リチウム系二次電池Ⅱ

4電
解
竹
4.1.B. 有機 溶媒
リチ ウム (イ ォ ン)電 池 の電解液 として提案 され,ま た使用 され て きた有機溶媒 の うち主要 な ものの
物性値 を表 lLaに 示す。 リチ ウム塩 を溶 解 して イォ ン伝 導性 を与 える こ と,お よび リチ ウム (あ るい
はそれ と同等 の電位 を もつ化 合物 な ど)と 化学反応 しな いため には,溶 媒 は非 プロ トン で
性 ,か つ極
性 を有 す る必 要 が あ る 溶媒 の融点や沸点 は電 池 の作動温度範 囲 に直接関係 す る性質 であ るが,分 子
構 造 や分 子 FEl相 互 作 用 な ど溶媒分子 の物理 化学 を反 映 す るパ ラ メー ターで もあ る 室 温 か ら-20・ C
あた りの温度範囲で液体状態 を保 つ ものが望 ましい。溶媒 の誘 電率 は電解質 のイオ ン
解離 と会合 に強
く関係 す るので,電 解 ltlの 伝導度 や電極反応挙動 その ものに も大 きな影響 を与え
る 双極子 モー メ ン
トも溶媒 の極性 を表わすパ ラ メー ターで あ るが,分 子の モル体積 を介 して比
誘電 率 と相関 して い る。
溶媒 の粘度 は電解液 中の イオ ンの移動度 に直接 の影響 を与 える.分 子量 や
密度 な どの性質 とも関係 す
るので,溶 液 の微細構 造 に関 す る情報 を提供 す るパ ラメー ターで もあ
る. ドナー数 とア クセプター数
はそれ ぞれ溶媒 の求核性 (塩 基性 )と 求電子・I(酸 性 )を 表 わすパ ラメー ーい
タ
で あ り,イ オ ンの溶媒和
を考 える うえで重 要な指標 となる.
優れ た電解 液 を得 るための溶媒 の条件 としては,電 池 の作動温
度範囲 の点 か ら,低 い融点 と高 い沸
点 ,お よび低 い蒸気圧が好 ましい. また,高 い電解液伝 導度 を るには い
得
高 誘電 率 と低 い粘度 を もつ
溶媒 が望 ましい。 これ らの条件 は原理的 に相反 す る もの もあ り
,す べ ての要求 を満足 す るこ とはで き
な いので,実 用電 池 では異な る性質 を もつ溶媒 を組 合 わせた
多成分 系混合溶媒 が 用 い られ るこ とが 多
│ゝ
表
1
融点
溶媒 (略 号 )
■な有機溶媒の物性lrt
沸 rt
/C latn1/c latm
■ブ レン カー ボ ネー ト(Ec)
プ ロ ピ レン カー ボ ネー ト(PC)
39-10
248
-19 2
241 7
ジ メチ ル カーボ ネー ト(Iハ I(])
ジ ■ ナ ル カー ボ ネー ト(1)EC)
()5
-13
エ チ ル メナル カー ボ ネー ト(EMC)
12ジ メ トキ シ Lタ
ン (1)ヽ lE)
テ トラ に ドロ フ ラ ン (Hi「 )
-55
-58
-lo8 5
2-メ チル テ トラ ヒ ドロ フラ ン (ヽ 1l II「
)
13ジ ォ キ ソラ ン (I)OL)
95
1メ チル 13ジ オキ ソラ ン ID(,L) -125
ジエ チ ルェ ー テル (DEE)
_1162
(卜
γ―ブ チ L・ ラ ク トン (BL)
3-メ チル オ キサ ゾ リン ノ ン (ヽ
42
10X)
ギ酸 メチル (ヽ lr)
スル iト ラ ン (S,
ジ メチ ル スフ
レホ キ シ ド(I)ヽ ISO)
アセ トニ トリル (AN)
159
_99
2886
1842
_4572
a)at25C b)at31c c)at10C d)at 20 C
比誘電 響
89 6・ )
64 1
9()ヽ -91
1 860
2 53
126 8
2 82
0 748
2 ,
()65
65
80
, 2
()455
24
1 71
20
6 24
0 224
118
192
1 751
412
6 79` 〕 ()58
(' 8
1 27
39 1
31 5
5
8''5°
'
287 3
42 5` )
189
81 77
メ:蹴 了
18 3
)
8
0 457
78
206
164
15 1
1 07
7 25'' 0 46`
メ5
31 6
48
521
ア
(, 59
101
81 7
数
TIIi卜
0 60
2 45
0 33
9 87''
39
1 77
47
148
19 3
16 15
1 991
3 96
29 8
19 3
38
0 315
3 94
141
189
110
H
、
リチクノ
系二次電池
炭酸 エ ステル (カ ーボ ネー ト)類 は, リチ ウムー次電池開発 当初 か ら優 れ た電解液溶媒 として使 用 さ
れて きた.プ ロ ピレンカー ボネー ト(PC)や エ チ レンカー ボネー ト(EC)の よ うな環状 エ ステル は高 い
い
誘電率 を もつ反面,分 子 内の電荷 の偏 りが大 きいので,溶 媒分子間 の相 互作 用 が強 く働 き,高 粘性
ニル基 (>C=0)
を示 す。 これ に対 し,ジ メチル カーボ ネー ト(DMC)な どの鎖状 エ ステ ルで はカル ボ
に結合 したアル キル基の回転障壁 が小 さいた め,誘 電率 は低 くな る ものの溶媒 粘度 も低 くなる この
い られ てい る.表
性質 によ り, リチ ウム イオ ン電 池 の電 解液 で は共溶媒 として ECな どに混合 して用
に示 した もの以外 に も新 しい溶媒 がい くつか提案 されて い る。
4.lC
電 解 質塩
ン
しか つ 高 いイ
実用電池 では数種類 の リチ ウム塩 が使用 されて い る。有機溶媒 中 で容易 にイオ 解離
ムー 次電池 で は過塩 素酸
オ ン移動度 を もつためには,1価 のアニ オ ンか らなる塩 が好 ましい. リチ ウ
にな るた め,化 学 的 に安
い
塩 (LiC101)が 用 い られ たが,二 次電 池 で は充電 プ ロセ スで強 酸化雰 囲気
い
販 の リチ ウム イ オ ン電 池 で は
定 な フ ッ化 物 ル イ ス酸 を ベ ー ス とす る塩 の ほ うが 適 して る.市
ベ ー ス とした無
ル ス
LiBF4や LiI)F6な どが用 い られ て い る。 これ ら以外 に も,各 種 含 フ ッ素 イ 酸 を
ミド塩 な どが提 案 され てい る (42節 参照 ).
機 系 の リチ ウム塩やパ ー フロロ化有機 スルホ ン酸塩 ,イ
も異な る 熱的 お よび化学 的 な安定
電解液 の性質 は塩 の種類 に よ り大 き く異 な り,溶 媒 に対す る適性
。
にあた つて注意 すべ き点 は多 い
性 ,吸 湿 に よる分解 ,溶 液中 の不純物 との反応 な ど,使 用
41.D
電 解 液 の伝 導 度
ど
池性能 に直接関 わ るので実用
電解液 の イオ ン伝導度 は電池 の 内部抵抗 や 出力 (レ ー ト)特 性 な ,電
で もあ るの で, これ を詳細 に解析 す る こ
面 か らも重要で あ るが,溶 液 の イオ ン構造 を反映 す る物理量
とに よ り,優 れ た電解液設計 のた めの指針 が得 られ る
ロ ピレンカー ボ ネ ー ト(1'C)と 1,2ジ メ
代 表的 な リチ ウムー 次電池 であ る Li/Mn02電 池 で は,プ
が い られ た.こ の電 解 液 の伝 導
トキ シエ タ ン(DME)を 混合 した溶媒 に LiC10,を 溶解 した電解 液 用
PC+OME
L 。 り 、︼雪 層 “ ヽ ヽ中
FO E ・
●
.
●
▽
▽
●・
▽
・
●
●
?TT▽
▽
▽
V
o
▽
20
40
60
0MEま たは
'HF濃
30
100
度 ′vOl%
い
図 1 1'C― Dヽ lEお よび PC I TlIF濃 合 溶 媒 を 用 た
PC+THF.
DME,`
PC■
●
伝 導度
「
l mOldm`LiC10.溶
液 のモル
4見
解
111
質
度 は,塩 の濃度や溶媒 の混 合割 合 に よって変 化 す る.図 1は ,1 0 mOldm 3 LiC104溶 液 のモル伝 導
度 m)を 溶媒混合組成 に対 して示 した もので ある 比較 のために,PCと テ トラ ヒ ドロ フラ ン(THF)
を混 合 した溶媒 に 1 0 moldm 3の LiC10。 を含 む系 の伝 導度 も示 す5ヽ
どち らの溶 媒 系 で も,DME
また は THFが 約 60 vol%で 最大伝 導度 を与 える。 これ は,こ の よ うな混 合組 成 で は,PCの 高 い誘
電率 とエー テル類 の低 い粘度 が それぞれ電 解質塩 の イオ ン解離 とその移動 に都 合 が よい`0と い う こ
とに基づ いてい る。
イオ ンー溶媒間 お よびイオ ン イオ ン間 の ミクロな相互作用 も伝 導度 に大 きな影 響 を 与え る。表 1に
示す ように,DMEと THFで は誘電率 や粘度 に大 きな違 い はな い。 しか しなが ら,伝 導度 は極 大値
15倍 ほ ども異 な る DMEや THFは ,分 子構 造 中 の O原 子 とカチ オ ン (Li+)と の 間 の 配
位結合 に よ リー種 の錯 イオ ンを形成 す る。 すなわ ち,PC‐ DME中 で は DMEが ,PC+THF中 で は
付近 で約
TH「 が選 択 的 に溶 媒 和 イオ ン を形 成 す る.分 光 学 的 な測 定 な どに よれ ば,ア ル カ リイ オ ン に は
THFは
4分 子 が 配位 す る (Li (THF)1)の に対 し,DMEは 2分 子 が 配位 す る(Li(DME)2)図
に現 われ てい る PC+DMEと
PC+TH「
1
での伝 導度 の違 い は,電 解液 中 を実 際 に移動 す る溶 媒和 イ
オ ンのサ イズの違 い による ものであ る'ヽ
41.E.
有機 電解液 の イオ ン構造
リチ ウム イオ ン電池の特性 発現 に果たす電 解液 の役割 を系 的 に
統
理解 す るには,溶 液構造 を詳 llllに
把握す る必要が ある.IRお よび ラマ ン分光 な ど分子振動 に基 づ くェ ネル
ギースペ ク トル は イォ ン構
造 の解析 に適 して い る.混 合 溶媒 を用 い た リチ ウム電 池用電解 液 の ラマ ンスペ
ク トル に関 して は
HyOd。 と okabavashP'の 先駆 的研 究の ほかに,Arocaら い
による最近 の報 告が あ る。
図 2に は,l n101 dm'LiI)F,を 溶 解 した ECttDMC混 合 溶
媒 電 解 液 につ い て,ECお ょび DMC
,
それ ぞれ の ラマ ン散乱強度 か ら求 めた溶媒和 分 子数 船
媒和 数 :共 )の 溶媒組 成 に よる変化 を示 す。
これ は,カ ー ボ ネー トの CO単 結合仲縮 振動 に
帰属 され るラマ ン散乱 (約 900cm l)が Li+と の相 ノ
I
作用 に よって よ り高波数側 ヘ シフ トす る ことを利 用 して求 めた ものであ るЮ)溶
媒組成 に応 じて それ
°
:
■ ,.
。
。 札 “
ピ 轟早懸壇
0
。
0
0
20
8
0 ▽
▽
ヽ 嘔
▽
▽
40
60
80
1oo
OMC演 度 ′Юl%
図
2 LiP「
`(l nlol dn1 3)/EC+Dヽ
Ec, : DAIC,
o EC+Dヽ lC
Ic電 解 液 にお け る Liの 溶媒 和 数,へ ,の 変 化
112
H
、
リチツア
系二次電池
EC/DMC比 が「Dl1/徹 )に お い て は,ECお よ び DMCの 工 は それ ぞれ
約 3と 1で あ る. この こ とは,ECttDMC混 合 系 で は ECの ほ うが 幾分 I先 的 に Li十 と相 互作 用 す る
こ とを意味 して い る. また ,溶 媒 中 の DMC比 が 低 い 系 で は じCと DMCの 溶 媒 和 数 の計 (八 Ta m)は
4∼ 5で あ る が ,DMC比 が 高 くな る と へ _は 3程 度 まで小 さ くな る. これ は,DMC比 が 高 い 系
ぞれ の 溶 媒 の 工 は 変化 す る
l・
I。
で は溶 媒 誘 電 率 が 低 くな るた め に,イ オ ン 会 合 の 割 合 が 高 くな る こ とに 関 係 し て い る
工
iⅢ
実際
,
‖ が 顕 著 に 減 少 す る溶 媒 組 成 と電 解 液 の 最 大 イ オ ン伝 導 度 を与 え る溶 媒 組 成 (60∼ 70 vol%
DMC)H)は
ほぼ 一致 して い る
.
電 解 液組 成 が電 池特性 に大 きな影 響 を及 ぼ す例 は数 多 くあ る
その メカ ニ ズム は電 極 /電 解 質 の 組
に どの よ うに
合 わ せ に よ り多様 で あ る.有 機 電解 液 中 での イス ンの構 造 と動 的特性 が電 池 の 電極 特性
ころで あ る
関 わ つて い るか に つ い て は多大 な関 心 が 寄 せ られ てお り,今 後 の解 明 が 待 たれ る と
4.2.電 解 質 塩・
が用 い られ る 一般
リチ ウムー 次,二 次電池 にお い ては,当 然 なが ら非水溶 媒 か らな る有機電解液
に難溶性 で
に よ く知 られて い る 1lX(Xは ハ ロゲ ン),Li011,LiN08お よび Li2CO、 な どは非水溶媒
ウム電 池 に は一 次 電 池 に つ い て
あ り,有 機 電 解液 の電解 質 と して用 い られ な い。現 在 ,実 用 リチ
い
てい
LiC104,LiCF3S03,お よび LiBF.,二 次電 池 に対 して は Lil)F`が 電解 質 と して主 に用 られ
され注 目 されて
る.最 近 ,イ ミド系 お よび メチ ド系 の含 フッ素 リチ ウム塩 な どが合成
い るが,詳 細 に
つ いては後述 す る。
42.A.
熱 的安 定性
―
、電池 にお ける重要 な リチ ウム塩 の熱 薫量 (T(〕 )曲 線 を図 3に 示 す
実 用 リチ ウノ
これ ら リチ ウム
塩 の熱 的安 定性 の順 序 は 1lC10`>LiCF3SO`>LiN(CF,S02)2>I'N(C2F5S02)2>LiBF,>LiPF6で
室温 に
が も悪 い Lil'「
あ り, リチ ウム イオ ンニ1次 電 池 に使 用 され て い る IJ l)F、 の熱的安 定性 最
`は
llbJに 安 定 で あ るが,合 酸 素数
お いて も比較的容易 に 11「 と PF5に 分解 す る。 また,LiC104は 1威 も熱
ゞ ヽ0■颯W
0
図
・佐 々木幸 大
3
loo
200
塩 の T(;耐 1線
リチ ウノ、
ヽuklll SAい N(東 京 工業大学 工学 nl.)
