1 十勝管内のバイオマス資源について

1
十勝管内のバイオマス資源について
1-1
十勝のバイオマス資源量
十勝管内のバイオマス資源の賦存量については、平成16年2月に実施された北海道開
発局帯広開発建設部の「十勝圏循環社会型形成検討調査業務」において、十勝管内全域を
対象とした賦存量調査が行われており、この調査データが十勝管内の資源量を示すベース
として活用されている。
この調査では、十勝管内のバイオマス系廃棄物量は年間9,204kt と試算されおり、
十勝管内が大規模な畑作・酪農地帯であることを背景に、バイオマス系廃棄物全体に占め
る農業残渣や家畜糞尿が高い割合を示している。また、バイオマス系廃棄物全体の76%
あまりの7,067kt が製品・堆肥等として利用されており、未利用資源は2,137k
tと試算されているが、未利用資源の大分部が「ほ場における農業残さ」である。
帯広開発建設部が実施した賦存量調査のほかは、新エネルギービジョンの策定で11自
治体が、またバイオマスタウン構想を策定した4自治体が、最新のデータを踏まえながら
バイオマス資源の賦存量調査を行っている。
出典:帯広開発建設部
十勝圏循環社会型形成検討調査業務
1
平成 16 年 1 月
参 考
ごみの排出量と処理方法
北海道環境生活部環境局では、一般廃棄物処理事業実態について以下のような調査結果
を取りまとめている。ここでの「ごみ」とは、混合ごみ、可燃ごみ、不燃ごみ、資源ごみ、
粗大ごみ、その他のごみを指し、本調査で取り扱った食品系バイオマス(生活系厨芥類・
事業系厨芥類・動植物性残渣)が含まれる。(下水汚泥は含まれない。
)
平成 8∼17 年度の1人 1 日当たりのごみ排出量については、全国平均は 1,152g/人・日
から 1,131g/人・日とほぼ横ばいに推移している。
北海道のごみ排出・処理の状況
北海道の排出量は 1,505g/人・日から 1,221g/人・日と約 20%減少している。道内で
は、最小の更別村の 497g/人・日と、最大の礼文町 4,575g/人・日では、約 10 倍の差
があり、市町村間の格差が大きい状況となっている。
現在、バイオマスを含む一般廃棄物については、直接燃焼、資源化等中間処理、直接資
源化(再生業者等へ直接搬入される資源化)、直接最終処分に分類され、処理が行われてい
る。資源化には、堆肥化、飼料化、メタン化、ごみ燃料化などがある。
平成 8∼17 年度で、全体処理量は 305 万tから 22.3%減少し、237 万tとなっている。
内訳をみると、直接最終処分は 127 万tから 46 万tと処分量は 36.2%に大きく減少して
いる。直接焼却も 140 万tから 134 万tと 4.5%ほど減少している。平成 8 年度には直接資
源化は実施されていなかったが、2∼4 万tと全体量に占める割合は少ないが 10 年度から行
われている。資源化等中間処理は、38 万tから 54 万tに 1.4 倍に増えている。
ごみ処理方法は、環境的・経済的負担が大きい「処分」から、製品化、エネルギー化に
よる「利用」にシフトしており、廃棄物処理負担の軽減されている状況が把握できる。
廃棄物由来の堆肥の利用については、以下の点が課題として挙げられる。
農業への利用については、既存の農業体系の中で化学肥料や有機質肥料を用いた営農が
行われており、それら製品との競合となることから、供給体制の整備、コストの面などか
ら既存の産業体系に参入することは容易ではない。一般家庭への園芸用としての普及・販
売も同様であるが、市場ニーズに合わせた製品を生産しなければ普及は見込めない。公共
施設での堆肥生産も多いと思われるが、生産者自ら消費する方法、例えば道路・公園など
の緑化利用を考えなければならない。
人口が集中し、ごみ排出量が多い都市圏では、生産した肥料を還元する農地の割合が少
ないなど、カスケード的な利用を実施する場合も、地域特性を踏まえた利用システムを構
築する必要がある。廃棄物の利用については、経済的な面から、地域での利用を考えるべ
きで、地域の特色、産業構造に見合った利用方法の検討が必要である。
出典:一般廃棄物処理事業実態調査(平成17年度概要版/平成19年6月)北海道環境生
活部環境局循環型社会推進課
2
1,600
1,505
1,500
1,445
1,396
1,400
1,395
1,366
1,356
1,360
1,315
1,287
g/人・日)
1,300
全国
北海道
1,221
1,200
1,100
1,162
1,185
1,163
1,180
1,166
1,166
1,152
1,153
8年度
9年度 10年度 11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度 17年度
1,146
1,131
1,000
図
1人 1 日当たりのごみ排出量
直接焼却
資源化等中間処理
直接資源化
直接最終処分
350
300
250
127
112
95
95
95
91
88
75
62
3
万t
200
150
46
0
38
0
38
2
39
3
3
4
4
4
4
41
42
40
43
50
53
54
140
143
139
140
140
140
136
132
133
134
8年度
9年度
10年度
11年度
12年度
13年度
14年度
15年度
16年度
17年度
100
50
0
図
ごみ処理方法の推移
3
1-2
今後期待される資源
バイオマスのリファイナリーは非食用部の、機能性食品、飼料、肥料などへのカスケード
利用による付加価値の創造が大前提であると思われるが、昨今のバイオマスエネルギーの
利用となると、エタノール原料としてのコーンの価格高騰が起因となり世界的な食糧の高
騰を招く事態もあり「食とエネルギー」については、論争を巻き起こすことも多いが、本
来は未利用地を含む農地を維持するための政策として、バイオマスエネルギー政策が導入
されてきた経緯を忘れてはならない。
「食とエネルギー」の関係を議論するためには、農業、エネルギー、環境の密接な関係
についてより深く理解することが必要で、日本をはじめ多くの国々では、その理解不足か
ら議論がかみ合っていないと思われる。
無駄な論争を避けるためにも、十勝管内のバイオマス利用にあたっては、未利用資源の
うち 95%にあたる 2,035 kt を排出している「ほ場における農業残さ」、高いカロリー含有
により効率的な利用が期待される「食品残さ」から手掛けるべきであろう。特に、麦稈や
まめ殻などの「ほ場における農業残さ」は、ソフトセルロース系のバイオマス資源を選定
として、今後期待される分野である。
今後、賦存量調査においては、上述のソフトセルロース系のバイオマス資源や建築廃材
など新たな利用展開が期待できる未利用資源について注目し、未利用資源から逆に新たな
出口(利用法)を検討していかなければならない。また、経済的、環境的に使用に適した
バイオマス資源を選定するための詳細な調査や、それらを活かすためのシステム提案が必
要となる。
上記以外に期待される資源としては、国際的な穀物・食糧価格の高騰の要因となってい
るバイオエタノールのコーンや、欧州ではバイオガスの原料や熱源として使用されている、
牧草・デントコーンなど「資源作物」があるが、食との住み分けをするためにも、温暖化
により米の栽培北限が上がってきていることからも粗農法によるエネルギー米の利用や、
同じく粗農法によるビートのホールでの利用について検討する必要がある。
これまで日本では馴染みの薄い「資源作物」であったが、豊頃町ではナタネの栽培によ
る BDF 生産が計画されており、現在プラントが建設中である。
4
2
十勝管内のバイオマス利活用状況
2-1
バイオガスプラント
大規模酪農業においては、排出されるふん尿が膨大な量となることから、堆肥施設での
切り返し、農地への散布に伴う労力とコストが課題となる。
十勝では、30 年以上も前から帯広畜産大学でバイオガスプラントの研究が行われ、寒冷
地におけるプラント技術が確立されており、大規模酪農が増加し、ふん尿処理の問題が顕
在化し始めた平成 13 年からバイオガスプラントの本格建設が始まった。
十勝管内で、家畜ふん尿を原料とするバイオガスプラントは、平成 19 年まで 14 基が建
設されているが、独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の試験プラント 4
基は既に撤去されており、現在稼動しているのは 10 基である。
現在稼動している 10 基のうち、乳牛ふん尿を原料とするのは 8 基であり、残りは帯広農
業高校のプラントで豚・鶏のふん尿と厨芥を原料とするプラント、中札内村十勝ホッグフ
ァームの豚ふん尿を原料とするプラントである。
家畜ふん尿以外でも、JA 士幌町では、NEDO「地域バイオマス熱利用フィールドテスト事
業/食品加工残さバイオガス熱エネルギー供給システム研究事業」により、ジャガイモなど
の食品加工残さを原料としたバイオガスプラントが稼動しており、ガスを熱利用している。
この事業の研究期間は平成 18 年度∼20 年度までの 3 年間である。
5
表 十勝管内のバイオガスプラント(原料:家畜ふん尿)
№
稼働年
所在地
施設名
処理量
1
2001
帯広市
帯広畜産大学
乳牛(60 頭)
2
2002
帯広市
八千代公共育成牧場
乳牛(17 頭)
3
2002
清水町
宮崎牧場
乳牛(120 頭)
4
2002
清水町
大谷牧場
乳牛(150 頭)
5
2003
足寄町
吉村牧場
乳牛(130 頭)
6
2003
士幌町
鈴木牧場
乳牛(240 頭)
7
2003
士幌町
溝口牧場
乳牛(240 頭)
8
2004
足寄町
三津橋牧場
乳牛(250 頭)
9
2004
足寄町
新妻牧場
乳牛(250 頭)
10
2004
士幌町
房谷牧場
乳牛(200 頭)
11
2005
帯広市
帯広農業高校
豚・鶏・厨芥
12
2005
上士幌町
田中牧場
乳牛(550 頭)
13
2007
鹿追町
とかち高原の里地区
乳牛(1,320 頭)
14
2007
中札内村
十勝ホッグファーム
豚(23,500 頭)
※No.2∼5 は、NEDO 試験事業で建設されたが、試験終了により撤去済み。
6
2-1-1
個別型バイオガスプラント(家畜糞尿)
①乳牛ふん尿
家畜ふん尿を原料とする個別型バイオガスプラントは、帯広畜産大学で実験プラントに
よる研究が行われており、近年では平成 13 年の帯広畜産大学から平成 19 年までに 12 基が
建設されている。
そのうち 4 基はNEDO事業の試験施設で試験終了後に撤去され、現在は 8 基が稼動し
ている。
1 帯広畜産大学
成牛飼養頭数
処理対象
ふん尿排出、輸送
114 頭
フリーストール牛舎
ホイルローダー
受入・前処理
30m3
嫌気性発酵槽
円筒縦型
消化液衛生処理
消化液貯留槽
散布
ガス脱硫
ガスホルダー
成牛 60 頭
60 ㎥、滞留期間;15 日、高温発酵 55℃
高温発酵適用による殺菌
810 ㎥
スラリータンカー(14.5t)
生物脱硫
18m3
発電
ガス発電機
ボイラー設備
21500kcal
6kW
左:1975 年太陽熱集熱盤を用いたバイオガスプラント
ラント
7
右:2001 年建設バイオガスプ
2
帯広市八千代公共育成牧場
飼養頭数
成牛 140 頭
処理対象
成牛 15 頭・給食センター生ゴミなど食品廃棄物 1m3
ふん尿排出、輸送
ポンプ
受入・前処理
10m3
嫌気性発酵槽
円筒縦型
消化液衛生処理
24 ㎥、滞留期間;24 日、中温発酵;37℃
なし
消化液貯留槽
散布
ガス脱硫
ガスホルダー
発電
ボイラー設備
バンドスプレッダ・スラリーインジェクション
なし
PVC 製
1m3
なし
31,000kcal
8
3
清水町宮崎牧場
飼養頭数
成牛 80 頭
処理対象
フリーストール牛舎
ふん尿排出、輸送
ホイールローダー
受入・前処理
14m3
嫌気性発酵槽
円筒横型
消化液衛生処理
消化液貯留槽
成牛 100 頭
