國立政治大學日本語文學系 碩士論文 指導教授:吉田妙子 立 政 治 大 ‧ 國 學 ‧ 語彙概念構造を用いたカケル構文の解釈 n al er io sit y Nat ―ACT と BECOME が持つ成立点― Ch engchi 研究生:城戸秀則 i n U 撰 中華民國一○四年六月 v 謝辞 本 論 文 の 作 成 に当 た り 、多 くの 方 々 に ご 支 援 と ご 指 導 をい た だ い た こ と 、心 よ り 感謝 申 し 上 げ ま す 。 そし て こ の 感 謝 の 気 持 ちを 、誰 よ り も 先 ず 、指 導 教授 の 吉 田 妙 子 先 生 に お 伝え 申 し 上 げ ま す。私 が 政 治 大 学 日 本 語 文 学 系 の 院 生と し て 入 っ た の は、ち ょ う ど 先 生 が 退 官な さ る 1 年 前 で し た の で 、ご指 導 い た だ け た のは 1 年 間 だ け で し た 。し か し 、こ の 短 い 間 に 、先 生 のそ れ ま で の 教 授 経 験・人 生 経 験 を 凝 縮 し た よ う な 、密 度 の 濃 い ご 講 義 を 拝聴 で き た お か げ で、こ の 論 文 を 書 き 上 げる こ と が で き た と 言 っ て も 過 言で は あ り ま せ ん 。 治 政 蘇 文 郎 先 生、文 献 や 論 文 の 多 読 に より 、そ の 読 大み 方 や 批判 の 仕 方 を 教 え 立、日 本 語 に お け る 敬 語 表 現 の 面白 さ や 奥 深 さ を て く だ さ っ た 王淑 琴 先 生 ま た 、日本 語 学 や 認 知 言 語 学 の 知 識を 基 礎 か ら 叩 き 込 んで く だ さ っ た ‧ 國 學 説 い て く だ さ った 蔡 瓊 芳 先 生 に も 、 心 か ら お 礼 を 申 し 上げ ま す 。 そ し て 、院 生 で は 唯 一 の 外 国 人 で あっ た 私 を い つ も 気 にか け て く だ さ っ た 主 任 の 徐 翔生 先 生 、学 生 生活 で 困 っ た こ と が あ る 度に 、い ろ い ろ 相 ‧ 談 に 乗 っ て 、サ ポ ー ト し て く だ さ った 頼 庭 筠 さ ん 、徐欣 瑜 さ ん に も 、厚 y Nat く お 礼 を 申 し 上げ ま す 。 sit さ ら に 、た びた び 論 文 を 見 直 し 、適 格 且 つ 貴 重 な ア ド バイ ス を く だ さ al er io っ た 姜 鈞 傑 先 輩、台 湾 に つ い て い ろい ろ と 教 え て く だ さっ た 陳 冠 甫 先 輩、 共 に 切 磋 琢 磨 した 戴 秀 容 先 輩 、陳 祥 さ ん 、邱 姿 維 さ ん 、劉 徳 駿 君 、洪 依 n v i n 帆 さ ん と い う 良き 学 友 が いC た か ら こそ 、楽 し く 学 問 研 究 に 励 む こ と が で hengchi U き た の だ と 思 いま す 。 政 治 大 学 日 本 語文 学 系 の 102 期 生 とし て 入 学 で き、本 当 に 良 か っ た と 思 い ま す 。こ の 年 に 入 学 で き た か らこ そ 、こ の よ うな 素 晴 ら し い 先 生 方 や 仲 間 に 出 会 えた の で す か ら 。こ の 論 文 は 、政 治 大学 日 本 語 文 学 系 の 皆 様 に 支 え ら れ たお か げ で 、 完 成 し た も の な の で す 。 最 後 に 、い つも 私 の わ が ま ま を 許 し 、自 由 に や り た い こと を さ せ て く れ る 両 親 に、感 謝 の 意 を 述 べ た い と思 い ま す 。本 当に あ り が と う ご ざ い ます。 用語彙概念構造 (LCS)來 說明 kakeru 構文 的用法 ― ACT 和 BECOME 擁 有的成立點― 摘要 到 目 前 為 止,針 對 出 現 在 kakeru 構 文 中 的 意 義 解 釋 上 的差 異,在 現 有 的 研 究 中 並 沒 有做 出 明 確 的 探 討。本論 文 的 目 的,是 利用 LCS,有 系 統 性 地 統 一 掌 握 該 差異,並 給 予 明 確 的 說 明。在 過 去 的 研 究 裡, 說 明 了 藉 由 動 詞 的 aspect 來 確 定 kakeru 構 文 的 解 釋 是「 動 作 開 始 前的 用 法 」或 是「 動 作 治 政 說 明。即 使 試 著 做 整 體 性 的 說 明,卻 還 是 會 產 生大 矛 盾。因 此,在 本 論 文 中 , 立 kakeru 構 文 的 研 究 , 藉 此 來客 觀 整 理 每 個 動 詞 首 次 嘗 試將 LCS 理 論 導入 發 生 途 中 的 用 法 」。 但 該 動 詞 分 類 的 基 準 不 明 確 , 同 時 又 侷 限 了 對 解 釋 的 ‧ 國 釋 帶 來 何 種 影 響, 做 出 系 統 性 的 論 述。 學 所 擁 有 的 成 立 點( 語 彙 上 的 aspect), 並 將 該 成 立 點 會 對 kakeru 構 文 的 解 本 稿 共 分 為 六 章。 在 諸 論 , 說 明 本 論文 的 目 的 和 動 機 、 方法 、 架 構 、 ‧ 以 及 研 究 範 圍。在 第 一 章,舉 出 過 去 的 研 究,並 指 出 其 問 題 點。在 第 二 章 , y Nat 用 LCS 來 探 討 Vendler 四 分 類 的 動 詞 擁 有 什 麼 樣 的 成 立 點之 後 ,將 本 論 文 al achievement 、 及 第 五 章 的 er activity 、 第 四 章 的 io 如 在 第 三 章 的 sit 的 主 張 做 出 整 理,並 提 出 理 論。從 第 三 章 以 後,根 據 第 二 章 所 提 出 的 理 論, accomplishment, 根 據 過 去 的 研 究 , 將 各 個 動 詞 再 做 更 細 部 的 分 類 , 並 舉 n v i n 出 用 例 , 來 證 明其 理 論 的 有C 效 性 。 最後 在 第 六 章 做 出 結 論。 he gchi U 從 以 上 論 述,可 將 kakeru 構 文n 的 意 義 總 結 為「 動 詞( 句)表 示 的 動 作 未 到 達 成 立 點」,由 此 根 據 文 脈,導 出「 将 動 相」「 将 変 相」的 解 釋 並 做 出 結論。 關 鍵 詞: kakeru 構 文 , Vendler 四 分 類 , LCS, 成 立 點 , Incremental Theme 語彙概念構造を用いたカケル構文の解釈 ― ACT と BECOME が 持つ成立点― 要旨 本 論 の 目 的 は、こ れ ま で の 研 究 で は明 ら か に さ れ て こ なか っ た 、カ ケ ル 構 文 に 現 れ る 意 味 解 釈 の 異 な り を 、 語 彙 概 念 構 造 ( LCS) を 用 い る こ とによって、体系的・統一的に捉え、明確な説明を与えることである。 従 来 の 研 究 で は、動 詞 の 語 彙 的 ア スペ ク ト に よ り 、カ ケ ル 構 文 の 解 釈 が 「 開 始 前 読 み 」か「 途 中 読 み 」か が 決 ま る と さ れ て き た が 、 そ の 動 詞 分 治 政 一 的 に 説 明 を 与え よ う と す る と、ど う し て も 矛 大盾 が 生 じる 箇 所 が 出 て し 立が 現 状 で ある 。 そ こ で 、本 論 で は 、カ ケ ル 構 文 ま う と い う 問 題が あ る の 類 の 基 準 が 曖 昧 で あ っ た り 、解釈 に 対 す る 説 明 が 局 所 的で あ る た め 、統 ‧ 國 學 の 研 究に LCS の 理 論 を 導 入 す る とい う 初 の 試 み に よ り 、そ れ ぞ れ の 動 詞 が持つ成立点(語彙的アスペクト)を客観的に整理し、その成立点が、 カ ケ ル 構 文 の 解釈 に 影 響 を 与 え て いる と い う こ と を 体 系的 に 論 じ る 。 ‧ 本 稿 は 、 全 6 章 か ら な る 。 序 章 では 、 研 究 の 目 的 と 動機 、 研 究 方 法、 y Nat 構 成 、研 究 範 囲 に つ い て 述 べ る 。第 1 章 で は 、先 行 研 究 を 挙 げ 、そ の 問 sit 題 点 を 指 摘 す る。 第 2 章 で は 、 LCS を 用 い て 、 Vendler の 4 分 類 に お け al er io る そ れ ぞ れ の 動詞 が 、ど のよ う な 成 立 点 を 有 す る の か を明 ら か に し た 後、 本 論 の 主 張 を 理論 化 し た も の を 提 示す る 。第 3 章 以降 で は 、第 2 章 で 掲 n v i n げ た 理 論 を も とに 、第 3 章C で は 活 動動 詞 、第 4 章 で は到 達 動 詞 、第 5 章 he gchi U で は 達 成 動 詞 とい う よ う に 、それn ぞ れ 動 詞 を 、先 行研 究 を も と に 更 に 細 か く 分 類 し た 後、実 例 を 挙 げ な が ら、 理 論 の 妥 当 性 を 証明 し て い く 。第 6 章では結論を述べる。 以 上 の こ と か ら 、 カ ケ ル 構 文 の 意 味 が 、「 動 詞 ( 句 ) の 動 き が 表 す 成 立 点 に 至 ら な い 」 と い う こ と に 一 本 化 さ れ 、 そ こ か ら 文 脈 に よ り 、「 将 動 相」「 将 変 相 」 の 解 釈 が 導 か れ ると い う 結 論 に 至 る 。 キ ー ワ ー ド : カケ ル 構 文 、 Vendler の 動 詞 の 四 分 類 、 語彙 概 念 構 造 、 成 立 点 、 Incremental Theme( 漸 増 的 変 化 対 象 ) 目次 序 章 はじめに 第1節 研 究 の 目 的 と 動 機 ―1 第2節 研 究 方 法 ―2 第3節 構成 ―2 第4節 研究範囲 ―3 第1章 先行研究とその問題点 第1節 第2節 治 政 姫 野 ( 1999) ― 5 大 立カ ケ ル 」 ― 5 「継続動詞+ 金 田 一 ( 1976b) ― 4 ‧ ‧ 國 學 2.1 2.2 「 瞬 間 動 詞 + カ ケ ル 」 ― 6 第 3 節 岸 本 ( 2000) ― 8 第 4 節 宮 腰 ( 2009a) ―9 第 5 節 Tujimura and Iida( 1999)、三 原( 2004)、高 見・久 野( 2006)、 sit y n al Ch er 活動動詞とカケル構文 io 第2章 Nat 村 尾 ( 2009) ― 12 i n U v 第1節 Vendler の 動 詞 の 4 分 類 ― 14 第2節 活 動 動 詞 の 成 立 点 ―15 第3節 到 達 動 詞 の 成 立 点 ―17 第4節 達 成 動 詞 の 成 立 点 ―17 第5節 動 詞 の タ イ プ に よ る 成 立 点 と カ ケ ル 構 文 の 解 釈 ― 20 第3章 engchi 活動動詞とカケル構文 第1節 ヲ 格 名 詞 句 が 持 つ IT 成 立 点 ―26 1.1 ヲ 格 名 詞 句 が 定 名 詞 句 で あ る 場 合 ―27 1.2 ヲ 格 名 詞 句 が 定 名 詞 句 で な い 場 合 ―31 1.3 「 Incremental Theme( 漸 増 的 変 化 対 象 )」 ―34 第2節 活 動 動 詞 の 分 類 ― 36 2.1 活 動 動 詞 に お け る 先 行 研 究 ― 36 2.2 他 動 詞 と し て の 活 動 動 詞 ― 40 2.3 自 動 詞 と し て の 活 動 動 詞 ― 43 第 3 節 「 読 む 」「 言 う 」「 飲 む 」 の 両 義 的 解 釈 の 原 因 ―43 第 4 節 カ ケ ル 構 文 に 用 い ら れ た 例 ―47 第4章 到達動詞とカケル構文 政 治 大 「 冷 え る 」「 温 ま る 」 が 持 つ LCS と ア ス ペ ク ト ― 64 立 英 語 と 日 本 語 に お け る 構 造 上 の 差 異 ―66 學 ナ ル ― 67 ナ ル が 表 す 変 化 ― 「 瞬 間 変 化 」 と 「 段 階 変 化 」 ― ― 67 ‧ 「 相 対 的 成 立 点 」 と 「 絶 対 的 成 立 点 」 ― 69 瞬 間 変 変 化 と 段 階 変 化 の 違 い ―71 ガ 格 名 詞 句 と BECOME ― 73 n al 状 態 変 化 を 表 す 場 合 ―77 Ch 位 置 変 化 を 表 す 場 合 ―79 engchi y er カ ケ ル 構 文 に 用 い ら れ た 例 ―77 sit 移 動 動 詞 ― 75 io 第5章 到 達 動 詞 に お け る 先 行 研 究 ― 56 cool が 持 つ LCS と ア ス ペ ク ト ― 61 Nat 1.1 1.2 1.3 1.4 第2節 2.1 2.2 2.3 2.4 第3節 第4節 4.1 4.2 BECOME と MOVE ―56 ‧ 國 第1節 i n U v 達成動詞とカケル構文 第1節 達 成 動 詞 に お け る 先 行 研 究 ―85 第2節 カ ケ ル 構 文 に 用 い ら れ た 例 ―88 2.1 状 態 変 化 ・ 位 置 変 化 の 使 役 動 詞 の タ イ プ ― 89 2.2 作 成 動 詞 の タ イ プ ― 93 第6章 終わりに 第1節 結 論 ― 98 第2節 今 後 の 課 題 ―100 参 考 文 献 ―101 立 政 治 大 ‧ ‧ 國 學 n er io sit y Nat al Ch engchi i n U v 序 序 章 はじめに 章 はじめに 第1節 研究の目的と動機 本 稿 で 扱 う の は、以 下 の よ う な 、動 詞 に カ ケ ル が 後 接 する 表 現( 本 稿 で は 「 カ ケ ル 構文 1 」 と 呼 ん で お く ) で あ る ( 下 線 は 筆 者)。 ( 1) 冒 険 家 の 田 中 は 何 度 か 死 に かけ た 。 ( 2) 鈴 木 は 何 か 言 い か け た が 、 何も 言 わ な か っ た 。 政 治 (日本語 大記 述 文法 研 究 会 編 2007) ( 3) 手 紙 を 書 き か け た が 、 途 中 でや め た 。 立 ‧ 國 學 日 本 語 記 述 文 法 研 究 会 編 ( 2007) で は 、「 し か け る 」 に つ い て 、 変 化 や 動 作 の 直 前 の段 階 、あ るい は 動 作 に 少 し 取 り か か っ た段 階 を 表 す と し、 ( 1) ( 2) ( 3)を そ れ ぞ れ、 「 変 化 の 直 前 の 段 階」 「 動 作 の 直 前 の 段 階」 「動 ‧ 作 に 取 り か か った 段 階 」であ る と 説 明 し て い る。ま た 、 寺 村( 1984)で y Nat は 、「 ~ カ ケ ル 」 を 、 開 始 を 表 す 形式 2 ( 他 に、「 ~ ハ ジ メ ル」「 ~ ダ ス」) sit の 一 つ に 含 め、事 象 の 開 始 を 表 す が、始 ま っ て ま も な く、そ れ が 中 止 さ er io れた場合に使われる例がほとんどであるとしている。さらに、金水 al ( 2000)で は 、運 動 の 局 面 を 表 す 複合 動 詞 3 の う ち の 一 つに 含 め 、カ ケ ル n v i n は ス ル の 準 備 段階 を 取 り 出C す と し、限 界 動 詞 の 場 合 は、準 備 的 段 階 の 開 he gchi U 始 か ら 動 作 の 開始 ま で の 間 、非限n 界 動 詞 の 場 合 は 、準 備 的 段 階 の 開 始 か ら 動 作 ・ 変 化 の終 了 前 ま で の 間 を 取り 出 す と し て い る 4 。 こ の よ う に 、 カ ケ ル 構 文 は 、「 準 備 段 階 」 や 「 開 始 段 階 」、「 動 作 に 取 り 「 か け 」構 文( 岸 本 2000)、「 か け 」 動 詞 構 文( 宮 腰 2009a) な ど の 呼 称 が あ る が、本稿では、動詞にカケルが後接したものを、まとめて「カケル構文」と呼ん でおく。 2 寺 村 ( 1984) で は 、 こ の よ う な 動 詞 の 連 用 形 に 後 接 す る も の を 、 テ 形 に 後 接 す る二次的アスペクトと区別して、三次的アスペクトと呼んでいる。 3 高 橋 ( 2003) は 、 ひ と つ の 運 動 を 時 間 的 に 組 み 立 て て い る 過 程 的 な 部 分 を 局 面 と 呼 び 、こ の 局 面 を 表 す 文 法 的 あ わ せ 動 詞 を 局 面 動 詞 と 呼 ん で い る 。そ し て 、 「し は じ め る 」「 し つ づ け る 」「 し お わ る 」 は 、 そ れ ぞ れ 運 動 の 始 発 、 持 続 、 終 了 の 局 面となる動作を表す局面動詞であると述べている。 4 金 水 ( 2000) は 、 な ぜ 動 詞 の 限 界 性 に よ り 解 釈 が 変 わ る の か に つ い て ま で は 述 べていない。 1 1 序 章 はじめに かかった段階」などを表すとされている。また、先行研究においても、 こ の よ う な 解 釈が あ る こ と が 明 ら かに さ れ て お り 、こ れ ま で に 研 究 成 果 が 積 み 重 ね ら れて き つ つ は あ る が、い ず れ の 研 究 に お いて も 、ど の よ う な 場 合 に 準 備 段階 の 解 釈 が 成 り 立 つの か 、ど のよ う な 場 合 に 開 始 段 階 の 解 釈 が 成 り 立 つの か 、ど うし て カ ケ ル 構 文 が こ の よ う な解 釈 を 持 ち 得 る の か 、と い った 問 題 に 対 し て は 、明 確 な 説 明 が 与 え ら れて は お ら ず 、カ ケ ル 構 文 の 本 質を 捉 え て い る と は 言い が た い の が 現 状 であ る 。 第2節 研究方法 先 行 研 究 で は、様 々 な 観 点 か ら 、カ ケ ル 構 文 の 意 味・機 能 を 統 一 的 に 治 政 る 。 そ こ で 、 本 稿 で は 、 語 彙 概 念 構 造 ( LCS) 大を 用 い て 、 動 詞 の 成 立 点 を 探 る と い う 、 新 し い立 観 点 か ら の 分 析 を 試 み る 。 具 体 的 に は 、 Vendler 捉 え よ う と 分 析・考 察 が 行 わ れ て いる が 、依 然 と して 問 題 が 残 さ れ て い ‧ 國 學 に よ り 分 類 さ れた 動 詞 が 、そ の 動 詞の LCS に よ り 、定 ま っ た 成 立 点 を 持 つ こ と を 明 ら かに し 、そ の 成 立点 が 、カ ケ ル 構 文 の 解 釈を 決 定 す る と い う こ と を 論 じ る。さ ら に 、こ の 解釈 の 決 定 に は 、そ れぞ れ の 動 詞 に 内 在 ‧ す る 成 立 点 以 外に も 、あ る種 の ヲ 格 名 詞 句 の 存 在 が か かわ っ て い る こ と y Nat も 扱 う 。こ れに よ り 、従 来 の 研 究で は 詳 し く 論 じ ら れ てこ な か っ た 、カ sit ケ ル 構 文 に お ける 種 々 の 問 題 を 解 決し 、そ の 全 体 像 を、 統 一 的 に 説 明 で n al er io き る よ う に な ると 考 え る 。 第3節 構成 Ch engchi i n U v 第 1 章 で は、先 行 研 究 を 取 り 上 げ、そ の 問 題 点 を 指 摘 する 。こ こ で 指 摘した問題点は、以降の節で順を追って解決していく。第 2 章では、 Vendler が 4 つ に 分 類 し た 動 詞 が 持つ そ れ ぞ れ の 成 立 点を 、 LCS を 用 い て 洗 い 出 し、そ の 成 立 点 に よ り、カ ケ ル 構 文 の 解 釈 が 決定 す る こ と を 論 じる。さらに、その結果から、カケル構文の意味・機能を再定義する。 第 3 章 以 降 で は 、 第 2 章 で 提 示 し た 理 論 に 基 づ き 、 それ ぞ れ の 動 詞 が 、 カ ケ ル 構 文 で 用い ら れ た 場 合 に 、ど の よ う な 解 釈 が 成 り立 つ の か を 、実 例 に 照 ら し 合 わせ て 見 て い く 。第 3 章 で は 活 動 動 詞、第 4 章 で は 到 達 動 詞 、 第 5 章 で は 達 成 動 詞 に つ い て 更 に 詳 し く 分 析 ・ 考察 す る 。 最 後 に、 第 6 章 で は 、 これ ま で の ま と め と 今後 の 展 望 に つ い て 述べ る 。 2 序 第4節 章 はじめに 研究範囲 本 稿 で カ ケ ル 構文 と 呼 ぶ の は、「 対 象 に 向 か っ て 何 ら かの 動 作 ・ 作 用 を 及 ぼ す「 指 向 」と 、動 作・作 用 の 始 ま り 、ある い は そ の 寸 前 の 状 態 の 動 き で あ る「 始 動」 ( 姫 野 1999)」の う ち 、後 者 の ア ス ペ ク ト を 表 す 表 現 ( 1) ( 2) ( 3)の よ う な 動 詞 に カ の 方 で あ る 5 。ま た 、既 に 述 べ た よ うに 、 ケ ル が 後 接 し た複 合 動 詞 の 形 式 の みを 扱 う 。従 っ て、カ ケ ル 構 文 に 関 連 し た 、V カ ケ 構 文 6(「食 べ か け の ご 飯」 「 こ の 本 は 読 み かけ だ 」の「 食 べ か け 」「 読 み か け 」 と い っ た 、 動 詞 の 連 用 形 に カ ケ が 後 接 し 、 名 詞 的 な 機 能 を 有 す る 表現 、 本 稿 で は カ ケ ル構 文 と 区 別 し て 、 こう 呼 ん で お く) の 研 究 は こ こ では 扱 わ な い 。 立 政 治 大 ‧ ‧ 國 學 n er io sit y Nat al Ch engchi i n U v 5こ れ に は 「 ~ カ カ ル 」 も あ る が 、 こ れ に つ い て は 本 論 文 で は 扱 わ な い 。 「~カケ ル 」 と の 違 い に つ い て は 、 姫 野 ( 1999) を 参 照 。 6 「 V か け の N」 構 文 ( 高 見 ・ 久 野 2006) 、「 ~ か け の 」 構 文 ( 三 原 2004)、「 か け 」 名 詞 構 文 ( 宮 腰 2009) な ど の 呼 称 が あ る が 、 本 稿 で は 、 以 下 の (ⅰ )~ (ⅲ ) ような用法も含めて、まとめてVカケ構文と呼んでおく。 (ⅰ )こ の ワ イ ン は 飲 み か け だ 。 (ⅱ )机 の 上 に は 飲 み か け の ワ イ ン が あ っ た 。 (ⅲ )田 中 さ ん は ワ イ ン を 飲 み か け だ っ た 。 3 第 1 章 先行研究とその問題点 第1章 先行研究とその問題点 先 行 研 究 で は 、金 田 一 (1976b)・姫 野 ( 1999)が 、カケ ル に 前 接 す る 動 詞 が 、継続 動 詞 で あ る か 瞬 間 動 詞で あ る か で 、カケ ル 構 文 の 解 釈 が 異 な る と し て い る。一 方 、岸 本( 2000)は 、Vendler の 動 詞の 4 分 類 を も と に 、動 詞 の表 す 出 来 事 に 時 間 的 な 幅 、つ ま り 過 程 が 含 意さ れ る か ど う か で 、カ ケル 構 文 の 解 釈 が 決 ま る と し て い る 。さ らに 、宮 腰( 2009a)は 、 カ ケ ル 構 文 の 解釈 に 影 響 を 与 え て いる の は 、動 詞( を 主 要 部 と す る 句 や 文 )に よ り決 定 さ れ る 事 象 の 成 立 点で あ る と す る 観 点 から 、独 自 の 考 察 政 治 大 を 行 っ て い る。以 下 、 そ れ ぞ れ の先 行 研 究 を 概 観 し 、問 題 点 を 指 摘 し て いく。 立 金 田 一 ( 1976b) ‧ 國 學 第1節 金 田 一 ( 1976b) は 、 カ ケ ル に 前 接 す る 動 詞 が 継 続 動 詞 で あ る か 、 瞬 ‧ 間 動 詞 で あ る かに よ っ て 、 以 下 の よう に 、 2 つの 動 作 相 ア ス ペ ク ト を 表 sit y Nat す と 結 論 づ け てい る 。 n al er io ・ 継 続 動 詞 + カ ケル:あ る 動 作・作 用 が 始 ま る こ と を 表 し、こ れ を「 始 動 態 7 」と 呼 ぶ 。 「 読 み か け る 」な ど Ch engchi i n U v ・ 瞬 間 動 詞 + カ ケ ル :「 … 状 態 に 達 す る 」 の 意 味 に な り 、 こ れ を 「 将 現 態 8 」 と 呼ぶ 。「 死 に か け る」「( 電 気 が ) 消 え か け る」 な ど た だ し 、( 4) の 例 を 挙 げ 、「 一 部 分 を 読 ん で や め た 」 と い う 意 味 の 場 合 は 「 始 動 態 」 に 、「 全 然 目 を 通 さ な い う ち に や め た 」 と い う 意 味 の 場 合 は 「 将 現 態 」に な る と 述 べ て い る。 (4) 本 を 読 み か け て や め た。( 金 田 一 1976b) 金 田 一( 1976b)は 、こ の 用 語 を 佐 久 間 鼎『 現 代 日 本 語 の 表 現 と 語 法 』に よ る と 述べている。 8 金 田 一 ( 1976b) の 用 語 で あ る 。 7 4 第 1 章 先行研究とその問題点 ( 5) 本 を 読 み か け た 。 金 田 一 は、( 4)の 場 合 に な ぜ 始 動 態と 将 現 態 の 両 義 の 解釈 が 生 じ る の か 、と い う こ と に つ い て は 言 及 し てい な い 。金 田 一 の 定 義 に 従 う な ら ば、 ( 4) は カ ケ ル に 継 続 動 詞 が 前 接 し て い る こ と か ら 、 始 動 態 に 解 釈 さ れ る は ず で あ る。も し 仮 に 両 方 の 解 釈が 生 じ る 原 因 が「や め た 」と い う 語 に 関 係 し て い るの な ら ば 、こ の「 や め た 」が 始 動 態 で あ る の か 、或 い は 将 現 態 で あ る のか を 区 別 す る 原 因 だと も 考 え ら れ る。し か し 、「 や め た 」 を 取 り 去 っ た( 5)も 、始動 態 に も 将 現 態 に も 解 釈 で き、「 や め た」と い う 語 が 解 釈 に 影 響 を 与 え て い る と は 考 え ら れ な い 。 で は 、( 4) と ( 5) がいずれの解釈をも生じさせる原因はいったいどこにあるのであろう 政 治 大 か。 立 姫 野 ( 1999) 學 ‧ 國 第2節 2.1 「 継 続 動 詞 + カ ケ ル 」 ‧ 姫 野 ( 1999) は 、 基 本 的 に 金 田 一 ( 1976b) の カ ケ ル の 用 法 の 分 類 に sit y Nat 従 い な が ら も 、以 下 の 例 を 挙 げ 、 al er io ( 6)「 だ っ て 学 校 が … 」そ う い い か け る の と い っ し ょ に、な み だ が n 出 て き た。( 佐 多 稲 子 「 キ ャ ラ メ ル工 場 か ら」) Ch engchi i n U v ( 7)私 は そ の あ と、( そ ん な ら あ の銀 座 の マ ダ ム と も 、渋 谷 の 人 と も手を切ってください)といいかけたのだが、あわててその 言 葉 を 飲 み 込 んで し ま っ た。( 源 氏 鶏 太 「 御 身」) ( 姫 野 1999) ・「 動 作 の持 続 部 分 の 始 ま り に 目 をつ け る 」と 、「 始 動 態 」=( 6) ・「 前 の 状 態 か ら そ の 動 作 に 入 る とい う 変 化 の 瞬 間 性(「 言 う 」の 場 合 は、「 沈 黙 → 発 話 」 の 変 化 ) が強 調 さ れ る 」 と、「 将 現 態 」 = ( 7) 上 記 の 説 明 を 加え 、 ほ と ん ど の「 継 続 動 詞 + カ ケ ル 」は 、本 来 的 に こ の 5 第 1 章 先行研究とその問題点 2 つ の 意 味 を 有 す る と 述 べ て い る 。金 田 一 で は 詳 し く 説明 さ れ な か っ た 、 「 継 続 動 詞 + カケ ル 」に おけ る 始 動 態 或 い は 将 現 態 の 両義 的 解 釈 に つ い て 、独 自 の 視 点 か ら 解 釈 を 試 み て はい る が 、ま ず 、な ぜ ほ と ん ど の「 継 続 動 詞 + カ ケ ル」が 、本 来 的 にこ の 2 つ の 解 釈 を 持 っ てい る と 言 え る の か 、 次 に 、 ど のよ う な 場 合 に 「 動 作の 持 続 部 分 の 始 ま りに 目 を つ け る」 の か 、ど のよ う な 場 合 に「 前 の状 態 か ら そ の 動 作 に 入 ると い う 変 化 の 瞬 間 性 が 強 調 さ れる 」の か に つ い て の 詳 し い 説 明 が な さ れて い な い の で あ る。 2.2 「瞬間動詞+カケル」 政 治 大 姫 野( 1999)は ま ず 、瞬 間 動 詞 に カ ケ ル が つ い た 場 合 につ い て 、以 下 の よ う に 述 べ てい る 。 立 ‧ 國 學 … … 瞬 間 動 詞に「 か か る 」や「 か け る 」が つ い た 場 合 は 、将 現態 を 表 す 場 合 が 多い と 言 え る 。し か し 、そ の 中 で も 、い わゆ る 結 果 動 詞 9 が あ る も のに つ い て は 、必 ず し も 将 現 態 の み と は 言い 切 れ な ‧ い 場 合 が 出 て くる 。す な わ ち、変 化 の 過 程 を 持 つ も の に「 か か る」 io y er 程 の 初 め の 段 階を 示 す こ と に な る 。 sit Nat や 「 か け る 」 が つ く と 、 宮 島 ( 1972: 410) に あ る よ う に そ の 過 al ( 姫 野 1999) n v i n そ し て 、( 8) の 例 を 挙 げC 、「 開 く 」 は 瞬 間 動 詞 と 言 え る が 、 蕾 か ら 満 he i U 開 ま で の プ ロ セ ス を 継 続 的 に 見 るnなgらcばh、「 ゆ る く 開 き か け て い る 花 」 と い う の は 、 始動 態 を 示 し て い る と指 摘 し て い る 。 ( 8) 第 一 日 目 に は 、 赤 い 花 が 一 本 売 れ た 。 お 客 は 踊 子 で あ る 。 踊 子 は 、ゆ る く 開 き か け て い る 赤 い 蕾を 選 ん だ。( 太 宰 治「 葉」) こ こ で の 結 果 動 詞 と い う の は 、 藤 井 ( 1976) の 用 語 だ と 考 え ら れ る 。 こ の こ と は、瞬間動詞を「変化の過程を持つもの」と「変化の過程を持たないもの」に分 けていることからもわかる。つまり、主体の変化を表す変化動詞のことである。 藤 井 ( 1976) は 、 例 え ば 「 結 婚 す る 」 な ら 「 結 婚 生 活 」、「 (花 が )散 る 」 な ら 「 花 が地上にある」というように、動詞の表す意味に付随して、ある結果をもたらす よ う な タ イ プ を 、結 果 動 詞 と 呼 ん で い る 。こ れ に 対 し て 、 「 一 瞥 す る 」な ど の よ う に、何らの結果ももたらさないものもあるとし、継続動詞及び瞬間動詞は、結果 動詞と結果動詞でないものに二分されるとしている。 9 6 第 1 章 先行研究とその問題点 ( 姫 野 1999) 一 方 、( 9)( 10) の よ う に 、 瞬 時 の 動 作 ・ 作 用 の 変 化 を 表 す 動 詞 、 す な わ ち 変 化 の 過程 を 持 た な い も の にカ ケ ル が つ く と、将 現 態 し か 表 さ な い と 述 べ て い る。 ( 9)「 百 メ ー トル も 歩 か な い う ち に、腹 が 立 っ て き た 。太 い コ ン ク リ ー ト の 電 柱 に ぶ つ か り か け る 。ゴ ミ の ポ リ バ ケ ツ に つま づ き か け る 。」( 新聞 ) ( 10)世 界 シ オニ ス ト 機 構 の ゴ ー ルド マ ン 総 裁 が ナ セ ル大 統 領 の 招 政 治 大 き で カ イ ロ を 訪問 し か け た こ と が あっ た 。( 新 聞 ) 立 ( 姫 野 1999) ‧ 國 學 姫 野( 1999)は 、瞬 間 動 詞 を そ れ ぞれ 、結 果 動 詞 が あ るも の と な い も の に 分 け 、 結 果 動 詞 が あ る 場 合 は 、( 8) の よ う に 、 変 化 の 過 程 を 持 ち 、 始 動 態 の 解 釈 に な る が 、 結 果 動 詞 が な い 場 合 は 、( 9)( 10) の よ う に 、 ‧ 将 動 態 の 解 釈 に し か な ら な い と し て い る が 、「 瞬 間 動 詞 + カ ケ ル 」 に お y Nat い て 、 金 田 一 ( 1976b) で は 将 現 態 と 解 釈 さ れ て い た も の が 、( 8) の よ sit う に 変 化 の 過 程を 持 つ 場 合 、なぜ 始 動 態 に 解 釈 さ れ る ので あ ろ う か 。確 er io か に 、 金 田 一 が 挙 げ た 「 死 に か け る 」「( 電 気 が ) 消 え か け る 」 に 比 べ 、 al 「 蕾 が 開 き か ける 」は 、 変 化 の 過程 を 持 つ と 考 え ら れ そう で あ る 。 し か n v i n し 、 こ こ で も 姫 野 は 、「 瞬 間 おいて、結果動詞にカケ C動h詞 + カ ケ ル 」 に U i e h n g cる の か 、そ れ に対 し て 、結 果 動 詞 ル が つ く 場 合、な ぜ 始 動 態 の 解 釈 にな で な い 動 詞 に カケ ル が つ く 場 合 は、な ぜ 将 現 態 の 解 釈 にな る の か に つ い て 、 具 体 的 な 説明 を 行 っ て い な い 。 カ ケ ル 構 文 に おい て 、始 動 態 の 解釈 に な る の か 、或 いは 将 現 態 の 解 釈 に な る の か を、金 田 一 は 継 続 動 詞 か瞬 間 動 詞 か の 区 別 によ り 、姫 野 は 金 田 一 の 解 釈 に 結果 動 詞・非 結 果 動 詞 の 分 類 を 取 り 入 れ るこ と に よ り 、 解 決 を 図 ろ う と はし て い る も の の 、両 者 の 説 明 で は、「 継 続 動 詞 + カ ケ ル」 「 瞬 間 動 詞 + カケ ル 」と もに 始 動 態 或 い は 将 現 態 の 解 釈が 成 り 立 つ こ と に な り 、こ の よ う な 分 類 か ら で は 、カ ケ ル 構 文 の 解 釈 の異 な り を 説 明 す る の に は 不 十 分で あ る こ と が わ か る 。こ の こ と か ら、カ ケ ル に 前 接 す る 動 詞 が、継 続 動 詞 か 瞬 間 動 詞 か で カケ ル 構 文 の 解 釈 が 異な っ て く る と い 7 第 1 章 先行研究とその問題点 う 考 え 方 は 、 修正 さ れ る 必 要 が あ ろう 。 第3節 岸 本 ( 2000) 岸 本 (2000) で は 、( 11a)( 11b) の よ う な 場 合 、 解 釈に 2 つ の 可 能 性 が あ る と し て いる 。 ( 11) a. 太 郎 は 走 り か け た 。 b. 太 郎 は 本 を 読 み か けた 。 1 つ は、「 走 る」「 読 む 」 と い う 行 為に 入 り そ う に な っ たが 、 実 際 に は 治 政 行 為 に 入 っ て 少な く と も そ の 途 中 まで 行 っ た と 大い う 解 釈で 、前 者 を「 開 始 前 読 み」、 後 者 を 「 途立 中 読 み 」 と呼 ん で い る 。 そ れ ら の 行 為 に及 ば な か っ た 解 釈 、も う 1 つ は、「 走 る 」「 読 む 」と い う 10 ‧ 國 學 ま た 、( 12) の よ う な 場 合 、 実 際 に は 消 え な か っ た の で あ る が 、 消 え そ う に な っ た とい う 開 始 前 読 み の 解釈 し か 存 在 し な い とし て い る 。 ‧ ( 12) こ の ろ うそ く は ( い っ た ん )消 え か け た 。 sit y Nat ( 以 上 、 岸本 2000) er io 岸 本 は、 ( 11)で は 開 始 前 読 み・途 中 読 み の 両 解 釈 が でき 、一 方、 ( 12) al で は 後 者 の 解 釈し か で き な い 理 由 が、動 詞 の 語 彙 的 ア スペ ク ト に あ る と n v i n し 、( 11)の「 走 る」「 読 むC 」は 、そ れ ぞ れ 、Vendler(1697)に よ る 動 詞 hengchi U の 4 分 類 の う ち 、 活 動 動 詞 、 完 成動 詞 と 解 釈 さ れ 、 動詞 の 意 味 に あ る 11 程 度 の 時 間 幅 が含 意 さ れ る の に 対 し、 ( 12)の「 消 え る 」は 達 成 動 詞 12 で 、 岸 本 ( 2000) は 、 Tujimura and Iida( 1999) が 「 inception reading」 と 呼 ぶ も の を 開 始 前 読 み 、Toratani( 1997)及 び Tujimura and Iida( 1999)が「 halfway reading」 と 呼 ぶ も の を 途 中 読 み と 呼 ん で い る 。ま た 、高 見・久 野( 2006)で は 、こ の inception reading と halfway reading を 紹 介 し 、前 者 は 、動 詞 が 表 す 事 象 が ま だ 始 ま っ て お ら ず、これからまさに始まろうとしていることを示し、後者は、動詞が表す動作が まだ終わっておらず、その途中であることを示すと説明している。 11 Vendler ( 1957)の 分 類 で は 、run は activity terms で 、read a novel は accomplishment terms で あ る こ と か ら 、 岸 本 の 言 う 完 成 動 詞 は 、 accomplishment terms に 相 当 す る と考えられる。 12 岸 本 ( 2000) で は 、 achievement terms を 「 達 成 動 詞 」 、 accomplishment terms を 「 完 成 動 詞 」 と 呼 ん で い る が 、 本 稿 で は 、 影 山 ( 1996) に 従 い 、 前 者 を 「 到 達 動 詞 」、 後 者 を 「 達 成 動 詞 」 と 呼 ぶ 。 10 8 第 1 章 先行研究とその問題点 出 来 事 の 達 成 に時 間 幅 が な く 、よ っ て 、出 来 事 の 初 期 状態 と い う の は 存 在 し な い た め、途 中 読 み が 許 さ れ ず、開 始 前 読 み の 解 釈し か 存 在 し な い としている。 岸 本 は 、Vendler の 動 詞 の 4 分 類 を もと に 、動 詞 の表 す 出 来 事 に 時 間 幅 が 含 意 さ れ る かど う か に 着 目 し、時 間 幅 の 有 無 に よ り、カ ケ ル 構 文 の 解 釈 が 決 ま る と して い る 。そ の 上 で、時 間 幅 を 持 つ 動 詞 は、そ の 時 間 幅 を 持 つ と い う 性 質か ら 、途 中 読 み の 解 釈 が 可 能 に な る と 同時 に 、そ の 出 来 事に至るまでの過程を表す開始前読みの解釈も許されると述べており、 な る ほ ど こ の 時間 幅 の 有 無 は、カ ケ ル 構 文 の 解 釈 に 影 響を 与 え て い る と 言 え る か も し れな い 。 た だ 、 こ こ でも い く つ か 問 題 が ある 。 ま ず 、活 動 動 詞 や 達 成 動 詞 ( 岸 本( 2000)で の完 成 動 詞 ) が 持 つ 時 間 治 政 も 、「 蹴 る 」 や 「 叩 く 」 な ど の よ う に 、 時 間 幅 大を 持 つ と は 言 い が た い も 立の 活 動 動 詞が 時 間 幅 を 持 つ と は限 ら な い こ と が の あ る こ と か ら、す べ て 幅 と い う の は 何を 指 し て い る の か、と い う こ と で あ る。活 動 動 詞 の 中 に ‧ 國 學 わ か る 。で は、活 動 動 詞 の う ち 、ど の よ う な タ イ プ が 時間 幅 を 持 つ の か 、 なぜ時間幅を持ち得るのかということを明らかにすることが必要にな っ て く る 。次に 、 到 達 動 詞 ( 岸 本( 2000)で の 達 成 動詞 ) は 出 来 事 の 達 ‧ 成 に 時 間 幅 が ない と し て い る が 、 確か に Vendler の 定 義 で は 、 到 達 動 詞 y Nat は 「 着 く 」「 死 ぬ 」 の よ う な 瞬 間 的 は 変 化 を 表 す 。 し か し 、 変 化 を 表 す sit 動 詞 に は、「 枯 れ る 」「 腐 る 」の よ う な 、時 間 の か か る と思 わ れ る も の も er io 存 在 し 、この よ う な 動 詞 の 場 合、変 化 ま で の 時 間 幅 が 動詞 の 意 味 に 含 意 al さ れ る と 言 え そう で あ り 、こ こ でも 、変 化 を 表 す 動 詞 のう ち 、ど の よ う n v i n な タ イ プ が 時 間幅 を 持 つ のC か、な ぜ 時 間 幅 を 持 ち 得 る のか と い っ た 原 因 he gchi U を 明 ら か に す るこ と が 必 要 な の でn はな い だ ろ う か 。 こ れ ら の 問 題 から わ か る こ と は 、動 詞 が 継 続 的 か 瞬 間 的か 、時 間 幅 が あるかどうかといった視点からの分類だけでは、カケル構文が呈する 様 々 な 現 象 を 捉え き れ な い と い う こと で あ る 。こ こで 、新 し い 観 点 か ら カ ケ ル 構 文 の 解釈 を 試 み た の が 、 宮腰 ( 2009a) で ある 。 第4節 宮 腰 ( 2009a) 宮 腰(2009a)で は 、ま ず 、事 象 の 成 立 点 13 に つ い て 、以 下 の よ う に 説 宮 腰( 2009a)は 、こ の 事 象 の 成 立 点 と 、「 並 行 事 象 構 造 」と い う 新 し い 理 論 を 用いてカケル構文について説明を試みているが、本稿ではこの並行事象構造は扱 わ な い 。 こ れ つ い て は 、 宮 腰 ( 2009a) を 参 照 の こ と 。 13 9 第 1 章 先行研究とその問題点 明している。 … … ほ と ん ど の事 象 に は「 そ こで そ の 事 象 が 成 立 し た と言 え る 時 点 」が あ り、そ れ は そ の 事 象 を 表 す動 詞 の 語 彙 的 意 味 とそ の 項 や あ る 種 の 修 飾 成分 か ら 合 成 的 に 決 まる 。そ し て 、あ る事 象 が 成 立 し た か ど う か はそ れ を 既 然 形「 -シ タ 」で 表 す こ と が でき る か で 客 観 的 に テ ス トで き る 。例 え ば <ド ア を 閉 め る > の 場 合、成 立 点 は た い て い 完 結点 、つ ま り < 行 為 主に よ る 働 き か け の 結果 ド ア が 完 全 に 閉 ま っ た 時 点 > と な る 。 し た が っ て 、「 ド ア を 閉 め た 」 と 言 え る の は 、 たい て い そ の 時 点 で ある 。 ( 宮 腰 2009a) 治 政 そ し て 、宮 腰 が 挙 げ て い る 動 詞( 句 )の 例 と 大、そ れ ら を 事 象 の 成 立 点 立も の が 以 下の 表 1 で あ る 。 宮 腰 は 、 成 立 点 が、 に よ り 分 類 し 、ま と め た ‧ 國 結 点 に あ る タ イプ の 3 つ に つ い て言 及 し て い る 。 走る ドアを叩く ‧ ⅱ ⅲ ドアが閉まる y Nat ⅰ 學 ⅰ )始動 点 に あ る タ イ プ 、ⅱ )始 動 点 か つ 終 止 点 に あ るタ イ プ 、ⅲ )完 ドアが開く 火が消える 博士論文を書く n al er sit ドアを閉める io ワインを飲む Ch e n表g1 c h i U v n i 夕食を作る 次 に 宮 腰 は 、こ の 成 立 点 が 、カ ケル 構 文 の 解 釈 に 影 響 を与 え て い る と し 、「 か け 」 の 意 味 ・ 機 能 を ( 13) の よ う に 規 定 、 そ れ が 指 向 す る 事 象 局 面 「 将 然 相 」を ( 14) の よ う に 定義 し 、 ( 13)「 か け 」 と は 動 詞 の 連 用 形 に 付 き 、 そ れ ( を 主 要 部 と す る 句 や 文 )が表 す 事 象 の 将 然 相 を 前 景化 す る 派 生 接 辞 で ある 。 (14) 将然 相 と は 事 象 の 成 立へ 向 け た 準 備 | 前 兆局 面 で あ る 。 カ ケ ル 構 文 の 意味 解 釈 を 「 開 始 前 読み 」 と 「 途 中 読 み 」と 呼 び 、 2 つ に 10 第 1 章 先行研究とその問題点 分 け て い る 。 宮腰 が 挙 げ て い る カ ケル 構 文 の 例 を 、 2 つ の 意 味 解 釈 に よ り 分 類 し 、まと め た も の が 以 下 の表 2 で あ る 。Ⅰ)が 開 始 前 読 み の 解 釈 の 例 、 Ⅱ ) 途 中読 み の 解 釈 の 例 で ある 。 Ⅰ Ⅱ (15) ド ア が 開き か け た ( 19) ド ア が 閉ま り か け た (16) ワ イ ン を飲 み か け た ( 20) ワ イ ン をま る ま る 一 本 飲 (17) ド ア を 叩き か け た みかけた (18) 火 が 消 えか け た ( 21) 博 士 論 文を 書 き か け た ( 22) 夕 食 を 作り か け た 表2 政 治 大 表 2 の 諸 例 は 、 宮 腰 の 説 明 に よ ると 、(15) で は 「 ドア が 開 く 」 は 少 立 し で も 扉 が 開 いた 時 点 で「 開 い た」と 言 え る た め 、 そこ が 成 立 点 と な り 、( 16)で は「 ワ イ ン を 飲 む 」の 成立 点 は 行 為 主 が ワ イン を 口 か ら 摂 取 ‧ 國 學 14 し た 時 点、( 17)で は「 ド ア を 叩く 」の 成 立 点 は 叩 い た瞬 間 、( 18)で は ‧ 火が消えた瞬間が成立点で、いずれも始動点前の将然相が前景化され、 開 始 前 読 み に な る と し て い る 15 。 そ れ に 対 し て 、( 19)「 ド ア が 閉 ま る 」 y Nat の 成 立 点 は ド アが 完 全 に 閉 ま っ た 時点 と な り 、将 然 相 は 完 結 点 へ と 至 る sit 変 化 過 程 の 局 面、( 20)は 、「 ワ イ ン を 飲 む 」のワ イ ン が「 ボ ト ル 1 本 の er io ワ イ ン」と 限 定 さ れ 、そ れを「 ま る ま る 飲 む 」と な る と 、成 立 点 は そ れ al n v i n Cのhよ う な 作 成 事 U ( 21)( 22) に つ い て は 、 こ e n g c h i 象は本来的には産物が完成 を完全に飲み干した時点である完結点となり、将然相はその前の局面、 し た 時 点 が 完 結点 で 、い ず れ も将 然 相 は 行 為・変 化 が あ る 程 度 進 行 し た 局 面 で あ り 、 いず れ も 途 中 読 み に なる と し て い る 。 宮 腰 ( 2009a) は 、「 ド ア が 開 く 」 の 場 合 、 少 し で も ド ア が 動 い た 時 点 で 「 開 い た」と言えるため、そこを成立点とみなせば、将然相は始動点前の局面となり、 カ ケ ル 構 文 で は 、開 始 前 読 み の 解 釈 に 、一 方 、ド ア が そ の 機 能 を 果 た し た 時 点( 例 えば人がなんとか通れるくらいまで扉が開いた時点)を成立点とみなせば、扉が わずかに開いた(が人はまだ通れない)局面が将然相となり、カケル構文では、 途中読みの解釈になるが、変化直後の時点を成立点とみなす話者(または状況) の方が比較的多いため、開始前読みの方が優勢だと結論づけている 。しかし本稿 では、ドアが「少しでも動いた時点」も「その機能を果たした時点」も、ドアが 開 く 過 程 上 の 一 時 点 で あ り 、完 全 に 開 い た 瞬 間 が 、 「 ド ア が 開 く 」と い う 事 象 の 成 立点であると考える。これについては、第 2 章で述べる。 15 表 2 に 示 し た よ う に 、宮 腰( 2009a)で は 、 「 火 が 消 え る 」の 成 立 点 を 完 結 点 に あるとしながら、カケル構文では、開始前読みになるとしている。 14 11 第 1 章 先行研究とその問題点 こ の 事 象 の 成 立点 を 用 い た 考 え 方 は、確 か に 、カ ケ ル構 文 の 解 釈 を 考 え る 上 で 、非常 に 示 唆 に 富 む も の であ り 、表 2 を 見 る限 り で は 、継 続 動 詞 か 瞬 間 動 詞 か、動 詞 の 意 味 に 時 間幅 が 含 意 さ れ る か どう か を も と に し た 解 釈 よ り も、核 心 を つ い て い る よう に 思 わ れ る 。した が っ て 、本 稿 で も 基 本 的 に は 宮腰 の 主 張 を 支 持 す る 。し か し 、問 題 が な い わ け で は な い。 ま ず 、表 1 では 動 詞( 句 )を その 成 立 点 か ら 3 つ の タ イプ に 分 け て は い る が 、例 え ば 、対 象 が 状 態 変 化 を起 こ す と い う 観 点 から 見 た 場 合、 「ド ア が 閉 ま る」「 ド ア が 開 く」「 火 が 消 え る 」 は 、 1 つ の タ イ プ に ま と め る ほ う が 自 然 で はな い だ ろ う か 。こ の こ と か ら 、宮 腰 の 主 張 す る 動 詞( 句 ) の 成 立 点 に 再 検討 を 加 え 、よ り 客 観 的 な 視 点 か ら の 分 類を 試 み る 必 要 が あ る と 思 わ れ る。動 詞 を 明 確 に 分 類 す る こ と に よ り、カ ケ ル 構 文 に お け 治 政 次 に 、宮 腰 の途 中 読 み に お け る 、将 然 相 が 前 大景 化 さ れ る局 面 の 説 明 と 立へ と 至 る 変 化 過 程 の 局 面 」、( 20) で は 「 ワ イ ン し て 、( 19) で は 「 完 結 る 解 釈 も 、 よ り体 系 的 に 、 詳 細 に 記述 で き る で あ ろ う 。 ‧ 國 學 を 完 全 に 飲 み 干 し た 時 点 、 つ ま り 完 結 点 の 前 の 局 面 」、( 21)( 22) で は 「 行 為・変 化が あ る 程 度 進 行 し た 局面 」と あ り 、い ずれ も 途 中 読 み の 解 釈 に な る と し てい る が 、前景 化 さ れ る 局 面 の 説 明 に 統 一性 が な い こ と が ‧ 挙 げ ら れ る。な ぜ 同 じ 途 中 読 み の 解釈 に 、こ の よ うに 違 っ た 局 面 の 状 態 y つ 語 彙 的 意 味 によ る も の で あ る と 考え る 。 sit Nat が 生 じ 得 る の であ ろ う か 。本 稿 では 、こ の 原 因 が 、それ ぞ れ の 動 詞 が 持 er io 最 後 の 問 題 と して 、 宮 腰 の 説 明 で は 、金 田 一 、姫 野 、岸 本 の 先 行 研 究 al で 取 り 上 げ た 種々 の 問 題 が 解 決 で きな い と い う こ と が 挙げ ら れ る 。先 行 n v i n 研 究 の 問 題 を 放置 し た ま まC 、新た な 理 論 を 提 示 す る の では な く 、 上 記 の he gchi U 問 題 が 全 て 解 決で き る よ う な 、包n 括 的 な 分 析・考 察 が な さ れ る 必 要 が あ る。 第5節 Tujimura and Iida( 1999)、三 原( 2004)、高 見・久 野( 2006)、 村 尾 ( 2009) 既 に 述 べ た よ うに 、い ず れも V カ ケ 構 文 を テ ー マ に 扱 った も の で あ り、 V カ ケ 構 文 の V カ ケ が 、カ ケ ル 構 文か ら 派 生 し た も の であ る と い う 立 場 を と る 本 稿 で は、ま ず 、カ ケ ル 構文 の 分 析・考 察 を 行う こ と が 先 決 だ と 考 え る の で 、 ここ で は 先 行 研 究 と して 取 り 挙 げ な い 。 以 上 、先 行 研究 を 取 り 上 げ 、問 題点 を 指 摘 し て き た が、上 記 の 種 々 の 12 第 1 章 先行研究とその問題点 問 題 を 解 明 す るた め に は 、ま ず、 客 観 的 且 つ 簡 明 な 、そ れ で い て 全 体 を 見 渡 せ る よ う な動 詞 の 分 類 が 必 要 不可 欠 で あ る と 思 わ れる 。い ず れ の 研 究 に お い て も 、動 詞 の 分 類( 語 彙 的 ア ス ペ ク ト )を も と に 、カ ケ ル 構 文 に お け る 解 釈 の違 い を 説 明 し よ う とし て い る が、こ の 動 詞 分 類 の 定 義 が 脆弱なものであり、その結果、それを土台にしたカケル構文の解釈も、 不 完 全 で 、簡 単 に 崩 れ や す い も の にな っ て い る 。そ れ を 避 け る た め に も、 明 確 な 理 論 に 基づ い た 動 詞 分 類 が 必要 で あ ろ う 。次章 で は 、個 々 の 動 詞 が 持 つ 意 味 概 念で あ る LCS に 基 づ き 、 動 詞 の 分 類 を 行う 。 立 政 治 大 ‧ ‧ 國 學 n er io sit y Nat al Ch engchi 13 i n U v 第 2 章 動詞の成立点とカケル構文の解釈 第2章 動詞の成立点とカケル構文の解釈 先 行 研 究 で 取 り上 げ た 問 題 を 解 決 する た め に は 、ま ず 、動 詞 を 分 類 し、 それぞれの動詞が持つ成立点について考えなければならない。以下、 Vendler の 動 詞 の 4 分 類 に 基 づ き 動詞 を 分 類 し 、 そ の LCS か ら 、 そ れ ぞ れ の 動 詞 の 成 立点 を 探 る 。さ ら に、そ の 成 立 点 が 、カケ ル 構 文 の 解 釈 を 決 定 す る と い う主 張 を 展 開 す る 。 第1節 Vendler の 動 詞 の 四 分 類 治 政 ま ず 、ど の よ う な 動 詞 が 、ど こ に そ の 成 立 点大 を 持 っ て いる か に つ い て 、 宮 腰 (2009a) は 以 下 の立 ように述べている。 ‧ 國 學 … 成 立 点 は 事 象が 非 完 結 タ イ プ(例 え ば < 走 る > )の場 合 は た い て い 始 動 点( 直後 )と な り( 走 り だし た 瞬 間 に「 走 っ た」と 言 え ‧ る )、 完 結 タ イ プ ( 例 え ば < 閉 ま る > ) の 場 合 は た い て い 完 結 点 ( 宮 腰 2009a) er io sit y Nat となる。 al 非 完 結 タ イ プ 、完 結 タ イ プ と い う のは 、Vendler( 1967)の 動 詞 の 4 分 n v i n 類 に お け る 、 状 態 動 詞 と 活C 動 動 詞 ( 非 完 結 タ イ プ )、 到 達 動 詞 と 達 成 動 he gchi U 詞( 完 結 タ イ プ )の こ と だ と 考 えn られ る 。以 下 、Vendler( 1967)の 動 詞 の 4 分 類 を 挙 げる 。 状態動詞 have, desire, want, love, know, believe, … 活動動詞 run, walk, push, swim, pull, … 到達動詞 recognize, reach the summit, win the race, die, … 達成動詞 run a mile, draw a circle, read a novel, recover from illness, … 15 第 2 章 動詞の成立点とカケル構文の解釈 上 述 の 4 分 類 につ い て 、 三 原 (2004) は 以 下 の よ う に 述べ て い る 。 … ま ず 状 態 性 の 基 準 に よ っ て 、 状 態 ( state) 動 詞 を 取 り 出 し 、 次 に 限 界 性( 完 了 性 と も 言 う )の 基 準 に よ っ て 、動 作 に 必 然的 な 終 わ り が な い 活 動 ( activity) 動 詞 を 孤 立 さ せ る 。( 終 わ り が な い 動 詞 を 非 限界 動 詞 、終 わ り が あ る 動 詞 を 限 界 動 詞 と言 う )。 そ し て 、限 界 動 詞 を 、瞬 間 性 の 基 準 に よ っ て 、動 作 が 瞬 間 的に 遂 行 さ れ る 到 達( achievement)動 詞 と 、動 作 を 行 う の に時 間 を 要 す る 達 成 ( accomplishment) 動 詞 に 区 分 す る 。 ( 三 原 2004) 治 政 を 持 た ず 、非 完 結 的 で あ り 、動詞 の 表 す 動 き に 大終 わ り があ る 到 達 動 詞 と 立性( 完 了 性 )を 持 ち 、完 結 的 で あ る と い う こ と 達 成 動 詞 は 、と も に 限 界 つ ま り 、動 詞 の 表 す 動 き に 終 わ り がな い 活 動 動 詞 は 、限 界 性( 完 了 性 ) ‧ 國 學 が 言 え る 。で は 、ど う し て 活 動 動 詞は 限 界 性( 完 了 性 )を 持 た な い の に 対 し て 、到達 動 詞 と 達 成 動 詞 は 持 ち得 る の だ ろ う か。こ の こ と に つ い て は 後 で 述 べ る とし て 、こ こ で は ま ず 、活 動 動 詞 、到 達 動 詞 、達 成 動 詞 の y Nat io sit 活動動詞の成立点 er 第2節 ‧ 成 立 点 が ど こ にあ る の か に つ い て 見て い く 16 。 al 宮 腰 ( 2009a) の 言 う よ う に 、 非 完 結 タ イ プ で あ る 「 走 る 」 の よ う な n v i n 活 動 動 詞 の 場 合、成 立 点 はC ど う し て始 動 点 に あ る の だ ろう か 。こ の タ イ hengchi U プ の 動 詞 が 示 す成 立 点 に お い て 、副 島( 2007)は 、以 下 の よ う に 指 摘 し ている。 …〈 非 限 界 性 〉に お け る 限 界 が「 状 況 の 成 立 点 」で あ る と いう こ と に 焦 点 を 当 て る な ら 、〈 非 限 界 性 〉 の 場 合 、 状 況 の 成 立 点 にあたるのは動きの開始点であると考えることが可能である。 す な わ ち 、〈 非 限 界 性 〉 も そ の 開 始 点 に お い て 、 動 い て い な い 日 本 語 の 状 態 動 詞 に は 、「 い る 」「 あ る 」「 で き る 」 な ど が あ る が 、 そ も そ も 状 態 動 詞 は 事 象 の 成 立 点 を 持 た な い( こ の 理 由 に つ い て は 、第 4 節 で 述 べ る )。従 っ て 、カ ケ ル 構 文 で は 用 い ら れ な い の で 、こ こ で は 考 察 対 象 か ら 外 す 。た だ 、Vendler の 4 分類で挙げた状態動詞の例は、日本語における状態動詞の分類とは必ずしも 対応しているわけではない。 16 16 第 2 章 動詞の成立点とカケル構文の解釈 状 態 か ら 動 い てい る 状 態 へ の 変 化 を内 包 し て い る と 言 える 。し た が っ て 、〈 非 限 界 性 〉 の 動 詞 と い う の は 、 厳 密 に は 「 限 界 を 持 た な い 動 詞 」 で は な く 、「 限 界 が 動 作 の 開 始 点 で あ る 動 詞 」 で あ る と も 言 える だ ろ う 。 ( 副 島 2007) 副 島 の 言 う 、動 き の 開 始 点 と い う のは 、非 限 界 動 詞 で ある 活 動 動 詞 が 持 つ 成 立 点 だ と考 え ら れ る。こ の こ と に つ い て、三 原( 2007)で は 、 ( 23) の 「 歩 く 」「 叱 る 」 の よ う な 活 動 動 詞 を 動 作 持 続 の テ イ ル 形 に す る と 、 事 態 が 既 に 成 立し た こ と を 示 す 現 象 を 指 し 、こ れ を「 未 完 了 の 逆 接 」と 呼 ん で い る 17 が 、 活 動 動 詞 を テ イ ル 形 に す る と 、 事 態 が 既 に 成 立 し た こ 政 治 大 と を 表 せ る の は、活 動 動 詞 の 事 象 の成 立 点 が 動 き の 開 始点 に あ る 証 拠 で あ る と 言 え よ う。 立 ‧ 國 學 ( 23) a. 赤ち ゃ ん が 歩 い て い る。( → 赤 ち ゃ ん が 歩 いた ) b . 母 親 が 子 供 を 叱 っ て い る 。( → 母 親 が 子 供 を 叱 っ た ) ( 三 原 2004) ‧ y Nat こ れ に 対 し て、( 24)の「 作 る」「 建 て る 」の よ う な 達 成 動 詞 を テ イ ル er io sit 形 に し て も 、 事態 が 成 立 し た こ と は表 さ な い と し て い る。 al (24) a. 山 本 さ ん が 桶 を 作 って い る。( ×→ 桶 を 作っ た ) n v i n b . 菜 穂 子 が 納C屋 を 建 て て い る 。( × → 納 屋 を 建 て た ) hengchi U ( 三 原 2004) ま た、 「動く」 「 押 す 」な ど も 、動 き 始 め た 瞬 間 、押 し 始 め た 瞬 間 に「 動 い た 」「 押 し た 」 と 言 え る こ と か ら 、 活 動 動 詞 の 成 立 点 は 、 動 き の 開 始 点 に あ る と 言 え る で あ ろ う 18 。 本 稿 で は 、 こ の よ う な 活 動 動 詞 の 成 立 点 岩 本( 2008)で は 、 「 非 完 結 相 逆 説( imperfective paradox)」と 呼 び 、run や walk のような動詞によって表される動作は、 「 John is running→ John has run」の よ う に 、 その進行形の意味が完了の意味を含意すると述べている。 18 高 橋 ( 2003) で は 、 こ の よ う な 動 き の 開 始 点 を 、 「始発の局面」として捉え、 眼前で持続的な動作の始発の局面が成立したとき、それをいちはやくみつけて、 完成相の過去形でいうことがあると述べている。 (ⅰ)佐藤、第 2 球。ランナーがはしりました。ボー。うった。 ( ⅱ )( あ か ん ぼ う が は じ め て ) あ る い た 、 あ る い た 。 17 17 第 2 章 動詞の成立点とカケル構文の解釈 を 、活 動 動 詞の LCS で あ る ACT 19 が 示 す 成 立 点 と い う 意 味か ら 、 「 A(CT) 成 立 点 」 と 呼 んで お く 。 第3節 到達動詞の成立点 先 程 も 見 た よ う に 、 宮 腰 ( 2009a) は 、 完 結 タ イ プ ( 例 え ば < 閉 ま る > )の 場 合 、成 立 点 は た い て い 完 結点 と な る と 述 べ て いる が 、で は 、な ぜ こ の「 閉 まる 」の よ う な タ イ プ の動 詞 は 、 成 立 点 が完 結 点 に な る の で あ ろ う か 。この タ イ プ の 動 詞 は 、影 山( 2008)や 吉 田( 2012)な ど で も 指 摘 さ れ て い るよ う に 、金田 一 の 動 詞 の 4 分 類 に お け る 瞬 間 動 詞 に 相 当 し 、「 消 え る 」「 倒 れ る 」「 落 ち る 」 と い っ た タ イ プ の 動 詞 を 指 す 。 そ れ 治 政 点 、つ ま り 事象 の 成 立 点 で あ る と 言え る の で あ 大る が 、本 稿 で は 、こ の よ う な 到 達 動 詞 が 示 す 成立 立 点 を 、 完 結 点 や 終 了 点 と は 呼 ば ず 、「 変 化 点 」 ぞ れ 、消 え た 瞬 間 、倒 れ た 瞬 間 、落 ち た 瞬 間 が 、動 詞 の 表 す 動 き の 成 立 ‧ 國 學 と 呼 ぼ う と 思 う。到 達 動 詞 の 類 は、い ず れ も 動 詞 の 表 す動 き 、つ ま り 変 化 を 境 に 、対象 に 状 態・位 置 変 化 が 生 じ 、変 化 前 と 変化 後 で は 状 態 が 異 な っ て い る と 考 え ら れ る か ら で あ る 。 例 え ば 、「 消 え る 」「 倒 れ る 」「 落 ‧ ち る 」な ら 、そ れ ぞ れ「 消 え て い な い 状 態 か ら 消 え て いる 状 態 」へ の 変 y Nat 化、「 倒 れ て い な い 状 態 か ら 倒 れ てい る 状 態 」 へ の 変化 、「 落 ち て い な い sit 状 態 か ら 落 ち てい る 状 態 」へ の変 化 と い っ た 具 合 に。こ の 変 化 の 境 界 点 er io が 変 化 点 に 当 たる の で あ る 。し たが っ て 、到 達 動 詞 の成 立 点 は 、変 化 点 al に あ り 、こ の 変 化 点 を 、到 達 動 詞 の LCS で あ る BECOME 20 が 持 つ 成 立 点 n v i n と い う 意 味 か ら、「 B(ECOME) C h 成 立 点 」 と 呼Uん で お く。 engchi 第4節 達成動詞の成立点 で は 、 達 成動 詞 の 成 立 点 は ど こ に ある の だ ろ う か 。 宮 腰 ( 2009a) は、 「 論 文 を 書 く 」「 夕 食 を 作 る 」 の よ う な 作 成 事 象 は 、 本 来 的 に は 産 物 が ( ⅲ )( だ れ か が く い は じ め る の を 、 い ち は や く み つ け て 、) あ 、 く っ た 。 し か し 、 上 記 の 例 に お け る 「 は し り ま し た 」「 あ る い た 」「 く っ た 」 は 、 動 き と し て の 開 始 を 表 し 、終 了 は 表 し て い な い た め 、 「 完 成 相 の 過 去 形 」と 同 列 に 扱 う こ と は問題であろう。 19 影 山( 1996)で は 、活 動 動 詞 に 共 通 す る 意 味 特 徴 を 表 す 概 念 を 、ACT で 示 し て いる。 20 影 山 ( 1996) で は 、 到 達 動 詞 は 位 置 変 化 、 状 態 変 化 を 表 す と し 、 そ の LCS を BECOME と い う 概 念 を 用 い て 示 し て い る 。 18 第 2 章 動詞の成立点とカケル構文の解釈 完 成 し た 時 点 が完 結 点 で あ る と し てい る が 、論文 執 筆 や 夕 食 作 り が 少 し で も な さ れ た ら 「( 少 し は ) 書 い た | 作 っ た 」 と 言 え る の で 、 始 動 点 を 成 立 点 と み な せな い こ と も な い と も 指 摘 し て い る 21 。ま た 、仁 田( 2010) も 同 様 に 、「 書 く 」 の 類 は 最 後 の ピ リ オ ド を 打 つ こ と が 書 き 終 え る た め に は 必 要 に な る が 、 書 き 始 め れ ば 、「 書 い た 」 こ と に な る と 述 べ て い る こ と か ら 、こ の よ う な タ イ プ の 動 詞の 成 立 点 は 、動き の 完 結 点 に だ け で な く、動 き の 開 始 点 に も あ る と 考 えら れ る 。第 1 節 で 、 ( 23)の よ う に 、 活 動 動 詞 を テ イル 形 に す る と 、事 態 成 立 を 含 意 す る 一 方 、達 成 動 詞 の 場 合 、( 24) の よ う に 、 テ イ ル 形 に し て も 事 態 成 立 を 含 意 し な い こ と を 見 た が 、 実 は 、( 24) は 、「 作 り 始 め た 」「 建 て 始 め た 」 こ と は 含 意 し て お り 、 こ の 「 作 り 始 め た 」「 建 て 始 め た 」 時 点 が 、 開 始 の 成 立 点 と 考 え ら 治 政 こ れ ら の こ と から 、達 成 動 詞 に お ける 成 立 点 大は 、動 詞の 表 す 動 き の 開 立と 考 え ら れる が 、 で は、な ぜ 達 成 動 詞 に は 成 立 始 点 に も 完 結 点に も あ る れるのである。 ‧ 國 學 点 が 2 つあ る の だ ろ う か 。 そ れ は 、達 成 動 詞 の 語 彙 概 念構 造 ( LCS) か ら 説 明 で き る 。以 下 に 影 山 (2008)を も と に した LCS を 示 す 。 ‧ ]y BE AT-[ 活動動詞:[ ]x ACT ま た は [ ]y]CAUSE [BECOME[ n al ]z] Ch ]y y ]y BE AT-[ ]x ACT ON-[ io 達 成 動 詞 : [[ ]x ACT ON-[ sit 到 達 動 詞 : BECOME[[ ]z er Nat 状態動詞:[ e n g表c3h i v i n U( 影 山 ]y BE AT- [ 2008 ]z]] 一部修正) 活 動 動 詞 の 成 立点 は 、動 き の開 始 点 で あ る A 成 立 点 に あ り 、到 達 動 詞 宮腰は、 「 論 文 執 筆 や 夕 食 作 り が 少 し で も な さ れ た ら「( 少 し は )書 い た | 作 っ た 」と 言 え る 」と し て い る が 、確 か に「 少 し は 書 い た 」の 場 合 は 、 「書き始めたが、 ま だ 書 い た 量 が 少 し で あ る 」 と い う 意 味 を 表 せ る が 、「 少 し は 作 っ た 」 の 場 合 は 、 「 作 り 始 め て 、ま だ 途 中 で あ る 」と い う 解 釈 に は な ら ず 、 「 既 に 何 品 か 作 っ て 、そ の品数が少しである」という意味になると考えられる。 これは、作成動詞がとる 目的語が結果目的語であることに起因すると考えられるが、これについては、 第 5 章 で 論 じ る 。 た だ 、( ⅰ )( ⅱ ) の よ う に テ イ ル 形 に す る と 、 一 見 、 事 態 が 成 立 し て い な い よ う に 思 わ れ る か も し れ な い が 、動 き が 開 始 し た こ と は 含 意 す る の で 、 これらの動詞の事象の成立点は、動きの開始時点にもあると言えそうである。 ( ⅰ ) 論 文 を 書 い て い る 。( ×→ 書 い た ) | ( → 書 き 始 め た ) ( ⅱ ) 料 理 を 作 っ て い る 。( ×→ 作 っ た ) | ( → 作 り 始 め た ) 21 19 第 2 章 動詞の成立点とカケル構文の解釈 の 成 立 点 は、変 化 点 で あ る B 成 立 点 に あ る こ と は 既 に 述べ た が、こ れ は 、 活 動 動 詞 、 到 達動 詞 の LCS が そ れ ぞれ ACT、 BECOME で 示 さ れ る た め で あ っ た 。こ こ で 達 成 動 詞の LCS を 見 る と 、活 動 動 詞 が 表 す[[ ]x ACT ON-[ ]y] と 、 到 達 動 詞 が 表 す [BECOME[[ ]y BE AT-[ ]z]が 合 成 さ れ た 形 に な っ てい る 。す な わ ち 、達 成動 詞 に 成 立 点が 2 つ 存 在 す る の は 、 活 動 動 詞 と 到 達動 詞 、両 者 の 成 立 点 で あ る A 成 立 点 と 、B 成 立 点 が 存 在 す る た め だ と 考え ら れ る 。 先 程 、な ぜ 活 動 動 詞 は 限 界 性( 完 了 性 )を 持 た ず 、到 達 動 詞 と 達 成 動 詞 は 持 つ かと い う 疑 問 を 投 げ かけ た が 、こ れ は、 活 動 動 詞は B 成 立 点 を 持 た ず 、逆 に 、到 達 動 詞 と 達 成 動詞 は B 成立 点 を 持 つ と い う こ とに 起 因 す る と 考 え られ る 。す な わ ち 、活動 動 詞 は B 成 立 点 を 持 た な い ゆえ に 、限 界 性( 完 了 性 )を 持 た ず 、到 達 動 詞 と 達 成 動 詞 治 政 従 来 の 研 究 で は、活 動 動 詞 は 非 限 界動 詞 で あ 大り 、到 達動 詞 、達 成 動 詞 は 限 界 動 詞 で あ る と さ立 れてきたが、これは、動詞の持つ成立点のうち、 は 、 B 成 立 点 を持 つ ゆ え に 、 限 界 性( 完 了 性 ) を 持 つ ので あ る 。 ‧ 國 學 動 詞 の 表 す 動 きが 終 了 す る か ど う か、つ ま り B 成 立 点 に の み 焦 点 を 当 て る と い う 結 果 から 導 か れ た も の で ある と 考 え ら れ 、また 、そ の た め 、動 詞 の 表 す 動 き の開 始 を 示 す A 成 立 点 に つ い て は、さ ほ ど 注 視 さ れ て こ な ‧ か っ た の で あ ろう 。こ の 成 立 点 を 設定 す る こ と に よ り、非 限 界 動 詞 と し y Nat て ひ と く く り にさ れ て き た、 状 態 動 詞 と 活 動 動 詞 の 異 なり を 、 A 成 立 点 sit の 有 無 か ら 説 明 で き る こ と に な る 。 ま ず 、 状 態 動 詞 は ( 25)、 活 動 動 詞 n al er io は (26) の よ うに 図 示 で き る 。 (25) (26) Ch engchi i n U v ● A 成立点 説 明 を 加 え る と 、 図 中 の 点 線 は 「 継 続 」 を 示 し 、 例 え ば ( 26) で は 、 事態成立後、動詞の表す動きが継続できることを意味するのであるが、 活 動 動 詞 の 中 には 、継 続 を 表 せ な いも の も 当 然 あ る。こ の こ と に つ い て は第 3 章で扱う。 次 に、B 成 立 点 を 持 つ 到 達 動 詞、A 成 立 点 と B 成 立 点 を 共 に 持 つ 達 成 動 詞 を 図 示 す ると 、 そ れ ぞ れ (27)(28) の よ う に な るで あ ろ う 。 20 第 2 章 動詞の成立点とカケル構文の解釈 (27) (28) ● B 成立点 ● A 成立点 ● B 成立点 ( 27) で 示 し た 到 達 動 詞 の 図 は 、 瞬 間 的 な 変 化 を 表 す も の で あ る が 、 到 達 動 詞 の 中 には 、継 続 的( 段 階 的 )な 変 化 を 表 す も のも あ る 。こ れ に つ い て は 第 4 章 で 述 べ る 。 ま た、( 28) の 達 成 動 詞 の図 で あ る が 、 活 動 動 詞 と 到 達 動 詞の 成 立 点 が 合 成 さ れた も の に な る 。達 成 動 詞 の LCS か ら 治 政 番 と し ては A 成 立 点 → B 成 立 点 の 順に な る 。ま 大た 、A 成 立 点 と B 成立 点 立と B の 距 離 が ゼ ロ で あ る と 考え 、( 28) の よ う が 同 時 に な る 場合 は 、 A も わ か る よ う に、 ACT が な け れ ば、 BECOME が 起 こ り え な い の で 、 順 ‧ 國 第5節 學 に 図 示 し て お く。 動詞のタイプによる成立点とカケル構文の解釈 ‧ y Nat 以 上 の こ と か ら、表 1 を 修 正 し 、動 詞 の タ イ プ と そ の 成立 点 を ま と め 例 er 到達動詞 v a活l 動 動 詞 i A 成C立h点 B 成U 立n 点 engchi n 成立点 io 動詞のタイプ sit た も の を表 4 に示 す 。 達成動詞 A 成立点 B 成立点 走る ドアが開く ドアを閉める ワインを飲む ドアが閉まる 博士論文を書く ドアを叩く 火が消える 夕食を作る 表4 表 4 の 諸 例 を カケ ル 構 文 で 表 し た もの が( 29)~(31)であ る 。宮 腰 の ( 11)( 12) の 主 張 を 借 用 す れ ば 、(29) は A 成 立 点 、(30) は B 成 立 点 の 将 然 相 が 前景 化 さ れ 、( 31) は A 成 立 点 と B 成 立 点 の 将 然 相 が 共 に 前 景 化 さ れ る とい う こ と に な る。こ れ ら の こ と か ら、動 詞 の 成 立 点 で あ る A 成 立 点 と B 成 立 点 の 将 然 相 を前 景 化 す る の が、カ ケ ル の 機 能 だ と 考 21 第 2 章 動詞の成立点とカケル構文の解釈 えられる。 ( 29) a. 走り か け た 。 b. ワ イ ン を 飲 み か け た 。 c. ド ア を 叩 き か け た 。 ( 30) a. ドア が 開 き か け た 。 b. ド ア が 閉 ま り か け た 。 c. 火 が 消 え か け た 。 ( 31) a. ドア を 閉 め か け た 。 治 政 夕食を作りかけた。 大 立 b. 博 士 論 文 を 書 き か けた 。 c. ‧ 國 學 例 え ば 、( 29a) で は 、「 走 る 」 と い う 動 き の 成 立 に は 至 ら な か っ た こ と を 意 味 し、( 30a) で は 、 ド アが 「 開 く 」 と い う 変化 の 成 立 に は 至 ら な かったことを意味している。本稿では、活動動詞にカケルが後接した ‧ ( 29) の よ う な タ イ プ を 、「 将 動 相 」 と 呼 ん で お く 。 そ れ に 対 し て 、 到 y Nat 達 動 詞 に カ ケ ル が 後 接 し た ( 30) の よ う な タ イ プ を 、「 将 変 相 」 と 読 ん er io るであろう。 sit で お く 22 。( 29c)( 30b) を そ れ ぞれ LCS で 表 示 す る と 、以 下 の よ う に な al n v i n ( 29c) ド アを 叩 き か け Cたh。 [ ]x ACTUON-[door ] engchi カケル ( 30b) ド ア が 閉 ま り か け た 。 BECOME[[door ]BE AT-[ closed ]] カケル 金 田 一( 1976b)で は「 将 動 態 」「 始 動 態 」の よ う に「 態 」と い う 用 語 が 使 わ れ て い る が 、「 態 」 と い う の は 、「 コ ト の 中 の 役 割 ( つ ま り 日 本 語 で は 格 助 詞 の 使 い 方 ) と 相 関 関 係 に あ る 動 詞 の 形 態 ( 寺 村 1986)」 と あ る よ う に 、 一 般 的 に は ヴ ォ イ ス を 意 味 す る 用 語 で あ る 。従 っ て こ こ で は 、 「 態 」で は な く 、ア ス ペ ク ト を 意 味 する「相」という用語を用いている。 22 22 第 2 章 動詞の成立点とカケル構文の解釈 こ れ らの LCS か ら わ か る よ う に 、カ ケ ル が 活 動 動 詞 と共 に 用 い ら れ た 場 合 は 、ACT に 作 用 し 、将 動 相 の 解 釈 に 、到 達 動 詞 と 共 に 用 い ら れ た 場 合 は 、 BECOME に 作 用 し 、 将 変 相の 解 釈 に な る 。 将 動相 は 、 ACT が 持 つ 成 立 点 に は 至ら な い こ と を 表 し 、将 変 相 は 、BECOME が 持 つ 成 立 点 に は 至 ら な い こ とを 表 す の で あ る 。 で は 、達 成 動詞 に カ ケ ル が 後 接 し た( 31)の よ う な タイ プ は ど う で あ ろ う か 。 例 え ば ( 31a) の 場 合 、 カ ケ ル の 作 用 対 象 と な る の は 、 ド ア に 働 き か け る 動 きを 示 す ACT と、そ の 働 き か け よ る 変 化 を 受 け る BECOME と い う こ と に なる 。 こ れ を LCS で 表 示 す る と 、 以 下 のよ う に な る 。 ( 31a) 閉 める : [[ 政 治 大 ]x ACT ON-[door]]CAUSE[BECOME[door]BE AT- [closed ]]] 立 カケル ‧ 國 學 そ し て こ の こ とが 、( 31a) の 解 釈 が 曖 昧 に な る 原 因 であ る と 考 え ら れ る 。 こ の 曖 昧 さ を 解 消 す る に は 、( 32) の よ う に 、 文 脈 の 助 け を 借 り る ‧ 必要がある。 y Nat sit ( 32) a. 太郎 が ド ア を 閉 め か け た と き 、 電 話 が な っ た。 er io b. 太 郎 は ド ア を 少 し 閉 め か け た が、 途 中 で や め た 。 al n v i n ( 32a)の よ う に 言 え ば、 「 閉Cめ る 」と いう 動 き の 成 立 に は至 ら な か っ た 、 he hきi でUあ る ド アへ の 働 き か け( A つ ま り、 「 ド ア を閉 め る」た め の 最n初gのc動 成 立 点 )に は 至 ら な か っ た た め 、将 動 相 と し て 捉 え ら れ、( 32b)の よ う に 言 っ た 場 合 、「 ド ア を 閉 め る 」 と い う 動 き は 始 ま っ た 、 つ ま り 、 ド ア への働きかけは開始したが、その動きが途中で終わってしまったため、 「 ド ア が 閉 ま る」 と い う 変 化 が 起 こる ( B 成 立 点 ) ま で に は 至 ら な か っ た と い う 解 釈 がな さ れ る 。 す な わ ち、( 30b)と 同 様 に 、結 局 は ド ア は 閉 ま っ て お ら ず 、「 閉 ま る 」 と い う 変 化 の 成 立 に は 至 ら な か っ た と い う こ と を 表 し て い るの で あ る 。到 達動 詞 の 将 変 相 と 、達 成 動 詞 の 将 変 相 が 同 じ 解 釈 で 説 明 でき る こ と は 、 到 達 動詞 の LCS で あ る BECOME[[ AT-[ ]y BE ]z]が 、達 成 動 詞 の LCS で あ る CAUSE 以 下 の 部 分 と 同 じ で あ るこ と か ら も 十 分 予測 で き る こ と で あ る。 ま た、(33)か らも わ か る よ う に、「 閉 ま り か け る」と 言 え る の は、ド 23 第 2 章 動詞の成立点とカケル構文の解釈 ア が 動 き 始 め た 瞬 間 か ら 、「 閉 ま る 」 ま で の 間 の 時 点 で あ れ ば 、 ど こ で も よ い こ と に なり 、た と え「 閉 ま る 」途 中 で あ っ て も、「 閉 ま り か け る」 と 言 え る こ と には 変 わ り な い と い うこ と に な る 。 ( 33)「 将 変 相 」 閉まりかける ↓↓ ↓ B 成 立 点 「 閉 まる 」 ● 閉まっていない 閉 ま っ て いる 以 上 、 動 詞 の タイ プ と カ ケ ル 構 文 にお け る 解 釈 を ま と めた の が 、 表 4 である。 動詞のタイプ 治到 達 動 詞 政 大相 将動相 将変 活動動詞 カ ケ ル 構 文 の 解釈 立 達成動詞 将動相|将変相 表4 ‧ 國 學 こ こ で 、 本 稿 での カ ケ ル 構 文 の 意 味・ 機 能 と 、 将 然 相 につ い て 再 定 ‧ 義 し て お く 必 要が あ る。 宮 腰 の ( 11)( 12) の 主 張 を 修 正 し 、( 34) の よ う に 定 義 し て おく 。 y Nat n er io al sit ( 34) カ ケ ル 構文 の 意 味 ・ 解 釈 v 意 味 :「 動 詞 の 表 す 動 き の 成 立 に は至 ら な い 」 Ch engchi i n U 解 釈: 将 動 相 と 将 然 相 の 二 つ あ る が 、こ れ は あ く ま で 、カ ケ ル が A( CT) 成 立 点 に 作 用 す る の か B( ECOME) 成 立 点 に 作 用 す るか の 違 い で あ り 、ど ち ら に 作 用 す る か は 、 そ の 文 が 持つ 成 立 点 に よ っ て 決定 さ れ る 。 こ こ で は 解 釈 の定 義 を 、前 接 す る動 詞 の 持 つ 成 立 点 に より 、将 動 相 と 将 変 相 に 下 位 分類 し た 。両 者 は、あ く ま で 動 詞 の タ イ プに よ り 用 語 が 変 わ る だ け で あ っ て 、 カ ケ ル に よ り 焦 点 化 さ れ る 部 分 は 、( 33) と 以 下 の ( 35)を 比べ れ ば わ か る よ う に、将 動 相 で あ っ て も 将 変相 で あ っ て も 同 じ で あ る と い うこ と に な る 。 