300
・
温度 ′C
400
500
昇温速 度 (人 気 中 )ilCn五 n
tiヒ 解
113
r[
が 多 く,安 全 性 に 問題 が あ り,二 次電 池 に は用 い られ て い な い
4.2B. 電 気 化 学 的 安 定 性
4V級 の起 電 力 を有 す る リチ ウム イ オ ンニ 次 電 池 の 登 場 以 来 ,充 電 時 に お け る正 極 側 で の 高電 1[
(酸 化 )に 耐 え,
方で は リチ ウムの きわ めて 卑 な る電 位 に耐 え る,い わ ゆ る耐還 元性 に も優 れた 有機
電解液 の 開発 が 今後 ます ます重 要 にな る と考 え られ る。 耐 酸化性 と耐 還 元性 に優 れた 電解 液 はポ ラ ン
シ ャル ウ ィ ン ドー (電 位 窓)が 広 くな り,実 用電 池 に対 して推奨 され る電 解液 で あ る。 電解 液 の 酸化 ・
還 元分解 は,溶 媒 と電 解 質 の両 方 を 考慮 しな けれ ば な らな い。 フ ロ ピ レ ンカー ボ ネ ー ト(1)C)1:で の
電 解 質 の 耐 酸 化 性 の 順 ,FIま LiPF.>I´ iB「
(C2F5S02)′
`>Lバ
21:L
とな る〕
>Li N(CF3S02)2>LiCF,S03>LiC104
一 方 ,耐 還 元性 につ い て は, リチ ウム イォ ンの 還 元 (析 出 )と 溶媒 の 還 元分解 の どち らが 先 に起 こ る
か とい う こ とが 問題 にな る。 一般 に 金属 イオ ンの 還 元電 位 は溶媒 和 の 人小 に強 く影響 を受 け,金 属 イ
オ ン に溶媒 和 す る溶 媒 の塩 基性 ,い わ ゆ る ドナー 数 の 大 きい溶 媒 中 ほ ど還 元電 位 は 負側 に シ フ トす る
の で ,電 解 質 の 耐 還 元 性 は 使 用 す る溶 媒 に よ っ て 変 化 す る.テ トラ ヒ ド ロ フ ラ ン (THF)中 で は
6>LiAsF6>LiSbF6の 順 に耐還 元性 は減 少 す る と報 告 され て い る ヽ
図 4に ,0 1 moldm 3の 過塩 素酸 テ トラブ チ ル ア ンモ ニ ウム (l BAl))を
LilD「
1・
酸 化 ・ 耐 還 元 性 を検 討 した 結 果
15り
用 い て ,種 々 の溶 媒 の 耐
を示 す 。 測 定 に は,作 用 極 と して Pt電 極 ,参 照 極 に は Ag/Ag+
電極 を用 い たが ,超 熱 力学 的仮 定 (extra thcrmodynamic assullnpuon)に
基 づ い て,電 位 の基 準 と し
て電 気化 学 的 に可逆 を示 す フェ ロセ ンの酸 化 還 元電 位 を利 用 した .非 水 溶 液化学 で は従 来 よ り
,ア セ
トニ トリル (AN),ジ メ チ ル スル ホ キ シ ド(DMSO),Ⅳ ,Ⅳ ジ メ チ ル ホ ル ム ア ミ ド(DMF)な どが 良
溶媒 と して 多用 され て い るが ,DMSOや
DMFは 耐 酸 化性 に 劣 り,ま た ANは 電位 窓 も広 く,導 電
、と反 応 す るた め に リチ ウム 電 池 に は用 い られ て い な い 。 図 1に お い
性 に も優 れ て い るが , リチ ウノ
て,エ ス テ ル 系溶媒 は耐 酸化性 に優 れ て い るが ,エ ー テ ル 系 や ア ミ ド系溶媒 で は耐 酸化性 に劣 る こ と
E OくE ヽ
5m︲
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2
︲
・
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F/
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-.
H
114
● AN
O NM
ECO
● PC
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一
γ
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DME
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・
・
0 1 1 1 1 1 3 ﹀り ヽ 慟ギ 饉
︲
1
一
一
>0 1■ ミ ヽ HO〓Oi
11
リアウ′、
系 ■次(ヒ 池
週 元 されに くい 一― ― ― ― ‐
-1
1
2
しUMOエ ネル ギーたV
5 溶 媒 と炭化水 素の HOヽ 101´ じMO相 関 図 ヽヽI:ニ トロメ タ ン,Aヽ :ア セ トニ トリル
レ
レホ ル メー ト,γ VL:γ パ レtlラ ク トン,MA:メ チ ツ
BC iプ チ レン カー ボ ネー ト,MF:メ チ ツ
図
,
ア セ テー ト
がわか る
一 方 ,エ ステル系溶媒 は還 元側 で容易 に分解 され るが,ア ミド系や エーテル系溶媒 は還元分解 され
に くい。 しか しなが ら,エ チ レン カー ボ ネー ト(EC)は 他 の エ ステル 系溶 媒 と1ヒ 較 して,耐 還元性 に
も優 れ て い る.溶 媒 の耐酸化・ 耐遺 元性 は フロ ンテ ィア軌道理論 に よる最 高被 占分子 軌道 (highest
occupicd n,olccular orbital HOMO)エ ネル ギー と最低 空分 子軌道 (lowest unoccupied nnolecular
η
orbital.LUMO)エ ネルギ ーか ら推定 す ることが 日∫能 で あ り,そ の結 果 を図 5に 示 す・.図 5か ら
,
エ ステル系溶媒 は HOMOエ ネル ギ ーが負 に大 きい,す なわち酸化 され に くく,一 方,エ ー テル 系溶
媒 で は LUMOエ ネル ギーが大 き くな る こ とか ら,耐 還元性 に優 れ てい る こ とがわか る.IX1 4と L/15
の結果 を比 較 す る と両者 には よい相 関 がみ られ る。
4.2.C. 導 電性
能
有機電解液 の導電性 は,電 池 の内部抵抗,放 電容量,エ ネル ギー密度 な どに密 接 に関係 し,電 池性
に大 きな影響 を及 ぼす.有 機 電 解液 の 711電 率 は水溶 液 よ りもか な り低 く,一 般 的 に水溶液 の 1/10
以下 であ る。導電性 の大小 は電解質 の解離 lrtゃ イオ ン移動速度 に左イiさ れ るので,比 誘 電率 が高 く
つ
低粘性 の溶媒 が好 ましい.単 一 系 の溶 媒 では この ような条件 を満足す る ものが乏 し く,か 比誘 電率
,
の高 い溶媒 は強 い極性 を有 す るため に粘性 が 高 くなる こ とか ら,実 ,Hリ チ ウム電 池 で は PCや
ベ ー ス とす るエー テル 系や ジエ チ ル カー ボネー ト(DEC),ジ
ECを
メチ ル カー ボネー ト(1)MC),エ チ ル メ
チ ル カー ボ ネー ト(EMC)な どの低粘性 エ ステ ル 系溶媒 との 2成 分 系,3成 分 系混 合溶 媒 が一 般 に用
い られ てい る ただ し,黒 鉛系炭素 を負極 とす る電 池 で は負極 上で PCの 分 解 が起 こ る こ とか ら
,
PC含 有混合溶媒 を用 いた リチ ウム イオ ンニ次電池 で は負極 に非黒鉛 系の炭素 が使 用 され る
DME混 合溶 液 中 にお け る 0 5mddm.の リチ
ウム塩 の比 導電 率 の変化 を示す。比導電 率 は,PCお よび ECへ DMEを 添加 して ゆ くと,最 初 は混
LK1 6に
,PC l.2ジ
メ トキ シエ タ ン(I)ME),EC
合溶 媒 の粘 性率 の 低 下 の 影響 に よ り徐 々に増 加 し,あ る混 合 比 で極 大値 を示 す。 その後 さ らな る
DMEの 添加 によ り,混 合溶媒 の粘性率 の減少 よ りも誘電率低 下 の ほ うが大 き く作用 し,そ の結果電
・ 初期構造 の決定 は,ヽ lSI社 分子 シ ミュレー シ 1ン ソフ トI'()LY()RA「 を用 いて行 なわれ た ものであ る(1991年
)
4電
解
質
r
EO
,
ミ 、
10
χ ¨
図
6 1'C DME系 ,EC― Dヽ lE系 の溶媒混合比 による リチ ウム塩 (05m01dm
.:DMEの モル ′)率 LiC104. lJPF`, △ 1113F4,7 LiCF`SO。
X,、
● IIN(C2F,S02)2, ▲ LiN(CFIS02)2
,
りの比 導電率 の変化 (25C).
` Li:3Ph.(Ph: フ ェニル),
解質 の解 離度 が小 さ くな り,比 導電率 は減 少 し始 め る。 この よ うな導電 率 の変化 は高誘電率・高粘性
溶媒 と低誘電率・低粘性溶媒 を用 いた電 解液 で一般 に観測 され,導 電 率 の極大値 は溶媒 の混 合比 がお
よそ 1:1(モ ル比 ,体 積比 )で 現 わ れ る。 図 6に お いて,Li N(CF3S02)2は 分子 量 が 大 き く,大 きな
アニ オ ンを もつため に粘性率 が大 き くな り,そ の結果移動速度 の低 下 が起 こ り,導 電率が低 くな る と
推定 され るが,IIPF・ にほぼ等 しいか,ま た それ以上 の値 を示 す この原 因 は LiN(CF3S02)2内 に
強 い電子求 引性 の CF3基 を 2個 有 す るた めにアニ オ ンの非局在化 が 強 く起 こ り,図 7で 示 され る よ
うな共鳴構造 を とって安定化 し,イ オ ン解離 が容 易 にな るため と考 え られ て い る0.
表 2に ,2成 分 お よび 3成 分混 合溶 媒 系 にお け る l mOldm 3の リチ ウム塩 に つ い ての溶 媒 組 成
(VOl%)と 温 度 に よ る比 導 電 率 の 変 化 を 示 す"Lた と え ば,20Cに お け る EC PC(1:1)と
2
McTIIF― EC― PC系 の 比 導 電 率 を比 較 す る と,LiCF3S03を 除 く電 解 質 で は EC PC系 よ り も 2
MeTHFを 含 む 3成 分系の ほ うが比 導電率 は高 くな り,IJCFlS03で は逆 に低 くな る。 この原因 は
,
LiPFぅ ,LiN(CFRS02)2お よび LiBF4は 解離度 が大 きい ため に 2
MeTHFを 加 えた こ とに よる混 合
溶媒 の誘 電 率 の低下 の影響 よ りも粘性 率 の 低 ドの ほ うが大 き く作用 し比 導電率 が 高 くな り,一 方,
LiCF3S08で は解離度 が小 さいた めに粘性率 よ りも誘 電率 の低下 のほ うが イオ ン解離 によ り大 き く影
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83R
、
リチ ウム系二 次電 池
11
4電
表
解 質
3 25Cに おける PCお よび γ―BL系 溶媒 中 の リチ ウム塩 の比 導電率ノmScm l
リチ ウム塩
1'C
γ
BL
/1 moldm。
PC/DME
(1:lnぅ 〔〉1)
BL/DME
γ―
(1:1]n(月 )
PC/MI'O
(1:l mol) (lilnl。
Li:3F`
1,4
75
97
94
LiC101
109
139
15 0
1()9
15ヽ )
1B t,
50
85
128
115
156
65
18 1
133
LiN(CF,S02)2
56
58
57
17
51
101,
LiC.F,SO,
1 1
68
156
53
LiPr.
LiAs「 t
LiCF8S(),
43
94
33
134
51
PC/EMC
28
23
1)
33
88
92
17
71
13
a)フ ロ げ ´ ン 酸 メ チ ル
表 4 25 C Iこ お け る IC:DME(体 積 Lヒ 1:2)中 の 合 フ ッ素 リチ ウム 41“ )1
moldmり の比 導電率
リチ ウム塩
比導電率/n]s cln'
分子景
LiC「 ,C02
04
120
Li N(Cr,Co)2
0 8
215
1Jcr,so`
IJC.I',SO`
23
23
306
,SO,
1 1
254
19
40
38
35
30
31
32
30
30
29
31
36
27
14
506
LiC・
「
LiC,Fけ SO,
LiN(CF,S02)2
1■
N(C2F6S02)2
LiN(C.F,S02)(CFIS02)
I.iN(FS02QF.)(CF,S02)
lJ N(「 S02C● F`)(Cr3so2)可
IJヽ
(C,F,SO′ )(C「 ,S02)
LiN(CF,CH20S02)2
1■
ヽ (C「
Liヽ
`CF2CH20S02)2
(HCF2CF2CH2oS02)2
LiN((CF,)2CHOS02)2
:JC(CF,S02),
LiT「 PBい
I.IPF`
a)IJヽ
(C、 F、
SO=)(CF● 01)θ)混 合物 b)I"1,IC.F,(CF。
156
287
387
137
347
347
637
347
447
111
183
118
870
152
)′
35L
響 を与 えるため と考 えられ る.表 3に ,PCお よび γ―BL系 溶媒 中 の リチ ウム塩 (lm。 ldm 3)の 比 導
電率 を示 す20.こ こで,LiAs「 6は LiPF6に ほぼ等 しいかそれ以上 の比 導電率 を示 すが,毒 性 のた め
実用 リチ ウム電池用電解質 として は用 い られて いな い
.
H
42.D.
り ´ウ 2、 系 二 次電 池
新 しい電 解 質
リチ ウム イオ ンニ 次電 池 には導電率 の 高 い Li
P「 6が 主 に用 い られ てい るが
,す で に述 べ た よ うに
しil'F`は 熱的安定性 に劣 り,室 温 で も分解 しやす い欠点 を もって い る。 この よ うな LiPF6に 対 し
,
熱的安 定性 や耐酸化性 に優 れ,高 い導電性 を有す る新 しい電解質 の 開発 が望 まれ て い る.最 近 ,表
、
に示す 多 くの含 ツ ッ素有機 リチ ウノ
塩
!い
4
や Lil PF`(C2H5)3]2η な どが提案 され た。 また,ア ニ オ ンの
中心 にホウ素 や リン を有 す るキ レー ト型 リチ ウノ、塩 ,Ithilm bisll,2 benzenediolatO(2)0,0′
b()rate, lithiunl bis[2,3-naphthalenediolato(2)0,rl′
rate23 2旬
]
]borate, lithiunl bisisalicylato(2)]bo―
や l■ hium ths[1,2 ben2enediolato(2)00]phosphate30が 報告 され注 目 され て い る.
これ らの キ レー ト型 リチウム塩 は熱的安定性 に非常 に優れ てい る.今 後 も熱的 ,電 気化学 的特性 に優
に行 なわれ てゆ くであ ろ う
れた電解質 の開発 に関 す る研究が盛 ス′
4.3.高 分 子 ゲ ル 電 解 質 拿
リチ ウムニ 次電池 に適用 され るポ リマ ー電解質 と呼 ばれて い る もの は,有 機系電解液 をポ リマー に
合有 させたポ リマー ゲ ル電解 質 と支持塩 をポ リマ ー に溶解 させ た完 全同体 高分子電解質 とに大 き く分
類 され る.ど ち らの タイプの電解質 も占 くか ら研究 され て きた。
完 全同体 系電 解質 につ いて は,1975年 に Wightに よって,ポ リエ チ レ ンオ キ シ ド(PEO)中 をア
ル カ リ金 属 イオ ンが伝導 す る こ とが 見出 され て以 来・1ヽ PEOお よびその誘 導体 を中心 に数 多 くの研
究 が な されて い る。 しか しなが ら,同 体電解質 にお い て は イオ ン伝 導 度が 10 3scm lの 壁 をい まだ
越 える ことがで きず,常 温以下 で は実用化 レベ ル にや ってい な い。 そ こで最近 では,イ オ ン伝 導性 の
‐ ポ リマー ゲル電解質が 注 目を集 め,一 部 で は実用化 に まで及 んで い る ポ リマー ゲル電解質開発
lい
3η
につ いて は,Feuilladcら に よって研 究報告 され た 1975年 の報 文 を原点 と して あ げ る こ とが で き
る.ゲ ル は固体 ポ リマー に支持電解液 を力Hえ た もので,イ オ ン伝導度 は液体 系 と同程度 である。安 全
面 について も,液 体 系 と比 べ て液漏 れがな く, また電解質 の柔軟性 が増 し,各 電極 との接触性 が増 す
3・ 3つ
。現在 ,代 表 的 な物理 架橋 ゲ
うえに3■ 34,電 池設計 において形状 な どに対す る 自由度 が大 き くな る
ル電解質 で ある フ ッ化 ビニ リデ ン…ヘ キサ フルオ ロプロ ピレン共重 合体 [ポ リ(VDF― HFP)]多 孔性 ポ
(CH2 CH2 0>
(a)ポ リエ チ レンオ キサ イ ド
(b)ボ リメチ ル メタ ク リレー ト
(C H2♀ H>
CN
(c)ボ リシロキサ ン
CF,
図 8
(e)ボ リフ ッ化 ビニ リデ ン
代 表的 な高分子電 解質
ヽ、(東 京Jし :i大 学 E学 部
ヽobOru Oヽ ヽ
)
―
咋
R
(CH2 CF2XCF2,)
(d)ポ リア ク リロ ニ トリル
・月、日 昇
(卓
(CH,│)
COOCH=
4電
解
質
リマー ゲル電解質 を用 いた製混]が 発売 され,さ らに化 学 架橋 ゲル電解 質 であ る PEO系 ゲル電解 質 の
製品 もその後発売 されてい る.