130 ㎥、滞留期間;20 日、中温発酵;40℃
2m3
加温殺菌槽
円筒縦型開放槽
1,150 ㎥
散布
ガス脱硫
ガスホルダー
発電
ボイラー設備
経営面積
活性炭脱硫
25m3
樹脂膜式
ガス発電機
20kW
起動用温水器、ガス焚き温水器;34,000kcal
20ha
9
4
清水町大谷牧場
飼養頭数
成牛;150 頭、育成牛;120 頭
処理対象
フリーストール牛舎
ふん尿排出、輸送
30m3
嫌気性発酵槽
円筒縦型
消化液衛生処理
設備なし
散布
ガス脱硫
ガスホルダー
成牛 120 頭
ボブキャット
受入・前処理
消化液貯留槽
合計;270 頭
215 ㎥、滞留期間;24 日、中温発酵 35℃
円筒縦型開放槽
1,900 ㎥
コントラ委託(14.5t)
乾式脱硫+生物脱硫
ゴム製ホルダー
発電
ガス発電機
ボイラー設備
50,000kcal
100m3
9.8kW
10
5
足寄町吉村牧場
飼養頭数
成牛 110 頭
処理対象
フリーストール牛舎
ふん尿排出、輸送
ボブキャット
受入・前処理
30m3
嫌気性発酵槽
160m3
消化液衛生処理
消化液貯留槽
成牛 100 頭
4 基、滞留期間;25∼30 日、中温発酵;35℃、高温発酵;55℃
設置せず
750m3
散布
ガス脱硫
ガスホルダー
発電
ボイラー設備
経営面積
乾式脱硫
30m3
混焼式ガス発電機
9.6kW
60,000kcal
113ha
11
6
士幌町鈴木牧場
飼養頭数
成牛 230 頭
処理対象
フリーストール牛舎
ふん尿排出、輸送
ガータークリーナー
成牛 250 頭
受入・前処理
80m3
嫌気性発酵槽
424m3 8 基、滞留日数;28 日、中温発酵;37℃
消化液衛生処理
消化液貯留槽
散布
ガス脱硫
ガスホルダー
発電
ボイラー設備
設備なし
3,300m3
スラリータンカー(20t)
生物脱硫+乾式脱硫
コンテナ収納型
30m3
マイクロガスタービン
30kW
60,000kcal
12
7
士幌町溝口牧場
飼養頭数
成牛 240 頭
処理対象
フリーストール牛舎
成牛 250 頭
配管・ポンプ
スラリーポンプ 100mm×7.5kw
受入・前処理
RC 造
50m3
嫌気性発酵槽
RC 造
663m3、滞留日数;40 日、中温発酵;35∼38℃
消化液衛生処理
消化液貯留槽
散布
ガス脱硫
ガスホルダー
発電
ボイラー設備
攪拌プロペラ付
設備なし
鋼製
3,180m3
スラリータンカー(20t)
生物脱硫方式
200m3
ゴム製ホルダー
混焼式ガス発電機
バイオガスボイラー
30kW
60,000kcal
13
8
足寄町三津橋牧場
飼養頭数
成牛 240 頭
処理対象
フリーストール牛舎
ふん尿排出、輸送
成牛 250 頭
ボブキャット
受入・前処理
75m3
嫌気性発酵槽
300m3、滞留日数;20 日、高温発酵;55℃
消化液衛生処理
消化液貯留槽
散布
高温発酵適用による殺菌
3,040m3
コントラによる畑地散布
ガス脱硫
生物脱硫 + 乾式脱硫
ガスホルダー
42.5m3 コンテナ内蔵型
発電
ボイラー設備
混焼式ガス発電機
30kW
ガス・灯油両用ボイラー
137,600kcal
14
9
足寄町新妻牧場
飼養頭数
成牛;210 頭、育成牛;40 頭
処理対象
フリーストール牛舎
ふん尿排出、輸送
合計;250 頭
250 頭(育成含めて)
ボブキャット
受入・前処理
55m3
嫌気性発酵槽
220m3、滞留日数;14 日、高温発酵;55℃
消化液衛生処理
消化液貯留槽
散布
高温発酵適用による殺菌
2,840m3
コントラによる畑地散布(14t)
ガス脱硫
生物脱硫 + 乾式脱硫
ガスホルダー
42.5m3 コンテナ内蔵型
発電
ボイラー設備
混焼式ガス発電機
30kW
ガス・灯油両用ボイラー
137,600kcal
15
10
士幌町房谷牧場
飼養頭数
成牛;140 頭
処理対象
フリーストール牛舎
ふん尿排出、輸送
育成牛;140 頭
合計;280 頭
成牛 320 頭
ボブキャット
受入・前処理
原料槽:78.5m3、計量槽 75m3
嫌気性発酵槽
671m3、滞留日数;30 日、中温発酵;38℃
消化液衛生処理
消化液貯留槽
散布
ガス脱硫
設備なし
3,959m3
スラリータンカー(14.5t)
乾式脱硫
ガスホルダー
55m3×2 基=110m3
発電
混焼式ガス発電機
ボイラー設備
40kW
灯油;31,000kcal、ガス;35,000kcal
16
11
帯広農業高校
飼養頭数
成牛;23 頭
処理対象
豚ふん・鶏ふん・食品残さ
ふん尿排出、輸送
育成牛;20 頭
合計;43 頭
専用配管
受入・前処理
原料槽:9m3
嫌気性発酵槽
18m3、滞留日数;30 日、中温発酵;35-40℃
消化液衛生処理
消化液貯留槽
設備なし
125m3
散布
ガス脱硫
ガスホルダー
発電
ボイラー設備
生物脱硫
発酵槽と一体
設備なし
2台
17
12
上士幌町田中牧場
飼養頭数
成牛;581 頭、育成牛;377 頭 合計;958 頭
処理対象
フリーストール牛舎 成牛 550 頭
ふん尿排出、輸送
バーンスクレーパー2 台
受入・前処理
197m3
嫌気性発酵槽
764m3、滞留日数;14 日、高温発酵;55℃
消化液衛生処理
消化液貯留槽
散布
ガス脱硫
ガスホルダー
発電
ボイラー設備
高温発酵適用による殺菌
4926m3 2 基
スラリースプレッダー(14t)
乾式脱硫
鋼板製ケーシング+ゴム製ホルダ
設備なし
蒸気ボイラ 135,000kcal 2 基
18
②豚ふん尿/中札内村十勝ホッグファーム
1.仕様・特長
本バイオガスプラントは、コンテナ型モジュール式メタン発酵槽を6台設置し、豚糞尿
を処理するシステムである。
ドイツ AGR 社の WISA システムを使用。同 システムは、コンテナ型モジュール式メタン
発酵槽を用いており構造がシンプルで、工期が短い。建設コストが安く、運転がシンプル
であり、動力を使わないため維持管理費が安いなどが特長である。
中札内村の策定したバイオマスタウン構想に適合した事業として、バイオマスの環づく
り交付金の補助を受けている。
2.仕様
建設場所
北海道河西郡中札内村
処理方式
嫌気性メタン発酵(中温発酵)
処理対象物
豚糞尿
処理能力
10t/日
エネルギー利用
ガス焚ボイラ
バイオガス性状
CH4 60%・CO2 40%・H2S 100ppm 以下
バイオガス発生量
300m3 /日
発酵槽容量
300m3(6 槽)
ガスホルダ
30m3
19
2-1-2
共同型バイオガスプラント
2007 年から十勝管内では初めてとなる共同型のバイオガスプラントが、鹿追町とかち高
原の里地区で稼動している。
堆肥やスラリーの散布時期には町内に悪臭が立ち込め観光客や町民に不快感を与えてい
ることから環境改善に対する要望が高まっており、その対策が町の緊急課題となっていた。
このことから、14 戸の酪農家 1,320 頭分の乳牛ふん尿を処理する十勝管内で初めての「集
中型バイオガスプラント」を建設し、嫌気性発酵処理の最終生成物である消化液と、併設
する堆肥舎で生産した堆肥を農地に還元することにより生活環境並びに地域環境の改善を
図る。一方、同様に生成物であるバイオガスを使い発電で得られる電気によりプラント電
力を賄い、余剰電力は売電し施設運営費に充当しており、バイオマス(有機質資源)を有
効利用した循環型農業の実現を目指している。
各農場内のふん尿が貯められているコンテナをトラックで回収している。農家が支払う
処理料金は、乳牛 1 頭あたり 12,000 円。
消化液は、畑作農家も使用することができる。散布はコントラクター事業で、ふん尿提
供農家は消化液1tあたり 100 円、畑作農家は1tあたり 200 円で、散布手数料は散布機
25t、1台あたり 12,500 円を支払う。
※ 以上、計画値含む
20
施設概要
所在地
河東郡鹿追町鹿追北4線5番地
名称
鹿追町環境保全センター
(経営主体)
鹿追町バイオガスプラント利用組合
処理戸数
14戸
処理能力
94.8t/日(成牛換算 1,320 頭)
発酵方式
嫌気性発酵処理 滞留日数30日 中温発酵38℃
ふん尿排出、輸送
15m3 コンテナ・トラック
原料槽(受入)
250m3×2基
発酵槽
箱型発酵槽 400m3×4基、円柱型発酵槽 800m3×2基
衛生処理
70℃1時間の蒸気による殺菌
貯留槽
23,900m3
散布方法
25tバンドスプレッダ
脱硫方法
生物脱硫+活性炭脱硫
ガスホルダー
250m3×2基
発電機
コジェネ型発電機 200kW×1台、100kW×1台(エネルギー効率 80%)
ボイラー設備
10万 kcal×3台
出典:鹿追町バイオガスパンフレット
原料投入ピットと原料輸送トラック
プラント建屋内
21
2-1-3
バイオガスプラントの新たな動き
北海道フーズ/士幌町農業協同組合 食品加工残渣バイオガスプラント
NEDO「地域バイオマス熱利用フィールドテスト事業/食品加工残さバイオガス熱エネルギー
供給システム研究事業」(事業期間は 18 年度∼20 年度までの 3 年間。)
原 料
じゃがいも(冷凍食品・ポテトチップス加工残渣)
処理量
15t/日
バイオガス発生量
3,500∼4,000m3/日(灯油 800KL分に相当)
ガス利用方法
スチームボイラー(1t)×2台
バイオガスプラント全景
士幌町農業協同組合はジャガイモやたまねぎなどの食品加工事業をおこなっている。こ
こでの悩みは1日あたり平均15∼16トンにも上る食品加工残渣。そのまま産業廃棄物
として処理しようとすると莫大な費用がかかることもあり、また地球環境のためにもリサ
イクル活用を検討してきた。すでに利用出来る食品加工残渣については飼料化していたが、
飼料として利用出来ない食品加工残渣もあり、堆肥化にしても、酪農地帯であるこの地域
では家畜の糞尿の量も多く、食品加工残渣の堆肥では需要が期待出来ないことや、食品加
工工場敷地内では、衛生面でも問題がある。
検討を重ねた結果、NEDO事業において、湿潤系のバイオマス利活用に有効な、メタ
ン発酵によるバイオガス化システムの導入を決定。同施設から発生するバイオガスを熱に
転換し、それまで重油を使用していた食品加工工場の代替エネルギーとして使用するプラ
ンを立てた。堆肥化に比べて多少イニシャルコストは高くなっても、食品工場ではメタン
ガスを主成分にしたバイオガスなら使い道があり、都市ガスに比べ60%から65%の熱
量しかないバイオガスは、大規模プラントを別にすれば、発電よりも熱利用のほうが高効
率になることを考慮され、同施設が導入された。
22
2-2
バイオエタノール
十勝はわが国を代表する農業地帯であり、小麦やてん菜をはじめとする農産物を生産
している。これらの中には、規格外の物や農産物加工工場などにおいて残渣物として排
出されるものがあり、近年、バイオエタノール原料としての利用可能性が模索されてい
る。
エタノールについては、食料との競合が指摘されているが、これから取り組む実証試
験では、規格外、余剰作物を原料とすることになっている。しかしこれは過渡期の原料
であり、国としては近い将来に、ソフトセルロースへの移行を目指している。ソフトセ
ルロースとしては、十勝なら例えば小麦の「ふすま」をエタノールの原料として活用も
考えられ、規格外、余剰作物を原料とする実証実験を行いながら、他の原料について賦
存量、輸送方法など早期に検討する必要がある。
バイオエタノールについは清水町と苫小牧市の実証試験で生産するアルコールはE
TBE向けに供給することになっているが、今後は、地域で利用することを検討してい
くことが重要と思われる。
バイオマス利活用の全てに共通しているが、主目的の生産物以外の副産物をどう処理
または活用していくかを検討することが重要で、十勝でのバイオマス利活用が事業とし
て継続するためにも、副産物の利活用に関する技術やシステムが提案されて、それが研
究開発等に結びつくことが重要である。
2-2-1
これまでの取り組み
