日本財団学生ボランティアセンター Gakuvo 「学生ボランティア拡大委員会」 第1回会議 開催概要 ●日時 6月10日(火)9:30〜11:30 ● 出席者: 工藤紘生氏 SoLaBo代表 委員長 原田勝広氏 明治学院大学ボランティアセンター長 委員 渡辺一馬氏 ワカツク代表理事(Skypeでの参加) 委員 吉村充功氏 日本文理大学人間力育成センターセンター長 委員 松本美奈氏 読売新聞東京本社編集局教育部編集委員 委員 小野氏 文部科学省スポーツ青少年局青少年体験活動推進専門官 オブザーバー 橘川氏 株式会社ウィンダム オブザーバー 西尾雄志氏 Gakuvoセンター長 事務局 古川秀雄氏 Gakuvo専務理事 事務局 栗田充治氏 亜細亜大学教授 委員 小島祥美氏 愛知淑徳大学コミュニティコラボレーションセンター 委員 百合野正博氏 同志社大学商学部教授 委員 桑原留美氏 Gakuvo学生理事 委員 ● 欠席者 1 1 趣旨説明(事務局西尾氏) ・ Gakuvo設立から5年を迎え、次の5カ年を考える上で、外部の識者の先生方のお 知恵をいただきながら進めていこうと委員会を設立した。 ・ 世の中や大学生の質が変わる中、「ボランティア支援」がどういう役割なのかを考 える必要がある。昔は、大学生が大学とは関係なく個人的に行うものだったが、今 は、大学側が積極的にボランティアに取り組むケースが増えている。現在の日本の 大学生は「社会貢献意欲は高いが自己肯定感が非常に低い」という調査報告があり、 ボランティア支援をする上でそういったポイントを押さえていく必要があるのか なと考えている。 ・ 東京だけに限らず、全国的な展開を考えている。そのため、様々な業種・地域の先 生方に豊富なご経験から事例をお伺いしたい。 2 各委員からの報告 ① 原田勝広委員(明治学院大学ボランティアセンター長) ・ 日本経済新聞の元編集委員。4年前に明治学院大学に教授として赴任、ボランティ アセンターのセンター長に就任。世界の課題をNGOや企業が解決していく時代だと いう背景を踏まえ、ボランティアに限らない幅広い考え方で、民間に何ができるの かという視点を持って授業をしている。 ・ 東日本大震災があったときはユニセフと連携して4月4日に仙台に入った。日本の 大学では1番早かったのではないかと思う。それ以降継続的に毎月、大鎚、気仙沼、 陸前高田の3カ所に延べ1000人の学生が行って活発かつ継続的にボランティア活 動を行っている。 ・ 明治学院大学では、 「1 Day for Others(1日社会貢献活動) 」を始めた。 「ボランテ ィアコース」 「NPO・NGO・社会起業家体験コース」「企業CSR体験コース」の3 つのコースがある。約60プログラムを用意し、約600人が参加している。学生の満 足度はほぼ100%。3分の1くらいは継続的にやっている。また、これをきっかけ に自分でボランティアをする学生も増えている。 ・ 単位をあげるかどうかが課題。「単位が欲しいからやるのは本来の姿ではない。ボ ランティア自体が学びの場」という考え方と「教育の場なので授業ともう少し結び つけたらどうか」という考え方がある。私は「ボランティア学」という授業をやっ ているがこれは事前学習から始まり、フィールドワークや2週間のインターンに行 き、報告書、論文を書くという計8単位のコース。こういった授業はあるが、かな り限定的なので、他学部の先生をどう巻き込むかかが今の課題になっている。 ② 渡辺一馬委員(ワカツク代表理事、Gakuvo東北事業協力者) ・ 仙台で2012年から「Gakuvo東北」のようなものを日本財団と一緒にやっている。 「社団法人ワカツク」は「若者の長期実践型のインターンシップを通した人材育成 と中小企業の革新」をメインに活動している。 ・ 震災直後には、避難所で困っている方を“見える化”する「避難所の調査」という ボランティアを行い、延べ数千人の学生が参加した。 ・ 震災から時間が経ってくると学生がボランティアとして関わることができるとこ 2 ろが非常に少なくなってくる。「私たちが今さら関わっていいのだろうか?」と思 う学生が多い。その現状を変えたいと、学生ボランティア団体の側面支援、効率的 なマネジメントのための講座開催、などを行っている。 ・ 今検討しているのは、アクティブラーニングの手法を用いて「このケースではどう したら学生が役に立つんだろう」ということを大学の講義でやり、「本当に役に立 つなら行きたい」と思った学生が自主的にボランティアやインターンに行く、とい うもの。そして戻ってきた学生が振り返りや事後学習をする講座を引き受けている。 事前の講座をやり、現場に行き、ボランティアで見てきたことを自分の専門教育と つなげよう、というもの。 ・ 全国の学生ボランティアの推進については、いつまた震災が起きるか分からないな か、事前に活動をすればするほど助けられる人の数が増えるということを実感して いる。準備が無駄になることはない。皆さんの知恵を借りながら次に備えていけれ ばいいと思っている。 ・ 社団法人ワカツクの活動については、配布資料を参照。 (添付資料①) ③ 吉村充功委員(日本文理大学人間力育成センターセンター長) ・ 日本文理大学は、大分市内の学生数1600人程の小規模な大学。大学の教育改革の象 徴として2007年に「人間力育成センター」を設置。 ・ 当学の場合はボランティアが先にあったのではない。どうやったら「人間力」がつ くかを考えてきて行き着いた先の1つがボランティア活動だった。最初から社会参 加活動に対して単位を出していた。 ・ センターを立ち上げた当初はPBL型の授業を積極的に取り入れた。企業や地域の団 体にお願いして学生が入って行った。最初から単位を出すことを前提にしていたの で、商品開発や地域の祭りのプロデュース等、課題設定をして取り組ませるPBL型 の授業を組み立てた。最初の1、2年目は教職員も学生も頑張り、クオリティの高 いものを作り、期待度が一気に上がった。いかにクオリティを継続していくかが今 の課題である。 ・ 入学したての学生には、学びの動機付けをきちっとやらなければならないと強く感 じており、地域の力をお借りした「体験活動」を行っている。みかんの収穫や稚魚 の放流といった一次産業の手伝いを行っている。若者が行くととても喜ばれるが、 学生は一次産業の重要さ、働くことのプライド、自分たちの存在意義などに気づく。 現場で気づいたことを大学の授業に持ち帰って学びにする。そういったPBLにつな げていく取り組みをしている。 ・ 単位を出さない活動と出す活動をどう切り分けるか。純粋なボランティアなのか、 課題解決型の学習成果のあるプログラムなのか、というところで悩んでいる状況で ある。また、教職員の支援体制が限界にきているかなと思う。これ以上拡大してい くときにどう支援していくかも課題。 ・ 実際の活動内容については配布資料を見ながら説明。学生発案の森林つくりや福島 の子供達を大分に招いたワークキャンプの取り組み等。(添付資料②−1) ・ 他、配布資料2点あり:日本文理大学 2015 GUIDE BOOK(添付資料②−2)、特 報!!ニンゲンリョク 2013年12月号(添付資料②−3) 3 ④ 松本美奈委員(読売新聞東京本社編集局教育部編集委員) ・ 読売新聞にて大学の実力調査をしている。今年で7年目。高校生が偏差値と知名度 だけで大学を選び、不本意入学からの、退学、長期欠席、あるいは死といった道筋 を選ぶ人が後を絶たない現状を変えないといけないと思い、この調査を行っている。 ・ 今は2人に1人が大学に行く時代で、勉強したくないけどなんとなく来たという学 生が沢山いる。大学側はそういう学生にどうやって火をつけるかすごく工夫をして いる。大多数の大学は、一昔前だったら過保護だといわれるような、色々な抱え込 み作戦をしている。 (保護者会、三者面談、親に成績表を送る、就活のための面談、 等)良い悪いの話ではなくてこれが現実である。 ・ 2012年の調査でボランティア活動に単位を出した大学は4割。反対の意見もあると 思うが、単位がもらえるからと授業にでる学生にそこで火がつくのならそれでいい と思う。評価の仕方を大学側が工夫すればいい話。 ・ ボランティアはとても大切だが、どう拡充していくのか、社会が大学に何を期待し ているのかを考えないと、ボランティア5カ年計画は出せない。 ・ 大学の現場を歩くほど先が見えてこない。学生が「思考停止」していると私は呼ん でいるが、どうしたら火をつけられるのか。課題は山のようにある。この5カ年計 画でどうやって大学と連携できるかという前に大学がどういうところにあるのか をみないといけない。 ・ 配布資料あり。 (添付資料③) 3 欠席委員について、事務局から紹介(事務局西尾氏) ① 栗田充治委員(亜細亜大学教授) ボランティアの単位化を考えるには2つの視点があると思う。1つはボランティアをす るモチベーションを与えるための単位化という考え方。2つ目は、本物の学びに近づけ るのに、教室での学びプラス、体験やボランティアが必要だという考え方。大学教育と ボランティア・体験学習の相互関係、全国的な学生ボランティアの支援組織の必要性、 を早い段階から提唱されてきた先生。(添付資料④) ② 小島祥美委員(愛知淑徳大学コミュニティコラボレーションセンター) 愛知淑徳大学はボランティア活動が盛んな大学で、最近出たある書籍の、“就業力”が 育つ大学ランキングの5位になっている。地域の特性をふまえたボランティア活動、例 えば自動車産業が発展している愛知県には日本語が分からない工場の労働者の子供が いるが、そういう子供たちと大学生がキャンプをしたり認識を深める活動を検討してい る。 (添付資料⑤) ③ 百合野正博委員(同志社大学商学部教授) 同志社大学では「プロジェクト科目」という非常に面白い取り組みをしている。地元に 密着した授業を地元の人に提案してもらい、その中から非常勤講師を採用するというも の。あと最近話題になっている「ラーニングコモン」。