環境報告書 2014 - 日本総合住生活株式会社

環境報 告書 2 0 14
E n v i r o n m e n t a l Repor t 2 0 1 4
目次
会社概要
目次、経営理念、会社概要、編集方針、品質・環境方針
01
社名
日本総合住生活株式会社
トップメッセージ
02
設立
昭和 36 年 6 月 21 日
事業内容
03
環境マネジメント
05
資本金
300 億円
環境課題と技術開発[音を抑える]
07
代表取締役社長
廣兼 周一
環境課題と技術開発[ゴミを出さない]
09
売上高
115,068 百万円(平成 25 年度)
地球温暖化への対策
11
従業員数
6,965 人(平成 26 年 3 月現在)
産業廃棄物の適正処理
12
社会貢献
(CSR)
13
本社所在地
東京都千代田区神田錦町 1-9
スクエアJSにお越しください
14
電話
[ 代表 ](03)-3294-3381
編集方針
当社の環境 ISO の活動を中心に、環境への取り組みをス
テークホルダーの皆様にご報告するために平成 25 年度版とし
て発行しました。是非ご一読いただき、
忌憚のないご意見を頂
戴できれば幸いです。
対象組織 : 日本総合住生活株式会社
対象期間 : 平成 25 年度(平成 25 年 4 月から平成 26 年 3 月末まで)
一部、それ以前からの活動や、最近の取り組みも含みます。
参考にしたガイドライン : 環境報告ガイドライン2012(環境省)
品質・環境方針
基本理念
私たちは、
集合住宅管理業務及び請負工事業務等を通じてお客様のニーズを的確に把握し、
お客様が『安全・安心・快
適な住生活』を送ることができるよう、
迅速(スピーディ)
・丁寧(信頼)
・確実(高い技術、
高品質)なサービスを提供する
とともに、
地球環境にやさしい社会の実現に貢献することで、
『お客様に喜ばれる』
『いざというとき頼りになる』企業を目
指します。
行動指針
1. お客様からのご意見やご要望、
社会的要請を真摯に受け止め、
高い技術と高品質なサービスをご提供し、
お客様の満
足と信頼の向上を目指します。
2. 環境負荷の低減、
汚染の予防と資源の有効利用に努め持続可能な社会の形成に寄与します。
3.エネルギー使用量の削減、
廃棄物の発生抑制や再利用、
リサイクルの推進を実施し、
地球温暖化防止、
資源枯渇防止に
努めます。
4. 品質・環境に関する法規、
条例、
協定等を順守します。
5.マネジメントシステムにおける取組を定期的に見直し、
継続的に改善します。
6. 当社に従事する従業員及び協力会社等に対して、
この方針を周知徹底すると共に、
一般の方にも公開します。
日本総合住生活株式会社
JS 環境報告書2014 01
平成 26 年 9 月 25 日
代表取締役社長 廣 兼 周 一
トップメッセージ
半世紀余りにわたる団地管理のパイオニアとして
JSらしい環境活動を推進していきます。
当社は、昭和 36 年の設立以来、半世紀余りを団地管理のパイオニアとして、集合住宅
にお住まいの皆様のご要望にお応えし「安全・安心・快適な暮らし」を支援するサービ
スの提供、および貴重な社会ストックである集合住宅の資産価値の維持向上に努めてま
いりました。
当社は、UR 都市機構が供給した賃貸住宅、分譲住宅合わせて約 100 万戸に及ぶ管
理実績を有していますが、
「お住まいのお客様の急速な少子高齢化」、
「建物の経年劣
化」、
「地球環境への配慮」等、集合住宅の抱える問題は多様化し、当社の果たすべき社
会的責任は増してきていると考えております。
このような課題に対する取り組みの一環として、当社は環境 ISOと品質 ISO を統合し
たマネジメントシステムを構築し運用しております。環境 ISO の取り組みでは、環境方
針に沿った目標を策定し、事業活動に直結した環境負荷の低減や当社独自の環境配慮
技術・工法等の開発に努めております。
また地球環境への配慮も、省エネを軸とした、温室効果ガスの削減、循環型社会を形
成するための3R
(リデュース・リユース・リサイクル)や産業廃棄物の適正処理等の環
境活動を進めております。
当社は、
これからも社会の要請に応え、
コンプライアンスの徹底、品質改善、環境保
全、社会貢献活動を推進し、従業員一丸となって創意工夫を重ね、お客様の信頼を大切
にし、社会的責任を果たすよう努めてまいります。
代表取締役社長
JS 環境報告書2014 02
廣兼
周一
事業内容
1
当社は、集合住宅の総合的な管理のパイオニアとして、50 年以上の歴史があります。
UR都市機構の住宅をはじめ集合住宅にお住まいのお客様が、安全・安心・快適な住生活を送ることができるよう
に、
ハードとソフトの両面から各種のサポートをさせていただいています。
