秋田大学教育学 )

Akita University
秋
田
大
教
育
学)
学
部
研究紀要 (自然科学
4
5,2
3
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3
)
肥満評価 と体組成研究の現状
高 崎 裕 治
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身体活動量の低下や過食によりもた らされる肥満 は種々の成人病の リスクファクターであ り (
図1
)
,
健康の維持増進をはか る上で解決 しなければな らない大 きな課題であろう.昨今の健康 にたいす る関心
の中で,身近な健康指標 として肥満の程度を明 らかにする試みが続 けられてきた. ここではこれまで頻
用 されて きた肥満指標を顧みなが ら,肥満評価 と係わ りの深 い体組成研究 の現状 について触れてみた
い.
肥満評価に従来か ら用いられているものとして,身長 と体重の比 (
身長/体重の累乗)を とる方法が
ある. これが好 ま しい指標であるための条件 としては, この比が身長の影響を受 けないこと,および体
体重 (
k
g)/身長
脂肪 との相関が高 いことの 2つがあげ られている.よく用いられ るのは Kaup指数 ((
(
c
m)
2
) ×1
0
4を計算 す る.Que
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t指数 と同意 であ るが, 日本 で は多 くの教科書 が誤 って比体重 を
Quet
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t指数 としている.Kaup指数 は現在 ,BodyMas
sl
ndexと呼ばれることが多い.)や Rohr
e
r指
k
g)/身長 (
c
m)
3
〉×107 を計算する.)である. しか し, これ らの指数 は身長 と体重のみか
敬 ((
体重 (
ら求め られるという簡便 さでは優れているが,あ くまで も身長 と体重の相対的関係をみた もので肥満 と
- 23-
Akita University
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95
3.
)
過体重を区別で きず,肥満の定義 に通 じる体脂肪の多寡をみた ものではない.また,Rohr
e
r指数 につい
9
0
8年 に Rohr
e
rが この指数を発表 して以来,日本では最 も多 く用い られて きたが,身長の低
てみると 1
い者ではこの指数が高 くなるという欠点がある.
このような指数の他 に,肥満を判定す るために しば しば用い られてきた方法 として標準体重を基準 と
す るものがある.多人数の身長 と体重を統計処理 して身長別の標準的な体重が求め られる. これと実際
の体重 との偏差をよりどころとして肥満の程度 をみようとす るものである.通常 は標準体重 として身長
oc
a指数 を 日本人用 に改変 した もの として (
身長 別の平均体重 を用 いる.簡便 な方法 としては,Br
1
0
0
) ×0.
9を標準体重 とす ることが しば しばお こなわれている.一般的 に実際の体重が標準体重 の
1
2
0%を超えると肥満 とみなされているようである.厚生省では国民栄養調査の対象 となった 2
0歳以上
の成人 2万人以上のデータか ら,性別,年齢階級別,身長別に体重を分類 し,体重の 2
5-7
5パーセ ンタ
イル値の間に含 まれる者を 「ふっ う」,7
5パーセ ンタイル値を 「ふつ う」と 「ふ とりぎみ」の境界 とす る
判定表 ・図を しめ している.その他,明治生命か らは保険加入者を対象に性別,身長別体重 ごとに死亡
9
8
5年 に公表 されている.既 にア
率を追跡調査 し,死亡率が最低になるという観点か らの標準体重表が 1
メ リカでは 1
9
42年か らメ トロポ リタン生命が理想体重 として発表 してきたものの日本版であるが,標
準体重を単 に統計上の代表値 として表現せず に 「
死 にに くい」 という価値観を持たせた体重である.
上記 のような指数や標準体重 は手軽 に肥満 しているか どうかを評価で きるという点で は優れている
が,大 まかな評価 しかで きない.肥満 は体脂肪が過剰 に沈着 した状態 なので,詳 しく自分の身体状況を
判断するためには体脂肪量を明 らかにすることが必要 になる.その際の肥満指標 としては,体脂肪量が
0%,女子で
体重 に占める割合を しめす体脂肪率を用いることが多い.この場合,体脂肪率が男子では 2
0% (
女子の 1
5歳未満では 2
5%)をそれぞれ超えているときに肥満の範噂に入れることを長嶺が国
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1
9
6
6
)の しめ した評価基準
立栄養研究所在籍当時に提唱 し,かな り普及 している.これは Hue
hnke& Wi
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e(
1
9
7
4) も同様の基
を引用 した ものであり十分 に意味づけされた ものではないが,Be
- 24-
Akita University
準を しめ している.
