防災情報サービスのクラウド化とクラウド型コンタクト センタソリューション

特集 I
CTを駆使した真の価値を創出する
NTTアドバンステクノロジの新中期経営戦略
3 クラウド
防災情報サービスのクラウド化とクラウド型コンタクト
センタソリューションの展開に注力
オンプレミスの SI ビジネスから脱却しベースロードビジネスの拡大を目指すため「クラウドソリューション」事業に本格的に舵をきっ
た NTT アドバンステクノロジ(以下、NTT-AT)
。
当面のターゲットとして豊富な導入実績を誇る総合防災情報サービスのクラウド対応と、
MCS(MatchContactSolution)を基盤にしたクラウド型コンタクトセンタソリューションの取組みを紹介する。
クラウド型サービス事業の取組み
を強化・加速
“クラウドファースト”さらには
“クラウドネイティブ”へと、官民
問わず ICT 環境の考え方が大きく
トセンタソリューション
の取組みを紹介する。
オンプレ型の総合防災
情報システムのクラウ
ドサービス化を加速
変化してきている。このような状況
NTT-AT では、情報伝達
を踏まえ、今年で創設 40 周年を迎
手段の迅速化・多様化や
える NTT-AT は、新中期経営戦略構
災害に強い ICT インフラ
想の 4 つの柱からなるビジネスの
の整備など、自治体向け
戦略的展開の 1 つとして、
“クラウ
防災無線や自治体のネッ
ド”を掲げている。
トワークソリューション
NTT アドバンステクノロジ㈱
アプリケーションソリューション事業本部
[ 右 ] コア技術ソリューションビジネスユニット
ビジネスユニット(BU)長 濱野 輝夫氏
[ 左 ] トータルソリューションビジネスユニット
副ビジネスユニット(BU)長 粟津 雅浩氏
NTT-AT では、約 10 年ほど前か
をベースに、企業の危機管理サー
アプリケーションソリューション事
ら、オンプレミス環境でのソリュー
ビス領域へと防災ソリューション
業本部トータルソリューション BU
ション展開実績の豊富な議会会議録
を拡大してきた。同社の防災ソリ
の粟津雅浩副 BU 長は、「図 1 に示
検索システム
「Discuss シリーズ」
と、
ューション及び関連商材を含めた
すように平常時から災害・復旧まで
コ ン タ ク ト セ ン タ 向 け「MCS
総合防災情報ビジネスについて、
の一貫した情報サービスの開拓・拡
(MatchContactSolution)」について
これらに続く次のクラウド型サービ
速し、NTT-AT の事業の柱に育てよ
うというのが狙いだ。以下では、自
要援護者
登録
治体向けのオンプレミスシステムと
教育商材
して数多くの導入実績を誇る総合防
コンサル/
支援
災ソリューションのクラウド化と、
MCS を基盤に NTT 研究所の高度化
技術を付加したクラウド型コンタク
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衛星画像
気象、交通、
ライフライン
センサ、
テレメータ
放射線
モニタリング
管理・分析
情報配信/共有
復旧・復興
自営網
(防災行政無線)
防災マネジメント
システム
防災情報
集計システム
SNS 情報
各部
○○班
安否確認
地図情報
システム
一括配信システム
スの実現に向けた取組みを強化・加
災害時
収集・入力
災害情報、センサ情報
し、数多くの利用実績を誇っている。
平常時
訓練、
マニュアル整備、
防災計画、人材育成
はクラウド型 ASP サービスを提供
○○班
避難所情報
ホワイト
ボード共有
FM
(コミュニティFM)
有線IP網
(IP告知)
要援護者
登録
IP網
(インフォキャスト)
被害確認、
被災者支援
システム
V-Low移動体通信網
(マルチメディア放送)
その他
(SNS,TV)
PFサービス
(IoT、Bigdata)
NTT-AT
導入済み
図1 総合防災情報ビジネスの概要
NTT-AT新規
チャレンジ
大を図ることが基本です。平常・発
災・復旧・復興時まで各フェーズに
対応した幅広い商材の個別提供や組
しています。まずは SI 業務をベー
化やクラウドサービス化への展開を
図るという戦略です」と語る。
同社では、これまでは一括配信シ
ステム(防災情報伝達制御システム)
を主軸に、情報配信系ソリューショ
避難情報
収集
情報
河川情報システム
WebEOC
安否システム
(J-anpi)
IoTプラットフォーム
×
ー
ビ
ス
連
IP告知システム
ンの展開に注力してきた。今後は、
IoT端末
(その他アプリ)