当社の事業内容は、
「マンション管理事業」、
「住宅リニューアル事業」、
「ストック改修事業」、
「生活サポート事業」
及び「技術サポート事業」の 5 事業に分かれており、当社ならではの高い技術と高品質なサービスをスピーディに
お届けしています。
マンション管理事業
UR賃貸住宅及び分譲マンションにお住まいのお客様にとって身近な管理事務所の窓口対応、敷地内の清掃、
日常的な修繕工事及び
給排水施設等のライフラインの維持・管理などを行っています。さらに、緊急事故受付センターを設置し、緊急事故等のトラブルにも
24 時間 365 日、
スピーディに対応し、安全・安心・快適な住生活をサポートしています。
消防設備の点検作業
外壁の点検作業
管理サービス事務所でのサポート
室内の熱感知器等の消防
設備を点検し、正常に動作す
ることを確認しています。
外壁の劣化状況などを点
検します。
UR 賃貸住宅のお住まいに係わる
お手続きやお問い合わせ対応、
ご要
望の取次ぎ等お住まいに関するサ
ポートをしています。
管理組合事務所での受付
分譲マンションにお住まいの皆様
のご要望やお問合せ、様々な内容の
事柄に親切丁寧に対応しています。
水質検査
給水施設の点検作業
様々な高性能測定器を使
い、水道水等の分析・測定を
行っています。
正常に給水できるように給
水ポンプの状態を点検して
います。
分譲住宅管理組合役員セミナー
防災専門家、
マンション管理士に
よる講演など、管理組合役員の方を
対象としたセミナーを開催していま
す。
緊急事故受付センター
緊 急 事 故につ い て 24 時 間 365
日、確実に対応できる体制を整え、お
客様が安心して快適な生活ができる
ようサポートしています。
清掃・植栽管理
集 合 住 宅 団 地 内 の 敷 地、
共用部分の清掃を行い、植栽
を計画的に管理し、環境の向
上を図っています。
地 震など大 規 模 災 害 へ の 対 応
当社はUR 都市機構と連携して、
大規模な地震発生直後から緊急補修・安全点
検等の復旧作業に当たるとともに、
飲料水などの物資の提供を行ってきました。災
害発生時には、
蓄積されたノウハウを活かし、
お住まいの皆様の安全で安心な暮らし
のお役に立てるよう、
緊急出動体制の整備に努めています。
JS 環境報告書2014 03
事業内容
2
ストック改修事業
屋上防水工事、外壁塗装工事、給水設備等修繕工事などの計画修繕を実施して、集合住宅の資産価値を高めています。
大規模修繕工事
自社開発の外壁調査診断機によ
る調査・診断
外壁修繕、給排水管の取り替え工
事など、集合住宅の生活環境を維持
していくための工事を行っています。
建 物 外 壁 のひび 割 れ・剥 離 など
を、高倍率カメラとレーザー距離計
を搭載した自社開発の診断機で、正
確に点検調査しています。
生活サポート事業
集合住宅の管理に長い経験と技術力を有する当社ならではのメニューを取り揃えた「JSリフォーム」でお客様に満足
いただけるリフォームをご提供いたします。会員向け生活サポート事業の「JSリリーフ」やショッピングセンターの経
営、
デイサービス施設、子育て支援施設などの誘致を通じて、快適な集合住宅生活をサポートしています。
会員制の「JSリリーフ」にご入会されると、管球取り替え、
ハウスクリーニング、
メンタルケア等の電話相談、不用品
回収、旅行等のご優待など約 70 種類以上のサービスを会員様価格でご利用いただけます。ご用命は専用のコール
センターが 24 時間 365 日でお応えします。
Before
J Sリフォーム
After
集合住宅にお住ま
いのお客様向けに、
リフォームで快適な
住まいづくりをお手
伝いします。
デイサービス施設などの誘致
UR 団地内の当社施設に高齢者
向けの介護施設を誘致しています。
住宅リニューアル事業
長年にわたるUR 賃貸住宅の住戸内工事の豊富な経験を有しています。UR 賃貸住宅の多様な間取り、設備などに精通した当社が
行うリニューアル事業では、
ライフスタイル等の変化に応じて、空家住宅のお部屋の仕様を魅力あるものにする「リニューアル工事」、
お部屋の設備のグレードアップを行う「ライフアップ工事」など、空家住宅の多様なバリエーションに対応した修繕工事を行っています。
リニューアル工事
Before
After
和室の洋室化、
バ
リアフリー化、
設備性
能の向上(システム
キッチン)などの 改
善を図っています。
浴槽の大型化
Before
After
古 いタイプ の 浴
槽を大型浴槽に取り
替 え ま す。写 真 の
風呂釜内蔵の大型
浴槽は当社の開発
商品です。
技術サポート事業
集合住宅の維持管理や改修工事、
さらには住環境などに関する技術開発及び調査研究を行い、当社独自の商品開発や、工事騒音の
