近江八幡市立総合医療センター 薬剤部 2015.1.22 目次 1.添付文書改訂情報 P.1 2.その他の重要な変更 P.2 3.院内からの医薬品に関するインシデント報告(7~12 月) P.2 4.今月のトピックス P.3~ 1.添付文書改訂情報 効能効果、用法用量等の変更 ※以下の採用薬につきまして、効能・効果、用法・用量の変更等の重要な改訂がありました ので、臨時報告いたします。 一般名(主な薬品名) 変更箇所 改訂内容 ラベプラゾール(パリエット錠) 効能・効 果 低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十 二指腸潰瘍の再発抑制 に適応追加 ダルベポエチン アルファ(ネス 効能・効 プ注) 果 骨髄異形成症候群に伴う貧血に適応追加 医薬品・医療機器等安全性情報 319 号 ※以下の医薬品につきまして、各種添付文書の変更・追加がありましたので、ご報告いたし ます。 一般名(主な薬品名) 変更箇所 ガランタミン臭化水素酸塩(レミ 重大な副 ニール錠) 作用 主な変更点・追記点 急性汎発性発疹性膿疱症を追加 掲載ページ p.12 詳細および安全性情報バックナンバーにつきましては、院内 LAN 掲示板「医薬品安全性情報」 または医薬品医療機器情報提供 HP(http://www.info.pmda.go.jp/)をご参照ください。 -1- 2.その他の重要な変更 販売名の変更 ※以下の採用薬の販売名が変更され、特に重要な変更と思われましたので臨時報告いた します。 変更前の販売名 変更後の販売名 ヘパリンNa注5千単位/5ml「モチダ」 ノボ・ヘパリン注5千単位/5ml (2015.3 月頃変更予定) 3.院内からの医薬品に関するインシデント報告(7~12 月) 分類 件数 注射薬・内服薬与薬忘れ 62件 指示変更の伝達、確認不足 25件 注射投与量間違い(流量・溶解量の間違い) 21件 インスリン投与間違い 15件 薬剤取り間違い 13件 患者間違い 11件 患者への説明不足、確認不足(本人管理内服薬等) 11件 持参薬服用忘れ 8件 2バック注射製剤開通忘れ 5件 注射投与経路間違い 4件 オーダー間違い 2件 その他 7件 ・与薬忘れが格段に多い結果でした。やはり内服薬の投与忘れが最も多いようですが、深夜帯施 行の注射薬(抗生剤等)の投与忘れについては今後も対策を検討していく必要があると思われま す。 ・インスリンの投与間違いでは、眠前にスケールによって超速効型製剤を誤投与したなどの例も見 られ、インスリン製剤の特徴と使用方法に関する知識の向上も必要と思われました。 ・注射剤投与時のバーコードリーダー不使用例による間違いについては、ルールの徹底を再度推 進していく必要があると思われます。 薬剤部 医薬品情報課 安部 美樹子 -2- 危険ドラッグのこと 知っていますか? 一般に覚醒剤や大麻などの違法薬物とよく似た成分を含むドラッグを指しますが、法的な定義はありま )療法について せん。乾燥ハーブと化学物質を混ぜたいわゆる「脱法ハーブ」のほか、粉末・液体状のものや錠剤も流通し ています。成分は覚醒剤に似たカチノン系(興奮系)と大麻に似た合成カンナビノイド系(鎮静系)に分けら れるが、違法薬物と化学構造の一部が異なっていることから、薬事法の指定薬物の対象から外れています。 そのため、国内で出回り始めた2007年頃から「脱法ドラッグ」「脱法ハーブ」「合法アロマ」などの名称で呼ば れてきました。 しかし違法薬物と同等、あるいはそれ以上の催眠・興奮・幻覚作用などを引き起こす成分を含み、治療 法の確立していない薬物も多いため、違法薬物以上に危険という指摘もあります。 実際、吸引・飲用者による交通事故や死亡事件が増えはじめ、2012年には意識障害や嘔吐、痙攣などに よる緊急搬送の事例が、前年から10倍の469名に増えました(厚労省調査より)。 2014年6月には、池袋で脱法ドラッグを吸引した男の乗用車が暴走、死者1人・重軽傷7人を出すという事 故が起こり、翌7月、厚労省と警視庁は呼称を「危険ドラッグ」に改めました。 危険ドラッグの販売店はネットや路上で取引される覚醒剤や大麻と違って実店舗が多く、ハーブ専門店、 雑貨店、アダルトグッズ店など多岐に渡ります。お香、アロマ、観賞用などと称しての販売は規制対象とな らないため、堂々と看板を掲げる店舗やネット通販業者も増えており、大都市中心に259店舗が確認され ています(2013年末・警視庁発表) 厚生労働省は2007年から「指定薬物」制度をスタートさせていますが、主成分の化学構造の一部を変え て規制の網を潜り抜ける「新製品」が後を絶えず、“いたちごっこ”が続いています。 