
8 月 27 日
10:00
心 27 − 001
中国と日本の大学生におけるライフ LS とスポーツ参加動機の関連
○陳 昱龍(大阪体育大学大学院)
土屋 裕睦(大阪体育大学)
現代中国における大学生には、ライフスキル(以下、LS)の低下が懸念されている。日本における LS 研究では , スポー
社
ツ経験を積むことで高まることが報告されており(島本・石井,2007)
、「国民健身計画」政策でスポーツへの参加機会
が増えている中、中国大学生の実態が注目される。そこで本研究は、日本で開発された日常生活スキル測定尺度(島本・
石井,2006)とその中国語版(陳,2014)を用いて、両国の大学生のスポーツ参加動機と LS の関連を検討し、文化比
心
生
較を行った。中国の大学生 620 名(男子 311 名,女子 309 名)と日本の大学生 596 名(男子 301,女子 295 名)を対
象とし、LS(島本・石井,2006;陳,2014)とスポーツ参加動機尺度(PALMS)(町田,2013;王,2013)を用いて
調査した。結果、中国の男子大学生は日本の男子大学生よりも「身体状態」「心理状態」「他者からの期待」をスポーツ参
加動機にする傾向が強く、日本の女子大学生は中国の女子大学生よりも「他者からの期待」をスポーツ参加動機にする傾
向にあることが示された。また、
両国ともに、
スポーツ参加動機と LS の得点間に正の相関が示され、中国においてもスポー
ツ参加動機が LS の向上につながる可能性が示唆された。
バ
経
発
銀河ホール
[工]
8 月 27 日
10:20
心 27 − 002
試合出場および不出場に対する原因帰属と動機づけ、組織風土の関係について
○松下 周平(大阪体育大学大学院)
菅生 貴之(大阪体育大学)
本研究では、学生アスリートの成功・失敗事態が動機づけにおよぼす影響を検討した。調査対象者は球技系運動部活動
に所属している大学生 131 名であった。原因帰属の質問紙は伊藤(1996)や樋口ほか(1983)の研究を参考にして練
測
習方法、指導者、努力、能力、課題の困難度、運、体調の 7 尺度を使用し、試合出場を成功事態、試合不出場を失敗事
態とした。動機づけの評価には松本ほか(2003)が作成した尺度を使用した。また、原因帰属に影響を与える環境要因
を検討するために樋口(1996)の組織風土尺度を用いて調査を行った。そして組織風土と原因帰属、原因帰属と動機づ
方
保
教
人
けに段階を分けてステップワイズ法による重回帰分析を実施した。
本研究の結果から成功事態ではイノベーションの受け入れが促進されていると認識している学生アスリートは練習方
法、コーチの指導方法が良かったことに帰属することが明らかになった。そして、それらが内発的動機づけを高め、非動
機づけを抑制することが示唆された。
銀河ホール
[工]
8 月 27 日
10:40
心 27 − 003
くやしさの持続と動機づけとの関連性
大学生アスリートを対象とした縦断的調査
○東浦 つかさ(大阪体育大学大学院)
手塚 洋介(大阪体育大学)
「くやしさをばねにする」など、くやしいという感情は動機づけとして作用すると考えられる。手塚(2013)は、大学
ア
生アスリートを対象に、くやしさの感情的動機づけ機能について検討した結果、くやしさは 1 年に渡り持続し、動機づ
けと相関することを見出している。しかし、この研究では、過去 1 年を振り返って回答させるという回顧式による調査
を用いているため、その時期に感じていた感情を真に反映しているのか問題が残る。そこで本研究では、大学運動部に所
介
属する女子学生を対象に、“ インカレで負けたくやしさ ” および “ 普段の練習で生じるくやしさ ” を取り上げることで、1
年間のくやしさおよび動機づけ(競技意欲)がどのように変化するのかをリアルタイムで調査した。その結果、先行研究
と同様に “ インカレで負けたくやしさ ” が持続することが示された。また、“ 普段の練習で生じるくやしさ ” も高い水準
で 1 年間持続していた。さらに、2 種類のくやしさはいずれも競技意欲と共変関係にあることが見出された。これらの結
102
03 体育心理学
果から、くやしさが動機づけとして作用する可能性が示唆された
22
[工]
8 月 27 日
10:00
心 27 − 004
心理的プレッシャー下における中枢及び末梢の運動制御機能
下肢による反応課題時の皮質脊髄路の興奮性と筋活動の増大
○田中 美吏(福井大学)
霜 辰徳(福井大学)
哲
史
社
プレッシャーの克服は多くのアスリートが抱える問題であり、近年、この問題の背景にある中枢及び末梢の運動制御機
能を調べる研究が増えている。本研究では、利き足での反応課題を用いて、報酬と罰によるプレッシャーが高次中枢(大
脳皮質)や低次中枢(脊髄)における運動神経活動(経頭蓋磁気刺激 TMS による運動誘発電位 MEP 及び経皮的電気刺
心
激による H 波の記録)
、筋活動、反応時間に及ぼす影響を調べることを目的とした。10 名を対象とした実験の結果、プ
レッシャー条件では認知不安、心的努力、心拍数に有意な増加が示された。さらに、拮抗筋である前脛骨筋から導出した
MEP 振幅、主動筋であるヒラメ筋の EMG 振幅、ヒラメ筋と前脛骨筋の共収縮率の有意な増加も認められた。反応時間と
H 波振幅に有意な変化は見られなかった。また、非プレッシャー条件からプレッシャー条件にかけての変化率を求め、従
属変数間の相関分析を行った結果、前脛骨筋の MEP 振幅と EMG 振幅、ならびに前脛骨筋の EMG 振幅と共収縮率の間に
有意な正の相関が示された。以上より、プレッシャーによる筋活動や共収縮の増加は、大脳皮質を中心とした運動神経活
動の興奮性増大に依存することが明らかになった。
22
[工]
8 月 27 日
10:20
バ
経
心 27 − 005
投擲競技における運動伝染の原因と対処法に関して
○竹内 竜也(鹿屋体育大学大学院)
幾留 沙智(鹿屋体育大学)
生
中本 浩揮(鹿屋体育大学)
森 司朗(鹿屋体育大学)
発
測
スポーツ場面において、成功や失敗が伝染していく原因が他者の動作観察による無意識的な動作模倣であり、この伝染
を抑制するには自己に注意を向ける方法が効果的であることを検討した。実験参加者は大学ハンマー投選手 6 名とした。
実験課題は、モデルが左、中央、右方向へ投擲する映像観察後、投擲試技を行うものとした。映像は、上半身動作を調整
方
し投擲方向が予測しにくい予測困難条件、下半身動作を調整し投擲方向が予測しやすい予測容易条件を設定した。伝染の
原因を検討するため、映像観察後の上半身や下半身動作とモデルの動作を比較した。また、対処法を検討するため、自己
に注意を向けながら(自己焦点)またはモデルに注意を向けながら(他者焦点)映像観察する条件を設定した。結果とし
て、映像観察後の試技における下半身動作は予測容易条件でのみモデルの下半身動作と一致する傾向にあった。また他者
焦点条件では、下半身動作がモデルの下半身動作と一致する傾向にあったが、自己焦点条件では一致しなかった。以上か
ら成功や失敗が伝染していく原因は他者の動作観察により生じる無意識的な動作模倣であり、自己に注意を向けると動作
模倣は抑制されると考えられる。
22
[工]
8 月 27 日
10:40
教
人
心 27 − 006
一致タイミング標的の接近速度に応じた視線動作と反応動作のパタン分類
○津田 龍一(山梨大学大学院)
中本 浩揮(鹿屋体育大学)
保
木島 章文(山梨大学)
山本 裕二(名古屋大学)
ア
介
手元まで直線的に接近する標的を呈示し、軌道終点の到達にあわせてボタン押しをさせた。標的の接近速度に関わらず
尚早反応の傾向が強く、誤差は低・中速(2 ~ 8m/s)条件に比較して最速(14m/s)条件で有意に小さかった。標的速
103
哲
史
度に応じた視線パタンを確認すると、低速(2m/s・4m/s)で接近する場合、参加者は振幅の小さい予測サッケードを数
回繋ぎ接近軌道の全てを追従した。中程度の速度(6m/s・8m/s)で標的が接近する場合、振幅が大きい 1 回の予測サッ
ケードで接近軌道全体を捉える傾向があった。しかし、より高速(12m/s・14m/s)で接近する場合は、視標が終点に到
達してから軌道を後追いするような視線動作がみられた。このことはつまり、2 〜 8m/s 近辺の標的には接近にあわせて
視線を動かしながら反応を調整し、より高速で接近する標的に対しては視線動作と無関係に、接近開始を引き金とした単
純反応に近い形式で反応が出力されることを示す。ただし高速条件間(10 〜 14m/s)でも接近開始からボタン押しまで
の反応時間が標的速度の増大に応じて有意に短縮したことから、網膜上に投影された移動像を手がかりに何かしらの反応
社
心
生
バ
経
発
調整が行われたと考えられる。
銀河ホール
[工]
8 月 27 日
11:05
心 27 − 007
異なる色彩環境がストレス課題時の心理・生理に及ぼす影響
大学生アスリートを対象として
○熊谷 史佳(大阪体育大学大学院)
中原 結香(大阪体育大学大学院)
門岡 晋(大阪体育大学大学院)
松下 周平(大阪体育大学大学院)
柄木田 健太(大阪体育大学大学院)
菅生 貴之(大阪体育大学)
色彩は様々な心理状態や情動に影響しているといわれている(Birren,1978)。競技スポーツにおいてもユニフォームの
色や競技場の色など、様々な色彩環境が見受けられる。しかし、そのような異なる色彩環境が、アスリートの心身に及ぼ
す影響を検討した研究は少ない。そこで本研究は、大学生アスリートを対象として異なる環境がストレス課題時の心理、
生理的反応に及ぼす影響を検討することを目的とした。実験の手続きは、色彩環境条件として色セロハンを貼付した眼
鏡を実験参加者に装着させ、青条件、赤条件、色眼鏡装着なしのコントロール条件の 3 条件でストレス課題を実施した。
ストレス課題時のストレス反応を評価する為に、生理指標として心拍数、心拍変動(Heart Rate Valiability:HRV)の測定、
及び心理指標として状態不安検査(State-Trait Anxiety Inventory:STAI)を用いた。結果については大会当日にデータと
共に示す。
測
方
保
教
人
ア
介
104
銀河ホール
[工]
8 月 27 日
11:25
心 27 − 008
スポーツ競技場面で生じる力みの要因
認知的側面からの検討
○筒井 香(奈良女子大学大学院)
藤原 素子(奈良女子大学)
選手が過度の緊張状態に陥ったことから練習通りのパフォーマンスを発揮できず、「力んでしまった」「やる気が空回り
した」などと試合を振り返ることは多い。このような運動技能パフォーマンスに及ぼす心理的要因として、「あがり」が
以前から議論されている(藤田、1986)
。木村ほか(2008)はあがりの原因帰属因子として、失敗不安、責任感、不足感、
他者への意識、性格の弱さ、新奇性、勝利欲の 7 因子を挙げている。これらの因子は失敗や練習不足、他者の存在、性格、
状況などに対する否定的な認知から生じる不安に関するものが目立つ。一方、あがりの要因には不安に加えて、
「勝ちたい」
などの達成動機の高まりもあり、選手が経験する力みの背景には、「勝ちたい」「監督にアピールしたい」などといった積
極的な思考の存在も考えられる。そこで本研究では、「力み」が生じる要因について、動機づけを高めるために必要とさ
れる積極的な思考も含めた認知的側面から検討することを目的とした。自由記述で回答を求め、「力み」が生じる要因を
探索し、思考内容をカテゴリー化することにより、「力み」の構造を明らかにした。
03 体育心理学
銀河ホール
[工]
8 月 27 日
11:45
心 27 − 009
スポーツ選手における「フロー体験」と心理的競技能力との関係
○中原 結香(大阪体育大学大学院)
松下 周平(大阪体育大学大学院)
菅生 貴之(大阪体育大学)
熊谷 史佳(大阪体育大学大学院)
柄木田 健太(大阪体育大学大学院)
「フロー体験」とは 1 つの活動に深く没頭しており、他の何物も問題とならなくなる状態、その経験自体が非常に楽し
哲
史
社
いと感じられ、純粋にその行為のために多くの時間や労力を費やすような状態である。
(Csikszentmihalyi,1975,1990)
スポーツとフロー体験に関する先行研究はそれほど数が多くなく、スポーツ選手の心理的スキルとフロー体験について研
究されているものはほとんどない。本研究の目的はスポーツ体験のフロー度を測定する尺度、Sports Flow Scale(SFS:
谷木、坂入 ,2009)と DIPCA.3 を用いて、スポーツ選手のフロー体験と心理的競技能力との関係について明らかにする
ことである。調査対象者にはごく最近体験したベストパフォーマンス時のことを振り返ってもらい、SFS と DIPCA.3 に回
答してもらった。相関分析の結果、フローに強く関連しているとされる集中力と、6 つの SFS 尺度全ての間に相関はみら
れず、忍耐力、闘争心、予測力、判断力において正の相関が見られた。
22
[工]
8 月 27 日
11:05
生
バ
心 27 − 010
サッカーのドリブルに関係する能力についての検討
○細野 裕希(立命館大学)
心
漆原 良(立命館大学)
サッカーのスキルについて筋力やスプリント能力といったフィジカル面との関係が検討されている。しかしスキルの下
経
発
位構造に当たる平衡能力やリズム化能力といったコオーディネーション能力との関係について十分に検討が行われていな
い。そこで本研究ではドリブルに必要な能力についてコオーディネーション能力との関係を中心に検討を行った。対象者
は大学サッカー部員とし、ドリブル技能、平衡能力、分化能力、定位能力、リズム化能力、結合変換能力、30m スプリ
測
ント能力を評価した。ドリブルは直進とスラロームを組み合わせた課題とし、平衡能力はバランスディスク上での閉眼片
足立ちを課題とし、定位能力は振り子に向かってボール投げる課題、分化能力は後ろ向きでボールを的に向かって投げる
課題、リズム化能力はラインを踏まずに素早くステップを行う課題、結合変換能力は二つの木の板を素早く移動させつつ、
その上に立つ動作を反復させる課題を用いた。その結果、ドリブルとリズム化能力、分化能力、結合変換能力、スプリン
ト能力との間にそれぞれ有意な相関関係がみられた。このことからドリブル技能に関与すると考えられるコオーディネー
ション能力が明らかとなった。
22
[工]
8 月 27 日
11:25
保
教
心 27 − 011
発声によってリズム運動の時間的安定性は高められる
○宮田 紘平(東京大学大学院総合文化研究科)
方
工藤 和俊(東京大学大学院総合文化研究科)
ヒトの運動はリズミカルな聴覚刺激(Rhythmical Auditory Stimuli:RAS)に引き込まれることにより、時空間的安定
性が向上することが報告されている。このような RAS は外部機器だけでなく、自らの発声によっても生成することがで
人
ア
きる。そのためにリズミカルな発声によって、リズム運動の時空間的安定性は向上することが期待される。そこで本研究
では、ストリートダンスの基本的な動作である立位での膝屈伸運動を用いて、1)発声とリズム運動の間に引き込みが生
じるか、2)発声との協調により、リズム運動の時間的な安定性が向上するかを調べた。その結果、リズミカルな発声と
介
膝屈曲運動の間に引き込みが生じること、また発声との協調によってリズム運動が時間的に安定化することを明らかにし
た。これらの結果から、リズミカルな運動は、自己生成された情報により安定化が生じる可能性が示唆された。
105
哲
史
社
22
[工]
8 月 27 日
11:45
心 27 − 012
サッカーゲームにおけるボールと選手の動態
○山本 裕二(名古屋大学)
木島 章文(山梨大学)
横山 慶子(工学院大学)
サッカーにおける選手・ボールの動きには、自己アフィンフラクタルと呼ばれる自己相似性があることが明らかになっ
ている。では、なぜこうした自己相似性が生じるのか。その謎はいまだ解明されていない。そこで本研究では、この自己
相似性が生じるダイナミクスを明らかにするために、ボールに対する相対的な選手の動き、すなわち選手の動きをボール
心
生
中心座標系で記述することによって、サッカーゲームにおける選手の動きに潜む規則性を明らかにすることを目的とし
た。そのために、ボールの移動ベクトルに対する選手の相対的な移動ベクトルを求め、ボールデッドまでの中で、各チー
ム 10 名のフィールドプレイヤー、および各チーム内で単位移動ベクトルの平均を定向性とし、これらの時系列データを
検討した。その結果、全体が一つになる状態と 2 つのクラスタに分かれる状態があり、これらの状態の切替は、ボール
保持中の緩徐な変化とパスによる急激な変化において見られた。このことは、局所的な攻防と大域的な攻防が、時空間的
に入れ子構造になっていることを示唆し、このことがゲーム全体において自己相似性を生じさせていると考えられた。
バ
経
発
テクノホール[工]
8 月 27 日
14:10
心 27 − 013
大学生アスリートにおける反すう及び省察と心理的競技能力の関連
○山越 章平(大阪体育大学大学院)
土屋 裕睦(大阪体育大学)
臨床心理学の研究では、反すうと不安には強い関連が示されており、省察は自己制御につながることが指摘されてい
る(Trapnell & Campbell, 1999)
。しかし、スポーツの分野では反すうと省察を扱った研究はなく、アスリートの心理的
測
側面との関連は定かでない。そこで本研究では、反すう及び省察とアスリートの心理的競技能力との関連性を調査した。
対象者は、体育大学運動部に所属する 86 名であり、使用した質問紙は反すうと省察を測定する Rumination-Reflection
Questionnaire(高野・丹野,2008)とアスリートの心理的競技能力を測定する Diagnostic Inventory of Psychological
方
保
教
人
ア
Competitive Ability for Athletes(徳永・橋本,1988)であった。結果は、反すうと、自己コントロール能力、リラック
ス能力、集中力、決断力の 4 変数にそれぞれ負の相関が見られたが、省察と心理的競技能力に関する各項目との間には
有意な相関は見られなかった。このことから、省察ではなく反すうがスポーツにおける心理的競技能力と関係しており、
反すうを対象とした介入が大学生アスリートにとって重要であることが示唆された。
テクノホール[工]
8 月 27 日
14:30
心 27 − 014
高校野球の守備時におけるあがりに関する研究
○柄木田 健太(大阪体育大学大学院)
直井 愛里(近畿大学)
菅生 貴之(大阪体育大学)
本研究の目的は、高校野球選手 134 名を対象に、質問紙を用いて野球の守備時におけるあがりと性格特性、自信の関
連を明らかにすることであった。村山ら(2012)の先行研究を参考にあがり経験に関する質問紙と Vealey(1986)の
研究を参考に守備時の自信を尋ねる質問紙を作成した。得られた回答に対し因子分析を行ったところ、あがり経験につい
介
ては 4 因子(
「身体生理的変化」
、
「自己意識」
、
「状況意識」
、
「失敗への意識」
)
、自信については 1 因子(
「自信」)が抽出
された。性格特性は並川ら(2012)の Big Five 尺度短縮版を用いて測定した。その結果、あがりの 4 因子と性格特性、
自信の多くに相関が認められた。また、レギュラーと非レギュラーでは非レギュラーのほうが「身体生理的変化」による
あがりを感じやすく、内野手と外野手では内野手のほうが状況を意識することによりあがりを感じる傾向が高いことが明
106
03 体育心理学
らかになった。
テクノホール[工]
8 月 27 日
14:50
哲
心 27 − 015
「気持ちが切れた」競技者に関する質的研究
○来間 千晶(広島大学大学院)
関矢 寛史(広島大学)
佐々木 丈予(広島大学大学院)
多くの日本人競技者が「気持ちが切れた」と表現する心理的問題に直面しているにもかかわらず、その現象の全体像や
問題への対処法はこれまでに明らかになっていない。そこで本研究では、競技中における「気持ちが切れた」という表現
史
社
心
の用途および現象の発現機序を質的に明らかにすることを目的とした。14 名の大学生競技者(男性 8 名,女性 6 名 ; 平
均年齢 = 20.43 歳,SD=1.40; 平均競技歴 = 11.64 年,SD = 4.62)に対して半構造化面接を行い、自身の「気持ちが切れた」
経験について語らせた。面接内容の分析には KJ 法(川喜田,1967)を用いた。その結果、「気持ちが切れた」とは、
(1)
対戦相手、低いモチベーション、戦況、想定外の出来事という 4 つの原因によって生じる現象であること、
(2)モチベー
ションの低下を含む複合的な心理状態を一言で容易に表現できるという利便性を有する表現であることが明らかになっ
た。さらに、「気持ちが切れた」のような競技者自身が使用する心理的問題の表現が意味する内容を、心理サポートを行
う者が正確に理解することの重要性が示唆された。
テクノホール[工]
8 月 27 日
15:10
バ
経
心 27 − 016
メンタルマネジメントにおける関係性への質的アプローチ
○伊藤 麻由美(びわこ成蹊スポーツ大学大学院)
生
豊田 則成(びわこ成蹊スポーツ大学)
本研究の関心事は、メンタルマネジメント(以下、MM と略す)におけるアスリートと監督そして MM 指導者の関係
発
測
性を検討することにある。これまでにも、アスリートの心理サポートにおいて関係性に着目した研究が必要であると訴え
られてきている。それは MM 指導の現場に新たな視点を提供し、今後の MM 指導の進展に繋がるとされる。したがって、
本研究は MM における関係性を図式化し、質的にアプローチした。具体的には、MM は本研究者が担当し、高校生アスリー
方
ト 7 名(女子、球技系競技)と監督を対象として実施された。そこでは、MM の内容やアスリートの様子を詳細に観察・
記録をし、加えて個別にインフォーマルなインタビューを行い、会話内容を IC レコーダーに録音し、逐語化したものを
発話データとした。これらのデータを質的研究法の代表的手法である修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用
いて分析し、概念図を生成し、発展継承可能で有益な仮説的知見を導き出すことを目指した。
22
[工]
8 月 27 日
14:10
教
心 27 − 017
共創表現を育むファシリテータのはたらき
○西 洋子(東洋英和女学院大学人間科学部)
保
三輪 敬之(早稲田大学理工学術院)
共創表現は、年齢や性別、障害の有無を超えて、人々が共に表現を創り合う活動である。定められた筋書きはなく、個々
人
ア
の心身が出会いつながり合うことで、即興的な表現が創られていく。一方で、多様性から生じる差異は、時に不安や戸惑
いを生み、多くの身体的なズレは、表現の生成を妨げる要因となる場合がある。本研究では、発表者らが 2012 年の 12
月から継続している東日本大震災の被災地(宮城県・東松島市)での共創的な身体表現活動(以下 WS)を対象に、表現
介
を育むファシリテータのはたらきについて検討した。具体的には、WS での個々の活動者の位置を計測し、表現の場の生
成につながる相互の関係性に対してファシリテータがどのようにはたらきかけているのかを検証した。あわせて、集団へ
107
哲
史
社
心
の参加が困難な参加者と全体とをどうつなげようとしているかを事例的に検討した。結果として、表現の場の生成と崩壊、
新たな転換に際して、ファシリテータは、場全体に対して固有のはたらきかけを行っている様相を捉えることができた。
また、個々の参加者の特性を把握し、参加の段階に見合ったかかわりを他の参加者を含めて創りだそうとしていることが
確認された。
22
[工]
8 月 27 日
14:30
心 27 − 018
共創表現における場の創出について
一人手合わせ表現システムによる私との出会い
○三輪 敬之(早稲田大学)
西 洋子(東洋英和女学院大学)
手のひらを直接触れ合わせながら身体全体で即興的に表現を創りあう共創表現では、私の動きが私たちの動きとなる心
生
バ
経
身の共振によって共存在感やつながり感が生まれる。発表者らはこの創出メカニズムを解明するため、1 自由度の手合わ
せ表現計測を行い、共振を伴う共創表現では、身体全体の動きが手の動きに時間的に先行するのみならず、その先行的関
係が双方で同期する時間帯が頻繁に現れることを先に報告した。このことは表現の場の創出には、意識的な働きとは別に、
無意識的な働きが重要な働きを担うことを意味している。そこで本研究では、自身の無意識的な働きがあたかも相手の動
きとして表現されるような一人二役の手合わせ表現システムを構想し、その設計と開発を通して、自己のなかの両者の関
係性をシステム論的に検討することにした。その結果、意識的な私と無意識的な<私>との間における手合わせ表現の共
創は、能動・受動のような二項対立的な関係性からではなく、それらがズレながらも一つであるような中動態的な関係性
から生まれることが認められた。これは私が<私>に出会うことによって、共創表現が可能になることを示唆しているよ
うに思われる。
発
測
方
22
[工]
8 月 27 日
14:50
心 27 − 019
東日本大震災被災地小学校への「2 分間朝のスクワット体操」支援について
○菊池 章人(筑波大学)
征矢 英昭(筑波大学)
坂入 洋右(筑波大学)
(背景)東北の被災地小学校では、運動環境劣化により児童の体力や気分の低下がみられ、体育時間以外の運動にも関心
保
教
人
ア
介
108
が高い。(目的)運動環境が劣化した被災地小学校児童を対象に、教室内での短時間運動によって気分状態を向上させう
るか検討した。(対象)校庭は仮設住宅が設置されて使えず、バス通学になり徒歩が減少した被災地小学校児童 99 名を
対象とした。(方法)①教室内で、立ち上がり動作を音楽に合わせて、大きな声で数えながら 2 分間 30 回行った。朝の
授業開始前に、エルガーの「愛の挨拶」を DAW でアレンジした音楽を校内放送で流し、全児童一斉に行った。②児童の
気分状態を 2 次元気分尺度(TDMS)で測定した。朝の授業前 10 分間の Pre、Post の気分を、体操を行わなかった場合と、
行った場合について比較した。
(結果)この体操を行った場合、同じ時間帯に特に何もしない場合よりも、気分の活性度(元
気さ)や快適度(気分の良さ)が有意に向上した。運動の空間や時間に制約がある場合、運動を音楽や発声と組み合わせ
る工夫により、教室内でも 2 分という短時間で活性快適な気分状態へ向上させうることが示唆された。この体操は教諭、
児童から好感され長期継続している。
03 体育心理学
22
[工]
8 月 27 日
15:10
心 27 − 020
禁煙支援活動と樹木画
樹木画のアートセラピー的側面の検討
○津田 忠雄(近畿大学経営学部教養・基礎教育部門)
東山 明子(畿央大学)
哲
史
本研究は、大学 1-2 年生を対象とした講義において募った禁煙希望者 9 名に対して、禁煙支援活動を 3 ヶ月間実施し、
その中で実施した樹木画について論議する。禁煙希望者に対しては、その心理的プロセスを明らかにするために樹木画の
他に 4 種類の心理テストと呼気 CO 濃度測定を 5 回実施した。こられの実施にあたり、ただ禁煙の心理的プロセスを調査・
社
検討するのではなく、心理的支援活動と明確に位置づけ、個々人には、できる限り面談を実施した。この際に、樹木画を
介在し、目の前に描かれつつある樹木の<成長>や<変容>の可能性に注意を払い、支援をした。同時に不定期ではある
が、喫煙・禁煙に関する筆者たちのエッセイを各自に 31 通のメールを配信した。
喫煙者 9 名の中 6 名が禁煙に成功した。その時々に描いたそれぞれの樹木画には心理的変化のプロセスが表現され、
そこに禁煙希望者の自己物語が生成される。禁煙活動中は、情緒的な戸惑い、受け入れ、混乱、当惑、自信等などさまざ
まな感情が揺れ動くが、描き続けることによって、そこに心の癒しや洞察といったアートセラピー的側面も見いだすこと
ができた。
第1体育館
8 月 27 日
15:40
生
バ
心 27 − 101
プレッシャーが大きさの知覚および運動制御に及ぼす影響
○小笠 希将(鹿屋体育大学 大学院)
幾留 沙智(鹿屋体育大学)
心
中本 浩揮(鹿屋体育大学)
森 司朗(鹿屋体育大学)
経
発
心理状態の変化は知覚に変化をもたらし、知覚の変化は運動へ影響することが報告されている。そのためプレッシャー
による心理状態の変化は知覚および運動へ影響すると予想される。そこで本研究では、男子大学生 5 名を対象に、プレッ
シャーが大きさの知覚および運動に及ぼす影響を検討した。課題は、プレッシャーあり条件となし条件において、ミュラー・
測
リアー錯視図形の線分の長さを判断する知覚課題と画面上に表示されたミュラー・リアー錯視図形の線分に対して指を合
わせる運動課題とした。また、運動課題では図形の提示中に指を合わせに行くオンライン条件と図形が消失してから指を
合わせる記憶条件の 2 種類を行った。その結果、プレッシャーによる心拍数、状態不安、および知覚課題における錯視
量に有意な変化は見られなかった。しかし、
運動課題ではプレッシャーによって錯視量が有意に増加した。そのためプレッ
シャーは主観的知覚には影響を及ぼさないが、錯視による運動への影響が増大することが示唆された。
第1体育館
8 月 27 日
15:40
心 27 − 102
投射速度が捕球行動に及ぼす影響と重力認知との関連について
○森 司朗(鹿屋体育大学)
中本 浩揮(鹿屋体育大学)
幾留 沙智(鹿屋体育大学)
小笠 希将(鹿屋体育大学大学院)
竹内 竜也(鹿屋体育大学大学院)
投射速度が捕球行動に与える影響と重力認知との関連について、男子大学生を対象に 2 つの実験を行った。第 1 実験
方
保
教
人
ア
では投射速度と捕球行動の関連を明らかにするために、投射速度によって異なる位置(前:11.7 m /sec、真中:12.5m/
sec、後:13.6m/sec)にランダムに落下してくるボールの捕球時の動作開始時間および頭部の動きと投射速度とのコー
ディネーションを検討した。その結果、3 つの投射速度間で動作開始時間に有意な差は認められず、また、投射後約 0.2sec
介
までは投射速度間で頭部の動きに違いは認められなかった。第 2 実験では、重力認知の違いが捕球行動に影響している
かを明らかにするために、異なる重力(1/2G,1G,2G)で落下してくる刺激に対する一致タイミング課題と動作開始時
109
哲
史
社
心
生
バ
経
間及び頭部の動き(上下の動きの最大角度幅)の関連に関して検討を行った。その結果、動作開始時間と 1G の一致タイ
ミングの絶対誤差との間にのみ有意な正の相関が認められ、頭部の移動の最大角度幅とは 1G の一致タイミングの絶対誤
差で正、2G で負の有意な相関が認められた。このことから、大学生に関しては、重力の影響を受け、捕球動作を開始し
調整している可能性が示唆された。
第1体育館
8 月 27 日
15:40
方
野球における「状況判断がよいプレー」とは ?
場面、状態、対象からの検討
○松崎 拓也(北九州工業高等専門学校)
野口 欣照(有明工業高等専門学校)
黒田 次郎(近畿大学)
續木 智彦(西南学院大学)
古城 隆利(日本体育大学大学院)
西條 修光(日本体育大学)
日本野球はメジャーリーグ以上に盗塁やバントなどの戦略を重視している。そのためには、選手が周囲の情報を把握し、
試合での的確な予測・状況判断によって、それに基づいたプレーの遂行ができる(松崎、2008)ことが必要とされてい
る。野球の状況判断は、場面(走塁・攻撃・守備)
、状態(カウント数・得点差・イニング)
、対象(内的・外的・分析)
から成る複雑な構造をしていると考え、
「状況判断のよいプレー」を評価するためには、それらをふまえた指標が必要で
ある。そこで本研究は、野球での「状況判断がよいプレー」について野球の指導者を対象にこれら 3 つの状況をふまえ
た自由記述のアンケート調査を実施した。対象者は中学生から社会人野球までの指導者 35 名(41.4 ± 12.3 歳、野球歴
22.4 ± 11.9 年)とした。そこで収集した項目と松崎ら(2008)が作成した質問紙の項目を含め、
「状況判断がよいプレー」
についての 45 項目からなる質問紙を作成した。なお、結果は当日発表する。
発
測
心 27 − 103
第1体育館
8 月 27 日
15:40
心 27 − 104
2 つのモデル像提示の角度差が一致判断に及ぼす影響
P300 を手掛かりとした認知的負荷の検討
○石倉 忠夫(同志社大学スポーツ健康科学部)
藤本 愛子(同志社大学大学院スポーツ健康科学研究科)
本研究は、認知的負荷を検討する指標として事象関連電位の P300 を取り上げ、2 つのモデル像の提示角度を変えた
場合の一致判断に要する時間との関連性について検討した。男子大学生・大学院生 14 名を被験者とした。2 つの人形を
保
教
人
ア
介
同時にモニタ上に示し、一致・不一致をできるだけ早く正確に判断することを課題とした。2 つの人形の角度差は 0º、
60º、120º、180º であり、5 種類のポーズが取り上げられた。分析の結果、2 つ人形の角度差が 0º の反応時間が最も速かっ
た。P300 の分析から、Fz と Pz の P300 潜時において 0º が最も速く、また Fz、Cz そして Pz の P300 振幅において 0º
は他の角度差よりも大きいという結果であった。識別する刺激が複雑でわかりにくい場合は P300 の潜時が延長し、曖昧
な場合は振幅が弱く(陰性)になる。また、確信度が高くなるほど P300 振幅が大きくなると言われている。したがって、
本研究の結果から角度差が 0º の条件は他の条件よりも判別しやすく、視覚的手がかりがはっきりしていたために確信度
が高くなった。このため、判断に要する反応時間が速かったと考察された。
第1体育館
8 月 27 日
15:40
心 27 − 105
プロゴルファーのパッティング距離に対する成功確信度とパッティング動作
○長谷川 弓子(名古屋大学)
三浦 哲都(日本学術振興会 名古屋大学)
山本 裕二(名古屋大学)
本研究は、ゴルフパッティング課題を用いて、参加者の成功確信度とパッティング動作の関係を検討した。プロゴル
110
03 体育心理学
ファー 10 名が測定に参加した。実験室環境において、0.6-m から 3.3-m の間の距離を 0.3-m ごとに、計 10 距離に対す
る成功確信度とパッティング動作が測定された。ボールは実験者によって置かれ、距離はランダムな順序で呈示された。
成功確信度は Visual Analog Scale(VAS)を用いて、パッティング動作は光学式動作解析装置を用いて測定された。VAS
は各距離に対して 10 回、計 100 回測定された。VAS の測定後、参加者は計 100 回パットした。測定の結果、パッティ
ング距離が長くなるに従い、成功確信度は低下、インパクト速度は増加し、両者に線形の関係がみとめられた。しかしな
がら、成功確信度の個人内のばらつきや、アドレス時におけるフェース面の角度の変動誤差については、距離との間に線
哲
史
形関係は認められず、成功確信度が 5 割を切る特定の距離を境に、ばらつきや誤差の変化が異なっていた。このことは、
フェース面のカップイン可能誤差範囲と距離との関係、それに対する参加者自身の認識が影響していたと考えられる。
第1体育館
8 月 27 日
15:40
心 27 − 106
心
動きの印象と時間的・空間的物理情報との関連性
生
○田中 雅人(愛媛大学)
動きの印象とモデルの身体的特性、および時間的・空間的物理情報との関連性について検討するため、ダンスのスキル
レベルの異なるモデル 4 名の動きの映像を大学生 28 名に観察させ、9 つの感性語で構成される心理的尺度を用いて評定
させた。モデルの身体的特性を明らかにするため、身長、上肢長、下腿長など 12 項目の形態測定を行い、感性語との関
連性を検討したところ、身体的特性が動きの印象に与える影響は、動きの特徴(滑らか動きか激しい動きか、ゆったりと
した動きか速い動きかなど)によって異なることが明らかとなった。次に、モデルの動きの映像をデジタイズし、時間的・
空間的物理情報を収集した。その結果、時間的物理情報である動作時間と動きの速さに関する印象との間に関連性が認め
られる場合と認められない場合があり、速さの印象は物理的な動作時間によって必ずしも決定されるわけではないことが
示唆された。また、空間的物理情報である指先やつま先の移動距離と力動感、ジャンプ動作時の股関節や膝関節の角度変
化と躍動感との間に関連性が示され、空間的物理情報が動きの印象に影響を与えていることが明らかとなった。
第1体育館
8 月 27 日
15:40
社
経
発
測
心 27 − 107
大学における教養体育の授業が学生の運動に対する動機づけに与える影響
○永田 直也(慶應義塾大学体育研究所)
佐々木 玲子(慶應義塾大学体育研究所)
バ
山内 賢(慶應義塾大学体育研究所)
加藤 大仁(慶應義塾大学体育研究所)
近藤 明彦(慶應義塾大学体育研究所)
運動やスポーツ活動は、単なる身体的体力に関連するだけでなく、心身における健康やコミュニケーション力にも関係
している。そのため健康的な生活を過ごすためには、運動やスポーツを実施する態度を持ち、それを生涯に渡って継続す
ることが必要である。運動やスポーツ活動を継続する態度には運動やスポーツに対する内発的動機づけが影響しているこ
とが指摘されているが、体育授業においては、学生の内発的動機づけが高められているのだろうか。本研究では、大学に
おける教養科目としての体育授業が履修者の動機づけに及ぼす影響を検討した。対象者は、選択科目である体育実技を履
修した 149 名であった。第 1 回目と最終授業において、松本ら(2003)の自己決定理論に基づく運動継続のための動機
づけ尺度の質問紙を実施し、対象者から回答を得た。得られた尺度について、授業前後の得点を統計的に比較した。その
結果、外的調整と非動機づけの尺度得点が有意に低下した。これは、履修者の運動に対する動機づけが、自己決定理論に
おけるステージにおいて、より内発的に動機づけられつつあることを示すものと考えられる。
方
保
教
人
ア
介
111
哲
史
第1体育館
8 月 27 日
15:40
心 27 − 108
バスケットボールのフリースローにおけるシュート前のパフォーマンスルーティンの影響
について
○小岩 瑶(日本大学大学院)
バスケットボールのフリースローでは、シュート前にドリブルをつくといった選手固有のパフォーマンスルーティンが
社
多く見受けられる。例えば、第 65 回全日本大学選手権大会におけるフリースローの分析結果を見ると、すべての選手が
シュート前にドリブルを行ない、その後リング方向に顔を向ける行動をとっていた。これは、熊崎(2010)のパフォー
マンスルーティンにはドリブルとリングを見つめるといった行動が必要不可欠という報告からも理解できる。また長家ら
心
生
(1982)によれば、シュート成功率の高い者は成功率の低い者よりも視線の動揺が少ないことから、フリースローを成功
させるためには、シュート前の注視行動も重要と考えられる。
そこで本研究では、バスケットボールのフリースローにおけるシュート前のドリブルの有無が、シュート前の注視行動
とシュートの成功率に与える影響について検討することを目的とした。被験者は大学バスケットボール選手とし、シュー
ト前のドリブル行動の有無別で 2 群に分類した。なお、試行中の注視行動を探るため、眼球運動測定器を被験者に装着させ、
フリースロー課題を実施した。主な結果は、当日発表する。
バ
経
発
第1体育館
8 月 27 日
15:40
心 27 − 109
「スポーツ吹矢」の継続が生理心理面に及ぼす影響の検討
○東山 明子(畿央大学大学院健康科学研究科)
丹羽 劭昭(奈良女子大学)
スポーツ吹矢未経験者を対象にスポーツ吹矢が心理面に及ぼす影響について検討したところ、スポーツ吹矢の一連の動
作を行うことによって、
気分の改善や積極性の向上がみられ、
「呼吸」動作が心理的な疲労・混乱の軽減や注意力向上に、
「呼
測
吸」と「吹く」動作が積極性の向上や不安軽減に貢献することが示唆された。そこで本研究では、スポーツ吹矢の継続が
生理心理面に及ぼす影響を検討するため、スポーツ吹矢熟練者 8 名(平均経験 88.25 ヵ月:5 段 7 名、6 段 1 名)と未
熟練者 8 名(平均経験 15.00 ヵ月:無段位 5 名、2 段 3 名)を対象に、注意力および立位姿勢時や行射時の優勢前額皮
方
保
教
人
ア
上電位を測定し、比較検討した。その結果、行射得点は熟練者のほうが未熟練者よりも高く(p<.05)
、注意力得点も熟
練者のほうが高かった(p<.05)
。また、優勢前額皮上電位の優勢率では、行射時には熟練者は未熟練者よりもβ波が高
く(p<.05)
、α 1 波とθ波は低かった(p<.05)
。同様の結果が、安静閉眼時と立位開眼時にもみられたことから、スポー
ツ吹矢の継続は行射時だけではなく平常時にもやや高い脳活動状態をもたらし、この脳の活性化が注意力増強とスポーツ
吹矢の高得点に寄与することが示唆された。
第1体育館
8 月 27 日
15:40
心 27 − 110
潜在的な動機づけが快適自己ペース運動に及ぼす影響
○藤田 勉(鹿児島大学)
体育・スポーツにおける動機づけ研究の手法として質問紙法が主に用いられている。しかしながら、質問紙法で得られ
たデータと客観的な行動指標の関連の弱さは従来から指摘されている。これは質問紙法には社会的望ましさが反映される
ためと考えられている。そこで本研究では、社会的望ましさの影響を受けない潜在指標によって動機づけを測定し、運動
介
中の心拍数との関連を明らかにすることを目的とした。研究方法は次の通りであった。大学生を被験者として、運動前に、
感情誤帰属手続き(AMP)により潜在的動機の測定を行い、また、質問紙法により気分(POMS)の測定も行った。その
後、自転車エルゴメーター運動を 15 分間実施させた。ペダルをこぐペースは快適な気分が得られるよう各自で自由に調
整して良いことを伝えた。心拍数の測定は、運動開始から、5 分後、10 分後、15 分後に行った。結果は、POMS と心拍
112
03 体育心理学
数に相関は見られなかったが、AMP と心拍数には弱から中程度の正の相関が見られた。このことは、POMS のようなそ
の時の気分を質問紙で測定したデータよりも、潜在的な動機づけの方が運動中の心拍数を予測するのに優れていることを
示唆するものであった。
第1体育館
8 月 27 日
15:40
史
心 27 − 111
防衛的悲観主義に対する大学生アスリートの認識
○奥野 真由(国立スポーツ科学センター)
土屋 裕睦(大阪体育大学)
哲
佐藤 孝矩(大阪体育大学大学院)
社
心
防衛的悲観主義(Defensive Pessimism: 以下 DP)の認知的方略を用いる人は、過去の遂行結果をポジティブに認識し
ているにもかかわらず、将来の遂行において悲観的になることで入念な準備を行い、高い成績を維持している “ 適応的
な悲観主義者 ” である(Norem & Cantor,1986)
。本研究は、競技場面で DP の認知的方略を用いている大学生アスリー
トが存在しているかどうかを確認し、DP に対する認識について検討することを目的とした。大学生アスリート 132 名
(男性 104 名、女性 28 名)を対象に質問紙調査(防衛的悲観主義尺度 : 以下 DPQ、DP に対する認識調査)を実施した。
DPQ の得点を下位尺度(
「悲観」
、
「熟考」
、
「努力準備」、
「過去認知」)ごとに標準化し、クラスタ分析を行った。その結果、
DP の特徴を示すクラスタが抽出され、DP の認知的方略を用いている大学生アスリートの存在が確認された。次に、DP
に対する認識について検討した結果、DP の認知的方略を用いている大学生アスリートは、そうでない大学生アスリート
に比べ、DP に対して “ 効果的である ” という認識や好感を持っていることが確認された。
第1体育館
8 月 27 日
15:40
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発
心 27 − 112
UK 精神健康度や作業量とリーダー資質の違いの検討
○山口 聡唯(社会医療法人 博寿会 山本病院)
生
東山 明子(畿央大学大学院健康科学研究科)
リーダー経験者の UK 精神健康度の高低による違いを検討するために、UK 検査の総作業量、後期増減率、HAS(発動
性指数)
、KAS(可変性指数)
、KOS(亢進性指数)
、YG の 12 尺度と△選択数、MHP.1 の 13 尺度、アンケート項目につ
測
方
いて t 検定とχ ² 検定を用いて比較した。UK 作業量と MHP.1 において有意差がみられ、精神健康度が高いものは UK 総
作業量が多くストレスが小さかったが、UK 作業量の多少で比較した場合は有意差はみられなかった。すなわち UK 精神
健康度が高いと UK 作業量が多いが、UK 作業量が多くても精神健康度が高いとはいえないことがわかった。
また、精神健康度が高いリーダーは UK の HAS が小さく KOS と後期増減率が大きかったが、作業量が多いリーダーは
HAS が大きく後期増減率と KOS が小さかった。どちらも UK 作業量が多く心的エネルギー水準が高いが、精神健康度が
高いリーダーはじっくり粘り強くものごとに取り組むのに対し、作業量が多いリーダーは取りつきが良いが粘りが利きに
くいことが推察された。リーダー経験回数での比較ではリーダー経験数が多い者ほど社会的ストレスを感じており、リー
ダー重要度の比較では重要度の高いリーダーほど現在の生活の満足度が高いことがわかった。
第1体育館
8 月 27 日
15:40
心 27 − 113
スポーツ競技者における精神テンポと生活テンポの一貫性及び運動パフォーマンスへの影響
○平林 るい(東海大学大学院)
吉川 政夫(東海大学)
保
教
人
ア
介
本研究ではスポーツ競技者の精神テンポ及び生活テンポの一貫性、精神テンポがもたらす運動パフォーマンスへの影響
について検討する。個人の精神テンポや生活テンポに適合した状態をつくり、試合などの本番でよりよいパフォーマンス
113
哲
史
の発揮を促すことを目的とする。長崎(1990)の精神テンポ測定手続きに基づき、メトロノーム実験及び指頭打叩実験
を行い、実験協力者の精神テンポを測定した。次に、実験協力者の精神テンポとその± 50%のテンポをメトロノームで
鳴らす状況を設定し、
アニマ社製重心動揺システムGS- 10 を用いて立位時の重心動揺(静的バランス能力)を測定した。
また、長崎(1990)の生活テンポ調査票及び身長・体重、競技成績などを調査項目とする調査票への回答を求めた。
分析の結果、
運動テンポ(M = 65.2,
SD = 17.3)は聴覚テンポ(M = 85.7,SD = 17.5)に比べて有意に遅い(t =- 2.3,
df = 9,p < .05)ことが明らかになった。また、聴覚領域の精神テンポが速い人は前後方向の平均重心位置が前にある。
運動領域の精神テンポが速い人は重心動揺が大きく、遅い人は重心動揺が小さい傾向にある。
社
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8 月 27 日
15:40
心 27 − 114
ラグビーレフリーの資格ランクと個人 ‐ 社会志向性の関連
○日紫喜 熙士(日本大学大学院)
水落 文夫(日本大学)
ラグビーの審判資格ランクがレフリーの個人 ‐ 社会志向性と関連するかどうか検討した。円滑に試合を運営できる優
れたレフリーの備えるべき知識とスキルは、①競技のルールについての知識、②試合で発揮されるプレイについての知
識、③試合においてルールを適用して判定するまでの手続きに関するスキル、④試合で起こる現象を適正に解釈・予測し
て対処するスキルの 4 つが考えられる。これらは高い審判資格の獲得および高レベルな試合の審判行動に不可欠となる。
伊藤(1993)は、社会志向性について、外的基準と内的基準の両方を考慮する志向性であり社会適応的特性をもつとし、
個人志向性については、自分自身の内的基準への志向性であり自己実現的特性をもつとした。高度な審判行動が求められ
る高い資格のレフリーほど、他者あるいは社会の規範への社会志向性よりは、むしろ自分の内的基準に基づいて行動する
個人志向性に支えられていると考えられる。そこで、伊藤によって作成された個人 ‐ 社会志向性尺度を、審判資格ラン
クの異なるレフリーに対して実施し、資格ランクと個人 ‐ 社会志向性の関係を検証した。
第1体育館
8 月 27 日
15:40
心 27 − 115
短期集中型のスポーツ演習による受講生の社会的スキル向上効果に関する一考察
○中澤 史(法政大学)
林 容市(法政大学)
本研究では、6 日間のスクーリング形式で実施する通信教育ならびに半期で 15 回実施する通常型のスポーツ演習の授
業が、受講生の社会的スキル向上に資する効果について検討した。対象者は通信教育 24 名(男子 15 名、女子 9 名、平
均年齢 32.2 ± 9.8 歳)
、通常授業 18 名(男子のみ、19.9 ± 0.8 歳)であった。各授業に対する介入前後での変化を検討
するために Kikuchi’s Scale of Social Skill’s(菊池、
1998)の総得点および 3 つの下位尺度(問題解決、トラブル処理、
コミュ
ニケーション)を従属変数とした群(通信教育・通常授業)×測定時期(授業前・授業後)の二要因分散分析を行った。
その結果、測定時期において総得点および 3 つの下位尺度で有意な主効果が認められたが、交互作用は有意な値を示さ
なかった。そのため、主効果が有意であった項目において事後検定を行った結果、授業前と比較して授業後における全項
目の得点が有意に高いことが示された。この結果から、短期集中型のスポーツ演習においても通常授業と同等の社会的ス
キル向上効果が見込めることが示唆された。
03 体育心理学
第1体育館
8 月 27 日
15:40
心 27 − 116
学生トップレベル競技者の卒業後 3 年間にわたるキャリアステータスの変動とライフスキ
ルの関連
○清水 聖志人(
(公財)日本レスリング協会 2020 ターゲットエイジ育成・強化プロジェクト)
島本 好平(兵庫教育大学大学院)
久木留 毅(専修大学スポーツ研究所)
河野 隆志(
(公財)日本レスリング協会 2020 ターゲットエイジ育成・強化プロジェクト)
土屋 裕睦(大阪体育大学)
哲
史
社
本研究は、
大学生トップアスリートのキャリア形成とライフスキル(以下、LS)の関連を明らかにすることを目的として、
高校及び大学生時代に優秀な競技成績を残し 2011 年 3 月に大学を卒業した男子レスリング競技者 21 名を対象に、大学
卒業後から 3 年間にわたる 4 時点(2011 年 4 月、
2012 年 3 月、2013 年 3 月、2014 年 3 月)の縦断調査を実施した(継
続回答者 21 名)
。各々の調査にはキャリアステータスを問う項目に加え、アスリートに求められる LS を 10 側面(目標設定、
考える力等)から評価可能な「大学生アスリート用 LS 評価尺度」
(島本ほか、2013)を用いた。卒業後のキャリアステー
タスをモニタリングした結果、卒業時点の正規雇用獲得者は 7 名、1 年後には 10 名、2 年後、3 年後にはそれぞれ 15
名と経時的に正規雇用を獲得していることが明らかとなった。また、3 年後の状態をもとに希望就職獲得群(n=6)と未
獲得群(n=15)を設定し、両群の卒業時点の LS を比較した結果、希望就職獲得群は未獲得群に比べ 10 側面全てにおい
て LS のレベルが高く、
「目標設定」
(ES=1.01)と「最善の努力」(ES=.87)では 10%有意水準で高い値を示した。本研
究の結果は、LS とキャリア形成との正の関連を示すものと考えられた。
第1体育館
8 月 27 日
15:40
高校運動部活動の心理社会的効果と般化の継時的変化
学年および運動部所属の有無による比較
西田 保(名古屋大学)
北村 勝朗(東北大学)
運動部活動に参加することによって集中力やストレスマネジメントなどの心理社会的効果が得られ、それらの効果は日
常生活にも般化することが指摘されている。本研究では、高校運動部活動の心理社会的効果と般化の継時的変化を学年と
運動部所属の有無によって比較検討した。調査対象者は、高等学校 3 校の 1、2 年生運動部員 241 名、一般生徒 542 名
であり、2011 年 4 月、7 月、10 月、12 月、翌年 3 月の 5 回、質問紙調査を実施した。調査にはスポーツ活動の効果尺
度とスポーツ活動効果の般化尺度を用いた。最初に、運動部員の効果尺度と般化尺度の得点推移を検討した。分散分析の
結果、1 年生は両尺度とも得点は下降を示したが 2 年生は上昇を示した。続いて、般化尺度の得点を運動部員と一般生徒
とで比較した。4 月の得点を固定因子とした共分散分析の結果、1、2 年生とも 7 月以降で運動部員の方が一般生徒より
も高得点を示した。これらのことから、運動部活動の心理社会的効果は 2 年生になると得られるようになり、それらの
効果は日常生活にも及ぶことが示唆された。また、運動部活動で心理社会的スキルの学習環境が整うことにより、心理社
会的効果は促進されるということも推測された。
生
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心 27 − 117
○渋倉 崇行(桐蔭横浜大学)
佐々木 万丈(日本女子体育大学)
磯貝 浩久(九州工業大学)
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8 月 27 日
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心 27 − 118
体育実技履修学生の自己効力感及び社会的スキルの変化に関する検討(その 3)
合宿形式の集中授業参加者を対象として
○村山 光義(慶應義塾大学体育研究所)
村松 憲(慶應義塾大学体育研究所)
東海林 祐子(慶應義塾大学総合政策学部)
野口 和行(慶應義塾大学体育研究所)
板垣 悦子(慶應義塾大学体育研究所)
これまでに大学生の体育実技履修有無による一般性自己効力感:GSES(坂野・東條 1986)
、社会的スキルテスト:
KiSS-18(菊地 2007)の変化(村山ら 2011)
、社会的スキル向上を意図したプログラムを取り入れることによる GSES
心
生
バ
経
発
測
及び KiSS-18 の変化(村山ら 2012)を報告した。本研究では、夏季及び春季に合宿種目で行われた集中授業(計 7 種目)
の履修者を対象として、GSES 及び KiSS-18 の変化について検討を行った。集中授業全体では、GSES 及び KiSS-18 ともに
1 回目に対して 2 回目が有意に向上した(p<.01)。種目の違いによる GSES 及び KiSS-18 の変化を検討するために、測定
時期と種目を要因とした分散分析を行った。その結果、GSES では、測定時期の主効果に有意差が認められたが(F(1,123)
= 45.28, p < .001)
、種目の主効果(F(6,123)= 0.47, p = .828)及び測定時期と種目の交互作用(F(6,123)= 0.98, p
= .439)に有意差は認められなかった。また、KiSS-18 でも、測定時期の主効果に有意差が認められたが(F(1, 123)=
11.57, p = .001)
、種目の主効果(F(6, 123)= 0.54, p = .781)及び測定時期と種目の交互作用(F(6, 123)= 1.89, p =
.087)に有意差は認められなかった。
第1体育館
8 月 27 日
15:40
心 27 − 119
幼児の体格と体力・運動能力の発達特徴について(5)
和歌山県私立 W 幼稚園における体力・運動能力測定データから
○野田 さとみ(名古屋柳城短期大学)
林 悠子(立命館大学大学院、奈良学園大学奈良文化女子短期大学部)
幼児の体格の向上とそれに対して体力・運動能力の低下が叫ばれており、文部科学省による全国的な調査や各自治体や
各園による調査から、幼児の発育発達特徴を捉え、問題の提起とそれに対する解決法が模索されている。
本研究は、和歌山県 I 市にある私立 W 幼稚園における体格・体力測定データから、幼児の体力における発育発達の特
方
保
徴について検討を行ったものである。私立 W 幼稚園では、豊かな自然環境の中で自由遊びを通して自ら運動に親しめる
ような取り組みがなされ、昭和 56 年から毎年、年少児(3 歳児)、年中児(4 歳児)、年長児(5 歳児)各クラスと 4・5
歳混合 1 クラスに所属する全園児を対象に、体格および体力・運動能力のデータを収集している。これまで、H21 年・
H16 年・H11 年の各データにおける体力・運動能力を比較してきたが、本研究では、園児のきょうだい構成の違いに注
目した。各年齢の運動能力測定データと体格データを分析対象とし、きょうだい構成の違いによる幼児の運動能力の発達
的特徴について、体格の発達とのかかわりの視点から報告する。
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8 月 27 日
15:40
心 27 − 120
選手に認知されたコーチング効力感に関する研究
○神力 亮太(九州工業大学大学院)
坂元 康成(佐賀大学)
佐久間 智央(九州工業大学大学院)
磯貝 浩久(九州工業大学)
コーチング効力感(Coaching Efficacy;CE)は、選手に影響を与えているという指導者の自信である。同時に、選手に
介
認知されたコーチング効力感(Perceived Coaching Effectiveness;PCE)も検討されている。しかし、わが国で PCE を取
り扱った研究は見受けられない。そこで本研究では、① Kavasannu(2008)が作成した PCE を評価する尺度の日本語版
を作成し、② CE と PCE の関係を明らかにすることを目的とした。対象者は、S 県内の高校サッカー選手 213 名及びそ
の指導者 9 名である。①尺度の検証的因子分析を行うと、原版と同様の 4 因子 24 項目となり、モデル適合度を示す指標
116
03 体育心理学
は GFI=.903、CFI=.976、RMSEA=.051 であった。また、α係数を算出すると 4 因子すべてが 0.85 以上であった。よって、
妥当性と信頼性を有した尺度が作成された。② CE と PCE の得点を比較すると、PCE が CE を上回っていた。つまり、選
手が認知した指導の影響が、指導者の指導に対する自信を上回っていた。このことは欧米の先行研究とは異なり、日本人
の特徴といえるかもしれない。
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8 月 27 日
15:40
心 27 − 121
オットー・レーハーゲルのコーチングを探る
○高井 秀明(日本体育大学)
哲
史
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心
2014 年現在、世界のサッカーの中心は、スペインやドイツ、イタリア、イングランドといったヨーロッパであるといっ
ても過言ではない。そのような強豪国が連なった UEFA 欧州選手権で奇跡ともいわざるを得ない、快挙を成し遂げたのが、
オットー・レーハーゲルである。かれはボルシア・ドルトムントやバイエルン・ミュンヘンなどのブンデスリーガのクラ
ブの監督を歴任した後に、2001 年よりギリシャの代表監督に就任し、2004 年に強豪国がひしめく UEFA 欧州選手権で、
下馬評の低かったギリシャを優勝に導いた。本研究では、ヨーロッパサッカーをけん引してきたオットー・レーハーゲル
のコーチングについて探究することを目的とした。調査方法には半構造化面接を利用し、それによって得られたデータを
テクスト化した上で、オープンコーディング、カテゴリー化して検討した。その結果、かれのコーチングは、自身の気づ
きを大いに活用し、
選手の意欲が高まるように支援し、その選手の反応を考慮していることがうかがえた。したがって、
「今、
起こっていること」に力点があり、オットー・レーハーゲルはゲシュタルト的アプローチによって選手にコーチングして
いる可能性を示した。
第1体育館
8 月 27 日
15:40
心 27 − 122
学生野球における監督の発する言葉の影響力についてⅡ
なぜ奇跡は起きたのか
○朝西 知徳(羽衣国際大学)
発表者は、高校および大学野球部の監督として約 21 年間、学生野球の指導に携わり、公式試合と練習試合を含めれば、
生
バ
経
発
測
方
1,200 試合以上の指揮を執ってきた。メンタルトレーニングに力を入れた結果として、重要な公式試合になればなるほど、
信じられないような逆転勝ちを繰り返した。
昨年の日本体育学会第 64 回大会では、大逆転劇を演じた 7 試合(すべて公式試合)を選び、選手の精神力の強さを引
き出すきっかけとなった、高校野球監督として選手にかけた言葉と、その後の試合展開およびチームの行方について報告
(口頭発表)した。
本研究では、その内容をさらに詳しくまとめあげ、加えて、新たに大逆転劇を演じることとなった 3 試合(いずれも
公式試合)について、大学野球監督として選手にかけた言葉を紹介する。
【参考文献】朝西知徳『高校野球という名の青春映画:スポーツ心理学を応用した熱血指導の軌跡』現代図書(2013)
保
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第1体育館
8 月 27 日
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心 27 − 123
大学生競技者におけるスポーツ時の音楽聴取の実態とその効果
○飯塚 駿(大東文化大学)
榎戸 慎(大東文化大学大学院)
田中 博史(大東文化大学)
遠藤 俊郎(大東文化大学)
池田 志織(大東文化大学大学院)
横矢 勇一(大東文化大学)
本研究は、大学生競技者がスポーツを行う上で音楽をどのように活用しているかの実態を調査するとともに、モチベー
ション効果やリラックス効果等の諸効果との関係、スポーツにおける音楽の効果的活用法について検討し、スポーツにお
心
生
バ
経
発
測
けるメンタルマネジメントに関する一資料にすることを目的とした。大学生競技者(男子 111 名、女子 94 名、計 205 名)
に対し、フェイスシートとともに、杵鞭(2006)の研究に基づいて作成したアンケートを実施し、音楽聴取の有無とそ
の効果、スポーツをする上での音楽聴取についての意見、等を調査した。その結果、日常生活では大学生にとって音楽は
身近な存在であり、ウォーミングアップ中、トレーニング中、リハビリテーション時において6~7割の者が音楽を聴い
ていないが、逆に試合前においては 71%(146 人)の者が音楽を聴いていた。スポーツ実施時の音楽視聴の効果として
リラックス効果やモチベーション効果、集中力などの効果が挙げられた。また、それぞれのスポーツ実施場面で聴いてい
る曲調とその自覚する効果に関しては、テンポの良い曲とモチベーション効果、静かな曲とリラックス効果の関係性を示
唆する結果であった。
第1体育館
8 月 27 日
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心 27 − 124
スポーツ指導者は選手についてどのように語るのか
マインドマップを手掛かりとして
○竹内 早耶香(びわこ学院大学)
豊田 則成(びわこ成蹊スポーツ大学)
豊田 一成(びわこ学院大学)
本研究の関心事は、選手が描いたマインドマップを通じて、スポーツ指導者の選手理解を促す機能について質的に検討
することにある。本研究者は、これまでにも、メンタルマネジメント指導においてマインドマップを導入してきた(竹内
方
保
教
人
ア
介
ら、2012)
。そこでは、選手はマインドマップへの取り組みを通じて、①現状の把握を行い、②分析視点の明確化がなされ、
③思考の細分化を経て、
④見通しの確立に至る、
ということを確認した。本発表では、球技系種目に取り組む男子高校生
(35
名)を対象にマインドマップを利用したメンタルマネジメント指導を行った内容を報告する。特に、毎回のメンタルマネ
ジメント指導において、選手の描いたマインドマップについて指導者に語ってもらった。そこでの指導者は、選手の描い
たマインドマップの印象を語ることにより、選手の生活態度と選手の練習への取り組み状況とを重ねあわせながら、選手
を理解しようと努めていた。そこで本研究では、
「指導者は選手のマインドマップを手掛かりとして、選手についてどの
ように語るのか」というリサーチクエスチョンの下、質的なアプローチを行い、発展継承可能な仮説的知見を導き出すこ
とを目指した。
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8 月 27 日
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心 27 − 125
大学生における身体活動とストレス対処能力(SOC)との関連について
○園部 豊(日本体育大学)
柴原 健太郎(日本体育大学大学院体育科学研究科)
西條 修光(日本体育大学)
續木 智彦(西南学院大学)
玉城 耕二(日本体育大学大学院体育科学研究科)
大学生において運動・スポーツにおける身体活動は、積極的なストレス対処能力(SOC)に影響を与えることがわかっ
てきた。しかし身体活動は日常身体活動も含まれるため、両側面での検討が重要と考える。そこで本研究の目的は、身体
118
03 体育心理学
活動と SOC との関連を検討することであった。対象者は首都圏にある一般私立大学に在籍する学生 998 名のうち、調査
に同意をしたもののなかで回答に欠損値を含まない 958 名(男子 462 名、女子 496 名;平均年齢 18.34 ± 1.15 歳)であっ
た。測定尺度には対象者の過去数ヶ月間における身体活動量を測定するために身体活動評価表、運動行動の変容ステージ
を測定するために運動行動の変容段階尺度、ストレス対処能力を測定するために日本語版 SOC スケール(29 項目版)を
用いた。分析の結果、運動・スポーツ活動を多く行っている者はストレス対処能力も高いが、日常身体活動ではその関連
が弱いこと、運動行動の変容ステージが後期になるに従ってストレス対処能力が高くなることが明らかとなった。以上の
哲
史
ことから、ストレス対処能力は日常の身体活動よりも運動・スポーツ活動と強く関連することが示唆された。
社
第1体育館
8 月 27 日
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心 27 − 126
精神疾患患者の運動実施状況とメンタルヘルスの関係
○泉水 宏臣((公財)明治安田厚生事業団体力医学研究所) 肥田 裕久((医法)宙麦会)
藤本 敏彦(東北大学高高教養教育・学生支援機構) 永松 俊哉((公財)明治安田厚生事業団体力医学研究所)
精神科デイケア施設を利用する精神疾患患者において、運動実施状況とメンタルヘルスの関係を明らかにすることを目
的とした。被験者は、男性 29 名、女性 22 名、35.8 ± 9.8 才、統合失調症患者 39 名、気分障害患者 7 名、発達障害 2 名、
解離性障害 1 名、パーソナリティー障害 1 名であった。運動実施状況の調査において、IPAQ-SV による身体活動量の調
査を行った。メンタルヘルスの調査には、包括的にこころとからだの健康状態を測定する尺度(CHCW)および精神的回
復力測定尺度を用いた。一週間当たりの身体活動量と各心理尺度得点との相関関係を検討した結果、CHCW の総合評価
(ρ
=0.313, P=0.043)および精神的回復力尺度の総得点(ρ =0.297, P=0.034)において有意な相関関係が認められた。精
神科デイケア施設を利用する精神疾患患者において、運動をより実施している者ほど、メンタルヘルスが良好であること
が示唆された。
第1体育館
8 月 27 日
15:40
心
生
バ
経
発
測
心 27 − 127
スポーツチームの一体感が選手のメンタルヘルスに及ぼす影響
○山田 快(法政大学、順天堂大学)
上村 明(順天堂大学大学院)
沖 和砂(順天堂大学大学院)
川田 裕次郎(東京未来大学、順天堂大学)
加藤 恭章(順天堂大学大学院)
広沢 正孝(順天堂大学、順天堂大学大学院)
本研究では、多くのスポーツ選手が競技活動の単位とするチームのパフォーマンスに影響を及ぼす(Woodcock and
Francis,1994)一体感と選手のメンタルヘルスとの関連について検討した。検討に当たり、24 競技の運動部に所属する
大学生選手 799 名を対象として、質問紙調査を実施した。調査用紙は 2 つの尺度から構成され、Yamada et al.(2013)
が作成したスポーツチームの一体感尺度、中川・大坊(1985)が作成した GHQ-30 をそれぞれ選手が所属するチームの
一体感およびメンタルヘルスを評価する指標として用いた。分析の結果、まずスポーツチームの一体感と選手のメンタル
ヘルスとの間に、有意な負の相関関係(r = -.20,p < .001)があることが認められた。さらに、スポーツチームの一体
感は、選手のメンタルヘルスを予測する(β= -.23,p < .001)ことが明らかになった。このことは、スポーツチーム
の一体感を高めることが、選手の良好なメンタルヘルスを保持・増進する上で有効な手段となり得ることを示している。
本研究を通じ、選手が競技遂行に伴って抱える種々の問題や悩みに対処し、競技内でより高質なパフォーマンスを発揮す
るための新たな一助が得られたと考えられる。
方
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教
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ア
介
119
哲
史
社
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心 27 − 128
大学生アスリートのスポーツ傷害発生の要因
○伊藤 詩織(日本女子体育大学)
佐々木 万丈(日本女子体育大学)
中島 宣行(順天堂大学)
スポーツ傷害の発生と選手の心理社会的要因との関係を検討した研究は、国内では十分に蓄積されているとは言えない。
そこで本研究では、大学生アスリートを対象にスポーツ傷害の発生と日常・競技ストレッサーとの関係について検討した。
大学生アスリート 154 名を対象に、日常・競技ストレッサー尺度(岡ほか、1998)を実施し、スポーツ傷害の発生回数
心
生
に対するストレッサー評価の影響を分析した。ストレッサー尺度の 5 下位尺度得点を独立変数、調査実施時を起点とす
る過去 1 年間のスポーツ傷害発生回数を従属変数とする単回帰分析を実施した結果、
「競技成績」および「他者からの期待・
プレッシャー」の高さが、傷害発生の回数が多くなることに影響していることが示された。このことから、練習の成果が
競技成績に結び付かないことや、周囲からの期待を強く感じることが、スポーツ傷害をより多く発生させる心理社会的要
因であることが示唆される。自らの能力に相応しない目標設定に基づく練習や競技への参加、また周囲の期待に応えよう
として過度に練習を行うことなどが、スポーツ傷害の発生を多くすることに結びついているのではないかと考えられる。
バ
経
発
第1体育館
8 月 27 日
15:40
心 27 − 129
中年期の運動習慣の実態と関連勝因に関する基礎的研究
○今野 亮(順天堂大学)
日本の成人において、1 回 30 分以上の運動を週 2 回以上実施し、1 年以上継続している運動習慣がある者の割合は、
男性 36.1%、
女性 28.2%(厚生労働省、
2013)と、
決して高いとは言えない。また、中年期は肥満や様々な疾病の割合が年々
測
増加傾向にあることからも、運動習慣がある者の割合が高まることが望まれる。そこで、本研究は、中年者の運動習慣の
実態とそれに関連する要因について検討し、運動習慣を身につけるための基礎資料を得ることを目的とした。
調査対象者は、
488 名(男性 223 名、
女性 265 名;平均年齢 49.1 ± 3.59 歳、年齢幅 39 - 60 歳)であった。調査内容は、
方
保
教
人
ア
現在、及び過去の運動実施状況、運動の目的、運動をしていない理由、運動の促進要因と阻害要因、スポーツにおける価
値意識(今野ら、2009)であった。
結果として、価値意識は運動習慣との関連は見られず、学生を対象とした先行研究とは異なる結果であった(今野ら、
2014)
。運動実施状況は前述の割合とほぼ同様であり、性差は、関連要因を含めて顕著ではなかった。運動習慣がある者
は、健康、競技を楽しむという目的を持ち、運動習慣がない者は経済的なことより気にかかることがあることが示された。
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8 月 27 日
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心 27 − 130
大学教職員スポーツ教室参加者の健康度と生活習慣の変化
○関矢 寛史(広島大学)
加藤 荘志(広島大学)
岩田 昌太郎(広島大学)
小川 茜(広島大学大学院)
本研究の目的は、生活習慣の改善に関する約 5 分のミニレクチャーを毎回挿入したスポーツ教室への参加が、大学教
職員の健康度と生活習慣に及ぼす影響を調べることであった。平成 24 年 10 月~ 12 月にノルディックウォーク教室と
介
テニス教室を週 1 回、計 8 回開催した。教室開催期間の前後に健康度・生活習慣診断検査用紙(徳永、2003)に回答させ、
ノルディックウォーク教室 22 名とテニス教室 23 名および教室に参加しなかった教職員 40 名から回答を得た。健康度・
生活習慣診断検査の T 得点を従属変数として、群(3:ノルディックウォーク教室、テニス教室、非参加者)×尺度(4:
健康度、運動、食事、休養)×時期(2:教室開始前、教室終了後)の 3 要因分散分析を行った結果、群と時期の交互作
120
03 体育心理学
用(p<.001)が認められた。下位検定の結果、各教室の参加者の得点は、教室開始前後で増加したが、非参加者の得点
は減少した。また、教室終了後の得点では、各教室の参加者が非参加者より高い値を示した。生活習慣の改善を意図した
ミニレクチャーを入れたスポーツ教室が参加者の健康度と生活習慣の改善に役立つことを明らかにした。
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8 月 27 日
15:40
哲
史
心 27 − 131
運動内容の違いが運動習慣の無い若年女性の心理面に与える影響
二次元気分尺度を用いた検討
○中村 和照(茨城キリスト教大学)
【目的】本研究は、運動内容の違いが運動習慣の無い若年女性の心理面に与える影響について明らかにすることを目的と
社
心
した。【方法】20 代女性をダンス群 7 名(22.6 ± 2.4 歳)と歩行群 7 名(21.7 ± 1.5 歳)に分け、1 回 30 分の運動を
4 週間(合計 13 回)行なわせた。運動初日と最終日に運動前後の心理状態の変化を評価するために二次元気分尺度の測
定を行ない、運動介入前後には、唾液コルチゾール、最大酸素摂取量の測定を行なった。
【結果】心理的活性度は、運動
初日ではダンス群のみで、
運動最終日では両群ともに運動前に比べて運動後に有意な上昇が認められた。心理的覚醒度は、
運動初日には有意な変化は認められないが、運動最終日には歩行群のみで運動前に比べて運動後に有意な上昇が認められ
た。最大酸素摂取量、唾液コルチゾールは、運動介入前後で有意な変化は認められなかった。【考察】若年女性の場合に
は、運動習慣の無い者でもダンスのように楽しめる運動であれば、運動開始初期から心理的な活性度が高まると考えられ
た。一方、歩行のような単調の運動では、運動に慣れるまでに時間がかかり、心理的変化が認められるまでにはダンスよ
りも時間が必要になると考えられた。
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8 月 27 日
15:40
心 27 − 132
トップアスリートにおける心理的競技能力の特徴について
インタビュー調査による検討
○立谷 泰久(国立スポーツ科学センター)
平木 貴子(日本大学 経済学部)
村上 貴聡(東京理科大学 理学部)
荒井 弘和(法政大学 文学部)
本研究では、「トップアスリートに必要な心理的要素・側面」を明らかにするために、トップアスリート 7 名を対象に
半構造化面接によるインタビュー調査を行った。競技種目は、個人、対人、チーム種目など多様であった。対象者は、最
初に、自らが思う「トップアスリートに必要な心理的要素・側面」について自由に答えた。次に筆者らが先行研究をもと
に作成したトップアスリートに必要だと思われる心理的要素・側面のリスト(32 項目)から、5 つの項目を選んだ。そ
の結果、自由回答では、
「周りに左右されない」
、
「自分自身を持っていることが必要」
、
「平常心」
、
「勝ちたいという強い
気持ち」
、「覚悟を決める」
、
「闘争心」
、
「自信」などの回答が得られた。また、32 項目のリストからの抽出では、「心に余
裕をもつこと」
、
「自分を持っていること」
、
「自分のことを理解していること」、「自信」、「集中力」が多かった。自由回答
とリストの抽出から総合的にみてみると、
「自分を持っていること」と「自信」の 2 つの要素が、トップアスリートには
特に必要な心理的要素であるということが明らかになった。
第1体育館
8 月 27 日
15:40
心 27 − 133
キャリアトランジションに伴う心理的変容
競技を離脱した元高校生アスリートを対象にして
○西村 拳弥(びわこ成蹊スポーツ大学大学院)
豊田 則成(びわこ成蹊スポーツ大学)
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本研究は、「競技を離脱した経験をどのように語るのか」というリサーチ・クエスチョン(Research Question:以下
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史
RQ)の下、質的にアプローチをし、発展継承可能で有益な仮説的知見を導き出すことを目的とした。インフォーマント
(Informant:情報提供者)は高校生期に個人競技で全国大会に出場し、高校卒業を機にスポーツへの関わり方を変えた元
高校生アスリート 3 名である。1 人当たり、約 1 時間程度 1 対 1 形式の半構造化インタビューを実施した。得られた語
りを逐語化し、複線径路・等至性モデル(Trajectory Equifinality Model:TEM)を用いて分析を行った。その結果、
上記の RQ に対して『
【競技に取り組む】中で【自分らしさを構築】してきたが【進路の選択】をきっかけとして【将来
を見通し】始めなければならなくなる。そんな中で競技への【関わり方を変える】ことが【今までの自分らしさから一歩
踏み出す】ことを意味しており、
【新たな自分らしさを模索】し始める。すなわち、【過去を振り返り】自身の経験を意味
社
心
生
づけ、【現状に積極的に取り組む】ことで【新たな自分らしさを築いていく】ことができるものとして語る』という仮説
的知見を導き出した。
第1体育館
8 月 27 日
15:40
心 27 − 134
マインドマップを利用したメンタルマネジメントに関する研究
高校ウェイトリフティング部を対象として
○冨永 哲志(大阪電気通信大学)
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豊田 則成(びわこ成蹊スポーツ大学)
本研究の関心事は高校生アスリートが経験するメンタルマネジメントについて質的に検討することにある。本研究は
「高
校生ウェイトリフターはメンタルマネジメント経験をどのように語るのか」というリサーチ・クエスチョンを設定し、質
的にアプローチを行い、発展継承可能で有益な仮説的知見を導き出すことを目的とする。インフォーマントはA高校ウェ
イトリフティング部に所属する選手である。具体的に 2 週間に 1 度のペースでA高校ウェイトリフティング部に対して、
マインドマップ指導を中心とした心理スキルトレーニングの介入(①オリエンテーション②マインドマップ③目標設定④
イメージトレーニング⑤振り返りと課題設定)を大会までの 2 ヶ月間行った。その間、選手が実力発揮に向けて取り組
んでいる様子の「観察記録」を作成した。そして、内省報告を実施し得られた「語り」と「観察記録」を併せて質的デー
タとして位置づけ、質的研究法を用いて分析を行い、選手のメンタルマネジメント経験の可視化を試みた。
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 135
重いバットでの打撃がその後のパフォーマンスに及ぼす影響
○兄井 彰(福岡教育大学)
本研究は、野球において重いバットでの打撃が、後続する標準の重さのバットでの打撃に及ぼす影響を検討した。大学
野球選手 18 名を対象に、基準運動として、900g の標準のバットで 10 球を実打させ、その後すぐに、先行運動として、
重さの異なるいずれかのバット(900g、1050g、1200g)で 10 球を実打させ、さらに、後続運動として、900g の標準
のバットで 10 球を実打させた。投球は、ストライクゾーンの中央付近にボールが集まるようにバッティングマシーンを
調整し、球種と球速は、ストレート(120 km/h)とカーブ(100 km/h)とした。基準運動と後続運動での打撃につい
て、
打球の質(ヒット性のあたり)とインパクトの質(バットの軌道との一致)、スイングの質(フォロースルーの大きさ)
という観点で、野球経験が 10 年以上の者 2 名が主観的に得点化した。その結果、両球種において、重いバットでの打撃
後では、主観的にバットを軽く、ボールを打ちやすく感じており、スイングの質が向上していた。しかし、ストレートお
いて、重いバットでの打撃後では、打球の質、インパクトの質とも低下していた。また、カーブおいては、打球の質及び
インパクトの質に差は見られなかった。
03 体育心理学
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 136
反応開始前の動作の有無が反応時間に与える影響
○髙野 淳司(一関工業高等専門学校)
哲
史
ボールゲーム等の指導においては、構えた姿勢で静止し、その状態でプレーに備えることを求める場面が多く見られる。
しかしながら、トップレベルの選手においては、動作前に上体を動かしたり、足踏みをしたりしながら次のプレーに備え
る選手も多く存在する。本研究では反応開始前にスイッチが装着された右手人差し指が静止している状態と、右手人差し
社
指に動作がある状態を設定し、モニター上に提示される刺激に対して右手人差し指で直接タッチを行った際の反応時間を
測定した。
「反応以前の動作の有無(あり、なし)」
、
「選択肢数(1、2、4 選択肢)
」
、
「移動方向(上、下、左、右)」を
各要因とし、3 要因の分散分析および下位検定を行った結果、反応以前の動作がある方が反応時間は有意に早まることが
わかった。また、反応以前の動作がある場合においては、選択肢数の増加に伴う反応時間遅延が消失することがわかった。
移動方向の影響については、下方向で有意に反応時間が早く、左方向では遅延した。これらの結果より、ボールゲーム等
ではプレー直前まで静止しているよりも、事前に身体の動作を有している方がより早い反応が可能となることが示唆され
る。
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 137
非利き手での投球トレーニングによる同側小脳の発達
○新井 翔太(中京大学大学院体育学研究科運動生理学研究室) 荒牧 勇(中京大学スポーツ科学部)
トレーニングによる身体随意性の向上は、どのような神経基盤の変化に支えられているか?本研究は、MRI 解剖画像
心
生
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経
発
から脳局所の灰白質の体積・密度を調べる Voxel-Based-Morphometry(VBM)の手法を用いて、随意性の低い非利き手
での投球トレーニングによる能力向上に関連する脳構造の変化を調べた。
被験者は右利きの一般健常成人 18 名であった。被験者は 4 週間にわたり、週 3 日、1 日につき 50 球、左手でのハンドボー
測
ル投球トレーニングを行った。トレーニング期間の前後に 10 球ずつテスト投球を行い、左手での投球の速度と的中心か
らの距離を計測した。また、3 ステラ MRI を用いて、全脳の T1 強調解剖画像を計測した。
トレーニングの結果、左手投球における球速と正確さが向上した。また、左小脳の灰白質の体積・密度が増加した。小
脳は身体同側の運動制御と学習に関わる脳領域である。よって、トレーニングによる非利き手での投球能力の向上は、同
側小脳の発達に支えられていることが示唆された。
*本研究は、科研費 24300210、24650367、中京大学特定研究助成、生理学研究所共同利用研究の成果である。
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 138
視覚目標に対する両手同時目標到達運動の左右差
○山内 正毅(長崎大学)
左 / 右半視野に提示された視覚目標に対する左手 / 右手それぞれの反応時間については、刺激と反応の対応性として知
られている。山内(2011)は、目標到達課題の反応時間において刺激と反応の対応性傾向を確認した。しかし、正確性
方
保
教
人
ア
については明確な結果が得られなかった。昨年の本学会大会(64 回大会)においては動作前時間において対応性を確認し、
正確性については一部y軸方向の誤差に対応性傾向を得た。本研究は、視覚目標(各視野内左 / 右 3 か所と中央 2 か所
の計 8 箇所に 1 か所ずつランダムに提示した標的)に対する両手同時による素早い到達運動の反応時間(動作前時間と
介
動作時間)と正確性を比較検討することを目的とした。実験参加者は、八田・中塚(1975)の利き手テストにより強い
右利きと判定された大学生および職員 11(男 6、女 5)名であった。課題は、反応タブレット上のホームポジションに
123
哲
史
社
心
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バ
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発
測
方
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準備したタッチペン尖端を画面上に提示された標的と一致する位置に両手同時に移動することであった。分析の結果、本
条件では反応時間における左右差は得られず、正確性において視野(左 / 右)と反応手の交互作用が得られた。
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8 月 28 日
14:30
心 28 − 139
視覚・聴覚刺激を使用したメンタルトレーニングの 介入効果の検討
○深見 将志(日本体育大学大学院トレーニング科学系)
楠本 恭久(日本体育大学)
メンタルトレーニングの効果については、これまでの研究により数多くのエビデンスが存在している。しかしながら、
それらの研究によるエビデンスは、実験統制下で行なわれた実験室内実験の結果であり、実際の競技大会においてもメン
タルトレーニングの効果を示すかは疑問である。実験室内と競技大会で実施するメンタルトレーニングでは、同じ心理技
法であったとしても、環境がその効果に大きな影響を及ぼす可能性がある。
そこで本研究では、視覚・聴覚刺激を用いて実験環境を実践場面に近づけ、その環境下で行うメンタルトレーニングの
効果について検討することを目的とした。A 大学アーチェリー部 25 名を対象とし、週 1 回× 4 週の計 4 回の介入を行っ
た。なお、本研究ではメンタルトレーニングとして呼吸法を行った。
1 カ月間の介入効果を検証するため、週 1 回× 4 週の介入のうち 4 週目に測定した値を分析対象とした。その結果、4
週間にわたって継続的に実施した呼吸法は、リラクセーション効果をもたらしたといえる。さらに、視覚・聴覚刺激を用
いたメンタルトレーニングを行うことで、実践場面への順化を後押しする可能性が示唆された。
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 140
運動・スポーツ場面における歩行と走行活動の違いが時間評価に及ぼす影響
○栃木 勇人(東海大学大学院)
吉川 政夫(東海大学)
運動・スポーツ場面においては試合時間、演技時間などの時間体験をする。陸上競技、水泳の中・長距離などの競技は、
特に時間評価能力が競技力の発揮に関連すると考えられる。本研究では環境要因を一定とし、歩行、走行条件を統制して
時間評価を測定することにより、運動活動の違いが時間評価にもたらす影響について検討することを目的とした。また、
時間知覚にはそれに対応した感覚器官がなく、時間評価は様々な様式の感覚における、その持続、継起、変化の側面の抽
出と統合過程にもとづいていると松田(1981)は述べている。そこで、本研究では何を手がかりに時間評価をしている
のかについても検討した。
本実験は、
体育学部生を対象にトレッドミルを用いて行った。MAX 条件(できるだけ速く)、MIN 条件(できるだけゆっ
くり)、ORD 条件(ちょうど良い速さで)の 3 つの運動条件(折原の教示モデル 1991)での歩行、走行活動を行い、そ
の際の時間評価を測定した。また、何を手がかりにしていたのかを調査票と内省報告を用いて調査を行った。また、安静
時の時間評価についても測定を行った。結果は、
運動条件が変わることにより、時間評価に違いがでることが明らかになっ
た。
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8 月 28 日
14:30
心 28 − 141
Body Schema 能力測定を目的とした Mental Rotation 課題の検討
○加藤 恭章(順天堂大学大学院)
広沢 正孝(順天堂大学)
近年、メンタルローテーション課題(以後、MRo と記す)の刺激画像に身体画像を用いると、反応時間に対象者自身
124
03 体育心理学
の身体状態や、生体力学的特性が影響すると報告されている。このことは、姿勢制御や動作のために使用される Body
Schema 能力を反映しているのではないかと推測する。ところが MRo は、Body Schemaの測定としていくつかの課
題がある。そこで本研究は次の 4 つのことを検討した。1)異なる判断の MRo 間では、反応時間は異なるのか。2)各
MRo 内において、刺激画像毎の反応時間は異なるのか。3)各 MRo 間の刺激画像毎において、反応時間は異なるのか。4)
対象者は、刺激画像のどこを見て判断しているのか。実験には画像呈示ソフト Superlab5 を使用し、反応時間の測定に
は SV1 Voicekey を用いて画像提示から口頭での応答までを測定した。刺激画像の視点の測定には Tobii 社製 Eye Tracker
哲
史
を用いた。実験課題は、2 つの判断の異なる MRo と、刺激画像(手、携帯、Shepard 画像)から 5 つのブロックを作成
し実験が行われた。現在実験の最中であるため、結果及び考察は学会にて公表する。
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 142
心
アスリート・バーンアウトと動機づけとの関連
○池本 雄基(九州大学大学院)
杉山 佳生(九州大学人間環境学研究院)
スポーツにおける過度の勝利志向の重視や施設及び設備の充実による長時間の練習、トレーニング開始の低年齢化など
の理由から、スポーツ選手の身体的・心理的疲弊といった様々な弊害が明らかにされている。その中でも、近年ではスポー
ツ選手におけるバーンアウト問題の深刻化が危惧されている。
本研究では、自己決定理論(Deci & Ryan, 2002)の枠組みを用いて、大学スポーツ選手におけるバーンアウト傾向と
動機づけとの関連を検討した。自己決定理論にもとづいて Vallerand(1997)が提唱した内発的・外発的動機づけ階層モ
デルでは、内発的動機づけと同一視的調整は結果要因に対して正の影響を及ぼし、外的調整と非動機づけは負の影響を及
ぼすことが仮定されている。そのため、本研究では内発的動機づけと同一視的調整はバーンアウト傾向に負の影響を及ぼ
し、外的調整と非動機づけは正の影響を及ぼすと仮定した。パス解析の結果から、本研究の仮定は支持される結果となった。
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8 月 28 日
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経
発
測
心 28 − 143
競争ストレスが脳波に与える影響について(3)
○松本 清(立命館大学)
佐久間 春夫(立命館大学)
競技の最中、自身にとって優勢な状況であるかそうでないかは、競技を終えるまでの意欲や動機づけの持続に大きな影
響を与える。競技中に優勢な状況にあることで意欲や動機づけが高く保たれていれば活発な精神活動が持続され、劣勢な
状況が続き時間とともに意欲や動機づけが損なわれれば精神活動も低下することが予想される。
そこで本研究では、精神活動の指標として多くの研究で用いられる脳波の周波数成分を用いて、競争事態における優勢
か劣勢かが精神活動に与える影響について検討を行った。大学生・大学院生を対象に、予告刺激を伴う反応時間課題を用
いて他者と反応の速さを競う課題を実施し、その間の脳波を記録した。競争課題を実施するにあたって、勝敗の操作は行
わなかった。
全被験者の中で勝率が上位の者と下位の者をそれぞれ選出し、前者を連勝群、後者を連敗群とした。競争課題時のα波、
β波のパワー値を求め、それらの時間経過に伴う変化について連勝群と連敗群との比較を行った。優勢な状況と劣勢な状
況、それぞれの状況下における精神活動と脳波との関連性を明らかにし、競争ストレスによってもたらされる心理生理的
なストレス反応について考察を行う。
方
保
教
人
ア
介
125
哲
史
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 144
スポーツ選手の動機づけに影響する指導者の言葉がけ
試合直前の言葉がけに着目した質的研究
○菅野 慎太郎(日本大学大学院)
渡部 悟(日本大学)
指導者の言葉がけが選手の動機づけに与える影響について西田(2010)は、「信頼関係や文脈に左右される」と述べて
社
おり、言葉の内容に限らず、言葉がけの背景を含めた様々な要因が関わっていると推測される。そこで本研究は、試合直
前の指導者の言葉がけが選手の動機づけに与える影響を明らかにするため、「言葉」の意味内容に、「言葉がけ」の文脈を
加えて、それらの構造とプロセスを検討することを目的とした。調査対象者はパーソナルコーチに長く指導されている
心
生
個人種目の国内エリート選手 4 名に対して、動機づけに影響する指導者の言葉がけとは何かをテーマに半構造化インタ
ビューを行い、得られた回答データを修正版グラウンデッドセオリーアプローチにより分析した。その結果、
「信頼関係」
、
「当日の状況」、「選手のパーソナリティ」
、
「選手の構え」、「選手の心理的変化」など、言葉がけに関わる多くの要因を抽
出した。このことから、選手のパーソナリティや指導者と選手の信頼関係、当日の状況によって、指導者の言葉がけに対
する選手の受け入れ方が変わり、動機づけの変化に先立ち、ポジティブ-ネガティブな心理状態の変化が起こっていると
いう可能性を見出した。
バ
経
発
第1体育館
8 月 28 日
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心 28 − 145
スポーツ学部生が描くバウムテストの幹の太さと自我肥大・自我萎縮の傾向について
○伊藤 友記(九州共立大学スポーツ学部)
心理臨床場面で用いられるバウムテストにおいて、描かれた樹木にはその人の自己像が投影されると考えられている。
本研究はスポーツ学部生が描くバウムの幹の太さに注目し、幹の太さに投影されると考えられている自我肥大・自我萎縮
測
の傾向が、種々の質問紙検査(TEG・TAIS・SAIS・POMS・DIPCA 等)によって測定されるパーソナリティや不安傾向などと、
どのように対応しているかを明らかにすることを目的とした。その結果 TEG における「FC」・「A」、POMS における「V」
、
DIPCA における「自信」などの尺度においては太く描かれるほど得点が高く、反対に POMS における「T」
、TAIS・SAIS
方
保
教
人
ア
における「身体緊張」・「競技回避」・「自信喪失」・「情緒不安」・「過緊張」などの尺度においては、細く描かれるほど
得点が高いことが認められた。即ち、幹を太く描く者ほど自由奔放な態度を有し活気や自信に溢れ、幹を細く描く者ほど
自信が低く不安や緊張を感じやすい性質を有していることが伺え、バウムに投影される自我肥大・萎縮の傾向と、各種質
問紙によって測定されるパーソナリティや不安傾向が対応していることが明らかとなった。
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 146
2013 年度全日本高校生選抜合宿・中学長身者選合宿参加バレーボール選手の心理的特性
に関する研究
○池田 志織(大東文化大学)
榎戸 慎(大東文化大学)
遠藤 俊郎(大東文化大学)
飯塚 駿(大東文化大学)
田中 博史(大東文化大学)
横矢 勇一(大東文化大学)
これまで、スポーツ選手の心理的特徴は、心理的適性との関連で扱われてきた。特にバレーボール選手は、近年遠藤他
(JVA テクニカルスタディ:2013、2012)が全日本中学生選抜選手についてその検討を加えている。しかし、その中で
介
は主に性差について言及されており、例えば高校生選抜選手といったその他の種別の優秀選手との心理的特徴の違いにつ
いては検討が滞っていた。そこで本研究では 2013 年度全日本高校生選抜選手(男子 26 名、女子 24 名、計 50 名)と
全日本中学生長身者選抜選手(男子 49 名、女子 6 名、計 55 名)の心理的特性の違いを分析した。両対象は現時点での
中高生における我が国の優秀バレーボール選手であると言える。2014 年 3 月に実施された合宿時に、TSMI(日本体育
126
03 体育心理学
協会競技意欲検査)
、MPI(モーズレイ性格検査)
、SCAT(競技不安テスト)にフェイスシートを加え、
「バレーボール選
手の競技に対する意識調査」として実施した。その結果、競技不安については差が見られなかったが、全体として中学生
選手の方が高校生選手よりも競技意欲においてよりポジティブであり、またより外向的である傾向が見られ、発達差が伺
えた。
第1体育館
8 月 28 日
14:30
哲
史
心 28 − 147
4 つ子アスリートの原風景ならびにスポーツ原体験
○奥田 愛子(びわこ学院大学)
中込 四郎(筑波大学体育系)
社
心
本研究者らは、これまでアスリートの「原風景」や「スポーツ原体験」の語りを手がかりに、幼少期の体験とその後の
競技スポーツ活動との繋がりについて検討を行ってきているが、本研究では 4 つ子アスリートの事例を分析資料とした。
対象者はいずれも全国規模の大会において上位入賞経験をもつアスリートたちであり、原風景やスポーツ原体験に関する
自由記述形式の質問紙ならびに調査面接や心理テストが個別に実施された。その結果、3 名のきょうだい間に原風景の重
なりが認められ、スポーツ原体験のタイプ分類では、きょうだいのうち「体験回想タイプ」に分類された者の競技意欲が
最も高く、「評価意味づけタイプ」に分類された者は競技意欲が最も低かった。さらにバウムテストでは競技意欲が最も
低い者とそうでないものとで、描画の大きさや幹の太さ、根の表現に特徴的な差異が認められた。彼らは家庭環境や子ど
も時代のスポーツ環境がほぼ等しいことから、幼少期からのスポーツ体験の捉え方の違いがこれらの差異に関連すること
が考えられた。
第1体育館
8 月 28 日
14:30
バ
経
発
心 28 − 148
大学女子ラクロス競技の試合直前における選手の状態不安がパフォーマンスに及ぼす影響
○平野 尚輝(日本大学大学院)
生
水落 文夫(日本大学)
スポーツ競技選手が試合にのぞむとき、心理的・生理的混乱のために実力を発揮できないことがある。ラクロス競技は
チームスポーツであり、
選手は組織的に動くため、
ポジションや役職によって選手の役割も異なり、対人不安、ミスやファー
測
方
ルへの不安が増強しやすいと考えられる。また、大学入学後にラクロス競技を始めた選手が多く、これも試合前の状態不
安を高める要因と考えられる。大学女子チームのラクロス競技では、選手のプレイの精度低下がシュート、パス、キャッ
チなどにおける明確なミスとして発現しやすく、これらが競技成績に直結する。しかし、これまで状態不安が、試合にお
ける実際のプレイにどのような影響を及ぼすかについての研究データは十分に蓄積されていない。本研究の目的は、状態
不安がプレイの精度低下に及ぼす影響を明らかにすることである。そこで、関東学生 1 部リーグに所属する A 大学女子
ラクロスチーム 13 名のリーグ戦 4 試合における試合直前の状態不安を測定した。また、数種のプレイのミスやファール
をビデオ映像から抽出し、状態不安との関係性を検討した。その結果、状態不安が高い選手は、ミス全般の出現頻度が有
意に高かった。
第1体育館
8 月 28 日
14:30
保
教
人
心 28 − 149
創発的な成果を残したスポーツチームに形成されていっていた心の傾向
心理サポートセッションにおいて記述された内省データの分析
○水島 禎行(青森県スポーツ科学センター)
ア
介
競技現場でチームの心理サポート活動をしていると、そのチームに集まっているメンバー個々人の実力には還元できな
いチームの成果が出ることがある。山口(2008)は、優れたチームワークはプロセス・ロスを小さく抑える効果を持つ
127
哲
史
一方で、メンバー個々の力量の総和を超えたパフォーマンスをチームが達成していくようなプロセス・ゲインという現象
を発生させることもあるのではないかと述べている。ただしチームワークとチームの創造性(プロセス・ゲイン)の関係
性に関する研究はほとんどないという。本研究では、個人戦ではベスト 4 に誰も入っていないのに団体戦では優勝とい
う結果が創発(山口 ,2008)したチームに焦点を当てその心理的背景を探った。筆者がチームに関わり始めて 1 年 5 ヶ
月の間に記述された内省データ延べ 317 名分の記述内容の内容分析を行った。現在内容分析の途上であるが、現時点では、
彼らが体験してきたことが「一つにまとまる」
「思いが心に響きあう」「仲間と共に歩く」「自身の変化の実感」「やっぱり
チームが大好き」というオーダーを軸に語られていることが明らかになってきた。発表に向けて各オーダーをブラッシュ
社
心
生
バ
経
発
アップしていく。
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 150
インドネシア噴火被災地域在住児童の心理社会的スキル
○杉山 佳生(九州大学大学院人間環境学研究院)
インドネシア・ジョグジャカルタのムラピ山噴火被災地に住む児童は、再度の噴火に対する不安を抱えて日常・学校生
活を送っているが、このような状況で心身の健康を維持するためには、日々のストレス等に適切に対処するための心理社
会的スキルを身につけておくことが重要であると考えられる。Nopembri et al.(2014)は、当該地域の小学校教師に対す
るインタビューを通じて、児童に不足していると推測される心理社会的スキルを示した。この結果を踏まえて、本研究で
は、当該地域の児童が獲得・向上を目指すべき心理社会的スキルを測定するための尺度を作成し、それらの獲得の程度を
明らかにすることとした。調査対象者は、
噴火被災地域およびその周辺地域の小学校に通う小学 4 〜 6 年生 745 名であっ
た。これらの小学生に、ストレス対処スキル、対人関係スキル、社会的スキル、問題解決/意思決定スキルにかかる 40
の項目からなる質問紙を実施した。尺度の信頼性、妥当性を確認した後、本尺度の得点を、在住地域間で比較した。そし
て、この分析結果をもとに、当該噴火被災地に住む児童に対し、どのような心理社会的スキルを重点的に教育すべきかに
ついて、考察した。
測
方
保
教
人
ア
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 151
高齢者を対象としたスポーツ活動の効果尺度と般化尺度の作成
○磯貝 浩久(九州工業大学)
佐々木 万丈(日本女子体育大学)
渋倉 崇行(桐蔭横浜大学)
西田 保(名古屋大学)
北村 勝朗(東北大学)
スポーツ活動による心理社会的効果やその日常生活への般化に関する研究が、児童期や青年期のスポーツ実施者を対象
に進められている。しかし、高齢者のスポーツ活動の心理社会的効果に関する検討は数少ない現状にある。そこで本研究
では、高齢者のスポーツ活動で得られる心理社会的効果を評価する効果尺度と、効果の日常生活への般化を評価する般化
尺度を作成することを目的とした。先行研究と予備調査の結果に基づき心理社会的効果と般化の要因を抽出し、それらを
説明する項目によって尺度が構成された。地方自治体主催のスポーツ教室に参加した 143 名を対象に検証的因子分析を
実施した結果、効果尺度と般化尺度とも同様の 8 下位尺度(忍耐力、集中力、思考力、ストレスマネジメント、コミュニケー
ション、挨拶礼儀、感謝の気持ち、自己効力感)24 項目の適合度が基準を満たし 2 つの尺度が作成された。各下位尺度
のα係数は全て .70 以上であり、内的整合性はほぼ満足できることが示された。これらの結果から尺度の信頼性、妥当性
が確かめられたものと思われる。今後は、スポーツ活動の体験内容と効果尺度の関係や、般化尺度に影響する要因を検討
介
128
することが課題である。
03 体育心理学
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 152
児童の援助行動に注目した鬼ごっこの開発及びその心理的効果の検討
哲
史
○上野 耕平(鳥取大学教育センター)
今日、児童期における運動・スポーツ経験には、敏捷性や巧緻性の獲得だけではなく、
「ズルをしない」
、
「弱い者いじ
めをしない」といった、
日常生活においても重視されるスポーツマンシップ(道徳性)を涵養する役割も求められている。
そこで本研究では、
児童を対象とした運動あそびにおいて、
「仲間を助ける」ことに注目した鬼ごっこ(お助け鬼)を開発・
社
実践し、お助け鬼における援助・被援助経験が児童の援助効力感、援助・被援助に対する肯定感情など心理的側面に及ぼ
す影響を明らかにすることを目的として研究を行った。本調査は 2 年生及び 3 年生児童 24 名を対象として、著者が週 1
回 1 時間(8 週間)行っている運動あそびにおいて試行的に実施された。分析の結果、お助け鬼への参加を通じて援助経
験が多かった児童ほど、援助及び被援助経験に対して肯定的感情を抱くことが明らかになった。また、被援助経験が多い
児童ほど援助経験も多くなっており、お助け鬼では、走力差等により普段援助される側の児童であっても「仲間を助ける」
経験ができることを示していると考えられた。
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8 月 28 日
14:30
心
生
バ
心 28 − 153
幼児の体格と体力・運動能力の発達特徴について(4)
和歌山県私立 W 幼稚園における体力・運動能力測定データから
○林 悠子(立命館大学大学院、奈良学園大学奈良文化女子短期大学部)
野田 さとみ(名古屋柳城短期大学)
幼児の体格の向上とそれに対して体力・運動能力の低下が叫ばれており、文部科学省による全国的な調査や各自治体や
経
発
各園による調査から、幼児の発育発達特徴を捉え、問題の提起とそれに対する解決法が模索されている。 本研究は、和歌山県 I 市にある私立 W 幼稚園における体格・体力測定データから、幼児の体力における発育発達の特
徴について検討を行ったものである。私立 W 幼稚園では、豊かな自然環境の中で自由遊びを通して自ら運動に親しめる
測
ような取り組みがなされている。また、昭和 56 年から毎年、年少児(3 歳児)
、年中児(4 歳児)
、年長児(5 歳児)各
クラスと 4・5 歳混合 1 クラスに所属する全園児を対象に、体格および体力・運動能力のデータを収集している。体力・
運動能力については、年 2 回(6 月・11 月頃)
、25m 走、立ち幅跳び、ボール投げ、両足連続跳び越しの 4 つの測定を行っ
てきた。これまで、H21 年・H16 年・H11 年の各データにおける体力・運動能力を比較してきたが、本研究では、運動
能力測定データを分析対象とし、きょうだい構成の違いによる幼児の運動能力の発達特徴について報告する。
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8 月 28 日
14:30
心 28 − 154
子どもが期待する遊び・運動様式と運動意欲の関連
○堀井 大輔(大阪電気通信大学)
金田 啓稔(大阪電気通信大学)
方
保
教
人
目的:子どもの運動意欲が高まる要因のひとつとして、自身の運動有能感が高まることが考えられる。この運動有能感は、
過去の遊びや運動経験様式から形成されることが多く、青年期以降の運動行動にも影響していると考えられる。そこで本
研究は、子どもが期待する遊びや運動様式と子どもの運動意欲の関連性を検討することとした。方法:小学生を対象とし、
ア
体を動かす遊びやスポーツについて、自分自身の考えを回答してもらうアンケート調査を実施した。調査内容:1. 運動
意欲に関する質問 16 項目を 5 段階で評定。2. 自分自身が期待する遊びやスポーツに関する具体的な記述(いつ、だれと、
どんなことをすれば、
どんなふうに思うか等)
。分析方法:因子分析、対応分析と定性的分析を行った。結果:1. 運動意欲は、
介
身体活動欲求、競争欲求、親和欲求の 3 因子で説明された。2. 具体的な記述では、楽しさや達成感、勝敗へのこだわり、
仲間との協調性の他に、挑戦や好奇心がみられた。運動意欲の低い群では、感性タイプで否定的な分類になる表現もみら
129
哲
史
社
れたが、総じて子どもは遊びや運動について肯定的な期待をもっていることが確認された。
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8 月 28 日
14:30
心 28 − 155
アイスホッケー競技を対象とした心理面における指導法の検討について
セルフトークを用いたメンタルトレーニング
○今川 新悟(立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科)
佐久間 春夫(立命館大学スポーツ健康科学部)
競技スポーツにおけるパフォーマンス発揮には、「心・技・体」が重要であるといわれている。しかし、アイスホッケー
心
競技の指導現場における心理面の指導は、他の指導に比べ大幅に遅れをとっている。
本研究では、アイスホッケー競技を対象とし、セルフトークを用いた介入による心理面およびパフォーマンスへの効果
について検討した。対象者は大学アイスホッケー選手 8 名(実験群 4 名、コントロール群 4 名)とした。両群に対して
生
バ
介入前後に質問紙(TSMI、DIPCA.3、セルフトーク使用頻度調査)による調査を実施し、実験群には、①メンタルトレー
ニング講習会、②セルフトーク指導、③セルフトーク練習、④内省報告ノートによる振り返りを実施した。介入期間は
2 ヶ月とした。結果として、実験群 2 名において、介入前後でネガティブなセルフトークの減少がみられた。また、心理
的競技能力および競技意欲においても向上がみられ、内省報告ではパフォーマンスの向上を実感している記述がみられた。
このことから、セルフトークを用いた介入は、アイスホッケー競技における心理面の強化およびパフォーマンスの向上に
有効な指導法であることが示唆された。
経
発
測
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 156
剣道における指導者の指導が選手の競技への取り組みや満足度に及ぼす影響
○山﨑 雄大(東海大学大学院)
吉川 政夫(東海大学)
選手が目標を持ちその目標を達成しようとするためには、選手の努力はもちろんのことであるが、指導者の助言やサポー
方
保
教
トなどの指導は欠かせない。
本研究では、剣道における指導者の指導のあり方が選手の競技への取り組みや満足度にどのような影響を与えるかつい
て検討した。 調査方法は対象を中学・高校・大学・実業団に所属する剣道競技者とした。内容は指導者の指導を評価す
る尺度として田中(1996)のコーチング評定尺度、根岸・吉川(2003)のコミュニケーション能力評価尺度、石井ほか
(1996)による選手指導における指導者のタイプ分けに関する調査票を用いた。また、選手の競技意欲を測定する尺度と
して、財団法人日本体育協会による TSMI を用いた。さらに、チームへの満足度を測定する尺度として山本・徳永(2001)
の運動部活動満足度尺度を用いてアンケート調査を行った。
それらの調査からコーチング評定尺度、コミュニケーション能力評価尺度、選手指導における指導者のタイプ分けに関
する調査票の結果と TSMI による選手の競技意欲、運動部活動満足度尺度の結果の関連性を分析・検討した。
人
ア
介
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 157
指導者の声かけが中学生サッカー選手の有能感に与える影響
○安部 久貴(東京工科大学)
田村 達也(早稲田大学スポーツ科学研究科)
落合 優(横浜創英大学)
村瀬 浩二(和歌山大学)
射手矢 岬(東京学芸大学)
本研究では、
指導者からの声かけが選手の有能感に与える影響について検討することを目的とした。本研究の対象者は、
130
03 体育心理学
中学生サッカークラブの指導者 1 名とその指導者が指導する選手 15 名であり、調査期間は約 7 ヶ月間であった。調査期
間前後の各選手の有能感の変容を測定するために質問紙調査を実施した。また、調査期間中の指導者の各選手に対する声
かけ頻度を調査するために、14 回の練習と 2 回の練習試合の様子をビデオ撮影し、指導者が選手を指導している場面を
逐語的に記録、
分析した。分析には『コーチの発話の質的分析のための 7 指標』
(梅崎 , 2010)を用いた。中学生サッカー
選手の有能感の変容に与える指導者の声かけの影響を検証するために、質問紙調査より得られた有能感の下位尺度の前後
変化量を目的変数、そして指導者からの発話の 7 指標を説明変数とした重回帰分析を実施した。その結果、
「ネガティブ
哲
史
な評価」の頻度は有能感の「守備技能」の下位尺度の変容を有意に予測し得ることが明らかになった。以上より、指導者
からのプレーに対する否定的な声かけは、中学生サッカー選手の守備技能に関する有能感を低下させる可能性があること
が示唆された。
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心
心 28 − 158
優れたシーカヤック指導者のロール動作遂行時における動作意識の分析
○永山 貴洋(石巻専修大学)
社
生
山内 武巳(石巻専修大学)
本研究の目的は優れたシーカヤック指導者のロール動作遂行時の動作意識を分析し、ロール動作のメカニズムを明らか
にすることである。キャンプ実習などでシーカヤックを体験することは、参加者の自己効力感を向上させるなど、参加者
の心理状態改善に有効であると報告されている。しかしながら、シーカヤックは風や波の影響を強く受け、海況によって
は転覆の危険が伴うスポーツである。実習を安全に実施するためには、艇が転覆した際に自分で元の状態に戻るセルフレ
スキューの技術を参加者に対して指導する必要がある。本研究では、このセルフレスキューのなかでもロール動作を取り
上げて分析対象とした。調査は、日本セーフティーカヌーイング協会公認インストラクター 3 名を対象とし、再生刺激
法を用いて実施した。具体的には、防水カメラを用いてロール動作を撮影した後、対象者に映像を見せながら、動作遂行
時の動作意識について深層的インタビューを実施した。分析の結果、エキスパートシーカヤック指導者のロール動作遂行
バ
経
発
時の動作意識は、
「姿勢の確保」
、
「パドル操作」
、そして「艇の回復」に分類されることが明らかとなった。
測
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 159
小学校教員のメンタルヘルスに関連する身体活動は如何なる活動場面・強度のものか ?
