電気 · 電子回路 (前川) 9 3 直流回路 前章で、基本的な回路素子として、抵抗、キャパシタ (コンデンサ)、インダクタについて学んだ。これらは 何れも受動的な素子であり、かつ、電流、電圧について線形な回路要素であった。線形な回路要素で構成した 回路を、線形な電気回路あるいは線形回路と呼ぶ。 これらの回路要素は、 有する*1 、 、及び のように、何れも二つの端子 (terminal) を 。また、各回路要素の端子対を、ポート (port) と呼ぶ事がある。端子やポートを使うと、抵抗 R、 キャパシタ (コンデンサ)C 、インダクタ L 及び電源 E は、 「2-端子要素」または「1-ポート要素」と呼べる*2 。 3.1 直列接続と並列接続 下の Fig.3.1(左) のように、ある点 P から Q まで、要素を次々に繋いでいく事を直列接続 series connec- tion という。また、同図 (右) のように P と Q の間に夫々の要素を繋ぐ事を並列接続 parallel connection という (同図では五つの要素の接続を示しているが、要素数は任意である) 。 P P A B C Q E A B C D E D Q Fig.3.1 直列接続 series connection (左) と並列接続 parallel connection (右). 例えば、回路に流れる電流を考えた場合、直列接続では同じ電流が夫々の要素を流れるのに対し、並列接続 では、電流が各要素に枝分れして流れる。実際の回路は両者が混在しているが、ここでは両者の違いを理解す ることにしよう。 3.1.1 抵抗の直列接続 まず、抵抗を直列に接続した回路の例を次の Fig.3.2 に示す。 V1 I V1 R1 a R2 V2 E I I R1 b R2 V2 E d I R3 R3 V3 V3 c Fig.3.2 三本の抵抗を直列に接続した回路. *1 *2 二つの端子 (たんし):ここでは, 各要素を表わす記号の両端点. なお, それを強調するために, 記号 ◦ や • を付ける事もある. R,C,L は, 「1-ポート素子」と言ってもよいだろう. 電気 · 電子回路 (前川) 10 Fig.3.2 には同じ回路が二つ示してあり、右図には説明のための記号をいくつか記している。 電圧とは電位の差の事なので、同図 (右) の記号を用いて、a 点の電位を Va 、b 点の電位を Vb と書くと、電源 の電圧は E = Va − Vd と書ける。同じようにして、抵抗 R1 や R2 にかかる電圧は、それぞれ、V1 = Va − Vb 、 及び V2 = Vb − Vc のように表わせる。 また、電位の基準を明示したいときは、同図の d 点に描いたように三角形の記号 を用いて、ここが電位 の基準、則ち Vd = 0[V] である事を示す。これを、接地点 (グラウンド ground または アース earth) という。 さて、この回路では、直列に繋がった三つの抵抗の両端に電源電圧 E がかかっており、電源から流れる電 流 I が各抵抗に流れるので、 E = V1 + V2 + V3 = R1 I + R2 I + R3 I = I(R1 + R2 + R3 ) (1) Rs = R1 + R2 + R3 (2) E = IRs (3) が成り立つ。つまり、 と置くと、 と書ける。これは、直列接続した 3 本の抵抗は、それらの値を加えた一本の抵抗 Rs と考えてよいという事を 示している。Rs を直列接続された抵抗の合成抵抗という。これより、N 本の抵抗 Ri (i = 1 . . . N ) を直列に 接続したときの合成抵抗は Rs = N ∑ Ri (4) i=1 となる事も明かであろう。従って、このような直列回路には、 I= E Rs [A] (5) の電流が流れる事になる。 また、直列に接続された抵抗 Ri にかかる電圧 Vi は Vi = E Ri Rs (6) である。これを分圧といい、電圧測定などの基本である。 問 3.1 Fig.3.3 に関する以下の問に答えなさい。 I E R1 R2 V2 Fig.3.3 二つの抵抗の直列回路. (1) 同図において、 R1 = 2[kΩ]、 R2 = 3[kΩ]、電源電圧 E = 20[V] としたとき、回路に流れる電流 I を 求めよ。また、このとき、抵抗 R2 にかかる電圧 V2 はいくらか。 (2) 同図において、抵抗 R2 にかかる電圧 V2 を、電源 E の 1/10 に分圧したい。