- 21 - 5 実証試験結果の考察 (1)安全性について ①燃料による腐食等

5 実証試験結果の考察
(1)安全性について
①燃料による腐食等
今回の実証試験では、各試験車両に使用されている金属・ゴム部分の材質並びに BDF 使用に
伴う腐食、膨張の度合について検証を行っていないが、資料によると次のとおり記されている。
【劣化の程度 100%BDF の場合】
分類
材質(サンプル)名
ゴム類
NBR(ブタジエンアクロニトリルゴム)
※1
高密度プリプロピレン
ナイロン 6/6
テフロン
フッ素系ゴム(バイトン 401-C、バイトン GFLT)
金属類
銅(黄銅、青銅)
※2
鉛
亜鉛
ステンレス鋼
炭素鋼
アルミニウム
評価
×
×
×
○
○
×
×
×
○
○
○
出典:
「バイオディーゼルのすべて」アイピーシー出版
※1 試験方法は ASTM D471 および D412 の試験法に従う。51.7℃に保った BDF または軽
油(低硫黄軽油)中に、サンプルを一定時間浸積させ、引張強度を測定した。
※2 試験方法は ASTM D664 の全酸価測定法に従う。51.6℃に保った BDF または軽油(低硫黄軽油)中に、
サンプルを 6 ヶ月浸積させ、全酸価を測定した。
【劣化の程度 5%BDF の場合】
分類
材質(サンプル)名
ゴム類
NBR(ブタジエンアクロニトリルゴム)
※1
H−NBR(水素添加ニトリルゴム)
NBR・PVC(ニトリル+ポリ塩化ビニル)
FKM(フッ素ゴム)
樹脂類
PA66(ポリアミド)
※1
PBT(ポリブチレンテレフタレート)
PPS(ポリフェニレンサルファイド)
POM(ポリアセタ−ト)
PVC(ポリ塩化ビニル)
接着剤
エポキシ
※1
フェノール
金属類
SPCC(冷間圧延鋼板)
※2
AC2A(アルミ鋳物)
C1100P(タフピッチ鋼)
C2600P(黄銅)
ターンシート(鉛とスズの合金めっき鋼板)
ボンデ鋼板(リン酸塩処理済み電気亜鉛めっき鋼板)
浸積温度
80℃
120℃
80℃
120℃
120℃
120℃
120℃
120℃
80℃
120℃
120℃
120℃
120℃
120℃
120℃
80℃
80℃
評価
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
×
○
出典:経済産業省総合資源エネルギー調査会石油分科会石油部会第 21 回燃料政策小委員会 配布資料4−2
特記事項
※1 評価方法は質量変化、体積変化、引張強度、伸び、硬さ等
※2 評価方法は外観観察、質量変化等
- 21 -
②燃料フィルター
今回の実証試験では、燃料フィルターの点検を行っていないが、試験期間中には目詰まりなど
のトラブルはなかった。資料によると、
「FAME 混合燃料5%以下では、耐圧性や樹脂フィルタ
ーの性能に問題はなく、ダイヤフラムへの影響も軽油と同等であった。(経済産業省総合資源エ
ネルギー調査会石油分科会石油部会第 21 回燃料政策小委員会 配布資料 4-1)
」とされている。
BDF の性状(規格項目の候補)
酸
メ
酸
多 エ
ト
モ
ジ グ
固
水
低 金
リ
化
タ
化
不 ス
リ
ノ
グ リ
形
分
温 属
ン
ノ
安
飽 テ
グ
グ
リ セ
異
特 分
|
定
和 ル
リ
リ
セ リ
物
性
ル
性
脂 含
セ
セ
ラ ン
͡
肪 有
ラ
ラ
イ
流
酸 量
イ
イ
ド
動
・
ド
ド
エンジンで発生する不具合
□燃料系部品の損傷
●
●
点
メ
、
チ
目
ル
詰
エ
ま
ス
り
テ
点
ル
、
含
曇
有
り
量
点
●
●
●
● ●
●
金属腐食、ゴム等の膨潤
□燃料ポンプに析出物が付着して燃料
ポンプが作動しにくくなる
●
●
● ●
●
●
●
□フィルターが目詰まりする
→燃料供給が止まり走行できなくなる
□排ガスが悪化する
●
●
□気温が低いときにエンジンがかかり
●
にくくなる
□排ガス処理用の触媒性能が低下する
●
●
●:関係あり
出典:経済産業省総合資源エネルギー調査会石油分科会石油部会第 19 回燃料政策小委員会 配布資料 5
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③低温流動性
冬期間 2 ヶ月に及ぶ今回の実証試験では、全ての試験車両においてエンジン始動時や走行時の