性差に着目した再分析
○西田 順一(群馬大学学術研究院)
H24 年度の報告では教育職員の精神疾患による病気休職者数は 5 年ぶりに 5 千人を割ったが依然として高水準にある
(文科省 , 2013)
。とくに、精神疾患による病気休職者数は教諭が多く、メンタルヘルス改善は引き続き喫緊の課題である。
メンタルヘルスの悪化に対応するため、各自治体は復職支援プログラムを準備しているが、多くはその機会を享受できて
いない。メンタルヘルス予防や改善のためには個々人に相応しい様々な方略が必要であり、運動・身体活動も効果的方略
となることが分かってきた(西田・大友、2010)
。筆者は、国際的妥当性の証明された質問紙により学校教員のメンタル
ヘルスとその身体活動量の関連を検討したが(西田 , 2012;2013)
、サンプル数がさほど多くなかった。本研究では妥
当性を強化し、学校教員のメンタルヘルスとその身体活動量(仕事、移動、家事、そしてレジャーという 4 活動場面別)
の関連を性により再検討することを目的とした。公立小に勤務する常勤教員 544 名に GHQ28 および IPAQ-Long Forms
を実施した結果、メンタルヘルスに影響する身体活動場面や強度には性差が存在する可能性が考えられた。
方
保
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ア
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哲
史
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第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 160
競技を行う体育系大学生の居住形態の違いがストレッサーの認知と精神的健康度に与える
影響
○沖 和砂(順天堂大学大学院)
加藤 恭章(順天堂大学大学院)
川田 裕次郎(東京未来大学、順天堂大学)
上村 明(順天堂大学大学院)
山田 快(法政大学、順天堂大学)
広沢 正孝(順天堂大学)
本研究では、競技を行う体育系大学生 735 名(男性 517 名、女性 218 名、19.97 ± 1.28 歳)を対象に、中川ら(1985)
の日本語版精神健康調査票(GHQ-30)と岡ら(1998)の大学生アスリートの日常・競技ストレッサー尺度(DCSS)を用いて、
心
生
バ
経
発
測
居住形態(部活の寮、学校の寮、一人暮らし)
、性別の違いから、学生のメンタルヘルスに違いがあるのかを検討した。
2 要因分散分析を行った結果、GHQ-30 では “ 希死念慮うつ傾向 ” 因子において、居住形態の主効果が確認され、一人暮
らしよりも学校の寮と部活の寮生活が有意に高い値を示した(F(2, 705)= 3.02 , p < .05)。それ以外の全因子においては、
性別の主効果が確認され、男性よりも女性の値が有意に高かった(p < .05)。DCSS では、全因子において、性別の主効
果が確認され、男性よりも女性の方が有意に高い値を示した(p < .05)。本研究より、一人暮らしよりも部活や学校の寮
で団体生活をしている者のうつ傾向が高いことが示された。また、女性よりも男性の方がストレスを感じにくく、全体的
に精神的健康度も高いことも明らかとなった。居住空間が精神面に関連することは重要な視点であり、今後はこの関連性
を明確にしていくことが必要であろう。
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 161
バーンアウト発症に対するポジティブ感情の抑制効果
ネガティブ感情を調整変数として
○田中 輝海(九州大学大学院)
杉山 佳生(九州大学)
水落 文夫(日本大学)
スポーツ選手が熱中→停滞→固執→消耗のプロセスを辿り発症するとされるバーンアウトは「身体的・情緒的消耗感、
競技の無価値化、達成感の減少の症候群」と定義され、その発症には慢性的な競技ストレスやネガティブ感情が影響して
方
保
教
人
ア
介
いる。ネガティブ感情には、注意を狭め、局所的な認知や処理だけを高めてしまう働きがある。そのため、競技への固執
を強めるなど、深刻なバーンアウト状態に至るプロセスにおいて、ネガティブ感情が促進的に働くことが考えられる。一
方、ポジティブ感情には、ストレス対処のレパートリーを広げる働きやネガティブ感情により生じた影響を緩和する働き
がある。つまり、ポジティブ感情には、バーンアウトの発症を直接抑制する直接効果とネガティブ感情による影響を緩和
することで間接的にバーンアウトの発症を抑制する緩衝効果が仮定される。そこで本研究では、バーンアウトの発症を抑
制するポジティブ感情の直接効果と緩衝効果を検討した。分析にはポジティブ感情を独立変数、ネガティブ感情を調整変
数、バーンアウト傾向を従属変数とする重回帰分析を用いた。
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 162
スポーツ活動による心理社会的効果と般化及びその促進要因
○佐々木 万丈(日本女子体育大学)
北村 勝朗(東北大学)
西田 保(名古屋大学)
磯貝 浩久(九州工業大学)
渋倉 崇行(桐蔭横浜大学)
本研究では、スポーツ活動で身についたり、向上したりした心理社会的スキルや自己効力感などの効果が日常生活に般
化するのか、
般化するのであれば何が関係するのかなどを実証的に検討した。スポーツ活動を行う小・中学生(合計 975 名)
に対し、本研究用に作成された尺度を用い、1 年間にわたる 3 回のパネル調査を行った。収集データに対し、因果関係を
132
03 体育心理学
検証する交差遅れ効果モデルなどの共分散構造分析を実施した。分析の結果、
「忍耐力」や「協調性」が身についたり、
自己効力感が向上したりすることなどがスポーツ活動の効果として示された。また、効果を最大にするには、取り組みへ
の動機づけが高まり、達成感を味わえるような活動にすることなどが重要であると考えられた。さらに、これらは日常生
活に般化することが統計的に認められた。しかし、般化する効果は、学校段階や男女で異なることも示された。一方、効
果や般化に関係する要因には、活動目標や練習強度などの環境的要因の他に、身についた効果の大切さの自覚、何をどう
すればどうなるのかの理解、そしてスポーツ活動の効果は異なる生活場面でも役に立つという認識を持つことができるこ
哲
史
とが関係すると考えられた。
社
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 163
ストレス対処能力(SOC)と成功体験・挫折体験の関連
○倉田 郁也(桜美林大学健康心理・福祉研究所)
ストレス対処能力(SOC)と成功・挫折体験の関連を調べることを本研究の目的とし、SOC の向上の一助にする。平成
26 年 Y スポーツ専門学校生 49 名(男 30 名、女 19 名、平均年齢 18.36 歳、SD0.57)に、SOC 尺度(13 質問・7 件法)
と自記式質問票を配布。SOC 得点を高中低の 3 群(SD ± 1)に分け、成功・挫折体験の自己評価点との関連を調べ、人
生曲線と回答体験年齢との首尾一貫性を分析。SOC 平均値 52.80 点(SD9.62)。① SOC と現在の自己評価点に正の相関(r
= .32 p < .05)。②成功体験の自己評価得点は SOC 高群で一番得点が高い傾向(F = 2.62 p < .10)
。③成功体験に
おける人生曲線と回答体験年齢の一致者は、SOC 高群(中低群は矛盾)
。④挫折体験で、SOC 低群は挫折体験なしの回答
者が他群に比べて少なかった(低群 16.67%、中群 54.29%、高群 37.50%)。統計的有意差なし。成功体験は、SOC の高
さに影響。挫折体験は、SOC の高低に影響している可能性があり、挫折体験を乗り越えられれば SOC が高くなる。よって、
SOC を高めるためには、①成功体験の再評価、②挫折体験の認知修正が、必要である。
第1体育館
8 月 28 日
14:30
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バ
経
発
測
心 28 − 164
大学生競技者を対象とした健康行動の変容ステージの実態
○鈴木 郁弥(法政大学大学院 人文科学研究科)
荒井 弘和(法政大学文学部)
本研究は、大学生競技者を対象として、健康行動の変容ステージの実態を検討することを目的とした。本研究の対象者
は、大学または短期大学 1―4 年次生で、運動部に所属しているスポーツ競技者とした。社会調査会社の登録モニターを
対象として、インターネット調査を実施した。健康行動の変容ステージとして、1)食生活改善に対する変容ステージ(無
関心期―実行期)
、2)サプリメント摂取行動の変容ステージ(無関心期―維持期)、および 3)補給食摂取行動の変容ステー
ジ(無関心期―維持期)を評価させた。248 名を対象とした分析の結果、食生活改善に対する変容ステージの度数分布は、
無関心期 12 名、関心期 78 名、準備期 96 名、実行期 62 名であった。サプリメント摂取行動の変容ステージの度数分布
は、無関心期 65 名、関心期 104 名、準備期 22 名、実行期 21 名、維持期 36 名であった。補給食摂取行動の変容ステー
ジの度数分布は、無関心期 41 名、関心期 90 名、準備期 34 名、実行期 21 名、維持期 62 名であった。今後は、健康行
動の変容ステージの関連要因を検討することが期待される。
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心
心 28 − 165
効果的な健康教育プログラムの作成に向けた試み
学生を対象とした生活習慣の実態と演習ノートの検討
○石原 端子(沖縄大学)
方
保
教
人
ア
介
近年の沖縄には、子ども達の体力低下や生活習慣病を罹患した青壮年層の増加など、健康をめぐる深刻な問題がある。
133
哲
史
O 大学においては、学生への健康教育を重視した必修科目として「健康運動演習」を立ち上げ、理論と実践を学ぶ場を提
供している。しかしどのようなプログラムの提供 が、学生のより健康的な生活習慣の獲得に結びつくのかを検討するた
めには、学生の生活状況を知る必要がある。そこで本研究では、履修学生の生活習慣の特徴を把握すること、また試行的
プログラムの中で実施した演習シートの効果について 検討することを目的とした。調査対象者は、調査者が担当する科
目を履修した 59 名(男子 29 名、女子 30 名)であった。DIHAL.2 を用いた生活習慣に関する調査の結果、履修学生の
73%がアルバイトをしており、多くの学生が学費を稼ぐためのアルバイトと学業の両立に時間を割いている実態が示さ
れた。次に演習ノートについて、授業評価の自由記述を KJ 法により分析した結果、1 週間の生活習慣改善体験の記述が、
社
心
生
バ
経
発
自己理解のきっかけになっていたことが明らかになった。
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 166
内田クレペリン検査を用いたメンタルカウンセリング
高校野球県大会一勝を目指すチームの事例
○滝 省治(甲子園大学)
東山 明子(畿央大学)
県大会一勝を目指す 30 代の野球部監督から、心理面の強化、特にサイキングアップを行ってもらいたいという依頼が
あった。後日、本学でチームのヒアリングと目標を確認して、メンタル指導を引き受けた。まず、3 月に内田クレペリン
検査(UK)と徳永氏の心理的競技能力診断テスト(DIPCA)を選手等 21 名に実施して、スポーツメンタル面の強化につ
いての講義を行った。なお、検査結果からの怪我や事故防止に関する情報は直後に監督と選手個人に伝えている。4 月に
入り、監督からの選手の特徴に関する情報を得た。次いで、4 月初旬には選手個々人について心理検査の結果を基に、高
等学校において選手個々の問題とメンタル面の捉え方を監督に戻している。そして、午後からは練習試合を見学して、監
督からの選手情報を得ている。春季大会 1 回戦までに一週間と時間的余裕が無く、監督と相談の上、UK では繊細な自閉
型を示し、DIPCA では精神の安定集中と自信の欠如が顕著な 2 番手の投手に対してのみリラクセーションを指導するに
留めた。①不安の対処②リラクセーション③注意集中についてのメール文章を監督から選手に手渡し、力まずに投げる指
導をコーチに依頼した。
測
方
保
教
人
ア
介
134
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 167
控え選手の葛藤プロセス
○小林 拳大(びわこ成蹊スポーツ大学大学院)
豊田 則成(びわこ成蹊スポーツ大学)
本研究は、
「控え選手であることをどのように語るのか」というリサーチクエスチョン(Research Question:以下、
RQ)を設定し、質的にアプローチした。インフォーマント(以下、Inf. )は、大学の硬式野球部に所属しており、ある
一定の期間に控え選手であった経験をしている選手 8 名である。研究の方法は、Inf. に対して 1 対 1 形式の半構造化イ
ンタビューを実施し、そこでの会話を IC レコーダーに録音した。上記の内容を逐語化して発話データとし、質的研究法
の代表的手法であるグラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った。上記の結果、RQ に対して、「控え
選手は、【周囲に認められようする】が【試合に出られない事に直面する】ことで、認めてもらえない経験をする。その
ことによって、
【自分の弱さを認めようとする】自己と【自分の弱さを認められない】自己の間で葛藤し、
【自分を見つめる】
ことと【自分が見えない】ことの間で葛藤するという葛藤プロセスに入る。そして、葛藤プロセスの中で、葛藤をしなが
ら自分を見つめることによって、
【見えなかったことが見える】ようになり、前向きに取り組んでいくとして語る」とい
う仮説的知見を導き出した。
03 体育心理学
第1体育館
8 月 28 日
14:30
心 28 − 168
オリンピアンでなくなることの意味とは何か
質的統合法を用いた体験の可視化を通じて
○豊田 則成(びわこ成蹊スポーツ大学)
哲
史
ここでの関心は、元オリンピアンが競技引退に伴って体験するアイデンティティ再体制化について当事者の「語り」に
着目し、質的にアプローチすることにある。従って、本研究では、「オリンピアンでなくなることの意味とは何か」とい
うリサーチクエスチョンの下、質的アプローチを行い、発展継承可能な仮説的知見を導き出すことを目的とした。具体的
社
には、引退後 20 年以上経過した元オリンピアンをインフォーマント(情報提供者)とする半構造化インタビューを複数
回(1 回につき、1 から 2 時間程度)にわたって実施した。そこでは、本人の承諾を得た後、会話の内容を IC レコーダー
に収録した。また、その内容を逐語化し、トランスクリプトを作成し、質的統合法(山浦 , 2012)によって彼らの体験
の視覚化を試みた。すなわち、
そこでは、
1)自分が自分でなくなっていくことへの不安、2)新たな機会や挑戦への期待、
3)
新たな関係性を構築することによる価値観の拡大、4)新たな生活様式の受け入れと適応、といった元オリンピアンの競
技引退についての意味づけを読み取ることが出来た。そして、これらの仮説的知見を踏まえながら見取図を作成し、検討
することとした。
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
135
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
136
00
体育哲学
哲
01
体育史
史
02
体育社会学
社
03
体育心理学
心
04
運動生理学
生
05
バイオメカニクス
バ
06
体育経営管理
経
07
発育発達
発
08
測定評価
測
09
体育方法
方
10
保健
保
11
体育科教育学
教
12
スポーツ人類学
人
13
アダプテッド・スポーツ科学
ア
14
介護福祉・健康づくり
介
137
哲
史
G2大[センターA]
8 月 27 日
15:00
生 27 − 001
ヒト大腿直筋における運動単位動員閾値の部位差
○渡邊 航平(中京大学 国際教養学部)
近年、我々はヒト大腿直筋において疲労特性の部位差が存在することを報告し、この原因の 1 つとして筋線維タイプ
社
の部位差の存在を考えている。本研究では、大腿直筋における運動単位動員閾値の部位差を調べ、筋線維タイプの部位差
の可能性について検証することを目的とした。男子学生 8 名を被験者とし、大腿神経より経皮的電気刺激を行った。刺
激強度を徐々に増大させ、大腿直筋に二次元平面上に配列された 36 個の表面電極を用いて、筋全体から誘発筋電図(M
心
生
波)を記録した。全電極から最大 M 波を誘発できた 6 名について解析を行った結果、近位部で他の部位より低い刺激強
度で M 波が誘発された。運動神経を介した電気刺激では太い神経線維を有し、高い動員閾値を有する運動単位およびそ
の支配下にある筋線維から順に動員される。このことから、大腿直筋では運動単位の動員閾値に部位差が存在し、近位部
により動員閾値の高い(張力が高く疲労耐性の低い)運動単位・筋線維が配列されている可能性が示された。この結果は、
大腿直筋の近位部が他の部位と比較して、より疲労が亢進するという我々の先行研究のデータを矛盾なく説明するもので
ある。
バ
経
発
G2大[センターA]
8 月 27 日
15:15
生 27 − 002
アルコールが単純反応時間および選択反応時間に及ぼす影響
○山代 幸哉(新潟医療福祉大学健康スポーツ学科)
中澤 翔(新潟医療福祉大学健康スポーツ学科)
佐藤 大輔(新潟医療福祉大学健康スポーツ学科)
丸山 敦夫(新潟医療福祉大学健康スポーツ学科)
アルコール摂取により、ヒトの運動機能や認知判断の低下が起こることは広く知られている。しかし、先行研究にお
測
いてアルコールの影響については個人差も大きいことが指摘され、統一的な見解は得られていない。そこで本研究では、
酔いの程度を統制し、単純反応時間と選択反応時間を測定した。被験者は健常成人 8 名を対象とした。アルコール濃度
15% のリキュールを体重 1kg あたり 4.86 ml 摂取してもらい、酔いの程度に応じて課題を実施した。酔いの程度は呼気
方
保
教
人
ア
中アルコール濃度によって決定し、0%(Control)、0.3%、0.15%、0.1%、0%(回復期)の 5 条件を設定した。単純反応
課題では、モニターに緑の丸を平均 3 秒に 1 回呈示した。選択反応課題では、モニターに緑の丸と赤の丸を 1 対 3 の割
合で平均 3 秒に 1 回呈示した。いずれの課題においても緑の丸が呈示された際にボタン押しを行わせた。結果、どちら
の課題において呼気中アルコール濃度が 0.3% 時のみ反応時間が有意に約 30 ミリ秒遅延した。このことから、酩酊期ま
で飲酒した際には個人差の影響は少なく運動機能および認知判断の低下が起こることが示唆された。
G2大[センターA]
8 月 27 日
15:30
生 27 − 003
ドロップジャンプにおける大脳運動野皮質内興奮性とパフォーマンスの関係
○吉田 拓矢(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
苅山 靖(筑波大学 体育系)
図子 浩二(筑波大学 体育系)
丸山 敦夫(新潟医療福祉大学 健康スポーツ学科)
林 陵平(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
ドロップジャンプ(DJ)を用いると伸張―短縮サイクル能力を高め、跳躍種目等のパフォーマンス向上に役立つ。DJ
介
能力の向上には接地直前の予備緊張や伸張反射、それ以前の大脳皮質の運動野や皮質脊髄路の興奮性などの上位中枢の
変化が関与すると推察される。本研究では二連発磁気刺激(TMS)によって、跳び下りる直前に運動野の皮質内興奮性
を評価し、DJ 能力との関係を検討した。被験者は跳躍選手 8 名(Jump 群)とその他の陸上種目 9 名(Other 群)とし
た。試技は 30、45、60cm の台高から DJ を行い、跳躍高、DJ-index、接地時間を測定した。運動野の皮質抑制系興奮性
138
04 運動生理学
(SICI)は安静時と 3 種類の DJ 中の左腓腹筋(MG)の運動誘発電位(MEP)を試技直前に二連発 TMS によって誘発し、
MEPTEST、MEP3ms を求めた。その結果、DJ-index と跳躍高は Jump 群では有意に高く接地時間も短かった。SICI の抑
制レベルは台高が高くなるに伴い大きく低下したが、Other 群では起こらなかった。したがって、高いパフォーマンスを
発揮する選手は跳び下りる前に皮質内抑制を脱抑制状態にしていることが示唆された。
G2大[センターA]
8 月 27 日
15:45
生 27 − 004
生体情報ロガーを用いた競泳種目別における筋電図による検討
○千葉 裕太(日本体育大学 発育発達学研究室)
清田 寛(日本体育大学 発育発達学研究室)
冨田 幸博(日本体育大学 スポーツ経営管理学研究室) 阿部 拓真(日本体育大学 スポーツ経営管理学研究室)
水泳運動時における筋電図を用いた測定には、有線による方法が多用された。この方法では被験者に対して運動が制限
され、本来目的とされるそれぞれの水泳運動中における動作分析を解明するのには十分とは考えられなかった。そのため
流水プールによる動作解析が試みられているが、水の流れる抵抗を利用しているため、身体はほぼその場にとどまった状
態での測定となり、実際の水泳運動とはかけ離れているようにも考えられる。
そこで今回は、国際大会に出場し優秀な成績を収めている競泳選手を対象に生体情報ロガーを用いて水泳運動時におけ
る筋電図を測定し、種目別における筋活動について検討した。種目は、バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、クロールの 4 種
目とした。測定場所は、室内の 25M プールを使用した。また、被験者には 25M 毎に種目を変え 4 種目連続で運動を行
わせた。筋電図の測定には、多用途テレメータ筋電計バイオログ(DL500・DL5000:S&ME 社製)(以下 生体情報ロガー
と呼ぶ)を用いた。被験筋は、右側の僧帽筋(上部)
、大胸筋、広背筋、腹直筋、脊柱起立筋、大腿直筋、大腿二頭筋の
計 7 ヶ所であった。
G2大[センターA]
8 月 27 日
16:00
哲
史
社
心
生
バ
経
発
生 27 − 005
自発運動量の個体差を規定する脳内セロトニンの役割
○柳田 信也(東京理科大学理工学部)
測
方
日常的な運動量の二極化は、現代において解決しなければならない重要な健康課題である。この問題に対し、我々はこ
れまでに、ラットモデルを用いた研究において、脳内セロトニン量が自発運動量の個体差を規定する要因となることを示
唆する結果を提示している。本研究では、脳内セロトニン量と日常的な自発運動量の個体差の関連性をより明確にするた
めに、セロトニン前駆体の投与が自発運動量に及ぼす影響を明らかにし、自発運動量の個体差を規定する脳内因子の解明
を目指すものである。ラットを 4 週間、ランニングホイール付ケージで飼育し、その走行量の個体差を基に高活動群と
低活動群に分類した。飼育開始 3 週目から、半分の個体にセロトニン前駆体(5-HTP)を投与し、自発運動量の変化を測
定した。その後、脳内モノアミン量を高速液体クロマトグラフィーにより測定した。その結果、先行研究と同様に、高活
動群において脳内セロトニン量が有意に低いことが確認され、セロトニン前駆体の投与によって行動量の低下を示す傾向
がいくつかの個体でみられた。この結果は、日常的な自発運動量を制御する脳内因子としてセロトニンが有力な候補の一
つであることを示唆している。
保
教
人
ア
介
139
哲
史
社
G22[センターA]
8 月 27 日
15:00
生 27 − 006
Aero-T と An-T の負荷が運動後の回復期代謝量に与える影響
○佐々木 敏(北星学園大学)
星野 宏司(北星学園大学)
角田 和彦(北星学園大学)
はじめに:本研究では回復期の時定数が運動中の負荷水準に影響されると考え、2 段階の作業後の代謝応答を明らかにす
る。
研究の方法: 5 名の協力を得て漸増負荷法による最大酸素摂取量を計測した。その経過から生じる負荷強度(Aero-T、
心
生
An-T)水準での 10 分間固定負荷とその後の代謝測定を測定しその変化を 5 分間計測した。
結果:Aero-T からの回復期時定数は VO2 で 50.9(sd:8.7)、HR では 61.2(sd:8.6)であった。An-T からの回復期時定
数は VO2 で 80.6(sd17.6)
、HR では 118.9(sd:35.8)と最も大きい。最大からの回復期時定数は VO2 で 73.6(sd5.3)
、
HR では 102.8(sd:14.5)で、何れも An-T からの回復期の数値を下回った。
考察:An-T からの回復期時定数が VO2Max からの回復期時定数を上回ることは、この固定負荷が実際には少なくとも 7
分程度の活動でも、最大の代謝水準に達し、かつこれの継続から生じる代謝産物の蓄積が大きいと理解された。
バ
経
発
G22[センターA]
8 月 27 日
15:15
生 27 − 007
血流依存性血管拡張反応と心臓足首血管指数(CAVI)の関連性の検討
○田中 寿人(北翔大学大学院 生涯スポーツ学研究科) 門口 智泰(北海道大学大学院 医学研究科 循環病態内科学)
沖田 孝一(北翔大学 生涯スポーツ学部)
【背景・目的】運動トレーニングが動脈硬化へ与える効果を評価する際には主に以下の方法が用いられている。血流依存
測
性血管拡張反応(FMD)は、末梢血管における血管内皮機能の指標であり、一方心臓足首血管指数(CAVI)は、中心動
脈の動脈硬化度を反映する指標である。しかしながら、FMD と CAVI との関連性、すなわち末梢動脈と中心動脈の血管
機能が関連するかどうかは不明である。本研究では両指標の関連性を検討することを目的とした。【方法】被験者は健常
方
保
男性 13 名とした(21.1 ± 1.4 歳)
。FMD 測定は、超音波法を用い、上腕動脈(BA)測定時は前腕部に、膝窩動脈(PA)
では、大腿部にカフを装着し 5 分間駆血開放後の血管径変化を評価した。一方 CAVI は、脈波検査装置(フクダ電子)を
用いて評価した。
【結果】BA-FMD は、CAVI と相関関係の傾向が見られたが、有意ではなかった(r = -0.51, p = 0.07)。PA-FMD において
も有意な相関関係は見られなかった(r = -0.05, p = 0.86)
。【結論】血流依存性血管拡張反応と心臓足首血管指数と関連
しない可能性が示唆された。
教
人
ア
G22[センターA]
8 月 27 日
15:30
生 27 − 008
直立中の足踏み運動が下腿での水分貯留に及ぼす軽減効果について
○小宮 秀明(宇都宮大学)
前田 順一(宮城教育大学)
長時間にわたり立位姿勢を維持した場合、下腿に血液及び組織水の貯留が生じることが知られている。今回は多周波イ
ンピーダンス(MIP)を用いて下腿での血管内と細胞間隙での水分状態を電気的に測定し、間欠的に足踏みを行った場合
介
に下腿での血液や組織水の貯留に及ぼす効果について検討した。被験者は男子大学生 10 名である。周径囲は下腿筋腹部
を測定した。用いた MIP は 5 ~ 700kHz までの 9 種類である。測定は 30 分間の直立静止姿勢を保ち、5 分毎に周径囲、
インピーダンス(IP)を 7 回計測した。足踏みは直立静止姿勢の 5 分毎の計測の間の 1 分間に行った。直立姿勢中に低
周波の IP および細胞外抵抗に継続的な減少が観察された。直立時には下腿の周径囲において約 0.9cm の増加がみられた。
140
04 運動生理学
下腿周径囲と細胞外抵抗の間には 1% 水準で有意な負の相関がみられた。一方、足踏み運動を間欠的に行うことで周径囲
の増加は約 0.9cm から約 0.5cm に緩和された。細胞外抵抗についてみると減少度は緩やかとなり、条件間で 0.1% 水準
の有意な差がみられた。足踏み運動による下腿筋群の筋ポンプ作用の働きにより下腿での組織水の貯留と静脈内の血液の
回収を促進させたことが推察された。
G22[センターA]
8 月 27 日
15:45
史
生 27 − 009
球技選手の走パフォーマンス向上を目指したスプリント走トレーニングの効果
○荻田 太(鹿屋体育大学)
田口 信教(鹿屋体育大学)
黄 忠(国立スポーツ科学センター)
與谷 謙吾(鹿屋体育大学)
黒部 一道(阪南大学)
柳楽 晃(熊本県立大学)
本研究の目的は、スプリント走トレーニングが、エネルギー供給能力、走パフォーマンスに及ぼす影響について検討す
ることであった。被検者は、年齢 22 ± 2 歳、体育学専攻の男子 6 名であった。トレーニングは、30m 全力走の 90% の
速度における 5 秒のスプリント走を 10 秒の休息を挟んで 5 回繰り返す間欠的走運動とし、これを週 3 回の頻度で 5 週
間行った。トレーニング後、最大酸素摂取量には有意な変化は認められなかったが、最大酸素借は有意な増加が認めら
れた(P<0.05)。また、30m 全力走、30m × 5 全力往復走ともに、有意な記録の向上が認められた(P<0.05)
。さらに、
30m 全力走における 10m 毎の区間速度とピッチをみてみると、スタート直後の 0 ~ 10m 区間において走速度とピッチ
の有意な向上が確認された(いずれも P<0.05)
。以上の結果より、本スプリント走トレーニングは、最大酸素借およびス
タート直後の加速を向上させ、単独のスプリント走のみならず、往復走パフォーマンスの改善をももたらすことが明らか
となり、ダッシュを何度も反復する球技選手にとって有効なトレーニングになり得ると考えられた。
G22[センターA]
8 月 27 日
16:00
生 27 − 010
体操競技で用いられる体幹トレーニングはウエイトリフティング競技の記録を向上させる
○天野 喜一朗(日本大学大学院文学研究科)
深田 喜八郎(日本大学大学院文学研究科)
小沼 直子(日本大学大学院文学研究科)
櫛 英彦(日本大学大学院)
高階 曜衣(日本大学大学院文学研究科)
吉田 明(日本大学文理学部人文科学研究所)
[目的]体操競技で用いられる体幹トレーニングがウエイトリフティング競技の記録の向上に寄与するかどうか検討した。
[対象と方法]ウエイトリフティング部に所属する高校生 30 名(1-3 年生)を対象とした。N 大学の体操部で行われてい
る体幹トレーニングのうち 8 種類を抜粋し、2-4 か月間、週 6 日間の頻度で課し、トレーニング導入前と導入後にスナッ
チ(以下 S と記す)及びクリーン & ジャーク(以下 C&J と記す)の記録を測定した。体幹トレーニングを行った被験者
(以下 Y 群と記す)と行わなかった被験者(以下 F 群と記す)の記録、競技歴ごとの記録伸び率の変化を検討した。
[結果]
体幹トレーニングを導入した結果、Y 群の S は平均 6.64kg、C & J は平均 6.68kg、F 群の S は平均 0.63kg、C&J は平均
1.75kg 記録が向上し、Y 群の方が有意に向上した。また、競技歴に関しては、1 年生の方が 2、3 年生よりも記録の伸び
率が有意に高かった。
[結論]体幹トレーニングを行うと、ウエイトリフティングの記録が有意に向上し、競技歴が短い
ほど、記録の伸び率が有意に高いことが明らかとなった。
哲
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
141
哲
史
社
G23[センターA]
8 月 27 日
15:00
生 27 − 011
8 ヶ月間の走行距離と有酸素能力応答および 5000m 走記録の関連について
○中澤 翔(新潟医療福祉大学)
山代 幸哉(新潟医療福祉大学)
丸山 敦夫(新潟医療福祉大学)
瀧澤 一騎(北海道大学)
佐藤 大輔(新潟医療福祉大学)
長距離走のトレーニング負荷の指標となる 160km/ 週の走行距離は、脂質代謝の亢進や有酸素性酵素活性増大を起こ
し競技記録の改善に役立つと言われる。しかし、実践的なトレーニングにおける長期間の走行距離および有酸素的指標の
心
生
バ
経
発
測
追跡ならびに競技記録の関係はあまり報告されていない。本研究は大学男子長距離選手 7 名(5000m シーズン最高記録
15’29”6)
の 8 ヶ月間の走行距離チェック、
4 回の VO₂max、VT および Running Economy を追跡的に測定した。期間は 8 ヶ
月間とし、走行距離に対する有酸素能力の応答をみるために前半期および後半期に区分した。その結果、(1)8 ヶ月間の
合計走行距離(3327km)と 5000m 最高記録に r =- 0.865(p<0.05)の有意な相関が認められた。
(2)前半期の走行
距離(1687km)と前半期の VT(50.8ml/kg/min)の間に r = 0.936(p<0.01)の有意な相関が認められた。このことから、
8 ヶ月間にわたる走行距離チェックは前半期と後半期の換気性閾値改善反応と競技記録向上への関連をみることができト
レーニング状況の指標になることが示唆された。
G23[センターA]
8 月 27 日
15:15
生 27 − 012
中長距離ランナーの走パフォーマンスおよび生理的パラメーターの相互関係の変化
○丹治 史弥(筑波大学 人間総合科学研究科)
黒川 心(筑波大学 人間総合科学研究科)
白井 祐介(筑波大学 人間総合科学研究科)
鍋倉 賢治(筑波大学 体育系)
中長距離走パフォーマンスを評価するとき、最大酸素摂取量、乳酸性代謝閾値(LT)および走の経済性(RE)の 3 つ
の生理的パラメーターが重要であり、大部分が説明できるとされてきた。したがって、これら 3 つのパラメーターを向
上させると走パフォーマンスは向上すると考えられる。しかし最大酸素摂取量と RE との間には負の関係があり、最大酸
方
保
教
人
ア
介
素摂取量が高いと RE は低い関係であるという報告もある。このことは最大酸素摂取量を向上させると RE は低下する可
4
能性が示唆される。そこで本研究は、走パフォーマンス(最大酸素摂取量が出現する走速度 :vVO2max)、最大酸素摂取量、
LT および RE の変化の関係を明らかにすることを目的とした。男子大学生中長距離ランナー 26 名を対象に、2013 年 7
月および 11 月にトレッドミル走を実施した。最大酸素摂取量と RE との間には有意な負の相関関係が認められた。7 月
から 11 月にかけて最大酸素摂取量が向上したランナー群(n=15)は、LT が有意に向上しているものの、RE が有意に低
4
下しており、
vVO2max に変化は認められなかった。つまり最大酸素摂取量を向上しても RE は低下している可能性があり、
結果として走パフォーマンスは向上していない可能性がある。
G23[センターA]
8 月 27 日
15:30
生 27 − 013
男子柔道選手の体組成上の問題点
○高階 曜衣(日本大学大学院文学研究科)
深田 喜八郎(日本大学大学院文学研究科)
櫛 英彦(日本大学大学院)
小沼 直子(日本大学大学院文学研究科)
天野 喜一朗(日本大学大学院文学研究科)
金野 潤(日本大学文理学部)
吉田 明(日本大学文理学部人文科学研究所)
[緒言]柔道競技は体重別に 7 階級に分けられている。本研究は、− 60kg 級から 90㎏級までの 90kg 未満と 100㎏級と
100 超級の 90㎏以上の 2 群に分け、体組成及び柔道試合後の生理的変化を比較し、男子柔道選手の体組成上の問題点を
142
04 運動生理学
検討することとした。
[方法]競技歴約 10 年以上の男子柔道選手を対象とした(90kg 未満群 7 名、90㎏以上群 8 名)。
試合前の体組成、
試合前、
試合 1 分後、
試合 10 分後、
試合 20 分後の心拍数、血中乳酸濃度、鼓膜温、皮膚温を測定した。
[結果]
90kg 以上群は 90kg 未満群と比較して、
体脂肪率が有意に高く、骨格筋率及び細胞外液率(L/kg)は有意に低い値を示した。
運動 10 分後の血中乳酸濃度及び皮膚温は、90kg 未満群と比較して 90kg 以上群がどちらも有意に高い値を示した。[結
論]運動 10 分後に体脂肪率が高く、
骨格筋率及び細胞外液率の低い 90kg 以上群が乳酸及び皮膚温において高値を示した。
すなわち、柔道試合後に両群間に認められた乳酸蓄積と皮膚温の乖離は、体脂肪率、骨格筋率及び細胞外液率などの体組
哲
史
成が関与していることが明らかになった。
社
G23[センターA]
8 月 27 日
15:45
生 27 − 014
過体重は高強度運動後の脂質過酸化反応に影響を与える
○深田 喜八郎(日本大学大学院文学研究科)
高階 曜衣(日本大学大学院文学研究科)
吉田 明(日本大学文理学部人文科学研究所)
櫛 英彦(日本大学大学院)
小沼 直子(日本大学大学院文学研究科)
天野 喜一朗(日本大学大学院文学研究科)
「はじめに」Body Mass Index(BMI)の増加は軽度の炎症亢進状態を引き起こす一因と言われている。本研究は、肥満度
の簡易的な指標でもある BMI が、高強度運動後の脂質過酸化反応に影響を与えるかどうかを検討した。
「対象と方法」若
年男性 12 名(19―23 歳)を対象とし、BMI が 25 以上を示すと過体重であるという報告をもとに、BMI が 25 未満を 7
名(BMI < 25 群)
、BMI が 25 以上を 5 名(BMI ≧ 25 群)とした。被験者に Cooper 12 minutes test(12 分間全力走)
を課し、運動前後の 8-isoprostane(脂質酸化ストレスマーカー)を測定した。「結果」BMI < 25 群の 8-isoprostane は運
動前後で有意差が認められなかったが(運動前:11.8 ± 0.5 pg/mL、運動後:11.6 ± 0.5 pg/mL)、BMI ≧ 25 群は運動後、
有意に上昇した(運動前:12.4 ± 0.7 pg/mL、運動後:14.2 ± 0.4 pg/mL)。「結語」BMI が 25 以上の若年男性は高強
度運動後に脂質酸化ストレスが増大することを明らかにした。
G23[センターA]
8 月 27 日
16:00
生
バ
経
発
測
生 27 − 015
柔道における頭部外傷の実態と傷害防止
○松井 高光(横浜国立大学教育学研究科)
田中 秀昌(横浜市立上郷中学校)
心
木村 昌彦(横浜国立大学)
桐生 拓(長岡工業高等専門学校)
全日本柔道連盟は 2011 年に「柔道の安全指導」の内容を一部改訂し、頭部外傷への対応を新たに詳細に記述するなど
の対策を取っている。しかし、現場では未だ指導者の頭部外傷に関しての理解が浅いと考えられ、重大な事故を未然に防
ぐためにも対応が急務であると考えられる。全日本柔道連盟医科学委員会のデータや指導経験及び事前の聞き取り調査か
らは、頭部打突に関して、特定の群や局面に多く起こると考えられ、そういった群や局面に対する頭部打突予防の指導が
必要であると考えられる。また、中学校保健体育において武道が必修化となり、多くの柔道未熟練者の教員が授業を行う
という中、現代の中学生の体力状況や、それにあった指導ポイントを不慮の事故を防ぐという点から明確に示したものが
ないのが現状である。そこで本研究では、頭部外傷の一番の原因であるとされている大外刈りの動作を分析し、大外刈り
における頭部打突のメカニズムを明らかにするとともに、主観的調査で効果があるとされた実践的な指導法とされている
「落下・回転を伴う受け身の指導法」の効果を客観的に検証する。
方
保
教
人
ア
介
143
哲
史
第1体育館
8 月 28 日
10:00
生 28 − 101
筋出力量と記憶保持時間からみた発揮筋力の再現性に関する研究
筋力発揮速度による再現性への影響
○河辺 章子(神戸大学大学院人間発達環境学研究科)
白石 大悟(大阪府立高津高等学校)
運動スキルの獲得には再現性の向上が不可欠であり、運動の記憶が鍵となる。運動の記憶には、筋出力量とともに筋力
社
発揮速度も含まれ、再現性を検討する上で重要な要因である。本研究では、発揮筋力の短期記憶に基づく再現性につい
て、筋力発揮速度による筋出力量の記憶保持への影響について検討することを目的とした。被験者は、指示された筋力発
揮速度で等尺性肘関節屈曲筋力を発揮し、任意の大きさで 3 秒間維持する(基準)。その後、記憶保持時間(3、5、7、9、
心
生
バ
経
発
11 秒)を安静状態で待機した後、指示された発揮速度で基準と同じ大きさの筋力を再度発揮する(再現)課題を行った。
筋力発揮速度は発揮開始から最大筋力に達する時間とし、0.3 秒(F 条件)
、2.0 秒(S 条件)の 2 種類とした。基準発揮
と再現発揮における発揮速度の組み合わせを F-F、S-S、F-S、S-F の 4 条件とした。結果として、F-F および S-S 条件にお
いて再現性が高く、また S-S 条件よりも F-F 条件の方が高い再現性を示した。再現誤差量は記憶保持時間の延長につれて
overshoot から undershoot へと変化したが、その変化点は記憶保持時間が 5 ~ 7 秒にあることが示された。
第1体育館
8 月 28 日
10:10
生 28 − 102
左右方向性と見越し課題による Visual-Motor 反応について
○丸山 敦夫(新潟医療福祉大学健康科学部健康スポーツ学科) 瀬戸川 将(東京大学大学院総合文化研究科)
佐藤 和也(新潟医療福祉大学健康科学部健康スポーツ学科) 山代 幸哉(新潟医療福祉大学健康科学部健康スポーツ学科)
佐藤 大輔(新潟医療福祉大学健康科学部健康スポーツ学科) 塗木 淳夫(鹿児島大学大学院理工学研究科)
速く動くボールなどを認知し予測動作する Visualmotor の神経回路の解明は重要である。特に移動物の方向と予測動作
測
タイミング調節の関係は興味深い。本研究は、左右方向からの移動物に対して予測動作タイミングに相違があるかを検討
した。被験者は毎日練習を行う大学野球選手 14 名(熟練者群)とボール経験がない大学生 14 名(未熟練者群)の計 28
名である。見越し反応課題は、水平の移動視標が画面の途中で遮蔽され右側の到達点(左側)に合うように予測してボタ
方
保
教
人
ア
ンを押す課題である。方向は 1)
左→右と 2)
右→左を設定した。発射点から到達点の距離に対する移動視標の遮断率
(close
off; CO)は 80、
60 および 40%の 3 種類である。移動視標の角速度は 71(fast)および 55(slow)°/sec の 2 速度である。
1 方向の試行は 3CO と 2 速度の各 10 回をランダムに組み合計 60 回を行った。その結果、左→右方向の恒常誤差は、右
→左と比べ熟練者群の fast で 80% CO と非熟練者群の slow で 80% CO に有意に少なかった。熟練度が高い方が瞬時の
速度認知に優れており左→右での予測動作能力が高いと示唆された。
第1体育館
8 月 28 日
10:20
生 28 − 103
操体呼吸法における呼気ガス分析とリラックス効果について
○石濱 慎司(横浜商科大学)
田中 幸夫(東京農工大学)
村上 秀明(桐蔭横浜大学)
我々は、呼吸法における生理的および心理的変化について、末梢循環応答の増大、脳内酸化ヘモグロビン量の増大、唾
液アミラーゼ活性によるリラックス効果、フェイススケールにおける気分の快活化等の結果を得てきた。そして熟練者に
介
おいてはその効果が大きいことが示された。さらに熟練者の意識的な呼吸の調節(ゆっくりの吸息と長い呼息)は、
リラッ
クス効果を得るためのポイントであると報告した。
今回は操体呼吸法(足芯呼吸、
体操、
対気)を熟練者および初級者に 20 分程度実施し、呼気ガス分析装置(K4 システム)
を用いて、操体呼吸法における呼気ガスを採取・分析を実施し、熟練者と初心者を比較した。その結果、操体呼吸法の運
144
04 運動生理学
動強度はゆっくり歩く程度の強度であり、足芯呼吸では熟練者の呼吸回数の減少、一回換気量の増大、呼息と吸息時間の
変化がみられた。また本学会では、操体呼吸法における熟練者および初級者の呼気ガス分析、リラックス効果について詳
細に検討を加え報告する。
第1体育館
8 月 28 日
10:30
史
生 28 − 104
暑熱環境が持久的運動時の頸動脈および椎骨動脈血流応答に及ぼす影響
○佐藤 耕平(日本女子体育大学基礎体力研究所)
米谷 茉里奈(日本女子体育大学基礎体力研究所)
哲
大上 安奈(東洋大学食環境科学部)
定本 朋子(日本女子体育大学基礎体力研究所)
社
心
本研究の目的は、暑熱環境が持久的運動時における外頸・内頸動脈および椎骨動脈血流応答に及ぼす影響を明らかにす
ることであった。9 名の若年男性被検者に対して、35℃の高温(H)および 25℃の通常環境下(C)で 60% VO2max の
自転車運動を 40-50 分間行わせ , 深部体温(直腸温)を連続的に測定した。また、安静および運動時における外頸動脈
(BF-ECA)、内頸動脈(BF-ICA)
、椎骨動脈血流量(BF-VA)を超音波ドプラー法により計測した。運動時における深部体
温の上昇は C 条件に比べ H 条件で高かった(H1.6 ± 0.2 vs. C1.1 ± 0.2℃、P < 0.01)
。 両条件ともに体温上昇に伴い、
BFECA は顕著に増加したものの、C 条件に比べ H 条件で有意に高かった。一方 BF-ICA および BF-VA は C 条件に比べ H
条件で有意に低下し、その低下は BF-VA に比べ BF-ICA で顕著であった。本研究の結果、暑熱環境は、体温調節機能の亢
進に伴う BF-ECA の増加と、脳血流の低下をもたらすことが明らかになった。また、暑熱運動時における脳血流の低下は、
椎骨動脈経路に比べ内頸動脈経路で顕著であることが示された。
第1体育館
8 月 28 日
10:40
バ
経
発
生 28 − 105
筋局所アンドロゲン産生を介した高齢期の筋機能改善メカニズム
○相澤 勝治(専修大学)
佐藤 幸治(立命館大学)
生
家光 素行(立命館大学)
目崎 登(筑波大学)
加齢に伴い血中の性ホルモン(アンドロゲンとエストロゲン)は低下することが知られている。この血中性ホルモン濃
測
方
度の低下は加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)との関連性が示されている。近年、骨格筋局所において性ホルモンを自己
産生することが報告されているが、高齢期における急性運動に対する骨格筋局所の性ホルモン応答性については明らかで
ない。そこで、本研究では高齢期における筋局所の性ホルモン産生の運動時応答性について検討した。 Wistar 系オスラッ
ト(n=20)を用い、若齢群(2 ヶ月齢)、高齢群(18 ヶ月齢)、高齢運動群の 3 群に分けた。高齢運動群は、トレッドミ
ルランニング(20m/min、30 分)を施行した。筋サンプルは、ひふく筋を摘出し、骨格筋中テストステロン、DHEA、
DHT、エストラジオール濃度を EIA 法を用いて検討した。DHEA および DHT は加齢に伴い明らかに減少した。一方、運
動後に DHEA および DHT は明らかに増大した。高齢期において、運動による筋機能改善メカニズムの一つとして筋局所
アンドロゲン産生が関与している可能性が示された。
保
教
人
ア
介
145
哲
史
社
第1体育館
8 月 28 日
10:50
生 28 − 106
自発運動による抗肥満ペプチド(NPW)の摂食調節への影響
自発運動におけるニューロペプチド W の摂食調節作用への影響
○竹ノ谷 文子(星薬科大学)
和田 匡史(国士舘大学)
山本 憲志(日本赤十字北海道看護大学)
大石 健二(日本体育大学)
ニューロペプチド W(NPW)は脳内に広く投射する神経ペプチドであり、投与実験により摂食や体重減少がみられる
ことから抗肥満ペプチドとして知られている。さらに NPW の脳室内投与実験により、コルチコステロンの上昇が起こ
ることから、NPW はストレスへの関与も示唆されている。我々はこのような抗肥満ペプチドを用い、肥満解消のための
心
生
バ
経
発
新規運動を試みている。しかし、NPW の運動による摂食調節への影響については不明な点が多い。そこで我々はマウス
を用い、ストレス緩和と思われる回転かご運動(自発運動)の有無による NPW の摂食調節への影響について調べるこ
とにした。NPW 投により室傍核の c-fos 発現量は増加したが、自発運動を課すことにより c-fos 発現は劇的に減少した。
さらに NPW 投与で起こる摂食量と体重減少は、回転かご運動では起こらなかった。これらの結果から回転かご運動は、
NPW による摂食抑制作用を抑える働きがあることが明らかになった。
第1体育館
8 月 28 日
10:00
生 28 − 107
大学スピードスケート選手と大学インラインホッケー選手におけるバランス能力と下肢筋
力の比較
○乳井 勇二(日本体育大学)
渡部 悠香(日本体育大学)
津山 薫(日本体育大学)
青柳 徹(日本体育大学)
千葉 裕太(日本体育大学)
本研究の目的は大学スケート選手のバランス能力と下肢筋力を中心に比較・検討することである。対象は N 大スピー
測
ドスケート(SS)女子選手 8 名(年齢:20.4 ± 2 才、身長:159.6 ± 5cm、体重:56.7 ± 2kg)およびインラインホッケー
(IH)女子選手 15 名(年齢:20.0 ± 1 才、身長:159.5 ± 3cm、体重:55.8 ± 4kg)とした。測定項目は身長、体重、
重心動揺(BS)
、ディジョックボード上での重心動揺(BSD)、水平保持時間(HT)、等尺性筋力(膝伸展、足底屈、足指)
方
保
教
人
ア
とした。なお、静的バランス能力の指標として BS、動的バランス能力の指標として BSD および HT を用いた。その結果、
SS 選手の BSD および HT は IH 選手よりも有意に優れていた。さらに、IH 選手を上級生(3, 4 年生:10 名)と下級生(1,
2 年生:5 名)に区分して分析を行ったが、上級生の BSD は下級生よりも有意に優れていた。しかし下肢筋力をみると、
SS 選手と IH 選手、さらに IH 選手の上級生と下級生の間にいずれも有意差は認められなかった。以上より、スケート選
手では下肢筋力よりもバランス能力、特に動的バランス能力に優れていることが明らかとなった。
第1体育館
8 月 28 日
10:10
生 28 − 108
男子レスリング選手の筋力、筋量、体脂肪量に関する研究
学年、競技レベル、階級による比較・検討
○渡部 悠香(日本体育大学)
千葉 裕太(日本体育大学)
津山 薫(日本体育大学)
乳井 勇二(日本体育大学)
青柳 徹(日本体育大学)
本研究の目的はレスリング選手の筋力、筋量、体脂肪量を測定し、学年、競技レベル、階級により比較 ・ 検討すること
介
である。
対象は東日本学生リーグ一部の大学レスリング選手 48 名、実業団所属選手 7 名の計 55 名とした。測定項目は身長、
体重、
背筋力、上体起こし、等尺性筋力(膝伸展、足底屈、足指)、垂直跳び、水平保持時間(HT)、筋量、体脂肪量とした。
なお本研究では学年、競技レベル、階級(軽量級:55、60kg、中量級:66、74kg、重量級:84、96、120kg)で比較・
146
04 運動生理学
検討した。
結果をみると筋量と体脂肪量では、重量級は他の階級よりも多い結果であった。しかし体重あたりの分析では、重量級
は他の階級よりも筋量が少なく、背筋力、上体起こし、垂直跳び、HT も同様に有意に低い値を示した。従って重量級では、
相対筋力、筋量、体脂肪量が少なく、今後改善の必要が示唆された。実業団選手は大学選手よりも左右上肢の筋量が有意
に多く、さらに競技レベルの高い国際大会出場の選手は国内レベル選手よりも左上肢の筋量が有意に多かった。従って競
技レベルの高いレスリング選手では、上肢筋力が競技パフォーマンスに影響を及ぼす事が示唆された。
第1体育館
8 月 28 日
10:20
史
社
生 28 − 109
伸張性収縮様式での筋力トレーニングが上腕屈筋群における筋厚変化の部位差に及ぼす影響
○藤原 悠太郎(国士舘大学大学院 スポーツ・システム研究科) 平塚 和也(国士舘大学)
田中 重陽(国士舘大学)
角田 直也(国士舘大学大学院 スポーツ・システム研究科)
本研究では伸張性収縮様式での異なる収縮速度による筋力トレーニングが上腕屈筋群肥大の部位差に及ぼす影響を検討
した。被検者は健康な成人男性 29 名とした。トレーニング群は、30deg/sec のトレーニング群(SG:6 名)
、120deg/sec
のトレーニング群(MG:9 名)
、
及び 240deg/sec のトレーニング群(FG:8 名)に群別した。また 6 名はコントロール群(CG)
とした。上腕屈筋群の筋厚測定は、上腕長の近位から 50%、60%、70%及び 80%部位をトレーニング前、4 週間後及び
8 週間後に実施した。筋力トレーニングは 8 週間実施し、1 日 3 セットを週 3 回行わせた。各群共に 30deg/sec での 3
回の筋出力量を測定し、その出力量に相当する仕事量を MG 及び FG 群でのトレーニング負荷値に設定した。8 週間の筋
力トレーニングにおいて、50%部位の筋厚値は SG、MG 及び FG で有意な増加が見られた。60%、70%及び 80%部位
では MG および FG で有意な増加が認められたが、SG では有意な変化がみられなかった。これらのことから伸張性収縮
様式での異なる速度での筋力トレーニングは部位における特異的な筋肥大を生じさせる可能性が示唆された。
第1体育館
8 月 28 日
10:30
哲
心
生
バ
経
発
測
生 28 − 110
腋下浸水における大脳皮質活動の部位特異性―近赤外線分光法を用いた研究―
○佐藤 大輔(新潟医療福祉大学健康スポーツ学科)
山代 幸哉(新潟医療福祉大学健康スポーツ学科)
馬場 康博(新潟医療福祉大学健康スポーツ学科)
中澤 翔(新潟医療福祉大学健康スポーツ学科)
丸山 敦夫(新潟医療福祉大学健康スポーツ学科)
奈良 梨央(新潟医療福祉大学健康スポーツ学科)
下山 好充(新潟医療福祉大学健康スポーツ学科)
浸水環境では、感覚情報処理過程や感覚運動連関の興奮性が変化することが明らかになっている。そこで、本研究では、
浸水によって生じる大脳皮質活動の部位特異性について検討した。成人男性 10 名を対象に、水位および浸水範囲による
変化を明らかにすることのできるプロトコル(3 分間の陸上座位安静、15 分間の注水、5 分間の腋下浸水、5 分間の排水、
5 分間の陸上座位安静)を用いて、大脳皮質活動を経時的に観察した。大脳皮質活動は、近赤外線分光装置を用いて酸素
化ヘモグロビン量、脱酸素化ヘモグロビン量および総ヘモグロビン量を測定し、浸水前の陸上座位安静時の値からの変化
量にて評価した。脳領域は、MRI 画像と重ね合わせを行い、感覚運動領野、補足運動野および前補足運動野を同定した。
血圧、心拍数、酸素摂取量および頭皮血流量も同時に測定した。その結果、感覚運動領野および補足運動野において水位
の上昇に伴い酸素化ヘモグロビンが増加することが明らかとなった。一方、前補足運動野においては、浸水によって有意
な変化は認められなかった。
以上のことから、
浸水による大脳皮質活動には、部位特異性が存在することが明らかとなった。
方
保
教
人
ア
介
147
哲
史
社
第1体育館
8 月 28 日
10:40
生 28 − 111
疲労困憊に至る低強度レジスタンス運動が muscle swelling へ及ぼす影響
血流制限と非血流制限の比較
○安田 智洋(東京大学)
中島 敏明(東京大学)
福村 和也(東京大学)
疲労困憊に至る低強度レジスタンス運動が muscle swelling へ及ぼす影響について、
血流制限
(BFR)
と非血流制限
(NBFR)
で比較した。健康な男性 8 名の両腕を無作為に BFR 側と NBFR 側に分け、低強度のアームカール運動(20% 1RM、4 セッ
ト)を疲労困憊まで実施した。血流制限には空圧式ベルトを用い、上腕基部に 160mmHg の圧を加えた。運動前後と各
心
生
バ
経
発
測
セット間の休息中は筋厚を測定し、運動中は上腕二頭筋の筋活動量を測定した。筋活動量は 2 条件ともに 1 セット中か
ら漸増し、
BFR では 1 セット目に運動前の 3.52 倍、NBFR では 4 セット目に 3.70 倍に達した。筋厚は 2 条件ともに 1 セッ
ト終了時点から上昇し、BFR では Post で運動前の 1.23 倍、NBFR では 3 セット終了時点で 1.19 倍に達した。いずれの
項目とも条件間で違いは認められなかった。両条件とも、筋の大きな代謝変化によって各セット間の休息中および運動後
は muscle swelling が顕著に増加し、それらの大きさには条件間で違いがないと判明した。そのため、通常血流の低強度
レジスタンス・トレーニングを疲労困憊まで実施すると、加圧トレーニングと同様の筋肥大を引き起こす可能性があると
推察された。
第1体育館
8 月 28 日
10:50
生 28 − 112
吸息筋力は最大漸増負荷テスト後に低下する
大学女子陸上中距離走選手を対象として
○大家 利之(国立スポーツ科学センター)
居石 真理絵(鹿屋体育大学大学院)
佐藤 洋平(日体大)
萩原 正大(国立スポーツ科学センター)
鈴木 康弘(国立スポーツ科学センター)
【背景】
「吸息筋」とは、横隔膜、傍胸骨肋間筋、外肋間筋の総称である。有酸素性運動の制限因子の 1 つに、吸息筋の
疲労が考えられるが、どのような運動の後に吸息筋が疲労するかについては、明らかではない。本研究では、吸息筋力の
方
保
教
人
ア
介
指標として広く用いられている最大吸気口腔内圧の低下を吸息筋の疲労と定義し、最大無酸素性ランニングテストおよび
最大漸増負荷テスト後に、吸息筋が疲労するか否かについて検討した。【方法】大学女子陸上中距離走選手 8 名を対象に、
2 種類の最大運動テストの前後に、オートスパイロメータを用いて、最大吸気口腔内圧を測定した。
【結果】最大無酸素
性ランニングテスト後の最大吸気口腔内圧は、テスト前と比較して有意な低下はなかった。最大漸増負荷テスト後の最大
吸気口腔内圧は、テスト前と比較して有意に低下した。また、最大酸素摂取量の 85% 強度以上での運動時間と最大吸気
口腔内圧の低下率との間に有意な高い正の相関関係があった。【結論】吸息筋は、最大漸増負荷テスト後に疲労するが、
最大無酸素性ランニングテスト後には疲労しないことが示唆された。
第1体育館
8 月 28 日
10:00
生 28 − 113
大学駅伝ランナーのシーズン中における血中ヘモグロビンの動態
○黄 仁官(日体大)
杉本 昇三(日体大)
別府 健至(日体大)
大本 洋嗣(日体大)
向本 敬洋(日体大)
上田 大(文教大)
岩佐 太郎(シスメックス株式会社)
長距離選手のオーバートレーニングや運動性貧血の観点から血中逸脱酵素及び各種血液検査項目との関連が報告されて
いるが、採血による分析は詳細に調べられるという利点もあるが、各選手に、そして経済的にも負担度が高いのも事実で
148
04 運動生理学
ある。従って、現場的には日頃チェックができ、負担の少ないモニタリング可能な方法は重要であるものと考えられる。
そこで我々は、長距離選手のトレーニング効果などの指標として古くから用いられている血中ヘモグロビン(Hb)濃度
に着目し、第 90 回(2014 年)箱根駅伝競走に出場した大学駅伝チームの選抜選手 16 名を対象に、2013 年シーズン(8
月~ 12 月)においてシスメック社製の Hb モニタリング装置(アストリム)を用いてほぼ毎日 2 回(起床時と就寝前)
の計測を実施した Hb モニタリング値の変動と、対象者の各時期別の体組成(InBody-430)及び練習時の走行距離(メ
イン練習走行距離、自主的練習走行距離に分類)などとの関連を検討した。尚、上記の条件で得られた結果を中心に駅伝
哲
史
ランナーにおけるシーズン中のコンディショニング管理に関する可能性について報告する。
社
第1体育館
8 月 28 日
10:10
生 28 − 114
競泳選手における体幹伸展・屈曲の最大筋力発揮時の角度特性
○宇野 嘉朗(岐阜大学大学院)
小椋 優作(岐阜大学大学院)
春日 晃章(岐阜大学)
本研究では、泳力の異なる競泳選手における体幹伸展・屈曲の最大筋力発揮時の角度特性を、泳力群別の比較により明
らかにする事を目的とした。対象は、大学水泳部に所属する男子 20 名であった。日本水泳連盟の資格級から、6 級以上
を上位群(13 名)
、
5 級以下を下位群(7 名)とした。測定は、BIODEX System 4 を用い、角速度 30 deg/sec(以下低速度)
および角速度 90 deg/sec
(以下高速度)
で実施した。体幹の伸展・屈曲範囲は 0°伸展位から 40°屈曲位とした。分析の結果、
低速度の体幹伸展において上位群が下位群に対し、
伸展開始位置 40°から有意に小さい角度での最大筋力発揮を認めた(平
均:上位群 22.2°,下位群 13.6°
,p = 0.046)
。また、高速度の体幹屈曲において上位群が下位群に対し、屈曲開始位置
0°から有意に小さい角度での最大筋力発揮を認めた(平均:上位群 14.6°,下位群 20.6°,p = 0.007)。一方、低速度の
体幹屈曲および高速度の体幹伸展には有意な差異は認められなかった。運動開始位置近くの筋力発揮に優れることは、筋
出力能力が高いと評価できる。従って、上位群は下位群より低速度の体幹伸展および高速度の体幹屈曲の筋出力能力が高
心
生
バ
経
発
いことが示唆された。
測
第1体育館
8 月 28 日
10:20
生 28 − 115
ターン動作における足底圧と下肢筋力の関係
第 5 中足骨疲労骨折との関連を中心に
○福士 徳文(慶應義塾大学体育研究所)
櫻庭 景植(順天堂大学大学院)
吉村 雅文(順天堂大学大学院)
靑葉 幸洋(順天堂大学)
窪田 敦之(順天堂大学)
藤田 真平(順天堂大学大学院医学研究科)
サッカー競技中に多くみられるターン動作中の足底圧の変化と下肢筋力との関係について調査し、近年増加傾向にあ
る第 5 中足骨疲労骨折との関連について考察した。被験者は、関東大学サッカー 1 部リーグに所属する男子サッカー部
員 10 名(年齢:20.9 歳)であった。往復 20m の折り返し走を 3 種類のシューズを用いて人工芝上にて全力で行わせた。
足底圧分布測定システムを用いて、内側脚の最も高い圧力(ピーク圧)を計測した。下肢筋力測定は、BIODEXsystem3
を用いて行い、膝関節および足関節の最大トルクを指標とした。丸型ポイントスパイク(MP)のピーク圧と、膝関節伸
展の等尺性筋力の間で強い正の相関関係がみられた(r=0.676,p<0.05)
。トレーニングシューズに対する MP のピーク圧
の割合を算出し、各種筋力との相関を調べたが、有意な相関はみられなかった。これらの結果から、膝関節伸展の最大筋
力が高い選手は、ターン時の足底に高い圧力がかかっている可能性があるため、シューズの選択やトレーニング後のケア
方
保
教
人
ア
等に注意をする必要があると考えられる。
介
149
哲
史
第1体育館
8 月 28 日
10:30
生 28 − 116
新たに開発された健康モニタリング装置アストリムの有用性
○岡本 孝信(日本体育大学 運動生理学研究室)
岩佐 太郎(シスメックス株式会社)
陸上長距離界などをはじめ、
コンディション管理の一環として採血によりヘモグロビン(Hb)値を測定している。しかし、
社
採血検査は身体的ストレスを伴うため定期的に行うことが難しい。そこで、非観血的に Hb 推定値を測定できるアストリ
ムは、スポーツ現場などで活用され始めている。本研究はアストリムで測定された Hb 推定値の同時再現性、日内および
日差変動を検討し、装置の有用性を評価することを目的とした。被験者は健康な成人男性および女性 6 名で、測定期間
心
生
中は極度な運動を避け、アストリム FIT(シスメックス社製)を用いて Hb 推定値を測定した。同時再現性は 10 試行連
続して測定し、その変動係数(CV)は 2 ± 2% であった。日内変動は 1 日に 5 回、1 回の測定で 5 試行連続して測定し、
その CV はそれぞれ 2 ± 2%、2 ± 1%、2 ± 1%、2 ± 1%、2 ± 1% であった。日差変動は 1 日に 1 回、1 回の測定で 5
試行連続した測定を 5 日間に渡り実施し、その CV はそれぞれ 2 ± 1%、1 ± 1%、3 ± 2%、2 ± 1%、2 ± 2% であった。
アストリムでの Hb 推定値の測定は再現性が高く、日内および日差変動を簡単に捉えることができた。したがって、アス
トリムは非観血的に Hb 推定値を測定できるツールとして有用である。
バ
経
発
測
第1体育館
8 月 28 日
10:40
生 28 − 117
心拍数からみた大山登山と石鎚山縦走登山における弾性ストッキングの効用
○小野寺 昇(川崎医療福祉大学)
西村 一樹(広島工業大学)
西村 正広(鳥取大学)
林 聡太郎(川崎医療福祉大学)
松本 希(就実短期大学)
本研究は、独立峰の大山登山(鳥取県:1,729 m)と対照調査として同様に標高差のある連山の石鎚山縦走登山(愛媛
県:1,982 m)における弾性ストッキング着用の有無が登山時の身体的負荷に及ぼす効果を明らかにすることを目的とし
た。対象者は、健康な成人男性 31 名(大山:16 名、石鎚山:15 名)であった。本研究は、川崎医療福祉大学倫理委員
方
保
会の承認を受けて実施した。対象者は、登山道入り口(大山:780 m、石鎚山:1,280 m)から頂上まで登り、同じルー
トを下山した。弾性ストッキングを着用しない対照群(大山:8 名、石鎚山:8 名)および弾性ストッキング(CG-T1;
アルケア社製)を着用する実験群(大山:8 名、石鎚山:7 名)を設定した。心拍数は、スポーツ心拍計(RS800CX、
RS400;POLAR 社製)を用いて測定した。大山登山における実験群の心拍数は、対照群と比較して低値を示し、有意な
差も認めた(p<0.05)
。この傾向は、独立峰の大山登山において強いことが示唆された。今後、弾性ストッキングの着圧
と身体的負荷軽減の関連性についての検討が課題になると考える。
教
人
ア
第1体育館
8 月 28 日
10:50
生 28 − 118
荷重のかけ方が歩行動作及び立位姿勢に及ぼす影響
○井上 裕美子(大阪工業大学情報科学部)
荷重のかけ方の違いによって立位姿勢及び歩行動作にどのような影響を与えるのかについて検討を行った。健康な男
子大学生 15 名が、第 1 実験、第 2 実験に参加した。荷重なし(0% BW 条件)
、体重の 10%の荷重(10% BW 条件)、
介
20%の荷重(20% BW 条件)の 3 条件を設定した。荷重はリュックに重りを入れて肩にかける方法で行った。第 1 実
験では、両肩に荷重をかける 3 条件を、第 2 実験では、左右の片側の肩のみに荷重をかける 5 条件(0% BW、右 10%
BW、左 10% BW、右 20% BW、左 20% BW 条件)を設定した。第 1、第 2 実験の歩行時の足接地時間は、0% BW 条
件で最も短く、10% BW 条件、20% BW 条件の順に荷重が増加すると長くなり、条件間に有意差が示された。左右差に
150
04 運動生理学
ついてみてみると、歩行時は、どちらに荷重をかけても、足接地時間や足圧総和に有意差は示されなかったが、立位時で
は、片側荷重の第 2 実験において足圧総和に左右差が示された。また、片側荷重時の立位姿勢は、荷重側の肩があがる
傾向が示された。荷重のかけ方の違いは、歩行時よりも立位時の足圧総和に与える影響が大きい事が示唆された。
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
151
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
152
00
体育哲学
哲
01
体育史
史
02
体育社会学
社
03
体育心理学
心
04
運動生理学
生
05
バイオメカニクス
バ
06
体育経営管理
経
07
発育発達
発
08
測定評価
測
09
体育方法
方
10
保健
保
11
体育科教育学
教
12
スポーツ人類学
人
13
アダプテッド・スポーツ科学
ア
14
介護福祉・健康づくり
介
153
哲
史
社
G1大[センターA]
8 月 27 日
9:30
バ 27 − 001
野球のピッチングにおける直球のボールの回転と指の動き
○神事 努(国際武道大学)
松尾 知之(大阪大学)
平山 大作(国立スポーツ科学センター)
投球されたボールの回転速度はボール速度と有意な相関があり、これら獲得のための動作は関連していることが示唆さ
れている。しかしながら、
投球動作中にボールの回転がどのように生成されるのかは明らかになっていない。本研究では、
投球腕の中指の動きに着目し、ボールに回転が与えられるメカニズムについて考察した。ボールの回転および中指の動き
心
生
バ
経
発
は、VICON MX を用いて計測した。サンプリング周波数は 1kHz に設定した。ボールに作用する合モーメントが増大し始
めるとほぼ同時に PIP 関節の伸展が開始していた。そして、合モーメントが最大値を示した直後、PIP 関節の屈曲が始ま
り、ボールリリースをむかえていた。DIP 関節は、PIP 関節と同様の変化を示す被験者が多かったが、ボールリリース直
前まで変化しない被験者もおり、個人差が大きかった。また、ボールリリースまでの MP 関節の角度変化は 10°未満であ
り、ほとんど変化がみられなかった。本研究では、ボールに作用する合モーメントの増減のタイミングと PIP 関節と DIP
関節の屈曲および伸展のタイミングが一致していたことから、指の動きがボールの回転に寄与している可能性が示唆され
た。
G1大[センターA]
8 月 27 日
9:45
バ 27 − 002
野球の投球におけるスナップの仕組み
○小嶋 武次(調布バイオメカニクス研究所)
演者らは前回の日本体育学会大会で、ボールリリース直前のボールの指上の転がりを考慮しない野球の投球の分析は
測
ボールの位置及びそれに作用する力を誤り、筋・結合組織由来の手関節掌屈筋トルクを過小評価すると指摘した。身体セ
グメントの運動由来の同関節力トルクも、同じ理由から評価を誤ると推測される。Hirashima et al.(2007)は、リリー
ス直前の手関節掌屈角速度の増大は手関節の関節力トルクのみによるとしているが、その分析でボールの転がりを考慮
方
保
していない。本研究の目的は、ボールの転がりを考慮して掌屈角速度増大の仕組みを明らかにすることである。分析に
は、前回大会で用いた大学生野球部員 10 名の投球の運動学データを再度用いた。得られた手関節の筋トルクと関節力ト
ルクを手関節掌屈の effective axis(Hirashima et al., 2007)に投影した結果、筋トルクも掌屈角速度増大に寄与しており、
Hirashima et al.(2007)の評価法を用いると筋トルクの寄与は正で関節力トルクのそれは負であり、両者間に有意差が
あることが分かった。これらは、ボールリリース直前の手関節掌屈角速度の増大に手関節筋トルクが大きな役割を果たす
ことを示唆している。
教
人
ア
G1大[センターA]
8 月 27 日
10:00
バ 27 − 003
野球投手の投球動作における身体回旋の力学的メカニズム
○渡部 峻(北翔大学大学院(生涯スポーツ学研究科)) 山本 敬三(北翔大学(生涯スポーツ学部))
本研究の目的は投球動作における身体回旋運動の力学的メカニズムを明らかにする事とした。被験者は大学野球部に所
属する投手 7 名(身長 1.72 ± 0.07 m、体重 63.9 ± 11.1 kg、M ± SD)とし、セットポジションから、最大努力の投球
介
を 3 試技課した。実験球は大学硬式野球用の公式球とした。動作計測では、光学式三次元動作分析装置と床反力計 2 台
を用い、
ヘレンヘイズマーカセットを適用した。軸足と踏込脚でそれぞれの床反力を計測した。計測データから重心位置、
床反力、身体角運動量の鉛直成分(AngMt)
、フリーモーメント(FM)、股・膝・足関節の角度と関節モーメント・パワー
を算出した。結果、踏込脚接地前に軸脚で発揮される FM によって AngMt が漸増した。踏込脚接地後の両脚支持期の前
154
05 バイオメカニクス
半では 2 つの床反力による回転作用が発揮され、AngMt が更に増加した。その後、リリース直前に踏込脚で発揮される
FM によって AngMt が減少させられた。発揮された FM はそれぞれの脚の股関節外旋モーメントの作用と考えられた。
本研究より、投球動作おいて、リリース直前(平均で 0.09s 前)までは身体回旋を加速させ、その後に身体回旋を制動す
る動作戦略が採られていたことが分かった。
G1大[センターA]
8 月 27 日
10:15
史
バ 27 − 004
制球力に影響を与える関節間の協調性
野球の投球動作の場合
○松尾 知之(大阪大学)
平山 大作(国立スポーツ科学センター)
神事 努(国際武道大学)
実際の身体運動では全く変動をなくすことは不可能であるが、熟練者たちは非常に精緻な動きを達成することができる。
近年の運動制御研究では、熟練した動作では各関節で生じる変動をお互いに補完し合うような関節運動間の協調性によっ
て、安定して正確な運動を遂行していることが報告されている。本研究では、このような相互補完的協調性が投球動作に
もみられるのかどうかを検証した。光学式動作解析システムより得られたデータから、リリース直後のボールの水平面角
度と、リリース直前の手関節または第三中骨骨頭の移動軌跡の水平面角度が高い相関を示した被験者に対して、ランダマ
イズ法を順運動学解析に適用した。すなわち、順運動学計算を実施する際、実際に行われた試技の中から各関節運動をラ
ンダムに抽出することによって、擬似シミュレーション動作を生成した。実際の結果と擬似シミュレーション動作の結果
を比較することで、相補的協調動作の有無を検討した。結果は、ランダム抽出後の変動が実際の変動よりも数倍大きく、
制球の向上に身体各部の相補的協調動作が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
G1大[センターA]
8 月 27 日
10:30
社
心
生
バ
経
発
バ 27 − 005
ダーツ投げのバイオメカニクス研究
技術指導前後の即時的効果
○遠藤 壮(仙台大学大学院)
哲
測
宮西 智久(仙台大学)
我々は、昨年の第 64 回大会(学部学生研究発表交流会)において、上級者と下級者(初心者)のダーツ投げの動作を
方
比較検討した結果、上級者の最大の特徴は、①前脚に体重をしっかりと乗せて、②投げ腕の特に肩の動きを小さくして肘
の屈伸動作を使って投げていることなどを明らかにした。今回、我々は、これらの知見の有効性を検証するため、初心者
を対象に指導前後でダーツ投げの効果の有無を調べた。被験者にはまず教示を与えないダーツ投げを 24 投行わせた。そ
の後前回の知見をもとに、投げの構え時に①前脚に体重をしっかりと乗せ、②肩はできる限り動かさず、肘の屈伸動作の
みで投げるように教示した。数回の練習後、さらにダーツ投げを 24 投行わせた。VICON を用いて指導前後の全試技を計
測した。全被験者の全試技についてボード中心からダーツの命中位置までの距離(パフォーマンス)を求め、指導前後で
それぞれ平均値に近い 5 投を選定し動作分析した。その結果、指導後は指導前に比べ投げ腕の肩・肘の関節運動指標が
有意に小さくなり、パフォーマンスが向上した。ダーツ投げの初心者の投能力向上において、上記指導ポイントの即時的
な効果が検証された。
G1大[センターA]
8 月 27 日
10:50
バ 27 − 006
クロール泳におけるストローク動作の評価
○本間 正信(神戸大学)
保
教
人
ア
介
本研究の目的は、競泳クロール泳におけるストローク動作の評価に有効な運動学的指標を検討する事である。方法は、
155
哲
史
3 台のハイスピードカメラを用いた 3 次元パンニング DLT 法による画像分析から、Schleihauf(1979)モデルにより推
定した手部流体力と各種運動学的パラメータを算出した。被験者は大学水泳部に所属する 15 名で、70%泳と 90%泳の
プル動作を分析対象試技とした。1 ストロークを glide 期、in-sweep 期、up-sweep 期に分け、それぞれの局面における
算出項目の平均値と泳速度との相関関係を求めた。その結果、泳速度と相関の高い 7 項目を動作要因として抽出し、泳
速度を目的変数、
動作要因を説明変数とした重回帰分析を行った。得られた重回帰式は決定係数が 0.799 と高い値を示し、
本研究の被験者と同レベルの泳者の評価基準として有効なものではないかと考えられた。また標準回帰係数から、1 スト
ローク中の平均上肢面積(手首−肘−肩峰を結んだ三角形の垂直面への投影面積)、in-sweep 期平均手部速度、up-sweep
社
心
生
バ
経
発
期平均揚力が泳速度に対して重要度が高いという結果であった。
G1大[センターA]
8 月 27 日
11:05
バ 27 − 007
男子競泳選手におけるスタート局面のタイムに影響を与える要因
○堀畑 裕也(日本体育大学大学院トレーニング科学系)平野 智也(日本体育大学大学院トレーニング科学系)
柏木 悠(日本体育大学大学院)
山岸 道央(日本体育大学)
仁木 康浩(富山高等専門学校)
和田 匡史(国士舘大学)
船渡 和男(日本体育大学)
【目的】競泳競技スタート 15m 通過タイムに影響を与える要因を明らかにする【方法】被験者は、日本代表経験選手を
含む男子競泳選手を対象とした。試技は、スタートシグナルから 15m 浮き上がりまでを 50m レースを想定して行い、
15m 頭通過タイムを計測した。水上では、0m ~ 4m 範囲をハイスピードカメラ(Phastec 社製 250fps)を用い、2m ~
16m の範囲は、デジタルビデオカメラ(60fps)を用いて水中映像撮影を行った。分析区間は、スタートシグナルから
15m 頭通過までとし、
スタート局面中での時間及び距離、速度を算出した。【結果及び考察】15m 平均タイムは 6.95 ± 0.5
秒であった。15m 通過タイムの遅い選手は、グライド局面での減速幅が、15m 通過タイムの速い選手と比較して大きい
傾向がみられたことから、15m 通過タイムにはグライド時の姿勢の違いが影響していることが推察された。さらにキッ
測
方
保
ク局面において速度差が大きくなることからスタート局面 15m タイムには、水中局面中であるグライド局面におけるス
トリームラインの姿勢と、キック局面のドルフィンキック技術が影響していることが推察された。
G1大[センターA]
8 月 27 日
11:20
バ 27 − 008
男子フィギュアスケート選手トリプルトウループジャンプの成否に関わる要因のバイオメ
カニクス的研究
○吉田 陽平(信州大学大学院)
教
人
ア
本研究の目的は、習熟度の異なる男子フィギュアスケート選手のトリプルトウループジャンプ(3T)をパンニング
DLT 法を用いて 3 次元的に分析し、3T の成否に影響を及ぼす技術的要因を検討することである。被験者は、全日本選手
権に出場経験のある選手(N:7 級)とない選手(L:6 級)の 2 名とした。被験者 L は、ダブルアクセルは着地できる
が 3T は習得段階であった(本研究では着地時に転倒)
。分析の結果、以下のことがわかった。①被験者 N は跳躍時にお
ける鉛直方向の重心速度(N 3.12m/s、L 2.81m/s)が大きかった。②被験者 N は跳躍局面での重心上昇高(N 0.45m、
L 0.34m)が大きく、滞空時間が長かった(N 0.60sec、L 0.55sec)。③跳躍局面における身体の平均角速度は両被験者
ともに 18.2rad/s であった。④被験者 N は踏切動作局面において、遊脚の角運動量を大きくすることにより、全身の角
運動量を大きくしていた。⑤被験者 N は踏切動作局面において、遊脚の角運動量増加にともない滑走スケートの曲率半
径が小さくなっていた。
介
156
結城 匡啓(信州大学)
05 バイオメカニクス
G1大[センターA]
8 月 27 日
11:35
バ 27 − 009
スキージャンプの数値流体解析を用いた流体力の検討
○浅井 武(筑波大学体育系)
小池 関也(筑波大学体育系)
藤井 範久(筑波大学体育系)
阿江 通良(筑波大学体育系)
本研究では、スキージャンプの空中姿勢における数値流体解析モデルをレーザースキャナで作成し、格子ボルツマン法
を用いて抗力、揚力等の流体力を算出するとともに、ジャンパー周りの流れを可視化し、その流体特性を検討した。その
哲
史
社
結果、迎角 20 度の場合、スキー板、胴体、足部の順に大きな揚力を発揮していた。また、脇、手、足部に流速の急激な
変化がみられ、抵抗源になっている可能性が示唆された。さらに、スキー板上反角と揚力の関係は、流れ方向に対して垂
直(フラット)な場合、揚力も最大になるが、同時に抗力も最大になると考えられた。
G1大[センターA]
8 月 28 日
9:00
心
生
バ 28 − 010
地面反力の変動からみたトレッドミル歩行とグランド歩行の比較
○平野 智也(日本体育大学大学院トレーニング科学系) 堀畑 裕也(日本体育大学大学院トレーニング科学系)
山岸 道央(日本体育大学)
柏木 悠(日本体育大学大学院トレーニング科学系)
袴田 智子(国立スポーツ科学センター)
船渡 和男(日本体育大学)
バ
経
【目的】トレッドミル(TM)とグランド(OG)における同一速度での歩行動作中の地面反力の変動を比較すること。【方
法】OG 条件では、2 台のフォースプレート(Kistler 社製 1000Hz)が設置された 12m の歩行路で自由歩行を 20 試技行
い、地面反力 3 方向成分を測定した。歩行速度は、光電管を用いてフォースプレート中心から 4m 区間タイムを計測す
発
ることで算出した。分析対象は、20 試技中で速度が最も平均値に近い 10 試技とした。TM 条件においては、フォースプ
レート内蔵型トレッドミル(テック技販社製 1000Hz)上で 2 分間の歩行動作を行い、最後の 1 分間中の地面反力 3 方
向成分を測定した。TM の速度は、10 試技の OG 平均速度に設定した。分析は、TM と OG ともに右脚 10 歩を対象として、
測
立脚時間および地面反力 3 方向成分各ピーク値の平均値と標準偏差から変動係数を求めた。
【結果および考察】TM では、
OG と比較して立脚時間が短い傾向にあり、歩調が高くなることが示された。また、TM と OG において、地面反力ピー
ク値の変動係数は同様な傾向を示した。以上のことから、TM と OG での歩行は比較的違いが小さいことが示唆された。
G1大[センターA]
8 月 28 日
9:15
保
バ 28 − 011
接地動作の違いによる走運動中のアキレス腱張力の変化とその影響
○石川 昌紀(大阪体育大学大学院)
国正 陽子(大阪体育大学大学院)
方
佐野 加奈絵(大阪体育大学大学院)
伊藤 章(大阪体育大学大学院)
走運動中の接地動作の違いが、接地時の衝撃だけでなく走効率に影響をおよぼすことが報告されている。本研究では、
教
人
走運動中のアキレス腱にかかる張力を直接測定し、接地動作の違いによるアキレス腱張力への影響と筋腱の振る舞いの変
化について明らかにすることを目的とした。被験者は健康な一般男子大学生 8 名とした。アキレス腱にオプティックファ
イバーを挿入した後、地面反力盤を埋没したトレッドミル上において異なる 2 つの走速度で、前足部接地と踵接地での
ア
走運動をそれぞれ 20 秒行い、走運動中のアキレス腱張力を直接測定した。同時に、下腿筋群の表面筋電図と、超音波装
置による走運動中の腓腹筋の筋束動態とアキレス腱動態の測定を行った。測定の結果、接地中の最大アキレス腱張力には、
接地動作の違いによる差は認められなかった。しかしながら、接地後のアキレス腱張力の立ち上がりが前足部接地で有意
介
に高い値を示した。この接地前半のアキレス腱張力の立ち上がり時に伸張され蓄えられるアキレス腱の弾性エネルギーの
量に有意な違いが認められ、走運動の接地動作の違いが走運動効率に影響を与える可能性を示した。
157
哲
史
社
G1大[センターA]
8 月 28 日
9:30
バ 28 − 012
ジュニアウエイトリフティング選手のスナッチ種目におけるバーベルのキネマティクス分析
○山岸 道央(日本体育大学)
柏木 悠(日本体育大学大学院トレーニング科学系)
加藤 智子(東京都スポーツ文化事業団)
平野 智也(日本体育大学大学院トレーニング科学系)
袴田 智子(国立スポーツ科学センター)
船渡 和男(日本体育大学)
【目的】ジュニアウエイトリフティング選手のスナッチ種目における重量増加に伴うバーベル軌跡の特徴を明らかにし、
心
生
バ
指導や選手の競技力向上を目的とした。
【方法】対象は、53kg 級から+ 105kg 級のジュニアクラスにカテゴリーされる
男子ウエイトリフティング選手とした。競技会の映像は、選手の側方よりデジタルビデオカメラを用いて撮影を行った。
得られた映像は、動作解析システム(Frame-Dias IV、DKH 社製)を用いてバーベル、肩峰、大転子、大腿骨外側上顆、
外顆、踵骨、第五中足骨をデジタイズから位置座標データを得た。【結果】スナッチの挙上重量は、S1:1.25 ± 0.25kg/
BW、S2:1.31 ± 0.25kg/BW、S3:1.34 ± 0.26kg/BW であった。重量増加に伴い鉛直方向のピーク速度、前後方向のピー
ク速度に顕著な減少はみられなかった。鉛直及び前後方向のピーク速度が出現したセカンドプルからキャッチまでの前後
の移動は、試技を重ねることに低い値を示した(S1:0.174 ± 0.1m、S2:0.168 ± 0.1m、S3:0.141 ± 0.1m)
【結論】
ジュニアウエイトリフティング選手は、重量増加をしても鉛直方向及び前後方向へのピーク速度を保ったまま、前後方向
への移動を少なくすることが示された。
経
発
測
G1大[センターA]
8 月 28 日
9:45
バ 28 − 013
準備動作後の股関節外転動作がゴールキーパーのセービング動作に与える影響
○沼津 直樹(筑波大学大学院)
中山 雅雄(筑波大学体育系)
藤井 範久(筑波大学体育系)
松倉 啓太(筑波大学体育系)
サッカーのゴールキーパー(以下、GK)は、主動作であるセービング動作を行う前に、プレジャンプや抜重、脚の踏
方
保
教
み込みなどによる準備動作を行う。また、セービング動作における素早い横方向の移動には、ボールに遠い側の脚(以下、
CS 脚)の股関節の外転動作が重要であると報告されている。本研究は、CS 脚股関節の外転動作を有効に利用した素早い
セービング動作には、どのような準備動作が必要であるかを検討した。左右方向に 1.8m、高さ 1.2m の地点へセービン
グ動作を被験者に行わせた。そして静力学的手法を用いた結果、CS 脚の左右方向の地面反力を生成する主要因は、CS 脚
股関節の外転トルクであることが分かった。また、早いタイミングで左右方向の地面反力がピークに達していた被験者は、
準備動作の接地時に予め大腿を動作方向へ傾けておくことで、準備動作の終了時点から、より早いタイミングでコンセン
トリックな外転トルクを発揮していた。したがって、左右方向の地面反力の生成には CS 脚股関節の外転トルクが大きく
寄与し、CS 脚の大腿を傾けて股関節を外転させる準備動作を行うことで、外転動作を有効に利用した素早いセービング
動作が可能になると考えられる。
人
ア
介
G1大[センターA]
8 月 28 日
10:05
バ 28 − 014
ボールの 3 次元軌跡復元に基づく卓球プレー情報の自動記録
○玉城 将(慶應義塾大学大学院)
スポーツの情報収集を自動化する試みが広がりをみせており、一部では既に実用化が始まっている。本研究では、画像
計測技術を用いたシステムの開発により、卓球における情報収集の自動化を試みる。開発されたシステムは 60fps で撮
影できるカメラ 2 台、および汎用 PC2 台から構成される。カメラ間のシャッター時刻のずれ、およびカメラ間の幾何学
158
05 バイオメカニクス
的な位置関係をボールの動きから推定することで、カメラ間の時間同期、さらにプレー領域に校正点を配置するなどした
カメラ校正を不要とした。卓球試合中の 35 ラリーを対象としてボールの 3 次元軌跡を計測したところ、計測誤差の平均
は約 3 mm であった。正しく復元されたラリー中の軌跡は約 88%であった。復元された軌跡からバウンド位置、打球位
置を推定した結果、それぞれ 94%、48%が正しく検出された。16%の軌跡が復元されなかった要因、そして打球位置の
検出率が低い要因は 1 台あるいは 2 台のカメラの画角からボールが隠れたためであった。今後は撮影視点を増やす等に
よって本システムの実用化を進めることで、画像計測による情報の自動収集を前提とした新たな卓球パフォーマンス分析
哲
史
法の確立を目指す。
社
G1大[センターA]
8 月 28 日
10:20
バ 28 − 015
硬式テニスサーブにおける力学的エネルギーからみた非ラケット保持腕の役割
○村田 宗紀(筑波大学大学院)
藤井 範久(筑波大学体育系)
指導の現場では、
しばしばサーブ動作における非ラケット保持腕の引き付け動作の重要性が指摘される。本研究ではサー
ブ動作における非ラケット保持腕の役割を明らかにすることを目的とし、サーブ動作中の力学的エネルギーを算出した。
その結果、サーブ動作中に上胴からラケット保持腕に流出する力学的エネルギーは、並進エネルギーに比べて回転エネル
ギーのほうが大きく、上胴が獲得する回転エネルギーは下肢の跳躍動作に伴って発生する回転エネルギー、非ラケット保
持腕から肩関節を介して上胴に流入する回転エネルギーが大きかった。非ラケット保持腕はトスアップ時の振り上げ動作
に伴って位置エネルギーを獲得し、その後腕の引き付け動作前半では、肩関節の水平内転・内転トルクよって発生した回
転エネルギーと各部分の位置エネルギーを並進エネルギーに変換して各部分に蓄えていた。非ラケット保持腕が減速する
引き付け動作後半では、非ラケット保持腕に蓄えた並進エネルギーが肩関節で回転エネルギーに変換されて上胴へと流入
していた。このことは、非ラケット保持腕は上胴を回旋させることを通じ、ラケット保持腕の力学的エネルギー獲得に寄
与していると推察される。
G1大[センターA]
8 月 28 日
10:35
切り返し動作中の体幹加速度と体幹屈曲筋力の関係について
石井 秀幸(立教大学)
切り返し動作中の体幹安定性はパフォーマンスや外傷予防において重要である。 本研究では、切り返し動作中の体幹加
速度と体幹屈曲筋力との関係を検討した。 大学生女子競技選手 15 名(サッカー 8 名、バスケットボール 7 名)を対象と
した。対象者は 5m の助走の後、180 度ターンを行いスタート位置に戻る切り返し動作を全力で行った。動作時に加速
度センサを第 1、2 胸椎棘突起間上に貼付し、体幹加速度の計測を行った(200Hz)
。 切り返し足の接地後 200ms 間の体
幹加速度(左右方向、上下方向、前後方向)の最大値(G)、変化量(G)を算出した。 また、体幹屈曲筋力の計測を行っ
た。 背臥位にて体幹を 30 度前傾させた状態からの等尺性体幹屈曲筋力の値を microFET2 にて計測し、体重あたりの体
幹屈曲筋力(Nm/kg)を測定値とした。 計測された体幹加速度と体幹屈曲筋力との関係を、相関分析を用いて検討した。
分析の結果、切り返し中の体幹後方加速度の最大値と体幹屈曲筋力の間に有意な相関関係がみられ(r = -0.59)、体幹屈
曲筋力が大きい対象者ほど、切り返し中の体幹後方加速度が小さい傾向であった。 体幹屈曲筋力が切り返し中の体幹への
衝撃を緩衝させている可能性が示唆された。
生
バ
経
発
測
バ 28 − 016
○永野 康治(新潟医療福祉大学)
笹木 正悟(東京有明医療大学)
心
方
保
教
人
ア
介
159
哲
史
社
G1大[センターA]
8 月 28 日
10:50
バ 28 − 017
男子ジュニアバスケットボール選手のシュート動作とボールの回転の特徴
○稲葉 優希(国立スポーツ科学センター)
奥野 真由(国立スポーツ科学センター)
小山 孟志(東海大学)
袴田 智子(国立スポーツ科学センター)
尾崎 宏樹(Singapore Sports Institute)
日高 哲朗(千葉大学)
佐々木 三男(慶應義塾大学)
バスケットボールのシュートにおいては、バックボードとボールの衝突における摩擦を考慮して、ボールに後ろ回転を
心
生
バ
経
発
測
かけることが重要であると言われている。バスケットボールの指導現場では、ボールに十分な回転がかけられていない
選手に対してボールの回転数を増やすように指導がなされるが、実際のシュートにおけるボールの回転数やボールの回転
の生成機序については不明な点が多い。そこで、本研究ではシュート動作におけるボールの回転数を実際に算出し、更
に、回転数と身体のキネマティクス・キネティクスデータからボールの回転の生成機序を明らかにすることを目的とし
た。3 次元動作解析システムを用いて、男子ジュニアバスケットボール選手 14 名のミドルシュート動作における全身及
びボールのキネマティックデータを取得した。その結果、ジュニアバスケットボール選手のボールの回転速度は 570.5
± 160.2 deg/s であり、
先行研究において示唆されている最適な回転速度(1080 deg/s)より小さかった。そこで、
シュー
ト動作のキネマティックデータを用いてボールの回転生成の機序について検討した。
G1大[センターA]
8 月 28 日
11:10
バ 28 − 018
ピアノ音量調節における上肢筋群の貢献度
○石垣 享(愛知県立芸術大学)
本研究は、各上肢筋群がピアノの音量調節に貢献する度合いを検討した。実験参加者は、ピアノ専攻大学院生 10 名で
あった。測定は、グランドピアノを用いて行った。実験参加者は、ドミソの和音でピアニシモからフォルティシモまで
を 8 段階で弾く課題を左右それぞれ行った。表面筋電図の測定は、両側の僧帽筋、三角筋、二頭筋、三頭筋、手根伸筋、
方
保
手根屈筋、指伸筋および指屈筋とした。サンプリング条件は、5 ~ 500Hz のバンドパスフィルターで 1kHz で記録した。
筋電波形は整流化後に、各打鍵時のピーク音から 200ms 以前の区間の積分筋電図(IEMG)をデータとして用いた。音
圧測定も同時に行い、各打鍵時の最大波高をデータとして用いた。各筋の IEMG と最大音圧間との関係は、右側では手根
伸筋および浅伸筋が最も高く、三頭筋、手根屈筋、二頭筋、指屈筋、三角筋、僧帽筋の順であった。同様に左側では、三
頭筋が r=0.937 と最も高く、浅屈筋、手根屈筋、指伸筋、手根伸筋および二頭筋、三角筋、僧帽筋の順であった。本研
究で認められた上肢の音量調節への貢献度の左右差は、利き腕や鍵盤の重さの違いの影響があるものと推察される。
教
人
ア
G1大[センターA]
8 月 28 日
11:25
バ 28 − 019
小学生における立ち幅跳びの観察評価の妥当性
○加藤 謙一(宇都宮大学)
阿江 通良(筑波大学)
森丘 保典(日本体育協会)
本研究の目的は、小学生 233 名の立幅跳の跳躍動作を動作分析から得られた結果と観察評価(評価者 9 名)の結果を
介
比較することによって、立幅跳の観察評価の妥当性を検討することであった。観察評価の全体印象「両足で前方へ力強く
跳躍している」に対応した跳躍動作の要因(腰関節や膝関節の最大伸展角速度、跳躍初速度、水平初速度および鉛直初速
度)は、男女ともに観察評価の優れた方がそれぞれ大きい値を示す傾向であった。観察評価の部分観点とそれに対応した
動作要因、すなわち「腕を後方から前方によく振っている」と「最大バックスウィング時の肩関節角度と腕のスウィング
160
05 バイオメカニクス
速度」、「離地時に身体全体を大きく前傾している」と「跳躍角度」、「尻と膝がほぼ同じ高さで前方へ両足着地している」
と「着地時の大転子中心と膝の高さ」は、
男女ともに、良いと評価された方が有意に優れた値を示した。立幅跳の跳躍距離、
その身長比と観察評価得点との関係は、男女の部分観点「腕を後方から前方にタイミングよく振っている」を除く、全て
の観察観点との間に有意な相関関係が認められた。これらのことから、立幅跳の観察評価は、動きの質を評価する上で妥
当性があると考えられた。
G1大[センターA]
8 月 28 日
11:40
史
社
バ 28 − 020
サッカーボールのパネル構成が空力特性や飛翔軌道を左右する
○洪 性賛(筑波大)
浅井 武(筑波大)
典型的に、サッカーボールは五角形と六角形の 32 枚パネルで構成されていた。しかし、近年では 14 枚で構成された
Teamgeist と 8 枚で構成された Jabulani が登場し、従来のサッカーボールに比べ、パネルの形とデザインなどが大きく
変化した。さらに、最近では 6 枚のパネルで構成された Brazuca が 2014 年ブラジルワールドカップの公式球として使
用された。しかし、これらの異なるパネル数とパネルの形によるボールの飛翔特性や空力特性などの流体力学研究は少な
い。そこで、本研究では異なるパネル数とパネルの形で構成されたサッカーボールの飛翔軌道と空力特性を風洞実験及び
キックロボットを用いて検討した。その結果、パネル数が異なるサッカーボールの種類によってボールに加える空気力は
大きな差がみられた。また、サッカーボールの弾着点の結果では、パネル向きによってサッカーボールの飛翔軌道が大き
く変わることがみられ、
ボール飛翔にパネル向きが大きな影響を与えると考えられる。さらに、風洞実験から得られたサッ
カーボールの空力特性とキックロボットによるボールの飛翔特性には高い相関(r=0.58)が見られ、風洞実験からボール
の飛翔軌道が予測できると考えられる。
G1大[センターA]
8 月 28 日
11:55
哲
心
生
バ
経
発
バ 28 − 021
卓球ラケットブレードの機械的性質がボールの反発におよぼす影響
測
方
○樋口 泉(釧路工業高等専門学校)
卓球ラケットは木を主材料としたラケットブレードとその表面に張られるゴムおよびスポンジによるラバーからなる。卓
球ラケットの反発およびスイートスポットの大きさは競技者にとってプレースタイルに大きく関与するため非常に重要な
問題となる。しかしながらこれらには統一した基準がない。製造者が自社製品内で基準を設け公表している。製造元の異
なるラケットの選択の時に競技者が混乱する一要因でもある。また、ラケットの反発に関して工学的になされているもの
は少ない。そこで、本研究はその基礎研究として木製ラケットブレードについて積層状態の異なる卓球ラケットを準備し
て、ボールの反発を実験的に調べた。同時にラケットブレードから切り出した試験片から実験的に測定したブレード材料
の機械的性質が反発におよぼす影響および衝突速度依存性についても言及する。
G1大[センターA]
8 月 27 日
14:15 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
教
人
バ 27 − 101
サッカーのボールコントロール動作のバイオメカニクス
○伊賀 崇人(名古屋大学大学院)
池上 康男(愛知淑徳大学)
保
布目 寛幸(福岡大学)
松井 一洋(名古屋大学大学院)
ア
介
サッカーのボールコントロール動作は、ボールコンタクト時にボールの運動量を大きく減じることを目的とする動作
である。しかしながら、その動作に着目した研究は少なく、そのメカニズムは明らかにされていない。本研究の目的は、
161
哲
史
ボールコントロール中の下肢動作からボールストップのメカニズムを明らかにすることであった。被検者(6 名)は、前
方 10m 地点からボール配球マシンにより配球させる一定の速度と軌跡を持つ「浮き球」を、右足部内側部(インサイド)
でコントロールを行い、その動作をモーションキャプチャーにて記録した(500Hz)。算出項目は、足関節の底屈 / 背屈、
膝関節の伸展 / 屈曲、内旋 / 外旋(足関節の内外転を含む下腿のねじれ)
、股関節の伸展 / 屈曲、内転 / 外転、内旋 / 外
旋とした。ボールコンタクトに向けて膝関節の伸展、股関節の外旋がみられ、ボールコンタクトをピークに逆方向への動
作(膝関節屈曲・股関節内旋)が現れた。また、ボールコンタクト直後より、膝関節の急激な外旋がみられた。以上のこ
とより、ボールコントロール動作において、意図的な股関節の内旋動作と膝関節屈曲動作に加えて、受動的な膝関節の外
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
162
旋動作が影響していることが示唆された。
G1大[センターA]
8 月 27 日
14:18 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 102
サッカー選手のインステップキック動作における順動力学解析によるスイングの検討
○坂本 慶子(筑波大学大学院)
浅井 武(筑波大学)
中山 雅雄(筑波大学)
本研究では、サッカー選手のインステップキック動作におけるスイング動作の技術特性を分析すると共に、ボール速度
を増大させるための技術的要因を検討しようとした。蹴り脚における股関節並進力の鉛直力がスイング速度に及ぼす影響
について、順動力学シミュレーションによって検討した。本シミュレーションでは、フォワードスイング局面における股
関節鉛直力が 0 % の場合(計測基データ)
、5 % 増大した場合(+5 % ケース)、10 % 増大した場合(+10 % ケース)
、5 %
減少した場合(-5 % ケース)
、10 % 減少した場合(-10 % ケース)のスイング速度を算出した。その結果、股関節鉛直関
節力が大きくなるとともに、スイング速度も増加する傾向を示した。このことから、インステップキック動作おいて、蹴
り脚の股関節を鉛直方向に加速することは、スイング速度を高めると考えられ、ボール速度を増加させる技術要素の一つ
になると考えられた。
G1大[センターA]
8 月 27 日
14:21 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 103
跳躍タイプが異なる走幅跳選手における踏切準備および踏切動作の Kinetics 的特徴
○清水 悠(筑波大学大学院)
小山 宏之(京都教育大学)
阿江 通良(筑波大学)
村木 有也(大阪電気通信大学)
走幅跳選手には、いくつかの跳躍タイプがあると言われている。本研究の目的は、一流男子走幅跳選手を異なる跳躍タ
イプに分類し、跳躍タイプ別の踏切準備および踏切動作の Kinetics 的特徴を明らかにするとともに、跳躍タイプを考慮
した際の指導に役立つ知見を得ることである。国内外の一流走幅跳選手 29 名の踏切離地時における跳躍角をもとにクラ
スター分析を行い、Horizontal(H)
、Semi-Horizontal(SH)、Semi-Vertical(SV)、Vertical(V)の 4 タイプに分類した。
支持期中の平均力、足部重心まわりの角運動量や遊脚の股関節トルクなどのキネティクス的変量を算出して各跳躍タイプ
を比較した。
その結果、H type と SH-type は、踏切 2 歩前の遊脚の股関節屈曲トルクを大きく発揮しており、踏切準備局面におけ
る脚の素早い引き付け動作や体幹の前傾を維持するような動作特徴が明らかとなった。Vtype と SV-type は、踏切 1 歩前
の平均力の鉛直成分を抑えており、身体重心高を下げながら身体の後傾姿勢を作ることで、踏切局面で大きな平均力の鉛
直成分を獲得するような動作特徴が明らかとなった。
05 バイオメカニクス
G1大[センターA]
8 月 27 日
14:24 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 104
走高跳スパイクシューズの補強が足部変形と地面反力に及ぼす影響
○衛藤 昂(筑波大学大学院)
上田 美鈴(筑波大学大学院)
前田 奎(筑波大学大学院)
仲谷 政剛(株式会社アシックス)
関 慶太郎(筑波大学大学院)
山元 康平(筑波大学大学院)
Hoang TheNguyen(筑波大学大学院)
大山卞 圭悟(筑波大学)
哲
史
社
走高跳の踏切では踏切足に体重の 7 〜 8 倍の衝撃が加わる。この衝撃に伴って生じる足部の複雑な変形はこの種目特
有の障害の原因であると指摘されている。ここでスパイクシューズ(以下スパイク)の適切な構造設計により上記変形の
抑制が可能であると考えられる。そこで本研究はスパイクのアッパーに着目しアッパーの補強が足部変形および地面反力
に及ぼす影響を調査した。
(1)通常の補強が全て施されたスパイク(2)アッパーの補強を全て取り除いたスパイク(3)
前足部中央外側に足背と足底を結ぶ補強材を 2 本ずつ配置したスパイク、いずれもアシックス社製を実験スパイクとし
て用いた。被験者は 2m27 の記録を持つ男性競技者 1 名であった。屋内に走高跳ピットを作成し踏切地点にフォースプレー
トを設置した。VICON システムを用い 13 台のカメラで踏切足に焦点をあて毎秒 250 コマで撮影した。解剖学的ランドマー
クに基づき計 18 個のマーカーをスパイクおよび下腿に貼付した。さらにアッパーの 7 ヶ所に穴をあけたスパイクを作成
し、皮膚に直接マーカーを貼付することでスパイク内の足の移動も観察した。マーカーの位置関係の変化からアッパーの
伸縮箇所が明らかとなった。
G1大[センターA]
8 月 27 日
14:27 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
曲走路において高い疾走速度を獲得するためのキネマティクス的要因
熊野 陽人(鹿屋体育大学大学院)
松尾 彰文(鹿屋体育大学)
立 正伸(奈良教育大学)
平野 裕一(国立スポーツ科学センター)
本研究では、直走路と曲走路において全力疾走中の速度および動作を比較することにより、曲走路において高い疾走速
度を獲得するためのキネマティクス的要因を明らかにすることを目的とした。被験者は、大学陸上競技部に所属する男子
12 名(年齢 20.3 ± 0.9 歳、身長 1.74 ± 4.30m、体重 66.7 ± 4.6kg)であった。試技は、直走路および曲走路におけ
るスタンディングスタートからの 60m 全力走とした。VICON-MX system を用いて、各試技における 45m 地点付近の走
動作を撮影し、左右脚それぞれのキネマティクスについて 3 次元動作分析を行った。曲走路におけるキネマティクスの
分析結果を評価するため、直走路に対する相対値を算出した。被験者を疾走速度の相対値の上位群と下位群に分け、群間
および左右脚で比較した。その結果、右脚接地から左脚接地までのステップ長および滞空距離が、下位群より上位群で有
意に長かった。これらの結果より、曲走路外側となる右脚の動作および力発揮が、曲走路において高い疾走速度を獲得す
るための要因となっていることが示唆された。
G1大[センターA]
8 月 27 日
14:30 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ
発
測
方
保
教
人
バ 27 − 106
歩隔の違いが短距離走のスタート局面における速度および動作に及ぼす影響
○西谷 直樹(奈良教育大学大学院)
大沼 勇人(鹿屋体育大学大学院)
生
経
バ 27 − 105
○大沼 勇人(鹿屋体育大学大学院)
居石 真理絵(鹿屋体育大学大学院)
西谷 直樹(奈良教育大学大学院)
松林 武生(国立スポーツ科学センター)
心
立 正伸(奈良教育大学)
ア
介
本研究の目的は、接地時のつま先の左右間隔の距離である歩隔の違いが、短距離走のスタート局面における速度およ
163
哲
史
び動作に及ぼす影響について明らかにすることである。陸上競技部男子 7 名を対象に、歩隔を 20 cm、40 cm と規定し
た状態で、スターティングブロックを用いた 10 m 全力疾走をそれぞれ 1 本ずつ行わせた。分析区間は、スタートの動き
出しから 2 歩目接地までとした。分析項目は、ステップ長、ステップ頻度、走速度、推進・滞空距離、接地・滞空時間、
骨盤・下肢動作とした。その結果、ステップ長は 20 cm 試技よりも 40 cm 試技が有意に大きかった。一方、ステップ頻
度は 20 cm 試技よりも 40 cm 試技が有意に低かった。しかし、走速度は歩隔の違いによる影響を受けなかった。また、
推進距離は 20 cm 試技よりも 40 cm 試技が有意に大きかったが、滞空距離は試技間で有意な差が見られなかった。さら
に、滞空時間は 20 cm 試技よりも 40 cm 試技が大きい傾向があったが、接地時間は試技間で有意な差が見られなかった。
社
心
生
バ
経
発
これらの結果から、歩隔の違いは、短距離走のスタート局面における走速度に影響を及ぼさないものの、ステップ長、ス
テップ頻度に影響を及ぼすということが明らかになった。
G1大[センターA]
8 月 27 日
14:33 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 107
110m ハードル走のトレーニング手段に関するバイオメカニクス的研究
○大橋 祐二(帝京平成大学)
藤井 範久(筑波大学)
門野 洋介(仙台大学)
本研究は、110m ハードル走のハードル設置条件を変化させ、インターバル走の動きの変化をバイオメカニクス的に分
析し、そのトレーニング効果を明らかにすることを目的とした。被験者は、110m ハードルを専門とする男子選手 5 名
であった。実験試技は、インターバルの距離(以下、Int.)とハードルの高さ(以下、HH)が異なる 3 種類の 50m ハー
ドル走(① Int.=8.00m と HH=1.067m、② Int.=9.14m と HH=1.067m、③ Int.=9.14m と HH=0.914m)と 50m 全力疾
走であった。データ収集には、光学式 3 次元自動動作分析装置(250Hz)を用い、50m ハードル走では 3 ~ 4 台目のイ
ンターバル走を、50m 全力疾走では 30 ~ 40m 区間の疾走動作を撮影した。その結果、Int. を短縮したトレーニングは、
重心速度は小さくなるが、インターバルと踏切準備動作のリズムアップをねらいとする場合に有効な手段になることが示
唆された。また、HH を低くしたトレーニングは、インターバルの疾走速度向上をねらいとする場合や、ハードリング着
測
方
保
教
人
ア
地後に体幹の起き上がりを抑制したい場合に活用できることが示唆された。
G1大[センターA]
8 月 27 日
14:36 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 108
三次元足部形態計測法を用いた陸上短距離選手の足部形態の特徴
○柏木 悠(日本体育大学大学院トレーニング科学系)
平野 智也(日本体育大学大学院トレーニング科学系)
