遺伝性乳がん卵巣がん について 2013・1・26 神奈川県立がんセンター 乳腺内分泌外科 小島いずみ きょう、みなさまにお伝えしたいこと ①「遺伝」とは? ②「遺伝性乳がん卵巣がん」とは? ③「対策がある」ということを知ってください まず「知ることが第一歩!」です 「遺伝ってこわい」? どうしてこわいと感じるんだろう? 「がん家系=家族皆、がんになる」 「遺伝だけが原因でがんになる」 「遺伝が原因なら、予防のしようがない」 どうしてがんになるのかしら? •「うちの家系はがん家系だから、私もがんになるにきまってるんです…」 •「牛乳を飲むのをやめれば、乳がんにならないですか?」 •「私は運動もちゃんとしているし、規則正しく生活しているから、 がんになるはずはない!」 •「人種や国・同じ国でも地域によって、なりやすいがんもあるらしい」 様々な原因が絡みあってがんが発症します。 一つの原因だけでは、がんにはなりません。 たとえば乳がんの場合・・・ ●日本で新しく「乳がんと診断される人」 年間 4万人くらい 日本人の約20人に1人が、一生の間に乳がんを発症 ●乳がんの発症に関係するもの 「環境要因」 「遺伝的要因」 病気の原因には大きく2つの要因がある ●「環境要因」 ウィルス・細菌など 気候・気温・風土 衛生状況、栄養、汚染物質 生活習慣(タバコ・飲酒・不規則な生活など) ●「遺伝的要因」 遺伝子の変化による 病気のなりやすさ 環境要因 遺伝的 要因 乳がんの原因となりうるリスク 年齢 出産歴がない 初産年齢が早い 閉経年齢が遅い 飲酒 肥満 など 乳がんの家族歴 環 境 要 因 ← 遺伝的要因 つまり・・・ 乳がんには、 「遺伝的要因が強い乳がん」と 「遺伝的要因がそれほど強くない乳がん」 があります。 きょうは 「遺伝的要因が強い乳がん」 についてお話します。 8 遺伝的要因の強い乳がんの割合 家族歴のある乳がん 15% 遺伝性乳がん卵巣がん 3~5% 乳がん 家族歴のある乳がんのうち 原因の遺伝子が分かっている 乳がん 遺伝性乳がん卵巣がんの割合 遺伝性乳がん卵巣がん 3~5% 乳がん 10% 卵巣がん 「病気の原因になる遺伝子」とは? 遺伝子はヒト いでんs の体を作る 「設計図」 なかには病気 のかかりやすさ いでんs に関係した遺伝 子も。 遺伝子= 「設計図」をもと に いでんs 髪や目の色など 体のパーツが 作られる。 遺伝子は両親か ら子供に伝わる が、 s 組み合わせが違 う=兄弟でも少し ずつ違う。 遺伝子は両親から伝わります 父親 母親 子供たち 子供は父親と母親から半分ずつ遺伝子を受け継ぐ。 兄弟でも異なる遺伝子の組み合わせになる。 片方の親から「ある遺伝子」が 子供に伝わる確率 (常染色体優性遺伝の場合) 父親 母親 ここにある遺伝子 が子供に伝わる 確率=50% 子供たち 伝わる 伝わる 伝わらない 伝わらない 片方の親が「ある病気の原因となる遺伝子」 を持っていた場合 (常染色体優性遺伝) 父親 母親 ここにある 「病気の原因になる 遺伝子」が 子供に伝わる確率 =50% 子供たち 伝わる 伝わる 伝わらない 子供に伝わる確率は50% 伝わらない 片方の親が「病気の原因となる遺伝子」 を持っていた場合 父親 母親 遺伝性 乳がん卵巣がんも このように伝わります 子供たち 伝わる 伝わる 伝わらない 子供に伝わる確率は50% 伝わらない 遺伝性乳がん・卵巣がん症候群とは? 「BRCA1遺伝子・BRCA2遺伝子」が 変異(変化)したため、がんを発症する病気 子供に伝わる可能性 1/2(50%) 変異 乳がん 卵巣がん 変異 つまり、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群というのは… ●「BRCA1遺伝子やBRCA2遺伝子」が 変異したため、がんを発症しやすくなる病気 ●親にBRCA遺伝子の変異がある場合、 こどもに伝わる可能性 50% ● 乳がんや卵巣がんを発症する確率は BRCA遺伝子変異がない人より高い 遺伝性乳がん卵巣がんの場合は・・・ BRCA遺伝子の変異があるかが分かれば、 ① 通常は健診をしない若い世代の予防 ② すでにがんにかかった人の 2度目のがんの予防 ③ まだがんにかかっていない他の家族、 次の世代の予防 「次のがん」を前もって予防するための対策を とれる 遺伝性乳がん卵巣がんの場合は・・・ 前もって、BRCA遺伝子があるかが分かれば、 「次のがん」を前もって予防するための対策をと れる そのための手段として登場したのが 「遺伝子検査」です 「遺伝子検査」って? 乳がん・卵巣がんの家族歴がある 若くして乳がんにかかる 卵巣がんにかかる 繰り返し乳がんにかかる などした人がいる家系を対象に BRCA遺伝子の変異があるかを調べる 「BRCA遺伝子検査」が日本でも行われ るようになりました。 