「あんぼ」の取り組みから商品化まで

「あんぼ」の取り組みから商品化まで
関東・甲信越地区 新潟県 JA魚沼みなみ女性部
関 マツエ
【JA魚沼みなみの概要】
新潟県の南端、東京より関越自動車道で2時間半、上越新幹線で1時間 40 分、南魚沼市を管内
にしています。越後三山(八海山、駒ヶ岳、中之岳)で有名な八海山を仰ぎ、清流魚野川の恵み
を受け、魚沼産コシヒカリ・八色西瓜・八色椎茸・ゆりの切花などが全国的にも知られています。
地域農業の概要といたしまして、農家戸数が 3,000 戸(内専業農家 150 戸)で、耕作面積は
3,788ha、うち水田が 3,487ha と全体の 92 %を占めています。主な農産物は、コシヒカリが中心で
水田作付面積の 98 %となっています。次いで西瓜、椎茸、ユリの切り花等となっています。
特に「八色西瓜」と「八色しいたけ」は重点品目に挙げ規模拡大を図ってきました。結果、平
成 16 年度の取扱高で「八色西瓜」が 4.5 億円、「八色しいたけ」が6億円弱となり園芸品目全体の
12 億円の 87.5 %を占めています。
【構成】
・名 称 南魚沼農産加工所
・メンバー 専業農家…4名、兼業農家…6名、女性部役員…1名
【活動報告】
現JA魚沼みなみは、平成 12 年旧JA六日町と旧JA新潟大和町が合併し、女性部も同時に統
合し総勢 840 名でのスタートでした。しかし、全国的にも問題になっているJA離れや女性部の部
員数の減少は私たちも全く同じ状況でした。余談ですが、私の1日の始まりは「日本農業新聞」
であり、愛読書の「家の光」は「考える力」と「勇気を持って一歩前に踏み出すこと」を教えて
くれます。
平成 14 年暮れも押し迫った 12 月、女性部の仲間で、八海山・魚野川・八色原…この豊かな自然
の中から「自分たちの手で何かいいものを、誰からも喜ばれるものはないか…」とずっと考えて、
「地産地消の取り組み」の検討を始めました。それは、「米消費拡大と地域の特産を活かした食材
を使って、昔からこの魚沼の地で食された味」を引き継ぎ多くの人が、「美味しい」「安心」と言
ってくれる「あんぼ」を商品化したいという思いを勇気を出してJAの担当部長に提案しました。
JA管内では特産品の「八色しいたけ」の栽培の取り組みが盛んで、そのしいたけを自分たち
が子どもの頃食べていたあの「あんぼ」に使えると考え生地には魚沼のコシヒカリの米粉を使い、
色つけは春に山で摘んだ芽吹いたばかりのよもぎ、中の餡には本来ならば捨ててしまう越冬用野
菜の大根の菜の部分と八色椎茸にしました。味付けには勿論、女性部活動の一つである転作大豆
を使った手作り味噌を使い、あずき餡も地元で取れた小豆(自家用のものを分けて頂きました)
です。そして、部員の中から発起人会を立ち上げ、その熱い思いで行動を起こしました。さあ、
ゼロからのスタートです。
地産地消活動の発起人会を何回も開き「直売所の設置」という案もありましたが、既にJA直
営の直売所もオープンしており「あんぼ」への思いが捨てきれず意思統一をしました。「あんぼ」
と決断をしてから約1年、何度も何度も試行錯誤を繰り返し一生懸命作りようやく商品らしいも
のが出来上がりました。
次は加工施設の確保ですが、JA農産加工所が運良く空いていましたので、「是非、加工施設を
女性部に利用させて頂けないか。改装費用は当然私たちも負担します」とまず書面でお願いをし
ました。後日改めて、もう一人の参与と常勤役員に直接お願いに行きました。この時に担当部長
の大きな力添えがあり、活動内容を収支も含め具体的に説明し施設の使用許可の承諾をいただき
ました。
つぎは菓子製造許可です。保健所の指導を頂きながら図面を修正すること2∼3回、必要にせ
まられれば設計書の図面も理解できました。施設改装はJAの管理部が担当し、業者との手続き
改装費の交渉もJAが進めてくれました。JAの組織はどんな相談でも嫌な顔をせず本当に親身
になってくれ、本当の味方…とまたもこのときJAの有り難さを再認識し、感謝しました。
平成 16 年9月、加工所の改装工事が完了した。名称は「南魚沼農産加工所」とし、保健所の検
査も無事に通過(合格)しました。そして発起人全員で県の食品衛生講習も受講し、加工・販売
の準備が整いました。
運営資金は、女性部事業として、年度当初に計上したので事業計画の予算を使わせて頂きまし