24 第 2 章 動詞の成立点とカケル構文の解釈 (35)「 将 動 相 」 食べかける ↓↓ ↓ ● A 成 立 点 「 食 べ る 」 食べていない 食べている また、活動動詞と到達動詞を合成した達成動詞においても、 解釈は、 文 脈 に よ り 将 動相 か 将 変 相 か が 決 定さ れ 、文 脈 に 示さ れ な い 場 合 は 、両 義 的 に 解 釈 さ れ る こ と は 既 に 述 べ た 。 こ れ を 図 示 す る と 、( 36) の よ う になる。 (36)「 将 動 相 | 将 変 相 」 閉めかける ↓↓↓ 立 治閉 ま り か け る 「政 閉める」 ↓大 ↓↓ B 成立点 A 成立点 「閉まる」 ● 閉まっている ● 閉まっていない ‧ 國 學 こ こ で 注 意 が 必要 な の は 、達 成 動詞 に お い て は 、将 動相 と 将 変 相 は そ れ ぞ れ 独 立 し て 解 釈 さ れ る と い う こ と で あ る 23 。 上 記 の よ う な 達 成 動 詞 ‧ の 場 合 、「 閉 め る 」 と い う 動 き の 、 ド ア に 対 す る 働 き か け が 始 ま っ た 瞬 y Nat 間 ( A 成 立 点 到 達 ) か ら 、「 閉 ま る 」 と い う 動 き が 開 始 し 、 基 本 的 に は sit 完 全 に ド ア が 閉ま る( B 成 立 点 到 達 )ま で、 「 閉 め る 」と い う 動 き が 続 く er io の で あ る が、 カ ケ ル が 作 用 す る の は、 将 動 相 な ら、 A 成 立 点 に 達 す る 以 al 前 の 部 分 、つ ま り「 閉 め る 」動 き が 成 立 す る 以 前 の 部 分 で あ り 、将 変 相 n v i n な ら 、 B 成 立 点 に 達 す る 以C 前 の 部 分 、 つ ま り 「 閉 ま る 」動 き が 成 立 す る he h降i もU、「 閉 め る 」 動 き は 継 続 す 以 前 の 部 分 で あ る 。 従 っ て 、 A 成n立g点c以 る が 、カ ケル が 作 用 す る の は 、あ く ま で「 閉 ま る」動 き 、つ ま り BECOME で あ り 、 焦 点 化さ れ る の は 、 B 成 立点 な の で あ る 24 。 こ こ で は 、両 義 的 な 解 釈 が 可 能 で あ る と し て い る が 、普 通 は 将 動 相 か 将 変 相 か どちらかの解釈しか成り立たない。 「 ド ア を 閉 め か け た 」と 発 し た 場 合 、そ の 発 話 者が「閉めるという動きに至らなかった」のか「途中まで閉めた」のかがあいま いであるという解釈は、通常起こり得ないからである。 24 宮 島( 1994)で は 、 「( ド ア を )あ け る 」と い う 動 作 を 、以 下 の よ う な 段 階 に 分 け、 ①ドアの取っ手に手をかける ②取っ手をまわす ③ドアを手まえにひく ④ドアがうごきはじめる ⑤ドアが完全にひらいた状態に 23 25 第 2 章 動詞の成立点とカケル構文の解釈 こ こ ま で は 、動 詞 の タ イ プ に よ り 、 成 立 点 が 異 な る こ と 、ま た 、そ の 成 立 点 の 異 な りに よ り 、カ ケ ル 構 文 の 解 釈 が 異 な る こ とを 概 略 的 に 述 べ て き た が 、次章 以 降 で は 、動 詞 やそ の 成 立 点 に つ い て、先 行 研 究 を 通 し 、 更 に 詳 し く 分 析し 、考 察 を 加 え る こと に よ り 、 カ ケル 構 文 の 実 態 を 探 っ ていく。 立 政 治 大 ‧ ‧ 國 學 n er io sit y Nat al Ch engchi i n U v 場合によっては、第 1 段階のまえに「ドアをあけようとおもう」という意志の段 階を置いたり、最後の段階のあとに「ドアをあけたままにしておく」というもう 1 つ の 動 作 を 考 え た り す る 必 要 が あ る か も し れ な い と 述 べ て い る 。本 稿 で は 、 「ド アを開ける」がカケル構文で用いられると、将動相は③が成立する前の段階を指 し、将変相は⑤が成立する前の段階を指すと考える。 26 第 3 章 活動動詞とカケル構文 第3章 活動動詞とカケル構文 こ こ で は 、前章 で の 主 張 を 前 提 に、活 動 動 詞 が カ ケ ル 構文 で 用 い ら れ た 場 合 、実際 に 将 動 相 の 解 釈 が 成 り立 つ の か ど う か を 検証 し て い く 。こ の検証にあたって、まず、活動動詞がある種のヲ格目的語との共起し、 動詞句になることにより、成立点を2つ持つようになることを論じる。 さ ら に 、先 行研 究 を 通 し て 、活 動動 詞 を 更 に 細 か く 分 類し た 後 、 実 例 を 観 察 し な が ら 、解 釈 の 検 証 を 行 う 。 第1節 政 治 大 ヲ 格 名 詞 句 が 持 つ IT 成 立 点 立 (31a)で 解 釈 が 揺 れ る 原 因 を 見 たが 、 同 じ よ う な こ とが ( 4) と ( 5) ‧ 國 學 で も 見 ら れ る こ と は 既 に 述 べ た 。( 31) に お い て 解 釈 が 揺 れ る の は 、 達 成 動 詞が A 成 立 点 と B 成立 点 の い ず れ も 有 し 、カ ケ ル 構 文 で 用 い ら れ る と 、そ の 機 能 に よ り 、両 義 的 に 解 釈 で き る た め で あ っ た。こ の A 成 立 点 ‧ も B 成 立 点 も 、 共 に 動 詞 に 内 在 する の で あ る が 25 、 従 来、 こ の 2 つ の 成 y Nat 立 点 の う ち、 B 成 立 点 に の み 焦 点 を当 て て き た た め、 達 成 動 詞 が 限 界 性 sit を 持 つ 限 界 動 詞で あ る と さ れ て き たこ と は 既 に 述 べ た。そ し て、( 4)と al er io ( 5)で も 同 様 に 、達 成 動 詞 と 同 様 に 解 釈 が 揺 れ る と い うこ と は、 「読む」 n の よ う な 活 動 動詞 も 、 達 成 動 詞 と 同様 に 、 B 成 立 点 に 相 当 す る 成 立 点 を 持 つ こ と が 予 想さ れ る 。 Ch engchi i n U v で は 、 ど のよ う な 場 合 に 、 A 成 立 点 し か 持 た な い 「読 む 」 の よ う な 活 動 動 詞 が 、 両 義的 解 釈 を 得 る 、 す なわ ち 、 A 成 立 点 も 、 B 成 立 点 に 相 当 す る 成 立 点 も 持つ よ う な 動 詞 に な る の で あ ろ う か。 A 成 立 点 は、「 読 む」 自 体 に 内 在 す る成 立 点 で あ る 。従 っ て、こ こ での B 成 立 点 に 相 当 す る 成 立 点 は 、外 的に 与 え ら れ る 成 立 点 とい う こ と に な り 、本 稿 で は 、そ の よ う な 成 立 点 を 持 つ の は 、「 読 む 」 の ヲ 格 名 詞 句 で あ る 「 本 」 に 起 因 す る と 考 え る。そ こ で 、以 下 で は「 本 」の よ う な ヲ 格 名 詞 句と 、そ の ヲ 格 名 詞 句 が 「 読 む 」の よ う な 活 動 動 詞 と共 起 す る こ と で 、 B 成 立 点 に 相 当 す る 成 立 点 を 獲 得す る こ と を 見 て い く。 A 成 立 点 は ACT 自 体 が 持 つ 成 立 点 、B 成 立 点 は BECOME 自 体 が 持 つ 成 立 点 で あることから、A 成立点も B 成立点も共に動詞に内在するものであると言える。 25 26 第 3 章 活動動詞とカケル構文 1.1 ヲ 格 名 詞 句 が 定 名 詞 句 で あ る 場 合 こ こ で は 、対 格名 詞 句 26( 本 稿 で の「ヲ 格 名 詞 句」)が 存 在 す る 動 詞 句 レ ベ ル で の 限 界 性 ( telicity) が 、 ど の よ う に 決 定 さ れ る か に つ い て 考 察 を 行 っ た 北 原( 1999)の 主 張 を 概 観 し な が ら 、そ の 問 題 点 を 指 摘 し 、本 稿 の 考 え を 述 べて い く 。 北 原( 1999)で は 、 非 限 界 動 詞( 活動 動 詞 に 相 当 )と 限界 動 詞( 達 成 動 詞 に 相 当 ) が そ れ ぞ れ 27 、 ⅰ ) 対 格 名 詞 句 と だ け 共 起 し た 場 合 、 ⅱ ) 対 格 名 詞 句 と 副詞 句 の 達 成量 Q と 共 起 し た 場 合、ⅲ )対 格 名 詞 句 の 指 示 対 象 の 部 分 を 表す マ デ 格 句 と 共 起 した 場 合 の 3 つ の 場 合 に お い て 、 telic ( 1)の な 動 詞 句 に な るか atelic な 動 詞 句 に なる か の 分 析 を 行 って い る 28 。 治 政 当 て は ま る の で、 こ の 場 合 に つ い て見 て い く 。 大 立、対 格 名 詞 句が( 37)の よ う に 定 的 で あ る 場 合 ま ず 、北 原( 1999)は 「 本 を 読 み か けて や め た 」の「 読む 」 は 、 非 限 界 動 詞で 、ⅰ )の 場 合 に (37) a. 太 郎 が b. 次 郎 が そ の 舗 道 を | 広 瀬通 り を 歩いた ‧ ‧ 國 、 學 29 三 郎 の 買 っ て き た 本 | LGB を Nat y 読んだ al er io sit (37)が表 す 事 態 は 、事 態 終 了 時 に 、最 後 ま で 行 わ れ き って い な い 場 合 で v n 北 原( 1999)は 、こ の 対 格 名 詞 句 を 、他 動 詞 の 項 と し て 現 れ る も の も 、経 路 を 表す付加詞として現れるものも、いずれも動詞句の限界性の決定に関与するとし て同様に扱っているが、経路句が限界性の決定要因となることは、以下の例から も明らかであろう。 ( ⅰ ){ 3 時 間 | ?3 時 間 で } 歩 い た 。 (ⅱ)大通りを{3 時間|3 時間で}歩いた。 本稿でも、経路句が非限界動詞句における限界性の決定に関与するという点で、 他動詞の項と同様に扱う。 27 北 原( 1999)で は 、工 藤( 1995)の 分 類 で あ る 非 内 的 限 界 動 詞 、内 的 限 界 動 詞 をそれぞれ非限界動詞、限界動詞と呼んでいる。工藤分類の非 内的限界動詞、内 的 限 界 動 詞 は そ れ ぞ れ 、 影 山 ( 1996・ 2008) の 活 動 動 詞 と 到 達 動 詞 ・ 達 成 動 詞 に ほぼ相当することから、本稿では、北原の非限界動詞、限界動詞をそれぞれ、活 動動詞と到達動詞・達成動詞に相当するものとしておく。 28 北 原 ( 1999) は 、 限 界 点 が 存 在 す る 動 詞 句 を 「 telic な 動 詞 句 」 、限界点が存在 し な い 動 詞 句 を 「 atelic な 動 詞 句 」 と 呼 ん で い る 。 29 北 原( 1999)で は 、名 詞 句 の 指 示 対 象 が 発 話 者 に よ り 特 定 さ れ て い る も の を 特 定 的 ( specific)、 聞 き 手 が そ の 指 示 対 象 を 知 っ て い る も の を 定 ( definite) で あ る としているが、本稿ではこれらをまとめて定名詞句としておく。また、定名詞句 に対して、不定であり非特定なものを、不定名詞句としておく。 26 Ch engchi 27 i n U 第 3 章 活動動詞とカケル構文 も 、 成 立 し た と 言 え る 30 と し 、( 38) の よ う に 数 量 表 現 「 期 間 Q」 と も 、 (39) の よ う に「 期 間 Q デ 」 と も 共 起 す る と し て い る 31 。 ( 38) a. 太郎 が b. 次 郎 が ( 39) a. 太郎 が b. 次 郎 が そ の 舗 道 を | 広瀬 通 り を 30 分 歩 い た 三 郎 の 買 っ て き た 本 | LGB を そ の 舗 道 を | 広瀬 通 り を 3 日間読んだ 30 分 で 歩 い た 三 郎 の 買 っ て きた 本 | LGB を 3 日で読んだ ( 以 上 、北 原 1999) さ ら に 、 定 名 詞句 に つ い て は 、 以 下の よ う に 説 明 し て いる 。 治 政 … 特 定 的な 名 詞 句 と 定 名 詞 句は 、指 示 対 大象 の 同 定( identification) 立態 の 限 界 点 に 達 する 点 の 領 域(domain)を 特 定 が で き る か ら、事 ‧ 國 學 す る こ と が で き る 。 た と え ば 、「 広 瀬 通 り 」 は 、 指 示 対 象 の 同 定 ができ、その始点と終点を特定しうるから、その中のどこかで、 「 広 瀬 通 り を 歩く 」が 限 界 点 に 達 する 。こ の よ う に、特 定 的 な 対 ‧ 格 名 詞 句 と 定 の対 格 名 詞 句 は、非 限 界 動 詞 と 共 起 す る と、 事 態 を ( 北 原 1999) er io sit y Nat は か り と る 性 質を 潜 在 的 に 持 つ よ うに な る 32 。 al 上 記 の こ と か ら、 北 原 ( 1999) は、( 37) が 、 期 間 Q と も 期 間 Q デ と n v i n も 共 起 し 、 atelic な 動 詞 句 に に も 解 釈で き る 矛 盾 を 説 明 Cもh telic な 動 詞 句U i e h n g動c詞 句 で あ る た め、 (38) の よ う に す る の に 、(37)は 、 基 本 的 に atelic な 期 間 Q と 共起 し 、 一 方 、 (39) は 、 非 限 界 動 詞 が 、 定名 詞 句 と 共 起 す る こ と に よ り 、telic な 概 念 を 潜 在 的に 持 つ よ う に な る ため 、 atelic な 動 詞 事 態 終 了 時 に 、最 後 ま で 行 わ れ た 場 合 で も 、最 後 ま で 行 わ れ て い な い 場 合 で も 、 成立したと言えるということであろう。 31 北 原( 1999)は 、 「 30 分( 間 )」と「 3 日 間 」の よ う な 数 量 表 現 を「 期 間 Q」、 「 30 分( 間 )で 」と「 3 日( 間 )で 」の よ う な 数 量 表 現 を「 期 間 Q デ 」と 呼 ん で い る 。 32 北 原 は 、事 態 を「 は か り と る( measuring-out) 」と い う Tenny( 1994)の 用 語 を 用 い て い る が 、 詳 し い 説 明 は 行 っ て い な い 。 松 本 ( 2005) に よ る と 、「 測 定 ( MEASURE)」と は 、あ る 程 度 持 続 し た 後 、終 結 す る よ う な 限 定 的 な 事 象 を 表 し 、 項構造の直接的内項と結びつくアスペクトであり、この測定のアスペクト役割を 受 け る 動 詞 の 項 は 、 事 象 を 測 り 分 け る ( measure out) と い う こ と で あ る 。 簡 単 に 言えば、測定のアスペクト役割を受ける項が、動詞の表す事象を測り取る(限定 する)ことだと考えられる。 30 28 第 3 章 活動動詞とカケル構文 句 が 潜 在 的 に 持 つ telic な 概 念 を 健 在 さ せ る 機 能 を 持 つ期 間 Q デ と 共 起 す る と 、そ の性 質 が 顕 在 化 す る と 主張 し て い る 。す なわ ち 、定 名 詞 句 と の 共 起 に よ り 、非 限 界 動 詞 句 に 生 じた 潜 在 的 な telic の 概 念 が 、 期 間 Q デ に よ り 顕 在 化し た と 述 べ て い る ので あ る 。 し か し、こ の 主 張 に は 矛 盾 がある。 北 原( 1999)は 、定 名 詞 句 は「 事 態 の 限 界 点 に 達 す る 点の 領 域 を 特 定 す る こ と が で きる 」「 そ の 始 点 と終 点 を 特 定 し う る 」 こ と か ら、「 事 態 を は か り と る 」性 質 を 持 ち 、そ の よう な 性 質 を 持 っ た 「対 格 名 詞 句 が 存 在 する動詞句は、限界性を変更する要因となる句が他に存在しなければ telic な 動 詞 句 に な る 」 と 述 べ て い る が 、 こ の 説 明 か ら す れ ば 、( 37) の 対 格 名 詞 句 は 事態 を は か り と る 性 質を 持 つ の で、そ の よ う な 対 格 名 詞 句 治 政 ろ が 、 北 原 は、( 37) を 「 基 本 的に atelic な動大 詞句」としている。 立ら れ る の は、( 37) が 、 期 間 Q や 期 間 Q デ の 有 こ れ ら の こ と から 考 え と 共 起 し た 「 歩 く 」「 読 む 」 は 、 telic な 動 詞 句 に な る は ず で あ る 。 と こ (40) ● A 成立点 sit y Nat ● D 成立点 ‧ ‧ 國 に 示 す と、( 40) の よ う に な る で あろ う 。 學 無 に か か わ ら ず 、telic な 動 詞 句 であ る と い う こ と で あ る 。こ の こ と を 図 er io 「 D( efinite)成 立 点」と い う の は 、北 原( 1999)の 言 う、定 的 で あ る 対 al 格 名 詞 句 に よ りも た ら さ れ る 成 立 点の こ と で あ る 。こ こ で は 、暫 定 的 に n v i n 「 D 成 立 点 」 と 呼 ん で お く。 動詞 に 内 在 す る 成 立 点 で は C hこ の 成 立 点 は 、U i e h n な く 、外 的な も の で あ り 、ヲ 格名 詞g 句c と そ れ を と る 動 詞と の 意 味 関 係 に よ り も た ら さ れる も の で あ る 。言 い 換 え れ ば 、動 詞句 に な る こ と に よ り 生 じ る 成 立 点 なの で あ る。こ の よ う な ヲ 格 名 詞 句 の 性 質に つ い て は、1.3 で 改 め て 論 じ るが 、ヲ 格 で 表 さ れ る 名 詞 句 が 、非 限界 動 詞 を 限 界 動 詞 句 に 変 換 す る 機 能を 持 つ こ と は 、北 原 の 言 う 期 間 Q で と 共 起 で き る こ と か ら も 明 ら か で ある 。 そ し て、( 40) か ら も わ か る よ う に、 こ の D 成 立 点 を 持 つ 動 詞 句 は、( 28) で 見 た 達 成 動 詞 と 、 成 立 点 を 2 つ 持 つ と い う 点 で 、 共 通 点 を 持つ こ と に な る 。 ま た、 成 立 点 を 2 つ 持 つか ら こ そ 、 (37) が 表 す 事 態 は、事 態 終 了 時 に 、最 後 ま で す べ て が 行 わ れき っ て い な い 場 合 で も 成 立 し たと 言 え る の で あ る。言 い 換 え れ ば 、す べ て が 行 わ れ 切 っ て い な い 場 合 でも 、 成 立 し た と 言 える の は、 A 成 立 点 が 成 立 点 と し て 見 な さ れ る た め であ る 。も ち ろ ん 、D 成 立 点 が 成 立 点 と し て見 な さ れ れ ば 、 29 第 3 章 活動動詞とカケル構文 す べ て が 行 わ れ 切 っ た 解 釈 に な る と 考 え ら れ る 33 。 三 原 ( 2004) で は 、 前 者 を 「 [- 全 体 的 ]解 釈 」、 後 者 を 「 [+ 全 体 的 ]解 釈 」 と 呼 ん で い る 34 。 本 稿 で は 、(37) を 、(40) の 図 か ら 限 界 動 詞 句 と 見 な し 、 そ の こ と に よ り 、 (39) が 所 要 時 間 句 ( 期間 Q デ に 相 当 ) と 共 起す る と 考 え る 。 で は 、 な ぜ 限 界 動詞 句 が 、 (38)の よ う に 、 継 続 時 間 句 (期 間 Q に 相 当) と 共 起 で き る ので あ ろ う か。 こ こ で 、 先 程 少 し 触 れ た、 三 原( 2004)の [±全 体 的 ]解 釈 と い う 考 え を 用 い る。こ の 考 え を 用 い ると 、 (38)は、[- 全 体 的 ]と い う 解 釈 が で き 、 所 要 時 間 句 と 共 起 す る (39) は 、 [+ 全 体 的 ] と い う 解 釈 が で き る 。 す な わ ち 、 (38) は 、 継 続 時 間 句 に よ り 、 30 分間 歩 き 続 け た が 、 ま だ 歩 き 切 っ て は い な い と い う [- 全 体 的 ] 解 釈 が 与 え ら れ 、(39)は 、所 要 時 間 句 に よ り、30 分 で 歩 き 切 っ た と い う [+ 全 体 的 ] 治 政 て 図 示 す る と 、以 下 の よ う に な る であ ろ う 。 大 立 解 釈 が 与 え ら れ る こ と に な る の で あ る 。 こ の こ と を 、 (38a) (39a)を 用 い er io Hi その舗道|広瀬通 ● ● A 成り 立点 D 成立点 sit 30 分 で y ‧ ‧ 國 ● D 成立点 Nat (39) a. その舗道|広瀬通 ● A 成り 立点 學 30 分 (38) a. al n v i n (38a)の 図 か ら も わ か る よ うC に 、「 そ の 舗 道 | 広 瀬 通 り 」 の 終 点 は 定 め ら he gchi U れ て い る も の の、30 分 間 歩 き 続 けn ても 、そ こ ま で た ど り着 け な か っ た と い う こ と で 、[- 全 体 的 ]と 解 釈 さ れ る 一 方 、(39a)で は 、30 分 で 最 後 ま で 33 須 田( 2010)で は 、「『 坊 ち ゃ ん 』を 読 む 」と い う 動 作 に つ い て 、動 作 の 対 象 が 限定されたもので、それにより動作のつきはてる終了点がはっきりしているよう ではあるが、 「 き の う 私 は『 坊 ち ゃ ん 』を 読 ん だ 」と 言 っ て も 、小 説 の 終 わ り ま で 読んだとは限らないと述べている。須田は、この理由を、現実の動作としての終 了点が、必ずしも言語的な限界を表わさないためであるとしているが、本稿の立 場から説明すれば、これは、成立点が 2 つあるため、両義的に解釈できるという ことになる。 34 三 原 ( 2004) は 、 以 下 の よ う な 例 を 挙 げ 、 (ⅰ)太郎は『純粋性理論』を{3 日間|3 日で}読んだ。 本 を 3 日 間 途 中 ま で 読 ん だ 場 合 は [- 全 体 的 ]解 釈 に 、3 日 で す べ て 読 み 切 っ た 場 合 は [+ 全 体 的 ]解 釈 に な る と 説 明 し て い る 。 ま た 、 こ の よ う な 状 況 を 表 し 得 る 動 詞 と し て 「 拭 く 」「 演 奏 す る 」「 調 べ る 」 が あ る と 述 べ て い る 。 30 第 3 章 活動動詞とカケル構文 歩 き 切 っ た と いう こ と で 、 [+ 全 体 的 ]と 解 釈 さ れ る の であ る 。 な ぜ 所 要 時 間 句と 共 起 す る こ と に より 、こ れ ら の 動 詞 句に [+ 全 体 的 ] 解 釈 が 生 じ る のか と い う と 、これ は デ の 機 能 に よ る と 考え ら れ る 。デ は 動 詞 の 表 す 動 きの 開 始 か ら 終 了 ま での 時 間 の 範 囲 、つ ま り 、動 き の 開 始 か ら 終 了 ま で にか か る 時 間( 所 要時 間 )が 、ど の く らい の 時 間 で 終 了 す る と 限 定 す る 機 能 を 持 つ 35 と 考 え ら れ る 。 そ の 動 き の 開 始 、 終 了 が そ れ ぞ れ A 成 立 点 、D 成 立 点 で あ り 、所 要 時 間 句 に よ り 、こ の A 成 立 点 か ら D 成 立 点 に 達 す る ( 動 詞 の 表 す 動 きが 終 了 す る) ま で に か か る 時 間 が 限 定 さ れ る の で ある 。こ の 時 間 の 範 囲を 限 定 す る と い う 機能 が あ る か ら こ そ 、所 要 時間 句 と 共 起 す る 動 詞 は、限 界 動 詞 で あ る 必 要が あ る と い う こ と に な る 36 。 逆 に 言 え ば 、 継 続 時 間 句 は 時 間 の 範 囲 を 限 定 せ ず 、 動 詞 の 治 政 ず 、そ の 動き の 終 了 に は 関 わ っ て こな い た め 、非 大 限界 動 詞 と 共 起 が 可 能 に な る と 考 え られ る 。 立 表す動きの開始からどれだけの時間が経過しているのかを示すに過ぎ ‧ 國 學 以 上 の こ と を まと め る と、本 来 的 に A 成 立 点 し か 持 た ない「 読 む」の よ う な 活 動 動 詞が 、定 的 で あ る 名 詞句 を ヲ 格 目 的 語 に 取る と 、そ の 名 詞 句 の 性 質 に より D 成 立 点 も 持 つ 動 詞句 に な り、事 象 の 成 立 点 を 2 つ 持 つ ‧ ようになる。この2つの成立点があるため、継続時間句と共起すると、 y Nat [- 全 体 的 ]と 解釈 さ れ、 A 成 立 点 の み が 成 立 し た こ と にな り 、所 要 時 間 sit 句 と 共 起 す る と、 [+ 全 体 的 ]と 解 釈 さ れ、 D 成 立 点 が 成 立 し た こ と にな al er io る 。また 、 こ の 2 つ の 成 立 点 が 、「 本 を 読 む」「 ワ イ ン を 飲 む 」 とい っ た n 動 詞 句 に 、 両 義的 解 釈 を 与 え る 原 因と な っ て い る の で ある 。 Ch eいn場g合c h 1.2 ヲ 格 名 詞 句 が 定 名 詞 句 で な i i n U v 前 節 で は、ヲ 格 名 詞 句 が 、定 的 で あ る 場 合 を 見 た が、北 原( 1999)は 、 (41)のよ う に 、ヲ 格 名 詞 句 が 、指 示詞 や 修 飾 句 が 付 い てい な い 裸 の 形 式 の 場 合 も あ る とし て い る 。 森 田 (1989) で は 、 時 間 ・ 期 間 の 長 さ を 限 定 す る デ の 機 能 と し て 、 継 続 す る 行 為や作用の終了・完了を表すとしている。この時間や期間の長さというのは、行 為や作用が開始から終了まで継続する時間や期間のことであり、これがデにより 限定されると考えられる。 36 非 限 界 動 詞 で あ る (ⅰ )が 所 要 時 間 句 と 共 起 し に く く 、 限 界 動 詞 で あ る (ⅱ )が 共 起するはこのためである。 (ⅰ )?2 時 間 で 走 っ た 。 (ⅱ ) そ の コ ー ス を 2 時 間 で 走 っ た 。 35 31 第 3 章 活動動詞とカケル構文 ( 41) a. 太 郎 が 舗 道 を 歩 い た。 b. 次 郎 が 本 を 読 ん だ 。 こ の 場 合 、事態 終 了 時 に 、最 後 まで 行 わ れ き っ て い な い場 合 で も 成 立 し た と 言 え、そ れ ぞ れ の 対 格 名 詞 句は 、事 態 を は か り とっ て い る と は 言 え な い と し て いる 。 ま た 、 期 間 Q 及 び 期 間 Q デ を 挿 入 し た ( 42)( 43) を挙げ、 ( 42) a. 太 郎 が 舗 道を 30 分 歩 い た 。 b. 次 郎 が 本 を 1 時 間 読ん だ 。 治 政 ( 43) a. ??太 郎 が 舗 道を 30 分 で 歩 い た 。 大 立を 3 日 で 読ん だ 。 b. ?次 郎 が 本 ( 以 上、 北 原 1999) ‧ 國 學 (43)の場 合 、裸 形 式 で あ る 対 格 名 詞句 は 、不 定 で あ る と読 ま れ る 傾 向 が あ る た め、期 間 Q デ と 共 起 す る と 不自 然 に な る と し、こ の よ う に、不 定 ‧ で あ る 対 格 名 詞句 は 、指 示 対 象の 同 定 が で き ず 、その た め 事 態 を は か り y Nat と れ ず 、 こ の よ う な 対 格 名 詞 句 を 取 る 非 限 界 動 詞 句 は 、 atelic な 動 詞 句 sit で あ る と し て いる 。こ の 北 原 の 言 明を 、本 稿 の 立 場 か ら図 示 す る と、 ( 44) n al er io の よ う に な る であ ろ う 。 (44) ● A 成立点 Ch engchi i n U v ( 44) か ら も わ か る よ う に 、 対 格 名 詞 句 が 不 定 で あ る た め 、( 40) の 図 と は 異 な り、 D 成 立 点 も 存 在 せ ず、 よ っ て [+ 全 体 的 ]解 釈 に は な ら な い 一 方 、 A 成 立 点 は 存 在 す る た め 、 [- 全 体 的 ]解 釈 が 可 能 に な る と 考 え ら れ る 。最後 ま で 行 わ れ て い な く ても 、事 態 が 成 立 し たと 言 え る と い う 北 原 の 言 明 は、 こ の こ と を 示 し て いる と 考 え ら れ る。 ま た 、 D 成 立 点 が 存 在 し な い の であ る か ら、[+ 全 体 的 ]解 釈 が で き な い のは 当 然 で あ ろ う。 た だ、北 原( 1999)は、(43)は 完 全 に 不 適 格 で は な い とし 、そ の 理 由 と し て 、 (37) が 、 期 間 Q デ と 共 起 す る こ と に よ り telic な 動 詞 句 に な っ た の と 同 様 に 、(43)も 、期 間 デ と 共 起 す る こ と に よ り 、telic な 動 詞 句 と し て 解 釈 さ れ る よ う に な る た め で あ る と し て い る 。 し か し 、( 37) は そ 32 第 3 章 活動動詞とカケル構文 も そ も telic な 動 詞 句 で あ り 、 期 間 Q デ に よ り telic な 動 詞 句 に な っ た も の で は な い 。 と い う こ と は 、 ヲ 格 名 詞 句 が 不 定 で あ る ( 41) は 、 atelic な 動 詞 句 と 見 なさ れ る べ き で、そ の よ う な 動 詞 句 が 期間 Q デ と 共 起 し て も 、telic な 動 詞 句 に は な り 得 な い ため 、(43)で は 座 り が 悪 く 感 じ ら れ る の で は な い だ ろう か 。 さ ら に 、 北 原 ( 1999) は 、 (39) よ り (43) の 方 が 容 認 可 能 性 が 低 い の は 、日 本 語 では 、英 語 の 定 冠 詞 や 不定 冠 詞 や 裸 複 数 形 のよ う に 、特 定 | 非 特 定 や 定 | 不 定 を 形 態 的 に 表 す 手 段 が な い た め 、「 舗 道 」 や 「 本 」 だ け を 見 て 、特定 性 や 定 性 を 決 定 で きず 、よ っ て 、 対 格名 詞 句 が 特 定 的 に 解 釈 さ れ る た めに は 、文 脈か ら の 強 力 な 支 え が 必 要 で ある と 指 摘 し て い る 。こ れ に つ い て は 、本 稿 も 同 じ 立 場 を と る 。と い う の も 、文 脈 の 支 え 治 政 あ る 「 LGB を 読 む 」 と 、 atelic な 動 詞 句 で あ る 大は ず の 「 本 を 読 む 」 が 、 そ れ ぞ れ( 45) ( 46)の立 よ う に 、文 脈 の 支 え に よ り、い ず れ も 同 様 に 解 が 対 格 名 詞 句 の定・不 定 に 影 響 を 与え る と い う 事 実 は 、telic な 動 詞 句 で 37 ‧ 國 學 釈 可 能 だ か ら であ る 。 ( 45) a. 次郎 が LGB を 読 ん だ 。 しか し 、 全 部 は 読 ま なか っ た 。 ‧ b.次 郎 が LGB を 読 ん だ 。 し か し 、ス ト ー リ ー が わ か ら な か sit y Nat った。 al er io ( 46) a. 次郎 が 本 を 読 ん だ 。 し かし 、 全 部 は 読 ま な かっ た 。 n b. 次 郎 が 本 を 読 ん だ 。 し かし 、 ス ト ー リ ー が わか ら な か っ た。 Ch engchi i n U v ( 45a) ( 46a)は 、い ず れ も「 LGB | 本 を 読 ん だ が 、最 後ま で は 読 ん で い 37「 次 郎 が LGB を 読 ん だ 」は 全 部 読 ん だ 解 釈 に し か な ら な い と 考 え る 方 も い る か も し れ な い が 、以 下 の( ⅰ )の よ う に「 全 部 」が な い 場 合 、後 文 が「 LGB を 読 ん だ 」こ と 自 体 を 否 定 し て し ま う た め 、非 文 に な る の に 対 し て 、 ( ⅱ )の よ う に「 全 部 」が あ る 場 合 、後 文 が 否 定 す る の は「 LGB を 全 部 読 ん だ 」こ と で あ り 、全 部( 最 後まで)読んでいないことを意味するため、非文にならないと考えられる。 ( ⅰ ) 次 郎 が LGB を 読 ん だ 。 *し か し 読 ま な か っ た 。 ( ⅱ ) 次 郎 が LGB を 読 ん だ 。 し か し 全 部 は 読 ま な か っ た 。 こ れ は「 次 郎 が LGB を 読 ん だ 」と い う 文 が 、成 立 点 を 2 つ 持 つ た め 、文 脈 に よ り 成 立 点 が 決 定 さ れ る こ と を 意 味 す る 。 ま た 、 成 立 点 の 観 点 か ら 説 明 す れ ば 、( ⅰ ) は 後 文 が「 LGB を 読 ん だ 」こ と 、つ ま り A 成 立 点 に 至 っ た こ と 自 体 を 否 定 し て し ま う た め 、 非 文 に な る 一 方 、( ⅱ ) は 「 LGB を 全 部 読 ん だ 」 こ と 、 つ ま り 、 D 成 立点に至ったことは否定するが、A 成立点に至ったことを否定することにはなら ないため、非文にならないということになる。 33 第 3 章 活動動詞とカケル構文 な い」と い う 、ま だ 本 を 読 み 終 わ っ てい な い と い う [- 全 体 的 ]解 釈 、 ( 45b) ( 46b) は 、 い ず れ も 「 最 後 ま で 本 を 読 ん だ が 、 ス ト ー リ ー が わ か ら な か っ た 」 と い う 、 本 を 読 み 終 え た と い う [+ 全 体 的 ]解 釈 に な る 。 こ の こ と は 、ヲ 格 名 詞 句 が 、定 的 で ある か が 示 さ れ て い る か どう か に か か わ ら ず 、 文 脈 の 支 えに よ る 解 釈 が 優 先 され る こ と を 示 し て いる 。 さらに、文脈の支えによる解釈が優先されるという観点から見れば、 継 続 時 間 句 や 所要 時 間 句 も、文 脈 的 な 支 え に な り 得 る と言 え そ う で あ る。 ( 47) は ヲ 格 名 詞 句 が 定 的 で あ る 場 合 の 例 、( 48) は 、 ヲ 格 名 詞 句 が 不 定 の 場 合 の 例 であ る 。 ( 47) a. 次郎 が LGB を 3 日 間 読 んだ 。 政 治 大 b. 次 郎 が LGB を 3 日 で 読 んだ 。 立 ( 48) a. 次郎 が 本 を 3 日 間 読 ん だ。 ‧ 國 學 b. 次 郎 が 本 を 3 日 で 読 ん だ。 ( 47a) (48a)は 、継 続 期 間 句 の 存 在に よ り 、[- 全 体 的]の 解 釈 が 、 ( 47b) ‧ ( 48b) は 、 所 要 時 間 句 の 存 在 に よ り 、 [+ 全 体 的 ]解 釈 が で き る で あ ろ y Nat う 。す な わ ち 、(47)( 48)は、継 続 時 間 句 か 所 要 時 間 句か で 、[±全 体的 ] sit 解 釈 が 決 定 さ れる の で あ る 。この こ と か ら 、ヲ 格 名詞 句 の 定 不 定 に か か er る こ と が わ か る。 io わ ら ず 、継続 時 間 句 か 所 要 時 間 句 かと い っ た 語 句 が、解 釈 を 決 定 し て い al n v i n 以 上 の こ と を まと め る と、 C「h読 む 」の よ う なU活 動 動 詞 は 、本 来 的 に は A i 的で あ る ヲ 格 名 詞 句 を と る e ある g cがh、定 成 立 点 し か 持 たな い 非 限 界 動 詞 でn こ と に よ り、D 成 立 点 を も 持 つ 限 界動 詞 句 に な る と 考 えら れ る。そ し て 、 こ の よ う に 成 立点 を 2 つ 持 つ よ うな 動 詞 句 は、所 要 時 間 句 か 継 続 時 間 句 か で 、 [±全 体 的 ]解 釈 が 可 能 に な るの で あ る 。 た だ し 、こ こで 注 意 が 必 要 な の は、非 限 界 動 詞 と 共 起 する す べ て の ヲ 格 名 詞 句 が 、D 成 立 点 を 持 つ 動 詞 句に な る と は 限 ら な いと い う こ と で あ る 。ヲ格 名 詞 句 の 中 に は 、動 詞 句 に な っ て も D 成 立 点 を 持 ち 得 な い も の も 存 在 す る 。 それ は 、 ど ん な 場 合 であ ろ う か 。 1.3 「 Incremental Theme( 漸 増 的 変 化 対 象 )」 前 節 で は、 ヲ 格 名 詞 句 を と る 動 詞 句が 、 D 成 立 点 を 持 つ 場 合 と 、 持 た 34 第 3 章 活動動詞とカケル構文 な い 場 合 を 見 たが 、実 は 、こ の よ うな 成 立 点 を 持 つ ヲ 格名 詞 句 は 、Dowty ( 1991)の「 Incremental Theme」 ( 以 下、 「 IT」)に 相 当 す る 名 詞 句 に 限 ら れ る と 考 え ら れる 。影 山( 2001)は、こ の IT を 、 「 漸 増 的変 化 対 象 」 (影 山 2008 で は「 漸進 的 変 化 対 象」)と呼 ん で い る。影 山(2001)に よ れ ば 、 こ れ は 、行 為の 進 行 に 伴 っ て 徐 々 に変 化( あ る い は 増減 な い し 減 少 )し て い く 物 事 を 指し 、He read the book.の the book や He ate a cake.の a cake の よ う な 目 的 語が 、動 詞 の 表 す 行 為に よ っ て 少 し ず つ「 消 化 」さ れ て い く も の や、「 山 道 を 歩 く 」 の よ う に、「 山 道」( す な わ ち 、 そ の 山 道 が 及 ぶ 距 離 ) を 歩 くこ と に よ っ て 「 消 化」 し て い く (「 山 道 を 」 は 「 歩 く 」 と い う 動 作 に とっ て 漸 増 的 変 化 対 象と 見 な せ る)も の も あ る と し て い る。 ま た 、北 原( 2007)も 、増減 対 象 と は 、そ の 指 示 対 象 の量 が 事 象 の 進 行 治 政 大い ワ イ ンの 量 が 減 っ て ゆ イ ン 」が 増減 対 象 で あ り 、飲 む事 象 の 進 行 に 伴 立事 象 が 終 ると 解 釈 さ れ る と 述 べて い る 。 き 、 そ れ が ゼ ロに な る と に 伴 い 増 減 す ると 解 釈 さ れ る も の を言 う と し、「 ワ イ ン を 飲 む 」は、「 ワ ‧ 國 學 影 山 (2001)、 北 原 ( 2007)の 説 明 か ら わ か る こ と は、 こ の IT が 、 動 詞 の 表 す 動 き とと も に 、段 階 的 に変 化 す る 、つ ま り、 動 詞 の 表 す 動 き に ‧ 従 っ て、消 費 さ れ て い く 対 象 で あ る と い う こ と で あ る。IT が 完 全 に「 消 化 さ れ る 」あ る い は「 ゼ ロ に な る 」の は 、事 象 の 成 立 点 、つ ま り D 成 立 y Nat 点 に 達 し た と きで あ る と 考 え ら れ る。 例 え ば、「 山 道 を 歩 く 」 な ら 、 歩 sit く 動 き に 従 っ て、山 道 全 体 の 距 離 は消 化 さ れ 、 山 道が 及 ぶ 距 離 を す べ て n al er io 歩 き 切 っ た 時 点が 成 立 点 で あ り、 「 ワ イ ン を 飲 む 」な ら 、飲 む に 従 っ て 、 v ワ イ ン が 消 費 され て い き 、ワ イン を す べ て 飲 み 切 っ た 時点 が 、成 立 点 で Ch あ り 、D 成 立 点 な の で あ る 。 engchi i n U で は 、 なぜ IT は 、 こ の よ う な 性 質を 持 っ て い る の で あろ う か 。 例 え ば、「 本 を 読 む 」 の 「 本 」 に は 、 最初 の ペ ー ジ か ら 最 後の ペ ー ジ ま で の 分 量 が 存 在 し 、そ れ を「 読 む 」こ と に よ り 、分 量 が 消 費 さ れ て い く の で あ る が 、 こ の 分量 が あ る か ら こ そ、「 読 む 」 の 表 す 動 きに 、「 読 み 始 め」 て か ら「 読 み 終 わ る 」ま で の 段 階 的 な 過 程 が 示 さ れ る と考 え ら れ る 。 「ワ イ ン を 飲 む 」 の「 ワ イ ン 」 も 、 も とも と 存 在 す る 一 定 の分 量 が、「 山 道 を 歩 く 」の「 山 道 」も 、そ の 山 道 の ス タ ー ト 地 点 か ら ゴー ル 地 点 ま で の 距 離 的 な 量 が、そ れ ぞ れ 存 在 し、「 飲 む」「 歩 く」 こ と に よ り 、そ の分 量 が 消 費 さ れ て いく 。こ の よ う に、IT が 動 詞 と 結 び つ く こと に よ り、あ る 一 定 の 分 量 を 持つ 消 費 対 象 で あ る と見 な さ れ る た め、動 詞 と 共 起 す る と、 そ の 動 詞 が 表 す動 き に 、開始 か ら 終 了 ま で の 段 階 的 な 過程 が 現 れ る よ う 35 第 3 章 活動動詞とカケル構文 に な る と 考 え られ る 。1.1 で は、定 的 で あ る ヲ 格 名 詞 句 をと る 動 詞 句 が 、 D 成 立 点 を 持 つ こ と を 見 た が 、こ の 成 立 点 は、IT を と る 動 詞 句 に よ り も た ら さ れ る 成 立点 で あ る と 言 え 、 本稿 で は 、 こ の 成 立 点を 「 IT 成 立 点 」 と 呼 ぼ う と 思 う。 