農産物の規格外品や、圃場あるいは集出荷場・加工工場等における残渣は発生している
が、バイオエタノール生産の原料としてどのような品目を対象とするかは、エネルギー的
側面から検討するのではなく、十勝における農業経済あるいは経営的側面からも検討する
必要がある。
十勝の畑作においては、主として小麦、馬鈴しょ、てん菜、豆類の 4 品目による輪作体
系が定着しており、圃場の生産性を維持する上での合理的なシステムを形成している。し
かし、これらの内、砂糖やでん粉は供給過剰や内外価格差などが問題となっており、将来
的な作付け面積の減少、ひいては輪作体系の崩壊などが懸念される状況となっている。こ
のような状況を考えると、実際に諸外国で例が見られるとおり、エネルギー作物としての
位置付けをもってこれらの作物を栽培することも検討されるべき課題であるといえる。
出典:北海道十勝地域の規格外農産物及び農産加工残渣物利用におけるバイオエタノール変換システムに
関する事業化可能性調査(財団法人十勝圏振興機構)
23
①エネルギー作物栽培に係る実証試験
・事業名:エネルギー作物実証調査
・実施主体:北海道開発局帯広開発建設部
・期間:平成15年度∼17年度
セルロース系バイオマス技術は国外を中心に開発が進められてきており、我が国では近
年、試験プラントの設置が始まったばかりの状況にある。このため、国産エタノールの製
造に関しては、原料の確保から輸送、処理に至るまで不明な点が多く、多様なバイオマス
の比較検討を行い、技術開発を進めていく上では基礎データの収集が必要である。
本調査では、農村振興を目的としたバイオマス利用促進を図る一助としてモデル地域を
選定し、北海道におけるセルロース系バイオマス技術の導入に関する課題について技術、
コスト、事業化等の面から調査・検討している。
②バイオエタノールの事業化調査
・事業名: 「北海道経済産業局十勝地域の規格外農産物及び農産加工残渣物利用における
バイオエタノール変換システムに関する事業化可能性調査」
・実施主体:財団法人十勝圏振興機構
・期間:平成16年度
規格外農産物及び農産加工残渣を対象としてエタノール生産の可能性を検討するが、上
述したように安定的な農業生産を維持するために有効と思われる品目を見極めることが重
要であり、十勝において事業化調査が実施されている。
③寒冷地におけるE3燃料供給や走行適応性の技術試験
・事業名:環境省の「地球温暖化対策技術開発事業/バイオエタノール混合自動車燃料の
導入に関する技術開発事業」
・実施主体:財団法人十勝圏振興機構
・期間:平成16年度∼17年度
寒冷地における、E3ガソリン利用車の安全で快適な走行とE3ガソリンの安定供給シ
ステム構築のための研究開発を行った。
•自動車等の燃料供給系及び燃焼系の対応技術開発
•E3ガソリンの末端供給設備技術開発•走行試験
24
E3 ガソリン試験車輌
E3 ガソリン試験車輌と給油装置
④資源の多段階利用調査
・事業名:農林水産省委託プロジェクト「農林水産バイオリサイクル研究」
・実施主体:独)農業・生物系特定産業技術研究機構北海道農業研究センター
ほか十勝管内公設試験研究機関
・期間:平成17∼18年度
十勝の規格外小麦、テンサイ、ポテトパルプを原料として、エタノール、たんぱく質な
どを抽出する多段階利用システムの構築を図るため、学術研究機関、公共試験場及び企業
が連携して研究を実施した。十勝産業振興センターに、ベンチプラントを設置し、規格外
小麦、テンサイからエタノール抽出実験を行った。
⑤バイオエタノールの実用化に向けた調査・研究
・事業名:農林水産省委託プロジェクト地域活性化のためのバイオマス利用技術の開発
実施主体:独)農業・生物系特定産業技術研究機構北海道農業研究センター
ほか十勝管内公設試験研究機関
・期間:平成19∼23年
十勝管内研究機関が連携し、バイオ燃料原料として、ビートとジャガイモで新品種の育成
や採算性に見合う省力・低コスト生産技術バイオマス利用促進モデルの検討を行う。
25
▼国産バイオ燃料用ビートおよびジャガイモの育成と低コスト多収生産技術の開発
・多収系統の育成
・新規品種作付けを想定した新規輪作体系による省力・低コスト生産技術
▼北海道大規模畑作地域におけるバイオマス利用モデル
・規格外小麦、ビート、ジャガイモを原料としたエタノール製造技術の開発
・エタノール発酵副産物などの多段階利用による付加価値物質の生産技術の開発
・実証評価
⑥寒冷地におけるE10燃料供給や走行適応性の技術試験
・事業名
環境省の「地球温暖化対策技術開発事業/寒冷地におけるバイオエタノール混
合自動車燃料需要拡大のための自動車対応と流通に関する技術開発」
・実施主体
財団法人十勝圏振興機構(十勝産業振興センター)
・共同実施者
帯広畜産大学、帯広市川西農業協同組合ほか
・期間:平成19年度∼20年度
ガソリンにエタノールを最大で 10%混ぜた燃料「E10」に対応する試験車を用いて、財団
法人十勝圏振興機構が、十勝管内で走行実験を行っている。
十勝圏振興機構で製造している地元産の小麦やビートを原料にしてバイオエタノールを、
実験燃料として用いて、E10 対応車の実用化を目指して、燃費や部品の耐久性などのデータ
を集める。
2-2-2
清水町バイオエタノール製造大規模実証試験
清水町では、テンサイや規格外小麦を原料とするバイオエタノールの 製造工場が建設中
である。 生産能力は年間 1 万 5000kL で、国内最大規模となる。 平成 21 年 3 月の稼働を
目指す。バイオエタノールの商業販売を前提にした国内工場としては初となる。 農林水産
省による「バイオ燃料地域利用モデル実証事業」の一環で、北海道の農業協同組合連合会
などが設立した 新会社北海道バイオエタノール㈱が事業主体になる。
・事業者:北海道バイオエタノール
・原
料:てん菜、規格外小麦
・生産量:年間 1 万 5000kL 規模
・所在地:ホクレン清水製糖工場(清水町)
・着
工:平成 19 年 10 月
・完
成:平成 21 年 3 月(予定)
・事業期間:平成 19 年∼平成 23 年
・建設事業者:三菱商事株式会社、キリンビール株式会社、日本化学機械製造株式会社
26
2-3
BDF(バイオディーゼル燃料)
2-3-1
これまでの取り組み・地元企業による BDF の生産
十勝管内のBDF(バイオディーゼル燃料)に関する取り組みについては、平成 17 年の更
別町の更別企業のBDFプラントの建設を始めとして、4 企業による BDF 生産が行なわれて
いる。原料の回収率が低いなどの理由から、稼動率が低いプラントもある。
平成 17 年 更別町更別企業
BDF 事業開始
年産 180kL
平成 18 年 帯広市地球防衛商店 BDF 事業開始 年産 70kL
平成 19 年 帯広市株式会社北海道エコシス BDF 事業開始
平成 19 年 4 月∼平成 20 年 1 月の 10 ヶ月間で年産 5kL
平成 19 年 帯広市株式会社昭和工業 BDF 事業開始
平成 19 年 10 月∼平成 20 年 1 月の 4 ヶ月間で 20kL 生産
2-3-2
BDF施設の概要
事業者
株式会社更別企業
事業開始年
平成 12 年∼ BDF 事業調査(取引先からの情報提供を参考に事業開始)
導入の経緯
平成 15 年 BDF 購入により使用実験
平成 16 年 デモ機による製造試験(使用含む)
平成 17 年 機械導入による事業化(導入後品質向上の為の各種試験研
究を実施)
平成 18 年 自立事業化のため規模拡大を計画
平成 19 年 株式会社エコ ERC 設立
精製施設
生産量
施設建設費
1,800 万
精製能力
15,000L/日
平成 17 年 実績 80KL
平成 18 年 実績 120KL
回収方法
自主回収分として産業廃棄物系は十勝館内飲食店等から回収、一般廃
棄物系は拠点設置による回収、一部既存回収業者から購入調達
販売・利用
自社消費及び一般会員、企業会員で使用
今後の課題・要望
税制措置の緩和(環境配慮型の優遇措置)
二酸化炭素排出権市場の確立
揮発油の製造等の規制緩和
27
事業者
地球防衛商店
事業開始年
平成 18 年
導入の経緯
10年ほど前に、幕張メッセのごみ博で BDF が紹介されているのを TV
で見て興味を持っていた。
精製施設
セベック社製
価格350万円
生産量
年間70tほど(2 年間で130tを精製)
回収方法
・回収する廃食油のほとんどが市内の飲食店300店から無料で回収。
・一部個人からの持込みも受入。
・平成 19 年からカルビー工場と契約、工場からの廃食油を回収。
(カルビー社は、同商店の地産地消のバイオマスエネルギーの考え方に共感し、廃
食油の提供に協力している。同社は全国規模で BDF 事業に協力しているが、自社工
場から半径20km以内での事業展開が理想と考えている。)
今後は、年間300tまで処理量を伸ばしたいが、原料回収には様々
な課題があり、思うように数量が確保できていないのが現状。
販売・利用
商品名:はっちゃき油
販売価格は、軽油価格より10円差し引いた価格で販売している。現
在は冬期価格で115円/L で販売。
(平成 20 年 1 月現在)
・ 3月からの夏期価格は検討中。
・ 利用は個人の自家用車用がほとんど。
・ 会員制度を導入、入会金などはないが、ユーザーは車検証を登録。
・ 日々、BDF 利用の申し込みが来ているが、生産量が限られており、
断っている状況である。
今後の課題・要望
・現在BDF100%で会員に供給しているが、低温流動性を確保するた
めに冬期に限り軽油をブレンドした際の課税について減免が必要。
・バイオマスエネルギーは、地域のエネルギーであり、地域で回収し、
地域住民が使うべきとの持論で、BDF 事業を展開してきた。しかし、既
存の産廃事業者が廃食油を回収している上に、地元大手企業が BDF に
参入してくるなど、地元企業とのパイプがない同商店は、廃食油の確
保の点で不利で、事業拡大は困難な状況にあり、今後は個人からの回
収をどう増やすかが課題となる。
・増産するとなると、現在の作業場は手狭で、現有機械では処理能力
にも限界があるこことから、製造場所の移転も検討している。
・市内の廃食油が、市外で精製されているので、帯広市には、市内企
業、中小企業を優遇する制度を検討して欲しい。
28
事業者
株式会社北海道エコシス
事業開始年
平成 19 年
導入の経緯
BDF 精製施設の販売を目的に、経済産業省の開発事業に公募し、研究開
発を行い、平成 19 年に施設の開発が完了、平成 19 年4月より自社で
の本格稼動を開始。また、精製装置の販売を考えている。
精製施設
自社開発施設。販売予定価格 1,500 万円。生産能力 9,000L/月。
生産量
平成 19 年4月∼平成 20 年1月までに 5,000L の BDF を生産。(これは
自社で回収する事業系廃食油の 50%程度に相当。残りの 50%は BDF 原
料に適さない。)
回収方法
自社の廃棄物処理業で回収した廃食油を利用。
清水町役場から、町内で回収した廃食油の BDF 精製事業を受託、今後
精製を開始する予定。
販売・利用
生産した BDF は全量、自社の自動車で消費している。
今後の課題・要望
・原料確保:今後新たに廃食油を回収し、BDF に精製、販売の計画は無
い。十勝管内は BDF 製造業者が過密状態で、同社としては積極的に回
収するつもりはなく、これまで同様に自社回収分を精製し、自家消費
を考えている。今後 BDF 事業を拡大するためには、一般家庭からの回
収システムの構築が課題であると考えている。
・市場開拓:精製装置の販売価格は 1,500 万円を予定していて、将来
的には年間 5 台を販売目標としている。同社では廃食油の取扱量に応
じた装置製造が可能である。これまでに、数件の問い合わせが来てい
るが、装置の販売実績はまだない。十勝では今後も原料の回収につい
て飽和状態が続くと思われ、BFD 製造事業者の新規参入は難しいと思わ
れるが、全道規模では市場開拓できる可能性はある。
・税制優遇措置:BDF の普及のためには、低温流動性を確保するために
