平成 26 年度女性に対する暴力防止講演会 in 鹿島市 講演要旨 講師:陣内誠氏(NPO 法人 IT サポートさが理事 小城市立牛津小学校教諭) インターネット、ばれる広がる伝わらない ●スクールラブ スクールラブという言葉をご存じでしょうか?今年の流行語大賞の候補にもなっている「壁ド ン」という言葉もあります。要は、制服の二人がラブラブしている写真を撮ることです。中高生 の特に女の子が、ツイッター等を利用して、スクールラブの写真をアップしています。リアルな 生活が充足している「リア充」を自慢するかのように掲載され、流行っています。 今から数年前、IT サポートさがに、ある女の子から写真をネット上から削除してほしいという 依頼がありました。その女の子は、彼とキスしている写真をブログにアップしていました。 「その 彼と別れることになっていて、自分のブログの写真は削除できるが、彼氏がブログから削除して くれない。新しい彼氏が見つけると困るから、ネットから早く消してほしい。 」というのです。実 は、インターネット上から情報を削除するというのは大変な作業です。彼氏が友人にスクールラ ブの写真を送信し拡散していたということもあり、削除の作業を終えるまで2か月程を要しまし た。スクールラブをアップした子どもたちの多くは、そうした写真を公開することで、将来何ら かの支障があるかもしれないということに気づいていないようです。 ●ばれる、広がる、伝わらない 昨年の夏のことを覚えていますか?ツイッターで、変わった写真をアップすることが流行りま した。コンビニエンスストアのアイスクリームBOXの中に入ったり、看護学校の学生が病理解 剖して取り出した臓器の写真をアップするということがありました。コンビニエンスストアは閉 店に追い込まれ、専門学校生は退学処分になりました。ばれた原因の一つは、過去のツイートか ら身元が判明したのですが、スマートフォンに入っている GPS 機能によって、ばれる場合もあ ります。また、インターネット上で情報を発信するとログが残るようになっており、ログをたど り、発信者を特定することができるのです。 昨年の夏の例で挙げた若者は、全国に情報を広めたかったわけではなく、仲間内で「いいね!」 をもらって楽しめればよかったのかもしれません。しかし、身元がばれ、情報が拡散してしまい ました。1 人が 3 人に情報を伝えて、その次の 3 人がまた 3 人に情報を伝えるとすると、計算 上は 17 回で日本の人口を超えてしまします。インターネット上でリツイートされると情報がい かに広がるかということがわかります。広がったデータを消すことは非常に困難であり、どのよ うに悪用されるのかだれにも分かりません。 日本語はあいまいな言語です。その日本語の特性から、インターネット上では誤解が生じやす いのです。例えば、 「この料理おいしそうじゃない」と書いてある場合、おいしそうな料理である ことを表現しているのか、おいしくなさそうな料理であることを表現しているのか、文字だけで はよく分かりません。子どもたちには、 「日本語は使いこなすのが難しい言語だから、誤解が生じ るのはしょうがない。インターネットで感情を伝えるのは難しい。」ということを伝えなければな りません。 ●ICTによる情報化社会 インターネットは、すでに社会基盤のひとつと言えるでしょう。誰もが情報発信できる環境が 整いましたが、集中砲火を浴びるかもしれない危険性と隣り合わせです。仲間内だけのやり取り なので、秘密が守られると思われているLINEでも、アカウントの乗っ取りや、仲間内から外 部への情報の拡散など、留意すべきことがあります。システムのエラーは起こらなくても、人間 が運用する以上ヒューマンエラーが起こる可能性があります。 児童ポルノの問題もあります。18 歳未満の子どもが、仲間内で、性器や性交に関する画像情報 をリツイートして拡散した場合、発信者だけではなく拡散者も「児童買春、児童ポルノに係る行 為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」で罰せられます。11月の国会では、リ ベンジポルノ規制法が成立しました。この法律では、第三者が撮影対象者を特定することができ る方法で私的な性的画像を不特定多数の者に提供したり閲覧できる状態にすることを処罰する 「公表罪」が設けられました。リベンジポルノを予防するためには、インターネットの特性を知 ることが必要です。インターネットの特性こそ「ばれる、広がる、伝わらない」ということです。 ●小学生向けデートDV予防教育の必要性 デートDVというと一般に異性間のことを想像されるかもしれませんが、小学校の高学年から 中学生にかけて同性間で築かれる親密な友人関係をチャムシップと呼びます。特に女子に顕著で、 その時期にデートDVによく似た状況を招くことがあります。よって、小学生の段階から、デー トDV予防のための教育を推進することは無駄ではないと考えています。子どもたちが、異性間 の交際に発展する前のチャムシップの時期に、デートDV予防教育を行うことに大きな意味があ ると思います。 (*この講演要旨は、講演内容の一部を佐賀県DV総合対策センターでまとめたものです。)
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