不具合等は発生しなかったことから、基本的には使用した混合燃料の低温流動性に問題が無かっ
たと推察される。ただし、試験期間中の最低気温は-18.4℃まで下がったが、試験車両全てが車庫
内に保管されていたため外部の気温とは異なり、長時間外気にさらされた状態の検証は行われて
いない。
参考まで資料によると、
「FAME 混合濃度の増加に伴い、エンジン始動が遅れる傾向があり、
2%以上では一度目の始動時にストールし、かつエンジン始動に 10 秒程度要した。−10℃環境
での走行試験において、FAME 混合濃度5%以下での走行性能の変化は、車両の安全性に影響を
及ぼす程度ではないと考えられる。(経済産業省総合資源エネルギー調査会石油分科会石油部会
第 21 回燃料政策小委員会 配布資料4−2)
」とされている。
また、平成18年2月に滝川市が実施した「菜種油燃料冬季走行試験」の際に北海道立工業試
験場の協力を得て測定した結果を次のとおり記す。
【試験方法】
・ナタネ油BDF100%、特3号軽油にナタネ油BDF20%混和軽油、ナタネ油BDF5%混和
軽油をつくり、それぞれについて低温流動性試験を行った。
・−10℃から−18℃までは、冷却装置で1℃ずつ低下させ、測定温度で 30 分間保持した後、曇
り点と流動点を確認した。
・さらに冷凍庫を用いて、−22.0℃、−24.5℃、−27.0℃、−29.5℃でそれぞれ 30 分保持した
後、曇り点・流動点を確認した。
【測定結果】
・BDF100%の曇り点は、−5℃であった。
・BDF5%混合燃料とBDF20%混合燃料ともに−29℃下において流動性が維持されていたの
で、実車試験使用に問題はないと思われる。
・しかし、白濁のはじまる曇り点は、5%混合燃料と 20%混合燃料それぞれ−17℃と−15℃であ
った。特3号軽油そのものの曇り点は−17℃であったことから、軽油と同程度の流動性が確保
できることを確認した。
④コモンレール方式への対応
今回の実証試験ではコモンレール方式の車両を使用していないため、BDF使用の安全性や耐
久性について検証することができないが、資料によると次のとおりである。
【BDF100%の場合】
「バイオディーゼルのすべて(アイピーシー出版)」によると、コモンレール方式のエンジン
を用いて排ガス特性の実験を行っているので短期的なBDF使用は可能と思われるが、耐久性に
ついては不明である。また、コモンレール方式燃料噴射装置を用いて燃料温度を 20℃∼90℃に
変化させた場合のBDF噴射性状を、噴射モーメンタム法、シャドウグラフ撮影法および液滴M
ie散乱光撮影法により把握したところ、噴霧性状に与える燃料温度の影響は少ない(平成 14
年度バイオディーゼル燃料化事業技術検討会報告書)とされている。
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【BDF5%の場合】
運転条件
1サイクル
サイクル数
燃料温度
燃料交換
№1
①アイドリング 6h
25 サイクル
アイドリング時 40℃
48h毎
②定格 6h
(計 600h)
定格時 80℃
①定格 300h
1 サイクル
運転時 70℃
②停止 168h
(計 768h)
停止時常温
③停止 12h
№2
72h毎
③定格 300h
軽油
B5
試験結果
№1
N=1
N=2
性能評価
部品調査
性能評価
部品調査
性能評価
部品調査
コモンレールシステム
○
−
○
−
−
−
コンポ
噴射ポンプ
○
○
○
○
○
○
ーネント
レール
○
○
○
○
○
○
インジェクタ
○
○
○
−
○
△
備考
1)摺動部に磨耗が発生
2)摺動部、ノズルシート部に磨耗あり
№2
コモンレールシステム
○
−
○
−
−
−
コンポ
噴射ポンプ
○
○
○
○
○
△5)
ーネント
レール
○
○
○
○
○
○
インジェクタ
○
○
×3)
△4)
○
△6)
備考
3)レール圧 30Mpa で噴射量低下あり
4)摺動部に磨耗が発生
5)SCV バルブニードルの付着物が通常の軽油耐久と比べて多い
6)摺動部、ノズルシート部に磨耗あり
出典:経済産業省総合資源エネルギー調査会石油分科会石油部会第 21 回燃料政策小委員会 配布資料4−2
特記事項 ○:基準内 OK
×:基準外 NG
△:一部基準外条件付 OK
−:評価対象外