図 8に ,代 表的 なゲ ル系高分子電 解質 に用 い られ るポ リマーの主骨格 を示す
このほか に も,ボ リ
塩化 ビニ ル,ポ リビニ ル メチ ルェ ー テル,エ ポ キ シ系 ポ リマ ー,ポ リスル ホ ンな どが 検討 され て き
た。
43A.
構 造 とイオ ン伝 導
完全固体 系電解質 について は詳 しい記述が後 にあ るが,ゲ ル 系 との違 い をllB確 にす るために少 し述
1)EO系 ポ リマ ーで は,ェ チ レ ンオ キ シ ド(EO)鎖 は ドナー性 の高 い骨 格 で あ り,酸 素部 分 に
Liイ ォ ンが 配位 す る こ とがで きる.す なわ ち,イ ォ ンは高分子 に よ り溶媒和 され た
状 態 にな って い
ここで
る。
,ガ ラス転移 温度 (71)以 との温度 に な る と PEO鎖 の熱運動 に よ り Liイ オ ンが 移動 し
べる
,
イオ ン伝導 の特性 を発現 す る.的 .一 般 に物 質 は,η 以上 にな る と無機 ガ ラスで み られ
るよ うに同体
か ら液体 に な り流動 す る。 しか しなが ら,高 分子の場 合,架 橋構造
,高 分 子鎖 の絡 み合 い,結 晶領域
の存在 な どに よ り,71以 卜にな って も, ミク ロ状 態 で は液体 とな り動 い て い るが
,マ ク ロ的 に は静
‖1状 態 を維持 す る
したが って,ィ ォ ンはアモ ル フ ァス領域 を通 って移動す る.
一 方,ゲ ル系 ポ リマ ー電解 質 は,重 量比 で 80∼ 90%の 電解 液 (lMの
支持 塩 を含 む)と 10∼ 20%の
ポ リマーか ら構成 され てお り,ポ リマ ーが,化 学結合 ,水 素結合,静
電 的相互作用 , または結品化 や
分 rの 絡 み合 いな どによ り二 次元的 な網 H構 造 を有 し,か つ主骨格 お よび
側 鎖分子 の囲 いに溶媒分子
をユニ ッ ト当た り数個 ∼ 数 1個 保持 した膨潤体 となってぃ る.イ オ ンは を介 して
液
移動 し,ポ リマ ー
自体 はグル全体 の機械 的補強体 また は保液体 の役割 を担 ってい る. したが って
,ゲ ル系電解質 の イオ
ン伝導度 は液体 のそれ に近 く,完 全同体 系 と比 べ
格段 に高 い.グ ル系電解質 は,ポ リマー を有機 溶媒
系電解液で 日
塑化 した もの とみ なす ことが で きる。 ポ リマー鎖 が分子状 態で均一 に
∫
液相 に分布 した系
か ら,分 子 が凝集 して多孔体 を形成 した もの まで あ る.
4.3.B. 構 造 と要 求特性
グル の簡 単 なつ くり方 か ら紹 介す る。電解液溶媒 ,支 持塩 (リ チ ウム
塩 ),お よびポ リマ ーの粉 末
(重 量比 で数 %か ら 20%)を 温度 を上 げて均 一 溶液 に し
,そ の液 をステ ンレス板 の よ うな平板 の上 に
のせ,そ の後冷却 す る とグル電解質 薄膜 が で きあが る ポ リア ク リロニ
トリル (I)AN)系 ゲル は こ う
して簡単 につ くる こ と力 きる3".ポ リメチル メタ ク リレー ト(PMMA)や
塩 化 ビニ ル 系 ゲル もこの
'で
方法 で作製 で きる.ポ リフッ化 ビニ リデ ン(PVdF)系 では,PVdF共 重
合体 を相溶 す るジプ テル フタ
レー ト(DBP),Ⅳ ―メチル 2-ピ ロ リジノ ン(NMP),ア セ トンな どと
混 合 し,溶 解 させ,そ の液 を塗
布 し,希 釈斉」を蒸 発 させ,均 一 なゲル膜 を生成 させ る 次 に,メ タノール, ジェ チル エ ー
テルな どに
浸漬 し,DBPな どを抽 出 した後乾燥 させ る と,脱 溶剤 に よ り孔 が 形成 され
る その後 ,電 解液 を含
浸 させ る とグル電解質がで きあが る. この ような手法 で作製 され た もの は
高分子鎖 の絡 み合 いや結晶
化 によ り架橋点 が形成 され,物 理架橋 ゲル と呼 ばれ る(図 9(a)).
また,モ ノマー,電 解液,お よび重 合開始剤 を含 む均―溶 液 を加
熱,あ るいは紫外線 や電 子線 を照
射 す る ことに よ リゲル を作 製 で きる. この場合 ,ジ ア ク リレー ト系の 2官
能性 モ ノマー を共存 させ る
と,直 鎖状 の高分 子の重 合反応 と分 子間架橋 反応が 同時 に進行 し
,ゲ ル化合物 とな る。生成物 は化学
il リチ ウム系■次電池
(a)物 理架橋グル
(b)イ
し学架橋ゲル
(c)擬 似架 格型 グ ル
高分子鎖問相互作用
目 0
ポ リアク リ ロニ トリル系
グ ルマ トリック ス
エテ レン グ リコー ル 誘導 体 で架橋 した
ア ク リレー ト系 ゲル マ トリック ス
PMMAの 化学架橋グル
「応用例」:PAN PVdFの 物理ゲル
図
架橋 ゲ ル と呼 ばれ る (図 9(b))。
橋構 造 を有 してい るために,で
9
PAN,PEO.PMMA系
の架 橋 グ ル
ゲ ル の構 造模 式 渕
この 方法 で得 られ るポ リマー は化学 (共 有 )結 合 で結 ばれた二 次元架
きあが った ポ リマー を溶解 した り,再 成 型 す る ことは困難 で あ る こ
い て一定 の厚 み にセ ッ ト
ペ
ー
の方法 で薄膜状 のグ ル膜 を得 るため には,反 応前 の溶 液 を,ス ーサ を用
ペ
かわ りにオ レフ ィン系の薄 い不織
した うえで,重 合・ ゲ ル化反応 を行 な う必要が あ る.ス ーサーの
ル
す る こともで きる. この方
布 に反応溶液 を含浸 させ,そ れ を紫外線 照射 法 で反応 させ てゲ 膜 を作製
C)で あ り,実 用 的 な電
法 で得 られ た厚 さ 50∼ 100 μmの ゲル膜 の イ オ ン伝 導度 は 2∼ 4 mS crn l(20・
池用材料 とな る.
に
この方法 は,乾 燥 した粉末 ポ リマーか らゲ ル を作製 す る方法 に比 べ る と,製 造工程 が大幅 簡略化
モ ノマーや
で きる。 しか し,ゲ ル化 と薄膜化 が同時 に起 こるので,作 製 したゲ ル中 に残存 した未反応
マーや反応触媒 残澄 はイ
反応触蝶 残澄 を除去 す る ことが容 易 で はない とい う欠点 もあ る.未 反応 モ ノ
で溶液重合
オ ン伝導性 をllJげ た り,安 定性 を低 ドさせ る場合 が多 い.そ の改良 は,ま ず非 水系溶剤中
これ に多官能 モ ノマ
を行 な い, このポ リマー溶液 か ら未反応 モ ノマー を減圧下 で除去 した後,改 めて
│■
表
(a)高 い イオ ン伝導性
lb)強
5
解 質
121
高分子 グル電解質 に要求 され る特性
●均質 ′
ドリマ ーの合成
●構成 モ ノマーの 1つ に,ア クセフ ター数 の大 きい材料
●ホ リマーの構成 モ ノマーの 1つ に, ジア ク リコイル を
使用 し立体架橋構造
●不織 布 を川体電解 質 (sOhd polynler dcct“
ハ te)の 芯材 とし,強 度 の パ ックア ップ
●構成 モ ノマーの 1つ に,溶 媒 との親和 力 の い
強 材料
い機械 的強度
(C)長 期安定性
●沸点の高 い可塑 l●l
●立体 架橋構造
(d)耐 熱安 定性
●溶媒 への強 い親和力
●沸点の高 い可逆斉│
(C,難 II性
(f,広
い電位 窓
●炭イ
ヒ反応 に よる虻燃 (塩 ,溶 媒 の沸点 な ど)
●自己消火性
・
ル い
l障
花 官 鷲 tr帥
クス反応
蝋 刊
2∼
…
‐ り
…
"私
金
― をカロえた溶液状 の調合物 を電池用 のセル に
注入 し, これ を加 熱 してゲル化 す る. この
方法 を用 い る
と,低 沸点 の モ ノマーが ゲル中 に残存 する こと
もな く,良 好 なゲル膜 が得 られ る。 このゲル
は三 次元
架橋構 造 のグルの中 に直 鎖状 のポ リマーが絡 み った
合
状 態で あ り,化 学 ゲル と物理 グル の中間 の構造
を有 して い る。 この よ うな構造 の ゲル を
擬似 架橋 ゲ ル と仮称 す る (fk1 9(c)).物 理 ゲル では
分 子量が
10万 以 Lの PA N系 ポ リマ ー を用 い て も
,80C以 11に 加 熱 す る と溶液状 態 に戻 った り,一 部溶 液 が
相分離 した りす る。 しか し,こ の擬似架 橋 ゲル の
場 合 は,分 子 量が 1万 以 ドのポ リマ ー で も
,120・ C
に加 熱 して もゲル状態 を維持 してぉ り
,実 用 的 な耐熱性 は十分 であ る
この 方法の利 点 は,正 極 や負極材
料 また はセパ レー ター な どと電解 質 を溶液
中で接触 させ た後 ,各
材料 の界面の濡れ性 を保持 した まま,電
解竹 をグル化 (固 定化)さ せ るこ とがで きるこ とで
ぁ る。 その
結果,各 材卜│と の界 面接着性 に優 れ
,界 面抵 lLの 低 い電池 の作製が可能 とな る.
ポ リマ ー電解 質 に要求 され る特性 は
,表 5に 示 す よ ぅに,イ ォ ン伝 導 性 ,機 械 的強 度 ,長 期安
定
性 ,耐 熱性 ,難 燃性 お よび広 い電位窓
特性 の 6つ が あげ られ る. イォ ン伝 導性 を上 げるため
には,ア
クセフター数の大 きい材料 を使 用 す る
.機 械 的強度 が弱 け才ιば,支 持体 を入れ て強化 す る方
法や網 を
つ くるな どして構造体 として
強化 す る方法があ る.長 期 的 に安定化 させ るために
は,溶 剤 のガラ ス転
移温度 と沸点 を意識 してつ くる必 要があ る
.耐 熱 1■ をljめ るた めには,高 温 にな る と溶剤 を放 出 して
しまわ な い よ ぅに,沸 点 の 高 い溶媒 に
対 して強 ぃ親和力 を もつ物質 を使用 す る
.難 燃性 にす るた めに
は,使 ナ
Hす る塩 や溶媒 に まで注意 し,高 温 になって
も炭化反応 が な く燃 ぇに くい物 質 を選 ぶ
必 要が あ
る
.
4.3C.
代表 的 なポ リマー
以 下 に,グ ル電解 質 を形成す るい くつかの
代表的 なポ リマー
a)ポ
リフ ッ化 ビニ リデ ン(PvdF)
について概説 す る.
PVdFと ヘ キサ フル オ ロプ「lピ レン (IIFI))の
共 章 合体 で あ るポ リ(VDF HFP)を
用 い た ポ リマー
電解 質 は す で に 数 年前 に 市販 リチ ウノ、ィォ ンニ
次 電 池 に川 い られ た3'38L共 重
合体 全体 に対 す る
HFPュ ニ ッ トの重量比 が 8∼ 25%で あ るエル フア
トヶム社の Kynar Flcx` が
代表的化 合物 で あ る.
122
11
リチウム系二次電池
HFP側 鎖 は,PVdFの 結 晶性 を低 減 し,電 解 質 の 浸 透・ 吸 収 性 を高 め,液 の保 持 性・ 耐 熱安 定性 に
1の LiPFGの 電解 液
寄与 して い る。 ポ リ(PVdF HFP)は ,そ の ■ が -35・ C付 近 に あ り,さ らに 1ヽ
が く,か つ
を 20∼ 70%含 有 し,イ オン伝導度 も室温 で 10 3scm lを 示す. この膜 は比 較的膨潤性 高
シー トを作 製 す る こ と もで き
微 子L形 成 がで き,液 とイオ ンが動 きや す い構造 とな って お り,多 孔質
150・ Cで あ る。 高温 でゲ ル
る.融 点 (鑑 )は 重合 方法 (乳 化重合 ,懸 濁 重合 な ど)に よ り異 な り,140∼
て い る3“ Oヽ デ ン
が流動 す るの を防 ぐため,シ リカ粒子 を混ぜて強度 を保持 す る工夫 な ども行 なわれ
のみな らず, リチ ウム箔
ドライ トの生成 を抑制 で きるので,他 のポ リマ ーゲル電解 質 と同様 ,炭 素系
を負極 として用 い ることも可能 であ る。
b)ポ
リエチ レンオキサ イ ド(EO)
につ い て は詳 し く後述 され るので,ゲ ル 系 に ついてのみ記述
が きわ めて高 いので,重 量比 で 2∼ 5倍 量 の
す る.一 般 にエ チ レンオ キサ イ ド鎖 は電 解液 との相溶性
マー を架
ポ リマーマ トリックスに EO成 分 を有す るモ ノ
電解液 をポ リマー に加 えてゲル化 す る。 また
4“ 〕に優 れた膜 を形 成 で きる
この場
った液保 持性 と耐 熱性
橋 す る ことで,適 切 な機械 的強度 を も
461.
とな り,液 系 に近 い伝 導度 を得 る ことがで きる
ン
合 ,室 温 で 10 3SCm lオ ーダーの イオ 伝 導度
この化合物 系 の全国体 型電解 質
4〕
4つ
c)ポ リア ク リロニ トリル (PAN)
した後 ,こ れ を 100・ C
PAN系 ゲル電解質 について は,ポ リマー の乾 燥粉 末 と非 水系溶 剤 とを混 合
であつ
ことで ゲル化 させ た物 理 ゲル と称 され る ものが 主体
程 度 で加熱溶 解 し,こ の溶液 を冷却 す る
・9∼ 5° . この 系 で は CN基 と水 との
され て い る
が
た`740. これ まで数 多 くのテ ス トセルでその特性 評価
59.こ の物 理 ゲル は,温 度 に対
にす るの は容 易 で はな い
結合 力 が強 いた め に,水 分 を 100 ppm以 下
に る とい う欠点 を有 してい る。 この欠点 を克服
して可逆性 があ り,温 度 が上昇 す る と再 び溶液状態 戻
。
の
させた化学 ゲルが提案 され て い る .