デジタルサイネージ
I
PTV
連携
ビス
サー
IP
HEMS
観光、防犯システム
DB
himico
(分析PF)
見守り・助け合い
支援システム
IoT端末
(防災アプリ)
メール、SNS
分析連携
携
配信した情報と受信者からの応答を
組み合わせ、受信者の状況に合わせ
た情報配信を実施。受信者が求めて
いる情報を配信することが可能となる。
キャスト
端末
FOMA網基地局
配信・返信
サ
goo防災
NTTグループ防災システム
との連携
FOMA網センタ
防災情報
ユーザー情報
…
スに商材を開拓し、次にパッケージ
気象情報
ユーザー
(地域住民・観光客)
への配信・返信
リーチャブルなメディア
たクラウドサービスの展開にも注力
FOMA網
防災情報伝
達制御シス
インフォキャスト
テム
配信端末
全国瞬時警報システム
(J-ALERT)
配信・返信
み合わせ提供に加え、ニーズに応じ
省庁・自治体システムとの連携
ライフライン情報
交通情報
データ二次利用サービス
との連携
受信者の応答と、サービス提供者が
持つ属性情報を組み合わせ、サービ
ス受給者の嗜好などの分析を実施。
新たな市場の開拓につなげることが
可能となる。
企業センサシステム
との連携
日々の生活情報のセンシングを行い、
気象やインフラなどの情報と組み合わせ、
分析を実施。利用者に有益な情報を
リアルタイムに提供するサービスを実現
することが可能となる。
図 2 総合防災ビジネスの発展と将来性
配信系は情報弱者を想定した IP イン
フォキャストや V-Low マルチメディ
スを手始めに個々の地域住民や観光
ート力によって、コンタクトセンタ
ア放送などを含めた幅広いメディア
客への情報の配信・返信(双方向)
における応対業務の効率化と品質向
での配信に注力。また、今後ニーズ
のようなサービスが提供できます。
上に貢献してきた。また 10 年以上
が急速に高まると思われる管理系や
特に既存のサービスと、M2M 分野
も前から自社のデータセンターを活
プラットフォーム系ビジネスにもチ
の国際標準化団体の“oneM2M”標
用したクラウド型の ASP サービスを
ャレンジする方針だ。管理系では新
準準拠の基盤を組み合わせること
開始したほか、現在では NTT コミ
たに危機管理マネジメントを商品化
で、サービスの付加価値を高めるこ
ュニケーションズのクラウドサービ
することで、リアル(防災)とバー
とが可能になると考えています」と
スを介しても提供している。
チャル(サイバー)の両面での活用
抱負を述べている。
を 視 野 に 入 れ て い る。 加 え て、
CSIRT(Computer Security Incident
Response Team)や EOC(Emergency
クラウド型コンタクトセンタ
ソリューションの強化に注力
MCS の事業展開について、アプ
リケーションソリューション事業本
部コア技術ソリューション BU の濱
野 輝 夫 BU 長 は、「2020 年 の ビ ッ
Operations Center)への展開、地図情
NTT 研究所の言語処理技術をベ
グイベントを視野に、コンタクトセ
報システム(GIS)の活用を想定して
ースに、当初コールセンタにおける
ンタ関連のビジネスがヒートアップ
いる。また、プラットフォーム系は、
日本語処理製品として開発した
しています。例えば、訪日外国人向
NTT 研究所の R&D 成果を応用して
「MCS(MatchContactSolution)」。
けの接客情報案内ニーズが急激に高
IoT や BigData のプラットフォーム構
NTT-AT で は 現 在 ま で 応 対 履 歴・
まっています。また、少子高齢化の
築及び運用ビジネスを想定している。
FAQ 管理を中核に、メール・電話・
影響で、コンタクトセンタのオペレ
粟 津 副 BU 長 は、「NTT-AT の 総
Web などマルチチャネルのコンタク
ータ要員も不足してきています。こ
合防災情報ビジネスは、NTT グル
トセンタを統合的にサポートするソ
のような状況を踏まえ、NTT-AT で
ープ連携を基軸に展開を考えており
リューションとして進化を続けてき
は MCS を基盤に NTT 研究所の先
ます。図 2 にその将来ビジョンを
た。その導入実績は、シリーズ全体
進的な技術などを組み合わせ、利用
示しますが、クラウド上の IoT プラ
で 100 を優に超えており、その豊富
者が目的とする情報やサービスへア
ットフォームを核とし、防災サービ
な経験・知見を踏まえた手厚いサポ
クセスするためのコンタクトを利用
