分光分析の楽しさ 新潟県工業技術総合研究所 下越技術支援センター 永井直人 分光分析とは • あらゆる波はさまざまな振動数をもつ単色波 の重ね合わせと考えることができる。 • 逆に、物質から出てくる波の振動数分布(ス ペクトル)が分かると物質の様子が分かる。 分光分析にはどのようなものがあるか • • • • • • • 蛍光X線分析 紫外・可視分光 赤外分光 ラマン分光 X線光電子分光 マイクロ波分光 ICP発光分析 分光分析から得られる情報 • • • • 元素情報 例:C、O、N、Alが検出 化学構造情報 例:ナイロン6と水酸化アルミの混合物 • 分光分析の種類によって異なる情報が得ら れる(目的に応じて手法選択する楽しみ) 化学構造解析手法としての赤外および ラマン分光分析 • 本日は赤外およびラマン分光分析に話を限って話 題提供する。 • 特徴:化学構造に関する情報が得られる。特に配向 性など他の方法では得られないユニークな情報が 得られる。 • 高真空を使わないため、自分で測定の方法を工夫 してさまざまな情報を得られる。 • 測定が迅速なのでトラブル・クレーム対策に向いて いる。 • 非破壊分析なので、他の手法との併用ができる。 分析対象材料も多い • 半導体、セラミックス、金属表面処理材料 • プラスチック、食品、工業材料異物、食品異 物 • 繊維、高分子エレクトロニクス材料 • 医療、医薬、バイオ • 農業、木材 分光分析を業務に生かす (1)付着物、混入物など異物の同定 (2)酸化劣化など化学構造状態の変化 ↑ トラブル原因究明・クレーム対策 (3)材料の特性に影響を及ぼす構造を知る 結晶性、結晶化度、配向、コンフォメーション、コンフィギュ レーション、欠陥構造、分子間相互作用 ↑ 新規材料開発・機能性材料の開発 反応解析・時間分解 目次 • • • • • (1) (2) (3) (4) (5) 基本的なことがら(測定原理と特徴など) 異物分析の実例 劣化(反応)解析の実例 材料特性評価の実例 まとめ • テクニックについては事例の中で随時紹介 物質の結合状態 キッテル固体物理 学入門(丸善) 双極子モーメント • -eと+eの二つの電荷が距離d離れてあるとす ると μ=e・d というベクトル量を双極子モーメントという + - 分極率 • 原子や分子が外部から電場の作用を受ける と、その中における正負電荷の分布状態が 変わり、これによって新たに双極子モーメント を生じる。 μ’=α・E このαを分極率という 基本的な官能基 山本行男 クリック!有機化学 化学同人 特性吸収帯の位置 4000 3000 NH OH 2000 -CH2-CH3 -CN -NCO 1500 C=O C=C 650 (cm-1) 1000 C-F 伸縮振動 Si-O-Si C-O-C アミド(C=O) アミド(NH) -CH2-CH3 ^ 変角振動 13 吸収ピークの波数位置から分子構造、官能基に関する情報 スペクトル全体の波形から物質そのものが推定できる。 例:ABS A S B 14 カルボン酸とその誘導体 山本行男 クリック!有機化学 化学同人 エステルの加水分解 山本行男 クリック!有機化学 化学同人 コンフォメーション 山本行男 クリック!有機化学 化学同人 フーリエ変換型赤外分光光度計(FT-IR) 干渉計 (マイケルソン型) 固定鏡 l0 移動鏡 放物面鏡 l1 半透鏡 (ビームスプリッター) (Ge/KBr) 試料室 検出器 ↓ AD変換 器 ↓ PC 放物面鏡 光源 1)multiplex advantage 同時測光が可能ため信号の利用率が高い。 2)optical throughput advantage スリットが不要なため光束利用率が高い。 3)high accuracy in wave number レーザー(He-Ne)光で干渉計の位置をモニ ターするため波数精度が高い。 インターフェログラム ■光源スペクトルと干渉計からの出力信号の関係 光源スペクトル 単色光の場合 干渉計からの出力信 号 cosine波 2色の単色光の 場合 連続光の場合 2種のcosine波 の重なりあわ せ 種々のcosine波の 重なりあわせ 光路差0で振幅は 正 出典:「FT-IRの基礎と実際(第2版)」田隅三生,東京化学同人(1994) フーリエ変換 ■インターフェログラムパターンとスペクトル B (n ) I (x) フーリエ変換 0 光路差 x 波数 n 出典:「新化学実験講座4 基礎技術3 光Ⅰ」丸善(1976) フーリエ変換:インターフェログラムのパターンからどのような周波 数の重ねあわせ(周波数分布)であるかを数学的に 処理 FT-IRの場合、コンピュータを用いたフーリエ変換が分光となる 赤外とラマンの比較 赤外分光分析 最小ピクセルサイズ 2.6μm ラマン分光分析 1μm 測定波数範囲 7800~700cm-1 一度に測定可能 8000~50cm-1 複数回に分けて測 定 波数安定性 測定モード 高い(FT方式) 透過、反射、ATR (試料形体に合わ せたモードの選択) 低い(分散型) 散乱(試料形体の影 響が少ない) その他 試料ダメージが少 ない。