人に魔法をかける時に、一番大事な要素は嗅覚である。魔術が最大限に

人に魔法をかける時に、一番大事な要素は嗅覚である。魔術が最大限に効果を上げるには、
人の鼻腔から魔法を滑り込ませなければいけない。
(
「香りの生理心理学」フレグランスジャーナル社)
昔々、ヨーロッパには「魔女」と呼ばれる女性たちがいました。
それはまだ、医者や宗教も広く知られていない時代。村の魔女たちは村人の身体の病から
恋の病まで治していました。
彼女たちは、沢山の薬草を知り、その薬草を何月の満月の夜、どこで摘んで、どういう風
に煎じて飲めば何に効く。ということをそれはそれは事細かに知っていました。
そして魔女たちは、時々魔法のレシピを知るために悪魔に会いに行くのです。
魔法のほうきに乗って…
魔女たちはほうきに乗ったり、魔法を使って空を飛んでいました。
実際は本当に飛んだかどうか知りませんが、16 世紀の魔女狩りと言われる魔女裁判で、彼
女たちは「悪魔に会いに行くために空を飛んだ」と自供しています。
魔女裁判についても、ここで細かくお話ししたいところですが、時間がなくなってしまう
ので簡単に書くと…
16 世紀ごろヨーロッパではキリスト教を布教するために、国を挙げての大キャンペーンを
行っていました。
しかし、国民の多くは神よりも魔女を信じていました。それでは国の威信は守られません。
そこで「魔女は悪魔の使い。神の敵である。断罪せよ!」と魔女狩りに至るわけです。
ですから、魔女が何か悪いことをしたから火あぶりにされたわけではなく、おそらく宗教
と何らかの蜜月のあった国の政治家たちが、自分に不利なモノを排除するためだけの出来
事だったと思います。
しかし、そのためにそれまで脈々と口述伝承で受け継がれた魔法の数々が、ぷっつりと行
われなくなってしまったのです。
そしてその魔法のレシピのほとんどが伝えられなくなってしまいました。
でも…
その魔法、知りたくないですか?
古い文献や残っている絵などから推測されたものがいくつかありますので、紹介します。
次のページをご覧ください。
<空飛ぶ軟膏>
・ドクムギ、ヒヨス、ドクニンジン、赤と黒のケシ、レタス、スベリヒユをそれぞれ 1 グ
レーン
これらをすべて混ぜたもの 4 に対して油を 6
この混合物 31.103g につき、テーバイ(産?)阿片 1.296g を加える
イタリアの数学者ジェロラーモ・カルダーノ(1501~1576 年)の著書「デ・スプティリタ
ーテ」に載っていたものだそうです。
この軟膏を全身に塗って空を飛ぶのだそうです。
もうお分かりかと思いますが、赤と黒のケシ、阿片のような明らかな幻覚作用のあるもの
や、ドクムギ、ドクニンジン、ヒヨスにも中枢神経をマヒさせる成分が入っていたりと、
どうやらいわゆる「トリップ」をしていたようです。
その他、アサ、ハシシュ、ベラドンナなど毒性、幻覚性の高いモノを使ったレシピも残っ
ているようで、いずれにしても「空を飛ぶ」というのは麻薬による幻覚であった可能性が
非常に高いです。
これらのハーブは、現在の日本では使用はもちろんのこと栽培、購入も法律で規制されて
いるものが含まれます。ですので、くれぐれも自分で作ってみようなどとは思わないでく
ださいね。
<魔除け・浄化の魔法>
魔女たちは、魔よけも作っていました。
当時は病気や災厄は悪魔の仕業だと考えられていましたから、魔よけは大事な健康科学で
す。
その中で良く使われていたのが、オレガノ、ニガハッカ、バレリアン、セントジョンズワ
ート(オトギリソウ)
、ネトル(セイヨウイラクサ)
、ハシバミ、ヤドリギだそうです。
ニガハッカ、ハシバミやヤドリギは、あまり現在アロマセラピーやハーブでも使いません
が、他の植物はとても良く使います。
近東アッシリアやバビロニア人は、山を神聖な場所としていましたので、浄化は「山の香
り」と考えていました。
したがって、山の香りを感じられる、シダー、サイプレス、ジュニパーを焚くことで、空
気を清浄し、魔を祓い浄化するとしています。
また中国でも、山の香りは特別な浄化力があると考えられ、特に過去のカルマを浄化する
として、ジュニパーやサイプレスを焚き、否定的な影響を全て鎮めると信じられていまし
た。
<伝説のハーブ>
魔女のハーブと言ってご紹介しなければならないのが「マンドラゴラ」です。
聞いたことがあるでしょうか?