冬期の軽油ブレンドに対して非課税などの税制面の優遇が必要。
・施設整備に対する補助:一般企業が精製施設を導入するケースでも
施設整備に補助制度があれば、BDF の普及に期待ができる。
29
事業者
昭和工業株式会社
事業開始年
2007 年 6 月
導入の経緯
建設業の環境対策として必要と思い実施している。全体収支は赤字を
想定。
精製施設
価格 1,500 万円。精製能力は 10,000L/月。
生産量
2007 年 10 月より本格稼動、精製能力を満たす原料が確保できていない
ため、月産 5,000L、稼働率は 50%に留まっている。
回収方法
・飲食店、ホテルなどの外食産業から 2 円/L で買い取っている。
・2008 年 4 月から、十勝エネルギーネットワークがスーパーマーケッ
トに回収 BOX を配置する計画があり、その一部を同社で処理する予定。
販売・利用
現在は自社の作業機械で全て利用。今後は、会員企業を募り販売して
いく予定。
今後の課題・要望
・収集の底上げ: BDF 事業者の多くが参入している事業系廃食油の回
収は、数量が限られていることから、これ以上の原料確保は望めない
ので、今後は一般家庭からの回収システムの構築が必要。
・地域廃棄物の適正処理:BDF 事業が推進されることで、地域での廃棄
物処理施設の負担が減り、地域住民の経済負担の軽減にも繋がってい
くことを期待している。また、廃食油の不法投棄が減り、環境汚染の
防止に役立つものと考えている。
・添加剤の自己開発:冬期間低温時には、BDF 単体だと凝固するので、
軽油 80%:BDF20%の割合で混合して利用している。冬期でも BDF100%
で利用できるよう自社で独自の添加剤を開発中。
・補助事業:初期投資への補助金利用を検討したが、採択まで時間が
かかると思い、管内建設業で最初に BDF 事業に取り組みたかったため
申請はしなかった。今後の事業の展開次第では補助事業を利用するこ
とも検討する。
・地域のシステム:一般家庭からの回収が今後の BDF 事業の鍵と考え
る。町内会単位での回収し、子ども会、老人会に対して、金銭的に還
元することで地域貢献したいが、廃食油も可燃物であることから回収
に当たっての適正な取り扱い方法も併せて考えなければならない。
・環境企業への優遇:バイオマスエネルギーの普及対策として、環境
に配慮した企業に対し、事業面での優遇制度の導入が必要。軽油との
ブレンドに対して冬期間だけでも免税措置の導入が必要。
(夏期は家庭
でも揚げ物料理は減るが、冬期間は宴会が多いこともあり廃食油の排
出量は多いと思われる。冬期、BDF 精製量は増えるのに、課税により使
用が制限されるのはもったいない話である。)
30
2-3-3
十勝におけるBDFの取り組み
① BDF トラクター性能試験/帯広畜産大学
帯広畜産大学で実施されたトラクター性能試験において、トルク、PTO出力、排気煙
濃度、粘度温度特性について十勝で製造したBDFは通常の軽油と同等の性能を示すこと
が把握されている。
② 2006 国際農業機械展 in 帯広
BDF シャトルバス(平成 18 年)
2006 国際農業機械展 in 帯広では、会場と駅を往復するシャトルバスの燃料として BDF が
使用された。
③
FIS
十勝 24 時間耐久レース(平成 19 年)
FIS 十勝 24 時間耐久レースには、BDF 自動車が参戦。
31
④
BDF発電機によるバイオマスライブ開催(平成 19 年)
WRC世界ラリー選手権会場(帯広市)では、BDF 発電機を用いたライブコンサートが実
施されている。
32
2-3-4
BDFの新たな動き
①地域連携型BDF生産システム構築事業
豊頃町では、農地の新たな利活用として、コントラクター事業にて菜の花を栽培し、こ
れを原料に BDF を製造し農作業機械などで利用することで、営農に必要な作業用燃料の自
給、化石燃料に依存しない農業体系の確立を計画している。
また、ナタネ食用油の一部は地域振興に寄与する産品として販売する。資源循環に取組
む理念のもと、地元観光地などで食用として利用し、宿泊施設で排出された廃食用油の回
収体系を構築、製造された BDF を温泉施設のボイラーや送迎バスで利活用する。
製造過程において副産される「ナタネ絞りかす」「粗グリセリン」「硫酸カリウム」は、
それぞれ肥料や飼料、BDF 製造用燃料として利用し、バイオマスの多段階活用を図る。
出展:豊頃町バイオマスタウン構想
豊頃町の策定したバイオマスタウン構想をもとに、BDF 製造事業と農業が連携することに
よる新しいビジネスモデルの構築を目指して、地域の関係者により新会社㈱エコERCを
設立し、農林水産省の地域バイオマス利活用整備交付金を活用し道内最大規模の BDF の製
造工場を建設している。
エコ ERC 豊頃工場
事業者
株式会社エコERC(北海道帯広市東 2 条南 29 丁目 2-6)
所在地
北海道中川郡豊頃町
施設概要
バイオマス利活用交付施設、
軽油代替燃料・BDF 道内最大プラント
完
成
生産量
2008 年 3 月(予定)
3,600L/日
1,000kL /年間
33
株式会社エコ ERC BDF 事業のシステムフロー
34
②寒冷地における環境に配慮した路線バスシステム構築に関する実証試験(N
EDO)
帯広市と市内バス事業者などは、平成19年度に独)新エネルギー・産業技術総合開発
機構(NEDO)の補助事業を活用して、BDF(バイオディーゼル燃料)を使った路線
バス実証実験を実施した。事業終了後もBDFに精製される家庭などからの廃てんぷら油
(廃食油)回収を継続している。
需要応答型バスの管理拠点「省エネ・モビリティセンター」(エコバスセンターりくる、
JR帯広駅バス待合室内)や路線バス車内に回収箱を設置、家庭や小規模店舗などから廃
食油回収を行っており、市内小学校でも児童の家庭からの回収、市内保育所(園)の給食
室から出る廃食油も回収を行っている。
路線バス内廃食油回収ボックス
エコバスカード
35
2-4
木質バイオマス
2-4-1
これまでの取り組み・足寄町とかちペレット協同組合
足寄町では、平成 13 年の地域新エネルギービジョン策定を機に、木質ペレットの生産が
始まっている。実験事業などを経て、平成16年にとかちペレット協同組合を設立、平成
17年には旧足寄西中学校に木質ペレット工場を建設し、平成 19 年には 435tの木質ペレ
ットを生産している。同工場の生産能力からすると 58%の稼働率であり、今後はフル稼働
させるための原料供給体制、産業利用を含めたペレット利用施設の普及が課題となる。
国内では、大規模な生産施設が複数計画されているが、大量に生産されたペレットの行
き先が懸念される、発電施設の導入など検討する必要がある。
十勝においても、産業用熱源として活用する場合には、管理体制、輸送施設・方法、利
用施設など、開発を含めた検討課題がある。
事業者
とかちペレット協同組合
事業開始年
平成13年:足寄町地域新エネルギービジョン策定
導入の経緯
平成14年:北海道地域政策補助金(ペレット製造機の導入、ペレッ
ト試作品の作成及び燃焼実験)
平成15年:農林水産省バイオマス利活用フロンティア推進事業(木
質ペレットの製造に向けた調査、検討及び他用途への可能性の調査)
平成15年:各種検討会、シンポジウム開催などの啓発事業
平成15年:足寄町木質ペレット研究会設立(会長中島正博氏(宮口
産業㈱代表取締役)、会員14社)
平成16年:とかちペレット協同組合設立(会長中島正博(宮口産業
㈱代表取締役)構成員14社、出資金420万円)
平成17年:旧足寄西中学校に木質ペレット工場建設。
林野庁事業「強い林業・木材産業づくり交付金(木質バイオマスエネ
ルギー利用促進整備(道事業名「木質バイオマス資源活用促進事業」)
施設
製造能力:年間750トン
生産量
2 年間の 6 ヶ月ごとの生産量は、143t∼238tで、年間平均は 408t。
表
とかちペレット協同組合
生産量(t)
期間
生産
H17 年 10 月∼18 年 6 月
238
H18 年 7 月∼18 年 12 月
143
H19 年 1 月∼19 年 6 月
214
H19 年 7 月∼19 年 12 月
221
36
原料・運搬
主として林地残材を運搬して原料としている。
販売・利用
管内では一般家庭などに 100 台のペレットストーブが普及している
他、足寄町役場、町子供センターなど公共施設でも木質ペレットボイ
ラーが導入されている。
表
とかちペレット協同組合
期
今後の課題・要望
間
販売量(t)
ストーブ
ボイラー
計
H17 年 10 月∼18 年 6 月
75
0
75
H18 年 7 月∼18 年 12 月
70
70
140
H19 年 1 月∼19 年 6 月
58
154
212
H19 年 7 月∼19 年 12 月
92
124
216
・林業全体の効率化:木質バイオマスの利活用には原料を供給する林
業が外圧にも耐えうるくらいの体質改善・強化が必要。木質ペレット
の原料となる「林地残材」を「林置残材」と標記を間違えられること
が多いが、間違えられた標記のとおり実際に山林に「置かれた状態」
であり、資源として活用しづらい状況。スウェーデンでは大規模に効
率よく山から加工場まで原木を搬出し、加工場で発生する残材も無駄
なく利用している。足寄町でも最近は土場で集中的に玉切するように
なってからは原料を収集しやすくなった。林業全体の効率化により原
木のまま山から搬出して、林置残材から土場残材、加工残材にするこ
とで、木質ペレットの経済性の向上を図る必要がある。
・マーケットの予測・供給体制の整備:石油ストーブと比較して大型
であるペレットストーブは、日本人のライフスタイル、住宅事情から、
一般家庭への普及率は低く推移すると考えられていた。確かに、原油
高騰や小型ストーブの開発により、一般家庭の燃料としても木質ペレ
ットの注目度は上がっているが、今後、大きく需要が伸びるとは考え
ていない。もともと、原料の賦存量からみても足寄町全世帯のエネル
ギーをカバーすることはできないのも事実。産業用(例えば農業での
利用)としの利用については、燃料としての価格競争力で全てが決ま
ってしまうので、いまだ市場価格の形成が不安定なペレットを導入す
ることは、個別の相対取引で価格を決定しないかぎり、ペレットの導
入は難しい。今後も、市場と連動した生産体制の整備が必要であると
考えている。
・再生可能エネルギーの導入:生産プロセスで必要とされるエネルギ
ーは、木質発電バイオガス、太陽光、地中熱などの利用による、環境
37
的にも経済的にも効果のあるハイブリッド型システムの開発が必要。
利用の多様化:農業では、ハウス、畜舎などで熱源を要するので、そ
れらのエネルギーとして利用に可能性がある。そのためには、輸送シ
ステム、貯蔵、充填を含めた燃焼システムの開発が必要となる。スウ
ェーデンではペレットのバルク輸送が普通であり、バルク輸送は大口
需要先等へ向けた搬送には適している。
・公共施設への普及:石油代替エネルギーとしての普及が既に導入が
進んでおり、消費量も予見できるため、生産計画のベースとなる。
災害時の非常用エネルギー:災害時の非常用エネルギーとして、避難
所となる学校など公共施設に備蓄についても可能性がある。石油燃料
と違い、貯留施設破損時の、土中・水系への流失リスクは減らせる。
工場内
足寄町役場
冬期作業風景
木質ペレットボイラー
木質ペレットストーブ
38
木質ペレットストーブ
木質ペレットストーブ
39
2-5
その他の取り組み
2-5-1
馬鈴薯からの有用ペプチドの生産技術開発
北海道と帯広市は、十勝管内の農業・畜産業に関わる独創性豊かな科学技術を融合させ、
機能性素材の高度利用の地域内システム化や安全性の確立を目指し、平成17年度より3
年間、文部科学省の「都市エリア産学官連携促進事業(一般型)」を実施してきた。この事
業は(財)十勝圏振興機構を中核機関、帯広畜産大学をコア研究機関として、十勝管内の