山岸 道央(日本体育大学)
船渡 和男(日本体育大学)
袴田 智子(国立スポーツ科学センター)
水野 増彦(日本体育大学)
【目的】三次元足部形態計測法を用いて陸上短距離選手の足部形態の特徴を示すこと。【方法】被験者は、大学陸上短距離
選手 20 名(SP)とコントロール群(CC)として同年代の一般成人男性 15 名を対象とした。足部形態計測は、三次元足
部形状計測器 Infoot(I-Ware Laboratory 社製)を用いて行った。足部計測点は、先行研究 Kouchi(1998)を参照した。
また、外・内モーメントアームの評価として、外果から中足骨までの長さ(AML)と外果から踵までの長さ(HAL)から、
AML に対する HAL の比率を算出した。
【結果】足部形態計測の結果において SP と CC の間には統計上有意差はみられな
かった。一方で、SP(133 ± 6mm、53 ± 2%)の AML の長さと、足長に対する比率は、CC(127 ± 6mm、50 ± 1%)
と比較して有意に大きな値を示した(p<0.01)
。ギア比に関しては、SP(38 ± 3%)が CC(40 ± 3%)より有意に小さ
な値を示した(p<0.05)
。
【結論】SP は足長に対する AML 比率が大きく、スプリントパフォーマンスの力発揮に有効的
介
164
な足部形態を有していることが示された。
05 バイオメカニクス
G1大[センターA]
8 月 27 日
14:39 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 109
試合期を通したハンマー投動作の変化
○小林 朋寛(茨城大学大学院)
古橋 裕二郎(茨城大学大学院)
哲
史
ハンマー投は、数回のスイング動作の後、ターン動作を行い、より遠くへハンマーを投げる競技である。ハンマー投の
ような短時間で爆発的な力の発揮が求められる運動では、小さなミスでもハンマー投動作に影響を及ぼし、安定したハン
マー投動作を行う事ができないこともある。そこで本研究では、男子学生 1 名を対象とし、ハンマー投動作を定期的に撮影、
社
分析し、ハンマー投動作の変化要因を明らかにし、今後の練習、指導に生かすことを目的とした。研究方法として、被験
者のハンマー投動作を撮影した動画から、
3 次元 DLT 法を用いて 3 次元座標を算出し、変動要因の検討を行った。その結果、
この被験者においては、1 ターン目のハイポイントの高さ、ターン動作中の片足支持期の長さがハンマー投動作の変化を
もたらしていることが明らかとなった。
G1大[センターA]
8 月 27 日
14:42 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
生
バ 27 − 110
クラウチングスタートにおける四肢関節の動力学的分析
関節機能の定式化
○永井 悠樹(筑波大学大学院)
仲谷 政剛(アシックス)
心
小池 関也(筑波大学)
バ
経
クラウチングスタートにおける力学的特徴として、四肢が地面に接地した状態から急激に加速を行うことがあげられる。
これまでに、クラウチングスタートに関する研究としては、スターティングブロックを用いた加速動作について、キネマ
ティクス的およびキネティクス的分析を行った数多くの報告がなされている。しかしながら、身体重心加速度の生成に対
発
して四肢各関節のトルクがどのように貢献しているかについては明らかにされていない。そこで本研究では、クラウチン
グスタートにおける四肢関節トルクが、身体重心加速度の生成に対してどのように貢献しているか明らかにするために、
四肢関節機能の定式化を行った。具体的には、まず、15 個の剛体セグメントからなる身体に対して、その四肢末端セグ
測
メントが、仮想関節を介して地面と連結しているものとしてモデル化を行った。次に、対象となる系の運動方程式の解析
式を用いて、身体重心加速度生成に対する動力学的貢献式を導出した。その際、身体重心加速度に対する動力学的変換係
数を定義することにより、クラウチングスタートにおける各関節トルクの役割についての定量的な評価を可能にした。
G1大[センターA]
8 月 27 日
14:45 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
保
バ 27 − 111
最大疾走速度局面の支持期後半における股関節内転トルクの役割について
○大島 雄治(筑波大学大学院)
方
藤井 範久(筑波大学体育科学系)
最大疾走速度局面の走動作を 2 次元分析した先行研究から、最大疾走速度を高めるためには、股関節屈曲トルクの発
揮を大きくする必要があるといわれている。しかし、最大疾走速度局面の走動作を 3 次元分析した研究は少なく、支持
教
人
期後半に発揮される股関節内転トルクの機能を明らかにした研究はない。そこで、本研究の目的は、最大疾走局面の支持
期後半における股関節内転トルクの機能を明らかにすることとした。短距離走者 8 名に対して、スタンディングスター
トからの 60m の全力疾走を行わせた。動作分析装置および地面反力計を用いて、最大疾走速度局面(約 50m)における
ア
身体分析点 47 点の 3 次元座標値および地面反力を計測した。そして、運動方程式と加速度拘束式を連立することで、左
右の股関節力によるモーメントと関節トルクの関係を調べた。結果として、支持期後半で発揮される股関節屈曲トルクは、
骨盤に対して、支持期側の股関節を後方に回す鉛直軸まわりのモーメントを作っていることが分かった。一方、股関節内
介
転トルクは、骨盤に対して、逆方向のモーメントの作っており、股関節屈曲トルクによる骨盤の後方回転を防いでいる可
能性があることが分かった。
165
哲
史
G1大[センターA]
8 月 27 日
14:48 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 112
垂直跳動作における沈み込み程度の違いが跳躍高および力学的指標に与える影響
短距離選手と一般人の比較から
○星川 佳広(東海学園大学スポーツ健康科学部)
本研究の目的は垂直跳の跳躍高と関連指標に、跳躍前の沈み込みの深さ(沈深)がどう影響するか検討することであっ
社
た。また短距離選手 S 群と一般人 C 群の比較から沈深の影響の生理的背景を検討した。被検者は S、C 各群 6 名で両群は
年齢、形態、身体組成、膝伸展最大トルクで同等であった。被検者は反動のない垂直跳(SJ)とある垂直跳(CMJ、とも
に腕振りなし)を、沈深を身長の 10%、20%、30%、40% の 4 条件で行った。被検者の頭頂部の垂直位置変異と地面反
心
生
バ
経
発
力を Vicon System により記録した。また各沈み込み姿勢での等尺性活動時の地面反力(Iso)とその立ち上がり率(RFD)
も計測した。Iso の最大値は S、C 群で差異なく沈深 10%から 40%で体重比 2.4 から 2.0 へと漸減したが、RFD は S 群
が C 群より優れていた。SJ、CMJ の跳躍高は沈深が大きいほど有意に高く、これは地面反力の低下を加速時間の延長が
補うためであった。また沈深 20% 以外では S 群が C 群より跳躍高が高かったが、これには Iso の最大値よりは、SJ の場
合 RFD が、CMJ の場合伸張性筋力と力―速度関係の影響が強いと考えられた。
G1大[センターA]
8 月 27 日
14:51 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 113
幼児の目安跳び動作における距離調節方略
○大高 千明(奈良女子大学大学院)
梅本 麻実(奈良女子大学大学院)
藤原 素子(奈良女子大学)
高徳 希(比治山大学短期大学部)
田中 千尋(奈良女子大学大学院)
本研究は、幼児の立ち幅跳びにおける最大跳躍および最大跳躍距離に対する半分(50%)の距離への目安跳び動作につ
測
いて、跳躍距離の調節方略を検討した。被験者は、体力測定の立ち幅跳びにおいて両脚での離地および着地動作を行った
5 歳児 33 名(男児 14 名、女児 19 名)とした。跳躍動作の離地前および離地から着地までの動作分析を行い、動作時
間や関節角度変化を指標とし、最大跳躍および目安跳び動作の特性を比較した。
方
保
教
人
ア
その結果、目安跳びの飛距離については、男女ともに最大跳躍距離の 60% 程度であり、男児のほうが女児よりもやや
大きく跳ぶ傾向がみられた。一方、目安跳びの動作時間については、男女ともに最大跳躍時の約 90% の時間を要していた。
最大跳躍と目安跳びの動作については、踏み切り動作だけでなく着地動作においても顕著な違いがみられ、目安跳びは最
大跳躍よりも下肢の各関節を伸展させた状態で着地していた。
これらのことから、幼児においても最大跳躍と目安跳びで異なる方略を用いて跳躍距離を調節していることが示唆され
た。
G1大[センターA]
8 月 27 日
14:54 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 114
膝サポーターがストップジャンプ動作に与える影響
ストップ局面に着目して
○船橋 祐美子(筑波大学大学院)
清水 悠(筑波大学大学院)
藤井 範久(筑波大学)
膝の装具やサポーターは、一般的に受傷後に不安定となった膝関節の可動域を制限し、安定性を高めるために使用され
介
る。スポーツ場面を想定した動作中の膝装具に関する研究は多数行われているが、膝サポーターに関する研究は少ない。
本研究では、膝サポーター着用と非着用条件におけるストップジャンプ動作中の下肢キネマティクスおよびキネティクス
的特徴の相違を明らかにすることを目的とした。被験者は、女子大学バスケットボール選手 5 名とし、ストップジャン
プ動作を行うように指示した。三次元光学分析装置(250Hz)と床反力計(1000Hz)を用いて、身体分析点の座標値と
166
05 バイオメカニクス
地面反力を収集した。その結果、条件間において全被験者の平均値では、膝関節最大屈曲時の膝関節角度、膝関節トルク
および膝関節力に有意な差はみられなかった。着用条件で膝関節屈曲角度が制限された傾向がみられた被験者は、地面反
力、膝関節伸展トルクの最大値が大きかった。このような被験者においては、膝サポーターを着用することは、膝関節の
可動域を制御するだけではなく、膝サポーターの復元トルクが膝関節伸展トルクの役割も担っていることが推察された。
G1大[センターA]
8 月 27 日
14:57 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 115
バレーボール選手の床地と砂地におけるスパイク跳躍動作の違い
○小澤 悠(東海大学大学院 体育学研究科)
小河原 慶太(東海大学)
内山 秀一(東海大学)
山田 洋(東海大学)
長尾 秀行(東海大学大学院 総合理工学研究科)
砂地での運動時は、垂直跳びの跳躍高の低下などが生ずることが報告されている(村松ら,2008)
。このためビーチ
バレーボールにおけるスパイクについても砂地では床地に比べ跳躍高が低下してしまうことが指摘されている(福田ら,
2009)
。本研究ではインドアバレーボール選手の床地と砂地でのスパイク跳躍動作の違いについて明らかにし、指導の一
助となりうる基礎的知見を得ることを目的とした。測定は床地と砂地においてスパイク跳躍を全力で行わせた。それを 4
台のハイスピードカメラで撮影し、三次元 DLT 法で得られた身体部位の座標値をもとに身体合成重心、下肢の各関節角
度を算出し比較した。下肢の関節角度の変化については砂地、床地ともに変化の様相は概ね同じであった。床地と砂地で
の跳躍の踏み切り時の下肢の関節角度は右足関節においてのみ砂地で有為に高い値を示した。さらに跳躍高と踏み切り時
の下肢の各関節角度との関係については床地において右足関節と跳躍高との間に有意に正の相関関係が認められた。以上
のことからバレーボール選手は床地、砂地の両地において右足関節角度に違いがみられたがその他の下肢の各関節角度に
大きな違いはみられなかった。
G1大[センターA]
8 月 27 日
15:00 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 116
全日本男子バレーボール新人選手のスパイク動作における打ち分け技術に関するバイメカニクス的分析
新人アウトサイドヒッターの動作に着目して
○増村 雅尚(崇城大学)
近年のバレーボールで多用されるリードブロックシステムはセッティングに対し、全方向、全タイミングの攻撃に対応
すべく開発されたシステムであるが、その対抗策として、サイド攻撃の高速化が進んでいる。全日本ナショナルチームに
おいて、高速セッティングにより、ブロック枚数は減少できたものの、1 枚のブロッカーに対してのスパイクのコース幅
が狭くシャットアウトされる場面が多く見られた。そこで、高速化されたセッティングに対してのブロックを避けるライ
ン側(ラインショット)とクロス側(クロスショット)への打ち分け動作の分析が必要であると考えられる。本発表は全
日本男子バレーボール新人選手のスパイク技術向上のため、2013 年 10 月に各スパイク動作を 3 次元動作分析し、得ら
れた資料から新人選手の技術向上のためのトレーニングに関する示唆を引き出すことを目的とした。その結果以下のよう
な示唆が得られた。①肩の内外転動作、内外旋動作は世界選手と同様の動作を行っており、継続する。②クロス方向への
打撃動作において、肩関節は外旋した状態でボールを打撃しており、打撃ポイントを肩関節から相対的に前方に置くこと
が必要であると考えられる。
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
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ア
介
167
哲
史
G1大[センターA]
8 月 27 日
15:03 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 117
車いすテニス選手のサーブ動作中の上肢関節運動について
○川端 浩一(和歌山県立医科大学みらい医療推進センター) 田邉 智(大阪産業大学)
本研究では、車いすテニス選手のサーブ中の上肢関節運動を動作学的に分析し、健常者の動作と比較することで、車い
社
すテニス選手のサーブ動作の特徴を明らかにしようとした。
被験者は世界ランキング 1 位の選手を含む車いすテニス選手 7 名であった。被験者に十分なウォーミングアップを行
わせた後、全力でサーブを打つよう指示した。その時のサーブ動作を 21 台の 3 次元動作分析装置 Venus3D を用いて
心
生
バ
経
発
250fps で撮影した。本研究では宮西ほか(1996)の方法を参考に、上肢関節角速度とラケット速度に対する各関節運動
の貢献度を算出した。
健常者と比べると、車いすテニス選手の内旋角速度は高かったが、ラケット速度に対する内旋の貢献度は低い傾向が見
られた。内旋角速度をラケットヘッド速度へ効果的に転換するためには、肘をやや屈曲させてサーブを打つ必要がある
(田
邉と伊藤、2007)
。車いすテニス選手は車いすに座ってサーブを打つため打点が低くなるので、肘を伸ばしてより高いと
ころでボールを打たなければならない。そのため、内旋角速度を効果的にラケットヘッド速度へ転換できず、ラケットヘッ
ドを十分に加速することができなかったと考えられた。
G1大[センターA]
8 月 27 日
15:06 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 118
テニスサーブにおけるトスのばらつきと対応動作
○大塚 絵梨奈(筑波大学大学院)
藤井 範久(筑波大学体育系)
本研究では、硬式テニスのサーブ動作におけるトスのばらつきに対する対応動作を分析し、指導への基礎的な知見を得
測
ることを目的とした。実験試技は、デュースサイドからの 3 球種(フラット、キック、スライス)のサーブとし、各関
節の運動に起因するラケットの変位(打球方向、左右方向)を算出した。その結果、打球方向へのトスのばらつきには、
主に体幹の並進運動を変化させることで対応し、ボールスピードや回転に大きな影響を及ぼす肩関節内外旋運動、体幹前
方
保
教
人
ア
後傾運動、体幹左右回旋運動を大きく変化させることはなかった。一方、左右方向へのトスのばらつきには、体幹の並進
運動とともに肘屈曲伸展運動、肩関節内外転運動、体幹前後傾運動を主に変化させて対応していた。左右方向へのトスの
ばらつきは、打球方向(下肢による跳躍方向)と方向が異なるため、体幹の並進運動による対応には限界があり、上肢の
関節運動を変化させる必要があったと考えられる。以上のことから、サーブ動作の安定性を高めるためには、左右方向へ
のばらつきを小さく収めるトスアップ方略が重要であると示唆された。
G1大[センターA]
8 月 27 日
15:09 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 119
野球のバッティング動作における体幹部の角運動量がバットスピードに及ぼす影響
○堀内 元(中京大学大学院)
桜井 伸二(中京大学)
本研究の目的は、野球のバッティング動作における体幹部の角運動量がバットスピードに及ぼす影響について検討する
ことである。被験者は大学硬式野球部に所属する 15 名の男子学生であった。最大努力によるトスバッティングをモーショ
ンキャプチャーシステムで記録し、バットスピードおよび体幹部の角運動量を算出した。なお、本研究では、鉛直方向を
介
Z 軸、捕手 ‐ 投手方向を Y 軸、Y 軸と Z 軸の外積成分を X 軸とした右手座標系を絶対座標系として定義した。バットス
ピードと各軸周りの角運動量のピーク値に有意な相関関係は認められなかったが、Z 軸周りの角運動量のピーク値にはそ
の傾向が認められた(r=0.505,p=0.055)
。また、X 軸周りの角運動量は他の 2 軸周りの角運動量よりも比較的大きかっ
た。この角運動量は上胴部における Y 軸方向への負の運動量が主な要因であると考えられ、この運動量のピーク値とバッ
168
05 バイオメカニクス
トスピードには有意な負の相関関係が認められた(r=-0.526,p=0.021)。これらの結果から、野球のバッティング動作
において、バットスピードは体幹部の Z 軸周りの回転運動および上胴部の捕手方向への並進運動によって増大すること
が示唆された。
G1大[センターA]
8 月 27 日
15:12 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
史
バ 27 − 120
野球熟練者における投球速度調節に貢献する関節運動
○浦田 達也(大阪体育大学)
田邉 智(大阪産業大学)
哲
植松 梓(早稲田大学)
伊藤 章(大阪体育大学)
社
心
我々は、
特別な訓練を行っていない一般成人男性が段階的に投球速度(オーバーハンドスロー)を増加させると、
リリー
ス時点のボール速度に対する上胴左回旋速度と肩関節内旋速度の貢献度が増していくことを報告した。今回は、同動作の
熟達者である野球投手を対象にボール速度への上胴回旋および上肢関節角速度の貢献度を調べた。大学生野球投手 8 名
に全力での投球(max)と全力下での投球(max に対して 80%、60%、40% および 20% のボール速度)を行わせ、その
際の投球動作をモーションキャプチャーシステム(VICON - MX10、Inter-Reha 社製)を用いて 3 次元座標データを測
定した。得られたデータから上胴回旋と上肢関節角速度とボール速度に対する貢献度を算出した。その結果、ボールリリー
ス時点では一般人と同様に投球速度の増加に対して上胴左回旋および肩関節内旋速度の貢献度が増加していたが、骨盤右
傾、肩関節内転および肘関節伸展速度の貢献度が減少するという特性が明らかになった。
G1大[センターA]
8 月 27 日
15:15 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 121
エネルギー伝達効率からみたハンドボールスローイングにおける投球スキルの定量的評価法
○内藤 耕三(国立スポーツ科学センター)
若山 章信(東京女子体育大学)
生
バ
経
発
測
ハンドボールの投球では、全身の筋で発揮したパワーを投球上肢の加速に結びつけることが要求される。ボール速度の
獲得には、大きな筋パワーの発揮と全身のコーディネーションが重要である。“ 効率的 ” といわれる投球フォームは、よ
り大きな運動エネルギーを上肢末端に伝達することを可能にする動作といえよう。投球上肢の加速メカニズムを検討する
方
ためには、上肢だけでなく体幹および下肢の貢献を考慮し、多リンク機構におけるエネルギーの流れ(エナジェティクス)
を扱う必要がある。すなわち、エネルギーの発生源(筋による入力パワー)とセグメントに供給されるエネルギー(出力
パワー)との入出力関係、およびセグメント間にエネルギーを分配する内力(運動依存力)の影響を定量化する必要があ
る。近年われわれはこれら多リンクシステムにおけるエナジェティクスを分析する手法(Induced-power analysis:IPA)
を開発し、いくつかのスポーツ動作に適用している。本研究では IPA を用いたハンドボール投げにおけるエネルギー発生
メカニズムを明らかにするとともに、他のスイング動作との共通性および個別性について検討する。
G1大[センターA]
8 月 27 日
15:18 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
保
教
人
バ 27 − 122
標準動作モデルを用いた小学生の投動作改善の試み
○小林 育斗(茨城県立医療大学)
村田 宗紀(筑波大学大学院)
阿江 通良(筑波大学)
木下 まどか(筑波大学大学院)
大津 卓也(筑波大学大学院)
齋藤 優輝(筑波大学大学院)
ア
介
本研究は、投動作の標準動作モデルを用いた練習を小学生を対象に実施し、練習前後の投動作を比較して、練習の有効
性について検討することを目的とした。小学 6 年生男女 32 名にサークル内からのソフトボール投げを行わせ、その動作
169
哲
史
を高速度カメラ 2 台で撮影した。投動作の技術練習は計 4 回(各 40 分)行い、各回の前半では優れた投動作の標準動作
モデルを提示するとともに、遅延表示カメラで児童自身の動作を確認させ、後半では数種類の投動作練習を行った。練習
期間終了後に再度動作を撮影して 3 次元動作分析し、上肢、体幹、下肢の関節角度を求め、標準動作からの逸脱度の指
標としてzスコアを算出した。
投距離の平均値は、男子は 28.4m から 31.6m に、女子は 16.0m から 17.0m に有意に増加した。動作の変化を事例で
検討した結果、投距離が 10m から 13.5m に増加した女子児童では、練習後には標準動作モデルと類似した体幹の大きな
前方回転やリリース前の素早い右肘の伸展がみられ、逸脱度が小さくなった。これらのことから、標準動作モデルを用い
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
170
た練習は、小学生の投能力向上に有効な手段であると考えられる。
G1大[センターA]
8 月 27 日
15:21 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 123
体操競技における後方宙返りの着地動作に関するバイオメカニクス的研究
○宮崎 彰吾(筑波大学大学院)
藤井 範久(筑波大学)
体操競技における宙返りの着地動作は宙返りの成否や出来栄えに大きく影響を及ぼす。また着地時には衝撃が生じるた
め、緩衝動作を同時に行う必要がある。そこで本研究の目的は、異なる条件の後方宙返りの着地動作についてバイオメカ
ニクス的に検討することとした。対象者は大学体操競技者 9 名であった。実験課題は地面からの後方かかえ込み宙返り
(Tuck0)と台高 30cm からの後方かかえ込み宙返り(Tuck30)とし、三次元自動動作分析装置(250Hz)と地面反力計
(1000Hz)を用いて身体座標値と地面反力を計測した。分析対象試技は宙返りが静止して内省の良い課題として、キネ
マティクス的変量と地面反力について検討した。その結果、Tuck30 は Tuck0 に比べて接地前の身体の鉛直方向の運動量
が大きく、着地局面の動作時間も長かった。また、Tuck30 は Tuck0 に比べて、着地局面の接地から重心最下点までの股
関節角度と足関節角度の変化が大きかった。一方、膝関節角度の変化に有意な差は見られなかった。体操競技者は膝関節
角度の変化が小さい着地動作を行っており、体操競技の競技特性が表れていることが示唆された。
G1大[センターA]
8 月 27 日
15:24 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 124
クロスカントリースキー競技のスキー反力センサシステムの開発
○藤田 善也(国立スポーツ科学センター)
石毛 勇介(国立スポーツ科学センター)
クロスカントリースキー競技において、選手はポールおよびスキー板を利用して力を発揮し、滑走運動を行う。しかし
ながら、滑走運動のために発揮された力の測定は困難であり、その様相は十分に明らかにされていないのが現状である。
本研究では、スキー反力センサシステムを開発し、クロスカントリー滑走中に発揮された力を明らかにすることを目的と
した。滑走中に発揮された力を測定するために、小型、軽量でスキー板およびローラースキーに取り付け可能なビンディ
ング型のひずみゲージ式 3 分力計(スキー反力センサシステム)を開発した(共和電業製)
。同システムの精度を検証す
るために、被験者にローラースキーでのクラシカル走法およびスケーティング走法による滑走を行わせた。その結果、滑
走中にローラースキーへと発揮された力を検出することが可能であることが示された。また、それぞれの走法を比較する
と、走法によって力発揮の様相が異なることが示された。これらの結果より、本研究によって開発されたビンディング型
スキー反力センサシステムは、選手がそれぞれの走法を滑走した際に発揮した力を評価できるシステムであることが示唆
された。
05 バイオメカニクス
G1大[センターA]
8 月 27 日
15:27 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 125
剣道における面打ち直前の後退動作が下腿の力発揮に及ぼす影響
○柴山 久美(筑波大学大学院)
小河原 慶太(東海大学)
天野 聡(東海大学)
山田 洋(東海大学)
長尾 秀行(東海大学大学院)
中西 英敏(東海大学)
木塚 朝博(筑波大学)
哲
史
社
本研究では、剣道における面打ち直前の後退動作が下腿の力発揮に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。被験
者は剣道部男子学生 12 名であり、全員三段以上の十分な剣道経験を有していた。試技は、面打ちのみ行う試技(面打ち
試技)と引き面打ちから面打ちを行う試技(引き面試技)の 2 種類とした。試技の動作は、矢状面からハイスピードカ
メラを用いて記録し、腓腹筋と前脛骨筋を被験筋とした筋電図、フォースプレートを用いた床反力を全て同期して測定し
た。分析区間は、左足関節背屈開始時から終了時までを第一局面、左足関節底屈開始時から左足離地時までを第二局面と
した。各分析区間における計測値を両試技で比較した結果、第一局面では、引き面試技において腓腹筋の筋放電量が有意
に大きな値を示した。また、第二局面では、同試技において前後方向での力積が有意に大きな値を示した。動作の切り替
え時は、後退している身体を左足で支え、踵を床につけずに前方に踏み出すため、大きな床反力を得て前進しようとして
いると考えられた。これらのことから、後退動作を伴う面打ちでは、腓腹筋の伸張性収縮のため、より大きな筋力が発揮
されていると示唆された。
G1大[センターA]
8 月 27 日
15:30 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
生
バ
経
バ 27 − 126
クロール泳におけるプル動作とキック動作の関係
○佐藤 大典(中京大学大学院)
水藤 弘吏(愛知学院大学)
心
高橋 繁浩(中京大学)
発
測
【目的】100m、200m クロール泳中のプル動作とキック動作について 2 次元画像解析法を用いて分析し、両動作の関係
を明らかにすること。
【方法】被験者は、全国大会出場レベルの男子競泳選手 10 名とした。試技は回流水槽プールにて
実施した。被験者はクロール泳における 100m 全力泳(V100: 1.95 ± 0.05m/s)と 200m 全力泳(V200:1.79 ± 0.03m/s)
のそれぞれの流速で 30 秒間泳を行い、右手が入水してから再度入水するまでの 1 ストローク中のプル動作とキック動作
を分析した。【結果】V100 では 9 名がストローク頻度を上げるために左右のプル動作の推進局面を重ねて泳いでいたの
に対し、V200 では 8 名がグライド局面を長くするためにプル動作の推進局面が左右重ならないように泳いでいた。この
ことから、
被験者は V100 と V200 のそれぞれの流速に対応するようプル動作を使い分けていたと推察される。一方、
キッ
ク動作については V100 では手部が入水してから Pull 開始までのグライド局面においてキック動作が 1 度行われていた
のに対し、
V200 では 2 度行われていた。このことから、V200 ではグライド局面で減速を抑えるために 2 度のキックを打っ
ていたと考えられる。
G1大[センターA]
8 月 27 日
15:33 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 127
ドライバーショットにおける重心移動のバイオメカニクス的分析
○岡本 敦(東海学園大学)
本研究の目的はゴルフのドライバーショット時の身体重心の移動とヘッドスピードとの関係を明らかにすることであっ
方
保
教
人
ア
介
た。被験者はハンディキャップが 2 から 13 のアマチュアゴルファー 6 名であった。被験者はフルスイングでゴルフボー
ルを実打した。その時の身体動作を VICON 社製モーションキャプチャーシステム MX-T20(カメラ 10 台)で毎秒 250
171
哲
史
コマで記録した。またその時の床反力を KISTLER 社製フォースプレート 9287C 2 台を用いて 1000Hz で記録した。その
結果、いずれの被験者もバックスイングで身体重心が飛球線と反対方向へ移動し、ダウンスイングで飛球線方向へ移動し
ていた。被験者のダウンスイング時の飛球線方向への身体重心の移動速度の最大値とヘッドスピードの最大値との間には
有意な関係は認められなかった。また、被験者の身体重心はハーフウェイダウンからインパクトにかけて上昇した。この
時の身体重心の上昇速度の最大値とヘッドスピードとの間には相関係数 0.94 の極めて強い相関が得られた。この結果、
ドライバーショットのヘッドスピードの向上にはハーフウェイダウンからインパクトにかけての身体重心の上昇速度が重
要であることが示唆された。
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
172
G1大[センターA]
8 月 27 日
15:36 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 128
国内トップレベルゴルフジュニア選手の体幹筋力の特徴について
○秋山 圭(国立スポーツ科学センター)
荒川 裕志(国立スポーツ科学センター)
高木 斗希夫(国立スポーツ科学センター)
白木 仁(日本ゴルフ協会)
国内のゴルフジュニア選手の体幹周囲の効率的なトレーニング強化のために、筋横断面積や体幹回旋筋力の収縮様式な
どの身体的特徴を知ることは重要である。本研究では、国内ナショナルゴルフジュニア選手を対象として体幹筋横断面積
(MRI)
と体幹回旋筋力
(BIODEX)
との関連を検討した。対象者は国立スポーツ科学センターに体力測定を行ったゴルフジュ
ニア選手 33 名(男 13 名、女 20 名)である。体幹の筋横断面積は MRI を用いてヤコビーライン直上部の筋横断面積を
撮像し、左右の外側腹筋群、腹直筋、大腰筋、腰方形筋、脊柱起立筋に分類した。また、左右の体幹回旋筋力は BIODEX
system4 を用いて座位での 60deg/sec、180deg/sec を測定した。
筋横断面積は男女ともに外側腹筋群、大腰筋、脊柱起立筋に有意差が認められ、左側が有意に大きかった。以上の結果
からゴルフジュニア選手の体幹周囲筋は左右で異なる機能を有している可能性があることが示唆された。
G1大[センターA]
8 月 27 日
15:39 口頭 第 1 体育館
16:00 ポスター
バ 27 − 129
MRI を用いた簡便かつ高精度な大腿部各筋体積推定法の検討
○杉崎 範英(千葉大学)
勝亦 陽一(東京農業大学)
本研究では、大腿部筋を対象として、磁気共鳴画像(MRI)を用いて簡便かつ高精度に筋体積を推定する方法を検討し
た。男性 47 名(19.9 ± 1.4 歳 , 174 ± 5 cm, 66 ± 5 kg)を被験者として、MRI 装置を用いて大腿部の連続横断画像を
取得し、大腿四頭筋、ハムストリング、内転筋群、縫工筋、および薄筋の筋断面積および筋体積を算出した。各筋について、
大腿セグメントを 2 ~ 10 分割する位置(1 ~ 9 スライス)で取得した筋横断面積および大腿長を独立変数とする強制投
入法による重回帰分析を行い、筋体積推定式を作成した。独立変数として用いたスライス数および大腿長投入の有無が推
定式の決定係数に及ぼす影響を検討した。また、Bland-Altman プロットにより、推定における系統誤差の有無を確認した。
その結果、(1)いずれの筋においても、1 スライスのみを用いた場合には、決定係数は 0.9 を下回り、かつ系統誤差が生
じること、および(2)内転筋群を除き、大腿長 33% および 67% 位置の 2 スライスにおける筋断面積と大腿長を独立変
数として用いることで、系統誤差がなく、決定係数が 0.9 以上の筋体積推定式が得られることが確認された。
00
体育哲学
哲
01
体育史
史
02
体育社会学
社
03
体育心理学
心
04
運動生理学
生
05
バイオメカニクス
バ
06
体育経営管理
経
07
発育発達
発
08
測定評価
測
09
体育方法
方
10
保健
保
11
体育科教育学
教
12
スポーツ人類学
人
13
アダプテッド・スポーツ科学
ア
14
介護福祉・健康づくり
介
173
哲
史
GB32[センターB]
8 月 27 日
13:40
経 27 − 001
観戦者ロイヤルティ ‐ アイデンティフィケーションモデルにおける知識の影響
チームに関する知識の多母集団同時分析
○出口 順子(東海学園大学)
菊池 秀夫(中京大学)
筆者らは先の研究で観戦者ロイヤルティ - アイデンティフィケーションモデル(以下 SLIM)を構築した。本研究の目的は、
社
このモデルにおいてチームに関する知識がどのような役割を果たしているのかを検討することにある。具体的にはチーム
に関する知識量の違いが SLIM 内の他の変数とどのような関係にあるのかを検討する。そのため SLIM において多母集団
の同時分析を用い、チームに関する知識量の高低によるグループ間の比較を行った。V・プレミアリーグサポーターズク
心
生
ラブ会員 270 名を対象にしたデータを用いて共分散構造分析を行った結果、心理的コミットメントが部分的な媒介効果
を持つモデルが最適モデルとなった。このモデルにおいて高知識群と低知識群の 2 群間で多母集団同時分析を行った結
果、高知識群では試合会場の雰囲気から心理的コミットメント、自己評価からチーム・アイデンティフィケーション(以
下 T.I)
、T.I から心理的コミットメントへの影響が、低知識群では試合満足から心理的コミットメント、自己評価から T.I、
T.I から心理的コミットメントへの影響がみられた。また高知識群は低知識群に比して試合会場の雰囲気から心理的コミッ
トメントへの影響が強かった。
バ
経
発
GB32[センターB]
8 月 27 日
14:00
経 27 − 002
指定管理者制度と公共スポーツ施設(1)
戦略的思考の視点から
○阿部 拓真(日本体育大学)
冨田 幸博(日本体育大学)
本研究では、指定管理者制度をめぐり、世田谷区の公共スポーツ施設において、施設関係者の立場や意図のもとで密接
に絡み合う相互作用を読み解き、指定管理者制度と公共スポーツ施設の在り方を戦略的思考の意味合いから探求すること
測
が目的である。
本研究の意義としては、
(公財)日本体育施設協会が行っている指定管理者総合評価で平成 23 年度に AAA の認定を受
けている(公財)世田谷区スポーツ振興財団の経営に着目し、どのような戦略的思考を通して実践しているのかという視
方
保
点での内在化した経営現象から実証的認識を提供することにある。
具体的には、東京都世田谷区における指定管理者制度の運営過程を対象に、フィールドワーク型調査で得た知見をベー
スデータとして、インタビュー型調査を行った。その後、指定管理者制度と公共スポーツ施設の在り方を戦略的思考の意
味合いから探求するために、グラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析を試みた。
結果として、本研究で立ち現れた戦略的思考意味合い(コア・カテゴリー)は、
「指定管理者制度によるモデル構築へ
の追及」である。
教
人
ア
GB32[センターB]
8 月 27 日
14:20
経 27 − 003
特定地域における体育・スポーツ施設の整備に関する質的分析の試み
○永田 秀隆(仙台大学)
わが国の体育・スポーツ施設は、保健体育審議会において整備の方向性が示されてきており、その成果の一部は「我が
国の体育・スポーツ施設」に見ることができる。これらの実態をも踏まえ、国は「スポーツ基本計画」において地域スポー
介
ツ施設の充実を掲げ、さらに施策の目標や具体的な施策の展開について言及している。一方、地方公共団体は、スポーツ
基本計画を参酌して、その地方の実情に即したスポーツの推進に関する計画を定めるよう努めることがスポーツ基本法に
示されていることからか、各計画中のスポーツ施設に関する記述は似通ったものが多い。計画を策定する際は、各地のス
ポーツ施設の設置・整備の実情を正確に把握した上でということが必要不可欠だが、果たしてその作業は厳密になされて
174
06 体育経営管理
きているだろうか。体育・スポーツ施設の整備に関し量的に把握しようとする先行研究はあるが、それと共に質的な分析、
例えば施設の機能面に着目し施設整備の実態を分析した結果と計画との整合性を保たないと真の地域スポーツの振興には
繋がらないと考える。そこで本研究では、特定の地域を取り上げ、そこでの体育・スポーツ施設の特に機能面について質
的に分析することを試みる。
GB32[センターB]
8 月 27 日
14:40
史
経 27 − 004
スポーツによる地域づくりに求められている要素に関する研究
○藤原 瑞稀(東海大学大学院国際地域学研究科)
哲
新出 昌明(東海大学国際文化学部)
社
心
スポーツでの地域づくりによるメリットは大会・合宿誘致などの経済的効果や心と体の健康づくり・生きがいづくり・
コミュニティ形成といった社会的効果と考えられるがその活動は経済的効果の面に重きが置かれて社会的効果の面はそれ
に付随した形のものが多い。また、スポーツによる経済的効果については研究・報告も多くみられるが、社会的効果につ
いては研究や報告が少なく、その評価方法は曖昧である。しかし、スポーツによる社会的効果の重要性は明らかである。
むしろ、一時の経済的効果だけではない本当の地域づくりにはこの社会的効果が重要である。そこで本研究はスポーツで
の地域づくりではどのような効果が求められているのか社会的効果の面から明らかにすることを目的とした。その結果、
住民の心身の健康づくりになっていて仲間づくりや活動が生きがいになっていることがスポーツでの地域づくりに求めら
れていることが明らかとなった。
GB32[センターB]
8 月 27 日
15:00
経 27 − 005
総合型地域スポーツクラブの運営を巡る自治体とクラブの関係に関する研究
総合型地域スポーツクラブの設置を推進する自治体のケーススタディ
○松橋 崇史(東京工科大学メディア学部)
生
バ
経
発
測
総合型地域スポーツクラブ(以下、クラブ)の設置を推進する地方公共団体(基礎自治体、以下、自治体)を対象に、
クラブ運営を巡る、自治体とクラブの関係性を分析する。スポーツ経営領域のガバナンスに関連する議論を参照して、自
治体とクラブの関係を分析するために、
「自治体とスポーツ組織間のジレンマ」構造を分析枠組みとして提示する。国内
方
の全自治体を対象にしたアンケート調査の結果の分析と、調査結果から抽出された人口規模の異なる総合型地域スポーツ
クラブ設置に力を入れている複数の自治体のケーススタディを通じて、仮説を検証する。仮説検証から、自治体がクラブ
設置に際して、クラブ運営の担い手たる市民や民間組織等との対立を抑え協働を実現し、クラブが会員や指導者、ステー
クホルダーの協力を実現しているケースでは、クラブ運営が維持されやすいことが示唆された。一方、自治体とクラブの
緊張関係は継続し、自治体にとっては、クラブを施設利用面等で支援する上でのアカウンタビリティを果たすため、地域
スポーツ振興に貢献し、
クラブが地域における正統性を持てるようにクラブと調整していく必要があることが示唆された。
GB32[センターB]
8 月 27 日
15:20
経 27 − 006
地域におけるアダプテッドスポーツイベントの参加者評価
スポーツベネフィットによる評価の試み
○行實 鉄平(徳島大学)
我が国の「スポーツ基本法」
(2011)では、
「障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、障害の
種類及び程度に応じて必要な配慮をしつつ推進されなければならない」という、いわゆる、「障害者スポーツ」の推進が
保
教
人
ア
介
1 つの基本理念として掲げられた。地域における障害者スポーツ推進に関しては、
「総合型地域スポーツクラブ(以下、
「総
合型クラブ」とする)
」における事業(藤田、2012)や、障害者だけでなく健常者を含めた「アダプテッドスポーツ(以
175
哲
史
社
心
生
バ
経
下、
「AS」とする)
」としての考え方をベースとした事業(文科省、2012)の展開が期待されている。
本研究では、
総合型クラブにおいて開催された、
AS イベント参加者(4 イベント合計 292 名)のスポーツベネフィット
(金
山、2006)評価を分析することで、今後の AS イベント運営の課題を抽出することを目的とした。その結果、AS イベン
トのスポーツベネフィット(20 項目)は、
因子分析(主因子法・Promax 回転)によって 3 つの因子を見出すことができた。
また、このスポーツベネフィットは、参加者の特徴(障害有無、参加回数など)によっても違いが示された。
GB32[センターB]
8 月 27 日
15:40
方
保
教
人
ア
介
176
高等学校サッカー部の競技成績の規定要因に関する研究
○藤田 雅文(鳴門教育大学)
本研究は、高等学校サッカー部を対象として、競技成績とスポーツ経営資源の関係について分析することを目的とした。
データは、過去 5 年間に全国高校サッカー選手権大会に出場している 62 校を含めた、515 校の監督を対象にした郵送に
よる質問紙調査(平成 25 年 11 月〜 12 月)によって収集した。有効回答数は 197 校(38.3%)であった。過去 3 年間
の高校総体都道府県予選大会の結果を数量化し、競技成績を「上位群」「中位群」「下位群」の 3 つに区分して、多重比
較検定などの統計分析を行った結果、3 群間に有意差が認められた項目は、[ヒト]監督の現任校での指導年数、監督の
取得している指導者ライセンス、部員数、
〔モノ〕ピッチ環境(人工芝)
、専用グラウンド、夜間照明設備、
[カネ]年間
予算額、[活動]年間の練習試合数、年間の合宿の回数、年間の県外遠征の回数であった。競技成績(得点)と量的デー
タの項目との単相関係数を算出した結果、部員数(r=0.690)と年間予算額(r=0.565)との間に高い相関が認められ、
監督の現任校での指導年数(r=0.377)と年間の練習試合数(r=0.340)との間には低い相関が認められた。
発
測
経 27 − 007
GB32[センターB]
8 月 27 日
16:00
経 27 − 008
ラグビーチームの強化に適した組織変革論の検討
○吉田 明(日本大学文理学部人文科学研究所)
深田 喜八郎(日本大学大学院文学研究科)
小沼 直子(日本大学大学院文学研究科)
櫛 英彦(日本大学大学院)
高階 曜衣(日本大学大学院文学研究科)
天野 喜一朗(日本大学大学院文学研究科)
「はじめに」いかなる組織においても、継続して良い成績を収めるためには、周囲の変化に沿った組織変革が必要となる。
本研究は、社会人ラグビーチームが、チームの低迷から、組織変革により成功した過程を検証し、共通した組織変革過程
が存在するか否かを明らかにすることを目的とした。「対象と方法」対象は、ジャパンラグビートップリーグ上位に位置
する、某企業のラグビーチームである K チームと S チームとした。K チームと S チームが、チームの低迷から組織変革
により再び上位チームへ戻る過程を比較し、共通の変革過程が存在するかどうかを検討した。「結果」両チームとも、監
督による選手への働きかけとして、①現状への危機意識を持たせる、②チームが向かうべきビジョンを明確にする、③共
通のビジョンに向けて選手の自主性を確立させる、②短期的な成果により変革の正しさを印象付ける、⑤変革を継続し最
終的な目標を達成する、という 5 つの共通した過程が存在した。「結論」ラグビーチームの変革には 5 つの共通した過程
が存在することを明らかにした。その中でも、“ 選手の自主性を確立させる ” という段階が、変革にとって重要な過程で
あると考えられる。
06 体育経営管理
GB32[センターB]
8 月 27 日
16:20
経 27 − 009
地域におけるレスリング U-12 世代の競技環境に関する研究
○河野 隆志(
(公財)日本レスリング協会 2020 ターゲットエイジ育成・強化プロジェクト)
清水 聖志人(
(公財)日本レスリング協会 2020 ターゲットエイジ育成・強化プロジェクト)
中央競技団体(以下、NF)が競技者育成事業を推進する上で、地域における各世代の競技環境を把握することが肝要
である。本研究は、レスリング競技における U-12 世代の競技環境の把握と課題抽出を目的として、地域指導者 5 名を対
哲
史
社
象にクラブ運営面、競技環境面等の現状について半構造化インタビュー調査を実施した。その結果、レスリング競技を通
した人材育成を目的として、週 2 回から 3 回の頻度で 2 時間のトレーニングを行っているクラブが多く、課題としては、
コーチの育成、活動場所の確保、NF から地域への情報伝達不足等が挙げられた。なお、各コーチとも仕事、家庭、プラ
イベートを調整して無報酬にてコーチングを行っており、過度な負担を強いられている現状が示唆された。また、中学校
にレスリング部が存在しないため、小学生から中学生へ進学する際に競技を継続することが困難となるケースが多いこと
も明らかとなった。一方、オリンピックにおけるメダル獲得やメダリストの地域訪問により、子供たちの目標設定や競技
参加に正の影響を与えている現状も抽出された。NF が競技者育成の設えを構築するうえで、地域におけるこれらの課題
解決が急務であることが考えられた。
GB32[センターB]
8 月 27 日
16:40
心
生
バ
経 27 − 010
各国の国際競技力推定のための“メダルポテンシャルアスリート”の有用性
ロンドン・ソチオリンピック大会の事例より
白井 克佳(日本スポーツ振興センター 情報・国際部)
○高橋 良輔(日本スポーツ振興センター 情報・国際部)
東海林 和哉(日本スポーツ振興センター 情報・国際部) 久保田 潤(日本スポーツ振興センター 情報・国際部)
阿部 篤志(日本スポーツ振興センター スポーツ開発事業推進部) 和久 貴洋(日本スポーツ振興センター 情報・国際部)
オリンピックにおいてメダル獲得の可能性があるアスリート(メダルポテンシャルアスリート:MPA)を「オリンピッ
経
発
測
ク直近シーズンの世界選手権またはそれと同等の大会において 8 位以内に入った選手/ペア/チーム」と定義し、各国
の MPA の実態とオリンピック本大会での成績の関係から、国際競技力の指標としての MPA の有用性について検討した。
2012 年ロンドン大会における日本の MPA 数は 84 であり、金 7 個含む合計 38 個のメダルを獲得し、金メダルランキン
グでは世界 11 位であった(メダルランキング:世界 6 位)。一方、MPA 数が 34 の 2014 年ソチ大会では、金 1 個含む
合計 7 個のメダルを獲得し、金メダルランキングは世界 17 位であった(メダルランキング:世界 15 位)。日本の MPA
によるメダル獲得成功率は、ロンドン大会よりもソチ大会において低かった。MPA 数とメダル総数の間には高い相関関
係が認められた(ロンドン:r=0.970、ソチ:r=0.917)
。金メダルランキングに対する相関係数はそれぞれ -0.74 及び
-0.77 だった。メダル獲得数の指標として MPA 数の非常に大きな有用性が示唆された。金メダルランキング推定の指標
としても有用性が認められたが、今後更なる指標の開発が求められる。
GB32[センターB]
8 月 28 日
9:00
保
教
人
経 28 − 011
今日的な高齢者の新たな運動者行動の検討
○木戸 直美(上智大学短期大学部)
小山 さなえ(作新学院大学)
方
畑 攻(日本女子体育大学)
水上 雅子(杉野服飾大学)
運動者行動研究は、これまでに多くの報告がなされ、今日における体育・スポーツ事業の発展の礎となったことは明白
ア
介
である。しかしながら、これまでの運動者行動研究の基軸はスポーツ事業にかかわる行動体系がメインであり、その行動
の背景としての運動者の生き方などとの関係は、必ずしも十分ではない。
177
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
近年における我が国では、急速な超高齢社会でありながらも、高齢者を対象とした運動者行動研究は、殆ど報告されて
いないのが現状であり、ましてや運動生活や運動者の生活様式の状況は明らかではない。
本研究では、静岡県A市での一般高齢者に焦点を当て、最も基本的な項目である運動者行動要因に加えて、生活満足・
ライフスタイルを中心に調査・分析を行い、その結果を考察した。本研究の結果では、今日的な高齢者の特徴的な運動者
行動の状況が明らかになるとともに、今後の高齢者の運動者行動研究の新たな可能性を示唆したものと考えられる。
GB32[センターB]
8 月 28 日
9:20
経 28 − 012
運動の教育からみた幼稚園マーケティング
○高橋 裕勝(日本女子体育大学大学院)
八丁 茉莉佳(日本女子体育大学)
畑 攻(日本女子体育大学)
木戸 直美(上智大学短期大学部)
子供の体力低下という言葉を頻繁に耳にする今日にあって、保護者の運動の教育に対する期待や願いは大きいものであ
ろう。幼稚園において、実りある教育の実現と安定した経営の為には、保護者が教育にどのような期待や願いを持ってい
るのかを把握し、それらを実現させる教育が求められる。教育の目標として健康な身体をつくることを重視している幼稚
園は多いが、その目標に対して保護者の期待や願いをどこまで把握し、教育を実践しているかはまだ明らかではない。ま
た、保護者の保育ニーズに関する先行研究はあるが、その中で運動の教育内容・方法に着目した研究はあまりみられない
状況である。
本研究は、幼稚園に在籍する園児の保護者を調査対象として、保護者の幼稚園の選択基準、教育内容に関する期待、運
動の教育内容とその扱いに関する期待を中心に調査・分析した。考察の結果、運動の教育を中心とした幼稚園マーケティ
ングの重要なポイントが示唆された。
GB32[センターB]
8 月 28 日
9:40
経 28 − 013
ストリートダンサーの特性及び行動分析からみた研究の可能性
方
○石川 織江(慶應義塾幼稚舎)
八丁 茉莉佳(日本女子体育大学)
保
近年、ダンス活動は、会社帰りの OL やサラリーマンがスポーツジムでストリートダンスを楽しむ姿が見られたり、プ
教
人
ア
介
178
畑 攻(日本女子体育大学)
小野里 真弓(上武大学)
ロやキッズの育成に特化したスタジオの増加、また平成 24 年度から中学校の保健体育で必修化されるなど、余暇活動と
して楽しまれるだけでなく、文化的・教育的な観点からも注目され、その存在や新たな価値が確立されつつある。ストリー
トダンスは渡米文化ながらも日本において独自の発展を遂げ、今や幅広い層から熱い支持を得ている。先行研究では、首
都圏数か所で活動するストリートダンサーに実地調査を行い、対象者の基本特性や行動特性及び満足度と規定要因を明ら
かにしてきた。
本研究では、
混在するストリートダンサーの状況を整理する為に、主な方法として数量化Ⅲ類を用い、
パター
ン分類を行った。混在しているストリートダンサーの状況を整理し、分析・考察を行った結果、本研究の対象であるスト
リートダンサーは、その客層や活動目的にバラつきがみられるものの、趣向においては単一な集団であるという特徴的な
傾向が示された。また、ストリートダンサーに対する新たなマネジメントの在り方や今後の研究の可能性が示唆された。
06 体育経営管理
GB32[センターB]
8 月 28 日
10:00
経 28 − 014
「個人的な軽運動」実施層の実態と特性の検討
哲
史
○藤井 和彦(白鴎大学)
スポーツ経営学における運動者行動は、3 つの基本的なスポーツ事業との関係からクラブ運動者(C 運動者)
、エリア
運動者(A 運動者)
、プログラム運動者(P 運動者)という視点で捉えられてきた。実際、内閣府の「体力・スポーツに
関する世論調査」等における週 1 回以上の運動実施者や、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」における週 2 回以上の「運
社
動習慣者」等で拾い上げられる人々の現実的な「スポーツとの関わり」の中で、一定の割合はこうした(C、A、P という)
運動の場で成立していることは明らかである。一方で、例えば笹川スポーツ財団の「スポーツライフ・データ」等でも報
告されているように、
「道路」や「公園」
、或いは「自宅」等、スポーツ施設以外の場所で「個人的な軽運動」を行う層の
存在も明らかだ。そして、これらの層の増加が今日のスポーツ実施率の高まりを支えてきたということも容易に推察され
る。本研究は、ある自治体で実施した「市民のスポーツ実践に関する基礎調査」のデータから、「個人的な軽運動」実施
者層の実態や特性を、従来の 3 つの運動者との比較から検討していくことを目的とした。運動者行動を捉える新たな視
点の探索の一歩としたい。
GB32[センターB]
8 月 28 日
10:20
生
バ
経 28 − 015
クラシック・バレエ愛好者のマーケット・セグメンテーション
○小野里 真弓(上武大学)
石川 織江(慶應義塾幼稚舎)
心
畑 攻(日本女子体育大学)
八丁 茉莉佳(日本女子体育大学)
経
発
伝統的なクラシック・バレエは、近年新たなレッスンビジネスとして確立され、注目を集めている。子どもから大人ま
で幅広い年齢層を対象としたプログラムが展開され、単に専門的なバレエ習得を目的とするだけではなく、従来からの伝
統的、文化的な魅力に加えて、美しい身体づくりや自己実現、ストレス解消など、心と体に効果的なトータル・フィット
測
ネスとしても注目されはじめている。特に、大人の女性をターゲットとしたプログラムづくりやサービス開発は、今後の
ダンスレッスンビジネスにおいても重要な課題となるものと考える。本研究は、成人女性を対象としたクラシック・バレ
エレッスンの受講生を対象とし、これまでの運動者行動研究を踏まえ、レッスン受講者の基本特性、ダンス・スポーツ行
動およびライフスタイルに関する項目からなる質問紙を作成し、アンケート調査を実施した。その結果、このユニークな
対象であるクラシック・バレエ愛好者の運動・スポーツ行動が明らかになるとともに、ライフスタイルを軸とした特徴的
なセグメントが抽出された。このような研究の視点は、生涯スポーツ時代におけるスポーツ行動研究の新たな可能性を示
唆するものとなろう。
GB32[センターB]
8 月 28 日
10:40
経 28 − 016
スポーツマーケティングにおける「市場志向」概念の展望と課題
民間スポーツ・フィットネスクラブ組織への適用
○中西 純司(立命館大学産業社会学部)
本研究の目的は、スポーツマーケティング研究分野、特に民間クラブ組織のマーケティング活動における「市場志向」
方
保
教
人
ア
概念の展望と課題について明確にするとともに、そうした市場志向がどのような民間クラブ組織特性によって創られるの
かについて追究することである。そのため、全国の民間クラブ 1,000 ヶ所(無作為抽出)を対象に 2013 年 2 月 12 日~
4 月 30 日にかけて郵送法による質問紙調査を実施し、137、13.7%の有効標本回収数・回収率が得られた。
介
その結果、(1)民間クラブ組織のマーケティングにおける市場志向概念が「市場環境分析・対応」
「顧客インテリジェ
ンス分析」
「顧客対応志向」
「競争相手志向」
「部門間調整」といった 5 次元(20 インディケータ)から構成されるとい
179
哲
史
社
心
うこと、
(2)民間クラブ組織がヒューマンサービス組織としての組織システムを備えているほど、そうした市場志向が高
くなるということ、
(3)市場志向の高い民間クラブ組織ほど、組織成果(主観的業績レベルや顧客満足成長度など)が高
くなるということ、などが明確にされた。
今後、かかる市場志向概念が多くのスポーツ組織において活用されていくことが期待される。
GB32[センターB]
8 月 28 日
11:00
経 28 − 017
スポーツコミッションのあり方に関する一考察
十日町市を事例として
○武田 丈太郎(新潟医療福祉大学)
高橋 義雄(筑波大学)
平成 22 年 8 月に文部科学省が策定したスポーツ立国戦略には、観光庁等と連携してスポーツツーリズムを促進するこ
生
バ
経
とが盛り込まれた。また、平成 23 年 6 月に制定されたスポーツ基本法に基づいて翌年 3 月に策定されたスポーツ基本計
画には、スポーツツーリズムによる地域活性化を目的とする連携組織の設立を推進することが具体的施策展開の一つとし
て盛り込まれた。このように、まちづくりや地域活性化の手段としてスポーツを用いることが期待されている。実際、全
国各地でスポーツコミッション等の連携組織が設立され、地域の資源としてスポーツを活用する動きが活発になっている。
今後、まちづくりや地域活性化を推進していくうえで、スポーツコミッション等の連携組織は重要な役割を果たしていく
と考えられる。
そこで、本研究では、平成 25 年 5 月に設立された十日町市のスポーツコミッションを事例として、文献調査と設立に
関わった対象者へのインタビュー調査を行い、設立経緯、組織体系及び活動内容を把握し、そこから浮かび上がる課題を
考察し、さらに今後のスポーツコミッションのあり方を検討する。
発
測
方
GB32[センターB]
8 月 28 日
11:20
経 28 − 018
バレーボール V プレミアリーグにおける観戦者特性について
北海道芦別市男子大会を対象に
○永谷 稔(北翔大学)
本研究では、バレーボールVプレミアリーグにおける観戦者特性について、北海道芦別市で開催された男子大会を対象
に、バレーボールVプレミアリーグにおける観戦者特性およびホームゲーム以外での地方会場における観戦者特性を明ら
保
教
人
ア
介
かにすることを目的とする。2014 年 3 月 22 日(土)北海道芦別市で開催された男子大会を対象に、来場者全員に質問
紙を配付し、配付時もしくは退場時までに回答および回収した。観客数は 1,160 人、回収数は 331 部であった。観戦者
の基本属性は、40 代 50 代の女性の割合が多く、また 20 代未満の男性が多かった。居住地は札幌市が最も多く、次いで
開催地の芦別市、近郊の旭川市の順で、道外はわずか 3% 程度であった。観戦回数は初めてが最も多く 6 割以上を占め、
次いで 2 回、3 回の順であった。観戦理由は、試合観戦が楽しい、トップ選手らしい見事なプレーをみることが上位に挙
げられ、一方では売店が充実していない、ファンとの交流が少ないが下位に挙げられた。ホームゲームでない地方会場開
催の場合は、試合観戦自体の満足感は得られているため、地元出身の選手との交流などホームゲーム的要素をより盛り込
む必要があると考えられる。
GB32[センターB]
8 月 28 日
11:40
経 28 − 019
施設環境に着目したスタジアムのセグメンテーション研究
スタジアムの観戦満足度と座席位置
○上林 功(早稲田大学大学院スポーツ科学研究科博士後期課程) 間野 義之(早稲田大学スポーツ科学学術院)
スポーツ産業分野における一連の研究がスポーツ施設の環境と心理尺度との関係を示す一方、観客席の位置や仕様とス
180
06 体育経営管理
ポーツ観戦者の心理尺度について論じた研究は少ない。本研究では建築学の知見を活かし、わが国のプロ野球スタジアム
の観客席の位置を物理指標化することで、スポーツ観戦者の満足度と観客席の位置との関係について明らかにする。某
プロ野球球場の来場者を対象として 2950 枚配布 1420 枚を回収した。有効回答 831 枚から座席が同種である内野席の
440 枚を抽出して分析を行なった。観客席全体で満足度と座席座標値によるクラスタ分析を行ない高中低の得点群に分け、
位置と満足度群による命名、重回帰分析を行った。物理指標を説明変数とする満足度の重回帰分析の結果、「一塁側全体:
高得点群(R2=.277***, β =-.527***)
」
、
「一塁側外野寄り:低得点群(R2=.252*, β =.572*)」において物理指標の標準回
哲
史
帰係数が有意となり、
「一塁側全体:高得点群」にて、ホームベースに向けて満足度が上昇する傾向が得られた一方、
「一
塁側外野寄り:低得点群」においては、ホームベースから離れるほど満足度が上昇する傾向が得られた。
GB32[センターB]
8 月 28 日
12:00
経 28 − 020
栃木県におけるプロスポーツクラブのマネジメントに関する研究
4 プロスポーツチームの現状・課題と連携の可能性
○小山 さなえ(作新学院大学)
小野里 真弓(上武大学)
関根 正敏(作新学院大学)
藤井 和彦(白鷗大学)
栃木県は、サッカー(栃木 SC)
、バスケットボール(リンク栃木ブレックス)、アイスホッケー(H.C. 日光アイスバッ
クス)
、自転車ロードレース(宇都宮ブリッツェン)の 4 プロスポーツクラブを有する全国的にも類稀な地方都市である。
しかし、地方のプロスポーツクラブの経営は厳しいのが現状で、本県も例外ではなく、全国的な認知度も低く、各クラブ
のブランド力の向上が課題でもある。そこで作新学院大学が中心となり、人的・物的・知的資源の活発な交流と活用を図
り、地域活性化への貢献とスポーツ振興を目的に、4 プロスポーツクラブと連携協力協定を締結した。そして、産学官連
携による「プロスポーツ振興『栃木モデル』構築に関する研究会」を設立し、今後、新たなスポーツ推進の組織づくりの
可能性について検討することをねらいとした。
本研究では、「栃木モデル」構築の可能性を検討するとともに、4 プロスポーツクラブの現状と共通課題を抽出し、今
社
心
生
バ
経
発
後のマネジメントの方向性を明らかにすることを目的する。その結果、各プロスポーツクラブの経営資源である「ヒト」
「モ
ノ」「カネ」
「情報」の諸課題が明らかとなった。詳細な調査結果は、当日報告する。
GB32[センターB]
8 月 28 日
13:20
経 28 − 021
方
女子体育大学運動部の「もしドラ」度
○八丁 茉莉佳(日本女子体育大学)
畑 攻(日本女子体育大学)
小野里 真弓(上武大学)
高橋 裕勝(日本女子体育大学大学院)
運動部の組織論研究では、リーダーシップ研究やモラール研究といった個別の要因に着目した先行研究はあるものの、
様々な組織に共通し、どのような組織にも該当する基本的な機能に着目した研究は、あまり報告がみられないのが現状で
ある。そこで本研究では、運動部の組織機能の基本的な構造とその実際を中心に分析・考察するものである。
部員の基本特性、満足度および「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」のス
トーリーの中から「人は最大の資産である」
「イノベーション」などの主要な機能を調査項目として設定した。女子体育
大学の伝統的な運動部の 2 部を調査対象とし、それぞれの運動部の組織機能と構造の分析・考察を行った。
その結果、同じ伝統的な運動部であっても、部によって異なる組織機能が浮上するとともに、それぞれの特徴的な現状
が明らかとなった。
測
保
教
人
ア
介
181
哲
史
GB32[センターB]
8 月 28 日
13:40
経 28 − 022
これまでの運動部活動の在り方を問い直す学校経営の事例研究
○関 朋昭(名寄市立大学)
わが国において運動部活動が果たしてきた功績は大きい。運動部活動は子どもたちの体育・スポーツ活動を支え、かつ
社
学校生活を豊かに過ごす上でも大きな役割を果たしてきた。しかし翻ってみると、運動部活動に対する多くの課題も指摘
され続けてきた。その大半は学校経営と深く関わることである。そのため、学校経営という全学的な視点から、改めて学
校体育事業の 1 つである運動部活動を問い直していかなければならないと筆者は考える。私立学校では、ある強化指定
心
生
の運動部活動が、受験生の獲得、ブランディングなど、特色ある学校づくりに貢献していることが多い。しかし、そのた
めの経営資源の投下は計り知れない。一方、今日では公立学校においても、特色ある学校づくりが求められてきている。
それゆえ、教育カリキュラム、特別活動、課外活動などを調和させ、他校と差別化を図ることが求められてこよう。その
ような中、学校長の強いリーダーシップの下、従来型の運動部活動事業を廃止(刷新)した公立学校がある。この特色あ
る稀有な公立学校の事例から、初代学校長の教育理念、経営哲学を考察しつつ、学校体育事業としての運動部活動を問い
直すことが狙いである。
バ
経
発
GB32[センターB]
8 月 28 日
14:00
経 28 − 023
スポーツ集団からスポーツ組織への変容過程に関する研究
大学ダンス部の創部からの一年間に着目して
○吉崎 慈保(新潟医療福祉大学大学院)
西原 康行(新潟医療福祉大学)
保健体育審議会答申において、教育活動である運動部活動は、スポーツ競技力向上の機能を重視しながら、組織活動と
いう特徴を生かして社会性などを育成するという教育効果が求められている。しかし、運動部活動の研究では、リーダー
測
シップの研究や指導者に対する研究はあるが、組織メンバーに焦点をあてた組織形成の過程に関する研究は、十分である
とは言えない。そこで本研究では、筆者自身が創部から携わり所属する本大学のダンス部を対象に、組織メンバーと組織
形成の関係を明らかにすることを目的とした。方法としては、創部初期から携わった元部員や指導者を含めた現組織メン
方
保
教
人
バーへの半構造インタビューと、
活動日誌やミーティング時の書記ノートなどによる資料分析である。なお、インタビュー
においてはコグニティブクロノエスノグラフィーを用い、組織形成要素を抽出し、組織メンバーの意識の変容と相互の関
係性を分析、考察した。その結果、個々に違った意識を持ったメンバーが、悩みや葛藤を繰り返しながら、統一した組織
の方向性を模索していくことが明らかとなった。
GB32[センターB]
8 月 28 日
14:20
経 28 − 024
スポーツ経営学における経営目的研究の課題
○村田 真一(静岡大学)
本研究は、スポーツ経営学における経営目的研究の重要性を前提にした理論的考察である。スポーツ経営現象を説明す
ア
る際の根本原理として、当該スポーツ経営体の経営目的を認識する必要がある。但し、経営目的を説く際の観点として、
次の 3 点を考慮する必要がある。1 点目は、経営目的の概念についてである。経営目標、経営理念らとの関連において概
念整理を試行する。2 点目は、経営目的の理解の仕方についてである。スポーツ経営体の経営目的について、それをその
介
まま「スポーツ経営体としての経営目的」と理解するのか、或いは「スポーツ経営者による経営目的」、または「スポー
ツ生活者のための経営目的」
、と理解するのかについて吟味が必要である。実はこの点が、実践者と研究者の対話不能や、
研究者相互による経営理解の差異に繋がっているものと予想される。3 点目は、経営目的の機能性についてである。これ
まで理念的に重視されながらも経営目的研究のウエイトが低い事情はこの欠落にあると予想される。つまり、経営目的の
182
06 体育経営管理
実効が経営実践の場面で、どのように発揮されているのかが不明瞭であった。この解明には、スポーツ事業との関連性が
重要であると思われる。
GB32[センターB]
8 月 28 日
14:40
経 28 − 025
スポーツ指導者の資格と制度の変遷に関する研究
「社会体育指導者の知識・技能審査事業」に着目して
○馬場 宏輝(国際武道大学)
スポーツ指導者は、スポーツを「支える(育てる)人」の重要な要素の一つである(
「スポーツ基本計画(2012)
」
)
。
保健体育審議会は昭和 47 年の答申において、社会体育の振興を図る上で体育・スポーツ指導者の資質の向上と養成・確
哲
史
社
心
保の重要性を指摘した。その後、同審議会は昭和 61 年に資格認定制度を求める「建議案」をまとめ、昭和 62 年には「社
会体育指導者の知識・技能審査事業(文部大臣認定事業)
」が創設された。この制度は、平成 12 年に「スポーツ指導者
の知識・技能審査事業」と改められたが、同年の行政改革大綱によって平成 17 年度をもっていわゆる「お墨付き」の廃
止が決定した。公的資格付与制度は、
大いに期待されると同時に多くの問題点も指摘された。しかし、お墨付き廃止によっ
てそれらの問題点が検証される機会を失った。
これら一連の国の関与によるスポーツ指導者の資格と制度の変遷が、生涯スポーツ社会の実現やスポーツ指導者と資格
にとってどのような意味があったのか、またお墨付き廃止を契機にスポーツ指導者の資格と制度はどのように変化したの
かを考察する。
GB32[センターB]
8 月 28 日
15:00
生
バ
経
経 28 − 026
じゃれつき遊びプログラムにおける子どもの発達プロセス
発
測
○千葉 洋平(国士舘大学)
近年、対人的トラブルや落ち着きのなさ、ルール違反といった行動特徴を持つ、いわゆる「気になる子ども」の増加が
指摘されている。これは社会性や道徳性の形成が困難になりつつある現在の社会状況を示唆するものであり、学校現場の
みならず地域社会全体でその対策を行うことが求められる。こうした中「じゃれつき遊び」と称される遊びが前頭葉機能
方
を高め、子どもの発達に寄与することが報告されている。しかし、従来までの報告では、じゃれつき遊びを通して子ども
の発達が促進される過程についての実証的な検討はなされていない。それを明らかにすることで、プログラムの在り方に
ついての提言につながることが期待できる。そこで本研究はじゃれつき遊びの特徴や子どもの変化を分析しつつ、その中
で子どもの発達が生じる構造とプロセスを明らかにすることを目的とした。研究協力者は、A 市内にある B 保育園の園児
(69 名)及び保育士(9 名)
、そして K 大学の学生(5 名)及び K 大学大学院の大学院生(3 名)であった。2013 年 11
月の 1 ヵ月間、平日の朝じゃれつき遊びを実施し、その後保育士に非構造化法を用いて面接調査を行った。
GB32[センターB]
8 月 28 日
15:20
教
人
経 28 − 027
女子体育大学生の食とスポーツ行動に関する研究
○水上 雅子(杉野服飾大学)
八丁 茉莉佳(日本女子体育大学)
保
畑 攻(日本女子体育大学)
木戸 直美(上智大学短期大学部)
女子体育大学生を対象に、スポーツとの関わり方の違いが日常のこだわりや気づき等に及ぼす影響について、ウェアや
ア
介
スイーツなど日常の視点から調査・分析を実施し、実態を明らかにしてきた。スポーツ場面に特定せず、ライフスタイル
を多方面から調査することで、女性のスポーツ行動や実態が明らかになると考える。
183
哲
史
社
心
生
バ
経
発
今回はその一歩として、女子体育大生の食生活や食習慣が心身にどのような影響をもたらすのかに着目し、学生生活及
び食とスポーツ行動の関わりの実態をもとに考察することを目的とした。
女子体育大生 160 名にスポーツ活動状況、ライフスタイル、食の特性などの項目を設定したアンケート調査を実施し、
分析・考察の結果、女子体育大生の食の好みや学生生活とスポーツ行動の関係が明らかになり、新たなスポーツ行動研究
の可能性が示唆された。
第1体育館
8 月 28 日
13:00
経 28 − 101
ソチオリンピックに向けたロシアの競技力向上施策に関する研究
国際競技力向上のフレームを用いた分析
○東海林 和哉(日本スポーツ振興センター 情報・国際部) 白井 克佳(日本スポーツ振興センター 情報・国際部)
久保田 潤(日本スポーツ振興センター 情報・国際部)
高橋 良輔(日本スポーツ振興センター 情報・国際部)
阿部 篤志(日本スポーツ振興センター スポーツ開発事業推進部) 久木留 毅(専修大学スポーツ研究所)
和久 貴洋(日本スポーツ振興センター 情報・国際部)
2014 年ソチオリンピックの開催国であるロシアは、金メダル 13 個を含む 33 個のメダルを獲得し、金メダルランキ
ング、総メダルランキングともに 1 位を獲得した。開催国の成功要因を明らかにすることは、2020 年東京オリンピック・
パラリンピックを控えた我が国においても有益である。そこで本研究ではソチオリンピックにおけるロシアの競技力向上
施策を調査し、4 つの国際競技力向上のフレーム(①統一性と拘束力のある強化戦略プラン、②競技力向上の拠点整備(中
核拠点、ハブ拠点)
、③強化費の増加と重点投下、④競技力向上プログラム)を用いて、ロシアの成功要因を分析した。
また、「オリンピック直近シーズンの世界選手権またはそれと同等の大会において 8 位以内に入った選手/ペア/チー
ム」をメダル獲得可能性がある選手(メダルポテンシャルアスリート:MPA)と定義し、MPA 数とそのメダル獲得成功
率を算出、ロシアの特徴を明らかにした。ロシアは、MPA 数が前回大会より 65%増加しており、且つそのメダル獲得成
功率は 32%と今大会において世界で 3 番目に高い値であった。これらのことから、ロシアが好成績を残す準備を整えて
いたことが示された。
測
方
保
教
人
ア
介
184
第1体育館
8 月 28 日
13:00
経 28 − 102
総合大学における保健体育実技運営に関する調査報告
運営方式と授業構成について
○藤本 敏彦(東北大学・高度教養教育・学生支援機構)
大学体育実技のあり方について模索が続いている。本調査は「大学教員が行う学生に必要な体育の授業」の一端を探る
ことを目的とした。9 つの総合大学(学生数 1 学年 2500 名以上)の体育実技の運営組織および授業の形態について調査
した。組織の運営体制は 1. センター方式、2. 研究科分属方式、3. 非常勤講師コーディネイト方式の 3 つに分かれた。授
業内容は 1. 実技のみ、2. 実技と講義、3. 実技と演習の組み合わせの 3 つに分かれた。運営形態としてセンター方式は体
育実技に教官が専属として関わるために諸問題への対応が早いと思われた。一方で分属方式は授業改革を行う際などに教
員の業務過多や人事採用のあり方が懸念される結果となった。コーディネイト方式は非常勤講師の FD 教育を充実しシン
プルな運営がとられていた。総合的に見るとセンター型の運営体制で授業内容は実技と演習の組み合わせにより高度な体
育教育を実施できると思われた。センター方式を持つ一部大学では大学の国際化に着目し大学の教育指針に根ざした授業
も展開されている。この様な授業には専属教員が不可欠である。またコーディネイト方式も専任と非常勤の協力によって
一定の教育水準が維持できると思われた。
06 体育経営管理
第1体育館
8 月 28 日
13:00
経 28 − 103
シンガポールのエリートスポーツ政策
第 1 回ユース・オリンピック・ゲームズとスポーツハブ設立等から見える総合戦略
○久木留 毅(専修大学スポーツ研究所)
白井 克佳(日本スポーツ振興センター情報・国際部)
山下 修平(日本スポーツ振興センター情報・国際部)
本研究では、2010 年第 1 回ユース・オリンピック・ゲームズ(YOG)を招致したシンガポールのエリートスポー
ツ政策に焦点を当て、その変遷と未来に向けた総合的な戦略の内容について『Report of the Committee on Sporting
哲
史
社
Singapore』と『Vision 2030』を基に関係者へのインタビュー調査を実施し、これを明らかにすることを目的とした。調
査の対象は、シンガポールにおけるスポーツ政策の中心的な政府系政府外機関であるシンガポールスポーツカウンシル、
エリートユースアスリート育成機関であるシンガポールスポーツスクール、元 YOG 組織委員会 CEO 等とした。その結果、
シンガポールのエリートスポーツ政策の中長期計画において、YOG、Sport Hub およびメジャーイベント招致等がそれぞ
れ関係性を持ち、エリートスポーツにおける総合的な戦略として機能していることが明らかとなった。
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
185
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
186
00
体育哲学
哲
01
体育史
史
02
体育社会学
社
03
体育心理学
心
04
運動生理学
生
05
バイオメカニクス
バ
06
体育経営管理
経
07
発育発達
発
08
測定評価
測
09
体育方法
方
10
保健
保
11
体育科教育学
教
12
スポーツ人類学
人
13
アダプテッド・スポーツ科学
ア
14
介護福祉・健康づくり
介
187
哲
史
GB21[センターB]
8 月 27 日
10:00
発 27 − 001
幼児期における運動遊び、特に走運動の指導に関する一考察
○眞鍋 隆祐(彰栄保育福祉専門学校)
日本学術会議(2011)の報告では、これまでの様々な調査・研究の結果を踏まえて「すばやい方向転換などの敏捷な
社
身のこなしや状況判断・作戦などの思考判断を要する全身運動は、脳の運動制御機能や知的機能の発達促進に有効である
と考えられる」と述べており、
「遊びや運動(スポーツ)が、『認知的機能の発達促進』に寄与する可能性があること」を
示唆している。すなわち、遊びや運動が認知的な機能の発達促進につながるとするのであれば、幼児期の特に運動遊びの
心
生
指導内容が小学校就学以降もスポーツ活動や体育の教科のみならず、学びの基盤作りをなしているとも考えられる。加え
て、特に保育所と幼稚園では設置目的が異なっていることから、保育所と幼稚園における身体活動やスポーツ活動を比較
した研究等はこれまで多く行われてこなかった。そこで、本研究では幼児期の身体活動や運動遊びの中の、特に鬼あそび
やかけっこ等の走場面に焦点を当てて、今日的な幼児の身体活動をめぐる状況について、私立幼稚園や公立保育園、幼児
教育施設の保育者にインタビュー調査を実施することで明らかにした。報告では、社会的背景や政策との関連の中で詳し
く分析結果を示してみたい。
バ
経
発
GB21[センターB]
8 月 27 日
10:12
発 27 − 002
幼児の自発的な遊びの難易度と運動能力の関連
○佐近 慎平(新潟医療福祉大学)
幼児の主体的な遊びの効果を評価することは難しい。しかし、運動能力への主体的な遊びの影響は認められている。本
研究は主体的な遊びにおいて幼児自身が運動発達を促す課題を自己決定しているという視座から運動能力と両足平行移動
測
課題の高低差の選択傾向の関連を解明する。A 市 B 保育園に通う園児 49 名を対象とし、運動能力測定、保護者へのアンケー
ト調査、両足平行移動課題(高さ、
「易」40㎝、
「日常」80㎝、「非日常」140㎝)を設定し施行した。両群の影響を分散
分析と多重比較を用いて検討した。5 歳児の結果は、全ての項目において「日常」郡の成績が良く、テニスボール投げに
方
保
教
人
いては「日常」郡が「易」郡よりも有意に優れていた。4 歳児は、テニスボール投げを除く項目で「日常」郡の成績が良
く、後方ハイハイ走は「日常」郡が「非日常」郡よりも有意に優れていた。日常の主体的な遊びの中で見かける最大の高
さを選択した幼児の運動能力は高かった。運動能力の高い幼児は、自身の身体能力・運動能力につり合う課題を設定しな
い保育で主体的に選択していることが明らかになった。
GB21[センターB]
8 月 27 日
10:24
発 27 − 003
幼稚園児の足の形状分析
足囲(ワイズ)と足趾の形状
○天野 勝弘(関東学園大学)
西畑 賢治(神戸国際大学)
これまで幼児の足の形状に関する研究は、足裏形状、土踏まずの形成を中心に行われている。本研究では、幼児の適切
ア
な靴選びに資する情報の提供を目的に、中足骨遠位端周りの周径囲、いわゆるワイズを中心とした足のサイズと、5 趾の
配列を測り、幼児の足の特徴を明らかにした。被検者は年長児 58 名、年中児 41 名であった。足の形状は、足長、足幅、
踵幅、土踏まず周りの周径囲、甲の高さ、くるぶし高をノギスおよびビニール製巻き尺で測定した。5 趾の配列は、足趾
介
部分を写真撮影し、それを座標化して評価した。年長組の足長の平均は右 16.6 ± 0.9cm、左 16.6 ± 0.8cm であった。
ワイズの平均は右 17.4 ± 10.2cm、左 17.4 ± 9.8cm であった。これは、JIS 規格の EE(ツーイー)と EEE(スリーイー)
の間に相当していた。左右差は大人よりも小さいと考えられる(未発表データとの比較)。足幅とワイズとの相関は、右
が r=0.887、左が r=0.878 と極めて高く、幅を持ってワイズ(周径囲)を表すことが可能であり、靴選びには主に幅を考
188
07 発育発達
慮すればよく、必ずしも甲の高さは必要ないことが示唆された。
GB21[センターB]
8 月 27 日
10:36
発 27 − 004
幼児期の体力特性は児童期にどの程度トラッキングするのか ?
女児における年長時と小学 6 年時の比較検討
○川崎 未貴(岐阜大学大学院)
春日 晃章(岐阜大学)
哲
史
社
本研究は、女児における年長時と小学 6 年時の体力特性に関するトラッキングの程度を検討することを目的とした。
対象は女児 39 名であり、年長時には 7 種目(立ち幅跳び、体支持持続時間、長座体前屈、25m 走、ソフトボール投げ、
反復横跳び、握力)を、小学 6 年時には 8 種目(立ち幅跳び、体支持持続時間、長座体前屈、50m 走、ソフトボール投げ、
心
反復横跳び、握力、シャトルラン)を行った。これらのデータを基に、全てのテストに関して、年長時は月齢が体力特性
に大きな影響を与えるため、誕生月が 4 月から 9 月と 10 月から 3 月までに区分し、小学 6 年時は学年内でそれぞれの T
スコアを算出し、
代表値とした。また全種目の平均 T スコアを体力総合点とした。分析の結果、年長時と小学 6 年時の走力、
柔軟性、筋力および体力総合点において有意な相関関係が認められ、トラッキングの程度の大きさが示唆された(走力:
r=0.496,柔軟性:r=0.581,筋力:r=0.630,体力総合点:r=0.527)。一方、跳力、投力、筋持久力および敏捷性におい
ては有意な相関関係が認められなかった。以上のことから、走力、柔軟性および筋力は幼児期の体力特性が児童期に大き
く影響を与えていると推察された。
GB21[センターB]
8 月 27 日
10:48
生
バ
経
発 27 − 005
屋外及び屋内体育遊びにおける幼児の運動経験の比較
5 歳児クラスを対象として
○細川 賢司(関西学院大学大学院)
幼児の継続的な身体活動量、運動能力の低下が示される中、保育活動中の運動経験は幼児の運動技能学習にとって重要
発
測
な基盤となっている。最近では専門指導員による体育遊びを行う施設も増加しており、運動能力の向上に有効な体育遊び
プログラムの開発も盛んに行われているが、実際の体育遊び中における幼児の運動経験を詳細に調査した研究は少ない。
そこで本研究は、屋外及び屋内体育遊び中の歩数、動作回数、動作種類数を測定、比較検討することで、体育遊び中にお
方
ける幼児の運動経験の実態を明らかにすることを目的とした。調査協力施設は屋外体育遊びの場面を調査した A 園(5 歳
男子 13 名、女子 12 名)
、屋内体育遊びの場面を調査した B 園(5 歳男子 19 名、女子 19 名)の 2 園であり、1 回あた
り 45 分間の調査を計 8 回行った。調査は園庭全体が撮影できるよう複数のビデオカメラを設置し、得られた動画から、
動作回数及び動作種類数を分析した。また、幼児には歩数計を腰部に装着し、体育遊び中の歩数を記録した。体育遊びは
いずれの園も専門の指導員が行った。今回は屋外体育遊び及び屋内体育遊び中の歩数、動作回数、動作種類数について比
較分析した結果を報告する。
GB21[センターB]
8 月 27 日
11:00
教
人
発 27 − 006
幼児における足指と立位姿勢の安定性について
○田中 瑛(びわこ成蹊スポーツ大学大学院)
保
新宅 幸憲(びわこ成蹊スポーツ大学)
近年、扁平足や浮き指、外反母趾など、足部に問題を有する子どもが増加をしている。その要因として、運動能力の低下、
利便性の高い生活様式、履物の変化があげられる。そこで本研究では、幼児において足指機能が立位姿勢の安定性にどの
ア
介
ような関連性を示しているのかについて分析を行った。対象は、K 幼稚園の年長児 68 名(男児 40 名、女児 28 名、年
齢 5.7 ± 0.4 歳、身長 114.9 ± 5.5㎝、体重 19.9 ± 3.1㎏)であった。足底面の接地面積は、フットルック(KK)製の
189
哲
史
社
心
生
バ
経
発
FootLook を用いて行い、
立位姿勢における重心動揺の測定は、アニマ(KK)製ポータブルグラビコーダ(GS-500)を用い、
開・閉眼において 30 秒間測定した。測定の結果、開眼時における立位姿勢の単位面積軌跡長と右第 4 足指面積との両者
間に有意な相関(r=0.339、p<0.01)が認められた。さらに、開眼時における立位姿勢の単位面積軌跡長と右第 5 足指面
積との両者間にも有意な相関(r=0.274、p<0.05)が認められた。これらのことは、立位姿勢における右第 4、5 足指面
積は立位姿勢における単位面積、すなわち微調整能力の安定要因を示唆したものと推察される。
GB21[センターB]
8 月 27 日
11:12
発 27 − 007
低線量放射線環境下における児童の運動・生活実態からみた今後の課題
○中村 和彦(山梨大学)
篠原 俊明(東海学院大学短期大学部)
岸本 あすか(山梨大学大学院)
長野 康平(山梨大学)
丹羽 昭由(日本レクリエーション協会)
小林 翠(山梨大学大学院)
菊池 信太郎(医療法人仁寿会菊池記念こども保健医学研究所)
本研究の目的は、低線量放射線環境下にある福島県郡山市児童の運動・生活実態を把握し、それらの結果をもとに、発
育発達を保障していくための課題を明らかにした上で、具体的な取組を提案し、実践の効果を検証していくことを目ざ
している。対象は男子 8,529 名、女子 8,419 名の計 16,948 名であった。調査内容は、運動・スポーツの実施頻度、運
動・スポーツの実施時間、朝食の摂取状況、睡眠時間、テレビ等視聴時間、ゲーム実施時間、座位時間などであった。本
調査結果から、学校体育の時間を除く一週間の総運動時間が 60 分未満の郡山市の第 5 学年児童は男子で 11.3%、女子で
27.2% 存在し、全国の割合と比べ男子で 2.2%、女子で 6.2%上回っていた。またこれらの児童のうち、男子の 39.9%、
女子の 45.3% は、一週間の運動時間が 0 分であり、全く運動しない児童が多く存在していた。現在、課題をもとにした
具体的な取組として、①保育士・幼稚園教諭・小学校教諭等を対象とした運動遊びの実践講習会の継続的な開催、②発育
発達に関する情報の共有と家庭でも実施可能な運動遊びを紹介する保護者向け情報紙「PEP UP 通信」の作成・配布など
を実施している。
測
方
保
教
人
ア
GB21[センターB]
8 月 27 日
11:24
発 27 − 008
小学校の始業前における児童の身体活動の特徴
○高橋 亮平(早稲田大学大学院)
岡 浩一朗(早稲田大学)
効果的な身体活動推進を目的とし児童が生活する様々な場面の身体活動の特徴について調査されている。しかし、始業
前の時間帯における調査はほとんど行われていない。本研究の目的は、小学校の始業前における児童の身体活動状況及び
始業前の身体活動状況の違いによるその他の時間帯の身体活動の差異を明らかにすることである。対象は東京都の小学 5
年生 237 名(女子 99 名)とした。加速度計(スズケン社製ライフコーダ)を用い始業前、業間休み、昼休み、一日の
身体活動量を座位行動、低強度、中等度、高強度、中等度以上身体活動の強度毎に抽出した。始業前における中等度以上
身体活動実施割合の中央値(28.0%、25% tile―75% tile:16.3-39.3)で始業前の低活動群と高活動群に二分し、その
他の時間毎の身体活動を比較するため性を共変量とした共分散分析を行った。結果として、低活動群より高活動群の方が
業間休み(低活動群 18.8%、高活動群 27.4%)
、昼休み(16.6%、22.8%)
、一日(8.4%、9.9%)において中等度以上
身体活動実施割合が有意に高いことが明らかとなった。本研究よりその他の時間の身体活動を推進するために始業前の身
体活動に着目する必要性が示唆された。
介
190
石井 香織(早稲田大学)
柴田 愛(筑波大学)
07 発育発達
GB21[センターB]
8 月 27 日
11:36
発 27 − 009
みんなが楽しめるビーチボールを用いたサッカー遊び
哲
史
○板谷 厚(岐阜聖徳学園大学短期大学部)
【目的】幼児のサッカー遊びでは、サッカー経験者や走力に優れる子どもばかりがボールに触り、他の子どもが楽しめな
い場合がある。そこで本研究では、サッカーボールよりも蹴りやすく転がりにくいビーチボールを用いてサッカー遊びを
展開し、ボールに触れる機会の均等化を試みた。
【方法】T 大学附属幼稚園の年長児 23 名を対象とした。サッカーボー
社
ルとビーチボールを用いて、ボールを自由に蹴る活動をそれぞれ 3 分間行った。全ての幼児が 1 対 1 で競り合えるよう
にボールは 12 個とした。録画した動画から各幼児のボールタッチ回数を数えた。サッカーボールでのボールタッチ数に
よって幼児を 3 群(上位、中位、下位)に分け、2 ボール条件× 3 群の反復測定分散分析を実施した。【結果】ボールタッ
チ数に有意な交互作用が認められた。ビーチボールによって中位と下位のボールタッチ数が増加した。さらに、サッカー
ボールで 3 群間すべてに認められた有意差は、ビーチボールでは上位と下位間にのみ認められた。
【結論】体力差や技能
差によるボールに触れる機会の不均等は、ビーチボールを用いることで是正され、みんなでサッカー遊びを楽しめるよう
になることが示唆された。
GB21[センターB]
8 月 27 日
11:48
生
バ
発 27 − 010
保護者のスポーツ関心度が子どものスポーツ参加および運動能力に及ぼす影響
○林 大喜(岐阜大学大学院)
春日 晃章(岐阜大学)
心
中野 貴博(名古屋学院大学)
経
発
本研究は小学生を対象として、保護者のスポーツに対する関心度と子ども達のスポーツ参加状況および運動能力特性と
の関係性を検討することを目的とした。愛知県内の 2 つの小学校に通学する 2 年生 144 名と 5 年生 136 名の合計 280 名
(男
児:135 名、女児:145 名)を対象とし、児童およびその保護者にアンケート調査を実施した。また、3 種目の運動能
測
力テスト(50m 走、立ち幅とび、ソフトボール投げ)の結果とスポーツ関心度の関係を、カテゴリカル項目においては
クロス集計およびカイ二乗検定、連続量で示される項目に関しては t 検定を用いて分析した。解析の結果、保護者のスポー
ツ関心度が高いほど、スポーツに興味を持つ子どもが多く、また、運動を頻繁に行っている保護者の子どもほど、運動に
参加する子どもが多いことが確認された。運動能力テストにおける 3 項目の測定結果とスポーツ関心度の関係では、
スポー
ツの関心度が高い子どもほど能力が優れる傾向にあることが確認された。保護者のスポーツ関心度は子どものスポーツ参
加に強い影響を及ぼし、結果的に運動能力の向上にも影響することが示唆された。
GB21[センターB]
8 月 27 日
13:00
保
教
発 27 − 011
児童のなわ跳び動作の習得に関する縦断的研究
○篠原 俊明(東海学院大学短期大学部)
小林 翠(山梨大学大学院)
鄭 可馨(山梨大学大学院)
丹羽 昭由(日本レクリエーション協会)
方
長野 康平(山梨大学)
岸本 あすか(山梨大学大学院)
武長 理栄(笹川スポーツ財団)
中村 和彦(山梨大学)
演者らは、これまでに小学校低・中学年の「体つくり運動」に新設された「多様な動きをつくる運動(遊び)
」におい
て例示されている「なわ跳び動作」の動作様式を捉える観察的な評価方法を開発してきた。本研究は、観察的な評価方法
人
ア
介
を用いて児童のなわ跳び動作の動作様式の変容を縦断的なデータをもとに把握し、児童のなわ跳び動作の発達過程を明
らかにするとともに、その習得状況を捉えることを目的とした。調査対象は、2011 年に第 1 学年であり、その後 2 年間
191
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
継続して同一小学校に在籍し、調査データに欠損のない児童 55 名(男子 25 名、30 名)であった。児童のなわ跳び動作
を側方よりデジタルビデオカメラで撮影し、動作様式をモニター画面上で観察的な評価方法を用いて、未熟なパターン 1
から大人の動作様式に近いパターン 5 までの 5 つの動作発達段階に分類した。またそれぞれ 1 点から 5 点までの動作得
点を与え、数量化し検討した。その結果、未熟な動作様式であるパターン 1、2 は学年進行とともに出現する割合が減少し、
動作得点は経年的に増加していくことが認められ、児童のなわ跳び動作の動作様式は縦断的に発達していくことが明らか
となった。
GB21[センターB]
8 月 27 日
13:12
発 27 − 012
被災地宮城県女川町の児童における 3 年間の身体活動変化
○岡崎 勘造(東北学院大学)
坂本 譲(東北工業大学)
本研究では、被災地女川町の児童における運動・スポーツ活動と座位時間について、震災半年から 3 年後までの連続
的横断データを分析した。対象者は、女川町の小学校に通う小学 4 年から 6 年生の児童であり、震災半年後 205 名、1
年後 205 名、
2 年後 179 名、
3 年後 162 名であった。運動・スポーツ活動は Health Behavior in Schoolchildren survey(HBSC)
を用いた。1 日あたりの座位時間(分)は平休日を各分析した。HBSC による不活動な児童の割合は、半年後 31%、1 年
後 45%、2 年後 43%、3 年後 43% であり、半年後のみ活動、不活動な児童の割合に差がみられた。座位時間の変化は、
平日では、半年後 510 ± 239、1 年後 502 ± 258、2 年後 433 ± 254、3 年後 417 ± 270 と分散分析による有意差が
みられた(F=4.8、df=3、P<0.05)
。一方、休日は、半年後 508 ± 243、1 年後 515 ± 258、2 年後 514 ± 260、3 年
後 509 ± 231 と有意差はみられなかった。震災 1 年から 3 年後の運動・スポーツ活動の割合に変化はみられず、平日の
座位時間においては改善がみられた。
GB21[センターB]
8 月 27 日
13:24
発 27 − 013
低線量放射線環境下における児童の体力・運動能力の現状
○長野 康平(山梨大学)
岸本 あすか(山梨大学大学院)
小林 翠(山梨大学大学院)
丹羽 昭由(日本レクリエーション協会)
篠原 俊明(東海学院大学短期大学部)
菊池 信太郎(医療法人仁寿会菊池記念こども保健医学研究所)
中村 和彦(山梨大学)
東日本大震災の被災地においては、これまでに屋外活動制限や仮設住居生活の長期化による子どもの肥満の増加や体
力・運動能力の低下が懸念されてきた。本研究では、低線量放射線環境下にある福島県郡山市の全児童(平成 24 年度
18,010 名、平成 25 年度:17,620 名)を対象に、体格および体力・運動能力の実態を明らかにするとともに、2 年間の
縦断的変化を分析した。体格として身長および体重を測定し、体力・運動能力として文部科学省新体力テスト 8 項目(握
力・上体起こし・長座体前屈・反復横とび・20m シャトルラン・50m 走・立ち幅とび・ソフトボール投げ)を測定した。
全国平均と郡山市を比較したところ、身長では男子には有意差は認められず、女子では 1・4 年生を除いて有意差は認め
られなかったが、体重では男子女子ともに郡山市が有意に高い値を示した。また体力・運動能力については、握力および
反復横とびを除く 8 項目において多くの学年で郡山市が有意に低い値を示した。一方、平成 24 年度と比較すると 20m シャ
トルランをはじめ複数の項目において平成 25 年度が有意に高い値を示し、郡山市児童の体力・運動能力が向上傾向にあ
ることが示唆された。
介
192
鈴木 宏哉(東北学院大学)
07 発育発達
GB21[センターB]
8 月 27 日
13:36
発 27 − 014
東日本大震災後の子どもたちの体力・運動能力低下の要因について、未就学児の日常生活パターンからの考察
未就学児における一日の歩数と、日常生活パターンに関するアンケート結果から
○菊池 信太郎(医療法人仁寿会 菊池記念こども保健医学研究所) 岸本 あすか(山梨大学大学院)
長野 康平(山梨大学)
中村 和彦(山梨大学)
【はじめに】福島県の子どもたちは屋外での活動制限が長期にわたった。教育保育機関等では運動遊びの時間の確保、運
動実施プログラムの工夫などを行ってきた。今回歩数計を用いて未就学児の運動量を推測し、体力・運動能力向上のため
哲
史
社
の今後の対策を検討する。
【方法】平成 25 年 11 月~平成 26 年 3 月に郡山市内の保育園児、幼稚園児それぞれ約 100 ~ 150 人を対象に実施。ス
ズケン社製ライフコーダー GS を腰部に装着し、1)登園時、2)降園時、3)就寝前のそれぞれの歩数を記録。2 週間の
歩数測定を行い、後半の 1 週分の歩数を測定値とした。
【結果】4 歳~ 6 歳のそれぞれ男女別に平均値を算出。1 日歩数:7,871(保育園 5 歳女児)~ 14,119(6 歳男児)歩。
園内での歩数:5,310(保育園 5 歳女児)~ 10,673(幼稚園 6 歳男児)歩。
【考察】1 日の歩数は 1 万歩前後であり、男児が女児に比して多かった。園内での歩数が、園外(降園後)に比して圧倒
的に多く、降園後にはあまり活動していないことが推測される。別途実施したアンケート結果からも同様に推測される。
未就学児では、送迎がバスや自家用車であり、園外での歩数を確保するための運動遊びが実施できる公園等の整備が不可
欠である。
GB21[センターB]
8 月 27 日
13:48
生
バ
経
発 27 − 015
北海道の中学生における下肢筋力・疾走能力の発達
冬季間の影響に着目して
○松野 修造(北海道教育大学大学院)
心
志手 典之(北海道教育大学)
北海道は積雪寒冷地域であるため、その影響により、成長に伴う向上が認められない体力・運動能力があることが明ら
発
測
かとなっている。先行研究では、文部科学省が実施する新体力テストの結果による検討が主である。そこで本研究では、
より詳細な体力要素に着目し、中学生の体力に関する積雪寒冷地域という環境が与える影響について検討することを目的
とした。対象は北海道岩見沢市の中学校 3 年生 110 名(男 56 名、女 54 名)とした。12 月と 4 月に体力測定(身長、
体重、
30m 走、膝伸展・屈曲筋力、最大無酸素パワー、BSSC 運動によるパワー発揮)を実施し、各測定項目における季節間の
比較を対応のある t 検定を用いて検討した。男子では、身長・体重が有意に増加したものの、30m 走・膝屈曲筋力が有
意な低下を示した。女子では、身長・体重が有意に増加したものの、30m 走・膝伸展および屈曲筋力・BSSC 運動の遂行
能力は有意な低下を示した。男女とも、その他の項目では季節間の変化は認められなかった。以上のことから、冬季間に
身長・体重など体格の向上が認められるにも関わらず、30m 走や脚筋力といった体力要素が身体の成長に逆行して推移
することが明らかとなった。
方
保
教
人
ア
介
193
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
GB21[センターB]
8 月 27 日
14:00
介
中高校生の生活習慣及び健康状態の縦断的調査
○長島 健二朗(東海大学体育学研究科)
奥薗 雄基(東海大学体育学研究科)
小澤 治夫(東海大学体育学部)
白川 敦(東海大学体育学研究科)
阪田 雅志(東海大学体育学研究科)
岡崎 勝博(東海大学体育学部)
加藤 勇之助(大阪体育大学)
徐 広孝(筑波大学附属駒場中・高等学校)
小林 博隆(大阪体育大学)
近年、スマートフォンやゲーム機などの電子機器の発達、生活・家庭環境の変化により、子どもの運動不足などの生活
習慣に乱れが生じている。特に小、中、高校と学年進行により携帯電話使用時間の増加、就寝時刻の遅延や朝食喫食率の
低下が小澤らの報告により明らかにされている。そして、このような生活習慣の乱れは貧血をはじめとする様々な体調の
悪化につながると考えられている。また、生活習慣は学校間で大きな差が見られ、それが生徒の健康状態の差としても顕
在化している。そこで本研究は、好ましい生活習慣の学校に着目し、過去の調査において好ましい生活習慣を有していた
T 大学附属 K 中・高等学校に、質問紙による生活習慣調査とヘモグロビン調査を 2 年間継続し、生活習慣と健康状態の
関連性について明らかにすることを目的とした。対象は、T 大学附属 K 中学校 364 名・高校 449 名。今回の研究において、
特に中学生では朝食喫食率が 94.2%、高校生は 93.8% と高く、適切な生活習慣が良好な健康状態に好影響を及ぼしてい
ることが明らかにされた。この好循環が生徒の学校生活を充実させ、高い学力を維持することにも貢献していることが推
察された。
GB21[センターB]
8 月 27 日
14:12
発 27 − 017
東京オリンピック 1964 出場選手の生まれ月
○勝亦 陽一(東京農業大学)
杉崎 範英(千葉大学)
森丘 保典(日本体育協会)
広瀬 統一(早稲田大学)
池田 達昭(国立スポーツ科学センター)
川原 貴(国立スポーツ科学センター)
本研究は、1964 年に開催された東京オリンピックに出場した一流競技者の生まれ月分布を競技種目別および力発揮特
性別に明らかにすることを目的とした。対象は 1964 年に開催された東京オリンピックに出場した選手および補欠選手
380 名(男性 314 名、女性 66 名、21 種目)であった。選手の生まれ月をアンケートにより調査し、月別の人数を競技
種目別および力発揮特性別(瞬発系、中間系、持久系)に算出した。年度の切り替え月である 4 月を基準とし、4 ~ 3
月まで 1 ~ 12 の番号を振り、それと各月の人数との関係をスピアマンの順位相関係数により算出した。本研究の結果、
力発揮特性に関わらず、有意な正の相関関係が認められた。一方、男性の陸上(瞬発系および持久系)において有意な負
の相関関係が認められた。以上の結果は 2000 年以降の日本人一流競技者の生まれ月分布とは異なる。その原因として日
本人全体の生まれ月分布および競技スポーツを行う環境の相違が影響していることが推察された。
人
ア
発 27 − 016
GB21[センターB]
8 月 27 日
14:24
発 27 − 018
人種の違いによる膝アライメントの特徴について
日本および豪州の大学生を対象として
○曽我部 晋哉(甲南大学)
野坂 和則(イーデスコーワン大学)
岩崎 晋(カンザス大学)
変形性膝関節症(OA)の危険因子に膝アライメントの異常が挙げられる。本研究では、日本と豪州の大学生を対象
に膝アライメントを測定し、人種間でその特徴を明らかにすることを目的とした。対象は、日本の大学生 236 名(男子
194
07 発育発達
116 名 18.2 ± 0.6 歳:、女子 120 名:18.2 ± 0.5 歳)、豪州の大学生 215 名(男子 128 名:21.4 ± 3.2 歳、女子 87 名:
19.9 ± 2.1 歳)とした。膝アライメントの測定は、被験者にプラットフォーム上で静止立位を保持させ、その時の両膝
内顆間もしくは両踵骨間の距離を、ノギスを用いて測定した。得られた数値から膝アライメントインデックス(KAI:膝
内顆間距離-踵骨間の距離)を算出し、性別ごとに人種間で比較した。人種間の KAI を比較すると、男子(日本 :2.45 ±
3.03 cm、豪州 :0.23 ± 3.12 cm)
、女子(日本 :0.95 ± 2.92 cm、豪州 :-2.03 ± 3.66 cm)ともに、日本人が高値を示し
た(P<0.05)。日本人の膝アライメントが内反傾向を示すことは、日本が豪州よりも内側型膝 OA 罹患者の割合が多いこ
哲
史
とと合致する。膝アライメントが決定する理由については、現在のところ明らかにされていないが、今後その決定要因に
社
ついて詳細に検討する必要がある。
GB21[センターB]
8 月 27 日
14:36
発 27 − 019
心
若年および中年女性の身体活動量
生
○水村 真由美(お茶の水女子大学大学院)
本研究では、若年および中年女性の日常身体活動量を測定し、比較・検討することにより、若年から中年に至る女性の
身体活動量の加齢変化を検討することを目的とした。研究対象は、健常な女子大学生 40 名(19.25 ± 1.24 歳、平均±
SD)と健常な中年女性 39 名(46.59 ± 5.38 歳)であった。対象は、活動量計(オムロン社製、HJA-350IT)を右ウエ
エスト部に 7 日間装着した。装着時間は、睡眠時、入浴などの入水時を除く、起床から就寝までとした。活動量計とと
もに 1 週間の装着記録用紙を配布し、装着時間と主な活動内容について調査をするとともに、運動習慣、過去の運動経験、
活動量に対する自己評価、通勤または通学時間を問う質問紙調査を合わせて行った。その結果、女子大学生の総身体活動
量は、中年女性よりも有意に高くなり、特に強度の高い活動時間が有意に長くなることが示された。2 群の比較から、若
年期から中年期において、加齢によって総身体活動量が減少すること、それは高強度の活動に顕著であること、1 日でみ
ると正午以降の時間帯に活動量の差が生じる可能性が明らかとなった。
第1体育館
8 月 28 日
10:00
幼児における一日の活動リズムの変化が総身体活動量に及ぼす影響
春日 晃章(岐阜大学)
[目的]幼児にとって日々の規則正しい生活リズムを獲得することは極めて重要である。あわせて近年では体力低下改善
のために身体活動量の獲得も重要視されている。我々はこれまでに身体活動量と活動リズムに関係があることを示した。
しかしながら、活動リズムの変化が身体活動量を増加させるかどうかを検証するにはいたっていない。そこで、本研究で
は縦断的データを用いて、
活動パターンの変化が身体活動量を増加させているかどうかを検討することを目的とした。
[方
法]縦断的に身体活動量データを得ることができた幼児 174 名を対象とした。ほぼ同時期の平日 5 日間を対象に 2 年間
分の身体活動量データを得た。これまでの成果に基づき、活動量の多い活動パターン(クラスター 1)と少ない活動パター
ン(クラスター 2)に対象者の 2 年間分のデータを分類した。分類には初年度データをクラスター分析した結果より算出
した判別関数を用いた。所属クラスターの変化による身体活動量の変化を分析検討した。[結果]所属クラスターの変化
と一日の身体活動量の変化には有意な関係が確認され、活動リズムを変えることが身体活動量を増加させることに有効で
あることが示唆された。
経
発
測
発 28 − 101
○中野 貴博(名古屋学院大学)
バ
方
保
教
人
ア
介
195
哲
史
社
第1体育館
8 月 28 日
10:00
発 28 − 102
幼児期男児の跳躍動作における身体関節および身体重心の動きの変容
○濱口 幸亮(岐阜大学大学院)
香村 恵介(京都文教短期大学)
春日 晃章(岐阜大学)
本研究の目的は 3 歳から 5 歳までの跳躍動作を縦断的に解析し、身体関節および身体重心の動きの変容を明らかにす
ることであった。対象者は 3 歳時に立ち幅跳びテストをした男児 105 名の中から跳躍距離の上位 5 名(上位群)と下位
5 名(下位群)の計 10 名とした。撮影には EX-F1(シャッタースピード 1/1000 秒、毎秒 300 コマ)を使用した。分析
心
生
バ
経
発
測
には Frame-DIAS4(DKH 社製)を用い、動作開始から離地までを解析した。各年齢間における身体関節および身体重心
の関連の程度を検討するため、スピアマンの順位相関係数を用いた。解析の結果、3 歳時と 4 歳時に股関節の最大伸展角
速度、身体重心の水平速度および初速度に、4 歳時と 5 歳時に膝関節の最大屈曲角度に、3 歳時と 5 歳時に身体重心の初
速度にそれぞれ有意に高い関連が認められた。群別に平均値をみると、上位群は年齢が増すに従い膝関節最大屈曲角度が
増加傾向にあったが(3 歳時 80.7 ± 6.8 deg、4 歳時 88.9 ± 8.0 deg、5 歳時 94.4 ± 9.7 deg)、下位群に同様の傾向は
みられなかった(3 歳時 98.9 ± 13.1 deg、4 歳時 104.9 ± 32.3 deg、5 歳時 94.3 ± 12.6 deg)。つまり上位群は 3 歳
から 5 歳にかけて膝の沈み込みを浅くしていた。
第1体育館
8 月 28 日
10:00
発 28 − 103
幼児期における投動作の指導効果には性差が生じるのか ?