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⑤エンジンの耐久
今回の実証試験ではエンジントラブル等は発生しなかったが、資料によると次のとおりである。
【エンジン耐久試験(小型エンジン)
】
FAME5%混合軽油を直接噴射式および渦流室式を採用した2種の小型エンジンに適用し、エ
ンジン各部、燃料噴射系に及ぼす影響を調査し、自動車燃料としての適用性を評価した。
∼直接噴射式エンジン∼
対象
エンジン
燃料流量
○
摩耗状況
○
噴射系部品
ポンプ
○
燃料系配管
外面状況
○
燃料フィルタ
外観調査
○
オイルフィルタ
圧力損失
○
エンジン油
動粘度
○
∼渦流室式エンジン∼
対象
エンジン
燃料流量
○
摩耗状況
○
噴射系部品
フルQ特性
○
燃料系配管
燃料フィルタ
オイルフィルタ
エンジン油
外面状況
○
外観調査
○
外観調査
○
動粘度
○
※○印は異常なし
評価結果
出力
○
こう着状況
○
インジェクタ
○
内面状況
○
圧力損失
○
捕捉物
○
塩基物
○
各部温度
○
堆積物、スラッジ
○
内面分析
○
捕捉物
○
不溶解分
○
めっき膜厚
○
金属含有量 等
○
※○印は異常なし
評価結果
出力
各部温度
○
○
こう着状況
堆積物、スラッジ
○
○
ポンプ室圧
タイマー特性
調整点において基準
○
内。ただし、トルク点
および低速において遅
角傾向大
内面状況
○
圧力損失
○
圧力損失
○
塩基物
○
内面分析
○
捕捉量
○
捕捉量
○
不溶解分
○
腐食
○
その他、出力低下等の
異常低下なし
腐食
○
噴射圧、開弁圧
○
捕捉物分析
○
捕捉物分析
○
金属含有量 等
○
出典:経済産業省総合資源エネルギー調査会石油分科会石油部会第 21 回燃料政策小委員会 配布資料4−2
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【エンジン耐久試験(大型エンジン)
】
FAME5%混合軽油を直接噴射式を採用した大型エンジンに適用し、エンジン各部、燃料噴射
系等に及ぼす影響を調査し、自動車燃料としての適用性を評価した。
対象
エンジン
評価結果
最高出力点運転 1000hr.
(運転状況、部品評価) 試験中に燃料流量が低下した。
パターン運転 1000hr.
流量変化は小さく、運転状況に問題なし
エンジン各部評価において、耐久試験後に異常は見当たらなかった。
噴射系部品
サプライポンプ
インジェクタ
○
酸化触媒
摺動部に摩耗が確認された
・浄化性能
レール
噴射特性
○
○
・劣化 等
○
○
燃料フィルタ
○
○
オイルフィルタ
○
○
エンジン油
・オイル消費量
・オイル性状
・金属含有量 等
○
○
※○印は異常なし
出典:経済産業省総合資源エネルギー調査会石油分科会石油部会第 21 回燃料政策小委員会 配布資料4−2
⑥車両の耐久
今回の実証試験では、走行距離が最長の車両で約 2,700kmであったが、各車両のトラブルは
発生しなかった。参考まで、資料による車両耐久試験の結果を次のとおり示す。
【車両耐久試験】
FAME5%混合軽油を小型ディーゼル車両に適用し、市外地走行、高速走行および停車条件を
模擬して試験車両を走行・停止させ、試験後のエンジン各部、燃料噴射系等、燃料系部品等に
及ぼす影響を調査し、自動車燃料としての適用性を評価した。
∼試験結果のまとめ∼
・40,000km走行中、始動性および走行性について異常なく走行できた。
・エンジン動弁系、しゅう動部におけるこう着状況、摩耗、腐食、デポジット生成、スラッ
ジ発生等について、異常は見当たらなかった。
・燃料フィルタ、オイルフィルタについて、異常個所は見当たらなかった。
・噴射ポンプ、インジェクタについて、異常個所は見当たらなかった。
・噴射系配管において、インジェクションパイプ端末で残留有機物と推察される異物が付着
した。
・エンジン油の劣化について、5,000km走行毎の性状調査から、FAME5%混合軽油の使用に
よる著しい性状劣化はなかった。
出典:経済産業省総合資源エネルギー調査会石油分科会石油部会第 21 回燃料政策小委員会 配布資料4−2
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⑦燃料の品質(規格適合)