こ の IT 成 立 点 は 、 IT を と る 動 詞 句 だけ が 持 つ 成 立 点 で あ る こ と は 言う ま で も な い 。 逆 に 言 え ば、ヲ 格 名 詞 句 で も、IT で あ る と は 見 な さ れ ない 場 合、つ ま り 、動詞 の 表 す 動 き に 従 っ て 消 費 され る よ う な あ る 一 定の 量 を 持 た な い 場 合 は 、IT 成 立 点 を 持 た な い と 考 えら れ る 。実 際、Dowty( 1991)で は、 push a cart の 目 的語 a cart は 移 動 する 一 方 、 動詞 push 自 体 が 、 目 的 語 の 不 確 定 な 位 置 変化 を 示 す atelic で あり 、 こ の よ う な 場 合、 IT と は 言 え な い と し て い る 。a cart 自 体 は、「 山 道 」や「 ワ イ ン 」と 違っ て 、 何 の 分 量 治 政 大 こ と が な い た めで あ る と 考 え ら れ る。 で は 、 a cart のよ う な立 、 IT 成 立 点 を 持 た な い ヲ 格 名 詞 句 を と る 動 詞 句 も 持 た な い た め、 push の表 す 動 き に と も な い 、 a cart が量 的 に 変 化 す る ‧ 國 學 に は、ど の よ う な も の が 存 在 す る ので あ ろ う か。ま た 、IT を ヲ 格 目 的 語 にとる活動動詞には、どのようなものがあるのであろうか。 以下では、 ‧ 先 行 研 究 に 従 って 、活 動 動 詞 を 分 類し 、IT を と る 動 詞 句 と 、と ら な い 動 詞 句 を 見 て い く。 y Nat io sit 活動動詞の分類 er 第2節 2.1 活 動 動 詞 に お け る 先 行 研 究 n al ・ 影 山 ( 1996) Ch engchi i n U v 影 山( 1996)は 、活 動 動 詞 に は 、他 動 詞 と 自 動 詞 が あ り、こ の 自 動 詞 は 、 非 能 格 自 動詞 に 該 当 す る と し てい る 。 さ ら に 、 Dowty( 1979) の 立 て た 意 味 概念 DO に 対 し て 、ACT と い う 概 念 を 提 示 し 、こ の ACT を 、 一 項 述 語 で あ る自 動 詞 (49a) と 二 項 述 語 で あ る 他 動 詞 ( 49b) に 分 け て いる。 36 第 3 章 活動動詞とカケル構文 ( 49) a. 非能 格 動 詞 b. 接 触 ・ 打 撃 動 詞 EVENT x EVENT x ACT ACT ON-y ( work, quarrel, talk, rain, shine) ( touch, hit, kiss, slap, kick, push, seize, wipe, rub) こ の 活 動 動 詞 で表 さ れ る 他 動 詞 を、状 態 変 化 の 他 動 詞 とは 区 別 し 、他 動 詞 と し ての ACT ON は 、 touch, hit, kick, push な ど に 代 表 さ れ る 、 状 態 変 化 を 伴 わ な い 働き か け( 典 型 的 には 、接 触 や 打 撃 )を意 味 す る 場 合 に 限 定 し 、そ の 理由 を 、状 態 変 化 の 他 動詞 は 、結 果 が 達 成さ れ れ ば そ れ で 完 治 政 対 し 、打 撃・接 触 の 動 詞 は 、 状 態 変 化 を 含 意 し 大な い た め 、い つ ま で も 継 立で あ る と 述べ て い る 。こ の 状 態 変 化 を 伴 わ な い 続 す る こ と が でき る か ら 了 す る た め 、ACT の 持 つ 未 完 了( 継 続 )と い う 性 質 は 規定 で き な い の に ‧ 國 學 働 き か け を 表 すタ イ プ の ACT ON の グ ル ー プ に は 、 scold, praise, congratulate や 「 叱 る 、 誉 め る 」 とい っ た 精 神 的 働 き かけ を 表 す 動 詞 や , look at, gaze at, listen to な ど の 視 覚・聴 覚 に 係 わ る 動 詞 も含 ま れ る と し て ‧ いる。 y Nat ま た 、 継 続 的 な移 動 を 表 す 概 念を MOVE で 示 し 、「 到 着 す る 」 を sit BECOME[y BE AT-z]の よ う に 示 し てい る の に 対 し 、The car is running.は、 n al er io [x MOVE]の よ う に 示 し て い る 。 ・ 中 村 ( 2000) Ch engchi i n U v 中 村( 2000)は 、活 動 動 詞 は 、意 図 的 に 行 う こ と が で きる 一 定 の 行 為 を 表 し 、継 続し て 行 う こ と が 可 能 で、状 態 動 詞 と と も に、一 定 の 状 態 が 継 続 し て い て、区 切 り が な い と い う未 完 了 の 性 質 を 表 すと し て い る 。 動 詞 の 例 と し て は、 run, swim, walk, drive a car, push a cart を 挙 げ て い る 。 ・ 伊 藤 ・ 杉 岡 ( 2002) 伊 藤・杉 岡 ( 2002)は 、 活動 動 詞 に つ い て 、内在 的 に 時 間 の 区 切 り が な い 行 為 を 表 し 、例 え ば「 歩 く 」と い う 行 為 に は 、実 際 に は 始 め も 終 わ り も あ る が 、ど こ が 始 点・終 結 点か を 行 為 の 性 質 か ら は規 定 で き ず 、時 37 第 3 章 活動動詞とカケル構文 間 軸 上 等 質 の 行 為 が 続 け ら れ る こ と を 表 す 動 詞 で あ る と し て い る 38 。 動 詞 の 例 と し て は、 walk, swim, talk, sing, cough, push, hit, pull, kick を 挙 げ ている。 ・ 影 山 ( 2008) 影 山( 2008)は 、<活 動 >は 、活 動 時 間 は 比 較 的 明 瞭 だが 、 い つ 終 る と い う 時 間 的 な 限界 が 定 ま っ て い な い事 象 で 、多 く の 場合 、 「 勉 強 す る」 「働 く 」のよ う に 人 間 の 意 図 的 な 動 作 だが 、意 図 的 で な い「 笑 う 、泣 く、あ く び を す る 」 と い っ た 行 為 や 、「 雨 が 降 る 、 風 が 吹 く 」 と い っ た 自 然 活 動 も 含 ま れ る とし 、以 下 の よ う に 図示 し て い る( 横 棒は 時 間 の 流 れ 、縦 政 治 大 棒 は 瞬 間 ・ 瞬 間の 動 き を 表 す )。 立 <活 動 >と 時 間 の 流 れ ‧ 國 ||||||||| (終わり) 學 始まり ま た 、金 田 一 の 動 詞 の 4 分 類 と 比 較し て 、<活 動・過 程 >は 、第 2 種 の ‧ 「 継 続 動 詞 」 に 対 応 す る と 述 べ 、「 継 続 動 詞 」 に つ い て 、 あ る 時 間 内 続 y 行 中 で あ る こ とを 意 味 す る と 説 明 して い る 。 sit Nat い て 行 わ れ る よ う な 動 作 や 作 用 を 表 し 、「 て い る 」 が 付 く と 、 動 作 が 進 er io 活 動 の LCS に つ い て は 、 影 山 ( 1996) を 踏 襲 し 、( 50a) の よ う に 、 al ACT の 部 分 に 「 遊 ぶ」「 お し ゃ べ り す る」「 叫 ぶ 」「 呼吸 す る 」 な ど の 継 n v i n 続 性 の あ る 動 作や 活 動 を 意C 味 す る 自動 詞 に 対 応 す る も のと 、( 50b)の よ he i U う に 、「 肩 を も む 」「 サ ン ド バ ッ クnをgたcたhく 」「 人 を 蹴 る 」 と い っ た 他 動 詞 に 対 応 す る もの が あ る と 述 べ て いる 。 ( 50) a. 活動 の LCS( 自 動 詞 ) [ ]x ACT (x が 、 あ る 行 為 や 活 動 ( ACT) を す る 。) b. 活 動 の LCS( 他 動 詞 ) [ ] x ACT ON-[ ]y (x が y に 対 し て 、 あ る 行 為 や 活 動、 働 き か け を す る。) 等 質 の 行 為 と い う の は 、 例 え ば 「 歩 く 」 な ら 、「 歩 く 」 と い う 同 一 の 動 き が 、 同じように繰り返される行為のことだと考えられる。 38 38 第 3 章 活動動詞とカケル構文 さ ら に 、 影 山 ( 2008) で は 、 活 動 を表 す ACT に 加 え て 、 移 動 を 表 す MOVE を 用 い て 、中 間 経 路( Route)を 取 る 移 動の LCS を、 ( 51)の よ う に示している。 (51) 移 動の LCS [ ]y MOVE [ Ro u te p 1 <p 2 <p 3 …] そ し て 、 こ の ( 51) の 構 造 を 、 メ タ フ ァ ー の よ る 抽 象 的 な 移 動 39 に も 利 用 で き る と し、IT と し て 扱 う こ と がで き る と 述 べ て い る。さ ら に こ の 概 念 を 拡 大 解 釈 して 、通 常 は 状 態 変 化動 詞 と し て し か 扱 われ な か っ た も の 40 も、この意味構造で分析できるとし、これらの中間経路は、物理的な 場 所 で は な く 、 状 態 で あ る の で 、( 52) の よ う に 表 示 し て い る 。 こ れ に 政 治 大 つ い て は 、第 4 章 で 詳 し く 述 べ る 。 立 (52) 漸 進的 変 化 ( 過 程 )の LCS [ ]y MOVE [ STATE - R o ut e p 1 <p 2 …] ‧ 國 學 ・ 吉 田 ( 2012) ‧ 吉 田( 2012)は 、活 動 動 詞 は 金 田 一の「 継 続 動 詞 」に 該当 し 、主 語 指 y Nat 示 物 の 意 図 的・継 続 可 能 な 行 為 を 表し 、非 有 界 の 非 能 格動 詞 と 対 格 動 詞 sit が こ れ に 相 当 する と 述 べ 、 run, dance, swim, walk, drive a car, eat pizza, er io push a cart の 例 を 挙 げ て い る 41 。 al n v i n 以 上 、 先 行 研 究 を 概 観 しC てきたが、上記のことから、活動動詞には、 he i U 他 動 詞 タ イ プ と 自 動 詞 タ イ プ が あnるgこcとhが わ か る 。 ま た 、「 継 続 し て 行 う こ と が 可 能( 中 村 2000)」、「 時間 軸 上 、等 質 の 行 為が 続 け ら れ る こ と を 表 す 動 詞 ( 伊藤 ・ 杉 岡 2002)」、「 あ る 時 間 内 続 い て 行わ れ る よ う な 動 作 や 作 用( 影 山 2008)」、 「 継 続 可 能 な 行 為( 吉 田 2012)」と あ る よ う に、 「 継 続 」とい う 用 語 が 、活 動 動詞 に つ い て 考 え る 上 で 重要 な ポ イ ン ト で この例として、以下の例を挙げている。 ( ⅰ ) 小 説 を 最 初 か ら 75 ペ ー ジ ま で 読 ん だ 。 (ⅱ)ウイスキーを、ボトルの半分ぐらいまで飲んだ。 40 こ の 例 と し て 、 以 下 の 例 を 挙 げ て い る 。 ( ⅰ ) 患 者 の 病 状 が ( 健 康 な と き の 70% ぐ ら い ま で ) 回 復 し た 。 ( ⅱ )「 朝 顔 が ( 大 人 の 背 丈 ま で ) 伸 び た | 育 っ た 。 41 吉 田 ( 2012) で 挙 げ ら れ て い る 例 は 、 高 見 ・ 久 野 ( 2002) 、 長 谷 川 ( 2001) に よる。 39 39 第 3 章 活動動詞とカケル構文 あ る と 言 え そ うで あ る が 、 で は 、こ こ で の 「 継続 」と は 、何 を 指 し て い る の で あ ろ う か。 2.2 他 動 詞 と し て の 活 動 動 詞 他 動 詞 に は 、 既 に 見 た よ う に 、 打 撃 ・ 接 触 を 表 す タ イ プ 42 、 精 神 的 な 働 き か け を 表 すタ イ プ 、 視 覚・聴 覚 に 係 わ る タ イ プ の よう な 、状 態 変 化 を 伴 わ な い も のが 含 ま れ る の で あ った 。こ の よ う な 他 動詞 は 、ヲ 格 名 詞 句 に IT を と る か ど う か で 、 IT 成 立点 を 持 つ か ど う かが 決 ま る と 考 え ら れる。 ま ず 、打 撃・接 触 を 表 す タ イ プ で ある が 、例 えば 、「 壁 を蹴 る」「 ボ ー 治 政 は 、「 本 」「 道 の り 」「 ワ イ ン 」 の よ う に 、 動 詞 大句 に な っ て も あ る 一 定 の 立ず 、 IT と は 見 な さ れ な い で あろ う 。 こ の よ う 分 量 を 持 つ と は考 え ら れ ル を 打 つ」「 手 に 触 る 」 の 「 壁」「 ボ ー ル ( 複 数 あ る 場合 を 除 く)」「 手」 43 ‧ 國 學 な 打 撃・接 触 を 表 す タ イ プ は 、1 回 1 回 の 動 き は、 ( 53)の よ う に 、そ の 時 点 で 完 結 す る 動 作 で あ り 、( 54) の よ う に 、 同 じ 動 き を 何 度 も 繰 り 返 す こ と に よ り、継 続 的 で あ る と 捉 えら れ る も の で あ る。従 っ て 、こ の 場 ‧ 合 の 「 継 続 」 と は 、 過 程 を 持 た な い 継 続 と い う 意 味 で 、「 無 過 程 継 続 」 y sit n al er io (53) Nat と で も 呼 ぶ 方 がよ い か も し れ な い 。 ● A 成立点 Ch engchi i n U v (54) ● ● ● ● A 成立点 打 撃・接 触 を 表 す タ イ プ の 中 に は 、目 的 語 を ヲ 格 で は な く 、ニ 格 で 表 す も の も 存在するが、本稿では、このようなニ格で表す目的語も、ヲ格で表される目的語 に相当するものと同類に扱う。 43「 壁 を 蹴 る 」の「 壁 」は IT と は 見 な さ れ な い が 、 「 壁 を 塗 る 」の「 壁 」の 場 合 、 「 塗 る 」と の 意 味 関 係 に よ り「 壁 」は あ る 一 定 の 範 囲 が あ る と 捉 え ら れ 、 IT と 見 な せ る 。 同 様 に 、「 ボ ー ル を 打 つ 」 の 「 ボ ー ル 」 も 、 ボ ー ル が 一 つ の 場 合 は 、 IT と は 見 な さ れ な い が 、「 ボ ー ル を 数 え る 」 の 「 ボ ー ル ( 複 数 個 で は な い 場 合 )」 の 場合、動詞との意味関係により「ボール」はある一定の数量があると捉えられ 、 IT と 見 な せ る 。 こ の こ と か ら 、 ヲ 格 名 詞 句 が IT と 見 な せ る か ど う か は 、 動 詞 と 名詞句との意味関係から決まると考えられる。 42 40 第 3 章 活動動詞とカケル構文 次 に 、 影 山 ( 2008) が 精 神 的 働 き か け を 表 す 動 詞 と し て 挙 げ た scold, praise, congratulate や 「 叱 る」「 誉 め る 」 と い っ た タ イプ で あ る が 、 こ れ ら の 動 詞 が ヲ 格に と る 名 詞 は 人 で ある の で、IT と は 見 な さ れ な い で あ ろ う 。た だ し 、こ の よ う な 、相 手 に 言 葉 を 発 す る タ イ プ の動 詞 は 、発 言 内 容 を 引 用 す る ト格 と 共 起 し 動 詞 句 とな っ た 場 合、A 成 立 点 だ け で は な く 、 IT 成 立 点 を 持 つ よ う に な る の で あ る が 、こ れ に つ い ては 2.3 及 び 第 3 節 で扱う。 で は 、 視 覚 ・ 聴 覚 に 係 わ る タ イ プ は ど う で あ ろ う か 。「 テ レ ビ 番 組 を 見 る 」 の 場 合 、「 テ レ ビ 番 組 」 は 普 通 、 始 ま り か ら 終 わ り ま で の 時 間 的 な 範 囲 が 存 在 し、「 見 る 」行 為 に 従 っ て 、「 テ レ ビ 番 組 」 の 時 間 的 分 量 が 消 費 さ れ て い くこ と か ら 、 IT で あ る と 言 え る 。 こ の こと は 、「 太 郎 は テ 治 政 と か ら も わ か る 。「 ラ ジ オ 番 組 を 聞 く 」 の 場 合 大も 同 様 で あ る 。 こ の よ う 立句 を と る 動 詞 句 が 示 す 継 続 は 、( 54) で は な く 、 な 、 IT で あ る ヲ 格 名 詞 レ ビ 番 組 を 見 た 」 が 、[ - 全 体 的 ] に も [ + 全 体 的 ] に も 解 釈 で き る こ ● A 成立点 ● IT 成 立 点 Nat y ‧ ‧ 國 (55) 學 ( 55) の 図 で 示さ れ る 。 sit こ の 場 合 の 継 続 を 、 無 過 程 継 続 と 区 別 し て 、「 過 程 継 続 」 と 呼 ん で お er io く 44 。 こ の 過 程 継 続 を 表 す タ イ プ の 動 詞 句 は 、 動 詞 句 が 表 す 動 き に 、 終 al 了 点 で ある IT 成 立 点 を 持 つ た め 、 活 動 動 詞 で は な く 、む し ろ 達 成 動 詞 n v i n に 近 い も の で ある が 、純 粋C な 達成 動 詞 と は 区 別 す る た め、達 成 動 詞 化 さ hengchi U れ た 活 動 動 詞 句と し て お く 。典 型 的 な も の と し て は、 「 食 べ る」 「飲む」 45 「( た ば こ な ど を ) 吸 う 」 と い っ た 、 ヲ 格 で 表 さ れ る 対 象 を 消 費 し て い く タ イ プ の 動 詞や 、「 歩 く 」「 読 む 」な ど 、ヲ 格 で 表 さ れ る 対 象 に 沿 っ て 進 ん で い く(「 道 を 歩 く 」な ら 道 を 歩 き 進 み、「 本 を 読 む 」な ら 本 を 読 み 進 め る)タ イ プ の 動 詞 が 挙 げ ら れ る。本 稿 で は、前 者 を「 消 費 動 詞 類」、 後 者 を 「 経 路 動詞 類 」 と 呼 ん で お く 46 。 一 方 、 同 じ 視 覚 ・ 聴 覚 に 係 わ る タ イ プ で も 、「 絵 を 見 る 」 の 場 合 、 基 こ こ で の「 過 程 継 続 」は 、始 ま り と 終 わ り が あ り 、そ の 始 ま り か ら 終 わ り に 至 るまでの間、進行或いは変化が段階的に継続するという意味である。 45 達 成 動 詞 に つ い て は 第 5 章 で 詳 述 す る 。 46 岩 本( 2008)は 、 「 歩 く 」「 読 む 」「 演 奏 す る 」を「 経 路 動 詞 」、「 食 べ る 」 を「 消 費動詞」と呼んでいるが、その用語を借用した。 44 41 第 3 章 活動動詞とカケル構文 本 的 に は「 絵 」が あ る 一 定 の 分 量 を持 っ て い る と は 考 えら れ ず 、IT で は な い た め 、IT 成 立 点 も 存 在 せ ず、「 テ レ ビ 番 組 を 見 る」 と は 異 な る こ と が わ か る 47 。 こ の 場 合 、( 55) の 図 で は な く 、( 44) の 図 で 示 し た ほ う が 適 切 で あ ろ う 。「 車 の 音 を 聞 く 」 も 、 こ れ と 同 じ よ う に 考 え ら れ る 。 こ の 場 合 の 継 続 も 、過 程 継 続 と は 異 なる の で、 「 無 過 程 継 続 」に 含 ま れ る 。 こ れ ら の こ と から 、 視 覚 ・ 聴 覚 に 係わ る タ イ プ は 、 ヲ 格名 詞 句 に IT を と る か ど う か で、IT 成 立 点 を 持 つ かど う か が 決 ま り、IT を と れ ば 達 成 動 詞 化 さ れ 、 IT を と ら な け れ ば 活 動 動詞 の ま ま と い う こ とに な る 。 以 上 の こ と か ら、 他 動 詞 と し て の 活動 動 詞 は 、 ヲ 格 名 詞句 に IT を と る 場 合 、A 成 立 点 と IT 成 立 点 を 持 ち 、達 成 動 詞 化 す る 。こ の タ イ プ の動 詞 句 は、2 つの 事 象 の 成 立 点 を 持 つか ら こ そ、動 き が 継 続 的( 過程 継 続 ) 治 政 こ と に な る。IT 成 立 点 を 持 た な い ため 、過 程 的 大と 捉 え られ る こ と も、継 立れ る こ と もな く 、過 程 の ない 、無 過 程 継 続 と し 続 の 終 了 点 に 目が 向 け ら と 捉 え ら れ る ので あ る 。一 方 、IT を と ら な い 場 合 、A 成 立 点 の み を 持 つ ‧ 國 學 て捉えられるのである。もちろん、打撃・接触を表すタイプのように、 1 回 1 回 の 動 き が 連 続 す る よ う な 場合 も 、 無 過 程 継 続 に含 ま れ る 。 先 行 研 究 で 言 及 さ れた 継 続 と は 、継続 の う ち 、無 過 程 継続 の こ と だ と 考 え ら ‧ れ 、逆 に 言 えば 、過 程 が 存 在 し な いた め 、い つ ま で も継 続 で き る と 捉 え y Nat ら れ る の で あ る。 sit で は 、 姫 野 ( 1999) が 挙 げ た ( 9)( 10) の 例 に つ い て 考 え て み よ う 。 er io ま ず 、( 10)「 カ イ ロ を 訪 問 す る 」 は ど う で あ ろ う か 。 須 田 ( 2010) は 、 al 動 詞 の 表 す 動 作の 中 に は 、 1 つ の 均 質 的 な 過 程 か ら な るも の で な は く 、 n v i n い く つ か の 下 位 動 作 か ら 構C 成 さ れ た 複 雑 な 構 造 を 持 つ も の が あ り 、「 け he gchi U ん か す る 」 を 例 に 挙 げ 、 そ の 下 位n 動 作 と し て 、「 な ぐ る 」「 け る 」「 の の し る 」な ど の 具 体 的 な 動 作 が あ る とし て い る 。こ の「 カ イ ロ を 訪 問 す る」 「 会 う」 「話 と い う 動 作 も、 「 約 束 す る」 「( 相 手 が い る カ イ ロ を)訪 れ る 」 す 」と い った 下 位 動 作 か ら 成 り 立 って い る と 考 え ら れ、 た た 単 に そ の 場 所 に 行 く と い うよ り 、そ の 場 所に 行 っ て 、何 か を する と い う 意 味 を 持 っ て い る の で は な い だ ろ う か 。 こ の こ と は 、「 訪 問 す る 」 が テ イ ル 形 で 動 作 の 継 続 を 表 す こ と か ら も わ か る 。 従 っ て 、 本 稿 で は 、「 訪 問 す る 」 を 活 動 動 詞 に 含 めて お く 48 。 次 に、(9) に お け る 「 ぶ つ か る」「 つ ま ず く 」 47 「 美 術 館 に あ る 絵 を 見 る 」 と い う 状 況 な ら 、 「絵」がある一定の量を持つと捉 え ら れ 、 IT と 見 な せ る で あ ろ う 。 48 工 藤 ( 1995) で は 、 「訪問する」を、主体動作動詞のうち、主体動作・客体接 触動詞に含めている。 42 第 3 章 活動動詞とカケル構文 で あ る が 、こ れ ら は 、打 撃・接 触 を 表 す タ イ プ に 含 ま れる 。 こ れ ら の 動 詞は、非意志的であるという点では「打つ」や「触る」とは異なるが 、 ニ 格 に 接 触 対 象を と る こ と、動 詞 の 表 す 動 き が 瞬 間 的 であ る こ と と い っ た 共 通 点 を 持 つた め 、 こ の タ イ プ に含 め て お く 49 。 2.3 自 動 詞 と し て の 活 動 動 詞 影 山( 2008)は 、日 本 語 の 自 動 詞 の例 と し て、 「勉強する」 「 働 く」 「笑 う」「 泣 く 」「 雨 が 降 る 」「 風 が 吹 く」「 遊 ぶ 」「 お し ゃ べ り す る」「 呼 吸 す る」を挙げているが、これらは、基本的にヲ格名詞句をとらないため、 A 成 立 点 し か 持 た な い と 考 え ら れ る 50 。 治 政 が 必 要 で あ る。例 え ば、「「僕 は 死 に ま せ ん 」と叫 大 ぶ 」の よ う な 場 合、 発 言 内 容 が あ る 一 定 の 量立 と し て 捉 え ら れ 、「 叫 ぶ 」 動 き と と も に 、 そ の 発 た だ 、「 叫 ぶ 」 の よ う な 、 発 言 内 容 を ト 格 で 引 用 す る 動 詞 に は 、 注 意 ‧ 國 學 言 内 容 が 消 化 さ れ て い く 、 す な わ ち 、 ト 格 で 引 用 さ れ る 発 言 内 容 が IT で あ る と 考 え られ る た め で あ る。こ の よ う な 場 合、A 成 立 点 も IT 成 立 点 も 持 つ と 言 え るだ ろ う 。 た だ し 、 典型 的 な IT で は な い こ と を 付 け 加 え ‧ て お く 。 他 に、「 と 聞 く」「 と 読 む 」「 と 言 う」「 と 書 く 」 な ど が あ る 。 y Nat ま た 、 基 本 的 に ヲ 格 を と ら な い と 述 べ た の は 、「 勉 強 す る 」 な ど の よ er io 第 4 節で扱う。 sit う に 、他 動 詞 と し て ヲ 格 を と る 場 合も あ る た め で あ る 。こ れ に つ い て は、 al n v i n 「 読 む 」「 言 う 」「C 飲む」の両義的解釈の原因 hengchi U 第3節 こ れ ま で の 分 析か ら 、第 1 章 の 先行 研 究 で 挙 げ ら れ た 用例 の「 本 を 読 寺 村 ( 1984) で は 、 X が Y( と い う 個 体 ) に 向 か っ て 、 そ れ に 対 し て 、 何 ら か の 動 き を す る こ と を 表 す「 X( 仕 手 )が Y( 相 手 ) ニ ~ ス ル 」 と い う 型 を 、「 か み つ く 」「 と び か か る 」「 反 対 す る 」 の よ う な A 類 、「 恋 す る 」「 惚 れ る 」「 甘 え る 」 の よ う な B 類 、「 人 に 会 う 」「 弾 が 彼 に 当 た る 」「 彼 が 電 線 に 触 れ る | さ わ る 」 の よ う な C 類 に 分 け 、こ の 三 種 を「 対 面 、あ る い は 対 象 に 対 す る 態 度 」と し て 、 ひ とまとめにしている。これらに特徴的なのは、動きが意志的であれ非意志的であ れ、働きかけが物理的であれ心理的であれ、ニ格で表される対象への何らかの接 触が含意されていることである。接触は基本的に、一回の動きであることから、 その動きが行われた時点が、事象の成立点であると考えられる。 50 「 勉 強 す る 」 「 お し ゃ べ り す る 」「 呼 吸 す る 」に つ い て は 、自 動 詞 と 見 な し 、「 勉 強 を す る 」「 お し ゃ べ り を す る 」「 呼 吸 を す る 」 な ど の 「 ~ を す る 」 は こ こ で は 扱 わない。 49 43 第 3 章 活動動詞とカケル構文 む」、「 ~ と 言 う」、「 ワ イ ン を 飲 む 」と い っ た 動 詞 句 が 、両 義 的 に 解 釈 さ れ る 原 因 を 説 明で き る で あ ろ う 。 それ ぞ れ の 例 を 再 掲 する 。 ( 56) 本 を 読 み か け て や め た。( = ( 4)) ( 57) 本 を 読 みか け た。( = ( 5)) ( 58)「 だ っ て 学 校 が … 」 そ う い い か け る の と い っ し ょ に 、 な み だ が 出 て き た。( = (8)) ( 59) 私 は そ の あ と 、( そ ん な ら あ の 銀 座 の マ ダ ム と も 、 渋 谷 の 人 治 政 の 言 葉 を 飲 み 込ん で し ま っ た。( =大 (7)) 立 と も 手 を 切 っ てく だ さ い )と い い か け た の だ が 、あ わ て て そ ‧ 國 學 ( 60) ワ イ ン を飲 み か け た ( = ( 16)) ( 61) ワ イ ン をま る ま る 一 本 飲 み かけ た ( = ( 20)) ‧ y Nat ま ず、( 56)(57)( 60)の「 読 む」「 飲 む 」は 、 動 詞 自 体 は い ず れ も 活 動 sit 詞 で あ り、本 来 A 成 立 点 し か 持 た ない の で あ る が、ヲ 格 名 詞 句 に、 「 本」 er io 「 ワ イ ン 」 と いう IT を と る こ と に よ り 、 IT 成 立 点 を 持ち 、 達 成 動 詞 化 al さ れ る の で あ った 。 こ の A 成 立 点 と IT 成 立 点 と い う 2 つ の 成 立 点 を 持 n v i n つ た め 、両 義的 な 解 釈 が 生C じ る こ とに な る の で あ る 。 さ ら に 、こ れ ら が he gchi U カ ケ ル 構 文 で 用い ら れ る と 、 カ ケn ル が ACT に 作 用 する 場 合 に は 、 将 動 相 の 解 釈 が 、BECOME に 作用 す る 場 合 に は 、将 変 相 の 解 釈 が 可 能 に な る と 考 え ら れ る。こ の IT が 消 費 さ れ る と い う 事 象 を、LCS で 示 す と、(62) の よ う に な る であ ろ う 51 。 変 項 に IT で あ る ヲ 格 名 詞 句 が く る 場 合 、 す べ て こ の LCS で 表 示 さ れ る と 考 え ら れ る 。 [IT < …< n ]は 、 あ る 一 定 の 量 を 持 つ IT が 、 徐 々 に 消 費 さ れ 、 n( 限 界 ) に 達 す る と 、 [ consumed ]、 つ ま り 「 す べ て 消 費 さ れ る 」 こ と を 示 し て い る 。 こ こ で は 便 宜 上 、BECOME を 用 い て い る が 、実 際 、こ の よ う な 動 詞 句 は 、達 成 動 詞 と は 異 な り 、 BECOME を 内 在 し な い た め 、 LCS を BECOME で 表 す こ と は 奇 異 に 感 じ ら れ る か も し れ な い が 、IT が 具 体 物 で あ れ 抽 象 物 で あ れ 、消 費 さ れ て い く こ と を ]概 念 化 し た も の と し て 、 暫 定 的 に こ の よ う な LCS で 表 示 し て お く 。 51 44 第 3 章 活動動詞とカケル構文 ( 62 ) [[ ] x ACT ON-[IT]] CAUSE [BECOME [IT < … < n] BE AT- [ consumed ]] こ の (62) で 示さ れ る LCS は 、 例 え ば、「 本 を 読 む 」 なら 本 の ペ ー ジ 数 量 、「 ワ イ ン を 飲 む 」な ら ワ イ ン の 量 、「 山 道 を 歩 く 」な ら 山 道 を 移 動 し た 距 離 の 量、「( 発 言 内 容 )と 言 う 」な ら 発 言 内 容 の 量 とい っ た 、 あ る 一 定 の 量 を 持 つ 対象 が 、 段 階 的 に 消 費さ れ る こ と を 示 し てい る 52 。 影 山 (2008) では 、 こ の よ うな IT を と る 動 詞の LCS を 、 抽 象 的 な 移 動 を 表 す と し て、( 52) の よ う に MOVE で 表 示 し て い るが 、 本 稿 で は 、 BECOME で 表 示 し て お く 。と い う のも 、影 山( 2008)は 、瞬 間 的 な 位 置 変 化 ・ 状 態 変 化を 示 す BECOME と 区 別 す る た め 、 漸 進的 な 移 動 及 び 漸 治 政 に お ける BECOME は 、 瞬 間 的 な 変化 も 段 階 的大 ( 過 程 的) 変 化 も 示 す こ 立 で は 表 示 で き な い と 考 え るか ら で あ る 。こ と が で き る こ とか ら 、MOVE 進 的 な 状 態 変 化を 示 す た めに MOVE を 用 い て い る が 、本 稿 で は 、日 本 語 ‧ 國 學 の こ と に つ い ては 、第 4 章 で 改 め て述 べ る が、こ こ で は 、IT が 消 費 さ れ る 事 象を BECOME で 示 し て お く 。従 っ て、「 本 を 読 む 」「 ワ イ ン を 飲 む」 ‧ は、( 62) の LCS で 示 さ れ 、 この ACT と BECOME、 つ ま り 、 A 成 立 点 と B 成立 点 に カ ケ ル が 作 用 す る こ とに よ り 、カ ケ ル 構 文 に お い て 両 義 的 y Nat 解 釈 が 生 じ る こと に な る の で あ る。た だ し、こ こ で の B 成 立 点 と い う の sit は 、 IT が す べ て 消 費 さ れ た 時 点 に 相 当 す る 成 立 点 の こ と で あ る 。 以 降 、 er io IT 成 立 点 を 、達 成 動 詞 化 し た 活 動 動詞 句 の 持 つ 成 立 点 とい う 意 味 で 用 い al n v i n Cるhが 、 先 程 述 べ た 次 に 、( 58) と ( 59) で あ e n g c h i Uよ う に 、 ト 格 名 詞 句 で 引 る。 用 さ れ る 発 言 内容 は 、IT と 見 な さ れ る の で あ っ た 。よ っ て、 ( 58)は「 だ っ て 学 校 が …」と 途 中 ま で 言 っ た もの の 、最 後 ま で言 い 切 っ て い な い こ と か ら 、 こ の 場合 、 カ ケ ル が BECOME に 作 用 し て お り、 将 変 相 の 解 釈 に、( 59)は、「 あ わ て て そ の 言 葉 を飲 み 込 ん で し ま っ た 」と あ る こ と か ら、発 言 内 容 を 言 う ま で に は 至 っ てお ら ず、こ の 場 合 、カ ケ ル が A 成 立 点 に 作 用 し て おり 、 将 動 相 の 解 釈 にな る の で あ る 。 こ の「 と 言 う 」と い う 動 詞 は 、思 考 内 容 を 言 葉 に す る タイ プ の も の で あ る が、こ の バ リ エ ー 52 「 本 を 読 む 」 「 ワ イ ン を 飲 む 」「 山 道 を 歩 く 」に つ い て 、岩 本( 2008)で は 、「 歩 く 」「 読 む 」「 演 奏 す る 」 を 「 経 路 動 詞 」、「 食 べ る 」 を 「 消 費 動 詞 」 と 呼 ん で い る こ と は 既 に 述 べ た 。 岩 本 ( 2008) は さ ら に 、 両 者 を 概 念 的 な 共 通 性 を 持 つ も の と し て 扱 っ て い る 。 ま た 、 ヲ 格 名 詞 句 で あ る 「 本 」「 ワ イ ン 」「 山 道 」 も 、 同 じ IT として見なせることからも、本稿でもこれらを同じ概念を持つものとして扱う。 45 第 3 章 活動動詞とカケル構文 シ ョ ン と し て、「 と 褒 め る」「 と 叱 る」な ど も 含 ま れ る。ま た 、 これ と 似 た タ イ プ に 、 思 考 内 容 を 文 字 に す る 「 と 書 く 」 が あ る 53 。 ト 格 名 詞 句 で 発 言 内 容 を 引 用す る タ イ プ の 動 詞 も、本 稿 で は 、達成 動 詞 化 さ れ た も の として扱う。 最 後 に 、( 61) の 場 合 で あ る が 、( 60) と は 違 い 、「 ま る ま る 一 本 」 が ア ス ペ ク ト 限 定詞 と し て 働 き、将 変 相 の 解 釈 し か 許 さ ない と 考 え ら れ る。 ア ス ペ ク ト 限 定 と い う の は 、「 動 作 の 限 界 点 を 設 定 す る 装 置 ( 三 原 2004)」の こ と で あ る 。例 え ば 、( 63)は、( 64a)の よ う に 、A 成 立 点 に 達 し た [-全 体 的 ]解 釈 も、( 64b) のよ う に IT 成 立 点 に ま で 達 し た [+全 体 的 ]解 釈も で き る 。 政 治 大 (63) 太 郎 は ワ イ ン を 飲 ん だ 。 立 (64) a. 太郎 は ワ イ ン を 飲 ん だ 。し か し 、 全 部 は 飲 んで い な い 。 ‧ 國 學 b. 太 郎 は ワ イ ン を 飲 ん だ。 そ れ か ら ビ ー ル も飲 ん だ 。 と こ ろ が ( 65) は 、「 ま る ま る 一 本 」 が ア ス ペ ク ト 限 定 詞 と し て 機 能 し ‧ て い る た め 、( 66a) の よ う に 、 A 成 立 点 の み に 達 し た [- 全 体 的 ]解 釈 が y sit io al er ない。 Nat で き ず、 ( 66b)の よ う に IT 成 立 点 に ま で 達 し た [+ 全 体 的 ]解 釈 し か で き n ( 65) 太 郎 はワ イ ン を ま る ま る 一本 飲 ん だ 。 Ch engchi i n U v ( 66) a.*太 郎 は ワ イ ン を ま る ま る一 本 飲 ん だ。 し か し 、 全 部 は 飲 んでいない。 b. 太 郎 は ワ イ ン を ま る まる 一 本 飲 ん だ 。そ れ か ら ビ ー ル も 飲んだ。 こ の こ と か ら 、カ ケ ル 構 文 と し て 用い ら れ た( 61)の 場 合 、カ ケ ル は BECOME に し か 作 用 せ ず 、将 変 相 に し か 解 釈 で き な いと い う こ と が わ か 53 「 言 う 」 「 褒 め る 」「 叱 る 」「 書 く 」な ど は 、 ト 格 に よ り 思 考 内 容 を 言 語 化 で き る と い う 共 通 点 を 持 つ と 考 え ら れ る 。 実 際 、 工 藤 ( 1995) で も 、 主 体 動 作 動 詞 の 下 位分類に、言語活動として「いう、かく、きく、こたえる、さけぶ、ささやく、 しかる、しらせる、しゃべる、せつめいする、たずねる、つたえる、はなす、よ ぶ、よむ」を挙げている。 46 第 3 章 活動動詞とカケル構文 る 。 次 に 、2.2 と 2.3 で 挙 げ た 活 動 動 詞 、 IT を ヲ 格 名 詞 句 に と る こ と に よ り 、達 成 動 詞 化 し た 活 動 動 詞 句 が カ ケ ル 構 文 で 用 い られ る 例 を 見 て い く 。 尚、「 歩 く 」 の よ う な タ イ プ に つ い て は 、 第 4 章 で 移 動 動 詞 と し て まとめて扱う。 第4節 カケル構文に用いられた例 ま ず 、打 撃・接 触 を 表 す タ イ プ で ある「 叩 く」「 触 る」、精 神 的 な 働 き か け を 表 す タ イプ で あ る「 叱 る 」「 ほ め る」、視 覚・聴 覚 に 係 わ る タ イ プ の「 見 る 」の 例 を 示 す 。こ れ ら の タ イプ は 、A 成 立 点 し か 持 た な い た め 、 カ ケ ル 構 文 で は、 す べ て 将 動 相 の 解釈 に な る 54 。 治 政 ( 67) 継 次 は 、「 頼 も う 」 と 門 を 叩 き か け 大た が 、 金 子 孫 二 郎 と い う 立か ら 郡 奉 行 に な っ た 二百 石 ど り の 身 分 で 、亡 く の は 、奥 祐 筆 ‧ 國 學 な っ た 主 人 斎 藤留 三 よ り 格 式 が 高 い人 だ と 気 づ く と、気 後 れ し て し ま い 、 どう も 声 も 出 ね ば 、 手も 引 っ こ ん だ 。 ( 八 切 止 夫『 新 選 組 意 外 史』) ‧ y Nat ( 68)熱 い も の に 触 っ て 思 わ ず手 を 引 っ 込 め る 動 作は 、脊 髄 レ ベ ル sit ま で 生 じ る 反 射な の で 、大 脳 皮 質 で 熱 い と 感 じ る 前 に 起こ る al er io の で す 。水 の入 っ た や か ん に 触 り かけ た 人 に 、冗 談 で「 熱 い n か ら 気 を つ け て! 」と 叫 ぶ と 、驚 い て 思 わ ず 手 を 引 っ 込め る Ch こ と が あ り ま す。 engchi i n U v ( 山 本 隆 『「 お い し い 」 と な ぜ 食 べ す ぎ る の か : 味 と 体 の 不 思 議 な 関 係』) ( 69) 太 郎 が 次郎 を 叱 り か け た と き、 お 母 さ ん が 帰 っ て来 た 。 (70) 太 郎は 外 の 景 色 を 見 か けて や め た 。 た だ し、( 70) は、( 71) の よ う に ヲ格 名 詞 句を IT で あ る 「 テ レ ビ 番 組 」 に 換 え る と 、 両 義 的 に 解 釈 で き る よ う に な る 。 ま た 、( 69) は 、 文 54( 69)を「 叱 り 始 め た 後 」 、つ ま り 将 変 相 で あ る と 捉 え る 人 が い る か も し れ な い が、発言内容を意識するため、そう感じられるだけであって、発言内容が言語化 されたり、文脈による限定がない限り、将動相の解釈になる。 47 第 3 章 活動動詞とカケル構文 脈 に よ り ( 72a) の よ う に 将 変 相 に 解 釈 さ れ た り 、 ト 格 と 共 起 す る こ と に よ り、( 72b) の よ う に 将 動 相 に も解 釈 で き る 場 合 も あれ ば 、( 72c) の よ う に 将 変 相 に解 釈 で き る 場 合 も ある 。こ れ は、( 58)( 59) の 場 合 と 同 じ 理 由 で 説 明 がつ く 。 ( 71) 太 郎 はテ レ ビ 番 組 を 見 か けて や め た 。 ( 72) a. 自転 車 に 乗 っ て い た お じさ ん に 慌 て て 謝 っ て、 呆 然 と し ている子どもの肩をつかみながらだめじゃないか、とい う よ う な こ と を言 っ た 。と に か く 、だ め じ ゃ な い か ! と。 たぶん、大きな声を出したと思う。