末端官能基。 水蒸気・炭酸ガスに よる擾乱。データ ベースが豊富。 蛍光がでるサンプ ルの測定は困難。 骨格振動。水中成 分が分析可能。 水蒸気と二酸化炭素 Absorbance (a.u.) H2O 4000 H2O CO2 H2O CO2 3500 3000 2500 2000 1500 Wavenumber (cm-1) 1000 500 ■N2 gasによるパージや真空排気などでこれらの吸収を除くことが必要 散乱強度 透過率% ポリエチレンの赤外とラマンスペクトル IR 対称性からわかること Raman 1600 1400 1200 -1 Wavenumber (cm ) 1000 遷移が有限の確率をもつか、 あるいは正確にゼロの確率 をもつかを見出す時に使うこ とができる 透過率% PETの赤外とラマンスペクトル 散乱強度 IR Raman 1800 1600 1400 1200 -1 Wavenumber (cm ) 1000 ピークから何が分かるか シフト:応力 50x10 -3 シフト、半値幅: 相互作用 強度: 濃度・厚さ 強度比: 配向度 Absorbance 40 30 半値幅: 結晶性 20 10 0 1780 1760 1740 1720 Wavenumber (cm-1) 1700 波数位置: 官能基のタイプ コンフォメーションの違い 1680 ただし、 素励起(プラズモン、 エキシトン、ポーラリトンなど) が共存する場合は注意 異物分析の特徴と対処 • 小さいけど目で見える(数ミクロン-数mm) • 複合材であることが多い(検索でヒットすると は限らない)。 • 迅速性が要求されるため赤外及びラマン分 光分析で対応する場合が多い。候補品があ れば早く対処できる。 • 頻度が高いポリマーや無機成分などはデー タベースでパターンを覚えておくことが有効。 各種樹脂の赤外スペクトルパターンの違い 40 0.4 アクリルニトリルスチレン アクリロニトリルースチレン共重合体 共重合体 30 ナイロン6 ナイロン6成形品 セルロース セルロース 0.20 0.3 0.15 x10 -3 20 0.2 0.10 10 0.1 0.05 0 -10 0.0 4000 0.16 3500 3000 2500 2000 Wavenumber (cm-1) 1500 1000 ポリエチレンテレフタレート (PET) PET 0.14 0.00 4000 3500 3000 2500 2000 Wavenumber (cm-1) 1500 1000 4000 テフロン 3500 3000 2500 2000 Wavenumber (cm-1) 1500 1000 4フッ化レジンフィルム 0.4 塩化ビニル ポリ塩化ビニル(PVC) 50 0.12 0.3 0.10 x10 -3 40 0.08 0.2 0.06 30 0.04 0.1 0.02 20 0.0 0.00 4000 3500 3000 2500 2000 Wavenumber (cm-1) 1500 1000 4000 3500 3000 2500 2000 Wavenumber (cm-1) 1500 1000 4000 3500 3000 スペクトルパターンから樹脂を同定することが可能である 2500 2000 Wavenumber (cm-1) 1500 1000 無機成分のIRスペクトル例 0.8 Absorbance 0.6 硫酸アンモニウム 0.4 炭酸カルシウム 0.2 水酸化アルミニウム 4000 3500 3000 2500 2000 -1 Wavenumber (cm ) 1500 1000 無機成分のIRスペクトル例 1.4 1.2 塩基性炭酸銅 Absorbance 1.0 0.8 0.6 二酸化ケイ素 0.4 0.2 酸化チタン 0.0 4000 3500 3000 2500 2000 -1 Wavenumber (cm ) 1500 1000 ポリマーのラマンスペクトルの例 Intensity テフロン ポリエチレン ポリプロピレン 1800 1600 1400 1200 -1 Raman shifts (cm ) 1000 ポリマーのラマンスペクトルの例 アクリル Intensity PET ポリカーボネート ナイロン6 ナイロン66 1800 1600 1400 1200 -1 Raman shifts (cm ) 1000 ポリマーのラマンスペクトルの例 Intensity 塩ビ ポリアセタール ポリスチレン 1800 1600 1400 1200 1000 800 -1 Raman shifts (cm ) 600 400 200 