豆類基金 コーナー ペルー豆類事情に関する調査結果の概要 村 崎 史 郎 (財)日本豆類基金協会では、平成22年度 よって異なるが0.6~4t / ha である。 の海外豆類事情調査を平成22年9月18日 (土)から26日(日)まで、沼田晃一団長 (1)海岸地帯(コスタ)での豆類生産の特 以下6名により、ペルーを対象に実施した 徴 のでその概要を報告する。 豆類の栽培面積は4万7,900ha で、収穫 量は乾燥豆類6万 t、生鮮さや豆のキマメ 1.ペルーにおける豆類の生産、輸出等の 約13万 t となっている。高品質の豆類が採 状況 れるコスタのランバイエケ州、ピウラ州、 2009年 の ペ ル ー 豆 類 栽 培 面 積 は21万 リマ州バランカ郡では、乾燥豆の分類工場、 6,000ha で あ り、 乾 燥 豆 が25万1,000t、 生 生鮮豆3の冷凍工場、缶詰加工工場が整備 鮮 さ や 豆 1 が17万6,000t 生 産 さ れ て い る。 されており、輸出が推進され、結果として (表1及び表2) この生鮮さや豆を生鮮粒 状豆2(さやを除いた状態)で計算すると 8万 t になる。生鮮粒状豆として栽培され るのは、国内需要向けのソラマメとエンド ウ、輸出向けのキマメである。乾燥豆とし て収穫されるものの中で、多く栽培されて いるのは、インゲンマメ、エンドウ、ソラ マメ、ササゲの4種類で全体の89% を占め る。乾燥豆の単収は、品種、生産地などに 1 この報告では、生鮮さや豆とはサヤインゲ ンのようにさやごと野菜として食される豆を いう。 2 生鮮粒状豆とはグリーンピースのように莢 を取り除いた生鮮の豆をいう。 3 生鮮豆とは生鮮さや豆及び生鮮粒状豆をい う。 むらさき しろう (財)日本豆類基金協会 企画調査部長 - 71 - ペルーの地形 表1 ペルーにおける豆類の生産量、主産地及び収穫時期 ⒳ 㘃 ࠛࡦ࠼࠙ ࠨࠨࠥ ࠗࡦࠥࡦࡑࡔ ࠫࠗࡑ ࡌࡆࠗࡑ ࠠࡑࡔ ࡅ࡛ࠦࡑࡔ ࡦ࠭ࡑࡔ ࡚ࠢ࠻࠙ ࠰ࡑࡔ ࡈࠫࡑࡔ ࡞ࡇࡦ ߘߩઁ⼺ ⸘ ↢↥㊂ V ̆ ̆ ̆ ̆ ̆ ਥ↥ ࠦࠬ࠲ 㨪 ࠞࡂࡑ࡞ࠞ ࡌ࡞࠲ ࡇ࠙ ࡠ࠻ ࠞࡂࡑ࡞ࠞ ࠕࠠࡃ ࠗࠞ ࡦࡃࠗࠛࠤ ࠗࠞ ࡦࡃࠗࠛࠤ ࡇ࠙ ࡦࡃࠗࠛࠤ ࡦࡃࠗࠛࠤ ࠗࠞ ࠞࡂࡑ࡞ࠞ ࡌ࡞࠲ ࡌ࡞࠲ ࠞࡂࡑ࡞ࠞ ࠢࠬࠦ ࡊࡁ ࡦࡃࠗࠛࠤ ࡌ࡞࠲ ⓠᤨᦼ ࠪࠛ ࡞ࡃ 㨪 ർ㧦ᐕ㑆 ਛ㧦㨪 㨪 㨪 㨪 㨪 㨪 㨪 ർ㧦㨪 㨪 ർ㧦㨪 ਛ㧦㨪 㨪 㨪 㨪 㨪 㨪 㧔ᵈ㧝㧕↢↥㊂ߩᢙ୯ߪ(ޔ#15#6 ߮㧔,'641 ⺞ᩏ㧕ߩ ᐕ↥ 㧔ᵈ㧞㧕ਥ↥ߪ↥↢ޔ㊂ߩ㧞⋵ 雇用拡大、農家収入の増大をもたらしてい 作物を栽培している会社が、土壌の肥沃性 る。コスタ北部では、稲作用の灌漑用水に と衛生、病虫害管理の観点から豆類との輪 優先権が与えられ、その結果として土壌中 作にも関心を持つようになっている。 の塩分含量が急激に増え、土壌の質が急速 に劣化し始めている。 (2)山岳地帯(シエラ)での豆類生産の特 コスタでは10年ほど前から、農産物の輸 徴 出を行っている大手農業会社が、荒地に地 シエラにおける豆類生産は、14万5,600ha 下水を使って灌漑を行い、近代技術を導 の農地で約14万 t の乾燥豆と6万 t の生鮮 入してアヒ(トウガラシ)、ブドウ、果樹、 豆が採れる。ケチュア地帯ではトウモロコ 綿花、トウモロコシなどを栽培している。 シとの輪作で、主につる性のエンドウ、ソ こうした、高い技術力・競争力がある輸出 ラマメ、レンズマメが栽培されている。