叱りかけた僕の背に 治 政 つ け な が ら 「 怒ら な い で 」 と 静大 か に鋭 く 言 っ た 。 立 ( www.1101.com/nagata/) 向かって妻が何か言った。振り返ると妻は、僕をにらみ ‧ 國 學 b.市 太 郎 は、阿 呆 め が、と 叱 り か け た が、叱 る よ り も 先 に を かしくなつた。 ‧ ( 大 江 賢二『 南 方 徴 用 作 家 叢 書 第Ⅰ 期 ジ ャ ワ 編』) y Nat sit c. 太 郎 は 、「 ど う し て こ ん な … 」 と 叱 り か け て 、 次 郎 の 顔 を er io 見て驚いた。 al n v i n さ ら に 、 思考 内 容 を ト 格C で 引 用 す る動 詞 の 例 を 挙 げ る。(73a) は 「書 hengchi U く の を 思 い と どま っ た 」と い う 意 味 で あ る か ら、将 動 相 に 、 ( 73b)は「 手 紙 を 書 き だ し たと こ ろ で 」 と あ る こと か ら 、 将 変 相 に 解釈 で き る 。 ( 73) a. 昨 日 は お と と い の レ デ ィ ・ ジ ェ ー ン で の ラ イ ブ の 興 奮 さ め や ら な か っ たが 、 毎 日 原 稿 用 紙 にし て 3 枚 以 上 を 連 続 配 信 し て い る『 ス ト リ ー ム』執 筆 に 弱 気 が 出 て し ま っ た。 ブ ロ グ タ イ ト ルに「 ス ト リ ー ム の 毎日 配 信 ち ょ っ と 中 断」 と 書 き か け て 、思 い と ど ま っ た 。 (juicylab.blogspot.com/2013/07/blog-post_16.html) b. 役 人 溜 り で は 、 夜 詰 の 同 心 が ち ょ う ど 手 紙 を 書 き だ し た ところで、巻紙に「拝啓、陳者……」と書きかけ、その 48 第 3 章 活動動詞とカケル構文 硯 の 水 も ま だ 乾い て い な い … … ( 久 生 十 蘭『 顎 十 郎 捕 物 帳( 下 )』) ま た、( 74a) は 将 動 相、( 74b) は 将変 相 の 例 で あ る 。 ( 74) a. 妻 曰 く 、「 先 生 の 方 が 貴 方 に は 向 い て い た か も し れ な い 。 しかし、先生になっていたら、教育にのめり込んでしま ったと思う。そうしたら、私にとって貴方はもっと魅力 の な い 男 性 に なっ て い た か も し れ ない 」 と 。 妻 は 人 間 的 に 魅 力 のな い 男 性 の 部 分 を 強調 し て い た 。 「 で は 、何 だ っ た ら 良 か っ た の か 」と 質 問 し か け た が 、実 政 治 大 (泉 悠 介『 定 年 日 記』) の あ る 返 答 は 期待 で き な い と 思 い 、取 り 止 め に し た 。 立 ‧ 國 學 b.「 も う 時間 だ 、始 ま る よ 」と活 版 に 刷 っ た 曲 目 を 見 なが ら 云う。 「 そ う か 」 と 高柳 君 は 器 械 的 に 眼 を活 版 の 上 に 落 し た 。 ‧ 一、バイオリン、セロ、ピヤノ合奏とある。高柳君はセ y Nat ロ の 何 物 た る を 知 ら ぬ 。 二 、 ソ ナ タ ……ベ ー ト ー ベ ン 作 sit と あ る 。 名 前 だ け は 心 得 て い る 。 三 、 ア ダ ジ ョ ……パ ァ al er io ージャル作とある。これも知らぬ。四、と読みかけた時 n 拍手の音が急に梁を動かして起った。演奏者はすでに台 Ch 上 に 現 わ れ て いる 。 engchi i n U v ( 夏 目 漱 石 『 野分 』) 次 に 、自 動 詞「 笑 う 」「 雨 が 降 る」「 勉 強 す る 」を 見 る 。「 笑 う 」は 、A 成 立 点 し か 持 たな い た め 、カ ケル 構 文 で 用 い ら れ る と、将 動 相 の 解 釈 に な る の が 普 通 で あ る 。「 笑 う 」 と い う の は 、 顔 が 笑 顔 に な っ た り 、 笑 い 声 を あ げ た り す る と い う 意 味 な の で 、( 75a) の 場 合 は 、「 正 蔵 は 、 思 わ ず 唇 を 引 き 締 めて 」と い う 文 か ら、口 元 が 笑 い か け た が、笑 う ま で に は 至 ら な か っ た と解 釈 で き 、将 動 相 で あ る 。一 方、( 75b)の 場 合 、 笑い 声 が ト 格 で 引 用 さ れ て い る こ と 、「 途 中 で そ の 笑 い を 封 じ た 」 と あ る こ と に よ り 、 笑 い 声が 出 て し ま っ て い るの で 、 将 変 相 と 解 釈で き る 。 ( 75)a.「 お ま え さ ん 、近 ご ろ ち ょ い と 不 気 味 だ よ 」夢 羅 久 が 、 笑 49 第 3 章 活動動詞とカケル構文 い か け て 止 め た正 蔵 の 顔 を の ぞ き 込ん で 、か ら か う よ う に 言 っ た 。 正 蔵は 、 思 わ ず 唇 を 引 き締 め て 、 … b. 老 人 は ま た 、 狡 猾 そ う に 、 ひ っ 、 ひ っ と 笑 い か け た が 、 途中でその笑いを封じて、指先で小鳥が嘴でつつくよう に 、 朽 木 の 肩 を軽 く 叩 い た 。 ( 共 に BCCWJ) 次 に、「 雨 が 降 る 」 の 場 合 、 カケ ル 構 文 で 用 い ら れ る と、( 76a)(76b) の 「 パ ラ パ ラ 」「 少 し 」 と い う 言 葉 か ら も わ か る よ う に 、 少 し は 降 っ て い る が 、本格 的 に は 降 っ て い な い とい う 意 味 で あ る こ とが わ か る 。こ の 治 政 て い る こ と か らも わ か る。 (76d)で も 同 様 に、 「 雨 が 降 り か け た」と「 降 大 ら な か っ た 」 が 対 比 的立 に 用 い ら れ て い る こ と か ら 、「 雨 が 降 る 」 は 本 格 こ と は、( 76c) で「 雨 が 降 り か け た」 と 「 本 降 り」 が 対 比 的 に 用 い ら れ ‧ 國 は 将 動 相 に 解 釈で き る と 言 え そ う であ る 。 學 的 に ザ ー ザ ー 降る こ と と 捉 え ら れ、そ の 時 点 を 成 立 点 と見 な せ ば、( 76) ‧ ( 76) a. 午 後 少 し 雲 っ て パ ラ パ ラ と 雨 が 降 り か け た が 一 瞬 で 終 わ y Nat る。 sit ( http://www.s-kinoko.com/sansaku-09/sansaku09-html/sansa er io ku09-8.html) al n v i n b. 翌 朝 、 モ ー ニ 時でお願いしておき、5 Cンhグ コ ー ル を 5 U i e h n g c 少 し 雨 が降 り か け て い る 。 35 分 に ホ テ ル を 出 発 。 時 (http://dora-love-b.blog.so-net.ne.jp/2009-08-14-2) c. 途 中 で パ ラ パ ラ と ま た 雨 が 降 り か け た が 、 本 降 り に も な ら ず な ん と か 駐車 場 に 到 着 。 ( http://sawayuki.org/houkoku/alpsetc/yatugatake0209.htm ) d. 今 日 は 雨 が 降 り か け た の に 雷 も な っ た の に ま た 降 ら ん か った。 ( https://www.facebook.com/LabrishJamaica/posts/695360297 180209) 50 第 3 章 活動動詞とカケル構文 (77) の「 勉 強 し か け る 」 は どう で あ ろ う か。( 77a) は 将 動 相 に も 将 変 相 に も 解 釈 で き そ う で あ る が 、 こ れ は 、「 勉 強 す る 」 の 背 後 に 、 ヲ 格 目 的 語 が 意 識 され る こ と に よ る と 考え ら れ る 。実 際、ヲ 格 目 的 語 が 示 さ れ た ( 77b) は 、 プ ロ グ ラ ミ ン グ に つ い て 少 し 勉 強 し た こ と が あ る 人 に 向 け て 書 か か れた も の で あ る こ と は、文 脈 か ら も わ か る。プ ロ グ ラ ミ ン グ の 内 容 を、始 ま り か ら 終 わ り ま で範 囲 が あ る と 見 な し、そ れ を 一 か ら 少 し ず つ 勉 強 して い く と 考 え れ ば 、 IT と 見 な せ る で あろ う 。 ( 77) a. あ ー 、 せ っ か く バ ス で 勉 強 し か け た の に 、 と な り の お っ ちゃんが麻雀してるからそれを見るのに夢中になってし ま う じ ゃ な い の。 政 治 大 (https://twitter.com/ebifry_candy/status/460550316304265218 ) 立 b. 本 を 買 っ て プ ロ グ ラ ミ ン グ を 勉 強 し か け た け ど そ れ っ き ‧ 國 學 りという人は予想外にたくさんいるようだということも 分 か っ て き ま し た 。( 中 略 ) 勉 強 を は じ め た も の の 挫 折 し た 人,あ る い は こ れ か ら 挫 折 す る であ ろ う 人 に お せ っ かい ‧ を 焼 い て,自 立 の 一 助 と な る ペ ー ジが で き た ら い い な と考 y Nat えました. er io sit (http://takenaka-akio.org/doc/perl_kiso/epilogue.html ) al 最 後 に 、ヲ 格 名 詞 句 に 典 型 的な IT を と る 動 詞 句 の 例 を見 る 。(78)は n v i n 将 動 相 に、( 79) は 将 変 相 に C解h釈 でき る 例 で あUる 。 engchi ( 78) a. 南 こ と り ち ゃ ん 、 マ カ ロ ン と 間 違 え 危 う く 入 浴 剤 を 食 べ かけた模様 (http://lovelive-matome.ldblog.jp/archives/40363409.html ) b.「 な に を 悩 んで い る の ? 」 顔 を 覗 き 込 む よう に そ う 問 い か け てき た の は 側 妃 の メ リ ッ サ だ。彼 女 も ま た 被 害 者 の 一 人で 、毒 入 り 紅 茶 を 危 うく飲みかけたが先にアーシェが被害に遭って難を逃 れた。 (http://ncode.syosetu.com/n2297bx/55/ ) 51 第 3 章 活動動詞とカケル構文 ( 79) a. 食 べ か け た け ど 、 断面 は こ ん な 感 じ で 、 9 割 5 分 ア ン コ で す ( 笑 ) た い焼 き ( http://www.intagme.com/kina1130/610463581216836451_ 244213969/) b.こ の 時 期 に 読 み か けて 止 め て し ま っ た もの に 、プ ー シ キ ン の 「 オ ネ ー ギ ン 」、 メ ル ヴ ィ ル の 「 白 鯨 」 が あ る 。 あ の時少し位面白くなくても読み通して置けばよかった と 、 残 念 に 思 って い る 。 ( BCCWJ) 治 政 は 将 変 相、( 80c) は い ず れ に も 解 釈で き る 例 で 大あ る 。 立 ( 80b) ( 80)は「 た ば こ を 吸 い か け る」の 例 で あ る が、 ( 80a)は 将 動 相 、 ‧ 國 學 ( 80) a. 前 回 の コ ー ド 弾 き の 時 は 軽 く ビ ー ル を 飲 ん で い ま し た の で、微妙にずれてるのが演奏に出ています。今回のリー ド演奏では飲んでませんが、危うくタバコを吸いかけま ‧ し た 。。。 sit y Nat (http://206.cocolog-nifty.com/rendezvous/2007/04/index.html) er io b. あ ま り に も ア ル コ ー ル 度 数 が 高 い た め 、 飲 み な が ら の 喫 al 煙は厳禁。実際に「スピリタス」を衣服にこぼした人が n v i n タバコを吸い 火してしまったという事 Cかhけ て 、 衣 服 に 引 U i e h n gてcい る ら し い。 故 が 過 去 に 何 件も 起 き (http://duoneemu.exblog.jp/i8/) c. 冷 静 に な ろ う と 煙 草を 吸 い か け た と き 悲鳴 が 聞 こ え た 。 (http://novel.syosetu.org/14220/1.html ) こ れ ら の 例 か ら も 、活 動 動 詞 が 、ヲ格 名 詞 句 に IT を と ら な い 場 合 は 、 A 成 立 点 し か 持 た ず 、よ っ て 、 カ ケ ル 構 文 で 用 い ら れ ても 将 動 相 の 解 釈 に し か な ら な い一 方 、 IT を と る 場 合 は 、 A 成 立 点 も IT 成 立 点 も 共 に 持 つ こ と か ら、カ ケ ル 構 文 で 用 い ら れる と 、将 動 相 にも 将 変 相 に も 解 釈 で き る と い う こ とが わ か る 。た だ、こ こ で 注 意 す べ き こ とは 、将 動 相 の 例 ( 78)( 80a) は 、い ず れ も 「 危う く 」 と と も に 用 い ら れて お り 、 将 動 相 52 第 3 章 活動動詞とカケル構文 の 例 で「 危う く 」が 現 れ て い な い 実例 は 見 つ け ら れ な かっ た と い う こ と で あ る 55 。こ れ は 、ヲ 格 名 詞 句に IT を と る 場 合 、将 変 相 の 解 釈 が 一 般 的 で あ る と い う こと を 示 し て い る の かも し れ な い 。ただ し 、何 度 も 言 う よ う に、解 釈 に 揺 れ が 生 じ る 原 因 は、A 成 立 点 と IT 成 立 点 の 存 在 に よ る こ と は 間 違 い な い で あ ろ う 56 。 更 に 付 け 加 え る と 、 将 変 相 の 解 釈 に な る 場 合 、従来 は「 開 始 段 階 」や「 動 作 に 取 り か か っ た 段 階」を 表 す と さ れ て き た が、必 ず し も そ う で な い と い うこ と で あ る。(79b)や( 80b)、以 下 の ( 81)は 将 変 相 で あ る が、 こ れ ら の 例 か ら だ け で は、 ど こ ま で「読 ん だ | 吸 っ た | 飲ん だ | 書 い た 」の か は わ か ら ず 、必ず し も 開 始 段 階 や 動 作 に 取 り か か った 段 階 を 表 す と は 言え な い で あ ろ う 。 治 政 まま一泊旅行に出かけた所、後 大か ら 同 居 人 に 注 意 さ れ ま した。 立 ( 81) a. 先 日 、 飲 み か け た お 茶 を テ ー ブ ル に 置 き っ ぱ な し に し た ‧ 國 學 (http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2012/0319/492662.htm?g=01 ) b. う っ か り 携 帯 で ま た日 記 を 書 き か け た んで す が 、 な ん か ‧ も う 面 倒 く さ くな っ て ぽ い し ち ゃ いま し た 。 sit y Nat (http://flower.miyako.hacca.jp/?eid=325 ) al er io 確 か に 、( 82) の よ う に 、 開 始 段 階 を 表 す 例 も あ る が 、 こ れ は 、( 82a) n な ら 「 数 ペ ー ジ 」、( 82b) な ら 「 履 歴 書 の 一 文 字 の 少 し 」 と い う 文 脈 が あ る た め で あ る。 Ch engchi i n U v (82) a. じ つ は、『 ポ ス ト モ ダ ン 読 本 』 と 題さ れ た 六 百 ペ ー ジ 近 い ア ン ソ ロ ジ ー(千 九 百 九 十 三 )や ら、『 ポ ス ト モ ダ ニ ズム の詩学』と名乗り出た論集(千九百八十八)など、あち た だ し 、「 危 う く 」 と と も に 用 い ら れ て い て も 、 将 変 相 に 解 釈 で き る も の も あ った。 56 庵 他 ( 2001) で は 、 「~かけている」がすでに実現した事態を表せるか否かに は語彙による違いや方言差、個人差があるとして、以下の例を挙げている。 (ⅰ)雨が降りかけている。 (東京方言話者にとってはすでに雨が降っているという解釈はしにくい。 京 阪 方 言 話 者 に と っ て は こ の 解 釈 は 自 然 。) (ⅱ)彼はごはんを食べかけている。 (すでに食べているという解釈で〇の東京方言話者もいる。京阪方言話者 に と っ て は こ の 解 釈 は 自 然 。) 55 53 第 3 章 活動動詞とカケル構文 こち開いてのぞき読みはしたものの、やはりどうにもす らりと入りこめず、数ページ読みかけると忽ち違和感の 方 が つ の っ て きて 、 ど う に も 読 み 続け ら れ な い 。 ( BCCWJ) b. 履 歴 書 の 一 文 字 の 少し を 書 き か け た と ころ で 間 違 っ て 修 正 ペ ン で 修 正 して ( 後 略 ) ( yahoo 知 恵 袋 ) そ の 証 拠 に、以 下 の よ う に 、開始 段 階 や 動 作 に 取 り か かっ た 段 階 を 表 す と は 言 え な い 例も 、 散 見 さ れ る 。 治 政 た 夕 刊 の紙 面 を 見 渡 し て (83) a. し か し そ の 電 燈 の 光に 照 ら さ れ大 も 、 や は立 り私の憂鬱を慰むべく、世間はあまりに平凡な ‧ 國 學 出来事ばかりで持ち切っていた。講和問題、新婦新郎、 涜職事件、死亡広告(中略)私は一切がくだらなくなっ て 、 読 み か け た 夕 刊 を 抛 り 出 す と (後 略 ) ‧ ( 芥 川 龍 之 介『 蜜 柑 』) y Nat b.「 書 き か け た エ ン ト リ ー ・ ・ ・ 」 sit ( 中 略 ) もう 8 割 方 書 き 終 え て い たの で か ま わ ず に 書 き al er io 進 め て い る と ”ド ッ カ ー ン ” と い う 音 の 後 に・・・パ シ ッ ! n 家 中 真 っ 暗、せ っ か く の エ ン ト リ ーが ’お じ ゃ ん ’ と な り やした。 Ch engchi i n U v (http://sin-sei.at.webry.info/200706/article_10.html ) c. 長 崎 で ち ゃ ん ぽ ん 食 べ ま し た 。 お い し か っ た ん で す が 、 汁 を 最 後 ま で 飲み か け た 時 、5mm 位 の 小 枝 の よ う な もの が見えました。 ( yahoo 知 恵袋 ) (83a)で は 、「 講 和 問 題 、 新 婦 新 郎 、 涜 職 事 件 、 死 亡 広 告 」 と 、 い ろ い ろ な 記 事 を 読 ん で い る に も か か わ ら ず 、「 読 み か け た 」 が 使 わ れ 、( 83b) の「 書 き か け た 」は「8 割 方 書 き 終 え て い た 」と い う 意 味 で 使 わ れ、 ( 83c) は「 最 後 ま で飲 み か け た 」と あ るよ う に 、ど の よ う な段 階 に あ っ て も カ ケ ル 構 文 が 使 える と 言 え そ う で あ る。こ れ ら の 例 か ら、ど の 段 階 か を 表 54 第 3 章 活動動詞とカケル構文 す の か は 、文 脈 に 左 右 さ れ る と 考 えら れ る 。 こ れ は 、カ ケ ル 構 文 が 「 動 詞 の 表 す 動 き が成 立 す る に は 至 っ てい な い 」と い う意 味 を 持 ち 、そ れ が 将 変 相 に 解 釈 され る 場 合 、IT 成 立 点 に 至 る 前 の 将 変 相 の範 囲 内 な ら 、ど の 段 階 で も 表 すこ と が で き る た め であ る と 考 え ら れ る。こ こ で の 範 囲 は、 IT が 消 費 さ れ 始 め て か ら 、 完 全 に消 費 さ れ 切 る ま で の範 囲 に 相 当 す る。 カケル構文は、その成立点に至っていないという意味を持つからこそ、 文 脈 に よ り 、 多様 な 解 釈 が で き る ので は な い だ ろ う か 。 以 上 、 活 動 動 詞 及 び IT を ヲ 格 名 詞 句 に と る こ と に より 、 達 成 動 詞 化 した活動動詞句がカケル構文について、分析・考察を行った。ここで、 活動動詞がカケル構文で用いられた際にどのような解釈になるのかを 整理しておく。 立 政 治 大 ‧ ‧ 國 活動動詞が 學 ヲ 格 名 詞 句 を とら な い : 将 動 相 IT で な い : 将 動相 将動相 y Nat ヲ 格 名 詞 句 を とる er io sit IT で あ る ( 達 成動 詞 化): or al n v i n 次 章 で は 、 到 達動 詞 と カC ケ ル 構 文 につ い て 見 て い く 。 hengchi U 55 将変相 第 4 章 到達動詞とカケル構文 第4章 到達動詞とカケル構文 こ の 章 で は 、日 本 語 に お け る 主 体 の状 態 変 化・位 置 変 化 を 表 す 動 詞 の LCS が BECOME で 表 示 で き る こ と、 こ の よ う な 動 詞 に は 瞬 間 的 な 変 化 と 段 階 的 な 変 化が あ る こ と 、さ らに 、段 階 的 変 化 の 成 立点 と し て 、相 対 的 成 立 点 と 絶 対的 成 立 点 が あ る こ とを 論 じ る 。 第1節 BECOME と MOVE 治 政 概 念 を 持 ち 、 ま た 、 こ れ ら の 概 念 が 、 日 本 語大 の変化を表す「ナル 」と 立の か に つ いて 、先 行 研 究 を 通 して 、分 析 ・考 察 ど の よ う に 対 応し て い る こ こ で は ま ず 、前 章 で 少 し 触 れた BECOME と MOVE が 、ど の よ う な 57 ‧ 國 學 を行う。 1.1 到 達 動 詞 に お け る 先 行 研 究 ‧ ・ 影 山 ( 1996) y Nat sit 影 山( 1996)は 、変 化 に は 物 理 的 な位 置 の 変 化 と 、抽 象 的 な 状 態 変 化 er io が あ る と し て いる 。以 下 、物 理 的な 位 置 の 変 化 、抽 象的 な 状 態 変 化 の 順 al n v i n ま ず 、 物 理 的 な位 置 の 変C 化h で あ る が、 影 山U e n g c h i は こ れを 2 分し て い る 。 1 に見ていく。 つ は、出 発 あ る い は 到 着 と い う 瞬 間的 な 位 置 変 化 を 表 すも の で 、Vendler の 言 う 到 達 の 意味 に 相 当 す る と し 、こ れ を BECOME で 表 示 し 、 もう 1 つ は 、あ る 程 度 の 時 間 幅 を 要 求 す るよ う な 、継 続 的 な 移 動 を 表 す も の で、 こ れ を MOVE で表 示 し て い る 。さ ら に 、出 発 な い し 到 着 と い う 瞬 間 的 な 位 置 変 化の LCS を 、BECOME[y BE AT-z]で 、継 続 的 な 移 動 を 表 す「 歩 く」 「 泳 ぐ」「 進 む 」 と い っ た 動 詞の LCS を [x MOVE]で 表 示 し て い る 。 次 に 、抽 象 的 な 変化 で あ る が 、抽 象 的な 変 化 に も 、BECOME 型 と MOVE 型 が あ る と し なが ら も 、英語 の 状 態 変 化 動 詞 の 多 くが MOVE で 表 示 で き こ こ で の「 ナ ル 」と い う の は 、日 本 語 に お け る 、主 体 が 変 化 を 生 じ る よ う な 動 詞一般を示す用語である。適当な用語がないため、ここでは便宜上このように呼 んでおく。 57 56 第 4 章 到達動詞とカケル構文 る 一 方 、日 本 語 で は 多 く の 場 合 、BECOME で 表 さ れ る と 指 摘 し て い る 58 。 た だ 、BECOME は 必 ず し も 一 瞬 の 出来 事 に 限 ら れ ず 、目 標 状 態 に 切 り 替 わ る の は 一 瞬 だが 、そ こ に 至 る ま での 時 間 幅 は 認 め ら れ、漸 進 性 を 表 現 す る こ と は 可 能で あ る と 付 け 加 え てい る 。 上 記 の こ と か ら 、状 態 変 化・位 置 変 化の LCS を( 84)の よ う に ま と め ている。 ( 84)[ E VE NT BECOME [ STATE y BE AT-z]] ・ 中 村 ( 2000) 政 治 大 中 村( 2000)は 、到 達 動 詞 は 、動 詞 で 示 さ れ る 結 果 が 瞬時 的 に 生 じ る こ と を 表 し て いる と し て い る 。 動 詞の 例 と し て 、 die, find, lose, notice, 立 reach, recognize, spot を 挙 げ て い る 。 ‧ 國 學 ・ 伊 藤 ・ 杉 岡 ( 2002) ‧ 伊 藤・杉 岡( 2002)は 、到達 動 詞 は 、何 ら か の 状 態 か ら別 の 結 果 状 態 y Nat へ の 変 化 を 表 し、そ の 変 化 が 起 き る時 点 が 、内 在 的 に終 結 点 と な り 、そ sit こ に 焦 点 を あ てる 動 詞 で あ る と し、い わ ば 始 点 が な く、終 結 点 が あ る 推 er io 移( transition)と 言 え る と 述 べ て いる 。動 詞 の 例 に は、die, arrive, reach, recognize, notice, break( 自 動 詞 ) , sink( 自 動 詞 ) を 挙げ て い る 。 n al ・ 影 山 ( 2008) Ch engchi i n U v 影 山( 2008) は、〈 到 達〉 は 、 I found my wallet.や「 金 魚 が 死 ん だ」 の よ う な 例 で 、時 間 幅 を 持 た ず 、 その 限 界 点 に 達 す る と、そ れ 以 上 継 続 し な い 、一 時 点 で 終 っ て し ま う 事 象 であ る と し 、以 下の よ う に 図 示 し て い る。 影 山 ( 1996) は 、 日 本 語 の 状 態 変 化 が BECOME で 表 示 で き る の は 、 ナ ル 型 言 語 と 呼 ば れ て い る こ と に 呼 応 し て い る か ら で あ り 、 一 方 、 英 語 が MOVE で 表 示 されるのは、物理的な移動が抽象的な移動(すなわち状態変化)を表すようにな るという意味拡張のパターンが浸透しているからであると述べている。 58 57 第 4 章 到達動詞とカケル構文 <到 達 >と 時 間 の 流 れ (始まり) ・ 終わり ま た 、金 田 一の 動 詞 の 四 分 類 と 比 較し て 、到 達 は 、第 三 種 の 瞬 間 動 詞 に 対 応 す る と し、瞬 間 動 詞 に つ い て、瞬 間 的 に 終 わ っ てし ま う よ う な 動 作 や 作 用 を 表 し 、「 て い る 」 が 付 く と 、 そ の 動 作 ・ 作 用 の 結 果 の 残 存 を 意 味 す る と 述 べて い る 。到 達 の LCS に つ い て は 、影 山( 1996)を 踏 襲 し ( 85) の よ う に示 し 、 ( 85) BECOME [[ ]y BE AT-[ ]z] 政 治 大 例 え ば (85) で示 さ れ る 「 死 ぬ 」 や「 駅 に 着 く 」 な ど は、「 患 者 が 少 し ずつ死んだ」や「その電車が徐々に駅に着いた」と言え ないことから、 立 中 間 的 な 段 階 を持 た な い 瞬 間 的 変 化 を 表 す と 説 明 し て いる 。 ‧ 國 學 一 方、 ( 85)の よ う な 瞬 間 的 位 置 変 化・状 態 変 化 を 表 す 到達 動 詞 の LCS に 対 し て 、 同 じ変 化 で も、( 86) の よ う な 漸 進 的 な 移 動及 び 漸 進 的 な 状 態 変 化 ( 過程 process) を 表 す LCS に つ い て 説 明 し て いる が 、 こ れ に つ ‧ い て は 前 章 で 少し 触 れ た 。 y Nat n al er ]y MOVE [ R o ut e p 1 <p 2 <…] io [ sit ( 86) 漸 進 的 な移 動 及 び 漸 進 的 な 状態 変 化 ( 過程 process) i n U v 影 山( 2008)は 、( 86)は さ ら に 、「 閉 じ ら れ た ス ケ ー ルを 持 つ 過 程 」の Ch engchi LCS( 87) と 「 開 か れ た ス ケ ー ル を持 つ 過 程 」の LCS( 88) に 分 け ら れ る と し て い る( 以 下 、そ れ ぞ れ「 閉 鎖 過 程」 「 開 放 過 程」と 呼 ん で お く )。 (87)[ ]y MOVE [ STAT E - R ou te p 1 <p 2 …<p n ] (88)[ ]y MOVE [ STAT E - R ou te p 1 <p 2 …< ∞] 前 者 は (89) のよ う に 、 限 界 点 ( p n ) が あ り 、 進 行 状 況を 「 半 分 ほ ど」 「 80% ま で」「 完 全 に 」 と い っ た 副詞 で の 描 写 が 可 能 であ る の に 対 し 、 後 者 は( 90)の よ う に 、 限界 点 が な く 、無 限 に 続 く 変 化で 、経 路 の 最 後 が 開 か れ て い るた め 、「 完 全 に 」 や 「 80% ま で 」 と い った 限 定 が 不 可 能 で あ る と し て いる 。 58 第 4 章 到達動詞とカケル構文 ( 89) a.病 状 が 80% ま で | 完 全 に 回 復 し た 。 b.( 鍋料 理 で ) 野 菜 が 完 全に 煮 え た 。 (90) a.*朝 顔 が 80% ま で 伸 び た | 育 っ た 。 b. *町が 完 全 に 発 展 し た 。 さ ら に、 瞬 間 的 変 化 を 表 す( 85)と 漸 進 的 な 変 化 を 表 す( 86)の 違い に つ い て 、従来 の 研 究 で は 、変 化を 表 す 場 合 、い ず れか 一 方 が 選 択 さ れ 、 両 者 が 同 時 に 成り 立 つ と は 考 え ら れて こ な か っ た 59 と し なが ら も、( 86) の 最 終 点 で( 85)が 起 こ る と い う 提案 を し て い る。例 え ば( 91)の 場 合 、 政 治 大 ( 91) a. John ran a mile to the hospital. ( ジ ョ ンは 1 マ イ ル 走 っ て 病 院 に 着い た ) 立 b. The pond gradually froze solid. ‧ 國 學 ( 池 は 徐 々 に カチ カ チ に 凍 っ た ) ran a mile と gradually froze は 漸 進 的 な 過 程 ( 移 動 ま た は状 態 変 化)、 ‧ hospital と solid は 最 終 点 へ の 到 達 を表 し 、 こ れ ら を、〈 達 成 〉 と し て 捉 [[ 変化 a ]y MOVEl [ sit er → n 活動 局面 2 io 局面 1 y Nat え 、 以 下 の よ うな 行 為 連 鎖 に 当 て はめ て い る 。 → p <p …<p ]]BECOMEi v n [[ Ch U engchi Ro ut e 1 2 n 局面 3 状態 ]y BE AT-[ ]z] 以 上 の こ と か ら、 LCS の 最 大 範 囲 を 、 以 下 の よ う に 示し て い る 。 59 影 山 ( 2008) は 、 表 記 の 違 い を 以 下 の よ う に 表 に 示 し て い る 。 Jackendoff( 1999) Van Valin and Foley ( 1997) 影 山 ( 1996) A. 瞬 間 的 変 化 INCH( Inchoative の 略 ) INGR( Ingressive の 略 ) B. 漸 進 的 変 化 GO BECOME BECOME MOVE 59 第 4 章 到達動詞とカケル構文 Event Event Event Event State [x ACT ON - y ] CAUSE [[y MOVE [ pat h w]]BECOME [y BE AT - z] 活動 使役 過程 推移 上 位事 象 状態 下 位 事象 ・ 吉 田 ( 2012) 政 治 大 吉 田( 2012)は 、到 達 動 詞 は 、金 田 一 の「 瞬 間 動 詞 」に 該 当 し 、ある 立 状 態 に 至 る 行 為の 完 了 点 を 述 べ る もの で 、非 意 志 的、動 作 の 開 始 点 と 終 學 ‧ 國 了点が同時であり、非対格動詞のほぼ全般をカバーすると述べている。 た だ し 、実 現に 時 間 を 要 す る「 太る 」「 痩 せ る」「 乾 く 」な ど も、「 瞬 間 」 ‧ が 動 作 の 完 成 点ま で に 要 す る 時 間 のこ と で は な く、動 作 の 完 成 点 そ の も の を 指 す こ と から 、「 太 っ た」「 痩 せ た」「 乾 い た 」 と 言え る 完 成 点 を 持 io er notice, find, die, break( 自 動 詞 ) を 挙 げ て い る 60 。 sit y Nat つ の で 、到達 動 詞 に 含 め る と し て いる 。動 詞 の 例 と し ては 、arrive, learn, n al v i n でC 表せ し て い る が 、 影 山 (2008) で は 、 到 hる eと ngchi U 以 上 、先 行 研 究 を 概 観 し て き た 。影 山( 1996)で は 、瞬 間 的 変 化 も 漸 進 的 変 変 化も BECOME 達 動 詞の LCS を 、 瞬 間 的 変 化 か 漸進 的 過 程 ( 変 化 ) かを 表 す か で 、 BECOME と MOVE に 分 け て い る 。ま た 、 中 村 (2000)で は 、 結 果 が 瞬 時 的 に 生 じ る もの の み を 到 達 動 詞 とし て い る 。一 方、伊 藤・杉 岡( 2002)、 吉 田( 2012)は 、 到 達 動 詞 が 表 す 変化 に 、瞬 間的 な も の も 、漸 進 的 な も の も 含 め て い るよ う で あ る 。従 来 、Vendler の 4 分 類 で は 、到 達 動 詞 の 表 す 動 き が 完 結 する の は 瞬 間 的 で あ ると さ れ て き た が、上 記 の 研 究 か ら も わ か る よ う に 、到 達 動 詞 の 定 義 は 、研 究 者 に よ り 異 な る よ う で あ る 。 本 稿 で は 、 瞬 間的 変 化 を 表 す 場 合 も、 漸 進 的 変 化 を 表 す場 合 も 、 BECOME で 表 示 で き る と す る 立 場に 立 つ 。それ は 、少 な く と も 、日 本 語 に お け る 主 体 の変 化 を 表 す ナ ル は、所 要 時 間 句 と の み 共起 す る か ら で あ 60 こ こ で の 吉 田 ( 2012) の 例 も 、 高 見 ・ 久 野 ( 2002)、 長 谷 川 ( 2001) に よ る 。 60 第 4 章 到達動詞とカケル構文 る 。こ の 点 で、英 語 に お け る 主 体 の変 化 を 表 す 動 詞 が、継 続 期 間 句 と も 所 要 時 間 句 と も共 起 す る こ と と は 大い に 異 な る 。 以下 、そ の こ と に つ い て 見 て い く が 、本 稿 で は 、 ナ ル を 、瞬 間 的 な 変 化 だ け では な く 、漸 進 的 ( 段 階 的 )変化 も 表 す と 考 え る 立 場に 立 つ の で 、以 降、瞬 間 的 な 変 化 の み を 意 味 する BECOME と 区別 す る た め に、日 本 語 に お け る 到 達 動 詞 を 、 BECOME で 表 示 し て お く 。ま た 、英語 に お け る 到 達 動 詞と 区 別 す る た め、 以 降 、 日 本 語 にお け る 到 達 動 詞 を 「到 達 動 詞 」 と 括 弧 で括 っ て お く 。 1.2 cool が 持 つ LCS と ア ス ペ ク ト こ こ で は 、 英 語に お け る 漸 進 的 変 化を 表 す 動 詞 cool が 持 つ LCS に つ 治 政 ( atelic) で あ る MOVE で 表 示 で き る 一 方 、 日大 本 語 で は多 く の 場 合 、 完 立 で 表 さ れ る と 指 摘 し 、そ の 理由 に つ い て 、( 92) 了(telic)で あ る BECOME い て 見 て い く 。影 山 ( 1996) は 、 英語 の 状 態 変 化 動 詞 の多 く が 未 完 了 ‧ 國 學 と (93) を 挙 げ、 ‧ ( 92)The metal cooled for hours. そ の 金 属 は 何 時間 も か か っ て 冷 え てい っ た 。 al n b. *ス ープ が 2、 3 分 だ け 温 ま っ た 。 sit er io ( 93) a.*金 属 が 数 時 間 冷 え た 。 y Nat [ GO for hours TO COOL ] i c.*サ ン マ が 10C分 間ほ ど 焼 け た 。 n hengchi U d. *大 根が 15 分 間 冷 え た 。 v ( 以 上 、影 山 1996) cool は、継 続 時 間 句 と 共 起 で き る こと か ら、MOVE で あ る の に 対 し て、 「 冷 え る」 や「 温 ま る 」は 、継 続 時 間 句 と は 共 起 で き ず、所 要 時 間 句 と の み 共 起 で き るこ と か ら 、 BECOME で あ る と し て い る。 こ の cool に つ い て は 、 杉 岡 ( 2009) で は、( 94) の よ う に 所 要 時 間 句と も 共 起 す る 例 を挙げ、 (94)a.The soup cooled in ten minutes. b. The soup cooled for ten minutes. ( 杉 岡 2009) ( 94a) が 「ス ー プ が 10 分 で 冷 め た 」 と い う 完 結 の 意味 を 表 し、( 94b) 61 第 4 章 到達動詞とカケル構文 が「10 分 間 、冷 め 続 け た 」と い う 未 完 結 の 意 味 を 持 つ のは 、cool の よ う な 「 段 階 性 到 達動 詞 ( degree achievement verb) 61 」 は 、 よ り 冷 め た 状 態 に 徐 々 に 変 化 する の で 、 変 化 の 過 程を 修 飾 す る 時 間 副 詞( for an hour) と も 、変 化 の 終 点 を 表 す 時 間 副 詞( in an hour)と も 共 起 で き る た め で あ る と し 、 こ の よう な 段 階 的 な 変 化 の意 味 構 造 を 、 変 化 では な く、( 95) の よ う に 移 動 と捉 え る の が 適 切 で ある と 述 べ て い る 。 (95)〈 y が 移 動 〉 → 〈 y が cool の 状 態 〉 影 山( 1996) ・杉 岡( 2009)の 説 明 か ら 、cool が 表 す 段階 的 な 変 化 は 、 抽 象 的 な 移 動 で表 さ れ る こ と が わ かり 、そ の た め、LCS は MOVE で 表示 政 治 大 す る の が 適 当 であ る と 考 え ら れ る。で は 、な ぜ ア スペ ク ト が 未 完 了 で あ る は ず の cool が 、継 続 時 間 句 だ け でな く 、所 要 時 間 句 と も共 起 で き る の 立 であろうか。 ‧ 國 學 杉 岡( 2009)は 、cool の よ う な 段 階 性 到 達 動 詞 の 性 質 を 、そ の も と に な る 形 容 詞 の 性質 に 由 来 す る と 述 べて い る 。 ま ず 、 形 容詞 が 表 す 属 性・ 性 質 は、( 96) の よ う に 、 上 限 を 持つ ([+ 上 限 ]) 場 合と 、 上 限 を 持 た Nat y ‧ な い ([ - 上 限 ]) 場 合 の 2 種 類 に 分け ら れ る と し 、 sit (96) a.[ + 上 限]: straight, full, flat, empty, dry, dark n al er io b.[- 上 限]: long, short, fast, slow, wide, narrow, cool Ch i n U v ( 96a) は 限界 が 存 在 す る た め 上 限 が 存 在 し 、 一 方、( 96b) は 相 対 的 な engchi 概 念 で 、 限 界 が存 在 し な い と し 、 この 区 別 は、「 completely straight」 や 「 *completely long / fast」の よ う に、completely で 修 飾 で き る か ど う か に よ る と 述 べ て いる 。 さ ら に 、 この 分 類 を も と に、( 96a) の[ + 上 限 ] と い う 性 質 を 持 つ形 容 詞 か ら 作 ら れ た動 詞 は 、完結 ア ス ペ ク ト を 持 つ 到 達 動 詞 に な り、( 96b)の[ - 上 限 ]と い う 性 質 を 持 つ 形 容詞 か ら 作 ら れ た 動 詞 は 、未 完結 ア ス ペ ク ト に な る とし て い る 。こ の こと か ら 、 形 容 詞 と し て の cool が 、 [ - 上 限 ]で あ る こ と に よ り 、形 容 詞 由 来 動 詞 で ある cool も 、 相 対 的 概 念で あ り、[ - 上 限 ] で 未 完 結 ア ス ペ ク トを 持 つ と い う こ Dowty( 1979) の 用 語 で あ る が 、 杉 岡 ( 2009) で は 、 こ れ に つ い て は 詳 し く 説 明されていない。 61 62 第 4 章 到達動詞とカケル構文 と が 導 か れ る 62 。 さ て 、 こ の 「 段階 的 変 化 を 表 す」「 限 界 が 存 在 し な い」「 completely で 修 飾 で き な い」「 未 完 結 ア ス ペ ク ト」 と い う 特 徴 か ら 、動 詞 cool は 、 影 山 (2008) で 述べ ら れ た 、 限 界 点 がな く 、 無 限 に 続 く 変化 で あ る (88) ( 88)の 開 放 過 程 の 開 放 過 程の LCS で 表 示 さ れ る と考 え ら れ る 63 。