無機成分のラマンスペクトルの例 酸化亜鉛 Intensity 炭酸亜鉛 リン酸亜鉛 硫酸ナトリウム 塩基性炭酸銅 1000 800 600 400 -1 Raman shifts (cm ) 200 結晶性の変化(ラマンスペクトル) Intensity Intensity Anatase スクロース Rutile Amorphous スクロース水添加 1800 1600 1400 1200 -1 Raman shifts (cm ) 1000 1000 800 600 400 -1 Raman shifts (cm ) 200 顕微赤外分光で用いるサンプリング道具 片刃 顕微赤外分光で用いるサンプリング道具 千枚通し サンプリング 片刃 異物試料 異物の取り出し Siウェハ ウェハ上への固定 異物 赤外線領域 で透明ならば どのような素材 でも構わない。 Siウェハは1Ωcm 以上の抵抗品 を使うべし 試料をつぶす 顕微赤外装置にセッティング 測定 糸状異物の分析例 0.4 Absorbance 0.3 0.2 つぶした場合 0.1 つぶさない場合 0.0 4000 3500 3000 2500 2000 Wavenumber (cm-1) 1500 1000 ハンバーガーに混入した黒色オイル状異物 2.5 1740→1730 2.0 1.5 Absorbance 黒色部 1.0 0.5 正常部 ▼ ▼ 0.0 ● -0.5 黒色部アルコール抽出 4000 3500 3000 2500 2000 Wavenumber (cm-1) 1500 1000 そのまま分析して比較すると油脂(トリグリセリド)しか認められない。 エタノールを滴下すると黒色異物だけ取り出せ、カルボン酸塩(●)と フタル酸エステル(▼)の混合物であることが分かる。 鶏肉中の黒色異物分析 異物 4000 Intensity 3000 ×2 2000 ×2 ×3 1000 Fe3O4 0 1000 800 Fe2O3 600 400 -1 Raman shift (cm ) 200 ATR転写法による表面付着物の分析 分析試料 表面付着物 ATRプリズム 圧着 引き離す 表面付着物が 転写されて残る! 43/25 樹脂割れのATR転写法による分析結果 -3 100x10 Absorbance 80 60 40 ×10 20 0 4000 3500 3000 2500 2000 Wavenumber (cm-1) 1500 1000 シミの分析 ATRスペクトル 0.30 ATR 0.25 -log(I/I0) 0.20 0.15 NG 0.10 0.05 0.00 4000 OK 3500 3000 2500 2000 -1 Wavenumber (cm ) 1500 1000 サブμm以下の表面層をどうやって分析す るか 極薄膜をサンプリングできるか? 取り出したあと分析ステージまで持っていけるのか? ナノキャッチャー法による表面サンプリング装置 の開発 CCD Camera Z-Stage -Stage -Stage Sample Diamond Blade Gonio Stage X-Stage Blade Holder Sample Holder Horizontal Precision Stage Vertical Precision Stage Electrostatic Capacitance Displacement Sensor Roberval type Load Cell Illuminated light Y-Stage Controller PC N. Nagai et.al, Applied Spectroscopy 63 (2009) 66. ナノキャッチャー法のサンプリング ナノキャッチャー法による分析 シミのNCスペクトル 1.4 NC 1.2 -log(I/I0) 1.0 0.8 NG 0.6 0.4 OK 0.2 0.0 4000 3500 3000 2500 2000 -1 Wavenumber (cm ) 1500 1000 しゃもじの変色 ラマン分光で変色由来成分を検出 ラマン散乱分析結果 50x10 C=C C=C 3 Intensity 40 C-C 30 共役系を有する カロテノイドが検出 20 10 0 4000 3500 3000 2500 2000 1500 -1 Raman shift (cm ) 1000 500 劣化(反応)解析 • 反応による化学構造変化をおさえておく。 • 劣化生成物のスペクトルもデータベースとし ての価値がある。 • 劣化物が共存するとラマンでは蛍光がバック グラウンドとなりシグナルが取れないことがあ る。 