R2 = 1[kΩ] のとき、抵抗 R1 はいくらにすればよいか。 電気 · 電子回路 (前川) 11 3.1.2 抵抗の並列接続 次に抵抗の並列接続について考えよう。三本の抵抗を並列に接続した回路を Fig.3.4 に示す。 I I1 R1 E I2 V1 R2 I3 V2 R3 V3 Fig.3.4 三本の抵抗を並列に接続した回路. この回路では、電圧 E が各抵抗にそのまま加わっており、各抵抗値に応じた電流 I1 、I2 、I3 が流れる。即ち、 電源から流れる全電流 I はこれらの和になる。 I = I1 + I2 + I3 (7) また、各抵抗の両端の電圧 (各抵抗の電圧降下) は何れも電源電圧 E に等しい。即ち、 E = V1 = V2 = V3 , E E E , I2 = , I3 = R1 R2 R3 I1 = (8) 従って、 I = I1 + I2 + I3 = E E E 1 1 1 + + = E( + + ) R1 R2 R3 R1 R2 R3 (9) となる。ここで、 1 1 1 1 + + = R1 R2 R3 Rp (10) と置くと、 I= E Rp (11) と書ける。これは、並列接続した 3 本の抵抗は、式 (10) の右辺のような一本の抵抗 Rp と考えてよいという 事を示している。Rp を並列接続された抵抗の合成抵抗という。 これより、N 本の抵抗 Ri (i = 1 . . . N ) を並列に接続したときの合成抵抗 Rp については、 ∑ 1 1 = Rp Ri i=1 N (12) となる事が分る。また、抵抗の逆数を Gi = 1 Ri (13) と置いたものをコンダクタンスと呼び、その単位はジーメンスといい [S] で表わす。コンダクタンスを用いる と、並列回路の合成コンダクタンスは ∑ 1 = Gi Rp i=1 (14) E IRp Rp Gi = =I =I Ri Ri Ri Gp (15) N Gp = となる。 また、各抵抗 Ri に流れる電流 Ii (電流の分流) は Ii = である。 電気 · 電子回路 (前川) 12 問 3.2 Fig.3.5 に関する以下の問に答えなさい。 I I1 I2 R1 E R2 Fig.3.5 二つの抵抗の並列回路. (1) 同図において、 R1 = 2[kΩ]、 R2 = 4[kΩ]、電源電圧 E = 20[V] としたとき、回路に流れる電流、則 ち、電源 E が供給する電流 I はいくらか。 (2) 同図において、電源 E が供給する電流 I の十分の一 (1/10) を抵抗 R2 に流したい。このとき、抵抗 R2 は、抵抗 R1 に対していくらにすればよいか。 3.2 電力と電源モデル 3.2.1 電源の役割 ここで電源の役割について考えてみよう。電気 · 電子回路に電気エネルギーを供給する源が、(文字通り) 電 源である。電源がエネルギーを供給する対象を 負荷 (load) と呼ぶ。 ある電源が、電圧 V で電流 I を回路に供給している時、 P =V ·I [W](ワット) (16) という電力 (electric power)P を供給している。電力 P の単位 [W](ワット) は [J/s](ジュール毎秒) の次元 を持ち、仕事率ともいう。これに時間を掛けたのが電力量というエネルギーで、次元は [J](ジュール) である。 [W] · [s] = [J · s−1 · s] = [J] (17) 実用的には、秒 [s] の代わりに時間 [h] を使って、[Wh](ワット · アワー) とする表記が馴染み深いかもしれな い。抵抗 R に電流 I が流れているとき、抵抗にかかる端子電圧は V = R · I なので、この抵抗で消費される 電力は P = V · I = (R · I) · I = R · I 2 [W] (18) となり、熱エネルギーとして消費される。これをジュール熱という*3 。 問 3.3 Fig.3.6 に関する以下の問に答えなさい。 I R1 I I1 R2 E V2 E R1 Fig.3.6 二つの抵抗から成る直列回路と並列回路 (再掲). *3 身近な応用例に, トースターやヒーターがある. I2 R2 電気 · 電子回路 (前川) 13 (1) 同図 (左) の直列回路において、抵抗 R1 で消費される電力を求めなさい。但し、電源電圧は E = 20[V] で、各抵抗は、R1 = 2[kΩ] 及び R2 = 3[kΩ] とする。 (2) 同図 (右) の並列回路において、各抵抗で消費される電力を求めなさい。