山 - 72 - 表2 ペルー豆類生産の推移 (30年間 ) (単位:ha,t,kg/10a) ᐕ ࠗࡦࠥࡦࡑࡔ╬ࡔࡑࠗޔ ᩱ ၭ 㕙 Ⓧ ࠰ࡑࡔ ࠛࡦ࠼࠙ ࠨࠨࠥ ࡞ࡇࡦ ࡦ࠭ࡑࡔ ࡅࠦࠦࡑࡔ ߘߩઁ ว⸘ ࠗࡦࠥࡦࡑࡔ╬ࡔࡑࠗޔ ↢ ↥ ㊂ න ࠰ࡑࡔ ࠛࡦ࠼࠙ ࠨࠨࠥ ࡞ࡇࡦ ࡦ࠭ࡑࡔ ࡅࠦࠦࡑࡔ ߘߩઁ⼺ ว⸘ ࠗࡦࠥࡦ╬ࡔࡑࠗޔ ࠰ࡑࡔ ࠛࡦ࠼࠙ ࠨࠨࠥ ࡞ࡇࡦ ࡦ࠭ࡑࡔ ࡅࠦࠦࡑࡔ ⾗ᢱ㧦(#1 (#156#6 間のユンガ地帯の平野にも水のある場所が (4)ペルーでの豆類消費 あり、アルビア(白いインゲンマメ)、カ ペルーにおける乾燥豆類の年間1人当た ナリオ(黄色いインゲンマメ)といった豆 り消費量は1996年の6.3kg から2008年には がかなり栽培されている。 8.25kg へ増加している。また、政府の給 食プログラムによって貧困層での豆類の消 (3)熱帯雨林地帯(セルバ)での豆類生産 費が増加している。また、高所得層でも健 の特徴 康食品として豆類の消費が増えており、今 熱帯雨林地域高所のサンマルテイン州、 後とも国内消費は増加傾向である。 ウカヤリ州、ワヌコ州で2万1,500ha の農 地で、バナナ、キャッサバ等と混作されて (5)豆類の輸出 いる。なお、ササゲとインゲンマメは、川 ペルーの豆類の輸出は1990年代に始まり、 水のない乾季に、低地部の集落に近い川底 2008年には、42ヵ国へ27種類の豆を輸出し でも栽培されている。 た。主なものは、生鮮キマメの缶詰と冷凍 - 73 - 品、生鮮野菜としてのキヌサヤ、乾燥豆で イ)、ヒヨコマメ、レンズマメ等が500g あ は第1位ササゲ、第2位ラージライマ(ラ るいは1ポンド(454g)の袋入りで売ら イマメ)、第3位はカナリオである。なお、 れていた。ほかに、カット野菜と一緒の棚 豆類は農産物の中では、1位アスパラガ で、野菜としてサヤインゲン、サヤネンド ス、2位パプリカ、3位ブドウ、4位アー ウに加え、ソラマメのむき身も売っていた。 ティーチョークに続く5位の輸出品目であ (表3) る。ペルーで栽培されている10種の豆類の また、庶民が買い物に行く市場「メルカ ド MERKADO」を視察した。豆は、穀物 うち、8種が輸出用に栽培されている。 豆類の輸出は、政府の「豆類輸出振興特 商の商いで、米、麦、トウモロコシ、など 別プログラム」に沿って、1996年の2,900t、 と一緒に並ぶ。1キロ当たり3~5ヌエボソ 390万 ド ル か ら、2008年 に は5万2,900t、 ルの値札が立っており、先のスーパーに比 6,610万ドルへと大幅な増加となり、米国 べ約半額の値段であった。値引き交渉すれ が最も重要な輸出先で49%を占め、以下、 ば、相当負けてくれるとのこと。 英国(3.7%)、ポルトガル(2.9%)、プエ ルトリコ(2.9%)、コロンビア(2.8%)の 順になっている。 (6)豆類の輸入 ペルーでは、国内需要を賄いきれないた め、何種かの豆類を輸入している。エンド ウ、レンズマメ、その他豆類の輸入は、数 年前から増える傾向にあり、1996年の3万 5,000t、1,900万 ド ル か ら2008年 に は 4 万 写真1 リマ市内の市場メルカドの乾物屋(豆を販売) 3,000t、金額にして3,100万ドルを輸入して 注)値札数字は、1kg 当たりのヌエボソル(S/.= 約30円) いる。 (2)ランバイエケ州豆関係者セミナー 2.主な訪問先での調査概要 ランバイエケ州チクラヨ市のホテル会議 (1)スーパーや市場メルカド 室において、当調査団の訪問を歓迎して、 乾燥豆などは、米等の穀物や雑穀、乾燥 バレイショ等と同じ棚に並べられており、 ランバイエケ州内の豆類生産関係者がセミ ナーを開催し、これに参加した。 