PETのTG/DTAチャート 27.50 Weight (mg) 27.45 27.40 27.35 27.30 27.25 27.20 25 結晶化 Heat Flow (V) 20 分解 15 10 ガラス転移 融解 5 0 50 100 150 200 250 300 350 Temperature (℃) 岡田英樹 IR分析テクニック事例集(技術情報協会) PETのIRスペクトル 1.2 1.0 -log(I/I0) 350℃ 0.8 270℃ 253℃ 0.6 215℃ 152℃ 0.4 130℃ 116℃ 0.2 101℃ 80℃ 0.0 69℃ R.T. 4000 3500 3000 2500 2000 Wavenumber (cm-1) 1500 1000 PETのIRスペクトル(拡大) 1.2 非晶バンド 酸化ピーク 1.0 350℃ -log(I/I0) 0.8 270℃ 253℃ 0.6 215℃ 152℃ 0.4 130℃ 116℃ 0.2 101℃ 80℃ 0.0 69℃ R.T. 2000 1800 1600 1400 1200 結晶化バンド Wavenumber (cm-1) 1000 結晶化バンド 800 PETのIRスペクトル(拡大) 0.15 -log(I/I0) 0.10 350℃ 270℃ 0.05 253℃ 215℃ 0.00 152℃ 130℃ 116℃ -0.05 101℃ 80℃ -0.10 69℃ R.T. 2000 1800 1600 1400 1200 Wavenumber (cm-1) 1000 800 非晶バンド LDPEのTG/DTAチャート 8.65 8.55 8.50 8.45 8.40 50 Heat Flow (V) Weight (mg) 8.60 40 30 融解 20 10 酸化・酸化分解 0 -10 50 100 150 200 Temperature (℃) 250 300 350 PEのIRスペクトル 0.4 350℃ 320℃ 0.3 -log(I/I0) 300℃ 245℃ 0.2 145℃ 0.1 115℃ 87℃ 0.0 4000 R.T. 3500 3000 2500 2000 -1 Wavenumber (cm ) 1500 1000 PEのIRスペクトル(拡大) C=O 0.4 350℃ COOH C-O C=C 320℃ 0.3 -log(I/I0) 300℃ 245℃ 0.2 145℃ 0.1 115℃ 87℃ 0.0 2000 R.T. 1800 1600 1400 1200 -1 Wavenumber (cm ) 1000 800 クラマース・クローニッヒ変換 クラマース・クローニッヒ変換を使う場 合の注意点 屈折率(n)と消衰係数(k)を計算する場合は特に以 下に注意する。 • (1)入射角は小さくとる(12°程度) • (2)表面反射のみが必要(裏面反射は裏面を荒 らすなどして除去する) • (3)できるだけ広い周波数領域を測定し、データ がない場合は外挿する。 定性分析に利用する場合は(1)に注意し、裏面反 射が返ってこない吸収が大きな波数領域に適用す る。 未処理試料のKKT後スペクトル Kramers-Kronig変換 (KKT) 1800 1600 1400 1200 1000 800 反射スペクトル Surface N. Nagai et.al, Polymer Degradation and Stability, 81 (2003) 491496. 5μm depth Im(DF) 2000 2000 1800 吸収スペクトル相当 1600 1400 1200 1000 -1 Wavenumber (cm ) 800 Im(DF) 72hr処理後試料のKKT後スペクトル Surface 5μm depth 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 -1 Wavenumber (cm ) 表面近傍でケトンやカルボン酸が形成されている 構造変化モデル CH3 O C O C O CH3 OH O CH2 CH2 C CH3 O C CH3 C OOH HO CH2 C O OH C OH O (A.Rivaton et.al., Polymer Degradation and Stability, 75, 17(2002)) 劣化構造の深さ方向変化 -1 I (1600cm )/I (820cm ) 0.25 0.20 -1 0.15 0.10 0.05 0.00 0 1 2 3 4 5 Depth (m) 表面近傍0.5μm程度の領域に大きく構造変化した領域が存在 PI/Cu試料 Polyimide (1.5m) / Cu (0.3m) / Si O O PI は250ºC 30分間 キュアされ、 121ºC 100%湿度で24 時間保持. C C N N C C O O 試料1 添加なし 試料2 1wt% 1H-tetrazole 添加 O H N N Polyimide 1H-tetrazole N N N. Nagai et.al, Applied Surface Science 171 (2001) 101-105. 