このため、2013年2月から化学構造が似た物質を一括して規制する「包括指定」制度を導入し、更に2014 年1月には指定薬物の所持・使用を禁じる法改正も行われました。しかし有毒成分を特定できなければ、指 定薬物として規制できないため、検査・鑑定にかかる数ヶ月間に販売者・使用者が姿を消したり、新たな 「新製品」が登場したりする恐れが残っています。 実際に供給している業者の例として、ラーメン屋と兼業で年商1億円を危険ドラッグで稼いだという個人の 事例もあるようです。また、前述のような取締強化に伴い、「店舗やネット販売から宅配(デリバリー)を利用 したりして、地下にもぐっている」という元販売店経営者の証言もあり、流通形態も流動化しているようです。 また、同じ包装の製品でも毒性の強弱が極端に異なる製品も出回っているようです。これは、海外から 持ち込んだ薬物の溶液に市販のハーブの葉を浸して混ぜ込み、乾燥させる手順に、詳細なマニュアルがな く、薬物含有量にムラができるためのようです。そこで、常用者がたまたま強いドラッグを吸って意識を失い、 重大な事故を起こすという事例もあるようです。 兎に角、検挙されれば、下記のような処罰があり、これが抑止力となることを願いつつ、正しい知識を持 ち、自分を含めた周りの人間が安易に流されないように注意しましょう。 -3- 種類 輸入/製造 所持・譲渡・譲受・使用 覚醒剤 1年以上の有期懲役 10年以下の懲役 大麻(マリファナ) 7年以下の懲役 5年以下の懲役(使用は除く) MDMA 1年以上10年以下の懲役 7年以下の懲役 指定薬物 5年以下の懲役、もしくは500万円以 3年以下の懲役、もしくは300万円以 下の罰金またはこれを併科(販売・授 下の罰金またはこれを併科 与、販売・授与の目的での貯蔵・陳列 (購入を含む) を含む) 以下に、現在流通している「危険ドラッグ」を含めた社会的、身体的に問題のある薬物を列挙しました。 【危険ドラッグ】 中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場 合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある 1429 物質(平成 26 年 11 月 18 日現在)が指定薬物とし て、医療等の用途に供する場合を除いて、その製造、輸入、販売、所持、使用等が禁止されています。 【覚醒剤】 主に白色の粉末や無色透明の結晶。無臭でやや苦みがあります。俗に「シャ ブ」、「クスリ」、「S(エス)」、「スピード」、「ヤーバー(錠剤型の覚醒剤)」等と呼 ばれています。 覚醒剤の水溶液を注射する方法が一般的だが、粉末を火であぶって煙を吸 う、飲物に入れて飲むといった方法もあります。 神経を興奮させ、眠気や疲労感がなくなり、頭が冴えたような感じになります。しかし、効果が切れると、激 しい脱力感、疲労感、倦怠感に襲われます。 覚醒剤は、特に依存性が強く、使用を続けると、"壁のしみが人の顔に見える"、" 警察に追われている"、"誰かが自分を殺しに来る"などといった幻覚や妄想が現 れるほか、時には錯乱状態になって、発作的に他人に暴行を加えたり、殺害した りすることがあり、このような症状は、やめても長期間にわたって残る危険性があ ります。また、大量の覚醒剤を摂取すると、急性中毒により、全身けいれんを起こし、意識を失い、最後に は脳出血で死亡することもあります。 -4- 【大麻】 大麻草乾燥大麻(「マリファナ」、茶色または草色)、大麻樹脂(「ハシッシ ュ」、暗緑色の棒状又は板状等)、液体大麻(「ハシッシュオイル」、粘着性 のある暗緑色又は黒色のタール状の液体)があります。通常は乾燥した葉 等をキセル、パイプ、水パイプ等を使用して吸煙しますが、そのまま食べる、 溶液として飲むなどもあります。 一般的には、気分が快活、陽気になり、よくしゃべるようになるといわれて いますが、その一方、視覚、聴覚、味覚、触覚等の感覚が過敏になり、変 調を来したり、現在、過去、未来の観念が混乱して、思考が分裂し、感情 が不安定になったりします。このため、興奮状 態に陥って、暴力や挑発的な行為を行うことが あり、さらには、幻覚や妄想等に襲われるよう になります。また、毎日ゴロゴロして何もやる気のない状態となる「無動機症候 群」に陥ることもあります。 