た だ、 は、[ - 上 限 ] で あ る こ と か ら 、 cool も 一 見 す る と 上 限が な く 、 完 結 ア ス ペ ク ト に は なり 得 な い よ う に 思 われ る か も し れ な い が、 杉 岡 ( 2009) は 、 ま た 、 completely で 修 飾 で き る 場 合 も あ る と 指 摘 して い る 。 …The soup cooled の 例 も 、cool は 本 来は[ - 上 限 ]で あ る の で 未 完 結 の 意 味 を 持つ ( for ten minutes) が 、「 室 温 ( あ る いは 望 ま し 政 治 大 い 温 度 )ま で 冷 め た 」と い う 解 釈 での cool は 、完 結 の 解 釈( in ten minutes) が 可 能 に な る 。 さ ら に 、 completely を 加 え て [ + 上 限] 立 に し か 解 釈 で きな く す る と 、cool は 次 の よ う に 完 結 の 意味 し か も ‧ 國 學 てなくなる。 ( 97)The soup completely cooled{ in | ??for } an hour. ‧ Nat y ( 杉 岡 2009) sit こ の 杉 岡( 2009)の 言 明 に あ る「 室 温( あ る い は 望 ま しい 温 度 )まで er io 冷 め た 」と い う の は 、作 っ た ス ー プ を そ の ま ま 室 内 に 放置 し て い た た め、 次 第 に 温 度 が 下が り 、室 温 と 同様 の 温 度 に な っ た と い う意 味 で あ り 、室 n al Ch i n U v 温 と 同 じ 温 度 にな っ た 時 点 が、成 立 点 に 相 当 す る 時 点 であ る こ と が 考 え engchi ら れ る。さ ら に 、こ の 温 度 は、下 げ よ う と 思 え ば、冷 蔵 庫 に 入 れ る な り 、 冷 凍 庫 に 入 れ るな り す れ ば 、更 に下 げ る こ と も 可 能 で、確 か に 、こ れ 以 上 は 下 が ら な いと 言 え る 温 度、つ ま り 絶 対 的 な 時 点 は 存在 し な い よ う に 思 わ れ る 。し か し 、「 室 内 | 冷蔵 庫 内 | 冷 凍 庫 内 | の 温度 ま で 下 が っ た」 の よ う に 、文脈 に よ り 、あ る 一 定の 温 度 ま で 下 が っ た とい う 、成 立 点 に 相 当 す る 時 点 は存 在 す る 。こ のよ う に 、文 脈 に よ っ て 決ま る 相 対 的 な 成 立 点 を、「 相 対 的 成 立 点 」 と 呼 ん でお く 。 こ れ ら の こ とか ら 、 cool を 含 む(96b)か ら作 ら れ る 動 詞 の い くつ か は、[ - 上 限 ]で は あ る が、 相 対 岩 本( 2008)で は 、widen も cool と 同 じ よ う な 振 る 舞 い を 見 せ る と し て 、同 様 の例を挙げている。 63 影 山 ( 2008) で は 、 ( 88) の LCS に 相 当 す る 例 文 と し て 、 日 本 語 の 例 の み で 、 英語の例は挙げられていない。 62 63 第 4 章 到達動詞とカケル構文 的 成 立 点 を 持 つた め 、所 要 時 間 句と 共 起 で き 、 文 脈 によ り 、完 結 の 解 釈 が 可 能 に な る と考 え ら れ る 。杉 岡( 2009)で は、 ( 97)の よ う に 、completely が 挿 入 さ れ る と、[ + 上 限] に な る と し て い る が、 こ れ は 、[ + 上限 ] に な る と い う よ りも 、[ - 上 限 ] で はあ る が 、 相 対 的 成 立点 が 設 定 さ れ る こ と に よ り、完 結 の 意 味 が 生 じ、completely と 共 起で き る よ う に な る と 考 え た ほ う が 適切 で あ ろ う 。 た だ し、杉 岡( 2009)が 指 摘 し て い る よ う に、も と に な る 形 容 詞 が[ + 上 限 ] で も 、 未完 結 解 釈 を 許 す 形 容詞 由 来 動 詞 も あ る 64 。 (98) a. The sky darkened for an hour. b. The fruits ripened for another week. ( 杉 岡 2009) 政 治 大 る 変 化 が 段 階 的で あ る こ と は 可 能 なの で 、継 続 時 間 句 と共 起 し、 「空が 1 立 時 間 の 間 ど ん どん 暗 く な っ て い っ た」と い う 未 完 結 の 解釈 が 許 さ れ る と 杉 岡( 2009)は、( 98)が 適 格 な の は 、[ + 上 限 ]で あ っ て も 、そ こ に至 ‧ 國 學 説 明 し て い る 。こ の [ + 上 限 ] と いう の は、[ - 上 限 ] の 形 容 詞 か ら 作 ら れ た 限 界 点 を持 た な い 動 詞 に 対 して 、限 界 点 を 持 つ 動詞 で あ り 、 影 山 えられる。 ‧ ( 2008)で の 、( 87)の 限 界 点 を 持 つ 閉 鎖 過 程 の LCS で 表 示 さ れ る と 考 y Nat 以 上 を ま と め ると 、動 詞 cool の ア ス ペ ク ト は 基 本 的 には「 - 上 限」で sit 未 完 結 で あ る が、文 脈 に よ り 、相対 的 成 立 点 が 与 え ら れる と 、完 結 の 解 er io 釈 も 可 能 に な るの で あ る 。ま た 、段 階 的 な 変 化 が 移 動 と見 な さ れ る た め、 al n v i n C鎖h過 程 の LCS で U 示 さ れ る 。 一 方、( 87) の 閉 e n g c h i 表 示 され る の は 、 darken や LCS が MOVE で 表 示 で き る が 、こ の 場 合、 ( 88)の 開 放 過 程 の LCS で 表 ripen と い っ た 「 + 上 限 」 を 持 つ 動詞 で 、 こ の よ う な 動詞 は 、「 絶 対 的 成 立 点 」を 持っ て い る と 考 え ら れ る。相 対 的 成 立 点 と 絶 対的 成 立 点 に つ い て は 、2.2 で 詳 し く 述 べ る 。 こ こ ま で の 分 析で 、 動 詞 cool が MOVE で 表 示 さ れ 、 基本 的 に は 未 完 結 の ア ス ペ ク トを 持 つ こ と が わ か った が 、で は、 そ れ に 対 応 す る 日 本 語 の 「 冷 え る」「 温 ま る 」 は ど う で あろ う か 。 1.3 「 冷 え る 」「 温 ま る 」 が 持 つ LCS と ア ス ペ ク ト 「 冷 え る」「 温 ま る 」 が 継 続 時 間 句と は 共 起 で き ず 、 所要 時 間 句 と の 64 杉 岡 ( 2009) で は 、 empty は 未 完 結 の 解 釈 を 持 た な い と 述 べ て い る 。 64 第 4 章 到達動詞とカケル構文 み 共 起 で き る こと は(93)で 既 に 見 た。こ の こ と は、動 詞 cool が 継 続 時 間 句 と も 所 要 時間 句 と も 共 起 で き るこ と と は 大 い に 異 なる 。 た だ、「 冷 え る」 「 温 ま る 」も 段 階 的 に 変 化 する 動 詞 で あ り 、限 界 点 を 持 た な い 65 こ と か ら 、 一 見、( 90) の LCS で 表 示 で き る と 思 わ れ るか も し れ な い 。 し か し 、 影 山 (2008) の ( 87)( 88) の LCS に 日 本 語の 例 を 当 て は め る に は 問 題 が あ る 。影 山 ( 2008) は、( 88) の LCS に は 限 界 点 が な く 、 無 限 に 広 が る と し てい る が 、限 界点 が な い( 88)の LCS に 相 当 す る と さ れ る 日 本 語 の 例 (90) は 、 実 際 に は 、 所要 時 間 句 と 共 起 で きる 66 。 こ の こ と は 、少 な く とも 、日 本 語 の ナ ル は、変 化 が 瞬 間 的 か 段 階的 か に か か わ ら ず 、限 界 点 を 持 つ 限 界 動 詞 で あ り 、そ の た め 、 継 続 時 間 句 で は な く 、所 要 時 間 句 と 共 起す る こ と を 示 し て いる 。従 っ て 、MOVE で 表 示 す る と い 治 政 cool の よ う に 抽 象 的 な 移 動 を 表す MOVE で は大 な く 、段 階 的 な 変 化 を 表 す BECOME で 表 示 す る こ立 と が よ り 適 切 で あ ろ う と 考 え ら れる の で あ る 。以 う 観 点 に は 疑 問 の 余 地 が 残 る 。 こ の こ と か ら 、「 冷 え る 」「 温 ま る 」 は 、 ‧ 國 學 下 、 こ の こ と につ い て 論 じ る 。 ま ず 、杉 岡( 2009)は 、形 容 詞 に「 - め る | - ま る 」が付 加 し て 派 生 Nat (99) a. 花 子 が ス ー プ を 温 めた 。 er io sit b. ス ー プ が 温 ま っ た 。 y ‧ す る 動 詞 に は 、以 下 の よ う な 他 動 詞形 と 自 動 詞 形 の 対 応が あ る と し 、 al v i n C hのよ う な 状 態 変U化 使 役 動 詞 か ら 、 動 作 主 と は 、 杉 岡 に よれ ば 、( 100a) e n gのcよhうi に 自 動 詞 化す る 操 作 の こ と や 原 因 を 表 す 外項 x を 外 し、( 100b) n ( 99b) は (99a) か ら 脱 使 役 化 に よっ て 得 ら れ る と し てい る 。 脱 使 役 化 である。 (100) a.〈x が 働 き か け 〉 → 〈 y が 変 化 〉 → 〈 y が z の 状 態 〉 ↓ b. Ø 〈y が変化〉→〈y が z の状態〉 ( 杉 岡 2009) 佐 野( 1998)は 、「 冷 え る 」「 温 ま る 」を 変 化 に 進 展 性 を 伴 わ ず 、さ ら に 、進 展 性に限界を伴わない動詞句であるとしている。 66 影 山( 2008)の 進 行 状 況 を「 半 分 ほ ど 」 「 80% ま で 」「 完 全 に 」と い っ た 副 詞 で の描写が可能かどうかで、限界点の有無を決定するのは、少なくとも日本語にお いては、再検討される必要があろう。 65 65 第 4 章 到達動詞とカケル構文 ( 100b) か ら もわ か る よ う に、「 温 ま る 」 の 意 味 構 造 は 「〈 y が 変 化 〉 → 〈 y が z の 状 態 〉」で あ り、状 態 変 化 の み を 表 し、LCS に こ の 状 態 変 化 を 意 味 する BECOME を 持 つ た め 、(101) の よ う に 所 要 時間 句 と 共 起 で き 、 ( 102)の よ う に テ イ ル 形 に す る と 、結 果 状 態 を 表 す ので あ る。 「冷える」 は、「 温 め る 」 か ら 脱 使 役 化 に よ り生 じ る 「 温 ま る 」 と は 異 な り 、 も と も と 自 動 詞 で ある が 、「 温 ま る 」 と 同 じ 文 法 的 振 る 舞 い を 見 せ る こ と か ら 、BECOME を 持 つ と 考 え ら れ る 。 (101) a. ス ー プ が 5 分 で 温 まっ た 。 b.鉄 が 1 時 間 で 冷 えた 。 政 治 大 (102) a. ス ー プ が 温 ま っ て いる 。 b.鉄 が 冷 え て い る 。 立 こ の よ う に、 「 冷 え る」 「 温 ま る 」は 、cool と は 異 な り 、MOVE で は な ‧ 國 英語と日本語における構造上の差異 ‧ 1.4 學 く 、BECOME を 持 つ の で あ る 。 y Nat 先 程( 95)で 見 た「 移 動 → 状 態 変 化 」の よ う な 構 造 は 、cool の よ う な sit 語 彙 的 な 意 味 構造 だ け で は な く、統 語 的 構 造 に も 反 映 され て い る と 考 え er io ら れ る 。例 え ば 、影 山( 2008)が 挙 げ た ( 91)は ま さ に 、 移 動 或 い は 変 al v i n | 変 化 → 着 点 | 結 果 」の 構C 造h から 成 り 立 っ てU e n g c h i お り 、英 語 特 有 の も の で あ n 化 を 漸 進 的 な 過程 と 見 な し 、最終 点 を 着 点 或 い は 結 果 状態 で 表 す「 移 動 る と 言 え そ う であ る 。こ の こ とは 、同 じ 出 来 事 を 英 語 で表 す の と 日 本 語 で 表 す の で は、 統 語 的 な 構 造 の 異 なり に も 現 れ る。( 91a) の 英 語 を そ の ま ま 日 本 語 に 訳す と 、「 ?ジ ョ ン は 1 マ イ ル 病 院 に 走 っ た」 と な り 、 不自 然 に な っ て し まう た め、「 ジ ョ ン は 1 マ イ ル 走 っ て 病 院に 着 い た 」 と い う よ う に 、 日 本語 で は 「1 マ イ ル 走 る 」 と 「 病 院 に 着 く」 と い う 出 来 事 を 、 分 け て 表 現す る 必 要 が あ る 。 すな わ ち 、 統 語 的 に は 、「 英 語 で は 意 味 構 造 を 合 成 して 複 雑 な 概 念 を 作 る( 影 山 1996)」のに 対 し て 、日 本 語 で は 、 移 動 事 象と 結 果 事 象 を 合 成 でき な い た め、「 移 動 → 着 点 」 を 表 現 す る 際 に は、「 走 っ て 着 い た 」 と 別々 の 動 詞 を 使 っ た り、 或 い は 複 合 動 詞 を 使 っ た り する 必 要 が あ る の で ある 。ま た、( 91b)も 同 様 に 、日 本 語 66 第 4 章 到達動詞とカケル構文 で は 「 池 は 徐 々に 凍 っ て、( つ い に は ) カ チ カ チ に な った 」 と 訳 さ れ 67 、 「 池 が 凍 る」と「 カ チ カ チ に な る」を 、分 け て 表 現 す る必 要 が あ る。 こ の 統 語 的・語 彙 的 意 味 構 造 の 共 通 性か ら も 、英 語 で は 、cool や dark が「 移 動 → 状 態 変 化( 結 果 )」の 構 造 を 持 って い る 一 方、日 本 語 の「冷 や す 」 「温 ま る 」 は 、 cool と は 異 な り、「 状 態 変 化 」 の 構 造 し か 持ち 得 な い と 考 え られる。 第2節 ナル 2.1 ナ ル が 表 す 変 化 ― 「 瞬 間 変 化 」 と 「 段 階 変 化 」 ― 政 治 大 「 冷 え る 」「 温 ま る 」 が 、 所 要時 間 句 と 共 起 で き るこ と の よ り 、 英 語 の cool と は 異 な り 、 BECOME で 表 示 さ れ る こ と は 既に 見 た 。で は 、 立 「 冷 え る」「 温 ま る 」 は 、 実 際 に 瞬間 的 な 変 化 に も 段 階的 な 変 化 に も ‧ 國 學 用 い ら れ る の であ ろ う か と い う こ とで あ る が、( 103)(104)か ら も わ か る よ う に、「 冷 え る」「 温 ま る 」は 瞬 間 的 な 変 化 も 、段 階 的 な 変 化 も 表 す こ と が で きる 。 ‧ y Nat ( 103)a.シ ャ ツ ご と 冷 や す 瞬 間 冷却 ス プ レ ー「 ケイ タ イ エ ア コ ン sit を 使 用。一 瞬 冷 え る け ど あ ん ま し 効果 な し。汗 が ひ か な (http://twitpic.com/5if3iw) n al er io い。 Ch engchi i n U v b. マ グ マ が マ グ マ 溜 り の 中 で ゆ っ く り 冷 え る に つ れ て、 次 々 と い ろ い ろな 鉱 物 が で き 、マ グ マ 溜 り の 中 に 沈 ん で いく。 ( BCCWJ) ( 104)a.45℃ は 非 常 に 熱 い 。芯 か ら 冷 え た 体 が 一 瞬 にし て 温 ま る 。 ち な み に 入 る と熱 い を 通 り 越 し て 痛い に (http://onsen.nifty.com/kiryuu-onsen/onsen005586/nureport-nu report074/) 67 影 山( 2008)で は 、 ( 85b)を「 池 は 徐 々 に カ チ カ チ に 凍 っ た 」と 訳 し て い る が 、 「 池 は 徐 々 に 凍 っ て 、カ チ カ チ に な っ た 」と 訳 す ほ う が 、日 本 語 と し て は 自 然 で あろう。 67 第 4 章 到達動詞とカケル構文 b.最 近 、エ ン ジ ン が 温 ま る ま で の間( 約 30 分 位 走 行 す る ま で ) 信 号 待 ち とか の ア イ ド リ ン グ って い う か 振 動 が す ご い の で す が 、 旦那 に 言 う と 、 冬 だ から っ て 言 わ れ て し ま いました。 ( BCCWJ) ま た、「 な る 」 も 、( 105) の よ う に 瞬 間 的 な 変 化 を 表 すこ と も で き れ ば、( 106) の よう に 段 階 的 な 変 化 を 表 す こ と が で き る 。 ( 105) a.「 い い え 」 軍 団 司 令官 は 、 急 に 明 る い 顔に な っ た 。 政 治 大 b. ど う 見 て も 20 代 後 半 に し か 見 えな い 女 性 シ ン ガ ー がピ 立 ア ノ の 演 奏 で 歌い 始 め る と、そ れ ま で ざ わ つ い て い た 店 ‧ 國 學 が一瞬で静かになった。 ( 106) a. 黒 田 の よ う な 、 の っ ぺ りし た 顔 は 駄 目 だ 。 いい 年 齢 を し ‧ て 深 み が な い 。そ の 点 、お 前 は 美 男 で は な い が 、い い 顔 sit y Nat になった。 er io b.騒 動 は 長 い こ と 続 い て い る よ うで あ っ た が 、だ ん だ ん に 静かになった。 n al Ch engchi i n U v ( 以 上、BCCWJ) こ れ ら の こ と から 、日 本 語 に お け る状 態 変 化 を 表 す ナ ル は 、瞬 間 的 な 変 化 も 段 階 的 な変 化 も 表 す こ と が 可能 で あ り 68 、 英 語 が 瞬間 的 な 変 化 を BECOME で 、 段 階 的 な 変 化を MOVE で 表 示 す る こ とと は 分 け て 考 え た 方 が よ い こ と がわ か る 。 こ の よ う に、ナ ル が 瞬 間 的 な 変 化 も段 階 的 な 変 化 も 表 し得 る と い う こ 高 橋 ( 2003) で も 、 主 体 の 変 化 を 表 す 変 化 動 詞 に 、「 瞬 間 的 に パ っ と か わ る 変 化」と「時間をかけてゆっくりかわる変化」があると述べ、以下の例を挙げてい る 。( ⅰ ) は 前 者 、( ⅱ ) は 後 者 の 例 で あ る 。 ( ⅰ ) a. そ の と き 、 勝 手 口 の ほ う の 戸 が あ い た 。 b. な か の 話 し ご え が ぴ た り と し ず ま っ た 。 ( ⅱ ) a. し だ い に ス ピ ー ド を ま し た 。 b. 多 数 の ポ リ オ 患 者 が 発 生 し 、 お お き な 社 会 問 題 に 発 展 し た 。 68 68 第 4 章 到達動詞とカケル構文 と か ら 、 本 稿 では 、 ナ ル の LCS を BECOME で 表 示 で き る と 考 え 69 、 以 下 の よ う に 示 して お く 。 ( 107) BECOME [[ ]y BE AT-[ ]z] 2.2 「 相 対 的 成 立 点 」 と 「 絶 対 的 成 立 点 」 こ こ で は 、1.2 で 少 し 触 れ た 相 対 的成 立 点 と 絶 対 的 成 立点 に つ い て 見 て い く が 、その 前 に 、繰 り 返 し にな る が 、影 山( 2008)が MOVE で 表示 さ れ る と し た (89)(90) の 例 に つい て 考 え て み る 。 それ ぞ れ の 例 を 以 下に再掲する。 政 治 大 ( 89) a. 病状 が 80% ま で | 完 全 に回 復 し た 。 立 (90) a.*朝 顔 が 80% ま で 伸 び た | 育 っ た 。 學 ‧ 國 b.( 鍋料 理 で ) 野 菜 が 完 全に 煮 え た 。 b. *町が 完 全 に 発 展 し た 。 ‧ y Nat 影 山 は、( 89) は 限 界 点 が 存 在 す る 閉 鎖 過 程 の LCS で、(90) は 限 界 sit 点 が 存 在 し な い開 放 過 程 の LCS で表 示 で き る と し て いる が 、 実 際 は 、 er io (108)(109) の よ う に 、 い ず れ も 限 界 点 、 つ まり B 成 立 点 を 持 ち 、 そ の た め 、所 要 時 間 句 と 共 起 し 、MOVE で は 表 示 で き な い こ と は 既 に 述 べ al n た。 Ch engchi i n U v (108) a. 病 状 が 一 週 間 で 回 復 した 。 b.( 鍋 料 理 で )野 菜 が 10 分 で 煮 え た 。 ( 109) a. 朝 顔 が 一 週 間 で 伸 び た | 育 っ た 。 b. 町が 一 年 で 発 展 し た 。 た だ し 、この 両 者 の 限 界 点 は 、質 的 に は 同 じ で あ る と は言 え な い で あ ろ う 。 こ の 質 的 な違 い が、「 完 全 に 」 と の 共 起 と 関 係 し てい る と 考 え ら れ る 。 以 下 、 そ のこ と に つ い て 論 じ る。 第 3 章 第 3 節 で 定 義 し た 、IT が 消 費 さ れ る LCS( 62)の BECOME も 、BECOME 表示されることになる。 69 69 第 4 章 到達動詞とカケル構文 影 山( 2008)は 、 「 完 全 に 」と い っ た 副 詞 と 共 起 で き る かど う か で 、 ( 89) と (90) を 区 別し て い た が、「 完 全 に 」 と 共 起 で き る ( 89) は 、 「 完 全 に 回 復 した 」「 完 全 に 煮 え た」 と 言 え る 絶 対 的 な 成 立 点 を 持 っ て い る と 考 え ら れる 。こ の こ と は 、テ イ ル 形 に し た「 完 全 に 回 復 し て い る」 「 完 全 に 煮 え てい る 」 と い う 結 果 状態 が 、 も う そ れ 以 上 「 回 復 し な い」 「 煮 え な い 」 とい う 意 味 を 表 す こ とか ら も わ か る 。 そ れに 対 し て、「 完 全 に 」 と 共 起 でき な い ( 90) は 、 確か に 「 伸 び た」「 発 展 し た 」 と 言 え る 成 立 点 を 持 ち、 テ イ ル 形 で 「 伸 びて い る」「 発 展 し て い る 」 と い う 結 果 状 態 を 表 す 70 が、(89) と 異 な る の は 、 更 に 「 伸 び る」「 発 展 す る 」 可 能 性 が あ る こ とで あ る 。 こ の、( 89) の 持 つ 成 立 点 と ( 90) が 持 つ 成 立 点 は 、 質 的 に 異な る 。 後 者は 1.2 で見 た 相 対 的 成 立 点 であ る が 、 前 者 は 治 政 絶 対 的 成 立 点 とい う の は 、 例 え ば、「 病 状 が大 回 復 し た 」の 場 合 、 そ の 立れ な く な った り 、そ の病 状 を 引 き 起 こ す ウ イ ル 患 者 に 病 気 の 症状 が 見 ら 絶 対 的 成 立 点 であ る と 考 え ら れ る 。 ‧ 國 學 ス が 体 内 か ら 検出 さ れ な く な っ た りし た 時 点 で 、その よ う に 言 え 、こ の 時 点 が 、 絶 対 的成 立 点 で あ る と 考 えら れ る。「 野 菜 が 煮 え た 」 と 言 え る ‧ の も 、野 菜 に 熱 が 通 っ た と い う 絶 対的 成 立 点 が あ る と 考え ら れ る 。こ の 絶 対 的 成 立 点 が、「 回 復 し た」「 煮 え た 」 と 言 え る 成 立点 で あ り 、 B 成 立 y Nat 点 な の で あ る。ど ち ら も 変 化 が 達 成さ れ れ ば 、も うそ れ 以 上 変 化 し な い sit と い う 特 徴 を 持つ 。 こ れ を 「 絶 対的 B 成 立 点 」 と 呼 ん でお く 。 er io 一 方 、相 対 的 成 立 点 と い う の は、 例 え ば 「 朝 顔が 伸 び た 」の 場 合 、ど al n v i n C度hま で伸 び た 時 点Uで「 伸び た 」と 言 え る し 、 確 で は な い 。観 察 に 適 し た 程 engchi こ ま で 伸 び れ ば「 伸 び た 」と 言 え る の か 、と い う 成 立 点 が 、そ も そ も 明 フ ェ ン ス が 覆 われ る ぐ ら い 伸 び た 時点 で「 伸 び た」と も 言 え 、そ の 成 立 点 が 定 ま っ て いな い の で あ る 。 ま た、「 町 が 発 展 し た 」の 場 合 、 A 町 の 住 人 が 「 自 分 の町 は 発 展 し た 」 と 言っ て も 、 B 町 の 住 人か ら す れ ば 、 A 町 は 発 展 し た とは 言 え な い 可 能 性 もあ る 。こ れ は 、A 町の 住 人 と B 町 の 住 人 と 間 で、 「 発 展 し た 」と 言 え る 基 準 点 が 異 な る た めで あ る 。た だ し 、 A 町 の 住 人 は A 町 の 住 人 の 、 B 町 の住 人 は B 町の 住 人 の 、「 町 が 発 展 し た 」 と い う 基 準値 を 持 っ て い る は ずで あ る 。 こ れ が 、 B 成 立 点 に な る と 考 え ら れ る。ま た 、今 の 技 術 レ ベ ルで 考 え ら れ る 限 り の発 展 を 成 し 遂 げ 70 「 ど ん ど ん 」 や 「 少 し ず つ 」 と い っ た 副 詞 が つ け ば 、 動 き が 継 続 し て い る こ と を表すが、そのような副詞がない場合は、基本的には結果状態に解釈されるであ ろう。 70 第 4 章 到達動詞とカケル構文 た と し て も、さ ら に 技 術 レ ベ ル が 進歩 す れ ば 、更 なる 発 展 も 可 能 で あ ろ う 。こ の 場 合、確 か に 技 術 の 進 歩 とと も に 、町 は ど こま で も 発 展 で き る と 考 え ら れ る が、現 時 点 で の 技 術 レベ ル 以 上 に は な ら ない と い う 、一 般 的 な 知 識 が あ り、そ れ が B 成 立 点 と し て 働 い て い る と 考え ら れ る。こ れ が 相 対的 B 成 立 点 で あ る 。こ れ ら は、い ず れ も あ る 一 定の 変 化 が 達 成 さ れ た 後 も 、更に 変 化 す る 可 能 性 が ある と い う 共 通 点 を 持つ 。さ ら に 、こ れ ら の 動 詞 が 「完 全 に 」 と 共 起 し にく い の は、「 完 全 に 」 の そ の 意 味 に 起 因 す る と 考 えら れ る 。 仁 田 ( 2002) で は、「 完 全 に 」 を 〈 極 性 ・ 全 体 性 〉 を 表 す 程 度量 の 副 詞 と し て 扱 い、「 完 全 に 」 が 事 態の 成 立 ・ 完 成 の 度 合 いが 100% で あ る こ と を 表 す と述 べ て い る 。こ こ で の「 事 態 の 成 立・ 完 成 の 度 合 いが 100% 」 と い う の は、 事 態 の 成 立 ・ 完 成以 降 、 そ れ 以 上 治 政 的 B 成立 点 を 持 つ 動 詞 の 特 徴 と 一 致す る 。 こ 大 の た め、「 完 全 に 」 は 、 あ 立た 後 も、更 に 変 化 す る 可 能 性 があ る と い う 特 徴 る 一 定 の 変 化 が達 成 さ れ 事 態 が 進 展 し ない と い い う こ と を 意味 し て い る と 思 わ れ、こ れ は 、絶 対 ‧ 國 學 を 持 つ 動 詞 と は共 起 し に く い の で はな い だ ろ う か 。 以 上 を ま と め ると 、 日 本 語 の ナ ル が段 階 的 な 変 化 を 表 す場 合 、( 89) ‧ の よ う に 絶 対的 B 成 立 点 を 持 つ ナ ルと 、( 90) の よ う に相 対 的 B 成立 点 を 持 つ ナ ル が 存在 す る と い う こ と にな る 。 y Nat io al sit 瞬間変変化と段階変化の違い er 2.3 n 変 化 が 瞬 間 的 とい う の は 、言 い 換え れ ば 、段 階 的 で ない と 言 え る で あ Ch i n U v ろ う 。そ れ に 対 し て 、漸 進的 ・段 階 的 な 変 化 の 場 合 は、 文 字 通 り 、段 階 engchi 的 な も の で あ ると 考 え ら れ る 。 こ のこ と は 、 前 者 が 「 *電 車 が 少 し ず つ 着 い た」「 *金 魚 が 徐 々 に 死 ん だ 」と 言 え な い の に 対 し て 、後 者 が「 病 状 が 少 し ず つ 回 復し た 」「 野 菜 が 徐 々 に 煮 え た 」 と 言 え るこ と か ら も わ か る 。 こ の 「 瞬 間変 化 」 と 「 段 階 変 化」 を 図 示 す る と、( 110)( 111) の よ う に な る で あ ろう 。 BECOM E ↓ ( 110) ● B 成立点 71 第 4 章 到達動詞とカケル構文 BECOME ( 111) ● 絶対的 B 成立点 「 電 車 が 着 い た 」「 金 魚 が 死 ん だ 」 は 瞬 間 変 化 な の で 、( 110) の よ う に BECOME が 作 用 す る の は 一 時 点 で あ る が 、( 108) は 段 階 変 化 な の で 、 BECOME の 作 用 も ( 111) の よ う に 、 段 階 的 に な る と 考 え ら れ る 。 例 え ば、 「 ろ う そ く の 火 が 消 え た 」の 場 合 、一 瞬( 一 時点 )の 変 化 な の で( 110) で 図 示 さ れ る が 、「 病 状 が 回 復 し た 」 の 場 合 、( 111) の よ う に 、 少 し ず つ 回 復 す る と い う 変 化 が 連 続 し て い る と 捉 え ら れ る 。( 111) の 縦 線 は 、 治 政 た だ し( 111)は 、絶 対 的 B 成 立 点 を 持 つ 段 大 階 変 化 の 場 合で 、相 対 的 B 立場 合 は、( 112) の よ う に 図 示 でき る 。 成 立 点 を 持 つ 段階 変 化 の 學 BECOME ( 112) ● 相対的 B 成立点 Nat y ‧ ‧ 國 そ の 変 化 が 連 続し て い る こ と 示 し てい る 。 sit 例 え ば 、「 病 状 が 少 し ず つ 回 復 し て い る 」 と 言 う 場 合 、 回 復 す る と い う er io 段 階 的 な 変 化 が連 続 し て い る こ と にな る の で、 ( 111’)の ① の 部 分 に 相 当 al し 、 一 方 、「 病 状 は す で に 回 復 し て い る 」 と 言 え る の は 、 完 全 に 回 復 し n v i n た 後 の 結 果 の 状態 を 表 し てC い る こ とに な る の で、 h e n g c h i U ( 111’)の ② の 部 分 に 相 当 す る と 考 え られ る 。「 回 復 す る 」 は 絶 対 的 B 成 立 点 を 持 つ の で 、 そ れ 以 降 は 変 化 が 生じ な い こ と は 既 に 述べ た 。 ① ( 111’) ② ● 絶対的 B 成立点 ま た 、「 町 が 徐 々 に 発 展 し て い る 」 と い う の は 、 発 展 す る と い う 段 階 的 な 変 化 が 連 続し て い る こ と に な るの で 、あ る 相 対 的 成立 点 を B 成立 点 と 定 め た 場 合 、( 112’) の ① の 部 分 に 相 当 し 、 一 方 、「 こ の 町 は す で に 発 展 し て い る」と い う 場 合 、発 展し た と い う 変 化 の 結 果 の状 態 を 表 し て い る こ と に な る ので 、 ( 112’)の ② の 部分 に 相 当 す る と 考え ら れ る 。も ち ろ 72 第 4 章 到達動詞とカケル構文 ん 、相 対 的 B 成 立点 を 持 つ た め 、そ れ 以 降 も 、更 に 発 展 し て い く 可 能 性 もある。 ① ② ( 112’) ● 相対的 B 成立点 以 上 、 状 態 変 化 を 表 す BECOME に おけ る 瞬 間 変 化 と 段階 変 化 に お け る 違 い を 論 じ た。 吉 田( 2012)で 問 題 と さ れ た、実 現 に 時 間 を 要 す る「 太 る 」「 痩 せる 」 「 乾 く 」は 、こ れ ら は 段 階 変 化 で あり 、こ の う ち、「 太 る」「 痩 せ る 」は 政 治 大 相 対 的 B 成 立 点 を 、「 乾 く 」 は 絶 対的 B 成 立 点 を 持 つ と考 え ら れ る 。 こ の 相 対的 B 成 立 点 と 絶 対 的 B 成 立 点 は 、そ こ で 事 象 が 成立 し た と 言 え る 立 成 立 点 で あ り 、動 詞 に 内 在 す る も ので あ っ た 。で は 、先 程 ナ ル が 、瞬 間 ‧ 國 學 変 化 も 段 階 変 化も 表 せ る と い う こ とを 見 た が 、ナ ル が そ の よ う な 性 質 を 持 っ て い る の なら 、他 の 状 態 変 化 を表 す 動 詞 も 、その よ う な 性 質 を 持 っ て い る こ と が 予測 さ れ る 。 以 下 、 それ を 見 て い く 。 ‧ sit y Nat 2.4 ガ 格 名 詞 句 と BECOME io n al er 第 1 章 で 挙 げ た先 行 研 究 で は 、 姫 野( 1999) が (112) の 例 を 挙 げ 、 i n U v ( 113) 第 一 日 目 に は 、 赤 い 花 が 一 本 売 れ た 。 お 客 は 踊 子 で あ る 。 Ch engchi 踊 子 は 、 ゆ る く 開 き か け て い る 赤 い蕾 を 選 ん だ。( = (8)) 「 開 く 」は 瞬間 動 詞 と 言 え る が 、蕾 か ら 満 開 ま で の プ ロセ ス を 継 続 的 に 見 る な ら ば 、「 ゆ る く 開 き か け て い る 花 」 と い う の は 、 始 動 態 を 示 し て い る、と い う 指 摘 を 見 た が、 こ の「 蕾 が 開 く」の 場 合 、一 瞬 で は 変 化 が 起 こ ら な い こ と か ら 段 階 変 化 で あ り 、 ま た 、「 蕾 が 開 い た 」 後 は 、 そ れ 以 上 の 変 化 は起 こ ら な い こ と か ら絶 対 的 B 成 立 点 を 持 つ こ と が わ か る。 姫 野 の「 蕾 から 満 開 ま で の プ ロ セ スを 継 続 的 に 見 る 」と い う 説 明 は 、蕾 か ら、 「 満 開 ま で 」つ ま り「 絶 対 的 B 成 立 点 ま で 」ま で の プ ロ セ ス を、 「継 続 的 に 」つ まり「 段 階 変 化 的 に 」見 る と い う こ と を 示 して い る と 考 え ら れ る 。も ち ろ ん 、こ の 場 合 、絶 対 的 B 成 立 点 を 持 つ た め 、カ ケ ル 構 文 で 73 第 4 章 到達動詞とカケル構文 用 い ら れ る 「 開き か け て い る 」 は 、将 変 相 に 解 釈 さ れ る。 姫 野 ( 1999) が 指 摘 し た 、 瞬 間 動 詞 の う ち 、「 変 化 の 過 程 を 持 つ も の 」 と い う の は 、 段 階 変 化 を 表 す動 詞 を 指 し て い た ので あ る 。継 続 動詞 に 、動 詞 が 表 す 動 き が 瞬 間 的 に 成立 す る も の も あ れ ば、時 間 を か け て 成 立す る も の も あ る よ う に 、いわ ゆ る 瞬 間 動 詞 に も、瞬 間 変 化 と 段 階 変 化 があ り 、姫 野( 1999) は 、 こ の 段 階 変 化 の 動 詞 に カ ケ ル が 後 接 し た も の を 、「 始 動 態 」 と 見 な し た の で あ る 。 一 方 、( 9) の 「 ぶ る か る 」「 つ ま ず く 」、( 10) の 「 訪 問 す る 」 は、 第 3 章 で 既 に 述 べ た が、 本 稿 で は 活 動 動 詞 と見 な し 、A 成 立 点 し か 持 た な いた め 、 変 化 の 過 程を 持 た ず 、結 果 動 詞も な く 、将 動 相 に 解 釈 さ れ る の であ る 。 た だ、「 蕾 が 開 く 」 の 場 合 、 確 か に段 階 変 化 と し て 捉 えら れ る の で あ 政 治 大 る が 、 同 じ 「 開く 」 を 使 っ て も、「 ド ア が 開 く 」 の 場 合、 瞬 間 変 化 と し て 捉 え ら れ る。し か し 、この「 ド ア が 開 く 」も、 瞬 間 変 化 と し て の み 捉 立 え ら れ る わ け では な く、「 ド ア が 少 し ず つ 開 い た 」 の よ う に 、 段 階 変 化 ‧ 國 學 と し て も 捉 え るこ と も 可 能 で あ る 。こ れ ら の こ と か ら 、 1 つ の 動 詞 が 常 に 、瞬 間 変 化 か 段 階 変 化 か の い ず れか に 属 す る わ け で はな い と い う こ と が わ か る 。そ し て 、本 稿 で は 、こ の 原 因 が 、ガ 格 名 詞 句 の 異 な り に あ る ‧ と 考 え る 71 。例 え ば 、同 じ 動 詞 で も、( 114a)の よ う に 、瞬 間 変 化 の 解釈 y Nat が 可 能 な 場 合 もあ れ ば 、( 114b) の よ う に 、 段 階 変 化 の解 釈 が 可 能 な 場 sit 合 も あ る。こ の 点 で は、ヲ 格 名 詞 句 を と る 活 動 動 詞 が、ヲ 格 名 詞 句 に IT al n い る と 考 え ら れる 72 。 er io を と る か と ら ない か で 、過程 的 で あ る か ど う か が 決 定 され る こ と と 似 て Ch engchi i n U v ( 114) a. ろ う そ く の 火 が 消 え る | b. 山 火 事 が 消 える a. 糸 が 切 れ る | b. ワ イヤ ー が 切 れ る a.( 引 っ 張 っ て ) ゴ ム が 伸 び る | b. 髪 が 伸 び る a. 波 が 引 く | b. 潮 が 引 く 動 詞 が 、格 と し て と る 名 詞 句 の 異 な り に よ り 、意 味 特 徴 を 変 え る 現 象 は 、仁 田 ( 2010)や 影 山( 2011)で も 取 り 上 げ ら れ て い る 。仁 田 で は 、 ( ⅰ )の ニ 格 が 人 か 場所かの違いにより、動詞に多義性が生じるとしている。 ( ⅰ ) a. 太 郎 ガ 本 ヲ 次 郎 ニ ヤ ッ タ 。 b. 聖 徳 太 子 ガ 小 野 妹 子 ヲ 隋 ニ ヤ ッ タ 。 また、影山でも、存在文のガ格にデキゴト名詞がくることにより、場所格がデで 表示され、 「 あ る 」が 状 態 動 詞 で は な く 動 的 な 動 詞 と し て の 意 味 を 担 う こ と に な る と指摘している。 72 こ の 場 合 も や は り 、 ヲ 格 名 詞 句 が 、 動 詞 の 意 味 特 徴 を 決 定 す る と 考 え ら れ る 。 71 74 第 4 章 到達動詞とカケル構文 こ の よ う に、ナ ル が 瞬 間 変 化 に 解 釈さ れ る か 段 階 変 化 に解 釈 さ れ る か は 、ガ 格 名 詞句 も か か わ っ て く る と 考 え ら れ る 。た だし 、い ず れ も ナ ル で あ り 、 テ イ ル形 で 結 果 状 態 を 表 すこ と が 可 能 で あ る こと か ら 、 BECOME で 表 示 さ れ る こ と に は 変 わり な い の で あ る 。 こ こ ま で は 主 体の 変 化 を 表 す 動 詞 のう ち 、抽 象 的な 状 態 変 化 を 表 す タ イ プ を 見 て き たが 、こ れ ら は す べ て「 到 達 動 詞 」で あ り 、変 化 が 瞬 間 的 か 段 階 的 か に かか わ ら ず 、 LCS は ( 107) の よ う に 表 示で き る こ と を 論 じ た 。 で は 次 に、 物 理 的 な 位 置 の 変化 を 表 す タ イ プ を 見て い こ う 。 第3節 移動動詞 治 政 も の で 、こ の タ イ プ は 、抽 象 的 な 状 態 変 化 を 表大 す タ イ プと は や や 異 な る。 立詞 は 、起点 、経 路 、着 点 の うち い ず れ か 1 つ に 影 山( 1997)は 、 移 動 動 物 理 的 な 位 置 の変 化 を 表 す タ イ プ は、一 般 的 に は 移 動 動詞 と 呼 ば れ る ‧ 國 學 重 点 を 置 い て 表現 す る 動 詞 で あ る とし 、telic で あ る 起 点 | 着 点 指 向 動 詞 と atelic で あ る経 路 指 向 動 詞 に 分 類し て い る 。 ‧ ( 115)a. 起 点 | 着 点 指 向 の 移 動 動詞 ( 30 分 で~ す る ) y Nat 起 点 重 視:出 発 す る 、 ( 町 を)出 る 、離 れ る、脱 出 す る 、 sit 発 車 す る 、 離 陸す る 、 去 る 、 立 つ 、逃 げ る n al er io 着 点 重 視 : 入 る 、 着 く 、 到 着 す る 、( 表 通 り に ) 出 る 、 v 至 る 、 乗 る 、 入学 す る 、 入 社 す る 、届 く 、 C上h陸 す る 、 上 京すUるn i engchi b. 