低減化、作業時間の短縮化など環境に配慮した工法も開発しています。さらに、太陽光発電設備による発電など、地球環境に配慮した
取り組みも行っています。
※環境技術及び研究開発の拠点であるスクエアJ S は P14 で紹介しています。
JS 環境報告書2014 04
環境マネジメント
1
当社は環境に配慮しながら、
施工・サービスの向上を実現するために、
平成 24 年に環境 ISOと品質 ISO を統合し
ました。その結果、当社の事業活動とISO の一体化が図れ、
業務上の環境配慮活動と品質向上活動が有効に機能す
ることで、社会やお客様の期待にお応えすることができるよう進めています。
マネジメント体制
当社の環境 ISOと品質 ISO の統合マネジメントシステムの
運用も 3 年目に入りました。
東京支社
本社の安全推進・ISO 管理室は各支社の運用活動を集約
環境マネジメント体制図
し、各支社の安全推進・ISO 管理室は各支店の運用活動を集
本社
約することで、全社的にマネジメントシステムを維持・運用をし
関東支社
安全推進・
ISO 管理室
安全推進・
ISO 管理室
安全・品質
ています。
また、本社では安全・品質推進委員会、ISO 推進部会、
ワー
推進委員会
安全推進・
ISO
ISO 管理室
キンググループ会議を開催し、
システム見直しや環境目標の策
大阪支社
ISO 管理室
推進部会
定、目標に対する半期ごとの進捗確認などを行っています。
名古屋支社
福岡支社
外部審査
安全推進・
安全推進・
ISO 管理室
安全推進・
ISO 管理室
内部監査
当社は一般財団法人ベターリビングによる外部審査を受
け、環境 ISO の認証を取得しています。
平成 25 年度は、現場に負荷をかけない工夫をしながら、環
境マネジメントシステムの運用状況を効率的に確認するととも
平成 25 年度のサーベイランス( 維持審査)において、指摘
された項目については、
さらなる改善の機会と受け止め、着実
に対応しています。
に、改善に向けた提案を導き出すような内部監査を進めていま
す。
平成 24 年度までは、
内部監査員研修を管理職に特定し実施
してきましたが、
平成 25 年度からは、
より多くの従業員が ISO
を理解し、
有効な内部監査を実施できるよう受講者を一般職に
環境法規制の順守状況
も拡大し、
112 名が受講して内部監査員は462 人となりました。
各部署で関連する法規制を順守しながら業務を遂行し、その
順守状況は定期的に評価しています。
平成 25 年度の順守評価の結果、環境法規制に対する違反
はありませんでした。
JS 環境報告書2014 05
また、既に資格を持つ監査員のレベルアップを図るための研
修も実施しました。今後もこれらの研修を継続していきます。
環境マネジメント
2
環境目標
環境 ISO 認証取得当初は、
「紙・ごみ・電気」の削減に取り組む環境目標でしたが、一定の成果が得られたため現状レベルを維持す
る管理に切り替えました。現在は、環境配慮工事の促進など当社の事業活動に即したテーマを、環境目標として運用しています。
●
平成 25 年度
主な環境目標
対象組織
平成 25 年度の目標
産業廃棄物の分別
技術部 / 工事部
産業廃棄物に占める混合廃棄物の
全社平均を23.1% 以下に削減する
環境配慮工事の促進
技術部 / 工事部
団地内の住生活環境向上のため、
発見した危険個所の工事を7,611 8,525 件
件以上提案する
平成 25 年度工事受注件数以上
環境配慮工事の促進
営業企画部 /
営業部
当社開発の環境配慮工法・製品を
組み合わせた大規模修繕工事を
15 件以上提案する
36 件
福岡支社
ISO 目標としては、
平成 25 年度
で終了
環境配慮工事の促進
営業企画部
環境に配慮した材料・工法を採用
した定額制リフォーム工事を57 件
以上受注する
97 件
100 件以上受注
特別清掃の提案
業務部
管理団地において日常以外の清掃
箇所を提案し、
お住まいのお客様
が安全、安心、快適に生活できる団
地環境の向上に寄与する
計画比
102%
環境配慮商品・
工法の開発
技術開発研究所
高齢者や子どもに優しい環境実現
や住環境・屋外環境の改善に向け
た商品開発をする(5 商品化以上)
5 商品化
取り組みテーマ
実績
20.6%
達成状況
平成 26 年度の目標
産業廃棄物に占める混合廃棄物
の全社平均を22% 以下に削減
平成 25 年度受注件数以上
商品開発 2 品以上
環境維持管理項目
平成 25 年度より「電気エネルギーの節約」
「OA 用紙の節約」
「ガソリンの節約」の 3 項目について、平成 24 年度実績を現状レベル