【MDMA、MDA】 MDMA は、本来は白色粉末ですが、様々な着色がされ、文字や絵柄の刻印が 入った錠剤の形で密売され、俗に「エクスタシー」等と呼ばれます。MDA は、白 色粉末で、俗に「ラブドラッグ」等と呼ばれています。 MDMA と MDA の薬理作用は類似しており、視覚、 聴覚を変化させる反面、不安や不眠などに悩まされる場合もあり、使用を続け ると錯乱状態に陥ることがあるほか、腎・肝臓機能障害や記憶障害等の症状も 現れることがあります。 MDMA:化学名「3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン」(3,4-Methylenedioxymethamphetamine) MDA:化学名「3,4-メチレンジオキシアンフェタミン」(3,4-Methylenedioxyamphetamine) 【コカイン】 コカインの粉末コカインは、南米産のコカの木の葉を原料とした薬物で、無色の結 晶又は白色の結晶性粉末で、無臭で苦みがあり、「麻薬及び向精神薬取締法」で 麻薬として規制されています。 コカインは、鼻粘膜からの吸引のほか、経口による方法で乱用されています。コカ インには、覚醒剤と同様に神経を興奮させる作用があるため、気分が高揚し、眠気や疲労感がなくなったり、 体が軽く感じられ、腕力、知力がついたという錯覚が起こります。しかし、覚醒剤に比べて、その効果の持 続時間が 30 分程度と短いため、精神的依存が形成されると、一日に何度も乱用するようになります。乱用 を続けると、幻覚等の症状が現れたり、虫が皮膚内を動き回っているような不快な感覚に襲われて、実在し ないその虫を殺そうと自らの皮膚を針で刺したりすることもあります。コカインを大量に摂取すると、呼吸困 難により死亡することがあります。 -5- 【ヘロイン】 けしの花ヘロインは、けしを原料とした薬物で、けしからあへんを採取し、あへんから抽出したモルヒネを精 製して作られ、「麻薬及び向精神薬取締法」で麻薬として規制されています。純粋なヘロインは白色粉末で すが、純度の低いものに灰色や灰褐色のものもあり、粉末のほかに棒状、粒状等 さまざまな形状のものがあります。 一般的には無臭ですが、中には酢酸の臭いのするものもあります。ヘロインは、 静脈注射のほか、火であぶって煙を吸う方法、吸引具により吸引する方法、経口 による方法で乱用されています。ヘロインには神経を抑制する作用があり、乱用すると強い陶酔感を覚える ことから、このような快感が忘れられず、乱用を繰り返すようになり、強い精神的依存が形成されます。 さらに、強い身体的依存が形成され、2~3 時間ごとに摂取しないと体中の筋肉に激痛が走り、骨がバラバ ラになって飛散するかと思うほどの痛み、悪寒、嘔吐、失神などの激しい禁断症状に苦しむこととなり、あま りの苦しさから精神に異常を来すこともあります。また大量に摂取すると呼吸困難、昏睡の後、死に至りま す。ヘロインは心身への影響が非常に強く、医学的な使用も一切禁止されている大変危険な薬物です。 【LSD】 LSD は、合成麻薬の一種で、「麻薬及び向精神薬取締法」の規制の対象とされ、水 溶液をしみこませた紙片、錠剤、カプセル、ゼラチン等があり、経口又は飲み物とと もに飲むなどして乱用されています。LSD を乱用すると、幻視、幻聴、時間の感覚 の欠如などの強烈な幻覚作用が現れます。特に幻視作用が強く、ほんのわずかな 量だけで物の形が変形、巨大化して見えたり、色とりどりの光が見えたりする状 態が 8~12 時間続きます。また、乱用を続けると、長期にわたって神経障害を来 すこともあります。 LSD:化学名「リゼルギン酸ジエチルアミド」(Lysergsaurediethylamide) 【マジックマッシュルーム】 マジックマッシュルームは、麻薬成分であるサイロシン、サイロシビンを含有す るキノコ類の俗称で、これを摂取すると幻覚作用が現れることがあります。マ ジックマッシュルームは平成 14 年6月、「麻薬及び向精神薬取締法」の麻薬原 料植物として指定され、その栽培、輸入、譲渡、譲受、所持、使用等が禁止さ れています。マジックマッシュルームを食べて幻覚が現れ、攻撃的な行動や自 殺を試みる例があります。 参考文献: 厚生労働省 ホームページ 内閣府 ホームページ コトバンク 知恵蔵2014の解説 朝日新聞デジタルニュース 1 月 15 日 毎日新聞 1 月 16 日/1 月 20 日 薬剤部 医薬品情報課 -6- 住田 勝
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