第一報 : 遠投距離および正確性に関して
○春日 晃章(岐阜大学)
杉原 かおり(岐阜大学大学院)
中野 貴博(名古屋学院大学)
香村 恵介(京都文教短期大学)
本プロジェクトは、幼児の投能力、捕球能力を短期間(1 ヶ月間)に向上させることを主眼に作成した指導プログラム
を実施し、その効果を多角的に検証することを目的としたものである。対象の年中 4 歳児(男児 14 名、女児 16 名)に
対しては 1 回 30 分の指導を計 8 回(2 回/週)実施した。本報では、遠投距離と正確性(高さ 1m ×直径 1m の的に
方
保
教
人
ア
介
3m 離れたところから 10 投した時の当たった数)に対する指導効果の性差について検討した。二要因(テスト間×性)
分散分析の結果、遠投距離と正確性それぞれにおいて、テスト間に有意な主効果が認められ(P<0.01)、いずれも Pretest に比べて Post-test 時の方が非常に優れた値を示したことから本プロジェクトにおける指導プログラムの有効性が確
認された。一方で、遠投距離と正確性のいずれにおいても有意な性差は認められなかった。正確性における指導効果は男
児の方がやや大きい傾向(男児:2.29 回、女児:1.25 回)を示したが、遠投距離ではほぼ同様の伸び量(男児:0.93m、
女児:0.94m)を示した。以上の結果から、幼児期の投動作指導は、男女それぞれに遠投距離と正確性の側面から有益な
効果をもたらすことが明らかとなった。
第1体育館
8 月 28 日
10:00
発 28 − 104
幼児期における投動作の指導効果には性差が生じるのか ?
第二報 : 捕球能力およびボール遊びに対する嗜好に関して
○杉原 かおり(岐阜大学大学院)
中野 貴博(名古屋学院大学)
春日 晃章(岐阜大学)
香村 恵介(京都文教短期大学)
本研究は、幼児期における投能力・捕球能力の向上を目指した指導プログラムの捕球能力およびボール遊びに対する嗜
好の指導効果の性差に関して検証することを目的とした。指導プログラム内容および対象は第一報と同様であった。指導
前と指導後に捕球テスト(10 回中キャッチできた回数)および嗜好の調査を行った。嗜好においては、遊び内容 7 つ(乗
り物、遊具、ボール遊び、積木、絵本、砂遊び、絵かき)を絵で表したカードを利用し、検者との対面形式で好きな遊び
196
07 発育発達
順に選択させ、得点化(1 位:7 点〜 7 位:1 点)した。二要因(テスト間×性)分散分析の結果、捕球および嗜好にお
いて、テスト間に有意な主効果が認められた(P < 0.01)。いずれも Pre-test に比べて Post-test の方が優れた値を示した。
捕球における指導効果に有意な性差は認められず、指導効果が男女同様にあったことが窺われた。また、指導後の嗜好に
おいて男児の方が高い値(男児:5.7 点、女児:4.1 点)を示した。以上の結果から、本プログラムにおける指導効果は、
捕球おいて性差はなく、ボール遊びに対する嗜好においては男児の方がより指導効果があったことが明らかとなった。
第1体育館
8 月 28 日
10:00
発 28 − 105
幼児期における女児の走動作の縦断的変化
年少時から年長時までの追跡調査にもとづいて
○山本 紗綾(岐阜大学大学院)
香村 恵介(京都文教短期大学)
春日 晃章(岐阜大学)
本研究は、女児の幼児期における疾走能力を 3 年にわたり縦断的に分析し、キネマティクス的な変化を検討すること
を目的とした。対象は年少時に 113 名の中から 25m 走のタイムに従って抽出した、疾走能力の高い群(以下、上位群)
各 5 名および疾走能力の低い群(以下、下位群)各 5 名の合計 10 名とし、同じ対象者を 1 年後、2 年後に再び撮影した。
撮影にはハイスピードモードを兼ね備えた 4 台のカメラ(CASIO EX-F1)を使用した。Frame-DIAS Ⅳ(DKH 社製)を使
用し、
左足離地から次の左足離地までの 1 サイクルを毎秒 100 コマでデジタイズし、DLT 法により三次元座標を算出した。
分析にはスピアマンの順位相関係数の検定を適用した。また、担任教諭に対象児の遊び習慣に関するアンケート調査を毎
回行った。分析の結果、ストライドは年少期と年中期及び年中期と年長期の間において高い相関関係がみられた。ピッチ
は年少期と年長期及び年中期と年長期において高い相関関係がみられた。また、アンケート結果から日常生活の遊び習慣
の違いが年少時期から窺えた。上位群は下位群と比較すると、頻繁に運動遊びを行っており、これが走動作の獲得に影響
を与えている一要因であると推察された。
第1体育館
8 月 28 日
10:00
発 28 − 106
未就園 2 歳児の身体活動量に関連する要因の検討
保護者の意識および行動に着目して
○香村 恵介(京都文教短期大学)
春日 晃章(岐阜大学)
3 歳頃までの身体活動量(PA)が多い幼児は高体力であることが報告されている(文部科学省、2011)
。そのため、2
歳時から十分な PA を確保することが活動的な子どもを育むために重要である。本研究は保護者の意識・行動と子どもの
PA との関連を検討することを目的とした。対象は週 1 回幼稚園の未就園児クラスに登園している 29 名(2.96 ± 0.23
歳)であった。ライフコーダ GS を 2 週間子どもの腰部に装着させ、平日および土日の歩数を計測した。また、保護者の
意識・行動に関するアンケート調査を行った。結果、父親が子どもと運動遊びをすることが好きなほど子どもの土日の歩
数が多く(r=.388)、移動時に保護者が子どもを抱く頻度が高いほど子どもの土日の歩数が少なかった(r=-.484)
。また、
子どもの日焼けを気にする保護者の子ども(平均 10361 ± 2623 歩)は、気にしない保護者の子ども(12713 ± 2273
歩)に比べて平日の歩数が有意に少なかった。さらに、保護者の思う子どもの理想の歩数と実際の子どもの歩数には平日
(r=.429)
、土日(r=.498)共に有意な関連が認められた。
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
197
哲
史
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8 月 28 日
10:00
発 28 − 107
幼児の身のこなし経年変化の特徴
東北地方 S 市における事例報告
○角南 俊介(東洋大学スポーツ健康科学領域)
【序論】本研究の目的は、東北地方S市における幼児の運動動作を経年的に評価し、その変化から運動動作変化の特徴を
社
明らかにすることである。
【方法】
データ対象は市内 26 園の幼児 476 名。デジタルビデオカメラを用いて、1.前転動作、
2.
跳躍動作、3.投動作を側方から撮影した。取得した映像データを各動作について局面分解をして、動作評価を得点化し
た。その後、
動作評価得点について 3 年間に亘る得点変化を比較して、身のこなしの経年的変化を検証した。
【結果と考察】
心
分析の結果、以下のような特徴がみられた。1.運動プログラムを積極的に運用した園とそうでない園の間では、運動動
作(身のこなし)の発達に大きな差はみられなかった。2.個人の発育発達の段階が把握できれば、経年的な特徴が見い
だせる可能性が考えられた。
生
バ
経
発
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8 月 28 日
10:00
発 28 − 108
幼児の運動能力と血圧及びカウプ指数の関連性
○松本 希(就実短期大学)
飯田 智行(就実大学)
小野寺 昇(川崎医療福祉大学)
大城 敬子(東京こども専門学校)
山下 立次(朝日医療専門学校)
運動不足及び肥満は循環器疾患のリスクファクターである。成人では、体力レベルは血圧と関連する。一方で、幼児の
体力と血圧及び体格の関連性を示す報告はない。そこで本研究は、幼児を対象に幼児の運動能力が血圧及び体格に及ぼす
影響を明らかにすることを目的とした。対象者は幼稚園年中児(4-5 歳児)の 28 名とした。園の研究協力への同意のも
測
と、保護者に研究内容を文書にて説明を行い、同意を得た。運動能力調査は、幼児期運動指針に示されている、25m 走、
立ち幅跳び、ボール投げ、両足連続飛び越し、体支持持続時間の 5 項目に加え、長座体前屈を行った。身長、体重及び
血圧の測定は、運動能力調査とは別日に行い、身長と体重の結果からカウプ指数を求めた。運動能力調査の各測定結果と
方
収縮期血圧、拡張期血圧、心拍数及びカウプ指数に有意な相関関係を認めなかった。加えて、運動能力調査の評価総得点
と血圧、心拍数及びカウプ指数にも有意な相関関係を認めなかった。幼児の運動能力は、血圧及び体格との関連性が低く、
成人にみられる体力レベルとの関連性が必ずしも一致しないことが示唆された。
保
教
人
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8 月 28 日
10:00
発 28 − 109
幼児の運動能力水準の差異からみた自由遊び中の出現動作
○佐々木 玲子(慶應義塾大学)
石沢 順子(相愛大学)
幼児期は、基本的な動作の獲得、習熟に重要な時期であり、多様な動きを経験することの必要性が指摘されている。本
研究では、運動能力に違いのある幼児を対象に、自由遊び中のに見られる動作を事例的に観察し比較することにより、運
ア
動能力と日常活動動作との関係について検討し、その実態を明らかにすることを目的とした。東京都内の幼稚園に通園す
る幼児(4 ~ 6 歳)の基本的な運動能力測定の結果から、運動能力の高い子どもと低い子ども男女数名ずつを抽出し観察
対象とした。各対象児について、
園庭および室内での自由遊び時間中の活動(約 30 分間)の VTR 撮影を行った。その後、
介
録画映像から活動中の動きを観察し、先行研究を参考にして予め分類した動作項目に対照してその出現状況を継時的に記
録した。自由遊び中は「歩く」
、
「走る」といった移動動作が最も多く出現した。他の動作については観察時間中全く見ら
れないものも多かった。全般に、運動能力が高い幼児は低い幼児に比べて出現動作の種類が多い傾向であったが、年齢差
や性差もみられた。動作の出現は遊びの選択などによるところが大きく、環境要因に影響を受ける可能性が示唆された。
198
07 発育発達
第1体育館
8 月 28 日
10:00
発 28 − 110
幼児期の体力特性は児童期にどの程度トラッキングするのか ?
男児における年長時と小学 6 年時の比較検討
○長谷部 裕哉(岐阜大学大学院)
春日 晃章(岐阜大学)
哲
史
本研究は、幼児期の体力特性が児童期後期にどの程度トラッキングするのか検討することを目的とした。対象は、年長
時と小学 6 年時に体力テストを実施した男児 48 名であった。年長時に 7 種目(立ち幅跳び、体支持持続時間、長座体前屈、
25m 走、ソフトボール投げ、反復横跳び、握力)を行い、小学 6 年時に 8 種目(立ち幅跳び、体支持持続時間、長座体前屈、
社
50m 走、ソフトボール投げ、反復横跳び、握力、シャトルラン)のテストを行った。これらの縦断データを基に T スコ
アを算出し、個人得点とした。なお、幼児期の場合、月齢による運動能力差を考慮するため、生まれ月で前半と後半に分
け、6 年時では学年内での相対評価とした。分析の結果、走、跳、投種目に有意な相関関係が認められた(25m・50m:
r=0.634、立ち幅跳び:r=0.600、ソフトボール投げ:r=0.640)。また、筋力、筋持久力項目に相関関係が認められた(筋力:
r=0.440、
筋持久力:r=0.479)
。年長時と小学 6 年時の体力総合点(平均 T スコア)に高い相関関係が認められた(r=0.740)
。
以上のことから、幼児期における筋力、筋持久力、および走、跳、投の運動能力は小学 6 年時までに高い影響を及ぼす
事が示唆された。
第1体育館
8 月 28 日
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生
バ
発 28 − 111
東日本大震災地域における幼児の運動能力の現状
震災および津波の被災地域である陸前高田市を対象にして
○大石 健二(日本体育大学)
心
植村 清加(東京国際大学)
東日本大震災被災地域の多くは、未だインフラストラクチャーの整備段階であり、子ども発育発達に適した環境とは考
経
発
え難い。特に幼児などの低年齢層の運動能力は、
公園等の安全に配慮された遊び場の有無により影響されると推測される。
そこで本研究は、被災復興地域における幼児の運動能力の現状把握を目的に陸前高田市の幼児を対象に調査を実施した。
対象とした陸前高田市は、数多くの復興用資材置き場があるが、公園等の運動あそびができる場所は数少ない地域である。
測
測定項目は、身長、体重、25m 走、テニスボール投げ、立ち幅とび等とした。各測定結果は、学年および生年月日か
ら測定日までの日齢から算出した半年区分を用い分析を実施した。全国規模調査の先行研究における 6 歳前半男児 25m
走の平均記録は 6.19 ± 0.71 秒であるが、本研究における同年齢区分の平均記録は 6.44 ± 0.65 秒であり先行研究より
低値を示した。また、立ち幅とび、テニスボール投げにおいても先行研究より低値を示した。6 歳女児においても男児と
同様な結果であった。このような結果から、東日本大震災地域の幼児の運動能力は全国平均より低下傾向にあると捉えら
れる。
第1体育館
8 月 28 日
10:00
保
教
発 28 − 112
4 歳から 5 歳に至る幼児のリバウンドジャンプ能力と疾走能力に関する縦断的発達過程
○坂口 将太(筑波大学スポーツ R&D コア)
吉田 拓矢(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
図子 浩二(筑波大学体育系)
方
藤林 献明(立命館大学)
林 陵平(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
人
ア
人間の歩行や疾走といった移動運動には、SSC 運動遂行能力が非常に重要な要素となることが明らかにされている(図
子ほか、1993;三井・図子、2006)
。本研究では、保育園に通う 4 歳児 37 名(男児 24 名、女児 13 名)を対象として、
垂直跳(CMJ)、リバウンドジャンプ(RJ)能力および疾走能力における 1 年間の発達を縦断的に調査した。加えて、保
介
育者に対して幼児の活動状況に関するアンケート調査を行い、RJ 能力の発達に対する活動量や活動内容の影響について
検討することを目的とした。その結果、男女ともに、体格、CMJ 能力、RJ 能力および疾走能力が有意に向上していた。
199
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
また、男女とも RJ 能力の年次変化率と疾走能力の年次変化率との間に有意な相関関係が認められた。保育者に対するア
ンケート調査では、RJ 発達上位群の方が活発である傾向が認められた。また、幼児の「活発さ」と普段行っている「運
動遊び」の種類との間に有意な正の相関関係が認められた。これらの結果から、幼児期において疾走能力の発達には RJ
能力が深く関わっており、RJ 能力の発達は園での生活の中でより多様で活発な活動が関係していることが示唆された。
第1体育館
8 月 28 日
10:00
発 28 − 113
幼児の体力向上への取り組み
3 園の取り組みを比較して
○村瀬 浩二(和歌山大学)
彦次 佳(和歌山大学)
林 修(和歌山大学)
本研究では W 県内幼稚園 3 園においてそれぞれ特色を持った体力向上の取り組みを 6 ヶ月間にわたって実施し、前後
の運動能力調査によってその効果を検証した。3 園の取り組みは合同運動会や雪遊び体験など共通イベントと、日常的取
り組みとして A 園が 「走る」、B 園が 「跳ぶ」、C 園が 「投げる」 を中心とした運動遊びを実践した。
その結果、調査を行った 5 種目(25m 走、ボール投げ、捕球、立ち幅跳び、体支持持続時間)のうち、立ち幅跳び以
外は有意な向上を示した。また、捕球において時期と園による交互作用が認められ、C 園の向上が他の 2 園と比較して
も有意に大きかった。このことは、各園が行った運動遊びの中でも C 園が「投げる」運動として実践したボール遊びが、
目と手の協応性を高めたと推察できる。このことは「目と手」の協応性が投げる・跳ぶなど 「手と足」 の協応性とは独立
して発達することを示しており、幼児期からのボール遊び経験の重要性が示唆された。
第1体育館
8 月 28 日
10:00
発 28 − 114
相対的年齢効果と児の体格・体力との関係について
○黒川 修行(宮城教育大学教育学部保健体育講座)
前田 順一(宮城教育大学教育学部保健体育講座)
小宮 秀明(宇都宮大学教育学部保健体育科)
「相対的年齢」は「特定の目的や機能のために集められた個々人の間の年齢における差異」とされる。児童期のスポー
ツ活動における相対的年齢の違いは、
「長期に及ぶ効果」つまり「相対的年齢効果」をもたらすと言われている。子ども
保
教
人
ア
介
200
たちの体力を測るために新体力テストは、毎年一定期間内に学校で一斉に行われているため相対的年齢効果が生じると考
えられる。従って、新体力テストを実施した時点で体格差も生じているため、成績に違いが生まれることが示唆される。
本研究では相対的年齢効果によりもたらされた体格差と新体力テストにどのような関係があるのかを明らかにすることを
目的とした。対象者は中学 1 年生から 3 年生であった。小学 1 年生からの身体計測の記録および新体力テストの成績に
ついて調査した。その結果、新体力テストの結果には、相対的年齢効果によりもたらされた身長差が体重差よりも関係し
ていることが示された。1 〜 3 月に生まれた早生まれの群は、他に比し、新体力テストの五段階評価が低いことが示され
た。特に小学生の時期に顕著に認められた。このことから、新体力テストの五段階評価の結果の解釈にあたっては、考慮
が必要であると考えられた。
07 発育発達
第1体育館
8 月 28 日
10:00
発 28 − 115
バウンドボール捕球における幼児の見越し動作の発達過程
○梅本 麻実(奈良女子大学大学院)
藤原 素子(奈良女子大学)
大高 千明(奈良女子大学大学院)
本研究では、幼児期における、対象物の動きの予測と自身の動作の見積もりを合わせた見越し動作の発達過程を明らか
にすることを目的とした。3 歳児から 5 歳児、男女計 139 名を対象とし、放物線の軌道を描いて飛来してくるボールに
哲
史
社
対して、落下地点まで移動して 1 バウンドした後に捕球する課題を行った。ビデオカメラにより動作の撮影を行い、動
作開始のタイミングに着目し、定量的および定性的な観点から評価した。定量的観点では、捕球率、動き出すまでの見積
もり時間や移動時間などの動作時間と、幼児の動き出しおよびキャッチ時のボールの位置を分析した。定性的観点では、
幼児の捕球動作を 6 つのパターンに分類した。その結果、捕球率は加齢に伴い高くなった。また、見積もり時間が加齢
に伴い長くなったことで、正確な予測が可能となり、捕球の成功率が高まったことが示唆された。動き出し時については、
年齢による違いがみられたが、キャッチ時については各年齢で共通して頭上付近での捕球動作が特徴的であった。動作パ
ターンでは、失敗パターンの割合が加齢に伴い減少し、動作が洗練されていくことが明らかとなった。
第1体育館
8 月 28 日
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生
バ
発 28 − 116
小学校体育授業における短時間ラダープログラムの有効性
○佐藤 和(東京大学)
心
杉山 喜一(北海道教育大学)
【はじめに】子どもの体力向上を図る上で、学校教育における体育授業は重要な役割を担うべきである。その際、児童の
経
発
発育発達を考慮した授業内容を実施することが重要であり、児童期は神経系の発達が著しい時期であると考えられてい
る。本研究は、小学校体育授業におけるウォーミングアップ(W-up)を兼ねた短時間ラダープログラムが神経系の機能
と関連があると考えられている動きの調整力、特に敏捷性に与える影響を検討することを目的とした。
【方法】対象は 2
測
年生児童 61 名(男子 34 名、女子 27 名)と 6 年生児童 62 名(男子 36 名、女子 26 名)であり、両学年で統制群およ
び実験群にわけた。実験群は週 3 回の体育授業における W-up として短時間ラダープログラム(5 種目、所要時間 8 分程
度)を 3 週間実施した。統制群は、
通常の W-up を 8 分程度実施した。敏捷性を評価する指標として反復横跳びを採用し、
プログラム実施前後で比較した。
【結果】両学年において、実験群ではプログラム実施後の反復横跳び回数が有意に増加
した。また、ラダープログラム実施前後の変化率は 2 年生児童が有意に高い値を示した。
第1体育館
8 月 28 日
10:00
発 28 − 117
新体力テストの種目別平均値の変化率からみた宮城県児童生徒の体力の推移
○前田 順一(宮城教育大学)
池田 晃一(宮城教育大学)
黒川 修行(宮城教育大学)
小宮 秀明(宇都宮大学)
文部科学省の体力・運動能力調査報告書によると、新体力テスト実施後 15 年間でほとんどの項目の平均値は横ばいま
たは向上の傾向がみられる。しかし、宮城県小・中・高等学校体力・運動能力調査報告書では、新体力テスト実施後も種
方
保
教
人
ア
目・年度毎に向上や低下を示しており、一定の傾向が認められていない。
本研究では、文部科学省及び宮城県教育委員会公表の体力・運動能力調査報告書を基に新体力テスト実施後 15 年間の
年度平均値の前年度に対する変化率を求め、14 年分の平均変化率から体力・運動能力の推移について検討した。
介
宮城県では、握力、立ち幅とびとボール投げについて、ほとんどの学年の男女で新体力テスト実施後 15 年間で低下し
ていることが明らかになった。いっぽう、反復横とびと 20 m シャトルラン、持久走及び 50 m 走では、ほとんどの学年
201
哲
の男女で平均値の向上が認められた。宮城県では全国平均値に対して有意な低下を示している体重移動をともなう 20 m
シャトルラン、持久走と 50 m 走について、新体力テスト実施後 15 年間で向上の傾向が認められるものの全国平均値も
宮城県以上に向上していることから全国平均値に比べると有意に低い状態が続いている。
史
社
心
第1体育館
8 月 28 日
10:00
発 28 − 118
中学生サッカー選手のアジリティ能力に影響を与える要因
○中山 忠彦(神戸医療福祉大学)
中井 聖(静岡福祉大学)
サッカークラブに所属する男子中学生を対象として、体格、30m 全力走、プロアジリティテスト(PAT)、リバウンド
ジャンプ時の弾性指数および剛性指数、
カウンタームーブメントジャンプ時の平均ピークパワー(CMJ パワー)を測定し、
生
バ
経
発
測
それらがアジリティ能力に与える影響について検討した。PAT タイムは身長、体重、除脂肪体重、剛性指数および CMJ
パワーと負の相関関係、0-10m、10-30m、30m 走タイムおよび方向転換時間と正の相関関係を有した。身長、体重、除
脂肪体重はそれぞれ 0-10m、10-30m および 30m 走タイムと負の相関、剛性指数および CMJ パワーと正の相関を示した。
測定した全変数と剛性指数の間に関連が認められた。したがって、男子中学生サッカー選手においては、体格の発達に伴っ
て全身筋量が増すとともに下肢筋パワーが高まり、加速能力や走速度維持能力を含む短距離走能力全体が向上したことに
加え、方向転換能力が高まったことによってアジリティ能力が向上したと考えられた。また、これらには体格の発達によ
る筋スティフネスの向上が関与している可能性が示唆された。
第1体育館
8 月 28 日
10:00
発 28 − 119
中学生の体力・運動能力における個人コントラストを発生させる要因の検討
○與儀 幸朝(神戸大学大学院)
國土 将平(神戸大学大学院)
個々人の体力・運動能力は高い・低いといった一元的な評価をされがちであるが、体力・運動能力が高くなくても、種
方
目によって得意、不得意といった運動能力のコントラストが存在すると考えられる。このような個人のコントラストは社
会生活環境の影響を受けて発現していると仮説できる。加えて、体力・運動能力の個人のコントラストの集積が時代差や
地域差として表出していると考えられる。そこで本研究では、体力・運動能力における個人のコントラスを評価する方法
保
教
人
ア
介
について検討し、表現されたコントラストを発生させる運動習慣や生活習慣の要因について検討することを目的とした。
対象は沖縄県内の中学二年生(2,635 名)とした。方法は 2013 年度の体力・運動能力調査に加えて、運動習慣や生活
習慣及び生育環境などを含めた質問紙調査を実施した。分析はクラスター分析を用いて個人コントラストの特徴的な変動
パターンを示したうえで、決定木分析を用いて質問紙調査項目との関連性を検討した。その結果、個人コントラストの特
徴的なパターンが示され、運動部活動の経験や子どもの頃からの遊び習慣などが影響していることが明らかとなった。
第1体育館
8 月 28 日
10:00
発 28 − 120
中学期における体格発育と運動能力発達パターンの関係構図
○伊藤 幹(名古屋学院大学)
石垣 享(愛知県立芸術大学)
坪田 暢允(名古屋学院大学)
近年、体格の増大に見合う運動能力発達の成就が認められていない。そこで、体格発育と体力・運動能力発達の関係構
図を検証する必要がある。本研究は、体格および運動能力の中学 1 年から 3 年までの発育発達現量値に対して、観測デー
タ値 3 点を通過する 2 次多項式を適用することにより、体格発育と運動能力発達との関係を解析した。さらに、その 2
202
07 発育発達
次多項式曲線のパターンを判別し、その発育、発達パターンの類似性を検証する。対象は、2010 年度および 2011 年度
に中学 3 年生であった 142 名および 156 名の計 298 名の男子中学生であった。体格、運動能力項目は、身長、体重、握力、
上体起こし、長座体前屈、反復横跳び、持久走、50m 走、立幅跳、ボール投げの中学 3 年間の縦断的発育発達データである。
発育発達パターンは、凸型の 2 次多項式、直線型、凹型の 2 次多項式である 3 分類とした。身長では、直線型、凸型が
多くみられたが、他の項目では直線型が最も多かった。パターンの類似性では、身長と、握力、持久走、50m 走、立幅跳、
ボール投げの 5 種目が比較的類似性が高く、体重との関係では、握力、持久走、50m 走、ボール投げの 4 種目が他の種
哲
史
目に比べて類似性が高いようであった。
社
第1体育館
8 月 28 日
10:00
発 28 − 121
健康高校生における睡眠状況の実態と生活状況との関連
非接触睡眠計測機器を用いて
○鈴木 彩加(日本体育大学大学院)
野井 真吾(日本体育大学)
近年、子どもの眠りが心配されている。そのためわれわれは、子どもの睡眠に関する質問紙調査や生化学的検討を実施
してきた。結果は、就床時刻の遅延化や睡眠時間の短縮化、さらには、睡眠・覚醒リズムの乱れを確認させるものであっ
た。また最近では、就床時刻、起床時刻だけでなく、入眠潜時や中途覚醒等の睡眠状況を簡便に測定できる非接触睡眠計
測機器を用いて、特別支援学校に在籍する高校生の睡眠状況についてもその実態を明らかにしてきた。このような状況の
中、今回は健康高校生を対象として同機器による睡眠状況調査とその他の生活状況調査とを同時に実施することができた
ため、両調査の結果の関連性について検討することを目的とした。対象は、首都圏の私立 H 高等学校、T 高等学校に在
籍する高校生 20 名であった。睡眠状況は非接触睡眠計測機器(オムロン株式会社製、HSL-102-M)を用いて、2013 年
9 月〜 11 月の期間に 1 週間に亘って測定された。一方、生活状況は質問紙調査により、睡眠状況、排便状況、食事摂取
状況等に関する回答を得た。結果として、対象者の睡眠状況とその他の生活状況との関連について興味ある知見を得るこ
とができたので報告したい。
第1体育館
8 月 28 日
10:00
生
バ
経
発
測
発 28 − 122
皮膚電気抵抗値による定位反応測定の妥当性に関する検討
事象関連電位との関連を基に
○島田 彰彦(日本体育大学大学院)
心
野井 真吾(日本体育大学)
保育・教育現場では、ここ数十年間に亘って子どもの集中力の欠如を問題視する実感が広がっている。そしてその一背
景として、種々の刺激に反応しすぎたり、しなかったり等の「定位反応」の機能不全や不調が心配されている。そのため
われわれは、聴覚刺激による皮膚電気抵抗値を指標として定位反応の測定に着手している。しかしながら、この手法の妥
当性については今後の検討課題とされてきた。そこで本研究では、聴覚刺激に対する皮膚電気抵抗値の反応と事象関連
電位にみられる脳内の情報処理過程との関連を明らかにすることを目的とした。対象は、特別な疾病を有さない健康な成
人 10 名であり、聴覚刺激には、純音 70dB、ガラス音 70dB、ガラス音 90dB の 3 条件を設定した。各条件の刺激回数は
50 回(2 ~ 10 秒間間隔)とし、実験は最低 6 日間の間隔を空けて 1 日に 1 条件ずつ実施した。なお、条件順は被験者
間でランダマイズした。本研究では、聴覚刺激に対する皮膚電池抵抗値と脳波とを同時記録し、皮膚電気抵抗値の変化が
確認できた場合と確認できなかった場合とにおける事象関連電位を比較した。
方
保
教
人
ア
介
203
哲
史
社
第1体育館
8 月 28 日
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発 28 − 123
高齢ラットの運動が筋組織に及ぼす影響
○佐川 光一(大阪体育大学 スポーツ医学研究室)
河上 俊和(大阪体育大学 スポーツ医学研究室)
奥田 修人(大阪体育大学 スポーツ医学研究室)
滝瀬 定文(大阪体育大学 スポーツ医学研究室)
古河 準平(大阪体育大学 スポーツ医学研究室)
高齢ラットにおける運動が筋組織の形態に及ぼす影響について、40 週齢の SD 系雄ラット(n = 10)を用い筋組織の
強度測定と組成変化について組織学的に検討を行った。ラットの内訳は非運動群(n = 5)、走運動群(n = 5)に分け、
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
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ア
介
204
4 週間の実験終了後、ヒラメ筋の破断値の測定と後肢筋凍結切片を作成し、HE 染色及び NADH-TR 染色、Elastica van
gieson(EVG)染色、Fibroblast growth factor(FGF)、Collagen type Ⅰ(COL Ⅰ)の免疫組織化学染色と走査型電子顕
微鏡による筋組織の微細形態観察を行った。筋破断値の比較では走運動群が非運動群に比べて有意に高く(p < 0.05)、
筋周膜にエラスチンの濃染像と FGF 及び COL Ⅰの反応が観察された。高齢ラットの運動は、骨格筋の粘弾性などの力学
的特性に係る筋膜構成タンパク質のコラーゲン、エラスチン線維との間に深い関連性があることが伺え、筋線維に加わる
張力に対し、筋機能を維持するために重要であると考えられる。
00
体育哲学
哲
01
体育史
史
02
体育社会学
社
03
体育心理学
心
04
運動生理学
生
05
バイオメカニクス
バ
06
体育経営管理
経
07
発育発達
発
08
測定評価
測
09
体育方法
方
10
保健
保
11
体育科教育学
教
12
スポーツ人類学
人
13
アダプテッド・スポーツ科学
ア
14
介護福祉・健康づくり
介
205
哲
史
GB11[センターB]
8 月 27 日
13:30
測 27 − 001
野球の試合における簡易的な確率計算の方法
Excel の sheet を利用した表計算
○廣津 信義(順天堂大学)
本研究では、野球の試合において、1 試合での得点分布や “ 得点 i 対 j となる確率 ”、さらには “ d点リードとなる確率 ”、
社
“d 点リード時での勝つ確率 ” などを簡易的に求める手法を提案する。計算のためのツールとして汎用の表計算ソフトを
用い、試合中の場面の推移の定式化ならびに計算方法を提示する。具体的には、各打者の打撃の確率(1 塁打、2 塁打、
3 塁打、本塁打、四球、アウトとなる確率)に基づき場面は推移し、打撃による走者の進塁は簡単な規則(D`Esopo and
心
生
バ
経
発
Lefkowitz 進塁モデル)に従うとした上で、最も単純なケースとして同一打者による 1 イニングでの得点分布の計算方法
から、複雑なケースとして、イニング、表裏、アウト数、走者の状態、得点差、自チームの打者、相手チームの打者によ
り場面を区別し、1 試合を通した推移の計算方法を示す。従来は C 言語などの計算機プログラムによる計算が主であった
が、
今回提案する手法は Excel の sheet 一枚のみを利用して表計算することができる点に特徴がある。本手法の拡張として、
試合途中からそれ以降の展開の確率計算なども容易に表計算できることを示す。
GB11[センターB]
8 月 27 日
13:42
測 27 − 002
バレーボールのブロックがスパイク得点要因に及ぼす影響
○中岡 侑輝(国士舘大学大学院)
須藤 明治(国士舘大学大学院)
山田 健二(国士舘大学体育学部付属体育研究所)
【目的】本研究はブロックの有無において、スパイクの得点要因となる打撃の高さ、速度、方向について検討し、バレーボー
ルにおけるスパイク技術の向上のための基礎的知見を得ることを目的とした。【方法】被験者は、大学男子バレーボール
測
選手 7 名であった。被験者は、最大スパイク(MAX)とブロックを設定したスパイク(BL)を Center、Cross、Straight
の異なるコースに行い、その際のスパイク動作を撮影し、3 次元動作解析を行った。
【結果】打撃の高さでは、MAX と
BL に差が認められなかった。打球速度では、MAX が BL より高値を示した(p<0.05)
。打撃方向に関して、コースの違
方
保
教
人
ア
いにより MAX と BL の打撃腕各部位の速度変化に違いが認められた。
【結論】本研究の結果からブロックの影響を受けず
にスパイクを行うためには、フリーのスパイク練習でもブロックを意識したスパイクを行うことが重要であると考えられ
た。また、スパイク得点要因の特徴を理解し、指導または練習を行うことでより得点に結びつくスパイク技術の向上がな
されるのではないかと考えられた。
GB11[センターB]
8 月 27 日
13:54
測 27 − 003
J リーグにおける選手とチームの攻撃特性尺度の開発
○徐 広孝(筑波大学大学院人間総合科学研究科体育学専攻) 鈴木 宏哉(東北学院大学)
安藤 梢(筑波大学大学院人間総合科学研究科体育学専攻) 横尾 智治(筑波大学大学院人間総合科学研究科体育学専攻)
西嶋 尚彦(筑波大学体育系)
サッカーにおける攻撃特性は、主観的な評価に依存していることから、定量的な攻撃特性評価尺度を作成することを目
的とした。本研究では、第 3 回スポーツデータ解析コンペティションを通じて、データスタジアム株式会社から提供さ
介
れた J リーグのゲームデータ(変数の数は 206、レコード数は 189,988 のビッグデータ)を用いた。サッカーの専門家
によって内容的に妥当な測定項目を作成し、決定木分析(CART)と項目反応理論(2PLM)を適用して、達成基準、シュー
ト貢献度、困難度を分析した。シュート貢献度は、測定項目を達成した場合にシュートまでたどり着ける可能性の程度を
示す。困難度は測定項目の技術的な難しさを示す。試合中のプレーにおいて、達成した測定項目のシュート貢献度と困難
206
08 測定評価
度の平均値を、
それぞれシュート生産力と技術力とした。それらの相関係数が 0.17 であったことから独立事象として扱い、
シュートを生み出す選手か、技術の高い選手かを評価する攻撃特性尺度を作成した。1 試合のシュート数を妥当基準とし
てポジション別に相関係数を算出した結果、FW は 0.78、MF は 0.60、DF は 0.37 であり、尺度の妥当性を確認した。
GB11[センターB]
8 月 27 日
14:06
史
測 27 − 004
10 年前と現在における大学男子柔道選手の減量実態に違いはあるか ?
2004 年と 2013 年の比較から
○久保田 浩史(岐阜大学)
宮口 和義(石川県立大学)
哲
出村 慎一(金沢大学)
内田 雄(金沢大学大学院)
社
心
柔道は階級制競技であるため、試合に向けて減量を行う選手が多い。本研究の目的は、10 年前と現在における大学男
子柔道選手の減量の実態を比較することであった。全国大会ベスト 8 入賞実績をもつ大学柔道部に所属する 272 名
(2004
年)、303 名(2013 年)を対象に、減量実施率、減量方法、体重超過量、減量中に感じること等を調査した。減量実施
者は 2004 年:149 名(54.4%)
、2013 年:121 名(39.9%)で、2004 年の減量実施者は 2013 年に比べ有意に多かっ
た。減量開始前の体重超過量(規定体重に対する比率)は、2004 年:6.1%、2013 年:6.2%で、差は認められなかった。
減量方法として、水分摂取の制限(2004 年:59.9%、2013 年:48.5%)やサウナの利用(2004 年:45.6%、2013 年:
33.9%)がみられた。減量中の愁訴として、10 年前及び現在において、40%以上が「のどが渇く」、「疲れやすい」と回
答した。結論として、減量実施者は 10 年間で減少し、減量方法も改善されているが、依然として減量に脱水法が用いられ、
疲労感の増大を誘発している可能性があることが示唆された。
GB11[センターB]
8 月 27 日
14:18
生
バ
経
発
測 27 − 005
運動観察法による小学生の走動作の局所独立性の検討
○國土 将平(神戸大学大学院人間発達環境学研究科)
運動観察法による運動動作の構成の際に、動作因果関係を考慮してモデルを構築してきた。これらの動作の困難度評価
に際して、項目反応理論を適用するが、局所独立性の仮定は重要な仮定の一つである。動作因果関係を考える場合、局所
測
方
独立性が確保されない可能性がある。本研究では小学生の走動作について、局所独立性について検討することを目的とし
た。対象は小学校 3 年生 92 名(男子 43 名、女子 49 名)の 50 走の 25 〜 35m 区間の走動作を側方および前方より毎
秒 60 コマで撮影した。その映像をスローモーションならびにコマ送りで再生し、國土(2013)の 38 の動作観点につい
て評価した。その資料に対して、項目反応理論を適用し、動作のθに基づき、20%値毎の 5 階級に分けた。局所独立性
を検討するために、それぞれの階級で、因果関係のある動作 42 の組み合わせについて、クロス集計ならびにフィッシャー
の正確確率検定を適用した。その結果 210 検定中、11 検定で 5% 水準で有意な連関を示した。そのうち 4 個はスイング
局面の足部最高到達点と膝の折りたたみであった。その他の項目は局所独立であると推察される。(本研究は日本学術振
興会科学研究補助金基盤研究(C)24500697 により実施された。)
GB11[センターB]
8 月 27 日
14:30
測 27 − 006
児童期後期における身体活動および学習動機づけの構造的関連
○池田 孝博(福岡県立大学)
青柳 領(福岡大学)
保
教
人
ア
介
近年、体力と学力の関連が報告され、体力・学力ともその背景としての意欲の関与が指摘される。本研究の目的は児童
期後期の子どもの身体活動と学習に関する 2 つの動機づけの構造的関連について検討することである。日本と韓国の小
207
哲
史
学生 5、6 年生 988 名を対象に、身体活動及び学習の動機づけに関する調査を実施した。51 項目について主因子法斜交
解による因子分析を行い、身体活動の動機づけ(MPA)7 因子と学習動機づけ(ML)2 因子を抽出した。さらに、MPA7
因子の二次的構造に関する探索的因子分析を行い、社会的動機と自発的動機の 2 つの MPA 二次因子を抽出した。最後に、
MPA 二次因子および内発的 ML 因子との関連について共分散構造分析を適用して検証した。その結果、社会的 MPA から
自発的 MPA への発達(直接効果)と内発的 ML が介在(間接効果)するモデルが AIC に基づいて選択された。また、こ
のモデルにおける直接効果と間接効果を学年間で比較した結果、女子において 6 年生の直接効果の比率が大きいことが
示された。このことより、児童期後期の自発的身体活動動機には社会的身体活動動機と内発的学習動機の双方が関与し、
社
心
生
バ
経
発
女子の間接効果は加齢に伴い減少すると考えられる。
GB11[センターB]
8 月 27 日
14:42
測 27 − 007
手関節テーピングのテープ圧が手関節背屈および掌屈の等速性筋力発揮に及ぼす影響
○高橋 憲司(金沢大学大学院自然科学研究科)
山次 俊介(福井大学)
内田 雄(金沢大学大学院自然科学研究科)
出村 慎一(金沢大学)
宮口 和義(石川県立大学)
本研究の目的は、
手関節テーピングにおけるテープ圧が手関節の等速性筋力発揮に及ぼす影響を検討することであった。
被験者は、男子大学生 19 名(平均年齢 20.6 ± 0.9 歳)であった。手関節のテーピング法は、非伸縮性テープにて橈骨
および尺骨茎状突起を 3 周する方法とした。テープ圧は、5、30、60、および 90hPa の圧となるように連続接触圧測定
器にて調整した実験条件と、統制条件(テープなし)を設定した。手関節の等速性筋力測定には、背屈および掌屈動作を
用い、低速、中速、高速(60、180、300 °/sec)の 3 条件の角速度で測定した。二要因(テープ圧×角速度)とも対応
のある二要因分散分析の結果、角速度にのみ有意な主効果が認められ、背屈はすべてのテープ圧条件で、高速は中速およ
び低速よりも高値を示し、掌屈は統制条件および 5hPa 条件で、低速は高速および中速よりも高値を示したが、30hPa 以
上のテープ圧条件では差がみられなかった。結論として、手関節背屈および掌屈の等速性筋力発揮は、角速度の影響を受
測
方
保
教
人
ア
けるが、テープ圧による影響は小さいことが示唆された。
GB11[センターB]
8 月 27 日
14:54
測 27 − 008
大学生の日常生活における身体活動量について
○髙橋 亮輔(日本大学)
小山 裕三(日本大学)
小川 貫(日本大学)
重城 哲(日本大学)
橋口 泰武(日本大学)
森長 正樹(日本大学)
服部 英恵(日本大学)
沖 和磨(日本大学)
安住 文子(日本大学)
理系学生は、課題や実験・演習等で身体活動が減少していると推察される。そこで、本研究では理系学部に所属する男
子大学生を対象に日常生活における身体活動量を調査し、現状を把握することを目的とした。対象者は保健体育科目を履
修した男子学生 122 名であり、欠損値のない 101 名を分析対象とした。身体活動量の評価については、国際的に使用さ
れ信頼性・妥当性が確認されている IPAQ 日本語版(SV)を用いた。また、運動の好き嫌い、定期的な運動習慣、中・高
の部活動、体力および健康度について質問紙による調査を行った。身体活動量は、先行研究により使用された身体活動強
度と時間および頻度をそれぞれ乗じて合計することで算出し、
「健康づくりのための身体活動基準 2013」における推奨
介
基準量である 23 メッツ・時 / 週を充たす群(充足群)と不足している群(不足群)とに分類した。23 メッツ・時 / 週
の充足に関連する要因についてロジスティック回帰分析を行った結果、定期的な運動および中程度の身体活動に有意な関
連性が認められた。充足群は、定期的な運動を中程度の強度で実施していることが明らかとなった。
208
08 測定評価
GB11[センターB]
8 月 27 日
15:06
測 27 − 009
2 次元放物線モデルによる大学生のスポーツ選好とライフスタイルとの関連
哲
史
○青柳 領(福岡大学スポーツ科学部)
スポーツ種目の好き嫌いはその者の嗜好を反映し、嗜好はライフスタイルにも影響を与えていると考えられる。そこで、
本研究では大学生を対象に、スポーツ種目の選好とライフスタイルとの総合的な関連(構造的関連)を検討する。大学生
279 名を対象に 42 種目のスポーツ種目の中から体育実技としてどの種目の受講を希望するかを調査した。同時に、40
社
項目からなる日常生活上のライフスタイルについても調査した。同時に受講を希望した頻度によりスポーツ選好の類似性
を定義し、
その関連を非計量的 MDS により 2 次元空間に表現した。結果、スノーボードやスキーなど動的なアウトドア系、
バスケットボールやバレーボールなどの球技系などに分類された。さらに、その布置上に、スポーツ種目とライフスタイ
ル調査項目との順位相関係数を従属変数とした 2 次関数を当てはめ、最も関連の高い座標(最適点)を予測した。結果、
動的なアウトドア系は学業や他者には関心がなく、スポーツをかっこいいと考える者が好み、球技系は自ら身体を動かす
ことが好きで、委員会活動には興味がない者が好むなどいくつかの総合的な関連を見出した。
GB11[センターB]
8 月 27 日
15:18
心
生
バ
測 27 − 010
運動時の生理的および心理的状態に対する友人の効果
○高橋 信二(東北学院大学)
本研究の目的は、
生理的および心理的状態に対する友人との運動の効果を検討することであった。男性 5 名(21.6 ± 0.5
歳)と女性 4 名
(21.5 ± 0.5 歳)
は 30 分間の 60%VO2max 水準の定常負荷運動(ジョギング)を 1 人で行う条件(コントロー
経
発
ル試技)と友人と行う条件(実験試技)で実施した。運動開始前、運動中および運動終了後 15 分まで、HR、VO2、呼吸数、
血圧、La、自覚的運動強度(RPE)
、気分(快適度、覚醒度)を測定した。コントロール試技と実験試技は混合モデルに
より比較された。その結果、実験試技の呼吸数はコントロール試技よりも有意に高い値を示した(F(1, 8.3)= 11.3、p =
測
0.009)
。友人との会話が呼吸数に影響したものと考えられる。また、快気分と覚醒度にも有意な友人の影響が認められ、
快気分と覚醒度でともに実験試技が有意に高い値(F(5, 39.9)> 3.9、p < 0.006)を示した。友人との会話が運動時の高
快気分・高覚醒状態を高めた可能性がある。一方、その他の項目に友人の影響は認められなかった(p > 0.052)。以上の
結果より、友人との運動は、会話を通じて心理状態を高めるものの、生理的状態には影響しないことが示された。
GB11[センターB]
8 月 27 日
15:30
保
測 27 − 011
日本人男性の皮下脂肪蓄積容量に及ぼす年齢段階の影響
○佐藤 進(金沢工業大学)
佐藤 敏郎(新潟医療福祉大学)
方
出村 慎一(金沢大学)
内山 応信(秋田県立大学)
教
人
我々は先行研究において、内臓脂肪面積(VFA)と皮下脂肪面積(SFA)との関係を検討し、皮下脂肪と内臓脂肪は肥
満レベルの増加に伴い増加するが、両者の比例関係はある時点から崩れ、内臓脂肪の蓄積が顕著になる可能性があるとい
う知見を得た。そしてこのポイントは皮下脂肪蓄積容量と関係があり、肥満関連疾患のリスク評価に利用できるかもしれ
ア
ないと考えた。本研究では、これらの関係に及ぼす年齢段階の影響を検討することを目的とした。対象は、I 県の総合病
院の健診センター利用者男性 786 名(平均年齢 58.6 ± 13.5 歳)であった。先行研究の知見を踏まえ VFA= 100㎝ 2 を
基準に内臓脂肪型肥満群(VF 群)と非内臓脂肪型肥満群(N-VF 群)に分類し、各肥満群について SFA を従属変数、VFA
介
を独立変数とする回帰分析を行った。分析は中年者群(65 歳未満)と高齢者群(65 歳以上)それぞれについて実施した。
回帰分析の結果、SFA と VFA の相関は、高齢群では N-VF 群が r=0.608、VF 群が r=0.227 であり、先行研究と同様な傾
209
哲
史
社
心
向が認められたが、中年群では N-VF 群が r=0.449、VF 群が r=0.412 であった。SFA と VFA の関係は年齢段階によって
異なる可能性が示唆された。
GB11[センターB]
8 月 27 日
15:42
測 27 − 012
片脚立位成就能力の違いが前方補助を伴う片脚立位時の重心動揺に及ぼす影響
○内田 雄(金沢大学大学院自然科学研究科)
佐藤 敏郎(新潟医療福祉大学)
出村 慎一(金沢大学)
杉本 寛恵(京都女子大学)
片脚立位トレーニングは安全性の面などから補助を伴って実施されるケースも多いが、片脚立位成就能力に優れる場
合、十分なトレーニング効果を得られない可能性がある。本研究は 1 分間の片脚立位を補助なしで成就可能な 17 名(成
生
バ
経
発
測
方
就群:72.4 ± 4.1 歳)および成就不可能な 13 名(非成就群:80.0 ± 5.1 歳)を対象として、前方補助を伴う片脚立位
時(片手を前方に設置された台の上に付いた状態での片脚立位)における両群の重心動揺の違いを明らかにすることを目
的とした。全ての被験者が重心動揺計上で 65 秒間の前方補助を伴う片脚立位を実施した。最初の 5 秒を除いた 60 秒間
の重心動揺軌跡が記録された。20 秒毎のX軸方向、Y軸方向、および総軌跡長を算出し、時間区分(0-20 秒、20-40 秒、
40-60 秒)および群を独立変数とした両要因に対応のある 2 要因分散分析を実施した。Y 軸方向軌跡長においてのみ非成
就群が成就群よりも有意に大きかった。結論として、片足立位成就能力に優れる者が前方補助を伴う片脚立位を実施した
場合、劣る者と比較して前後方向の動揺量が少ないことが明らかとなった。
GB11[センターB]
8 月 27 日
15:54
測 27 − 013
椅子立ち上がりテストにおける椅子の高さが測定結果に及ぼす影響について
○斉藤 洋介(横浜国立大学)
金子 敬二(明星大学)
海老原 修(横浜国立大学)
安田 翼(明星大学)
高齢化社会の進行にともなって、体力水準の低い老人が増加している。高齢者が質の高い生活を送るためには、日常生
活活動を支える身体機能を維持する必要がある。そのために現代では高齢者の体力を簡便に判定できる方法が検討されて
いる(村田ほか、2011)
。その中で、高齢者の下肢筋力やパワーをフィールドで簡便に評価する方法として、Jones et al
保
教
人
ア
介
210
(1999)が 30 秒椅子立ち上がりテストを開発した。
テストが高齢者の体力測定会で実施されていた様子を観察したが、テストに使用される椅子の高さは測定者の身長を考
慮しないで測定していた。日常生活における体力を測定する点では問題ないが、測定者自身の体力は測定できないのでは
ないのかと感じた。
そこで本研究では、測定者の身長から基準高となる椅子を設定し、基準高から身長の 5% 高くした椅子、低くした椅子
の 3 種類の高さを用意し測定をした。測定結果から、椅子の高さを測定者に合わせないことによって生まれる運動量の
違いが、体力測定の結果にどの程度影響してくるかを研究した。また研究結果から、今後行われるテストが測定者の体力
を的確に測定できる方法を提言する。
08 測定評価
GB11[センターB]
8 月 27 日
16:06
測 27 − 014
日常生活自立女性高齢者における認知機能水準別の各因子項目得点の差および分布特性
○山次 俊介(福井大学)
佐藤 進(金沢工業大学)
出村 慎一(金沢大学)
北林 保(東京理科大学)
介護予防一次事業参加高齢者は、自立した日常生活を営んでいるものの認知機能水準の個人差は大きい。本研究は、介
護予防一次事業参加女性高齢者 159 名を対象に、MoCA-J の合計得点に基づく 3 群の各因子項目(視空間、命名、注意、
哲
史
社
言語、抽象概念、遅延再生、見当識)得点の差および分布特性を検証した。MoCA-J 得点を軽度認知障害(MCI)のカッ
トオフ値 25 点、軽度アルツハイマー型認知症患者の平均値 19 点の 2 基準で 3 群(健常群 : 41 名、疑 MCI 群 : 71 名、
強疑 MCI 群 : 47 名)に分類した。各因子項目得点は群間で有意差が認められたが、多重比較検定において健常群と疑
MCI 群間の命名、抽象概念、見当識に有意差は認められず、また視空間、注意の効果量は 0.5 以下と小さかった。各群
の項目得点分布特性を比較したところ、強疑 MCI 群の 50%以上が言語、抽象概念、遅延再生の得点が 1 点以下であった。
また、健常群の 90%以上が満点となる見当識、命名、抽象概念は、強疑 MCI 群において、それぞれ 36.2%、42.6%、
66.0% にとどまった。認知機能の各因子は一様に低下しないこと、および言語、遅延再生から低下し始めることが示唆さ
れた。
GB11[センターB]
8 月 27 日
16:18
心
生
バ
測 27 − 015
韓国人男性高齢者における体格及び体力の年代差
○辛 紹熙(岐阜大学)
山田 孝禎(福井大学)
出村 慎一(金沢大学)
久保田 浩史(岐阜大学)
本研究の目的は韓国人男性高齢者における体格及び体力の加齢伴う変化特性を検討することであった。被験者は、全国
の高齢者体力測定(韓国体育科学研究院 , 2012)に参加した 65 歳以上の男性高齢者 1665 名であった(73.4 ± 5.6 歳)
。
経
発
測
彼らは、握力、30 秒間椅子立ち上がり(CS-30)
、長座体前屈、Timed Up and Go test(TUG)、8 の字歩行、6 分間歩行
及び 2 分間その場足踏みの測定に参加した。全ての体力項目に年齢との有意な相関が認められ(|r|=0.19 ~ 0.45)
、6 分
間歩行及び 8 の字歩行では、
年齢と中程度の相関が認められた(|r|=0.45, 0.40)。被験者を 5 歳刻みの 5 つの群に分類し、
年代差(1 要因分散分析)を検討した結果、全ての項目に有意な年代差が認められた。身長及び体重は、70 歳以降の年
代が 65 歳代に比べ低値であったが、70 歳代以降の年代間で有意差は認められなかった。TUG、8 の字歩行、2 分間その
場足踏み、握力及び長座体前屈は、概ね 75 歳代以降の後期高齢者が前期高齢者に比べ劣っていた。CS-30 は全年代にか
けて加齢による低下が認められた。以上より、韓国人男性高齢者の全ての体格及び体力項目に有意な年代差が認められ、
その中でも特に歩行能力及び下肢筋力の低下が顕著であった。
GB11[センターB]
8 月 27 日
16:30
測 27 − 016
地域在宅高齢者の転倒リスク保有数は転倒による外傷の程度に影響するか ?
○山田 孝禎(福井大学)
中田 征克(防衛大学校)
出村 慎一(金沢大学)
内山 応信(秋田県立大学)
本研究の目的は、地域在宅高齢者の転倒リスク保有数が転倒による外傷の程度に及ぼす影響を検討することであった。
地域在宅高齢者 1265 名(年齢 70.9 ± 7.3 歳)が、過去 1 年間の転倒経験およびそれに伴う外傷の有無、外傷の程度、
方
保
教
人
ア
介
Demura et al.(2011)の転倒リスク評価票に回答した。各対象の転倒ハイリスク要因(身体機能、疾病・身体症状、環
境および行動・性格)をスクリーニングし、その保有数ごとに転倒経験者、転倒に伴い外傷を負った者および外傷の程度
211
哲
史
社
心
生
バ
経
別の割合を求めた。238 名(18.8%)が転倒を経験し、転倒リスク保有数ごとの転倒経験者は、4 つ全てで 1 名(100%)
、
3 つで 23 名(75.0%)
、2 つで 89 名(43.8%)
、1 つで 189 名(24.3%)およびなしで 963 名(13.9%)であった。各群
の転倒経験者における転倒に伴う外傷を負った者の割合は、それぞれ 0、72.2、61.5、56.7 および 62.7% で、骨折は 0、
11.1、12.8、6.5 および 9.7% であった。転倒リスク保有数に関わらず、転倒に伴い外傷を負うリスクは同等であり、重
篤な外傷(骨折)を負うリスクも大差ないと示唆された。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
方
大学生の内科的疾患についてのアンケート調査
2014 年度入学生
○廣瀬 文彦(環太平洋大学)
斉藤 武利(白鴎大学)
三瀬 貴生(環太平洋大学)
白木 仁(筑波大学)
大学 1 年生 143 人に過去および現在の内科的な問題についてアンケート調査を行った。
過去についての質問項目は、病歴および手術歴、アレルギーの有無、脳震盪および熱中症の経験であった。現在につい
ての質問項目は、治療中の疾患および自覚症状の有無、家族の病歴であった。
結果は、主な病歴はぜんそく 16 人、貧血 10 人、心臓病 1 人、胃十二指腸潰瘍 1 人であった。手術歴は病気で 8 人、
けがで 7 人であった。アレルギーは食物で 8 人、薬で 2 人、動物で 1 人であった。脳震盪は 14 人が経験しており、熱
中症は 32 人が経験していた。現在治療中は病気で 2 人、けがで 3 人であった。現在の自覚症状は頭痛 11 人、めまい 6 人、
その他 4 人であった。家族の病歴は高血圧 9 人、糖尿病 5 人、脳卒中 3 人、その他 2 人であった。今後も調査を継続し
て学生の健康管理の一助にすることが必要である。
発
測
測 27 − 101
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 102
幼児の体力測定結果を定期的に報告することが保護者の意識に及ぼす影響
○出村 友寛(仁愛女子短期大学)
本研究の目的は、幼児の体力測定結果を定期的に家庭に報告することが保護者の運動に対する意識変化や行動変容に与
える影響を検討することであった。
保
教
人
ア
介
212
調査対象は、
同じ保育園に通う幼児 73 名
(男児 30 名、女児 43 名)の保護者であった。体力測定は、25m 走、立ち幅跳び、
体支持持続時間、およびテニスボール投げの 4 項目であった。体力測定の結果について、実施目的、測定種目の特徴、
測定方法、測定値、および年齢に応じた全国平均値を保護者に報告するとともに子どもおよび保護者の運動に対する意識
変化や行動変容に関するアンケートを配布した。約半年の期間を空け 2 度実施したアンケートの回収率は、ともに 56%(41
部)であった。χ2 検定の結果、
「体力測定後、運動への意識に変化はありましたか(保護者)」という項目においてのみ
有意差(p < .05)が認められ、2 回目の方が、運動への意識が高まった、と答えた保護者が多かった(1 回目 : 44%、2 回目 :
76%)。以上から、定期的に体力測定を行い、測定結果を保護者に報告することは、保護者の運動に対する意識を高める
可能性が示唆された。
08 測定評価
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 103
GDV からみた生体フォトンの基礎的研究
○坪内 伸司(大阪府立大学)
松浦 義昌(大阪府立大学)
浅田 博(大阪府立大学)
出村 慎一(金沢大学大学院自然科学研究科)
辛 紹熙(岐阜大学)
生物は、生体フォトンといわれる自発性粒子の放出である極めて微弱な発光をしており、生体の機能エネルギー状態を
哲
史
社
間接的に示している。この発光現象を検出する装置として GDV(Gas Discharge Visualization)がコロコトブ(サントペ
テルグ大学 : ロシア)により開発された。本研究では、成人男性 10 名を対象とし精神作業を行った場合に、生体フォト
ンの変動どの程度反映されるのかについて検討した。精神作業は、1 時間のドライビングシュミレーションテストを行い、
その前後での生体フォトンおよび POMS の測定を行った。生体フォトンの分析は、GDV エネルギーフィールドおよびサ
イエンティフィックラボラトリーソフトを用いて行った。その結果、精神作業負荷テスト前後の変動について比較検討し
た結果、対象者の評価項目の平均値において有意な差(p<0.05)が認められた。特にエントロピー、フォームコフィシ
エント、
シメントリーの変化は、
テスト中に交感神経系が優位な向上となっていることが示唆される。GDV による生体フォ
トン測定法は精神作業によるストレスをある程度反映することが明らかとなった。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 104
コオーディネーショントレーニングの観点を導入した伝承遊びの教材化
プログラムの成果を評価する試み
○續木 智彦(西南学院大学)
亀山 有希(日本体育大学)
久保 健(日本体育大学)
木下 佳子(日本体育大学)
今日の学校現場には「からだと動きの育ちそびれ」というべき事態が生じており、そのため特に幼児や小学校低・中学
年の体育授業が困難をかかえている。續木ら(2013)は、この困難を克服できる、
「からだと動き」の学習(トレーニング)
心
生
バ
経
発
測
プログラムの開発のため、伝承遊びを荒木(2009)の提唱する、種々の「運動的要素」を「スポーツ」などの行動水準
におけるパフォーマンスへと効果的に展開するコオーディネーショントレーニングの観点に学びつつ教材化を図った。こ
のプログラムの成果を検証するための要件の 1 つに、コオーディネーション能力の変化を評価する方法がある。しかし、
コ(オ)ーディネーション能力を評価する指標は多数報告されているが、どの指標がどのコオーディネーション能力を測
定するのに適切かは検討する必要がある。そこで本研究は、このプログラムの効果を検証するために、コオーディネーショ
ン能力を評価する指標を作成することを目的とした。
結果は、荒木(2008)の指摘する 4 つのコオーディネーション能力の観点である、①平衡能力、②定位分化能力、③
反応リズム能力、④運動結合・変換能力に即応する測定指標を作成した。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 105
立五段跳の総跳躍距離に関連する 3・4 歩目の跳躍動作の特性
男子シニア陸上短距離・跳躍競技者を対象とした項目反応理論による検討
○近藤 亮介(神戸大学大学院)
國土 将平(神戸大学)
金高 宏文(鹿屋体育大学)
立五段跳の総跳躍距離は、特に陸上短距離・跳躍種目の競技成績と密接な関係にある(Nesser et al.,1996;藤林ほか,
2013)。大きな総跳躍距離を得るには、3 歩目以降の跳躍距離が重要である(小林ほか,1999)。そこで本研究では男子
方
保
教
人
ア
介
シニア陸上短距離・跳躍競技者 42 名を対象に 3・4 歩目の跳躍動作の特性を検討した。熟練者と未熟練者の対比から 21
個の評価観点を設定し、各動作を 6 段階評価した。全体評価の観点を除く 20 変数にカテゴリカル主成分分析を適用し、
213
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
全分散の 74.3% を説明できる一次元的な 19 変数を抽出した。19 変数に項目反応理論の段階反応モデルを適用し、困難
度と識別力、対象者の能力値を算出した。特に高い困難度を示した動作は「空中での大腿の引き寄せ」、「反動的な前後開
脚動作」であり、識別力が高かったのは「反動的な挟みつけ動作」、「タメ作りの空中姿勢」であった。さらに、対象者の
能力値が総跳躍距離に及ぼす影響力は標準回帰係数で実測値に 0.867、身長比に 0.874 と高く、評価尺度の妥当性が確
認された。以上の知見は、動作習得の順序性を考慮した指導を行う有益な情報になると考えられる。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 106
サスペンショントレーニングシステムにおける姿勢維持および腕立て動作時の筋活動
○小林 秀紹(札幌国際大学スポーツ人間学部スポーツ指導学科)
近年、不安定なストラップを用いたサスペンショントレーニングシステムがレジスタンストレーニングの一環とし
て広く行われるようになってきた。本研究は一般的なトレーニング内容であるフロントプランクおよびプッシュアッ
プ時の筋活動について、通常のトレーニングとサスペンショントレーニングの比較を目的とした。姿勢維持はフロント
プランク、プッシュアップは通常の腕立て伏せの動作を行い、これを基本にサスペンショントレーニングシステム時
の筋活動の変化を観察した。参加者は様々な姿勢維持および腕立て動作を行い、その間、筋活動、床反力、三次元動作
が記録された。姿勢維持および腕立て動作は通常の形態の他、2 種類のサスペンショントレーニングシステム(TRX,
CrossCore180)を使用した。足部は床反力計上に置き、伏臥姿勢よりフロントプランクおよびプッシュアップ動作を行っ
たが、CrossCore180 においては胸椎の回旋も実施した。表面筋電図の測定は先行研究に従い、腹直筋、脊柱起立筋、大
殿筋、上腕二頭筋など 10 筋を被験筋とした。プッシュアップ動作において、基準動作に対する相対 EMG は、TRX にお
いて高値を示し、CrosCore180 においてはさらに高値を示した。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 107
アルペンスキー選手の指数関数を用いたスクワットジャンプテストにおける発揮パワーの
評価法について
方
○星野 宏司(北星学園大学)
佐々木 敏(北星学園大学)
保
アルペンスキー選手の体力評価において、スクワットジャンプテストは下肢筋群の爆発的筋力発揮能力を評価するため
教
人
ア
介
214
角田 和彦(北星学園大学)
に広く用いている。そこで、本研究の目的はアルペンスキー選手に必要な連続跳躍運動による爆発的筋力発揮能力を評価
するために、指数関数によるパワー発揮特性の評価法を確立することを目的とした。被験者はアルペンスキー選手男子
14 名、女子 12 名であった。被験者は床反力計上で連続スクワットジャンプ運動を 90 秒間行うボスコリバウンドジャン
プテスト(BRJ)と 2 秒に 1 回のスクワットジャンプ(SQJ)を重量負荷 0kg 時、重量負荷 10kg 時、重量負荷 20kg の
3 種類の異なる重量負荷で行った。本研究で行った 4 種類の連続跳躍運動によって得られた跳躍高と発揮パワーは経過時
間に伴って低下傾向を示していた。そこで、時系列に対する変化を全試行について、指数関数回帰をあてはめた結果、有
意な相関係数(r = 0.97~0.99, p < 0.05)が得られた。以上の結果から、指数関数を用いた評価法の有効性が示唆された。
08 測定評価
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 108
Wavelet 変換による足圧中心動揺スペクトルの経時的変動観察の試み
○内山 応信(秋田県立大学)
北林 保(東京理科大学)
出村 慎一(金沢大学)
山田 孝禎(福井大学) 本研究は、バランス能力の異なる 2 群の足圧中心(COP)動揺スペクトルの経時的変動の有無及びその相違を検討す
る上で、
時間周波数解析法「Wavelet 変換」の有効性を確認することであった。Wavelet 変換は、時系列データを時間(x)
、
哲
史
社
周波数(y)、及び振幅(z)の 3 次元の情報に変換しグラフ化することが可能であり、スペクトルの経時的変動を視覚的
に観察する上で便利な信号処理法である。被験者は健常男子大学生 27 名であった。被験者はバランステスト(閉眼片脚立)
により優群(141 秒以上)13 名及び劣群(43 秒以下)14 名に分けられた。各被験者は立ち易い脚で開眼片脚立位を維
持(90 秒)するよう指示され、その間、COP 動揺及び動揺速度時系列が 20Hz で記録された。各時系列に対し、基底関
数を Complex Morlet として Wavelet 変換を行った。両群とも片脚立位開始直後には 5Hz 程度の鋭い揺れが認められたが、
立位開始からしばらく時間が経過した時点で突発的に 0.8 ~ 3Hz 程度の大きな動揺を示す被験者が劣群にのみ多く観察
された。これらの結果から COP 動揺解析における Wavelet 変換の有効性を考察する。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
生
バ
測 27 − 109
GPS 機器を利用した大学女子サッカー選手における試合中の各ポジションの Timemotion 分析
○向本 敬洋(日本体育大学)
心
矢野 晴之介(日本体育大学)
日々のトレーニング内容を検討する際には事前に選手個人の試合中の動作特性や生理的応答を測定することが望ま
経
発
しい。本研究は大学女子サッカー選手を対象に、心拍数を同時に測定可能な GPS 機器(GPSports)を用いて試合中の
Time-motion 分析を行い、各ポジションの動作特性について検討した。被験対象は大学女子サッカー選手 15 名(DF5 名、
MF7 名、FW3 名)とした。試合時間は前後半 45 分間の計 90 分間とした。各ポジションにおける総移動距離は、それ
測
ぞれ 9891.5 ± 345.0 m(DF)
、10232.0 ± 689.1 m(MF)、10485.5 ± 664.0 m(FW)であり、前半と試合全体にお
いて、DF に比べ、MF の方が有意に高い値を示した。平均および最高心拍数はポジション間で有意な差はみられなかっ
たが、全ポジションとも前半よりも後半の方が有意に低い値を示した。スプリントの回数はポジション間で有意な差はみ
られなかったが、全てのポジションで最も出現頻度が多いスプリント時間は 1 秒と 2 秒であった。試合内容で異なるが、
本研究では MF の方が DF よりも運動量が多いことと、全ポジションともに低速度の走行の中で 1 秒~ 2 秒のスプリント
を反復する特徴が観察された。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
保
教
測 27 − 110
大学生における体格に対する自己評価と BMI による評価の相違
○角田 和彦(北星学園大学)
星野 宏司(北星学園大学)
方
佐々木 敏(北星学園大学)
大学体育の中で、自分の適切な体重を把握し体重をコントロールすることは重要である。本研究では、本学学生の自
人
ア
分の体格に対する評価と実際の体格を比較し、大学生の体格に関する意識を明らかにすることを目的とした。対象は、
2003 年から 2010 年の間に本学の体育実技を履修し、入学時に 18 歳であった学生とした(n=3567)。体格については、
質問紙による質問(1「やせている」
、2「ふつう」、3「太っている」)の回答を自己評価として用いた。また、体格の指
介
標として身長と体重から BMI(Body Mass Index)を算出した。BMI による判定では、男子は 10.1% が低体重(BMI18.5
未満)
、12.2% が過体重(BMI25.0 以上)に分類され、女子は 21.3% が低体重、4.8% が過体重に分類された。特に、女
215
哲
子は低体重への対応が重要であると考えられた。自分の体格に対する評価と BMI による判定が一致していたのは、男子
は 73.3%、女子は 62.4% であった。男子の 20.5% が BMI による肥満度判定よりもよりやせていると自己評価し、一方、
女子の 36.9% は BMI よりもより太っていると評価していた。大学生の男女で体格に対する評価の違いが明らかとなった。
史
社
心
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 111
保育の現場における体力・運動能力の測定と評価に関する支援の必要性について
○村瀬 智彦(愛知大学名古屋体育研究室)
保育の現場における体力・運動能力の測定と評価についての支援の必要性や興味関心の程度に関する資料は認められ
ない。本研究は、愛知県・岐阜県・静岡県西部地域の全私立幼稚園と名古屋市内の私立保育園(定員 100 名以上)の合
生
バ
経
発
測
方
計 688 園を対象に質問紙により調査を実施し、保育の現場における体力・運動能力の測定と評価に関する支援の必要性
や支援に対する興味関心の程度を明らかにすることを目的とした。112 園(16.3%)から回答が得られた。講習会の開
催、測定用具・器具の貸し出し、測定の補助、基準値の作成の 4 支援についての必要性と興味関心の程度を調査した結果、
講習会の開催に対して支援が必要であるとの回答は 41.8%、また興味関心が高いとの回答は 44.8%で 4 つの支援の中で
最も高い割合が認められた。幼稚園と保育園の間での比較では、特に講習会開催の支援が保育園において必要であるとの
割合(46.2%)が高かった。一方、
支援に対する興味関心の程度は、全ての支援に関して幼稚園の方が保育園よりも高かっ
た。これらの調査結果は、今後、保育の現場における幼児の体力・運動能力の測定と評価を普及・促進させるための基礎
資料として利用できる。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 112
体育・スポーツ科学で生まれた数理モデルや解析法(2)
質的データの時系列解析
○稲垣 敦(大分県立看護科学大学)
各学問分野では、研究対象となる現象に合った数理モデルや解析法が提案され、独自の発展を遂げて来た。その過程で
計量経済学や計量心理学等のように一つの学問領域として独立し、学会が設立されるまでに至った。体育・スポーツ科学
においては日本体育測定評価学会が、そして日本体育学会においては測定評価専門領域がこれに相当する。稲垣(1997,
保
教
人
ア
介
1999, 2002)は、運動イメージの発達を分析するために、質的データの時系列解析を提案した。この方法は 2 値データ、
頻度データ、ファジィデータで与えられた時系列データにトレンドを見いだす方法で、代数的に解が得られる。トレンド
モデルには、非可逆モデル、可逆モデル、循環モデル、増加・減少モデルの 4 種類があり、応用範囲は極めて広い。本
研究では、各トレンドモデルとその解法を概観して相違を整理し、データの特性等による限界とその対応策および今後の
可能性について考察した。今後、種々のデータへの適用を通して有用性を確認する必要がある。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 113
全身の筋力を反映する背筋力の低下
○木村 瑞生(東京工芸大学)
山本 正彦(東京工芸大学)
背筋力は、1999 年より導入された新体力テストの測定項目から除外された。そのため最近の学生の背筋力については、
その動向が掴めない状況にある。本研究では、一般男子大学生の背筋力の推移および背筋力に対する他の筋力(脚伸展パ
ワー、握力、足指筋力、垂直跳び)の関係に興味ある知見を得たので報告する。被験者は 1998 年度から 2013 年度まで
の一般男子大学生 6630 人(平均年齢 18.3-18.6 歳)であった。
216
08 測定評価
背筋力は 2009 年度から低下し始め、
2013 年度の値(104.7kg)は、1998 年度の値(131.3kg)の 79.7%まで落ち込んだ。
体重あたりの背筋力(kg/kg)は、脚伸展パワー(r=0.490)、握力(r=0.647)、足指筋力(r=0.494)、垂直跳び(r=0.480)
それぞれの関係において有意な相関を示した。このように、背筋力は全身の筋力を反映する重要な筋力であることが示唆
された。そして、その値が低下し続けている原因として、成人に至るまでの成長期の生活スタイルが考えられた。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 114
生活習慣が体力・運動能力に及ぼす影響
中学校 1 年生男子生徒を対象に
○津田 龍佑(金沢医科大学)
井上 明浩(金沢星稜大学)
哲
史
社
心
本研究では、生活習慣が体力・運動能力に及ぼす影響を検討することを目的とした。石川県下の U 中学校に在籍する
1 年生男子生徒 80 名を対象に、体力・運動能力テスト、生活習慣調査を実施した。体力・運動能力テストとして、身長、
体重、座高、肥満度、握力、上体起こし、長座体前屈、反復横跳び、20m シャトルラン、50m 走、立ち幅跳び、ハンドボー
ル投げを行わせた。生活習慣調査は、
「運動部や地域スポーツへの所属状況」、
「運動・スポーツの実施状況」、
「1 日の運動・
スポーツ実施時間」、
「朝食の有無」
、
「1 日の睡眠時間」
、
「1 日のテレビ(テレビゲームを含む)の視聴時間」の計 6 項目
を実施した。その結果、1 日の運動・スポーツの実施時間が向上すると、体力総合得点は増加する傾向がみられることが
明らかになった。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
バ
経
測 27 − 115
高齢者におけるラジオ体操の効果について
○武藤 三千代(日本医科大学)
白石 まりも(二松学舎大学)
生
渡部 鐐二(神奈川県立保健福祉大学)
発
測
国民的に親しまれているラジオ体操は特に高齢者を中心に実施され、高齢化社会の健康づくりに役立っている。今回は、
ラジオ体操を 3 年間以上週 5 日以上継続的に実施している 60 歳以上の高齢者を対象とし、全国の 8 地域(横須賀、
新発田、
大分、相模原、静岡、福山、鶴ヶ島、小金井)における参加者に、ラジオ体操実施の効果を検討するために測定を行った。
方
測定項目は形態(身長、体重、BMI、体脂肪率)
、生活活動力(10m 障害物歩行、5m ジグザグ歩行、長座体前屈、握力)
、
生理機能(加速度脈波、呼吸機能、骨密度)
、身体活動量等であった。測定時期は 2013 年 11 月から 2014 年 2 月であり、
各地域の体育館、公民館等で測定を行った。
その結果、全体的には、形態では体内年齢が実年齢より低く、生活活動力でも体力年齢が実年齢に比して低かった。生
理機能においてもラジオ体操実施は好影響を及ぼすことが示唆された。身体活動量からみると、ラジオ体操を実施するこ
とが活動量を増加させる一要因であることがうかがわれた。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
教
人
測 27 − 116
膝関節等尺性漸増運動における運動持続時間と筋酸素消費量との関連
○光岡 かおり(至学館大学)
保
友金 明香(大阪体育大学)
50%MVC の持続的等尺性運動における運動持続時間と遅筋線維割合との間に関連のあることが報告されている。近赤
外分光法(NIRS)による一時的動脈遮断法は筋酸素消費量(mVO2)を定量的に評価することが可能である。本研究で
ア
介
は 40%MVC から 1 分ごとに 10% を増加させる漸増負荷を用いて、オールアウトまでの間欠的な膝関節等尺性伸展運動
を行わせ、大腿直筋部の TOI(Tissue Oxygenation Index;組織酸素化指標)を測定し、安静時に対する運動終了後の
217
哲
史
社
心
生
バ
経
mVO2、運動持続時間(ET)
、筋力の指標である体重支持指数(Weight Bearing Index:WBI)
、および全身持久力の指標
である 20m シャトルラン・テスト(SR)との関連について、8 名の女子ラクロス選手を対象に検討した。その結果、ET
と mVO2 との間に有意な正の相関(r=0.74、p<0.05)が、ET と WBI との間に有意な負の相関(r=-0.84、p<0.01)がそ
れぞれ認められ、他の項目間に関連はみられなかった。本運動は局所に限定されており、本漸増負荷運動の持続には筋の
酸素消費が関与していることが示唆された。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
方
保
教
人
ア
介
218
静止撮影像を用いたクラシックバレエにおける「構え姿勢」の評価
○末吉 のり子(新潟大学大学院)
村山 敏夫(新潟大学)
我々は先に、幼少時からバレエを継続してきた愛好家と成人からバレエを始めた愛好家では、立位姿勢での脊柱アライ
メントや体幹筋の状態に違いがあることを X 線撮影像と CT 撮影像から明らかにした。バレエでは股関節から両下肢を外
旋させ、両つま先が 180°開いたまま両足を重ねた状態を足 5 番ポジション(5Pos)という。5Pos は多くのバレエ動作
時の「構え姿勢」となるため、その姿勢アライメントの評価方法を開発することはバレエ技術向上にとって重要である。
そこで本研究では静止撮影像を用いた 5Pos における姿勢アライメントの評価が可能であるかの検討を行った。被験者を
矢状面よりデジタルカメラで撮影した画像を、ImageJ を用いて解析した。耳孔、肩峰が支持基底面内の中心点と一直線
になる場合を「正しい構え姿勢」とし、その直線から耳孔、肩峰がどの程度離れているかを測定した。結果、被験者が「正
しい構え姿勢」を保持できているか、そうでないかを区別でき、静止画像を用いて 5Pos の「構え姿勢」を評価できると
考えられた。評価結果を被験者に還元することで、技術の向上や怪我の回避へ結び付けられる可能性が示唆された。
発
測
測 27 − 117
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 118
Functional Movement Screen(FMS)の評価法の検討
大学女子選手を対象とした評価法
○樋口 栄美穂(立命館大学大学院)
岡本 直輝(立命館大学)
スポーツ選手の身体の状態を観察するために、
近年ファンクショナルムーブメントスクリーン(FMS)が用いられている。
しかし評価法については議論すべき課題が多い。そこで本研究は、大学女子選手を対象とした評価法について検討するこ
とを目的とした。被験者は陸上長距離、陸上短距離、ラクロス、テニスの選手らとした。FMS は簡単な動作を行うこと
で動作の制限や非対称性を明らかにすることができる。7 つ種目から構成されており各種目 3 点満点とし合計点で評価す
る。5 種目は左側と右側を行う評価法である。被験者をケガあり群とケガなし群に分け比較検討を行った。陸上長距離選
手についてみると、ケガあり群の得点は 16.6 ± 1.6 で、ケガなし群は 18.2 ± 1.5 で両群間に差が示された(P < 0.05)
。
さらに各種目毎にみると長距離選手の股関節の柔軟性の項目でケガあり群の値はケガなし群より有意に低い値を示した
(P < 0.05)
。ケガあり群のなかで左側と右側の得点差がある人数は、ケガなし群の人よりも多い値を示した(P < 0.05)
。
大学女子選手の評価は合計得点ばかりでなく各種目や左側と右側を区分して評価することが必要であると考える。
08 測定評価
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 119
競技力が高いテニス選手のフットワーク能力を構成する体力的要素
○今西 平(立教大学)
四宮 邦泰(大阪体育大学大学院)
鈴木 奈都美(大阪体育大学)
梅林 薫(大阪体育大学)
テニス選手に求められる能力の一つとしてフットワークが挙げられる。先行研究においてもテニス選手のフットワーク
能力を評価する方法として様々なテストが試みられているが、競技成績を反映する評価方法を提示するには至っていない。
哲
史
社
そこで本研究は、19-22 歳のテニス選手・男女:37 名を対象として、競技成績とテスト結果について運動能力と体格の
関係性から分析し、テニス選手の競技力を反映するフットワーク能力の指標を検討した。その結果、先行研究と同様、疾
走速度や跳躍力、持久力を評価するテスト項目では競技成績との関係性は弱かった。その一方で、競技成績に優れた選手
ほど制動能力を重点的に評価する「505 アジリティテスト」のタイムを BMI で除した値が小さいことが示された。この
ことは、テニス選手がより高い競技力を得るためには、コートカバー能力とボール打撃に影響する身体質量の両面が求め
られていることを示唆するものである。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
生
バ
測 27 − 120
体重負荷指標値と骨量及び骨代謝マーカーとの関係
○小山 雄三(成蹊中学高等学校)
心
安田 俊広(福島大学)
骨強度はストレスがかかる回数よりも負荷の大きさが重要であることが示唆されている。そこで本研究は中高年女性を
対象に、歩行数に体重を乗じた体重負荷指標値と骨量及び骨代謝マーカーとの関係を明らかにすることを目的とした。対
経
発
象は閉経後の 55 歳〜 62 歳の中高年女性 9 名である。骨量は超音波骨評価測定装置(Benus Ⅲ,石川製作所製)で右踵
骨の超音波伝播速度(SOS)と骨梁面積率を測定した。骨代謝マーカーは血清のオステオカルシン(OC)と I 型コラーゲ
ン架橋 N −テロペプチド(NTX)を IRMA 法と ELISA 法で求めた。日常歩行数は加速度歩行計(ライフコーダ、スズケ
測
ン社製)を用いて測定間にあたる 3 ヶ月間記録し、
一日あたりの平均歩行数を算出した。なお測定は 6 ヶ月の間隔を空け、
2 回おこなった。測定の結果、SOS 及び骨梁面積率に測定前後で有意な変化は認められなかった。また OC や NTX につ
いても変化は認められなかった。しかし、歩行数と各測定項目との相関関係についてみると体重負荷指標値と NTX との
間にのみ負の相関関係(r =− 0.82)が認められた。これより、体重負荷指標値を増大させることで骨吸収マーカーであ
る NTX の亢進を抑制できる可能性が示唆された。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
保
測 27 − 121
生活習慣病関連疾患の保有数が運動機能及び身体組成に及ぼす影響
○尾山 裕介(新潟大学大学院、医療法人宮仁会 猫山宮尾病院メディカルフィットネス CUORE)
村山 敏夫(新潟大学)
方
太田 玉紀(医療法人宮仁会 猫山宮尾病院)
内臓脂肪症候群であるメタボリックシンドローム(以下メタボ)と運動器症候群であるロコモティブシンドローム(以
下ロコモ)は深く関係があるとされている。メタボによって体に負担がかかり、運動量が減少してロコモになる場合もあ
教
人
ア
れば、逆にロコモによって運動量が減少し、体重が増加してメタボになる場合も考えられる。したがって、メタボとロコ
モの 2 点から着目していく必要がある。そこで、体力測定と体組成測定から運動機能と身体組成について健常者と生活
習慣病罹患者の比較・検討を本研究の目的とした。被験者は健常者 30 名、生活習慣病罹患者 50 名とし、生活習慣病罹
介
患者は高血圧症、
糖尿病、
脂質異常症、
肥満症の疾患のうちいずれか 1 つ以上を保有している者と定義した。健常者を N 群、
疾患を 1 つ保有している者を D1 群、
2 つ以上保有している者を D2 群とした。体力測定は握力、全身反応時間、長座体前屈、
219
哲
史
社
心
片足立ち、上体起こし、CS-30、FRT とした。体組成測定は体重、筋肉率、部位ごとの筋肉率、体脂肪率の測定を行った。
これらの項目について 3 群で比較・検討を試みた。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 122
テニスにおけるジュニア期から強化しておきたい体力要素の研究
○鈴木 奈都美(大阪体育大学)
四宮 邦泰(大阪体育大学大学院)
今西 平(立教大学)
梅林 薫(大阪体育大学)
主要なスポーツにおいて国内外でトップレベルの成績を収めるためには、ジュニア期からの継続した練習や体力作りが
重要であるとされている。一方で、その競技力と体力の関係性を調査した研究は乏しい。テニスも例外ではないが、先行
生
バ
経
発
測
方
研究で調査されている測定方法はテニスの競技特性を考慮したものとは言えなかった。そこで本研究は、ジュニアテニス
選手の強化育成に有益な体力テスト項目を検討することを目的とした。テニスを専門競技とする 9 歳〜 22 歳の選手・男
女:98 名を対象とし、体力テスト項目は日本テニス協会が従来から行なっていた方法(旧テスト)と、本研究で新しく
採用した方法(新テスト)を用いた。年齢と各体力テスト項目の値で相関関係を分析してみたところ、旧テストでは強い
相関が見られたが、新テストは弱い相関であった。さらに、新テストで優れた値を得られる選手は、戦績も優れる選手で
あった。これらのことは、新テストはテニス選手に求められる体力要素を低い年齢の時期から計測できている可能性を示
唆するものである。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 123
集団スポーツ運動療法への参加率が男性高齢者の身体機能に及ぼす影響
○杉本 寛恵(京都女子大学)
長澤 吉則(京都薬科大学)
出村 慎一(金沢大学)
佐藤 進(金沢工業大学)
効果的な運動プログラムを作成するにあたり、高齢者の集団スポーツ運動療法の参加状況が身体機能に及ぼす影響を明
らかにすることは重要である。本研究の目的は、定期的(1 年間週 2 回)に集団スポーツ運動療法を行っている男性高齢
者 37 名(77.1 ± 6.1 歳)の運動参加状況が身体機能に及ぼす影響を検討することであった。1 年間の参加率が 40%未
保
教
人
ア
介
満を低群(n=11)、70%以上を高群(n=26)に分類し、運動療法前後において身体機能測定を実施した。対象者は、期
間中毎回卓球および有酸素運動を中心とした集団スポーツ運動プログラムを実施した。身体機能測定は、文科省の新体力
テスト、ステッピングおよび TUG とした。群および療法前後差を検討するために、1 要因にのみ対応のある二要因分散
分析を実施した。上体起こしおよび開眼片足立ちは、参加率高群が低群より有意に高かった。10m 障害物歩行および 6
分間歩行は、
いずれの群においても運動後が運動前より有意に劣った。男性高齢者の集団スポーツ運動療法の参加状況は、
上体おこしおよび開眼片足立ちに影響する。一方、10m 障害物歩行および 6 分間歩行は、参加状況に関わらず低下する
可能性がある。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 124
幼児における立ち幅跳び指数の検討
立ち幅跳び身長比による身体特性
○宮口 和義(石川県立大学)
出村 慎一(金沢大学)
松浦 義昌(大阪府立大学)
春日 晃章(岐阜大学)
I県 S 市の調査によれば、かつて(30 年前)は年長児になると過半数の園児が身長以上の距離を立ち幅跳びで跳べて
220
08 測定評価
いた。しかし現在、
身長は殆ど変わらないが、
その達成者は 3 割程度であった。年少児でも達成者がいることを考慮すると、
身長をひとつの目標値に掲げることは啓発の上でも有効と思われる。本研究は立ち幅跳び指数(立ち幅跳び / 身長)が幼
児において有効な指標となりうるか検証するため、身長以上の距離を跳べる園児と跳べない園児の運動能力および生活行
動について比較検討することを目的とした。被験者は S 市の 33 保育園に登園する年中・年長児 1546 名であった。20m 走、
テニスボール投げ、および腕立て支持時間の 3 種の運動能力測定を行うとともに、担当保育士による生活行動調査を実
施した。運動能力について男女別に分散分析を行った結果、身長を跳べる園児は、跳べない園児に比べ、男女とも 20m 走、
哲
史
ボール投げ、および腕立て支持時間のいずれも優れていた。生活行動との関係については、身長を跳べない園児の特性と
して「咄嗟の動きができない」
「群れ遊びをしない」「体がかたい」「理解力が低い」「注意力・判断力が鈍い」等が挙げら
れた。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
心
測 27 − 125
成長期のスポーツ選手における環境条件の違いによる身体的特徴の比較
○須藤 明治(国士舘大学)
生
山田 健二(国士舘大学体育研究所)
本研究は、2011 年と 2012 年の 2 年間にわたって継続的に計測することが出来た中学生のサッカー選手と水泳選手を
対象にした。運動環境の違いによる成長期スポーツ選手の経年的変化および種目間の違いを明らかにした。測定項目は、
体組成を測定し、超音波法を用いて筋厚を計測した。その結果、筋肉量では、サッカー選手と水泳選手ともに経年的に増
加していた。種目間比較においては、2011 年と 2012 年ともに有意に水泳選手が高値を示した。体重に対する筋肉量で
の種目間比較では、2011 年と 2012 年ともに有意にサッカー選手が高値を示した。また、右の腓腹筋外側頭筋厚の体重
1/3 に対する筋厚においては、水泳選手が経年的に有意に増加した。また、左の腓腹筋外側頭筋厚において、水泳選手は
経年的に増加していた。体重 1/3 に対する筋厚においても、水泳選手が経年的に有意に増加した。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
社
バ
経
発
測
測 27 − 126
女性介護労働者の健康と体力
○松浦 義昌(大阪府立大学)
出村 慎一(金沢大学)
長澤 吉則(京都薬科大学)
松本 直也(桃山学院大学)
坪内 伸司(大阪府立大学)
介護者は、労働による身体的負担が大きいため、特に健康・体力面に対する不安を訴える者も少なくない。本研究の目
的は、女性介護労働者と女性一般労働者の健康・体力の実態を明らかにすることであった。対象者は、女性介護労働者
17 名(50.2 ± 7.4 歳)と女性一般労働者 15 名(52.6 ± 6.5 歳)で、介護労働者は全員ヘルパー 2 級以上の資格を有し
ていた。女性一般労働者は、特に運動習慣を持たない会社員、事務職、教員、飲食業、主婦等の職業であった。対象者に
は、健康度・生活習慣調査(DIHAL.2,(株)トーヨーフィジカル)と形態および体力測定を行った。両者の平均値の差を
対応のないt検定により検討した。DIHAL.2 における健康度、運動、食事の項目は、いずれも差は認められなかった。し
かし休養に関連したストレス回避の項目は、介護労働者の方が有意に低かった。形態(身長、体重、BMI)と体力(握力、
背筋力、長座体前屈、背筋力値)には、有意差は認められなかった。女性介護労働者は、特に労働によるストレス回避や
対処がうまく遂行されていない現状が明らかとなり、ストレスマネジメントの必要性が示唆された。
方
保
教
人
ア
介
221
哲
史
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 127
Fitness Age Score(FAS)を用いた自立困難リスクの予測(亀岡 Study)
○吉田 司(亀岡市役所)
木村 みさか(京都学園大学)
本研究は、Kimura(2012)の考案した Fitness Age Score(FAS)の得点を用いて、高齢者の中期的な将来における自
社
立困難リスク(=要支援・要介護認定及び死亡)の予測が可能であるかを明らかにすることを目的とした。
対象者は地域在住高齢者 930 人である。FAS 項目は、10m 歩行時間、ファンクショナルリーチ、開眼片足立、垂直跳、
握力で、Kimura の方法に従って得点化した。FAS 点と測定後 2 年間の対象者の自立困難リスクによって ROC 曲線を作図
心
生
バ
経
発
測
し、カットオフ値を求めた。
816 人が全項目完遂し 37 人が自立困難な状態になった。ROC 曲線の AUC は 0.72(p<0.001)で、カットオフ値は
FAS 点- 0.99/ - 1.00 であり、感度は 62.2%、特異度は 69.0% であった。- 1.0 以下を低体力群、それより大きい群を
を高体力群とし、生存曲線を作図した。低体力群は高体力群よりも有意に自立困難な状態に陥っており(p=0.003)、低
体力群の 2 年間の総リスク発生率は 8.37%、高体力群は 2.71%であった。また、FAS 項目を完遂できなかった 114 人の
うち 23 人が 2 年以内に自立困難になり、完遂の有無とリスク有無のオッズ比は 5.321 だった。
FAS を用いて、自立困難リスクを予測できる可能性が示唆された。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 128
静的股関節内転筋力発揮による瞬発的筋力の評価方法の検討
○中田 征克(防衛大学校)
山次 俊介(福井大学)
出村 慎一(金沢大学)
高橋 憲司(金沢大学大学院)
本研究の目的は、瞬発的に股関節内転筋力を発揮したときの筋力発揮値を経時的に記録し、評価変数相互間の関係から
瞬発的筋力の評価方法を検討することであった。被験者は 20 歳~ 22 歳の男子 10 名であった。被験者を地面に足が着
かない高さのテーブル上に座らせ、測定器の左右パッド部分を両膝の内側で挟む形で筋力を発揮させた。最大股関節内転
方
保
筋力の測定と瞬発的な股関節内転筋力発揮(5 秒間)の測定をそれぞれ 2 試行実施し、筋力発揮値が大きい方を代表値と
した。筋力発揮値はサンプリング周波数 20Hz で記録した。出村ら(1999)の報告を参考にした評価変数において、相
互関係を検討した結果、瞬発的な股関節内転筋力発揮における筋力発揮値の最高値は、筋力発揮開始から 2 秒間の力積
と有意な関係(r = 0.86)が認められた。最高値までの到達時間と最高値の 90%に到達する時間は、最高値および 2 秒
間の力積と有意な相関は認められなかった。瞬発的な股関節内転筋力発揮において筋力発揮値の最高値到達時間と最高値
90%到達時間は力量に関する変数と異なる能力を評価できる可能性がある。
教
人
ア
介
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 129
男子バスケットボール選手におけるジュニア期高身長選手の形態的特徴
○袴田 智子(国立スポーツ科学センター)
稲葉 優希(国立スポーツ科学センター)
奥野 真由(国立スポーツ科学センター)
池田 達昭(国立スポーツ科学センター)
小山 孟志(東海大学)
尾崎 宏樹(Singapore Sports Institute)
船渡 和男(日本体育大学)
佐々木 三男(慶應義塾大学)
本研究は、男子バスケットボール選手の中でも、ジュニア期の高身長選手の体肢長に注目し、その形態的特徴を明らか
にすることを目的とした。対象者は、小・中学生男子 175cm 以上の高身長バスケットボール選手 43 名(14.7 ± 0.9 歳,
189.7 ± 5.3cm,76.6 ± 10.7㎏:以下ジュニア)とし、成人男子バスケットボール選手 154 名(24.7 ± 4.2 歳,191.7
222
08 測定評価
± 9.0cm,
88.8 ± 13.2㎏:以下シニア)を比較の対象とした。三次元人体計測法を用いて身体計 24 部位の人体計測を行っ
た。得られた測定値から体肢長については身長で除し、前腕長および下腿長については、それぞれ上腕長および大腿長で
除し標準化した。ジュニア選手は、身長や体肢長についてはシニア選手と同等であったが、前腕長/上腕長比および下腿
長/大腿長比においては、ジュニア選手(84.3 ± 4.3%,99.4 ± 3.6%)がシニア選手(80.6 ± 3.8%,95.9 ± 3.5%)
より大きい値を示した。ジュニア期の選手の特有の形態は、個々の発育状態に大きく影響するものと考えられ、以上の指
標は選手の発育段階の推定に役立つ可能性が示唆された。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 130
ハンドボール競技におけるシュートコースと筋力の関係
哲
史
社
心
○坂井 智明(日本ウェルネススポーツ大学)
本研究では、ハンドボール競技におけるシュート速度とそのコントロールの関係を等速性筋力から検証した。対象は、
3 年以上の競技歴を有し、
全日本大学選手権大会に参加経験のある男子大学生 25 名であった。対象者にウォーミングアッ
プを十分に行なわせた後、ステップシュート、ジャンプシュートの速度をスピードガン(KANSAI S&A 社製ストーカース
ポーツ)を用いてゴールネット裏からランダム順に評価した。シュートコースは、ゴール中央、利き手側ゴール上方、非
利き手側ゴール下方の 3 カ所とした。筋力の評価は、BIODEX 社製多用途筋機能評価運動装置を用いて、角速度膝関節
30 度 / 秒、股関節 45 度 / 秒、肩関節 60 度 / 秒、肘関節 60 度 / 秒に設定して行った。ステップシュートでは、ゴール
中央と利き手側ゴール上方への場合は肘関節の標準偏回帰係数β =0.70 以上であったが、非利き手側ゴール下方への場
合はβ= 0.25 程度であった。ジャンプシュートでは、すべてのコースにおいて肩関節、膝関節が選択され、肩関節の振
り下しは利き手側ゴール上方へのシュートの場合に高値を示した。本研究によって、シュートコースごとにさまざまな筋
が動員されていることが明らかになった。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 131
生
バ
経
発
測
高校生および大学生自転車競技選手の下肢筋厚が 30 秒間全力ペダリングに及ぼす影響
○石井 泰光(国立スポーツ科学センタースポーツ科学研究部) 黒川 剛(鹿屋体育大学 スポーツ・武道実践科学系)
山本 正嘉(鹿屋体育大学 スポーツ生命科学系)
自転車競技のパフォーマンスを向上させていくためには、競技特異性を考慮して筋力を高めていく必要がある。これま
で自転車競技の国内トップ選手を対象に、自転車エルゴメーターによるパワー発揮特性と下肢の筋量との関係は検討さ
れているが、高校生および大学生を対象にした研究は見あたらない。そこで本研究では、自転車競技を専門的に行って
いる高校生 12 名および大学生 13 名を対象に、自転車エルゴメーターによる 30 秒間の全力ペダリングを行わせると共
に、形態計測および超音波測定法による下肢の筋厚を計測した。上記の測定日から 1 年以内に行われた自転車競技の短
距離種目のベストタイムについても調査した。その結果、すべての対象者で見た場合、大腿後部および下腿後部の筋厚は、
30 秒間の全力ペダリングの最大および平均パワーに有意な相関関係を示し、相関係数は 0.7 以上であった。本研究により、
高校生および大学生においても、自転車競技の短距離種目のパフォーマンスを向上させるためには、股関節伸展および足
関節底屈筋群を強化することが重要であることが示唆された。
方
保
教
人
ア
介
223
哲
史
社
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 132
女子バスケットボール選手における一対一局面の守備能力と反応を伴う方向変換走能力と
の関係
○吉田 雄大(筑波大大学院)
木塚 朝博(筑波大)
大田 穂(筑波大大学院)
本研究では、大学女子バスケットボール選手を対象として、一対一局面の守備能力と反応を伴う方向変換走能力との関
係を明らかにすることを目的とした。バスケットボールの一対一場面を想定した、攻撃側のドリブルカットインに対する
守備を行う課題(一対一課題)を行った。一対一課題では守備側の映像を撮影し、4 段階の基準を作成することで守備を
心
生
得点化した。この得点を用い、被験者を守備上位群と守備下位群に群分けを行った。そして、反応を伴う方向変換走課題
に加え反応を伴わない方向変換走課題を行い、守備上位群と守備下位群で群間の比較を行った。方向変換走の角度は 90°
とし、反応を伴う場合は前方の光刺激に反応して右または左方向に方向変換を行った。群間で両方向変換走課題のタイム
を比較した結果、反応を伴わない方向変換走のタイムでは群間に有意差は認められなかったものの、反応を伴う方向変換
走のタイムでは守備上位群が有意に短かった。これらのことから、バスケットボールにおける一対一局面の守備能力を評
価する場合には、単純な方向変換走よりも反応を伴う方向変換走がより有用である可能性が示された。
バ
経
発
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 133
高齢女性におけるバランスディスク使用による体力変化
○佐藤 敏郎(新潟医療福祉大学)
高橋 憲司(帝京平成大学)
出村 慎一(金沢大学)
杉本 寛恵(京都女子大学)
バランスディスクは、体幹トレーニングやリハビリ、姿勢矯正など多岐に渡り使用されている。そこで本研究では、高
測
齢女性を対象に日常生活においてバランスディスクを使用し、使用前後での体力変化を明らかにすることを目的とした。
対象は、高齢女性 17 人(介入群:9 人、対照群:8 人)で、年齢は 60 ~ 79 歳の範囲にあり、対象者の多くは運動教室
の積極的に参加していた(平均年齢 68.7 歳)
。事前に本研究の主旨および測定内容を説明し、研究に対する同意を得た。
方
保
教
人
ア
介入前後で実施した体力測定項目は、体重、握力、閉眼片足立ち、上体起こし、長座体前屈、全身反応時間、脚伸展筋力、
足指筋力の 8 項目であり、介入期間は 8 週間、分析は二要因分散分析を適用した。その結果、有意な交互作用が認めら
れたのは握力であり、その他の項目については有意差が認められなかった。これらのことから、単にバランスディスクを
所有し、自宅において簡易に短期間使用しただけでは体幹筋力やバランス能力などの体力向上の効果は得られないことが
示唆された。今度さらに多くの高齢者を対象に、長期間の運動の実施や運動内容の再検討が必要であろう。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 134
前思春期段階児童における中強度の有酸素運動による認知機能への影響
○菅原 知昭(新潟大学大学院)
村山 敏夫(新潟大学)
高野 麻衣子(新潟大学大学院)
近年、脳機能への運動の影響に関する研究が多くなされ、10 分程度の中強度の有酸素運動が、認知機能の向上や、海
馬の発達に好ましい影響をもたらすという研究成果が出てきている。また、米国では 1 時限目開始前に有酸素運動を行
介
うことで学力が向上したという報告も出ている。しかし、小学生児童を対象とした研究の報告はまだ多くはない。本研究
の目的は、前思春期段階児童において、1 時限目開始前に行う 10 分程度の中強度の有酸素運動が認知機能にどのような
影響与えるかを確かめることである。研究対象は新潟市内 K 小学校の 5、6 年生児童とした。対象者を有酸素運動実施群
と非運動実施群とに分け、認知機能を測るためのストループテストと、課題に取り組んでいる際の被験者の状態を見取る
224
08 測定評価
ための NASA-TLX を、各群において活動の前後に実施した。活動前後の結果を比較し、即時的な運動の効果を確かめる
と共に、活動による持続効果を見るために、2 時間後、5 時間後にも同様のテストを行い活動前の結果と比較を行った。
その結果、10 分間の中強度の有酸素運動実施群において、即時的な認知機能の向上が推察された。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
史
測 27 − 135
足底知覚トレーニングが股関節ストラテジーに及ぼす影響
○高野 麻衣子(新潟大学大学院)
菅原 知昭(新潟大学大学院)
哲
尾山 裕介(新潟大学大学院)
村山 敏夫(新潟大学)
社
心
これまで、能動的な足底知覚トレーニングの介入により重心総軌跡長が減少することが報告されている。しかし、その
重心総軌跡長の減少は、立位姿勢アライメントの改善が伴って起こったのか、それとも、立位姿勢アライメントの改善は
伴わず、足底感覚を促通したことによって起こったのかについては明らかになっていない。そこで本研究は、足底の体性
感覚促通が重心軌跡、および立位姿勢アライメントにどのような影響を及ぼすのかについて明らかにすることを目的とし
た。対象者は、
骨盤前傾変位もしくは骨盤前方移動が認められる成人男女とした。静的姿勢制御の評価には足圧中心(Center
of Pressure : COP)を用い、立位姿勢アライメントは矢状面より静止画像による姿勢評価を行った。また、足底知覚トレー
ニングの介入前後における股関節周辺の筋活動変化を考察するため、表面筋電計を用い計測した。これらの関連性を見る
ことにより、足底知覚トレーニングが股関節ストラテジーに及ぼす影響を検証した。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 136
静的立位姿勢における健常高齢者の動揺分布特性
○北林 保(東京理科大学)
辛 紹熙(岐阜大学)
出村 慎一(金沢大学)
坪内 伸司(大阪府立大学)
本研究の目的は、健常な高齢者の動揺分布特性を明らかにすることであった。被験者は障害のない 60 歳以上の在宅高
齢者 311 名と青年 380 名であった。1 分間の足圧中心動揺測定を 1 試行行なった。測定装置はアニマ社製の重心動揺検
生
バ
経
発
測
方
査システムを用いた。動揺変数は、距離、面積、速度、パワー密度、及びベクトル長の各領域から信頼性の高い 30 変数
を利用した。青年との比較結果から、高齢者は、単位軌跡長、X 方向実効値、速度 5 変数、及び速度ベクトル 4 変数が
有意に高かった。また、高齢者は青年の平均+1SD 以内に約 80%~ 90%が属したが、動揺の大きさや速度に関する変数
は半数近く(40%~ 50%)がその範囲外に属した。また、殆どの変数は平均+3SD の範囲内に属するが、動揺の大きさ
や速度に関する変数は、10%以上もの高齢者がその範囲外に属した。その特性は速度変数の中でも特に前後方向に関す
る変数にみられた。これら変数は細かな動揺を繰り返す高齢者の動揺特性を反映している。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
教
人
測 27 − 137
中高齢者のロコモティブシンドローム予防に向けた筋収縮速度時間評価法の提案
○村山 敏夫(新潟大学)
二宮 翼(新潟大学大学院)
保
尾山 裕介(新潟大学大学院)
生理学的および神経科学的観点から考察しても高齢者への運動プログラムの取り組みは大いに意義深く、多くの自治体
ア
介
などによって積極的に高齢者への健康教室などで運動プログラムが導入されている。これまでに様々な高齢者への運動プ
ログラムの開発が手がけられてきたが、それに合わせて体力評価の方法も検討する必要性がある。体力を構成する因子は
225
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
226
多く、それらを評価する手法を今後も検討することは意義がある。ここでは高齢者の運動プログラム実施による運動機能
向上の評価を簡易に測定できることを目的として、特に体力構成因子の敏捷性に属する反応時間評価に着目した。反応時
間は、特に中枢神経系の反応時間は刺激から反応のための筋活動開始までの筋放電潜時として測定が可能であり、現在は
全身反応測定などによって評価されている。しかし測定対象者を高齢者と考えると、現在行われている方法では、跳躍に
よって測定マットから全身が浮き上がらなければならず、整形疾患罹患者や虚弱体力者には実施できない場面に立ち会う。
そこで我々は、座位による反応時間測定を用いて、高齢者の運動機能向上における敏捷性の測定評価を提案する。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 138
SD 法を用いた外的視覚情報刺激によるパフォーマンス評価
○二宮 翼(新潟大学大学院)
菅原 知昭(新潟大学大学院)
村山 敏夫(新潟大学)
我々はこれまで強度の異なるジャンプにおいて、動作直前の心的活動の影響を EEG(脳波測定器)によって検討を行っ
てきた。心的活動に外的刺激の影響が大きいことを報告してきた。本研究は、特に脳への影響が大きいとされる視覚情報
の差異に着目した。映像から得た視覚情報がどのように心的活動へ影響を及ぼし、大脳神経に出現するのか。さらに、映
像提示直後における筋力発揮の変化を検討し、映像とパフォーマンスの因果関係を探ることで評価の指標となりうるか検
討することとした。映像提示前に最大筋力発揮を測定し、その後に複数の映像を被験者に提示した。各々の映像において
EEG を用いたα波、β波の抽出を行い、映像提示後に再び最大筋力発揮を測定した。ここでは SD 法(source derivation
method)を実施し、主観評価を行なう。これらのことから、映像によって異なった心的活動が観察でき、それらにともなっ
たα波の増減、β波の出現が期待され、筋力発揮においても筋収縮の差異が期待できる。さらにここでは最大筋力発揮を
パフォーマンスの指標と定め、SD 法による評価として活用できるか検討する。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 139
口腔運動様式の違いが身体重心動揺に及ぼす影響
○福島 寛之(新潟大学大学院)
尾山 裕介(新潟大学大学院)
村山 敏夫(新潟大学)
身体重心動揺の改善は日常生活やスポーツの場面のパフォーマンス向上において役立つと考えられる。身体重心動揺の
改善方法の一つとして、咀嚼が挙げられる。先行研究では、咀嚼時の咀嚼筋筋活動に同期して、身体重心動揺が一時的に
停止、あるいは振幅が小さくなる変調を示していることが報告されている。そこで本研究では、他の動作において咀嚼筋
筋活動がなされた時、身体重心動揺が改善されるのかを明らかにしようと試みた。対象者は、平衡機能および顎口腔機能
に自覚的、他覚的に異常の見られない若年成人 50 名とした。対象者に対し、下顎安定位、ガム咀嚼、ガム噛みしめ、口
腔体操の 4 種類の条件における身体重心動揺を測定し、口腔運動様式の違いにより身体重心動揺が改善されるのかを明
らかにした。
08 測定評価
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 140
高校生陸上競技選手における大腿部筋厚と下肢最大筋力および最大無酸素性パワーとの関係
○米谷 茉里奈(日本女子体育大学基礎体力研究所)
佐藤 耕平(日本女子体育大学基礎体力研究所)
村岡 慈歩(明星大学教育学部)
大上 安奈(東洋大学食環境科学部)
大槻 曜生(日本女子体育大学基礎体力研究所)
定本 朋子(日本女子体育大学基礎体力研究所)
本研究では、高校生陸上短距離・跳躍種目の選手を対象に大腿部筋厚と膝関節伸展 / 屈曲筋力および下肢最大無酸素性
哲
史
社
パワーとの関係性を明らかにすることを目的とした。高校生陸上選手 17 名(16.6 ± 2.2 歳)を対象に、超音波 B-mode
法を用いて大腿前部(大腿直筋 + 中間広筋)と後部(大腿二頭筋)の筋厚を測定した。また、BIODEX SYSTEM3 を用い
て角速度 300deg/sec の膝関節伸展および屈曲筋力を計測した。さらに、Power Max V により最大無酸素性パワーを測定
した。その結果、大腿前部筋厚は膝関節伸展力と有意な正の相関関係(r=0.53; p<0.05)が認められたが、大腿後部筋厚
と膝関節屈曲力の間には関係性がみられなかった(r=0.34)
。一方、最大無酸素性パワーとの間には大腿前部・後部とも
に有意な相関関係(前部 r=0.58/ 後部 r=0.59; p<0.01)が認められた。本研究の結果、高校生陸上選手における大腿部筋
厚は最大無酸素性パワーと関係性が高いことが示された。一方、膝関節屈曲力は大腿後部筋厚を必ずしも反映しないこと
が明らかになった。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
心
生
バ
測 27 − 141
運動経験の違いにより生じる二重課題のパフォーマンスに関する検討
○金田 健史(白鴎大学教育学部)
野間 明紀(白鴎大学教育学部)
経
発
我々は日頃より自動車の運転やスポーツのプレー中にはひとつのことのみに集中することはできず、いくつかの事柄に
注意を分散しながらその動作を実行している。ヒトの有する注意機能には処理資源量があると考えられており、その配分
をすることで同時に複数の動作や課題を遂行することができると考えられている。そこで、本研究では二重課題を用いた
測
場合に運動経験の違いがパフォーマンスに影響するかについて検討することを目的とした。
実験参加者は大学バスケットボール部に在籍する女子選手 16 名、バスケットボールサークル所属の女子学生 10 名、
一般女子学生 13 名と 8 〜 13 歳までの児童 29 名であった。参加者には、聴覚オドボール課題を用いた認知課題とグリッ
プ把持動作を用いた追跡課題の二課題をそれぞれ単独で実施した oddball 条件、Grip 条件と、この両課題を同時に実施し
た二重課題条件をおこなわせた。この際の脳波、反応時間、追跡課題における発揮張力を記録した。本研究では、実験条
件から得られた反応時間、エラー率、および追跡課題へのパフォーマンスから、運動経験の違いにより生じる二重課題の
パフォーマンスについて報告する。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
保
教
測 27 − 142
発揮力量の異なる局面における筋力発揮調整能に及ぼす最大握力の影響
若年女性を対象として
○長澤 吉則(京都薬科大学)
中田 征克(防衛大学校)
方
出村 慎一(金沢大学)
久保田 浩史(岐阜大学)
人
ア
本研究では発揮力量の異なる局面における筋力発揮調整能(CFE)に及ぼす最大握力の影響を検討する。女子大学生
54 名(20.6 ± 1.2 歳)を同年齢の握力標準値(28.6 ± 5.3kg)に基づき握力最大値(MVC)小群 7 名、中間群 28 名お
よび大群 19 名の 3 群に分類した。CFE テストは規則的に変動する相対的要求値(5―25%MVC)がパソコン画面上に正
介
弦波形
(SW)
の上下の変動として描かれ、
被験者が利手の把握動作による発揮値で要求値を 40 秒間追従する形式で行った。
CFE 評価変量は開始 10 秒以降から終了までの要求値 5―15%MVC および 15―25%MVC 局面毎の発揮値との誤差の総和
227
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
228
とした。CFE 測定値は MVC と 5―15%MVC 局面にのみ有意に低い相関がみられた(r= -0.30)。5―15%MVC 局面および
15―25%MVC のいずれの局面においても異なる MVC3 群の CFE 測定値の平均値間に有意差は認められなかった。若年
女性では最大握力が SW 表示法による CFE に及ぼす影響は小さいが、5―15%MVC 局面では握力の大きい者が CFE に優
れるのかもしれない。
第1体育館
8 月 27 日
16:45
測 27 − 143
高齢者の 1 年間における歩数の安定性 : 測定期間による比較
○山本 直史(愛媛大学教育学部)
中川 直樹(産業能率大学)
吉武 裕(鹿屋体育大学)
島田 美恵子(千葉県立保健医療大学)
浅井 英典(愛媛大学教育学部)
本研究では、72 歳の高齢者(男性 209 名、女性 179 名)を対象に、1 週間、3 日間、および 1 日の測定期間から得
られる歩数測定値の安定性を検討した。1 月、4 月、7 月、10 月にそれぞれ 1 週間連続して歩数計(EC-200、YAMASA)
を装着させた。得られたデータから、各期において 1 週間における 1 日当たりの歩数の平均値(以下、1 週間歩数)、1
日目~ 3 日目までの 3 日間における 1 日当たりの歩数の平均値(以下、3 日間歩数)
、および 1 日目の歩数(以下、1 日
歩数)を求めた。各期における 1 週間歩数、3 日間歩数、および 1 日歩数からそれぞれ算出した四分位数の一致度を検
討した結果、1 週間歩数と 3 日間歩数との間には 0.95 ~ 0.96、1 週間歩数と 1 日歩数との間には 0.92 ~ 0.93 の重み付
けκ係数が得られた。全 4 回の測定における四分位数の変化を検討した結果、安定的と判断された者の割合は、1 週間歩
数では 85%、3 日間歩数では 76%、1 日歩数では 66% であった。本研究の結果は、1 日の期間で測定された歩数の値であっ
ても、当該年齢時でのその集団における相対的な歩数水準を比較的良好に反映していることを示唆するものである。
00
体育哲学
哲
01
体育史
史
02
体育社会学
社
03
体育心理学
心
04
運動生理学
生
05
バイオメカニクス
バ
06
体育経営管理
経
07
発育発達
発
08
測定評価
測
09
体育方法
方
10
保健
保
11
体育科教育学
教
12
スポーツ人類学
人
13
アダプテッド・スポーツ科学
ア
14
介護福祉・健康づくり
介
229
哲
史
社
銀河ホール
[工]
8 月 27 日
13:20
方 27 − 001
フィンスイミング競技におけるアプニア泳動作のトレーニングによる影響
モノフィン着用歴のない男子高校競泳選手を対象として
○谷川 哲朗(京都工芸繊維大学大学院)
来田 宣幸(京都工芸繊維大学)
神谷 将志(京都工芸繊維大学大学院)
野村 照夫(京都工芸繊維大学)
本研究の目的は、モノフィン着用歴のない競泳選手を対象に、アプニア泳(モノフィンを着用してバタフライキックで
泳ぐ)動作のトレーニングによるアプニア泳動作の変容を明らかにすることとした。モノフィン着用歴のない男子高校競
泳選手 28 名を対象に、25m アプニア泳の最大努力泳を 8 回実施させた。全 8 回終了後、「速く泳ぐために、どのような
心
生
バ
経
発
工夫を行ったか」について自由記述させた。アプニア泳動作は、実験参加者の側方から水中カメラ 1 台を用いて撮影され、
1 回目と 8 回目を対象に動作分析ソフトを用いて分析された。その結果、速く泳ぐために行った工夫は、
「ピッチを速く
する」が 13 名、
「姿勢を保つ」が 6 名、
「振幅を大きくする」が 7 名、
「特になし」が 2 名の 4 群に分類された。このうち、
「ピッチを速くする」を行った実験参加者の泳速度は、1 回目(1.70 ± 0.47m/s)と比較して、8 回目(1.97 ± 0.37m/s)
が有意に速かった(F=8.142、p<.05)
。ところが、「姿勢を保つ」、「振幅を大きくする」を行った群の泳速度は 1 回目と
8 回目で有意な差が認められなかった。このことから、ピッチを速くすることによって、泳速度向上に影響がある可能性
が示された。
銀河ホール
[工]
8 月 27 日
13:35
方 27 − 002
シンクロナイズドスイミング選手の浮力と基本姿勢時の水上荷重負荷
○本間 三和子(筑波大学)
シンクロナイズドスイミングにおいて演技中の身体の「高さ」は審判の採点基準の一つで、ウォーターレベルにある身
測
体部分がどこかによって評価される。水上に身体の一部を出すには浮力の減少分を補う上方への支持力を発揮させなけれ
ばならないため、浮力が大きいほど必要とされる支持力は小さくなると考えられる。本研究は、シンクロナイズドスイミ
ング選手 8 名を対象に全身体積と基本姿勢(直立位・倒立位・水平位)時の水上荷重負荷を測定し、余剰浮力と水上荷
方
保
重負荷との関係をみることを目的とした。 余剰浮力は体積から求めた浮力と体重との差を算出した。その結果、直立位
での両腕挙上姿勢(水位が肩)、倒立位での両脚挙上姿勢(水位が膝蓋部中央および大腿の 1/2)
、水平位での片脚挙上姿
勢(水位が股)と両脚挙上姿勢(水位が大腿の 1/2)において、水上荷重負荷と余剰浮力との間に有意な負の関係が認め
られた。水上に出ている部分が小さい姿勢においては、余剰浮力が大きい方が水上荷重負荷が小さくなることが示唆され、
浮力の小さい選手に比べ浮力が大きい選手の方が、効率のよい推進技術で身体の一部を水上に保持することができると考
えられた。
教
人
ア
介
銀河ホール
[工]
8 月 27 日
13:50
方 27 − 003
重心 - 浮心間距離がけのび姿勢のパフォーマンスおよび受動抵抗に与える影響
○奈良 梨央(新潟医療福祉大学)
馬場 康博(新潟医療福祉大学)
佐藤 大輔(新潟医療福祉大学)
下山 好充(新潟医療福祉大学)
市川 浩(新潟医療福祉大学)
人が水中において静止状態で水平姿勢をとった際、通常、浮心は重心よりも頭側に位置し、重心 - 浮心間距離が生じる
ため、姿勢の維持が妨げられる。また、水泳中のスタートやターン後、基本姿勢である「けのび姿勢」で水中を推進する
ため、けのび姿勢は最も重要な技術である。そこで、本研究では、水中での静止状態における重心 - 浮心間距離が、水泳
で重要な技術であるけのび姿勢のパフォーマンスおよび受動抵抗に影響を及ぼしているのかを検討することを目的とし
230
09 体育方法
た。大学競泳選手 13 名を対象とし、先行研究に基づき、水面上でのけのび姿勢における静止状態の重心 - 浮心間距離を
測定し、けのびパフォーマンスとして、けのび到達距離を測定した。さらに、1.0、1.3、1.6、1.9m、2.2m/s の 5 段階
の速度を設定し、牽引装置を用いて受動抵抗を測定した。結果、重心 - 浮心間距離とけのび到達距離には有意な相関関係
が認められたが、重心 - 浮心間距離と受動抵抗には有意な相関関係が認められなかった。これより、重心 - 浮心間距離の
小さい選手は、けのびパフォーマンスに優れていることが示されたが、けのび姿勢における受動抵抗には重心 - 浮心間距
離は影響を及ぼさない可能性が示唆された。
銀河ホール
[工]
8 月 27 日
14:05
雪中キャンプ体験がストレス反応に及ぼす影響
生理学的・心理学的視点から
トレスと教育的効果の関係性についての研究は行われており、不安と自己概念との関係や(飯田 1986)
、ストレスと自
己効力感の関係についてなど(島崎 2006)
、その関係性に着目された研究も見られる。しかしながら、それらの研究は
心理学的な視点からアプローチしているものが多く、生理学的な視点からストレス反応を検討した研究は少ない。そこで
本研究は、A 体育大学で実施されている、雪中キャンプに参加した学生のストレス反応を、生理学的な視点と心理学的な
視点から明らかにすることを目的とした。本研究では、生理学的なストレス反応を見る指標として、起床時コルチゾール
反応を用い、心理学的な指標として POMS、気分調査表を用いた。またキャンプの教育的効果との関係性も検討するため
に、「社会人基礎力」についても質問紙調査を行った。結果の詳細については大会当日に報告する。
方 27 − 005
大学女子バレーボールチームのコーチとしてのトレーニング実践過程とその成果に関する
フィールドワーク研究
○片岡 悠妃(筑波大学大学院)
藤林 献明(立命館大学)
中西 康己(筑波大学)
図子 浩二(筑波大学)
本研究では大学女子バレーボールチームの学生コーチとして、1 から 3 月の冬期トレーニング期に行った実践経過と成
果(事実として生じた事例)を詳細に記録し、その記述データおよび数値データを手がかりにしてコーチングに役立つ知
見を得ることを試みた。対象選手は、全日本インカレベスト 16 のチーム員 14 名であった。研究主体は当該チームのコー
チである筆者であった。トレーニング期の主な目的は、基礎体力レベルの向上とバレーボールの基礎技能に直結した専門
的体力の向上とした。3 ヶ月を週単位に区分し、ウエイト系、スプリント系、ジャンプ系、フットワーク系、スタミナ系、
メディシンボール系の各手段を計画的に組み合わせて実施させた。また、選手個々の実情や特徴に配慮した個別コーチン
グも実践した。対象期間に行ったトレーニング経過、アセスメントするためのテスト、試合戦績、質的な記述データなど
を手がかりにして、
トレーニング実践経過を省察および論考した。その結果、コーチとして真に実践に身を置いた者が行っ
たフィールドワーク研究では、現場に生きる者にしか残せない知見や見えない事実、理解の仕方を浮き彫りにすることが
できることが示唆された。
心
門岡 晋(大阪体育大学大学院)
野外教育では、不便な生活や厳しい自然環境、集団生活など様々なストレス場面に遭遇する。それらの野外活動時のス
23
[工]
8 月 27 日
13:20
史
社
方 27 − 004
○徳田 真彦(大阪体育大学大学院)
福田 芳則(大阪体育大学)
哲
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
231
哲
史
社
23
[工]
8 月 27 日
13:35
方 27 − 006
ベースボール型スポーツの初心者を含んだ、遊撃手、二塁手および一塁手によるダブルプレーの技能向上
スポーツ学科在籍の大学生を対象として
○島田 一志(金沢星稜大学)
櫻井 貴志(金沢星稜大学)
田島 良輝(金沢星稜大学)
神野 賢治(富山大学)
本研究ではスポーツ学科に在籍する大学生を被験者としてソフトボールにおける遊撃手(SS)、二塁手(2B)および一
塁手(1B)によるダブルプレー(いわゆる “6 - 4 - 3 の併殺 ”)の技能の向上について検討した。ベースボール型スポー
ツの部活動経験者を SS、女子の非経験者を 2B、男子の非経験者を 1B にそれぞれ 10 名ずつ配置し、90 分程度の練習を
心
生
バ
経
発
測
週 1 回の頻度で 3 回行ったうえで、練習前後でのプレーに要する時間の変化について検討した。ノッカーのインパクト
から一塁手の捕球までに要した時間は、練習実施後は実施前にくらべ有意に減少したことから、ベースボール型スポーツ
の初心者が含まれる場合でも授業によりダブルプレーの技能は向上することが示唆された。また、2B が捕球からリリー
スまでに要した時間は球技系部活動の経験者では減少、非経験者は微増をそれぞれ示し、非経験者は送球が 1B に到達す
るまでの時間が大きく減少する傾向にあった。2000 年以降、体育・スポーツ系学部学科が多く設置された。発表者らは
体育・スポーツ実技を専門に学ぶ学生にとって必要な教材づくりや内容の体系化を検討する研究の一環として本研究を位
置付けている。
23
[工]
8 月 27 日
13:50
方 27 − 007
ハンドボール競技における戦術的能力のトレーナビリティについて
攻撃局面に着目して
○栗山 雅倫(東海大学)
藤本 元(筑波大学)
田村 修治(東海大学)
横山 克人(東海大学)
ハンドボール競技において、戦術的能力のパフォーマンスに及ぼす影響は大きい。戦術的能力の規定因子は多岐にわた
り考えられるが、それらのトレーナビリティについて個別に検討し、有効なトレーニング方法に言及した知見は多く見な
い。本研究では、ハンドボール競技における戦術的能力の規定因子の一つとして、先行研究により示唆される “ ポストプ
方
保
教
人
ア
介
レーヤーの介在する状況 ” における解決能力に着目し、トレーナビリティを検討することを目的とした。研究方法は、ポ
ストプレーヤーを含む状況を設定し、状況を認知し、その状況の解決方法を提案し、状況解決の行動に関するトレーニン
グを実施させ、トレーニング前後のパフォーマンスについて比較検討を行った。また、ポストプレーヤーとの連携に関す
るトレーニングを実施するトレーニング群と、実施しない被トレーニング群を設け、トレーニング効果に関する比較検討
にも実施した。その結果、戦術的な能力のトレーニングにおける変化が見られ、戦術的能力の規定因子に着目したトレー
ニングの実施により、有効なトレーニング効果が得られる可能性が示唆された。(本研究は JSPS 科研費 23500754 の助
成を受けたものです。
)
23
[工]
8 月 27 日
14:05
方 27 − 008
サッカーのゴールキーパー普及を目的としたゴールキーパートレーニングプログラムの実践
地域クラブにおける U-12 年代サッカー選手を対象として
○丸山 啓史(呉工業高等専門学校人文社会系分野)
東川 安雄(広島大学大学院教育学研究科)
岡崎 祐介(至誠館大学)
佐賀野 健(呉工業高等専門学校人文社会系分野)
本研究は、U-12 年代サッカー選手を対象に、統制群 16 名に日常的なパスゲームを主体とした既存のトレーニングプ
ログラムを実施した。また、実験群 16 名にゴールキーパー(以下、GK)普及を目的とした GK トレーニングプログラム
(以下、GK トレーニングプログラム)を実施した。そして、両群のトレーニング効果を比較することで、GK トレーニン
グプログラムがフィールドプレーヤーと GK の上達の両立を図ることができる可能性を検証することとした。
232
09 体育方法
検証の結果、フィールドプレーについて、パス技能、集団的技能、戦術行動認識度が両群ともに向上し、GK トレーニ
ングプログラムもフィールドプレーヤーとしての能力向上に一定の成果が得られることが期待できた。また、GK プレー
について、実験群は統制群と比較して、GK の攻撃参加成功率、守備時における GK プレー、GK 好意度が向上した。以上
のことから、GK トレーニングプログラムは、フィールドプレーヤーと GK としての上達の両立と、GK 好意度の向上を期
待できることが示唆された。
銀河ホール
[工]
8 月 27 日
14:20
砲丸投の投距離に及ぼす各種筋力・パワーの影響
上田 毅(広島大学大学院)
砲丸投の投距離には、筋力、技術など様々な要因があると考えられる。その中でも筋力は砲丸投の投距離に強く影響し
ていると考えられる。本研究では、砲丸投において、投距離と各種筋力・パワーの関連について検討することと、熟練者
と未熟練者の投距離に及ぼす各種筋力・パワーの特徴について明らかにすることを目的とした。被験者は、砲丸投を専
門種目とする A 大学陸上競技部学生 4 名(関東学連 1 部所属)
、B 大学陸上競技部学生 4 名(中四国学連所属)
、および、
これまで授業以外で砲丸投の経験のない B 大学体育専攻学生 23 名(うち男子 10 名、女子 13 名)の 31 名とした。また、
陸上競技部学生を熟練者とし、体育専攻学生を未熟練者とした。測定項目は、砲丸投の投距離、ベンチプレス、スクワッ
ト、デットリフトの 1RM の重量(Repetition Maximal : RM)、8RM の重量でのパワー値をフィットロダイン・プレミア
ム(エーアンドシー株式会社・京都)を用いそれぞれ測定した。これらの値について筋力・パワーの観点から、及び競技
力の観点から、比較検討することで砲丸投における投距離に及ぼす各種筋力・パワーの影響について明らかにする。
方 27 − 010
投球速度とメディシンボール投げとの関係における投手と野手の相違
○岡田 宏祐(筑波大学大学院)
木塚 朝博(筑波大学体育系)
大田 穂(筑波大学大学院)
本研究では、野球において投球速度(球速)を高めるための要因が、投手と野手で異なるかを検討した。大学野球部員
26 名を対象とし、投手群(10 名)
、野手群(16 名)に群分けした。ステップなし投球の球速をワインドアップ速度、ス
テップあり投球の球速をステップ速度として測定した。またワインドアップ速度からステップ速度への球速変化を球速上
昇率として算出した。さらにメディシンボールを用い、全身を活用するメディシン正面投げ、および下肢と体幹動作を制
限したメディシン制限投げの 2 種類の投擲距離を測定した。ワインドアップ速度とメディシン正面投げの関係では、投
手群にのみ有意な正の相関関係が認められ、ワインドアップ速度とメディシン制限投げとの関係では、野手群にのみ有意
な正の相関関係が認められた。さらに、球速上昇率においては野手群が投手群より有意に高い結果を示した。これらのこ
とから、投手は体幹屈曲により全身を活用し球速を高めているのに対し、野手は主に上肢に依存し、ステップを巧みに用
いることで球速を高めていると推察され、投手と野手では球速を高めるために必要な筋力および動作が異なる可能性が示
された。
史
社
方 27 − 009
○古市 裕磨(広島大学大学院)
福田 倫大(広島大学大学院)
銀河ホール
[工]
8 月 27 日
14:35
哲
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
233
哲
史
銀河ホール
[工]
8 月 27 日
14:50
方 27 − 011
Stiffness 特性から見たバウンディングとリバウンドジャンプの階層構造関係に関するト
レーニング学的研究
○苅山 靖(筑波大学)
図子 浩二(筑波大学)
我々はこれまでに、代表的なプライオメトリクス手段であるバウンディング(BD)において、stiffness が高いこと(硬
社
いばね)は、踏切時間を短くし高い水平速度に対応するために重要であること、また、BD の stiffness を高めるためには
リバウンドジャンプ(RJ)の stiffness を事前に高めておくことが有効であると報告してきた。本研究では、BD における
stiffness を制限する踏切脚各関節の力発揮特性を、RJ との比較から検討し、両ジャンプを用いたプライオメトリクスを
心
生
階層構造的に実施するための留意点を得ることを目的とした。男性陸上競技者 17 名を対象に、BD と RJ を行なわせ、
両ジャ
ンプにおける stiffness、踏切脚における踏切前半の関節トルクや踏切接地時の足部角度などを算出した。その結果、両ジャ
ンプにおいて stiffness の制限要因は足関節であることが示された。また、他の結果と共にトレーニング手段の配列に関
する原則(漸進性、特異性の原則)から論考すると、RJ において足関節底屈筋群が大きなパワーを発揮できることにより、
BD において足関節底屈筋群を動員しやすい踏切動作が遂行でき、高い stiffness を達成できる、という階層的構造性の存
在が示唆された。
バ
経
発
銀河ホール
[工]
8 月 27 日
15:05
方 27 − 012
ストレングス & コンディショニングコーチにおける Questioning スキル向上に向けた試み
○藤野 健太(日本体育大学)
伊藤 雅充(日本体育大学)
山内 亮(日本体育大学)
Questioning とは学習者に対して発問を行うことで、学習者の思考を促し、誘導発見と問題解決を通して、より効果的
測
な学習効果を生み出す教授スキルである。しかしながら、誘導発見と問題解決が効果的に学習者に与えられるかどうかは、
指導者の Questioning スキルに依存するということが明らかになっている(高橋、1998)
。そのため、効果的な学習環境
を構築するためには Questioning スキルの向上が必須であると考えられる。Kidman と Carlson(1998)は、コーチのス
方
保
教
人
ア
キルを向上させる手段としてアクションリサーチ(以下 AR)の有効性を述べている。本研究では、Kidman(2000)と
Whitmore(2009)の Questioning モデルを参考にストレングス & コンディショニングコーチにおける Questioning モデ
ルを作成し、
そのモデルをもとに AR を通して筆者自身の Questioning スキルを向上させる事を目的とした。AR を通して、
1)Questioning の回答や反応を待つ、2)アスリートの応答を推奨する、3)上位と下位の質問を使い分ける、4)誘導
質問を避ける、といった Questioning スキルの向上が達成されたと推察される。
23
[工]
8 月 27 日
14:20
方 27 − 013
バスケットボールの状況判断能力とゲーム出場レベル、ポジション、所属チームとの関連
○八板 昭仁(九州共立大学)
青柳 領(福岡大学)
バスケットボールのゲームにおける状況判断は、選手の競技水準と同様、ゲーム出場等による経験、ポジション、チー
ムの指導者の価値観やチーム戦術等の多様な要因が関与していると考えられる。そこで本研究は、バスケットボールの包
括的な状況判断能力テストを実施し、
状況判断に寄与する要因について検討することとした。標本は、大学バスケットボー
介
ル部に所属する選手 158 名(男子 87 名、女子 71 名)である。テストは、第 63 回全日本大学バスケットボール選手権
大会の 6 試合の中から選択した 97 場面の 308 項目によって構成した。テストの採点結果を目的変数、ゲーム出場レベ
ル、ポジション、所属チームを説明変数として数量化Ⅰ類を用いて分析した。重相関係数 0.43 であり、各アイテムの偏
相関係数は、ゲーム出場レベル 0.330、ポジション 0.251、所属チーム 0.285 であった。レンジは、所属チーム 19.39、
234
09 体育方法
ゲーム出場レベル 14.25、ポジション 13.20 であった。状況判断能力における要因別では所属チーム、ゲーム出場レベル、
ポジションの順に影響が大きかった。バスケットボールのゲームにおける状況判断は、所属チームの影響が、選手の経験
よりも大きな要因になることが示唆された。
23
[工]
8 月 27 日
14:35
哲
史
方 27 − 014
サッカーにおける国内トップレベルの中学生と大学生のゲーム分析
シュート過程に着目して
○佐藤 亮平(北海道大学大学院)
サッカーのゲーム分析に関する先行研究では、トップレベルの大会を対象とした研究が行われている(Saito et al.