ニート規格に対する性状分析の結果は、試験法が指定されている全ての項目で規格を満たして
おり、製造したBDFが極めて良質であると評価できる。
一方、軽油強制規格に対する性状分析結果については、「メチルエステル含有量」及び「酸化
安定性」が規格値を超過する結果となったが、対策により規格適合が見込めるため良質な混合燃
料の製造が可能であると言える。
つまり、規販のディーゼル自動車に対しても安全に利用できる燃料の製造が可能であることが
わかり、実用化に向けて有効な結果が得られた。
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(2)環境性について
①排ガス特性
今回の実証試験では排ガス分析を行っていないため、BDF 使用時の排ガスについて評価で
きないが、資料によると次のとおりとされている。
項目
黒煙
BDFの評価
出典
含酸素燃料としての排気黒煙の低減効果は期
WWFC(World Wide Fuel
待できる。
Charter
世界燃料憲章)
ただし、カテゴリー4(高度な NOx、PM後
処理システムが要求される。排出ガス規制レ
ベルの最高位)では BDF の使用は認められて
いない。
PM
PM について、低負荷時には PM 中の可溶性
自動車技術会論文集
有機成分 SOF(Soluble Organic Fraction)が多
32(2),25-30(2001)
く、PM 排出量が軽油よりも高い。高負荷時で
は SOF が低く、不可溶成分であるすすが発生
「バイオディーゼルのすべて」
しにくいため、PM は低い。
アイピーシー出版
(軽油への)BDF 混合率 10%までの範囲では
経済産業省総合資源エネルギ
PM 排出量は、軽油と同等またはわずかに減少
ー調査会石油分科会石油部会
する傾向である。
燃料政策小委員会
ただし、BDF 混合率 20%から 100%まで添加
第 19 回配布資料5
した実験では、PM 排出量が増加する場合があ
るとされている。
NOx
(軽油への)BDF 混合率の増加に伴い、セタ
経済産業省総合資源エネルギ
ン価の低下等の影響により、NOx 排出量は増
ー調査会石油分科会石油部会
加する。
燃料政策小委員会
第 19 回配布資料5
SO2
BDF は通常硫黄分(S)が含まれないので、
「硫黄標準に関する調査研究」
硫黄分 50ppm 以下に規定される軽油より SO2
北牧祐子
排出量は低いとされてきた。しかし、平成 17
年 1 月からは硫黄分 10ppm 以下の軽油が供給
されており、BDF との大きな差は見られない。
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また、NEDO の平成 16 年度民生部門等地球温暖化対策実証モデル評価事業「北海道ローカ
ルエネルギーネットワークと連携した地域循環型 BDF モデル事業」成果報告書では次のとお
り記されている。
【排気ガス試験の結論】
植物油のメチルエステル燃料でディーゼル機関を運転した場合のエンジン性能ならびに
排気特性について検討を行った結果を要約すると以下の通りである。
*植物系のメチルエステル燃料は、主として炭素数 16∼18 の飽和ならびに不飽和の脂肪
酸メチルで構成されていることが明らかになった。
*軽油とメチルエステル燃料を用いてディーゼル機関を運転した場合の機関性能ならび
に排気特性を比較すると、両燃料で機関性能に差異は認められない。メチルエステル燃
料の場合、排気黒煙は低減するが、微粒子の排出は、低中負荷域でやや増加する傾向が
みられる。
*脂肪酸構成の異なるメチルエステル燃料は、ディーゼル機関の性能に大きな差はみられ
ない。排気特性を比較しても大きな差異は認められないが、脂肪酸の構成割合によりア
ルデヒドの排出に多少差異が認められた。
- 29 -
②CO2削減効果
今回の実証試験で使用した 100 リットルのBDFはバイオマス起源であるため、現行のIPC
Cガイドラインに基づく算定方法では燃焼による二酸化炭素排出は算定の対象外となる。実証試
験における直接的な CO2 削減量として次のとおり算出した。
【CO2排出量原単位】
項目
化石燃料
CO2排出原単位
軽油のCO2
排出量単位
地球温暖化対策の推進に関する法律施行令
2.62kg-CO2/L-軽油
(燃料の燃焼)
物資投入
出典
