日消外会誌 24(7):1947∼ 1953,1991年 ファー ター字L頭部腫場 にお ける carcinoembryonic antigen および癌関連糖鎖抗原 の免疫組織化学 的検討 一特 に癌 と腺腫 との比較一 林 本 野 小 相 浅 日本医科大学第 1外 科,同 病 理学教室Ⅲ 匡 恩 田 昌 彦 島 耕 二 内 田 英 二 田 尻 笹 Ⅲ Ⅲ馬 伍朗 杉 洋 三 隆幸 孝 中洋 一 郎 江 上 格 山 ファーター字L頭部癌16例,そ れに併存す る腺腫組織 9例 お よび正常乳頭部組織 4例 にお け る car‐ よび痛関連糖鎖抗原 として, I型 糖鎖抗原 :CA50,CA19‐9,II型 cinoembryonic antigen(CEA)お 発現を免疫組織学的 に比較検討 した。正常組織 ではすべ て陰性で 糖鎖抗原 i Sialyl LeX,i,LeX,Leyの あ り,腺 腫組織,癌 組織では陽性率 は CEA 1 100%,93.8%,CA50:77.8%,81.3%と 高値を示 した。 染色強度 は癌 で明 らかに腺腫 よ り強 く,染 色様式 で も腺腫 では CEAは 細胞質内核上部 (7/9例)に , CA50,LeX,Leyで は腺腔側細胞膜 のみ (7/9,2/9,3/9例)に 陽性を示す症例 が多 かったのに対 し, 癌 で は腺腔側細胞膜 と細胞 質全体 が陽性 を示す症例 が多 く異 な る結 果 を示 した (CEA:10/16, CA50i 9/16,LeX:9/16,Ley:12/16例)。以上 よ り腺腫 は正常 の乳頭部粘膜 か ら腸瘍性変化をきた し た もの と考 えられたが,癌 とは染色強度,染 色様式 で異な り,免 疫組織化学的 には正常 と癌 の間 に位 置付けられ る病変 と考 えられた。 Key words: carcinoma of the papilla of Vater, carcinoembryonic antigen, cancer-associated carbohydrate antigens, immunohistochemistry は じ3めに ー ー ファ タ 字L頭部癌 (以下,乳 頭部癌)は 最近 の 画 像診断 の進 歩 に伴 い,症 例数,切 除例 とも増加 してお り,他 の膵 胆道系悪性腫瘍 に比 べ 予後 は比較的 良好 で 。.し か し,消 化管 の癌 と比較す る と切除率 ,予 あ る1)と つ 後 ともい まだ不 良 といわ ざるを えな い 。現在 まで,乳 頭部癌 は詳細 な病理学的検索 も十 分 で な く,そ の生 物 学的特徴 も不 明な点 が多 いため,病 理組織学的 に診 断 す る上 で,困 難 な場合 も少 な くな い。特 に乳 頭部 での 癌 と腺 腫 の 関 係 は,腺 腫 を前 癌 状 態 と して い る報 ∼ 告 ゆ 1',ぁ るいは腺腫 と無関係 に de novoに 発生す る 10な どがあ り結論 はでてい ない。 とす る報告 12卜 と ころで Hakomoriら 19は,細 胞 の癌化 に伴 う糖鎖 の不 完全合成 に よ り,そ の前駆物質 が蓄積す る糖鎖不 癌関連抗原 で あ る こ とが明 らかにな り,腫 瘍 の生物学 的特徴 を検討す る上 で,そ の重要性 が評価 されて きて ∼ い るが 1ゆ1り ,乳 頭部腫瘍 に関 しては CA19‐9を除 き報 こで 今 回わ れわれ は,carcinoem‐ はみ ない。そ られ 告 bryonic antigen(CEA)ポ リク ロー ナル抗体 と癌関連 抗原 のなかで I型 糖鎖抗原 の CA50,CA19‐ 9,II型 糖 1(以下 SLX),LeX,Leyに 対す る 鎖抗原 の Sialyl LeX‐ ー モ ノク ロ ナル抗体 を用 い,乳 頭部 におけ る癌,腺 腫, 正常組織 におけ る各抗原 の発現 につ いて 免疫組織化学 的 に比較 し,そ れ らの意義 につ いて検討 を加 えた。 対 象 お よび方法 1980年1月 か ら1989年12月の間 に,当 科 において膵 頭 十 二 指 腸 切 除 術 を 施 行 した 乳 頭 部 癌 16例 (年齢 39∼72歳,男 性10例,女 性 6例 ),癌 に併存す る腺腫組 <1991年 2月 13日受理>別 刷請求先 :小 林 匡 本医科大学 第 1 〒113 文 京区千駄 木 1-1-5 日 織 9例 ,中部胆管癌 で膵頭十 二 指腸切除 に よ り得 られ, 病理組織学的 に正 常 であ る乳頭部組織 4例 を用 いた 。 標本 は通常 の10%ホ ル マ リン固定 パ ラフ ィン包埋 ブ 外科 ロ ックを2.5/mに 簿切 し,連 続切 片を作成 した 。脱 パ 全現象 の存在 を報告 してい る。