社
心
2013、Sekine et al.2009)
。しかし、異なる年代のゲーム分析によりサッカーにおける技術・戦術の発展過程を明確に
している研究は少ない。そこで、本研究では国内トップレベルの中学生と大学生の試合におけるシュート過程に着目し、
年代間における共通点と相違点について検討することを目的とする。対象試合は、中学生は第 24 回全日本ユースサッカー
選手権大会、大学生は第 61 回全日本大学選手権とし、それぞれ、準決勝 2 試合、決勝 1 試合とした。分析項目は、相手ボー
ルを奪った地点(アタックエリア、ミドルエリア及びディフェンシブエリア)、シュートを打つまでの時間、攻撃に関わっ
た人数、シュートまでのパス数、シュートまでに用いたドリブル数について算出した。これらの分析結果をマンホイット
ニー検定にかけ、年代間の比較を行った。検定の結果、アタックエリアにおいてボールを奪いシュートまでいく際は、時
間、人数に有意差は無かったが、パス数、ドリブル数は中学生の方が大学生よりも有意に高い値であった。
23
[工]
8 月 27 日
14:50
方 27 − 015
男子ハンドボール競技における 5 対 6 の数的不利な状況での攻撃について
学生レベルと世界レベルとを比較して
○藤本 元(筑波大学)
Nemes Roland(筑波大学)
生
バ
経
発
測
本研究では、男子ハンドボール競技における 5 対 6 の数的不利な状況での攻撃方法を学生レベルと世界レベルとで比
較し、数的不利な状況での有効な攻撃方法について検討するための知見を得ることを目的とした。
そのために、
5 対 6 の数的不利な状況での攻撃を学生レベル 17 試合から 120 シーン、世界レベル 10 試合から 133 シー
方
ン抽出し、防御側の隊形、攻撃側のきっかけ、シュートにいたる最終プレー、シュートエリアおよびプレー結果を分析した。
その結果、学生レベルは世界レベルに比べて、クロスプレーでシュートにいたる割合およびロングシュートで攻撃を終
える割合が有意に高かった。また、世界レベルは学生レベルに比べて、1 対 1 をきっかけに用いる割合、ミドルシュート
でシュートを終える割合が有意に高かった。なお、
世界レベルでは学生レベルに比べて速攻を行う割合が有意に高かった。
23
[工]
8 月 27 日
15:05
保
教
方 27 − 016
バレーボールにおける試合の勝敗に影響を与える要因についての研究
大学女子リーグを対象として
○小沼 直子(日本大学大学院文学研究科)
櫛 英彦(日本大学大学院)
深田 喜八郎(日本大学大学院文学研究科)
天野 喜一朗(日本大学大学院文学研究科)
高階 曜衣(日本大学大学院文学研究科)
吉田 明(日本大学文理学部人文科学研究所)
[緒言]大学女子バレーボールの試合において、
勝敗に影響を与える技術を明らかにすることを目的とした。[対象と方法]
関東大学女子 2 部リーグに所属している 8 チームを対象とし、6 試合 25 セットを撮影した。Data Volley を用い、アタック・
人
ア
介
ディグアタック・ブロック・レセプションのデータを収集した。データ収集後、勝チームと敗チーム、上位チームと下位チー
ムに分け比較した。[結果]アタック・ブロックにおいて、敗チームより勝チームが高値を示した。レセプション成功率
235
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
236
において、上位チームは、勝チームより敗チームが高値を示し、下位チームでは、勝チームが高値を示した。アタック打数・
ディグアタック打数が、下位チームより上位チームが高値を示した。[考察]上位チームでは、勝チームのレセプション
成功率が低いにも関わらず、
勝利していた。
その原因は、上位チームのディグアタック打数が多く、勝チームのディグアタッ
ク決定率が高いことから、相手の攻撃をレシーブし、自チームの攻撃を得点とする試合展開が多かったためと考えられた。
このことから、関東大学女子 2 部の試合において、ディグアタックの打数・決定率が最も勝敗に関わることが明らかとなっ
た。
銀河ホール
[工]
8 月 28 日
9:30
方 28 − 017
学生スイマーと水泳不得意学生を対象とした肺気量変化に伴う浮力および浮心重心間距離
の比較
○若吉 浩二(びわこ成蹊スポーツ大学)
白木 孝尚(びわこ成蹊スポーツ大学)
渡邉 泰典(びわこ成蹊スポーツ大学)
水平姿勢で行う水泳は、浮力と重力の影響を受け、浮心重心間距離が広がると水中トルクが大きくなり、パフォーマン
スが低下する。高技能の選手は、浮心重心位置が近く、抵抗の少ない泳ぎで、不得意者はその距離が長く、足が沈み、抵
抗が大きく上手く泳げない。本研究では肺気量の変化に伴う浮力・浮心重心間距離を即時測定するシステムを用いて、男
子学生の水泳得意者群と不得意者群を対象に、浮力・浮心重心間距離を測定し、それらの比較から、水泳不得意学生の問
題点を明らかにすることを目的とする。
被験者は、大学水泳部所属男子学生を得意者群と水泳授業の再履修者を不得意者とした。身体重心位置測定は、伏臥位
上肢拳上姿勢にて求めた。浮力と浮心位置の測定は、全身浸水でのけのび姿勢にて行った。残肺気量と手・足部の鉛直方
向の力との関係を求め、浮力と浮心位置を求めた。ここでは、計測後、肺活量計にて残肺気量の測定を行う方法と、測定
中に被検者にシュノーケルを装着し、換気量の変化を求める二つの方法を行った。
両群間では、肺気量と浮力の関係、さらには浮心重心間距離に顕著な差がみられた。
銀河ホール
[工]
8 月 28 日
9:45
方 28 − 018
学校で教えるべき運動の基本型に関する研究
○民内 利昭(木更津東高校)
廣橋 義敬(上総教育研究所)
坂田 洋満(木更津工業高専)
演者らは新たな(地面を蹴らない)疾走指導法を提示し、実践現場と研究室でその良さについて検証を続けている。演
者らの疾走指導法の特徴は、歩行から疾走に移行させることと、運動技術の心理的側面と物理的側面の違いを上手く利用
して指導することである。運動を学習する際には物理的な運動技術を身体感覚として習得しなければならない。学校体育
で指導する際に教師は何らかの運動のコツを指導しようとする。その際の大きな障壁となるのが、運動技術の心理的側面
と物理的側面は異なっているため、物理的な運動データを基に指導しても理想とする運動技術を多くの者に習得させるこ
とは難しいという事実である。演者は教師となって以来、陸上競技の指導法を研究課題として全国の優秀な指導者の実践
を見て歩いた。その時、優秀な指導者のうちの何人かは運動技術の心理的側面と物理的側面は異なるということを上手く
利用して指導していた。本研究では、実践現場ですぐ活用できる基礎的データを得ようとして被験者にトレッドミル上を
三通りの方法で歩行してもらった。得られたデータから、演者らの歩行指導法の特徴である地面を蹴る感覚無しで歩行で
きる理由について提案する。
09 体育方法
銀河ホール
[工]
8 月 28 日
10:00
方 28 − 019
200m 平泳ぎイーブンペースにおける全力泳中の Arm Leg Coordination
○馬場 康博(新潟医療福祉大学)
市川 浩(新潟医療福祉大学)
下山 好充(新潟医療福祉大学)
佐藤 大輔(新潟医療福祉大学)
奈良 梨央(新潟医療福祉大学)
競泳種目において平泳ぎは抵抗が大きい種目として知られている。そこで本研究は、大学競泳選手 28 名を対象に
哲
史
社
200m 平泳ぎ全力泳における Arm Leg Coordination(ALC)の経時的変化を評価した。ALC は上肢(Arm)および下肢(Leg)
に大別し、それぞれを 4 局面(Insweep、Outsweep、Glide、Recovery)に区切った。ビデオカメラは水中窓を通して泳
者側方 12.5m に設置した。試技は前半と後半を同じタイムで泳ぐイーブンペースを維持できる最大努力で泳ぐよう予め
要求した。その結果、50m から 200m にかけて Arm Insweep 局面が増加し、Arm Glide 局面が減少した。さらに Arm
Glide 局面とストロークパラメーター(ストローク頻度、ストローク長)との間に相関関係がみられた。つまり、一定の
泳速度であったとしても経時的なストロークパラメーターの変化に伴い ALC が変化し、ストロークパラメーターの変化
に Arm Glide が関与していることが明らかとなった。今後、ALC の経時的な評価は、より詳細のレース戦略やレース評価
のために有用であることが示唆された。
銀河ホール
[工]
8 月 28 日
10:15
方 28 − 020
子どもの歌遊びから身体運動表現
「どんぐりころころ」の歌を手がかりに
○山口 亮子(聖徳大学短期大学部)
心
生
バ
経
発
身体運動表現(ダンス)は好きだが、テーマを考え、モチーフ(身体運動)を作る創作ダンスは不得意な学生が多い。
自分たちでテーマを決め曲も動きも考えなければならず、活動に消極的になり、苦痛なものとなる。このような学生は、
曲も動きもダンスが得意な学生に任せ、それを覚え踊るだけで、創作ダンスが好きになれないのである。そこで、楽しく
測
創作ダンス活動に取り組める第 1 歩として、子どもの頃歌い慣れ親しんだ「どんぐりころころ」の歌を手がかりに研究
を進めた。「どんぐりころころ」の歌は、青木存義作詞・梁田貞作曲であり、誰でもが口ずさめる歌である。この歌詞を
作舞法の 1 要素、コントラスの視点からみると、歌詞のどんぐり(前者)と、どじょう(後者)では、前者は木になり、
堅く丸く、転がる。後者は水中にいて、柔らかく細長く泳ぐ等、歌詞から情景が浮かび、具体的なモチーフが作りやすい。
学生は、歌を口づさみリラックスし、楽しそうに創作ダンス活動を行った。容易に創造性豊かな作品に仕上がり、自信を
持って発表に臨み、満足した表情であった。創作ダンスの苦手意識が克服でき、研究の成果を得ることができた。
22
[工]
8 月 28 日
9:30
方 28 − 021
バスケットボールにおけるプリンストン・オフェンスの理論と戦術としての有効性に関す
る研究
○鶴見 祐大(金沢大学大学院)
本研究の目的は、バスケットボールにおけるプリンストン・オフェンスの理論と戦術としての有効性を明らかにするこ
とである。本研究では、次の 2 つの研究課題に取り組んだ。第一に、理論についてはプリンストン・オフェンスの考案
方
保
教
人
ア
者であるピート・キャリルの哲学を検討し、第二に戦術としての有効性についてはプリンストン・オフェンスを K 大学
バスケットボール部に導入し、戦術にどのような変化をもたらしたのかを検証・考察した。
分析の結果、次のことが明らかとなった。プリンストン・オフェンスはキャリルのコーチング哲学である「the smart
介
take from the strong(賢者は強者に優る)
」を原点とし、組織的に賢く動くことで、高確率のシュートを打とうとするオフェ
ンスである。身体接触が少ないバックドアカットを駆使することで、ゴール付近への侵入、攻撃を容易にするという特徴
237
哲
があるとわかった。戦術としての有効性については、プリンストン・オフェンスを K 大学に導入したことでチームで協
力してディフェンスを崩すという意識がかなり高まった。身体面で劣る K 大学のようなチームでも、組織的な攻撃を徹
底することで、強者相手でも互角以上の戦いができるといえる。
史
社
心
22
[工]
8 月 28 日
9:45
方 28 − 022
バレーボールにおけるブロックジャンプのタイミングの検討
○梅﨑 さゆり(天理大学・京都工芸繊維大学大学院)
来田 宣幸(京都工芸繊維大学)
野村 照夫(京都工芸繊維大学)
バレーボールのブロックでは、スパイカーの踏切位置まで素早く移動するとともに、スパイカーの動きに合わせて踏切
生
バ
経
発
測
方
ることが求められる。しかし、ブロッカーの移動完了タイミングおよび踏切タイミングは不明な点が多く、スパイカーへ
の反応との観点からの定量化もなされていない。本研究では、バレーボールのブロックにおける移動完了タイミングおよ
び踏切タイミングを明らかにすることを目的とした。大学男子バレーボール選手(競技選手)、バレーボール以外の体育
会選手(非競技選手)を対象に、3 方向からの攻撃に対するブロック課題を実施した。スパイカーのジャンプの離地時刻
を基準とし、レフト攻撃に対するブロッカーの移動完了時刻および踏切完了時刻を求めた。競技選手の踏切完了時刻は非
競技選手に比べ有意に早く、移動完了時刻および踏切完了時刻のばらつきは非競技選手に比べ小さかった。従って、競技
選手は非競技選手に比べ早いタイミングで安定した踏切を行っている可能性が示唆された。
22
[工]
8 月 28 日
10:00
方 28 − 023
ハンドボール競技における個人戦術能力に関する考察
攻撃者の再ポジショニングに着目して
○横山 克人(東海大学)
嘉数 陽介(東海大学大学院)
栗山 雅倫(東海大学)
田口 貴仁(東海大学大学院)
ハンドボール競技において、個々のプレーヤーがボールを保持する時間は、ゲーム時間の 60 分間に対して、1 分程度
と極めて短い時間であることが報告されている。これは、スピーディーなゲーム展開や選手交代が自由に行われるゲーム
特性、あるいは一度にボールを保持できる時間が 3 秒であること、ボールを保持しながらのステップは 3 歩であること
保
教
人
ア
介
などのゲーム規則に影響を受けることが考えられる。そのため、ボールを保持する前の動きやボールリリース後のポジショ
ニングによる運動の先取りが重要であり、それらの動きが個人戦術能力に大きな影響を及ぼしていることは明確である。
本研究は、ボールリリース後のポジショニング(再ポジショニング)に着目し、再ポジショニング後の動きのパターンを
検討することを目的とした。研究方法は、関東学生ハンドボール連盟 1 部リーグの試合をビデオカメラで撮影し、撮影
された映像を観察することにより印象分析を行った。なお、印象分析を行う際、T 大学ハンドボール部のコーチングスタッ
フ 3 名で行い、再ポジショニング後の動きを検討した。印象分析の結果より、再ポジショニング後の動きをいくつかの
パターンに分類することができた。
22
[工]
8 月 28 日
10:15
方 28 − 024
チームスポーツにおける選手の戦術理解および連係プレー改善の試み
デジタルペン(エコー・スマートペン)を活用した実践研究
○北村 勝朗(東北大学)
鈴木 大輝(東北大学大学院)
チームスポーツにおけるパフォーマンスを高める上で、個々の選手が組織的プレーとしての戦術をいかに理解し、その
理解内容をメンバーとの相互連係の中でどのように個々の動きとして表現していくかが重要な課題となっている。本研究
238
09 体育方法
の目的は、チームとしての連係プレーが求められるスポーツ競技において、音声と手書きメモが保存可能で転送による共
有可能なデジタルペン(エコー・スマートペン)の活用が、選手の戦術理解にどのような影響を及ぼすのか、またそうし
た戦術理解がチームの連係プレーやチームパフォーマンスにどのような影響を及ぼすのか、解明することにある。30 名
の高等学校運動部選手を対象とし、デジタルペンによって作成された戦術ノートの活用実践を行った。練習前・中・後に
使用した結果について、インタビューによる発話分析、ノートの記載内容の分析、および指導者によるパフォーマンス評
価により分析を行った。分析の結果、
指導者および選手同士による戦術ノートの音声付きメモを繰り返し復習することで、
哲
史
状況を把握する視点としてのメタ認知活動が促進され、戦術理解が深まり、理解内容の共有を通した連係プレーの改善が
社
なされる点が明らかとなった。
23
[工]
8 月 28 日
9:30
方 28 − 025
心
幼児における投動作の形態発生
回し投げ(Drehwurf)
○豊田 泰代(貞静学園短期大学)
久保 景子(鶴見大学短期大学部)
太田 昌秀(上越教育大学連合大学院名誉教授)
幼児や初心者にとって投動作の習得は難しいものの一つである。ボールを持っていきなり投動作を試みた場合、手首や
肘などが固まりムチ動作が出現せず、遠くまで飛ばすことができない場合が多い。また幼児や初心者の投動作は身体の長
体軸の回転を利用する動きもあまり見られない。このように完成形の腕振り投げ(Kernwurf)をそのまま練習していっ
た場合、なかなか習熟が進まないケースがみられる。そこで本研究は西幅・太田らが行った先行研究を元に、押し投げ
(Druckwurf)
、回し投げ(Drehwurf)
、腕振り投げ(Kernwurf)という投動作の習熟過程に着目し、幼児でも取り組みや
すい回し投げ(Drehwurf)の遊びに焦点を当て観察を行った。長体軸のひねりの要素、手の体勢に着目した結果、回し
投げの遊びは、順手外ひねり、順手内ひねり、逆手外ひねり、逆手内ひねりの順に現れることが示唆された。また観察の
結果、自然発生のうごきを伴う回し投げの遊びは、投動作に必要なひねり動作やムチ動作を誘発する有効な遊びであるこ
生
バ
経
発
とが明らかとなった。
測
23
[工]
8 月 28 日
9:45
方 28 − 026
跳馬における「後ろとびひねり技群」の価値点に関する発生運動学的研究
○森井 大樹(福岡大学)
跳馬における「後ろとびひねり技群(グループⅣ)
」は他の技群に対して技術開発の遅れが顕著である。現行の 2013
年版男子採点規則において「後踏切り」から 1/2 ひねりを加えた前転とびは、前踏切りから行われる同等の前転とびよ
りも 0.2 点高い価値点が与えられている。つまり、踏切りから着手に至るまでの「1/2 ひねり」に対して価値点が与えら
れているのである。それに対して、グループⅡ(第一局面で 1/4 または 1/2 ひねりとび系(ツカハラとびまたはカサマ
ツとび系)
)における 1/2 ひねりには、グループⅣと同じ 1/2 ひねりが行われるにも拘わらず価値点は与えられていない。
本研究ではこの技群だけに与えられている第一局面における 1/2 ひねりの価値点に対して、発生運動学における始原
論的構造分析を施した。その発達史を遡ることによって前踏切りには存在しないこの技独自の価値構造を明らかにし、発
展の立ち遅れを示すこの技群の技術開発の指針を示すことができた。
方
保
教
人
ア
介
239
哲
史
23
[工]
8 月 28 日
10:00
方 28 − 027
バスケットボールにおける状況の場面を読み解く身体知に関する発生運動学的考察
○中瀬 雄三(筑波大学大学院)
佐野 淳(筑波大学)
バスケットボールにおいて、ゲーム状況を読み解きながら自らの動きを決定していく戦術力は、技術力や体力的要素と
社
並び重要な能力である。このゲーム状況を構成している要素には、選手同士の位置関係、それぞれの選手の身体的特性、
能力や技術(動感)
、ゲーム時における意図などがあるが、さらに、ゲームの時間、ファール数、得点差といった時間の
経過に関わる要素もある。これらの状況を構成している要素を、本研究ではそれぞれ、空間や選手の特徴にかかわる “ 構
心
生
造的要素 ”、時間にかかわる “ 場面的要素 ” とした。ゲーム状況を読み解く上で、これらの二つの要素は欠かすことはで
きないが、従来の状況判断研究では、構造的要素(選手の空間的配置)に着目した調査研究が多いと思われる。しかし、
優れた選手の戦術行為は空間的配置のみを判断要因としていることはなく、ゲームの形勢といった数量化できない場面的
要素を常に把握しながら行っている。このことは、選手にはゲーム状況は動感的状況として、すなわち状況の場面的意味
として現れていることを意味している。本研究は、ゲーム状況のこの場面を読み解く身体知について発生運動学的視点か
ら論究していくものである。
バ
経
発
23
[工]
8 月 28 日
10:15
方 28 − 028
投球動作における自己認識と実際の動作との関係
○福田 倫大(広島大学大学院)
黒川 隆志(広島大学大学院)
上田 毅(広島大学大学院)
古市 裕磨(広島大学大学院)
本研究では、投動作について、動作と認識の関係、および指導上、映像を見ることが認識に与える影響を検討すること
測
で、動作の習得において有効な手段を明らかにすることを目的とした。被験者は健康な大学生 18 名とした。被験者は非
利き手で 2 回遠投をし、同時にフォームに関するアンケートを行った。1 回目と 2 回目の遠投の間には、投球に関する
指導を実施した。その指導は言語でポイントを指摘するもの(コントロール群)と、これに本人の動画を用いて 3D で見
方
保
教
人
ア
ることができるスティックピクチャーを見せるもの(映像群)であった。その結果、1 投目から 2 投目にかけて認識が改
善したグループは、動作も有意に改善した。また映像群は全てのポイントについて正しく認識できるようになった人数が
増え、それに対しコントロール群は、その人数が増えるポイントもあれば、減るポイントもあった。これらから、認識を
改善することは動作を改善させ、また、映像を見ることは認識を改善する可能性があることが示唆された。
銀河ホール
[工]
8 月 28 日
10:35
方 28 − 029
野球競技の打撃動作における再現性と競技レベルの関係性について
○長田 拓朗(東海大学大学院)
栗山 雅倫(東海大学)
横山 克人(東海大学)
野球競技において最も重要な動作である打撃動作は、運動イメージを形象化させる「再現性」が求められる。また、打
撃動作の再現性の確保の為に、運動イメージと形象化された動きの「ずれ」が小さいことが重要とされている。更に、運
動イメージを描き、打撃動作を行うときに重要視しているキネステーゼを明らかにすることが重要であると考えられる。
介
そこで本研究は、再現性と競技レベルの関係性に着目した。競技レベルにおける打撃動作の比較及びキネステーゼの調査
行うことで、打撃動作における知見を得ることを目的とした。研究方法として、T 大学準硬式野球部レギュラー・非レギュ
ラーを 2 名ずつ及び未経験者 2 名の 6 名を対象とした。試技者は、外角及び内角にトスされたボールをそれぞれ 5 球ず
つ打ち、試技をビデオカメラで撮影し、三次元 DLT 法を用いて動作解析を行った。試技の抽出においては、試技者が再
240
09 体育方法
現性の最も高いと感じた試技及び最も低いと感じた試技をそれぞれ 1 球ずつ選択した。動作解析後、試技者に試技映像
を見せ、インタビューを行い、内省報告を得た。今回の結果から、試技者間の再現性における競技レベルやキネステーゼ
にいくつかの特徴が現れた。
銀河ホール
[工]
8 月 28 日
10:50
史
方 28 − 030
テコンドーの連続した前回し蹴り動作に関するバイオメカニクス的研究
○木下 まどか(筑波大学大学院)
哲
藤井 範久(筑波大学体育系)
World Taekwondo Federation によるテコンドー競技(以下、テコンドー)は多様な蹴り技が特徴である。近年のルー
社
心
ル改正により、ポイント獲得のための連続した蹴り動作の重要性が高まっている。右脚、左脚交互の連続した前回し蹴り
動作は、前回し蹴りを連続で行うこととされているが、実際に選手がどのように蹴り動作を行っているかは明らかにされ
ていない。そこで本研究では、テコンドーの連続した前回し蹴り動作に着目し、その力学的なメカニズムを解明すること
とした。様々な競技レベルの男子テコンドー競技者 10 名(年齢:21.4 ± 3.2 year、身長:172.0 ± 4.3 cm、身体質量:
66.7 ± 12.7 kg、経験年数:6.5 ± 5.9year)に最大努力で中段(体幹部)への連続した前回し蹴りを行うよう指示をし
た。三次元動作分析装置(250 Hz)を用い、上胴および下胴の左右回旋角度および角速度等を算出した。結果として、2
回目の蹴り動作の動作開始時(TOF2)の姿勢によって上胴および下胴の左右回旋角速度の変化に差がみられた。したがっ
て、TOF2 の姿勢に適した、左右回旋角速度の変化パターンが存在し、1 回目に比べて 2 回目のキック平均スピードを大
きくすることができると示唆された。
銀河ホール
[工]
8 月 28 日
11:05
バ
経
発
方 28 − 031
競泳スタート台のバックプレート幅の違いがスタート動作に及ぼす影響
○小椋 優作(岐阜大学大学院)
宇野 嘉朗(岐阜大学大学院)
生
春日 晃章(岐阜大学)
本研究は、競泳スタート台のバックプレート幅の違いがスタート動作にどのような影響を及ぼすかについて、キネマ
測
方
ティクス的に検討することを目的とした。対象者は、キックスタートを普段から採用している大学水泳部に所属する男子
競泳選手 12 名とし、通常試技のバックプレート幅(Normal:No)、No より 1 段階狭くしたバックプレート幅(Narrow:
Na)、No より 1 段階広くしたバックプレート幅(Wide:W)の 3 種類のスタート試技を行わせた。スタート動作の撮影
には 3 台のビデオカメラを使用し、分析には Frame-DIASIV を用いて毎秒 150 コマでデジタイズした。分析の結果、用
意局面における重心の水平距離において Na-No 間および Na-W 間に有意な差が認められ、Na、No、W の順に重心が前方
に位置している。また、離台前 0.3 秒間の平均水平加速度における No-W 間、平均飛翔水平速度における Na- No 間にお
いて No が有意に高い値を示した。加速局面、離台局面、空中局面の水平方向への加速度および速度においても No は他
の 2 試技より大きい傾向にあった。これらのことから、普段自分で選択しているバックプレートの幅が変わると、競泳
スタート動作における水平方向への加速が小さくなると示唆された。
保
教
人
ア
介
241
哲
史
社
銀河ホール
[工]
8 月 28 日
11:20
方 28 − 032
競泳におけるオープンターンの回転スキルの検討
○野村 照夫(京都工芸繊維大学)
神谷 将志(京都工芸繊維大学大学院)
来田 宣幸(京都工芸繊維大学)
谷川 哲朗(京都工芸繊維大学大学院)
梅﨑 さゆり(天理大学・京都工芸繊維大学大学院)
オープンターンの回転期に着目し、スキルの時空特性を検討することを目的とした。地域強化指定レベルの水泳選手 9
名を対象とし、初期条件として通常行っているオープンターンを含む 15m 往復泳を実施した。その後、介入条件として
心
生
バ
経
発
測
頭を低くして回転する練習を 15 分間実施し、
同様の試技を行った。これらの試技を側方より水中・陸上ビデオで撮影した。
2 次元 DLT 法により身体各部の座標を求めた。初期条件では、手の着壁から手の離壁までの時間(0.531 ± 0.065 sec)
と回転中の頭部の最高到達点(0.131 ± 0.071 m)の間に有意な正の相関が認められた。介入条件での回転中の頭部の最
高到達点は(0.073 ± 0.040 m)と初期条件に比べ有意に(p < 0.01)低値を示した。また、手の離壁時の腰の深度(-0.321
± 0.062 m)が初期条件(-0.362 ± 0.079 m)に比べ有意(p < 0.05)に浅くなり、手の着壁から手の離壁までの時間(0.506
± 0.061 sec)と有意な負の相関が認められた。従って、オープンターンは、頭を低く、腰を浅くすることにより、素早
い回転を可能にする可能性が示唆された。
22
[工]
8 月 28 日
10:35
方 28 − 033
ハンガリーにおけるハンドボールの一貫指導プログラム
13 歳から 16 歳までのフィジカル、コーディネーション、人格形成指導プログラムに着目して
○永野 翔大(筑波大学大学院)
藤本 元(筑波大学)
Nemes Roland(筑波大学)
會田 宏(筑波大学)
本研究では、ハンドボールにおいて世界トップレベルの競技力を持つハンガリーにおける、13 ~ 16 歳までの一貫指
導プログラムの内容を紹介する。出典は「Kézilabda」
(Horváth J.et al. 、2004)である。フィジカルプログラムにおいては、
13 ~ 14 歳では、男子は瞬発力、無酸素系パワー、体幹トレーニングを、女子は有酸素系トレーニングを主に行ってい
方
保
教
人
ア
介
た。15 ~ 16 歳では、男子は下半身の瞬発力のトレーニングを、女子はファンクショナルトレーニングとウエイトトレー
ニングを行っていた。コーディネーションプログラムにおいては男女とも、13 ~ 14 歳ではハンドボールの基本的な動
きの習得を、15 ~ 16 歳ではポジションに専門的な方向転換能力、ジャンプ能力、シュート能力などを組み合わせた複
雑な動きの習得を目指していた。人格形成プログラムにおいては男女とも、13 ~ 14 歳では個人に役割を与え責任感を
身に付けさせ、15 ~ 16 歳では優れたスポーツマンとしての他人の見本となるロールモデルの育成を目指していた。こ
れらの結果から、ハンガリーの一貫指導においては、特にフィジカルプログラムに関して、男女のトレーニング内容を明
確に分けていることが明らかになった。
22
[工]
8 月 28 日
10:50
方 28 − 034
女子ラグビーの現状と今後の課題
○寺田 泰人(名古屋経済大学短期大学部)
高田 正義(愛知学院大学)
岡本 昌也(愛知工業大学)
廣瀬 かほる(防衛医科大学校)
寺田 恭子(名古屋短期大学)
2016 年リオデジャネイロ五輪で男女 7 人制ラグビーが正式種目となったことで、日本における女子ラグビーの競技人
口は年々増加している。本研究では、女子ラグビーの現状を調査し、競技人口のさらなる増加に向けての方策と競技力向
上のための課題を明らかにすることを目的とした。調査方法は Japan Women’s Sevens 2014 に出場した 10 チームのメ
242
09 体育方法
ンバーを対象として、アンケートを実施した。調査結果からは、以下のことが明らかとなった。女子ラグビーにおいて
も 15 人制では男子と同様、競技人口の確保が大きな課題であり、特にスクール出身の中学生以上の受け入れ先が少ない
という問題を抱えている。一方、7 人制ラグビーでは 2020 年東京五輪開催が決定したことで、他競技からラグビーに種
目を転向する選手も出てきている。しかし選手たちからは、女子ラグビーのメディア露出度が少ないこと、活動環境の整
備が不十分という声が多い。また 7 人制を中心とした強化に偏ることで、15 人制の弱体化が進むことも危惧されている。
今後、女子ラグビーがさらに発展していくためには、代表チームの広報により認知度を高めつつ、同時に活動環境を改善
哲
史
していくことが急務である。
社
22
[工]
8 月 28 日
11:05
方 28 − 035
スピードスケート競技オリンピックメダリストの国際競技力推移に関する研究
○紅楳 英信(相澤病院 スポーツ障害予防治療センター) 湯田 淳(日本女子体育大学)
本研究では、オリンピックでメダルを獲得するようなトップレベルのスピードスケート選手が国際大会で活躍し始める
時期と、1 年の中での国際競技力推移(競技会成績推移)を知ることを目的とした。分析対象は、2010 年 2 月に開催さ
れたバンクーバーオリンピックと、2014 年 2 月に開催されたソチオリンピック のスピードスケート競技において個人
種目でメダルを獲得した選手とした。分析の結果、緩やかに年々国際競技力が向上する選手は少なく、ある年に飛躍的に
国際競技力が向上する選手が多いこと、またメダル獲得以前に出場した過去のオリンピックにて、上位の成績を収めてい
る選手が多いことが明らかとなった。1 年の中でオリンピック開催時期の競技会において好成績を収める選手が多い傾向
も見られた。これらのことから、オリンピック出場を経験目的で出場した選手が、次回以降のオリンピックでメダルを獲
得することが難しいことや、オリンピック開催時期に毎年結果を残す選手はオリンピック本番でもメダルを獲得する可能
性が高いことが示唆された。
23
[工]
8 月 28 日
10:35
心
生
バ
経
発
測
方 28 − 036
主観的努力度の変化が平泳ぎの泳動作に及ぼす影響とその再現性について
○大庭 昌昭(新潟大学)
長堀 一輝(新潟大大学院)
佐藤 大輔(新潟医療福祉大学)
下山 好充(新潟医療福祉大学)
【緒言】主観的な運動感覚と実際の動きとの対応にはグレーディング能力が深く関係しており、競泳のような記録系競技
では、直接パフォーマンスに影響を与える重要な能力である。本研究の目的は、中・高強度領域における主観的努力度の
変化が、平泳ぎの泳動作に及ぼす影響とその再現性について明らかにすることである。
【方法】日頃より十分にトレーニングしている大学競泳選手 5 名(男子 3 名、女子 2 名、平泳ぎもしくは個人メドレー専
門)を対象とし、測定日には 25m × 4 試技(主観的努力度 70%から 100%まで 10%毎の等間隔で 4 段階)× 2 セット
を 4 分サイクルで行い、セット間には 5 分の休憩を挟んで実施した。側方水中及び陸上よりデジタルカメラで泳動作を
撮影するとともに、各試技の泳タイムを測定し、ストロークパラメーターを算出した。
【結果及び考察】70%から 100%まで泳速度の段階付けが可能であること、ストローク頻度の変化で対応している可能性
など、これまでの研究結果と同様の結果を確認することができた。さらに、中・高強度領域においてある程度精度の高い
再現性が可能であること、そのことがストローク頻度と強く関係していることが示唆された。
方
保
教
人
ア
介
243
哲
史
23
[工]
8 月 28 日
10:50
方 28 − 037
呼吸動作の有無がバタフライ泳動作に及ぼす影響
中・高強度領域の主観的努力度の違いを活用して
○長堀 一輝(新潟大学大学院)
大庭 昌昭(新潟大学)
【目的】バタフライ泳における呼吸動作は毎回呼吸や 2 回に 1 回呼吸など選手によって様々である。しかし、バタフライ
社
泳における呼吸動作の有無が泳動作に与える影響は、他の種目に比べ大きいと考えられる。そこで、本研究では中・高強
度領域での主観的努力度の変化に着目し、呼吸動作の有無がバタフライ泳動作に与える影響について比較検討すること
を目的とした。
【方法】被験者は大学水泳部に所属し、バタフライを専門とする男子 4 名、女子 3 名とした。被験者には
心
生
25m バタフライを 4 試技(主観的努力度 70%から 100%まで 10%毎の 4 段階)× 2 セット行わせた。各セットの 4 試
技目を 100%とし、ほかの 3 段階はランダムに実施した。また、呼吸あり(以下 EB)と呼吸なし(以下 NB)を 1 セッ
トずつ行った。
【結果・考察】EB においても NB においても 70%から 100%まで泳速度の段階付けが可能であり、ストロー
ク頻度の上昇により調整している傾向が確認された。しかし、同じ主観的努力度の場合、NB の方が EB に比べ、ストロー
ク頻度と泳速度は高くなる傾向を示した。このことは、呼吸動作の有無によってバタフライ泳動作に何らかの変化がうま
れ、泳速度調整に影響したものと推察される。
バ
経
発
23
[工]
8 月 28 日
11:05
方 28 − 038
フルマラソン大会に参加する男性市民ランナーの特徴
フルマラソンの出場回数に着目した調査
○森 寿仁(鹿屋体育大学大学院・日本学術振興会特別研究員) 鍋倉 賢治(筑波大学)
山本 正嘉(鹿屋体育大学)
本研究は、フルマラソン大会に参加する男性市民ランナーの身体特性、日頃の練習状況、レース中のきつさを、フルマ
測
ラソンの出場回数別に明らかにすることを目的とした。対象者はいぶすき菜の花マラソン、つくばマラソン、泉州国際市
民マラソンに参加した男性市民ランナー 406 名とし、フルマラソンの出場回数をもとに 4 群(1 回目、2-3 回目、4-5 回
目、6-10 回目)に振り分けた。調査方法は質問紙を用いた面接法とした。
方
保
教
人
ア
フルマラソンの出場回数が増加するにつれて、ゴールタイムは短縮、練習量は増加を示した。しかし、フルマラソンの
出場回数が 4 回目以上になるとその変化は小さくなり、4-5 回目群と 6-10 回目群の間には、いずれの項目にも有意な差
は見られなかった。
以上のことから、男性市民ランナーはフルマラソンへの参加が 3 回目となるまでは、マラソン出場にともなう練習の
取り組み方が変化し、タイムの向上が見込めることが示唆された。
23
[工]
8 月 28 日
11:20
方 28 − 039
ベースボール型競技選手における打撃向き転向に関する調査研究
○名古屋 光彦(獨協医科大学)
近年ベースボール型の競技では、左打者優位説が指摘されている。こうしたことから、本来右打者であった選手が左打
者に転向することが増え、
「右投げ左打ち」の選手を目にすることが多くなっている。しかしながら、指導現場では打撃
向きの転向について客観的な指標が明らかにされていない中で指導が繰り返されている。そこで本研究では野球競技を対
介
象として打撃向きの転向について「きっかけ」や「理由」「転向の時期」などについて調査し、指導現場でのコーチング
の基礎的知見を得ることを目的とした。調査は東日本大学軟式野球選手権大会に登録された選手 495 名(野球経験年数
10.9 年± 2.6)
を対象に無記名アンケートを行った。調査期間は、2013 年 11 月中旬に開催された大会期間 6 日間である。
調査の結果「左打者の割合」32.9%、
「打撃向きを転向した割合」27.5%(全左打者の 83.4%)であった。さらに、転向
244
09 体育方法
時期の多くは「小中学期(ジュニア期)
」72.4% であり、きっかけの多くは「他人からのアドバイスによるもの」39.8%
であった。また、そのアドバイス対象者は「指導者」(67.6%)であることが知見された。
銀河ホール
[工]
8 月 28 日
11:40
史
方 28 − 040
柔道選手の競技成績の変化と自己イメージや心理的競技能力との関連
○山口 香(筑波大学)
小林 好信(筑波大学大学院)
橋本 佐由理(筑波大学)
哲
松田 基子(大阪体育大学)
高野 修(筑波大学)
社
心
本研究は、大学柔道選手の競技成績の変化と自己イメージや行動特性および心理的競技能力との関連を明らかにす
ることを目的として、自記式質問紙調査による前向き調査を行った(対象は国内 16 大学の男女柔道部員、有効回収数
n=350)。1 回目調査から 2 回目調査の 1 年間に競技成績が向上した群と変化がなかった群について、各調査時点での要
因を比較した。1 回目調査時点では、競技成績が向上した群では、問題に対して積極的効果的に立ち向かう行動特性であ
る ‘ 問題解決型行動特性 ’ やストレスからの回復力を示すレジリエンスの下位尺度である ‘ 感情調整 ’ が有意に高かった。
また、スポーツ競技特性不安の下位尺度である ‘ 動作の乱れ ’ が有意に低かった。2 回目調査時点では、競技成績が向上
した群が ‘ 自己価値感 ’ が有意に高く、ストレス反応の下位尺度の ‘ 抑うつ・不安 ’ が低い傾向が見られ、心理的競技能力
の下位尺度の ‘ 忍耐力 ’‘ 闘争心 ’‘ 自己実現意欲 ’‘ 集中力 ’‘ 決断力 ’ が高い傾向が見られた。したがって、競技成績の向上は、
自己イメージの良さやレジリエンスの高さ、スポーツ競技特性不安の低さと関連していることが考えられる。
銀河ホール
[工]
8 月 28 日
11:55
バ
経
発
方 28 − 041
大学ラグビー選手における競技力と心理的競技能力との関連
○藤林 真美(摂南大学)
河瀬 泰治(摂南大学)
生
内部 昭彦(摂南大学)
ラグビーは、15 名の選手が争奪・攻撃・防御といった要素を巧みに駆使する競技であり、体力や技術のみならず心理
測
方
面のコントロールが重要課題である。本研究は大学ラグビー選手における心理的要素について検討した。選手を①レギュ
ラーと準レギュラー、非レギュラーの 3 群および②ポジションを 6 群に区分し、心理面との関連についてそれぞれ検討
した。78 名の選手を対象とし、心理的競技能力診断検査(DIPCA.3)を用いて評価した。①、②それぞれの群における
差を一元配置分散分析で確認し、
有意だった場合に個々の群間差を Tukey 検定により比較した。①レギュラー群は非レギュ
ラー群と比較して、以下に示した下位尺度において有意な高値を認めた。忍耐力(p=0.04)
、闘争心(p<0.01)
、自己実
現意欲(p=0.04)
、
勝利意欲(p=0.04)
、
自信(p<0.01)。また準レギュラー群は非レギュラー群と比して、闘争心(p=0.05)
が有意に高かった。②ポジションによる相違は一切見られなかった。ラグビーには強固な闘争心が必要であると思われる。
本研究結果より、選手個々の闘争心向上がチーム成績に貢献できる可能性があると結論した。
銀河ホール
[工]
8 月 28 日
12:10
方 28 − 042
パフォーマンス・プロファイリングを用いた関係性向上のためのミーティングの効果
女子中高生のテニス部の活動を対象として
○関根 慧(日本体育大学大学院)
根本 研(日本体育大学)
伊藤 雅充(日本体育大学)
保
教
人
ア
介
本研究では、私立女子中高一貫校の硬式テニス部員(47 名)を対象とし、パフォーマンスプロファイリング(以下
245
哲
史
PP)を用いたミーティングが、
生徒たちの心理的欲求の充足とどのような関係があるかを明らかにすることを目的とした。
PP とはコーチとアスリートがパフォーマンス向上に対する共通意識を持つために有効な方法論であるとされている(Dale
& Wrisberg、1996)
。この PP を用いて、チームと個人の目標設定を行うミーティングを実施した。さらに、ミーティン
グの直前と約 1 ヶ月後に Ryan と Deci の「The Basic Need Satisfaction in Life Scale」を翻訳して作成した尺度(大久保
ら、2003)を用いて、生徒の心理的欲求の充足を測定した。その結果、基本的心理欲求のうちの自律性の因子とコンピ
テンスの因子には統計的に有意な変化は認められなかったが、関係性の因子には有意な増加(p < 0.01)が認められた。
このことから、チームの関係性を向上させるために PP を用いたミーティングを行うことは、良好なチームを築いていく
社
心
生
バ
経
発
ために効果的な手法の一つであると言えるであろう。
銀河ホール
[工]
8 月 28 日
12:25
方 28 − 043
バスケットボール版“Collective Efficacy”尺度と凝集性および楽観性尺度との関係
○池田 英治(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
吉田 健司(筑波大学 体育系)
内山 治樹(筑波大学 体育系)
岩井 浩一(茨城県立医療大学 人間科学センター)
“Collective Efficacy”(CE)は、Bandura(1986、1997)によって提唱された集団や組織の機能を理解するための極め
て重要な変数の一つである。近年、わが国においても、幾つかの理論的及び横断的な検討が報告されているものの、コー
チング現場に援用するには客観的妥当性を有した尺度の開発や縦断的データの検討に課題が残るところである。
そこで本研究では、Collective Efficacy Scale for Basketball for Offense(池田ほか、2013)を用いて、関東大学バスケッ
トボールリーグに所属する 3 チーム(男性 19 名、女性 19 名)を対象に、CE の縦断的な変化を調査した。対象者には、
2013 年関東大学バスケットボールリーグ戦の開始前から終了後の約 3 カ月間の期間内において、4 から 8 回にわたって
アンケート調査を行った。また、
多くの先行研究において CE との関係性が検証されてきた重要な集団変数である凝集性と、
「ポジティブな結果を期待する傾向」
(Scheier& Carver、1985)と定義される楽観性との関係を、Group Environment
Questionnaire の邦訳版(磯貝ほか、1988)および The revised Life Orientation Test の邦訳版(坂本・田中、2002)を
測
方
保
用いて検証した。
22
[工]
8 月 28 日
11:40
方 28 − 044
競泳長距離選手のトレーニング中における血糖値の変動の比較
○菊地 ゆめみ(日本女子体育大学大学院)
川本 恵子(日本女子体育大学大学院)
古泉 佳代(日本女子体育大学)
教
人
ア
本研究の目的は、競泳長距離選手を対象として水中トレーニング(ST)におけるエネルギー供給能力の個人の特徴を明
らかにすることである。対象者は、日本学生選手権出場経験を持つ A(年齢:20 歳、身長:166.0cm、体重:55.40kg)
と出場経験がない B(年齢:21 歳、身長:161.4m、体重:55.95kg)の女子競泳長距離選手 2 名であった。ST 前後の
体重測定と、ST における心拍数、血糖値および乳酸値を測定項目とした。身体的特性として最大酸素摂取量および最大
出力パワーの測定を行った。ST は 125 分間であり、ウォーミングアップ、キック、プル、スイム、メインスイム、ダウ
ンの 6 つに区切り、血糖値と乳酸値の測定ポイント(MP)とした。2 時間前までに食事を済ませ、ST は水のみの自由摂
取とした。平均心拍数は A=127.4 ± 27.0bpm、B=135.0 ± 23.9bpm であった。A の血糖値は、メインスイム後の測定
値を除き、安静値に対してほぼ一定であった。B の血糖値は、ST 全ての MP において安静値よりも低値を示し、開始約
40 分後のキックの MP において血糖値と乳酸値ともに最大値を示した。競泳長距離選手のトレーニングメニューは、選
介
246
手個人のエネルギー供給能力を考慮して作成する重要性が考えられた。
09 体育方法
22
[工]
8 月 28 日
11:55
方 28 − 045
コントロールテストにおける質的動作の検討
○清水 樂(横浜国立大学大学院)
伊藤 信之(横浜国立大学)
哲
史
現在コントロールテスト(以下 CT)の目的はトレーニング効果の表出を把握することであり、量的なデータに対する
評価がなされている。しかしトレーニング効果は体力面のみでなく、技術・戦術面、精神面での各諸要素が相互関連的に
複雑に絡み合って成り立つものであり、量的な結果に加えて質的な動作の評価を行うことで競技パフォーマンスに結びつ
社
く知見を得ることができると考えた。そこで本研究では、CT 種目間における質的動作の関連性、また量的結果に与える
影響について検討することを目的とする。被験者は大学陸上競技選手 15 名とし、CT 種目 14 種目の質的評価を 5 件法で
行い、さらに下位の動作要因を 2 から 7 項目設定し、2 件法を用いて評価した。対象種目の量的結果に影響を与えてい
る質的評価項目を抜粋し検討を行った。相関分析の結果、量的結果のみの評価では見ることのできない、種目間における
質的動作の関連性が明らかとなった。リバウンドロングジャンプのようなより運動構造の複雑な種目は、その量的結果に
対して様々な技術要因が影響を与えていることが示唆された。
22
[工]
8 月 28 日
12:10
生
バ
方 28 − 046
野球選手を対象とした体幹パワーの評価
重量の異なるメディシンボールのサイドスローを用いて
○神谷 将志(京都工芸繊維大学大学院)
来田 宣幸(京都工芸繊維大学)
心
谷川 哲朗(京都工芸繊維大学)
野村 照夫(京都工芸繊維大学)
野球の打撃動作において体幹パワーは重要な要素の 1 つであり、体幹のトレーニングとしてメディシンボール(MB)
経
発
スローなどが用いられている。しかし、使用する MB の重量の違いが投擲距離の左右差や反動の有無など投げ方の違いに
与える影響は不明であり、競技パフォーマンスとの関係から MB スローの特性を明らかにする必要がある。そこで本研究
では、重量が MB スローの空間的、時間的パラメータの左右、反動の有無に与える影響を明らかにすることを目的とした。
測
野球経験のある大学生に、MB を用いたサイドスローを反動投げ(RT)と無反動投げ(CT)の 2 条件で行わせた。MB
は 1kg、3kg、5kg の 3 条件とし、左右両方向に投げさせた。体幹パワーの指標として、投擲距離と投擲方向への動作
時間を測定した。投擲距離に関して、打撃側では CT と比較して RT の投擲距離がいずれの重量においても大きくなった
(CT:1kg 855 ± 89cm、3kg 513 ± 54cm、5kg 337 ± 32cm RT:1kg 942 ± 84cm、3kg 570 ± 36cm、5kg 401 ±
39cm)。また 3kg では、投擲方向によって違いがみられ、打撃側が非打撃側と比較し有意に大きな値であった。動作時
間では、MB の重量が軽くなるにつれて、動作時間が短くなる傾向がみられた。
22
[工]
8 月 28 日
12:25
保
教
方 28 − 047
コントロールテストにおける技術的要因の評価
基本姿勢の動作群の評価を通して
○伊藤 信之(横浜国立大学)
方
清水 樂(横浜国立大学大学院)
コントロールテスト(以下 CT)の評価値には、遂行時の動作が影響を与えていると考えられる。CT の各種動作の要素
を抽出したうえで選手の評価を行うことにより、技術的な要因と体力的な要因の双方をより的確に評価することが可能に
人
ア
なると考えた。そこで、抽出された諸動作の評価を行い、競技力や CT の測定値に与える影響について検討することにし
た。被験者は大学男子陸上競技選手 15 名であった。CT として行われている種目から、股関節中心に大きなパワー発揮
を行うもの(基本姿勢 1 の動作群(7 種目)
)
、片脚立位の姿勢から股関節の動作を行うもの(基本姿勢 2 の動作群(5 種
介
目))、前後開脚の姿勢からの動作(基本姿勢 3 の動作群(3 種目)
)を抽出し、9 件法の尺度を用いて評価した。実施さ
れた CT は 60m 疾走、立五段跳、リバウンド ・ ジャンプなどのジャンプ運動、スクワットなどのリフティング運動であっ
247
哲
た。基本姿勢の動作群の評価の合計値は、選手のシーズンベスト記録との間にも有意な相関関係が認められた(r=0.630、
p<0.05)。また、CT 各種目との間に有意な相関関係が認められるとともに、CT の種目によって、対応する基本姿勢の動
作が異なることが示唆された。
史
社
心
22
[工]
8 月 28 日
12:40
方 28 − 048
バドミントン競技選手におけるオン・コートでの専門的フィジカルテストの検討
○中谷 敏昭(天理大学体育学部)
バドミントン競技は、サービス開始からラリーが終了するまでの作業期と次のサービスが開始されるまでの休息期が繰
り返される間欠的運動である。
選手には素早いコート内移動や優れた有酸素性作業能が求められる。本研究では、オン・コー
生
バ
経
発
測
方
トでこれらの能力を評価するフィジカルテストを考案し、その信頼性と妥当性を検証した。対象者は大学バドミントン選
手 30 名(男子 21 名、女子 9 名)である。フィジカルテストは、6 方向フットワーク(移動能力)とコート内往復走(全
身持久力)とした。これらのテストと敏捷性や瞬発力、あるいは有酸素性作業能を評価するテストを行わせて関連性を検
討した。級内相関係数は 6 方向フットワークが 0.725、コート内往復走が 0.750 であった。6 方向フットワークと敏捷
性や瞬発力は |r|= 0.50 ~ 0.76、コート内往復走と有酸素性作業能は |r|= 0.68 ~ 0.83 の有意な相関関係を示した。これ
らのことから、本研究のフィジカルテストは、バドミントン選手の専門的能力を評価する有用なテストであると考えられ
る。
23
[工]
8 月 28 日
11:40
方 28 − 049
海外指導者派遣事業の現状と課題
JFA アジア貢献事業の派遣指導者に着目して
○松山 博明(大阪成蹊大学)
関口 潔(日本サッカー協会)
中村 泰介(園田学園女子大学短期大学部)
土屋 裕睦(大阪体育大学)
須田 芳正(慶応義塾大学)
松山ほか(2014)は、ブータン王国サッカーでの実践活動を中心に海外スポーツ指導者派遣事業の現状と課題につい
て検討を行った。そこで、本研究はアジア貢献事業の派遣指導者での基礎的研究を行うために、アンケート調査を依頼
保
教
人
ア
介
し、44 名の指導者からアンケート用紙の返却のあった 22 名の指導者を対象に調査を行った(回答率 50%)。調査内容は、
志望動機、指導方針、トレーニング環境、施設など加え、現地の選手レベルを問うものであった。実施時期は、2013 年
12 月から 2014 年 5 月であった。得られた回答の平均値を求めた。
その結果、現地の選手は、技術的・戦術的レベルが低いが、指導者に対して、素直な気持ちや向上心をもって意欲的に
取り組む姿勢があるのが特徴であった。
アジア貢献事業の海外派遣指導者は、海外に興味があり、自分の成長やサッカーの発展や社会に貢献したいという考え、
現地スタッフとミーティングを繰り返し、競技力向上を目指す指導者の比率が高いことが示唆された。
23
[工]
8 月 28 日
11:55
方 28 − 050
ハンドボール指導者の指導観の変化に関する事例研究
指導の転機を迎えた監督の指導を受けた選手の語りを手がかりに
○田代 智紀(筑波大学大学院)
會田 宏(筑波大学体育系)
本研究では、指導者自身が「転機」と自覚した時期に指導を受けた選手 1 名の語りを手がかりに、ハンドボール指導
者の指導観の変化について事例的に明らかにすることを目的とした。高校で 7 年ハンドボールを指導し、指導の転機を
248
09 体育方法
迎えた監督(A 氏)の指導を受けた S 氏に、高校時代の練習内容とゲーム構想に関して半構造的インタビューを行った。
その結果、当初は「ディフェンスに関しては気持ちや気迫を持ってプレーをする」「足を動かして相手がびっくりするく
らいの気迫で守る」という練習であったが、
「ずれた位置から 1 対 1 を始めたりすることでオフェンスに狙いや目的を持
たせていた」
「個人で攻めるというより、2 対 2 とか 3 対 3 などの部分的な戦術が増えた」などに変化していく語りが得
られた。これらの語りの内容を質的に分析した結果、A 氏の転機前後の指導観は、ゲーム観、ゲーム構想および基本戦術
がはっきりしていなかった段階から、まずチームのゲーム構想が確立されゲーム観が表出するようになり、さらに対戦相
哲
史
手とかけひきしたうえで、プレーを実行できる個人戦術力を選手に身につけさせるように変化していったと解釈すること
社
ができた。
23
[工]
8 月 28 日
12:10
方 28 − 051
ダンス・ワークショップにおける創造的身体表現に関する一考察
―進行者に着目して―
○河合 史菜(長崎大学)
ダンス・ワークショップは、参加者の主体性や相互の学び合いを特徴とした「参加体験型グループ学習」と捉えられ近
年、学校や福祉・地域のコミュニティなど様々な場で展開され、人々がダンスに触れる新しい形態として注目を集めてい
る。中でもダンス・ワークショップの進行者は場を生み出していく重要な役割を担っており、一方的な動きの伝授や練習
ではなく、参加者が自ら身体や動きを探求するあるいは生み出す創造的身体表現の視点が重要であると考えられる。本研
究では、ダンス・ワークショップの進行者に着目し、現在顕著な実績をあげ社会的評価の高い事例を対象に、ワークショッ
プへの参加・観察調査及びインタビュー調査を通して、プログラム内容と指導観の観点からダンス・ワークショップにお
ける創造的身体表現について考察し、今後のダンス・ワークショップの一視座を得ることを目的とした。その結果ダンス・
ワークショップの進行者は、動きや感覚を意識させるなど参加者の創造的身体表現を重視していること、段階を作り創造
的身体表現を引き出し助けていること、創造的身体表現を通して今ある身体への見方の変化と発見を促していることが示
心
生
バ
経
発
唆された。
測
23
[工]
8 月 28 日
12:25
方 28 − 052
泳金メダリストコーチ平井伯昌氏のコーチ行動における研究
○大崎 瑛人(日本体育大学大学院)
伊藤 雅充(日本体育大学)
藤野 健太(日本体育大学)
日本の競泳競技は世界と戦える数ある種目の一つである。その要因の一つとして、コーチ自身の質の高いコーチングが
挙げられる。Côté ら(2010)は効果的なコーチングによって、アスリートの有能さ、自信、関係性、そして人格に重要
な影響をもたらすと述べている。
また多くの研究者によると、コーチ行動がアスリートのパフォーマンス、幸福感、モチベー
ションの低下へ繋がるとも示唆されている。このことからもコーチがアスリートへ与える影響力は計り知れないものがあ
ると言える。そこで、本研究は結果を出し続けている競泳オリンピック金メダリストコーチの平井伯昌氏のコーチ行動に
着目し、どのようにアスリートに対して振る舞いを行っているかを明らかにした。練習中にビデオ撮影、マイクを付けて
頂き、会話を録音した。それを基に、コーチ経験三年未満の Beginner コーチ数名との振る舞いにどのような違いがある
のかを比較した。これらの結果から、Beginner コーチが Expert コーチに近づくためにはどのようなアプローチをするべ
きかを考察する。コーチ経験年数を問わず全てのコーチがコーチング能力を向上させるための一助となれば幸いである。
方
保
教
人
ア
介
249
哲
史
23
[工]
8 月 28 日
12:40
方 28 − 053
ラグビー指導者の体罰・パワーハラスメントの現状について
埼玉県ラグビー指導者の体罰・パワハラの意識調査より
○益子 俊志(防衛医科大学校)
廣瀬 かほる(防衛医科大学校)
体罰・パワハラの問題が世間を騒がせている昨今、昨年度は大きな社会問題として取り上げられた。その中でもスポー
社
ツ現場での体罰・パワハラについて各競技団体が体罰の対応に追われた。日本ラグビーフットボール協会も通達を出すな
ど動きを見せた。そこで、ラグビー指導現場での意識がどのくらい変化したのか、埼玉県ラグビーフットボール協会に協
力を仰ぎ、体罰・パワハラの意識調査を行った。指導者の年代別、指導する年齢層別など調査した。こちらで設問しそれ
心
生
バ
経
発
が体罰・パワハラに当たるのかそうでないのかの回答を受けた。ほとんどが体罰・パワハラは許されないと答えているが、
少数は指導者と選手の信頼関係があれば許される、保護者の同意があれば許されるなどの回答があった。練習中のいわゆ
るしごき、罰則練習がどこまでパワハラに当たるのかなどの回答も得た。また協会通達を知っているかという設問にも 3
分の 1 は知らないと言う回答であった。今後現場指導者の意識をどのような形、仕組みで改善するか大いに議論が必要
とされる。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 101
ウィンドサーフィン競技におけるボードスピードの多角的な評価方法の構築
○萩原 正大(国立スポーツ科学センター)
石井 泰光(国立スポーツ科学センター)
ウィンドサーフィン競技におけるパフォーマンスの決定要因の一つとして、用具を操作する技術や体力により決定する
「ボードスピード」が挙げられる。ボードスピードは、帆走中の風速だけでなく、ボードの挙動の影響を受けると考えら
れるが、
これらのことを定量して包括的に評価した研究はみられない。本研究では、ウィンドサーフィン競技におけるボー
測
ドスピードとボードの挙動との関連を風速別に検討して、ボードスピードの多角的な評価方法を構築することを目的とし
た。
国内一流のウィンドサーフィン競技選手を対象に、GPS 機能を有したモーションセンサーを用いて、帆走中のボードス
方
保
ピードとボードの挙動に関するデータを測定した。そして、各風速別におけるボードスピードとボードの挙動との関連に
ついて検討した。さらに、ビデオ撮影による帆走動作の局面分けを行い、各局面の特徴や選手間の違いについても比較検
討した。
その結果、風速によってボードスピードが異なり、同じ風速であっても、各選手間のボードスピードやボードの挙動が
異なる様相を示した。このようなボードの挙動を含めた多角的な評価方法の構築は、選手のパフォーマンス向上の一助に
なると考えられる。
教
人
ア
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 102
体育実技における硬式テニスの指導法について
サービスのスピードに着目して
○真田 民樹(明治国際医療大学)
体育実技において、硬式テニスの指導については、テニスの特殊性から技術的要素が大部分をしめる。総合的技術のな
かで、ゲーム開始のサービスは重要な技術である。しかしながら、初心者のサービスはスピードが先行し確立が低くゲー
介
ムが成立しにくく、テニスの楽しさが半減してしまう傾向が多々ある。そこで、サービスの確立を向上させるには、技術
指導とサービスのスピードが重要であると考える。今回スピードガンを用いて、サービスのスピードを測定し、安定した
サービスのスピードを検証した。国体クラスの選手は 130km のサービスを打つが、初心者においては、80km でも早いサー
ビスと言える。そこで、スキルテストとして 10 本中の確立とスピードを測定し、安定したサーブスピードを認識させる
250
09 体育方法
ことでサービス精度を上げる動機付けとなった。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
哲
方 28 − 103
世界ランキング上位国における 7 人制ラグビーと 15 人制ラグビーのタックル様相の比較
史
社
○木内 誠(順天堂大学)
7 人制ラグビーは 2016 年リオデジャネイロオリンピックより正式種目となった。7 人制ラグビーの強化を進めるに当
たっては、客観的証拠に基づいた指導を行うことが重要になるが、7 人制ラグビーの研究は 15 人制ラグビーの研究と比
べて少ない傾向にある。7 人制ラグビーのグランドの広さは 15 人制ラグビーと同様であるが、ゲームに参加している人
心
数は少ないため、7 人制ラグビーは 15 人制ラグビーと比べてディフェンスのスペースが広く、タックルの様相も異なる
と考えられる。そこで本研究では、7 人制ラグビーと 15 人制ラグビーのタックルについて比較することで、7 人制ラグ
ビーのタックル様相を明らかにし、今後の強化につなげる知見を得ることを目的とした。7 人制ラグビーは HSBC Sevens
World Series Tokyo Sevens 2014 のうちの 10 試合、15 人制ラグビーは Six Nations 2014 のうちの 5 試合を対象とした。
分析項目は①タックルの高さ②タックル方向③タックル人数④タックル後のプレー⑤その後のプレー結果、以上の 5 つ
を分析項目として定め、ゲームパフォーマンスを分析した。結果については、当日の発表内容を参照されたい。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
バ
経
方 28 − 104
ハンドボール競技の 1 対 1 局面における防御者の予測的判断
○田口 貴仁(東海大学大学院)
横山 克人(東海大学)
生
栗山 雅倫(東海大学)
ハンドボール競技においてパフォーマンス能力を決する要因として、戦術的能力は極めて重要であり、戦術的能力の構
発
測
成要因は多岐にわたると考えられている。構成要因の一つとして予測的能力が挙げられる。予測的能力には、観察、認知、
判断の過程があり、予測を伴う判断がプレーの善し悪しを左右する一要因と考えられる。そこで本研究では、ハンドボー
ル競技の防御活動における 1 対 1 局面の防御者から見た視点に着目し、防御者の予測的能力を検討することを目的とした。
方
研究方法は、ビデオカメラを用いて 1 対 1 局面における防御者の視線と考えられる位置から攻撃活動を撮影した。撮影
した映像より、攻撃者がボールをキャッチしてから 1 歩目以降、2 歩目以降、3 歩目以降を遮蔽するように編集し、映像
を作成した。作成した映像を競技歴の異なる競技者に見せ、進行方向を回答させ、得られたデータから比較を行った。以
上のことから、競技歴の違いによる予測的能力の優劣について検討した。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
教
方 28 − 105
バドミントンフットワークにおける時空調節について
○杉坂 直輝(愛知教育大学大学院)
保
合屋 十四秋(愛知教育大学名誉教授)
現在、バドミントンにおけるフットワークについての研究はあまり多くない。スイングについての研究はみられるのだ
人
ア
が、実際の試合中におけるスイングは必ずフットワークを伴って行われる。そこで本研究では、相手の打ち出したロビン
グの球に対してどのように落下地点に入り、
どのタイミングでステップを重ねているのか明らかにすることを目的とした。
大学生バドミントン選手 4 名、未経験者 3 名を被験者としフォア奥へのフットワークを行わせ、その様子を高速度ビデ
介
オカメラで撮影した。撮影した映像を Frame-DIAS Ⅳを用いて 3 次元 DLT 法により動作分析を行った。その結果、落下
地点まで 3 歩、4 歩、5 歩、6 歩の 4 パターンが見られた。その中でも出現率の多かった 5 歩のパターンを中心に考察する。
251
哲
熟練者の前後方向の重心移動最高速度は 3 歩目における 2.60m/s だったのに対し、未熟練者は 1.58m/s であった。また、
熟練者においては 4,5 歩目の重心速度が大幅に減少しているため 3 歩目までで落下地点への移動を目的とするフットワー
クを完了していると考えられる。残りの 2 歩でスイングの準備に充てているということが示唆された。
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 106
中学サッカー部員におけるヘディング能力の実態
○鎌田 安久(岩手大学)
澤村 省逸(岩手大学)
上濱 龍也(岩手大学)
栗林 徹(岩手大学)
清水 茂幸(岩手大学)
浅見 裕(岩手大学)
清水 将(岩手大学)
鈴木 大地(岩手大学)
本研究は、I 県の中学校サッカー部に所属するサッカー部員を対象に、ゲーム分析やスキルテスト、質問紙調査を実施し、
ヘディング能力の実態を調査し、その実態を明らかにすることを目的とした。ゲーム分析、スキルテストの結果から、I
県の中学サッカー部員は、パーフェクトスキルが求められる年代でありながら、ヘディング能力が低いということが示唆
された。また、質問紙調査の結果から、1 年生サッカー部員は、2 年生サッカー部員と比較し、ヘディング嫌いの割合が
有意に多く認められ、その嫌いである理由は「こわい」「痛い」であった。これらのことから、I 県の中学サッカー部員は、
パーフェクトスキルが求められる年代でありながら、ヘディング能力が低く、1 年生は、恐怖心のためにヘディング嫌い
が 2 年生と比較して多く存在するという実態が明らかとなった。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 107
400m 走の前半と後半における疾走動態の比較
○平野 達也(愛知教育大学大学院)
筒井 清次郎(愛知教育大学)
本研究の目的は、
400m 走の前半(150m 地点)と後半(350m 地点)における疾走動態をバイオメカニクス的に分析し、
比較、検討することである。参加者は 400m 走を専門とする男子大学生 5 名であり、主観努力度 100%にて 400m を 2
本、
別日に行った。400m 走のスタートから 150m 地点とスタートから 350m 地点の地面反力を、フォースプラットフォー
保
教
ム(1000Hz)を用いて計測した。それぞれの試技において、側方よりハイスピードカメラ(300Hz)にて疾走動作を撮
影し、2 次元 DLT 法を用いて動作分析を行った。
その結果、400m 走前半に比べて後半の疾走速度およびストライドが有意に低下していた。地面反力においても接地時
間、減速時間においては後半に有意に増加、平均鉛直力においても有意に減少していた。以上のことから、400m 走の前
半から後半にかけて、平均鉛直力が低下し、滞空距離が短くなることでストライドが低下すると考えられ、疾走速度の低
下を抑える一要因である可能性が示唆された。
人
ア
介
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 108
ハンドボールのサイドシュート技術における習熟度の違いについて
○嘉数 陽介(東海大学大学院)
横山 克人(東海大学)
栗山 雅倫(東海大学)
ハンドボール競技におけるサイドシュートは、ゲームの流れを左右する重要な一要因であることが報告されている。サ
イドシュートの局面は、ゴールキーパー(以下、GK とする)と 1 対 1 の状況であるため、GK を欺瞞する能力が必要と
252
09 体育方法
される。サイドシュート決定要因については、様々な先行研究がなされているが、ゴールラインに近い位置からの、角度
が狭いサイドシュートに関する研究は少ない。実践において、防御者が介在するため、常に広い角度からサイドシュート
を打つ状況は困難であり、狭い角度からのシュート局面における技術・戦術的能力は極めて重要である。そこで本研究で
は、シュート踏切角度の狭い位置におけるサイドシュート動作の比較により、習熟度の違いを検討することを目的とした。
研究方法は、シュート踏切位置(角度)を指定し、異なるパフォーマンスレベルの被験者によるサイドシュートを 2 方
向から撮影し、得られた映像により動作解析を行った。本研究の結果より、シュート確率と動作習熟性の間に、関係性が
哲
史
見られた。
社
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 109
小学校における着衣泳授業の指導内容の違い
東京都と北海道の比較
○目黒 拓也(日本大学大学院)
野口 智博(日本大学)
鈴木 淳也(玉川大学)
水資源に恵まれたわが国においては、海浜や河川における着衣状態での水難事故が絶えず、毎年多くの人命が失われて
いる。しかし、小学校学習指導要領解説体育編(平成 20 年 3 月)の中で着衣泳は、
「各学校の実態に応じて取り扱うこと」
となっており、着衣泳の実施は各学校に任されている。筆者ら(2013)は東京都 S 区の公立小学校 10 校の教員を対象
に着衣泳授業の実施調査を行ったところ、道具を使った浮き身 93.2%、水中歩行 87.7% の実施率であった。これらの着
衣泳の技術の習得には、基礎的な泳技能が必要である。しかしながら、屋外プールが多いわが国の学校教育の現場では、
気候によって各地域でプールが使える時期が異なるため、そのことが着衣泳の技術の習得に影響を及ぼすのではないかと
考えた。そこで、本研究では小学校における着衣泳授業の地域差の有無を調べることで、今後の着衣泳の指導内容を検討
するための一資料を得ることを目的とした。調査方法は東京都S区と北海道S市の公立小学校 20 校に対し、2013 年 11
月 27 日から 12 月 10 日の期間で郵送法による質問紙調査を実施した。なお、結果の詳細については学会当日に報告する。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
Mach Drills と疾走動作に関するキネマティクス的研究
英国におけるエリートレベルの短距離選手の事例
井上 伸一(佐賀大学)
1960 〜 1970 年代にかけて疾走動作を習得するための手段として欧米を中心に広く普及した 2 つのドリル練習がある。
これは Gerald Mach 氏のトレーニング理論による A Drill と B Drill で Mach Drills と称されている。本研究では Mach
Drills を日常的にトレーニングのなかで実践している英国のエリートレベルの短距離選手を対象として、疾走動作及び A
Drill、B Drill におけるスウィング脚に着目して 2 次元分析を行った。その結果、腿上げ動作については鉛直線と大腿の
なす最大角度 67.04deg、腿上げ速度 711.39deg/s、引きつけ動作については膝関節の最小角度 29.27deg、最大屈曲速
度 786.05deg/s、振り出し動作については鉛直線と大転子から踵を結んだ線の最大角度 34.84deg、膝関節の最大伸展速
度 1122.37deg/s、そして振り戻し動作については大転子と踝を結んだ線のなす最大角速度 423.54 deg/s であった。そ
して、これらの分析結果と A Drill、B Dril との関係について検討し競技力向上のための示唆を得るとともに指導への摘要
を考えていく。
生
バ
経
発
測
方 28 − 110
○八嶋 文雄(北九州工業高等専門学校)
心
方
保
教
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介
253
哲
史
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 111
主観的努力度にともなう疾走速度の変化
○篠原 康男(神戸大学大学院・日本学術振興会特別研究員)
前田 正登(神戸大学)
走能力の向上を目的として、主観的努力度を用いた走トレーニングはよく用いられている。これまでも主観的努力度と
社
疾走の関連性について検討がなされてきたが、疾走の一部始終を対象とした検討はあまり見当たらない。本研究では、主
観的努力度が疾走中の速度様態に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。被験者は、陸上競技経験のある男子大学
生 7 名(以下、陸上競技群)と、陸上競技経験のない男子大学生 6 名(以下、非陸上競技群)とした。被験者には、努
心
生
力度で 100% を全力疾走とした時の 50%、70%、90%、および 100% の 4 つの努力度による疾走を行わせた。試技は、
スタンディングスタートからの 50m 走とし、努力度は疾走の一部始終に反映させるように指示した。各試技において、
被験者が疾走を開始してから終了するまでの被験者の疾走速度をレーザー式速度測定器(LDM301S; JENOPTIK 社製)に
より測定した。得られた疾走速度曲線を用いて、疾走中の局面分けを行ったところ、陸上競技群は加速局面の長さに努力
度を反映させているものと考えられた。一方、非陸上競技群では、疾走中の各局面の割合を様々に変えることで努力度を
反映させているものと考えられた。
バ
経
発
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 112
サッカー競技における「パスの質」に関する一考察
○中村 泰介(園田学園女子大学短期大学部)
中村 公美子(平安女学院大学)
松山 博明(大阪成蹊大学)
日本サッカー界において「パスの質」の向上は、世界トップレベルで戦うために克服しなければならい喫緊の課題であ
測
る。個のレベル向上はもちろんのこと、
2010 年 FIFA W-Cup 或いは、ロンドンオリンピックのテクニカルレポートでは
「組
織として戦えたチームが勝ち残っている」という分析の報告がある。つまり、攻守にわたる集団のスキルのさらなるレベ
ルアップ、とりわけ攻撃のビルドアップやアタッキングエリアにおける「パスの質」の向上は、育成年代の時期から取り
方
保
組まれなければならない喫緊の課題なのではないだろうか。ここでいう「パスの質」とは、単に「出し手」から送りださ
れるボールの軌道の質だけではなく、
「受け手」のプレー(ファーストタッチ・サポート)も強く影響するものである。
以上のような問題意識のもと、本報告は、報告者(中村)らの調査研究を参照しつつ「出し手」と「受け手」の関係性
を、指導者のコーチングメソッドやプレーイメージの分析(公式ゲーム・トレーニングゲーム・トレーニング・聞き取り
等)及び選手のプレーイメージの分析を通じ(詳細は当日報告する)、「パスの質」向上の手がかりの一つを見出すことを
目的とする。
教
人
ア
介
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 113
日本女子トップレベルのバスケットボール選手における試合中の移動距離及び移動速度
○山田 洋(東海大学体育学部)
小山 孟志(東海大学スポーツ医科学研究所)
小河原 慶太(東海大学体育学部)
陸川 章(東海大学体育学部)
長尾 秀行(東海大学大学院総合理工学研究科)
本研究では日本女子トップレベルのバスケットボール選手を対象として試合中の移動距離及び移動速度を算出し、体力
的特徴の検討・トレーニングへの示唆・戦術構築の一助となる知見を得ることを目的とした。第 77 回皇后杯全日本総合
バスケットボール選手権大会準決勝 J チーム対 D チームを分析の対象とし、2 台の定点カメラでセンターラインを境にコー
トを二分して撮影を行った。分析には、映像解析ソフト(Frame DIAS Ⅴ、DKH 社製)を用いて、DLT 法を用いた二次元
254
09 体育方法
映像解析を行った。各ポジションの平均移動距離は、G(ガード)が 1339.5m ± 66.5m、F(フォワード)が 1329.1m
± 49.4m、C(センター)が 1231.1 ± 6.3m であり、各ポジションで有意な差は見られなかった。各ポジションの移動
速度の分類では、どのポジションにおいても 0m/sec は約 10%、0 ~ 1.5m/sec は約 40%、1.5 ~ 2.0m/sec は約 10%、
2.0 ~ 3.0m/sec は約 15%、3.0 ~ 4.0m/sec は約 10%、4.0 ~ 5.0m/sec は約 7%、5.0m/sec ~は約 8%であり、ポジショ
ン間で有意な差は見られなかった。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
史
社
方 28 − 114
アウトリガーカヌーのパドリング動作に関するキネマティクス的研究
○藤原 昌太(東海大学)
小河原 慶太(東海大学)
川邊 保孝(東海大学)
長尾 秀行(東海大学大学院総合理工学研究科)
山田 洋(東海大学)
小林 俊(東海大学)
アウトリガーカヌーは、船体の外側にアウトリガーと呼ばれる転覆防止用の舷外浮材が張り出した形状をしており、シ
ングルブレードパドルを用いて漕ぐカヌーである。ポリネシア文化圏で盛んなスポーツであるが、日本では知名度も低く、
その研究はほとんどない。
本研究では、カヌーを推進させるための技術的要因の一つであるパドリング動作に着目し、技術向上のための一助とな
るような知見を得ることを目的とした。経験者 5 名、未経験者 7 名、計 12 名を分析の対象とした。動作の記録にはモー
ションキャプチャシステム(Motion Analysis 社製)を用いた。ボート練習用のローングエルゴメーター(コンセプト型式)
にアウトリガーカヌーのパドルを取り付け、パドリング動作を行い、50rep/min 時におけるパドルの軌跡についての分
析を行った。その結果、経験者と未経験者のパドリング動作において、パドルのフィニッシュ位置、最大高さ位置、大転
子横通過位置の左右方向の座標値に有意な差が見られた。つまり経験者は未経験者に比べ、船体により近い位置でパドリ
ングを行っていることが示唆された。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
哲
生
バ
経
発
測
方 28 − 115
テニスにおけるフォアハンドジャンピングショットに関する研究
○長尾 秀行(東海大学大学院総合理工学研究科)
小河原 慶太(東海大学体育学部)
心
山田 洋(東海大学体育学部)
テニス競技におけるファオアハンドストロークについては、世界で活躍している選手の代名詞となった「エア K」
(ジャ
ンピングショット)が近年注目されている。通常のフォアハンドストロークの研究は多く見受けられるが、このジャンピ
ングショットは新しく生まれた技術であり、多くの研究はなされていない。そこで本研究は、通常のファオアハンドスト
ローク(Normal)とフォアハンドジャンピングショット(AirK)の動作を比較し、その違いを明らかにすることを目的
とした。大学男子硬式テニス部 10 名を対象に Normal と AirK 動作をハイスピードカメラを用いて記録し、スピードガン
を用いて球速を測定した。球出しは専用の機械を用いて行い被験者毎に相対的に同じ位置にボールが跳ぶようにした。試
技はハードコートで行わせ、記録した動作から 3 次元 DLT 法によって身体各部の位置座標を算出した。分析の結果、球
速は AirK の方が Normal よりも有意に大きな値を示したが、腕のスウィングスピードは打法間で有意差は認められなかっ
た。また、ショットのインパクトは、AirK の方が Noema よりも有意に重心位置が高く、時期も早かった。
方
保
教
人
ア
介
255
哲
史
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 116
血中乳酸濃度を指標としたウォーミングアップの強度の違いが 30 秒間全力ペダリング運
動の成績に及ぼす影響
○三本木 温(八戸学院大学人間健康学部)
本研究では、陸上競技の 400m 走などの高強度運動のための至適なウォーミングアップについて明らかにするために、
社
ウォーミングアップ後の血中乳酸濃度(La)を手掛かりとして、ウォーミングアップの運動強度の違いが自転車エルゴメー
タによる 30 秒間全力ペダリング運動の成績に及ぼす影響について検討することを目的とした。大学陸上競技選手 8 名を
対象にして、多段階負荷方式により 20 秒間の自転車ペダリングを行わせて、個人ごとに La と運動強度との関係を求めた。
心
生
バ
経
発
その後、La が 3mmol、6mmol、および 12mmol に相当する運動強度による 20 秒間・3 セットのペダリング運動からな
るウォーミングアップを行わせた後に、体重の 7.5%に相当する負荷での 30 秒間全力ペダリング運動を行わせた。その
結果 30 秒間全力ペダリングにおける平均パワー、ピークパワーおよびピーク回転数は、La が 6mmol に相当する運動強
度でのウォーミングアップ後に行った試技において最も高い値を示した。これらの結果から、短時間・高強度運動のため
のウォーミングアップは運動強度をやや高めにして行うのが望ましいことが示唆された。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 117
インラインホッケーのコーチングに関する研究
アイスホッケーとの比較から
○髙川 泰至(日本体育大学)
青柳 徹(日本体育大学)
コーチのよいとされるコーチングには、コーチングを行う競技の専門的知識が不可欠である。
(Cote&Gilbert,2009)ま
た、プレーヤーに与える影響はコーチの哲学観によって大きく影響すると言われている。(Lyle,2002)
筆者自身大学のインラインホッケークラブのコーチとして活動しているが、インラインホッケー競技におけるスキル指
測
導などの研究はなされておらず、スキル指導の場面では、アイスホッケーのスキル指導法を応用し行っているのが現状で
ある。しかし、ルールや試合での出場人数、防具なども異なりインラインホッケーの専門的な知識がもとでの指導とはい
いがたい。よって本研究では、インラインホッケーとアイスホッケーとを比較し、インラインホッケーの専門的知識・技
方
保
教
人
術を調査するものである。インラインホッケー選手に両競技歴などの質問紙調査を行い、その結果からインタビュー者を
選定しインタビューを行い、質的分析によってインラインホッケーとアイスホッケーとの類似点と相違点を考察する。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 118
指導者の運動能力と他者評価の関連性
開脚跳びを事例として
○菅浪 萌(横浜国立大学大学院教育学研究科)
海老原 修(横浜国立大学大学院教育学研究科)
体育やスポーツ指導の現場では、バイオメカニクスや生理学的手法による評価は極めて困難であり、指導者の独断的判
断に委ねられている部分が非常に大きい。したがって、指導者は運動動作のそれぞれについて良し悪しの判断ができなけ
ればならない。ある動作対象についてそれを詳細に判断するには、指導者自身がその動作を巧みに実演できる場合に限ら
ア
れるという考え方がある。五輪の選手のコーチに選手時代の功績を求めるのがそれである。しかし、指導者が実際の動作
を実演できれば、必然的に他者の動作の微妙な差異まで検知できるという理論は成立し得るのだろうか。
本研究の目的は、運動動作における指導者自身の実演動作の可否と他者の運動動作の評価の関連性を考察することにあ
介
る。優劣や巧拙への評価のずれが一同をして大差が生じない対象動作として開脚跳びを取り上げた。撮影した複数の開脚
跳び動作から無作為に抽出した映像について、全体の動作に対する評価と、予め作成した局面別動作分析観点のそれぞれ
について被験者が判定した。
256
09 体育方法
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 119
コーチのリーダーシップの取り方とアスリートの接近動機・回避動機の関係
○古木 里香(日本体育大学大学院)
伊藤 雅充(日本体育大学)
関根 慧(日本体育大学大学院)
本研究は、コーチのリーダーシップの取り方とアスリートの接近動機・回避動機の関係を明らかにすることを目的と
した。研究方法は、Survey Monkey と呼ばれるオンラインアンケートを採用し、日本語版 Leadership Scale(Yashiro、
哲
史
社
2008)
(以下 LSS)と、BAS/BIS 尺度(高橋ら、2007)を用いて調査を実施した。Horn(2008)は、コーチの振る舞い
がアスリートのパフォーマンスならびにアスリートの心理的もしくは感情的な幸福に重要な影響を及ぼすと述べている。
Côté と Gilbert(2009)は、コーチの知識と振る舞いにはアスリートの精神的な側面に重要な影響があることを、LSS を
用いた調査が示したと述べている。また BAS/BIS 尺度は、アスリートの行動抑制系と行動賦活系を示すためアスリート
の接近動機と回避動機の傾向を示すと考えられる。
この二種類の尺度の結果を分析し、アスリートが認識するコーチのリー
ダーシップの取り方とアスリートの接近動機・回避動の関係を考察した。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
心
生
バ
方 28 − 120
110m ハードルのセルフコーチングに関する研究
○粟野 祐弥(日本体育大学)
陸上競技において大学生から社会人選手のアスリートでは指導者(コーチ)に専門的な指導を受けたり、マンツーマン
で一貫した指導を受ける事が可能な環境を持つアスリートは少ない。そのため、多くのアスリートがパフォーマンス(記
経
発
録)向上の為に自ら考え、
実践しながらトレーニングをおこなっているのが現状である。その中で自己記録を更新したり、
成績を向上させているアスリートが多くいるが、思うように成績を残すことができていないアスリートも少なくない。そ
して、自分自身もまた現役のアスリートとしてトレーニングをおこなっている中で、指導者(コーチ)の指導なしで自ら
測
のパフォーマンス(記録)を向上させていくには自分に対して効果的なセルフコーチングをおこなうことのできるコーチ
ング能力と理論が必要であると考えられる。
本研究では、パフォーマンス(記録)向上のために効果的なセルフコーチングをおこなうことができるようにし、自ら
のコーチング能力を高めていくことで今後に役立てていくことを目的とする。
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8 月 28 日
14:00
保
方 28 − 121
7 人制ラグビーのゲーム分析
攻撃パターンと守備のポジショニングに着目して
○岡西 康法(大阪体育大学大学院)
方
梅林 薫(大阪体育大学)
石川 昌紀(大阪体育大学)
教
人
2016 年のリオデジャネイロオリンピックから男女共に 7 人制ラグビーが、正式競技として採用されることが決定した。
出場枠は 12 か国となり、日本が出場枠を獲得するためには更なる強化が必要となる。
本研究では、7 人制ラグビーのゲーム分析を行い、強豪国の攻撃に対する守備のポジショニングの特徴を明らかにする
ア
ことを目的とした。2012 年にニュージーランドで行われた男子エリートチームの 14 試合のゲーム分析から、攻撃パター
ンの分類、守備のゲインラインに対するポジショニングの分類とその守備に要した時間、その守備の成否について、勝敗
別にチームごとの守備時間を算出した。その結果、15 人制ラグビーとは異なり、7 人制ラグビーではパスを回す展開型
介
で攻撃する特徴がみられ、その攻撃に対する守備ラインがゲインラインから自陣側で守備を行うポジショニングが勝利
チームの特徴として確認された。
257
哲
史
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8 月 28 日
14:00
方 28 − 122
三段跳における身体重心速度の減少を抑制する動作要因
ホップ局面に着目して
○鈴木 雄貴(中京大学大学院)
桜井 伸二(中京大学)
三段跳における先行研究では、踏切による身体重心速度の減少を抑制することが跳躍距離を増大させるための課題であ
社
ると報告されている。特に最大速度で踏み切りが行われるホップ局面においてこの課題を克服することが総跳躍距離の増
大に寄与すると考えられる。本研究の目的は、ホップ局面に着目し進行方向の身体重心速度の減少を抑制する動作要因に
ついて検討し、指導現場に活かせる知見を獲得することである。被験者は公認陸上競技大会に参加した男子三段跳選手
心
生
バ
経
発
26 名(13m50-15m34)とし、2 台のデジタルビデオカメラ(60Hz)を用いて撮影した。3 次元 DLT 法によって得られ
た身体各部の座標データから身体重心速度、水平速度の減少値、接地距離、膝関節、大腿部、下腿部の角変位および角速
度を算出した。接地距離は接地した瞬間の踵と重心の水平距離である。大腿部、下腿部の角変位は矢状面における矢状軸
と大腿部、下腿部のなす角の接地から離地までの変位である。以上により、踏切における身体重心速度の減少値と動作的
変数の関係について検討した。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 123
高校ラグビーにおける練習内容の理解を深めるツールの活用実践
デジタルペン(エコー・スマートペン)による実践研究
○鈴木 大輝(東北大学大学院)
北村 勝朗(東北大学)
練習時間や場所が限られているなどの、環境的弱者のチームは、練習の質をいかにして高め、効率よく選手の能力を伸
ばしていくかが、大切なポイントとなる。いかに科学的に有効性が確認されている練習を実施しても、正しく理解し、正
しい姿勢で実施しなければ、その練習の質を最大限まで高めることはできない。
測
本研究では、
公立高等学校運動部において、
音声と手書きメモが保存可能で転送による共有可能なデジタルペン(エコー・
スマートペン)の活用が、練習の質やチームパフォーマンスにどのような影響を及ぼすのかを解明し、練習の質を最大限
に高めることを目的とする。
方
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人
ア
調査は高校ラグビー部を対象とし、
デジタルペンによって作成された練習用ノートを選手たちに配布し、活用実践を行っ
た。また、実践の前後に、練習内容の理解に関するインタビューを行った。分析の結果、指導者および選手同士が練習用
ノートの音声付きメモを、練習メニューの事前理解や、繰り返し復習に活用することで、練習の目的を共有し、正しく理
解することが可能となり、練習の質やチームパフォーマンスを向上させるためのツールとして、有用であることが明らか
となった。
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8 月 28 日
14:00
方 28 − 124
サッカーにおけるタレント発掘
○松尾 元太(大阪体育大学)
本研究の目的は、
「よりテクニカルに、スピーディーに、タフに、そしてコレクティブ」に進化するサッカーにおいて、
トップレベルの選手になるために必要とされる体力要素を明確にする。
また、ジュニア期からプロ選手になるまでの発達発育段階について明らかにし、タレント発掘の手法を考察する。
介
被験者は、J 下部組織に所属する選手を対象とした。過去 5 年のフィジカルテストのデータ、① 10m,20m,30m 走②
10mx5 走③立ち 5 段跳び④ yo-yotest の項目を横断的かつ縦断的に観る中で、トップレベルになるためには体力的な側
面から観ると、スピードとパワー、持久力だけではなくコーディネーションがキーワードになることが示唆された。
258
09 体育方法
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8 月 28 日
14:00
方 28 − 125
ボクシングに関する心理的側面の研究
○小林 玄樹(東海大学大学院)
高妻 容一(東海大学)
哲
史
本研究の目的は、先行研究が少ないボクシングという競技を取り上げ、ボクサーの心理的側面の基礎データを収集する
と同時に、ボクサーに対してメンタル面強化を実施すれば、ポジティブな影響が認められるだろうという仮説を検証する
ことであった。そこで本研究は、第 1 段階で東日本ボクシング協会に所属する 3 つのボクシングジムの 94 名の選手を対
社
象にして心理的競技能力診断検査(DIPCA.3)及びアンケート調査を実施し、ボクサーの心理的側面を分析した。第 2 段
階では、メンタル面強化実施群と非実施群に継続した調査を実施し、6 か月後に 2 回目の調査、12 か月後に 3 回目の調
査を実施した。対象者は、メンタルトレーニング・心理的サポートを実施したメンタル面強化実施群 42 名(15 − 33 歳)
と、メンタル面強化を全く実施しなかった非実施群 40 名(13 − 43 歳)とした。3 回のデータ収集ができた選手のデー
タを比較分析した結果、メンタル面強化実施群にポジティブな影響を与えたことが検証できた。また内省報告から、実施
群はほとんどがメンタル面強化にポジティブな回答をし、戦績という面からも大きな向上が観察できた。
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方 28 − 126
方向転換動作のパフォーマンス改善のためのトレーニング法とチェック法に関する研究
大学アメリカンフットボール選手におけるリバウンドジャンプ能力と方向転換能力の関係
○有賀 誠司(東海大学スポーツ医科学研究所)
藤井 壮浩(東海大学体育学部)
心
小山 孟志(東海大学スポーツ医科学研究所)
本研究は、アメリカンフットボール選手の方向転換動作を改善するためのトレーニング法とチェック法について検討す
経
発
ることを目的とした。大学男子アメリカンフットボール選手 40 名を対象として、マットスイッチ上にて両足及び左右の
片足で連続 5 回のリバウンドジャンプ動作を行わせ、伸張-短縮サイクルの機能の指標となるリバウンドジャンプ指数
(以
下 RJ-index)を算出し、直線走(10 ヤード及び 40 ヤードダッシュ)
、方向転換走(プロアジリティテスト、スリーコー
測
ンテスト)、スクワット及びパワークリーン 1RM、垂直跳び及び立ち幅跳びとの関連について検討を行い、次のような
結果を得た。1)スキルポジション群の RJ-index は、ライン群よりも有意に高い値を示した。2)RJ-index と身長、体重、
体脂肪率、除脂肪体重との間にはいずれも負の有意な相関が認められた。3)RJ-index と直線走(10 ヤード走と 40 ヤー
ド走)及び方向転換走(プロアジリティテストとスリーコーンテスト)との間には有意な負の相関が認められた。4)RJindex とパワークリーン 1RM 体重比との間には有意な正の相関が認められた。
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8 月 28 日
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方 28 − 127
映像の遅延呈示を実現する各種手法の比較と検討
○和田 智仁(鹿屋体育大学)
高橋 仁大(鹿屋体育大学)
方
保
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人
運動スキルの学習場面において、学習の促進を目的に運動時のビデオ映像を即時的に学習者にフィードバックすること
が行われている。特に、撮影する映像を一定の時間だけ送らせて常に再生する遅延呈示では、撮影と再生の手続きを大幅
に簡素化できるため、体育・スポーツの現場で多く用いられるようになっている。
ア
遅延呈示を実現する方法としては、遅延専用の装置を使用するもの、PC のソフトウェアによるものなど比較的古くか
ら用いられている手法をはじめ、近年ではタブレットやスマートフォンのアプリケーションによるものなども登場して
いる。カメラの高解像度化やデジタル化、機器の端子群の変化など従来の手法が使いづらい状況も生まれている一方で、
介
DVD レコーダのような DVR(Digital video recorder)と呼ばれる機器が普及するようにもなった。セキュリティ用途に
開発されている DVR の中には、高精細映像の遅延再生をはじめ、ネットワークを経由した映像閲覧が可能なものも販売
259
哲
史
社
心
されている。これらをタブレットでの再生と組み合わせて使用すれば可搬性の高い遅延呈示が可能となり、活用の幅が広
がると考えられた。
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8 月 28 日
14:00
方 28 − 128
バスケットボールのテーブルオフィシャルズ技能向上への実践事例
ルールの理解度向上の取り組みによる効果
○三浦 健(鹿屋体育大学)
木葉 一総(鹿屋体育大学)
大学バスケットボールインカレ予選 4 試合においてテーブルオフィシャルズ(TO)を担当した者 14 名を対象に、1 回
目の TO 実施直後にルールの理解度の調査を実施した後、誤答について直接解説し、ルールを十分に理解させた上で翌日
の TO を前日と同じ役割で実施してもらい、1 回目と 2 回目の TO のミスの回数、原因の変化を検証した。同時に TO に
生
バ
経
発
測
方
関するルールの指導の効果についてのアンケート調査を行い、指導前後の意識の変化を比較した。TO 担当者のルールの
理解度の正答率は 75.2 ± 15.6% であった。インカレ出場を決める重要な大会において、正答率 100% で TO に臨むべき
であるが、この結果は不十分な数値だった。1 試合当たりの平均ミス回数は、指導前 3.0 ± 2.3 回から、指導後 1.0 ± 0.8
回へと減少した。ミスの要因について、指導前はルールの理解不足によるものが 0.8 ± 1.0 回、集中の欠如によるものが
2.3 ± 1.5 回であったが、
指導後はルールの理解不足が 0 回、集中の欠如が 1.0 ± 0.8 回とどちらの要因も減少した。また、
指導前後に実施したアンケート調査でも、大部分の項目で指導後において好意的な数値を表し、今回の取り組みが TO 担
当者に対して効果的なものであったと考えられた。
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8 月 28 日
14:00
方 28 − 129
バスケットボールハーフコート・ディフェンスのポジショニング評価の経験年数・競技水
準による違い
○川面 剛(九州共立大学スポーツ学部)
青柳 領(福岡大学スポーツ学部)
八板 昭仁(九州共立大学スポーツ学部)
【緒言】バスケットボールのハーフコートでのポジショニングは誰もが認める望ましいポジショニングがある反面、コー
チや監督の価値観、
選手個人の身体的特徴・運動能力などの影響を受けると考えられる。本研究ではハーフコート・ディフェ
ンスのポジショニングに対する評価の経験年数・競技水準による違いについて検討する。【研究方法】対象者は九州学生
保
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人
ア
介
バスケットボール連盟 1 部と 2 部に加盟している男子 110 名、女子 82 名の計 192 名である。ポジショニングの評価を
行う項目は、カットインプレイ 3 項目、オンボールスクリーン 5 項目、オフボールスクリーン 7 項目、ドリブルスクリー
ン 3 項目、アウトサイドスクリーン 4 項目の計 22 項目で、当該プレイの開始前とプレイ後のオフェンスとディフェンス
のポジショニングの様子を図示した用紙にそのディフェンスの評価をディフェンス側から見て 5 段階で評価してもらっ
た。評価得点を経験年数、社会学校区分、レギュラーかそうでないか、出場大会別に集計し、平均値の差を分散分析した。
【結果】結果、競技水準が低く、経験年数が短いほど、評価がディフェンスのポジショニングの評価が高い、つまり、
「甘
い」傾向が見られた。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 130
バスケットボールゲームにおける勝敗に対するディフェンスプレイの貢献度
―第 44 回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会男子を対象にして―
○案浦 知仁(福岡大学スポーツ健康科学研究科)
青柳 領(福岡大学スポーツ科学部)
バスケットボールにおけるプレイにはその成否が大きく勝敗に貢献するものがある反面そうでないプレイも存在する。
多くの研究はオフェンスの各プレイの貢献度を評価している。しかし、バックコートからフロントコートへボールが運ば
260
09 体育方法
れ、最終的にシュートに到るまでの過程での全てのプレイの貢献度を評価するために今回はディフェンスに注目し、ディ
フェンスプレイの勝敗への貢献度を統計学的に検討するのが目的である。対象は第 44 回全国高等学校バスケットボール
選抜優勝大会の男子ベスト 8 以上のチームの計 8 ゲームである。これらを対象にボールマンへのプレッシャーの成否、
レシバーへのプレッシャーの成否、ディフェンスリバウンドの獲得回数など 42 項目を記録し、試合ごとに勝利チームの
プレイの頻度から負けチームのプレイ頻度の差を求め、さらに平均と標準偏差を求め、それをもとに T スコアを求めた。
結果、勝利チームの中で T スコアが最も大きかったのはディフェンスリバウンド(T スコア =61.7)で、以下、3 点シュー
哲
史
トの成功数(59.4)
、アシストの有無(59.4)
、プレッシャーがある状況下での 2 点シュート成功数(58.5)などが試合
社
において勝敗に大きく影響していた。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 131
ジュニア競泳選手へのトレーニング指導法の検証
―選手参加型研修受講者の DIPCA の変化―
○野口 智博(日本大学)
目黒 拓也(日本大学大学院)
鈴木 淳也(玉川大学)
武田 篤(日本大学大学院)
競泳の競技力向上のためのトレーニング・プログラムは、多くの場合コーチが作成し、それを選手に提示して、そのま
ま実施される。そのため、選手のコーチに対する依存は高まる反面、コーチの指示に従えるかどうかは、コーチと選手の
信頼関係にも様々な影響をおよぼす。中澤ほか(2003)は、地域強化事業に参加したジュニア競泳選手を対象に、コー
チ需要と心理的競技能力の関連性を調べた結果、コーチの資質が選手の心理的競技能力に影響をおよぼしていることを明
らかにした。さらに心理的競技能力の高さも、
トレーニングの継続に影響をおよぼしていることを明らかにした。そういっ
たことから、選手強化の一助として行われる様々なイベント(研修会やスイムクリニックなど)は、日々の練習への参加
継続を促したりコーチ需要を高める必要がある。
筆者ら
(2013)
は、
2013 年度に選手参加型講習が心理的競技能力診断テスト(DIPCA)の総合得点等を有意に増加させた。
心
生
バ
経
発
本試行ではその経験をもとに、強化トレーニングについても選手が自ら参加するよう意図した研修会を開催し、その前後
に DIPCA を用いて心理的競技能力の変化を調べた結果、興味深い知見を得たので報告する。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 132
測
方
走幅跳における助走速度増大の教示が助走および跳躍距離に与える影響
○熊野 陽人(鹿屋体育大学大学院)
大沼 勇人(鹿屋体育大学大学院)
居石 真理絵(鹿屋体育大学大学院)
松林 武生(国立スポーツ科学センター)
松尾 彰文(鹿屋体育大学)
平野 裕一(国立スポーツ科学センター)
一般的に行われている走幅跳のトレーニング・研究ともに、踏切準備及び踏切技術などを対象にしたものがほぼ全てを
占める。一方、跳躍距離と助走速度との間には高い相関関係があり、跳躍距離向上には技術的要素だけでなく助走速度の
向上が必要不可欠であると考えられる。そこで本研究では、選手が通常行っている助走よりも助走速度を増大するように
教示することで、助走速度が向上し且つ跳躍距離が向上するとの仮説を立て、それらを検証することを目的とした。被験
者は、男子学生走幅跳選手 11 名(測定時のシーズン最高記録:7.02 ± 0.23m)であった。被験者には、①通常行って
いる全助走跳躍、②通常よりも助走速度を増大するように教示した全助走跳躍、の 2 種類を行わせた。これらの試技に
おける跳躍距離、助走速度、ステップ長、ピッチを比較した。その結果、跳躍距離、最高助走速度、踏切線地点速度にお
保
教
人
ア
いて、教示後の試技の方が通常跳躍よりも有意に高くなっていた。このことより、走幅跳選手が通常行っている助走には
速度向上の余地があり、より速度を増大させる意識を持つことが跳躍距離向上に繋がる可能性が示唆された。
介
261
哲
史
社
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 133
コーチの振る舞いに関する系統的観察
○吉岡 麻里子(日本体育大学大学院)
伊藤 雅充(日本体育大学)
米地 徹(日本体育大学)
コーチの振る舞いに関する評価方法は現在まで Smith, Smoll, & Hunt(1977)の The Coaching Behavior Assessment
System(CBAS)や Chelladurai & Saleh(1978,1980)の Leadership Scale for sports(LSS)などいくつも紹介され、
調査・
研究されてきている。コーチの振る舞いに関しての研究は行われていても、その振る舞いがアスリートにどのような影響
心
生
を及ぼしているのかを示すものは管見することができない。この研究は、コーチとアスリートの関係評価をコーチの振る
舞いに焦点を当てて調査するものである。
コーチがアスリートに行うアプローチをビデオ撮影するとともに会話を録音し、
その中から 1 対 1 の場面を抜き出し観察を行った。コーチとアスリートが比較的近い距離で会話をしている間に見られ
るコーチの頭や手の動き、傾聴姿勢などにポイントを絞り、これらのコーチの振る舞いがアスリートにどのような影響を
及ぼしているか、コーチ、アスリートの双方にインタビューを行い、それぞれの考えを比較した。これらの結果から、コー
チはどのような振る舞いをすればアスリートとよりよい関係を築くことができるかを考察する。
バ
経
発
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 134
ハンマー投におけるレジステッドトレーニングの有効性の検討
○廣瀬 健一(筑波大学大学院)
尾縣 貢(筑波大学)
大山卞 圭悟(筑波大学)
体重や空気抵抗などの外的負荷を増大して運動を遂行する方法は、一般にレジステッドトレーニング(resisted
測
training)と呼ばれ、過負荷を与えることでその運動に特異的な筋力要素の改善を目指すものであるとされている。ハン
マー投においても同様に、ハンマーの重量を変化させたトレーニングは指導書等で推奨されているが、重量変化がもたら
す具体的な影響に関しては詳細に検討されていない。本研究では高重量ハンマーによる投トレーニングの有効性を検討す
方
保
るために、高重量ハンマーによる試技の特性を明らかにすることを目的とした。ハンマー投を専門とする男子投てき競技
者 16 名(年齢 22.25 ± 2.82 歳、競技歴 6.94 ± 2.82 年、身長 178.99 ± 5.18cm、体重 103.08 ± 13.38kg、自己ベス
ト記録 60.24m ± 5.04)
を対象とし、
3 台のカメラを用いて三次元動作解析した。高重量ハンマーの重量を 8.0kg に設定し、
全ての被験者は正規重量ハンマー、高重量ハンマーの順で試技を行った。その結果、競技パフォーマンス(正規重量試技
53.80 ± 3.69m、高重量試技 49.56 ± 4.01m)間に有意差が認められた。キネマティクスデータ等、詳細な分析結果は
当日ポスターにて報告する。
教
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第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 135
日本と内モンゴルの児童の学校生活における活動水準の比較
○包 明蓮(広島大学大学院教育学研究科)
黒川 隆志(広島大学大学院教育学研究科)
西山 健太(広島大学大学院教育学研究科)
明石 啓太(広島大学大学院教育学研究科)
大塚 道太(広島大学大学院教育学研究科)
森木 吾郎(広島大学大学院教育学研究科)
足立 達也(広島大学大学院教育学研究科)
本研究では日本と内モンゴルの児童の学校生活中の活動内容と活動水準を比較することにより、日本と内モンゴルの児
童の学校生活や体育授業において身体の発育発達に有効な運動刺激が確保されているか否かを明らかすることを目的とし
た。被験者は日本と内モンゴルの 5 年生の各 30 名であった。活動水準の指標として心拍数(HR)モニターを用い、登
262
09 体育方法
校時から下校時まで 7 時間 27 分継続して 5 秒間隔で HR を測定した。学校生活中には日本で 45 分、中国で 40 分の体
育授業が含まれ、全力法で 800m を走った。日本と内モンゴルの児童の学校生活中の HR は、61-80bpm において 8.3%
と 1.5%(p<.01)
、81-100bpm において 33.8% と 27%、101-120bpm において 34.5% と 34%、121-140bpm において
13.5% と 24.2%(p<.01)