公設試験研究機関、民間企業が連携して取り組んだ研究の成果を活かして、数多くの事業
化・商品化に結びつけ、また、次の発展的な研究につながる研究・技術成果を生み出して
いる。研究テーマの中でも「馬鈴薯からの有用ペプチドの生産技術開発」は、農産加工プ
ロセスから生じる未利用の加工残渣物(未利用バイオマス資源)から高付加価値な機能性
食品素材を抽出する新しいビジネスモデルを示すことに成功し、新事業創出による地域の
活性化の可能性を示すことができた。このシステムはバイオマスリファイナリーを構築す
るうえでの重要なスキームになるものと思われる。
▼「馬鈴薯からの有用ペプチドの生産技術開発」
馬鈴薯でん粉の製造工程における未利用残渣物から健康機能性素材(ポテトペプ
チド)の抽出技術を確立した。機能性評価研究の実施により、血清中 HDL コレス
テロール(善玉)が増加し、LDL コレステロール(悪玉)が低下する機能性が明ら
かとなり、健康機能性食品素材として製品化され、地域農業生産団体・共同研究参
画企業の新事業の創出に結びついた。今後、食品産業分野で幅広い利用が期待され、
平成20年度以降、年間2億円程度の製造・販売が計画されている。
40
2-5-2
澱粉製造処理水からの蛋白回収(南十勝地区
農村振興整備事業)
毎年 8 月下旬から 12 月上旬までの約 3 ヶ月間に操業する中札内村の南十勝合理化澱粉工
場は、澱粉原料の馬鈴薯芋 1 日当たり 2,000 トンを澱粉製造処理した際に発生するデカン
タ汁液、約 2,350 トンから蛋白 62.6ton/日、余剰汚泥 12ton/日の資源回収を行い、その後
の排水を浄化処理して河川放流している。
デカンタ汁液(澱粉製造の工程で、原料である馬鈴薯芋を磨砕し、固液分離した際に発
生する液分)の、処理プロセスにおいて嫌気性処理槽で処理され、回収されたバイオガス
は施設内で利用されている。
回収蛋白
41
3
国内外のバイオマス利活用先進事例
国内ではバイオガスを自動車で利用している例が数多くあり、管内でも北海道開発局が
バイオガスをトラクター燃料とし利用する試験に取り組んでいる。スウェーデンではバイ
オガスが鉄道車両の燃料として利用されており、先進事例を参考にしながらバイオマスの
利用を検討していく必要がある。
3-1
国内事例
3-1-1
①
バイオガス
バイオガス多角的利用に関する地産地消モデル構築調査(北海道開発局)
北海道開発局では、平成19年度北海道開発計画調査として、「バイオガス多角的利用に
関する地産地消モデル構築調査」を実施した。
公募により網走市及び足寄町を調査対象地域として選定し、CO2 排出量の削減等のため、
家畜排せつ物由来のバイオガスをトラクタの燃料や住宅等へ多角的に利用するシステムを
確立し、「エネルギー地産地消」の地域モデルを構築するための調査・検討を行った。
ガス精製・高圧充填装置とトラクター
バイオガス対応トラクター
42
②
兵庫県神戸市東灘下水処理場
バイオ天然ガス化設備
住所
兵庫県神戸市東灘区魚崎町南町 2-1-23
管理者
神戸市建設局下水道河川部工務課
施工業者
株式会社神鋼環境ソリューション
(担当:北海道支社
品川祐司
小池
電話 078-322-5458
電話 011−241−4647)
工期
平成 18 年(2006 年)∼平成 20 年(2008 年)
稼動開始
実験施設稼動:平成 16 年(2004 年)
バイオガスバス運行:平成 18 年(2006 年)10 月 2 日
本施設稼動:平成 20 年(2008 年)4 月
建設費
17 億円
補助金:国土交通省新世代下水道支援事業。主要施設(精製装置、ガス
タンク、ガス供給設備)の建設費の約 50%が補助対象。
原料
下水汚泥
設備
神戸市では年間 2 億 m3 の下水を処理し、その処理過程で発生する 110
万 m3 の汚泥から 1,000 万 m3 の消化ガス(重油 700 万 L に相当)が発生。
このバイオガスでバスを走らせる国内初の取り組みで、0.9Mpa まで昇
圧したバイオガスを下水処理水と接触させる高圧水吸収法により、純度
60%程度のバイオガスを純度 98%以上に精製され、硫化水素やシロキ
サンまで除去される。
下水汚泥メタン発酵:38℃-20 日間
ガス発生量:汚水 1m3 あたり 0.05m3
今後の計画「こうべバイオガス活用設備」
東灘処理場の消化ガス発生量 8,200 m3(/日)を 4,900 m3 に精製、2,900
m3 を場内利用し、残り 2,000 m3 を天然ガス自動車燃料として供給。
高圧水処理:0.9Mpa
車両充填時圧力:2.4Mpa
経済収支
販売は民間事業者に委託する予定。販売価格ガソリン、都市ガスと同程
度の販売価格とする見通し。
環境評価
1 日に 50km 走行する市バスでは年間 1 台あたり 30tの CO2 排出削減効
CO2 削減効果
果があり、合計では 1,200tの削減効果となる。
その他
本年 10 月より、魚崎営業所の大型バス 1 台を運行開始、大型設備が完
成する 2008 年には 300 万 m3/年を 180 万 m3/年に精製し、バス 40 台
分のガスが生産できる。新設備の稼働後は現在、70%程度の発生ガスの
再利用率が 100%になる見通し。
43
写真
バイオガスバス 神戸市交通局
写真
バイオガス自動車 神戸市下水処理場
写真
バイオガス自動車 神戸市下水処理場
44
写真
神戸市下水処理場
写真
バイオガス高圧水精製プラント 神戸市下水処理場
写真
バイオガス高圧水精製プラント 神戸市下水処理場
45
写真
バイオガス充填装置 神戸市下水処理場
46
③
カンポリサイクルプラザ
住所
バイオリサイクル施設
京都府船井郡園部市高屋西谷 1 番地
Tel:0771-68-3636
管理者
Fax:0771-68-3639
カンポリサイクルプラザ株式会社
設立 1999 年 4 月
代表者:代表者
山田実
資本金 4 億円(㈱タクマ、㈱カンポ各 50%)
施工業者
株式会社タクマ
視察受付
北海道支店環境プラント課
Tel:(011)221-4148
問谷一麻
Fax:(011)241-0523
E-Mail:kazuma@takuma.co.jp
工期
平成 15 年(2003 年)8 月∼平成 16 年(2004 年)2 月
稼動開始
平成 16 年(2004 年)
建設費
16 億 4 千万円
内 40%は農水省食品リサイクルモデル緊急整備事業
原料
50t/日
原料含水率 60∼85%
一般廃棄物:厨芥類・剪定枝
産業廃棄物:動植物残渣・食品汚泥
収集範囲は近畿一円
設備
乾式バイオガスプラント
55℃−20∼30 日間
発電 310kW×2 台
ガスエンジンによるコージェネ
天然ガス車(トラック・フォークリフト)による利用
経済収支
売上目標:3 年後 4 億円
その他
乾式バイオガスプラントとして国内初
47
写真
バイオリサイクル施設看板 京都府園部市カンポリサイクルプラザ
写真
バイオガスプラント 京都府園部市カンポリサイクルプラザ
写真
バイオガス高圧水精製プラント 京都府園部市カンポリサイクルプラザ
48
写真
バイオガススタンド 京都府園部市カンポリサイクルプラザ
写真
バイオガススタンド 京都府園部市カンポリサイクルプラザ
写真
バイオガススタンド 京都府園部市カンポリサイクルプラザ
49
写真
バイオガス自動車 京都府園部市カンポリサイクルプラザ
写真
バイオガスフォークリフト 京都府園部市カンポリサイクルプラザ
写真
バイオガスフォークリフト ガス充填部分
50
④ 生ごみバイオガスプラント・ごみ回収車へのバイオガス利用/横須賀市・
住友重工業/平成 13∼17 年度実証試験事業
同施設は、一般家庭生ごみからバイオガスを生産し、5 気圧の加圧によりバイオガス中の
CO2 を除去し、純度の高いバイオガスを抽出して、ごみ収集車の燃料に使用しているシステ
ムである。抽出後の純度の低いバイオガス(オフガス)はボイラー燃料として利用するこ
とが可能。バイオガス改質装置は、直径 20cm長さ 1mほどのコンパクトな施設である。
(1)事業の背景
横須賀市では、平成 13 年度(2001 年度)にリサイクルプラザ"アイクル"の稼働で容器包装
廃棄物の資源化に一定の目途がつき、さらなる資源化をめざしている中で、廃棄物処理に
ついて豊富な経験とノウハウを有する地元企業の住友重機械工業株式会社から燃せるごみ
中の生ごみからバイオガスを取り出し、自動車燃料とする技術やシステムの開発について
提案があり、共同研究をスタートさせた。
(2)事業目的
総ごみ排出量の 80%を占める燃せるごみの減量化・資源化施策として、燃せるごみ中に
含まれる生ごみからバイオガスを取り出し、自動車燃料とすることにより、横須賀市にお
ける燃せるごみの処理プロセスとしての適用性を技術面及び経済面から検討した。
(3)研究の内容
横須賀市内で排出される「燃せるごみ」から「生ごみ」を効率的に選別し、メタン発酵
により得たバイオガスを圧縮天然ガス自動車燃料に精製して、ごみ収集車を走らせようと
するものであった。
(4)研究の効果
燃せるごみ中の生ごみを資源として活用できるとともに、ごみ焼却量を約 40%減少させ
ることができます。さらに、バイオガスを自動車燃料とすることによって、排気ガスによ
る環境負荷の軽減を図ることができる。
51
写真
施設全景
写真
ガス改質装置
写真
バイオガス充填所
52
写真
ガススタンド
写真
ガススタンド ガスノズル
写真
生ごみパッカー車
53
写真
パッカー車ガス充填口
写真
バイオガス自動車
54
3-1-2
バイオエタノール
廃木材エタノール製造プラント
施設名
燃料用エタノール製造プラント
住所
大阪府堺市西区築港新町 3-54(TEL:072-280-0820)
管理者
バイオエタノール・ジャパン関西株式会社
施工業者
大成建設株式会社
完成
平成 18 年 12 月
稼動開始
平成 19 年 1 月
設備
エタノール生産量
1,400kL/年
エタノール製造能力 4,000kL/年(平成 20 年)
原料
建築廃木材:48,000 トン
売上高目標
年間五億円
建設廃材処理の大栄環境(神戸市)が集めた廃材をエタノールに加
工して石油元売り会社に販売する。石油元売りはガソリンにエタノ
ールを3%混ぜて使う。1リットルあたり五十円程度で出荷できる
見通し。廃材処理の受託費も含めれば採算ラインを超える。
55
3-1-3
B
D
F
飲食店による廃食油の回収(ハンバーグレストランびっくりドンキー(恵庭市))
利用者からのハンバーグレストランびっくりドンキーでは、レジ横に廃食油の回収箱を
設置し、利用者からの廃食油の回収が行われている。精製した BDF は、恵庭駅と同店を往
復するシャトルバスの燃料に使用されている。
飲食店に導入されている廃食油回収箱
56
3-1-4
木質バイオマス
木質バイオマスを原料にしたアルコールについても第2世代燃料として注目されており、
アメリカでは酵素を使って一つの槽で糖化と発酵を同時に連続酵母発酵法が研究開発され
ている。日本でも岡山県の真庭市と大阪府の堺市で木質バイオマスからバイオエタノール
を精製しているが、原料としているのは建築廃材で、受入の際に産廃処理費を収入として
得ることにより事業全体の採算を確保している。
北海道では 150 万 t の未利用資源、そのうち利用可能な資源は 60 万トンと推定される。
林地残材、間伐材を有効利用することは 1 石 3 鳥となる。
参考:「木質バイオマスのエネルギー利用」北海道大学大学院農学研究院森林資源科学小島康雄
十勝バイオマス WEEK2007/バイオマスシンポジウム(2007 年 9 月 3 日・帯広東急イン)講演
■ 木質バイオマスのエネルギー利用形態
▼直接燃焼
燃料チップ 電熱供給 : コジェネ 蒸気タービン
燃料ペレット 熱供給
: ストーブ、ボイラー
燃料炭
: ストーブ、グリル
燃料供給
▼第2世代バイオ燃料 木質系バイオマス資源の燃料化
燃焼ガス生産 電熱供給 : コジェネ、