として維持する管理を行いました。その結果、各項目とも前年度実績よりも削減、
もしくは向上することができました。
●
平成 25 年度
環境維持管理項目
維持管理項目
対象組織
平成 24 年度実績
平成 25 年度実績
平成 26 年度維持管理
電気エネルギーの節約
全社
3,604 千 kWh
3,439 千 kWh
現状のレベルを維持
OA 用紙の節約
全社
40,753 千枚
39,917 千枚
現状のレベルを維持
ガソリンの節約
全社
10.95km/ℓ
11.16km/ℓ
現状のレベルを維持
※
「現状のレベルを維持」とは、
平成 24 年度実績を維持管理レベルとします
JS 環境報告書2014 06
1
環境課題と技術開発
騒音
[ 音を抑える ]
居住中の住棟において、工事を行うにあたり最大の難問は騒音です。当社は騒音の低減化という技術課題に取
り組み、大きな成果を挙げてきました。騒音を抑える技術は、
エネルギーロスが少なく、住環境を損ないません。
音のレベル(音圧レベル)は「dB(デシベル)」という単位で測定されます。日常生活では 40 〜 60 dB が望まし
いと言われています。例えば、図書館は 40dB、静かな事務所は 50 dB、普通の会話は 60 dB、騒がしい事務所は
70 dB、電車の車内は 80 dB、電車が通るときのガード下は 100 dB 程度と言われています。
鋼管 SGPカッター : 配管をくわえて潰して切断する静音工法(平成 11 年度開発)
安全で静かに既存住宅配管を撤去でき
る鋼管SGPカッター
集合住宅の建物には給水管(配管用炭素鋼鋼管(SGP)等)
が敷設されており、
リニューアル時に住戸内床下の古い給水管
を切断、撤去する必要があります。切断には、
セーバーソーや
グラインダーが使用されており、切断時の騒音は現場で 90
dB、階下の住宅でも 70dBと非常に高いものでした。また、1
カ所の切断に約 50 秒かかり、一室の工事で数カ所行うため、
近隣の居住者の方に大変ご迷惑をかけていました。
この騒音問題を解決したのが鋼管 SGPカッターです。切断
Before
After
クラインダーによる切断
SGPカッターによる切断
の原理は油圧によって端を潰すペンチと同様で、屈強な歯を持
つヘッドが配管をくわえて潰し、鋼管を破断することにより切断
しま す。鋼 管 SGPカッタ ー を 使 用 す ると、騒 音 発 生 源 で
70dB、階下の住宅では 50dBまで低減でき、切断時間も 1カ
所約 20 秒と短縮できます。
また、
グラインダー使用時には火花が発生するため対策が
必要でしたが、
この工法ではその必要はありません。
スラブ貫通管油圧引き抜き工具 : スラブ貫通部の配管を油圧でグイッと引き抜き(平成 20 年度開発)
従来の工具
(穿孔機)は
20㎏だった
が、
スラブ貫
通管油圧引
き抜き工具
は15㎏
鉄筋コンクリート造のコンクリートスラブを貫通している給
水配管の更新工事では、従来は、
コンクリートスラブに穴をあ
ける穿孔機(ダイヤモンドコア)により配管を撤去していまし
た。この工法では、穴をあける際の騒音は 95 〜 103dB で穿
孔時間が 1カ所約 20 分かかり、近隣の居住者の方に大変ご迷
惑をかけていました。
この騒音対策として、既存の配管を引き抜く工具を開発し、
引き抜いた穴を再利用して配管を設置する工法に変更しまし
た。開発した工具は、電動式油圧ポンプの力で配管を引き抜
くもので、口径 32 〜100A の配管に対応しています。
これにより騒音は、配管引き抜き時 82dB、作業時間 1カ所
約 8 分まで短縮できました。さらに、手動式油圧ポンプを使用
すれば、
もっと小さな騒音で作業が可能です。
JS 環境報告書2014 07
Before
従 来は、
穿孔
機による穴あ
け
After
スラブ貫通管油圧引き抜き工具
による配管の引き抜き
環境課題と技術開発
2
音源室・床遮音性能実験室 : 上下階床騒音を科学し、床遮音材料を開発する施設(平成 18 年度開設)
団地で発生する騒音の多くは、
日常の生活から生まれます。
子どもが走り回ったり、飛び降りたりするときの床衝撃音は、大
きな騒音を下階にもたらします。この騒音のメカニズムを解
明するために、
スクエア JS ストック技術実験館には床遮音性能
実験室が設けられています。
実験室は、鉄筋コンクリート造の上下階(4F 音源室、3F 測定
音源室で床を作る①
音源室の床をバングマシンで叩い
て重量床衝撃音を発生させる②
タッピングマシンにより軽量床衝撃
音を発生させる③
測定室で音源室の衝撃音を測定し
てデータを収集する④
室)。上下階を隔てるコンクリートスラブは 15 センチ。音源
室ではスラブの上に様々な遮音床材で床を構成し、衝撃を与