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特集 I
CTを駆使した真の価値を創出する
NTTアドバンステクノロジの新中期経営戦略
想定市場:
サービス:
流通
交通・旅行
金融
公共
ゲーム
のような方向から撮影しても、高精
オムニチャネルコンタクトサービス
接客型情報案内サービス
接客型公共情報案内サービス
(Tokyo2020)
クラウド型コンタクトセンタ
高度化技術:
「AngleFree」は 3 次元の物体をど
RMS
対話制御SMILE 多言語統計翻訳 (AngleFree)
事業基盤:
DMS
MCS
度にその立体物が何であるかを認識・
検索し、関連情報を提示する物体検
索技術だ。この技術を活用すること
で、スマートフォンで撮影した商品
などを認識し、関連する FAQ などの
情報を自動的にエンドユーザーに提
供することができる。これによって、
利用者利便:
端末を選ばず/至る所から/望む方法(コミュニケーション手段)で
図 3 クラウド型コンタクトセンタソリューションの概要
コンタクトセンタサービスの高度化、
省力化を大きく促進することができ
るものと期待される。
者一人ひとりに応じた(フィットし
しては、ヘルプデスクや、応対履歴
ま た、DMS(Document Mining
た)やり方(手順、メディア、イン
をもとにしたマーケティングや情報
System)は、テキスト文書中に含
タラクティブ)で提供するクラウド
案内、応対改善のための分析手段も
まれる言葉の意味を解析し、文書の
サービスの創出に向けた取組みに注
提供する。これらの高度化技術は、
分類(クラスタリング)、仕分け(カ
力しています」と語る。
同社が NTT 研究所における言語処
テゴライズ)、キーワード(特徴語)
理・言語認知に関する基礎研究の支
の抽出、キーワード連想などの機能
援業務を通して蓄積したノウハウを
を提供するもので、ユーザー評価を
ベースに NTT 研究所から受託開発
含めテキストマイニングツールとし
している個別システムの技術開示を
ての精度には定評がある。これまで、
受けて提供するものだ。
大量テキストを自動解析する情報ハ
対話制御技術など NTT 研究所の
先進技術を活用し高度化を図る
図 3 に NTT-AT が取り組んでい
るクラウド型コンタクトセンタソリ
ューションの概要を示す。同社では、
具体的なクラウドサービスとして
ンドリングエンジン/システムのパ
MCS を ベ ー ス に、 対 話 制 御 技 術
は、流通業や交通・旅行業界向けの
ッケージ商品として販売してきた
「S M I L E(S y n e r g i s t i c M e d i a &
「オムニチャネルコンタクトサービ
が、今後は MCS との密な連携、経
Intelligently Linked Engines)
」を活
ス」
、金融・ゲーム業界向けの「接
営者層でも手軽にデータを見ること
用したコンタクトセンタの省力化、
客型情報案内サービス」、公共機関
ができるようなユーザーインタフェ
従来のルールベース翻訳技術に代わ
向けの「接客型公共情報案内サービ
ースの改善などを行いクラウド型コ
る多言語統計翻訳技術を活用した訪
ス」
の 3 つのサービスを考えている。
ンタクトセンタソリューションの 1
日外国人対応、NTT 研究所の RMS
既存の MCS を高度化する技術の
(ロバストメディア探査)技術であ
「SMILE」は、インタラクティブな
濱野 BU 長は、「クラウド型コン
る「AngleFree」によるユーザーエ
音声対話インタフェースを利用可能
タクトセンタソリューションでは、
クスペリエンス向上などを図るとと
にする技術基盤で、音声認識、対話
なるべく自動応答により対応するこ
もに、それでも目的とする情報やサ
制御、音声合成などの要素技術を簡
とを基本にしています。本サービス
ービスに到達できない場合には、自
単 に 利 用 可 能 に す る API を 公 開・
によりコンタクトセンタ業務のさら
動的にヘルプデスクへのコンタクト
提供している。これを利用すること
なる効率化・高度化と利用者の利便
に誘導するサービスの提供に取り組
により、高精度な IVR(音声自動応
性向上に貢献したいと考えていま
んでいる。また、企業/公共体に対
答)などを実現することができる。
す」と今後の抱負を述べている。
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つの機能として提供する予定だ。