発酵アルコール生産 自動車燃料
57
BDF合成
① 北大方式
熱分解ガス化システム
北海道大学では、熱分解ガス化システムを開発し、木質バイオマスのガス化に関する研
究開発を行なっている。生産ガスによる発電により外部からのエネルギー投入は不要で、
今後、ガス精製過程で利用している触媒の独自開発や、生産ガスの精製・液体燃料化の低
コスト化に向けた研究を実施する予定である。
北大方式 熱分解ガス化システム図
木質バイオマス
スクラバー
熱
ガス
木ガス
乾燥機
排熱回収
ボイラー
炭化炉
サイクロン
ガスバーナ
ガス化炉
ガスエンジン発電
発電効率28%
冷ガス効率85%
サイクロン
水性ガス
100kW
Char:30kg/h
Wood:120kg
余剰ガス
未反応炭
水蒸気、CO2
図
北大方式
灰
灰
熱分解ガス化システム
2C + 2H2O → 2CO +2 H2
CO + H2O → CO2 + H2
C + CO2 → 2CO
炭化炉
木ガスバーナ
ガス化炉
ガスホルダー
ガストラップ
写真
北大方式
熱分解ガス化システム
58
②
木質ガス発電/小型バイオマスガス発電施設
山林の間伐や製材時にでる端材から電気を得られる施設の開発が進んでおり、国内で導
入が進んでいる。
小型化開発が進む同施設は、生産する電気・熱の利用によっては3年程度で投資回収が
可能であり、道内でも今後、導入が進むものと思われる。
写真:宇部テクノエンジ株式会社・小型バイオマスガス化発電装置
■木材からのエネルギー発生量
1kg の木材からは、1kWh の電気を生産できると同時に 8.8MJ の熱を生産。(エンジン冷却
水として84℃の温水で熱回収が可能。)
■建設費とランニングコスト
100kW 級施設の建設費は 1 億円、ランニングコストは 100 万円/年。
■使用木材重量
1kW あたり 1kg/時の木材が必要であり、100kW 級施設に必要な木材量は年間で 876t。
876t=1kg/kW・h×100kW×24h×365 日
■年間発電量と経済効果
・年間発電量
876,000 kWh=100kW×24h×365 日
・電力購入価格を 15 円/ kWh としたときの発電電気利用による経済効果
13,140 千円/年=876,000 kWh×15 円/ kWh
・発電電気を 9.3 円/ kWh で売電したときの収入
59
8,147 千円/年=876,000 kWh×9 円/ kWh
■年間発熱量と経済効果
・年間発熱量=8.8MJ/kW×100kW×24h×365 日=7,745,684 MJ
・灯油熱量
=36.7MJ/L
・生産した熱の灯油に置き換えたときの灯油換算量
211,054L=7,745,684 MJ÷36.7MJ/L
・灯油単価
=80 円/L
・生産した熱を利用した際の経済効果
16,884 千円=211,054L ×80 円/L
■100kW 発電施設における投資回収年数の試算(建設補助金なし)
計算式(千円)=建設費÷((経済効果または収入)−ランニングコスト)
①電気使用+熱利用の場合: 3.4 年=100,000÷(13,140+16,884−1,000)
②電気販売+熱利用の場合: 4.2 年=100,000÷(8,147+16,884−1,000)
③電気使用
の場合: 8.2 年=100,000÷(13,140−1,000)
④電気販売
の場合:14.0 年=100,000÷(8,147−1,000)
60
3-1-5
その他
熱輸送
①大規模熱輸送システム
熱輸送システムは相変化物質(PCM)の固液変態により潜熱の形態で高密度なエネルギー
の輸送が可能で、短期貯蔵、近距離輸送に適した比較的簡便な方法である。基本的には化
学的に安定、安全、安価な物質の固液変態を繰り返すだけなので化学蓄熱に比べ容易であ
り、耐久性にも優れており、コンテナ輸送(商品名トランスヒート)に応用され実用化し
ている。当初、PCM として酢酸ナトリウム水和塩(融点
58℃)が用いられていたが、さらに高温のエリスリトール
(融点 117℃)を使用することにより高温熱輸送が可能に
なり、吸収式冷凍機と組み合わせることにより冷熱供給も
実現している。この方式は CO2 排出量が急増している民生、
特にオフィスビルへの、エアコン代替として大きな期待が
寄せられており。現在、蓄熱密度の増大、高温化が計画さ
れている。
熱源側
THシステム
蓄熱タンク
熱媒油
ポンプ
下水汚泥
焼却設備
熱交換器
Trans Heat Container (24t)
PCM
熱利用側
THシステム
蓄熱タンク
熱媒油
給 湯
ポンプ
暖 房
病
市庁
体育
熱交換器
冷 房
PCM
図
大規模熱輸送施設(トランスヒートコンテナ)による熱輸送のイメージ
引用:秋山友宏、工業廃熱回収のための3つの視点、潜熱蓄熱、化学蓄熱そして熱電発電−時空を超えた
エネルギー利用技術としてー、日本エネルギー学会誌、第86巻、第3号、pp.161-167
61
②小規模熱輸送システムの開発/帯広畜産大学
北海道内では、家畜ふん尿を原料とするバイオガスプラントが 50 基以上建設されており、
現在では北海道の気象・農業条件に適応し、家畜ふん尿ベースによる通年稼動が可能とな
っている。しかし、この「技術レベルの向上」は「バイオガスの余剰」という新たな課題
を生み出した。バイオガス発電による電力会社への売電も行われているが、現状の売電価
格では投資に見合った収入が得られないケースもある。また、農家内での余剰熱利用も限
定されている。帯広畜産大学ではバイオガスプラントで有効利用されていない余剰熱につ
いて、潜熱畜熱材を利用した小型車輌でも熱の輸送が可能な「小型熱輸送システム」につ
いて研究を行なっている。農家内およびその近隣において、熱の発生場所・時間に制限さ
れない地産地消の熱利用についての技術開発を目的としている。
・平成 18 年度
経済産業省 バイオマス等未活用エネルギー事業調査事業
「厳寒地域における蓄熱コンテナを用いたバイオマスエネルギー輸送・利用システムの
事業化可能性調査」
・平成 19 年度
NEDO 新エネルギーベンチャー技術革新事業
「時空を超えた熱利用小型熱輸送システムによるバイオマスエネルギー利用の技術開発」
62
3-2
海外でのバイオマス利活用先進事例
スウェーデン、ウプサラ市、リンシェピング市のプラントでは、バイオガスは自動車燃
料として利用されている。
バイオガスプラント運営は地方自治体が行っており、バイオガスプラントは、自治体の
出資 100%による例が多い。原料は家畜ふん尿が主原料である。原料取り扱いの仕組みは、
自治体が農家からふん尿を借り受け、ガス生成をした後に農家に返還している。農家にと
って、バイオガスプラント(自治体)は家畜ふん尿を肥料化処理してくれる機関であり、
現システムは双方にメリットがある。
近年では、生ごみの埋め立てが禁止されており、生ごみ処理においてもバイオガスプラ
ントが導入されている。
首都ストックホルムのバイオガスプラントでは、取り扱い原料が下水、生ごみであり、
日本でも嫌気性発酵が導入されている分野である。
3-2-1
スウェーデン
バイオガスプラント
スウェーデンリンショーピング市では、下水汚泥と生ごみ、家畜ふん尿を原料としたバイ
オガスプラントを導入している。生産したバイオガスは車輌燃料として販売している。
自治体による会社組織の運営、事業展開
市が 100%オーナーである会社は 100 年前から独立採算で運営しており、現在、雇用者数
は 900 人、13 部門の事業を抱える。事業の売り上げは総額 30 億 SEK(450 億円)であり、
収益は 2 億 5000 万 SEK(37.5 億円)、年間 6 億 SEK(90 億円)を投資している。
子会社のひとつスウェーデンバイオガス社がバイオガスプラントを所有している。元々、
下水処理場から始まった会社である。車輌燃料用バイオガスプラントとしては国内最大で
ある。(発電事業は行っていない。)
表
原
スウェーデン・リンショーピング市バイオガスプラント 概要
料
バイオガス生産量
発酵条件
発酵槽
殺 菌
有機廃棄物
54,000t
下水汚泥 50 万m3
年間 400 万m3
38℃−30 日間
54,000t−2 基
70℃−1 時間
・と殺場からの家畜の内臓血液(脳は除く)
・生ごみ
・ワイン絞りかす、
・エネルギー作物(バイオエタノール採取後の作物)
・魚加工残さなど
車輌燃料用
63
写真
スウェーデン・リンショーピング市バイオガスプラント、バイオガス自動車
写真
バイオガススタンド、バス用バイオガススタンド
写真
ストックホルム市内を走る天然ガスバス、バイオガス自動車
64
3-2-2
スウェーデン
バイオガス鉄道車両
・バイオガスエンジン:2 機搭載。
・走行距離:タンク満杯で約 600km の走行が可能。
・最大時速:130km/h。
・定
員:54 人。
・路
線:中央部リンチェピング市と東部ベステルビク市の間、80km を走行。
3-2-3
ドイツの BDF の現状
ドイツの農業について
国土の約半分が農用地(1730 万 ha)で畑地と草地の割合は 7:3 である。2006 年の主な
農作物の作付け面積は・小麦(311 万 ha)、ライ麦(62 万 ha)、大麦(54 万 ha)、馬鈴
しょ(30 万 ha)、てん菜(35 万 ha)である。なたねは、年々作付けが増加し、2006 年で
は 140 万 ha となっている。
ドイツでは、搾油したなたね油を直接、自動車やトラクターの燃料として利用している。
始動時は軽油、エンジンが温まると、なたね油に切り替えて利用している。トラクターの
改造費は 1500∼3000 ユーロである。
以下のように定期的に社会システムが構築されることで、なたねの作付け面積が増え、
なたね油の燃料利用が促進されてきた。
・ 1992 年:休耕地政策の導入
・ 1996 年:自動車メーカー3 社による対応車の発表
・ 2000 年:環境税の導入
・ 2004 年:2009 年までの時限立法でバイオ燃料に対する免税措置の導入
65
3-2-4
海外における木質バイオマスエネルギーの背景
木材が主要な輸出品であるスウェーデンでは、海外のユーザーの視点に立った木材輸出
体系の確立が、安価な木質ペレットの生産につながっている。
スウェーデンでは、大型の伐採機械伐採機械・輸送車両の開発の開発を行い、大型車両
走行のための専用道路の整備を行なうことで、海外ユーザーが求める大きな木材を出荷し
てきた経緯がある。
そのため、加工残材は山林では発生せず、より貿易港に近い場所で発生するため、木質
バイオマスが集まりやすい環境が整備されてきた。
日本でも、ユーザーニーズに合わせて体制が整備されてきたが、スウェーデンほどでは
なく、木質バイオマスが山林に残ってしまう傾向がある。
●スウェーデンのシステム
木質バイオマスが集まりやすい
→安価にペレットが生産できる
●日本のシステム
木質バイオマスが山林に残ってしまう
→木質バイオマスの利活用が進まない
66
4
十勝でのバイオマスリファイナリー産業の創造に向けて
十勝管内で既に導入されているバイオマス利活用を核にして、バイオマスリファイナリ
ーのモデルについて検討を行った。
モデル実現のためには、どこまでが既存技術で対応が可能か、どのような新規技術を導
入しなければならないかを把握しなければならない。
地域で発生・排出される多様なバイオマス資源の統合的、高度利活用によるモデルプラ
ンを構築し、都市と農村の共生を基調に「農村地域(生産)」、「食料産業(加工)」、「都市
地域(消費)
」が広域的に連携する十勝型循環モデルの実現を目指す。
そのために、必要な調査・研究など地域で取り組むべきことを明らかにする。
モデルを構築する上で、地域の努力ではカバーできない事柄については、政策提言とし
て取りまとめる。
67
4-1
十勝管内で想定されるバイオマスリファイナリーモデル
今後のバイオマスエネルギー利用についてはエタノールだけ、バイオガスだけなど単独