えて試験的に音を発生させます。→①②③
階下の測定室には上階での衝撃音発生をモニターするディ
スプレイが設置されており、多数のマイクが天井に向かって設
置されています。→④
下記に紹介するJSソフトフローリングも、
この音源室・床遮
音性能実験室において、遮音性能を向上させるための改善に
取り組んでいます。
JSソフトフローリング : 階下への遮音に配慮した、和室の洋室化に最適なフローリング(平成 7 年度開発)
JSソフトフローリングの
仕上部と下地部
1960 年代から1970 年代にかけて多くの公団住宅が建設
されましたが、当時は畳を敷いた和室が主流でした。畳は遮音
性能に優れた素材ですが、現在の生活様式にマッチしません。
そこで和室を洋室化する際の工法として開発されたのが「既
存の床根太、荒床の床下地を撤去することなく施工できる」JS
Before
ソフトフローリングでした。
下地部分にポリエチレン発泡体を使い、表面の床仕上部は遮
既存和室(6 畳)
After
JSソフトフローリング施工後の床
音性能を有するフローリングを施工する2 層構造です。JSソ
フトフローリングによって畳と同等の遮音性能を実現しました。
voice
「音」は当社の事業と密接な関係にある技術開発テーマ
当社は、集合住宅の維持管理や改修工事を事業の対象としています。
施工は、
お客様がお住まいの団地内にて行われるため、
可能な限り施工中の低騒音化を図るべく様々な工具
や工法を当社は開発してきました。例えば改修工事では、畳敷きのフローリング化など、上下階の遮音性能に
配慮された技術が必要とされます。技術開発研究所では、各種測定器具を取り揃え、
床遮音性能実験室を整備
し、
これらの「音」に関わる技術開発に努めてきました。
技術開発研究所
そして、
今までもこれからも、
「音」は、
当社の事業と密接な関係にある技術開発テーマであり続けると認識し、 開発企画課長
笠間 篤
取り組んでいきます。
JS 環境報告書2014 08
3
環境課題と技術開発
廃棄物
[ ゴミを出さない ]
リニューアル等工事では、既存の陳腐化した部材(部品)を最新の部材(部品)に更新します。その際に重要なこと
はゴミを出さないことです。工事に伴って排出されるゴミは産業廃棄物になってしまいます。
住宅設備を壊して廃棄すれば、その工事のために多くのエネルギーと工期が必要になります。しかし既存部材(部
品)を有効活用してゴミを少なくすれば廃棄物や CO2 の排出量が減り、資源の無駄遣いもなくなり短工期・低コスト
が実現できるのです。
GRAF 工法:接ぎ木のように新下枠を取り付ける画期的改修工法(平成 16 年度開発)
段差発生
部屋の開口部が窓。その窓を支えるのがアルミサッシ。ペ
アガラスなどにして部屋の断熱性能を高めたいなら、
アルミ
Before
従来工法は、
既設の下枠レー
ルに新設枠をカバーするの
で下枠段差が発生
サッシをリニューアルする必要があります。従来工法で下枠
レールを加工すると、下枠段差が発生し、枠有効間口が狭く、高
さが犠牲になりました。
GRAF 工法は既設の下枠外レールを専用工具でカットし、
その
上に新しいアルミ枠をかぶせるので下枠段差が発生しません。
段差ゼロ
GRAF 工法とは(工法名の由来)
After
根本を活かす接ぎ木(Grafting)
GRAF工法で下枠レールを
加工すれば下枠段差はゼロ。
このGRAF工法では14の特
許を取得
のように、既設アルミ窓枠を有効利
用することから名付けました。
プレスドア交換工法 : 既存枠材をそのまま利用して、対震丁番を採用した玄関ドアに交換(平成16 年度開発)
地震の発生時に玄関ドア枠が変形し、室内に閉じ込められる
ことがあります。しかし、対震性能に優れたドアに交換するに
は、既存枠を撤去する大がかりな工事になり、廃棄物と騒音が
After
Before
昔ながらの公団の
玄関ドア
プレスドア交換工法による
玄関ドア
発生し、長い工期と高い工費が必要になります。
プレスドア交換工法は、元のドア枠を活用して新しいドアに
取り換える工法です。既存枠をそのまま利用するため廃棄物
を削減し、
わずか 1 時間程度の工事で済み、騒音の発生も抑え
られます。
また、対震丁番を標準で装備しているので、強い地震でドア
枠が変形した場合でも、丁番のスプリングがドア枠の歪みを吸
収し、小さな力でドアを開けることができます。
なお、玄関ドアの改修については、他にも工法を開発してお
り、既存のプレスドアに断熱・遮音材を後付けし、性能を向上さ
せるプレスドア断熱化工法があります。
JS 環境報告書2014 09
対震丁番
(内部構造)
丁番の内部にス
プリングがあり、
地 震によるドア
枠の歪みを吸収
環境課題と技術開発
4