あえて仕切りをなくした場所で、 団体が打ち合わせなどをして隣の団体の話が聞こえて、「何やってるの?」と融合作用 が起きるというもの。また、あるコミュニティに所属することで外部のコミュニティと 4 の接触がなくなるのは非常に危険だという「コミュニケーション・デバイド」の問題意 識をお持ちの先生なのでそういった角度からもお話をお聞きしたい。(添付資料⑥) 4 オブザーバーからのコメント ① 小野氏(文部科学省スポーツ青少年局青少年体験活動推進専門官) ・ 少し前まで、大学受験終了から大学に入るまでの間「ギャップイヤー」の過ごし方 の中でボランティアをどう推進していくかが話題になっていた。 ・ 最近は2020年の東京オリンピックのボランティアの話がよく聞こえてくる。この委 員会も5年後を見据えて5カ年計画を立てているが、非常に重要なポイントなのか なと感じた。 ・ 吉村先生のお話を聞いて、ボランティアに出ていく動機付けのところで体験活動を 上手く使っているのは非常に勉強になる実践だと感じた。 ・ ボランティアと単位の話では、大分前に内閣府に勤務したときにボランティアを義 務化するという話があったなあと思い出した。徴兵制の話が絡んでもきていた。原 田先生もおっしゃっていたが、単位化することが本当にいいことなのかをかなり慎 重に検討したほうがいいと思った。 ・ 全国的なボランティアの組織とはどんなものがいいのか。5年後が2019年で2020 年にオリンピックがある状況で、学生ボランティアがどうあるべきかを考えていけ ればと思う。 ② 橘川氏(株式会社ウィンダム) ・ 色々なPR事業をやらせていただいている。企業はCSR活動をする中で、どうしても 企業名を出したがる(東日本大震災のときもそういった例があった)。メディアと つき合っていて思うのは、継続してボランティア活動をしているところを取材する と非常に効果があると思う。 ・ ブランディングの部分は非常に難しい。Gakuvoのボランティアは学生の中でナン バーワンですという戦略でよいのか。全く違う差別化をはかるとなったとき、ボラ ンティアの差別化とは何なのか。普通のマーケティングの手法がNPOやボランティ ア活動では使いにくいので、いつも工藤さんとどういう形がいいかを話し合ってい る。ブランディングする上でどういうメッセージを出して行くかは松本さんがおっ しゃったように、活動の本質が出てこないと伝えにくいのかなと感じた。 5 報告を受けての各委員からのコメント ① 原田勝広委員 ・ 吉村さんがおっしゃった「人間力」とボランティアが割と関連があるんだなと感じ た。授業と単位とボランティア、これがどういう関係になるのかを問題提起したが、 結局単位をあげるものあげないもの、内容によって両方必要だと思う。 ・ 地域の話があったが、大分はいいモデル。PBL型の問題発見解決の社会介在を意識 した活動、そう考えると教育とボランティアの距離は縮まる。 ・ 大学のボランティアセンターをやっていて横の連携が全くない。大学同士だけでは つながりにくいので、NPO・企業・地域をまきこんで大学も結果つながるというの 5 がまとまりやすいのかなと思った。 ② 吉村充功委員 ・ 学生がボランティア活動をする意義や本質は大人がする場合とは違うと思う。教育 的な効果にもつながるし地域社会も変わる。ボランティアは地域と学生両方に対す る貢献というものだと、そういう本質的な部分をもう少し整理しなければいけない と思った。 ・ 他大学の学生と一緒に何かをやることで刺激を受けて成長につながるということ もあるので、全国展開することで学生同士も組織的につながれるような仕組みもあ っていいのかなと感じた。 ・ ギャップイヤーの話があったが、推薦入試等で早く進路が決まった高校生がいて3、 4ヶ月あるところに、体験・ボランティア活動を大学から提唱していくことを考え てもいいかなと思った。 ③ 松本美奈委員 ・ この委員会で目指すところは連携だと思うが、連携する際に絶対に必要なのが「ボ ランティアとは何か」の定義付け。それから大学を巻き込みたいのであれば、「社 会をこうしたい。そのために学生をこう育てたい」という目標をきちんとしないと 参加しにくい。ただ、社会のためというところに比重を置いてしまうと義務化や徴 兵制というのが出てくるのでバランスが大切。 ・ 自ら考え行動し、自分の行動を内省し次の行動を考えられる人が新しい人材像では ないか。こういう人材を育成するという目標を明確にして取り組んでいけるのが大 学。 ・ この5カ年計画を通じて目標を設定して、具体的に項目に落として行けば混沌とし ている大学でも出来るのではないかという気がする。 6 まとめ(委員長) 松本さんからお話があった「ボランティアとは何か」をこの委員会で相談していかなけ ればいけないと思う。それを見据えたうえで、Gakuvoの5カ年計画はどうあるべきか というところに落とし込んでいきたい。 以上 6
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