但し、電源電圧は E = 20[V] で、各抵抗は、R1 = 2[kΩ] 及び R2 = 4[kΩ] とする。 3.2.2 電源モデル 負荷に電圧を供給する電源を電圧源、電流を供給する電源を電流源という。最近の関連諸規格では、電圧源 で、電流源を を で表わす。 この電圧源に負荷として抵抗を接続したのが次の図で、流れる電流は I = E/R1 、抵抗 R1 による電圧降下 V1 = R1 · I は電源電圧 E に等しい。ここで、この負荷抵抗 R1 を短絡してみよう。図では、短絡を閉じた スイッチで表わしており、そこを流れる短絡電流を Is で示している。電流 I は全てスイッチを流れるので、 Is = I → ∞、I1 = 0 となる。 I I1 + R1 E I I I3 V1 R3 R1 E − + I1 + V1 r E Is I1 R1 V1 Is − − Fig.3.7 電圧源の考え方 しかし実際には、(結線を含む) 電源の能力には限りがあり、無限大の電流が流れる事は無い。そのような物 理的な制約を、電圧源に直列に小さな抵抗 r を挿入して表わす。これを、電源の内部抵抗という。すると、実 際の電圧源は、Fig.3.7(右) の破線で囲った部分のように、「理想的な定電圧電源 E 」と「直列に接続された (小さな) 内部抵抗」で表わせる。この部分を取り出して再掲すると、Fig.3.8(左) のようになる。 ◦ r + ◦ + Is E − r − ◦ Is = Er Vo = Is · r = E ◦ Fig.3.8 互いに等価な電圧源と電流源。 この電圧源のポートを開放すると電流は流れないので、その時の電圧、即ち開放電圧 Vo は、内部抵抗 r によ る電圧降下が無いので Vo = E である。この電源から取り出す電流 I を増やしていくと、端子電圧 V は V = Vo − rI = E − rI (19) のように減少していく。このような端子電圧と電流の関係を、その電源の「電圧-電流特性」といい、(線形素 子では)Fig.3.9 のように直線になる (同図、赤の実線)。また、∆V /∆I = r、即ち、この直線の傾きが内部抵 抗 r を表わしている事も理解できよう。なお、同図における赤の破線は、電流 I をどれだけ取り出しても端子 電圧は一定であり、理想電圧源といえる。 (話を戻して) この電源端子を短絡、即ち V = 0 にすると、短絡電流は開放電圧 E を内部抵抗 r で割った値 IS = E/r となる。また、式 (19) は I= E V V 1 (Vo − V ) = − = Is − r r r r (20) 電気 · 電子回路 (前川) 14 とも書ける。V = 0 に着目して同じグラフにこれを示したのが、同図の青色の実線である。これは、この電圧 源を、それと等価な電流源と見做した特性といえる。その等価回路は、Fig.3.8(右) のようになる。 電流 I (理想電圧源) (理想電流源) Is 0 電圧 V Vo Fig.3.9 電源の電圧-電流特性. 直線の傾き ∆V /∆I は内部抵抗 r を表わす. 3.3 重ね合わせの理 複数の電源が含まれている線形な回路において、回路中の電圧 · 電流分布を求めるには、個々の電源が単独 で存在している状態における電圧 · 電流分布を求め、それを重ね合わせればよい。これを (電気回路における) 重ね合わせの理 principle of superposition と呼ぶ (短く 重ねの理 ともいう)。 個々の電源を単独で考える場合、残りの電源は、次のように扱えばよい。 個々の電源を単独で考える際の残りの電源の扱い方 電圧源 発生電圧ゼロ、即ち、短絡状態とする。 電流源 発生電流ゼロ、即ち、開放状態とする。 例として、二つの電圧源と二つの抵抗から成る、Fig.3.10(左) の回路を考えよう。 R1 I1 − + E1 + 短絡 E1 E2 − R1 + (E2 = 0) − R2 R2 V2 V2(E1) Fig.3.10 二つの電源と二つの抵抗から成る回路 (左). (右) は, 電源 E1 のみを考えたもの. このとき、抵抗 R2 にかかる電圧 (抵抗 R2 の電圧降下)V2 を重ね合わせの理で考えると、次のようになる。 即ち、電源 E1 だけがある場合の電流 I1 と、それによる抵抗 R2 の電圧降下 V2(E1) は、それぞれ、 I1 = E1 , R1 + R2 V2(E1) = R2 · I1 = R2 E1 R1 + R2 (21) となる。