インゲンマメ(カナリオ、アルビア、カバ 近年ペルーではアスパラガス等の農産物 レロ等)、ライマメ(ラージ、ベビー)、ソ 輸出が盛んなためか、ランバイエケ州は小 ラマメ、エンドウ、ササゲ(ブラックア 規模な経営が中心でありながら大規模農業 - 74 - 表3 リマ市のスーパー(PLAZA VEA)での乾燥豆の販売価格 㧝ⴼ㊀㊂ I㧕 ຠ *CXCXGTFG#PVG㧔࠰ࡑࡔ㧕 *CXCRGTWCPKVC㧔࠰ࡑࡔ㧕 ੇ (TKLQNECUVKNNC㧔ࠨࠨࠥࠗࠕࠢ࠶ࡉޔ㧕 ῎ (TKLQNECPCTKQ㧔㤛⦡ࠗࡦࠥࡦࡑࡔ㧕 ⼺ (TKLQNECDCNNGTQ㧔⊕⦡ࠗࡦࠥࡦࡑࡔ㧕 2CNNCTGUDCD[㧔ࡌࡆࠗࡑࡔ㧕 2CNNCTGU㧔ࠗࡑࡔ㧕 㧝ⴼߩଔᩰ ࠛࡏ࠰ 㨁㧿࠼࡞ 㧔㩯㧕 ࡞㧔5㧕 㧔㧐㧕 ᵈ㧦㧝㧕ߎߩࠬࡄߪࡑޔᏒߩ㜞⚖ቛⴝߦࠆ㜞⚖ᐫߢߞߚޕ Ꮢ႐㧔/'4-#&1㧕ߥࠄߩߎޔଔᩰߩ⚂ඨಽએਅߣߩߎߣޕ 㧞㧕ଔᩰߩ឵▚࠻ߪޔ5߮ >ࠍ↪ߚޕ 経営が盛んでササゲ、キマメ、インゲンマ 州を分担している。研究員は10人、補助技 メ等の豆生産が多いことから、日本向けの 術者、作業員等を含め総勢75人で試験・研 小豆生産に強い関心があり、栽培、我が国 究を実施している。圃場はトウモロコシ→ での小豆価格、加工品について質問、輸出 綿→豆→トウモロコシの輪作体系で回して の要望等があった。 いる。豆はこの試験場で担当しているが、 団員の一文字桂次さん持参の甘納豆を、 日本での豆の利用形態の例として、セミ 人員、研究費ともに少なく貧弱な体制で育 種までは手が回らないとのこと。 ナーの会場で参加者に試食してもらったと 小豆栽培圃場は、大変乾燥しているため、 ころ、大変好評で、製造方法を教えて欲し 点滴灌漑のパイプが巡らされ、中国産とカ いとの要望があるほどであった。 ナダ産の種子を用いて栽培していた。圃場 の特質もあるのか、塩類が土壌表面に出て (3)国立農業研究所ビスタ・フロリダ試験 おり、茎や葉はいずれも貧弱な姿であった。 場 チクラヨ市カレテラにある農業省付属の 国立農業研究所(INIA)のビスタ・フロ リダ試験場を訪問し、所長から概要の説明 を受けた後、小豆の試験栽培の圃場を視察 した。 ビスタ・フロリダ試験場は、ペルーに24 ある INIA の試験場のうち最も圃場面積の 大きい試験場で、総面積350ha の圃場面積 270ha であり、ペルーの北部海岸地帯の4 写真2 国立農業研究所ビスタ・フロリダ試験場で の小豆栽培 - 75 - イ.大規模キマメ栽培圃場 (4)ランバイエケ州パコラ地方の農場 チクラヨ市中心部から約30~40km 北の 視察した大規模にキマメを栽培している ランバイエケ州のパコラ(Pakora)地方 圃場は、1枚で27ha あり、経営している で豆等の食品加工会社 Procesadora S.A.C 会社は全体で約3,000ha の農地で各種作物 (元農業大臣アルフォンソ・ベラスケス氏 を栽培していて、この畑はごく一部とのこ 経営)が試験栽培している小豆の試験栽培 と。このような大規模栽培でも、生鮮莢の 圃場の視察と大規模キマメ栽培圃場の視 収穫作業は手作業であり、水さえ与えれば 察を行った。水稲の栽培が多く灌漑施設 何回も収穫可能で、収量は10t/ha とのこ が多くある。この地区は、インゲンマメ とである。用水の手当は、井戸水をポンプ 等いろいろな豆を生産しているが、ササ アップしてホースで畑まで引いてきて畝立 ゲ(ブラックアイ)が最も多い、キマメ てた畝間に給水している。 (Pigeonpea)の栽培も多く、生鮮豆を缶 詰等に加工して出荷している。キマメ缶詰 は主に北米に輸出されている。 ア.