切削面の光学顕微鏡写真 surface interface Cu PI Si scan IR Cu PI Si ラインスキャンIR反射スペクトル Without tetrazole (b) Absorbance Absorbance (a) 2000 With tetrazole Surface 1800 1600 1400 1200 1000 800 2000 -1 Wavenumber (cm ) 1800 1600 1400 1200 -1 Interface Wavenumber (cm ) 1000 800 カルボン酸塩の深さ分布 -1 I (1600cm ) / I (1362cm ) 5 5 (a) (b) 4 3 3 2 2 1 1 0 0.0 0 0.0 -1 4 0.4 0.8 Depth (m) 1.2 0.4 0.8 Depth (m) 1.2 レジストの光照射反応 O O C N2 R1 hn COOH +H2O R1 R1 R2 + OH CH 2 CH 2 O R2 C O R1 N. Nagai et.al, Surface and Interface Analysis 34 (2002) 545-551. 米の劣化分析 不飽和度 ラマン分光法による米中油脂の不飽和度の 変化 3500 3000 1 新米 I(1260)/I(1300) Intensity 2500 1.2 2000 古米 1500 1000 0.8 0.6 0.4 0.2 古古米 0 500 1800 1600 1400 1200 -1 Raman shift (cm ) 1000 新米 古米 古古米 食品の変性 米の劣化分析 酸化 赤外分光法による米中油脂の酸化度の変化 40x10 -3 エステル 3 カルボン酸 2.5 I(1700)/I(1738) Absorbance 30 新米 20 古米 10 古古米 0 1900 2 1.5 1 0.5 1800 1700 1600 Wavenumber (cm-1) 1500 1400 0 新米 古米 古古米 グラファイトの振動モード ラマン活性 赤外活性 光学的不活性 材料特性評価 • キーバンドを見つける • データ処理を工夫する • 官能基だけではなく配向やコンフォメーション などについても考察し、高次構造変化につい て推定する。 I1355/I1580とLaの相関 F. Tuindtra and J. Koenig J. Chem. Phys., 53 (1970) 1126-1130 I1355/I1580:黒鉛化度を評価するパラメータとして広く採用 血液のラマンスペクトル 3000 赤血球 Intensity 2500 2000 血清 1500 1000 1800 1600 1400 1200 -1 Raman shifts (cm ) 1000 赤血球のポルフィリンバンド 3300 ピーク位置(cm-1) 3250 Intensity 3200 3150 3100 3050 励起波長(nm) 3000 1380 1370 1360 1350 -1 Raman shifts (cm ) R.Bayden et.al, J.Raman Spectroscopy 33 (2002) 512-523. PETシートの延伸によるスペクトル変化 1.0 Absorbance 0.8 延伸方向平行 0.6 0.4 延伸方向垂直 0.2 未延伸 0.0 1800 1600 1400 1200 -1 Wavenumber (cm ) 1000 800 玄米断面のイメージング • FT-IRによる測定(反射) ○測定条件 分解能:8cm-1 積算回数:16回(3.06秒) ピクセルサイズ:100μm 測定エリア:5800×3300μm スペクトル数:2006 測定時間:102分 部位ごとにスペクトルが異なる 多糖類(1170cm-1) 、アミド(1550cm-1) 、油脂(1740cm-1)でイメージング 2012/10/19 80 玄米断面のイメージング • FT-IRによる測定(反射) ○測定条件 分解能:8cm-1 積算回数:16回(3.06秒) ピクセルサイズ:100μm 測定エリア:5800×3300μm スペクトル数:2006 測定時間:102分 多糖類(1170cm-1) 2012/10/19 アミド(1550cm-1) 油脂(1740cm-1) 81 玄米断面のイメージング • ラマンによる測定 ○測定条件 レーザ波長:532nm 露光時間:1秒 積算回数:20回 測定点数(X, Y):(58, 32)=1856 ステップサイズ:100μm 全測定時間:619分 多糖類(940cm-1)、油脂(1660cm-1)&アミド(1670cm-1)、カロテイノイド(1520cm-1)でイメージング 2012/10/19 82 玄米断面のイメージング • ラマンによるイメージング ○測定条件 レーザ波長:532nm 露光時間:1秒 積算回数:20回 測定点数(X, Y):(58, 32)=1856 ステップサイズ:100μm 全測定時間:619分 多糖類(940cm-1) 2012/10/19 油脂&タンパク質(1660cm-1) カロテノイド(1520cm-1) 83 ケモメトリックスについて ■従来の分析■ 滴定・秤量等は1回の測定で 1つのデータを取得 ■機器分析■ FT-IR、ラマン等は複数の数 値データ(スペクトル) 同時に様々な情報がスペクトルの中に サンプルが増えると劇的に情報が増える ★ケモメトリックス★ 数学的・統計学的手法を適用 膨大なデータから重要な情報を抽出 Chemometorics(計量化学) = Chemistry(化学) + Metrics(計量学) 2012/10/19 84 雪室ニンジンの分析 • FT-IRで組成分析 部位ごとにサンプリン グしてATRで測定 • ATR測定のイメージ 加圧治具 採取した部位 ATRクリスタル 光源・干渉計から 心部 検出器へ 赤外線の光路 加圧治具でサンプルを クリスタルに接触 1 2 3 肉部 2012/10/19 サンプルを取り除き 残った液体を乾燥し測定 4 N. Nagai, H. Okada et.al, Applied Spectroscopy 66 (2012) 1087-1090. 85 糖の赤外スペクトルパターンの違い -log(I/I0) Sucrose Glucose Fructose 1:1:1 1200 1150 1100 1050 -1 Wavenumber (cm ) 1000 950 ケモメトリックス(PCR)の適用 スクロース100% フルクトース100% 複雑なスペクトルの重なり PCRで解析 糖を混合して作成したサンプルのスペクトル 2012/10/19 (グルコース、フルクトース、スクロース) グルコース100% フルクトースの予測と参照の関係 87 ニンジンのスペクトルの変化 (a)収穫後 (b)冷蔵庫保管 (c)雪室貯蔵 (d)雪下貯蔵 (a) (b) 0.05 0.05 4 3 -log(I/I0) -log(I/I0) 4 3 2 2 1 1 1200 1150 1100 1050 1000 950 1200 1150 -1 1000 950 1000 950 Wavenumber (cm ) (c) (d) 0.05 0.05 4 -log(I/I0) 4 -log(I/I0) 1050 -1 Wavenumber (cm ) 3 3 2 2 1 1 1200 1100 1150 1100 1050 -1 Wavenumber (cm ) 1000 950 1200 1150 1100 1050 -1 Wavenumber (cm ) ニンジンの糖成分の組成比の変化 (a)採取後 (b)冷蔵庫保管 (c)雪室貯蔵 (d)雪下貯蔵 1.0 (a) glucose fructose 1.0 sucrose 0.75 0.8 (b) glucose fructose sucrose 0.8 0.63 Content Ratio 0.6 0.4 0.6 0.47 0.42 0.17 0.12 0.14 0.2 0.0 1.0 0.4 0.29 0.28 0.29 0.26 (c) 1 glucose 2 fructose 3 0.21 sucrose 0.35 0.37 0.37 0.26 0.26 0.0 1.0 4 (d) 1 0.8 0.19 0.20 0.56 0.55 2 glucose 0.69 0.63 fructose 3 0.16 0.21 sucrose 0.78 4 0.74 0.63 0.6 0.46 0.4 0.2 0.39 0.2 0.8 0.6 0.62 0.61 0.34 0.30 0.20 0.15 0.4 0.18 0.19 0.24 0.21 0.22 0.22 0.2 0.13 0.10 0.10 0.13 0.11 0.16 0.0 0.0 1 2 3 Sampling Position 4 1 2 3 Sampling Position 4 まとめ (1) 赤外およびラマン分光による各種材料の分析事例を紹介した。 (2) 異物分析、反応解析、材料特性分析でややアプローチが異なる。 ①異物分析では官能基で分類しスペクトルパターンをデータベース化することが 重要。 ②反応解析では、反応を推定しつつ小さなスペクトル変化にも注目する必要がある。 ③材料特性評価では、キーバンドを見つけ出し、データ処理に工夫をすることが重要 となる。 (3) 赤外およびラマン分光分析はあくまで官能基レベルの局所構造解析技術であり、 よりグローバルな構造を調べるためには工夫が必要である。
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