で
す るた め,ポ リマー分子 を交互 に共有結合 架橋
スペ ク トルで調 べ られ て い
PANの 電解質 に対 しては,C N基 と金属陽 イオ ン との相 互作 用が赤外
N基 の伸縮振 動 に基 づ く2240cm lの ピー クが
る.C‐ Nδ と金属陽 イオ ン との相互作 用 に よ り,C・
al吸 収 ピー クの シフ トの程度 は,そ の金属 の電 気陰性 度 に依存 し,ア ルカ リ金属 の中で
シフ トす る
は Kく Naく Liの 順 に大 きい
.
に
い
ニ ル (VAc)共 重合体 も,LiPF6を 支持 電解質 として用 た場 合
ア ク リロニ トリル (AN)酢 酸 ビ
高 い イオ ン伝 導度 を示す
は,20・ Cで 4 mScm l,-20・ Cで も 0 7mScm lの
d)ポ リメチル メタク リレー ト(PMMA)
フ アイパ ー,
PMMAは ,非 品質高分子 として高 い透明性 を有 してい る こ とか ら,光
コンタ ク トレ
の グラ
としての適用 は ドライタ イプの PEO系 電解質
ンズな どの材料 として用 い られ て きた。電解質
6°
そ の後
ベ ー ス ポ リマ ー としての応 用例 が 報 告 され た
6り
フ ト鎖 として ,ま た グ ル状 電 解 質 の
か して,全 固体 型 エ レ ク トロ ク ロ ミッ
PMMA系 電解質 は,そ の透明性 お よび電気化 学的安 定性 を活
6]や スー パ ー キ ヤパ ン タ6Dの
6‐ 6り
,ま た ポ リマー リチ ウ ムニ次電 池
クデ ィスプ レイの電解質 として
について
の種類 とベー スポ リマー,可 塑剤 との相互作 用
電解質 として開発 が進 め られ て い る.支 持塩
が あ る。PMMA系 の化学 ゲ ルは
6・ 70ぉ
ょび NMR'い を用 いた研究 についての報告
は,各 種分光 法
エ チル ア ク リ
モ ノマ ー との共重合体 であ る。 ジメチル ア ミノ
その 多 くが ジア ク リレー ト系 の 2官 能性
レ
よび メ トキ ン(EO).モ ノメタ ク リ
レー ト(DMMA)と ANと の共重合 体 ,お よび DMMA,ANお
ン
ずれ も 4mSCm l(20・ C)の イオ 伝 導度
り
ー トな どの 3者 共重合体 のゲ ル膜 についての報告 もあ ,い
,
,
4電
解
123
質
0 次
1一
高
図 細
C 子
オ クテル本
(12 nm)添 加 に よるグル膜 の イオ ン伝 導度
,
レオ ロジーお よび微
値 が報告 され て い る。
e)そ の他
前記 の いずれのゲ ル電解質 において も,負 極 に金属 リチ ウム箔 を用 いた場合 に充電時 に問題 とな る
デ ン ドライ トの生成 が抑 えられ る ことが 見出 され て い る。
上記以外 の材料 で は,ポ リンロキサ ンをベ ースポ リマー あるい は架橋剤 とした ものや,新 しい透明
性 オ ンフ ィン系 ポ リマ ー をベ ースに した グル電解質 の 開発 も行 なわれ て い る。 それぞれの役割 を もっ
72、
1番 目の モ ノマ ー は
た 3種 類 の モ ノマーか ら形成 された架橋構 造 ネ ッ トワー クゲ ル の報 告 もあ る
2つ の アク リロ イル基 を有 す る もの で,立 体 網 目構 造 を形成 し,ゲ ルの機械 的強度 を高 め る.2番 目
は 1個 のア ク リロイル基 を有 し,か つカーボネー ト基 や シア ノ基 の よ うな強 い極性基 を有す る もので
あ り, これ らの官能基 は電解 質 の イオ ン伝 導度 を高め る。3番 目の モ ノマ ー は 1個 の ア ク リロイル基
を有 し,か つ オ リゴオキ シエ チ レンを有 す る もの で,ポ リマ ーに可撓性 を もた せイオ ンの動 きをよ く
し,さ らに形成 されたポ リマー に可塑性 を もたせ る とい うもの で あ る。3種 の モ ノマー の混 合比 を変
える ことに よつて きまざまな特性 の ゲルが得 られ る。
今後 ,各 種化 合物 rH3の ナノお よび分子 レベ ルでの複合化 によ り, さらに高性能 のグ ル電解質 が 出現
す るに違 いな い.た とえば,ナ ノ超微粒 子を添加 し,グ ル電解質 の動粘性 を変 える研 究 な どが最近 の
トピックス としてあげ られ て い る (図 10).
4.4.固 体 電 解 質
44.A
リチ ウ ム 系非 品質超 イオ ン伝 導体・
近年, リチ ウム系二 次電池 の全 国体化 が強 く望 まれてお り,そ のため に同体電解質材料 の探 索研究
が盛 んに行 なわれて い る。 この ような中,不 燃性 の無機非品質 系固体電解質材料 は,導 電率 が高 く,
また シ ングル イオ ン伝 導体 であ るため, リチ ウムニ 次電池 の安全性・ 信頼性 を飛躍 的 に高 め るた めの
究極 の材料 といわれて い る.本 項 で は,酸 化物 系 お よび硫化物 系 ガ ラスを中心 とす る リチ ウム系非晶
・辰 巳砂 昌弘 Masahiro l` ATSUヽ 卜A∞
大学 )
(大
阪府立大学大学院 工学研究科 ),南
努
TsutOmu Mド AMI(大 阪府立
124
H
、
リブツア
系
1次 電池
質超 イオ ン伝 導体 について,そ の研 究動 向 を概 説 す る。
a)リ
チ ウムイオ ンを高濃度 で含 む酸化物 系超 急冷ガ ラス
ガ ラスの Li+イ ォ ン伝 導性 を高め るには,通 常 ,ガ ラス中 の Li+イ オ ン濃度 を高 める ことが必要で
あ る.融 液 を極端 に大 きな速 度 で急冷 す る双 ロー ラー超 急冷法 を用 いてガラス化域 を拡大す る ことに
よ り,高 い イオ ン伝 導性 を示 す ガ ラスが さまざ まな系で作製 され た7● 74、
Li―
イオ ン濃度 の極端 に高
い酸化物 系超 急冷 ガ ラスは,通 常 の ガラスにみ られ るような二 次元網 目構造 を とらず,孤 ●したオキ
ソ酸 ア ニ オ ン と Li+イ オ ンか らな り,500Kで の 導電 率 が 10`∼ 10`Scm lと い う高 い値 を示 す こ
とが報告 され て い る'`ヽ
また,2種 のオ キ ソ酸 リチ ウム を組 合わ せ た擬 2成 分 系超 急冷 ガ ラスは,オ
キ ソ酸 アニ オ ンの混合 に よ り導電率 が極大値 を示す. この ような現 象は「混合 アニ オ ン効果 Jと 呼 ば
コ,導 電率 の いガ ラス
れてお リア
高
材料 を設計 す る うえで重 要であ る.
b)硫 化物 をベ ース とす るオキシスル フ ィ ド系超 イオ ン伝 導 ガラス
前項 で示 した ように,酸 化物 系 は高温 では比 較的 高 い導電率 を もつ ものの,室 温 での値 は リチ ウム
ニ 次電池の電解質 としては不十分 であ る。 そ こで,酸 化物 イオ ンよ り分極率の大 きな硫化 イオ ンを
物
用 い た Li2S― P2S5系 ,Li2S(,cS2系 ,LLS― B2SI系 な どをベ ー ス とす る硫 化物 系 ガ ラスが 開発 され
た7o.と りわ け Li2S SiS2系 をベ ー ス とす る系 は室 温 で 103∼ 10 4scm lの 高 い導電 率 を もちなが
ら,封 管 中 で合成 す る必 要 の な い こ とか ら,電 池 用電 解 質 と して最 も大 きな期 待 が 寄 せ られ て い
る777助 .こ の系 に さらに LiIを 加 える と,導 電 率 は い っそ う向
│:す
るが,熱 的安定性 の低 下 や リチ ウ
ム金属 との反応性増大が 問題 となる7切 .
一 方,Li2S― SiS2系 にオル トオ キ ソ酸 リチ ウム を少量加 えた系 が,ベ ー スガ ラス よ りも高 い伝 導性
を有 し, しか も結晶化 に対 す る安定性 が高 くなる こ とが示 され た8Qm、 図 11に ,Li2S― SiS2 LixMO.
(Liχ MOy=LioSiO`,Li3P04)系
オキシスル フ ィ ドガラスに対 す る,25'Cに お ける導電 率 の組成依 存性
を示す.結 晶化 に対するガラスの安定性 は,ガ ラス転移温度 η と結品化温度 ■ の差 η ―■ を 1
つの 目安 として評価できるので,こ の値 も図中にあわせて示 す.5 mol%の オル トオキソ酸 リチウム
の添加 により,室 温での導電率 は 10 3s cm〕 オーダーの高 い値 を示す と同時 に,η ―■ の値 も極
大値 をとってお り,伝 導性 が向上する組成 で結品化に対する安定性 も改善 されている。 この ような導
10
20
00
40
︶ヽピ ード
。
5 ∞
0
50
MO%Ll MO′
図 11(100-2)(0 6 Li2S・ 0 4 SiS2)・ zIム ヽ10,(Iム MO、 二LitSiO`,LiIPO.)系 オ キ
シスルフィドガラスのま温における導it率 および ■―■ の組1成 依存ヤL
4 it
解 質
電 率 や結 品化 の挙動 を理解 す るた め,ガ ラ スの構造解析 が さまざ まな分光 学的手 法 に よ り行 なわれ
NMRお
た;コ .同 体 高分解能
よび X線 光電 子 分光 法 よ り,1つ の ケ イ素 に 3つ の非 架橋硫 黄 と 1つ
の架橋酸素 の配位 した構造単位 が,ガ ラス中 には主 として存在 す る ことが示 された.結 品化合物 中 に
は存在 しない この よ うなガ ラス特有 の構造単位 が,結 品化 に対 す る安定性 向上 と伝 導性 の増大 を もた
らした もの と考 え らオじる8詢
.
一 方,オ キシスル フ ィ ドガ ラスを電 解 質 とす る 3V級 お よび 4V級 の全同体 リチ ウムニ 次電 池 が
試作 された8■ 日.こ れ らの電池 における充放電効 率 は 99%以 上 であ り,単 一 キ ャ リヤーのみが移動 す
るため,副 反応 がほ とん ど起 こらな い とい う,全 固体 系特有 の良好 な充放電 サ イクル特Itを 示す こ と
が報告 されて い る。
c)リ
チ ウム系超 イオ ン伝 導 ガラスの メカ ノケ ミカル合成
融液超 急 冷 に よ り得 られ る Li2S SiS2-Liχ MO夕 系 オ キ シスル フ ィ ドガ ラス は, リチ ウムニ 次電 池
用固体電解質 として有用 な材料 であ る こ とが示 されたが,実 際 の固体 電池 として用 い る場合 には,い
ったん粉砕 して微粒 子 とし,こ れ を電極活物質 と混合 して良好 な界面 コンタク トを得 る必要があ る.
その よ うな同体電解質微粒子 を,高 温 の融液 を経ず に直接合成 す る手段 として,オ キ シスル フ ィ ド系
非晶体 の メカ ノケ ミカル合成 が 試 み られた。
LizS結 晶 お よび SiS2結 品 を出発原料 として Rlい ,遊 星型 ボー ル ミル に よる約 20時 間 の メカ ニ カ
ル ミリング (MM)を 行 な うことに よ り, この 2成 分系 にお ける非品質化 が報告 され て い る80 得 られ
た非品質材料 は,Li2S― SiS2系 超 急 冷 ガ ラスの粉 木試料 と同様 な 10“ Scm lオ ー ダーの高 い導電 率
80.
を有 し, リチ ウム イオ ン輸率 がほぼ 1で あ る ことが報告 された
また,オ ル トオキ ソ酸 リチ ウム を少量 含 むオキ シスル フ ィ ド系試料 に対 して も,非 品質化 が なされ
つ これ らの試料 の 1体 高分解能 NMRよ り,わ ず か 1時 間 の MMで SiS2結 品 はほぼ消失 す る と
た°
「
ともに,稜 共 有 を もたな い SiSl構 造 が増加 し,10時 間以 上の MMに よ り融 液 急冷 ガ ラ ス と非常 に
類似 した局所構造 が形成 され る こ とが示 された
8η
MMに
.
よ り得 られ たオ キ シスル フ ィ ド系非 品質団体 電解質 を用 い,Inぉ よび LiC002を それ ぞれ
負極,正 極 とす る全団体 リチ ウムニ 次電池 が試作 された。 この電池 は,サ イ クル初期 に若十 の容 量低
下 がみ られ る ものの,充 放電効率 はサ イ クル を重 ね て も 99%以 上 で あ り,二 次電 池 として十分機 能
3'L
す る ことが示 され た
以 卜, リチ ウノ、系非吊質超 イオ ン伝 導体 の研 究開発動 向 につ い て述 べ た 融液超 急冷法や MMに
よ り得 られ るオキ シスル フ ィ ド系非品質同体 電解質材料 は,Li‐ イオ ンの シ ングル イオ ン伝導体 で あ
るばか りでな く, リチ ウムに対 して 10V以 上 の きわ め て広 い電位 窓 を有 す る。 したが って,溶 液 系
では実現 が困難 な 6V級 ,7V級 の高電圧 リチ ウムニ 次電池 を構築で きるn」 能性 を秘 めてお り,今 後
い っそ うの発展 が期待 され る.
4.4.B. 高 分子 を溶 媒 に用 い た固体 電解 質・
電気化学系 は,電 子移動反応 を通 して,化 学 エ ネル ギー と電気 エ ネル ギーの相 互変換 の場 として
,
・渡邊正義
、ABE(横 浜 LI立 大学大学院工学研究院 )
ヽlasaメ ,shi WAl‐ 、
11
(a)溶 液 を用 いた
リチ ウ′、
系 二次 電 池
(b)高 分 子修 飾電 極 を
用 いた電気 化 学系
電気 化 学系
(c)高 分子固体電解質
し学系
を用いた電気イ
図 12 高分子を用いた電気化学研究の進展
また化 学情報 と電気信号 の相互変換 の場 として,人 工 系 そ して生体 系で重 要 な役割 を担 ってい る。 こ
の電気化学系 を構 築す るため には電子移動反応場 を提供 す るイオ ン伝導性 の媒体 が必 要 で あ り, これ
まで水 あ るい は有機溶媒 な どの液体溶液 が用 い られ て きた。 しか し近 年 ,同 体状 態で イオ ンを高速 に
かつ選択 的 に伝 導 で きる高分 子 の研 究 が進 み,こ の状 況 に変化 が み られ る (図 12).固 体状 態 で イオ
ン伝 導性 の高 い物質 は固体電解質 と呼 ばれ,従 来 は無機化合物 の独壇場 であ ったが,イ ォ ン伝導性 高
分子 を一種 の溶媒 に用 いた高分子 同体電解 買 (polymer elcctrolyte)が 開発 され, この状 況 は現在 急
速 に変 化 して きて い る89
9¨
特 に,高 分 子同体電解 質 は次世代 リチ ウムニ 次電 池 用電解 質 としての
期待が大 き く,世 界的 にその基礎 お よび応用研 究 が展開 され てい る.