経 路 指 向 の 移 動 動 詞 ( 30 分 間 ~ す る ) 移 動 の 方 向 に 関 す る動 詞 : さまよう、うろつく、放浪する、超える、くだる、 回 る 、 貫 く 、 漂う 、 伝 う 、 通 過 す る、 徘 徊 す る 移 動 の 様 態 に 関 す る動 詞 : 歩 く 、 走 る 、 泳ぐ 、 流 れ る 、 這 う 、飛 ぶ 、 闊 歩 す る 、 転 がる 、 滑 る さ ら に 、 そ れ ぞれ の 動 詞 の LCS を 、 以 下 の よ う に 示 して い る 。 75 第 4 章 到達動詞とカケル構文 ( 116)a. 経 路 指 向 の 移 動 動 詞 y MOVE[ path VIA z]( y が z を 通 っ て 移 動 す る ) VIA= 「 ~ を 」 b. 起 点 指 向 の 移 動 動 詞 BECOME [ y BE[ Source NOT- AT-z]]( y が z にい な く な る ) NOT- AT=「 ~ か ら 」 c. 着 点 指 向の 移 動 動 詞 BECOME [ y BE[ Goal AT-z]]( y が z に 現 れ る ) AT= 「 ~ に 」 治 政 LCS で あ る( 116b) ( 116c) ま ず 、起 点 | 着 点 指 向 の 移 動 動 詞( 115a)の大 立に 従 い 、この LCS を 用 い る 。た だ し 、瞬 間 的 な で あ る が 、本 稿 でも こ れ ‧ 國 學 位置変化しか表せないように思われるかもしれないこれらの動詞の中 に も 、段 階 的 な 位 置 変 化 を 表 せ る もの が あ る 73 こ と から LSC は BECOME で 表 示 す る の が適 当 で あ ろ う 。 ‧ 次 に 、経 路 指 向 の 移 動 動 詞( 115b)の う ち 、移 動 の 様 態 に 関 す る 動 詞 y Nat は 、ヲ 格 名 詞 句 に IT を と る 経 路 動 詞 で あ る こ と か ら、 ( 62)の LCS で 表 n al er io sit 示 で き る と 考 えら れ 74 、 達 成 動 詞 化 した も の と し て 見 な せる で あ ろ う 。 73 74 Ch engchi i n U v (ⅰ )こ う し て 列 車 で 少 し ず つ 都 会 を 離 れ る と 、 今 ま で 気 が 付 か な か っ た こ と も 見えてくる。 ( 岩 松 春 親 『 は る ち ゃ ん と 仲 間 達 の ゆ っ く り 旅 』) (Ⅱ )番 組 は 毎 度 、 丁 寧 な 挨 拶 と 天 気 の 話 題 か ら 入 り 、 最 近 安 住 の 身 の ま わ り に 起 こ っ た こ と を き っ か け に 、 飛 行 機 が 徐 々 に 離 陸 す る よ う に 約 30 分 の フリードークが展開されてゆく。 ( http://www.excite.co.jp/News/entertainment_g/20120731/Cyzo_201207_po st_11101.html) (ⅲ )水 の 中 に 岩 石 の 成 分 が 少 し ず つ 入 る 。 ( www.niigata-hontaka.com/mizu/nansui.html) (ⅳ )【 フ ェ ブ ラ リ ー S 】( 1 6 ) ア ド マ イ ヤ ロ イ ヤ ル 徐 々 に 出 る 形 で (中略) 「 気 難 し い 馬 な の で 外 枠 の 方 が い い 。徐 々 に 前 に 行 く 形 で 運 べ れ ば 」 と歓迎した。 ( http://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2015/02/21/kiji/K2015022100984480 0.html) ここでは、移動の方向に関する動詞については扱わない。 76 第 4 章 到達動詞とカケル構文 第4節 カケル構文に用いられた例 4.1 状 態 変 化 を 表 す 場 合 ま ず 、「 な る 」 が カ ケ ル 構 文 で 用 い ら れ た 例 を 見 る 。( 117a) の 「 熱 く な り か け る 」 は瞬 間 変 化 、( 117b) は 段 階 変 化 の 例 で ある 。 ( 117) a. 頭 の な か が か あ っ と 熱 く な り か け て い た の で 、 信 子 は 、 石 田 直 澄 の ぼ そぼ そ と 呟 く 言 葉 を 聞い て い な か っ た 。 b.水 に 塩 、酢 を 入 れ ま すそ し て 卵 を 投 入 。もし 時 間 が あ る 治 政 と 黄 身 が 真 ん 中へ 落 ち 着 き ま す 大よ 。 立 な ら お 湯 が 熱 く な り か け た ら 、 沸 騰 す る ま で 卵 を 転 がす ‧ 國 學 次 に、 「 消 え る」の 例 を 見 る。 (118a)の 場 合 は、 「 戸 口か ら 寒 風 が 吹 き こ ん」だ こ と に よ り 、その 瞬 間 に 消 え か け た と 考 え ら れる た め 、こ の「 消 え か け て 」 は 瞬 間 変 化 で あ る と 見 な さ れ 、( 118b) の 場 合 は 、 天 気 が 続 ‧ い た こ と に よ り、雪 が だ ん だ ん 溶 けて い っ た と 考 え ら れる た め 、段 階 変 sit y Nat 化 で あ る と 言 える 。 al er io ( 118) a. 急 に あ か り が 揺 れ た 。 あ け 放 し た 戸 口 か ら 寒 風 が 吹 き こ n んで燭台の火が消えかけている。 Ch engchi i n U v b.ま ず ま ず の 天 気 が つづ い て 、町 の 雪 は ほ と ん ど 消 え か け ていた。 (以 上 、 BCCWJ) さ ら に 、瞬 間 変 化 で あ る( 119a) ( 120a)と 、段 階 変 化 で あ る( 119b) (120b) を 挙 げる 。 ( 119) a. ド ア の 取 っ 手 に 伸 びか け た ト ム の 手 が 止ま っ た 。 (キ ム ロ ー レ ン ス『 謎め い た プ ロ ポ ー ズ』) b.「 お ―お ま え は 誰 だ ? 」 ス ク ラ ッ ド は 伸 び か け た 髭 の 根 っ こ ま で 震 わ せな が ら 、 ど も っ た 。 77 第 4 章 到達動詞とカケル構文 ( BCCWJ) (120) a. 予 約 の お 客 様 が い らっ し ゃ る 時 間 が 近 づい て く る と 、 案 内係や支配人のようなお客様を出迎える仕事をする人 た ち は そ わ そ わ、入 り 口 の 方 に 気 持ち を や り ま す。ド ア が カ チ ッ と あ く気 配 。そ れ を 感 じ て す か さ ず ド ア に 近 づ い て 、開き か け た 扉 に 手 を 添 え、や さ し く 開 く の を 手 伝 い な が ら、「 い ら っ し ゃ い ま せ」。 (http://www.1101.com/restaurant/2015-01-08.html) b.手 に 持 っ て い た 。秋 の 一 番 花 が 、よ うや く 開 き か け た と 治 政 のは切った。 大 立 こ ろ だ 。ま だ 開 き そ う も な い 蕾 は 落と し 、開 き かけ た も ( BCCWJ) ‧ 國 學 こ の よ う に 、同 じ 動 詞 で あ っ て も 、ガ 格 名 詞 句 に よ り、 瞬 間 変 化 か 段 階変化かが決定され、また、このことは、カケル構文で用いられても、 ‧ 変 わ り な い の であ る 。 段 階 変 化 の 例の う ち、( 118b)(120b) は 絶 対 的 B y Nat 成 立 点 を 持 ち、 ( 117b) ( 119b)は 相 対 的 B 成 立 点 を 持 っ てい る 。最 後 に 、 er io sit 瞬 間 変 化 を 表 す「 死 ぬ 」 の 例 を 見 てお こ う 。 al n ( 121) 豊 倉 氏 は 、 若 い と き に 、 ペ ニ シ リ ン シ ョ ッ ク で 死 に か け 、 そ の と き 臨 死 体験 C hを し て い る 。 U n i engchi v ( BCCWJ) こ こ で 興 味 深 いの は 、「 死 ぬ 」が カ ケ ル 構 文 で 用 い ら れる 場 合、( 121) の よ う に 、実 際 に 瀕 死 状 態 に あ る 場合 に も 使 わ れ る が、死 が 連 想 さ れ る ( 122a) や ( 122b) の よ う な 状 況 に お い て も 、「 死 に か け る 」 が 使 わ れ ることである。 ( 122) a. … … 私 は 崖 か ら 落 ち て 死 に か け た こ と が あ り ま し た が 、 瞬 間 で 全 て が 終わ り で す 、偶 然 そ の 下 が 滝 壺 の 深 淵 で 助 かりましたがね…… ( BCCWJ) 78 第 4 章 到達動詞とカケル構文 b.遮 断 機 の 下 り た 踏 み 切 り を 渡 ろう と し て 死 に か け た 女 性 。 ( 中 略 )オ ラン ダ で 撮 影 さ れ た 遮 断機 の 下 を く ぐ っ て 横 断しようとした女性が高速で通過する列車に轢かれか け る ビ デ オ で す。 ( http://1000mg.jp/archives/28696.html) ( 122a) は 「 崖 か ら 落 ち た が 、滝 壺 の 深 遠 で 助 か っ た」、( 122b) は 「踏 み 切 り を 渡 ろ う と し て 、 列 車 に 轢 か れ か け た ( が 死 ん で は い な い )」 と あ り 、実 際 は 死 に 至 る よ う な 怪 我 は負 っ て い な い の に もか か わ ら ず、 「死 に か け た 」 が 用 い ら れ て い る 。 こ こ で は 、「 死 ぬ 」 直 前 の 時 点 を 段 階 的 治 政 あ る 死 を 引 き 起 こ す 原 因 に な る よ う な 出 来 事大 ま で も 、「 死 に か け る 」 に 含 め て い る の であ る 。 立 に 捉 え、「 死 に か け る( 瀕 死 の 状 態 に な る)」段 階 以 前 の 、 そ の 過 程 上 に ‧ 國 學 以 上 、瞬間 変 化 を 表 す 動 詞 が カ ケ ル構 文 で 用 い ら れ る 例を 見 て き た が、 こ れ ら は い ず れも 「 到 達 動 詞 」 で あり 、 B 成 立 点 を 持 つ た め 、 将 変 相 に 解 釈 さ れ る と 考え ら れ る 。 ‧ sit y Nat 4.2 位 置 変 化 を 表 す 場 合 er io 位 置 変 化 は 、移 動 に よ り 主 体 の 位 置が 変 化 す る も の で、 前 節 で 見 た よ al う に 、 LSC を BECOME で 表 示 す る 起 点 | 着 点 指 向 の 移動 動 詞 と 、 経 路 n v i n 動 詞 と して IT を ヲ 格 名 詞 句 Cにhと り、 達 成 動 詞U化 す る もの と が あ っ た 。 e 詞gがカ c hケiル 構 文 で 用 い られ た 例 を 見 て ま ず 、起点 | 着 点 指 向 の 移 動 動n み る。( 123)は 起 点 重 視 の 移 動 動 詞、( 124)は 着 点 重 視 の 移 動 動 詞 の 例 で あ る 。これ ら は い ず れ も 、起点 を 離 れ る 時 点 或 い は 着点 に 達 す る 時 点 で あ る B 成 立 点 に 至 る 前 の 段 階 と 見な さ れ 、 将 変 相 の 解釈 に な る 。 ( 123) a.「 そ ん な こ と 、 あ な た に 関 係 な い じ ゃ な い 」 美 世 子 は ケ ン も ホ ロ ロ に 言い な が ら 机 を 離 れ かけ た 。 b.「 そ れ じ ゃ 、 行 き ま す が … 」 去 り か け て 、 ま た 振 り 返 り 何 か 言 い た そ うに す る の を、浅 見 は 手 を 上 げ て 制 し た。 c. 部 長 の 戸 村 さ ん が 、 バ ス が 発 車 し て か け て い る の を み つ 79 第 4 章 到達動詞とカケル構文 け た ら し く 、 バス 停 へ 走 っ て い く 。 ( 124) a. そ の 雪 が 少 し 小 降 り に なっ た 八 時 半 に 、 頼 子は 並 木 通 り の 七 丁 目 の 角 で 車 を 降 り た 。「 ア ジ ュ ー ル 」 は 、 そ の 角 のビルの四階にある。車を降りてビルに入りかけると、 入 口 に 立 っ て いた ボ ー イ が 頭 を 下 げた 。 b.列 車 が 来 た。す る と 、 〈 黒 い 死 神〉が ま た 姿 を 現 わ し た 。 わたしたちはドアがあいてからふたつ数えてターンス タ イ ル を 抜 け た。三 つ 数 え な か っ たの が さ い わ い で 、数 え て い た ら 乗 りそ こ な っ た だ ろ う 。じ っ さ い 、車 掌 は わ 政 治 大 たしたちが乗りかけたときにドアをしめるところだっ た。 立 ( 以 上 、BCCWJ) ‧ 國 學 さ ら に、「 着 く 」 が カ ケ ル 構 文 で 用い ら れ た 例 を 挙 げ る。 ‧ ( 125) そ れ か ら は 列 車 は 、 各 地 ど こ に で も あ り そ う な 開 放 感 の あ る谷底平野を走り、水田ばかりだった。海岸こそはリアス y Nat 気 味 だ が、平 地 は 乏 し い わ け で は ない よ う で 、厳し く な く 、 sit 安堵感があった。そういう風景の中、十村に着きかけた。 er io 乾 い た 自 動 の 女声 に て、「 と む ら 。と む ら で す 」そ う ホ ー ム al n v i n C車h時 代 か ら あ る 正 確かに見え、汽 e n g c h i U統 な 駅 だ っ た 。 列 車 が Y だけの駅と同じ口調で案内していたが、窓の外には駅舎が 字 ポ イ ン ト を 渡り 、 新 し い 車 体 が 左右 に 揺 ら さ れ る 。 (http://frederic1no1tabi.net/eki/tomura_sta/tomura_sta .html) (125)の 場 合 、「 着 く 」直 前 の 時 点 を 段 階 的 に 捉 え 、そ の 時 点 へ 至 る 過 程 上 に あ る、ア ナ ウ ン ス が あ っ た り、駅 舎 が 見 え た り する と い う 出 来 事 ま で を も 「 着 きか け る 」 に 含 め て いる こ と が わ か る 。 次に、経路指向の移動動詞がカケル構文で用いられた例を見ていく 。 (126)a.お じ さ ん は 一 度 歩 き か けて か ら 、ま た 戻 り 、ポ ケ ッ ト か ら 財 布 を 取 り 出 し た 。「 誕 生 日 、 確 か 今 月 だ っ た よ ね 。 こ れ で 好 き な もの 買 い な さ い 」 80 第 4 章 到達動詞とカケル構文 b.彼 は 自 分 の 車 の ほ う に 歩 き か け 、ふ と 立 ち 止 ま っ た。危 な い と こ ろ で 、彼 は あ る こ と を 思 い出 し た の だ 。 c.ぼ く は そ う し て 、今 に な る と 奇 妙 に 懐 か し く そ し て信 じ 難 い よ う な 気 楽さ を も っ て 、ゆ っく り と 再 び エ ス カ レ ー タ ー の 方 へ 歩 きか け た も の だ っ た。と こ ろ が ち ょ う ど そ の 時 だ っ た ん だ 、誰 か の 手 が 、後 か ら 突 然 ぼ く の 肩 を 叩 いたのは。 治 政 え る 重 い 爆 発 音が つ づ け さ ま に 大鳴 り、織 田 の 先 手 に 弾 丸 楯を持立 っ て 走 りか け た 荒 子 た ち が、薙 ぎ は ら わ れ る よ う d.先 手 は 前 方 の 敵 勢 に 向 い 動 き はじ め た 。み ぞ お ちに こ た ( 以 上 、BCCWJ) ‧ ‧ 國 學 に倒れた。 こ れ ら の 例 は いず れ も 動 詞 の 表 す 動き が 始 ま っ た 後 の 段階 で あ り 、将 y Nat 変 相 の 解 釈 に なる 。こ こ で 注 目 す べき な の は 、い ずれ も ヲ 格 名 詞 句 が 現 sit れ て い な い と い う こ と で あ る 。 既 に 見 た よ う に 、「 食 べ る 」「 読 む 」「 見 er io る 」と い っ た 動 詞 で は 、ヲ 格 名 詞 句 に IT を と る 場 合 に のみ 、 ( 62)の LCS al で 表 示 さ れ 、IT 成 立 点 の 存 在 に よ り 、将 変 相 に 解 釈 さ れ得 る の で あ っ た。 n v i n で は 、 一 見 す ると 、 ヲ 格 名C 詞 句 ( 経路 句 ) が 存 在 し な いこ と か ら IT 成 he gchi U 立 点 を 持 た ず 、そ の た め 、将 変 相n に 解 釈 で き な い は ず の「 歩 く」「 走 る 」 と い っ た 動 詞 が、な ぜ 将 変 相 に 解 釈さ れ る の で あ ろ う か。 こ れ は 、こ の よ う な 動 詞 が 、移 動 動 詞 で あ り 、 基 本 的 に「 移 動 」の 意 味 を 含 意 す る か ら で は な い だ ろう か 。こ の「 移 動 」と い う の は 、 あ る 経 路 に 沿 っ て な さ れ る 移 動 の こ とで あ り 、 こ の 移 動 によ り 、 あ る 一 定 の 分量 ( 移 動 距 離) が 生 じ る 。こ の 一 定 の 分 量 が 存 在 し、そ れ に 沿 っ て あ る距 離 を 移 動 す る と い う こ と が 意識 さ れ る た め 、ヲ 格 名 詞 句 と の 共 起 な しに 、将 変 相 の 解 釈 が 生 じ る の だ と 考 え ら れ る 75 。 こ の こ と は 、 他 の 経 路 指 向 の 移 動 動 詞 例 え ば 、( 126b)「 自 分 の 車 の ほ う に 歩 き 」、( 126c)「 エ ス カ レ ー タ ー の 方 へ 歩 き 」の「 自 分 の 車 の ほ う に 」 「 エ ス カ レ ー タ ー の 方 へ 」は 、ど ち ら も 方 向 句 で あ り 、 一 見 経 路 句 は 存 在 し な い よ う で あ る 。し か し 、実 際 は 、 「自分の車までの距離|エ スカレーターまでの距離を歩く」というように、一定の距離を歩くことが想定さ 75 81 第 4 章 到達動詞とカケル構文 に も あ て は ま る 。 例 え ば 、「 帰 る 」 を 例 に 挙 げ る と 、( 127) か ら も わ か る よ う に 、カ ラ 格 、ヲ 格 、へ 格 、ニ 格( 着 点 句 )を と る 動 詞 で 、 カ ケル 構 文 で 用 い ら れて い る こ れ ら の 例 は 、い ず れ も「 帰 る途 中 」で あ る こ と を 意 味 し 、 将 変相 に 解 釈 さ れ る 。 ( 127)a.あ る 日 、 い つ も の よ う に 、く ら の 助 は チ ラ をつ れ て 、三 戸 谷 の ほ う へ 出か け て い き ま し た。と こ ろ が、そ の 日 に 限 っ て ヤ マ ド リど こ ろ か、ウ サ ギ 一 羽 も 、え も の に め ぐ り あ え ず 。( 中 略 ) ま だ 日 が あ る の に 三 戸 谷 か ら 帰 り か け ま し た 。三 戸 谷と 中 桐 村 の 中 ほ どに あ る 三 浦 谷 ま で き たときです。 政 治 大 (http://www.kihoku-shokokai.jp/town/aug.html) 立 b.お 菊 は独 り で 帰 れ る と 言 っ て 、桐 の 若 木 が と こ ろ どこ ろ ‧ 國 學 に 立 っ て い る 畑の 間 を 帰 り か け た 。 「母さん」 こ う お 菊 は 振 り向 い て 呼 ん だ。そ し て 母 と 顔 を 合 わ せ て ‧ 微 笑 ん だ 。母 は 乳 呑 児 を 負 っ た ま ま立 佇 ん で い た 。お 菊 y Nat は復た麦だの薩摩芋だのの作ってある平坦な耕地の間 ( 青 果 中 山『 芽 生』) er io sit を 帰 っ た が 、 二度 も 三 度 も 振 向 い て見 た 。 al n v i n c.権 吉 が、 「 どC う だ い 。お れ の 買 っ て 来 た ま ん じ ゅ う と 、お he gchi U 前 の 油 あ げ と を 替n え ま い か 。」 と い っ て 、 ま ん じ ゅ う の 包 み を さ し 出 すの で す 。見 ると 、ま ん じ ゅ う の 包 み は 大 き く て 重 た そ うで 、た く さ ん 入 っ てい そ う な の て 、内 心、 し め た と 思 い まし た . 2 人 は 一 服 し て 、 風 呂 敷 包 み を 取 り 替 え、 家 へ 帰 り か け ま し た。と こ ろ が 、後 ろ を つ い て 来 て い た 権 吉 が、 急 に い な く な っ てし ま っ た の で す 。 (http://www6.plala.or.jp/ebisunosato/kitunebakasi.htm ) d.建 久 年中 の 当 主 大 藤 内( 王藤 内 )隆 盛 は 平 家 の 家 人妹 尾 太郎兼康に味方したという疑いで源頼朝に捕らえられ れていると考えられる。 82 第 4 章 到達動詞とカケル構文 て 鎌 倉 に 拘 禁 され ま し た 。こ の時 、工 藤 祐 経 に よ っ て 無 罪を証明してもらい、大藤内は本領を安堵されました。 安 心 し て 備 前 に帰 り か け ま し た が、祐 経 に 礼 を 云 お う と 途 中 か ら 引 き 返し ま し た 。 (http://gos.but.jp/otonai.htm) た だ し、( 128)の よ う に、「 そ の 場 か ら 帰 る (去 る )」とい う 意 味 で 用 い ら れ た 場 合 は、移 動 す る 前 の 段 階と い う こ と に な り、移 動 距 離 が 生 じ な い た め 、 将 動相 の 解 釈 に な る 76 。 ( 128)a.北 海 道 旅 行 中 の 京 都 の 女性 3 人 グ ル ー プ が、お 土 産 を 買 治 政 過 ぎ て い た た め店 は 閉 店 し て お 大り 、あき ら め て 帰 り か け 立と き 、帰り 支 度 を す ま せ た私 服 の 従 業 員 が 店 内 た 。そ の う た め に 札 幌 の六 花 亭 ま で や っ て きた 。し か し夜 7 時 を ‧ 國 學 か ら 出 て 来 て 、困っ た 顔 で 店 の 外 にた た ず ん で いる 3 人 に声をかけた。 ( http://www.tanaka-consulting.jp/column/column004.html) ‧ y Nat b.“ 父 が ね 、 あ る 時 、 こ う い う 漢 字 を 書 け る か と 、 わ た し sit に 言 っ て ね、書 か せ た こ と が あ る んで す よ ” 思い 出 し al er io た こ と が あ る と言 っ て 、西 沢が そ の 話 を し た の は、麻 生 n が、席から、一度腰を浮かせて帰りかけた時であった。 Ch engchi i n U v ( BCCWJ) 以 上 、位置 変 化 を 表 す 動 詞 が カ ケ ル構 文 で 用 い ら れ る 例を 見 て き た が、 起 点 | 着 点 指 向の 移 動 動 詞 の 場 合 、い ず れ も LSC が BECOME で表 示 で き る 「 到 達 動 詞」 で あ り 、 B 成 立 点 を 持 つ た め 、 将 変 相に 解 釈 さ れ 、 一 方 、経 路 指 向の 移 動 動 詞 の 場 合 、そ の 経 路 指 向 と い う 性質 か ら 、移 動 し た 分 量 が 含 意 され 、そ れ が IT( こ の よ う な IT を 潜 在 的 な IT と 呼 ん で お く )と 見 な さ れ る と 考 え ら れ る 。そ の た め 、A 成 立 点 と IT 成 立 点 を 持 ち、 将 動 相 に も 将 変相 に も 解 釈 さ れ る ので あ る 。 こ こ で も 、「 歩 く」「 走 る 」 「 歩 く 」「 走 る 」 な ど も 、 以 下 の よ う な 文 脈 で は 、 将 動 相 の 解 釈 に な る と 考 え られるが、実例では、将動相に解釈できる例が見当たらなかった。 (ⅰ )凍 っ た 湖 の 上 を 歩 き か け て 、 思 い と ど ま っ た 。 (ⅱ )危 う く 違 う コ ー ス を 走 り か け た 。 76 83 第 4 章 到達動詞とカケル構文 と い っ た 動 詞 は 、 動 詞 自 体 は 活 動 動 詞 77 で あ る が 、 文 脈 に よ り 移 動 距 離 が 含 意 さ れ る こと に よ り 、 達 成 動 詞化 す る と し て お く 78 。 主 体 が 状 態 変 化を 表 す 動 詞 や、位 置 変 化 を 表 す 動 詞 で も起 点 | 着 点 指 向 の 移 動 動 詞 の場 合 、 い ず れ も LSC が BECOME で 表 示 で き る 「 到 達 動 詞 」 で あ り 、 B 成 立 点 を 持 つ た め 、カ ケ ル 構 文 に 用 い られ る と 、 瞬 間 変 化 か 段 階 変 化 かに 関 わ ら ず 、将 変 相 の 解 釈 が 可 能 で あ った 。こ の 場 合 も、 カ ケ ル が 、「 動 詞 の 表 す 動 き の 成 立 に は 至 ら な い 」 と い う 意 味 を 持 つ か ら こ そ 、 将 変 相 の 解 釈 に な る の で あ る 。 こ の こ と は 、「 雪 が 解 け か け て い る」「 花 が 咲 き か け て い る」に お い て 、雪 がど の 程 度(「 少 し 」な の か 「 半 分」な の か「 ほ と ん ど」な の か )解 け か け て い る のか 、花 が そ の 程 政 治 大 度 咲 き か け て いる の か が 、文 脈に 示 さ れ な い 限 り 、明 確 で な い こ と か ら もわかる。 立 さ ら に、「 到 達 動 詞 」 の 表 す 動 き の成 立 点 で あ る B 成 立 点 に 至 ら な い ‧ 國 學 と い う 解 釈 さ えで き れ ば 、瞬 間 的 な 変 化 を 段 階 的 に 捉 える こ と ま で も 可 能 に な る 。「 死 に か け る 」 や 「 着 き か け る 」 に お い て 、 実 際 に 「 死 ぬ 」 や「 着 く」直 前 の 時 点 で は な く 、そ の 時 点 へ 至 る 過 程 の部 分 を も 団 塊 と ‧ し て 含 み え る こと が 、 何 よ り の 証 左で あ る 。 y Nat こ こ で 、「 到 達 動 詞 」 及 び 経 路 指 向 の 移 動 動 詞 が カ ケ ル 構 文 で 用 い ら n al er io sit れ た 際 に 、 ど のよ う な 解 釈 に な る のか を 整 理 し て お く 79 。 Ch 状 態 変 化 : 将 変相 「到達動詞」が 位置変化 engchi i n U v 起 点 | 着 点 指 向 の 移 動 動詞 : 将 変 相 経 路 指 向 の 移 動動 詞 の 場 合 、 潜 在 的な IT( 達 成 動 詞 化): 将 変 相 北 原( 2006)で は 、「 走 る 」の 場 合 、「 拓 哉 が 走 る 」の よ う な 例 が 自 然 で あ る こ とから、このような経路指向動詞は基本的には移動体のみを選択する一項動詞で ある一方、 「 帰 る 」の よ う な 経 路 | 着 点 指 向 動 詞 は 、経 路 句 か 着 点 句 が 必 要 で あ る ことから、二項動詞であると述べている。 78 「 帰 る 」 の よ う な 動 詞 は 、経 路 句 か 着 点 句 か の い ず れ か が 必 須 で あ る こ と か ら 、 達成動詞に属すると考えられるが、ここではこれ以上深入りしない。 79 経 路 指 向 の 移 動 動 詞 の 場 合 、理 論 上 は 将 動 相 の 例 も 可 能 で あ る は ず が 、実 際 に は実例が見当たらなかったため、将変相の解釈のみ成立するとしてある。 77 84 第 5 章 達成動詞とカケル構文 第5章 達成動詞とカケル構文 こ こ ま で は 、活 動 動 詞、 「 到 達 動 詞 」及 び 活 動 動 詞 が 達 成動 詞 化 さ れ 、 そ れ ら が カ ケ ル構 文 で 用 い ら れ た 場合 を 見 て き た が、最 後 に 、達 成 動 詞 が カ ケ ル 構 文 で用 い ら れ る 場 合 に つい て 論 じ る 。達 成 動詞 は 、LCS か ら も わ か る よ う に、ACT と BECOME を 持 っ て い る た め 、カ ケ ル 構 文 で は 、 カ ケ ル が こ の 両者 に 作 用 し、将 動 相 と 将 変 相 の 解 釈 が 生じ る の で あ っ た。 以 下 、 先 行 研 究を 挙 げ る 。 第1節 政 治 大 達成動詞における先行研究 立 ・ 影 山 ( 1996) ‧ 國 學 影 山 (1996) は、 ま ず 、 達 成 動 詞 には kill, break, put と いっ た 位 置 変 ‧ 化・状 態 変 化 の 他 動 詞 が 通 常 該 当 し、こ れ ら は 主 語 の 何ら か の 行 為 に よ り 、目的 語 の 状 態 変 化 な い し 位 置 変化 が 引 き 起 こ さ れ るこ と を 意 味 す る x sit n al er io ( 129) y Nat と し、( 129)の LCS で 示 し てい る 80 。 Ch i n U v CONTROL [BECOME [y BE AT z]] [ EVENT x ACT(ON y) ] engchi さ ら に、( 129)を も と に 、達 成 動 詞 の と る 目 的 語 が 、 被 動 目 的 語 か 結 果 目 的 語 か で 、前 者 の 場 合 は ( 130a) の よ う な 状 態 変 化 動 詞 の LCS で 、 後 者 の 場 合 は (130b) の よ う な 作 成動 詞 の LCS で 表 示 し て い る 81 。 ( 130) a. break:x CONTROL [y BECOME [y BE AT z]] 影 山 ( 1996) で は 、 使 役 概 念 で あ る CAUSE の 代 わ り に 、 CONTROL と い う 概 念を新たに規定している。 81 影 山( 1996)に よ れ ば 、被 動 目 的 語 と は 、例 え ば「 イ モ を 焼 く 」の イ モ の よ う に 、焼 く 前 か ら も と も と 存 在 す る 対 象 の こ と で 、一 方 、結 果 目 的 語 と は 、 「ケーキ を焼く」のケーキのように、もともと存在せず、材料を混ぜ、それをオーブンに 入れて熱を加えて初めて出現するような対象のことである。 80 85 第 5 章 達成動詞とカケル構文 b. make:x CONTROL [ BECOME [y BE AT z]] ・ 中 村 ( 2000) 中 村( 2000)は 、達 成 動 詞 は、そ の 動 作 を 行 う と、あ る 結 果 が 得 ら れ る と い う 特 徴 を持 っ て い る と し 、例 えば draw a circle で は 、draw と い う 行 為 を 行 う 結 果と し て 円 が で き る こと を 表 す と 説 明 し てい る 。ま た、達 成 動 詞 と 到 達 動詞 は 同 じ 完 了 の ア スペ ク ト を 持 つ が、到 達 動 詞 は 結 果 が 瞬 時 に 得 ら れ ると い う 点 で 、達成 動 詞 と は 異 な っ て い ると し て い る 。例 と し て 、deliver a sermon, draw a circle, make a chair, paint a picture, recover from illness を 挙 げ て い る 。 ・ 伊 藤 ・ 杉 岡 ( 2002) 政 治 大 立 ‧ 國 學 伊 藤・杉 岡 ( 2002)は 、 達 成 動 詞 は、あ る 程 度 の 活 動 の結 果 、何 ら か の 結 果 状 態 に 至る と い う 意 味 を 持 ち、こ の 点 で 、終 結 点 を 持 た な い 活 動 動詞とは異なるとしている。また、被動作主目的語が働きかけを受け、 ‧ 状 態 変 化・位置 変 化 を 被 る 点 で も、活 動 動 詞 と は 異 な ると し て い る 。さ ら に 、状 態 変化・位 置 変 化 の 使 役 動 詞( 他 動 詞 の break や sink、put な ど)、 y Nat sit 作 成 動 詞( build, write など )、所 有 権 の 変 化 を 表 す 授 与 動詞( give, provide n al er io な ど ) が こ れ にあ た る と 述 べ て い る。 ・ 影 山 ( 2008) Ch engchi i n U v 影 山( 2008)は 、達 成 動 詞 に つ い て、活 動( あ る い は 過程 )と 到 達 を 組 み 合 わ せ た 複 合 的 な 事 象 と 見 な せ る と し 、「 ホ ッ ト ケ ー キ を 焼 く 」 と いう例を挙げ、材料を混ぜ合わせて加熱するという活動ないし過程と、 ホ ッ ト ケ ー キ が出 来 上 が る と い う 結果( 到 達 )を 含 んで い て 、開 始 点 と 終 了 点 が 明 瞭 だと し 、 以 下 の よ う に図 示 し て い る 。 <達 成 >と 時 間 の 流 れ 始まり ||||||||| ・( 終 わ り ) ま た 、「 母 が ホ ッ ト ケ ー キ を 作 っ た 」 と い う 例 を 、 材 料 を か き 混 ぜ る と い う 継 続 的 な 動 作 ( ACT ON) が ま ず あ り 、 そ の 後 、 フ ラ イ パ ン で 加 86 第 5 章 達成動詞とカケル構文 熱 す る と 変 化( BECOME)が 起 こ り 、最 終 的 に ホ ッ ト ケー キ と い う 物 体 が 存 在 ( BE) す る と し 、 こ の 行 為連 鎖 を LCS で 表し た 達 成 を、( 131) の よ う に 示 し てい る 82 。 ( 131) 達 成 の LCS [[ ]x ACT ON-[ ]w] CAUSE [BECOME [ ]y BE AT- [ ]z ]] (x が w に 働 き か け る こと に よ っ て、 変 化 が 起 こ り 、 最終 的 に z に y が存在する) ま た 、LCS の 最 大 範 囲 は 、前章 1.1 で 既 に 見 た 。た だ、こ の LCS を 使 う こ と に よ り 、個 々 の 動 詞の LCS が ど の よ う に 表 示 でき る か ま で は 、詳 し く 説 明 さ れ てい な い 。 立 ・ 吉 田 ( 2012) 政 治 大 ‧ 國 學 吉 田( 2012)は 、達 成 動 詞 は、金 田 一 の 分 類 に は な い が、「 瞬 間 動 詞」 の 一 部 を 含 む とし 、意 図 的 に で き る動 作 で 、継 続 し た動 作 の 結 果 、必 ず ‧ それが完了する(到達点に至る)ことまで含むと説明している。また、 y Nat 「 ピ ザ を 一 切 れ 食 べ る 」「 駅 ま で 走 る 」 な ど 、 目 的 語 が 量 化 さ れ た 活 動 sit 動 詞 も 含 ま れ、有 界 性 を 持 つ 非 能 格動 詞 と 対 格 動 詞 が、達 成 動 詞 に 相 当 al er io す る と し て い る。例 と し て、teach, kill, break( 他動 詞 ), run to the station, n eat a piece of pizza, make a chair( 作 成 動 詞 の make), recover from illness, Ch draw a circle, deliver a sermon を 挙 げて い る engchi v i n 。 た だ し 、こ の 達 成 動 詞 の U 83 分 類 に つ い て は、変 化 結 果 を 伴 う 動詞 に は 到 達 動 詞 と 達成 動 詞 が あ る が、 意 志 を 持 っ て なさ れ る 場 合 は 達 成 動詞 で 、非 意志 性 の 動 詞 は 到 達 動 詞 で あ る と 指 摘 し、達 成 動 詞 の 例 で ある teach, kill, break な ど が 、い ずれ も 行 為 の 結 果 、対 象( ま た は 動 作 の 相 手 )が 変 化 し て い る こと か ら 、達 成 動 詞 と は 動 作 の 結果 の 変 化 を 伴 う 動 詞で あ る と 位 置 づ け てい る 。 影 山 ( 2008) の こ の LCS は 、 BECOME を 瞬 間 的 な 変 化 を 表 す と す る 説 明 か ら で は 矛 盾 が あ ろ う 。 と い う の も 、 (131)の 場 合 、「 材 料 を か き 混 ぜ る 」「 加 熱 す る 」 という働きかけとともに、ホットケーキができるまでの変化も段階的に進むはず である。すなわち、ホットケーキは段階的な変化とともに出来上がっていくので あ る が 、 BECOME を 瞬 間 的 と す る こ の LCS で は 、 そ の こ と を 説 明 仕 切 れ な い と 思われる。 83 こ こ で の 吉 田 ( 2012) の 例 も 、 高 見 ・ 久 野 ( 2002) 、 長 谷 川 ( 2001) に よ る 。 82 87 第 5 章 達成動詞とカケル構文 以 上 、先 行 研 究 を 概 観 し た 。ま ず 、達 成 動 詞 の 定 義 で あ る が 、こ れ ら の 先 行 研 究 か らも わ か る よ う に、研 究 者 に よ り そ の 定 義に 違 い が 見 ら れ る よ う で あ る。 本 稿 で は 、第 2 章 で 既 に 述 べ た よ う に、 影 山( 2008)の LCS を ま と め た 表 3 か ら 、LCS に ACT と BECOME を 持つ も の を 達 成 動 詞 と す る 。こ う す る こ と で 、動詞 の 表 す 動 き が 成 立 す るま で の 時 間 幅 の 有 無 や 動 詞 の 意志 性 の 有 無 で、到 達 動 詞 か 達 成 動 詞 か を決 定 す る 必 要 が な く な る の で ある 。さ ら に、影 山( 2008)で は 、 LCS の 最 大 範 囲 か ら も わ か る よ う に 、 BECOME を 瞬 間 的 変 化 と 定 義 し て い る が 、 本 稿 で は 、 BECOME が 瞬 間 的 変 化 も 段 階 的 変化 も 表 せ る と 定 義 する 。 こ れ に よ り、 影 山 (2008) のよ う に 、 MOVE と BECOME を 別 々 に 設 定 し な く て も よ く な る の で あ る。 治 政 を も と に 、状態 変 化・位 置 変 化 の使 役 動 詞 の タ 大イ プ 、作 成 動 詞 の タ イ プ に 分 け て お く 。前 者 の 立 LCS を ( 132a)、 後 者 の LCS を (132b) に 示 す 。 次 に 、達 成 動 詞 の 分 類 で あ る が 、影 山( 1996・2008)、伊 藤・杉 岡( 2002) 84 ‧ 國 學 所 有 権 の 変 化 を表 す 授 与 動 詞 は ( 132a) に 含 め て お く 85 。 ]x ACT ON-[ b. [[ ]x ACT ] CAUSE [BECOME[ (132) a. [[ ]y] CAUSE [BECOME[ ]y BE AT- [ ]z]] ‧ sit y Nat ]y BE AT [ IN WORLD]]] 第2節 al n れ た 例 を 見 て いく 。 er io 以 下 、こ の 順番 で 、こ れ ら の 動 詞 のタ イ プ 別 に 、カ ケル 構 文 で 用 い ら Ch engchi カケル構文に用いられた例 i n U v 本 稿 の 理 論 で は 、達 成 動 詞は A 成 立 点 と B 成立 点 を 持 つ た め 、カ ケ ル 構 文 に 用 い ら れる と 、将 動相 と 将 変 相 の い ず れ に も 解 釈で き る と い う こ と で あ っ た が、実 際 に 用 例 を 見 る と、 動 詞 の タ イ プ に より 、い ず れ の 解 伊 藤 ・ 杉 岡 (2002)の LCS を も と に 一 部 修 正 。 伊 藤 ・ 杉 岡 (2002)で は 、 状 態 変 化 、 位 置 変 化 、 所 有 権 の 変 化 を 引 き 起 こ す 動 詞 の LCS を 、 そ れ ぞ れ 以 下 の よ う に 示 し て い る 。 (ⅰ )break:[[x ACT-ON y] CAUSE[BECOME [y BE AT [ STATE BROKEN]]]] (ⅱ )put: :[[x ACT-ON y] CAUSE[BECOME [y BE AT [ LOC IN/ ON z ]]]] (ⅲ )give: :[[x ACT-ON y] CAUSE[BECOME [y BE AT [ POSS z]]]] こ れ ら の LCS で 異 な る の は 、BE AT 以 降 の 変 項 の 部 分 の み で あ る の で 、ま と め て ( 132a) の LCS で 示 し て お く 。 84 85 88 第 5 章 達成動詞とカケル構文 釈 も 成 り 立 つ もの も あ れ ば 、一方 の 解 釈 が 優 先 さ れ る もの 、一 方 の 解 釈 し か 成 り 立 た ない も の も あ る よ う であ る 。 2.1 状 態 変 化 ・ 位 置 変 化 の 使 役 動 詞 の タ イ プ こ こ で は 、対象 に 状 態 変 化・位 置 変 化 を 起 こ さ せ る 動 詞の タ イ プ か ら 見 て い く 。ま ず 、状 態 変 化 の 使 役 動詞 で あ る「 開 け る 」を カ ケ ル 構 文 で 用 い た( 133)で あ る が、 ( 133a)は 将 動 相 、(133b)は 将 変 相 に 解 釈 で き る。 ( 133) a. 松 尾 と 河 田 は 、 一 日中 車 の 中 に い て 、 苛苛 を 募 ら せ て い 治 政 二 人 は ど ち ら から と も な く ド ア 大を 開け か け た 。大 橋 は 彼 立き 、人 混 み を 掻 き 分 け 後 に付 い て く る ク ル ー や、 らに気付 る。