最近 では糖鎖 が 多 くの 62(1948) carcinoembttmic ant尊 卸 および癌関連糖鎖抗原 ラフ ィン後,0.3%過 酸化水素加 メ タ ノール で室温30分 にて,内 因性 ベ ル オキ シダ ーゼ を除去 し, 5%正 常 ヤ 日 染 色様 式 は,Hamadaら 消外会議 24巻 7号 2いの 大 腸癌 にお る CEA け の評価方法 を準用 し (Table l),複数 の発現 を有す る ギ血 清 を20分反応 させ た。次 に 1次 抗体 として,そ れ 症 例 で は最 も優 勢 な部位 を そ の 症 例 の 染 色様 式 と し nonspecinc cross― ぞれ reacting antigen吸 収 抗 CEA ポ リク ローナル抗体 (DACO)(希 釈比, 1:100),抗 な お,病 理 組 織 学 的 診 断 は 胆 道 癌 取 扱 い 規 約2つに C A 5 0 モノ ク ロー ナ ル 抗 体 ( M i t s u i ) ( 1 : 1 0 ) , 抗従 った 。 また有意差 の検定 は 2検定 (Yatesの 補正) ィ C A 1 9 ‐9 モ ノク ローナ ル 抗 体 ( T o r a y ― Fuit, Tokyo) を用 いた。 (1:50),抗 SLXモ ノク ローナル抗体 (FH‐6)(Otsu‐ 結 果 ブ【二 . LeXモ ノ ク ローナ ル 抗 体 (FH-2) (Otsuka)(1:5),抗 Leyモ ノク ローナル抗体 (AH‐ ka)(1:5),抗 6)(Otsuka)(1:5)を 室温 で 1時 間反応 させた 。そ して ピオチ ン化 2次 抗体 を室 温 で 1時 間反 応 させ , avidin‐ b iotin cOmplex(ABC,Vector Lab.)を 用 い, 1.乳 頭部腫瘍 の病理組織学 的検討 乳頭部癌 16例の組織型 は乳頭腺癌 1例 ,高 分化型管 状腺癌 11例,中 分化型管状腺癌 2例 ,低 分化型管状腺 癌 2例 で あ った。 その うち高分化型 に 8例 ,中 分化型 に 1例 の計 9例 に腺腫組織 が併存 してお り,粘 液 が乏 し く偽重層 の著 しい細胞 か らなる癌組 織 と,偽 重層 は 発色 は0.03%diaminObenzidine反 応 で行 った。核染色 は マ イヤ ーの ヘマ トキシ リンを使用 し,脱 水 ,透 徹, 比較 的軽微で核 は細胞基底部 に存在 してい る腺腫組織 封入 した。陽性対照 として CEA,CA50,CA19-9で が認 め られた。 大腸癌組織,SLX,LeX,Leyで は は肺癌 組織 を用 いた。 陰性対照 にはおのおの 1次 抗体 と同濃 度 の正常 ラ ビ ッ トI g G を C E A に , マ ウス I g G を C A 1 9 ‐9 , L e X に , マ ウス I g M を L e y に 1 次 抗体 として用 いた。 染 色結果 につ いて, 以 下 の様 に染色強度, 染 色様 式 2.癌 お よび腺腫組織 にお け る各抗原 の発現 1)各 抗原 の陽性率 Table 2に 示す よ うに,癌 組織 (16例)に おいては, CEA i15例 (93.8%), I型 糖 鎖 抗 原 の CA50:13例 (81.3%),CA19-9:7例 (43.8%),II型 糖鎖抗原 では, な どにつ いて検討 した 。 SLX:7例 染色強度 は光学顕微鏡 で, 切 片中 の癌, 腺 腫, 正 常 細胞 全体 に 占め るおのおのの陽性細胞 数 の割合 が5 0 % 例 (81.3%)で あ り,CEA,CA50,Leyが (43.8%),LeX:10例 (62.5%),Ley:13 高頻度 に認 め られた。 また腺腫組織 (9例 )に おいては,CEA: 9例 (100%),CA50:7例 (77.8%)と 頻度 が 高 か っ 以上 の症例 を( + 件 ) , 2 6 ∼5 0 % を ( + ) , 2 5 % 以 下 を( 十) , が 陽性細胞 全 く認め られ な い症例 を ( 一) と し, ( 十 ) た が,CA19,9(22.2%),SLX(33.3%),LeX(22.2%), 以上 を陽性 と判定 した. Ley(44.4%)で は癌 に比 べ て陽性率 は低値 を示 した。 Table 1 Immunohistochemicalgrading based on the localization pattern of each antigen Mode of staining Grade 0 (G0) negative negative Grade l lGI) Antigens are localized predominantly apical surfaces of atypical cells aplcal type Grade la(GIIa) cytOplasmic type wlth pOlarity GItte ttb(GIIb) cytoplasmic type 萌t h o u t p ot ly