敷居カバー工法 : ガタガタする敷居を少し削って、
樹脂製敷居で再生(平成 8 年度開発)
襖や障子の上側のレールを鴨居、下側のレールを敷居と言
Before
経年によってすり減り、
滑りが悪くなった敷居
います。経年によって摩耗するのが敷居。長年にわたって使
用すると、襖が開きにくい、
ガタガタする、見た目が汚い、
という
症状が現れます。ところが敷居の交換工事は大変です。
この敷居の再生を簡単にできるようにしたのが、敷居カバー
工法です。既存敷居のヒバタ(溝)を電動カンナで削り落とし
て平滑に仕上げ、新しい敷居カバー材(樹脂製)を貼り付けま
す。
After
既存敷居を削って樹脂
製のカバーを貼り付け
押入れユニット : 既存壁をそのままに、工場で製作したパネルを現場で組み立て(平成 24 年度開発)
1960 〜 1970 年代に建設された公団住宅の床は畳で、収
納は押入れでした。この押入れを収納棚やクローゼットにリ
フォームするには、既存の押入れをすべて撤去するために現場
での工期を長く確保する必要がありました。
Before
既存和室の押入れ
After
明るい収納スペースに変身
この悩みを解決したのが押入れユニットです。リフォーム工
事に必要なパネルは工場で製作します。そして作業は押入れ
の襖や棚を撤去して専用パネルを組み立て新しい押入れユ
ニットの空間を構成します。この押入れユニットによって静か
で速い施工が実現したのです。
voice
廃棄物を出さない工法を開発する理由
CO2 削減だけではありません。既設の枠などを壊さずに利用すれば、現場作業が少なくな
技術開発研究所
設備技術グループ
リーダー
り、
騒音の発生を抑制することができます。工場で生産したパネルやアルミサッシ、
ドアを使
佐野 将之
わたしたちは廃棄物を出さない、環境にやさしい工法を開発してきました。その理由は
うことで品質を保ち、短工期・低コストにできるのです。
高齢化社会を迎え、建設業界の技術者・技能者の不足が懸念されていますが、廃棄物を
出さず、現場作業を少なくする工法は、
この人材不足にも対応できる工法と考えます。
これからも品質と技術力を向上させ、新しい工法開発に取り組んでいきます。
JS 環境報告書2014 10
地球温暖化への対策
異常気象の原因の 1 つと考えられているCO2 の排出を抑制するため、電気使用量の削減等に努め、
エネルギー
の有効利用を進めています。
●
CO2 排出量の削減
CO2排出量(全社)
事務所等 ●排出係数 (排出
駐車場業務
当社は、特定事業者として全事業所のエネルギー使用量及び CO2 排
(t-CO2) 3,636
10,000
出量を経産省へ報告しています。平成 25 年度の CO2 排出量は 5,865
3,334
係数)
(×101 )
6
3,093
8,000
1,082
500
(t-CO2)と、平成 24 年度から9%削減しています。
400
6,000
事務所等の電気及びガスの使用に伴って排出するCO2 排出量は各
電力会社の CO2 排出係数(平成 23 年度比 47% 増)が増加したため増
4,000
えていますが、平成 24 年度、平成 25 年度とエネルギー使用量(KWh)
2,000
は削減しております。
4,811
6,203
5,016
5,865
5,360
300
200
0
21
22
23
24
25(年度)
※CO2排出量=エネルギー使用量
(KWh)×CO2排出係数
0
電気使用量
●
当社では全社を通じて、国内の 5 つの電力会社と、合計で 700 件を超
事務所での電気使用量
(千kWh)
5,000
える電気契約を交わしています。
このうち、本社・支社・支店の 30カ所の事務所では平成 24 年度の
4,000
電気使用量を超えないよう節電に取り組んでいます。平成 25 年度の
3,000
4,527
事務所での電気使用量は 3,439(千 kWh)となり、平成 24 年度比で約
2,000
3,767
3,439
4,462
5%削減することができました。環境 ISO を導入し、電気使用量の集計
3,610
1,000
を開始した平成 21 年度以降、
自社ビルへのデマンド管理システムの導
入や省エネタイプの照明、空調設備への切り替えなど施策を重ねた結
0
21
果 24%以上の節電に成功しています。
●
ガス使用量
22
23
24
25 (年度)
事務所等でのガス使用量
(千m3)
250
当社では事務所や、団地内清掃業務における清掃員の詰所で使用す
150
る都市ガス等の使用量削減にも取り組んでおり、平成 25 年度は 185
(千 m3)と平成 21 年度の使用量 240(千 m3)に対して 23% 以上削減
240
100
196
185
208