大橋を見つけたのを機会に、車から出ることにし、 ‧ 國 學 チ ー フ の 西 田 をつ か ま え 、事 情 を 説 明 し 、外 海 を 連 れ て 一 刻 も 早 く 長 田港 に 急 ぐ よ う に 告 げた 。大 橋 自 信 は 河 田 や 松 尾 を 相 手 にす る こ と に し た 。佐 伯 工 務 店 の 車 は 、棚 ‧ 橋 が 運 転 し て いる 。 後 部 座 席 の う ち 、歩 道 に 近 い 方 に松 y Nat 尾 が 座 っ て お り 、反 対 側 に 河 田 が 座っ て い る 。歩 道 は 人 sit や 物 で 身 動 き が取 り に く い。そ の た め 松 尾 は 車 の ド ア を al er io 開 け る こ と が でき な い。そ れ で も 二 人 は 大 橋 に 言 い が か n り を つ け 、一 揉 め す る つ も り で 、盛 ん に ド ア を 開 け よう とした。 Ch engchi i n U v ( 平 利 朝『 拾 っ た エ ー ス』) b.康 楽 は 閉 ま っ て い た 。が た が た 表 戸 を 揺す ぶ っ て い る と、 弟 が 出 て 来 た。 半 分 、戸 を 開 け か け て 、 弟 は ぼ く に 気 が つ き、「 あ れ 、 兄 ち ゃ ん …」 と 、 照 れ 臭 そ う に 笑 っ た 。 ( BCCWJ) ( 133a) は 「 大 橋 を 見 つ け 」 て 、 ド ア を 開 け よ う と し た が 、「 歩 道 は 人 や 物 で 身 動 き が 取 り に く 」 く 、「 車 の ド ア を 開 け る こ と が で き な い 」 と あ る こ と か ら 、「 開 け る 」 に は 至 っ て な い た め 、 将 動 相 の 解 釈 、 (133b) は「 半 分 」とあ る こ と か ら 、 半 分開 い て い る が 、完 全に「 開 く 」に は 至 っていないという意味で、将変相の解釈になることがわかる。続いて、 89 第 5 章 達成動詞とカケル構文 ( 134)「 壊 し かけ る 」、( 135)「 割 りか け る 」 の 例 で あ る。 ( 134) a. 建 物 の 老 朽 化 に と も な って 煙 突 を 壊 し か け た 時 2000 人 も の 署 名 が 集 まり 感 激 し た 主 人 は 営業 を 再 開 し た 。 ( http://www.sansyo-housing.co.jp/realestatemv7/html/house/ index4.html) b. サ ツ キ が 壊 し か けた 柱 は お 父 さ ん が 針金 で 固 定 し て た ( http://www.favmedia.me/medias/493285196599271424 ) ( 135) a.「 6 年 間 で 先 生 に 一 番 怒 ら れ た の は … 、 階 段 に あ 政 治 大 るステンドグラスを割りかけたとき。皆でステン ドグラスの前で正座をさせられて、よくよくそれ 立 を 見 て い た ら 、“ 割 ら な く て よ か っ た な ぁ ” と 、 反 ‧ 國 學 省したのを覚えています。もし割ってしまってい た ら 、 ど う な っ て い た の か な ァ … 。」 ( http://www.berry.co.jp/yukai/antokinokioku/detail_sp.php?i ‧ d=15932) y Nat sit b. 西 側 の 堀 切 に は 、 途 中 ま で 割 りか け た 巨 石 も あ る 。 al n htm) er io ( http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Lake/4393/gihu/tokisi. Ch engchi i n U v ( 134a) は 壊 す 前 で あ る か ら 将 動 相 、( 134b) は 「 壊 し か け た 柱 を 固 定 し 」た と あり 、少 し 壊 し て し ま っ た柱 を 修 理 し た と い う意 味 に と れ る た め 、 将 変 相 の 解 釈 も な る 。 ま た 、( 135a) は 「 ス テ ン ド グ ラ ス を 割 り か け た 」 と あ る が 、「 割 ら な く て よ か っ た 」 と あ る こ と か ら 、 将 動 相 の 解 釈 に 、( 135b) は 「 途 中 ま で 切 り か け た 」 と あ る た め 、 将 変 相 の 解 釈 に な る 。 状 態 変 化 の 使 役 動 詞 と し て 、 最 後 に 、( 136)「 消 し か け る 」 の 例 を挙げる。 (136) a. ロ ウ ソ ク の 炎 を 消 すと い う こ と は 、 仏 壇 以 外 に は め っ た に な い の で、炎 を 見 た ら 手 で 消 す のが 普 通 に な っ て い ま し た 。先日 は 子 供 ま で 、自 分の 誕 生 ケ ー キ の ロ ウ ソ ク を 手 で 消 し か け た の で す。あ わ て て そ の お か し さ に 気 が つ 90 第 5 章 達成動詞とカケル構文 き 、 息 で 消 し 直し ま し た 。 ( 土 岐 佳 子『 悲 し み の 中 の 静 か な 笑い 』) b.第 二 の ヒ ン ト は 大 弓の 鉄 矢 で す よ 。ごら ん の と お り 、砥 石 で 磨 き あ げ て、立 派 な 凶 器 に 作 って あ る 。誰 が考 え て も 、砥 石 をか け た の は 犯 人 だ と 思 われ る 。と こ ろ が、そ れ と 同 じ 手 が、カ ル カ ソ ン ヌ み や げと 彫 っ た 文 字 を 消 し か け て い る 。事 実 は 、三 字 だ けは 消 し て あ る が 、残り の 文 字 は そ の ま まに し て あ る 。 ( ア ガ サ・ク リ ス テ ィ 他『 乱 歩 の 古 典 ミ ス テ リ 10( 上 )』) ( 136a) は 「 ロ ウソ ク を 手 で 消 し かけ た 」 と あ る こと か ら 、 将 動 相 の 解 釈 に、( 136b)で は「 文 字を 消 し か け て い る 」と あ る が 、「 三 字 だ け は 消 政 治 大 え ら れ 、 将 変 相の 解 釈 に 立な る 。 し て あ る が 、残 り の 文 字 は そ の ま ま」と あ る た め 、消す 途 中 の 意 味 に 捉 ‧ 國 學 次 に 、位 置 変 化 の 使 役 動 詞 を 見 て みよ う 。( 137)は「 置 き か け る 」の 例 、( 138) は 「落 と し か け る 」 の 例で あ る 。 ‧ (137)課 長 は 少 し 周 章 て て 茶 碗 を下 に 置 き か け た が、机 に 貼 り つ Nat y め て い る 緑 色 の羅 紗 の 上 に 置 き か けて 急 に そ れ を や め 、大 ( 海 野 十 三『 鞄 ら し く な い 鞄』) n al er io sit 湯 呑 は 硯 箱 の 蓋の 上 に 置 か れ た 。 i n U v ( 138)「 よ く も ま あ 銀 行 に は金 が あ る も ん だ な」「 そ の 三 百 億 の 不 Ch engchi 正 融 資 の う ち、タ カ ナ ミ・ス ト ア に 三 十 数 億 入 っ て い ると … 」「 ゲ ッ ! 」 思 わ ず 土 佐 焼 酎 の コ ッ プ を 床 に 落 と し か け た。「 親 父 さ ん は 、何 も 知 ら な か った の か」「 二 課 が 内 定 に 入 っ て 、親 父は 仰 天 し た 。冗 談 はよ し て く れ と 捜 査 員 に泣 き つ い た そ う だ 。天 か ら 降 っ た か 、地 か ら 湧 い た か …」 「当 た り 前 だ 。親父 さ ん が 、そ ん な バカ な こ と を す る は ず が な い。帳簿をすべて見せればいいだろう。はい、この通り、 不 正 な 金 は 一 銭た り と も あ り ま せ んと ね 。 ( BCCWJ) ( 137) の 場 合 、「 茶 碗 を 下 に 置 き か け た が 」「 緑 色 の 羅 紗 の 上 に 置 き か け て 急 に そ れ をや め 」と あ る こと か ら 、茶 碗 の 位 置 変 化が 達 成 さ れ て い 91 第 5 章 達成動詞とカケル構文 な い こ と が わ かる が 、こ の 場 合、将 変 相 よ り も 将 動 相 の解 釈 が 優 先 さ れ る の で は な い だ ろ う か 86 。( 138) の 場 合 も 同 様 に 、 コ ッ プ を 手 に 持 っ た 状 態 か ら 、「 床 に 落 と し か け た 」 と あ る こ と か ら 、 コ ッ プ が 手 か ら 離 れ る と い う 位 置 変化 が 達 成 さ れ て い ない こ と は わ か る が、将 動 相 の 解 釈 が 優 先 さ れ そ う であ る 。こ の よ うに 、位 置 変 化 の 使 役 動 詞が カ ケ ル 構 文 で 用いられた場合、将動相の解釈が優先される傾向にあるようであるが、 こ れ は 、そ の動 詞 の 表 す 動 き に お いて 、対 象 へ の 働 き かけ と 、そ の 対 象 の 変 化 達 成 が 同時 且 つ 一 瞬 の う ち に 成 立 し て し ま う た め、対 象 の 変 化 が 段 階 的 で あ る とは 捉 え ら れ な い た めで あ る と 考 え ら れ る 87 。 最 後 に、所 有 権 の 変 化 を 表 す タ イ プで あ る(139) 「 買 い か け る」、 ( 140) 「 く れ か け る」、( 141)「 渡 し か け る 」 の 例 を 挙 げ る 。 治 政 ( 139)い つ も の ク セ で 仕 事 帰 り にコ ン ビ大 ニ で チ ョ コ 買い か け た わ。 立っ て 明 日 バ レ ン タ イ ン で し ょ 。 ま る で チ ョ コ 貰 あぶな~だ (http://ameblo.jp/vette2011/entry-11989495487.html) ‧ ‧ 國 學 え へ ん 人 み た いや ん か 。 い ま 買 っ たら 。 ( 140) 遠 坂 が 金 の 延 べ 棒 く れ か けた の に 邪 魔 さ れ て くや し い … 。 (nohira.web.fc2.com/game/gpm/gpmdiary4.htm ) sit y Nat io er ( 141)「 私 は こう い う 者 だ が … …」そ う 言 っ て 相 手 に名 刺 を 渡 し か け た と き 、私 は 名 詞 を ま ち が え た こと に 気 づ い た 。そ の 名 刺 n al i n U v に は 私 の 職 業 が書 い て あ っ た の だ 。こ の 家 の 使 用 人 に 、主 人 Ch engchi が私立探偵とつきあっているなどということを知られては ま ず い 。 私 は その 名 刺 を オ ー バ ー のポ ケ ッ ト に つ っ こ み… ( レ オ・マ レ『 ミ ラ ボ ー 橋 に 消 え た 男』) ( 139) ~(141)は 、い ずれ も 将 動 相 の 解 釈 が 優 先 さ れ、 将 変 相 の 解 釈 が 困 難 に な る と考 え ら れ る。こ れ ら の 例 は い ず れ も「 買 う 」 「くれる」 「渡 た だ し 、実 際 は 、そ の 動 き と と も に 、茶 碗 の 位 置 も 下 に 向 か っ て 変 化 し て い る ことから、将変相に解釈できないとは言いきれないであろう。 87 ( ⅰ ) の よ う に 、 コ ッ プ が 手 か ら 離 れ た 後 で あ る と い う 文 脈 で あ れ ば 、 将 変 相 の解釈が成り立つ。 (ⅰ)太郎が床に落としかけた土佐焼酎のコップを、次郎がすんでのところで キャッチしてくれた。 こ れ は 、コ ッ プ が 床 に 落 ち る ま で の 位 置 変 化 が 、段 階 的 に 捉 え ら れ る た め で あ る 。 86 92 第 5 章 達成動詞とカケル構文 す 」と い う 動 き が 成 立 す る に 至 ら なか っ た 、す な わ ち 、所 有 権 の 変 化 が 達 成 さ れ な か った こ と を 意 味 し て いる 。 で は 、な ぜ将 変 相 の 解 釈 が 困 難 に な る か と い うと 、こ れ ら の 動 詞 がカ ケ ル 構 文 で 用 い られ る と 、将 動 相 の 場 合、所 有 権 が 変 化 す る 以 前 の 段階(「買 う 」な ら 代 金 を 支 払 う 前、 「く れ る 」 な ら 手 に 取 る 前 、「 渡 す 」 な ら 相 手 が 受 け 取 る 前 の 段 階 ) を 動 き と し て 捉 え ら れる た め 、解 釈 が 容易 に な る 一 方 、 将 変相 の 場 合 、所 有 権 の 変 化 が 、対象 が 実 際 に 状 態 変 化・位 置 変 化 を 表 す わ けで は な く 、 変 化 と し て 捉 え に くい た め 、 解 釈 が 難 しく な る か ら で あ る と考 え ら れ る 。 こ の よ う に 、状 態 変 化・位 置 変 化の 使 役 動 詞 の タ イ プ にお い て は 、動 詞 が 状 態 変 化 を表 す 場 合 、将 動 相 と 将 変 相 の ど ち ら の 解釈 も 成 り 立 つ が、 位 置 変 化 や 所 有権 の 変 化 を 表 す 場 合 、そ の 動 詞 の 意 味 によ り 、将 変 相 の 政 治 大 解 釈 よ り も 将 動相 の 解 釈 が 優 先 さ れる の で あ る 。 立 2.2 作 成 動 詞 の タ イ プ ‧ 國 學 こ こ で 扱 う 作 成動 詞 の タ イ プ と 2.1 で 扱 っ た 状 態 変 化 ・位 置 変 化 の 使 役 動 詞 の タ イ プと の 違 い は、そ の 対 象 が 結 果 目 的 語 か 被動 目 的 語 か と い ‧ う こ と で あ る が、対 象 が 、動 詞 の表 す 動 き の 結 果 現 れ るも の な の か 、も y Nat と も と 存 在 す るも の な の か と い う 違い は 、作 成動 詞 が カ ケ ル 構 文 で 用 い sit ら れ た 際 に 、 顕 著 に 現 れ る 。 以 下 、( 142)「 作 り か け る 」、( 143)「 作 り er io か け る」、( 144)「 建 て か け る」、( 145)「 書 き か け る 」 の例 を 挙 げ る 。 al n v i n ( 142) a. 敵 を 前 に しC て 川 向 こ う に城 を 築 く こ と は む ずか し い。 空 he gchi U 身 で 渡 河 す る のもn 大 変 な の に 、建 築 資 材 を も っ て い か ね ばならないのだから、困難は倍加する。作りかけると、 美 濃 勢 は こ ろ あい を み て ぶ っ こ わ しに や っ て く る 。 ( 松 永 義 弘・磯 貝 勝 太 郎『 合 戦:歴 史 の 流 れ を 変 え た 10 の ド ラ マ』) b.先 程 カ レー を 作 り か け て 、野 菜( 肉 は 未 投 入 )を 炒 め た 所 で お 水 の ス ト ッ ク が な い こ と に 気 付 き ま し た … (´Д `)( 泣 )。 ( http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13 62225653) 93 第 5 章 達成動詞とカケル構文 ( 143) a. 天 皇 は ま ず 長 岡 京 を 造 りか け た ん だ け ど、 計 画 の 推 進 者 が 暗 殺 さ れ た りし て 、も っ と 北 の 京 都 を 都 と す る こ と に した。 b.他 方 、フ ラ ン ケ ンシ ュ タ イ ン は 、怪 物に 請 わ れ て 女 の 伴 侶 を 造 り か け た も の の、途 中 で そ れ を 破 壊 し て し ま う ば か り か 、 怪 物 にい か な る 救 い も 与 えよ う と し な い 。 ( BCCWJ) ( 144) a. あ な た 方 の う ち で 、 誰 か が 邸 宅 ( 新 改 訳 は 「 塔 」) を 建 て よ う と 思 う なら 、そ れ を 仕 上 げ るの に 足 り る だ け の 金 治 政 費 用 を 計 算 し ない だ ろ う か。そ 大う し な い と、土 台 を す え 立完 成 する こ と が で き ず、見 て い る 皆 の 人 が、『 あ ただけで を も っ て い る かど う か を 見 る た め に、ま ず、座 っ て そ の ‧ 國 あ ざ 笑 う よ う にな ろ う 。 學 の 人 は 建 て か けた が 、仕 上 げ が 出 来 な か っ た』と 言 っ て ‧ (http://www.rock.sannet.ne.jp/hg31cc/parable.html/para13.ht sit y Nat ml) er io b.こ こ ま で進 ん で お ら ぬ 世 を 買 い被 っ て 、一 足 飛 び に 田 舎 al へ 行 っ た の は、地 な ら し を せ ぬ 地 面の 上 へ 丈 夫 な 家 を 建 n v i n て よ う と あC せ るも の だ 。建 て か け る が 早 い か 、風 と 云 い he gchi U 雨 と 云 う 曲 者 が来n て壊してしまう。 ( 夏 目漱 石 『 漱 石 ・ 全 小 説』) ( 145) a.「中 学 生 の 頃 か ら 本 が 好き で 、 18 歳 の 時 に 小 説 を 書 き か け た こ と が あ るん で す 。頭 で 想 像 し た ら も の す ご い の が 浮 か ん で き て 、 "壮 大 な 話 に な り そ う や "と 思 っ て 実 際 に 書 い て み た ら 、 10 枚 し か 書 け な かっ た 。 (http://news.yoshimoto.co.jp/2015/03/entry36057.php ) b.マ ル ロ ー は 第二 次 大 戦 中 の 自 らの レ ジ ス タ ン ス 運 動の 体 験 を 盛 り 込 ん だ長 篇 小 説 を 1944 年 か ら 1945 年 に か け て 書 き か け た が 、そ の 後 の 政 治 活 動 や 、美 術 評 論 の 執 筆な 94 第 5 章 達成動詞とカケル構文 どで中断した。 (http://monsieurk.exblog.jp/19954939/ ) ( 142) ~( 145) は 、い ずれ も 将 変 相 の 解 釈 し か で き ない で あ ろ う。こ れ ら の 例 か ら、作 成 動 詞 の タ イ プ がカ ケ ル 構 文 で 用 い られ る と 、基 本 的 に 、将 変 相 の解 釈 に な る と い う こ とが わ か る 。こ の 理由 に つ い て は 、結 果 目 的 語 が か かわ っ て い る と 考 え られ る 。 こ こ で 、ま ず、同 じ 目 的 語 を 用 い ても 、そ の 目 的 語 と 共起 す る 動 詞 が 、 活動動詞か作成動詞かで、被動目的語か結果目的語になることにより、 文 の 解 釈 が 異 なる 例 を 見 て み よ う。(146a) は 達 成 動 詞 化 し た 活 動 動 詞、 ( 146b)は 作成 動 詞 タ イ プ の 達 成 動詞 で あ る が 、ど ちら も 目 的 語 は「 ケ ーキ」である。 立 政 治 大 ( 146) a. 太 郎 は ケ ー キ を 食 べ た 。 ‧ 國 學 b.太 郎 は ケ ー キ を 作 った 。 と こ ろ が 、( 146a) で は 、 第 三 章 で 既 に 見 た よ う に 、 太 郎 が ケ ー キ を 食 ‧ べ 始 め た 解 釈 も 、 食 べ 終 わ っ た 解 釈 も で き る の に 対 し 、( 146b) で は 、 y Nat 太 郎 が ケ ー キ を 作 り 終 わ っ た 解 釈 し か で き な い で あ ろ う 。( 146a) の 場 sit 合 、ケ ー キは 食 べ る 前 か ら 存 在 す るた め 、食 べ 始 める 解 釈 も 食 べ 終 わ る er io 解 釈 も 可 能 で ある 一 方 、後 者 の 場合 、作 り 始 め る 前 は、ケ ー キ が 存 在 せ al ず 、作 り 終わ っ て 初 め て ケ ー キ が 出来 上 が る た め 、作 り 始 め た 解 釈 が 不 n v i n 適 格 に な る と 考え ら れ る 。C こ の よう に 、後 者 に お い て、ケ ー キ を 作 り 終 he i U わ っ た 解 釈 し か で き な く な る の はn、g前c者hの ケ ー キ が 被 動 目 的 語 で あ り 、 後 者 の ケ ー キ が結 果 目 的 語 で あ る ため で あ る 88 。 ( 147) a. 太 郎 は ケ ー キ を 食 べ か けた 。 b. 太 郎 は ケ ー キ を 作 り か け た 。 従 っ て、( 146) を カ ケ ル 構 文 に し た( 147a) は 将 動 相 ・ 将 変 相 の い ず れ に も 解 釈 で き る 一 方 、( 147b) は 、 ケ ー キ を 作 っ て い る 途 中 で あ る と い う 将 変 相 の 解 釈の み 成 り 立 つ の で ある 。 次 に 、同じ 動 詞 を 用 い て も 、被 動 目 的 語 か 結 果 目 的 語 かで 、文 の 解 釈 88 同 じ よ う な 例 に 、「 太 郎 は 『 旧 正 月 の 過 ご し 方 』 を 読 ん だ | 書 い た 」 が あ る 。 95 第 5 章 達成動詞とカケル構文 が 変 わ っ て く る例 を 挙 げ る。( 148)は ど ち ら も「 折 る 」を 使 っ た 例 で あ る が、( 148a) は 被 動 目 的 語 と の 共起 に よ り 状 態 変 化 の使 役 動 詞 と し て、 ( 148b) は 結 果目 的 語 の 共 起 に よ り 作 成 動 詞 と し て 機 能し て い る 89 。 (148) a. 紙 を 折 っ た 。 b.鶴 を 折 っ た 。 ( 148) も 、( 146) と 同 じ 理 由 で、( 148a) は 紙を 折 り 始 め た 解 釈 も 、紙 を 折 り 終 わ っ た 解 釈 も 可 能 で あ る の に 対 し て 、( 148b) は 、 鶴 を 折 り 終 わ っ た 解 釈 の み可 能 と な っ て い る 。 治 政 b.鶴 を 折 り か け た 。 大 立 ( 149) a. 紙 を 折 り か け た 。 ‧ 國 學 こ の ( 148) を カ ケ ル 構 文 で 用 い た ( 149) で も 、( 149a) は 将 動 相 ・ 将 変 相 の い ず れ に も 解 釈 で き る 一 方 、( 147b) は 鶴 を 折 っ て い る 途 中 で あ る と い う 将 変 相の 解 釈 の み 成 り 立 つの で あ る 。 ‧ こ れ ら の こ と から 、作 成 動 詞 の タ イプ は 、対 象 が 結 果目 的 語 で あ る こ sit y Nat と に よ り 、 将 変相 の 解 釈 の み 可 能 にな る と い う こ と が わか る 。 er io 以 上 、達 成 動詞 が カ ケ ル 構 文 に 用 いら れ た 例 を 見 て き たが 、達 成 動 詞 al の う ち 、状 態変 化・位 置 変 化 の 使 役 動 詞 の タ イ プ は 、状 態 変 化 を 表 す 動 n v i n 詞 の 場 合 は、将 動 相・将 変 相 Cのhい ず れ に も 解 釈U可 能 で ある が 、位置 変 化・ e n g cのh動i詞 の 意 味 に より 、将 動 相 に 解 所 有 権 の 変 化 を表 す 動 詞 の 場 合 は、そ 釈 さ れ や す く なる 。一 方 、作 成 動詞 の タ イ プ は 、結 果目 的 語 と の 共 起 か ら 、 将 変 相 の 解釈 に な る の で あ る 。 ま た 、 既 に 述 べた よ う に 、 達 成 動 詞の 場 合 、 LCS に ACT と BECOME を 持 つ こ と に より 、 カ ケ ル 構 文 で は、 カ ケ ル が こ の 両 者に 作 用 し 、 A 成 立 点 が 焦 点 化 され れ ば 、 将 動 相 の 解釈 に 、 B 成 立 点 が 焦 点 化 さ れ れ ば 、 将 変 相 の 解 釈 にな る の で あ る が、カ ケ ル が「 動 詞 の表 す 動 き の 成 立 に は 至らない」という意味を持つ限り、その成立点に到達する前 であれば、 ど の 段 階 で も かま わ な い と い う こ と は 、達 成 動 詞 に お いて も 変 わ り は な 井 本 ( 2009) で は 、 状 態 変 化 動 詞 と 生 産 動 詞 (作 成 動 詞 )に 共 通 の 動 詞 と し て 、 「 紙 | 鶴 を 折 る 」以 外 に 、 「 牛 肉 | ス テ ー キ を 焼 く 」、 「 玄 米 | ピ ラ フ を 炊 く 」、 「水 |お風呂を沸かす」を挙げている。 89 96 第 5 章 達成動詞とカケル構文 い と 考 え ら れ る 。 実 際 、( 134a) の 「 煙 突 を 壊 し か け た 時 」 が 、 煙 突 を 壊 す 前 で あ れ ば、壊 す こ と が 決 定 され た 初 期 の 段 階 で あっ て も 、壊 す と い う 計 画 が 進 んで い る 途 中 の 段 階 であ っ て も 、壊 す と い う 計 画 が 実 行 さ れ る 直 前 の 段 階で あ っ て も 、す べて「 壊 し か け た 時 」に 含 ま れ る で あ ろ う 。( 134b)「 壊 し か け た 柱 」 の 場 合 も 、 柱 が 完 全 に 壊 れ る 前 で あ れ ば 、 少し壊した段階でも、半分壊した段階でも、ほとんど壊した段階でも、 か ま わ な い の であ る 。こ の よ う に、カ ケ ル の 持 つ 「 動詞 の 表 す 動 き の 成 立 に は 至 ら な い 」と い う 意 味 は 、す べ て の カ ケ ル 構 文 にお い て 共 通 す る、 普 遍 的 な 意 味 なの で あ る 。こ こで 、達 成 動 詞 が カ ケ ル 構文 で 用 い ら れ た 際 に 、 ど の よ うな 解 釈 に な る の か を整 理 し て お く 。 立 政 治 状 態大変 化 : 将 動相 or 将変 相 状 態 ・ 位 置 変 化 タ イプ ‧ ‧ 國 學 作 成 動 詞 タ イ プ : 将変 相 io sit y Nat n al er 達成動詞が 位置・所有権の変化:将動相 Ch engchi 97 i n U v 優先 第 6 章 おわりに 第6章 終わりに 1 結論 本 論 で は 、語彙 概 念 構 造( LCS)を 用 い る こ と に よ り、Vendler の分 類 に お け る 活 動 動詞 、到 達 動 詞 、達成 動 詞 が 、そ れ ぞ れ定 ま っ た 事 象 の 成 立 点 を 持 つ こ とを 論 じ 、 そ の 成 立 点 が 、カ ケ ル 構 文 の 解釈 、つ ま り 、将 動 相 な の か 将 変相 な の か を 決 定 す るこ と を テ ー マ に 論 じた 。ま た 、そ の 過 程 に お い て 、IT で あ る ヲ 格 名 詞 句 や 結 果 目 的 語 も 、カ ケ ル 構 文 の 解 釈 治 政 「 動 詞 ( 句 ) の 表 す 動 き の 成 立 に は 至 ら な い大 」 と な る 。 以 下 、( 34) を 立 再 定 義 し て お く。 の決定に影響を及ぼすことを明らかにした。さらに、 カケルの意味は、 ‧ 國 學 ( 150) カ ケ ル 構 文 の 意 味 ・ 解 釈 ‧ 意 味 :「 動 詞 ( 句 ) の 表 す 動き の 成 立 に は 至 ら ない 」 y Nat sit 解 釈: 将 動 相 と 将 然 相 の 二 つ あ る が 、こ れ は あ く ま で 、カ ケ er io ル が A(CT) 成 立 点 に 作 用 す る の か B(ECOME) 成 al 立 点 に 作 用 す る の か の 違 い で あ り、ど ち ら に 作 用 す る n v i n か は 、 そC の 文 が 持 つ 成 立 点 に よ っ て決 定 さ れ る 。 hengchi U 次 に 、動詞 の タ イ プ と カ ケ ル 構 文 にお け る 解 釈 を ま と めた 表 4 を 再 掲 する。 動詞のタイプ 活動動詞 「到達動詞」 達成動詞 カ ケ ル 構 文 の 解釈 将動相 将変相 将動相|将変相 表4 表 4 の よ う に、 活 動 動 詞 は LCS に ACT を 持 つ た め、 カ ケ ル は A 成 立 点 に 作 用 し、将 動 相 の 解 釈 に、 「 到 達 動 詞 」は LCS に BECOME を 持 つ た め 、 カ ケ ル は B 成 立 点 に 作 用 し 、 将 変 相 の 解 釈 に 、 達成 動 詞 は LCS に 98 第 6 章 おわりに ACT と BECOME の い ず れ も 持 つ ため 、 文 脈 に よ り 、 将動 相 と 将 変 相 の 両 方 の 解 釈 が 可能 に な る の で あ っ た。 こ の 表 4 は 概 略 的 な も の で あ り、 カ ケ ル 構 文 の 解釈 は 、 さ ら に 、 以 下の よ う に 細 分 化 さ れる 。 ヲ 格 名 詞 句 を とら な い : 将 動 相 活動動詞が IT で な い : 将 動相 ヲ 格 名 詞 句 を とる 将動相 IT で あ る ( 達 成動 詞 化): or 政 治 大 立 将変相 學 状 態 変 化 : 将 変相 ‧ ‧ 國 ※ 移 動 動 詞 の 場合 、 潜 在 的な IT( 達 成 動 詞 化): 将 変 相 「到達動詞」が 起 点 | 着 点 指 向 の 移 動 動詞 : 将 変 相 状 態 変 化 : 将 動相 or 将変 相 n al er io sit y Nat 位置変化 Ch 状 態 ・ 位 置 変 化 タイ プ i n U v e n g c h位i 置 ・ 所 有 権 の 変 化 : 将 動 相 達成動詞が 優先 作 成 動 詞 タ イ プ :将 変 相 上 記 の 図 は、カ ケ ル 構 文 を 解 釈 す る上 で 、か な り の程 度 有 効 で あ る こ と は 、 例 文 か ら も実 証 で き た と 思 わ れる 。 本 論 に お い て 試み た 、LCS を 使 っ て 動 詞 の 成 立 点 を 探 り 、そ の 成 立 点 が カ ケ ル 構 文 の解 釈 を 決 定 す る と いう 分 析 及 び 考 察 は、他 に 類 を 見 な い も の で あ り 、特に 、LCS か ら 得 ら れ た そ れ ぞ れ の 動 詞 の成 立 点 は 、カ ケ ル 以 外 の 複 合 動詞 の 研 究 に も 、 役 立つ で あ ろ う 。 99 第 6 章 おわりに 2 今後の課題 本 論 で は 、カケ ル 構 文 の 意 味 解 釈 の規 則 を 、概 略 的 に理 論 と し て 提 示 し た 後 、その 理 論 の 妥 当 性 を 証 明 する た め に 、 カ ケル 構 文 に 現 れ る 解 釈 を 、実 例 と とも に 分 析・考 察 し て い く と い う 形 を と っ た。簡 潔 に 言 う と 、 理 論 を 抽 出 し、そ の 理 論 を 以 っ て 実例 に 対 す る 解 釈 を 試み た わ け で あ る。 し か し 、実例 に あ た れ ば あ た る ほ ど 、提 示 し た 理 論 だ けで は 説 明 が つ か な い 現 象 も い くつ か 見 受 け ら れ た 。 ま ず 、経 路 指向 の 移 動 動 詞 が カ ケ ル構 文 で 用 い ら れ る と、ヲ 格 目 的 語 な し に 、将 変相 の 解 釈 が 成 り 立 つ よう で あ る が 、 こ れに つ い て は 、さ ら に 一 歩 踏 み 込 んだ 研 究 が 必 要 で あ ろう 。移 動 動 詞 が 、ど の よ う な LCS を 政 治 大 く る の か な ど、研 究 が 進 ん で い る とは 言 い が た く 、ま だ ま だ 課 題 は 山 積 立 みである。 持 ち 、また 、経 路 句 や 着 点 句 と の 共起 が 、ど の よう に LCS と か か わ っ て ‧ 國 學 次 に 、活 動 動 詞が IT で あ る ヲ 格 名 詞句 を と る と 、達 成 動詞 化 さ れ れ 、 成 立 点 を 二 つ 持つ こ と に よ り、両 義 的 に 解 釈 さ れ る も のが あ る こ を 論 じ ‧ た が 、 実 際 に は、 達 成 動 詞 に も 、 IT で あ る ヲ 格 名 詞 句と の 共 起 に よ り、 両 義 的 に 解 釈 で き る も の も 存 在 す る 90 。 本 稿 で は 、 詳 し く 論 じ ら れ な か y Nat っ た が 、 ど の よう な 達 成 動 詞が IT と 共 起 す る の か 、 IT と 共 起 す る 活 動 sit 動 詞 と の 共 通 点は あ る の か な ど、達 成 動 詞 に つ い て は、研 究 が 十 分 に 進 er io ん で い な い こ とも あ り 、まだ ま だ 検 討 の 余 地 が 残 さ れ てい る 動 詞 で あ る al n v i n ま た 、 類 義 表 現 と し て のC 観h 点 か ら 、「 ~ カ ケ e n g c h i Uル 」 と 自 他 の 対 応 を 持 つ と 言 え る で あ ろう 。 「 ~ カ カ ル 」や 、同 じ よ う な 意 味 で使 用 さ れ る「 ~ ソ ウ ニ ナ ル 」と の 相 違 も 視 野 に 入 れた 研 究 が 必 要 に な って く る で あ ろ う 。 最 後 に、 本 稿 の 執 筆 動 機 は、 V カ ケ 構 文 を 研 究 す る 目 的で 始 ま っ た も のであり、本論文は、その通過点に過ぎない。ここで得られた知見を、 少 し でも V カ ケ 構 文 の 研 究 に 活 か せる こ と を 願 う 。 北 原( 1999)で は 、以 下 の よ う な 例 を 挙 げ 、限 界 動 詞「 削 る 」が 、非 限 界 動 詞 と同じ性質を持つということを指摘している。 (ⅰ) 鉛筆を|史郎の鉛筆を削った (ⅱ) 鉛筆を|史郎の鉛筆を 5 分間削った ( ⅲ ) ?鉛 筆 を | 史 郎 の 鉛 筆 を 5 分 で 削 っ た 「 削 る 」 は 状 態 変 化 の 使 役 動 詞 の タ イ プ で 、 達 成 動 詞 で あ る が 、「 読 む 」「 歩 く 」 などの活動動詞と同じ振る舞いを見せる。 90 100 第 6 章 おわりに 参考文献 庵 功 雄 他 ( 2001)『 中 上 級 を 教 え る 人 の た め の 日 本 語 文 法 ハ ン ド ブ ッ ク 』 ス リ ー エ ーネ ッ ト ワ ー ク 伊 藤 た か ね ・ 杉岡 洋 子 ( 2002)『 英 語 学 モ ノ グ ラ フ シ リー ズ 16 語の 仕組みと語形成』 原口圧輔他編 研 究社 井 本 亮( 2009)「 日 本 語 と 結 果 構 文に お け る 限 定 と 強 制」『 結 果 構 文 の タ イ ポ ロ ジ ー 』小 野 尚 之 編 ひ つ じ書 房 岩 本 遠 億 (2008)『 事 象 ア ス ペ ク ト論 』 開 拓 社 岩 本 遠 億( 2010)「 経 路 移 動 事 象 の両 義 的 限 界 性 と 増 分性 」『レ キ シ コ 治 影山太郎編 ひつじ書房 政 遠 藤 善 雄 (2001)「 相 」『 英 語 学 モ ノ グ ラ フ シ 大リ ーズ 8 機 能 範 疇 』 立圧 輔 他 編 研 究 社 原口 ン フ ォ ー ラ ム 』 No.5 ‧ 國 學 影 山 太 郎 (1996)『 動 詞 意 味 論 - 言語 と 認 知 の 接 点 』 く ろ し お 出 版 影 山 太 郎 ・ 由 本陽 子 ( 1997)『 語 形 成 と 概 念 構 造 』 研 究 者 出 版 影 山 太 郎 編 (2001)『 日 英 対 照 動詞 の 意 味 と 構 文 』 大 修 館 書 店 ‧ 影 山 太 郎 ( 2008)「 語 彙 概 念 構 造 ( LCS) 入 門 」 『 レ キ シ コ ン フ ォ ー 影 山 太 郎 編 、 ひ つ じ 書房 y Nat ラ ム 』 No.4 al 影 山 太 郎 編 (2011)『 日 英 対 照 名詞 の 意 味 と 構 文』、 大 修 館 書 店 v i n ( 2000)「 非 対C 格性再考」丸太忠雄・須加一好編 hengchi U の自他の交替 』 ひつじ書房 n 岸本秀樹 影 山 太 郎 編 、 ひ つ じ書 房 er io ー ラ ム 』 No.5 sit 影 山 太 郎( 2010)「 移 動 の 距 離 と アス ペ ク ト 限 定 」 『 レ キ シ コ ン フ ォ 『日英語 北 原 博 雄 ( 1999)「 日 本 語 の お け る 動 詞 句 の 限 界 性 の 決 定 要 因 - 対 格 名詞句が存在する動詞句のアスペクト論-」 黒田 成幸・中村捷編 『ことばの核と周縁-日本語と英 語の間』 くろしお出版 北 原 博 雄 ( 2006)「 移 動 動 詞 の テ イ ル 形 が 述 語 で あ る 文 の 解 釈 が 述 語 である文の解釈をめぐって―方向句との共起可能 性と経路指向性との相関性―」 『現代日本語文法 現象と理論のインタラクション』 矢沢真人・橋本 修編 ひつじ書房 北 原 博 雄 ( 2009)「 動 詞 の 語 彙 概 念 構 造 と 「 に 」 句 の ス ケ ー ル 構 造 ・ 統語構造に基づいた、着点構文と結果構文の平行 101 第 6 章 おわりに 性」 『結果構文のタイポロジー』小野尚之編 ひ つじ書房 金 田 一 春 彦( 1976a)「国 語 動 詞 の 一 分 類 」 金 田 一 春 彦 編 『 日 本 語 動 詞 の ア ス ペ ク ト』 む ぎ 書 房 金 田 一 春 彦( 1976b)「日 本 語 動 詞 の テ ン ス と ア ス ペ ク ト」金 田 一 春 彦 編 『 日 本 語 動 詞の ア ス ペ ク ト 』 む ぎ 書 房 金 水 敏( 2000) 「時の表現」 仁田義雄他編 『日本語の文法 2 時・否 定 と 取 り 立 て 』岩 波 書 店 工 藤 真 由 美 ( 1995)『 ア ス ペ ク ト ・ テ ン ス 体 系 と テ ク ス ト ― 現 代 日 本 語の時間表現』 ひつじ書房 佐 野 由 紀 子( 1998)「 程 度 副 詞 と 主 体 変 化 動 詞 と の 共 起 」 『 日 本 語 科 学』3 会編 立 国立国語 治研 究 所 『 日 本 語 科 学 』 編 集 委 員 政 国 書 刊 行会 大 形 容 詞 ・ 副 詞 の意 味 と 構 文 』 大 修 館 書 店 須 田 義 治 ( 2010)『 現 代 日 本 語 の ア ス ペ ク ト 論 學 ‧ 國 杉 岡 洋 子( 2009)「 形 容 詞 か ら 作 られ た 動 詞 」 影 山 太 郎 編『 日 英 対 照 形態論的なカテゴリ ー と 構 文 論 的 なカ テ ゴ リ ー の 理 論 』 ひ つ じ 書 房 ‧ 高 橋 太 郎 (2003)『 動 詞 9 章 』 ひ つ じ 書 房 y Nat 高 見 健 一・ 久 野 暲( 2006)「V か け の N 構 文 ‐「 走 り か け の ラ ン ナ ー」 al er io 究』 大修館書店 sit は な ぜ 不 適 格 か 」」『 日 本 語 機 能 的 構 文 研 v i n in Japanese, U n Tujimura Natsuko and Iida Masayo( 1999)Deverbal Nominals and Telicity Ch Journal of East e n g c h i Asian Linguistics,Vol.8, No.2 Dowty, David R.( 1991)Thematic proto-role and argument selection. Language 67 寺 村 秀 夫 (1982)『 日 本 語 の シ ン タク ス と 意 味 Ⅰ 』 く ろ し お 出 版 寺 村 秀 夫 (1984)『 日 本 語 の シ ン タク ス と 意 味 Ⅱ 』 く ろ し お 出 版 中 村 捷 (2000)「 意 味 の 仕 組 み」『 英 語 学 モ ノ グ ラ フ シリ ー ズ 1 ばの仕組みを探る 他編 こと 生成文法と認知文法』 原口圧輔 研究社 仁 田 義 雄 (2002)『 新 日 本 語 文 法 選 書 3 副 詞 的 表 現 の諸 相 』 く ろ し お出版 仁 田 義 雄 (2010)『 語 彙 論 的 統 語 論の 観 点 か ら 』 ひ つ じ 書 房 姫 野 昌 子 (1999)『 複 合 動 詞 の 構 造と 意 味 用 法 』 ひ つ じ 書 房 102 第 6 章 おわりに 副 島 健 作 (2007)『 日 本 語 の ア ス ペク ト 体 系 の 研 究 』 ひ つ じ 書 房 藤 井 正 ( 1976)「 動 詞 + て い る 」 の 意 味 金田一春彦編『日本語動詞 のアスペクト』 むぎ書房 松 本 マ ス ミ( 2005)「目 的 語 と 自 他 交 替 」『 英 語 学 モ ノ グラ フ シ リ ー ズ 語 彙 範 疇( Ⅰ)動 詞』 原 口 圧 輔他 編 6 丸 太 忠 雄 ( 1998)『 使 役 動 詞 の ア ナ ト ミ ー 研究社 語彙的使役動詞の語彙概 念構造』 松柏社 三 原 健 一 (2004)『 ア ス ペ ク ト 解 釈と 統 語 現 象 』 松 柏 社 宮 腰 幸 一 ( 2009a)「「 か け 」 構 文 と 並 行 事 象 」 日 本 語 文 法 学 会 ( 編 ) 『 日 本 語 文 法 』9 巻 2 号 くろしお出版 宮 腰 幸 一 ( 2009b)「 日 英 語 の 周 辺 的 結 果 構 文 - 類 型 的 含 意 」 『 結 果 治 政 宮 島 達 夫 (1994)『 語 彙 論 研 究 』 む ぎ 書 房 大 村 尾 治 彦 (2009)「 認立 知 形 態 論 か ら語 彙 論 へ」『 認 知 言 語 学 講 座 巻 第 2 認 知 音 韻・形 態 論 』 山梨 正 明 他 編 く ろ し お出 學 ‧ 國 構 文 の タ イ ポ ロジ ー 』 小 野 尚 之 編 ひ つ じ 書 房 版 吉 川 武 時( 1976)「 現 代 日 本 語 の アス ペ ク ト 研 究 」 『 日 本 語 動 詞 の ア ‧ スペクト』 むぎ書房 y Nat 吉 田 妙 子 (2012)『 日 本 語 動 詞 テ 形の ア ス ペ ク ト 』 晃 洋 書 房 al n 現 代 日 本 語 書き 言 葉 均 衡 コ ー パ ス( BCCWJ) Google 検 索 エ ン ジ ン Google ブ ッ ク 検 索 Ch engchi Yahoo!検索 エ ン ジ ン 103 er io sit Vendler, Zeno( 1957) Verbs and Time, Duke University Press i n U v
© Copyright 2024 Paperzz