体脂肪 のよ うな身体 の組成 を体組成 と呼ぶが,厳密 に体組成 を知 るには現在 のところ死体 を分析す る
しか方法がない. したが って,生 きている人 について体組成 を測定す るには間接的な方法 を用 いざるを
えず,種 々の計測方法が考案 されている.最 もよ く知 られているのは Be
hnkee
tal
.(
1
9
42
)によ り始 め
られた体密度法であ る. このような名前がついているのは次 のような理 由で体組成 を推定す るのに身体
全体 の密度 (
体密度)が必要だか らである.体脂肪 の密度 と重量を fとF,体脂肪以外 の部分 (
除脂肪)
の密度 と重量を (としとす る.体重を 1とす ると,F+L-1
,体密度をD とす ると,D- (
F+L)/
(F/ f+L/ C) となる.両式 よ りFについて表わす と,F- (L/D-1
)/ (L/ fll
) とな る.
したが って,予め死体 を分析 して Lと fがわか っていれば, あ とは体密度がわか ることによって F (
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97
9.
脂肪率) が求 め られ る. 実際の式 については Br
oz
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.(
1
9
6
3) の発表 した体脂肪率推定式 (F-
(
4.
5
7
0
/D-4.
1
42
) ×1
0
0
) が しば しば用 い られている.
体密度 を求 めるためには身体容積 を明 らかにす る必要が生 じる.そのための方法 として広 く用 い られ
て きたのが水中垂秤量法であ り (
図 2)
,現在 も各種 の計測方法 の妥当性が この方法 と比較 されている.
空気中で計測 した通常 の体重 と水中体重 の差 はアルキメデスの原理 によ り身体容積 を表 わす ことを利用
して体密度 を求 めよ うとす るものである.身体 内部 の空所 については肺や腸管があるので, これ らの空
所部分 の容積 は差 し引かれ る.通常 は最大呼出の状態で水中体重を計測す るので, その ときの残気量 を
計測す るとともに, 腸内ガスについては計測 しに くいために考慮 しないか一律 1
0
0c
cと しているものが
多 い.水中垂秤量法 の他 に も水 に潜 ることによって置換 した水 の量 を読み とり身体容積 とす る水置換法
やボイルの法則を利用 したプ レチスモグラフ法 (
Gundl
ache
tal
.1
9
8
0
)があるが,装置がやや煩雑 にな
ることや精度がやや劣 ることなどか ら水中体重秤量法 ほどには普及 していない.一方,生体計測 により
身体容積 を求 めようとす る試 み も幾っかなされている.身体各部位 を円筒, 円錐,台形 などの幾何学的
形状 に近似 し, それ らの容積の和を求 めているものが多 い.筆者 は身長 Hと体重Wか ら身体容積 Ⅴを算
出す ることを試み,算 出式 Ⅴ-1.
42
6
7×W10
6
1
1
/Ho
1
3
2
3
を得ている. この式が どれ くらい青年男子 につい
て有効であるかを調 べ ると,4
7人 の 日本人男子大学生 に適用 した場合 に平均誤差 3
8
8
mP
,5
0人の南 アフ
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Akita University
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.
リカの白人男子大学生に適用 した場合 に平均誤差 5
45
mgであった.We
l
t
man&Kat
ch (1
978
) は身体各
部位を幾何学的形状に近似することか ら出発 し,最終的に周径 と体重か ら身体容積 を算出す る重回帰式
1
22あることが しめされてい
を しめているが,水中体重秤量法により求めた身体容積 との平均誤差 は 1.
る.単純 には比較できないが,筆者の試作 した式 による誤差 はかな り小 さいと考え られる.