第 3 条(平成 18 年 3 月 24 日一部改正)
排出係数一覧表
電力
0.51kg- CO2/kWh
北海道電力HP環境情報データ集(2005 年度)
メタノール
0.300kg- CO2/kg-メタ
NEDO:化学関連産業分野における CO2 対策
技術評価法の調査 1992.3
水(上水・下水)
0.663kg- CO2/㎥
中空知広域水道企業団・石狩川流域下水道組合
独自算出(算出基礎:平成 16 年度)
ア)軽油を代替することによる CO2 削減量
100 L×2.62kg-CO2/L=262 kg-CO2
イ)製造時の電力消費に伴う CO2 排出量
14.6 kWh ×0.51kg- CO2/kWh=7.446 kg-CO2
ウ)製造時のメタノール消費に伴う CO2 排出量
15.067 kg(19 L)×0.300kg- CO2/kg=4.5201 kg-CO2
エ)製造時の水消費に伴う CO2 排出量
0.080 ㎥(80 L)×0.663kg- CO2/㎥=0.05304 kg-CO2
直接的な CO2 削減量=ア)−イ)−ウ)−エ)
=262 kg−7.446 kg−4.5201 kg−0.05304 kg
=249.98086 kg-CO2
※BDF100L を製造し、軽油に代替使用した場合の CO2 削減量は、約 250 kg-CO2 である。
- 30 -
(3)経済性について
①燃料消費率
理論上、BDF100%の発熱量は軽油より 10%程度低いため、同一出力を得るには燃料消費
量を増す必要があるとされている。(自動車技術会論文集 32(2),25-30(2001)、
「バイオディーゼ
ルのすべて」アイピーシー出版)
今回の実証試験では5%BDF混合軽油を使用しており、発熱量からすると燃料消費率がわ
ずかに下がるか同等であると予想されるが、試験期間中の燃料消費率を実際に計測し軽油使用
時の数値と比較したところ、試験車両 8 台のうち 5 台が軽油使用時と比べて向上した。BDF
は燃料に潤滑性を与える長所を持っており、試験車両6・7のように燃料による潤滑方式をと
る車両では特に燃料消費率が向上したことが見てとれる。ただし、混合燃料の給油をポリタン
ク容量18㍑単位で行ったことや気象条件・走行条件が軽油使用時と異なることを考慮すると、
必ずしも正確な比較が行えず参考程度と考える必要がある。
②コスト計算
今回の実証試験をもとに、企業等の事業主体が BDF の製造・販売を行う場合の経済性につ
いて概算で記述する。小規模で想定したケース1、中規模で想定したケース2ではともに赤字
になるが、大規模を想定したケース3では黒字が見込めることとなり、事業化に向けては規模
の拡大が必要となる。
- 31 -
【ケース1】
今回の実証試験に近い条件設定を行い、ナタネ BDF 小規模生産のケースとして試算する。
★設定条件(支出)
ア)原材料購入
品種はキザキノナタネ。5,000 ㎏を 189 円/㎏ナタネで購入。
イ)搾油
70 円/㎏ナタネで製油会社等に委託。搾油率 22%。
ウ)BDF 製造
*人件費
BDF100 ㍑/日の製造で年間 12 日雇用。
日額 5,000 円のアルバイト。
*設備費
製造能力 100 ㍑/日、3,500,000 円の装置を導入。減価償却は 10 年。
*資材・光熱水費 30 円/㍑ナタネ油とする。
産業廃棄物として 84 円/㎏グリセリンで処理委託。
*副産物処理費
★設定条件(収入)
エ)搾り粕販売
ナタネ搾り粕の販売は行わない。
オ)グリセリン販売 産業廃棄物処理により販売は行わない。
カ)BDF 販売
製造した BDF(歩留 90%)の販売価格を 100 円/㍑とする。
(年間支出)
原材料購入費
945,000 円
189 円×5,000 ㎏
搾油委託費
350,000 円
70 円×5,000 ㎏
BDF 製造費
*人件費
60,000 円
*設備費
350,000 円
日額 5,000 円×1 人×12 日
装置 1 台 3,500,000 円÷減価償却 10 年
*資材・光熱水費
36,660 円
30 円×1,222 ㍑ナタネ油(搾油率 22%、比重 0.9)
*副産物処理費
10,248 円
84 円×122 ㎏グリセリン(ナタネ油の 10%発生)
合 計
1,751,908 円 −①
(年間収入)
搾り粕販売
0円
グリセリン販売
