透視投影図の組み合わせ抽出を用いた吉田初三郎の - CSIS

D18
Research Abstracts on Spatial Information Science
CSIS DAYS 2014
透視投影図の組み合わせ抽出を用いた吉田初三郎の鳥瞰図における構図の解析
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佐藤 史弥 1,吳 湘筠 1,高橋 成雄 1,有川 正俊 2
東京大学大学院 情報理工学系研究科, 2 東京大学 空間情報科学研究センター
連絡先: <[email protected]>
(1) 目的: 吉田初三郎の鳥瞰図は,そのユニークな構
図により,地図としての美しさと分かりやすさという
両方の側面を達成している点で,広く知られている.
そしてその鳥瞰図は,描く対象地域から,地理的
特徴を選んでそれを含む周辺領域を拡大したのち,
相対的な位置関係を保つよう鳥瞰図上に配置する
ことによって,構成されていると考えることができる
[1].そのため,鳥瞰図内における地理的特徴を含
む領域の配置を解析することは,吉田初三郎の鳥
瞰図の成立過程を理解する一助となる.しかしなが
ら,一見継ぎ目のない鳥瞰図から,特徴領域への
分割とその縮尺を得ることは難しい.本研究では,
鳥瞰図をいくつかの透視投影図の組み合わせとし
て扱い,各透視投影図のカメラパラメータを推測す
ることによって,鳥瞰図において特徴領域を抽出す
る手法を示す.さらに,実際に初三郎の鳥瞰図に,
本手法を適用した事例を示す.
(2) 方法: 本研究では,はじめに鳥瞰図画像全体をた
くさんの細かな領域に分割したのち,近いカメラパ
ラメータをもつ領域同士を順次併合することにより,
特徴領域を抽出する.領域分割および併合は,以
下の手順により行われる.まず,画像内で対応地
点の緯経度が特定できる点を参照点する.そして,
地図上の各地点がどの参照点に最も近いかに応じ
て領域分割を行う.このとき得られた各領域を,透
視投影図の最小単位として扱うこととする.次に 2
つの領域間のカメラパラメータの近さを表す類似度
を導入し,類似度の大きい領域同士を順次併合す
ることとする.類似度の尺度として今回は,投影図
の縮尺を用いることとし,比較する 2 つの投影図の
縮尺が近いほど類似度は大きいと判断する.各基
本領域の縮尺は,先に設定した参照点を頂点とし
て用い三角形分割を施し,各参照点を中心とする
多角形の面積を用いて推測する.また,本手法に
おける分割領域の併合過程は,一つの樹形図とし
て表すことができる.今回実装したシステムでは,こ
の樹形図を用いて任意の併合領域を抽出できるた
め,着目する透視投影図をより細かく分割すること
で,階層的な分析を行うことが可能となっている.
(3) 結果: 本提案手法は,MacBoosk Air 上において,
C++と OpenGL によるソフトウェアとして実装された.
結果例として,吉田初三郎の『日本鳥瞰中国四国
大図絵』の一部に 172 点の参照点を与え,各投影
図をランダムに配色することで可視化を行った.図 1
に樹形図と配色された鳥瞰図画像を示す.本事例
においては,ラベリングされた各領域を目視した結
果,厳島神社全体が紫色にラベリングされているこ
とが確認でき,厳島神社が中心として選ばれている
のではないかという推定を行うことができた.
(4) 使用したデータ:
「所蔵地図データベース」(大学共同利用機関法
人人間文化研究機構国際日本研究文化センター)
(5) 謝辞: 本研究は,CSIS 共同研究(研究番号 398)
による成果である.また,本研究の一部は,科研費
基盤研究(B) No.24330033 の助成を受けた.
(6) 参考文献:
[1] 吉田初三郎(1928) 如何にして初三郎式鳥瞰
図は生れたか,観光社,『旅と名所』創刊号,p.14.
図 1: 樹形図(左)内で領域のまとまりを選択することで,鳥瞰図全体を 5 つの透視投影図に色分けしている(右).
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