この状況を表わすと Fig.3.10(右) のようになる。これと同様に、電源 E2 だけによる電流と電圧降下 電気 · 電子回路 (前川) 15 は、それぞれ、 I2 = E2 , R1 + R2 V2(E2) = R2 · I2 = R2 E2 R1 + R2 (22) となるので、両者を加えて、 V2 = V2(E1) + V2(E2) = R2 (E1 + E2 ) R1 + R2 (23) が得られる。これは、次の Fig.3.11 のように表わす事ができる*4 。 R1 + (E1 + E2 ) R2 V2 − Fig.3.11 Fig.3.10(左) と等価な回路. 問 3.4 上述のように、電源 E2 だけによる電流と電圧降下は式 (22) で表わす事ができる。その説明図を、 式 (21) に対する説明図 Fig.3.10(右) に倣って描きなさい。 3.4 キルヒホフの法則 これまでに、既にいくつか回路計算をしてきた。その手法は次の二点、キルヒホフの法則 (Kirchhoff’s circuit laws) に整理できる。なお、回路中で二つ以上の回路要素が接続されている点を節点 node、その節点 に繋がっている回路要素の経路を枝 branch(枝路)、各枝路の電流を枝電流 branch current、ある節点か らいくつかの枝を通って、元の節点に戻る経路を閉路 loop という。 キルヒホフの電流則 電気回路において、回路を流れる電流が途中で増えたり減ったりする事は無い。つまり、電流 I が、回路中 のある節点で I1 と I2 に枝分れする場合、流れ込む電流は流れ出す電流に等しく、I = I1 + I2 である。節点 に流れる電流の向きに応じて符号をつけて考えると、 「回路内の任意の節点における電流の代数和は 0 である」 ので、 n ∑ Ik = 0 (n はその節点に繋がる枝路の数) (24) k=1 と表現できる。これをキルヒホフの電流則 Kirchhoff ’s current law(キルヒホフの第一法則) といい、電荷 の保存に対応している。 キルヒホフの電圧則 回路中の一つの節点から、任意の枝路を通って元の節点に戻る閉路 (ループ) を考える。この閉路で各枝路 の電位を辿っていくと、元の節点に戻ると 0 にならなければならない。つまり、「回路内の任意の閉路におけ る起電力と電圧降下の代数和は 0 である」、即ち、 n ∑ Vk = 0 (n はその閉路の枝路の数) k=1 *4 慣れてしまうと元の回路は直ちにこの図のように考えるので, 却って順序建てての説明が難しいかもしれない. (25) 電気 · 電子回路 (前川) 16 と表現できる。例えば、起電力 Ei が閉路の向きに正で、抵抗による電圧降下 Ri · i が閉路の方向であれば、そ の部分の代数和は Ei − Ri · i になる。これをキルヒホフの電圧則 Kirchhoff ’s voltage law(キルヒホフの 第二法則) といい、エネルギーの保存に対応している。 例 3.1 二つの電源 E1 、E2 と三つの抵抗 R1 、R2 、R3 から成る T 型の回路を考える。三つの抵抗が結ばれ た節点 a に流れる電流 I1 、I2 、I3 を求めなさい。 R1 R2 a I1 I2 I3 + E1 + R3 l1 E2 l2 − − b Fig.3.12 三つの抵抗から成る T 型の回路. 答 まず、キルヒホフの電流則から、節点 a に流れる電流について次の式が成り立つ。 I1 + I2 + I3 = 0 (26) 続いて、閉路 l1 と l2 について、キルヒホフの電圧則から、次の二式が成り立つ。 l1 : E1 − I1 R1 + I3 R3 = 0, l2 : E2 − I2 R2 + I3 R3 = 0 (27) この二式に、I3 = −(I1 + I2 ) を代入して、次の式が得られる。 l1 : E1 = I1 (R1 + R3 ) + I2 R3 , l2 : E2 = I1 R3 + I2 (R2 + R3 ) (28) この連立方程式を 2 × 2 の行列で表わすと ( R1 + R3 R3 R3 R2 + R3 )( I1 I2 ) ( = E1 E2 ) (29) のようになり、これを解いて ( I1 I2 ) 1 = R1 R2 + R2 R3 + R3 R1 I3 = −(I1 + I2 ) = − ( R2 + R3 −R3 −R3 R1 + R3 )( E1 E2 1 (R2 E1 + R1 E2 ) R1 R2 + R2 R3 + R3 R1 ) (30) (31) が得られる。