0円
BDF 販売
合 計
110,000 円
100 円×1,100 ㍑(歩留 90%)
110,000 円 −②
(年間収入②)−(年間支出①)=1,751,908 円−110,000 円= −1,641,908 円
BDF ㍑あたりの収益 = −1,641,908 円÷1,100 ㍑= −1,493 円
- 32 -
【ケース2】
ケース1の設定条件を一部改善し、ナタネ BDF 中規模生産のケースとして試算する。
★設定条件(支出)
ア)原材料購入
品種はキザキノナタネ以外の多収量品種と仮定。
300,000 ㎏を 100 円/㎏ナタネで購入。
イ)搾油
1.2 円/㎏ナタネで製油会社等に委託。搾油率 35%。
ウ)BDF 製造
*人件費
BDF400 ㍑/日の製造で年間 300 日雇用。年額 1,800,000 円
*設備費
製造能力 400 ㍑/日、10,000,000 円の装置を導入。減価償却は 10 年。
*資材・光熱水費 20 円/㍑ナタネ油とする。
*副産物処理費
グリセリンを有価物として販売するため処理不要。
★設定条件(収入)
エ)搾り粕販売
高級肥料として 50 円/㎏で販売。
オ)グリセリン販売 融雪材として 300 円/㎏で販売。
カ)BDF 販売
製造した BDF(歩留 90%)の販売価格を 100 円/㍑とする。
(年間支出)
原材料購入費
搾油委託費
30,000,000 円
100 円×300,000 ㎏
360,000 円
1.2 円×300,000 ㎏
BDF 製造費
*人件費
1,800,000 円
年額 1,800,000 円×1 人
*設備費
1,000,000 円
装置 1 台 10,000,000 円÷減価償却 10 年
*資材・光熱水費 2,333,340 円
*副産物処理費
合 計
20 円×116,667 ㍑ナタネ油(搾油率 35%、比重 0.9)
0円
35,493,340 円 −①
(年間収入)
搾り粕販売
9,750,000 円
50 円×195,000 ㎏
グリセリン販売
3,500,100 円
300 円×11,667 ㎏
BDF 販売
合 計
10,500,000 円
100 円×105,000 ㍑(歩留 90%)
23,750,100 円 −②
(年間収入②)−(年間支出①)=23,750,100 円−35,493,340 円= −11,743,240 円
BDF ㍑あたりの収益 = −11,743,240 円÷105,000 ㍑= −112 円
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【ケース3】
ケース2の設定条件をさらに改善し、広域生産のナタネと市内で生産される水稲の米糠から
BDF を製造する大規模生産モデルにより試算する。
★設定条件(支出)
ア)原材料購入
ナタネの品種はキザキノナタネ以外の多収量品種と仮定。中空知地域
等の広域で生産した 30,000,000 ㎏を 80 円/㎏ナタネで購入。また、
滝川市内で生産される米 13,700tのうち米糠となる 1,370t(10%)
を 20 円/㎏米糠で購入。
イ)搾油
1円/㎏ナタネで製油会社等に委託。圧抽法によりナタネ搾油率 45%。
また、1円/㎏米糠で同様に委託。抽出法により米糠搾油率 20%。
ウ)BDF 製造
*人件費
BDF4,500 ㍑/日の製造で年間 300 日。年額 3,600,000 円×5人雇用。
*設備費
製造能力 4,500 ㍑/日、300,000,000 円の亜臨界法設備を 1/2 補助に
より導入。減価償却は 10 年。
*資材・光熱水費 5 円/㍑ナタネ油・米油とする。
*副産物処理費
グリセリンを有価物として販売するため処理不要。
★設定条件(収入)
エ)搾り粕販売
ナタネ搾り粕を飼料として 70 円/㎏で販売。また、脱脂米糠を 50 円
/㎏で販売。
オ)メタン燃料販売 グリセリンと脱脂米糠をバイオガス化によりメタン燃料として 80 円
/㍑で販売。グリセリン・脱脂米糠重量の 30%がメタン燃料に変換さ
れる。
カ)BDF 販売
亜臨界法で製造した BDF(歩留 97%)の販売価格を 100 円/㍑とする。
(年間支出)
原材料購入費
267,400,000 円
搾油委託費
4,370,000 円
BDF 製造費
*人件費
18,000,000 円
*設備費