a 点 Grade llI(G皿 ) stromal type along the Antigens are localized in the upper half of as well as on the apical and basolateral surfaces of atlpical cells cltoplasm Antigens are localized in the whole cytoplasm as well as on the apical and basolateral surfaces of atypical cells Antlgens are dirusely dittributed in the surrounding strOma attaCent to the basal sEば aces o f a t y p i c a l c e l i s 63(1949) 1991年 7月 3)各 抗原 の染 色様式 Table 2 No. of positive cases in carcinoma and ater adenoma tissue of the papilla ofヽ ア 染色様式 では,陽性率 の高 い CEA,CA50を は じめ と して LeX,Leyでも癌細胞 の腺腔側細胞膜 と細胞質全体 No. of positive cases(%) 伽蜘側顕いい (GIIb)お よび腺腔 内容物 に染 色 され る こ とが有意 に 一方, lc). ― 多 か った (p<0.05)(Table 4, Fig.la∼ 腺腫組織 では,CEAで は癌細胞質 内核上部 に染色 され Adenoma (n=9) 9(100%) 7(778%) 2(222%) 3(333%) 2(222%) 4(444%) 15(988%) 13(813%) 7(438%) 7(438%) 10 (62 5,る ) 13(813%) る GIIaが 7例 (77.8%),CA50で は腺腔側細胞膜 のみ に染色 され る GIが 7例 (77.8%)と 多 か った (Table 4,Fig。 2a,b)。 また,II型 糖鎖 では,腺 腫 はほぼ腺 腔側細胞膜 に染免 され るもののみで,癌 と異 な る局在 性 を示 した。 なお連続切 片 に よ り同一 症例 の癌組織 で Table 3 Intensity of the staining in carcinoma and adenomatissue of the papilla of Vater Carcinoma(n: 16) 4)組 織型 と各抗原 の発現 Adenoma (n:9) 09 l 5 A A 顕聴胸 C mC Antigen (‖ ) (+) (十) ( 一 の抗原 の発現 を対比す る と,染 色 され る癌細胞 は各抗 原 で必 ず しも一 致 せ ず,染 色様式 も異 な った. ) (‖ ) (‖) (十) ( 一 ) 組織 型 別 の 各 抗 原 の 陽 性 症 例 数 は Table 5に 示 す よ うに,組 織型 に よる発現 の違 いはみ られ なか った。 3.正 常組織 におけ る各抗原 の発現 正常組織 では,す べ ての抗原 で 明 らか な陽性所見 は 認 め られ なか った, Fig. la Grade of CEA stain in cancer tissue.CEA is locallzed in the whole cytoplasm(GIIb)as well as on the apical and basolateral surfatts of the atypical glands (×200) (―)i negative (十):1∼ 25% (‖):26∼ 50% (‖):51∼ 2 ) 各 抗原 の染色強度 │十 い傾向を示 した ( T a b l e 3 ) . 1 ■│ │11111 Table 4 Grade of each antigen in carcinoma and adenomatissue of the papilla of Vater Adenoma(n:9) Carcinoma (n= 16) Grade CEA CA50 CA19-9 SLX LeX Ley Gradc 0 3 Grade I 0 Grade lla Grade llb Grade llI 中:p<005 ・・: p < 0 0 1 1 Ⅲ 1 2 ・ 0 CEA CA50 CA19 9 SLX LeX Ley carcinoembryonic antigenぉ ょび癌関連糖鎖抗原 64(1950) Fig, lb Grade of CA50 stain in cancer tissue. CA50 is localized in the whole cytoplasm (GIIb) as well as on the apical and basolateral surfases of the atypical glands. (x200) " r',-A.'" 