することができました。
189
50
0
エコドライブの推進
21
22
23
24
25 (年度)
※過去の実績を見直しています
当社の 30 事業所では、
施工管理や巡回点検作業などのために996 台
の社有車を使用しています。電気自動車、
ハイブリッド車、
アイドリング
ストップ車等 525 台の環境対応車を導入するとともに、
社有車を利用す
る全員を対象に、
JAF(日本自動車連盟)の「誰でもできるエコ運転術」
を講習テキストとした研修を実施し、
エコドライブに取り組んでいます。
JS 環境報告書2014 11
●
社有車の使用状況
年度
保有台数
総走行距離
総給油量
平均燃費
平成 22 年度
896 台 6,301,749km 586,715ℓ 10.74km/ℓ
平成 23 年度
902 台 6,104,543km 551,155ℓ 11.08km/ℓ
平成 24 年度
944 台 6,695,797km 611,341ℓ 10.95km/ℓ
平成 25 年度
996 台 6,782,134km 607,676ℓ 11.16km/ℓ
産業廃棄物の適正処理
団地の住戸内等工事を年間 33 万件行っている当社は多くの産業廃棄物を排出します。これらを適正に処理す
るとともに、分別を進め、最終処分量の削減に努めています。
●
産業廃棄物の取り扱い
産業廃棄物排出量
産業廃棄物排出量
(t)
50,000
当社の小規模工事で発生する産業廃棄物は、支店ごとの管理区域内
に設けた事業場外保管場所に集められ、そこから収集・運搬処理業者に
25.6
40,000
より搬出されます。
24.9
混載率
(%)
30.0
25.4
25.0
23.2
20.7
この事業場外保管場所では、産業廃棄物の種別ごとにコンテナを配置
30,000
20.0
36,223
し、
管理者を置くなどして協力工事店とともに分別に取り組んでいます。
20,000
大規模工事で発生する産業廃棄物は現場から直接排出しますが、
団地
内の限られたスペースに複数のコンテナを置き、分別を行っています。
37,264
38,232
38,674
15.0
35,099
10,000
当社の産業廃棄物排出量は請け負う工事の量や種類によって変動し
10.0
0
ます。平成 25 年度は大規模な撤去工事が影響したため 38,674(t)と
21
22
23
0
25(年度)
24
排出量が増えております
●
産業廃棄物の発生抑制や分別
産業廃棄物の内訳
(平成25年度)
その他
2,456t
(6.4%)
当社で施工する工事がリニューアル事業等であるという特性から、混
合廃棄物の比率が高くなる傾向にあります。そのため、発生した産業廃
金属くず
1,869t
(4.8%)
棄物を分別し混合型廃棄物の比率を低減させる取り組みを進めてきま
その他ガレキ類
1,267t
(3.3%)
した。平成 25 年度は、大規模な撤去工事が影響したため排出量は増え
繊維くず
1,714t
(4.4%)
ていますが、混載率については低減を図ることができました。
混合
8,003t
(20.7%)
38,674t
木くず
7,103t
(18.4%)
廃プラスチック類
3,420t
(8.8%)
引き続き、工事用資材の出荷段階での簡易包装による現場でのごみ
減量化や、金属くずのリサイクル処理、古タタミの肥料化やセメント燃料
アスコンがら
3,377t
(8.7%)
化など、産業廃棄物として排出しない工夫も進めていきます。
コンクリートがら
9,465t
(24.5%)
団地内の様々な工事で発生する多様な廃棄物を、現場や事業場外保
管場所において仕分けることは手間のかかる作業ですが、今後も取り組
んでいきます。
●
電子マニフェストの推進
当社は早くから産業廃棄物の不法投棄防止対策として運搬終了、処
分終了等を確実に実施されていることが確認できる、電子マニフェスト
の利用を進めてきました。平成 25 年度に当社が発行したマニフェスト
は合計で 12,665 件ですが、そのうち約 97% が電子マニフェストによる
もので、電子マニフェストの普及率を 50%とする環境省の目標が設定
されている現状に対し、高い電子化率を達成しています。
JS 環境報告書2014 12
産業廃棄物事業場外保管場所での分別
社会貢献(CSR)
団地は生活の場であり、
コミュニティそのものです。子どもからお年寄りまで、幅広い世代が快適に過ごしてい
ただくため、様々な社会貢献活動を行っています。また未来を担う子どもや若者に対する啓蒙・学習活動にも力を
注いでいます。
小学校の環境ボランティア学習に協力
(福岡市・原団地)
クリーンメイトから説明
を受ける生徒たち
平成 25 年 7 月 2 日(火)に原団地に隣接する小学校の 3 年生の生徒 98 名を対象