本項 で は, これ まで イオ ン伝 導性媒体 として用 い られ て きた電 解質溶液 の溶媒 のかわ りに高分子 を
用 いた ときに (図 12(c)),伺 が起 こ り,何 がわか り,何 がで きるか とい う観点 か ら進 めて きた筆 者 ら
の研 究 を中心 に,そ の一端 を紹介 した い.
a)ポ
リエーテル を溶媒 に用 いた高分子 固体 電解 質
多 くの 高分 子同体 電解質 が 高 イオ ン伝 導性 を示 す の はガ ラス転移 温度 (■ )以 上 の温 度域 で あ り,
そ こで は高分子 の力学的性 質 を決 め る緩和時間 は,化 学的架橋構造 や,高 分子鎖 どうしの絡 み合 いな
どに よる架橋効 果 に依存 して い て,イ ォ ン伝 導 に関与 す る局 所 的緩和時 間 とは基 本 的 に独立 して い
る. これ は,高 分子化合物 だ けが もつ特徴 であ り,高 分子化合物 をf■J体 電解質 に応 用す る最 も重 要な
利点 であ る'ヽ 現在 Lに 研究が進 め られ て い る高分子 固体電解 質 は,オ キ シエチ レン構造 を有 す るポ
リエー テル 系高分 子を高分子溶媒 とし電解質塩 を この 中 に同溶 した系 であ り, ここではポ リエー テル
系高分子 固体電解質 につい て述 べ る。
ポ リエ ー テル系高分子 中 で,イ オ ンの移動 は高分子鎖 の局所運動 とシンクロナ イズ して起 こる こと
が広 く認 め られ て い る。 そ こで室温付近 (30C)で の高分子 中 の イオ ン伝導 の実際 を少 し具体 的 に して
み る 無定形 高分子 中 の イオ ンの二次元拡散 が酔歩 モ デルで表 わ され る とす る と,′ を一歩 の長 さ,
2と
ンを単位時間 当た りの歩数 とした とき,拡 散係数 (D)は ,D=(1/6)ν ′
な る。高分子 のセ グメ ン ト
運 動 の 緩 和 時 間 を τと した と き ν=τ lで 表 わ され,か つ τの 温 度 変 化 が WLF式 :log[τ (7)/
τ(■ )]=-174(T― ■)/[516+(T-71)lに 従 うとす る ここで, 4に おけるτ=103s, T=
C(=η +80C)と すると,7=25× 108sと なる.′ としては 1∼ loÅ 程度であろうが, ここでは
5Å とするとD=17× 10 8cm2s lを 得る.Dと イオン導電率 (σ )の 関係は,Ncrnst Einsteinの
式 :σ =″ 92つ /力 Tで 表 わ され る。 ″の 値 を lm(月 71に 導 入 され た 電 解 質 の 10%が キ ヤ リヤ ー イオ
ン と して働 く,す な わ ち 100° cm Sと した と き,σ =10× 10 6Scm lと な る。 この 値 は,現 在 まで
30・
4電
解
127
質
に得 られて い る導電 率が比較的高 い高分子同体電解 質の それ に一致 す る
それで は, よ り高 い導電率 を実現 す るためには, どの ような方法論 が あるだ ろうか。 もしイオ ン移
動 と高分子鎖 のセ グメ ン ト運動 が協同的 でか つ WLF式 に従 って変化 すれば,イ オ ン移動度 を増 大 さ
せ るには ■ を低 ドさせ る しか方法 はな くな るが, これ には化学構造 との兼 ね 合 い で限度 が あ る.よ
り高 い イオ ン移動度 を示 す高分子同体 電解質 を開発 す るためには,側 鎖緩和 な どよ り速 い分子運動 と
イオ ン移動 が共役 で きるような高分子 や, よ り解離度 の高 い電解 質 の設 計 が必 要 であ ろう。 その 1つ
の試 み として,筆 者 らは,1∼ 4に 構造 を示 す よ うな,多 分岐型 で 自由木端側 鎖 を多 数 もつ よ うな ボ
リエ ー テル 系高分子 を合成 した9".
1お よび 2は 分子 量 10。 に達 す る高分子量体 で,電 解質塩 とと もに共通溶媒 に溶 解 しキ ャス ト法 で
製膜 す る ことがで きる
また 3お よび 4の マ クロモ ノマ ー では,電 解質塩 が これ らマ クロモ ノマー に
直接溶解 す るため, これ をキ ャス ト後熱重合 あるい は光重 合 で重 合架橋 させ る ことに よって固体電解
質 が得 られ る 図 13に ,1に Li(CF]S02)2N(LiTFSI)を 溶解 した固体 電解質 の イオ ン導電率 の共重
合体 組 成 依 存性 を示 す。 この 高分 子 固体 電 解 質 の 導 電 率 は 30Cで
3X10(Scm l,60Cで 103s
cm lと ,こ れ まで検討 された ポ リエ ーテル 系高分 子固体電 解質 の 中 で は最 も高 い イオ ン導電 率 を示
す こ とを見 出 した'4,5、
しか し,■ は一般 の ポ リエ ー テル系高分子 団体電解 質 と比 べ て特 に低 い値
ではない。 また,3の マ クロモ ノマー架橋体 で は,マ クロモ ノマー の分 子量 に対応 す る樹枝 状側 鎖長
の変 化 に対 して,■ は一 定 で あ るに もかか わ らず,イ オ ン導電 率 に極 大 が現 わ れ る現 象 を見 し
出
た90.こ の ように,■ に は反映 しな い高分 子鎖 の局所 的 なダイナ ミックスが 高速 イオ ン輸 送 に影
響
す ることを示 した。 また,イ オ ン伝導性高分子 中の 自由体積 の大 きさや その分布 の解析 に,陽 電子消
滅法 の適用 の可能性 を検 討 してい る9η .
ポ リエ ー テル系の固体 電解 質 は, リチ ウムの還元電位 まで は安定であ り電位 窓 も広 い
.ま た現 在 ,
‐ CH2♀ H° XCHκ H′ 叫 喘
CH′ O― CH,CH「 0-cH2CHrO― CH3
1
‐
CLiH 味
;樹 繋 蹴 iO→ 所c跳
CH2-O― cH
CH′ 0-(CH,cH「 O― 鳩CH,
CH2-9H
ム
2
.c、 ♀H oЖ c喝 CH′ の 高 CLOヽ o CLCH′ O“ L
CH2-0-cH2cH,-0-CH,CH′ O― CH。
‖
リアウノ、
系 二次電池
0 0
︲
FEOのヽ■P■ ヽヽ ヽ
010203040∞
共重合体組成 x/mo%
13
ポ リエー テル系高分子 (1)に 11(C「 3S02)2` を溶解 した 川体電 解質 ([Li1/[Ol―
006)の イオ ン導電 率 の共重合体綿成依存性
図
リチウム をは じめ とす る電極活物質 との界面 での電子移動 反応 の可逆 llに ついての検討 も進 め られて
い る.液 体溶液 と比較 して この電気化学界面 の安 定性 は高 く,さ らに電子移動 反応速度 に も高分子構
造 が影響 を与 える ことを見出 して い る
9り
今後 ,次 世代 リチ ウムニ 次電池用 の電解質 として広 く用 い
られ るためには,導 電率 の 向上 ,迅速 電 子移動 を可能 とす る電気化学界面 の構 築
輸 率 の制御
mの
90, リチウム イオ ン
ヵ,必 要であ ろう
.
b)高 分子 を電子移動 反応場 に用 い た固体電気化 学
以上述 べ て きた ようなイオ ン伝 導性 高分子 の研 究 を進 め る過 程 で, これ を溶媒 に用 いた固体電気化
しか し,研 究初期 に はイオ ン伝 導体 中
“
の電圧 降下 (tヽ わ ゆ る ′ ドロ ップ)が 大 き く,得 られ る電気化学 応答 が定量 的 な議論 に耐 え うる もの
で はなか った 馴ヽ その後,そ の大 きさが μmオ ー ダー であ る微小電極 を用 い る ことに よ り,こ の 間
Ю
題 点 を克 服 す る こ とが で きた 上 高分 子を溶媒 とす る同体電 気化学 測定 を実現 す る こ とに よって
105ヽ
さらに こ
高分 子中 の レ ドックス活性 分 子の拡 散係 数 を電気化学 的 に求 め る こ とが可能 にな った
学 系 が実現 で きるので はな いか と着想 した (図 12(c))Ю
LЮ
,
の方法 は,オ リゴマー程度 の分子量 であれば高分 子溶融体 中の 高分子鎖 の拡散係数測定 に も適 用可能
であ った mO.
イオ ン伝導性 高分子 を用 いた電気化学 にお い て も最 も特徴 的 な点 は,被 反応種 である レ ドックス分
子 の拡散係数が著 し く小 さい点 であ る
レ ドックス分 子を高分 子鎖 に修飾 して固定化 した場合 には
,
その物理 的拡散 は無視 で きる.物 理 的拡散 が著 し く抑制 された状 況 では,電 気化学反応 にお ける電荷
10〕
輸 送過程 での電 子交換 反応 (電 子 ホ ッピング)の 重 要性 が増 大 す る
.ま た,電 子 移動媒体 で あ る高
分子 は,温 度変化 や電解質濃度変化 に よって,そ の ダイナ ミックスを大 き く変化 させ る. この ような
高分 子媒体 中 での電 子移動反応 の特徴 を明 らか にす るために,5,6に 示 す よ うな イオ ン伝 導性 モ ノ
マ ー とン ドックス活性 モ ノマーか らな る共市合体 を用 い,レ ドックス分子 間 の電 子移 動 反応 に及 ぼ
す,レ ドックスの分子 の濃度,自 己電 子交換速度定数,電 解質濃度 お よび温度変化 に よつて誘起 され
ユ]0'L
る高分子鎖 の ダイナ ミックス変化 の影響 を検討 した
1。
これ ら共重合体 を溶媒 に用 いた電気化学系 は,低 分 子溶媒 が系中 に存在 しな い点,こ れ ら共重合体
■
t tt Fl
129
自身が溶媒 かつ溶質 として働 いて い る点, さらに溶質 が 高分 子鎖 に固定 され てい るため巨視的 な拡 散
がで きない点 な どで,従 来 系 とは まった く異な る特 異な系であ る
その結果 , これ ら共重合体 中 で は
レ ドックス分子 の物理的拡 散 は無視 で きるに もかかわ らず, レ ドックス分子間の電子交換反応 に よる
電荷輸送 に よって 可逆 的 な電気化学応答 を示 す ことを見出 した。 また,all定 され る見か けの1[子 の拡
散係数 か らレ ドックス分 子間 の電子移動反応速度 を求め ることがで きた。 さらに, この 高分 rバ ル ク
中 での電子移動速度 は,高 分子 中の レ ドックス分子 の濃度 ,そ の 自己電 子交換速度定数,反 応媒体 で
あ る高分子 の ダイナ ミックスに影響 を受 け,東 縛拡散 モ デルで説 IIIで きる ことを明 らか に した
4.5.新
しい 電 解 質 と して の 常 温 溶 融 塩 =
電解 質溶液 は,解 離 して イォ ンを発生 させ る塩 とイオ ンが伝 導 す る場 を与 え る溶媒 か らつ くられ
る 固体 の塩 その もので はイオ ン移動 が不可能 なので イオ ン伝導性 はない 一 方,塩 は
高温 にす る と
融解 す る
この溶融状態 にあ る塩 は溶媒 が な いの に もかかわ らず,高 い ィオ ン伝導度 を示 す この よ
.
うな状態 の塩 を溶融塩 と呼 び,一 般 の溶 媒 が 蒸発・ 分解 して しまうよ うな高温 で も安定 なため
,高 温
電気化学の分野 で活躍 してい る。 日常 の温度 で も塩 が液状 になれ ば多方面での利用 が期待 され るが
,
無機塩 では実現 で きなか った.と ころが,室 温 で溶 融状 態 にな る塩 は い まか ら 50年 も前 か ら知 られ
て い た1川 .塩 化 アル ミニ ウム を成分 とす るオ ニ ウム塩 であ る。 これ らは無機 系 と区別 す るた め に
有
機常 温溶融塩 と呼 ばれ る N― ェ チル ピ リジニ ウム プ ロマ イ ドと塩化 ア ル ミニ ウム を混 合 す る と
,
1:2の モル比 の ときに融点 は -2()C以 ドとなる!Ю ヽ これ らは空気 中 で は水 分 と反応 す るな ど,取 り
扱 い に注意 が必 要であ る.塩 化 アル ミニ ウムにかわ るア ニオ ンを探 索 した結 果,ヽ Vilkesら は,イ ミ
ドア ニ オ ンや メチ ドア ニ オ ン(カ ルバ ニ オ ン)を 使 う と安 定 な常温溶融 塩 とな る こ とを
見出 した HD.
広 い温度域 で本気圧 が 0で あるため,蒸 発 せず に燃 える こともな い とい う優 れ た溶媒 としての
側面
もあ り,楽 しみな材料 である。近 年で は, イォ ン性 液体 (lonic lkluid)と も呼 ばれ る
ll・
4.5_A
有機 常温溶 融塩
ジアル キル イ ミダ ゾ リウム塩 の アニ オ ン種 を TFSI― や BF4 な どに交換 す る と
,融 点 は 著し く低
ドす る.ア ル キル基の種類 や位 i酎 な どに依存す る こ とはわか って ぃ る力ヽ まだ特 ‖iと 構造 の相 関 が き
れ いに整即 され てい ない 用 い られてい るカチ オ ン もジアル キル イ ミダゾ リウノ、系 (I),ア ル キル ビ
リジニ ウム系 (H),テ トラアル キル ア ンモニ ウノ、系 (Ⅱ l)が 主体 で ある。解析 が思 うようにlllま な い一
因 は 合成 ,精 製 の難 しさであ る.特 に,得 られたオ ニ ウム塩 の ア ■オ ン交換 が難 しい.銀 塩 を用 いて
・ 人野 弘十
H■ 0,uki o[べ o(東 京 農 J:大 学
11ア 部 )
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、
リチウノ
系二次電池
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(11)
ハ ロゲ ンイオ ンを除 いた り11‖ ,他 の塩 との組 合 わせ で溶 解 度差 を利 用 して分離 す るのが一般 的 であ
るが,多 くの系で純 度 を高 め るの は難 しい。一 方,TFSI を有 す る溶融塩 は水 に不溶 で あ るた め副
11の
生成塩 を水洗浄 で除 くこ とが で きる
ので,広 く検 討 され るよ うにな って きた。 また,3級 ア ミン
と有機酸 の 中和反応 (下 式参照 )に よ り,常 温溶融塩 を得 る試 み
/¬N
ク
R/N、 ィ
+
HX
ま っ た くな い の で ,塩 の 単 離 は容 易 で あ る
1lJも あ る この方法 で は副生成物 が
.
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R/N\
X
τク
N.H
多 くの 系 で オ ニ ウ ム 塩 系 の 常 温 溶 融 塩 とfnl等 の 性 質 を示
す ことがわ か つて きてお り,溶 融塩 のモ デル として物性 n「 lに 利 用 で きそ うで あ る
4.5.B. 有機 常温 溶 融塩 の イオ ン伝 導 度
イオ ン伝 導度 は,系 内 の キャ リヤー イオ ンの数 とそれ らの移動度 の積 で表わす ことがで きる.常 温
に比
溶融塩 の イオ ン伝 導度 は著し く高 い。 これ はイオ ンのみか らな る液体 なので,一 般 の電解質溶液
く
般の
較 して キ ャ リヤーイオ ン数 が 10∼ 1,000倍 も大 きい ことと,溶 液粘性 が それ ほ ど大 き くな ,一
ム の イオ
電解質溶液 と同程 度 のイオ ン移 動度 が確保 されて い るた めで あ る 図 14に イ ミダ ゾ リウ 塩
ン伝 導度 の温度依存性 を示 した。 アニ オ ン種依存性 が ここで もみ られ,ア ニ オ ンの選択 が きわめて重
ン
わ せ て も良
要 で あ る こ とがわ か る。 多 くの検 討 か ら,TFSI や BF, な どは多 くの カチ オ と組 合
1り ことが
経験 的 に知 られ て い る.