日消外会誌 24巻 7号 Fig. 2a Grade of CEA stain in adenoma tissue. CEA is localized in the upper half of the cyto. plasm as well as on the apical and basolateral surfacesof adenomacells (GIIa). (x200) ":' a Fig. 2b Grade of CA50 stain in cancer and adenoma tissue. CA50 in localized in the whole cytoplasm as well as on the apical and basolateral surfaces of cancer cells and is predominant on the apical surfaces of adenoma cells (GI). (x 200) Fig. lc Grade of Lev stain in cancer tissue. Lev is localized in the whole cytoplasm (GIIb) as well as on the apical and basolateral surfases of the atypical glands. (x300) 卓 ゃ4 , ,. , "1..1.1r.,"_*r" Table 5 Relationship between histopathological classification and number of positive casesof antigens CEA CA50 CA19-9 SLX LeX Ley Papillary adenocarcinoma (l Ca韓) Ti:bular adenocarcinoma tubl (11cases) tub2 (2 cases) por (2 cases) Total(16 catts) 1 0 0 1 0 11 9 5 3 5 9 2 2 2 2 2 2 1 1 0 2 2 2 7 7 tubl : Well differentiated tubular adenocarcinoma tub2 : Moderately differentiated tubular adenocarcinoma por i Poorly differentiated tubular adenocarcinona 65(1951) 1991年7月 考 察 頭部癌 の症例数,切 除率 診断技術 の進歩 に伴 い,字し いるが は ともに高 くな って ,詳 細な病理学的検索 は十 分 になされてお らず,そ の生物学的特徴 も不明な点が 多 い.ま た乳 頭部癌 発 生 にお い て も,Baggenstoss 1い は腺腫 を前癌状態 とし,小 らゆ,Cattellらり,Ohら 11)も 乳頭部癌 の81.8%に 腺腫組織 が併存 し癌 との 塚ら 関連を示唆す る報告を しているが,大 腸癌 などでいわ ∼1' れている,いわゆる adenoma―carcinoma sequenceゆ ∼14)に よるかはい まだ結論 はで て に よるかde novol分 いない。今回われわれ は,乳 頭部癌 におけるCEA,I, II型糖鎖抗原 の発現 を免疫組織化学的 に検討 し,併 存 す る 9例 の腺腫組織 と比較 した。 2の は 乳頭部癌 での CEAの 陽性率 は,Blackmanら 2め 61は 91%,佐 田 ら は82.4%で ,わ 82%,Kamisawaら れわれの結果 も93.8%と ほぼ同 じであった。染色強度 )で あ り,染 色様 では,14例 (87.5%)の 症例 が (ll「 29の乳頭 2つ 式 では Isaacsonら の大腸癌,Hasletonら 部癌 の報告 と同様に,細 胞質全体 に陽性 を示す症例 が 10例 (62.5%)と 比較的多 かった。一方,腺 腫 におけ る CEAの 染色強度 は (‖)を 示す症例 はな く,(十 ) 221 が 8例 (88.9%)と多 く,染 色様式 では Blackmanら と同様,癌 と異な り細胞質内核上部 に陽性 を示す もの (GIIa)が 7例 (77.8%)と 最 も多 くみ られた。 また正 い,Kimuraら 20の報 常乳頭部組織 では Kawakamiら 告 と同様 に,明 らかな陽性所見 は得 られなかった。 こ の ことは, これまで大腸癌 で考 えられていた腺腫 の癌 2い 化 における CEAの 局在 の相違 が,乳 頭部癌 で も同 様 に認め られた。すなわち,正 常組織 では存在せず に, 腺腫 において腺腔側細胞膜 に限局 して弱 く認 め られた 抗原 は悪性化 とともに染色強度を増 し, さ らにその局 在極性 を乱 し,細 胞質全体,細 胞膜全周 に発現す る可 能性が示唆 された。 