小豆の試験栽培圃場 2~5ha の小規模農家を対象に小豆の 試験栽培を実施している。圃場の土壌は、 非常に細かい粘土質で、乾季のため表面が 固くひび割れるほどであった。圃場は畦が 写真3 缶詰で出荷されるキマメの大規模圃場(27ha) あり、一枚は20~30a ぐらいの面積で、用 水はアンデスからの川水や伏流水を井戸で (5)ランバイエケ州議会 ポンプアップして用いている。 ランバイエケ州政府庁舎に伺い、議会議 試験栽培の小豆は栽培時期が二通りあり、 長ベコラ氏と次席のロハス氏を表敬訪問し 一つは花がついた時期、もう一つは収穫の た。議長からは、ランバイエケ州は、遙か 時期のものであった。花の時期の小豆は、 昔のモチカ文化の時代には、豆がとても重 草丈はせいぜい30cm ぐらいだが、試験場 要な作物で広く栽培されていた。ところが 圃場のような塩害は見受けられなかった。 近年、栽培面積の多い作物である稲作とサ 収穫時の圃場は、小豆1株に25莢ぐらいつ トウキビはともに、用水を沢山使う作物で いて、粒は小さいが1莢に7~8粒入って あり雨の降らない土地柄から、土壌の塩類 おり、収量は80~90kg/10a 程度であった。 集積をもたらす作物である。この州の将来 の農業を考えると、塩類集積の課題がある ので、今後、豆作を広く行いたいとの話が - 76 - あった。 (6)国際食品博覧会 ペルー農業省、輸出協会(ADEX)等が 主催する国際食品博覧会(xpoalimentaria Peru2010; 開 催 日 9 月22、23、24日 ) が リマ市内で開催されており、豆の取扱等を 見学した。博覧会全体は284ブースに分か れて、農産物、加工品、水産物、酒を主体 写真4 ペルー農業大臣ラファエル・クエベド氏 (中央)表敬 に、機器、機械や銀行輸送等の間接部門ま でが出展していた。 豆は概ね、トウモロコシ、キヌア、米、 乾燥トウガラシなどと一緒に展示され、商 (8)ラ・モリーナ国立農業大学 談も行われており、これら乾物と同じよう リマ市内に立地し、1902年に設立された に流通しているものと思われる。また、ア ペルーの農業、畜産、森林、漁業、食品 ンデス特産のマカ、サカインチ(別名イン 工学等の教育・研究分野で指導的役割を カピーナッツ)などペルー特産食品や、マ 担っている大学であり、学生数は約5,000 ンゴー等の熱帯果実、アスパラガス、パプ 人、本部キャンパスは140ha で、南アメリ リカ等の野菜、ペルー産のワインやピスコ カ有数の農業大学である。 Jesus Abel Mejia Marcacuzco 学長及び も展示され、ペルーの作物、食品加工品の Jorge Aliaga Gutierrez 副学長を表敬した。 多様性と輸出志向がよく分かった。 また、大学院穀物豆コースの主任教授で あるカネマラ Félix Camarena M. 博士及 (7)ペルー農業省 リ マ 市 ラ・ モ リ ー ナ 地 区 に あ る 農 業 び アメリア Ing. Mg.Sc.Amelia HuaringaJ. 省にて、ラファエル・クエベド(Rafael 教授からペルーの豆事情について講演いた Quevedo Flores)農業大臣を表敬訪問し だいた、概要は、以下のとおり。 た。副大臣にもご同席いただき、本調査団 ・インゲンマメのカナリオ品種(黄色でペ の目的を説明したのち歓談した。農業大臣 ルーの主要輸出品種)や他もマメについ から、インゲンマメはペルー原産でもあり て大学で研究プロジェクトがある。 豆は大事な作物である。今後、農産物の輸 ・ペルー原産の豆は、インゲンマメ、ライ 出、特に豆に期待している。