∫
能性 が高 い
好 な常温溶融塩 を形成 す る 口
しか し,運 ぶ ことので きるイオ ン種 が重要 な応 用分野 もあ る
い うまで もな く,常 温溶融塩 はオニ
つ
ウム カチ オ ン と有 機酸 アニ オ ンか ら構 成 され るので, これ らが キ ャ リヤ ー イオ ン とな る. したが
て
とえば リチ ウム イオ ン伝導体 を設計 す る ときに,イ オ ン伝 導度 が優 れて い るか らとの理 山で常
,た
い
には,常 温溶
温溶融塩 を用 いた として も, リチ ウム カチオ ンの輸率 が 10に な るわ けで はな .一 般
ラ
融塩 に多量 の リチ ウム塩 を単純 に添加 して リチ ウン、イオ ン伝導体 を得 よう とす る と,融 点上昇 ,ガ
。
2
。
3
¨
¨
´∈ooヽ姜齋い、、 、
一
一
一
一
-60
図
14
アニ オ ン種 の異 なるエ チル イ ミダブ リウム塩 の イオ ン伝 導度 の温度依存性
4電
解
rf
131
ス転移 温 度 の上 昇 ,粘 性 増 大 ,そ して それ らの rL・ 果 として イオ ン伝 導度 の 低 ドが 起 こる。
4.5C.
選 択的 イオ ン移動 と高分 子化
日的 とす るイオ ンだ けが 高速移動 す る常温溶融塩 が合成 で きれば,応 用展開 が格段 に進 む と 予測 さ
れ る。 しか しなが ら,残 念 な こ とに,た とえば リチ ウムカチォ ン と組合 せ て常温溶融塩 になるよ うな
アニオ ン種 は知 られ て いない。 そ こで,現 存 す る系 を改良 して 目的の イオ ンのみ を運搬 す る系 を作製
す ることにな る 最 も容易 な方法 は,目 的以外 の イオ ンを場 に固定 す るこ とであ る。 これ には高分子
化 が有効 で あ る日■ 低分 子常 温溶融塩 の うち,カ チオ ン席 を高分 子化 す る と,系 を移動 で きるの は
ア ニ オ ンのみ とな る.逆 に,ア ニ オ ンを高分子 鎖上 に固定 す る と,カ チ ォ ン伝 導体 とな る ところ
が,片 方の構成 イオ ン種 を固定 す る とキ ャ リヤーイォ ン数 が半減 し, しか もイオ ン
移動 を抑止 す るよ
うに系 が硬 くなる。 その結果 ,イ オ ン伝 導度 は激減 す る。高分子化 に伴 うセグメ ン ト運動 の
低 下 をで
きるだけ抑 えるために,高 分子主鎖 と常温溶融塩 を形成 す るイオ ン席 を フレキ シブル なスベ ーサー
で
結 ぶ試 みが あ る。 これ は,PEOォ リゴマー の両端 にそれ ぞれ メタ ク リル酸 とイ ミダ ゾ リウム カチオ
ン を結 合 させたモ ノマー をラ ジカル重 合 して得 られ る1“
ヽ このモ ノマー は粘性液体 で あ り,室 温 で
10 3Scm l程 度 のイオ ン伝 導度 を示 す.重 合後 の イオ ン伝 導度 は 1桁 低 す る
卜
程度 で あ り,常 温溶
融塩 サイ トの「1由 度 を上 げる こ とが 高分子化後の イオ ン伝導度 を高 く つ うえで
保
有用 である ことを示
す.
イオニ クスデバ ィ スの小型化・ 軽量化 を意図 した応用 を考 える
場 合,多 くはデバ イスの固体化 が不
可欠であ る.常 温溶融塩 も液状 か ら団体 ドメインヘ の展開が期待 され てい
る.本 来 固体 であ った塩 を
液状化 し,そ れ をまた固体 にす る とい うの は矛盾 す るこ とで もな く
,退 歩で もな い。 」体状 態の塩 は
イオ ン伝導性 を示 さないため,電 解質膜 として利 用す る ことはで きない
常温溶融塩 とい う液状塩 を
経 て,高 い イォ ン伝導性 を もつ団体 フ ィルム を得 る こ とは きゎめて
意義 のあ るこ とで あ る.常 温溶融
塩 は従来 にない特性 を有 してお り‖υ,新 しい「 ィォ ン場」 として
期待 が もて る物質群 で あ る。
文
献
1)GE
B10mgrcn
“
Lithiunl
Batteries
CabanO (cd) Acadcmic Prcs Nc、
(1983)Ch 2 p]3
JP
YOrk
松 LE好 晴 , 日化 ,19891
ヽ Cutmann
「 hc DonOr― Acceptor Approarch
toヽ 101ecular lnteractiOns1 1)icnum Press, Ncヽ
ヽ()「 k(1978),Chap 2
4)百 田邦 尭 ,電 池 技術 ,8108(1996)
5)Y ヽlatsuda, ヽ1 ヽ1()rita and K KO望 ka
ルマ
ィツ′
η で〃 ,,こ
`力
ヽ1 卜IOrita aIぅ d
ll()(1983)
6)Y
ヽlatsuda
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130101(1983):Yヽ latsuda
K KOsaka つで″た′K(ぇ8″ 々r 51
H ヽakashn11.n.ヽ l MOrita and Y
Takaド u′ ″れ ′
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`1 128,2552(1981)
7) ヽ 卜Iatsuda,ヽ 1 ヽ10rita
and F Tachihara B=`′ ′
C‐/1ζ
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″ Sθこ ル ,7 59 1967(1986)
8)S H,OdO and K Okabayashl Eta′ 7″ ′
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34 1551(1989):S II,Odo a1ld K Okabavashi
Elc(力 η
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34 1557(1989)
9)B Klassen R Ar()ca M Nazri and c A Nazri
71B1021795(1998)
ノ abs c‐ 77′ ′
1())M ヽ10rita Y AsaL ヽ YOshimotO, and ヽ1
1shika、 a ノ C力 α
″ ,た E2た ″● T″ ″ゞ 94
3451(1998):森 田 ::行 ,石 川 正 司,電 池 技術
,
12 56 (200())
11)
12)
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11)
ヽ1 lshika、 a 卜1 、10rita, M Asao :ind ヽ
ヽlatsuda′ んソ
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〃 ,,`1 141 11()5(1991)
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小柴信 ヶ
,池 畠敏彦 ,高 :Π 賢 ―,ハ17′ わ″α′7を
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“ρ 7.37 641(1991)
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佐 々木 十人 他,米 発表 デー タ
C Nanjudiah Ji´ G01dnlan i.A Donlincy,and
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絲 r.1352914(1988)
田 “稔 ,小 林 義和 ,佐 々木 十夫,電
化 ,第 63大 会 要,集 ,p101(1996)
' Sasaki N Yそ tnlazaki and ヽl Handa Ma′
ヽ
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1崎 信■ ,半
R6 &ll ,り ″″ ′
う
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` 4961,7(1998)
■多房次,第 3611電 イ
ヒセ ミナー,“ 電池材料 開発
の最 先端 ",p45(1996)
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132
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系二次it池
1ゆ Aヽ ヽ̀cbbcrノ υ ピ ″′
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…1382586(1991)
19)]Γ l)u〔 1lc, I)1) ヽVi kil〕 '″tl (, 1 1lon〕 a、 :て
Lcva( S ヽヽo(凛 II I'lo:1〕 C IIo「 vat11 ヽ1ヽ V
11) ヽII, An〕 ald Jヽ 4 Chal,ag[〕
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(1979) p 131
42)ヽ l Cauthicr
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17)外 車卜J「 ,小 山 り :電 気化 学 ,65796(199つ
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19)Kヽ l Abrahanl andヽ l Alamgir′ E′ ′′′だル
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13)ヽ 1 (:atithier A Bclanger l' 13ouc1lard B
2000 Abstractヽ o23(2()0())
(10res た77〔
D I'auteux (}
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gilitz ヽ lg]latё 、, and l' Sartori l()th intcr
23)J Barthel
Shelo、 ((,ds) EIseヽ
13eiHllgcr ヽI I)u、 aL l' Ric()ltx J
章,1劇 il高 りJ,電 気 化 学 ,65,
nati()n`11ヽ le(ltinH on L thitlm Battcries・
時iui,dv and (】 K
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Juzk(,w B I)cnis P Juric P Aghakian and J
21)喜
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Fast lol,l ra1lsport in Solid・・ I)ヽ ashishta T
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59)松 村 康 夫 ,荒 井 康 二郎 ,メ L山 閾 男 ,二 友 宏 志 :繊
維 学 会 誌 ,52117(1996)
日国 男,lrt本 史朗 :特 願 平 11110597
│:「 [業 材 米斗, 48 32(2()00)
卜山 夕
61)メ し1回 ワ), ′
62)D J 13anniSter G R Davies I M` `ard and J E
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63)T Ininla v To,0“
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κ″マαtlr 53 611)(1985)
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61)S Passerini R Pileggi alld i3 SCrosat El(で ′
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66)ヽ l KitagaWa ヽl lwaku and N Oyama,′ わ
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69)E Cttzzane1li()ヽ I[lriOtto(11, Al)pcteCChi「
Crocc a:ld 13 ScrO、 ati ′
″ ″,`ん l1 1`47 40
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2379 (19t15)
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1 5 1268
(1993)
inH Sull l'CT Int Appl VFO(,7 16 2()7
72)1´ uゝ
(1997)
73)Aヽ 1(Has K ヽa、 au and l J Ncgran
4″ ′′も 、 49お 18(19,D
′
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ア1)ヽ I l atstlmisago al〕 d´ 1 ヽlina11,i ■′
″′
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¬ ヽ… 181(198つ
75),([11少 11弘 , i 努 ,化 学 ,43314(1988)
76)ヽ 1 ヽlcnctner A II(ガ j`lji C Es10unles alld A
Tachez J
ル″ ヽ′
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( ル,″ ル、,48 325 (1991)iヽ I
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92)波 月l Hi義 ,■ 気 化学 ,65920(1997)
93)西 本 淳 ,渡 遺 正 義 ,Ij分 子 ,17829(1998)
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117)た 野 ■、 , l:業 材料 ,483r00oO):ペ トロテ ッ
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5. セパ レー ターおよびバ イ ンダー
5.1.セ パ レー ター材料 の機 能―― 特 性 と製 法・
た リチウムイオン電池用
い
本節 では,携 帯 型電子情報機器 の電源 として,最 近 めざまし 発展 を遂げ
べ
のセパレー ターについて,そ の機能 と特性 および製造技術 の概要 を述 る。
51A.
セパ レー ターの機能 と特性
どの電池 にも共通なセパ レーターの基本機能 は,IF極 と負極 の間 に介在 して
こと
① 正負両極 を隔離 して活物質 の接触 に伴 う短絡 を防止 する
を形成 する こと
電池反応 に必 要な電解液 を保持 し,イ オ ンが移動 するための通路
にある。一 方,電 池 の種類や設計 に応 じた固有の機能 の例 としては
ツケル水素電池)
① 正極 で発生 した酸素 ガスが負極 に抜 ける通路を形成する(ニ
ン
ム
② 特定の温度で閉孔 して電流を遮断する(リ チウ イオ 電池)
や
械的耐久性 も重要
な どがあげられる また,電 池部材 としての実用面 か らは,化 学的 な安定性 ,機
をはじめとして,非 水
め
となる. さらに, リチウム系電池の場合は,有 機溶剤 を使用す るた ,安 全性
②
,
系電池 とは異なる下記の要求特性 もある
① 化学安定性 耐有機溶剤性 のある材料 が用 い られる
.
②
薄膜化
有機電解液 のイオ ン伝導性 が低 いため,大 面積 が必要 とな り,薄 膜化
して多層 に
重ねて巻 く必要がある
.
③
高強度
④
電流遮断
る
薄膜化,電 池組立て工程性,短 絡防上のために高強度 が求められ
(120∼ 140・
電池温度の異常上昇 に伴 う危険 を回避す るために,熱 暴走開始温度域
.
C)で 開孔 して,電 流 を遮断す る機能 が要求 される
リマー電池)で は,電 解質 の含浸性
⑤ 電解液保持 特 に,最 近竜場 したポリマー電解質系電池 (ポ
と保持性 のため に,電 解液 との親和性 が求め られる。
5.lB.
セパ レー ター と電池性能
の関係を示す
図 1に , リチウムイオン電池の特徴 とセパ レー ター要求特性
①
電池組立て性
・丹 治博 1l
H■ OShi
TA、 ■(旭 化成 工業 (株 )機 能膜事業部 )
5
セパ レー ター お よびバ イ ン グー
セパレー ター要求特性
0高 電圧
0高 エネル ギー密度
Lイ オ ンの使 用
低 イオン導電辛
図
1
リチウムイォン電池 (LI B)の 特徴 としパ レーター 要求特性
電 池 の 捲 同組 立 て工 程 での セ パ レ ー タ ー の 破 断 は,]1程 不 良 や短 絡 不 を生 じるの
良
で,適 正 な 強
度 ,弾 性 率 や 摩 擦 特性 , さらに は膜 厚 の 高度 な均 一 性 が 必 要 とな る.
②
充放電 特性
レー ト特性 やサ イ クル特性 には,電 極 /セ パ レー ター
界 画 や セパ レー ター 内の イオ ン移動 が重 要
であ る.セ パ レー ターの 多孔構造 ,活 物 質や バ イ ンダー
,電 解液 な どが複雑 に影響 し合 うので,電 池
設計 に応 じた適切 な子L構 造 の選択 が必 要 とな る. 一 般 には,大
子L径 ,高 空孔 率 の ほ うが透 過 性 は 高
い.ま た,電 池 の 高容量化 に伴 い,セ パ レー ターの
薄膜 化 (従 来 の膜 厚 は 25∼ 35″ m)の 要 求 が ます
ます高 まって きてぃ る.
③
安全性
リチウム イォ ン電池 の安全性 を確保 す るための対 策 の 1つ として
,高 温下 でのセパ レー ターの閉 孔
による電流遮 断 が ある.ポ リマー設計 や多孔構造 を
最適化 す る こ とで実現 され る。
5.lC
セ パ レー ター 材料
主 な電池 の構成材料 を表 1に 示す. リチ ウム イォ ン電池用で は,高 強度薄膜化
,電 解液 へ の化学 的
耐性 や電 流遮 断特性 の観点 か らポ リエ テ レン系 の微 多孔膜 が主 流 で あ る 一
。 方,ポ リマー電 池 用 で
は,ポ リフ ッ化 ビニ リデ ン,ポ リエ チ レンオキサ ィ ド,ポ リア ク リレー
ト,ポ リア ク リロニ トリル な
どに電解液 を含浸 したゲル化 シー トを用 い る もの もあ る。
5.1.D
リチ ウム イオ ン電 池 用 セ パ レー ターの 製 法
微 多孔性 シー トの製 法 は「本
Π分離 法 」 と「延 伸 開孔法 Jに 大別 され るり,相 分
離法 は,高 分子 と溶
媒 の混合物 の 高温均一 溶液 か ら熱誘起 ミク ロ相分離 を用 いて,多 孔形
成 す る.実 際 には,ポ リマ ー と
溶剤 を高温で溶融混合 した後 ,冷 却 ,シ ー ト化 し,別 の揮発 性溶 剤で溶
剤 を抽 出除去 して多孔性 シー
トを得 る.抽 出の 前後 で延仲 や熱処理 を施 して膜厚 ,強 度 ,多
孔構造 な どを調整 す る.ポ リマ ー と溶
剤 の組 合 わせ や20,第 3成 分 の配 合,延 仲 や後 処理 で もfL構 造 が
変化 し,多 様 な 孔構 造 が 可能 で あ
、系 ●次電池
リチウノ
II
表
1
各種 電池 の構 成材 料
セ パ レ ー ター
物質
電池 の種類
電解液
正極
要求性能
材質
負極
次電 池
マ ンガ ン乾電 池
ヽln02
Zn
アル カ リ乾電 池
Mn02
Zn
ZnC12 0r Nll,Cl
KOH(ZnO)
クラ フ ト紙
電 解液 合浸性
不織 布
耐 アル カ リ
(ビ ニ ロ ン トパ ル プ)
酸化銀電池
Ag20
Zn
KOH(ZnO),
空気」L鉛 電池
02(酸 素 )
Zn
KOIl(ZnO),
ヽa()H(ZnO)
NaOH(ZnO)
水銀電池
IIgO(+Mn02) Zn
リチ ウム電池
MnO,
Li
(CF)
Li
Pb02
Pb
PEグ ラ フ ト膜
Zn到 達
防 止,耐 ア ル カ リ
,セ ロハ ン
I)E微 多孔膜
溶 H:Ag2の
.