に、環境ボランティア学習と合わせて、職場体験等学習を実施しました。これは CSR 活
動の一環として実施したものです。
生徒は 3 班に分かれて、
クリーンメイトから説明を受け、真剣な表情で公園や団地内
通路等のゴミ拾いを行いました。
最後に生徒から「いろいろな種類のゴミが落ちていてビックリした。これからはゴミ
を捨てないようにします。今日はありがとうございました」と感謝の声で終わりました。
理工系大学生のスクエアJS 見学会を開催
ゴミを集める生徒たち
(埼玉県・西浦和・スクエアJS)
当社では平成 26 年度から理工系大学生を対象にした「スクエアJS 見学会」を開催し
ています。開催日は、
平成 26 年 5 月 15 日(木)、
17 日(土)、6 月 6 日(金)
、9 日(月)の
床遮音性能実験室で
の実習
4 日間で計 117 名の学生が参加しました。
見学会後に大学の先生方から「ストック技術等についての認識が深まった」
、
「実社会の
技術についての知見が広がった」等の声が寄せられ、
当社の社会貢献活動としての成果
を挙げています。
また学生たちからのアンケートには、
ストックを長く活用するための技術、
環境負荷軽
減の発想の重要性等についての感想が書かれており、
これまで意識してこなかった住宅
管理の仕事を自分の仕事、
あるいは自分の研究テーマとして考えている様子がうかがえ
ました。
講義を受ける学生
今後も社会貢献活動の一環として、
多くの大学との連携や共同研究等を積極的に進
めていきたいと考えています。
「みどりの教室」と「観葉植物インテリア作成イベント」を開催
(千葉市・花見川団地)
みどりの教室の様子
平成 26 年 6 月 28 日(土)に花見川団地にて「みどりの教室」と「観葉植物インテリ
ア作成イベント」を開催しました。これは「団地居住者を対象にした環境学習等の CSR
活動」であり、団地にお住まいの 33 名の皆様が参加されました。
「みどりの教室」では、団地内にある植物の特性・役割・管理の仕方等について説明
され、団地内にある5 種類のサクラ開花時の写真が紹介されました。
「観葉植物インテ
リア作成イベント」では参加者全員がガラスの鉢にカラーサンドをかけ、
ミニ観葉植物
を 2 つ植えました。
団地内の植物についてお客様の関心がとても強く、和気あいあいの雰囲気で皆様
にご満足いただけた一日になりました。
JS 環境報告書2014 13
観葉植物インテリアを
和気あいあいと作成
スクエアJS にお越しください
スクエア JS は技術開発研究所と緊急事故受付センターからなる複合施設です。
施設内に当社が開発した製品、工法を紹介しており、一般の方々に見学いただけます。
ストック技術提案館
本館
改修工具・改修工法提案ゾーン、
サニタリー改修技術提案ゾーンな
環境試験室・分析室、
緊急事故受付センターを含む 4 階建。
ど多くの当社開発品を展示。見学者に実際に触れていただけるス
太陽光パネル、屋上・壁面緑化、電気自動車を備えています。
ペースです。
本館の外観と環境試験室
当社開発品を展示する提案館
ストック技術実修館
ストック技術実験館
人材育成の拠点として、
平成 24 年 3 月に完成しました。当社の技術
団地生活の快適な未来を実現するため、当社が開発し
者だけでなく、
協力会社の職員を含めた技術の伝承を目的に、
給水
た製品・工法を実際の環境で施工検証、実験測定して
施設研修用設備を配置するなど、
様々な工夫が凝らされています。
います。
実修館の外観(左)と
給水施設研修用設備(右)
日本総合住生活株式会社 スクエア JS
〒338-0837 埼玉県さいたま市桜区田島 7-2-3(JR 武蔵野線 西浦和駅より徒歩 5 分)
TEL:048-714-5000
FAX:048-844-8521
詳しくは当社の HP をご覧ください
http://www.js-net.co.jp/about/lab-square-js.html
JS 環境報告書2014 14
床遮音性能実験
会社組織
技術開発研究所(スクエアJS)
本社
東京支社
東京東支店
城北支店
東京北支店
東京南支店
北多摩支店
南多摩支店
横浜支店
横浜南支店
神奈川西支店
関東支社
千葉支店
千葉西支店
千葉北支店
浦和支店
東埼玉支店
西埼玉支店
大阪支社
大阪中支店
大阪北支店
大阪南支店
兵庫支店
阪神支店
奈良支店
京都支店
名古屋支社
名北支店
福岡支社
北九州支店
お問い合わせ先: 安全推進・ISO管理室
Tel:03-3294-3381 FAX:03-3518-7582
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JS 環境報告書2014 15