遺伝性乳がん卵巣がんの拾い上げ項目 (1)若い年齢で乳がんにかかった (2)両側の乳房とも乳がんにかかった (3)家族の中に複数の乳がん患者がいる (4)家族の中に卵巣がんの人がいる (5)乳がんと卵巣がんの両方にかかる (6)男性で乳がんにかかった (7)くりかえし乳がんを発症した 検査の結果、もしBRCA遺伝子変異があった場合、 どうすればいいの? 例えば…アメリカでは、以下の予防策がとられています。 ●早期発見のための検診 ●乳がんになる前に手術で両側の乳房切除をする ●卵巣がんになる前に手術で卵巣を摘出する ●ホルモン剤を内服する 予防的治療により がんになる確率を減らせるとされています 76% 予防的卵巣切除術 による卵巣がん予防 48% タモキシフェン内服 による乳がん予防 治療群 BRCA156%/BRCA2 43% 対照群 予防的卵巣切除術 による乳がん予防 90% 予防的両側乳房切除術 による乳がん予防 0 50 100 % アメリカでは遺伝子変異があった場合、これらの手段を選択する人もいます。 遺伝カウンセリングって? 「私は遺伝性のがんなの?」 「検査を受けて、遺伝性ってわかったらどうしたらいいの?」 「娘や兄妹にどう伝えればいいの?」 「どうやって予防するの?」 「検査を受けたいけど、家族はやめてほしいって・・・」 遺伝や遺伝子検査は 自分だけでなく、「家族」の問題 一人ひとりによって答えも違うデリケートな問題 だから、「カウンセリング」が必要なのです! 遺伝カウンセリングでは・・・ ご本人と家族の考え方、家族の事情はさまざま。 「自分にとってのベストな選択」は 一人一人、違います だから、 時間をかけて繰り返しカウンセリングをすることが必要。 「その人にとってのベストな選択」を見つける サポートをすることがカウンセリングの目標です。 Aさんが遺伝カウンセリングにやってきました 「私のがんは娘に遺伝するのか心配です」 「遺伝性乳がん卵巣がんについて知りたい」 「医師にカウンセリングを受けるように言われました」 Aさん こんにちは。 まずは、ご相談したいこと、心配なことを教えて下さい。 あなたとご家族について教えて下さい。 ご家族の中に、乳がんや卵巣がんにかかった人は いらっしゃいますか? カウンセラー・医師 Aさんが遺伝カウンセリングにやってきました 「そもそも遺伝ってなんですか?」 「遺伝する乳がんってどういうものなの?」 「私の場合は遺伝性なの?」 「遺伝」と「遺伝性乳がん卵巣がん」について お話しします。 あなたの場合は、 遺伝性乳がん卵巣がんである確率は○%くらいです。 Aさんが遺伝カウンセリングにやってきました 遺伝子検査って何ですか? でも、もし遺伝性だったら、どうすればいい? 遺伝子検査について説明しましょう。 検査でわかることわからないこと、メリットとデメリットも ありますので良く聞いてくださいね。 遺伝性だった場合の検診や予防策もお話しします。 Aさんが遺伝カウンセリングにやってきました 検査を受けた方がいいのか、受けないほうがいいのか 分からなくなってきてしまいました・・・ あわてて決めなくてもいいんですよ。 「検査を受けた場合」、「受けなかった場合」 それぞれの場合で整理してみましょう。 もし遺伝性だったら、Aさんとお子さんたちはどうすれ ばいいでしょう? 遺伝性でなかった場合、検査を受けない場合は? 一緒に考えておきましょう。 Aさんが遺伝カウンセリングにやってきました 家族とも相談して、どうすればいいか よく考えてみた方がいいかも・・・ そうですね。 遺伝性乳がん卵巣がんを正しく知ったうえで、 ●「今は検査を受けない」のも ●「検査を受けて、結果に応じた対策をとる」というのも ●「検査をいつ受けるのか」も Aさん自身の大切な選択です。 ご家族でよく考えて、一番いい選択をしてくださいね。 助けが必要な場合は、いつでもカウンセリングに お越しくださいね。 遺伝カウンセリングの流れ 医師のすすめ・希望により予約 遺伝カウンセリング外来 家族歴・相談内容の確認 遺伝性乳がん卵巣がんについて 遺伝子検査について説明 遺伝性だった場合の対策 遺伝子検査(希望者) 検査結果説明 追加カウンセリング・検診 中に何が入ってるんだろう…? イデン? がん家系? 中はこうなっているのね 遺伝性 乳がん卵巣がん 遺伝のこと 遺伝子検査 予防策について あなたの心配事 私はどうしようかしら? どういう検診をする? 検査を受ける? ? 検査を受けない? 予防的乳房切除術? 家族はどうするの? 予防的卵巣切除術? 乳房温存術? 乳房全摘術? 「その人らしい選択」ができるように サポートします 遺伝性乳がん卵巣がんを正しく知り、 「遺伝カウンセリングを受けるという選択肢がある」ことを 知ることが、まず第一歩! 遺伝が心配、 遺伝性乳がん卵巣がん かも…と思ったら 「遺伝カウンセリングを受けることもできる」ということを 思い出して下さい。 「カウンセリング=検査を受けなければいけない」 のではありません。 まず、「知る」ためにカウンセリングを利用して下さい! ご清聴ありがとうございました
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