利用だけでは困難と思われる。それぞれの長所を生かして有効に使うようなパターン分け
と、その組み合わせを検討することが実用化に向けて有効である。エネルギー利用の組み
あわせを、十勝なりの「形」で構築することを考えていく必要がある。
十勝管内で既に導入されている技術や施設や資源を核にしたモデルで、
「大型のバイオガ
スプラントの利活用を中心としたモデル」、「バイオエタノール製造施設を中心としたモデ
ル」、「BDFプラントを核としたモデル」、「木質ペレット製造工場とバイオガスプラント
が既に設置されている一定のエリアで考えられるモデル」など、十勝管内で導入をイメー
ジできるモデルについて検討を行う。またモデルの構築には、
「資源(原料)の多段階利用」、
「利活用システムの連携」や「新たな資源(原料)」をイメージできるように検討した。
このようなモデルを提示することで、そのモデルを実現するために欠けている技術、そ
れを埋めるために、今後必要な調査研究、新たに導入可能な国内外の先進技術など、十勝
でバイオマスの利活用を進めていく上で、「欠けているモノ」、「抜けているコト」が明らか
になると考えられる。
バイオマスリファイナリーの構築に向けた検討事項
多段階モデルの検討
多段階モデルの検討
家畜糞尿
消化液
未利用資源
バイオガス
バイオガスプラント
工業用原料
発 電
規格外小麦
ビ ー ト
機能性食品
ソフトセルロース
工業用原料
エタノール
その他エネルギー
DDGS
(飼 料)
エタノールプラント
各事業間の連携
各事業間の連携
新たな資源調査
廃食油
資源作物
BDFプラント
BDF
グリセリン
間伐材
木質ペレット
未利用資源
その他ペレット
既存のシステム
ペレット工場
今後の検討事項
68
ペレットの
高カロリー化
4-1-1
共同型バイオガスプラントを核としたモデル
地域の家畜ふん尿を集中的に処理するバイオガスプラントで、地域の食品残さを処理す
ることができれば、大規模なパワープラントとなる可能性がある。そこで発生した熱やガ
スを、熱輸送システムや圧縮ガスなどの形で運び出して、エネルギーを必要とするバイオ
エタノールの製造プラントや、既存工場で活用する方法が考えられる。様々なシステムを
組みあわせて、一つのモデルを構築していく必要がある。
またこれまでは、熱・電気が主な利用方法であったが、今後は家庭や自動車でのガスの
直接利用や水素利用も視野にいれた検討が必要である。
これまでも消化液は農地に還元されてきたが、この経済価値についてもさらなる評価が
必要で、また精製過程で排出される二酸化炭素を農業に利用するなど副産物の有効利用を
検討することが、プラント全体の採算性向上に資すると考えられる。
これまでの十勝でのバイオガスプラントは農業経営の中で営まれてきているが、エネル
ギー利用の多様化や副産物の経済的価値の付与により、他業種による運営も考えられる。
バイオガス直接利用
・自動車
補助エネルギー
雪氷冷熱
・農業施設
ヒートポンプ・太陽光・小水力
・家庭燃料
家畜
品質管理
ガス精製
ふん尿
水素利用
食品残さ
バイオガス
他のバイオマス
農作物残さ
プラント
エネルギープラント
熱輸送
カスケード利用
CO2・熱の利用
食品・工業原料・飼料・肥料
消化液
資源作物の生産
建設業によるプラント運営
・ プラント建設
・ リース
・ ふん尿処理
・ 消化液販売
・ エネルギー販売
69
での利用
4-1-2
バイオエタノールプラントを核としたモデル
バイオエタノールの製造にもエネルギーを使用することから、自前のプラント内での排
水処理の一環としてバイオガスプラントを併設しそのエネルギーを活用するほか、外部の
バイオガスプラントからバイオガスを圧縮精製して輸送する直接利用、または熱輸送技術、
ヒートポンプ・太陽光などの再生可能エネルギーを、バイオエタノールの生産に活用する
ことで、省エネルギーな生産体系の構築が可能となる。
エタノール精製時に発生する副産物から、飼料(DDGS)を生産することが検討されてい
るが、この飼料(DDGS)の貯蔵、輸送、家畜への給餌方法についても検討を要する。
食用部からのエタノール生産については、世界的な食糧の高騰を招くなど、バイオエネ
ルギー利用に向けた阻害要因のひとつともなっている。非食用部バイオマスでのエタノー
ル生産システムを確立することが急務であり、ソフトセルロース利用について研究を進め
る必要がある。また、未利用地を利用した簡易農法によるビートのホールクロップ、多収
穫米など「資源作物」からのエタノール生産についても今後の研究課題である。
これから十勝管内で取り組まれる大規模実証試験で生産されるエタノールはETBEの
原料として道外への出荷が検討されているが、エタノールの一部は生産した地域で循環利
用することも考える必要がある。その為には、直接混合でE10での利用も視野に入れた
社会インフラの整備も視野に入れた検討が必要である。
補助エネルギー
ヒートポンプ・太陽光・小水力
【原 料】
規格外
農産物
資源
エタノール
作物
プラント
【利 用】
・ETBE
・E10
ソフト
セルロース
水処理
農地散布
バイオガス
ガス・熱
プラント
消化液
ふん尿
70
家畜
DDGS
4-1-3
BDFプラントを核としたモデル
これまで、十勝管内では廃食油を原料としたBDF製造が主であったが、産業からの廃
食油の回収率は既に高いことから、今後は家庭からの効率的な回収について検討を行う必
要がある。
資源作物からのBDFの生産は欧州では一般的で、十勝管内でも農業と連携したBD
F製造に取り組む民間企業が設立されており、新しいビジネスモデルとして、その事業
展開が地域活性化に寄与することが期待されている。
BDFの副産物であるグリセリンについては、バイオガスプラントに投入することで、
バイオガス量の増産が見込める他、特殊ボイラーでの直接燃焼、堆肥利用などの有効活用
について検討する必要がある。
【原 料】
【利 用】
ナタネ
公共バス
B D F
建設機械
自家用車 など
B D F
バイオガス
プラント
プラント
廃食油
グリセリン
ボイラー
直接燃焼
堆 肥
補助エネルギー
利 用
小水力発電・ヒートポンプ・太陽光
農業・建設業による事業運営
・ プラント建設
・ 食用油生産・販売
・ 廃食油回収
・ エネルギー販売
71
4-1-4
木質ペレットプラントを核としたモデル
生産プロセスで、原料の乾燥等にエネルギーを要する木質ペレットの製造においては、
バイオガスやその他の再生可能エネルギーを取り入れたハイブリッド型の生産システ
ムについて検討を行う必要がある。
休耕地や未利用地において、バイオガス消化液を施肥するエネルギー植林の検討など
林地残材以外の原料の調達方法についても将来的には検討の可能がある。
木質バイオマスを活用する発電は、他のバイオマス生産施設においても導入が可能で
あり、検討課題のひとつである。
木質ペレットを農業など他産業での熱源として利用するには、輸送、利用施設の開発
を含めた検討が必要となる。
補助エネルギー
【原 料】
小水力発電・ヒートポンプ・太陽光
木質バイオマス
プラント
木質
【利 用】
電気・熱
家庭・企業
公共施設
バイオマス
その他の
バイオマス
木質ペレット
農業利用
プラント
ハウス・畜舎
堆肥
豆殻・そば殻
ナガイモのツル など
エネルギー植林
消化液
バイオガス
プラント
森林組合・農業者によるプラント運営
・ プラント建設
・ ペレット生産・販売
・ コジェネ
・ 生産エネルギーの農業利用
72
熱・ガス
4-2
4-2-1
今後の方向性
今後ターゲットにすべき資源
従来のバイオマスエネルギーの技術の改善、また新たな技術が開発されており、バイオ
マスリファイナリーモデルの対象となる資源は増えていく傾向にある。
既存バイオマスエネルギーシステムの活性化、新たなバイオマスエネルギーシステムの
展開のためには、バイオマス資源の賦存量(特に農産物残渣のように発生時期に偏りがあ
る場合は、時期による発生量変動の把握)、品質、発生場所、価格、有効利用率、再生品価
格、価格構成等を明らかにしなければならない。
▼
対象資源(案)
・農産物加工工場の残渣(ホエー、デンプン廃液など)
・事業系一般廃棄物のうち食品廃棄物
・家庭系生ごみ
・ほ場残渣(ビートトップ、まめ殻、そば殻、ナガイモツルなど)
・選果場残渣
・資源作物
・エネルギー植林
73
4-2-2
今後の課題・研究を要する技術
① 十勝地域の総合的なバイオマス利用システムの構築
これまで、十勝におけるバイオマスエネルギーは、バイオガス、BDF、木質ペレット、
バイオエタノールそれぞれ単体でのプラント建設、利用計画が主であったが、十勝全体の
バイオマス資源を効率良く利用するために、原料、バイオマスエネルギー、その他の再生
可能エネルギーなど効率良いマッチングを検討していかなければならない。
各バイオマスエネルギープラントが稼動している先進地十勝だからこそ、早期実現が可
能と思われる。
(1)イオマス利用施設の組み合わせ・エネルギー利用の検討
一つのプラントに様々な原料を混合して利用することも経済的効果を考えて検討するこ
とが必要だが、「熱の混合利用」も考えられる。海外ではパワープラントとしてバイオガス
プラントと木質利用のプラントを併設しており、それぞれのプラントから発生する熱を併
せて活用している。プラントについてはいろんな組合せの展開が考えられ、それぞれのプ
ラントの長所を生かして短所を補えば、経済的メリットが生まれてくる。
(2)バイオマス以外の再生可能エネルギーの導入
バイオマスの効率的な利用を図るためには、風力、太陽光、小水力、地熱(ヒートポン
プ)、雪氷冷熱エネルギーなどバイオマス以外の再生可能エネルギーを組み合わせたシステ
ムの導入も考えられる。焼却施設にバイオガスプラントを併設することにより、バイオガ
スプラントで必要な熱は、焼却施設での廃熱を利用できるなど相互補完的な利用が可能で
ある。また、バイオガスや焼却熱の利用による発電や、処理施設全体での余剰熱を、畜熱
材(PCM)を使ったオフラインの熱輸送システムにより近隣の工業団地への輸送も含めた
利用の検討など、地域へのエネルギー供給システムについて検討が必要である。
②各バイオマスエネルギーの課題
(1)バイオガス
法規的な問題もあり、十勝管内のバイオマス利用は単独資源の利用が多いが、エネルギ
ー価値が高い複数バイオマスの混合利用は海外では一般的であり、今後導入の検討を要す
る技術である。
74
資源(廃棄物)の混合利用に向けた法規的・施設的課題について検討を要する。混合発
酵においては、超高温発酵の導入により、効率的な処理も検討する必要がある。
家畜糞尿と食品循環資源(生ごみ、農産物加工残渣、グリセリン(バイオディーゼル副
産物)など)のバイオガスプラントでの混合発酵処理について検討が必要。
十勝ではこれまで家畜糞尿でのバイオガス化は行われているが、これに食品循環資源を
投入することにより高効率なバイオガスの発生が可能である。また、これまで水分の多い
生ごみ等を焼却処理しているが、この生ごみ等をバイオガスプラント処理に移行すること
で、焼却炉の温度低下を抑えることが可能となり経済効果も期待できる。
混合発酵は、食品循環資源からのガス生産量が事業規模や事業採算性の算出根拠となる
ことから、海外先進事例などを参考にして検討が必要であろう。また、混合発酵させる資
源として、十勝では水産廃棄物も有用な資源である。
(2)バイオエタノール
バイオエタノールの製造・利用については、ソフトセルロースからの精製が急務の課題
であり、また、粗農法によるホールクロップによるビートの利用、粗農法による多収穫米
の生産など食糧生産と切り離した「資源作物」の導入の検討も必要である。
ETBE 利用の場合、十勝では燃料を生産する施設が無く、本州へバイオエタノールを輸送
しなければならない。エタノールの一部は生産した地域で循環利用することも考えた場合
直接混合での利用も視野に入れた社会インフラの整備も視野に入れた検討が必要である。