得られた I3 は負の符号がついているので、図の向きとは逆に、節点 a から下向きに流れている 事が分かる。 3.5 鳳-テブナンの定理 前述の電源モデルにおける「開放電圧と内部抵抗」の考え方は、ポート (端子対) を一つ持った一般の線形 回路網にそのまま適用できる。つまり、回路の内部的な構成は考えず、ポートを介して見える特性は、ポート に何も繋がず開放した状態で観測される開放電圧 Vo と、ポートから回路網を見たときの抵抗 Ri が分かれば、 それらの直列回路と等価である。これを鳳-テブナンの定理という。 電気 · 電子回路 (前川) 17 つまり、Fig.3.13(左) に示すような、中身が分からない 1 ポートのブラックボックス (black box) であって も、それが線形回路であれば、ポートの開放電圧 Vo と、ポートから中を見た抵抗 Ri が分かれば、同図 (中) のような等価回路で、その電流電圧特性を表わす事ができる。なお、先の議論で見たように、これは同図 (右) の等価な電流源を持った回路に置き換える事ができる。 ◦ ◦ ◦ Ri + + Vo Is − − ◦ ◦ 等価な回路 (電圧源) 等価な回路 (電流源) ◦ 1 ポート線形回路 Ri Fig.3.13 線形回路は, ポートの開放電圧とポートから内部を見た抵抗で表わ す事ができる (鳳-テブナンの定理). なお、回路網が与えられた場合にポートから内部を見た抵抗を求めるには、重ねの理で述べたように、その 回路網中の電圧源の電圧はゼロ (電圧源を短絡)、電流源の電流もゼロ (電流源を開放) して計算する。 例えば、「重ねの理」の例で示した 2 電源 2 抵抗の回路 (Fig.3.10(左)) の場合、R2 の両端をポートと見 て、直ちに、ポートの開放電圧 VO = E1 + E2 、ポートから中を見た抵抗 Ri = R1 が得られるので、前掲の Fig.3.11 のように表わせる事が直ちに分かる。これに、ポート a,b をつけて再掲したのが Fig.3.14 である。 R1 R1 − + E1 + E2 − VO (= E1 + E2 ) + R2 a R2 V2 − a b b VO Fig.3.14 Fig.3.10(左) の回路に鳳-テブナンの定理を適用する. ポートを a,b で示した. 問 3.5 Fig.3.15 に示す回路は、例 3.1 で用いた T 型回路を再掲したものである。この回路において、抵抗 R2 に流れる電流 I2 を鳳-テブナンの定理によって求めなさい。 R1 R2 a I1 I2 + c I3 + E1 R3 − E2 − b Fig.3.15 例 3.1 で用いた T 型回路の再掲. ブリッジ 次にもう少し複雑な回路を考えよう。並列に接続された二つの枝路があり、それぞれの枝路の中間が互い に結ばれた、Fig.3.16 のような回路をブリッジ (bridge) という。このような構成は、線形回路だけではなく 電気 · 電子回路 (前川) 18 色々な応用がある重要な回路である。 b R1 a R2 c R5 R3 R4 d + E − Fig.3.16 ブリッジ回路. Fig.3.16 において、枝路 a-b-c と枝路 a-d-c を節点 b と節点 d で結んでいる (ブリッジしている) 抵抗 R5 に 流れる電流はどうなるであろうか? ··· 既に学んだキルヒホフの法則を使ってこれを求めてもよいが、ここでは鳳-テブナンの定理を応用してみよ う。次の Fig.3.17 は、Fig.3.16 を少し書き換えたものである。 b R1 R2 a c R5 R3 R4 d + E − Fig.3.17 前図 (Fig.3.16) のブリッジ回路はこのようにも描ける. この Fig.3.17 は、抵抗や電源の数、その位置関係は元の Fig.3.16 と全く同じである。即ち、節点 b と節点 d を開放したときの電圧と、そこから回路を見た抵抗が分かれば、鳳-テブナンの定理を適用して、ブリッジと なっている抵抗 R5 に流れる電流を求める事ができるであろう。 問 3.6 Fig.3.16 に示したブリッジ回路において、節点 b と節点 d を結んでいる抵抗 R5 に流れる電流 I を求めな さい。
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