た。でも資金がそれだけでは足りません。原材料もよもぎだけは春から確保していましたが、そ
の他の品々の調達等々はここでもゼロからのスタートです。そこで発起人からの出資が必要とな
りました。発起人全員にその必要性を理解してもらい協力を求めたところ、目標の出資金額を確
保することが出来ました。それは母ちゃんの小遣い程度ではなく、思い切ってヘソクリをはたく
覚悟くらいの金額でしたから…。決定してしまえば発起人、一つの気持ちでスタートラインに並
ぶことが出来ました。さあ準備 OK !一生懸命「あんぼ」つくりの開始です。
販売は対面方式で頑張りました。昨年 10 月の県女性協の「やってみよう大作戦」の新潟市古町
モールを皮切りに、当JAの女性部のふれあい夕市、大和町民まつり、六日町産業まつりと特産
センターの参加する県外でのイベントに行って販売しました。もちろん、特産品の八色椎茸やゆ
りの切り花も同時に販売してきました。お客様とのふれあい真剣勝負の連続でしたが、充実感で
胸が一杯になりました。次に、JA内部への宣伝販売活動と理事会での試食会及び注文の取りま
とめをしました。そこに他からの注文も入り製造が間に合わないかな?とも思いましたが、日に
日に生産能力も上がり皆さんの要望に応えられるようになりました。今ではみんな自信を持って
とても元気に活動しています。
さて次は一時的ではなく定期的に販売出来る販路の確保です。まず手始めにAコープに出店が
決まりました。「女性部のみなさんがやってくれるのなら協力しますよ」とセンター長の計らいも
あり、固定客の多い地場産コーナーの一角を分けて頂きました。
いよいよ量産体制にはいり、11 月より毎週日曜日に対面販売を始めました。JAの担当が「売
り子の衣装はこれね」、とお揃いのエプロンにピンクの三角巾を手渡され、はじめは皆がかなり抵
抗感がありましたが、慣れてしまえばなんともありません。「あんぼ」も少しずつファンができ、
毎回完売です。地方版ラジオの FM ゆきぐにでも宣伝して貰いすっかり板に付いてきました。作業
着は、みんな白い帽子に白衣をまといとても 50 代 60 代の女性には見えません。一生懸命に作った
り、売ったりする姿はとても輝いています。
最近では口コミで話が広がり今では「遠くの親戚のお土産にしたい」、「お茶菓子にしたい」、
「地域の茶の間があるから 50 個予約しておくネ」と、声をかけて下さる方も出て来ました。そして
10 月 23 日の中越地震の際、お気遣い頂いた方々へのお返しにとまとまった注文を数件頂いた時は
とても感激し、心の中で「やったー!!」とガッツポーズをし、胸が熱くなりました。
さあ、この輝きと感激を今度は女性部の仲間に伝えなくてはと思いました。当初目的の一つで
もあった地産地消活動です。各集落長にあんぼ作りのお誘い通知を発送しました。集落から参加
の手が上がり「待ってたよ」との声も聞こえました。
今年は 19 年ぶりの大雪、豪雪日を除いてのあんぼ作り体験を 13 集落 83 名で実施しました。新し
く改装された農産加工所施設を見学しながら部員同士の活動・研修の場として、加工メンバーと
一緒に楽しみながらのあんぼ作りです。「美味しいね」、「楽しいね」、「参加して良かったよ。また
声をかけてね」、こんな言葉に勇気づけられながら「あんぼ」をさらに地域のものとして甦らせた
いと思い女性部と共に取り組み中です。その部員活動の中から新しい発見もありました。それは
第2号商品のヒントや新しい販路の発見でした。
さて、構想からはや3年目、商品開発などまだまだ課題も多くありますが、おいしく・安全・
安心でみんなから喜ばれるものを作って次の時代に残して行きたいと思います。
平成 17 年度、JAの事業活動として子どもたちを対象にした『JAグリーンスクール』の中に
あんぼ作りを組み入れてもらいました。女性部も食育活動、次世代対策の一環として参加し、食
農をふまえた地産地消活動をもっともっと広げたい。そして今JAの近くに完成間近の「魚沼レ
クリエーション都市公園」があり、そこへの出店等をあれこれ考えると心もワクワクしています。
夢は次々と広がり、私たちの思いは小さなグループから出発し、少人数でも同じ思いを志す仲
間で行動する時代が来た。そしてそれをJAと一緒に総括しながら確実に行動していきたい。そ
んなことを期待しながら今も進み続けています。