酸 素 ガ スIll
lL性
セ rlハ ン
KOH(ZnO),
PEグ ラ フ ト膜
711ア
ヽaOH(Zno)
LiBF./BL
1'P不 織 布
耐 電解 液 (有 機 溶 剤)性
PP微 多孔膜
短絡 防 lLttl L
PEイ 驚
耐酸性
LiC101/PC
ルカリ
二 次電 池
鉛畜電池
l12SO、
ni,
ガ ラ スマ ッ ト
N100H
ニ ッカ ド電池
Cd
KOH
ポ リア ヽ ド不織 布
電 解 液保持 性
ボ リオ レフ ィ ン不織 布
ニ ッケル水素電池
NiC10H
MH KOII
PP不 織 布
親 水性 ,ガ ス透 過性
,
自己放 電 防止
リチ ウム イオ ン電 池
LiCoO`
炭 素 有機電解 液
膜
ポ リオ レ フ ィン微 多了し
耐 電解 液 (有 機 溶 刑)庄
電 流通 断性
,
,
高強 度 薄膜
リチ ウム イオ ン電池
(ボ
リマー電解質
LiCo02
炭素
)
徊解液 含浸 ゲ ルポ リマー
同
i+電 解 液 含 浸性
(1'VDI), PAN, PE())
電解 質 ポ リマー
+ボ リ│レ フィン微多孔瞑
L
E
B
P
ロニ トリル,1'C:プ ロヒ レンカー ボネー ト
γ―ブチ ロ ラ ク トン,ヽ 1:水 素吸 蔵合 金,PAN:iド リア ク リ
ポ リエチ レン,PE():ポ リエチ レンオキサ イド,PI':ポ リプ ロ ピ レン
,
に配 向 した
た
る°.延 伸開孔 法 は,溶 融 ポ リマー を高伸長比 で引 き取 つた シー トを熱処 理 して得 高度
マーの結晶性 や配 向性 が重要
積 層 ラメラ構造 を延伸 して,結 品界 面 を剥離 させ て多子L形 成 す る.ポ リ
つ
る シー トを溶媒
最近 ,超 高分 子量 ポ リエ チ レンか ら成型 され た高結 晶性 か 面配 向 を有 す
。
マ ー電 池用 の電 解質 シー トは,微
中 で熱処理 して多孔形成 す る方法 が提 案 され てい る . また,ポ リ
マー (プ レポ リマー)と 電解液 の
多fL性 シー トに電解液 を含浸 し,膨 潤 や架橋 な どで円定 した り,ポ リ
jヽ
であ る
配 合組成物 をシー ト化 して成型 す る。
いな
リチウム系二 次電池 は,IT革 命 の キーデバ イ ス として, さらに高性能 化 に向 か うこ とは間違
い。電池 の進歩 と多様化 に伴 う種 々の要求 に対応 しうる多機能性 が セパ レー ター に も求 め られ る.ま
が
た,性 能・ コス トの両面 で,セ パ レー ター も含 めた トー タル システム としての電池設計 の最適化
今後 ます ます重要 になる と考 え られ る.
,
5
5.2
52A.
セパ レー ター お よび バ イ ン ダー
リチ ウ ム ポ リマ ー電 池 用 バ イ ン ダ ー。*
リチ ウ ム イオ ン電 池 と リチ ウムポ リマー電 池 '0
負極 に炭素 ,正 極 に LiCo02な ど複合酸化物 リチ ウ′、
塩 を使 用す る リチ ウム イオ ンニ 次電 池 は,
L
市後 5年 た らずで二次電池の相 当の部分 を占め るに至 った。 そのFH5に
,正 ,負 極 の活物 質 の性能向 :
と電解液 ,セ パ レー ター,バ イ ンダー`9な ど関連 材料技術 の大 きな
進歩 が あ った。 一 方,以 前 か ら
研 究 が行 なわれ て きていたボ リマー電池 もこの成功 に束」
激 され,あ るい は電気 自動車 用 な ど,独 自の
用途分野 を目指 して開発が活発化 して い る.本 節 は この剰iし い
電池の要素技術 であ るバ イ ンダー につ
いて扱 うが,そ の前 に「 リチ ウム ポ リマ ー
電池Jの 整理 を してお く必 要が あろ う
新 しい二 次電池 は リチウムが イォ ン種 として入 る こ とはほぼ2、
然的 で あ るが,ポ リマー につ いては
必 ず しも考 えて い る ことが一致 しない場合 も多い。筆者 は電
池の研究 者 で はないの で,文 献 な どを頼
りに分類 す る と,① lt池 の活物′[と してポ リマーが使 用 され
る もの 10,② 高分 子固体 (非 液体 )電 解
質 H'を 使用 した リチウノ
、(イ ォ ン)電 池,③ キャパ シタな どその他
,に 分 けられる.① はポ リアセチ
レン,ポ リチオフェンな ど p型 高分 子やポ リアニ
リン,ポ リピロール な ど n型 高分子 であ り,酸 化
還元で扱える電気容 量が大 きければ高性能なポ リマー電池が
可能なものである
.
一方,② のL4J体 (ブ F液 体あるいはゲル)電 解質は渡遡口)の
分類によれば,O sJt in pdymer,⑥
pdynner in sJt,o sdu● On h]pdymcr ttd)に
分類される.④ ∼oの 場合は活物質は必ずしも一
定 ではな く,金 属 リチ ウム を負極 に,複 合酸化 リチ
物
ウム塩 を正極 に した もの (研 究的事例 は多 い
),
炭素 を負極 に,複 合酸化物 リチウム塩 を正極 に し
有機溶 媒電解液 を (ポ リマー ト
有機溶媒 )で 置 き換
え た リチ ウム イ ォ ン電 池 のな ど多 くの 組 わ せ が
合
研 究 され て い る.二 次 電 池 の 電 解 液 が 水 系
(Nicd,NiMIIな ど)か ら非水 系 に移 った こ とは リチ ウム をイオン
種 として使用 す る とい う必 然性 が
あ つたが,活 物質 な い し電解液 をポ リマ ー にする こ
とは,無 機 系物 質 との比較 で大 きなメ リッ トを
見
出せ るこ とが ポ リマー電 池の存在 の 前提 にな ろ う
,
ポ リマ ー全般 の特徴 として は,軽 ぃ (金
属缶 が 省略 で きる場 合 も含 め),形 状 が 自由であ る
(フ ィル
ム,シ ー ト,不 定形 ),生 産性 が 高 い
(連 続 プ ロセ ス),安 全性 が 高 い (た だ し,無
機物 とは別 の意味 の
配慮 が必 要),な どが あげ られ,電 池 としての応 用範 が
囲 拡大 する f能 性 が魅 力で ある。 この 中 には,
現在 の有機溶媒電 解液 の 欠点 であ る44火 性 や缶 の破損 の
時 液漏れ を と りあえず,非 流動性 ,難 燃 性 `)
の グル状 電解液 の使用 で解決 しよ うとす る
方法 も含 まれ てい る 現時点 で, リチ ウム を含 むポ リマー
電池が工 業製品 として きゎ めて限 られた範 囲 で しか
使用 されて な い こ とを考 える と,本 格的 な工 業化
研究 は これか らで あ り,特 にバ イ ンダーは電池 の量産技 との
術
関連 で その性能が評価 され る ものだ け
に,現 在 は準備段階 とい え る状 態 であ ろ う。
5.2B
バ ィ ンダーの 必 要性 と多機 能化
リチ ウム イォ ン電池 に限 らず,二 次電 池の バ インダー は
以 下の 4つ の役 割 が基本 的 に求め られ るで
あろう ① 活物質(粉 状が多い)の 相互「結着」
,② 集電IIRへ の活物質層の
・七原秀― Shulchi St c.、 、ARA(三
徳化学工 業 (株 ).lt画 開発部 )
1接 着J,③
充放電過程で
II リチ ノ、系 二次電池
.ン
_バ
(a)点 で結薔
インダー
面で結■
集電板
(c)電 導 の口 害
活物質
集電板
図
2
活物 7trの 結着模 式 P
ベース ト状 の もの を形成 す る,な どである.図 2
の①② の保持,④ 製造段階 において塗工 ので きる
のイオ ン伝導 と電子伝導 (活 物質相 互 の電気
はバ インダーを模 式的 に描 いた ものであ るが,活 物質層
のような構造体 (実 際 は巻 き込 みや積
り
的接続 )を 継続 的 に維持 するのがバ イ ンダーの役割 であ ,こ
は大 きい. この うちでポ リマー電池 では活物
バ
層)を 歩止 まりよく生産する段階 で も イ ンダーの役割
エ
リマーでは可能性 が高 い),ゲ ル電解質 ではそれ自
質 自体 が結着,接 着性 を有す る場合や (リ アなポ
が必ず しもすべて必要 とはされないこともある
体が粘欄 な物質 であることがあ り, LttЭ ∼④
1。
ore社 の技術 Dを 基礎 とした も
のポ リマ ー リチ ウム イオ ン電 池 として,Belに
.
現在 ,工 業化段 階
これ
を併 用 (後 工程 で抽 出除去)し てお り,
の は,ゲ ル に可塑 剤 として ジブチル フタ レー ト(DBP)1り
リカ を構造材 として添加 してお り,上 記 の③
が工程 でのバ イ ンダーの役 目を果 た して い る。 また,シ
フ
ポ マーが (ポ リフ ッ化 ビニ リデ ン(PVDF)/六 ッ
の役割 を果た してい るようであ る. この電池で は リ
べ るように,電 解液 で溶 解 ない し強 く膨 潤 され た状
化 プ ロ ピレン(HFP))共 重合体 であ り,次 項 で述
ロセスでは
イ ンダー を別 に用意す る必 要 は現行 のプ
態 でバ イ ンダー を兼 ねた働 きを して い るので,バ
″)で は活物
パ レー ター を中間 に使 用 して は い るが,特 許 の図
ない模様 で あ る。 また,こ の例 で はセ
を大
された状態 で セパ レー ター として使用 され てい る (電 解液
質 を含 まな い PVDF層 が電解液 で溶解
いいがた い力).
パ
ー
量 に保持 す る作用 か らは,セ レー タ とは
の行 なわ れて い る電池 の 中 では,極 層 の構 造
この ように,ポ リマー電解質 とセパ レー ター は充放電
ン ピー
た して い る場合 が あ る.PVDFの 多孔質膜 が低 イ
保持 の意味 で バ イ ンダー と類似 の機能 を果
お)と して有効 で あ り,か つハ イ レー トで の放電 とサ イ クル 寿命 向上 が可 能 で
ダ ンスのセパ レー ター
い
バ
は従 来の リテ ウム イオ ン電池 の範囲 をあ ま り出 て
あ る こ とは よい例 で あろう 以上 の イ ンダー論
ム
るに従 って,高 分子 L■l体 電解質 と負極 リチ ウ
ない ところにあ るが,今 後 ポ リマー電池 が実用化 され
`い な ど「機能性 を もつた バ
ム ン ドライ トの抑制
との間 1つ の電気化学 的界面特性 の保 持 や リチ ウ デ
イ ンダー作 用Jが 求 め られ るようになろ う
.
5.2C.
バ イ ンダー に求 め られ る物理 化 学的特 性
マ
や電 解液 に対す る溶解 ,膨 潤 な どを含
リチ ウム イオ ン電池 に関す る この問題 は,ポ リ ーの耐熱性
139
5 セパレーターおよびバインダー
めて,成 書 を参考 に して いただ きた い20 化 学的 には酸 化性 の あ る正 極活物質 (酸 素 を多 く含 む複 合
酸化物 )と 還元性 の強 い負極 (リ チウム をイ ンター カ レン トした炭素,あ るい は リチ ウム金属 )に 対 し
て化学 的 に安定 であ る ことが必須 条件 であ る.正 極 との問題 はむ しろ,電 解液 が 当面解決 を迫 られ て
い るこ とであ り,バ イ ンダー は負極 での還 元 が明確 にな っていなか った点 が あ る。実際 に,Li/C電
PVDFを それ ぞれバ イ ンダー に使用 して充放 電 した
後 にポ リマ ー 表画 を X線 電 子 分光 で測 定 す る と
PTFEは 不 定形 炭 素 まで還 元 され て い るが
PVDFは 脱 HFし た ポ リエ ン構 造 で停止 してお り,自 ら不 動態化 す る こ とに よって安 定 なバ イ ン ダ
池 系 で ポ リテ トラフル オ ロエ チ レン (PTFE)と
21ヽ
,
ー として使用可能 であ る といわ れて い る
分子軌道 計算2の で求 めた レ ドックスウ ィン ドー か らは,PVDFは 他 の ポ リオ レフ ィ ンあ るい は フ
ッ素樹脂 と比較 す る と,I極 ,負 極 の広 い範囲 で安定 に使用可能 であ る.以 上 の説明 の中 で
,非 水 系
バ インダー を前提 としていたが,PTFEあ るいはスチ レンープ タジェ ンゴム
(SBR)の 水系 ラテ ックス
が工程上 の使 いやす さか ら今後 とも検 討 され るであ ろ う。 しか しなが ら
,ポ リマー系活物質 の構造 を
み る と,い ずれ もヘ テ ロ原 子を活性点 としたポ リマーで あ り,水 の存在 (微 量 の
残留 も)は 原則的 には
許 され な い ものであ ろう したが って,ぃ ずれ非水 系バ インダー に完全 に移行 す る と予 され
想
る。
5.2.D. PVDFお ょ び フ ッ素樹 月旨バ イ ンダ ー
現在市販 され てい る リチ ウム イォ ン電 池 の多 くに PVD「 が バ ィ ンダー と して使用 され てお
り,ま
た試験生産 中の 2,3の ポ リマー電池 1●
PVDFが 主 に検討 されているの で,
(カ
ー ド型 ,コ ィ ン型 キャパ シター)の バ イ ンダー に も
高分子量
PVDFは NMP(Ⅳ メチル 2-ピ ロ リ ド
ン)な どの極性溶媒 には 12 wt%程 度 まで溶 解 す るが
,溶 媒 を除去 して乾 燥 (結 品化 )後 は図 3の よ う
これ を中心 に述 べ た い
な結 晶状 態 を示 し,多 くの有機 電 解 液 に対 して,膨 潤 はす るが溶 解 は しない
特 性 を有 して い る (図
4)し か しなが ら,フ ッ素樹脂一般 の特性 として接着剤的効果 は低 く,接 着性 を強 く求 め る場 合 はマ
レイン酸成 分 との共重 合体 PVDF2η が 使 用 され て い る
.バ イ ンダー としての活 物 質 (こ の場 合 は黒
鉛 )と の結若 は結晶端 面 での PVDFの 結品化2つ で な され て い るよ うに
推定 され ,ま た 2,3の モ デ ル
実験 2の か らも同様 に結晶化過程 で結着が行 なわれてい る と考 え られ る
.