、141-160bpm において 4.4% と 9.1%(p<.01)、161-180 bpm において 2.5% と 2.7%、181200bpm において 2.4% と 1.1%(p<.01)
、201-220bpm において 0.6% と 0.4% であった。
第1体育館
8 月 28 日
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社
方 28 − 136
棒高跳の助走におけるポール操作と疾走動作の関係
○多久 優麗花(日本大学大学院)
青山 清英(日本大学)
澤野 大地(富士通)
棒高跳の助走速度と跳躍高との間には高い相関関係があり、棒高跳の跳躍の成功は助走によって決まるとされている。
『良い助走』をするためには、助走速度、姿勢、リズム(ストライド・ピッチ)、ポール保持の技術が重要である。これま
で、棒高跳の助走に関しては、ポール操作と助走速度、ピッチ、ストライドの関係について研究が行われており、ポール
降ろしによってピッチと助走速度の増加が得られると報告されている。このためポール操作に伴って、身体がどのような
動作変容をしながら助走速度やピッチを増加させていくのかを明らかにすることは、実際の指導において基礎的な知見と
して大変重要と考えられる。
そこで本研究では、棒高跳において助走全体をポールの傾きを基点として考え、前半・中間・後半の 3 つの局面に分け、
ポール操作に伴った助走の構成を速度、ストライド、ピッチ、疾走動作の観点から検討することを目的とした。被験者は、
陸上競技棒高跳を専門とする男子 10 名を対象として、トラックでのポール助走(全助走)の試技を用いた。結果につい
ては学会当日、ポスターにて報告する。
第1体育館
8 月 28 日
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哲
方 28 − 137
運動部活動において体罰経験のある学生は「体罰容認傾向」と「スポーツ指導者志向」が強い
全国大学体育連合「運動部活動等における体罰・暴力に関する調査」報告(1)
○北 徹朗(武蔵野美術大学 身体運動文化)
中山 正剛(別府大学 短期大学部)
高橋 宗良(杏林大学 保健学部)
小林 勝法(文教大学 国際学部)
運動部活動での人権侵害を根絶させるためにも、将来学校において運動部活動の指導者となる可能性のある大学生の意
識や実態を把握することが必要であると考え調査を試みた。調査は大体連が会員校の協力を得て実施し、体育・スポーツ
を専攻しない学科に在籍する 2883 名(部活経験者 2623、未経験 260)を対象に、2013 年 9 月 1 日から 10 月 31 日
に実施した。体罰経験群(342 名)は未経験群に比べ「将来運動部活動等のスポーツ指導者になりたい」
(強くそう思う、
そう思う)と回答する割合が有意に高かった(p<0.000)。「体罰容認の傾向」も体罰経験群に多く認められた(p<0.000)
。
また、部活動未経験者も 26.9%が「場合によって体罰は必要」と回答した。体罰が認められる具体的な場面として「危
険な行為をした場合」
、
「礼節が守れない場合」
、
「チームの規律を乱した場合」、
「日常生活で不適切行為があった場合」
、
「無
気力なプレーをした場合」という内容への回答率が、群間を問わず高かった。こうした結果から、体罰根絶に向けては運
動部活動やその指導に直接関わらない、生徒や教員、保護者への啓発活動も必要であることが示唆された。
心
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263
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第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 138
日本の新体操競技が世界トップレベルに進出するための一考察
トップアスリートとその育成に携わっている指導者に着目して
○穴久保 璃子(日本体育大学大学院)
伊藤 雅充(日本体育大学)
新体操個人競技は、1984 年オリンピックロサンゼルス大会での 8 位入賞を最後に海外主要大会での入賞を逃している。
社
さらに、2008 年北京大会より 2 大会連続オリンピック出場を逃している。このことから日本の新体操競技レベルは、海
外トップレベルに遅れをとっていると捉えることができるだろう。日本体操協会新体操強化本部では、海外留学制度を設
け、2013 年 3 月より特別強化指定選手 2 名をロシアへ派遣した。留学制度によって 2 名の選手のレベルアップを図る
心
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バ
経
ことはできたが、国内でトレーニングを積む選手との競技レベルに少しずつ差が開きはじめた。そこで本研究では、日本
の新体操競技界が世界トップレベルで戦える選手を国内で継続的に育成するためには何をすべきかを明らかにすることを
目的とし、国内トップレベルの指導者や(元)選手 20 名を対象としてインターネットを介したアンケート調査を行った。
得られた結果から国内での競技力向上方策について検討した。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 139
バドミントン競技における予測反応と視覚探索方略
○竹内 雅明(日本大学)
バドミントン競技は、道具の進化などによって 2013 年には実験的に、スマッシュの初速度 493km/h を記録しており、
発
厳しい時間的制限下でストロークの打ち合いが行われている。このような状況下では、相手の動作などから予測手がか
りを素早く捉え、早い時期に正確にコースを予測することが重要であると考えられる。しかし、バドミントン教本基本編
(2001)では、予測できるようになるまでには、できる限り数多くの選手のスマッシュを受ける必要があると指示される
測
にとどまっている。本研究では、男性バドミントン選手を対象に光刺激とスマッシュ映像に対する選択反応時間の測定、
注視点の測定を行なった。注視点の移動速度による視線移動パターンから視覚探索方略を検討し、選択反応時間との関連
を検討した。被験者は熟練者 8 名と非熟練者 5 名であった。熟練者群と非熟練者群の選択反応時間を分析した結果、光
方
刺激による選択反応時間に差は認められなかった。スマッシュ映像に対する選択反応時間は、熟練者群の方が非熟練者群
よりも速かった。視線移動パターンを分析した結果、熟練者群は非熟練者群よりも早い時点で注視点の移動を生起させる
視線移動パターンを多く利用していた。
保
教
人
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 140
クロスカントリースキー女子選手のダブルポーリングスキルを国際レベルに高める方略
○義本 大友(日本大学大学院)
鈴木 典(日本大学)
本研究は、クロスカントリースキーのダブルポーリングによる滑走動作を男女選手で比較することと、オリンピックで
入賞した女子選手と他の女子選手の比較をすることにより、日本の女子選手を国際レベルに引き上げるためのスキル向上
ア
に対する課題を明らかにすることを目的とした。被験者は男子選手 14 名、女子選手 8 名、滑走課題は直線 8m・のぼり
(斜度 5%)コースにおける全力滑走であった。1 サイクルのうち、ポール接地から離地までをポーリング局面(P 局面)、
離地から次の接地までをグライド局面(G 局面)とした。そして、滑走動作映像をもとに 3 次元動作分析を行い、1 サイ
介
クルと各局面の身体重心速度、ストライド、ピッチおよび肘関節、股関節の角度と角速度を算出した。結果、① P 局面
において、肘関節の速い伸展により、滑走速度を高めてピッチを上げることで短時間でのストライドを伸ばすこと、② G
局面において、股関節を中心とした下肢の深い屈曲からの速い伸展により、滑走速度の減速時間を短くし、ピッチを高め
ながらストライドを伸ばすこと、これらにより、1 サイクルにおけるピッチとストライドのトレードオフの関係を克服す
264
09 体育方法
ることが重要であると示唆された。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
哲
方 28 − 141
成年女子アルペンスキー選手の無酸素性パワー発揮特性からみた競技力の関係
○三浦 哲(新潟県健康づくり・スポーツ医科学センター)
史
社
成年女子アルペンスキー選手の無酸素性パワーと競技力の関係を明らかにし、トレーニング計画立案に役立てることを
目的とした。成年女子アルペンスキー選手 16 名について、身長、体重、体脂肪率及び最大無酸素パワー(MP)および
40 秒パワーを測定した。40 秒パワー測定から総非乳酸性(30 秒平均)パワー(P30)、乳酸性(30-40 秒平均)パワー
心
(P30-40)および総無酸素性(40 秒平均)パワー(P40)を算出し、各パワー体重比を求めた。競技力の指標は、全日
本スキー連盟の回転(SL)および大回転(GS)ポイントを用いた。ピアソン積率相関により、各パワーと競技力の関係
を算出し、相関係数の有意性の検定を行った。身長、体重、体脂肪率と SL・GS の相関が認められない。MP・MP 体重
比と SL・GS の関係は、それぞれ強いから中程度の負の相関が有意であった。P30・P40 と SL・GS の相関がなかったが、
P30 体重比・P40 体重比と SL・GS の関係には中程度の負の相関が有意または有意傾向であった。P30-40・P30-40 体重
比と SL の関係には相関がなかったが、GS との関係には負の相関が有意または有意傾向であった。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
バ
経
方 28 − 142
アーチェリーにおける韓国トップコーチのコーチング観
○坂野 太一(自衛隊体育学校)
山本 博(日本体育大学)
生
伊藤 雅充(日本体育大学)
長谷川 康秀(日本体育大学大学院)
現在、アーチェリー競技においてオリンピックの結果などを見ると、韓国の競技力は世界トップレベルであるといえる。
発
測
スポーツの競技力に影響を与える要因として、先行研究によって様々な要因が挙げられており、その中にコーチの存在が
競技力に影響していると述べられている文献も多く見られる。そこで本研究では、世界トップレベルの競技力を有する韓
国でアーチェリーを指導しているトップコーチたちのコーチング観を明らかにすることにより、コーチのどのような考え
方
が高い競技力に結びついているかを明らかにすることを目的とした。本研究の対象として、韓国の実業団、大学で指導を
行い、「オリンピック選手輩出」や「国際大会監督経験」の実績があるアーチェリートップコーチ 6 人に対し半構造化イ
ンタビューを行い、SCAT(大谷,2008)とグラウンデッドセオリーアプローチ(Glaser & Strauss, 1967)を用いて分
析を行った。その結果、今回対象とした韓国トップコーチのコーチング観として「選手、指導者としての経験から学び、
構築した構造的知識を用いて、ハイパフォーマンス発揮を目指す調和的なコーチング観」を持っている事が明らかとなっ
た。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
教
人
方 28 − 143
異なる介入プログラムが女子学生における遠投能力向上に及ぼす影響
○大田 穂(筑波大学大学院)
岡田 宏祐(筑波大学大学院)
保
岩間 圭祐(筑波大学大学院)
木塚 朝博(筑波大学体育系)
本研究は、特別な投球練習経験のない成人女性を対象に 2 つの遠投能力向上プログラムの効果を検証した。1 つはボー
ア
介
ルを用いて投球動作を繰り返し行うことで遠投能力を向上させようとするプログラム(以下、ボールプログラム)
、もう
1 つはボールを用いずまた投球動作を直接は行わず遊び感覚で遠投能力を向上させようとするプログラム(以下、遊びプ
265
哲
史
ログラム)であった。両プログラムの狙いとした内容はともに上肢の動作改善であり、約 30 分で実施可能な短時間のプ
ログラムであった。被験者 25 名を無作為に 2 群に分け、いずれかのプログラムを実施した。遠投テストをプログラム介
入前後さらに介入 1 週間後に行い、遠投距離と投球動作を評価した。その結果、両プログラムで介入直後の遠投距離を
向上させる効果が認められたが、遊びプログラムのみで 1 週間後にもその効果が持続した。また、投球動作の改善にお
いて、ボールプログラムは「肩を後方に大きく引くこと」、遊びプログラムは「上方へ投げること」により効果が認めら
れた。2 つのプログラムは共通した上肢の動作改善を狙いとしたにもかかわらず、プログラムによって投球動作の改善効
果が異なる結果となった。
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
266
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 144
ジュニアサッカー選手のスプリントの動き出しにおける疾走速度を高めるための要因
○村越 雄太(日本大学経済学部非常勤講師)
青山 清英(日本大学)
宮内 育大(日本大学大学院)
本研究では、ジュニアサッカー選手のスプリントの動き出しにおける疾走速度を高める要因を明らかにすることを目的
とした。
被験者には、サッカーのトレーニングを定期的に行っている 8 〜 12 歳の男子選手 15 名を用いた。実験試技は 20m
スプリントとし、その試技をデジタルビデオカメラを用いて毎秒 60 コマでパンニング撮影した。なお、足が接地してか
ら再び同じ足が接地するまでを 1 サイクルとし、スタート後の 1 サイクル目、2 サイクル目、3 サイクル目を分析対象と
した。撮影により得られた画像から、動作解析システムを用いて身体測定点 23 点と基準点 4 点の位置座標を読み取り、
基準点を元に実長に換算した。測定項目として、疾走速度、ストライド、ピッチなどのパフォーマンスに関する項目およ
び下肢関節角度を算出し、1 サイクルごとに疾走速度と測定項目の相関係数を求めた。結果およびスプリントの動き出し
における疾走速度を高めるための要因については、大会当日にポスター発表で報告する。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 145
ピッチおよびストライドの個人内変動と疾走動作との関係
○豊嶋 陵司(中京大学大学院)
桜井 伸二(中京大学)
短距離走の疾走速度を高めるには、ピッチとストライドの少なくとも一方を向上させる必要がある。Salo et al.(2011)
は、疾走速度の変動がピッチとストライドのどちらの変動に依存しやすいかは、個人によって異なることを報告している。
しかし、
そのピッチおよびストライドの個人内変動と疾走動作との関係は、あまり明らかにされていない。本研究では、
ピッ
チとストライドの個人内変動に影響をおよぼす動作要因を検討し、選手の課題に応じた、高い疾走速度を発揮するための
知見を得ることを目的とした。被験者は、陸上競技の経験がある男子学生 2 名であった。実験試技は、50m 全力疾走とし、
40m 付近における疾走動作を撮影した
(300fps)
。1 回の実験において 3-5 試技を行い、複数回の実験を行った。2 名ともに、
被験者内の疾走速度とストライドとの間に正の相関がみられた。ピッチとストライドのうち、ストライドの大きさのみと
相関関係がみられたのは、支持脚伸展角速度や、支持期における遊脚重心の加速度等であった。これらの変数はピッチと
の関係はみられず、ストライドの拡大によって高いパフォーマンスを発揮するための要因であると考えられる。
09 体育方法
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 146
坂上り走がスプリント走能力と生理的機能に及ぼす影響
距離の違いに着目して
○足立 達也(広島大学大学院教育学研究科)
黒川 隆志(広島大学)
西山 健太(広島大学大学院)
田渕 恵美子(広島大学大学院)
明石 啓太(広島大学)
森木 吾郎(広島大学大学院)
本研究の目的は、坂道を利用した異なる距離の坂上り走が、生理的反応と走パフォーマンスに及ぼす影響を検討し、ト
哲
史
社
レーニング手法としての坂上り走の特質を明らかにすることである。
大学短距離選手 10 名(男子 5 名、女子 5 名)は 30、50、80m の 3 種類の距離の坂を各 5 本× 2 セット行った。生
理的反応を評価するため、全疾走時に HR、各セット終了時に RPE と La を測定した。走パフォーマンスを評価するため、
走行時の疾走速度、ピッチ、ストライドを測定した。
HR の平均値は坂上り走 30、50、80m の順に 149.3 ± 12.8 拍 / 分、157.9 ± 9.2 拍 / 分、162.6 ± 5.5 拍 / 分であっ
た。La の平均値は 30、50、80m の順に 7.0 ± 2.3mmol/L、11.5 ± 1.5mmol/L、12.9 ± 1.8mmol/L であった。距離が
伸びる毎に、エネルギー供給機構が ATP-CP 系主体だったものが、乳酸系や有酸素系の機構も動員する割合が増えてくる
ものと考えられる。
スピードの平均値は、坂上り走 50m が 6.04 ± 0.56m/ 秒と最も高かった。ピッチの平均値は、坂上り走 30m が 3.93
歩 / 秒と最も高かった。ストライドの平均値は、
坂上り走 50m で 1.56 ± 0.13m と最も高かった。坂上り走の距離はスピー
ドやそれらを構成するピッチとストライドに影響することが示唆された。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 147
ライフセービングにおける全力ボードパドリングの二次元動作分析
エリートとサブエリートのニーリングパドルの比較
○深山 元良(城西国際大学)
浦田 達也(大阪体育大学)
荒井 宏和(流通経済大学)
荒木 雅信(大阪体育大学)
植松 梓(早稲田大学)
遠藤 大哉(日本体育大学)
中塚 健太郎(徳島大学)
ボードパドリングはサーフレスキューの有効な技術であるが、ボード速度を高める要因は明らかになっていない。そこ
で本研究の目的は、エリートおよびサブエリートパドラーに全力でのボードパドリング動作を行わせ、ボード速度を高
めるための技術要因を明らかにすることとした。被験者(エリート 10 名、サブエリート 8 名)に、室内 50m プールで
40m 間の全力ニーリングパドルをレーシングボードで行わせた。その際、デジタルビデオカメラで矢状面右側から撮影
した。得られた映像を基に 25 - 30m 区間内の 1 ストロークをデジタイズし、膝関節点の移動速度(ボード速度)、膝関
節点の水平移動量(1 ストローク長)
、各関節の角度および角速度を算出した。その結果、エリート群はサブエリート群
よりもキャッチ・プル期からプッシュ期のボード速度が有意に速く、1 ストローク長も有意に大きかった。また、エリー
ト群の大腿および膝の角度・角速度の変位はサブエリート群と有意に異なり、エリート群の股関節屈曲速度が有意に速かっ
た。両群の肩関節角度・角速度には有意差がなかった。このことにより、ボード速度を高めるための体幹および下肢の動
作の重要性が示唆された。
心
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バ
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測
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267
哲
史
社
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 148
コミュニティダンスの評価基準の検討
コミュニティダンス事業が参加者に与える影響を手掛かりとして
○白井 麻子(大阪体育大学)
山口 晏奈(大阪体育大学大学院)
コミュニティダンスは、誰もがアーティストや地域と関わりをもって、ダンスを創り、踊るという体験ができる活動
である。コミュニティダンスの事業も、ワークショップ体験のような 1 日のみのものから、舞台発表を味わう事業など、
そのスタイルも多様であり、事業の目的も多岐にわたる。そこで、本研究では、ワークショップに参加し、舞台で発表経
心
生
バ
経
発
験するコミュニティダンスの事業を実験的に実施し、ダンス体験が実験参加者に与える影響を手掛かりに、コミュニティ
ダンスの事業評価について検討することを目的とした。調査は、コミュニティダンスの参加者を集い、参加動機、参加前
後の気分、内省報告などの参加体験に関する質問紙調査と、制作協力者、ファシリテーターへの聞き取り調査を実施し、
分析及び考察を行った。その結果、コミュニティダンスの事業が参加者へ与える影響と事業実践における課題が明らかに
なった。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 149
体罰が比較的多い都道府県と運動種目
全国大学体育連合「運動部活動等における体罰・暴力に関する調査」報告(2)
○小林 勝法(文教大学)
高橋 宗良(杏林大学)
北 徹朗(武蔵野美術大学)
中山 正剛(別府大学)
体罰が起こる背景を探るために地域や種目に着目した。文部科学省が行った調査「体罰の実態把握について(第 2 次
報告)」(2013 年 8 月)で示された都道府県別体罰発生件数と同省の「学校基本調査報告」の生徒数を用いて、生徒一人
測
当たりの体罰発生率を算出すると、特定の県で体罰が多く発生していることがわかった。発生率が最も多い県は、中学校
で全国平均の 9.1 倍、高校で 4.3 にも達している。全国大学体育連合が全国 15 の会員校の協力を得て 2013 年秋に行っ
た「運動部活動等における体罰・暴力に関する調査」では、標本数が少なく地域の偏りもあったため、地域性を確認する
方
保
教
人
ア
ことはできなかった。
全国大学体育連合調査で、運動種目別の体罰経験率を見ると、武道や体操、チームスポーツが多く、陸上競技やラケッ
トスポーツは比較的少なかった。この傾向は学校期や男女の別は見られなかった。多い種目は経験率が 20%を超えており、
その種目をしていた 5 人に 1 人以上は体罰を経験していることになる。以上のことから、体罰根絶の取り組みには地域
や種目を考慮して行う必要があることが示唆された。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 150
バレーボールゲームにおけるトータルディフェンスに関する研究(2)
サーブコースとトス配球の関係
○吉田 清司(専修大学)
佐藤 浩明(郡山女子大学)
渡辺 啓太(専修大学)
上原 伸之介(JT マーヴェラス)
現代の世界トップレベルのバレーボールゲームにおいて、オフェンス側の条件が整った状況ではディフェンス側がサー
ブ、ブロック、ディグなどの個人スキルだけで防御することは困難となっている。こうしたオフェンス有利の状況を打開
介
するために、本研究はサーブとブロックを連係させるトータルディフェンス戦術に着目し、理論構築を試みた。
男子国際試合 136 ゲームを対象とし、イタリア Data Project 社製「データバレー・データビデオ 2007」を用いて編集
した映像から 4634 本のラリーを抽出し、サーブを 9 コース、トス配球を 4 ゾーンに分類し、サーブコースによるトス
配球データを 6 ローテーションごとにクロス集計した。サンプルデータに標本間の比率の差を検討する「χ2 検定」
と、
ディ
268
09 体育方法
フェンス側のサーブコース、ローテーションのどの変量がトス配球データに有意に寄与しているかを明らかにする「調整
済み標準化残差分析」を実行した。その結果、サーブコースとトス配球の関係にはローテーションによって有意な差が存
在しており、世界トップレベルのバレーボールゲームにおけるサーブとブロックを連係させたトータルディフェンス戦術
に関する新たな知見を得ることができた。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
史
方 28 − 151
アクションリサーチによるコーチング能力の向上
アーチェリー競技において
○長谷川 康秀(日本体育大学大学院)
藤野 健太(日本体育大学)
伊藤 雅充(日本体育大学)
中西 貴則(日本体育大学大学院)
山本 博(日本体育大学)
筆者は、高校アーチェリー部のコーチとして活動している。コーチとして、選手が自律し、自主的に練習に取り組むこ
とでパフォーマンスの向上を達成できるコーチングを行いたいということから、本研究では、アクションリサーチを用い
て筆者自身のコーチング能力の向上を目的とした。アクションリサーチはプレアクションステージとアクションステージ
の 2 つのステージに分けて実施した。プレアクションステージで向上が必要とされる能力を、アカデミックスーパーバ
イザー(AS)、クリティカルフレンド(CF)からアドバイスを述べてもらい選定する。また、マスターコーチ(MC)か
らアーチェリーの専門家として、指導方法に対するアドバイスを述べてもらう。データは自身のコーチング行動や発話を
定期的にビデオカメラで撮影する。撮影したデータは、AS、CF、MC とのディスカッションに使用する。また、インタビュー、
アンケート、パフォーマンスプロファイリング(PP)、得点記録を通してデータを収集した。結果として、筆者自身のコー
チング行動の改善がされた。また、選手の得点が向上したことからも、能力の向上が伺える。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 152
脳機能イメージングを用いたトランポリン競技者の内因的技術特性の評価
○山崎 博和(武蔵野音楽大学)
伊藤 直樹(日本体育大学)
哲
山崎 享子(東洋大学)
競技者の能力を早期に見出すことは、選手層を充実させ、競技全体のレベルを向上させるためにも重要な要素となる。
一方で、競技歴が浅い時期にその違いを見出すことは困難なことから、競技生活の中で能力を見出されずに競技を終える
競技者も少なくない。そこで本研究では、競技者の能力を早期に発見するための方法を模索する手段のひとつとして、脳
機能イメージングを用いたアプローチを提案することを目的に実験を行った。 被験者はトランポリンの競技経験を有す
る競技者のうち、事前に実験に関する趣旨と利害について十分に説明を行った後、同意を得られた者を対象とした。脳機
能イメージングとして光トポグラフィ装置を用いて、トランポリンの演技中に行われる種目を想起している際の、前頭部
および頭頂部の局所脳血液量変動を計測した。種目は、難易度の異なる 3 種類を採用した。 酸素化ヘモグロビン量の変
動を比較したところ、それぞれの種目想起時で変動パターンが異なることが明らかになった。また、変動の局在性や競技
歴および競技レベルとの関係についても検討を行ったところ、興味深い結果が得られたので報告する。
社
心
生
バ
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発
測
方
保
教
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269
哲
史
社
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 153
安全な転び方習得を目指した「リズムペア体操」の試案
○武井 嘉恵(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
田村 元延(常葉大学短期大学部)
長谷川 聖修(筑波大学体育系)
鈴木 王香(國學院大学)
檜皮 貴子(新潟大学)
医療機関で収集された 0 〜 19 歳の事故データのうち、半数以上が転倒・転落によるもので、そのうちの 65% が頭部
外傷を負っているという報告がなされている。高齢者の転倒予防に関する研究は、数多く行われているが、若年者を対象
心
生
バ
経
発
測
とした転倒の意識調査や安全な転び方の習得に関する研究は少ないのが現状である。
そこで本研究は、転んだ際の身のこなし方として、柔道の「八方転び」という受け身動作に着目し、この動作を引き出
す観点から、軽快なリズムに合わせたペア体操を試案し、一般大学生 39 名を対象に指導を行い、安全な転び方を段階的
に習得するための指導方法について明らかにすることを目的とした。具体的には、2 人組での様々な姿勢変化を課題とし
て、多方向に押す、引くなどの基本動作から安全な転び方を習得するための一連の「リズムペア体操」を試案した。本体
操の指導前後において、基本的な動作比較、運動プログラムに関する内省調査、転倒及び転び方に関する意識調査を実施
し、試案した指導内容の検討を行った。その結果及び考察、実施した運動プログラムについての詳細は、当日報告する。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 154
バレーボールにおける戦術に関する研究
サーブ効果率の検討
○古瀬 由佳(静岡産業大学)
中原 貴典(中京大学)
塚本 博之(静岡産業大学)
近年バレーボールにおいてサーブの種類は様々であり、サーブの効果率はゲームに大きく影響すると考えられる。日本
ではこのサーブ評価方法として公益財団法人日本バレーボール協会の JVIS(Japan Volleyball Information System)が利
用されている。その中のサーブ効果率が各個人やチームによってまとめられる。これは打数に対してサーブの内容がレセ
方
保
プションにどう影響したのか 3 段階で評価される。しかし、サーブの種類やコースなどについて具体的に出しているも
のではない。そこで本研究は大学バレーボールおいて各個人のサーブ種類別効果率を調査した。また、その内容がレセプ
ションにどのように影響したのかを分析し、新たな評価基準を提案した。更に、JVIS の評価基準との比較検証を行うこ
とでサーブ効果率の有効な評価方法について検討する。研究方法は平成 26 年度春季東海大学男女 1 部バレーボールリー
グ戦を対象とした。データについては試合のビデオ、Data Volley 及び JVIS を基に分析を行った。さらに項目については、
研究内容から、サーブ効果率とサーブレシーブ効果率の項目を参考標本とした。結果詳細は当日発表する。
教
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第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 155
男子円盤投における日本学生記録保持者と学生競技者の動作の比較
○前田 奎(筑波大学大学院)
上田 美鈴(筑波大学大学院)
衛藤 昂(筑波大学大学院)
Hoang TheNguyen(筑波大学大学院)
廣瀬 健一(筑波大学大学院)
関 慶太郎(筑波大学大学院)
山元 康平(筑波大学大学院)
大山卞 圭悟(筑波大学)
男子円盤投の日本記録は 60.22m であり、この記録は 30 年以上更新されていない。近年の男子円盤投の国内記録につ
いて見てみると、徐々に記録は向上しているものの日本記録とは大きな差がある状態が続いていたが、2013 年日本学生
陸上競技対校選手権大会において、日本記録に迫る日本学生記録・日本歴代 3 位の記録(59.21m)が樹立された。従来
270
09 体育方法
の国内上位競技者が国際な競技会で活躍していくためには、まず日本記録を更新することが必要であると考えられる。そ
のため本研究では学生記録の試技と 8 位以内の学生競技者(50.45 ± 0.98m)の試技の比較を行い、国内男子円盤投の
競技力向上のための示唆を得ることを目的とした。円盤投射時の初期条件(初速度、投射高、投射角)および小野(2013)
の提案した円盤投動作技能の評価基準をもとに、
バイオメカニクス的な手法によって算出したパラメータを用いることで、
学生記録の試技と 8 位以内の学生競技者の試技の動作を比較し、記録の差を生み出す要因について検討した。初期条件
に関して、学生記録の試技は初速度:23.78m/s、投射高:1.67m、投射角度:32.53°であった。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
全身振動刺激が片脚スクワットの筋出力に与える影響
宮内 育大(日本大学大学院)
青山 清英(日本大学)
片脚スクワットは両脚で行う通常のスクワットに比べて運動形態が実際の運動に近いためより実践的な筋力トレーニン
グとして用いられている。片脚スクワット時に発揮される支持脚下肢筋群の機能を向上させることができれば、競技のパ
フォーマンス向上が期待できると考えられる。そこで本研究では、筋出力の活性に即時的効果があるとされているパワー
プレートを使用した全身振動刺激が、片脚スクワットにおける下肢筋群の筋出力に及ぼす影響について検討することを目
的とした。
被験者には女子学生 15 名を用い、全身振動実施前後に支持脚の膝関節角度を 90 度 ・140 度、開脚幅を下肢長の
100%、自由脚の高さを下腿長の 100% に設定し自体重での片脚スクワットをフォースプレート上で行わせた。また、そ
れらの試技を右側方 15m 地点から毎秒 100 コマで撮影し、各種力学量を算出した。結果については学会当日、ポスター
にて発表する。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
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方 28 − 156
○竹田 大介(日本大学大学院)
本道 慎吾(日本大学)
哲
方 28 − 157
心
生
バ
経
発
測
5 ステップ練習法によるけ上がりの実践指導
○井手口 学(横浜国立大学非常勤講師)
鉄棒運動におけるけ上がりは、特にスキルの三要素(時間、空間、力量)の調整が重要な技である。そのため、初心者
が段階的な練習を経てけ上がりを習得する過程は、運動を学習するうえで非常に貴重な経験になると思われる。本研究で
は、け上がりを未習得の男子大学生 8 名に対し、5 つのステップから成る練習法を実践し、その経過、および結果を詳細
に報告するとともに、練習法の有効性について検証することを目的とした。5 つのステップの概要を以下に示す(①脱力
と振幅の確保②足首とバーの接近③引き動作の発生、膝までの引き④引き動作の強化、大腿までの引き⑤引き動作の完成、
支持へ)
。使用した鉄棒は、高さが 1.8m のワイヤー式高鉄棒で、被験者が鉄棒を握ってぶら下がっても楽に足が着く高
さであった。また、練習の補助具として、鉄棒を覆い隠すウレタン製のパイプを用いた。これはステップ②以降、足が鉄
棒と接触しても痛めないための配慮と、
パイプを前頚部で転がすように動かすイメージ作りに役立てるためのものである。
さらに、引き動作を実感するため、床に合板を敷き、補助者の持つパイプを引く動作をさせた。なお、結果の詳細につい
ては本大会にて報告する。
方
保
教
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ア
介
271
哲
史
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 158
ソフトボールにおける走者の離塁タイミング
投手のリリース時から走者の離塁までの時間
○西畑 賢治(神戸国際大学)
天野 勝弘(関東学園大学)
ソフトボール競技では、走者は、投手がボールをリリースした後に離塁できるルールとなっている。できるだけ早い離
社
塁は、盗塁という要素以上に、ソフトボールがスピードをかなり要求される競技であることを考えると重要である。そこ
で本研究では、投手のボールリリース後から走者の離塁までの時間を調べてみた。2 台の高速度カメラ(カシオ EX-F1)
により、投手のリリースと走者の離塁時を、毎秒 300 コマで撮影し、その時刻を計測した。2 台のカメラは LED ライト
心
生
バ
経
発
測
により同期した。被検者は、投手が 5 名(1 名のみ左利き)
、走者 15 名であった。投手はそれぞれの走者に対して 2 球
の投球を行ったので、走者は全部で 10 回の走塁を実施し、投手は 30 球の投球をしたことになる。1 名の投手に対する
2 回の走塁の結果は、1 回目 0.126 ± 0.049 秒、2 回目 0.110 ± 0.042 秒であり、2 回目の方が 0.016 秒成績は向上し
ていた(フライング 3 例を除く)
。これは 11cm の距離に相当する(先行研究による疾走速度から計算)。この結果を選
手に還元することにより、さらに記録が伸ばせれば、パフォーマンスアップに貢献できると考えている。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 159
女子 100m ハードル走におけるアプローチ区間の動作の特徴
○上田 美鈴(筑波大学大学院)
衛藤 昂(筑波大学大学院)
前田 奎(筑波大学大学院)
木越 清信(筑波大学体育系)
山元 康平(筑波大学大学院)
関 慶太郎(筑波大学大学院)
Hoang TheNguyen(筑波大学大学院)
【目的】
女子 100m ハードル走のアプローチ区間において、
高い速度を獲得するための疾走の特徴を明らかにすること。
【対
象者】女子学生競技者 10 名(SB14.01 ± 0.57s)
。
【実験試技】スターティングブロックからの① 60m のスプリント走、
②競技会と同様の規格(スタートラインから 1 台目まで 13m、ハードル間 8.5m、ハードル高 0.84m)でハードルを 6
方
保
台設置したハードル走。
【実験設定】スタートから 5m の地点および各ハードルの側方に高速度カメラ(300fps)を設置し、
パンニングで撮影。映像をもとにアプローチ区間における一歩ごとのピッチ、ストライド、疾走速度、体幹角度等を算出。
【結果および考察】ハードル走はスプリント走と比較すると、ピッチが 2 から 7 歩目で有意に低く、ストライドが 1 から
6 歩目で有意に大きくなっていた。また 8 歩目(踏切脚)の接地位置は、ハードル走でスプリント走よりも 0.89 ± 0.33m
遠くなっていた。これらのことから、ハードル走においてはハードリングのための適切な踏切位置に接地するため、スプ
リント走よりもストライドを大きくしていたと考えられる。その他の結果は当日報告する。
教
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第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 160
サッカーのゲーム分析における攻撃戦術の検討
少年サッカークラブを対象として
○中村 政幸(兵庫教育大学大学院)
市谷 浩一郎(大阪電気通信大学)
山本 忠志(兵庫教育大学)
村上 佳司(國學院大學)
本研究では、U-11 の 2013 後期 K 府リーグのゲームを対象にゲーム分析を行い、ゲーム中において高確率で発揮され
介
たプレー事象を必要でかつ有効な基本的攻撃戦術として、それを明らかにすることを目的とした。方法として、7 ゲーム
の試合映像を対象に分析ソフト SportsCode GameBreaker(フィットネスアポロ社製)を用いてゲーム分析を行った。分
析内容として、ボールの動きを中心とした全プレー事象から、攻撃成功率、攻撃完了率、シュート成功率、ならびに全シュー
トに至るまでのプレー事象を客観的に数量化した。その結果、攻撃成功率 1.92%、攻撃完了率 7.44%、シュート成功率
272
09 体育方法
17.94%であった。全シュートを分類するとドリブルからのシュートが最も多く、次にパスからのシュートが出現した。
さらに全シュートにおけるボールの展開を分析した結果、相手コート中央でパスを受けてドリブルを活用し、ペナルティー
エリアまでボールを運び、シュートしているプレーが最も多くみられた。このことから、パスを受けてドリブルを活用し
シュートをする戦術が必要でかつ有効な基本的攻撃戦術として考えられる。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 161
女子走幅跳選手における記録停滞・低下を引き起こす体重増加に関するコーチング学的研究
○中野 瞳(筑波大学)
図子 浩二(筑波大学)
苅山 靖(筑波大学)
女子走幅跳選手の自己記録が、高校卒業以降に停滞および低下することは非常に多く、解決すべき重大な問題点となっ
ている。この原因の全容は非常に複雑であると考えられるが、その一つは体重の変化であると推察できる。また、この体
重が変化する背景としては、さまざまな要因が相互に影響し合っていることが推察できるが、このような総合的・包括的
な視点から体重変化を捉えた研究は存在しない。そこで本研究では、大学女子走幅跳選手を対象にして、競技記録と体重
の変遷およびそれらに影響したと考えられる諸要因について、中学 1 年から大学 4 年までの時系列をたどりながら回顧
的に自由記述させるアンケートを実施し、競技記録と体重との相関関係や、その背景としての諸要因について検討した。
その結果、記録の停滞または低下が生じている選手の多くには、体重の増大が生じていることが確認された。また、その
背景には競技への動機、悩み、ストレスなどの心理的要因、食行動や生活行動の要因、トレーニング要因、コーチング要
因、障害の要因などの要因が複雑に影響し合っていること、これらの要因における時系列的な階層構造性には個別性が高
いことが示された。
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8 月 28 日
14:00
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社
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経
発
方 28 − 162
相撲におけるコーチの行動に関する研究
○南雲 学人(日本体育大学大学院)
伊藤 雅充(日本体育大学)
測
方
先行研究によると、コーチの行動はアスリートのパフォーマンスや心理社会的な成長や発達に影響を与えることができ
ると述べられている(Horn,2008)
。しかし、相撲界では稽古中、親方が指導を行っている過程において暴行致死事件が
起こってしまったことからもわかるように、適切なコーチング行動が行われていたかどうかには大きな疑問が残る。そこ
で本研究では、練習場面におけるコーチの行動に焦点を当てた観察、分析を行い、コーチング行動の特徴を明らかにする
ことを目的とした。対象者は、高等学校相撲部のコーチ 4 名とした。方法は、組織的観察法を採用した。対象者のコー
チング状況を中心にビデオカメラで撮影をし、得られたデータを Smith, Smoll, & Hunt(1977)らによって報告されてい
る The Coaching Behavior Assessment System(CBAS)を使って分析を行った。これらの結果から相撲におけるコーチン
グ行動の特徴を考察する。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
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方 28 − 163
専門的準備期から試合期への疾走能力と走動作の縦断的変化
○内藤 景(筑波大大学院)
保
苅山 靖(筑波大)
谷川 聡(筑波大)
ア
介
疾走能力の縦断的研究は、試合期を対象として、最大速度時の疾走が多く分析されてきたが、準備期から試合期への変
273
哲
史
化や、加速局面を含めた検証が必要である。そこで本研究は、短距離走を専門とする 9 名の被検者(年齢:21.8 ± 1.5 歳、
100m 走の自己最高記録:10.94 ± 0.37 秒)における専門的準備期(SPP)と試合期(CP)の疾走能力と走動作の縦断
的変化を検討した。3 月の測定を SPP、7 月および 11 月の測定を CP における被検者の競技達成能力の測定とした。ス
タートブロックを用いた 60m 全力疾走を疾走能力の測定として行い、10m 区間毎の走速度、ピッチ、ストライド、走動
作(5、15、25、45m 地点)を分析した。SPP に対する CP の 60m 走タイムの増減率を基にして、被検者を疾走能力向
上群、低下群、維持群に分類した結果、向上群は加速局面以降のピッチが上昇していた。走能力に変化がなかった維持群
は、ストライドが上昇したものの、ピッチが低下していた。これらの結果は、試合期における走能力の向上には加速局面
社
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発
以降のピッチの上昇が重要であることを示唆している。学会では走動作の変化との関係性についても報告する。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 164
幼児を対象とした G ボールを使用した運動指導における安全管理と指導方法に関する一考察
保育者への質問紙・インタビュー調査の結果をもとに
○古屋 朝映子(筑波大学体育系)
長谷川 聖修(筑波大学体育系)
本谷 聡(筑波大学体育系)
子どもを取り巻く社会環境の変化による体力低下の問題を受け、2012 年 3 月に策定された幼児期運動指針(文部科学
省、2012)では、「友達と一緒に遊ぶ中で多様な動きを経験できるよう、幼児が自発的に体を動かしたくなる環境の構成
を工夫すること」の必要性が述べられている。本研究では、子どもの自発的な運動を引き出す用具として、G ボールに着
目した。G ボールは、小学校学習指導要領解説・体育編(文部科学省、2008)で取り上げられ、近年学校教育現場にお
いて普及しつつあり、今後、保育所や幼稚園といった幼児教育現場においても活用が期待されている用具である。しかし、
実際に G ボールが導入されている例は少ないのが現状である。 G ボールを導入するためには、適切な安全管理を含めた、
子どもの発育発達状況に即した指導方法を確立させる必要があると考える。そこで、本研究では、初めて G ボールを使っ
た運動を体験した保育者を対象に、質問紙調査およびインタビュー調査を行い、それらのデータを質的に検討することに
より、G ボールを導入するために必要な、安全管理と指導方法に関する知見を得ることを研究の目的とした。
測
方
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第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 165
バスケットボールの 1 対 1 対応におけるオフェンスのフェイント動作の分析
○橋爪 純(筑波大学大学院)
清水 悠(筑波大学大学院)
阿江 通良(筑波大学)
阿江 数通(筑波大学大学院)
バスケットボールでは、オフェンスはディフェンスを抜くことでより成功率が高いシュートを打つ機会が得られる。オ
フェンスはディフェンスを抜く際、スピードの緩急や様々なフェイントを用いる。またドリブルに関しては、その場で
のドリブルや直線的なドリブル、方向転換を伴ったドリブルなどが研究されているが、対応動作中のドリブルをみたもの
はない。そこで本研究では、オフェンスとディフェンスの 1 対 1 状況下におけるオフェンスのフェイント動作を分析し、
その成功試技と失敗試技を比較した。大学男子バスケットボール部のAチームとBチームのガードポジションの選手を被
験者とした。オフェンスには、1m 離れた地点からドリブルをしながらフェイントによりディフェンスを抜くように指示
し、三次元分析装置(VICON-MX、250 Hz)を用いて計測した。ディフェンスを抜いた試技では、ディフェンスに対す
る左右方向の重心速度の差が大きかったことに加え、ディフェンスとの距離が保たれた状態で方向変換を行っていた。
09 体育方法
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 166
鉄棒運動における前方前転回転の成立に関する基礎的検討
○小河原 慶太(東海大学)
小西 康仁(東海大学)
長尾 秀行(東海大学大学院総合理工学研究科)
山田 洋(東海大学)
器械運動において鉄棒運動の前方支持回転は支持系グループの中では比較的難易度度が高い基本技といえる。本研究で
は鉄棒に対する身体重心の位置変化、上半身と下半身の各重心の相対的位置を手がかりに、前方支持回転が成立するため
哲
史
社
の諸要因について検討し、指導上の基礎的知見を得ることを目的とした。被験者は男子大学生で、前方支持回転ができた
者 10 名(成立群)
、できなかった者 10 名(不成立群)とした。動作の測定には光学式 3 次元モーションキャプチャシ
ステム(Mac3D,Motion Analysis 社製)を用いた。計測した身体各部 32 点の位置座標から身体合成重心、上半身部分重
心及び下半身部分重心を算出し、鉄棒まわりの各重心の角速度(回転速度)、鉄棒から各重心点までの距離(回転半径)
、
上半身及び下半身部分重心と鉄棒の成す角(腰角度)を求めた。分析の結果、成立群は上半身部分重心の最大回転速度が
速く、運動後半で下半身部分重心の回転速度が急激に減少すること、成立群の上半身回転半径は長いが下半身回転半径は
短く、その最小値は身体合成重心位置がほぼ真下の時期に出現すること、成立群の腰関節屈曲速度は速いことが明らかに
なった。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
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方 28 − 167
ユース期におけるポジティブ経験とネガティブ経験
○森 祐貴(日本体育大学大学院)
伊藤 雅充(日本体育大学)
根本 研(日本体育大学)
本研究は、ユース期の子どものポジティブな経験とネガティブな経験を明らかにすることを目的としている。ここでい
うユースとは、6 歳〜 12 歳の年代の子ども達を示し、ユースが最初にスポーツ経験した環境は、将来のパフォーマンス、
経
発
測
スポーツ参加、スポーツを通した人間的な成長に著しく影響するといわれている(Côtê ら、2006)。コーチは、子ども
にスポーツ領域で心理社会的な経験をさせる上で重要な役割を担っているといわれており、ポジティブ経験とネガティブ
経験を明らかにすることによってユース期に望まれるコーチ像が明確にあらわれ、より良いコーチングを行う為の一助に
なると言えるであろう。
今回の調査は 22 〜 46 歳のスポーツ経験者(男性 16 名 • 女性 5 名)を対象におこなった。ユース期に自身が行って
きたスポーツのポジティブ経験とネガティブ経験というアンケートを自由回答方式で答えてもらった。データ分析は質的
データ分析手法(Côtê ら、1993)を採用し、テキストセグメントを符号化し種類ごとのカテゴリーを作成して分析を行
い考察した。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
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方 28 − 168
人
コーチの意思決定に関する研究
○中西 貴則(日本体育大学大学院)
米地 徹(日本体育大学)
森 心(日本体育大学大学院)
伊藤 雅充(日本体育大学)
効果的なコーチングとは、あるコーチングコンテキストにおいて、一貫してコーチの専門的知識、個人間の知識、個人
内の知識を駆使し、アスリートの有能さ、自信、関係性、人格を向上させることとされている(Côtê & Gilbert, 2009)。
ア
介
効果的なコーチングを行うプロセスにおいて、優れたコーチは複数の選択肢の中からその状況に最適なものを選ぶことに
よって、アスリートやチームに望まれる結果を導いていると考えられる。そこで本研究では、優れたコーチが行なってい
275
哲
史
社
心
る意思決定のプロセスを明らかにすることを目的とし、エスノグラフィーを用いて優れたラグビーコーチおよびサッカー
コーチそれぞれ 1 名を対象として研究を行なった。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 169
力学的仕事からみた疾走動作の効率
算出方法の相違に着目して
○関 慶太郎(筑波大学大学院)
木越 清信(筑波大学)
山元 康平(筑波大学大学院)
陸上競技長距離走のパフォーマンスには Running Economy が大きく関与していることが報告されており、これには疾
走動作も影響することが明らかになっている。これまでに長距離走の疾走動作の効率を評価する試みはいくつかなされて
生
バ
経
発
測
方
きたが、測定の際の疾走速度や力学的仕事の算出方法などの課題が見受けられる。そこで本研究では、6 段階の疾走速度
を用いて力学的仕事による動作の効率の評価方法を検討することを目的とした。男子長距離走者 1 名を被験者とし、3.3
から 6.0m/s までの 6 段階の速度でランニングを行わせたときの動作と地面反力を自動動作分析装置(VICON-MX)と
フォースプラットフォーム(Kistler 社製)を用いて測定した。なお、疾走速度は光電管を用いて規定した。これらのデー
タから①力学的エネルギーによる算出方法と②トルクパワーによる算出方法で 1 サイクル中の全身の力学的仕事を算出
した。その結果、
①の方法では 3.3m/s で 488J、
6.0m/s で 743J であったのに対し、②の方法では 3.3m/s では 494J、
6.0m/
s では 1229J であった。このことから、疾走速度が高くなるにつれて、2 つの算出方法間で力学的仕事の差が大きくなる
ことが明らかになった。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 170
児童期におけるジャンプトレーニングが運動能力に与える影響について
○斉藤 大輔(専修大学北上高校)
上濱 龍也(岩手大学大学院教育学研究科)
鎌田 安久(岩手大学大学院教育学研究科)
栗林 徹(岩手大学大学院教育学研究科)
現代の子どもの運動能力の低下が社会問題として取り上げられている。これまでリバウンドジャンプ(以下 RJ)、ケン
ケン等が疾走能力の向上に関する報告が見られたが、その他の運動能力に関する報告は見当たらない。本研究では小学校
保
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介
276
高学年の児童(男子 31 名、女子 5 名)を対象にジャンプトレーニングを実施し、その効果を明らかにすることを目的と
した。期間は 4 週間、頻度は週 2 回、準備運動後に 10 分程度 RJ、片足 RJ、ツイスト RJ 実施した。その際に「背筋を
伸ばす」「接地時間を短く」という言語教示を与えた。測定項目は 30m 走、立幅跳、垂直跳、反復横跳、背筋力、長座
体前屈を実施した。また跳躍能力の指標として RDJ index を動作解析より算出した。結果として 30m 走、立幅跳、
垂直跳、
反復横跳が有意に増加し、動作分析の結果においては膝関節屈曲角度、跳躍高、RDJ index が有意に増加し、接地時間は
有意に減少した。膝関節の屈曲角が大きくなることにより弾性エネルギー増加したことが考えられる。以上の結果から児
童に対し、ジャンプトレーニングを行うことで、運動時の姿勢に改善が見られ、疾走能力、跳躍力、敏捷性の向上に有効
であることが示唆された。
09 体育方法
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 171
哲
日本語版 CART-Q の開発
○益本 悟(日本体育大学大学院)
伊藤 雅充(日本体育大学)
史
スポーツ現場において、コーチとアスリートの関係性の質がアスリートの幸福感、人格および競技パフォーマンスに大
きく影響する可能性があると、多くの研究者達により報告されている。しかし、日本において客観的にコーチとアスリー
トの関係性の質を測る手段が少なく、両者の関係性の質を評価することは難しいと思われる。そこで本研究では、世界で
社
コーチ・アスリート関係の質を測る手段として活用されている CART-Q(Jowett、2003)を、日本でコーチ・アスリー
ト関係の質を測る手段として実用化させるため、日本語版 CART-Q を開発することを目的とした。方法は海外で CART-Q
を翻訳する際に参照として用いられているガイドライン(Hambleton、1994、2001)に沿って、CART-Q を日本での実
用化にむけて望ましい解釈となるような言葉に翻訳し、さらに翻訳した CART-Q の妥当性を検証するために某体育系大学
の学生を対象に調査を行った。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
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方 28 − 172
中学生バスケットボールチームにおけるメンタル面強化に関する一考察
○宍戸 渉(東海大学)
心
高妻 容一(東海大学)
バ
経
近年、中学生年代におけるメンタル面強化についての研究が多く見られるようになった。そこで今回は、バスケット
ボール競技におけるある県の中学生選抜チームでのメンタル面強化の効果について検証をした。本研究では、中学生県選
抜バスケットボール選手 12 名を対象とし、心理的競技能力診断検査及びアンケート調査を使用して心理的側面を分析し
発
た。データの収集は、選抜候補選手が召集された 20XX 年 9 月、メンタル面強化開始前の 12 月、2 ヶ月間のメンタル面
強化を実施し、1 つの目標としていた全国大会直前である 20XX+1 年 3 月の計 3 回実施した。メンタル面強化は、スポー
ツメンタルトレーニング指導士の資格を持つ 2 名の専門家が 11 回の練習会、練習試合、全国大会に全て帯同し、メンタ
測
ルトレーニング指導・心理的サポートを実施した。収集したデータを統計処理した結果、メンタルトレーニング指導や心
理的サポートを実施しない期間は、有意な向上が認められなかったが、実施した期間には 12 項目中 8 項目において有意
な向上が見られた。また選手や指導者からの内省報告からは、ポジティブなものが多く見られた。加えて、試合における
成績は、全国大会優勝という結果を得られた。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
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方 28 − 173
中学サッカー部員におけるヘディングトレーニングの効果
○鈴木 大地(岩手大学)
栗林 徹(岩手大学)
清水 茂幸(岩手大学)
清水 将(岩手大学)
方
鎌田 安久(岩手大学)
澤村 省逸(岩手大学)
上濱 龍也(岩手大学)
浅見 裕(岩手大学)
本研究は、I 県の中学校サッカー部に所属するサッカー部員 1・2 年生 37 名(1 年生 19 名、2 年生 18 名)を対象に、
教
人
ア
ヘディングのリフティングを組み込んだトレーニングや軽量球を用いたトレーニングを行い、トレーニングによるヘディ
ング能力への効果について明らかにすることを目的とした。
被験者を、ヘディングのリフティングを組み込んだトレーニングを行う群、ヘディングのリフティングを組み込んだト
介
レーニングを軽量球で行う群、一般的に行われている対面でのヘディングのトレーニングのみを行う群の 3 群に分けた。
そして、ヘディングによるリフティング、ヘディングの正確性、強さ(飛距離)のスキルテストの 3 項目を測定し、比較・
277
哲
検討を行った。その結果、トレーニングでリフティングを行った 2 群に、リフティングと正確性のスキルテストの 2 項
目においてプレテストとポストテストの結果の間に有意な向上が認められ、軽量球でトレーニングを行った群にのみ、強
さのスキルテストにおいても有意な向上が認められた。
史
社
心
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 174
陸上競技 200m 走におけるレースパターン分析
曲走路出口地点前後のスピード変化に着目して
○広野 泰子(筑波大学大学院)
藤井 範久(筑波大学)
清水 悠(筑波大学大学院)
陸上競技 200m 走では、国内外の一流選手のレース分析によって、最高スピード到達後の曲走路出口地点後にスピー
生
バ
経
発
測
方
ドが増加する選手がいると報告されている。本研究は、様々な競技レベルの 200m 走におけるレースパターンを分析し、
曲走路出口地点後にスピードは増加するのかを再検証するとともに、曲走路出口地点前後の走技術および加速メカニズム
に関する基礎的知見を得ること目的とした。9 台のハイスピードカメラ(300fps)を用いて 20m 毎の通過タイムを計測し、
20m 区間の平均スピードを算出した。曲走路出口地点前後の 100-120 区間および 120-140 区間のスピード変化に着目
すると、① 100-120 区間に大きくスピードが減少した後に 120-140 区間で大きく増加する群、② 100-120 区間のスピー
ド変化量は小さく、120-140 区間でスピードが大きく減少する群、③曲走路出口地点前後のスピード変化量が小さい群
の 3 群に分類された。様々な競技レベルの選手で曲走路出口地点後のスピードの増加が確認されたが、曲走路出口地点
前のスピード減少量とパフォーマンスとの間に正の相関関係がみられた。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 175
世界チームカップ・ラート競技選手権 2014 における有力選手の演技構成に関する研究
○本谷 聡(筑波大学)
高橋 靖彦(カイエンタープライズ)
古屋 朝映子(筑波大学)
武井 嘉恵(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
ラート競技は、ラート運動の特性を生かした運動の出来映えを競い合う採点競技である。そのため、演技の価値を示す
「難度点(Difficulty Score)
」等と演技のできばえを示す「実施点(Execution Score)」を国際審判団が採点することによって、
保
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ア
介
最終得点が決定される。近年、競技規則は大会毎に見直しが行われており、選手は競技規則が改訂される毎に演技構成を
適応させることが求められる。そこで、本研究では「世界チームカップ 2014」に招待された世界の上位 4 カ国の有力選
手に関する演技構成について調査することによって、今後の日本代表選手が世界で勝つための要因を検討することを目的
とした。大会の団体結果は、日本が 1 位、ドイツ・スイス・オランダが 2 位であった。種目別では、直転部門が日本 T
選手で 11.500(難度 3.600)点、
斜転部門がドイツ S 選手で 10.900(難度 6.000)点、跳躍が日本 T 選手で 10.5000(難
度 5.800)点が最高得点であった。採点競技において、世界の有力選手における演技構成について調査し分析することは
非常に重要であり、これらの動向を正確に把握しながら対応していくことが必要である。
第1体育館
8 月 28 日
14:00
方 28 − 176
バスケットボール競技におけるシュート成功確率と身長の関係
○中嶽 誠(順天堂大学)
木藤 友規(順天堂大学)
バスケットボールでは、
3.05m に位置するリングに近い高身長の選手の方が得点しやすいと考えられている。瀬戸らは、
激しい運動が要求されるバスケットボールの競技特性から、代謝量を決定する体格と得点能力の関係に着目し、単位時間
278
09 体育方法
当たりの得点率が、体表面積(身長と体重から算出)に対しては負、体重に対しては正の関係式で推測できることを示し
た(2010 年)。この報告は、身長が高いだけでは得点能力に結びつかないことを暗示している。そこで本研究では、関
東大学リーグ(2013 年)のデータをもとに、フリースロー(FT)、3 ポイントシュート(3FG)、2 ポイントシュート(FG)
の成功確率
(成功本数/試行数)
と身長との相関関係を調べた。その結果、相手に邪魔されない状況下での FT と高いシュー
ト技術が要求される 3FG の成功確率では、身長との相関関係は認められなかった。一方、FG では、身長が高い選手ほど
成功確率が高かった(身長が 1cm 高くなると約 0.4% 上昇、r=0.38、p<0.05)。これらの結果は、ゲーム中に相手との攻
哲
史
防の中で放つシュートにおいて高身長の優位性が表れることを意味する。
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
279
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
280
00
体育哲学
哲
01
体育史
史
02
体育社会学
社
03
体育心理学
心
04
運動生理学
生
05
バイオメカニクス
バ
06
体育経営管理
経
07
発育発達
発
08
測定評価
測
09
体育方法
方
10
保健
保
11
体育科教育学
教
12
スポーツ人類学
人
13
アダプテッド・スポーツ科学
ア
14
介護福祉・健康づくり
介
281
哲
史
E26
[教育]
8 月 27 日
9:30
保 27 − 001
女子大学生の健康状態と自覚的ストレス及び大学の居心地に関する一考察
○仁部 ゆかり(筑波大学大学院)
橋本 佐由理(筑波大学大学院)
大学生に対する健康支援は卒業後の産業保健へ繋がる。特に女性のストレスに関しては、職域のみならず母子保健にお
社
いても対策が急がれている。本研究では、女子大学生を対象として全般的な健康状態と自覚的ストレス及び大学の居心地
との関連を検討した。対象者は関東圏内の大学の女子大学生 150 名である。心理特性尺度、自己効力感尺度、生活習慣、
身長・体重等について自記式質問紙調査を実施し、自覚的ストレス及び大学の居心地はビジュアルスケールに記述した
心
生
ものを計測した。健康状態に影響を与える要因についてステップワイズ法を用いて重回帰分析を行った結果、身体的健康
状態の指標とした BMI 及び健康行動の指標とした 4 つの生活習慣では決定係数が十分ではなかったが、精神的健康状態
の指標とした自己評価式抑うつ性尺度(SDS)は、自己価値感、運動の自信感、自覚的ストレスの 3 変数を、精神健康調
査票(GHQ12)は、自覚的ストレス、日常生活におけるセルフケア行動自信感、家族からの情緒支援認知、自己価値感、
大学の居心地の 5 変数を独立変数とする有意な回帰式が得られ、それぞれの独立変数で SDS の 54%、GHQ 12 の 48%
が説明できた。
バ
経
発
E26
[教育]
8 月 27 日
9:45
保 27 − 002
就労者に対するヨーガ療法のストレスマネジメント効果検討
○村上 真(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
橋本 佐由理(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
実習者が増加しているヨーガ療法を職場研修で採用する動きがみられる。本研究では、就労者に対するヨーガ療法介入
の効果を検討した。対象者は都内A社でのヨーガ療法セミナー参加者 88 名(女 65 名、
男 23 名)、不参加者 14 名(女 9 名、
測
男 5 名)である。介入は講義 15 分、実習 25 分で構成し、自習用 DVD も配布した。介入前後・1 カ月後に記名自記式質
問紙(職業性ストレス簡易調査票などで構成)調査を実施した。介入前-介入直後の比較で、介入群はイライラ感、疲労
感、不安感、抑うつ感、身体愁訴が有意に改善した。介入前-介入 1 カ月後の比較では、介入群はいずれの尺度も有意
方
保
教
人
ア
な変化は確認されなかったが、介入前時点でストレス反応が普通以上に高かった参加者は、イライラ感、疲労感、不安感、
身体愁訴が有意に改善した。非介入群は有意な変化は見られなかった。介入群はヨーガ療法により心身の反応を改善する
ことが出来たという経験を通じて、ストレスによっておこる心身の反応を自己コントロールする見通しを持つことが出来
たと考えられ、就労者へのヨーガ療法介入は、ストレスマネジメント手法として有効である可能性が見出された。
E26
[教育]
8 月 27 日
10:00
保 27 − 003
教職実践演習における保健の実施状況
○杉崎 弘周(新潟医療福祉大学)
物部 博文(横浜国立大学)
植田 誠治(聖心女子大学)
本研究の目的は 2013 年度より全国の 4 年制大学で本格実施となった教職実践演習における保健の内容の実施状況を
明らかにすることであった。中学校および高等学校の保健体育の教員免許状を取得できる全国 152 大学 158 学部を対象
に郵送法よる質問紙調査を実施し、回収率は 43.0%(68/158)で、このうちの 67 件を分析対象とした。教職実践演習
介
において保健の時間を確保したあるいは保健の内容を実施したのは 71.6% であった。確保していない理由には、小学校
の内容が中心のため、他教科合同で共通内容のためなどがあげられた。総時数に占める保健の時数を 15 時間中に換算
すると、約 1 時間という回答が 25.0%、約 2 時間が 25.0%、約 3 時間が 18.8% という結果であった。実施した内容(複
数回答可)では、保健模擬授業が 62.5%、続いて、教育実習の保健授業の振り返りが 45.8%、保健の教育内容が 39.6%、
282
10 保健
保健の教育方法が 37.5%、保健の学習指導案作成が 33.3% であった。以上のように、4 年制大学での教職実践演習本格
実施初年度における保健の内容の実施は 71.6% であり、各大学学部によって保健の時数や実施内容などは多様であった。
E26
[教育]
8 月 27 日
10:15
保 27 − 004
フィンランドが育てようとする保健科教師の力量
“Research-based”を特徴とする保健科教師養成課程
○小浜 明(仙台大学)
日 本 で も 教 員 養 成 制 度 全 体 の 見 直 し の 機 運 が 高 ま っ て い る。 前(2003-08)OECD 教 育 革 新 セ ン タ ー 長 の Tom
SCHULLER(トム・シュラー)は、
「教員の養成段階及び現職研修を改革し、職業そのものが研究を吸収する能力を向上
哲
史
社
心
させること」では「フィンランドの例は説得力がある。PISA におけるフィンランドの継続的な成功の一部は、教員研修
の質によるものである。その中でも不可欠な要素は、いかにフィンランドの教員が研究エビデンスを日々の実践におい
て活用できるように訓練されているかということである。これは『吸収性のある』能力の重要な事例である」(エビデン
スと教育的成果、2011)と述べる。ところで、トム・シュラーが述べる「教員が研究エビデンスを日々の実践において
活用できるように訓練されている」という “Research-based” を特徴とする教師の力量の基盤は、実はフィンランドでは、
大学の教員養成課程を通じて形成されている。発表では、この国の保健科教師養成で中心的な役割を果しているユヴァス
キュラ大学の保健科教師養成カリキュラムと教育実習の事例の紹介を通じて、今後の日本のあり方についても考察したい。
E26
[教育]
8 月 27 日
14:00
生
バ
経
保 27 − 005
学びの質を保障する保健学習論についての考察(1)
○岡崎 勝博(東海大学)
学習指導要領が目指す学力観は、評価基準と一体のものとして提示され、それを保障する学習論の開発が期待されてい
発
測
る。しかし保健科においては、学習方法が評価の観点、
「関心・意欲・態度」
「思考・判断」
「知識・理解」にどのように
繋がるのか、つまり学習論と学力形成論への筋道は必ずしも明確とはなっていない。その原因の一つに、学習論と学力形
成論の関連性について分析視点を持ち得ず、理論的な蓄積がなされていないことが挙げられる。本論では、2 つの実践を
方
取り上げ、その分析視点について考察を行った。1 つは拙著の「思春期の成長」の授業より、教師の問いを生徒の問いに
転化していく教授行為・授業過程の展開性と学力形成の関連性について考察した。2 つめは、上野山実践「命・健康・エ
ネルギー問題」の実践に着目し、
「共感力」を育成する「一人称的理解」の必要性と、それを保障する授業過程「耕し」
の必要性について考察を行った。2 つの実践分析より、生徒の「疑問」の掘り起こしや「共感力」の育成が、学力形成の
ベースとなっていることを提示したい。
E26
[教育]
8 月 27 日
14:15
教
保 27 − 006
ピア・インストラクションを取り入れた中学校の保健学習の試み
応急手当の意義と手順をテーマとして
○久保 元芳(宇都宮大学教育学部)
保
中川 博厚(宇都宮大学教育学部附属中学校)
人
ア
生徒の主体的な授業参加と生徒同士の議論を通して学習内容の深い理解を促す授業形態として、近年の物理教育などで
導入されている
「ピア・インストラクション」
(PI)
を取り入れた中学校の保健学習を実践した。PI とは Mazur(1997)
によっ
て提唱され、①学習内容に関する選択肢問題の出題、②クリッカーによる生徒の解答、③自身の解答選択の根拠を踏まえ
介
た生徒同士での議論、④生徒による選択肢問題への再解答、⑤教師による解説、のプロセスによって進められる。授業は、
単元「傷害の防止」の「応急手当の意義と手順」をテーマとした 2 時間構成とし、公立中学校 2 年生 1 クラス 34 名を
283
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
284
対象に実施した。本授業の結果、
生徒の「応急手当に関する知識」や「応急手当の実施の自己効力感」が向上した。また、
PI を取り入れた授業形態に対する生徒の主観的評価も概ね高値を示した。さらに、生徒同士の議論によって正答が導き
だされた度合を示す PI ゲイン(兼田ら 2009)を算出したところ、1 時間目の授業で実施した 2 回の PI(PI ゲイン 0.09、
0.13)に比して、2 時間目の授業で実施した 2 回の PI(0.31、0.31)が高値を示し、注目された。
E26
[教育]
8 月 27 日
14:30
保 27 − 007
ヘルスリテラシーの概念規定及び測定方法に関する検討
○谷口 志緒里(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
片岡 千恵(筑波大学体育系)
岩田 英樹(金沢大学人間科学系)
野津 有司(筑波大学体育系)
工藤 晶子(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
久保 元芳(宇都宮大学教育学部)
現代社会において、ヘルスリテラシーは児童生徒が身に付けるべき能力の一つとして注目されつつある。本研究では、
ヘルスリテラシーの概念規定及び測定方法に関する国内外の先行研究を概観し、児童生徒におけるヘルスリテラシーの
研究に関する基礎資料を得ることを目的とした。ヘルスリテラシーの概念規定については、包括的なもの、特定の対象
に焦点をあてたもの、特定の健康課題に焦点をあてたものの大きく 3 つに整理された。その中で、WHO(1998)及び
Nutbeam(2000)による包括的な概念は、多くの文献で取り上げられており、注目された。また、児童生徒を対象とし
た概念規定は一つみられた。測定方法については、テスト問題を用いたものと評価尺度を用いたものとの 2 つがあったが、
児童生徒に焦点をあてたものはみられなかった。これらのことから、児童生徒におけるヘルスリテラシーの研究は十分で
はなく、今後の取り組みが期待される。例えば、児童生徒のヘルスリテラシーの測定に向けて、評価尺度の開発と併せて、
健康課題を解決する過程で適切に思考し、判断できる問題解決能力を把握するテスト問題等も用いた方法を検討すること
が望まれる。
E26
[教育]
8 月 27 日
14:45
保 27 − 008
学校保健に関する政策論的考察
○谷藤 千香(千葉大学)
畑 攻(日本女子体育大学)
今関 豊一(国立教育政策研究所)
小野里 真弓(上武大学)
社会状況等の変化に伴う健康課題の解決として、学校保健の推進がある。学校保健活動の中心的役割を担う保健主事は、
保健教育や保健管理を個人として行うばかりでなく、組織的な活動としてのリーダーシップの発揮が重要となる。保健主
事の役割や学校保健に関する組織活動の推進については、学校教育法施行規則はもとより、中央教育審議会答申(H20.1)
や学習指導要領などに明記され、近年では、保健主事のため各種冊子の刊行、教育委員会や学校保健会の研修会など、保
健主事を中心とした学校保健活動の理解を深める取り組みが行われている。本研究では、こうした取り組みとその成果か
ら今後の活動推進の可能性を検討する。保健主事に関する状況調査報告書(H26.3)によると、学校保健活動の現状は概
ね良好であるものの、学校種や状況による実態、校長と保健主事の認識、教育委員会の支援の実態と現場のニーズなど
ギャップがあることも否めない。子どもの健康課題は多様化し、専門的な対応が求められるが、学校保健活動を円滑に実
施するためには、保健主事のマネジメント能力の向上、支援システム(研修等)及び環境(管理職の認識)が重要である
ことが示された。
10 保健
E26
[教育]
8 月 27 日
15:00
保 27 − 009
学校保健マネジメントに関する基礎的な検討
○畑 攻(日本女子体育大学)
今関 豊一(国立教育政策研究所)
谷藤 千香(千葉大学)
小野里 真弓(上武大学)
学校保健の推進においては、それぞれの社会の状況や児童・生徒の生活の状況に応じて、現代的な健康課題に効果的及
び効率的に対応することが求められる。保健学習をはじめとするそれぞれのプログラムにおいては、それぞれのテーマに
哲
史
社
整合する豊かで明確な内容と的確な方法が求められている。一方で、学校全体が一体となって組織性を生かした学校保健
活動の展開にも大きな期待が寄せられている。そのような組織的な活動のキーパーソンとしての保健主事のマネジメント
能力の向上に対しては、各種の冊子が刊行されているとともに、関連の講習会や研修会が多く開催されるようになってい
る状況である。
本研究では、基本的なマネジメント理論とマネジメント研究の視点を援用して、保健主事を中心とする学校保健マネジ
メントの枠組みの構成を試みるとともに、合わせて、最新の全国の状況調査(日本学校保健会、平成 26 年 3 月)の報告
に照らして検討した結果、保健主事に求められる学校保健マネジメントの今後の重要なポイントが示唆された。
E26
[教育]
8 月 28 日
9:00
心
生
バ
保 28 − 010
大学生における抑うつと生活習慣に関する研究
体育系学部と非体育系学部学生との比較
○佐々木 浩子(北翔大学)
本研究では、近年増加傾向にある青年期の抑うつ傾向の実態と生活習慣との関連を明らかにすることを目的として、大
経
発
学生を対象に抑うつと生活習慣に関する調査を実施し、体育系学部と非体育系である福祉・医療系学部学生との比較検討
を行った。その結果、全体で半数を超える学生が抑うつ状態を示す CES-D の得点が 16 点以上となっており、非体育系学
部生は体育系学部生よりも有意に抑うつを示す者が多かった。
測
しかし、食習慣での食事の規則性や欠食状況では両者に有意な差は認められなかった。また、睡眠の質評価に用いた
PSQI-J の総得点でも、有意な差は認められなかった。睡眠習慣における起床時刻や就床時刻でも有意な差は認められな
かったが、体育系学部生では非体育系学部生に比較して有意に入眠時間が短いことが明らかとなった。
E26
[教育]
8 月 28 日
9:15
保
保 28 − 011
大学生女子テニス選手における体力の必要性に対する意識とコンディションの向上意欲と
の関連
○川本 恵子(日本女子体育大学大学院)
古泉 佳代(日本女子体育大学)
方
菊地 ゆめみ(日本女子体育大学大学院)
アスリートの食育は、コンディションの向上のために食事調査、体力測定、身体計測および生理学的・生化学的検査に
教
人
よる栄養評価をもとに個人や集団に対して行うことが多い。しかし体力やトレーニングがアスリートのコンディションに
与える影響を縦断的に研究した報告は少ない。そこで本研究は、テニスにおける体力の必要性に対する意識と体力測定が
コンディションの向上意欲にどのように関連しているのかについて検討した。大学生女子テニス選手(n=7)を対象に、
「テ
ア
ニスの競技力向上」に関する 30 分程度の半構造化インタビューを実施し、逐語化するとともに練習中の参与観察を行っ
た。体力測定は最大酸素摂取量の測定を実施した。測定結果は個々に応じたフィードバック用紙を用いて返却し、得られ
た発話を逐語化した。全ての者が「テニスの競技力向上」には「体力」「技術」「思考・心理」の必要性を述べた。
「体力」
介
の必要性を特に感じている者は体力測定結果を意欲的に活用しようとする発話が多かった。一方で、「技術」の必要性を
特に感じている者は、測定結果を技術の向上と関連させる発話がみられ、体力測定はコンディションの向上意欲に結びつ
285
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
かないことが考えられた。
E26
[教育]
8 月 28 日
9:30
保 28 − 012
運動部に所属する女子大学生による主体的な食育がトレーニング期の身体組成に与える影響
○古泉 佳代(日本女子体育大学)
川本 恵子(日本女子体育大学大学院)
菊地 ゆめみ(日本女子体育大学大学院)
齊藤 隆志(日本女子体育大学)
競技特性によりアスリート自身が求める身体像が異なることが報告されているが、それが必ずしも適切な体重、除脂肪
量であるとは限らない。そこで本研究では、適切な体重管理を実践する能力を育てる主体的な食育が、身体組成の変化に
与える影響を検討した。対象は J 大学ラクロス部(n=44)であり、2013 年 12 月より 2 か月ごとに身長、体重及び体脂
肪率(インピーダンス法)を測定し、食育を実施した。食育はチーム内の栄養班を中心に、身体組成測定に対するフィー
ドバック及び、「練習後の食事を選択する力」
、
「体重を自己管理する力」の育成をねらいとしたワークショップを実施し
た。測定開始時の身長は 160.4 ± 5.3cm、体重は 54.9 ± 5.2kg、体脂肪率は 25.0 ± 3.2%であった。体脂肪率 25%未
満の者(L 群 n=26)と 25%以上の者(H 群 n=18)の体脂肪量は、両群共に 2 か月後に増加した(L 群 108.0 ± 7.6%、
H 群 106.9 ± 6.2%)
。4 ヶ月後では、L 群の増加率(104.7 ± 6.2%)は H 群の増加率(99.8 ± 6.9%)と比較して有意
に高値を示した。集団を対象とした食育では、体脂肪率の高い者だけでなく、適切な身体組成である者に対してもそれを
維持することの重要性に気づかせる食育が重要であることが示唆された。
E26
[教育]
8 月 28 日
9:45
保 28 − 013
省察に関する調査を用いた保育者研修プログラムの立案に関する基礎的研究
○岡本 浄実(京都文教大学臨床心理学部)
新井野 洋一(愛知大学地域政策学部)
教育・看護・保育の分野では、振り返る力とりわけ「反省に考察を加える省察力」が重要であると考えられている。そ
のような中で、杉村・朴・若林(2009 年)は、省察態度に着目し省察の 3 層モデルを示している。同時に、保育者が行
うカンファレンス等の機会に省察のモデルやチェックリスト等を提示することによって保育者の学ぶ環境を整えることが
重要になると述べている。
今回、保育者研修プログラムの立案に役立てる観点から、A 市の全保育者(189 名)を対象に、郵送法(2014 年 2 月
20 日~ 3 月 5 日)により保育者の省察に関する調査を実施した。
調査の結果、雇用との間には相関が認められなかった。年代と省察では「自分の保育の方針を振り返り改善すべきとこ
ろを考えることがある」等 9 項目、経験年数と省察では「他の人の保育を見て、 自分の保育に必要なことに気づくこと
がある」等 7 項目に相関が認められた。さらに、調査結果を保育者、子ども、他者の 3 者の立場から再分析し、保育者
研修プログラムの考案を試みた。
E26
[教育]
8 月 28 日
10:05
保 28 − 014
柔道選手のスポーツ傷害に関連する心理的要因と心理的成長の可能性について
○小林 好信(千葉医療福祉専門学校)
山口 香(筑波大学)
松田 基子(大阪体育大学)
橋本 佐由理(筑波大学)
本研究は、スポーツ傷害予防への示唆を得ることを目的に、自記式質問紙による前向き調査(対象は 16 大学の男女柔
286
10 保健
道部員、有効回収数 n=350)を行い、大学柔道選手のスポーツ傷害と心理的特性の経過を 1 年間追跡した。1 年の間に
傷害を発生した群としなかった群について、傷害前時点の心理的特性を t 検定により比較した結果、前者のストレス反応
が有意に高かった。しかし、前者は、傷害発生後にスポーツ競技特性不安の勝敗の認知不安が低下し、心理的競技能力の
判断力やレジリエンスに向上がみられた。また、クラスター分析による分類にて 1 年後調査時に自己抑制型行動特性が
低く、問題解決型行動特性が高いグループは、自己抑制型行動特性が低く、問題解決型行動特性が低いグループに比べ、
傷害を抱えた者の割合が有意に多かった。さらに、傷害を抱えた者は 1 年前に比べ、自己肯定感や自己抑制型・問題解
哲
史
決型行動特性、レジリエンス、心理的競技能力、スポーツ競技特性不安が有意に改善していた。したがって、傷害は選手
にとって心理的成長のチャンスとなる可能性があり、選手を援助する医療職者は、その過程を支える立場にあるとも考え
られる。
E26
[教育]
8 月 28 日
10:20
心
保 28 − 015
柔道選手の自己イメージやレジリエンスが心理的競技能力やスポーツ競技特性不安に与え
る影響
○橋本 佐由理(筑波大学)
松田 基子(大阪体育大学)
社
小林 好信(筑波大学大学院)
山口 香(筑波大学)
本研究は、大学柔道選手に対して自記式質問紙調査(対象は 16 大学の男女柔道部員、有効回収数 n=350)を行い、自
己イメージの良さがレジリエンスの高さに影響を与え、レジリエンスの高さがスポーツ競技特性不安を軽減し、心理的競
技能力を高めるという仮説モデルについて検討することが目的である。共分散構造分析により仮説モデルの適合度を検討
したところ、GFI=0.936, AGFI=0.889, RMSEA=0.079 であった。このモデルによれば、観測変数 ‘ 自己価値感の高さ ’‘ 自
己抑制型行動特性の低さ ’‘ 対人依存型行動特性の低さ ’ からなる潜在変数 ‘ 自己イメージの良さ ’ は、観測変数 ‘ 新奇性追
究 ’‘ 感情調整 ’‘ 肯定的な未来志向 ’ からなる潜在変数 ‘ レジリエンスの高さ ’ に有意な正の強い影響力を持っていた(β
=.894, p<.001)
。潜在変数 ‘ レジリエンスの高さ ’ は、潜在変数 ‘ スポーツ競技特性不安の高さ ’ に有意な負の影響力(β
生
バ
経
発
= - .587, p<.001)、潜在変数 ‘ 心理的競技能力の高さ ’ に有意な正の影響力(β =.468, p<.001)を示し、‘ スポーツ競技
特性不安 ’ は、‘ 心理的競技能力 ’ に有意な負の影響力(β = - .259, p<.001)を示すという因果モデルが構築された。
E26
[教育]
8 月 28 日
10:35
保 28 − 016
測
方
日本・中国における教員養成系大学大学生の性・AIDS に対する意識・態度の比較調査
○日野 晃希(弘進ゴム㈱)
小浜 明(仙台大学)
保
長見 真(仙台大学)
世界的に見ると日本も中国も HIV 感染者数及び AIDS 患者数は増加傾向にある。HIV 感染の一次予防対策の一つには
「教
育」が考えられるが、その際、将来その担い手となる教員養大学学生の性や AIDS に関する態度・意識等は、「教育」を
実施していく上での重要な基底的要素となってくる。この課題意識に基づき、本報告は、日本と中国の教員養成大学大学
生に対して性・AIDS に対する意識・態度等の質問紙調査を実施し、両国の傾向を比較した。調査対象者は日本 751 名(男
505 名、女 246 名)
、中国 462 名(男 240 名、女 222 名)である。その結果、①日本の大学生(以下、日大)は中国の
大学生(以下、中大)よりも性の早期化、多様化が進行している。②日大は中大よりも性・AIDS に対する知識の豊富さ・
積極的な態度の数値に有意差が見られたが、両国大学生共に知識・態度は未だ不十分である。③日大は中大と比較し性の
早期化、多様化が進行しているが、中大のコンドーム(避妊)に関する知識率は日大に比べ有意に低く、更に中大の性行
教
人
ア
為時に避妊を確実に実施する比率及び避妊時のコンドーム使用率も日大と比較し有意に低かった等、を得た。
介
287
哲
史
E26
[教育]
8 月 28 日
10:50
保 28 − 017
起立性調節障害の援助者について
インタビュー調査から検討する
○加藤 勇之助(大阪体育大学)
横尾 智治(筑波大学附属駒場中高等学校)
都内中高一貫男子校において、起立性調節障害(以下、OD)を抱えながらも無事卒業、大学進学することができた卒
社
業生に対しインタビューを実施した。インタビュー調査の概要は、本人の在学中の経験、周囲の理解や自分なりの努力な
どを振り返るものであった。インタビューで語られた言葉から、OD とつき合いながら取り組んできた課題、課題への取
り組み方についての変化について、以下 3 つの観点で整理した。
心
生
バ
経
発
① 本人が取り組んできた課題と取り組みに対する変化について
② 援助資源と自助資源の活用による課題への対処法について
③ 本人の心の成長について
今回は彼を支えた援助者について整理し報告させて頂く。今後、援助者へのインタビュー調査を実施し、援助者からの
視点を分析し深化させた事例研究にしていきたい。
E26
[教育]
8 月 28 日
11:10
保 28 − 018
男子学生を対象とした体力テストと痩身・肥満アンケートの相互関係について
○林 直也(関西学院大学)
白川 哉子(昭和女子大学)
銭谷 初穂(昭和女子大学)
小谷 恭子(帝塚山学院大学)
吉成 啓子(白百合女子大学)
河鰭 一彦(関西学院大学)
K 学院大学における体育・スポーツ実技系科目であるスポーツ科学演習、健康科学演習、体育方法学演習(各 2 単位、
実技、
測
講義融合型=演習)の 2013 年度秋学期受講生に文部科学省が提唱する体力テストをおこない、同時に体脂肪率が BI 法
により測定された。加えてこれまで我々が研究を進めてきた「痩身と肥満に関するアンケート」調査を実施した。本研究
は今回得られた体力テスト、体脂肪率等体格指数、「痩身と肥満に関するアンケート」調査との相互関係に検討を加えた。
方
保
教
人
今回は特に男子学生の結果に焦点をあてた。測定・調査に参加した学生は男子 252 名であった。今回の被験者の大部分
は日常的に激しい身体活動を行っていない一般学生であった。「痩身と肥満に関するアンケート」は身長・理想身長、
体重・
理想体重、これまでの最高体重との差、家族の病歴、体型への意見者、出生時体重、これまでの運動習慣、食事習慣等で
あった。
E26
[教育]
8 月 28 日
11:25
保 28 − 019
ラグビー事故
学校管理下における死亡事例の実態と特徴
○内田 良(名古屋大学大学院)
本研究の目的は、学校におけるラグビーの死亡事故に関してその実態と特徴を明らかにすることである。学校の部活動
ア
で 1983 ~ 2013 年度の 31 年間に 59 件の死亡事故が起きている。他競技と比較したときの死亡率(死亡数/部員数)は、
柔道と並んで突出して高い値を示す。2019 年に日本においてアジア初のラグビーワールドカップが開催され、それに向
けて競技人口拡大策がとられているだけに、重大事故の実態を訴え、安全対策を早急に進めることが求められる。
「安全
介
対策なくして普及なし」である。
ラグビー事故の特徴としては、次の諸点があげられる。①死亡率が著しく高い、②ラグビー固有の動作が致命傷となる、
③頭部と頸部の外傷が致命傷となる、④熱中症による死亡も多い、⑤試合中の事故が多い、⑥初心者(1 年生)にくわえ
上級者(2・3 年生)でも事故が起きる。
288
10 保健
E26
[教育]
8 月 28 日
11:40
保 28 − 020
高校運動部活動におけるアスレティックトレーナーの関わり
男子ソフトテニス部における活動を通して
○平田 昂大(船橋整形外科病院 アスレティックトレーニング部) 酒井 大輔(船橋整形外科病院 アスレティックトレーニング部)
哲
史
【背景】運動部活動は学校教育の一環として行われているが、指導環境等は学校により異なり、スポーツ傷害対策におい
て格差がある。今回、日本体育協会公認アスレティックトレーナー(JASA-AT)として運動部に帯同する機会を得たた
め、JASA-AT の介入効果について報告する。
【対象と方法】S 高校男子ソフトテニス部は部員 31 名、顧問担当教諭 2 名、
社
外部指導者 1 名であった。活動期間は 2012 年 4 月から 2 年間、週 1 日練習に帯同した。活動は JASA-AT の役割につい
て説明を十分に行い、選手のコンディショニング指導と傷害対応を行った。なお、指導者と選手を対象に JASA-AT の介
入効果に関するアンケート調査を行った。
【結果】アンケートでは活動に好意的な回答が得られた。また傷害相談件数は、
帯同初年度 4.18 件 / 日に対し、2 年目では 3.55 件 / 日と減少した。競技成績は関東大会優勝を果たすなど前年度と比較
して好成績を残した。
【結語】運動部活動における JASA-AT の活動は、生徒の怪我を防ぐために効果的であり、指導者と
選手双方に対する必要性の高さが伺われた。これまでに学校部活動に対する JASA-AT の活動に関する報告は少なく、今
後も活動報告と運動部活動を取り巻く環境整備が望まれる。
E33
[教育]
8 月 28 日
13:00
生
バ
保 28 − 101
経
熱中症予防教育の有用性
○山下 直之(中京大学大学院)
樊 孟(中京大学大学院)
心
伊藤 僚(日本福祉大学)
松本 孝朗(中京大学大学院)
発
我々は 2013 年度日本体育学会にて大学新入生の熱中症既往の実態を報告した。その調査では熱中症の主徴の定義を記
載したが、熱中症の発生時の主徴を「わからない」と回答した学生が多かったことから、熱中症を正しく認識していた
かは不明であった。熱中症の主徴を正しく認識することは熱中症の重症化(熱射病への進展)の予防にもつながるため重
測
要である。本研究では、学生に熱中症を正しく認識させる事を目的に熱中症に関する講義の前後に熱中症既往に関するア
ンケート調査を実施した。講義前の調査では対象者 84 名中 17 名が熱中症の既往ありと回答したが、講義後のそれは 33
名に増加した(p<0.001)
。また講義前では 17 名中 12 名は熱中症既往時の主徴が「わからない」と回答したが、講義後
ではその 12 名中 10 名が熱中症既往時の主徴を記載した。熱中症の既往「なし」から「あり」に変更した学生 16 名全
てが熱中症の主徴を回答した。熱中症既往の回答率の増加はそれだけ熱中症を正しく内省できたとも捉え得る。熱中症予
防に関する教育は、熱中症既往の正しい認識につながる事が示唆された。
E33
[教育]
8 月 28 日
13:05
保
教
保 28 − 102
食品の摂取頻度からみた体力
○銭谷 初穂(昭和女子大学)
堂元 慎也(東京学園高等学校)
方
白川 哉子(昭和女子大学)
富本 靖(昭和女子大学)
生活習慣における食習慣が注目されている中、平成 24 年度の国民健康栄養調査によると 15-19 歳女性の朝食欠食率は
人
ア
9.0% であることが報告されている。欠食はエネルギーの不足を招くだけではなく、1 日当たりの摂取食品目数が減少す
ることから、栄養状態の悪化を招き、身体活動等へ影響を与えることが推察される。今回は都内女子大学の教職課程履修
者の学生 96 名を対象とし、欠食や摂取食品の少なさが体力にどのように影響するのかを 1 日の食事における欠食率、食
介
品摂取状況から検討した。内容は新体力テスト及び食物摂取頻度調査を参考に作成した食品摂取状況調査票を用いたアン
ケートを実施した。その結果、平均年齢は 19.0 ± 0.2 歳、身長 158.4 ± 5.3㎝、体重 51.5 ± 6.5㎏、BMI20.5 ± 2.2㎏
289
哲
史
社
/㎡であり、
全国平均値(19 歳)と有意差はなかった。朝食欠食率については 5.2% と全国平均を大きく下回る結果であっ
たが、食品群別の摂取状況については、たんぱく質源となる食品をほとんど摂取しない学生が 5.2% 認められた。対象学
生は将来教員として食育に対する指導を行う立場であることを考慮すると、学生時代に自分自身の食事についての意識を
一層高めていくことが必要であると考えた。
E33
[教育]
8 月 28 日
13:10
保 28 − 103
専攻別短期大学生の骨密度と生活習慣に関する 2 年間の縦断的研究
心
○加藤 恵子(名古屋文理大学短期大学部)
野中 章臣(修文大学短期大学部)
藤田 公和(桜花学園大学)
生
脇坂 康彦(愛知江南短期大学)
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
290
星野 秀樹(愛知文教女子短期大学)
加藤 渡(修文大学短期大学部)
黒柳 淳(修文大学)
専攻別短期大学生の骨密度と生活習慣について 2 年間の縦断的動向を明らかにし今後の健康指導の方向性を探ること
を試みた。短大生 98 名(生活・幼児教育専攻 67 名、栄養士専攻 31 名)を対象として、骨密度測定(音響的骨評価値
OSI)、質問紙による生活習慣調査を、2012 年 5 月入学時と 2014 年 2 月卒業時に実施した。各項目を点数化し比較・検
討した。その結果、入学時の OSI には専攻間に差はなかった。生活習慣調査では、体力の自己評価(p=0.012)、コーヒー・
紅茶摂取(p=0.007)では生活・幼児教育専攻が、骨粗鬆症の知識の有無(p=0.009)、骨粗鬆症への不安(p=0.035)に
ついては栄養士専攻の点数が高かった。卒業時には、生活・幼児教育専攻では、生活習慣の改善はみられず、OSI は低く
なっていた(p=0.004)
。栄養士専攻では、OSI は維持されており、体力の自己評価(p=0.0016)、骨粗鬆症の知識の有無
(p=0.005)においては高くなっていた。これらのことから、専攻によって生活習慣意識には違いがあり OSI に影響があ
ると示唆されたことから、専攻別の健康指導が必要である。
E33
[教育]
8 月 28 日
13:15
保 28 − 104
大学生の肩こりが QOL に及ぼす影響について
○中川 雅智(千葉大学大学院)
村松 成司(千葉大学)
これまで高齢者や労働者に多いとされてきた肩こりだが、近年、大学生にも見られるようになった。しかし、大学生
の肩こりについての研究は少なく、その現状や影響については不明な点が多い。そこで本研究は QOL(生活の質)及び
肩こりについて調査を実施し、大学生の肩こりが QOL に及ぼす影響について検討した。対象は一般大学生 262 名(男性
157 名、女性 105 名)であった。調査は QOL を測定する尺度である SF-36 及び肩こりに関する質問、基本情報(年齢、
性別等)で構成した無記名アンケート調査を行った。SF-36 の結果から下位尺度得点、下位尺度を包括したサマリースコ
アを算出し、肩こりの有無を比較した。調査の結果、下位尺度得点のうち、全体的健康感、活力の項目で男女ともに肩こ
り有り群は無し群と比べ有意に低値を示した。サマリースコアでは PCS(身体的健康度)では有意な差が見られないが、
MCS(精神的健康度)では女性において肩こり有り群は無し群と比べ有意に低値を示した。以上から大学生の肩こりが全
体的な健康感や日々の活力に悪影響を与える様子が伺え、特に女性については精神面の健康に影響を及ぼしている可能性
が推測される。
10 保健
E33
[教育]
8 月 28 日
14:00
保 28 − 105
高等学校における BLS(Basic Life Support)受講生の意識調査
男子高等学校 1 年生を対象として
○丸田 巖(慶応義塾高等学校)
山内 賢(慶應義塾大学)
哲
史
【目的】日本では欧米諸国と比較して心肺停止者に対し、その場に居合わせた人による一次救命処置が積極的に施されて
いるとは言えない。したがって、その講習の普及を図る必要があるものと考えられる。そこで本研究では、男子高等学校
生の BLS(Basic Life Support)受講生に対しその意識調査を実施し、今後の BLS 講習に役立てることを目的とした。
【方法】
社
対象は男子高等学校 1 年生 123 名であった。調査は、質問紙調査法により実施し、質問項目は心肺蘇生法および AED 使
用等に関する 12 項目であった。
【結果および考察】BLS 講習前では、中学時代 BLS 講習受講者群は未受講者群に比し多
項目で有意に肯定的な回答が多かった。BLS 講習終了直後の回答では、2 群とも肯定的な回答が多く一過性の効果が認め
られた。したがって、BLS 講習の効果が明らかとなり、今後ともその講習を実施していく必要性が示唆された。
E33
[教育]
8 月 28 日
14:05
心
生
保 28 − 106
ラグビーにおける肩関節外傷の疫学調査
2 年間の縦断的検討
○大垣 亮(仙台大学体育学部)
本研究は、大学ラグビーチームを対象に肩関節外傷の発生状況を縦断的に調査し、発生率・種類・重症度・受傷機転
バ
経
を分析することを目的とした。対象は、1 チームに所属する大学ラグビー選手 78 名とした。調査期間は 2009 年から
2010 年の 2 年間とし、
試合および練習で発生した肩関節の外傷を収集した。2 シーズン中に肩関節の外傷は 46 件発生し、
そのうち試合時は 22 件、
練習時は 24 件であった。外傷発生率は、全体で 1.04 件 /1000 Player-hours[95%CI, 0.74-1.34]
、
発
試合時で 13.40 件 /1000 Player-hours[95%CI, 7.81-19.00]、練習時で 0.56 件 /1000 Player-hours[95%CI, 0.34-0.79]
であり、練習時に比べて試合時の外傷発生率は有意に高かった。外傷別では、肩関節の脱臼 / 不安定症の発生率が最も高
く(0.41 件 /1000 player-hours
[95%CI, 0.22-0.59]
)、次いで腱板損傷 / インピンジメント症候群の発生率が高かった
(0.27
測
件 /1000 player-hours[95%CI, 0.12-0.42]
)
。ラグビー競技のおける肩関節の外傷は、脱臼 / 不安定症や腱板損傷 / イン
ピンジメント症候群といった肩甲上腕関節に関わる外傷の発生率が高く、この種の外傷に対する予防介入が優先されると
考えられた。
E33
[教育]
8 月 28 日
14:10
保
保 28 − 107
一次介護予防を目的とした高齢者対象事業の一例
長崎県佐世保市の「まちなかプラチナタウン構想」を事例に
○西村 千尋(長崎県立大学)
中垣内 真樹(長崎大学)
方
上濱 龍也(岩手大学)
厚生労働省が示す平成 27 年の介護保険制度改正案では、要支援 1 ~ 2 の介護保険サービスの基礎自治体への移行が平
教
人
成 27 ~ 29 年度にかけて段階的に実施される予定である。サービスの内容や価格は基礎自治体が決めることになり、ボ
ランティアや NPO を活用するなどの柔軟な運営も可能になる。そこで、本研究では、長崎県佐世保市における一次介護
予防を目的とした高齢者対象事業「まちなかプラチナタウン構想」について、その可能性と課題を検討することを目的と
ア
している。
「まちなかプラチナタウン」では、情報収集と情報提供、講演会や相談会などの開催、運動教室や料理教室などの開催、
教材の開発と普及、そして地域内外での交流などに取り組む。これらの活動によって、高齢期になっても自立した生活を
介
送り、社会的な役割を持ち続けるために、ライフスキルを高め、自らの健康や環境をコントロールし、健康につながる行
動選択を支援することが実現できる。さらに、平成 27 年の介護保険制度改正に向けて、保健福祉事業のソフトランディ
291
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
292
ングのツールとして期待できる。一方、どのようなサービスを提供するのか、またその持続可能性をどう維持するのかと
いった課題も有する。
00
体育哲学
哲
01
体育史
史
02
体育社会学
社
03
体育心理学
心
04
運動生理学
生
05
バイオメカニクス
バ
06
体育経営管理
経
07
発育発達
発
08
測定評価
測
09
体育方法
方
10
保健
保
11
体育科教育学
教
12
スポーツ人類学
人
13
アダプテッド・スポーツ科学
ア
14
介護福祉・健康づくり
介
293
哲
史
社
北桐ホール[教育]
8 月 27 日
9:00
教 27 − 001
校内研究会で体育科を研究する機能に関する研究
小学校における校内研究組織に着目して
○鈴木 聡(東京学芸大学)
内田 雄三(白鴎大学)
近藤 智靖(日本体育大学)
本研究は、体育科を研究する小学校の校内研究会組織に着目し、教師が同僚とともに授業研究をすることの機能をどの
ように捉え、何をもって校内研究の内容だと捉えているのかについて明らかにすることを目的とした。質問紙調査及びイ
ンタビューの結果から、多くの教師が、
「同僚性の構築」「体育の授業づくりの方法理解」「授業の効率化の実現」「他学級
心
生
の児童理解」
「全校的な体育の授業充実の底上げ」
「運動好きな子どもの育成」等をその機能として捉えていた。研究内容
については、「教授法」
「年間カリキュラム等の作成」
「教材・教具の開発」等が挙げられた。さらに、研究成果の発信手
段である研究発表会の開催や研究紀要の作成に対しては、いくつかの課題が挙げられた。例えば、多くの教師は「成果物
の発表や作成」よりも「授業研究の過程」に重要な意義を感じていた。さらに、学校の中で閉ざされた研究をするのでは
なく、研究過程において学校を超えた情報交換が随時できることを求めていることが解釈された。この結果から、校内研
究組織を架橋し、
研究内容や成果に関する情報をリアルタイムで交換できるシステムを構築していく必要性が示唆された。
バ
経
発
北桐ホール[教育]
8 月 27 日
9:15
教 27 − 002
教職実践演習における保健体育科教員免許取得希望者の教育内容に関する研究
○大越 正大(東海大学体育学部)
今村 修(東海大学体育学部)
教職実践演習は、課程認定大学が養成する教員像や到達目標などに照らして、教員に必要な資質や能力が身に付いたか
最終確認をする科目として、2010 年度入学生から導入され、多くの 4 年制大学において 2013 年度に最初の授業が実施
測
された。学生はこの科目の履修を通じて、教員になるにあたっての自己の課題を自覚するとともに、必要に応じて不足し
ている知識や技能等を補い、その定着を図ることが期待される。中・高保健体育科教員免許取得にあたっては、学習指導
要領に示されている全ての内容の指導力が求められるが、体育実技については部活動で単一の種目を専門的に行ってきた
方
保
教
人
ア
学生が多く、得意不得意があるのが現状である。
そこでT大学では、教職実践演習において中・高保健体育科の内容の中から「指導 ・ 示範に自信があるもの」、「不安が
あるもの」を一つずつ申告し、
「指導・示範に自信がある者は、不安がある者に助言をすることで指導力の向上を図る」
、
「指
導・示範に不安がある者は、自信のある者から助言を受け、不得意な内容の克服を目指す」ことをねらいとした実践的授
業を取り入れた。本研究では本実践を振り返り、教職実践演習充実のための基礎資料を提示する。
北桐ホール[教育]
8 月 27 日
9:30
教 27 − 003
アスリートセンタードコーチングセミナーにおける参加者の学び
○関口 遵(日本体育大学大学院)
古川 佑生(日本体育大学)
伊藤 雅充(日本体育大学)
小泉 卓也(日本体育大学)
アスリートセンタードコーチング(以下、ACC)では、アスリートの学びを最適化することとアスリートのやる気を大
切にすることが求められる(伊藤、2014)
。ACC の理論を理解するためには、ACC の理論とコーチ教育プログラムのデ
介
ザインを一致させることが望ましい(コルトハーヘン、2010)。そこで、本研究のセミナーには、理論に関する講義に加
え、参加者の実践の経験やその経験に対する受け止め方を出発点にできるグループディスカッションを組み込んだ。本研
究では、これらの理論的背景を基にしたコーチングセミナーが参加者にどのような学習をもたらしたのかを質的に解釈す
ることを目的とした。プログラムは 8 カ所で開催され、その参加者は学校運動部活動を指導する教師など 126 名であっ
294
11 体育科教育学
た。プログラム終了後に、プログラムに関するアンケートを実施し、アンケートによって得られた自由記述回答の内容を
質的に分析した。その結果、
参加者の学習内容を 6 つの主要カテゴリー(講義内容に関する学び、グループディスカッショ
ンによる学び、自己省察など)に分類することができた。主要カテゴリー間の関係性を検討し、ACC セミナーによる参
加者の学びの仮説モデルを生成した。
北桐ホール[教育]
8 月 27 日
9:45
史
教 27 − 004
現職教員のダンス指導における研修の機能に関する調査研究
小中学校の教員を対象にして
○生関 文翔(広島大学大学院)
嘉数 健悟(沖縄大学)
高島 亜由美(広島大学大学院)
岩田 昌太郎(広島大学)
渡辺 駿(広島大学大学院)
池浦 このみ(広島大学大学院)
周知の通り、現在、中学校ではダンスが必修化された。しかしながら、必修化に伴うダンス指導の実態や研修の充実に
寄与する研究は少ないのが現状である。そこで本研究では、現職教員のダンス指導における実態や研修の課題を明らかに
することを目的とする。対象は、現職教員 240 名(小学校:156 名、中学校:84 名)であった。アンケート項目は「Ⅰ.