人の形をしたような根を持つこの植物は、毒性も高いのですが、引っこ抜くときにものす
ごい悲鳴を上げるのだそうです。
その悲鳴を聞くと、発狂して死んでしまうという伝説があり、マンドラゴラを収穫する時
は耳栓をして、ロープでくくり犬に引かせるのだそうです。そして犬に犠牲になってもら
うのだそうです。
実の部分には麻酔や麻薬、催眠剤としての効果が有り、人の形をした部分には媚薬として
の効果があると言われ、万病に効く霊薬とされているそうです。
マンドラゴラには雄と雌があり、雄を女性に、雌を男性に使うと媚薬として使えるそうで
す。
クレオパトラも使っていたのではないかと言われています。ツタンカーメン王の壁画には
マンドラゴラを植えている人の絵が残っているそうです。
<恋の魔法>
媚薬が出てきましたが、アロマやハーブには催淫作用「媚薬」としての利用が多くされて
います。これは、上手に使えば今も有効かもしれません?!
バニラ、シナモン、朝鮮ニンジン、ルバーブ各 30g を一リットルのマラガワインか熟成し
たシャブリに入れると催淫作用のあるワインができるそうです。
ただし、女性に効果のあるものだそうですよ。
インドでは、香りと性は密接な関係があり、タントラの五大要素の儀式では、女性は手に
ジャスミン、首と頬にパチュリ、胸にアンバー(竜涎香)、髪にスパイクナード(甘松香)
、
性器にムスク、腿にサンダルウッドの香油を塗り、男性は額、首、胸、臍、腕、腿、性器、
手足にサンダルウッドを塗ります。
男性の香油はなんだか単調ですが、女性のこの色とりどりの香油は、なんともエキゾチッ
クで、しかも全てに「催淫作用」があります。
こういった官能的な香りを使うことは、自分自身の女性性も高める気がしますね。
ギリシャ神話に登場するビーナスの一人イオネ。
イオネの必需品は香水です。ギリシャ語で香水を意味するハーブは「マートル」です。
おそらくマートルをオリーブオイルに混ぜた香油を使ったのではないかと思います。
媚薬の使い手として有名なのが、クレオパトラです。
アントニーを招いた宴のクレオパトラの宮殿には、高さ 50 センチにもなるバラの絨毯が敷
き詰めてあったとか…
バラも香りの催淫作用を使い、この時の交渉を有利に進めたクレオパトラ。
また媚薬を悪用した事件も多くあったのがこの時代です。
そもそも香りは神との交信のための宗教儀式に使われていました。それが病気治療に派生
し、さらには媚薬となり、人の心をコントロールするものとなりました。
香りは神を信仰するものか、冒涜するものか。という議論にもなったのです。
現代では、香りの成分の作用が科学的に分析され、必要に応じて「希望を見出す」ツール
として使われることが主になっています。
ここでは紹介しきれないことがたくさんありますが、こういった過去を知ることで、より
アロマテラピーに興味を持ってもらえたら嬉しいです。
<あなたの媚薬>
とはいえ… ここでご紹介したハーブを全部集めて媚薬を作ることは、
ちょっと大変かも…。
ということで、現代のアロマを使ったお手軽な秘密の媚薬をお教えしましょう。
無水エタノール(あるいはウォッカ)10ml に
精油
ベルガモット 2 滴
イランイラン 4 滴
ジャスミン 3 滴
ローズ 3 滴 (香りがきついようでしたら、ジャスミンかローズのどちらかで大丈夫)
ネロリ 2 滴
ローレル 3 滴
パチュリ 2 滴
サンダルウッド 5 滴
を混ぜて、遮光瓶に入れて約 2 週間熟成させます。
それまでバラバラだった香りが、1 つの香りになります。それを香水として使います。
クレオパトラが愛したローズとジャスミン。
ネロラ公国の王妃が多くの男性を魅了した香りネロリ。
インドネシアでは新婚初夜に使われるイランイラン。
インドのタントラの儀式に使われたサンダルウッドとパチュリ。
ベルガモットとローレルは、それぞれのノート(香りの重さ)を橋渡しする香りですが、
これ自体にも陶酔を促す作用があります。
それぞれの精油には、催淫作用や女性ホルモンを活性化する作用が入っていますので、女
性らしい魅力を高め、男性を誘う香りとなります。
ただし、強い香りですので、腰より下に付けてください。足を組んだり、歩いたりするこ
とで立ち上がる香りくらいがちょうど良い濃度です。
上にある精油以外でも、ナグチャンパ、マートルなど催淫作用のある精油をご自分でブレ
ンドしてみて、魔法の媚薬を作ってみてください。
参考図書
「魔女の薬草箱」 西村佑子 山と渓谷社
香りの神秘とサイコアロマテラピー「心を癒すアロマテラピー」ジュリア・ローレス著・
林サダオ訳 フレグランスジャーナル社
「アロマテラピー<芳香療法>の理論と実際」ロバート・ティスランド著 高山林太郎訳
フレグランスジャーナル社
「サトル・アロマテラピー」エッセンシャルオイルを使ったスピリチュアルな癒し パト
リシア・ディビス著 バーグ文子訳 BAB ジャパン