豆について、 マメ、ルピナス・ムタビリス、タチナタ 日本の需要、栽培技術、加工技術を知りた マメ、クズマメ(根茎を食す)であり、 いとの話があった。 うち経済的に利用している豆はインゲン - 77 - マメ、ライマメである。他にも、海外か 日(Lunes de Lenteja)」があるように、 らペルーへ導入されたダイズ、ササゲ、 豆は所得の低い層を中心に、国民の食生 キマメ、リョクトウ、ヒヨコマメ、レン 活に深く日常的に組み込まれている。 ズマメ、ソラマメ、エンドウ、フジマメ が栽培され、多種・多様な豆が気候条件 に応じて栽培されている。 ・ポップコーンのように熱をかけると爆裂 膨張するポッピングビーンと言われる ヌーニャ Nuna というインゲンマメの 種類があり、アンデスの高地で栽培され ている。 ・ルピナス・ムタビリスに注目している。 写真5 山羊肉の煮込みと豆の煮込み (ペルー豆料理の例) タンパク含量が40%、脂質含量が20% と ダイズに比肩できる高タンパク高脂質の ・ペルーの経済規模は広島県とほぼ同じ規 豆であり、標高3,000~3,800mの高地で 模である。南米ではブラジルとペルーの 栽培できるが、アルカドイドを2~4.4% 経済が大変好調である。ペルー人は、日 含有している。 系人も多く、日本製品への信頼も厚く大 ・豆の品種改良の中心機関は、隣国コロン 変に親日的な国である。 ビアのカリにある国際熱帯農業研究セン ・ペルー国民は、ブラジルにシンパシーを ター(CIAT)であり、CIAT が開発し 感じている。なお、チリ、エクアドルと て品種も多く栽培されている。また、経 は過去の戦争の経緯もあり、ライバル視 済的に成り立つより良い品種作出のため している。 に本大学や農業省の交配技術を用いて品 ・ペルー経済は、近年の非鉄金属相場が好 種改良に努めている。 調なこともあり、輸出が好調である。輸 出品は銅、亜鉛、銀等が多いが、魚粉、 アスパラガス、アーティーチョーク、パ (9)JETRO リマ事務所 ペルーで人気のサッカー、バレーボール、 プリカ等の農産物も増加している。貧富 サーフィンといったスポーツを話題にしつ の差は大きいものの、他の国と違い貿易 つ、石田達也所長からペルーと日本の関係 の利益が一般の国民にも回ったため、国 についてご説明いただいた。主な内容は以 内消費も好調である。 ・日本とチリの EPA 交渉が現在進められ 下の通り。 ・ペルーには、月曜日に豆と食べるとお 金 持 ち に な る と い う 格 言、「 豆 の 月 曜 - 78 - ており、ペルーは農水産物の輸出に大変 関心を持っている。 の重要な産地となる素地を持っていると思 3.調査結果のまとめ ペルーは輸出主導で好調な経済を維持し われた。 ており、活気に満ちていた。近年、農業分 また、ペルーはバレイショ、トウモロコ 野でもアスパラガス、パプリカ等の輸出が シ、トマト、トウガラシの原産地でもあり、 増大しており、豆類についても輸出志向が 豆を始め多様で新鮮な食材が豊富なうえ、 強く感じられた。また、ペルーはインゲン 植民地時代以降に形成されたペルーの食文 マメやライマメの原産国であって古くから 化は大変魅力的であった。ペルーには「豆 栽培してきた歴史もあり、また、今回調査 の月曜日」という格言があり、豆は様々な した北部海岸地帯には、灌漑をすれば優良 料理に使用されて日常的に豆が食べられて な農地となる土地が広がっていることから、 いた。 生産技術、流通等に課題は多いものの、豆 - 79 -
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