最近,密閉 したチ ャンバーに被検者を入れて一定量の不活性 ガスを注入 し,債拝 したあとの濃度を計
のチ ャン
測す ることによって身体容積を算出す るような装置が開発 されている.図 3のよ うに容積Ⅴ。
バーの中に身体容積Ⅴの被検者を入れ,密閉 した状態でバルブ 1と 2を開いて不活性 ガス (
SF6
)Vl
を
-(
Ⅴ。
閉鎖回路内で十分に撹拝す る.不活性 ガスの量 は変わ らないので撹拝後の濃度を Cとすると,Vl
-Ⅴ +Vl
)Cである.したが って,Ⅴ-Ⅴ。
+Vl
-Vl
/Cとして披検者の身体容積が求め られる.本装置
についての客観的な性能評価 については明 らかでない.
体組成を推定す るために水中体重秤量法 は優れた方法であるが,信頼性のある成績を得 るためにはそ
れなりの設備や実験手技が要求 されるので, どこでで も, あるいは誰で も簡単 にはおこなえないという
難点がある. したが って,実験室外で多人数を対象 に体組成を推定す るような場合のために簡便な方法
が幾っか考案 されている.それ らの うちで もよ く用い られているのが皮下脂肪厚 (
皮脂厚)か ら体密度
を推定する皮脂厚法である.測定器である Ski
nf
ol
dc
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perには数種頬あり, 日本では国立栄養研究所
r
の開発 した栄研式皮脂厚計が普及 しているが,世界的には英国で開発 されWHOも推奨 している Ha
図4
)を使用 しているものが多い.皮脂厚法 は体密度 と皮脂厚 に高い相関関係があるこ
pe
nde
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r(
gami
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1
964) の発表 した体密度推定式 (
男 :D -1.
091
3とを利用 した ものであり,Na
0.
0011
6(
上腕背部皮脂厚m
n+肩甲骨下部皮脂厚T
n
m),女 .
'D -1.
08
97-0.
001
33(
上腕背部皮脂厚m
m+肩
甲骨下部皮脂厚Ⅶ))が日本では広 く用い られている.後年,発表者の一人である Na
gami
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975)は
D -1.
092
3-0.
00
051
4(
(
上
上式を修正 して性差や年齢差に関係な く用いることのできる体密度推定式 (
腕背部皮脂厚m
m+肩甲骨下部皮脂厚m
m) ×体表面積C
Ⅱ
F
/体重kg) ×1
00)を しめてお り,当初 に発表 した
ものより優れていると考え られるが, あまり使われていない.
しか し, このような皮脂厚法にも測定誤差が大 きいという難点があ り,検査者が異なる場合には測定
値を比較すべ きでないといわれている.そのため, より客観的で普遍性のある皮脂厚の測定方法が望 ま
れるところとなる.近年では超音波を組織に向けて発射 し,超音波が密度の異なる組織の境界面か ら反
射 して くる性質を利用 して皮下脂肪の厚 さを計測す る超音波法が開発 されている.反射波の表示 にはA
モー ドとBモー ドの 2つの方式があるが,Aモー ドは反射波をブラウン管の時間軸にたい して直角方向
-
26 -
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Spr
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g.4.Har
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の振れ と して, また,Bモー ドは時間軸上 を反射波の強 さに応 じて光 らせ る方法 を とる. したが って,
Bモー ドの場合 は超音波 の発信器を移動 させなが ら時間軸 も移動 させ ると輝点が断面画像を描 き出す.
超音波法では,計測 した皮下脂肪 の厚 さか ら体密度 を推定 しているもの もあるが,多 くは局所での皮下
脂肪 の厚 さその ものを検討 している.
このような超音波法 に加 えて,最近では近赤外線分光法やイ ンピーダンス法が体脂肪 の計測に用 い ら
れ るようにな った.近赤外線分光法 は脂肪や水分が近赤外線 に特有の吸収帯 を持つ ことを利用 し,近赤
外線 の吸収 スペク トル値か ら相関の高 い体脂肪率 を推定 しようとす るものである (
図5
).イ ンピーダ ン
9
80年代 にな ってアメ リカで多 くの論文が出 るよ うにな ったが, 日本 において も測定
ス法 について は 1
器が製作,販売 され るよ うにな ってか ら, ここ数年 の間にかな り普及 して きたようである.交流回路 に
758
888
858
988
958
W∧VELENGTH
1E
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,1
9
84.