乳頭部癌 における CA50に 関 しては,現 在 まで報告 2つ はな く,今回の陽性率 は81.3%で ,日久保 らの報告 に よる膵癌 など他 の消化器癌 と同様の陽性率で あ り,細 胞質全体 に陽性 を示 した.ま た腺腫 における陽性率 は 77.8%で あ り,癌 とほぼ同率であったが,染 色様式 は 腺腔側細胞膜 のみで細胞質 には全 く陽性所見 を認めな い GIで あ り,CEAと 同様 に腺腫 と癌 で異なる局在局 性を示 した。 CA19‐9の乳頭部癌 における発現 に関 して,Kalnis‐ awaら 611ま 陽性率 は83%で 細胞質全体 に陽性 を示す も のが多 い と報告 しているが,わ れわれ の結果 では癌 で 43.8%,腺 腫 で22.2%で ,染 色様式 では腺腔側 細胞質 のみ か ら細胞質全体 に陽性 を示す もの まで さまざまで あ り,特 徴的 な所 見 は得 られ なか った。 II型糖鎖 は初期胚 の特定 の発 生時期 に特異的 に出現 す る胎児性抗原 で あ り,Lewis式 血液型 Leaの構 造果 性体 で あ る LeX,Leyを 末端 に有 し,側 鎖 の II型糖鎖 の 一 基 幹 糖 鎖 で あ る i抗 原 を も つ 連 の 抗 原 群 で あ 31l sLX 3い 20∼ り 癌特異性 が高 い もの と考 え られ てい る 321は 62.9%,大 腸癌 で五十 につ いては,膵 癌 で Kimら 3ゆ 嵐 ら は96.2%の 陽性率 と報告 してい るが,今 回 の乳 頭部癌 では陽性率 は43.8%と 低 く,乳 頭部癌 におけ る 癌特果 性 は乏 しか った 。また LeX,Leyに つ いては,膵 3り はぉのおの71.4%,85。7%と 報告 してお 癌 で Kimら り,乳 頭部癌 で 陽性率 はおのおの62.5%,81.3%と ほ ぼ 同様 であ った。 一 方,乳 頭部腺腫組織 におけ るII型 糖 鎖 の 発 現 は,SLX i 33.3%,LeX:22.2%,Ley: 44.4%で あ り,癌 に比 べ て低 い陽性率 を示 し,さ らに 染色様式 は CEA,CA50と 同様 に主 に腺腔側細 胞膜 の み陽性 を示す GIで あ り癌 と異 な る発現 を示 した。 以上 よ り乳頭部腫瘍 では CEA,CA50は 他 の抗原 に 比 べ て陽性率 が高 く,腺 腫 と癌 で は染色強度,染 色様 式 で異 な る所見 が得 られ た。 この差異 はII型糖鎖抗原 の LeX,Leyで も見 られた ことよ り,腺 腫 は正 常 の乳頭 部 粘膜 か ら腫瘍 性 変化 を きた した もの と考 え られ た が,癌 とは染色強度,染 色様式 で果 な り,免 疫組織化 学的 に は正 常 と癌 の間 に位置付 け られ る病変 と考 え ら れ た。 稿を終 えるにあた り,病 理標本作成 において御援助を頂 いた松沢玲子技術員に深 く感謝致 します。 10月, なお本論文 の要 旨は第48回日本癌学会総会 (1989年 5月 名古屋),第 90回日本外科学会総会 (1990年 ,札 幌)に おいて発表 した。また本研究の一部 は,文 部省科学研究費, 厚生省癌研究助成金, 日本私学振興財団学術研究振興金 の 助成 により行った。 文 献 1)林 括 次 :際 癌.内 藤聖 二 編.Pancreatic diS‐ ease.同文書院,東 京,1983,p698-729 2)新 井田達雄 t十二指腸乳頭部癌 の臨床病理学的研 究。 日消外会議 22:2009-2017,1989 3)Yamaguchi K,Munetomo Ei Carcinoma of the alnpulla of Vater. 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Thesefindings suggestthat alone surfaces predominant the apical on whereasCASo,Ir' and Lef were from cancerin terms different might be it that papilla but of Vater, adenomaarisesfrom the normal mucosaof the of the intensityand the gradeof eachantigen. Reprint requests: TadashiKobayashi First Departmentof Surgery,NipponMedicalSchml 1-1-5Sendagi,Bunkyo'ku,Tokyo' Il3JAPAN
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