15,000,000 円
*資材・光熱水費 9,022,220 円
(80 円×ナタネ 3,000,000 ㎏)+(20 円×米糠 1,370,000 ㎏)
(1 円×ナタネ 3,000,000 ㎏)+(1 円×米糠 1,370,000 ㎏)
年額 3,600,000 円×5 人
亜臨界法設備一式 300,000,000 円×1/2÷減価償却 10 年
{5 円×1,500,000 ㍑ナタネ油(搾油率 45%、比重 0.9)}
+{5 円×304,444 ㍑米油(搾油率 20%、比重 0.9)}
*副産物処理費
0円
合 計
313,792,220 円 −①
(年間収入)
搾り粕販売
メタン燃料販売
BDF 販売
合 計
170,300,000 円
(70 円×1,650,000 ㎏ナタネ搾り粕)
+(50 円×1,096,000 ㎏脱脂米糠)
80 円×(ナタネグリセリン 40,500 ㎏+米油グリセリン 8,220 ㎏)
3,897,600 円
175,031,100 円
100 円×{ナタネ BDF1,455,000 ㍑(歩留 97%)}
+{米油 BDF295,311 ㍑(歩留 97%)}
349,228,700 円 −②
(年間収入②)−(年間支出①)=349,228,700 円−313,792,220 円= 35,436,480 円
BDF ㍑あたりの収益 = 35,436,480 円÷1,750,311 ㍑= 20 円
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③5%BDF のリスク評価
軽油強制規格を満たす5%BDF は、既販車で安全に使用できるとされており、故障時のメー
カー保証や保険対応等、ユーザーに安心感をもたらす。安定した品質を保つナタネ油を原料とす
る場合において、車両修理代等のリスクを回避できる利点がある。
6 ナタネ油 BDF 実用化の展望
(1)実用化に向けた課題と対策
実車試験及び燃料の性状分析結果から安全に利用できるナタネ油 BDF の製造が可能であり、環境
性についても BDF 利用に伴い一定の効果を見込めるため、今回の実証試験では実用化に向けて重要
な成果を確認することができた。国産バイオマスの利活用においては共通の問題と言われる経済性に
ついて現状コスト高の感はあるが、「ケース3」のような規模の拡大に加えて、固体触媒法による低
コスト型燃料製造手法の導入や安価な燃料用ナタネ生産の研究、食用ナタネ 2 番搾りの活用、排出権
取引市場の活用やグリーン証券化による環境価値の創出、観光による経済効果の波及などさらなる対
策を講じることで価格競争力が高まる可能性が高い。一方で実用化に向けては、コスト上昇要因とな
り煩雑な手続きが必要な軽油引取税の免除やエネルギー作物栽培に対する支援策を関係機関に求め
ることが必要である。
(2)地域からの挑戦
地球温暖化問題が深刻化するなかで、脱化石燃料の観点から BDF を含むバイオ燃料の利用拡大が
推進されている。BDF が軽油の全てを代替することは難しいが、政府がバイオ燃料の導入目標を掲
げるように可能な限り再生可能エネルギーに置き換えていかなければならない。その場合、品質管理
の課題を伴い収集可能量の限られる廃食油の限界も想定できるところであり、食糧生産とのバランス
を考慮しつつエネルギー作物から燃料を生産する必要がある。休耕地や耕作放棄地の増加が懸念され
るなかで、エネルギー作物を栽培しながら必要な時に食用生産に転換できる畑の機能維持にも役立つ。
食糧・エネルギーの多くを諸外国に依存する我が国において、まずは地域が自給し両者のセキュリテ
ィを高めていくことが求められる。
今回の実証試験は、ナタネ油燃料の実用化に向けて重要なステップとなり、今後の展開の礎となる
大きな成果をあげた。ナタネという地域資源を活かし、環境にやさしいまちづくりや地域の活性化に
結びつけるべく、新年度以降の取り組みを進めていきたい。実用化にあたっては、車両によるBDF
利用の普及に限らず、生ゴミによるバイオガス発電の補助燃料として、または市内に基地を有するグ
ライダー関連でBDFを使用するなど、滝川市ならではの特徴ある展開も構想しながら、まちづくり
全体の効果を創出したい。
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