)
- 27-
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おけるイ ンピーダンス Zは伝導体の長 さLに比例 し,断面積 A に反比例す るので,これを式 に表わす と
Z-pL/A となる.右辺 に L/Lをかけると,Z-pL2
/AL,分母 の ALは体積 Vを意味す るので,Z
- pL2
/V,これを Ⅴ について求 めると, - pL2
/Z となる. したが って,伝導体 の体積 は長 さの 2乗
Ⅴ
をイ ンピーダンスで割 ることにより求 め られ る.人体 に置 き換 えてみると,伝導体の体積 は伝導性の高
い除脂肪組織 の体積 に相当 し,伝導体 の長 さは身長 に相当す るとみなされているので,除脂肪体積 (
重
量) は身長 の 2乗 をイ ンピーダンスで割 った値 に比例す る. このような考え方 に基づいた推定式 として
は Luk
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.(
1
9
8
6
)の式 (
男子 :LBM-5.
2
1
4+0.
8
2
7×He
i
ght
2
/Z,女子 :LちM-4.
9
1
7+0.
8
2
1
×He
i
ght
2
/Z)が知 られている.簡便 な体組成の推定方法で はあるが,人体 の複雑な形状や組織 を この
ように単純 な構成 として とらえ られ るのか とい うことや, 通電す る 8
0
0F
L
A,5
0
kHzの電流が手首 と足
首 に装着 した電極間で実際 にどのような経路 をたどるのかな ど検討 の余地が残 されている.
その他,体組成 の推定方法 として従来か ら知 られているものには体水分法, カ リウム法や クレアチニ
ン法がある.体水分法 は 1
9
5
0年代か ら既 にお こなわれているが,体脂肪の中には水分 が含 まれず除脂肪
成分 には水分 が一定量含 まれていると仮定 し,体水分量 を測定 して除脂肪量 を推定 しようとす るもので
ある.体水分量を生体内で測定す るには体水分 に希釈 しやす く,代謝 されず,無害 な トレ-サ-を一定
量 (
Q) 授与す る.希釈後 の トレーサーの濃度 Cを測定す ることによ り体水分量 は Q/C として求め ら
れる. トレーサーとして は水分 に拡散 しやすい垂水が しば しば用い られている.垂水 は経 口投与で速や
かに吸収 され,体水分 に希釈後 は血中濃度 と等 しい濃度で尿中に排滑 されるので これを測定す る.除脂
肪成分 に含 まれる水分 の割合 については,Pa
c
e&Ra
t
hbun(
1
9
4
5
)が死体分析 によ り晴乳動物で は平均
7
3.
2
%にな ることを しめ し,Be
hnkee
ta
l
.(
1
9
5
3
)は 7
2.
0
%とい う値 を しめ している. したが って,除
7
3
2o
r0.
7
2として算 出され る. カ リウム法において は, 人体 の総 カ リウム量 の
脂肪量 は体水分量/0.
0.
2
%が ガンマ線 を発す る放射性同位元素4
0K なので,この量を wh
o
l
ebo
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unt
e
rで測定す る.人体
の総 カ リウム量 ば o
K量/0.
0
0
2として求 め られ る.Fo
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s&Hur
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h(
1
9
6
3
)は除脂肪量 1
k
g当た りのカ
リウム量が平均 6
8.
1
mEqであることを しめ してお り,除脂肪量 は総 カ リウム量/6
8.
1と算出される.
クレアチニ ン法 は筋 に存在す るクレアチ ンの代謝産物であ り,2
4時間尿中のクレアチニ ン排酒量 は筋量
の指標 とされてい る.筋量 は除脂肪量 の半分程度 を占めて いるので 2
4時間尿中の ク レアチニ ン排他量
は除脂肪量 とも高 い相関関係 にあ り,除脂肪量が推定 され る (
図 6).また,血菜中のクレアチニ ン量 も
2
4時間尿中の クレアチニ ン排雅量 と相関が認 め られる. したが って,血祭中の クレアチニ ンか ら骨格筋
量や除脂肪量 を求 める方法 もある.
以上 のよ うに体組成研究 は間接的方法 に頼 らざるをえないが故 に様 々な推定方法が考案 されて きた.
体組成研究 は体組成 その ものよ りも,む しろ方法論 の研究 とい う印象が強い. さ らに幾っかの比較的新
しい方法 を Lu
ka
s
ki(
1
9
8
7
)の レビューを参考 に しなが ら記 し,体組成研究 の現状 を締 め くくりたい.