属性」、「Ⅱ.ダンス指導における障壁」
、
「Ⅲ.今後の研修に関する期待」の 3 項目であった(e.g. 茅野,2013;岩田ら,
2013)
。分析方法については、Ⅱ、Ⅲで作成した質問項目を、性別、教職経験年数別(木原,2014 を参考)によって分
析した。
その結果、Ⅱにおいて、
「創作ダンス」および「表現」では、「自分でリズムがとれない」という項目に対して有意な差
が認められた(p<.05)
。とりわけ、中堅教師は、若手教師に比べて「自分でリズムがとれない」ことについて指導の課
題意識があることが示された。一方、Ⅲにおいては、
「実技」の研修を希望する教員の割合が最も高く(93%)
、教職経
験年数別にみても有意な差が認められないことから、現職教員が「実技」の研修を全体的に希望していることが明らかに
なった。
E21
[教育]
8 月 27 日
9:00
社
心
生
バ
経
発
測
教 27 − 005
チームビルディングを知識として教える教授方略の有効性
○梅垣 明美(立命館大学大学院・大阪体育大学)
大友 智(立命館大学)
南島 永衣子(立命館大学大学院・びわこ成蹊スポーツ大学) 深田 直宏(立命館大学大学院・桐生市立神明小学校)
上田 憲嗣(立命館大学大学院・吉備国際大学)
早川 由紀(藤岡市立東中学校)
山田 慶之(桐生市立新里中学校)
哲
吉井 健人(群馬大学教育学部附属小学校)
山藤 一也(桐生市立新里中学校)
本研究は、中学校の体育授業を対象にチームビルディングを知識として教える教授方略を開発し、その効果を検証する
ことを目的とした。具体的には、体育の授業中に組織されるチームを対象に、チームビルディングを知識として教え、そ
れを運動学習の中で実行させるという指導である。チームビルディングを知識として教える教授方略の効果を検証するた
め 3 つの実験授業を実施した。対象授業 1 は、同一クラスで介入を実施する介入有単元と介入を実施しない介入無単元
のグループ比較を採用した。対象授業 2 は、2 つのクラスを対象に介入を実施する介入有クラスと介入を実施しない介入
無クラスのグループ比較を採用した。対象授業 3 は、2 つのクラスを対象に介入の時期をずらしたマルチベースラインデ
ザインを採用した。チームビルディングの知識学習の効果は、仲間づくりの形成的評価と社会的スキル尺度によって分析
方
保
教
人
ア
した。その結果、チームビルディングの知識学習は、体育の授業中の生徒の集団的・協力的な関わり合い活動を促し、社
会的スキルを獲得させることが明らかにされた。さらにこれらの効果は、フォローアップ期にも維持された。
介
295
哲
史
E21
[教育]
8 月 27 日
9:15
教 27 − 006
小学校の体育授業における協同学習の有効性に関する研究
ジグソー法を用いた器械運動の授業を通して
○東海林 沙貴(早稲田大学大学院)
吉永 武史(早稲田大学スポーツ科学学術院)
近年、子どもの社会的な態度やコミュニケーションスキルの欠如が大きな社会問題となっている(高橋 ,2012)。これ
社
らの問題の解決に向けたアプローチの一つに「協同学習」があげられる。Johnson & Johnson(2002)や Slavin(1988)
らの研究によってその効果が明らかにされているが、日本の体育授業において協同学習を取り入れた実践例は数少ない状
況にある。本研究では、協同学習の指導方略の一つである「ジグソー法」を用いた器械運動の学習プログラムを作成し、
心
生
その有効性について検討した。埼玉県内の小学校 5 年生 2 学級(A 学級は男子 17 名・女子 15 名、B 学級は男子 17 名・
女子 16 名)を対象に、1 回目の実践(2013 年 11 月)では A 学級のみが跳び箱運動の単元(6 時間)を行い、2 回目の
実践(2014 年 2 月)では A ならびに B 学級がマット運動の単元(7 時間)を行った。単元前後に診断的・総括的授業評
価を、毎時間後の形成的授業評価ならびに仲間づくりの評価を実施し、協同学習の有効性について検証した。その結果、
本プログラムでは仲間同士の教え合いの活動が好意的に受け入れられ、技能的な向上のみならず授業へより高い評価がな
されることが明らかとなった。
バ
経
発
E21
[教育]
8 月 27 日
9:30
教 27 − 007
体育科教育の運動学習場面における知識の獲得に関する研究
○玉腰 和典(愛知県立大学大学院)
丸山 真司(愛知県立大学)
近年学習指導要領の改訂をうけて、体育科教育における認識に関する研究が多くおこなわれるようになっている。しか
し体育科教育において認識に関する研究は未だ十分な研究の蓄積がえられておらず、対象と方法、そしてそれらの相互関
測
係の解明は課題が残されたままである。そこで、本研究では体育科教育の運動学習場面における知識の獲得についての特
徴を明らかにすることを目的とした。結論としては運動学習場面における知識の獲得とは運動学習を通した戦術や知識に
関する階層的構造の豊富化・再構造化であることが明らかとなった。体育科教育における認識対象は、客体としては運動
方
保
教
人
ア
介
文化によって規定される運動の戦術や技術の体系であり、それらは法則性をもつ諸命題が階層的または相互関係的に位置
づく網状の複合体を構成している。運動学習では認識した課題・方法を身体運動として表現する主客統一の過程をたどる。
その際、試行段階における運動課題の不達成(誤謬)の分析によって下位の方法が認識される。それらが主体の課題・方
法の知識体系を再構造化し、また達成にともない豊富化されるのである。本研究の成果は認識形成と技能習熟の相即的関
係の理解を深めるものとなる。
E21
[教育]
8 月 27 日
9:45
教 27 − 008
小学校体育授業における思考力・判断力を育成する指導法の検討
タブレット PC の活用方法に着目して
○吉井 健人(群馬大学教育学部附属小学校・立命館大学 BKC 社系研究機構客員研究員)
大友 智(立命館大学)
深田 直宏(立命館大学大学院・桐生市立神明小学校)
梅垣 明美(大阪体育大学・立命館大学大学院)
南島 永衣子(びわこ成蹊スポーツ大学・立命館大学大学院)
上田 憲嗣(吉備国際大学・立命館大学大学院)
国立教育政策研究所(2013)から 21 世紀型能力が提示され、思考力・判断力が中心的な能力に位置づけられた。思考力・
判断力を育成するツールとして、タブレット PC が考えられる。本研究の目的は、タブレット PC の活用方法に着目して、
児童の思考力・判断力を高める指導法を明らかにすることである。
対象は、第 4 学年 3 クラスの高跳びの単元であった。タブレット PC の使用条件は、① 5―6 名のグループに 2 台使用、
296
11 体育科教育学
②高跳びの試技の映像を撮影、③振り返り時にその映像を使用、であった。
タブレット PC の活用方法は、
(1)個人の必要性に応じて使用、(2)一人一人の 1 回の試技毎に使用、(3)3―4 回の
試技毎に 1 回使用、であった。収集したデータは、
(ア)抽出グループの会話、
(イ)学習者行動、
(ウ)形成的授業評価、
(エ)体育授業に対する愛好的態度調査等であった。
以上の 3 つの指導法を適用した授業を対象としてデータを収集し、指導法間の学習過程及び学習成果を分析した。そ
の結果、いずれの指導法にも関わらず、形成的評価、愛好的態度は高い値を示した。この他の結果については、当日発表
哲
史
する。
社
北桐ホール[教育]
8 月 27 日
10:00
教 27 − 009
ダンス必修化に対応した即興表現の典型教材に関する一考察
○高橋 和子(横浜国立大学)
本研究では、効果的な即興表現の典型教材(内容と方法)を選定することが目的である。先行研究に基づき「気軽に踊
れる・指導しやすい教材」を、3 つの方法(動きを提示して自由に再構成・言葉やイメージで動きを誘発・何気ないパター
ン化した動きを提示)で、本研究者が教員養成課程の学生 250 名に 5 ~ 10 時間実践した。教材は小学生から中学生に
も適用できる「笑う体操・動きのカルタ 36・身体部位ダンス・声の太鼓・彫刻家・群像・オーケストラ・ダイヤモンドウォー
ク・円筒鏡・七夕・サンタとトナカイ・雨が降る・花が咲く・伸びる縮む・達磨さんが転んだ・走る止まる・新聞紙・忍
者・探検・集まるとび散る」等から選択した。毎時間の自由記述を「技能」「態度」「知識、思考・判断」の観点で分析し
た。その結果、多くの教材が、ダンス技術構造に基づく教材であること。即興表現の特徴である「いま・ここ」で生み出
される動きやイメージや個性が、自由な雰囲気の中カウントに縛らず、引き出されたこと。双方向の学びの場が創出した
こと。段々恥ずかしさが取れ、ワンパターンからの脱却が目指されたことが示唆された。
北桐ホール[教育]
8 月 27 日
10:15
生
バ
経
発
測
教 27 − 010
中学校ダンス必修化に対応した授業計画における地域特性と課題
○中村 恭子(順天堂大学)
中村 なおみ(東海大学)
宮本 乙女(日本女子体育大学)
原田 純子(関西大学)
ダンス必修化に対応した中学校の授業計画における地域特性を明らかにし、カリキュラム改善のための資料を得ること
を目的として実態調査を実施した。調査対象は人口の少ない地方(徳島県、山形県、青森県)の公立中学 202 校(以下地方群)
と、人口の多い都市部(大阪府、千葉県)の公立中学 287 校(以下都市群)であった。地方群は平均生徒数 300 人未満、
体育科教員数 2 人前後、50%の学校が男性教員のみであった。そのため、指導経験の少ない男性教員が全てのダンス授
業を担当することとなり、55 ~ 85%が男女共習クラスで実施していた。一方都市群は平均生徒数 400 人以上、体育科
教員数 3 人前後であり、70%以上の学校に女性教員が配置されていた。男女教員がそれぞれ同性のクラスを担当するこ
とが可能であり、55 ~ 70%が男女別習クラスで実施していた。共習クラスの多い地方群は男子女子ともに高い必修実施
率であったが、別習クラスの多い都市群は男子の授業計画や配当時数が有意に少なかった。教員配置における地域特性が
ダンスの授業計画に影響を及ぼしていた。ダンス必修化への対応において、各群それぞれに男性教員の指導力養成が課題
と示唆された。
心
方
保
教
人
ア
介
297
哲
史
北桐ホール[教育]
8 月 27 日
10:30
教 27 − 011
主体的活動での生徒によるダンスの振付の現状と課題
○橋本 晴子(横浜国立大学大学院)
高橋 和子(横浜国立大学)
神奈川県立 YS 高校で行うダンス授業に向けて、生徒の実態を把握し課題を明確にすることを目的とし調査を行った。
社
方法は、生徒のダンスの自主的な活動の支援、観察、アンケートとした。対象は校内の 2 つ有志団体とした。
「ダンス発表会」に参加した生徒である。これは、約 1 ケ月の準備期間で 35 人の生徒が 16 作品で自主公演を行った。
発表会直後のアンケートと、映像分析を行った。生徒自身の評価との相違がみられた。
心
生
また、「リズムダンス練習会」を行っているグループ 30 人は、相互評価で活発な意見交換を行い、先輩から引き継が
れた振り付けを伝達し、身体を動かす楽しさを味わうことを目的として行ってる。自由記述には、表現力を高める必要と
の記述が複数あった。
これらの活動から、生徒はダンスで仲間とのかかわりを楽しむことは概ね満足である。しかし、その仲間とのかかわり
を群構成として観る側に伝えたり、瞬時に捉えたイメージを即興表現の創作に、既成の動きや規則的なリズムが抑制作用
となっていることが予想される。
バ
経
発
北桐ホール[教育]
8 月 27 日
10:45
教 27 − 012
学校教育におけるダンスの連携教育についての一考察
コーディネーターに求められる資質とは何か
○伊藤 史織(横浜国立大学大学院 教育学研究科)
高橋 和子(横浜国立大学)
中学校でのダンス必修化により、表現運動を含んだダンスの領域において、文化施設や NPO 団体等がコーディネーター
となり、学校とアーティストを結んだ連携教育の動きが始まっている。しかし、双方の持つ知識や価値観などの相違から、
測
学習指導要領にそぐわないものや円滑に実施できない事例も少なくない。この課題解決はコーディネーターの資質にある
と考え、本研究では、横浜市芸術文化教育プラットフォームより得られた報告書『コーディネーターの役割とは何か』な
らびに、コーディネート団体への半構造化インタビューより、実施における問題点や留意点を明らかにし、コーディネー
方
保
教
人
ア
介
ターに求められる資質を探ることを目的とした。その結果、学校の教員が多忙なため、企画や相談できる時間が限られ、
準備や進行の調整が難しい現状があることが明らかになった。しかし、そういった状況の中で、双方の考え方や意向を切
り捨てることなく統合し、事業に関わる全員が成果を実感できるものにすることを、多くのコーディネーターが心がけて
いた。これらの実現の為には、学校・アーティストの現場を熟知し、調整する能力が求められ、この力こそコーディネー
ターの資質であると考える。
E21
[教育]
8 月 27 日
10:00
教 27 − 013
「運動の計画」を立てる能力の育成を促す体つくり運動アプリの開発
タブレットの効果的な活用の検討
○佐藤 豊(鹿屋体育大学)
大塚 隆(東海大学体育学部)
佐藤 若(山形県立山形中央高等学校)
後藤 晃伸(愛知県立一宮高等学校)
古川 善夫(北海道教育大学)
高橋 修一(国立教育政策研究所)
木原 慎介(墨田区立桜堤中学校)
子どもの運動習慣の二極化への対応として、体つくり運動の指導時間数の目安が示されるなど授業の充実が求められて
いるが、依然として、指導を行う教師側にも準備運動や補強運動としての補完的な位置づけとして受け止める教師も見受
けられる。
20 年改訂中学校学習指導要領において、
「運動の計画を立てて取り組むこと」が示されたことから、研究大会等におい
298
11 体育科教育学
ての実践発表も多く見られるが、生徒一人一人に運動の計画を立てるための時間の保証、選択の適切性などの支援におい
て十分な授業実践が難しいとの感想も多い。
一方、国は 2020 年までに小中学校の生徒 1 人に 1 台を整備する目標を掲げており、体育の授業においても有用なソ
フト開発が急務と言える。そこで、教師の支援ツールとして、特にアプローチが難しいという意見の多い「運動の計画」
を立てる能力の育成を促すことに着目した体つくり運動アプリの開発を行い、協力校 4 校において検証実践を行ったと
ころ、教師が指導内容を把握していること、適切にタブレットを管理すること、複数のペアで使用すること等の条件を整
哲
史
えることで、生徒の「運動の計画」を立てる能力の育成に有効に活用できることが示唆された。
社
E21
[教育]
8 月 27 日
10:15
教 27 − 014
中学校体育における体つくり運動に関する事例的研究
体力を高める運動に焦点を当てて
○鈴木 慶子(日本体育大学大学院)
近藤 智靖(日本体育大学)
現行の学習指導要領の中学校第 1 学年及び第 2 学年体つくり運動の「体力を高める運動」では、体の柔らかさ、巧み
な動き、力強い動き、動きを持続する能力を高めることが主なねらいとなっている。体つくり運動は中学校では各学年に
おいて年間 7 時間以上配当されているが、教育現場からは、
「どのような運動をどのように指導したらよいかわからない」
「生徒の意欲を高めるような単元を作ることは難しい」といった意見が挙げられている。鈴木(2011)は、
「その実態を
見ると、集団行動の訓練や自校体操の習得、スポーツテストの計測などに充ててきた学校も多い」と現状を述べている。
文部科学省としては、体つくり運動は各運動領域との関連を図るのではなく体つくり運動単独での単元を求めている。こ
のように学校現場の現実と文部科学省の求める政策とは大きな認識の差異がみられている。要因の一つには、体つくり運
動の実証的な研究の不足にもある。本研究では学習指導要領に基づいた体つくり運動の体力を高める運動に焦点を当てた
単元について、映像データや生徒への質問紙を用いて詳しく検証することを目的とする。
E21
[教育]
8 月 27 日
10:30
教 27 − 015
体力向上と体ほぐしの運動を融合させた「体つくり運動」教材の可能性
実技指導書等の文献調査をもとに
○檜皮 貴子(新潟大学)
長谷川 聖修(筑波大学)
田村 元延(常葉大学短期大学部)
武井 嘉恵(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
鈴木 王香(國學院大學)
平成 10 年告示の学習指導要領から体操領域が改められ、小学校第 5 学年以降に「体つくり運動」が示された。その際
の大きな変更点として、従来の「体力を高める運動」に「体ほぐしの運動」が新たに加えられ、体への気付きや調整、仲
間との交流にも重点が置かれる領域となった。さらに、子どもたちの長期的な体力低下傾向が一層深刻な課題となったこ
とを背景に、現行の学習指導要領では小学校第 1 学年から体つくり運動が位置づけられることになった。関連する実技
指導書においては、多様な動きつくり、体力向上、体ほぐし等、各ねらいに応じて運動内容が取り上げられている。しか
し、運動実践の観点から見ると、体力を高める運動とほぐしの運動内容が重複することもあり、一つの運動が様々なねら
いに適している場合が少なくない。そこで、本研究は、これまで示されてきた体つくり運動の実践内容について文献を中
心に調査し、運動内容の傾向について各ねらいの枠組みを超えて整理することで、体つくり運動における今後の教材のあ
り方について検討することを目的とする。具体的には、多様な動きつくり・体力を高める運動と体ほぐしの運動の融合型
教材の可能性について示す。
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
299
哲
史
E21
[教育]
8 月 27 日
10:45
教 27 − 016
学校体育における「子どもの体力向上」をめぐるローカル・ポリティクス
競争原理と成果主義の浸透
○井谷 惠子(京都教育大学)
日本をはじめ多くの国々で、競争原理と成果主義を両輪とした新自由主義的な教育政策が強まっている。本研究では、
社
地方教育委員会における子どもの体力向上に向けた取組みに視点を当て、競争原理と成果主義がどのように組み込まれて
いるか検討を行うことを目的とする。
中教審答申「子どもの体力向上のための総合的な方策について」
(H14)以降、学校体育において様々な施策が講じら
心
生
れている。
「体育授業の改善」施策として、
「体つくり運動」が小中高すべての学年において必修とされたほか、各教育委
員会や学校においては、授業以外に体力向上に向けた様々な取組みがなされている。
東京都では「総合的な子供の基礎体力向上方策」推進計画(1 次、2 次)に基づき、体力テスト結果の地域による比較、
体力向上推進優秀校の顕彰、
「1 日 1 万 5 千歩」など数値目標の導入、競技的スポーツの強化などの特徴が見られる。大
阪府では「重点的に取り組む 5 つの課題」の一つに学力と体力の向上を掲げ、子ども駅伝大会やなわとび大会、ドッジボー
ル大会などを核とした「子ども元気アッププロジェクト」が進められている。
バ
経
発
測
北桐ホール[教育]
8 月 27 日
11:00
教 27 − 017
ボール運動系(ゴール型)の指導内容に関する研究
教師への調査を通して
○深田 直宏(桐生市立神明小学校・立命館大学大学院) 大友 智(立命館大学)
梅垣 明美(大阪体育大学・立命館大学大学院)
南島 永衣子(びわこ成蹊スポーツ大学・立命館大学大学院)
上田 憲嗣(吉備国際大学・立命館大学大学院)
吉井 健人(群馬大学教育学部附属小学校・立命館大学 BKC 社系研究機構客員研究員)
平成 20 年告示の学習指導要領(以下、要領)では、指導内容の明確化が図られ(文部科学省、2008)
、ボール運動系
領域では、次の 2 つの変化が見られた。第一に、各種目は、ゴール型、ネット型、ベースボール型の 3 つの型に分類された。
方
保
教
人
ア
第二に、
「ボールを持たない動き」
、及び「ボール操作の技術」の観点から、指導内容が示された。要領及び要領解説では、
ボール運動系領域に関して、どのような指導内容を、どの発達段階で指導すべきかが、明示された。しかしながら、それ
らの指導内容が、当該の学年段階で確実に獲得できるかどうかは、明確でない。
以上から、本研究では、ボール運動系(ゴール型)の技能に関して、教師は、どの指導内容をいつ指導すべきと考えて
いるかについて、明らかにすることを目的とした。
小学校、中学校、及び高校の教師を対象に、ボール運動系領域で示された技能内容に関して、調査を行った結果、全て
の校種において、例示された学年より早い学年段階で指導した方がよいと考えていると推察された。
北桐ホール[教育]
8 月 27 日
11:15
教 27 − 018
サッカー・ルールの学習方法の研究
○福田 純(東京都稲城市立稲城第一小学校)
小学校四年算数科わり算の学習では、一年から三年までに学習してきた足し算、引き算、かけ算を使いこなして、わり
介
算の筆算を発見する感動的な学習方法が展開されている。小学校体育科サッカー教材におけるルールの学習でも、サッ
カー・ルールの認識過程を使いこなすことによって、「わり算の筆算の発見」と同様の学習方法が展開できることが分かっ
た。つまり歴史的に古い原初的なルールを使いこなすと矛盾が生じ、新しいルールが必要になる。そこで児童はその矛盾
を解決するために、より公平なより洗練されたルールを発見する。このような発見を繰り返して、最後に現代のルールに
300
11 体育科教育学
たどり着くことができるのである。サッカー・ルールの認識史は、(1)ライン(線)(2)サッカー・ゴール(3)ゴール・
キーパー(4)反則、それぞれの認識過程に大別され、これらが相互に関連しながら発展し、現代のルールにたどり着く
ことになる。また、サッカー文化の継承、発展は、ルールの学習が主として担うべきであると考えている。以上を、具体
的な実践例に基づいて紹介したい。
北桐ホール[教育]
8 月 27 日
11:30
史
教 27 − 019
バスケットボール授業に取り入れたフリーシュートゾーンがボールを持たないときの動き
に与える影響
○三本 雄樹(佐渡市立金井小学校)
哲
大庭 昌昭(新潟大学)
社
心
学習指導要領の改訂に伴い、小学校高学年を対象にした簡易化されたゲームの研究成果が数多く報告されている。そこ
で本研究では、小学校 6 年生のバスケットボール授業において、制限区域内に 1m × 1m の正方形のゾーンを 25 か所設
けた(全体では 5m × 5m の正方形)
。そして、その中から「フリーシュートゾーン(以下、FSZ と表記)」として、自由
に 2 か所選ばせて 4 対 3 アウトナンバーゲームを行うとともに、単元の最初と最後には FSZ を設けずに 4 対 4 イーブン
ナンバーゲームを行った。FSZ を用いた 4 対 3 アウトナンバーゲームで身に付けたボールを持たないときの動きが、FSZ
を用いない 4 対 4 イーブンナンバーゲームに与える影響を明らかにすることが本研究の目的である。研究方法として、
単元中に実施したメインゲームをビデオカメラで撮影し、GPAI(Griffin et al., 1997)の方法論に基づいて分析を行った。
その結果、4 対 3 アウトナンバーゲームで身に付けた「ディフェンスを引き付ける動き」と「スペースに走り込む動き」
の割合が、単元の最後に行った 4 対 4 イーブンナンバーゲームでも高まった。
北桐ホール[教育]
8 月 27 日
11:45
教 27 − 020
体育授業におけるピボット動作の有効性に関する比較研究
状況判断力の変容に着目して
○福地 健太(千葉大学大学院)
七澤 朱音(千葉大学)
近年、小学校体育における「ボール運動」領域の「ゴール型」では、ボールの受け手側のボールを受ける動き(サポー
ト行動)が注目され多くの実践研究が行われている。しかし、教育現場では、ボール保持者側がターンを行いつつ、受け
生
バ
経
発
測
方
手のサポート行動に合わせて的確なパスを行う技能が身に付いていない児童が多いとされている。
本研究では、バスケットボールに特徴的な技能である「ピボット」を学習内容に位置づけ、ボール保持時の状況判断力
に与える影響とその有効性について検証することとした。中学校 1 年生の 2 クラスを対象にし、主な学習内容を「ピボッ
ト動作」と「サポート行動」とに分けた。空間心電図型ゲーム分析表を使用し、パスの相関図による分析及び数値を T 検定・
二要因分散分析の検定をかけ有意差を求めた。その結果、相関図においてピボットを学習目標にしたクラスはサポートを
学習目標にしたクラスに比べ、パスの分散が起きているという結果が出た。当日は、検定結果も加えて発表する。
E21
[教育]
8 月 27 日
11:00
教 27 − 021
「共走」を基盤とした小学校高学年におけるジョギングの実践
2 年間の実践による変容を中心に
○佐藤 善人(岐阜聖徳学園大学 教育学部)
先行研究によれば、小学校高学年になると持久走に対して消極的な態度を示す児童は増えるようである。山西(2011)
はランナーの楽しみ方として「共走」という概念を提唱しており、ランナーが一緒に同じゴールを目指しているという連
保
教
人
ア
介
帯感をもって走ることが、長い距離を走る運動の楽しさの一つであるとしている。この「共走」の概念を取り入れて体育
授業を構想し、2 つの小学校高学年に対して 2 年間継続して「ジョギング」の実践を行った。具体的には、会話をしなが
301
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
302
ら走ったり、ペアで支え合ったり、時には競争したりした。
実践した授業を、
社会心理学において用いられる「態度」と全身持久力を測定する「20m シャトルラン」とで評価した。
単元開始前と単元終了後に調査した結果、好意的態度と 20m シャトルランの数値は実践を行うごとに向上し、5 年生よ
りも 6 年生で高い値を示した。この結果から、今回の実践は、
「共走」概念を取り入れて実践することの可能性と、高学
年になると敬遠されがちである「持久走」に替わる内容としての「ジョギング」の可能性を示唆したと言える。
E21
[教育]
8 月 27 日
11:15
教 27 − 022
小学生における疾走能力向上のための技術的課題の検討
観察的動作評価による小学 1 年生から 6 年生の疾走動作の分析を通して
○鈴木 康介(早稲田大学大学院)
吉永 武史(早稲田大学)
友添 秀則(早稲田大学)
梶 将徳(早稲田大学大学院)
現行の小学校学習指導要領では指導内容の明確化、体系化が図られ、基礎的な技能を確実に習得させることが強調され
ている。短距離走に関していえば、低学年で「いろいろな方向に走る」、中学年で「調子よく走る」、高学年で「全力で走
る」が技能の内容として示され、これらの技能を確実に習得させるための疾走動作に関する指導内容の具体的な検討が重
要であると考えられる。そこで本研究では、小学生の疾走動作を観察的評価によって分析し、疾走速度と疾走動作の関係
から疾走能力向上に寄与すると考えられる技術的課題について検討した。疾走動作の分析は、2013(平成 25)年 11 月・
12 月に埼玉県内 A 小学校の 1 年生から 6 年生の児童 228 名(男子 121 名、女子 107 名)を対象に行った。分析の結果、
全ての学年において疾走速度と疾走動作の間に有意な相関が認められた。しかし、疾走速度の経年的な増大と動作得点の
変化には一貫性が見られず、疾走速度の経年的な増大は、体格や筋力などの変化の影響が大きいことが示唆された。した
がって、小学生の疾走能力の向上には、本研究で検討した技術的内容を各学年段階に応じて指導することが重要であると
考えられた。
E21
[教育]
8 月 27 日
11:30
教 27 − 023
小学校中学年の走の運動における疾走能力向上のための指導プログラムに関する研究
○梶 将徳(早稲田大学大学院)
吉永 武史(早稲田大学)
鈴木 康介(早稲田大学大学院)
現行の小学校学習指導要領(文部科学省、2008)では指導内容の体系化ならびに明確化が図られた。陸上運動系の短
距離走に関しては、学年段階ごとに「いろいろな方向に走る」
、
「調子よく走る」
、
「全力で走る」ことが指導内容として
位置付けられた。しかし、短距離走に関する科学的な研究の成果が体育授業においてほとんど利用されていない(伊藤、
2009)との指摘があるように、振り戻し動作などの疾走動作の改善に必要な技術の習得を主目的とした授業実践は少な
い状況にある。そこで本研究では、小学校中学年における疾走能力向上のための指導プログラム(8 時間単元)を作成し、
その有効性について検討した。実験授業は、2014(平成 26)年 2 月から 3 月にかけて、東京都内の A 小学校 4 年生児
童 37 名(男子 20 名、女子 17 名)を対象に実施した。1 時間目と 8 時間目に 50m 走の測定を実施し、タイムおよび疾
走動作得点の比較によってプログラムの有効性を検証した。その結果、単元前のクラス全体の平均タイムが 9.78 秒であっ
たのに対し、単元後の平均タイムは 9.87 秒と 0.09 秒の低下がみられ、疾走動作得点に関しても単元前後に低下がみら
れた。
11 体育科教育学
E21
[教育]
8 月 27 日
11:45
教 27 − 024
ハードル走学習時において学習者が意識する言葉、支援者からかけられる言葉の有効性に
ついて
○柴山 慧(広島商船高等専門学校)
赤松 喜久(大阪教育大学)
哲
史
本研究では小学校体育における陸上運動のなかでもハードル走に注目し、指導ことばを数種類用意したうえで、教員から
の一斉指導と学習者同士の相互の学びあいでそれを活用し、その有効性について検討した。まず、筆者が担当する体育科
教育法Ⅱを履修しているS大学の学生 4 クラスの計 141 名を a グループ(「ト、トン、トン、トン」という指導ことばを使用)
、
社
b グループ(
「トン、1、2、3」という指導ことばを使用)、c グループ(「0、1、2、3」という指導ことばを使用)、d グルー
プ(指導ことばを使用しない統制群)の 4 グループにわけて授業を実施した。そして、50m ハードルのタイム測定と 3
歩で走ることができたインターバルの距離を記録し、授業後は質問紙調査法で学習者の走りやすさに対する主観的評価の
調査も実施した。その結果、ハードル間インターバルを走るときに、
「0、1、2、3」という指導ことばを教師が使用し、
学習者自身や学習者同士も使用した場合、指導ことばを使用しなかったグループに比べてタイム向上の有効性がうかがい
知ることができた。
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
9:00
心
生
バ
教 28 − 025
日々の実践を有形にする研修を通して成長する教員(第 2 報)
○濱田 晴明(新潟県佐渡市立真野小学校)
教育現場では、理論に裏付けされた実践の重要性を痛感している教員は多い。また、自分自身の実践から理論を構築し
たいと考えている教員も多い。しかし、実際は、生活指導上の問題などの対応から、本来の仕事である研修の時間が確保
経
発
できない状態である。また、大学等の連携も考えられるが、その時間の確保が難しい状態である。今後、このままでは、
それぞれの指導の原理原則を理解しないまま授業を行う教員が増え、想定外の児童の反応が出た時に応用が利かないなど、
教員の指導力低下が懸念される。
測
そこで、本研究の第 1 報では、これまでに理論と実践を論文にまとめた経験のある教員が、同僚に OJT を通し、同僚
の授業実践を、理論と結びつけて指導してきた結果、飛躍的に成長した教員のことを報告した。第Ⅱ報の本研究では、成
長した教員による実践発表を聞いた約 100 名の現職教員と、これから理論と実践をまとめていこうとする若手教員のア
ンケートを分析し、日々の実践を有形にすることを通して成長するための有効な一方法や、その阻害となる要因を分析し、
教育現場に生かしていくことを目的とする。
保
詳しい内容については、当日の発表とする。 北桐ホール[教育]
8 月 28 日
9:15
教
教 28 − 026
体育教師教育における単元構造図の活用とその効果(1)
現職教員に対する教員研修を事例として
○清水 将(岩手大学)
日野 克博(愛媛大学)
糸岡 夕里(愛媛大学)
方
佐藤 豊(鹿屋体育大学)
栫 ちか子(鹿屋体育大学)
人
ア
授業づくりをサポートする代表的ツールである学習指導案は、単元を見通した授業の全体像を踏まえた展開案になって
いるとは限らず、年間計画を考慮した学習内容の配置や指導と評価の一体化、評価の効率化が十分に図られているとはい
えないことも多い。単元構造図は、学習指導要領の確認、図式化、評価規準の設定のステップからなる授業の図式化ツー
介
ルであり、学習内容を明確化・体系化しながら、単元計画を作成し、各単位時間の計画に落とし込むために指導と評価の
一体化や評価の効率化を推し進めることができる。そこで、本研究では、現職教員の教員研修において単元構造図を利用
303
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
し、授業の全体構造を把握することが単位時間の具体的な授業づくりにどのような影響を及ぼすのかを明らかにすること
にした。現職教員に単元構造図を利用したワークショップを行い、その中でどのようなことが学ばれ、何が課題としてと
らえられているかを質問紙により調査した。その結果、評価の機会や方法が洗練され、目標を具体化するために教材や教
師の働きかけ、発問、子どもたちの学習形態が考慮され、単元構造図が現職教員の授業づくりに影響を及ぼすことが示唆
された。
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
9:30
304
体育教師教育における単元構造図の活用とその効果(2)
教員養成における保健体育科教育法を事例として
○日野 克博(愛媛大学)
清水 将(岩手大学)
栫 ちか子(鹿屋体育大学)
佐藤 豊(鹿屋体育大学)
糸岡 夕里(愛媛大学)
近年、多くの教員養成系大学・学部では、カリキュラムのなかに模擬授業を導入して実践的指導力の育成を図っている。
その模擬授業では、1 単位時間の授業計画を立案し、その実践を通して授業づくりや指導技術に関する知識や技能の向上
を図っている場合が少なくない。しかし、
「単元を見通してどのように授業を構想するか」「単元のなかに指導と評価をど
のように位置づけるか」といった単元を見通した授業づくりや模擬授業の実践はまだ少ない。そこで、本研究では、教員
養成段階において、単元構造図の作成と模擬授業を通じて、単元を見通した「指導と評価」の計画と実践に取り組んだ。
単元構造図とは、単元全体を俯瞰しながら授業の流れと指導内容を具体化した図であり、教員研修のツールとして活用さ
れている。このツールを教員養成の保健体育科教育法の授業で活用し、単元を見通した授業づくりが、学生の意識にどの
ように影響したかを質問紙による調査で検証した。その結果、目標設定の具体化、指導内容の精選、指導内容の明確化、
学習指導要領の内容理解、評価計画の必要性等で学生の意識が高まり、単元構造図が体育の授業づくりに影響を及ぼすこ
とが示唆された。
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
9:45
教 28 − 028
体育教師教育における単元構造図の活用とその効果(3)
大学カリキュラムにおける検討事例
○栫 ちか子(鹿屋体育大学)
日野 克博(愛媛大学)
佐藤 豊(鹿屋体育大学)
清水 将(岩手大学)
糸岡 夕里(愛媛大学)
単元構造図は、学習指導要領の確認(指導すべき内容とその具体化のプロセス)、指導のタイミングと学習過程の検討、
評価規準の設定を 1 枚の紙面上で検討することができる授業の図式化ツールである。すでに現職教員を対象とした研修
会や大学の体育科教員養成教育の現場等で活用されている。本研究では、大学の保健体育科教育法の授業において、体育
科教員養成で求められる知識や技能を想定した上で段階別に評価項目を設定し、大学における単元構造図に基づく授業設
計の可能性を検討した。受講する学生は、体つくり運動、ダンス、体育理論、保健についての単元構造図を用いた単元計
画及び指導案の作成を行い、模擬授業の実施と、模擬授業を撮影した映像による振り返りを連続して行った。授業の成果
については、受講生によるレポート、アンケート調査を手がかりとして検討した。その結果、設定した評価項目に基づき、
単元構造図の作成、模擬授業、映像視聴という一連の流れを反復することで、教授技術、単元構成力、指導内容と教材の
関連、自己課題の発見等で学生の理解が深まった。このことから、単元構造図の活用が大学の授業づくりに有効である可
能性が示唆された。
介
教 28 − 027
11 体育科教育学
E21
[教育]
8 月 28 日
9:00
教 28 − 029
哲
学校体育の未来像(Ⅱ)
全生活型体育観に着目して
○廣橋 義敬(上総教育研究所)
今宮 公雄(袖ケ浦市教育委員会)
民内 利昭(東京大学大学院)
齋藤 冨美枝(千葉市立大木戸小学校)
森 雅之(木更津市立岩根小学校)
演者らは長年にわたり、真に人間の生活・生存に役立つ体育を確立するための根本となる体育観の追究を目指して研究
史
社
を推進し今日に至っている。その結果、今日主流となっているスポーツ型体育観や健康・体力型体育観をも内包できる広
い捉え方に立った全生活型体育観を確立することができた。この体育観は、人間の全生活に含まれる活動・摂取・休養の
3 本柱によって構築されるものである。一方、今日の学校体育は、全体としてスポーツ型体育観によって構築されている
とみることができよう。しかも、学校体育から生涯スポーツへの移行が唱導されているように、体育実践とスポーツ実践
との区別さえも十分確立されないままになっているとみることができよう。したがって、体育的スポーツ・ダンス(体育
運動)が如何に整備されても、体育運動だけでは学習指導要領に示されている体育科の目標を効果的に達成できるとは考
えられない。ここでは、
第 55 回学会大会において示した学校体育の未来像(Ⅰ)を全生活型体育観を基礎にして検討を加え、
その具備すべき基本条件を①目的・目標 ②指導内容 ③学習・実践 ④指導・管理などに着目して示すことにする。
E21
[教育]
8 月 28 日
9:15
教 28 − 030
「開かれた学校」における新しいスポーツのあり方に関する研究
○金内 祐太(東京学芸大学)
心
生
バ
経
発
現在の学校スポーツ現場では、近代化に伴い、多種多様な問題が発生している。しかし、実情は世間の目には触れるこ
とのないまま、学校内部で多くの課題を抱えながら現場の職員のみで対応しているという、「閉鎖的な学校」であるのが
現状である。今後、よりよい学校となっていくためには現場で巻き起こっている問題をさらけ出し、地域や家庭が一体と
測
なり取り組む「開かれた学校」を作っていく必要がある。更には、企業や大学が一体となり、支援を行い、学校と外部の
連携からよりよいものを作り上げていく仕組みを模索したい。
そこで本研究では、ある学校との先進的な取り組み事例をもとに現状を把握し、現在の学校の抱える問題を改めて調査、
整理するとともに、地域や大学さらには企業が連携した「システム」構築という形での、より総合的な方向性を提示する
ことによって、
「開かれた学校」におけるスポーツの可能性を検討したい。
E21
[教育]
8 月 28 日
9:30
教 28 − 031
筑波大学大塚地区「四校研」小・中・高 体育・保健体育科の一貫性について考える
○長岡 樹(筑波大学附属中学校)
方
保
教
人
筑波大学大塚地区にある附属小・中・高等学校では、大学を含めた「四校研」を組織しており、体育科・保健体育科で
は 2005(平成 17)年度より、9 回にわたり「小・中・高の授業の一貫性」をテーマに合同研究会を開催してきた。そ
こでは、1 つのテーマに対し、小中高がそれぞれ授業を公開し、協議を行ってきた。
ア
「四校研」の中の三校である附属小・中・高は各校では組織が異なり、さらに生徒はそのまま全員が上級学校へ進学す
る制度ではない。故に、
異なる組織との一貫性を持たせることの難しさを感じてきた。しかし、生涯にわたる豊かなスポー
ツライフの実現に向けて、
小学校から高等学校までの 12 年間を見通して、校種間の接続をより密接にするという考え方は、
介
これから一層重んじられる。
今回の発表では、これまでの実践と一貫性について考えたときの今後の課題を報告したい。
305
哲
史
E21
[教育]
8 月 28 日
9:45
教 28 − 032
ペルーにおける現行の学校体育カリキュラムの検討
策定過程に着目して
○久我 アレキサンデル(愛知県立大学大学院)
丸山 真司(愛知県立大学)
近年のペルーにおける教育動向の重要な節目として、教育に関する包括的な法律である「総合教育法」が 2003 年に改
社
定されたことが挙げられる。そして現行の学校体育カリキュラムである「教育指針―体育科―」は 2003 年総合教育法に
則って作成された「普通基礎教育・国家カリキュラム設計」(2005、2008)を基に構成されている。従って、現行の学
校体育カリキュラムは 2003 年総合教育法の理念を踏襲するものであると推察される。そこで、本研究では、ペルーにお
心
生
バ
経
発
ける現行の学校体育カリキュラムの策定過程がその目標や内容にどのように影響・作用しているのかを分析・検討するこ
とを目的とした。研究方法としては、教育全般に関する上位規定的な性質をもつ文書を順に紐解いた上で、ペルーの現行
の学校体育カリキュラムである「教育指針―体育科―」(2010)の「目標」及び「内容」を検討することとした。その結
果、現行の学校体育カリキュラムは、ペルーにおいてかねてより指摘されてきた「制度と実態の乖離」の克服に課題と限
界をもつものであることが明らかとなった。
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
10:00
教 28 − 033
高等学校「体育理論」領域における授業の試み
単元「トップアスリートの栄光と没落」の事例を基にして
○松田 広(早稲田大学大学院スポーツ科学研究科)
友添 秀則(早稲田大学スポーツ科学学術院)
平成 25 年度より高等学校学習指導要領が完全実施され、
「体育理論」において、中学との接続を考慮し指導内容や授
業時数の配当が示された。そのため、授業の確実な定着が求められている。また、高校においては、社会的視点から指導
内容が強調され、現代スポーツの社会的意味を生徒に考察させることは、重要であると考えられる。友添(2012)は現
測
代スポーツの問題とし、競技スポーツが内包する「勝利至上主義とドーピング」をあげ、ドーピングは、スポーツの世界
を崩壊させるだけでなく、アスリートに憧れる青少年に影響を与えることが考えられると述べている。また、真田(2008)
は「体育理論」で、ドーピングを取り上げることで、倫理的な基準を設ける大切さ、科学の発達と幸福との関係について
方
保
教
人
ア
思いをめぐらせることもできると述べている。そこで本研究は、教材開発した単元「トップアスリートの栄光と没落」の
事例を基に、授業実践し、生徒の授業評価から成果と課題を考察することを目的とする。
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
10:15
教 28 − 034
指導要録が有する機能に関する研究
「観点別学習状況」欄及び「評定」欄に対する教師の意識調査の分析から
○南島 永衣子(びわこ成蹊スポーツ大学・立命館大学大学院) 大友 智(立命館大学)
梅垣 明美(大阪体育大学・立命館大学大学院)
深田 直宏(桐生市立神明小学校・立命館大学大学院)
上田 憲嗣(吉備国際大学・立命館大学大学院)
吉井 健人(群馬大学教育学部附属小学校・立命館大学 BKC 社系研究機構客員研究員)
指導要録は、外部への証明機能、及び指導に生かす機能を有するように設定されている(南島ら、2013)が、それら
が、実際にどのように働いているのかは、明らかでない。この点を踏まえ、本研究では、指導要録の活用状況の分析を通
し、指導要録が有する機能を明らかにすることを目的とした。指導要録には、①外部への証明機能を強く有すると考えら
介
れる「評定」欄、②指導に生かす機能を強く有すると考えられる「観点別学習状況」欄が設定されている。教員は、これ
ら 2 つの欄を(1)外部への証明機能を有すると理解しているのか、
(2)指導に生かす機能を有すると理解しているのか、
これら 2 つの観点を分析枠組みとして設定し、アンケート調査を行った。調査対象者は、長崎県内の小学校から高校の
教員とした。
306
11 体育科教育学
その結果、小学校では、指導に生かすために「観点別学習状況」欄を活用していると認識しており、外部への証明機能
として「観点別学習状況」欄及び「評定」欄は活用していないと認識していた。中学校及び高校では、「観点別学習状況」
欄及び「評定」欄を外部への証明及び指導に生かすために活用していると認識していた。
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
10:30
史
教 28 − 035
小学校体育教師の安全管理能力と教師経験の相関について
○中村 有希(東京学芸大学研究生)
哲
鈴木 直樹(東京学芸大学)
学校管理下の災害・事故は年々増加傾向である(江澤,2012)。また、子どもたちを生命の危機にさらすような犯罪事
社
心
件も発生している(松川、2008)
。このような現状から、2008 年に「学校保健安全法」が制定され、教育現場の学校安
全の充実が強く叫ばれてきた(松川、2008)
。しかし、内田(2007)によれば、学校安全への対象が不審者犯罪対策ば
かりに固定化され、授業時間などに対する学校安全への関心が希薄であることが指摘されている。一方で、授業時間にお
ける事故は体育授業中が最も多い(藤田、2010)
。特に、小学校の体育授業における死亡・重度の事故は、中学校や高等
学校に比べて 2 倍の割合を示している(文部科学省、2013)
。それにも関わらず、小学校教師は体育指導中における安
全への配慮が低いことが加登本ら(2012)によって明らかにされている。
そこで、本研究では、小学校教師の体育における安全管理能力と教員の成長との相関を明らかにし、安全管理能力育成
の為の基礎資料を得ることを目的とした。研究は、無作為に抽出した小学校の体育授業時の事故発生状況について指導し
ていた教師の経験年数毎に整理をし、比較した。詳細の結果は、当日に報告する。
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
10:45
バ
経
発
教 28 − 036
エキスパート・ティーチャーが備える職能の形成要因に関する研究
○本多 壮太郎(福岡教育大学)
生
兄井 彰(福岡教育大学)
前回の研究では、
「エキスパート・ティーチャー」として選定した中学校体育教師が、体育の授業作り及び実践におい
て求められる職能として、
「情熱・向上心」
「運動・運動の楽しさに関する知識」
「授業設計力」
「実技力・示範力」「集団
測
方
統率力」
「観察力」
「動きのイメージの伝達力」
「コミュニケーション力」の 8 つを捉えていること、さらにこれらの関係
性について明らかにした。本研究では、エキスパート・ティーチャーが備える職能の形成要因の分析結果から、上記の職
能に関係する要因を抽出し、
その関係性について明らかにすることを試みた。選定した 25 名のエキスパート・ティーチャー
への質問紙及びインタビュー調査の分析結果からは、職能形成要因として、「豊富な運動経験」「環境・立場」「研修・研究」
「同僚」
「学習者の変容」
「思考と試行のサイクル化」が挙げられた。特に、「研修・研究」への参加や取り組み、先輩教員
を主とする「同僚」からの学び、日々の授業作り・実践における「思考と試行のサイクル化」は、上記に挙げた職能の多
くを形成していく上で大きな要因となっていた。
E21
[教育]
8 月 28 日
10:00
教
人
教 28 − 037
韓国における学校スポーツクラブ活動に関する研究
人性教育に着目して
○李 賢承(早稲田大学大学院)
保
友添 秀則(早稲田大学スポーツ科学学術院)
韓国では、学校暴力の根絶対策から全国的に人性教育が強調されている。特に中学校では、学校暴力における発生率が、
ア
介
小学校の 7 倍 , 高等学校の 2 倍であった(関係合同部,2012)
。そのため、学校暴力の防止策の一つとして、中学校の教
育課程の改訂が行われた。例えば、中学校では、これまで生徒によって自主的に行われていた学校スポーツクラブを、学
307
哲
史
校の授業時間に「学校スポーツクラブ活動」という名称で履修させた(キムギチョル,2012)。
しかし、学校スポーツクラブ活動における人性教育の実施方法については、統一されていないため、現場の教員に混乱
をもたらしている(キムギチョル,2012)
。先行研究では、学校スポーツクラブ活動で行われている人性教育の現状につ
いての考察が散見される。しかし、何故、学校スポーツクラブ活動を通して人性教育が行われるようになったのか、その
経緯についてはほとんど明らかになっていない。
したがって、本発表では、学校スポーツクラブ活動を通して、人性教育が行われたようになった歴史的な経緯について
明らかにすることを第一の目的とした。また、スポーツクラブ活動で求められる人性教育の徳目とは何なのかを明らかに
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
308
した。
E21
[教育]
8 月 28 日
10:15
教 28 − 038
カンボジア小学校における運動会の効果
ソーシャル・ネットワーキング・サービスの活用に着目して
○山平 芳美(国際武道大学)
文部科学省は平成 26 年度より平成 32 年(2020 年)にかけて、開発途上国に体育を普及させるためのカリキュラム
策定に着手する。開発途上国の児童・生徒が抵抗なく体育に親しめるよう、体育に関する指導書の作成や教員養成など多
岐にわたる支援が計画されている。こうした社会的関心の高まりと、未だ学校体育が定着していないカンボジアにおいて、
運動会を通じた学校体育の普及を目指す取り組みは合致するものである。そこで本研究では、シハヌークビル州(SHV)
の小学校で開催した運動会の効果とその結果を報告する。運動会開催後、小学校教員及び SHV 州教育省担当者が、ソー
シャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて運動会の様子を掲載していることが確認された。また、現地小学
校教員より運動会に関するマニュアル本が必要であるとの意見があげられた。今後作成する運動会マニュアル本は著作権
フリーとし、SNS を通じての共有化がのぞまれる。SNS を活用した情報の共有化が、運動会を通じて学校体育の定着を目
指す取り組みの一助となり得る可能性が示唆された。
E21
[教育]
8 月 28 日
10:30
教 28 − 039
運動部活動における望ましい指導の在り方に関する研究
○深見 英一郎(早稲田大学)
岡澤 祥訓(奈良教育大学)
運動部活動は、学校教育の一環として生涯にわたる健全な心と身体を培い、豊かな人間性を育む重要な教育活動である。
2013 年 文部科学省は、運動部活動の在り方に関して、生徒と意見交換し、生徒の意見を十分に反映させる、生徒が自ら
目標を設定し、
工夫して活動に取り組むことが重要であると指摘した。しかし、心身の成熟度が多様な中・高校生に対して、
ステレオタイプに生徒の自主性を重んじる指導方針が果たして有効なのか。特に中学生では指導者がある程度、主導的に
目標と内容を定める必要があるかもしれない。果たして、実際に学校現場で行われている運動部活動では、どのような方
針で運営されているのか。そこで本研究では、指導者及び生徒に対してアンケート調査を行い、運動部活動の望ましい指
導の在り方を明らかにしようとした。運動指導に関する先行研究で使用された質問票から 45 の質問項目を抽出し調査票
を作成した。10 府県の中学・高校 各 18 校の約 2500 名(H.26.4.23 現在)の指導者及び生徒を対象とした。その結果、
生徒及び指導者の考え方により、多様な指導の在り方が存在すること、また生徒と指導者の間での意思疎通が重要である
ことが示唆された。
11 体育科教育学
E21
[教育]
8 月 28 日
10:45
教 28 − 040
学校運動部活動に関わる外部指導者に必要な資質
○青柳 健隆(早稲田大学大学院、日本学術振興会)
柴田 愛(筑波大学)
岡 浩一朗(早稲田大学)
石井 香織(早稲田大学)
荒井 弘和(法政大学)
近年、青少年の健全育成に資する運動部活動をサポートするため、外部指導者の活用が推進されている。しかし、体罰
哲
史
社
や勝利至上主義の広がりなど、学校外の人材を教育現場に用いることへの不安も根強い。的確な選定を行うためにも、外
部指導者に求められる資質を明らかにする必要がある。本研究の目的は、教員が運動部活動の外部指導者に求める資質を
定量的に評価することである。全国の教員 1,880 名(公立中学校または公立高等学校に勤務)を対象に、郵送法による
自記式質問紙調査を実施した。質問項目は、教員を対象に行ったインタビューより抽出された、外部指導者に求める資質
52 項目である。それぞれの項目に対し、どの程度の教員が重要だと感じているかについて、その割合を算出した。8 割
程度の教員は外部指導者に対し、性格、規則の順守、教育的な思考などの人間性や、専門的な指導能力、意思疎通や顧問
のサポートなどの協調性を求めていた。反対に、年齢や職業などの属性はあまり重視されていなかった(3 割以下)。外
部指導者の選定においては、外部指導者の内面的特徴が判断できる詳細な情報を教員に提供し、採用前に面接を行うなど
心
生
の工夫をすることが重要である。
バ
教 28 − 041
経
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
13:00
幼児期におけるコオーディネーション能力の発達的特性に関する研究
定位能力・分化能力に着目して
○加納 裕久(愛知県立大学大学院)
丸山 真司(愛知県立大学)
調整力が顕著に向上する幼児期は、コオーディネーション能力の視点から発達を評価することが必要である。とりわけ
定位・分化能力は幼児期の運動発達において重要な能力であるが、これらの能力の実態は解明されておらず、測定する方
発
測
法も十分に開発されていない。本研究はドイツの先行研究を基にコオーディネーションテストを開発、実施し、幼児期に
おける定位・分化能力の発達的特性を明らかにすることを目的とした。被験児は 3.0 - 6.5 歳児の 283 名とし、評価基
準値は学年区分及び年齢区分を採用した。本研究の結果、投・跳動作のテストにおいて有効な結果を得た。各テストの年
齢別経年変化は、著しく向上する前の時期に停滞や低下が認められた。また、男児は投動作、女児は跳動作に関するテス
トにおいて、とりわけ 4 - 5 群(4.5 以上- 5.5 歳未満)に著しい向上が認められ、投動作は男児の方が女児よりも、跳
動作は女児の方が男児よりも発達が半年早いことが示された。これらのことから、幼児期におけるコオーディネーション
能力の定位・分化能力は 4 歳半頃から発達することが明らかとなり、言語や認識が発達する「4 歳半の節」と関わってい
ることが示唆された。
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
13:15
方
保
教
教 28 − 042
小学校低学年における「運動のリズム化能力」と技能発揮の関係性について
コーディネーション運動実施の有無と技能差・性差に着目して
○七澤 朱音(千葉大学教育学部)
人
ア
子どもたちの体力や運動能力の低下が危惧されて久しい。日常生活における子どもたちの怪我は、これらと半比例する
かのように増加しているが、この原因は体力低下よりもむしろ「身のこなし」にあり、運動を一連のリズムと捉える「動
きのリズム化能力(三木、2005)
」の低下が大きく影響しているとされる。
介
本研究は、コーディネーション運動実施の有無と新体力テスト(2 種目)の結果をあわせて分析し、低学年の児童がコー
ディネーション運動を実施することの効果を明らかにすることを目的とした。対象は、小学校第 1 学年 3 学級計 104 名で、
309
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
検証授業は平成 25 年 7 月から 10 月にかけて実施した。授業導入時(10 〜 15 分)におけるコーディネーション運動を
実施した群と実施しない群にわけ、敏捷性(反復横跳び)と瞬発力・敏捷性(50m 走)の両群の変容に、技能差と性差
を加味して分析した。その結果、技能下位の特に男子児童に、コーディネーション運動の効果が最も現れることが明らか
になった。
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
13:30
教 28 − 043
水泳水中運動の系統性 , 順序性を考える
有用性と目的の観点から
○合屋 十四秋(愛知教育大学名誉教授)
野村 照夫(京都工芸繊維大学)
松井 敦典(鳴門教育大学)
佐野(1977)は「水泳観や水泳指導の目的の違いを理論的に整理し、水泳運動におけるどのような技術単位を、どの
ような指導順序で教えていったらよいのか、技術指導の系統性や順序性の重要性を指摘している。現在の泳法指導はバタ
足から始まり 25m クロール完泳がほとんどであろう。各種泳法の学習への導入時には、水中での姿勢(伏し浮き・仰向け・
垂直など)と、浮き沈み(初歩的な呼吸法を含む)の理解と実践を経由しておく必要がある(合屋ら 2012)
。これは水
中安全文化(K, Moran 2009)の視点から自分の命は自分で守る術を教育し、身につけさせるべき実用性の高い技術要素
であると考える。従って、クロールに始まり平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライと展開する順序性には「泳げること」に重点が
置かれ、「溺れないこと」の視点やノウハウを同時展開する系統性を考慮して指導プログラムを構成すべきである。本稿
ではこれらの有用性や水泳水中運動の目的を再考する提案を試みることにした。
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
13:45
教 28 − 044
学校水泳に潜在するリスクとその管理
安全水泳コンセプト導入の提案
○松井 敦典(鳴門教育大学大学院)
内田 良(名古屋大学大学院)
南 隆尚(鳴門教育大学大学院)
学校プールは「プールの安全標準指針」
(文部科学省・国土交通省、2007)および「遊泳用プールの衛生基準について」
(厚
生労働省、2007)に基づき管理され、
「学習指導要領」及びその解説で示された内容が取り扱われ、児童・生徒に授業を
保
教
はじめとする各種学習プログラムとして提供されている。プールにおける児童生徒の死亡事故は近年でもなお少なからず
発生し、国や地方公共団体の定める管理基準等が満たされていたかが問題となる。しかし、一見これら基準等が満足され
ている場合においても事故が起こるケースが発生し、プール管理や学習指導における様々な要因(水位、場所、用具、学
習内容と獲得技能)が、その場における潜在的なリスクと関係し、一定の危険性を発生させていることがわかってきた。
2012 年に発生したプール事故を事例として、プール指導におけるリスクとその予防について報告するとともに、水中安
全力獲得と事故予防を含めた泳能力を取り扱う新しいコンセプトとその学習内容についての提案を試みる。
人
ア
介
E21
[教育]
8 月 28 日
13:00
教 28 − 045
小学校低学年におけるネット型のボール投げゲームの学習可能性
投動作の習得を中心に
○吉永 武史(早稲田大学スポーツ科学学術院)
鈴木 康介(早稲田大学大学院スポーツ科学研究科)
西村 正之(熊本大学教育学部附属小学校)
松岡 修三(早稲田実業学校初等部)
近年、子どもの体力低下に下げ止まりの傾向がみられつつあることが指摘されている。しかし、基本的なボール操作の
一つであるボールを投げる動作(以下、「投動作」と略す)の実態はいまだ深刻な状況にある。また、現行の小学校学習
310
11 体育科教育学
指導要領(文部科学省 ,2008)では、
「型」に共通する動きや技能を系統的に身に付けるという意図から、
「ゴール型」
「ネッ
ト型」
「ベースボール型」
によって内容が構成されている。低学年のゲーム領域においても、中学年のゴール型ゲームやベー
スボール型ゲームへの発展を想定した「ボール投げゲーム」や「ボール蹴りゲーム」が例示されているが、ネット型ゲー
ムへの発展を想定した内容は示されていない。そこで本研究では、小学校低学年の児童に対して投動作の習得を意図した
ネット型のボール投げゲームの教材を提供し、その学習可能性について検討した。授業は 2014 年 3 月 4 日から 10 日に
かけて、埼玉県内の A 小学校 1 年生 2 学級 64 名(男子 29 名、女子 35 名)を対象に、4 時間単元で実施した。投動作
哲
史
に関する成果を検証するために、単元の始めと終わりにボール投げの測定を実施した結果、全体平均で 1.1m の伸びが確
社
認された。
E21
[教育]
8 月 28 日
13:15
教 28 − 046
ネット型スポーツの一貫指導に関わる研究
小学校体育科におけるバドミントンの教材化にむけて
○岸 一弘(共愛学園前橋国際大学、新潟大学大学院博士後期課程) 牛山 幸彦(新潟大学)
大庭 昌昭(新潟大学)
現在わが国の教科体育におけるバドミントンは、中学校と高等学校の学習指導要領の球技領域でネット型種目として例
示されている。小学校との学習の系統性について中学校学習指導要領保健体育編をみると、
「ボールや用具の操作」
と
「ボー
ルを持たない時の動き」が例示されている。その内容は、ネット型に共通する用具の操作及び動きと述べられているもの
の、一部分を除けばバレーボール(ソフトバレーボール)に関するものである。高等学校学習指導要領保健体育編につい
ても、ほぼ同様な記述となっている。小学校体育科では、現行学習指導要領から発達段階を踏まえた指導内容の体系化を
重視したといわれている。球技(ネット型)の内容の体系化については、文部科学省発行の実技指導資料が、そのことを
詳細に著しており大変参考になる。しかしながら、小学校のゲーム及びボール運動領域にはラケットを操作する種目の例
示がないために、ラケット系スポーツ種目を中学校で初めて経験する場合には、多くの生徒が運動技術の学習場面でつま
心
生
バ
経
発
ずいてしまうことが考えられる。そこで本研究は、小学校体育科におけるバドミントンの準備・初期段階プログラムを提
測
案することが目的である。
E21
[教育]
8 月 28 日
13:30
教 28 − 047
方
大学体育における学修成果に関する研究
○奈良 隆章(筑波大学体育系)
金谷 麻理子(筑波大学体育系)
嵯峨 寿(筑波大学体育系)
松元 剛(筑波大学体育系)
大学体育における教育目標の達成状況を把握するために、T大学の一般体育を履修した 276 名を対象に、最終授業終
了時に課したレポートについてデータマイニング法を用いて分析を行った。
「T 大学の体育を受講し、何を学び身につけたか」という質問に対し、論述形式で回答させた結果、T 大学が掲げる教
育目標のうち「健康・体力およびスポーツ技術に関する基礎的知識や思考力、実践力の養成(目標 1)」、「豊かな心と社
会性の醸成(目標 2)
」
、
「逞しい精神、高い倫理観の育成(目標 3)」、
「自立的に自己を成長させ続ける力の涵養(目標 5)
」
ではそれぞれ 50%以上の学生が関連するキーワードを記述していた。特に目標 1 および目標 2 は 70%以上の学生が関
連するキーワードを記述していた。一方、
「スポーツ文化の知的解釈力・鑑賞力の涵養(目標 4)
」では関連するキーワー
ドの記述が 22%にとどまった。
保
教
人
ア
また、種目別にみると、野外運動やソフトボールのような集団種目で目標 2 に関連するキーワードの記述が多くみら
れた。
介
311
哲
史
E21
[教育]
8 月 28 日
13:45
教 28 − 048
幼児教育者養成校における体育実技の授業内容再考 1
―ダンスの授業受講に期待すること、授業後の印象―
○塩崎 みづほ(秋草学園短期大学)
短期大学における体育実技の授業内容を再考する取組から、表現豊かな幼児教育者の育成をめざし、体育実技において
社
初回の授業でダンスを取り上げた。本研究では、ダンスの授業内容と指導法についての検討を行い、体育実技の授業内容
の再考と、授業改善の一助とすることを目的としている。授業後の質問紙調査から、「ダンスの授業はおもしろい」
「運動
量に満足できる」「ダンスが好きだ」の項目で授業開始前よりそう感じるという割合が高まった。活動内容としてよかっ
心
生
バ
経
たと感じたものは、
「振付を覚えること」
「仲間の作品発表を観ること」「創作活動」が多く挙げられた。授業ノートから、
「新しい友人ができた」
「意見を言えるようになった」といったコミュニケーションをとる機会が多かったことがよかった
というコメントが多くみられた。ダンスの授業が学生にとってよい経験になったことが見受けられた。一方、創作活動に
もっていく指導法の改善も必要であることが示唆された。
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
14:00
教 28 − 049
体育授業における単視点授業ビデオと多視点授業ビデオのリフレクション差異
○林 真愛(金沢大学大学院)
今野ら(2011)によれば、一般に、授業内容やその方法の改善・高度化、教師の実践的力量形成には、授業リフレクショ
発
ンが有効とされている。本研究では、教育実習生による同一時間の体育授業を、教師目線に撮影した単視点授業ビデオと、
教師と生徒の活動の様子を同時に視聴できるように編集した多視点授業ビデオを用いて、教育実習生全体に提示し、授業
リフレクション上にどのような差異を示すかを検証した。各授業ビデオによる個人リフレクションと集団リフレクション
測
の分析から、多視点授業ビデオを用いた授業リフレクションでは、教師行動に加え、生徒の活動の様子や教師と生徒との
関わりにも焦点を当て、リフレクションが促されたことが明らかとなった。また、多視点授業ビデオの有効性を図る学生
の自由記述から、多視点授業ビデオは学生の授業リフレクションにとって有効なツールであることが明らかとなった。さ
方
らに、教育実習生を対象にした授業リフレクションでは、多視点授業ビデオを用い、
「教師」
・
「生徒の活動の様子」・「全
体の授業の様子」というようにビデオを視聴する視点をいくつかに分けて、段階を踏んでリフレクションを行うことが有
効であると考えられた。
保
教
人
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
14:15
教 28 − 050
体育授業における教師の意思決定の思考過程に関する研究
○石塚 諭(お茶の水女子大学附属小学校)
鈴木 直樹(東京学芸大学)
本研究の目的は、小学校体育授業において教師が「何を」「どのように」捉えて状況や文脈に即した意思決定している
のかという意思決定に至る思考プロセスを明らかすることである。対象は、教職経験 5 年目以上で中学校または高等学
ア
校の保健体育の教員免許を所持している小学校教師 7 名とした。
本研究では、できるだけ教師が授業中に認知していたことを想起できるようなアングルで撮影した映像を用いた再生刺
激法を用い、授業後にインタビューを行った。得られたデータは、吉崎の意思決定モデルをもとに分析を行った。 分析
介
の枠組みに従って作成された意思決定モデルは、教師が「何を」「どのように」認知・解釈したかというプロセスを類似
したプロセスごとのまとまりに分類することでその特徴を示すこととした。その結果、「観察-規準準拠型思考プロセス」
「観察-規準生成型思考プロセス」
「相互作用-規準準拠型思考プロセス」
「相互作用-規準生成型思考プロセス」の 4 つ
の思考プロセスがあることが明らかとなった。これらは、教師の専門的力量と考えることができ、特に、「相互作用-規
312
11 体育科教育学
準生成思考プロセス」が特徴であることが結論づけられた。
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
14:30
哲
教 28 − 051
体育指導における学習者の多様性に対する教師の認識に関する調査①
○工藤 悠仁(東京学芸大学大学院)
鈴木 直樹(東京学芸大学)
史
社
特別な教育的ニーズのある児童・青年を、大多数の児童を対象とした教育制度に受け入れることを意味しているインク
ルーシブ教育(UNESCO、2005)に注目が集まっている。体育でもその理念を取り入れ、インクルーシブ体育として発
展してきた(草野、2003)
。一方でインクルーシブ体育への効果の認識や戸惑いが教師間で存在しており、実践が広がっ
心
ているとはいえない。また、教師のインクルーシブ教育によって生まれる多様性に対する意識は年齢、知識、経験によっ
て異なるとされ(金山、2014)
、個々のニーズのみとりの前提となる多様性への認識があいまいである点が問題とされる。
そこで、本研究では、体育を指導する教師が学習者の多様性をどのように認識しているかについて明らかにすることが
目的である。研究の詳細は、当日報告する。
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
14:45
生
バ
教 28 − 052
小学校教師の持つ実践的知識が意思決定と教授行為に及ぼす影響
2 名の教師が行った 2 つのゴール型ボールゲーム単元を事例にして
○福ヶ迫 善彦(流通経済大学スポーツ健康科学部)
学習内容や教材といった変数が同じであっても、教師によって学習成果に大きな差が生まれるのはなぜだろうか。教師
経
発
にとって授業は、学習活動で生起するさまざまな問題の表象と解決の営みといえる。ひとたび授業が始まれば、授業計画
は背後に退く。そして、教師の問題解決に向けた様々な意思決定は実践的知識に支えられて学習成果に大きな影響を及ぼ
す。本研究は、教師の持つ実践的知識が意思決定と教授行為へ及ぼす影響を検討した。
測
被調査者の教師は同じ地域の A 教師と B 教師であり、2 名の教職歴は 12 年であった。A 教師は体育学部を卒業し、体
育授業研究を熱心に取り組んでいた。教師と子供を除く多くの変数を統制するために、A・B 教師と学習内容、教材、教具、
単元計画を検討し、同意を得て実践した。その結果、A 教師は 70%水準で学習成果を達成した。よい体育授業の基礎的
方
条件では、A・B 教師間に有意な差が見られなかった。一方で、中心的学習内容に関連する具体的 FB は、A 教師が有意に
多かった。出来事における教師の言葉を比較すると、A 教師は状況に応じて的確に FB を与えていた。分析結果から A 教
師の持つ実践的知識が学習成果に強く影響したといえる。
E21
[教育]
8 月 28 日
14:00
教
教 28 − 053
リズムを手がかりとした現代的なリズムのダンスの授業開発
中学校第 1 学年を事例として
○岡本 和隆(東京都足立区立上沼田中学校)
堀田 諭(東京大学大学院)
保
酒本 絵梨子(自由学園最高学部 / 東京学芸大学連合大学院)
本研究の目的は、中学校においてリズムを手がかりとした現代的なリズムのダンスの授業を開発・実践し、その特質を
人
ア
明らかにすることである。平成 24 年度より中学校でダンスが男女必修となり、これまでにも現代的なリズムのダンスの
多様な授業実践がなされてきた。そこでは、現代的なリズムの曲をまず流して仲間と自由に踊る実践やヒップホップの動
きやステップをまず習得させてそれから仲間と組み合わせて踊る実践などが見られる。前者では、曲のリズムに対してそ
介
の時々に感じたイメージをもとに動きを組み合わせて学習が展開し、後者では、分解された動きを習得すればあとは音楽
をかけてリズムに乗って踊ることができるとの予見のもとに学習が展開していく。これらの先行実践から見えてくる課題
313
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
は、リズムの特徴をとらえる場面や子どもたち自らがつくり上げるリズムにあまり関心が向けられていないことである。
曲のリズムの特徴のとらえが個々バラバラなまま、あるいは、個々バラバラに習得した動きをもとにそれを組み合わせて
みんなでリズムに乗って踊ることは可能なのだろうか。本研究では、単元全体を通してリズムの特徴をとらえることがで
きる授業を開発・実践した。
E21
[教育]
8 月 28 日
14:15
教 28 − 054
リズムを手がかりとした現代的なリズムのダンスの単元構成原理
客観から主観への認識論的転換と総合的な内容構成
○堀田 諭(東京大学大学院)
岡本 和隆(東京都足立区立上沼田中学校)
酒本 絵梨子(自由学園最高学部 / 東京学芸大学連合大学院)
本研究の目的は、中学校における現代的なリズムのダンスの単元を比較・検討することを通して、リズムを手がかりと
して現代的なリズムのダンスの単元構成原理を明らかにすることである。現代的なリズムのダンスの実践の課題として、
中学校における男女必修化以前からしばしば指摘されてきたのが、教員の指導力不足である。とりわけ教師自身のダンス
の経験不足から、リズムに乗って踊る学習ではなく定型のステップを覚えて踊るような学習が展開されてきたと指摘され
る。しかしながら、ここには現代的なリズムのダンスでは何を、どのように、なぜ指導すべきなのかという教科教育の議
論が不足していたのではないだろうか。特に、現代的なリズムのダンスにおいて教えるべき内容とは何かと問われれば、
曲や動きを重視し、リズムを後景化していた問題点を指摘できる。それに対して本研究では、リズムを手がかりとした単
元構成を明らかにするにあたり、時間と空間を視点として現代的なリズムのダンスの教育内容を再整理し、客観的な指標
としての曲や動きから主観的な時空間の認識までを教師が視野に入れて構成し、総合的に育成すべきであることを主張す
る。
E21
[教育]
8 月 28 日
14:30
教 28 − 055
学校体育におけるクラシックバレエの教育的可能性に関する基礎的理論研究
身体表現の現代性に焦点づけて
○安田 苑子(東京学芸大学大学院)
平成 24 年度より必修となった中学校保健体育におけるダンスに関して、様々な視点からその理論的、実践的研究が積
保
教
人
ア
介
314
み上げられてきた。もちろんそのスコープとなっている「創作ダンス」「フォークダンス」「現代的なリズムのダンス」の
3 つの領域に着目し研究されているものが多いが、ダンス教育の可能性を考えた場合、学習指導要領によって取り上げら
れている他のダンス領域の教育内容化に関った研究もなされてよいと思われる。そこで本研究では、ダンス教育の教育内
容と学習指導論を考える上で「クラシックバレエ」(以下バレエとする)が持つインプリケーションを理論的に探ること
を目的としてみたい。バレエの持つ教育的可能性に関して、現在の学校体育の目標や求められる学習指導の質との関係か
ら、とりわけバレエの中に宿る「身体表現」の持つ現代性に焦点を当て検討する。身体の定型化され洗練化され尽くした
動きが放つ「自由」な表現というものが持つバレエの文化的特徴が、人間と踊りとの普遍的な関係の中でどのように形作
られ意味を持ち、又それが身体と「表現」という社会や人との関係性の中に何をもたらしているか等、文献の読み込みに
よって理論的に提示してみたい。
11 体育科教育学
E21
[教育]
8 月 28 日
14:45
教 28 − 056
身体表現の教育と人間形成に関する研究(2)
○越部 清美(法政大学)
林 園子(法政大学)
哲
史
2012 年度から中学校 1・2 学年でダンスが必修化となり、教育現場ではより質の高い表現運動系の授業の実現が要求
されている。演者らは、2012 年度に開校された小・中一貫教育において、
「表現運動・ダンス」の 9 年間の学習内容を
積み上げることによって浮かび上がってくるダンス学習のあり方を模索していきたいと考えている。本研究では、その 2
社
年目としての位置づけである。初年度は、小学校の表現運動系の領域に「表現リズム遊び」の 5 回の授業を通して、学
習者は、多様な身体感覚やリズムに乗って踊る楽しさを実感していることが認められた。その後、同じ対象者(東京都に
所在する小・中一貫校の小学校 2 年生 27 名)に対し、約 1 年後に初回と同様、表現リズム遊びの授業の 5 回を実践し、
表現リズム遊びおよび運動意欲に関する質問紙法調査を行った。調査結果を統計的に処理し、分析・考察を行った。本研
究の結果、対象者は表現遊び「自己表現」をねらいとした学習活動において意欲的に活動している傾向が見られた。
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
15:00
教 28 − 057
身体障害者に対するスノーボード指導に関する基礎的研究(2)
○新井野 洋一(愛知大学地域政策学部)
中島 史朗(愛知大学地域政策学部)
湯川 治敏(愛知大学地域政策学部)
本研究は、共生社会を目指す inclusive education system のもとで行われる体育授業である「インクルーシブ体育」が
注目されていること、身体障害者とスノーボードに関する報告が海外でも皆無であることを背景としている。昨年度は、
心
生
バ
経
発
大学体育教科の中でアダプテッドスポーツを教育し、指導者を養成している立場から、実践観察を通じて、身体障害者に
対するスノーボード指導に際して安全面、スタッフ、スポーツ用具、環境などから留意されるべき事柄について検討した。
今回は、昨年度に、今後の課題とした「アダプテッドスポーツ指導者養成におけるスノーボード導入の可能性の追求す
測
る資料を蓄積」「ケーススタディの積み重ねからによる指導方法の確立」の視点から、福島県箕輪スキー場において昨年
度と同様の対象者に指導を実施するとともに、障害者スキーの実践者を含む来場者へのインタビュー調査を実施した。指
導映像と調査結果(スキー場への要望など)を報告する。
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
15:15
保
教 28 − 058
児童の運動有能感を高めるための体育の授業づくりに関する事例的研究
特に運動有能感が低い児童に着目して
○石井 祐人(早稲田大学大学院)
方
吉永 武史(早稲田大学)
「平成 25 年度全国体力・運動能力、
運動習慣等調査」
(文部科学省 ,2013)では、運動やスポーツが「ややきらい」
「きらい」
と回答した児童の割合が男子で 8.9%、女子では 18.8%もいることが報告されている。また、運動やスポーツに対する積
教
人
極的な参加を促すためには、運動やスポーツができることや、一緒に取り組む仲間の存在が重要であることも指摘されて
いる。運動嫌いの児童が運動の楽しさや喜びを味わうことができるようにするためには、技能的成果や仲間との肯定的な
かかわり合いを保障する授業づくりが求められる。
本研究では、児童の運動有能感を高めるために有効と想定される
「教材」
ア
「仲間」「教師」の 3 観点から授業づくりを検討し、その効果について検証した。授業は 2014 年 2 月から 3 月にかけて、
関東圏内の A 小学校 5 年生 29 名(男子 17 名、女子 12 名)を対象に、7 時間のサッカー単元を展開した。単元前後に
岡沢ら(1996)によって作成された「運動有能感測定尺度」を用いた結果、単元前に運動有能感の得点が最も低かった
介
児童の「身体的有能さの認知」ならびに「統制感」には変化がみられなかったが、「受容感」において向上がみられた。
315
哲
史
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
15:30
教 28 − 059
運動に対する愛好的態度と運動有能感を育む体育学習の在り方についての考察
定時制高等学校における運動指導を事例として
○藤田 育郎(信州大学教育学部)
本研究は、定時制高等学校の生徒を対象に実施した運動指導の成果を「運動に対する愛好的態度」と「運動有能感」の
社
両側面から明らかにすることを通して、よりよい体育学習の在り方についての知見を得ることに試みたものである。対象
とした定時制高等学校の生徒の実態として、①授業(運動)に対する意欲に二極化がみられること、②運動に対する苦手
意識を持つ生徒が多くいること、
③身体接触や勝負事を敬遠する傾向にあることが挙げられた。このような実態に配慮し、
心
生
仲間とかかわりながら体を動かす楽しさや課題を解決する喜びを感じることができる活動を指導内容として取り入れた。
運動指導の実施前後に「診断的・総括的授業評価」及び「運動有能感測定尺度」によるアンケート調査、運動指導後に
運動に対するイメージの変容を問う記述調査を行った。その結果、まず本研究で実施した運動指導の成果として、運動に
対して消極的なイメージを有していた生徒の社会的行動と統制感の育成に貢献していことが挙げられる。このことには、
授業の進行に伴って集団で課題解決に取り組むことが必要になるという授業の内容構成が影響していたものと考えられ
る。
バ
経
発
北桐ホール[教育]
8 月 28 日
15:45
教 28 − 060
学習者の運動有能感を視点とした有効な教師行動及び教材に関する事例的研究
○松本 健太(日本体育大学大学院)
近藤 智靖(日本体育大学)
小学校学習指導要領(2008)を見てみると、生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の基礎を育み、生涯体育・スポー
ツ実践者の育成を目標としている。子どもたちを生涯にわたって運動に親しませるためには、運動有能感を高める必要が
測
あると考える。しかし、どういった言葉がけが児童の運動有能感に大きく寄与するのか、また運動有能感が向上した児童
や低下した児童の学習行動にはどのような特徴があるのかを明らかにした研究は少ない。そのため、より具体的な特徴を
検討するために児童を抽出し、その児童と教師・学習課題の関係を観察、分析する必要がある。そこで本研究では、抽出
方
保
教
人
児の学習行動について教師・学習課題との関係を中心に観察・分析し、その実態を明らかにして運動有能感を視点とした
効果的な教師行動、学習課題を検討することを目的とする。
E21
[教育]
8 月 28 日
15:00
教 28 − 061
中学校体育授業における剣道とダンスが中学生の共感性に与える影響
○元嶋 菜美香(長崎国際大学)
坂入 洋右(筑波大学)
中学校体育授業において武道及びダンスが必修となった背景には、体育授業を通して生徒の「コミュニケーション能力」
や「相手を尊重する態度」を育成するという狙いがある(文部科学省,2008)。本研究は、武道を通して獲得が期待され
る「相手を尊重する態度」の基盤となる概念として共感性に着目し、中学校体育授業で実施された剣道授業とダンス授業
ア
の心理的効果を比較分析し、剣道授業が生徒の共感性に与える影響を検証することを目的とした。中学校 1 年生 95 名を
2 群に分け、実施順序の影響を抑えるためカウンターバランスをとり、剣道及びダンス授業を実施した。各単元実施前後
に測定を行った多次元共感性尺度(登張 ,2003)の得点を分析した結果、剣道授業の実施前後で「気持ちの想像因子」の
介
得点に有意な向上がみられた(t(64)= 2.54,p < 0.05)。また、各単元終了後に測定を行った体育授業の楽しさ尺度(徳
永・橋本 ,1980)の得点を分析した結果、
「挑戦」に関する項目を除き、全ての項目が 0.1%水準でダンス授業の得点が
有意に高かった。2 つの尺度の得点から、共感性の向上には、剣道授業自体を楽しいと感じられるかが関係している可能
性が示唆された。
316
11 体育科教育学
E21
[教育]
8 月 28 日
15:15
教 28 − 062
創作ダンスの「ものを使った表現」を手がかりにした指導法の検討
「多様な質感の動き」の誘発を中心に
○中島 由梨(新潟医療福祉大学)
村田 芳子(筑波大学)
哲
史
学習指導要領によるダンスの必修化を受け、教育現場ではダンスに苦手意識を持つ指導者にも取り組みやすいダンスの
有効な指導法が求められている。表現運動領域の内容に含まれる創作ダンスでは、指導者は学習者に多様な動きを体験さ
せ、身体に蓄積した様々な質感の動きを引き出し、独自的な表現へと導くことが望まれている。このようなダンス教材の
社
一つとして「ものを使った表現」が多く実践されてきているが、学習者の「多様な質感の動き」に焦点を当てた研究は
少ない。そこで本研究では、
「ものを使った表現」から引き出される学習者の動きが、指導介入によってどのように変容
するのかを明らかにし、ダンス指導法として新たな視座を得ることを目的とした。研究方法としては、新聞紙と椅子の 2
種類の即興活動を取り上げた指導実験を行う。対象は大学生 64 名とし、動きのイメージを刺激する言葉を指導者が段階
的に投げかけ、対象者の動きの変容について分析する。即興活動後には対象者全員に質問紙調査を行い、抽出した対象者
には再生刺激法によるインタビューを行う。本研究により教育現場において活用できる、「多様な質感の動き」を誘発す
る効果的な指導法の手がかりを探る。
E21
[教育]
8 月 28 日
15:30
生
バ
教 28 − 063
体育系大学におけるダンス必修化に対応した指導法カリキュラムの検討
「ダンス指導法」の授業を受講した学生の意識の変容を通して
○宮本 乙女(日本女子体育大学)
心
中村 恭子(順天堂大学)
中学校 1・2 年生で必修となったダンスの急激な現場への導入に対応し、保健体育科教員免許取得を希望する学生が多
経
発
い体育系大学におけるダンスの指導法の授業は、教育現場で即活用できる内容であるように期待されている。本研究は、
ダンス指導法カリキュラム試案を受講した学生のダンスイメージの変容や学習カードの自由記述から、授業を通しての意
識の変容を分析し、ダンス指導法カリキュラム開発の資料とすることを目的とした。扱った題材は学習指導要領に基づい
測
て中学高校生向けに提案されているものを中心とした。対象はダンスの経験や知識が多い舞踊学専攻クラス(以下舞群)
と、
少ないスポーツ科学専攻クラス(以下ス群)であった。学習カードの記述から、舞群・ス群ともに中学高校生を意識して
受講し、授業を楽しいと感じていたことが読み取れた。学習前後でダンスイメージに差のあった項目は、舞群は 6 項目、
ス群は 16 項目であった。特にス群はダンスに対する志向性やダンス教育の重要性に対する意識、ダンス指導に対する自
信に関する項目の得点が増加した。これらの結果から、本研究のカリキュラム試案は特にダンス経験の少ない学生に有効
であったと評価できる。
E21
[教育]
8 月 28 日
15:45
保
教
教 28 − 064
表現運動における「見られる意識」
思春期の児童に着目して
○柳原 健二(岡山大学大学院)
方
酒向 治子(岡山大学)
他人の目を気にすることで生じる「羞恥心(恥ずかしさ)」は、これまで現運動領域の最大の阻害因の一つとして指摘
されてきた(麻生、1988)
。羞恥心を取り払うことは、特に思春期に入る児童にとって表現運動の授業の成否に関わる重
人
ア
要な課題であるといえる。しかし、羞恥心をなくすための具体的な指導法の提案は見られる一方で、学術的な実践研究は
ごくわずかである。その数少ない研究の一つに、小学校 4 年生を対象として「まわりが気になる度」が表現運動の授業
前後で減少したとする鈴木(2009)の報告がある。しかし、この研究では、思春期に顕著とされる男女差や、誰が誰を
介
気にするのかといった他者意識の具体的な内容にまで踏み込んでいない。そこで本研究では、小学校 5 年生 2 クラス計
70 名を対象とし、他人の目をいかに意識するか(本研究においては「見られる意識」とする)ということに着目した意
317
哲
識調査を行い、表現運動の授業前後で比較することを試みた。その結果、男女別で見たときに、女子の方が異性から見ら
れることを気にするという結果が得られたことから、女子が気にする他者とは異性を気にする傾向が高いということが示
唆された。
史
社
心
E21
[教育]
8 月 28 日
16:00
教 28 − 065
発達段階による表現・創作ダンス学習で感じる恥ずかしさの相違に関する研究
○田上 瑞恵(東京学芸大学大学院)
鈴木 直樹(東京学芸大学)
表現運動・ダンス授業に関する教師の指導上の悩みの 1 つに、学習者が抱える恥ずかしさの問題があることが、寺山
(2007)や松本・寺田(2013)によって明らかにされている。教師は恥ずかしさを学習の阻害要因として捉えることが多く、
生
バ
経
発
測
方
恥ずかしさの解消が課題であること(鈴木、2009)や、恥ずかしさを感じさせない授業(島田、2010)が目指されている。
しかし、クラブのような場で行われるダンスでは、恥ずかしさがコミュニケーションツールとなり、活動を促進させる要
因となり得る(佐藤、2008)
。また、恥ずかしさは他者からの注視により生まれるもの(作田、1967)であるが、学習者は、
他者の視線や反応によって活動に積極的な姿をみせることも明らかとなっている(成家ら、2013)。そこで、恥ずかしさ
は多くの学習者が経験している(村上、2008)ことからも、恥ずかしさを抱え込みながらどのように学習していくのか
を考えていく必要があると推察される。その為、村上(2008)によって開発された尺度を援用し、発達段階によって恥
ずかしさの感じ方にどのような違いがあるのかを明らかにすることを目的とした。詳細な結果は当日報告する。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 101
北海道 T 町小学校における児童の体力特性
○石井 由依(北翔大学大学院)
増山 尚美(北翔大学)
竹田 唯史(北翔大学)
北海道の児童生徒の体力低下は深刻な問題であり、新体力テストの結果は、毎年、全国下位である。北海道 T 町は人
口約 5,000 人で、以前は町立小学校が 8 校であったが、現在、小学校は 1 校のみであり、少子化が進み、北海道の典型
的な地域性を表す小学校である。本研究では、少子化の進む北海道の小規模校の特徴を明らかにするための基礎的作業と
保
教
人
ア
介
して、T 町小学校の児童の新体力テストの平均値を全国平均と比較し、その体力特性を明らかにすることを目的とする。
方法は平成 25 年度の T 町小学校 3 年生(男子 9 名、女子 6 名)、4 年生(男子 12 名、女子 5 名)、5 年生(男子 12 名
女子 8 名)
、6 年生(男子 20 名、女子 13 名)の計 85 名を対象とし、新体力テスト 8 種目を実施した。各学年の平均値
と全国平均値を t 検定にて比較した。結果は、4 年男子の上体起こしが全国標準値より有意にたかった(p<0.05)が、4
年男子のシャトルランと 50m 走、5 年男子の反復横跳びとシャトルラン、6 年男子の反復横跳び、6 年女子の反復横跳
びとシャトルランは全国平均と比較して有意に低い値であった(p<0.05)。以上のことから T 町においては、走運動、敏
捷性、持久力などが課題であることが示唆された。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 102
小学校体育授業における「体つくり運動」の実態と授業実施に関する課題の検討
○窪谷 祥子(筑波大学大学院)
現在、子どもたちの体力低下は下げ止まったともいわれるが、子どもたちの「動きのぎこちなさ」が依然として問題視
されており、
「体つくり運動」をより充実させることが求められている。本研究では、小学校において「体つくり運動」
318
11 体育科教育学
がどのように実施されているか、
実態を明らかにすることで、体育授業における「体つくり運動」実施上の課題を検討した。
T 市内の小学校教員 283 名を対象に「体つくり運動」の実施状況等について質問紙調査を行った。質問内容は、学校に
おける「体つくり運動」の実施形態、実施している内容、計画立案について、実施上困難と感じている点であった。集計
の結果、体育授業内においては独立単元ではなく、他の運動領域と組み合わせて行われる場合が多いこと、体育授業以外
には、学校行事、業間休みや昼休みを利用していることなどが明らかになった。「体つくり運動」を実施するうえで教員
が困難と感じている点は、
「仲間とかかわりを持たせること」、「児童が楽しく、意欲的に取り組むような授業づくりをす
哲
史
ること」などであった。これらの実態を受け、仲間とかかわりながら体力を高める「体つくり運動」の単元を提案する必
社
要性が示唆された。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 103
心
教育実習生が行う体育授業の特徴
教師行動に着目して
○小林 博隆(大阪体育大学)
加藤 勇之助(大阪体育大学)
楠本 繁生(大阪体育大学)
岡崎 勝博(東海大学)
教育実習は、教員養成のために指導方法を中心に学び、教育現場の実態を知るよい機会であるとともに、教員としての
適性があるかどうかを見極める機会でもある。
大阪体育大学(体育科教育コース)では、教育実習の前年度の 3 年次にすべての学生がインターンシップ実習に取り
組むとともに、模擬授業を実施している。
本研究では、大阪体育大学における教員養成の成果と課題を検討することを目的とし、教育実習生が行う体育授業をビ
デオカメラにて収録した上、授業の期間記録、教師行動を中心に分析した。併せて、教育実習事前、事後における意識の
変容についてもアンケート調査を行った。その結果、教育実習生が行う体育授業の特徴は、フィードバックに着目してみ
ると具体的なものよりも一般的なものが多いことが明らかになった。その他の結果および考察については当日発表する。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
バ
経
発
測
教 28 − 104
少人数学級編制での体育授業の在り方
ボール運動の楽しさ価値の実現
○中村 公美子(平安女学院大学)
生
中村 泰介(園田学園女子大学短期大学部)
近年、公立の小中学校でクラスの人数を減らしたり、少人数のグループ学習をしたりする動きはますます広がっている。
体育の授業が少人数であると、児童の活動の場や用具が確保でき、多くの運動力が期待できる。また、指導者の目が行
き届き、個に応じた指導が行えるという長所が考えられる。しかし、その一方で、ゲームやボール運動領域においては、
2 チームが編成できなかったり、人数が少ないために運動本来が有する楽しさに触れられない可能性が懸念される。また、
対戦相手が画一的になってしまうなど、人とのかかわりが制限される可能性も否めない。体育科の授業では、このような
他教科では見られない懸念される部分を払拭し、少人数を活かしたよりよい授業を展開していくことが必要となる。
本研究では、継続的に小規模学級に在籍した児童の方が学力が高いという先行研究の知見を考慮し、その中で、教科と
しての体育授業の在り方を考究していこうとするものである。
方
保
教
人
ア
介
319
哲
史
社
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 105
離島の小中学校における体育の現状
○本田 沙織(倉敷芸術科学大学大学院)
川上 雅之(倉敷芸術科学大学大学院)
飯田 智行(就実大学)
離島は、多くの面で後進性を有し、教育面でも影響を受けていることが報告されている。また、子どもの体力には後天
的要因と教育による指導力が大きく影響する。そこで、本研究は、現地で聞き取り調査を行い、より詳細に体育の現状と
課題を把握することを目的とした。調査校は、瀬戸内海、沖縄県の離島の小学校 3 校・中学校 1 校であった。その結果、
心
生
授業は複式学級であり、場所や道具など恵まれた環境があるが、人数が少ないためベースボール型の競技は出来ず、正式
なルールでゲームが出来ないことが明らかになった。また、各学年の体格や体力の差がでてくる複式学級では、学年差
を感じさせないように授業を行うことが困難であること、人数が少ないと 1 時間を通した授業を行うことは困難であり、
休憩時間が必要になることも明らかになった。さらに、児童・生徒は真面目であり授業に対する高い意欲が感じられ、地
域の特色を活かした授業を行っていた。より充実した体育を行うためには、児童・生徒が授業の中で学年に合わせた運動
量の確保が出来、ルールを工夫し多くの種目を学ぶことができる体育を行う必要があるものと考える。
バ
経
発
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 106
体育学部の初年次スポーツキャリア形成
専門教育を通じてキー・コンピテンシーを高めることを学ぶ教材開発
○三木 ひろみ(筑波大学)
本研究では、体育学部の初年次教育として、論理力、クリティカルシンキング、表現力の重要性と、専門的知識と技能
を習得することを通じてキー・コンピテンシーを高めることを伝えるスポーツキャリア教育プログラムを開発し、体育学
測
部 1 年次生 250 名を対象に実施し、
効果を検証した。10 回の授業では、1)プロスポーツクラブの GM によるプロ意識、
2)
キャリア教育専門の教員によるキャリアプランニング、3)テクニカルコミュニケーション専門の教員による論理力、ク
リティカルシンキング、
表現力についての講義と演習、1)から派生したスポーツに関する課題と本授業以外の体育・スポー
方
保
教
人
ツ科学の学習内容を素材とする論理力、クリティカルシンキング、表現力を活用する宿題、宿題についてグループディス
カッションを行った。本実践の結果、38% の受講生は論理力、クリティカルシンキング、表現力を向上させ、専門教育
を通じて高められることを理解できた。専門領域に対する単純な興味で終わらず、関心の高い内容をより良く学ぶために
必要なキー・コンピテンシーの力を引き出して活用させる教材の工夫がさらに必要である。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 107
小学校教員養成の体育授業における模擬授業の事例研究(その 4)
○河本 洋子(青山学院大学)
吉成 啓子(白百合女子大学)
近年、T 教育委員会は、授業力の構成要素として「使命感、熱意、感性」
・
「児童・生徒理解」・
「統率力」という基盤の
ア
上に、「指導技術」
・「教材解釈・教材開発」
・
「指導と評価の計画」の三つの要素を示している。また Y 教育委員会は、教
職専門性として「児童生徒指導」
・
「授業力」
・
「マネジメント力」・「連携・協働力」を挙げている。いずれも「授業力」を
重視し、養成段階では模擬授業が有効、としている。
介
筆者らは、長年小学校教員養成の体育授業において模擬授業を実施し、模擬授業に取り組んだ際の学びと示唆される項
目を、
「授業者の省察」や「学習者の気づき」から検討してきた。
前回は、A 大学の「初等教科教育法(体育科)
」
(3 年生 20 名)の事例を「授業づくり」に力点をおき、教師の資質に
ついても考察した。今回は、1 ~ 4 年生の複数の学科および現職教員を含む社会人が科目等履修生として履修している S
320
11 体育科教育学
女子大学の「初等体育科指導法」の特徴的な事例を、「授業力」という観点から考察する。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 108
中学校教諭教職課程(保健体育)専攻学生の剣道授業における学習ニーズの分析
○平田 佳弘(環太平洋大学体育学科)
京林 由季子(岡山県立大学保健福祉学科)
哲
史
社
中学校の武道必修化に対応した中学校教諭教職課程(保健体育)における剣道授業のねらいや内容についての検討が求
められている。そこで本研究では、大学の中学校教諭教職課程で保健体育を専攻する学生の剣道授業の学習ニーズについ
て、剣道経験の有無との関連においてその特徴を明らかにすることを目的とした。調査対象は、剣道授業(実技)の受講
心
生 30 名である。「剣道の授業で学びたいこと」の質問に自由記述による回答をした 28 名の回答をテキストマイニングに
より分析した。その結果、剣道経験の有無により回答の内容に特徴があることが示された。剣道経験のないグループの回
答では「剣道」
「礼儀」
「ルール」が、中・高の授業で経験があるグループでは「授業」「礼法」「能力」が、部活動で経験
のあるグループでは「指導」
「教える」
「先生」が特徴的な言葉として抽出された。剣道授業においては、大学生の技能に
即した指導と共に、学生自身にも剣道の経験に応じた学習目標を意識させる指導の必要性が示唆された。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 109
総合型地域スポーツクラブの現状
欧州のスポーツクラブとの比較から
○富本 靖(昭和女子大学)
堂元 慎也(東京学園高等学校)
白川 哉子(昭和女子大学)
総合型地域スポーツクラブとは、単一のスポーツを行うところでなく、また技術レベルだけを向上させていくところで
もない。スポーツあるいは何らかのアクティビティにおいて需要の高いものを会員の全員が楽しみながら継続的に続けて
生
バ
経
発
測
いくことが重要である。クラブ運営の目的が地域コミュニティの交流の場所になることで、個人主義や価値観の多様化に
よる人間関係の希薄化という社会問題を解決させていこうとする主旨もあり、また地域活性という意味合いがあることも
事実である。そのためには、
行政主導ではなく地域を盛り上げていく意識の高い人材が積極的に関わっていく必要がある。
方
そういう意味では、
「総合型地域スポーツクラブ」とはいえ、その活動に独自のアイデアで柔軟性をもたせて、様々なト
ライアルを経て、運営していくことに成功の鍵があるのではないだろうか。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 110
武道の戦術における伝統的な美意識に関する調査
研究法の構築と概念操作の検討
○有山 篤利(兵庫教育大学)
保
教
人
柔道や剣道など我が国の伝統的な武道には、
「柔能く剛を制す」と表現される技法や戦術が認められる。これらの技法
や戦術の根幹には、
「柔」という特徴的な概念が存在する。この「柔」という概念は、現代武道が我が国の歴史的な運動
文化である古流武術から引き継いだ、格闘に関する美意識であるという仮説を設定し、「伝統的な美意識に基づいた動き」
ア
を学ぶ武道授業の構築を最終的なねらいとする研究の具体的な構想、及びその基礎研究となる社会調査の手続きについて
報告する。
介
321
哲
史
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 111
幼児期におけるマット運動に関する一考察
○守 渉(仙台青葉学院短期大学)
マットは、その用途から、安全面での補助具と、マット運動の遊具として使われている。小学校からのマット運動では、
社
マットの上で転がる運動、腕をついて回る運動、足で踏み切って回る運動、倒立の運動など、体をまるくするものと、そ
らせるものなどの転回運動が主となり、
高度な調整力や筋力が要求される。また、幼児期におけるマット運動(遊び)でも、
すぐに前転・後転などと結びつけてしまいがちである。これは、学校体育で行われている技の習得を中心としたものから
心
生
バ
経
考えてしまっているからではないかと推測される。そういった中で、マット運動やマット遊びに対するイメージも「痛い」
とか「怖い」という傾向にあり、保育者自身も苦手意識を持っていることが多いと思われる。そこで、本研究では、幼児
期のマット運動(遊び)についての教材的価値を明らかにし、発達段階に合わせ、遊びを中心に多様な動きを楽しみなが
ら身に付けることができるマット運動(遊び)のプログラムについて検討を行うこととした。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 112
小学校体育授業における陸上運動・短距離走の成果の検討
○宮崎 明世(筑波大学)
本研究は、小学校の体育授業において陸上運動・短距離走の指導を行い、その成果を明らかにすることを目的とした。
発
小学校 6 年生児童 56 名(男子 33 名、女子 23 名)を対象として 8 時間の授業を行い、授業の前後で 50m 走の記録、
10m 毎のピッチとストライドの変化、観察的動作評価による走動作の変化について比較し、授業の成果を検討した。単
元の前半ではハードル走を、後半ではリレーを主な教材とし、単元を通して授業の初めにミニハードルとラダーを用いた
測
走動作のドリルを継続的に行った。単元の 1 時間目、4 時間目、8 時間目に 50m 走の記録の測定と走動作の撮影を行い、
得られた各時間のデータについて一要因分散分析を行った。その結果、男女ともに単元を通して記録が向上し、特に単
元後半に記録が有意に向上した。ピッチは特に 0 ~ 10m の加速区間において顕著に向上し、ストライドは男子に関して
方
保
教
人
は 0 ~ 10m、10 ~ 20m の前半において有意に向上したが、女子においてはすべての区間について有意に向上していた。
走動作については「膝・足首の伸展」のみが有意に向上したが、他の項目については変化が見られなかった。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 113
児童の水難事故に対する原因療法的効果に及ぼす着衣泳の事前・事後指導の影響
○稲垣 良介(福井大学)
岸 俊行(福井大学)
本研究は、着衣泳において事前・事後を伴う学習が小学生の水難事故に対するリスク認識と対策実行認識に及ぼす影響
を、授業直前(Pre)
、授業直後(Post1)
、授業 50 日後(Post2)の調査から明らかにした。着衣泳授業に参加した 5 年
生 3 クラス 105 名が分析対象者であった。調査票は、属性 4 項目、リスク認識 7 項目、対策実行認識 3 項目で構成され
ア
た。リスク認識項目及び対策実行認識項目の平均得点は、Pre より Post1・Post2 の方が高かった。項目別では、Post2
が Pre を上回ったのはリスク認識 7 項目中、5 項目であった。自然水におけるリスク経験の有無別では、リスク経験有群
は Pre・Post2 間でリスク認識 3 項目に有意差がみられた。リスク経験無群はリスク認識 4 項目、対策実行認識 1 項目に
介
有意差がみられた。家庭での会話の有無別では、会話有群は Pre・Post2 間でリスク認識 5 項目に有意差がみられ、会話
無群はリスク認識 2 項目に有意差がみられた。この結果を先行研究と比較検討したところ、着衣泳において事前・事後
指導を実施することにより学習効果は持続する可能性があると示唆された。
322
11 体育科教育学
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 114
高校 1 年生女子 100m 走タイムの授業時期における変化とその要因
高校 1 年生女子 100m は春と秋とどちらが速いか ?