精製過程で発生する副産物から飼料(DDGS)の家畜への給餌方法、貯蔵、輸送方法につ
いて検討し、採算性向上に向けた高度なカスケード利用の構築が必要である。
(3)B
D
F
景観作物としてBDFの原料となる作物の導入など、BDF生産の低コスト化について
検討していく必要がある。近年プラント建設が続いており、十勝のBDF生産ポテンシャ
ルは高く、地域ぐるみで効率的な廃食油収集が課題である。
100%BDFの通年利用を実現するための耐寒性技術の研究開発が必要である。
建設事業者・農業者による、搾油作物、食用油の生産・販売、廃食油の回収、BDF生
産、または、建設業・農業における重機・トラクター等におけるBDFの利用など、十勝
では生産から利用まで地産地消のエネルギー利用が可能である。
75
(4)木質バイオマス
木質バイオマスの利用にあたっては、原料収集コストの軽減化が最重要課題であり、徹底
したコスト意識を持つ必要がある。
木質バイオマス資源の適正な利用形態を創生していく上で、資源の地域内利用(自家消
費)を前提として、木質バイオマスガスコジェネ導入による電熱供給の需要体制の整備に
ついても検討が必要。
・ミックスペレット
次世代のペレットとして、ミックスペレットが注目されている。木質だけでは無く、ま
め殻、そば殻、堆肥、また水産廃棄物までも混合することが考えられている。原料を幅広
く考えて混合することにより、原料の季節変動がカバーでき通年性が保たれるメリットが
あり、ペレタイザーの稼動率も向上させるなど、地域資源の組み合わせについて検討を行
う必要がある。
森林組合・農業者による木質バイオマス由来のエネルギー生産、農業分野へのエネルギ
ー利用など十勝独自の取り組みについて検討を行う必要がある。
③資源作物
(1)資源作物の生産・利活用の可能性についての検討
土地の有効利用の観点から、未利用地における資源作物の栽培なども話題となっており、
世界規模ではオイルパームとヤトロファが注目されているが、積雪寒冷地に適した資源作
物については、対象作物や栽培方法を検討する必要がある。
バイオガスプラント消化液を肥料に用いて、積雪寒冷地に見合った資源作物の生産や、
生産したバイオ燃料については農地で使用するトラクターや、ゴミ収集車の燃料として使
用し、生産副産物はバイオガスプラントの原料として、また搾り粕については飼料化など
カスケード利用、また、バイオガス消化液を利用したエネルギー植林についても検討する
など、地域特性を生かしたシステム作りが必要。
エネルギー源に、食料としての農作物の「残渣」を使うか、新たに「資源作物」を生産
するかによって、農作物の生産や収集の方法が違ってくる。農業生産としては、食料生産
と資源作物の生産は、同じ枠組みの中では考えられないので、資源作物の生産にあたって
は、今までの食料生産とは別のシステムが必要となる。十勝管内でも農水省の事業でエタ
ノール向けの資源作物の研究が始まっているが、資源作物の栽培は、現状の農業生産シス
テムとは別ものとして検討が進められている。
76
④カスケード利用
(1)マテリアル利用の検討
バイオガスプラントから排出される消化液から抽出可能な、炭素、アンモニアやバイオ
プラスチック原料のポリ乳酸について、抽出技術・利用技術の検討も、カスケード利用の
観点から今後重要な課題と成り得る。
十勝管内は大規模農業を背景に、デンプン製造、製糖、乳製品製造など大型の食品加工
工場が集約されている。それぞれの生産過程から排出される食品加工残渣については、飼
料化などの有効利用が進められているが、有用成分を抽出するなど、カスケード利用の高
次レベルでのバイオマス利活用の検討が求められており、バイオマスリファイナリーを構
築する上で、採算性の確保などの面からも重要な課題となっている。
(2)食品循環資源の発酵飼料化に関する技術・飼料価値評価
バイオマスリファイナリーシステムで再生されるマテリアル、飼料、肥料、エネルギー
の利用先について検討を行うため、再生品の市場・流通ルート・安定性、潜在市場開拓に
ついて情報収集が必要である。
農畜産物の加工の際に発生する大量の食品廃棄物(加工残渣、発酵残渣)を、飼料化、
肥料化、エネルギー化などカスケード利用により、食品廃棄物の「循環資源化」が期待で
きる。具体的な検討課題として「食品廃棄物(副産物)から付加価値の高い機能性食品の
原料の採取」や「バイオエタノール工場から排出される絞りかすや発酵残渣の飼料化」等
が考えられ、バイオマス資源の利活用による農畜産物の高付加価値化や飼料自給率の向上
が期待できる。
(3)バイオガス消化液の利用
十勝ではバイオガスプラントから排出される消化液が売買され、プラント所有農家、消
化液利用農家双方の利益となっているが、そのような地域循環の仕組みづくりが重要とな
る。
バイオガスプラントの事業採算性の確保には、消化液の利用がキーポイントになること
から、機械を含めた消化液散布方法の検討、地域住民レベルでの消化液活用方策について
検討が必要である。
77
(4)CO2施肥
バイオガスを精製してメタン濃度を上げる際には、バイオガスに半分くらい含まれてい
る不要な二酸化炭素を分離し、大気放散しているが、これをハウス栽培に投入し、二酸化
炭素の「施肥」というのは魅力的な手法であり、ハウス内の温暖化効果も活用した、省エ
ネ促成ハウス栽培が可能となる。
⑤ 周辺利用技術
(1)熱輸送システムに関する実証試験
酢酸ナトリウムやエリスリトールを畜熱材に用いて、工場からの余剰熱を畜熱し、輸送し
て利用する熱輸送システムが国内でも 2008 年度から実用化される。
バイオガスプラントプラントは、近年性能が向上しており、年間を通じて余剰エネルギ
ーが排出されている。帯広畜産大学は地元企業と共同で、独自の熱輸送システムを研究開
発中である。今後は、地域のバイオマスエネルギーと地元のエネルギー需要を見据えた熱
輸送システムの構築と、地元資源を活用した畜熱材の開発を実施していく予定である。
(2)地域資源の活用
メタンガスを圧縮精製する装置には、ゼオライトが活用されている例があるが、十勝で
もゼオライトが産出しており、このような地元資源を活用した、地場産業の振興に貢献で
きる技術の開発が必要である。
(3)インフラ整備
自動車燃料としてバイオガスを利用する場合、ガススタンドの設置が課題となる。路線
バスや、ごみ収集車など走行距離がある程度限定されていれば利用は可能であるが、自家
用車への普及を考えた場合、走行範囲は限定されてしまう。今後、バイオ燃料を普及して
いくためには、消費者サイドに立ったインフラ整備が必要である。
⑥ソフトの充実
(1)教育・普及啓発活動
現在のバイオエネルギーの利用に対しては、食用部を用いたバイオマス利用が行われてい
78
ることから、食との競合という問題が起きてしまっている。
未利用地の保全対策として利用されてきた資源作物・バイオマスエネルギーは、食・農
業を支えるためのものである。
効果的なバイオマス利用のためにも、農業、環境、エネルギーの密接な関係に対する地
域の理解が必要であり、バイオマスが持っている「価値」についても地域で考えなければ
ならない。
(2)資源収集の底上げ
効率的なバイオマス利用を図るためには、資源の回収率を上げる必要がある。
例えば、公共工事で使用する重機などのエネルギーとしてBDFを建設土木関係事業者
が利用し、更に現場での廃食油の回収を行う。地域住民が、現場事務所に廃食油を持ち込
むことを契機に公共工事に対する理解が深まることも考えられ、また発注官庁も環境に配
慮した工事を実施できるなど、資源回収とその利活用により様々な効果が期待できる。
このように、バイオマス資源の回収とその利活用には、地域全体で取り組めるような仕
組み作りが必要であり、モチベーションを引き上げるためのインセンティブなどを付与す
る社会システムの検討が必要である。
79
4-3
政策提言
「石油社会との環境トレード」
地域においてバイオマスリファイナリーを推進していくためには、農業政策、環境政策、
エネルギー政策、また新たな産業政策の観点なども含めた多面的なアプローチが必要であ
る。国においては各省庁が個別に対応するのではなく、生産・収集・変換・利用の循環過
程を踏まえ、関係省庁が横断的連携して政策を立案し展開していく必要があると思われる。
過去、石炭社会から石油社会に移行する際には石油の利用に関する優遇措置があった。
バイオマス社会の移行に向けた社会的要件は何があるのかを検討することが重要である。
(1)バイオマスエネルギーの生産者、利用者に対する優遇政策・環境評価制度
の導入
バイオマス社会が構築されるためには、環境評価が経済性と連動されなければならない。
温暖化ガス削減による環境メリットの創出は、施設整備による経済負担の代償である。
エネルギー・副産物の生産による総合的な環境評価制度を導入し、経済価値に転換され
ないことには、バイオマス社会の構築はあり得ない。
バイオマスエネルギーの生産者、利用者に対する優遇政策・環境評価制度の導入が必要
である。
例:
・ 石油エネルギー利用に対する課税(環境税の導入)
・ バイオマスリファイナリー事業者に対する優遇税制の導入
・ バイオマス利用に対する経済支援(売電単価の上乗せなど、RPS 法の改正)
(2)農地保全政策としての資源作物生産に対する補助制度
近年、バイオエタノール原料の高騰により、世界的に食品価格の上昇をもたらしたこと
から、農産物のバイオマスエネルギー転換に対してはヒステリックなまでの反体制運動が
おきている。バイオマスエネルギーの原料としては、まず非食品を用いるのが前提である
ことは間違いない。
しかし、未利用地などで資源作物を生産することは、環境政策と連動した自国農地の保
全政策であり、それが地域の雇用の創出にもつながる。
しかも、わが国においては、食糧自給率が 40%未満の国であり、まずは耕作放棄地も含
め全農地で農作物を生産してからの議論ではないかと思われる。
例:
・ 環境重視型の農地管理システムの導入
・ バイオマス由来肥料の利用の義務化
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(3)バイオマスエネルギーシステムにおける混合処理に対する優遇政策
各種バイオマスを同時に利用する混合利用方式は、エネルギー生産、廃棄物処理の両面
から社会システムとしての優位性が高く、そのような活動に対する優遇政策が必要である。
例:
・家畜ふん尿と有機廃棄物によるメタン発酵
・木質とその他のバイオマスによるミックスペレットの製造
など
(4)寒冷地に対する規制緩和・冬期間の免税措置の導入
北海道においても、BDFを燃料として自動車は走行しており、バイオガスのCNG自
動車での走行は可能であるが、どうしても冬期間の性能低下は否めない。
耐寒性技術が確立するまでの暫定措置として、季節限定の規制緩和に対する要望が調査
での関係者ヒアリングの際に多数あった。
例:
・BDF:冬期間の軽油とのブレンド利用の許可(免税措置)。
・バイオガス:バイオガス精製、保管・輸送・充填、可燃性ガスの添加、CNG自動車利
用に対する規制緩和。
(5)小規模地域・団体に対する支援制度
わが国の温暖化効果ガス削減の目標値のクリアーについては、楽観視できる状況ではな
い。温暖化効果ガスの削減については、小規模地域・団体、町内会単位での草の根的な活
動も重要になってくる。例えば、生ごみのザルでの回収によるバイオガス生産の効率化、
街路樹の植林・管理など、地域におけるきめ細かなバイオマス管理システムの構築が必要
である。その為には、地域で活躍する様々な団体や活動を行政が支援する仕組みが必要で
ある。
例:
・農業、エネルギー、環境に対する教育の充実
・バイオマス利用に対するインセンティブを付与するシステム構築に向けた社会実験の実
施(バイオマス資源の付加価値化)
・公共工事に関わる工事事業者への、バイオ燃料利用など環境配慮に対しての評価制度の
導入
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