PVDFが リチ ウム塩 を含 む有機電 解液 中 で 高 い イォ ン伝 導性 を示 す こ とは早 くか ら注 日 され てお
り2o,パ ィ ンダー として も電池 の 中で イオ ンの流 れ を阻害 しない効 果 は め られ
認
るで あ ろ う。一 方
図
3 PVDFの 球晶 (NMP溶 液か ら生成
)
,
H
140
リチ ウノ、
系 二次電 池
¨
―
「
――
¨
0
5
¨
ヽ中回 9ooO、■興塗
12
│ ^_7,72謁 70融 4
¨
口
EP
ヽ
4P
DEC
EGDM
DMC
DEC
DEC
IEC DEC
+PC PC +γ
B[
γBL
有機電解液
図 4 KFポ リマ ー 11lα )の 有機 電 解 液 に対 ,る 膨 潤 率
ン グ リコール ジ メデ ルエ ー テ ル
ECDヽ 1:■ チ レ
PTFEや ポ リエ チ レ ン を バ イ ンダー に した場 合 は,電 解液 に は まっ た く膨 lさ れ な い の で,完 全 な
いが イオ ンの 流れ を阻害 す る因 子 に
電 気絶縁体 でか つ 非 イオ ン伝 導体 で あ り,膨 lと 溶解 の 心 配 はな
f・
f・
な る.
で ポ リマ ー
なお ,最 近 の 研 究 で ,有 機 電 解 液 を 多 く合 む (ボ リマ ー/plasucizer(電 解 液 )/Li塩 )系
動 はポ リ
と して PAN(ポ リア ク リ ロニ トリル ),PVC(塩 ビ)と I'VI)「 を比 較 す る と,電 気 化 学 的 挙
い
マ ー の 性 質 よ りも,多 量 に存 在 す る有機 電 解 液 の 特性 に依 存 して い る との デ ー タが 出 て るの で
PVDFの 特 異的 な効 果 (た とえば誘 電 率 が 高 い)で あ る こ との確 認 は さ らに検 討 が 必 要 で あ ろ う.実
溶 解 した場 合
際 の製 造面 で は,PVDFは 各種 の重合度 の ポ リマ ーが 製造 され てお り,溶 媒 (NMP)に
20,工 業的 に使 用 で きるパ イ ンダー 系 で あ る
に広 範 囲 な粘 度 が選 択 可能 で あ り
,
.
5.2E.(PVDF/電
解液 )系 の 特性
せ つた も
L述 の よ うに,今 後 のパ イ ンダーは同体 (ゲ ル)電 解液 やセパ レー ター との機能 を もあわ も
そ こで問題 になるのは,ま ず イオ ン導電率 の向 Lと 広範囲 な温度 での機械
か)で 流れ て しま うの は
的物性 の 平坦化 であ る.低 温 です ぐ同化 す る ものや,高 温 (最 高 で llll)C程 度
て い る点 で あ り,PVD「 と
使 用上好 ま しくな い。 この点 は先 の Bencore社 の電池 で も特 に注意 され
20(HFPと の共重合体 )が 採用 されて い る.lX1 5
して ELF Atochem社 (現 Atonna社 )の KynarFlex●
マ
じ
は,構 造 パ ラメー ター (異 種結 合 %+HFP%)の 異 な る市販 の PVDFホ モ ポ リ ー (図 の左端 )と 司
の E′
く市販 の H Fl)と の コポ リマー を有機電解液 に溶 解 (166%)し た ものの ■ 転 移 温度 (昇 温過程
の として期待 されて い る
変化 ,図 6の ビー ク温度 すなわち溶 け始 め)と
,昇 温 して行 な って 80・ Cで の ど
をプ ロ ッ トした もの
であ る
この図 か ら,1'VDFは ホモ ポ リマ ーで -13・ C,コ ポ リマ ー で は -30・ C付 近 まで (い ず れ も昇温 4C
min で測定 )使 用 で きる可能性 が あ る。 な お冷却 (同 )で は,ホ モ,コ ポ リと もに -38∼ -44Cで 固
この試料 の DSC(示 差 熱量分析 )を み る と,図 7の よ うにゲ ル
つて お り,ホ モ ポ リマ
べ
状態 の L(昇 温 10 C min l)は ポ リマー単独 の τn(同 )に 比 てか な り低 くな
27、
化 し著 しい過 冷却現 象 が み られ る
5
セパ レー ター お よび バ イ ン ダー
oヽ﹁冊J議 .
ド Ц霜 い鰤
pヽ
0
-5
-10
・ ■転移温度 (昇 温)
・ ε Pa exp5080℃
線 (ε Pa exp5080℃
)
■●パラメーター ONV+II P)ん
図
"!%
5 PVDFの 構造特性 と PVDF/有 機電解液 ゲルの
温度特性
2 00oo
1 5111Xl
O C●
10000
05000
0000
♂。
赫 ・赫 δ
柿
…
…
温度ノ℃
図 6 粘 弾 性 スペ ク トロ メー ター モ ー ド :圧
縮 ,正 弦 渡 l Hz.昇 温速 度 :4 C min t PvI)Fグ ル
サ ンプル 3.PVDFパ IFI'グ ル :サ ンプル 8,9,lo.
:
pヽ ヽ︱● ツ6︶“頭薔黎
200′ ―
1801
160
140
12o
'00
80
6o
40
PVOF12F,
PvDF12F 6Fla PVDF 2F 6F,o Pvof゛
Flc
=、
10C min
I Il r.(Me[r
I
i--{cet)
図 7 1'VDFの 溶融温度 (ポ リマーおよびゲルのカロ
熱過程の DSC測 定).
― (図 の左端 )で
Cで あ る.先 の図 6の Eは ほぼ この 端 か ら低 下が まってお
始
り,ゲ ル の特性評
価 に DSc測 定 は有効 で あ る.ゲ ルヘ の構造
保持 のバ イ ン ダー として は 高重合 度 の ホモ ポ リマー
80・
(サ
ンプル 3)が ここで は最 も有効 で あ る PVDFは
この よ うに コポ リマ ー組成 でか な り大
。
きな特性 の調
整が可能 であ り,今 後 の実用化 が期待 され る.
142
H
、
リチウノ
系二次電池
ポ リマー (プ ラスチ ック)の よさは,射 出成形 ,押 出成形 な どの方法で効率 よ く製品が生産 で きる こ
とであ る
ポ リマー電池が射 出成形機 か ら次 々 と出 て くる よ うにはなか なか な らないで あ ろうが,押
出成形 で部材 を連続 的 に構成 し,巻 き取 り(あ るい は積層 )し てポ リマー電池 ので き上が りにな るのは
そ う遠 くない時期 に実現 す るであ ろ う.寿 命 が尽 きた電池 を再 び成型機 に入れ て再 生で きるようにで
もなれ ば,環 境 負荷 の低減 に もな り,そ の よ うな電池 の出現 を期待 した い
5。
3.導
電性添加剤
*
5.3.A. 導 電性 添加剤 に要 求 され る特 性
には,電 子伝 導体
リチ ウム系二 次電池 の活物質 ,特 に コバル ト酸 リチウム に代表 され る正極活物質
であ る。導電剤 として は一般 に天
としての役割 を担 う導電性添加 剤 (以 下導電 剤 と記述 す る)が 不可 欠
が
れ らには主 として以下 の特性 が要求 さ
然黒鉛 やカー ボ ンプラ ックな どの炭素粉末 が用 い られ る ,そ
れ る。
・ 少量 の添加 で導電性 を発現 し,電 池 の充放 電 に悪影響 を及 ぼす不純物
い
・ カー ボ ング リッ トな どの層雑物 が少 な く,分 散性 ,成 膜性 が よ .
・ 電解液 に対 して安定 である こ と。 た とえば官能基 の多 い炭素材 料
が少 ない。
で は電解液 と化学 反応 を起 こす
可能性 があ る
―
ンプラ ックであ り, とりわ けアセチ レンブラ ックが広
導電 剤 として― 般的 に用 い られ るのが カーボ
した り20,極 端 に高 い比表面積 を有 す る高吸
く使 用 されてい る。 また,結 晶性 の高 い人造黒鉛 を使 用
29こ とで,電 池 の性能 をFOl上 させ る こ とも試 み られ て い
油量 の導電性 カー ボ ンプ ラ ックを使 用 す る
い ことも行 なわれ てい るようであ るが.導 電剤 の具
る.さ らには 2種類 以 上 の導電剤 を混合 して用 る
ノウハ ウに属 し,あ ま りおおや け にされて いないのが実状
体 的配 合 や使 用方法 は電池 メー カー各社 の
であ る
5.3B
アセチ レンプ ラ ックの特性・
3°
)
池の導電剤 として用 い られ て いる代
アセ チ レンプ ラックは,マ ンガ ン乾電池 や各種 の一次,二 次電
レンは炭化 水素 の中 で も最 も生成 エ ンタル ピーが大 き く,自
表的 な カーボ ンブ ラ ックで ある。 ア セチ
レンプラ ックを生成す る。断熱下 における理論分解温度 は
己発熱 に よ り連続的 に熱分解 されてアセチ
い
となって,他 の カーボ ンプラ ックにはみ られ な
約 2.600・ Cに 達 し, この高 い反応温度 が主 た る要因
した凝集形 態 (ス トラクチ ヤー と称 さる),表 面官能
特徴 を発現 す る.具 体 的 には,高 い結 晶性 ,発 達
い こと,な どが あげ られ る.不 純物 が少 ない こと
基 や カーボ ング リッ トといつた不純物 が著 し く少 な
レンガスを原料 として い る ことと,高 度 な不純物 除
は重要 な特性 であ るが, これ は純度 の高 いアセチ
レンプラ ックの主た る用途 は,電 カ ケー プルや導電
去 プ ロセスに よるものであ る。電池以外 のアセチ
この分野 にお いて は高純 度 が 要求 され るので,工 業
め
性 ゴム な どの電気・ 電子関連 が大部分 を占 る。
32∼ 3.L
の除去 を 目的 と した工 夫 が な され て い る
的 なア セチ レンプラ ックの製 法 にお いては,不 純物
るア セチ レンプラ ックでは,そ の特性 が あ る程 度限 ら
単 な るアセチ レンの熱分解 のみ に よつて得 られ
・ 石塚芳 己
Yo● imi
I゛ HZt Kヽ (電 気化学工 業株 式会社 )
5
表
2
セパ レー ターおよびバ イングー
アセ チ レ ンプ ラ ックの特性 (電 気化 学 ]:業 測 定 に よる)
市販 アセチレンプラ ック特性範囲
他種 導電 カーボン特性範囲
く一次粒子,疑 集形態〉
一 次粒子径
25-50 nm
140m2g-1
130∼ 260 ml(100g)'
比表 面積
35‐
DBPn吸 収量
か さ密度
0 03-0 3gcm-3
l;-60
nm
40-l,000 m'zg tU.L
150-500 ml (100 c) '
{)
l-0
6gcm l
く
結品性 〉
2 5∼ 3
黒鉛性結 晶層平均厚 み
黒鉛性結品 層面間距離
8nm
-2.0
0 35nm
nnr
0.35-0.37 nm
く
純度因子〉
l-100″ gm-2
表面酸素 濃度
∼ 01%
押 発分
a)
粗粒 分 (45μ nl L)
-l ppm
イオ ン性 不純物 レベル
-10 ppm
I
lj-l
,00019 m-,
a.2-'2%
& ppm-&Fi
ppm
&tr ppm-&l-ppm
t7t'w7tv-t.
図 8
れた もの とな って しま うので,不 完全燃焼 を利 用 した
も,L業 的 に生産 され ている町 0.
高比表面積品や 冷却 ガス を用 い た低比 表面積 品
表 2は ,ア セチ レ ンプラ ックの特徴 をカーボ ンプ ラ ックの
特性 値 として ま とめた もので あ る。表 2
には,他 の導電性 カー ボ ンプ ラ ックの特性値 の範 囲 も示 してい
るので,ア セチ レンプ ラ ックの特徴 が
理解 い ただ けると思 う. また,EX1 8,9は ァセチ レンプ ラ ックの
電子顕 微鏡写 真 であ る.発 達 した ス
トラクチ ャー と結晶子 の様子 が よ くうかが ぇる. この ス トラクチ
ャー は弾性 に富 んで い るため,活 物
質 の充放電 に よる体積膨 張 ,収 縮 に追随 して導電経路 を維持 す る
役割 を果た してい る もの と考 え られ
る。 実験室 レベル での活物質 の性能評価 法 として,ァ セチ レンプラ
ック とポ リテ トラフルオ ロェ チ レ
ン(PTFE)を 予 め複 合化 した導電性 バ イ ンダー を使
用 す る こ と も提 案 され てお り3'ヽ 市販 され て い
H
リチ ウン、系 二次 電 池
図 10
ン
、イオ ンニ次電池分野 にお い て工業的 に使 用lさ れ て い るアセチ レンプラ ックは,マ ンガ
る. リチ ウノ
であ るが,造 粒 された形態 の粒状
乾電 池 用 に用 い られ る もの と同 じ く粉状 の形態 を した もの が一般 的
か さ密度 も高 く,粉 状 の も
ア セチ レンプラ ックも使用 され てい る.粒 状 アセチ レンプ ラ ックは比較的
つつ あ る.
の よ リハ ン ドリングが容易 であ る ことか ら,最 近 その比 率 は徐 々 に高 ま り
5.3C.他
の導 電性 カー ポ ンプ ラ ック
の形成 が その要因 とな っ
アセチ レンプ ラ ックの導電性 は主 として一 次粒 子の運 な りに よる導電経路
があ る。 導電性 カー ボ ンプラ
て い るので,配 合時 の機械 的 ス トレスの影響 を受 けやす い とい う難 しさ
トリックス中での 1旨 積率 を
ックの形態設計 において は,一 次粒子 の小粒径 化 や中空構造化 に よ り,マ
カー ボ ンプ ラ ックが,重 質油 ガ ス
自め る こ とも有効 な方法 である. この考 え方 による代 表的 な導電性
いが,重 質油 のガ ス化 プ ロセスにお いて副生 す る
化 プ ロセスの副生 カー ボ ンであ る。詳 し くは触 れ な
を有 す る高比 表
カーボ ンは,高 温 の酸素や水蒸気 に よつて浸食 を受 けて賦活 され,そ の結 果中空構造
に よる導電性 カー ボ ンプラ ック,ケ ツチ
面積 の カーボ ンプ ラ ック とな る.図 10は ,こ の よ うな製法
の空 隙 が発達
ェン EC(ケ ッチ エ ンプラ ックイ ンター ナ シ ョナ ル製 )の 電子顕 微鏡写真 で あ る.粒 子 内
レー ドで は 1,200n12glに 達 す る。
して い る様子 が わか る。 その比表 面積 は約 800m2g',特 殊 グ
カー ボ ンプラ ック として用 い
ヶ ッチ ェンプラ ックは,ア セチ レンプラ ック と並んで代表的 な導電性
が行 なわ れ て い る.少
の
られ てお り,現 在 では この カー ボ ンを製造 す る ことを目的 として重質油 改質
ような高比表面積 品が,高 純度 を要
量の添加 で導電性 を発現 させた い用途 にはケ ッチ エンプ ラックの
のが一般的 で あ る。
求 され る分野 にはア セチ レンプ ラ ックが用 い られ る
It
r) t5a\4,l;8 19689fgt*, f.!r\s!i 16 l0ll9
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llt
tut
lhr'
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,2み 「
Jム リ
′`ゞ
特開
1直
. 52 239 (1990)
`′
`
7521050,Fl平
′
5222236,Fl平 5222237
5
セパ レー ターお よびパ イ ンダー
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