○青木 好子(花園大学)
木村 みさか(京都学園大学)
伊藤 博子(同志社高等学校)
体育授業における女子高校生の 100m 走タイムの変化とその背景を探ることを目的に、1 年生 149 名を対象に、春と
秋にタイムを測定し、秋の測定後に、生徒が自覚するタイム変化の理由を調査した。100m 走の平均は、春 17.05 秒、
哲
史
社
秋 17.35 秒で、秋にタイムが遅くなった生徒は 93 名(タイム差(春-秋)0.73 秒)、速くなった生徒は 54 名(タイム
差- 0.42 秒)
、同タイムは 2 名であった。タイム変化理由(複数回答)としては、部活動所属の有無、走法、生活・運
動習慣等があげられた。運動部員で遅くなった者は 50%(タイム差 0.93 秒)
、速くなった者は 50%(- 0.40 秒)、文化
部員ではそれぞれ 67%(0.64 秒)
、28%(- 0.44 秒)であった。タイム変化理由に走法をあげた生徒は、
「遅くなった」
16 名(タイム差 0.54 秒)
、
「速くなった」8 名(- 0.51 秒)であった。100m 走タイムの維持向上には、体育授業での
指導と、運動部に所属していない生徒には運動量アップや体力向上を目指した方策を検討することの両面からのアプロー
チの必要性があることが示唆された。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
生
バ
教 28 − 115
修士課程段階におけるアクションリサーチ型の授業科目に関する検討
生徒の思考力の向上を目指した体育授業の実践
○渡辺 駿(広島大学大学院)
生関 文翔(広島大学大学院)
高島 亜由美(広島大学大学院)
心
岩田 昌太郎(広島大学)
池浦 このみ(広島大学大学院)
本研究の目的は、修士課程に所属する大学院生が、中・高等学校におけるアクションリサーチ型の体育授業の実践を通
して、生徒の思考力に影響を及ぼすためにはどのような実践をするのかを検証していくことである。
経
発
測
まず第 1 サイクルの授業実践では、ハードル走の授業において、生徒にハードル技術の「気付き」を記述させ、その
思考力の変容を見取った。また、
「形成的授業評価」
(高橋,2003)の「学び方」の次元も適用し分析を行った。その結果、
生徒の思考力の変化に有意差は認められなかった(p = 0.75)。次に第 2 サイクルの授業実践では、バレーボールの授業
において、生徒の思考力の向上を図る手立てとして「ルーブリック」という概念を活用した。この「ルーブリック」は、
授業の中で生徒とともに技能レベルを協議して思考させた。その結果、「ルーブリック」を活用した体育授業を展開する
ことで、
「学び方」の数値が有意に向上することが認められた(p<0.01)。
以上の 2 つの授業実践から、アクションリサーチ型の体育授業の実践を展開することで、生徒の思考力の向上を図っ
た体育授業へと改善することができる傾向が示唆された。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
保
教
教 28 − 116
初任の保健体育科教師が直面する課題や悩み事の変容に関する事例研究
インタビューを手がかりにして
○岩田 昌太郎(広島大学)
前田 一篤(徳山大学)
方
嘉数 健悟(沖縄大学)
生関 文翔(広島大学大学院)
初任教師は、夢に描いた教師像と現実のギャップに大きな「リアリティ・ショック」を受けることが指摘されている
(Gold、1996;木原、2011)
。そのような中、岩田ら(2013)は、若手保健体育教師における悩み事を学校環境の相違
人
ア
介
に着目して事例的に明らかにした。しかし、その調査は、短期間かつ限定的であり、継続的な調査研究の課題を残してい
る。そこで本研究の目的は、初任の保健体育教師が直面する課題や悩み事を 1 年間継続的に調査し、その実態を事例的
323
哲
史
社
心
に明らかにすることである。
調査対象は、
初任の保健体育科教師 4 名である。4 名それぞれに対して、
初任期の 1 年間における 5 月 GW 前後、夏季休業、
冬季休業、春季休業の計 4 回、
「現在抱える課題や悩み事」について「半構造化インタビュー」(メリアム,2004)を実
施した。また、インタビュー・データはすべて文字化し、質的データ分析ソフト(NVivo10)によりコーディングして分
析した。その結果、初任の保健体育教師が直面する課題や悩み事は、初期段階に多く抱えていた課題や悩みは、1 年を通
じて徐々に解消されていく傾向が示唆された。詳しい結果と考察については、当日発表する。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 117
大学生の一般体育実技授業における短距離走指導法作成への試み
100m 走における一般学生と競技学生の歩数ごとの疾走速度と疾走動作の差異に着目して
○天野 秀哉(茨城キリスト教大学)
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
324
大島 雄治(筑波大学大学院)
本研究は、一般学生の短距離走指導に関する基礎的資料を得ること目的に、一般学生と競技学生の 100m 走の各歩数
における疾走速度と疾走動作の分析を行い、その差異の検討を行った。分析対象者は、普段の運動経験が少ない一般男子
学生 11 名(14.26 ± 0.65s)と競技会に参加した男子競技学生 19 名(10.43 ± 0.13s)であった。一般学生には全力下
での指示のもと 100m を疾走させ、レーザー速度測定器にて疾走速度の計測、また光電管タイム計測器にて疾走記録の
計測、さらにハイスピードカメラ(300fps)を用いて疾走動作の撮影を行い、歩数の計測を行った。また、競技学生に
は競技会参加時に同様の疾走速度の計測と疾走動作の撮影を行い、疾走速度と歩数の計測を行った。
主な結果として、一般学生は競技学生と比較して最大疾走速度の到達時間が早く減速時間が長い傾向にあった。また一
般学生のほとんどは、終始接地時間が滞空時間よりも長く、接地時の疾走動作に問題がある可能性が示された。今後さら
に、一般学生と競技学生の疾走速度に差が出る歩数を選定し、接地時における疾走動作の比較分析をすることで、一般学
生の短距離走指導に関する基礎的資料となる知見について検討する。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 118
高等学校の体育授業における iPad の効果に関する実践研究
平均台運動に着目して
○池浦 このみ(広島大学大学院)
岩田 昌太郎(広島大学)
渡辺 駿(広島大学大学院)
高島 亜由美(広島大学大学院)
生関 文翔(広島大学大学院)
本研究の目的は、
高等学校の平均台運動の体育授業において、単元を通して生徒の「iPad の選択」の過程や「iPad の活用」
の工夫という観点から観察・分析を行い、それらの結果から「iPad の効果」について検討する。
対象は、H 高校 2 年生(内訳は、男子 15 名、女子 10 名)とし、平均台運動の全 8 時間の授業であった。調査内容及
び方法は、①授業において生徒が記述した学習カードの変容、②授業の様子を撮影した動画とその分析、の 2 点であった。
その結果、以下の 4 点が明らかになった。
(1)生徒は、平均台運動の技の特性に応じて iPad を選択し、練習方法を工
夫していることが示唆された。
(2)生徒は、自己の動作を客観視することや、自分の中の動作イメージと実際の動作を
比較することを目的として iPad を活用していることが明らかとなった。(3)生徒は、iPad を活用することで、グループ
の中での他者との関わりが増える傾向があることが示唆された。
(4)男女別による記述の比較により、iPad 活用への関
心の高さや iPad 活用による学習効果に差異があることが明らかとなった。
11 体育科教育学
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 119
児童用の動作コオーディネーション能力診断テストの信頼性の検討
○上田 憲嗣(吉備国際大学・立命館大学大学院)
大友 智(立命館大学)
南島 永衣子(びわこ成蹊スポーツ大学・立命館大学大学院) 梅垣 明美(大阪体育大学・立命館大学大学院)
深田 直宏(桐生市立神明小学校・立命館大学大学院)
吉井 健人(群馬大学教育学部附属小学校・立命館大学 BKC 社系研究機構客員研究員)
哲
史
社
児童の体力・運動能力向上が目指されているなか、「多様な動きをつくる運動」「巧みな動きを高める運動」で育成され
る神経系の運動能力の動作コオーディネーション能力に着目し、現行の新体力テストに加えて、これを診断できる児童用
の動作コオーディネーション能力診断テストを開発することを目的とした。本研究では、先行する研究成果をもとに選出
した診断テスト案(Task1 〜 3)の項目間の内的整合性および試行間信頼性を検討した。対象は公立小学校に所属する 5
年生児童 38 名(男子 15 名、女子 23 名)とした。内的整合性についてはクロンバックのα係数を、試行間信頼性につ
いては相関係数を算出した。その結果、
内的整合性の分析は、高い一貫性が示された(α =0.79)。試行間は、Task1:(r=0.69)
、
Task2:(r=0.54)
、Task3:(r=0.69)と、それぞれ中程度の信頼性が認められた。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
生
バ
教 28 − 120
小学校教員の誰もが指導可能なスキー教授プログラムの作成
○竹田 唯史(北翔大学)
佐藤 亮平(北海道大学大学院教育学院)
山田 雪花(北翔大学大学院)
心
近藤 雄一郎(北海道大学大学院教育学研究院)
石井 由依(北翔大学大学院)
進藤 省次郎(北翔大学非常勤講師)
スキーは積雪寒冷地における冬季の代表的なスポーツである。しかし、北海道の小学校教員であっても、スキー指導が
苦手であり、スキー指導に困難を抱えている教師が少なくない。スキー指導に関する先行研究は数多くされているが、小
経
発
測
学校教員が安全に短時間で確実に質の高い技術を指導するための指導プログラムは確立されていないと考える。そこで、
本研究では、小学校教員が質の高いスキー技術を安全・確実に指導することのできる「教授プログラム」を作成すること
を研究目的とする。研究方法は、高村(1987)の教授学理論を取り入れ、独自のスポーツ指導の方法論を展開している
井芹(1991)
、進藤(2003)らの方法に基づき、スキー独自の面白さであり技術を発展させる要因となる技術的特質を
明らかにする。次にスキーの客観的な技術・戦術構造を明らかにする。そして教育目標、教育内容、教材の順序構造、教
授方法、評価が統一的に構成され、教授過程を客観的に示した教授プログラムを作成する。以上の作業に基づき、小学校
体育教員が指導可能なスキーの教授プログラム(初心者段階)を作成した。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 121
フィットネスレベルが G ボール運動の効用に及ぼす影響
○平工 志穂(東京女子大学現代教養学部)
G ボール運動を大学における教養課程の体育授業に教材として用いる際の心理的側面に対する教育効果については、運
方
保
教
人
ア
動による気分改善効果や気分の向上効果を実感したり、学生同士のコミュニケーションを深めたり、運動の楽しさを実感
したり、運動を好きになること等が期待されることが明らかとなっている。本研究ではこうした心理的側面の教育効果に
学生のフィットネスレベルが及ぼす影響について検討を行った。
介
対象者は女子大学生であった。心理的側面については POMS, 効用認知やストレス反応をみる尺度、運動の好みや楽し
さについての主観的評価についてのアンケートなどを用いて検討した。
325
哲
その結果、G ボール運動の心理的側面についての教育効果は学生のフィットネスレベルの影響を受けることが示唆され
た。運動による疲れや痛みなどの身体的反応が運動習慣作りの妨げになっている様なフィットネスレベルの比較的低い学
生にとって、G ボール運動は主体的な運動習慣作りの教材として大きな魅力があるのではないかと思われる。
史
社
心
生
バ
経
発
測
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 122
マット運動における効果的な補助の方法に関する検討
○高島 亜由美(広島大学大学院)
生関 文翔(広島大学大学院)
池浦 このみ(広島大学大学院)
岩田 昌太郎(広島大学)
渡辺 駿(広島大学大学院)
平成 21 年度版高等学校学習指導要領解説保健体育編における器械運動の「2.態度」において、補助の重要性が記
載されている。それは、器械運動では「多彩な運動感覚」が求められ、自分一人では解決できないことが多く(岡端,
1994)
、安全面に配慮する必要があるからである。しかしながら、その補助の方法について、ポイントが列挙されている
のみであり、つまずきに対するその具体的な例示での効果に関する研究は少ない。そこで本研究の目的は、マット運動に
おける効果的な補助の方法について検討することである。対象者は、A 大学の教員養成課程に在籍する 4 回生 10 名とし
た。マット運動の補助の指導に焦点を当て、5 名ずつの A、B グループに分けて実践した。研究の内容としては、2 グルー
プとも「前方倒立回転跳び」
、
「後転倒立」の 2 つの技を練習させ、A グループには「補助具を用いた補助」を実施し、B
グループには「指導者による補助」を実施した。
その結果、練習開始前と比較した伸び率が、後転倒立においては、A グループが大きな伸びを示した。一方、前方倒立
回転跳びにおいては、B グループの方が大きな伸びを示した。詳細は当日に発表する。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 123
保健体育教師の力量形成に関する事例研究
―養成段階から初任期の授業観を中心に―
方
○嘉数 健悟(沖縄大学)
前田 一篤(徳山大学)
保
吉崎(1997)は「授業力量」として、
「授業についての信念」、「授業についての知識」、「授業についての技術」を挙げ
教
人
ア
介
326
岩田 昌太郎(広島大学)
ており、
「授業についての信念は、教師の授業作りや授業実践に方向付けをあたえるもの」と述べている。その中でも「授
業についての信念」は、
「授業観」
、
「教材観」
、
「指導観」などで、教師の授業に関する考えを含んでいると考えられる(木
原・村上、2013)
。
本研究では、初任保健体育教師(以下、初任教師)がどのような経験を通して、現在の授業観を形成するようになった
のかを明らかにすることを目的とした。
対象者の初任教師は、2009 年 3 月に教員養成大学を卒業後、非常勤講師として 2 年間高等学校に勤務し、2012 年度
よりO県で新規採用教員として勤務している。調査は、2012 年と 2013 年に計 6 回のインタビュー調査を実施した。また、
学期ごとに質問紙調査も実施した。分析は、インタビューの発話から、授業に関する発話を取り出し、意味のまとまりで
区切り帰納的に分類した。その結果、初任教師の授業観は、同僚教師や初任者研修で出会った同期との関わりで影響を受
けることが明らかとなった。詳細は当日に発表する。
11 体育科教育学
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 124
体育授業における空手道の指導方法について
○山田 雪花(北翔大学大学院)
佐藤 亮平(北海道大学大学院)
竹田 唯史(北翔大学)
近藤 雄一郎(北海道大学大学院教育学研究院)
空手道とは、手足だけで、
「突き」
「蹴り」
「受け」等の技で攻防を行う武道である。空手道は特別な用具を必要とせず、
経済的にも実践しやすいにも関わらず、体育授業ではほとんど実施されていない。その原因は、体育教師に空手道の経験
哲
史
社
者が少なく、指導方法が分からないということが考えられる。学校体育における空手道の先行研究では、体育における空
手道の指導計画の提起(日下 1992)
、中学校体育での空手道の価値に関する研究(小山 2011)などがあるが、具体的な
指導のためのプログラムは確立されていない。そこで、本研究では、空手道未経験者の体育教師でも指導が可能な教授プ
ログラムを作成することを研究目的とする。研究方法は、井芹(1991)、進藤(2003)、竹田(2010)らの方法に基づき、
空手道独自の面白さであり技術を発展させる要因となる技術的特質を明らかにする。次に空手道の技術・戦術構造を明ら
かにする。そして教育目標、内容、教材、方法、評価が統一的に構成され、教授過程を客観的に示した教授プログラムを
作成する。以上の作業に基づき、学校体育授業における空手道の教授プログラムを作成した。
E33
[教育]
8 月 28 日
11:00
教 28 − 125
生徒たちが水泳をより得意、より好きになる授業とは
大学生の現在の水泳に対する態度とこれまでの水泳授業の経験からの検討
○中井 聖(静岡福祉大学)
本研究では、体育系大学生 100 名を対象として、小学校から高等学校までの水泳授業における技能指導や練習の経験
心
生
バ
経
発
の有無、現在の水泳の好き嫌いの度合い(以下、好嫌度)および得意不得意の度合い(以下、得意度)を調べ、それらの
関連について検討した。小学校の水泳授業における水中での息はきや浮き身の指導、クロールや平泳ぎで長く泳ぐ練習、
中学校での平泳ぎで長く泳いだり速く泳いだりする練習、バタフライの技術指導、複数の泳法で連続して泳ぐ練習のよう
測
な経験がある者ほど好嫌度および得意度が高かった。好嫌度と得意度の間には有意な関連が認められた。したがって、小
学校では低学年のうちに水中での息はきや浮き身を十分身につけ、水中での運動の楽しさを実感させるよう指導すること、
各泳法においては基本的な技術指導に終始するのではなく泳距離を伸長するような指導を行うこと、中学校においては小
学校で未習である泳法や既習の泳法を組み合わせた個人メドレーに挑戦させたり、泳距離や泳タイムなど個々の泳能力を
向上させるよう配慮して授業を行うことで、生徒たちにとって水泳がより得意になり、水泳をより好きと思えるような授
業が展開できるであろう。
方
保
教
人
ア
介
327
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
328
00
体育哲学
哲
01
体育史
史
02
体育社会学
社
03
体育心理学
心
04
運動生理学
生
05
バイオメカニクス
バ
06
体育経営管理
経
07
発育発達
発
08
測定評価
測
09
体育方法
方
10
保健
保
11
体育科教育学
教
12
スポーツ人類学
人
13
アダプテッド・スポーツ科学
ア
14
介護福祉・健康づくり
介
329
哲
史
E25
[教育]
8 月 27 日
15:10
人 27 − 001
「日本文化身体教材」としての日本舞踊の実践事例
○畑野 裕子(神戸親和女子大学)
日本文化理解教育のための身体教材として日本舞踊の可能性を検討する目的で、日本舞踊の授業を実践した。授業対象
社
者は、H 大学大学院「日本文化理解教育プログラム」受講生 7 名、授業実施者は、報告者自身(教員養成大学ダンス担
当歴 30 年以上・日本舞踊名取り)であった。平成 25 年 9 月に実施し、3 コマ連続で行った。授業の展開は、①授業導
入時のベースライン評価:日本舞踊の実演後に、受講生に初見の自由記述による回答を求めた。②基礎知識の解説:配付
心
生
バ
経
発
資料「日本舞踊に関する基礎知識」を作成し、講義を行った。実演した日本舞踊作品における邦楽の詞章や、具体的な振
りの表現内容についての解釈等を解説した。③所作体験学習:伝統文化の基本的な所作(お辞儀の仕方や扇子の扱い方等)
体験を実施した。④学習効果を評価するための鑑賞:日本舞踊の理解がどの程度進んだか評価するために、授業導入時の
日本舞踊を再演し、その鑑賞における自由記述の回答を求めた。得られた回答に関する KJ 法の結果から、初見の鑑賞と
比較して、講義・体験後の鑑賞では、日本舞踊における表現内容や所作、日本文化に関する理解が深まったと考えられた。
E25
[教育]
8 月 27 日
15:30
人 27 − 002
大学体育において、カラリパヤット Kalarippayattu が受講生に与える印象に関する一考察
○高橋 京子(フェリス女学院大学)
本研究は、南インド発祥の身体技法であるカラリパヤット Kalarippayattu が日本の大学生にどのような印象を与える
のかを明らかにすることを目的とする。F 大学において 2012 年度後期におこなったカラリパヤットの授業の受講生 18
名の自由記述を対象にし、それらを KJ 法(1996 年版)により分析をおこなった。その結果、全身運動で特に下肢を意
測
識する動きが多い、舞踊と武術を融合した特徴など、カラリパヤットの動きの質に関するもの、身体が芯から温まるといっ
た効果に関するものなどに分類することができた。中でもすでに研究を終えている一過性感情尺度 WASEDA を用いて明
らかとなったカラリパヤットの「高揚感」および「落ち着き感」という効果についても今回の自由記述からみえてきた。
方
保
教
人
E25
[教育]
8 月 27 日
16:00
人 27 − 003
奈良公園におけるスポーツ施設の変遷と「奈良ブランド」構築
○渡邉 昌史(武庫川女子大学)
奈良公園の歴史は 1880(明治 13)年に始まる。以後、近代化、観光化と自然美のせめぎあいのなかで公園整備・改
良が進められてきた。1910(明治 43)年には運動場、テニスコート、ベースボールグラウンドが設置された。そして。
1928(昭和 3)年に水泳場、すべり台などを備えた児童遊戯が竣工することによって「公衆娯楽施設」の完成をみた。
宗教性を帯びた地から始まった奈良公園は、運動場などのスポーツ施設がつくられることによって公共性を有する「近
代」の公園へと変化したのである。
ア
1988 年、なら・シルクロード博覧会を期にスポーツ施設はすべて撤去された。県はその理由について「市街地及びそ
の周辺でスポーツ施設が充実」としているが、そこで希求されたのは「近代」を「古都奈良」の中心から周縁に移すこと
による「古都」としての真正性の確保であった。よって、奈良公園からのスポーツ施設の撤去は、奈良公園それ自体を「文
介
330
化財」化させてゆく流れのなかに位置づけられよう。奈良公園よりスポーツ施設の撤去、すなわち「近代」を放逐するこ
と、
「近代」との差異化を通じて「古都奈良」としての奈良ブランドが完成することとなったのである。
12 スポーツ人類学
E25
[教育]
8 月 27 日
16:20
人 27 − 004
戦前の学校柔道における初心者指導法の整備
教材文化の視点から
○池田 拓人(和歌山大学)
永木 耕介(法政大学)
哲
史
嘉納治五郎は、
「乱取」による効用として実践者の「興味・面白み」が得られること、「身体の強化」が促されることを
強調した。一方で、学校体育の主目的である「身体の調和的発達」という点からは完全ではなく、「乱取」を補うものと
して「形」を位置づけた。とりわけ初心者に対しては、まず「形」から入って柔道の技を行う上での基礎基本を身につけ
社
て、それから徐々に技を覚えて「乱取」に進んでいくということを基本的な教習過程とした。本発表では、柔道を近代的
な学校体育教材とすべく、初心者を対象とする学校柔道において、「形」による初心者指導法を整備・確立していった嘉
納の工夫の過程をあらためて整理する。
そのうえで、こうした「形」による教材化が図られた大正期から昭和にかけて、嘉納が「形」の重要性を強調した背景
には、足元の柔道界では同じく大正期以降、例えば課外活動の隆盛により学生柔道が盛んになると、
「形」を疎かにし「乱
取」だけに重点を置いた試合中心で「勝利第一主義」の競技志向が蔓延っていたことがある。このような競技偏重への歯
止めとしての嘉納のメッセージがそこにはあったのではないかと考えられる。
E25
[教育]
8 月 27 日
16:50
人 27 − 005
ハワイの Bon Dance 研究
オリジナル曲の表現の受容と変容
○弓削田 綾乃(早稲田大学)
米国ハワイ州の各地では、毎年 7 月から 8 月を中心に、Bon Dance Festival(盆踊り大会)が盛んに開催される。Bon
心
生
バ
経
発
Dance は、明治~大正期の移住者である日系人が始めたもので、現在も日系寺院の盆の法要に際して行われる踊りだ。現
代では、日系人だけでなく多様な人種の人々に受容されている。1 回の行事では、40 ~ 50 曲が踊られ、日本の原曲を
そのまま踊る場合もあれば、アレンジする場合もある。本研究は、アレンジされた曲目を対象として、動作分析を中心に
測
表現構造を明らかにした。これによって、日本発祥でありながら、日本以外において受容・醸成されてきた舞踊文化の実
態を検討する。
その結果、原曲よりも動作が複雑化されている点、個々のアレンジが比較的容認されている点などが指摘された。Bon
Dance が、ある程度の運動量を有した身体活動と表現活動の 1 つとして、多様に発展してきたことが示唆される。
E25
[教育]
8 月 27 日
17:10
人 27 − 006
ナシメント・ド・パッソ
「レシーフェ最後の古典的パシスタ」の生涯
○神戸 周(東京学芸大学)
ナシメント・ド・パッソ(1936-2009:本名フランシスコ・ド・ナシメント・フィリョ)は、20 世紀初頭のブラジル、
方
保
教
人
ペルナンブーコ州レシーフェで誕生したパッソというダンスの踊り手あるいは指導者としてその地で広くその名を知られ
ている。1999 年に現地で初めて彼を目撃した演者は、2001 年と 2003 年にレシーフェを再訪した折、彼に聞き取りを行っ
た。1958 年のダンスコンテストで優勝したことを契機に、彼はパッソの名手としての地位を確立する。一方で、このダ
ア
ンスに関する彼の重要な貢献が、公衆に開かれた学校という場で自らが考案した指導法を実践することによる普及活動に
あったことを、演者はかつて指摘した(神戸 2008)
。そして近年、指導者としてのナシメント・ド・パッソに着目した
論考がいくつか公表されている(アゾウベル 2007、アルブケルケ 2009、ヴィセンテ 2009)。本研究は、これまでの演
介
者による現地調査で得られた情報を吟味するとともに、これら近年の研究成果を踏まえ、パッソというダンスとナシメン
ト・ド・パッソとの関わりを改めて考察しようとする試みである。
331
哲
史
社
E25
[教育]
8 月 28 日
9:30
人 28 − 007
祭りの宝庫能登の民族スポーツ山車祭りの機能と構造
「ちょんこ山」と「でか山」の比較研究
○大森 重宜(金沢星稜大学人間科学部)
神野 賢治(富山大学人間発達科学部)
田島 良輝(金沢星稜大学人間科学部)
能登は祭りの宝庫と称され、農業神を家々に迎え入れ饗応する霜月の収穫儀礼「あえのこと」(ユネスコ無形遺産)が
連綿と引き継がれている。特にキリコ(奉燈)祭りは夏から秋にかけて百以上の地域で行われ、狂喜乱舞をもって担ぎ出
されるキリコの数は九百を超える。民俗学者柳田國男は相撲や綱引きなどわが国在来の運動競技、芸能などはほとんど祭
心
生
バ
経
発
の催し物に始まっているとしている。また激しい身体活動を伴う祭りは、機能、構造の観点からスポーツとの類似性が多
いと言えよう。能登半島七尾市で行われる国重要民俗文化財大地主神社青柏祭「デカ山」、800 年の歴史を持つ能登生国
玉比古神社の春祭り「チョンコ山」を始め能登各地で山車、山鉾、屋台などが曳き回される祭りも数多く行われる。本研
究では静としての山車「チョンコ山」
、動としての鉾山「デカ山」を比較研究することにより祭りの本質と民族スポーツ
としての祭りを考察する。
E25
[教育]
8 月 28 日
9:50
人 28 − 008
九州地方における昭和御大典祝賀行事にみられる女相撲と女相撲踊りについて
○一階 千絵(群馬県立女子大学)
日本国内において、女性の行う相撲(以下、女相撲)や、相撲をモチーフとした踊り(以下、女相撲踊り)は東北地方、
九州地方に集中してみられる。本研究は、九州地方における女相撲と女相撲踊りのうち、昭和 3 年(1928)11 月の昭
和御大典(昭和天皇即位の礼並びに大嘗祭)において披露されたものについて、新聞記事等の文献資料より、その様子を
測
明らかにしようとするものである。
昭和御大典の際には、日本各地で自治体主催の祝賀行事が行われ、その余興として各種芸能が披露されている。日本の
民族スポーツの一つである相撲も、男性により「奉祝相撲大会」等の形で行われているが、九州地方においては女相撲や
方
保
教
人
女相撲踊りも佐賀県、長崎県、宮崎県等で披露され、祝賀行事の様子を報じる記事群の中に、その様子をみることができ
る。記事の描写としては、勇壮さのなかに、参加者の主婦、母としての姿を描こうとするものが見受けられた。また、
「宮
崎新聞」の記事のうちの一つに、南那珂郡福島町(現・串間市)の力士姿の女性の写真が掲載されており、当時の女相撲
踊りの貴重な図像資料と考えられる。
E25
[教育]
8 月 28 日
10:20
人 28 − 009
カンボジア王国における体育科教育の変遷Ⅱ
教育開発の展開・衰退期(1953 ~ 1975 年)における体育・スポーツの歩み
○山口 拓(筑波大学)
学校体育は「全教育体系における生涯教育の不可欠な要素」(国際憲章)であり、現今の国際的課題の達成と不可分の
ア
関係にある。しかし「スポーツ活動が拡大しているにも関わらず、子ども達の体育参加機会が(中略)大幅に削減され」
(MINEPS III)るなど、国際的な課題となっている。現今の支援と成果の矛盾には、各地の民族・文化・歴史等に対する
考慮不十分な外発的要因が大きく影響しているものと考えられる。
介
そこで本研究ではカンボジア王国の体育・スポーツ振興課題の全容を明らかにする課程として、近代教育展開・衰退期
の国家開発における体育とスポーツの定位を明らかにしたい。具体的には「文献研究による歴史研究」と「参与観察によ
る人類学研究」を併用し、当該国の国家開発と教育開発の関係性を検証した後、体育科教育やスポーツ開発の位置づけに
着目した考察を深め、国際社会でも稀にみる課題を背負ったカンボジア王国の学校体育、教師教育ならびにスポーツ開発
332
12 スポーツ人類学
を含む「体育・スポーツ」の変遷を明らかにする。
なお、本研究は「科学研究費若手研究(A)
」の採択を受けて進めている「カンボジア王国の小学校体育科教育の普及施
策に関する研究」の一部である。
E25
[教育]
8 月 28 日
10:40
史
人 28 − 010
スポーツにおける子どもの福祉に関する現状と課題
オリンピック・ムーブメント及び法人類学的観点から
○森 克己(鹿屋体育大学)
中本 浩揮(鹿屋体育大学)
哲
山田 理恵(鹿屋体育大学)
社
心
スポーツにおける子どもの福祉は、国際的にみてもきわめて重要な課題である。しかしながら、国連のミレニアム開発
目標(2000 年)で掲げられた八つの目標では、子どもの貧困、栄養不良、HIV 等が重要な問題として取り上げられてい
るが、子どものスポーツに関する問題については触れられていない(Brackenridge, 2013)
。一方、近年スポーツにおけ
る虐待や虐待防止の問題が国際的にクローズアップされるようになってきた。たとえば、18 歳未満の子どもに対する虐
待が 1989 年の「子どもの権利条約」の子どもの「最善の利益」(3 条)等に抵触する人権問題として捉えられるように
なり(David, 2005)
、英国においては、スポーツ場面における子どもへの危害の防止、保護、安全等について、人権に基
づき、あらゆる子どもに保証されるべき社会的及び教育的サービスに関する「福祉」
(welfare)の問題として捉えられる
ようになっている(Brackenridge, 2013)
。
本研究では、スポーツにおける「子どもの福祉」の意義と課題について、国際的な動向を分析し、法人類学的観点から
考察を行うこととする。
E25
[教育]
8 月 28 日
11:10
人 28 − 011
イタリア・ヴェネチアにおけるレガッタの歴史的変遷と民衆文化
○田里 千代(天理大学体育学部)
毎年 9 月の第一日曜日にイタリア・ヴェネチアで繰り広げられる「レガッタ・ストーリカ(歴史的ボートレース)
」では、
生
バ
経
発
測
方
水上パレードとレガッタ競漕が行われている。前半のパレードでは、かつて海洋都市国家として栄華を誇った中世の時代
を懐古させるかのごとく、豪華絢爛なゴンドラが人々を魅了し、後半のゴンドラの競漕では、ひときわ地元住民らの声援
によってレースに盛り上がりを見せる。
もともとヴェネチアの水路を移動する手段としてあったゴンドラは、時代によって青年の軍事訓練としてのレースで
あったり、宗教的な祝祭におけるイベントや特権階級らの人々のための盛大なイベントとして執り行われたりした。大き
な枠組みのなかでとらえれば、それは時として宗教的・政治的な意図が強く影響をしてきたといえるが、一方でレガッタ
の担い手の民衆という立場からは、それとは異なる意図と民衆の戦術的な実践が営まれてきたことが考えられる。
本発表では、こうしたレガッタの歴史的変遷から、それぞれの時代においてレガッタが民衆のいかなる意図のもとに、
どのように実践されてきたのかを読み解いていく。
E25
[教育]
8 月 28 日
11:30
人 28 − 012
カポエイラ競技大会の意義に関する一考察
アバダ・カポエイラのヨーロッパにおける競技大会を手がかりにして
○細谷 洋子(四国大学)
保
教
人
ア
介
本発表は、ブラジル民族スポーツであるカポエイラの競技大会の意義を考察することを目的とする。ブラジルでは
333
哲
史
1990 年頃からカポエイラの競技大会が開催され、現在はブラジルや海外でカポエイラグループごとに多様な競技大会が
行われている。そこで 1997 年から第 1 回アバダ・カポエイラ世界競技大会を開催し、カポエイラの競技化の先駆的な
グループであるアバダ・カポエイラが主催するヨーロッパにおける競技大会に着目した。第 7 回アバダ・カポエイラフ
ランス競技大会(2014 年 2 月グルノーブル開催)と、第 16 回アバダ・カポエイラヨーロッパ競技大会(2014 年 4 月ミュ
ンヘンにて開催)の現地調査で、競技大会前の技術講習会における師範らの言説とインタビュー、講習会のテーマ並びに
教授内容、師範による「競技者の心得」についてのオリエンテーション、指導者らのミーティング等から情報収集を行っ
た。それらの一次資料に基づくと、競技大会の意義として「生徒のモチベーション向上」「理想とするカポエイラ理念と
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
334
技術の提示」
「カポエイラ指導者の交流並びに活動の場の創出」が考えられる。
00
体育哲学
哲
01
体育史
史
02
体育社会学
社
03
体育心理学
心
04
運動生理学
生
05
バイオメカニクス
バ
06
体育経営管理
経
07
発育発達
発
08
測定評価
測
09
体育方法
方
10
保健
保
11
体育科教育学
教
12
スポーツ人類学
人
13
アダプテッド・スポーツ科学
ア
14
介護福祉・健康づくり
介
335
哲
史
社
E22
[教育]
8 月 27 日
10:00
ア 27 − 001
知的障害児者のトランポリン運動におけるサブスキル課題の研究
○土井畑 幸一郎(筑波大学大学院)
齊藤 まゆみ(筑波大学)
澤江 幸則(筑波大学)
トランポリン運動は知的障害児者が多く経験する運動のひとつである。その運動において様々な姿勢で着地・跳躍する
スキル課題はあまり用いられていないが、知的障害児者がトランポリン運動で多様な動作を経験し、楽しむためには重要
である。一方で、スキル課題の指導指針として、日本体操協会発行のトランポリン段階練習表が存在する。さらに段階練
心
生
バ
経
発
習表には段階的なスキル課題だけでなく、これを達成するためのサブスキル課題が存在する。しかし、知的障害児者に段
階練習表のスキル課題を指導する場合、
運動能力や発達の遅れといった障害特性に適したサブスキル課題が必要であるが、
これは今まで研究されてこなかった。したがって、本研究は知的障害児者に段階練習表のスキル課題を指導するときに必
要な、サブスキル課題を明らかにすることを目的とした。
そこで、知的障害児者を指導しているトランポリン運動指導者を対象に、段階練習表のスキル課題を指導するときに設
定する、サブスキル課題についての質問紙調査を実施した。ここで得られた回答を、段階練習表のサブスキル課題と比較
した。以上の結果から、知的障害児者に必要なサブスキル課題に関する知見を報告する。
E22
[教育]
8 月 27 日
10:15
ア 27 − 002
知的障がい者のダンスソロ作品創作過程にみられる運動要素の変化
○佐分利 育代(鳥取大学)
聴覚障がい児 5 人を対象とした 6 年間の創作ダンス学習における即興表現技能は、「体の形や動きで捉えて表すことが
測
できる-様々な特徴を捉えられ、続けて表現できる-好きなところを中心にまとめられる」のように発達した。その過程
で、モティフの出現やフレーズ単位での繰り返し、踊りきっての表現の終わりや、表現に向けての始まりの動きが出現し、
学習 5 年目では 20 秒前後で表現が終わっていた。その後、連続して即興的に踊れるようになることが想像できた。本研
方
保
教
人
ア
究では毎週 1 時間、お互いの動きを真似し合い、即興的に踊ることを中心としたインクルーシブなダンス活動を 10 年以
上続けてきた知的障がい者 4 人が、即興的に練習を重ねて上演したソロ作品を対象に、ビデオを通して観察、ラバンの
舞踊運動の要素を手がかりに考察した。全く異なる 4 作品であったが、4 分以上を連続して踊り続けたこと、創る過程で、
伴奏の曲想や、曲の構成を捉えての表現が出現したこと、特に時間や力性など動きの質が強調されるようになったなどの
共通点もみられた。
E22
[教育]
8 月 27 日
10:30
ア 27 − 003
自閉症スペクトラム障害児の投捕スキルの向上に着目した運動指導事例
○村上 祐介(筑波大学大学院)
杉山 文乃(筑波大学大学院)
澤江 幸則(筑波大学体育系)
土井畑 幸一郎(筑波大学大学院)
近年、自閉症スペクトラム障害(ASD)児の発達支援では、社会性に加え、認知や運動などの様々な領域のダイナミッ
クな発達に関心が向けられるようになった。それに伴い、運動発達領域への関心も高まっている。しかし、実際の支援現
介
場では、ASD 児にどのように運動指導を行えば良いかが曖昧であり、指導者の経験や判断に委ねられている。本研究では、
支援現場におけるそれらの問題を解消するために、ASD 児の運動特性に適合した運動指導の在り方を提案することを目
的とした。対象児は、K 大学の教育相談室で発達支援を受けた ASD 児で、Movement ABC 2nd によるアセスメントの結果、
ボールの投捕スキルを特に苦手としていた。そこで、ボールの投捕スキルの向上のために、海外で先行的に行われている
336
13 アダプテッド・スポーツ科学
課題指向的アプローチを参考に、特定の運動課題の達成に重点を置いた指導を行った。その結果、対象児の投動作が質的
に向上し、多様な運動課題においても動作を調整しながら課題を達成できるようになった。これらの対象児の投動作の変
容と行った運動課題の効果について、ASD の運動特性から考察し、運動指導の在り方を検討した。
E22
[教育]
8 月 27 日
10:45
史
ア 27 − 004
肢体不自由児の生活・運動活動中の視線分析
○松浦 孝明(筑波大学附属桐が丘特別支援学校)
哲
齋藤 健治(名古屋学院大学)
肢体不自由児、特に脳性麻痺児は視力障害がなくてもそれ以外の視機能が劣ることから、生活、学習や運動活動にさま
社
心
ざまな支障をきたしている。肢体不自由児の眼球運動や視線活動の情報を得ることができれば、生活や運動中の活動環境
の改善や視機能トレーニングの一助となる。本研究では、眼球運動検査(NUSCO Oculomotor Test)中の衝動性眼球運動
および滑動性眼球運動の様子をビデオ撮影して評価するとともに、眼球運動検査と車椅子での運動中の視線の動きをアイ
マークレコーダー(nac 社製 EMR-9)により計測した。対象は、知的障害を伴わない脳性麻痺児とした。衝動性眼球運
動検査では、指標を探すことに手間取ること、滑動性眼球運動検査では、指標のスムーズな追視が難しく、不随意な眼球
運動が見られ指標から視線が離れる様子が観察された。運動中の視線活動では、ダッシュ時の視線の揺れ、スラローム走
や制限走路で障害物に対する視線移動の遅れ、バウンドするボールの追視で位相のズレが明らかになった。これらの結果
から、肢体不自由児の眼球運動の困難さは、視覚情報の処理に基づく生活場面や運動活動において、さまざまな影響を及
ぼすものと考えられた。
E22
[教育]
8 月 27 日
11:05
ア 27 − 005
重度障害者を対象とした野球指導の実践方法に関する研究(2)
ゴロ野球の取り組みにおける個人ルール設定のための指標作り
○松村 美佳子(北翔大学大学院)
竹田 唯史(北翔大学)
和 史朗(北翔大学)
ゴロ野球とは選手の心身機能・身体構造の状況に合わせた個人ルールが一人一人に適用されて行われる野球型スポーツ
生
バ
経
発
測
方
である(和,2011)。個人ルールは、選手一人一人の持つ最大限の力を発揮させることを目的として幅広く設定されるた
め、進行性筋ジストロフィーや脳性麻痺等の重度運動障害のある児童生徒でも参加が可能となる。一方で、こうした個人
ルール設定のための共通の基準はなく、個人ルールの設定は各チームに委ねられてきた。
そこで、松村ら(2013)は、ゴロ野球の競技としての公平性を保つために、走塁、守備、打撃といったスキルに関す
る技能階層表を作成し、移動能力や、ゲームにおける守備率、打率といった客観的な指標に基づく個人ルールの妥当性の
検討が必要であることを指摘し、障害特性に合わせた個別の走塁ルールの指標作りとその結果について報告した。
本研究では、ゴロ野球における守備と打撃の個人ルール設定の在り方について、選手の心身機能・身体構造に応じた技
能階層表を作成して試合に適用し、その妥当性について検討した。
E22
[教育]
8 月 27 日
11:20
ア 27 − 006
広汎性発達障害児の運動意欲を高める支援に関する研究
友達・親・指導者との対人関係に着目して
○齋藤 宣子(筑波大学大学院)
澤江 幸則(筑波大学)
齊藤 まゆみ(筑波大学)
保
教
人
ア
介
広汎性発達障害児が運動・スポーツ(以下、運動)を行う際、その障害特性から周囲の人々との対人的関わり、つまり
337
哲
史
対人関係の中で様々な躓きが考えられ、このことが彼らの運動意欲を低下させているのではないかと考えた。そこで本研
究では運動を行っている広汎性発達障害児を対象に、運動意欲を構成する要因を対人関係に着目して明らかにし、それを
高めるための支援を考えることを目的とした。あるスポーツ活動に参加している広汎性発達障害児 9 名を対象に、運動
意欲、友達・親・指導者との関わりについての項目を含んだアンケート調査を実施し、その回答を点数化して検討した。
その結果、友達との関係が運動意欲に影響する可能性があり、親との関わりは運動への動機づけをする役割を担い、指導
者は運動を楽しいと思える指導を行うことで子どもの運動意欲に影響を与えると考えた。この結果から、子どもの動機づ
けを促すよう親が子どもの活動に参加できる機会を設ける、友達との関係が良好であるように協力し合う活動場面を設け
社
心
生
バ
経
発
る、子どもたちが楽しいと思える指導力を指導者が身につけるといった支援をすることで広汎性発達障害児の運動意欲が
高まるのではないかと考えた。
E22
[教育]
8 月 27 日
11:35
ア 27 − 007
自閉症スペクトラム障害のある人の生涯スポーツ実践の促進要因と阻害要因
当事者インタビュー調査から
○杉山 文乃(筑波大学大学院)
齊藤 まゆみ(筑波大学)
澤江 幸則(筑波大学)
スポーツ基本法が 2011 年に公布され、障害のある人に合わせた配慮や支援をしつつ生涯スポーツを推進することが明
文化された。しかし、自閉症スペクトラム障害(ASD)のある人の生涯スポーツに関する研究は皆無に近く、実態が把握
されていないのが現状である。そこで本研究の目的は、ASD のある人に必要な支援の方法を検討するため、生涯スポー
ツ実践の促進・阻害要因を明らかにすることである。そのため、青年期以降の ASD のある人 10 名を対象に、運動やスポー
ツ実施に影響する諸要因について半構造化面接を行った。その結果、運動やスポーツ実施のきっかけは家族や友人からの
勧めが最も多く、他者の存在が促進要因になっていると考えた。その一方で、人に迷惑をかけてしまうと感じる、人と呼
吸を合わせられないなど、ASD の障害特性ゆえの人との関わりの困難さから、他者の存在が阻害要因になっていると考
えた。つまり、ASD のある人にとって、一緒に運動やスポーツを行う他者が促進要因にも阻害要因にもなり得ると考えた。
測
方
保
教
人
ア
従って、ASD のある人の生涯スポーツを推進するためには、人との関係の中で安心して他者と運動やスポーツに親しめ
るように支援することが重要である。
E22
[教育]
8 月 27 日
13:00
ア 27 − 008
大学・短期大学における障害学生に対する体育実技指導の現状について
障害種別の指導事例報告
○栗原 浩一(筑波大学大学院 / 筑波技術大学)
齊藤 まゆみ(筑波大学)
澤江 幸則(筑波大学)
香田 泰子(筑波技術大学)
中島 幸則(筑波技術大学)
及川 力(筑波技術大学)
天野 和彦(筑波技術大学)
全国の大学・短期大学(以下、大学など)に在籍する障害学生数は増加しており、その教育支援の必要性がますます高
まっている。中でも実技系科目である体育においては、障害の種類や程度に応じた支援が必要となるが、大学などにおけ
る障害学生に対する体育実技の支援体制に関する調査報告は少ない。本研究では、全国の大学などに在籍する、障害学生
に対する体育実技の現状把握および事例の収集を目的として「障害学生に対する体育実技についてのアンケート」調査(対
象:全国の大学などおよび体育教員、発送数:1140 校、1531 キャンパス、回答数・回答率:364 校・31.9%、384 キャ
ンパス・25.1%)を実施し、得られた事例の分析を行った。このうち、教員個人の障害学生に対する体育実技に関する関
介
心や要望、指導経験等に関する調査では 975 件の回答があり、383 件の具体的な指導事例が得られた。本稿では、これ
らの指導事例を障害種ごとに分類し、
「教員の指導体制」、「学生の受講形態」、「実施された種目や活動内容」、「指導時の
配慮や工夫した点・苦慮した点」
、
「指導の成果として感じたこと」などについて分析した結果の報告を行う。
338
13 アダプテッド・スポーツ科学
E22
[教育]
8 月 27 日
13:15
ア 27 − 009
教養教育の一環としてのアダプテッド・スポーツ教育の検討
自由記述の分析に基づいて 第 2 報
哲
史
○岡川 暁(日本福祉大学 健康科学部)
教養教育の一環としてアダプテッド・スポーツに関する教育の効果を検討した。対象は 4 名の障害学生(車椅子使用
者 3 名、聴覚障害者 1 名)を含む本学部 1 年生 179 名、総合基礎科目であるスポーツと健康(通年開講、選択(ただし、
全員履修))で、アダプテッド・スポーツ(半期)
、および一般スポーツ(半期)を履修するクラス編成をし、1 年生全員
社
にアダプテッド・スポーツを履修させることとした。履修クラスは、履修者各自が選択した一般スポーツの種目(バレー
ボール、他)にしたがって決定された。アダプテッド・スポーツクラスは実技と講義で、初級障害者スポーツ指導員資格
取得の必要要件に対応させた。授業終了時に、障害者スポーツの意義、他に関する 20 項目からなる質問および自由記述
からなる質問紙調査を実施した。自由記述部分では 129 名より回答が得られた。記述内容にテキスト分析を施し、6 つ
のカテゴリ(満足感(70.2%)
、アダプテッド・スポーツ(39.7%)、障害者(20.6%)、全員履修(11.3%)、大学(6.4%)
、
学生生活(1.4%)
)が抽出され、教養教育の一環としてアダプテッド・スポーツを教育する意義がうかがわれた。
E22
[教育]
8 月 27 日
13:30
生
バ
ア 27 − 010
保健体育教員養成におけるアダプテッド・スポーツ関連授業について
アンケート調査回答者の意識(自由記述)に注目して
○藤田 紀昭(同志社大学)
河西 正博(びわこ成蹊スポーツ大学)
心
金山 千広(神戸女学院大学)
本研究は中学校および高等学校の体育教員養成を行っている大学の 2013 年現在のアダプテッド・スポーツ関連授業の
経
発
実施状況を明らかにするとともに、
アンケート調査に回答者の意識を明らかにすることが目的である。体育教員養成を行っ
ている大学は全国に 154 大学 160 学部あった。これらの大学に対してアダプテッド・スポーツ関連授業の実施状況につ
いてアンケート調査を行った。アンケート回収数は 121(75.6%)であった。
測
アンケートの結果から、障害者スポーツ関連授業を開設しているところが 47.9%、開設していないところが 52.1% あ
ることが明らかになった。授業の実施形態は半期、講義形式で 2 単位、選択科目しているところが多かった。
自由記述回答からは、
「特別支援学校教員となる学生が増えているため、アダプテッド・スポーツに関する授業が必要
である」
「実習、演習形式での必修化が必要」
「インクルーシブ体育のための指導案作成経験が必要」など、アダプテッド・
スポーツ関連授業の必要性に言及する大学が関連授業の開設の有無に関係なく見られた。
E22
[教育]
8 月 27 日
13:50
ア 27 − 011
中学校におけるインクルーシブ体育に関する事例研究
聴覚障害に起因する事象に着目して
○犀川 桜(筑波大学大学院)
澤江 幸則(筑波大学)
齊藤 まゆみ(筑波大学)
聴覚障害のある生徒が中学校の体育授業を受ける際、外見上は集団の中で同じように活動しているように見えるが、実
際は聞こえないことにより様々な不安を抱えていることや情報が不足している状況で周囲に合わせて活動していることが
方
保
教
人
ア
指摘されている。また、昨年の本大会では、聴覚障害のある生徒が求める支援と教師やクラスメイトが行う支援にはズレ
があり、当該生徒が受ける中学校・高等学校での体育授業における環境設定や支援には課題があると報告した。そこで、
今回は聴覚障害に起因すると想定される事象が具体的にどのような形で出現するのかを授業観察・分析を通して明らかに
介
し、その際に必要と考えられる環境設定や支援を検討することを目的とした。対象は中学校の保健体育授業のうち聴覚障
害のある生徒が在籍するクラスの授業とし、フィールドノートへの記録と映像による観察評価を行った。その結果と先行
339
哲
史
社
心
研究をもとに、環境設定や支援を行うためにクラスメイト、教師、当該生徒の各々に必要とされる行動や三者間の関わり
が示唆されたので報告する。
E22
[教育]
8 月 27 日
14:05
ア 27 − 012
小学校の体育における聴覚障害児とピア(仲間)の関わり合いに関する事例研究
○小澤 菜緒美(筑波大学大学院)
澤江 幸則(筑波大学)
齊藤 まゆみ(筑波大学)
小学校に在籍する聴覚障害児の体育においては、同じルールや内容で行うことができるため支援員がつくことも少なく、
また聴覚障害児とインクルーシブ体育に関する研究があまり行われていない現状からも、一般的には、体育における支援
生
バ
経
発
測
はあまり必要ないと考えられている。しかし、体育はコミュニケーションを必要とする教科であり、コミュニケーション
障害とも言われる聴覚障害児は、本人の気付かないところで「ズレ」や「誤学習」を起こしている可能性がある。
そこで、
本研究は、
小学校に在籍する聴覚障害児の体育におけるコミュニケーションの実態を把握し、
「ズレ」や「誤学習」
を明らかにすることを目的とした。対象は、小学校に通い健常児と一緒に体育を行なっている聴覚障害児とピア(仲間)
、
担任教師とし、ビデオ撮影とフィールドノーツによる体育授業の参与観察を実施し、加えて体育での聞こえや困っている
こと等について聴覚障害児に半構造化面接法によるインタビュー調査を実施した。その結果、試合中に呼ばれたことに気
づいていない、オリジナルのルールが伝わっていない等の「ズレ」や「誤学習」の場面が観察された。
E22
[教育]
8 月 27 日
14:20
ア 27 − 013
肢体不自由児向け運動プログラムの実施状況に関する調査研究
全国の障害者スポーツセンターへの調査から
○河西 正博(びわこ成蹊スポーツ大学スポーツ学部)
本研究は、全国の障害者専用および優先利用スポーツ施設を対象とした質問紙調査から、肢体不自由児を対象としたス
方
ポーツプログラムの実施状況や指導体制、実施時の課題等について分析を行うことを目的とした。送付数、回収数は以下
のとおりである。発送数:114 ヶ所 / 回収数:69 ヶ所(回収率:60.5%)
回答結果をみていくと、59.4%のセンターが肢体不自由児を対象としたスポーツ事業を実施しており、実施種目につ
保
教
人
ア
介
いては特定の種目よりも、体操やストレッチ、マットを使った活動、各種レクリエーション等、体ほぐしや体つくりの
活動が多く実施されている。また、プログラム実施時の課題(複数回答)については、指導員のスキルアップ(43.5%)
が最も多く、次いで参加者の活動継続(36.2%)
、プログラム内容(34.8%)という結果であった。
プログラム作成時の課題については、
「個」と「集団」のバランスへの配慮に関わる記述が多く見られ、グループでの
プログラムを優先的に行いたいと考えながらも、
参加者の障害が多様であるがゆえに葛藤が生じている状況も看取された。
E22
[教育]
8 月 27 日
14:40
ア 27 − 014
聴覚障害が陸上競技のパフォーマンスに及ぼす影響について
デフポールボルタ―を対象としたケーススタディ
○榎本 優子(筑波大学大学院)
澤江 幸則(筑波大学)
齊藤 まゆみ(筑波大学)
聴覚障害はコミュニケーション障害であり、運動機能に障害はない。しかし競技中に音声情報をあまり必要としない競
技においても、デフスポーツの競技力は低いのが現状である。そこで本研究では、聴覚障害が棒高跳びのパフォーマンス
に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、半構成面接と実験を行った。対象者はデフリンピックメダリストであるデ
340
13 アダプテッド・スポーツ科学
フポールボルタ―2 名とし、半構成面接によって競技を行う上でどのような困難さを抱えているのかを明らかにした。そ
の結果、面接で使用された全 72 個のキーワードのうち 24 個が感覚に関するものであり、感覚の違いがパフォーマンス
に大きな影響を及ぼしていることが示された。また実験では跳躍直後の感覚と映像確認後の振り返りを比較し、その結果
全 60 項目中 25 項目に差異がみられた。中でも助走に関しての差異が多くみられ、この差異は 6 本中 5 本が良し悪しに
関するものであった。助走の良否が的確に把握されていないのは、接地の音が聞こえないことや聴覚障害によるリズム感
覚の希薄さが原因であり、聴覚障害による音声情報の不足や感覚の希薄さが棒高跳びのパフォーマンスに影響を及ぼして
哲
史
いると考えられた。
社
E22
[教育]
8 月 27 日
14:55
ア 27 − 015
日本における車椅子バスケットボールの現状
○牧 舞美(筑波大学院)
澤江 幸則(筑波大学)
齊藤 まゆみ(筑波大学)
本研究では、車椅子バスケットボール選手を対象にそのチームや個人を取り巻く環境に関する調査を行い、実際に選手
が感じている環境面での課題を明らかにし、その改善策を考察することを目的とした。日本車椅子バスケットボール連盟
に加盟する 77 チームより選んだ競技レベルの異なる 3 チームと健常者のみで構成される 1 チームの選手を対象に、質問
紙を用いたアンケート調査を行った。アンケートの回答形式は記号選択と自由記述、調査期間は 2013 年 10 月 30 日~
11 月 6 日、調査項目は練習や試合、費用、指導やサポートをしてくれる人、競技への参加と意義、現状の環境に対する
満足度と課題、
今後についての要望や夢の 6 項目とした。それぞれの問い毎に集計を行ったところ、所属チームや代表経験、
障害の有無などによって、その結果には差が見られ、競技人口や練習場所、仕事との両立、活動費用などの問題点が明ら
かとなった。これらの問題点とその改善策を総じて、より多くの人々からの興味・関心が得られれば、それぞれの項目で
明らかとなった問題点が改善されるのではないかと考えられた。
E22
[教育]
8 月 27 日
15:10
国内のパラリンピック指導者の現状と課題
齊藤 まゆみ(筑波大学)
パラリンピック競技レベルの高度化に伴い、指導技術の専門化が国際的に進んでいる。しかし国内では、パラリンピッ
ク指導者の置かれている現状は、競技指導に専念できる環境ではないことが報告され、国際的な競技力向上に対応できる
状況とは言い難い。そこで本研究は、パラリンピック指導者の現状と課題を把握し、パラリンピック指導者の視点から
競技力向上に必要な競技指導の専門性を明らかにし、コーチングの方向性を検討することを目的とした。対象は 2004 〜
2012 年に開催された各パラリンピック出場選手 200 名(パラリンピアン)とパラリンピックに帯同した指導者 120 名
とした。方法は、質問紙調査と二次調査としてインタビュー調査を行った。その結果パラリンピアンからは、指導者に対
し競技種目の専門性や指導能力の向上が課題として指摘された。また、パラリンピアンの求める指導者像と指導者の実態
には齟齬があった。しかし、指導者の中には競技力向上のためのコーチングを専門的に学ぶ機会を得ていないことやその
環境が整っていないことが示され、ナショナルレベルでコーチングが行えるコーチを育成しコーチの質を保証していくこ
とが重要だと考えられた。
生
バ
経
発
測
ア 27 − 016
○三枝 巧(筑波大学大学院)
澤江 幸則(筑波大学)
心
方
保
教
人
ア
介
341
哲
史
E22
[教育]
8 月 27 日
15:25
ア 27 − 017
日本体育協会加盟中央競技団体における障がい者スポーツ団体との連携に関する調査研究
○井上 明浩(金沢星稜大学)
神野 賢治(富山大学)
本研究では、障がい者スポーツ支援体制の組織・体系化の構築を目的とし、障がい者ならびに健常者を取り巻くスポー
社
ツ振興体制の実情を明らかにすることを目的とした。
スポーツ振興体制の核となる中央競技団体について、障がい者スポーツ団体との連携に関する現状を把握するため、
(公
財)日本体育協会に加盟する中央競技団体のうち 57 団体を対象にアンケート調査を実施した。また、回答が得られた団
心
生
バ
経
体のうち、連携体制を整備中であり、特有の課題を抱える団体を対象にヒアリング調査を実施した。両調査の結果から、
障がい者スポーツ推進を担当する部局等の設置が、障がい者スポーツに関連する事業展開の有無に直結することが確認で
き、連携実態のある少数の事例においても組織化の過程を分析することが課題となった。また、総合型地域スポーツクラ
ブや民間支援団体(スポンサー等)との連携状況をもとに、今後、中央競技団体が求める具体的支援を整理した。
第1体育館
8 月 28 日
13:30
ア 28 − 101
精神障害者スポーツの実施状況と課題の把握
○田引 俊和(北陸学院大学)
【目的】本研究では、精神障害がある人たちのスポーツ活動に関する調査、分析を行なう。具体的には、精神障害がある
発
人たちを主な利用対象としている支援機関を対象に量的調査を行い、スポーツ活動の実施状況、および活動に対するニー
ズや課題等の把握を目指す。
【方法】調査は精神障害がある人たちが利用する支援機関を対象に、郵送法で無記名自記式調査票を配布して行なった。
測
配付は 1 施設 1 通として、回答者は特に指定せずに支援機関側の選出に任せた。
おもな質問項目として、当該施設での日常的なスポーツ活動の実施状況、スポーツ活動の具体的な内容、期待する効果
等を設定し、この他に精神障害者のスポーツ活動に関するニーズや課題など自由記述コメントを得た。
方
【結果】調査の結果、頻度に差はあるものの多くの精神障害者支援施設ではスポーツ活動が行われていた。とくに利用者
の健康維持などへの期待がみられた。一方で、精神障害者スポーツの具体的な実施方法、病状や障害特性に応じた活動の
内容、活動場所や設備などに関する課題が確認された。
保
教
人
第1体育館
8 月 28 日
13:33
ア 28 − 102
障害理解と聴覚障害学生支援の関係
教職課程履修が促す障害理解の実態について
○内田 匡輔(東海大学体育学部)
吉岡 尚美(東海大学生涯スポーツ学科)
大学で学ぶ障害学生が増加する中で、障害学生の支援については、障害学生支援室の設置など実態は様々である。
2014 年に日本は、障害者権利条約の批准を、条約採択から 8 年、署名から 7 年かけ国連に承認されることとなった。し
ア
かしながら国内では、
「障害学生が必要な介助を受けられない状況も発生している」(殿岡ら 2011) 実態も見られてお
り、支援の充実が課題となっている。本研究では、T 大学学生を対象に、聴覚障害に対する知識と経験や聴覚障害者への
態度に関する質問紙を配付した(n=813 97.6%)
。本調査の結果を、性別、障害学生在籍学科と非在籍学科、教職履修状
介
況別(履修者 347 名、非履修者 447 名)の 3 つで比較したところ、教職履修状況において差異が最も見られた。特に「聴
覚障害者は不幸である」という質問に対して、教職非履修者は大変そう思う、ややそう思うを併せて 36.4%であったが、
履修者は 22.2 に留まった。このような教職課程の履修が促す障害理解の実態について報告する。
342
13 アダプテッド・スポーツ科学
第1体育館
8 月 28 日
13:36
ア 28 − 103
自閉症スペクトラム障害のある子どもにおける身体動作模倣について
身体動作模倣時の特異的運動様式に着目して
○澤江 幸則(筑波大学体育系)
杉山 文乃(筑波大学体育科学専攻)
藤井 彩乃(信州大学総合人間科学系)
村上 祐介(筑波大学体育科学専攻)
土井畑 幸一郎(筑波大学体育学専攻)
自閉症スペクトラム障害のある子ども(ASD 児)の運動面において、身体動作模倣の困難さは古くから指摘されている。
哲
史
社
その困難さの原因として、運動機能だけでなく、認知機能やミラーニューロンなどの神経系機能などが指摘されている。
しかし、それらを解明する確たるロジックはなく、支援においても決定的モデルが存在しない。そこで我々は、支援の原
点に立ち返り、あらためて ASD 児の身体動作模倣における運動特性を帰納的に構築することを試み、身体動作模倣の質
的向上をはかる支援のあり方を探りたい。
つまり本研究では、201X 年 4 月から 1 年間に、T 大学のリソースルームにおいて運動発達支援を受けた ASD 児のうち、
パイロット的に 1 名の児童を対象に身体動作模倣課題場面をビデオカメラによって観察記録した。身体動作模倣課題は、
ストレッチや柔軟体操などの動きを参照し、左右側と上下肢の分解基準を設け、四肢部位の同側や交差などのモデルを
提示した。そしてこの課題に対して現れる対象児の運動様式を収集した。それらの時間的変化と支援内容を記録し、ASD
児の身体動作模倣時の運動特性と、それらに対する支援の可能性と限界について検討した。
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
343
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
344
00
体育哲学
哲
01
体育史
史
02
体育社会学
社
03
体育心理学
心
04
運動生理学
生
05
バイオメカニクス
バ
06
体育経営管理
経
07
発育発達
発
08
測定評価
測
09
体育方法
方
10
保健
保
11
体育科教育学
教
12
スポーツ人類学
人
13
アダプテッド・スポーツ科学
ア
14
介護福祉・健康づくり
介
345
哲
史
E23
[教育]
8 月 27 日
13:00
介 27 − 001
生活習慣が骨密度に及ぼす影響について
○早川 公康(仙台大学)
ヒトの骨量は 30 歳代前後までに最大に達し、中年にかけてその状態が維持され、50 歳頃から徐々に低下していく
社
が、その骨の大半が発育発達期に形成される。そこで今回は 10 ~ 60 歳代における男女の骨密度の比較、カルシウム摂
取状況や運動習慣と骨密度の関連性、運動が骨量に及ぼす影響について検討することを目的として骨密度測定を実施し
た。10 ~ 60 歳代までの男性 37 名、女性 39 名の計 76 名(年齢 27.9 ± 13.4 歳、身長 165.1 ± 8.3cm、体重 60.4 ±
心
生
バ
経
発
11.3kg、体脂肪率 23.3 ± 7.8%)を対象にアンケート調査及び身体測定、QUS 法(定量的超音波法)を用いた骨密度測
定を実施した。Z スコアにおいて、
男性では有意差は認められなかったものの「日常的 Ca 摂取群」は「日常的 Ca 非摂取群」
に比べて高い傾向を示した。一方女性は非摂取群の方が有意に高いことが認められた(p<0.05)
。男女各々において Ca
摂取群と非摂取群で運動習慣および運動の種類に相違傾向が見られたことも、骨量の重要な要因となっているのではない
かと推察された。骨の状態を良好に保つために栄養と運動の両面から適切な処方を行う必要性が考えられた。
E23
[教育]
8 月 27 日
13:15
介 27 − 002
中国成人身体活動指針 : 日本および米国の身体活動指針との比較
中国成人身体活動指針
○馬 佳濛(仙台大学体育学科)
早川 公康(仙台大学運動栄養学科)
金 賢植(仙台大学体育学部)
笠原 岳人(仙台大学健康福祉学科)
中国では、国民の健康の維持増進を目指し、現場での運動指導における研究者・教育者の積極的活用を目的として、中
国独自の身体活動指針が初めて公表された。本研究では、一般成人に対する身体活動の推奨量の紹介と、日本および米国
測
の身体活動指針との比較検討を行った。一般成人では、1 日 6 千 -1 万歩またはそれと同等量の身体活動を実施すること
を推奨している。その内容としては、4 千 -6 千歩の歩行または同等量の中等度有酸素運動、適量の余暇的活動、および
週 2-3 回のレジスタンス運動が含まれている。これらの身体活動において、いずれも最短持続時間は 10 分以上としている。
方
日本および米国の身体活動指針における基準値に比較すると、総身体活動量では日本より低く、米国より高い値となって
いる。今後は、本指針の推奨値について、身体活動と健康アウトカムとの関連性を立証することや、身体活動量の評価な
どについて、より一層研究を推進し、新たな科学的知見の蓄積を図る必要がある。
保
教
人
E23
[教育]
8 月 27 日
13:30
介 27 − 003
離島地域における CG グラフィックを活用した地域・大学参画型健康支援とは
「健康問題を改善する活動」+「地域の人と人が繋がる」協働プロジェクト
○高瀬 幸一(公立大学法人名桜大学人間健康学部)
東恩納 玲代(公立大学法人名桜大学人間健康学部)
健康・長寿として名高い沖縄県であるが、現在ではその長寿に陰りが見え始め、肥満を始め多くの深刻な健康問題を抱
える不健康県へと変貌した状況にある。沖縄県にある離島地域では、これらの健康問題に加え高齢化や過疎化の急速な伸
ア
展もコミュニティの活性化を妨げる要因となり、島民一体参画型の健康・スポーツイベントや村活性化事業の実施が急務
となっている状況にある。一方、別の問題として、専門的な人材の確保の問題や支援体制の問題、さらには島外からの講
師の派遣などの様々な問題もあげられる。そのような状況の中、新しいスタイルのコミュニティ活性化の方法として、
「踊
介
る!話す!盛りあげる!」をテーマに、若年者から高齢者まで幅広い世代に対応した CG グラフィックを活用した健康支
援が効果的であると考えられる。そこで、今回、離島地域のソーシャルキャピタルの醸成を目指すために、自治体・大学・
学生が協働参画型で実施する、CG グラフィックを用いた「健康問題を改善する活動」+「地域の人と人がつながる」名
桜大学型の健康支援のスタイルについて報告する。
346
14 介護福祉・健康づくり
E23
[教育]
8 月 27 日
13:45
介 27 − 004
地域資源を活用した介護予防システムの構築についての研究
NPO 法人の設立と市民サポーター養成の課題
○吉中 康子(京都学園大学)
木村 みさか(京都学園大学)
哲
史
我々はこれまで、
亀岡市をフィールドに地域で現実的に展開できる介護予防プログラムの開発・検証を行なってきた(亀
岡 Study)
。現在取り組んでいるのが、この介護予防プログラムを広く地域に普及するための地域資源を活用したシステ
ムの構築である。今回、
介護予防サポーターの養成と市民サポーターの活動を支援する目的で設立した NPO 法人について、
社
そのプロセスを振り返った。
亀岡 Study では介入研究・評価と同時進行で、平成 23 年よりサポーター養成講座を開催した。講座は各 7 回の講義・
実習(14 日)、現時点で計 4 回(受講生 101 名)となる。高齢者の身体機能・生活・心理面、運動中の事故などを専門
家から幅広く学び、体づくり・動きづくり運動は毎回実施する内容で構成し、体力測定や運動指導については現場実習を
取り入れた。平成 26 年 3 月、ここで養成したサポーターを中心メンバーに “NPO 法人元気アップ AGE プロジェクト ” を
設立し、現在、亀岡市から委託された高齢者の体力測定や、亀岡 Study のフォローアップ教室に関わっている。現在の最
も大きな課題は資金面を含めた NPO 法人の運営である。行政等と協力しながら、新しいビジネスモデルの構築が必要と
考える。
E23
[教育]
8 月 27 日
14:00
心
生
バ
介 27 − 005
運動プログラム実施度を向上させる効果的なインセンティブ付与方法の検討
SWC プロジェクト(23)
○金 正訓(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
横山 典子(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
吉澤 裕世(㈱つくばウエルネスリサーチ)
田辺 解(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
千々木 祥子(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
久野 譜也(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
運動教室の参加者におけるプログラム実施度の向上は、成果を高めることにより、その後の継続にもつながると考えら
経
発
測
れる。プログラム実施度や成果を向上させる一つの方法として、インセンティブの付与が有効である可能性が示されてい
るが、どのようなインセンティブ付与方法が効果的かについては、不明である。本研究では、自治体が開催する健康運動
教室の参加者におけるインセンティブの付与方法の違いがプログラム実施度に及ぼす影響を検討した。中高齢男女 104
人(60.7 ± 8.7 歳)を対象に、教室に参加することでインセンティブが付与される『確定型』、毎月のプログラムの実施
度に応じてインセンティブが付与される『努力型』
、体力や体組成の改善度に応じてインセンティブが付与される『成果型』
のいずれかを選択するように依頼した。すべての介入期間は 3 ヶ月であり、POST 測定後に貯めたインセンティブ額に応
じた商品及び商品券に交換するようにした。インセンティブ付与方法の違いは、運動プログラム実施度に影響を及ぼす可
能性が示され、運動実施量に応じてインセンティブを付与する『努力型』が、プログラム実施度の向上に寄与する可能性
が示された。
E23
[教育]
8 月 27 日
14:15
方
保
教
人
介 27 − 006
高額なインセンティブを付与する健康運動教室における参加者の運動実施度と健康状態の変化
SWC プロジェクト(22)
○田辺 解(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
金 正訓(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
横山 典子(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
千々木 祥子(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
吉澤 裕世(つくばウエルネスリサーチ)
久野 譜也(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
ア
介
住民の健康づくりを促す試みとして自治体が住民の健康づくりに対しインセンティブを付与する事業が行われている
が、その効果は検証されていない。また、従来の事業はインセンティブ額が年間 1000 円程度と少額であるため、無関心
347
哲
史
層を含めた住民の行動変容を促すようなインセンティブとなっているかは議論の余地がある。本研究では、自治体が行う
健康運動教室において、比較的高額なインセンティブが参加者の運動実施度と体力に及ぼす影響を検討した。
対象者は N 県 S 市在住の 74 名(平均 62 歳)と M 市在住の 30 名(平均 59 歳)であった。教室の期間は 3 ヶ月で、
最大インセンティブ額は、S 市 16500 円、M 市 15000 円とした。なお、S 市では参加費 11000 円を貯めたポイントで
後払いする方式、M 市では参加費 9500 円を現金で先払いし、貯めたポイントを全額利用できる方式をとった。教室の
前後に体力、体組成、血圧を測定し、教室期間中に歩数、筋力トレーニング回数を記録した。M 市のインセンティブ付
運動教室では、インセンティブのない教室と比べて運動実施度が有意に高く、インセンティブが運動実施度を高める可能
社
心
生
バ
経
発
性が示された。一方、S 市では、インセンティブの効果は認められなかった。
E32
[教育]
8 月 28 日
13:00
介 28 − 101
介護従事者における有酸素能力と精神的健康度とその関係
○中原
(権藤)
雄一(公益財団法人明治安田厚生事業団 体力医学研究所) 角田 憲治(公益財団法人明治安田厚生事業団 体力医学研究所)
永松 俊哉(公益財団法人明治安田厚生事業団 体力医学研究所)
介護作業は身体を動かすことが多いことから、介護従事者の有酸素能力などの体力レベルに影響を与えている可能性が
考えられる。また、介護作業は精神的に負担のかかる作業が多く、介護従事者の精神的健康が良好でない可能性が考えら
れる。介護従事者の精神的健康に影響を及ぼす要因として業務内容や介護従事者自身の個人的特性などが考えられるが、
体力レベルとの関係については明らかではない。そこで本研究では、介護従事者における体力レベル、特に有酸素能力と
精神的健康度に着目し、介護従事者の体力的・精神的特徴を明らかにすると同時に両者の関係を検討し、基礎的知見を得
ることを目的とした。介護付有料老人ホームに勤務する 50 代ならびに 60 代の女性介護従事者 17 名を対象とした。有
酸素能力は酸素摂取量を測定し、精神的健康度は、the Kessler 6-item psychological distress scale(K6)を用いて評価した。
有酸素能力は同年代の全国平均と比して高く、精神的健康度は比較的良好であった。また、有酸素能力と精神的健康度と
の間において、相関関係はみられなかった。本研究において、介護従事者の有酸素能力と精神的健康度には関係がない可
測
方
保
教
人
ア
能性が示唆された。
E32
[教育]
8 月 28 日
13:00
介 28 − 102
被災地における健康支援活動(第 2 報)
震災後の継続的な運動介入が心身機能に与える影響について
○齋藤 まり(仙台大学)
岩垂 利枝(一般財団法人 日本健康財団)
橋本 実(仙台大学)
笠原 岳人(仙台大学)
小池 和幸(仙台大学)
柳澤 麻里子(仙台大学)
松浦 里紗(仙台大学)
太平洋沿岸に甚大な被害をもたらした未曾有の東日本大震災から 3 年が経過し、復興に向けた取り組みが各所で進め
られている。しかし、被災者の多くが未だに定住する場所が定まらず、住み慣れた場所から離れた生活を余儀なくされて
いる。とりわけ、仮設住宅を生活拠点とする被災者のうち、65 歳以上の高齢者の割合は年々増加する傾向にあり、その
多くは生活不活発による身体面や精神面への影響が問題となっている。被災地 M 県に所在する S 大学では、震災後より
被災地にて様々な支援活動を実施してきた。本学会でも、被災者の健康支援活動を通してまとめた第 1 報として、仮設
住宅に入居する高齢者を対象に、震災前後の心身機能に関する調査を実施し、体力面や活動量などの身体変化や、自身の
健康や先行きの生活不安などの精神的な影響を抱えながら生活をしている被災者の実態を報告した。
介
348
第 2 報となる本研究では、第 1 報の実態調査を踏まえ、継続的な運動介入を通して、仮設住宅に入居する高齢者の心
身機能の様相について追跡調査を実施した結果、若干の知見を得ることができたので報告する。
14 介護福祉・健康づくり
E32
[教育]
8 月 28 日
13:00
介 28 − 103
M 県 S 町における介護予防事業の展開に関する研究(第 2 報)
二次予防事業終了者のフォローアップ事業の効果について
○柳澤 麻里子(仙台大学)
橋本 実(仙台大学)
笠原 岳人(仙台大学)
岩垂 利枝(一般財団法人 日本健康財団)
小池 和幸(仙台大学)
齋藤 まり(仙台大学)
松浦 里紗(仙台大学)
哲
史
社
平均寿命の伸びや出生率の低下により少子高齢化が急速に進んでいる我が国では、高齢者の自立した生活を支援するた
めの施策として、特定高齢者介護予防事業(二次予防事業)が展開されている。2006 年にスタートした本事業の特色は、
基本チェックリストによって抽出された高齢者を対象としたプログラムが、市町村ごとに展開されていることである。し
かし、本事業は年度ごとに抽出された対象者の対応が主であり教室を終了した対象者の時間の経過とともに進む変化を追
跡しフォローアップする仕組みは取られていない。S 大学では 2008 年より地域連携事業の一環として二次予防事業を実
施しているが、昨年の本学会における第 1 報として教室終了に実施したフォローアップ事業における対象者の運動器の
機能変化を数値化して示した。
第 2 報となる本研究では第 1 報の実態調査を踏まえ、S 町にて 2012 年度に実施された二次予防事業の参加者のうち、
1 年後の 2013 年に開催されたフォローアップ事業の参加者を対象に運動頻度や主観的健康感などの状態を調査した結果、
対象者一人ひとりの心身機能や、生活面などの変容に関して若干の知見を得ることができたので報告する。
E32
[教育]
8 月 28 日
13:00
心
生
バ
経
介 28 − 104
産学官で協働した介護予防事業の取組(第 2 報)
○上田 知行(北翔大学)
これまでに、北海道の市町で実施してきた産学官が協働して行なうビジネスモデル「地域まるごと元気アッププログラ
発
測
ム」は、それぞれの「Win-Win」の関係を構築するにいたった。これまで A 市は 2010 年から現在まで、Y 町は 2011 年
から現在に至り、
介護予防事業としての運動教室の運営、地域住民のうち高年齢者を対象とした体力測定会の実施を行なっ
てきた。
「官」である地方自治体は、
介護予防一次予防事業として位置付け、教室の持続的実施を実現させることとなった。
「産」であるコープさっぽろは、介護予防事業への参入を実現した。「学」である北翔大学は、健康運動指導士の就職機会
の拡大を実現させた。
本研究では、この「地域まるごと元気アッププログラム」の取組のうち、体力測定の結果報告を行なう。2012 年度に
実施された各市町の体力測定会と 2013 年度に実施された体力測定の比較を行なったところ、いずれの市町も運動教室参
加者のほうが非参加者よりも体力の低下が少ない結果となった。
E32
[教育]
8 月 28 日
13:00
介 28 − 105
保
教
人
地域高齢者の体格と体力について
○原田 隆(名古屋文理大学短期大学部)
山本 ちか(名古屋文理大学短期大学部)
方
加藤 恵子(名古屋文理大学短期大学部)
百合草 誠(名古屋文理大学短期大学部)
本研究は、地域高齢者の複合プログラムを目的とした健康講座開始時における体力と体格について着目し、その関連を
明らかにし、高齢者の健康維持・増進に寄与する要因を探ることを目的とした。対象者は本学主催「健康講座」受講生
ア
介
26 名のうち女性 25 名(平均年齢 73.4 ± 3.1 歳)である。6 か月間(H25.9 ~ H26.3)の健康講座開始時に新体力テス
ト(文部科学省)、体組成測定(In Body720)、骨密度測定(AROKA 社製 AOS-100)を実施した。体格と体力との関係
349
哲
史
社
心
生
バ
経
では、骨格筋量と握力(r=0.698)
、10m 障害物歩行(r=-0.584)
、6 分間歩行(r=0.546)において 1%水準で、体力測
定総合得点(r=0.480)とは 5%水準で有意な相関が得られた。体重と握力(r=0.418)
、ウエスト・ヒップ比と開眼片足
立ち(r=-0.399)
、OSI(音響的骨評価値)と上体起こし(r=0.398)において 5%水準で有意な相関が得られた。これら
のことから、高齢者にとって高い体力(筋力、歩行能力)を維持するためには体格の充実、なかでも骨格筋量を維持させ
ることが重要であり、このことが結果的に健康寿命の延伸につながるものと考えられる。
E32
[教育]
8 月 28 日
13:00
方
高齢者の健康づくりをめざしたムーブメント法の実践
アセスメントに基づいたプログラムと評価について
○金川 朋子(大阪府教育センター・国際ムーブメント教育・療法学術 研究センター)
高齢者への健康支援においては、介護予防重視の視点から、介護の必要性の低い「要支援」と認定されている人々への
サービスの充実が求められている。ムーブメント法は、遊具や音楽を用いた楽しい軽運動による健康づくりである。本研
究では、地域福祉の役割を踏まえ地域で生活する高齢者に対する、ムーブメント法の適用における理論的な枠組みを構築
し、これを踏まえた実践方法(プログラム作成・評価法)を提示することを目的とする。高齢者の加齢に伴う課題を身体
的 ・ 精神的 ・ 認知的 ・ 社会的の 4 つの課題と捉え、本人の希望や願いに基づく機能的アプローチ、本人の好みや得意を
活かすストレングスアプローチ、個々の状況に対応する個別アプローチ、生活全体の取組による家庭 ・ 集団連携アプロー
チ、すべての視点を関連 ・ 調整する包括的アプローチに基づき、プログラムが実施される。また、開発したアセスメント
シートを用いた目標設定では、高齢者本人の主体性を重視する。評価は短期評価と総合評価を組み合わせて行い、本人評
価を取り入れることにより活動意欲の向上効果もあり、評価-指導システムを取り入れて行われる。
発
測
介 28 − 106
E32
[教育]
8 月 28 日
13:00
介 28 − 107
韓国語版歩行環境質問紙(Korean NEWS-A)のテスト・リテスト信頼性
○金 賢植(仙台大学体育学部)
朴澤 泰治(仙台大学)
馬 佳濛(仙台大学体育学科)
【目的】本研究では、韓国のソウル市に居住する成人を対象として、韓国語版の歩行環境評価尺度のテスト・リテストを
保
教
人
ア
介
350
実施し、信頼性を検討することとした。
【方法】ソウル市に居住している 20 歳以上の成人(1407 名)を対象に、アンケー
ト調査を実施し、質問紙の信頼性を検討するために、性別・年齢別に層化した 281 名を抽出し、10 日の間隔をおいてリ
テストを実施した。調査項目は、人口統計学的変数、韓国語版の環境評価尺度、国際身体活動質問紙であった。【結果】
テスト・リテストによる歩行環境要因の級内相関係数を算出した結果、全体的に級内相関係数は、ICC=0.71-0.88 ですべ
ての項目において良好であった。また、男女別にみると、男性は ICC=0.73-0.89、女性は ICC=0.68-0.87 とみられた。男
女ともに最も低かったのは、physical barriers、最も高かったのは、男性は Land use mix-diversity、女性は Lack of culde-sacs で比較的に客観的な評価が可能な項目であった。【考察】本研究は、韓国における身体活動を推進するための歩行
環境評価尺度の信頼性を検討した初めての研究であり、本研究の結果は、身体活動支援環境で重要な尺度になると考えら
れる。
14 介護福祉・健康づくり
E32
[教育]
8 月 28 日
13:00
介 28 − 108
浦安市入船地区におけるロコモティブシンドロームの認知度について
哲
史
○野田 哲由(了徳寺大学)
ロコモティブシンドローム(ロコモ:運動器症候群)とは、骨・関節・筋肉といった運動器機能が低下し、要介護や寝
たきりになる危険の高い状態を示す言葉で、高齢化が進むわが国の現状において、ますます重要度が増してきている。厚
生労働省が平成 25 年度から進めている国民健康づくり運動「健康日本 21(第 2 次)」では「ロコモティブシンドローム」
社
の認知度を 10 年後に 8 割以上にする目標を設定している。
(公財)日本整形外科学会の最新調査(平成 25 年 5 月 27 日
報道発表)によると全国での認知度は 26.6%である。
大都市近郊の浦安市においても高齢化が顕著であり、総人口 162,839 人うち 60 歳以上の高齢者が 33,037 人(平成
26 年 5 月 1 日現在)総人口の 20.2%を含め、毎年増加傾向にある。
本研究では、健康フェスタに参加した中高年を対象に同意を得た 69 名(男性 18 名、女性 49 名、平均年齢 68.5 歳)
に対してロコモや健康に関してのアンケート調査を行った。結果、ロコモという言葉を①詳しく知っていた 7 名(10.1%)
②名前程度知っていた 24 名(34.8%)③知らなかった 38 名(55.1%)。認知度は 44.9%と全国と比較して高い数値であっ
た。
E32
[教育]
8 月 28 日
13:00
心
生
バ
介 28 − 109
運動実践家の立場からみた大規模災害直後における運動実施の課題
健康運動指導士によるアンケート調査と討論会の統合的検討
経
発
○侘美 俊輔(稚内北星学園大学)
2011 年 3 月 11 日の東日本大震災発生直後、避難所や被災地の住民が健康維持のために「適度な運動」を実施する上
での課題について運動実践家の視点から議論されることはほとんどなかった。そのため大規模災害の発生後、被災地域に
おいて「どのようにして『適度な運動』が行われたのか」、「今後どのように『適度な運動』を指導すればよいのか」など
測
の実証研究は、未だに萌芽的な段階を抜け出せていないといえる。
以上の問題意識から、本報告では「NPO 法人日本健康運動指導士会」の北海道・東北ブロックによる 2 つの震災対応
に着目する。1 つは、
「平成 24 年度震災マニュアル作成提言検討会」であり、もう 1 つはブロック内各支部会員向けに
行われたアンケート調査である。これらのデータに着目し、災害発生直後の被災地における「運動の実施」に向けた課題
を質的記述的な分析により提示し、
「個人」と「組織」の両側面から検討を行う。これらの分析結果から、今後の大規模
災害時における「運動の実施」に向けた課題解決の方向性を提示する。
E32
[教育]
8 月 28 日
13:00
保
教
介 28 − 110
加齢により肥満関連遺伝子多型と腹部肥満の関係は消失する
遺伝素因とライフスタイルの影響度に着目した検討
○谷澤 薫平(早稲田大学スポーツ科学研究科)
孫 暁敏(早稲田大学スポーツ科学研究科)
方
伊藤 智子(早稲田大学スポーツ科学研究科)
樋口 満(早稲田大学スポーツ科学学術院)
本研究の目的は、腹部肥満に及ぼす遺伝素因とライフスタイルの影響が加齢により変化するか否かを検討することであ
人
ア
る。対象は 30 〜 64 歳の日本人中年男性 84 名および 65 〜 79 歳の高齢男性 97 名とし、腹部肥満の指標として、腹部
総脂肪面積、
内臓脂肪面積および皮下脂肪面積を MRI 法により測定した。肥満に関連する遺伝素因の影響を検討するため、
アジア人において肥満と強く関連する 10 個の遺伝子多型を解析し、リスクアレルの保有数に基づき遺伝的リスクスコア
介
(genetic risk score:GRS)を算出した。また、ライフスタイル要因として身体活動量と栄養摂取状況を評価した。重回
帰分析の結果、中年男性において、GRS は腹部総脂肪面積、内臓脂肪面積および皮下脂肪面積の最も強力な予測因子であっ
351
哲
史
社
心
生
バ
経
発
測
方
保
教
人
ア
介
352
た。一方、高齢男性において、GRS はいずれの腹部肥満指標とも有意に関連せず、脂質・タンパク質・アルコールのエネ
ルギー摂取比率ならびに高強度の身体活動時間が、GRS と比べてより強力な腹部肥満指標の予測因子であった。以上の結
果から、加齢により腹部肥満に及ぼす遺伝素因の影響は弱まり、身体活動量や食事などのライフスタイルの影響が強まる
ことが示唆された。
E32
[教育]
8 月 28 日
13:00
介 28 − 111
農村地域在宅女性高齢者における下肢の痛みの変化が身体活動に及ぼす影響
○東恩納 玲代(名桜大学)
涌井 佐和子(順天堂大学)
吉田 剛一郎(鹿屋体育大学)
松元 隆秀(鹿屋体育大学大学院)
永山 寛(福岡大学)
吉武 裕(鹿屋体育大学)
本研究では下肢の痛みの変化が身体活動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。対象者は農村地域に在宅す
る女性高齢者 48 名とし、初回調査時から追跡調査時(1 年後)の自覚的な下肢の痛みの変化により痛み継続群(24 名、
77 ± 5 歳)
、痛みなし群(13 名、77 ± 4 歳)
、痛み発生群(11 名、77 ± 5 歳)の 3 群に分け、身体活動状況を比較した。
日常生活における身体活動状況は加速度計(ライフコーダ、スズケン社製)を用いて歩数、安静時間、低強度活動時間お
よび中等強度以上活動時間を評価した。結果:3 群それぞれにおいて初回調査時と追跡調査時の身体活動状況を比較した
結果、すべての項目において有意な差は認められなかった。年齢と BMI を共変量とした共分散分析を行った結果、痛み
継続群は痛みなし群と比較して、初回調査時の中等強度以上での活動時間の割合が有意に低い値を示した。また、痛み継
続群は痛みなし群と比較して追跡調査時の歩数、中等強度以上活動時間および中等強度以上での活動時間の割合が有意に
低い値を、痛み発生群は痛みなし群と比較して追跡調査時の中等強度以上活動時間および中等強度以上での活動時間の割
合が有意に低い値を示した。
E32
[教育]
8 月 28 日
13:00
介 28 − 112
高齢者がコーディネーショントレーニングを実施する場合の運動処方の秘訣を探る
反応能力向上の事例
○山内 賢(慶應義塾大学体育研究所)
柳川 郁生(東北芸術工科大学)
荻田 亮(大阪市立大学)
市河 勉(松山東雲短期大学)
溝口 絵里加(日本体育大学)
近年の高齢者対策の意向は、
保護され支えられる立場から自立できる社会構造に動いている。コーディネーショントレー
ニング(COT)は、神経系の運動能力を高めることを目的にするトレーニング方法なので、高齢者における身体能力の向
上に貢献すると考えられる。本研究は、一過性であるが高齢者を対象にした COT による気分尺度およびフラッシュに反
応して足を一歩踏み出す時間(RT)の動態を調査し、反応、バランス、連結、識別能力維持・向上の可能性と望ましい
運動処方について検討した。対象者は 14 名であり、COT 前後の二次元気分尺度(TDMS)と RT、触診法による安静時
と運動時心拍数および主観的運動強度(RPE)を計測した。そして、心拍数の変化をカルボーネン法による運動強度(KF)
に換算した。TDMS は心地よく冷静で、活き活きとした心理状態へと有意に変化、RT は有意に向上した(p<0.05)。RPE
はややきつい前後なのに KF が低強度を示したので、RT が向上する COT は自覚するよりも低強度の運動であることが判
明した。すなわち、高齢者の身ごなし改善を目論む COT の運動処方は、心拍数を抑えて気持ちよく感じる程度の負荷を
設定することが秘訣となる。
14 介護福祉・健康づくり
E32
[教育]
8 月 28 日
13:00
介 28 − 113
自宅でのロコモ―ショントレーニングが Y 町デイサービス参加高齢者の体力に及ぼす影響
○清水 俊秀(岩手大学教育学研究科)
上濱 龍也(岩手大学)
清水 茂幸(岩手大学)
栗林 徹(岩手大学)
清水 将(岩手大学)
澤村 省逸(岩手大学)
鎌田 安久(岩手大学)
哲
史
社
高齢者の体力には週 2 回以上のトレーニングが適しているといわれている。Y 町では虚弱高齢者を対象に、週 1 回の
生きがい対応型デイサービスで介護予防運動を実施しているが体力の十分な向上認められていない。そこで、Y 町デイサー
ビスの参加高齢者 49 名を対象に、週 1 回の教室時に自宅でも片足立ちとスクワットのトレーニング(ロコモ―ショント
レーニング)を実施するように 3 ヶ月間の介入を行い、体力の変化を検討した。測定項目はファンクショナル・リーチ
(FRT)
、
開眼片足立ち(OLS)
、
膝伸展筋力(NE)
、
足把持力(FG)とした。その結果、3 ヶ月後に FRT と NE に有意な(P<0.05)
向上が認められたが、OLS、FG には有意な向上は認められなかった。
E32
[教育]
8 月 28 日
13:00
生
バ
介 28 − 114
共行動効果における社会的促進が身体活動量増加へ及ぼす影響
○池山 香(新潟大学大学院)
村山 敏夫(新潟大学)
心
末吉 のり子(新潟大学大学院)
活動量の増加は一人ひとりの意識の向上により望めるが、意欲や意識を変えるには外部環境からの動機づけが効果的で
経
発
ある。特に、我々人間は常に自分以外の他者と関わりを持って生きており、他者と自己との比較は時には大きな影響を与
える。そこで本研究は、地域住民の健康維持増進を目的とした共行動者の存在が身体活動量増加に及ぼす影響を検証する
こととした。対象者は医師により運動を実践する必要があると診断され、運動の制限がない者とした。介入期間は約 2 ヶ
測
月とし、対象者には互いの活動量、活動量増加のために取り組んだ内容等の取り組み状況を 1 週間おきに公表する。介
入開始時には身体活動量を増加させる工夫や自治体が公開するウォーキングマップ等を提示し、スムーズに運動を開始で
きるような提案を行う。調査項目は歩数計を用いた活動量、体重、BMI、生活意識調査、感情検査とし、活動量は常時計
測し、その他の項目はいずれも介入前・中間時・介入後に実施することで、介入前後の変化を確認し、活動量増加に伴う
身体的・精神的変化についても検討する。
E32
[教育]
8 月 28 日
13:00
方
保
介 28 − 115
地域高齢者の生きがい感・全体的自己価値と健康・体力の自己評価の関連
○山本 ちか(名古屋文理大学短期大学部)
加藤 恵子(名古屋文理大学短期大学部)
原田 隆(名古屋文理大学短期大学部)
百合草 誠(名古屋文理大学短期大学部)
地域高齢者の健康維持・増進のためには、身体的要因だけではなく、心理的要因の検討も重要である。本研究では、
「健
康講座」に参加している高齢者の「生きがい感」や「全体的自己価値」と、「健康の自己評価」や「体力の自己評価」と
教
人
ア
いった身体的側面にはどのような関連があるのかを検討した。対象者は本学主催「健康講座」受講の女性 26 名(平均年
齢 73.4 ± 3.1 歳)である。健康講座の開始時に、
「生きがい感(近藤・鎌田、2003 の尺度を援用)
」、
「全体的自己価値
(山本、2013 の尺度を使用)
」
、
「健康の自己評価」
、
「体力の自己評価」について、調査を行った。健康であるかという「健
介
康の自己評価」について、
「どちらでもない」と回答した群より「はい」と回答した群の方が、全体的自己価値が高く、
「自
己実現と意欲」
「生活充実感」といった生きがい感が高かった。また「体力の自己評価」については、「不安」と回答した
353
哲
史
社
心
群よりも、
「普通である」と回答した群の方が、全体的自己価値が高く、
「自己実現と意欲」や「生活充実感」が高かった。
高齢者は自分自身の健康や体力について肯定的であるほど、自己価値が高く、生きがい感が高いということが示唆された。
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[教育]
8 月 28 日
13:00
介 28 − 116
中高年女性を対象にした簡単な筋力トレーニングの介入効果
○萩 裕美子(東海大学)
渡邊 夏海(東京 YMCA 社会体育・保育専門学校)
山本 直史(愛媛大学)
石田 良恵(日本ウエルネス大学)
内山 舞(東海大学大学院)
川西 正志(鹿屋体育大学)
<背景>長寿になるほど自立した生活ができる身体的体力は重要である。これらは動けるうちに体力増加もしくは維持が
生
バ
経
望まれ、特に女性においては重要な課題である。<目的>日常生活の中で簡単にできる筋力トレーニングを継続すること
で、身体にどのような効果があるかを明らかにする。<方法>定期的運動を実践していない中高年女性(N=34、平均年
齢 56.4 ± 5.4 歳)に 3 か月間の教室(9 回)を実施した。教示したトレーニングは 6 種目である。教室前後では身体構
成測定、
体力測定を行った。毎日の実施記録は記録票に記述してもらった。< 結果>介入前後における身体構成の変化では、
体重、BMI、体脂肪率、腹囲、上腕囲、大腿囲、腹部脂肪、腹部筋肉、上腕前筋肉、大腿前筋肉、血圧に有意な変化が認
められた。体力測定では長座体前屈、椅子立ち上がり、上体起こし、開眼片足立ちが有意に向上した。3 か月間の 6 種目
の筋力トレーニングの実施率と身体構成の変化量では腹囲、上腕囲、腹部脂肪、腹部筋肉に有意な相関が認められた。重
回帰分析の結果、これらの筋力トレーニングは収縮期血圧減少のためのモデルとなり、スクワット、腕立て伏せの影響が
認められた。
発
測
方
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13:00
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地域高齢者の口腔清掃状態と体力および体格との関連
○百合草 誠(名古屋文理大学短期大学部)
原田 隆(名古屋文理大学短期大学部)
加藤 恵子(名古屋文理大学短期大学部)
山本 ちか(名古屋文理大学短期大学部)
近年、健康寿命の延伸と健康格差の縮小を目標として、高齢者を対象に「健康づくり」や「介護予防」に関する様々な
保
教
人
ア
介
354
施策が行われている。そこで本研究では、地域高齢者の口腔清掃状態と体力および体格との関連について着目し、その関
連を明らかにし、高齢者の健康寿命延伸を図るための具体的な方策を示すことを目的とした。対象者は本学主催「健康講
座」受講生 26 名のうち女性 25 名(平均年齢 73.4 ± 3.1 歳)である。6 ヶ月間(H.25.9 ~ H.26.3)の健康講座開始時に、
口腔内診査(現在歯数の確認、口腔清掃状態の評価)
、新体力テスト(文部科学省)
、体格測定(In Body720)
、骨密度測
定(AROKA 社製 AOS-100)を行った。口腔清掃状態と現在歯数、上体起こしおよび体力測定総合得点に有意な相関が認
められた。また、現在歯数と体重、BMI、骨格筋量、BMR および OSI(音響的骨評価値)に有意な相関が認められた。こ
れらのことから、口腔清掃は、歯の喪失予防および体力の維持に関連することが明らかとなり、さらには、円滑な食事摂
取による体格の充実、なかでも筋力や歩行能力に関連する骨格筋量の維持に影響することが考えられ、結果的に健康寿命
の延伸につながることが示唆された。
14 介護福祉・健康づくり
E32
[教育]
8 月 28 日
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介 28 − 118
男性における心肺体力を考慮した血中 25(OH)D 濃度と脂質代謝指標との関連性
○孫 暁敏(早稲田大学スポーツ科学研究科)
伊藤 智子(早稲田大学スポーツ科学研究科)
樋口 満(早稲田大学スポーツ科学学術院)
谷澤 薫平(早稲田大学スポーツ科学研究科)
曹 振波(早稲田大学スポーツ科学学術院)
本研究では、心肺体力を考慮した血中 25(OH)D 濃度と脂質代謝指標の関係性を明らかにすることを目的とした。
哲
史
社
20 ~ 79 歳の男性 136 名を対象に、早朝空腹時採血を行い、LDL-C、HDL-C、アポリポ蛋白質(Apo)A-1 と ApoB を測
定した。動脈硬化の指標として LDL-C/HDL-C と ApoB/ApoA-1 を求めた。心肺体力は自転車エルゴメータを用いて、最
大酸素摂取量を評価した。内臓脂肪量は MRI 法により評価した。血中 25(OH)D 濃度と HDL-C 及び ApoA-1 との間に
正の相関関係があり、TG、LDL-C/HDL-C と ApoB/ApoA-1 との間に負の相関関係が認められた。年齢、内臓脂肪量で調
整しても、
25(OH)D 濃度と各種脂質指標との間に有意な相関関係が認められた。一方、心肺体力で調整すると、
25(OH)
D 濃度と HDL-C と ApoA-1 濃度との間に有意性が認められなくなったが、ほかの脂質指標との相関関係には影響がみら
れなかった。以上の結果から、健康成人男性において血中 25(OH)D 濃度を高く保つことにより、心肺体力や内臓脂肪
量に関わらず脂質代謝指標が改善されることが示唆された。
E32
[教育]
8 月 28 日
13:00
生
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介 28 − 119
自立した高齢女性における尿失禁の実態と体格・体力との関連
体力測定会参加者での調査
○木村 みさか(京都学園大学)
青木 好子(花園大学)
心
吉中 康子(京都学園大学)
海老根 直之(同志社大学)
自立高齢女性における尿失禁の実態と体格・体力との関連を検討することを目的に、K医科大学体育館において毎年実
施している高齢者向け体力測定会(平成 23 年)への参加者 266 名(年齢 47 ~ 92 歳)を対象に、体格(身長、体重、
腹囲)
、
経
発
測
体力とともに、自記式アンケート用紙による尿漏れ経験の有無を調査した。尿漏れ経験ありを尿失禁群、なしを正常群と
し、体格、体力は前期高齢者(127 名)
・後期高齢者(98 名)別に年齢修正後に比較した。その結果、尿失禁は 60 歳未
満の 28.6%、60 歳代の 44.7%、70 歳代の 44.3%、80 歳以上の 52.8%に認められ、加齢に伴って増加する傾向にあった。
尿失禁群は正常群に比較し、前期高齢者では BMI が高く、腹囲が有意に大きかったが、体力値には差が認められなかった。
後期高齢者においては、尿失禁群では、腹囲が大きく、SSTw、ファンクショナルリーチ、歩行速度が有意に低かった。以上、
体力測定会に参加する高齢者でも 60 歳以上女性では、尿失禁が 4 割から 5 割超に認められ、尿失禁は腹囲や歩行能力に
関連することが明らかになった。高齢女性の尿失禁の予防や改善には、太らないで体力を維持することが重要で、運動の
有効性が示唆された。
E32
[教育]
8 月 28 日
13:00
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保
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高齢者における栄養状態と糖代謝指標との関連
身体活動量を考慮した検討
○伊藤 智子(早稲田大学スポーツ科学研究科)
孫 暁敏(早稲田大学スポーツ科学研究科)
谷澤 薫平(早稲田大学スポーツ科学研究科)
樋口 満(早稲田大学スポーツ科学学術院)
本研究の目的は、身体活動量を考慮して高齢者における栄養状態と糖代謝指標との関連を検討することである。対象は
50 〜 64 歳の日本人中年男性 96 名および 65 〜 79 歳の高齢男性 82 名とした。早朝空腹時採血を行い糖代謝指標であ
人
ア
介
る HOMA-IR および HOMA- βを算出し、BDHQ(簡易型自記式食事歴法質問票)を用いて栄養素摂取量及び熱源栄養素
のエネルギー比率を算出した。さらにビタミン・ミネラルの摂取バランスを評価するために、食事摂取基準の推奨量に達
355
哲
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社
心
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バ
経
発
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方
保
教
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356
した栄養素の得点を 1 とし、その合計を RDA スコア(満点 21 点)とした。身体活動量は 1 軸加速度計ライフコーダ EX
(スズケン社製)を用いて強度別の活動時間を算出した。HOMA-IR は脂質摂取量、HOMA- βは脂質およびアルコール摂
取量と正に相関した。高強度の活動時間を調整因子とした重回帰分析の結果、高齢男性ではたんぱく質・脂質のエネルギー
比率が独立して HOMA-IR と関連していた。RDA スコアは HOMA-IR と関連傾向を示した。以上の結果から、高齢男性に
おいて栄養状態は身体活動量に関わらず糖代謝指標と関連することが示唆された。·・・·