クレアチニ ンと同様 に尿中の 3
-メチル ヒスチジン (
3
MH)排雅量 は非侵襲性で安全 な筋蛋白のマー
カーになるといわれている.この 3
MH法 は筋原線維 の蛋 白質が分解す るときに放 出され るが蛋白質 の
再合成 には利用 されず, また,酸化 されないで尿中-排滑 され ることに着 目 してい る.体密度法 により
求め られた除脂肪量 は 2
4時間尿中のクレアチニ ン量 よ りも 3
MH排酒量 との間 に高 い相関のあること
が見出されている.筋蛋白以外 の蛋白質が影響 しているので はないか とい う批判 もあるが,筋蛋 白に由
来す るものの割合が十分 に大 きい と考え られている.
コンピュータ- ・トモグラフィー (
CT)は医療分野で も多用 されているが,Ⅹ線 を用いて局所の断面
像を分析す る方法である.組織 の密度 の違 いを Ⅹ線 の減衰 の程度に置 き換えて画像化す る.移動式 の台
に横 たわ り, Ⅹ線 を被検者 の周囲か らあてて減衰 の程度 を コンピューターに取 り込み断面像 を再構築 さ
せ る.低密度の ところは黒 く,高密度 の ところは白 く写 るので,管,脂肪組織,除脂肪組織 を区別 して
観察す ることがで きる.複数 の断面像か らは各組織 の厚 さ,面積や量が読み取 られ る.CT の利用 は今後
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も増加す るもの と思 われ るが簡便 さや コス トの面で難点があ り,特 に電離放射線 を用 いるので妊婦や子
供への適用 に際 しては考慮が必要である.
電離放射線 を利用 した ものとしては C
Tの他 に も中性子活性化法や光子吸収法がある.身体へ高速 の
中性子をあて ると, これを捕捉 したカル シウム原子や窒素原子が不安定 な49caや15N のような同位元素
に変わ る. これ らの同位元素 はガ ンマ線 を放射 しなが ら再 び もとの安定 した状態 の原子へ戻 るので,中
性子活性化法では身体か ら出され る放射線 エネルギーの レベルや活性度か ら原子の定性,定量 をおこな
う.中性子の放射密度,照射部位,同位元素 の量や半減期,活性化 された後 の放射線 エネルギーなどの
変数が重要 となる. カル シウム原子を標的 と して身体 の総 カル シウム量が,窒素原子を標的 として窒素
原子を含む筋やそれ以外 の除脂肪組織量が求 め られ る. したが って,全体か ら各分画の量を引いて脂肪
量が算出され る.一方,光子吸収法では放射性原子核か ら出 る光子が四肢の骨を通過す るときに光子 の
強度が変化す るので, その変化量を計測す る.骨の ミネラル含有量 は吸収 され る光子 エネルギー量 に比
例 している.
磁気共鳴画像 (
MRI
)法 は安全かつ非侵襲性 であ り体組成を直接的に評価す るのに大 きな可能性を秘
めた方法であ る. この方法 は中性子 と陽子 か らな る原子核が磁石 のよ うにふ るま うことを利用 してい
る.外部か ら磁界 を身体 の一部 にかけた ときに各原子核 は磁石 のように磁界 に沿 って並ぶが,外部か ら
さらに電磁波 を身体 に照射す ると幾つかの原子核 は電磁波 エネルギーを吸収 して磁界 での向 きを変 え
る.電磁波 の照射を止 めると,電磁波 エネルギーを吸収 している原子核 はそのエネルギーを放出す るが,
その信号 を利用 して断面像を描 き出す.最 もよ く用 い られている原子核 は水素 であるが,細胞や組織 に
多 く含 まれている水分子 を構成 している原子であるとともに,MRIの感度が優れている. したが って,
身体 の断面像を観察す ると同時 に体水分量 を計測す ることも試み られている.X線 が電子の密度 に依存
しているのにたい し,MRIは水素原子核の密度 とその物理的状態 に依存 している.技術的問題や高いコ
ス トなどの制約 もあるが,電離放射線 を用 いないという利点 は大 きいであろ う.水素や リン原子 を対象
にエネルギー代謝 を解析す るための新 しい方法 (
磁気共鳴分光法,MRS) として も期待 されている.
1- 29 -
Akita University
文 献
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