スロッシングに対するタンク浮き屋根の応力解析 三浦 正博 要旨 平成 15 年十勝沖地震時のスロッシングによって浮き屋根が損傷を受け、スロ ッシングシミュレーションを実施し、その結果を用いての応力解析により損傷原 因を解明したことは本誌で報告した。本報では、この応力解析の方法と結果につ いて詳しく述べるとともに、スロッシングシミュレーション結果が取り入れられ て策定された国内法基準類での浮き屋根の強度評価の方法との関連性について述 べる。また、これらの応力解析の結果や強度評価の方法から、浮き屋根の応力状 態と損傷メカニズムについて、一般的な応力計算式を使用して概論する。 1.はじめに 基準検討会」が提言した強度評価手法には、本誌で報 平成 15 年9月 26 日の十勝沖地震により北海道製油 所のタンクではスロッシングが発生し、浮き屋根式タ 告したスロッシングシミュレーション結果が取り込ま れている。 ンクが損傷を受けた。この損傷原因を解明するために 本報では、スロッシングシミュレーションにより明 スロッシングシミュレーションを実施し、浮き屋根の らかにした浮き屋根挙動を基に、浮き屋根の損傷原因 挙動を明らかにしたことは、本誌で報告したとおりで を解明するために実施した浮き屋根の応力解析の方法 1) ある 。 と結果について、 「審査基準検討会」 が提言した強度評 その後、平成 17 年1月 14 日に「危険物の規制に関 価手法と関連付けながら述べていく。 する規則」 (以下、 「規則」と略する。 )および「危険物 の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示」 2.スロッシングモード (以下、 「告示」と略する。 )が改正され、一定規模(2 スロッシングとはタンク内に貯蔵された液体の振動 万kL)以上、あるいは、一定以上のスロッシング高 現象であり、一般的な振動現象と同様に多くの振動モ さ(告示で規定されている側板頂部までの空間高さと ードが存在する。このうち、一次モードはスロッシン して 2m)が予想されるタンクの浮き屋根(シングル グ高さが最大になるもので、 「スロッシングによる溢 デッキ型)は、スロッシングにより損傷を生じさせな 流を防ぐためには、 タンク側板頂部までに空間高さ (ス い構造とすることが要求されるようになった。 そして、 ロッシング高さから求まる)を保持して貯蔵しなくて 改正された「規則」および「告示」は平成 17 年 4 月 はならない」という従来の規定でも考えられていたも 1日から施行されている。 のである。 損傷を生じさせない構造とするためには、浮き屋根 それに対し、スロッシングシミュレーションにより の強度評価を行い、必要に応じて補強を施すことにな 二次モードのスロッシングが現われることを明らかに るが、この強度評価の方法は、平成 17 年 1 月 14 日に し、この二次モードによって浮き屋根が損傷したこと 通知された「危険物の規制に関する規則の一部を改正 を本誌で報告した。本誌で報告したシミュレーション する省令等の施行について」 (以下、 「改正施行通知」 結果を取り込み、 「審査基準検討会」 が提言した強度評 と略する。 )に規定されている。ここで規定されている 価手法、さらには、改正された「規則」 、 「告示」 、およ 強度評価の方法は、危険物保安技術協会に設置された び、 「改正施行通知」 での浮き屋根の損傷を防止する構 「屋外タンク貯蔵所浮屋根審査基準検討会」(以下、 造の要求でも、二次までのスロッシングモードを考慮 「審査基準検討会」と略する。 )が平成 16 年9月に提 するようになっている。 言した強度評価手法 2)と同じものである。この「審査 -1- 「告示」では以下の浮き屋根に作用する荷重を規定 している。  3.一次モードのスロッシングに対する応力解析 一次モードでは「円周方向面外曲げモーメン 3.1 概要 ト」 (図1参照)  一次モードのスロッシングによって、浮き屋根ポン 二次モードでは「水平面内曲げモーメント」及 ツーンには上下方向に凹凸に曲げる変形(鉛直方向の び「円周方向圧縮力」 (図2参照) たわみ)が生じているということは本誌で報告したと おりである。この鉛直方向のたわみが、図1に示すよ 内リム板 上板 デッキ板 下板 外リム板 仕切板 円周方向面外曲げモーメント 下板:圧縮 外リム板:下辺圧縮 内リム板:下辺圧縮 (1) 最大最小スロッシング高さ位置 (上凸曲げ) 円周方向面外曲げモーメント 上板:圧縮 外リム板:上辺圧縮 内リム板:上辺圧縮 (2) 中間位置 (下凸曲げ) 図1 一次モードのスロッシングによりポンツーンに作用する荷重 円周方向圧縮力 全板:圧縮 水平面内曲げモーメント 上板:外辺圧縮 下板:外辺圧縮 外リム板:圧縮 (1) 最大収縮位置 円周方向圧縮力 全板:圧縮 (2) 最小収縮位置 図1 二次モードのスロッシングによりポンツーンに作用する荷重 -2- 水平面内曲げモーメント 上板:内辺圧縮 下板:内辺圧縮 内リム板:圧縮 うに「円周方向面外曲げモーメント」につながるが、 t R   b R E b , R 23.9   12 1 2 2 これによる強度に関しては寺前らの報文 3)がある。こ の報文を参考にしながら、浮き屋根ポンツーンに「円 ここで、 周方向面外曲げモーメント」が作用した場合の応力状 b, R : tR bR 態と損傷に至るメカニズムを、一般的な応力計算式に より以下で説明する。   2    ・・・・・(3)  外リム板・内リム板の面内曲げ荷重による 座屈応力 : 外リム板・内リム板の厚さ : 外リム板・内リム板の幅(鉛直方向の長さ) 図1に示すように、浮き屋根ポンツーンが「円周方 向面外曲げモーメント」を受けた場合、ポンツーンの 式(1)と式(3)の各値のうち、 上板・下板のうち圧縮側の板では圧縮荷重により座屈 t D≦t R bD≧bR が生じる。この座屈応力は、周辺四辺単純支持の長方 c , D t D   b D E 4   12 1 2 ここで、   c, D E  tD bD ・・・・・(5) という関係が一般的であるため、 外リム板・内リム板の 形板として、以下の式(1)で算出することができる。 2 ・・・・・(4) 面内曲げ荷重による座屈応力は、 上板・下板の圧縮荷重 2    ・・・・・(1)  による座屈応力より大きいことになる。よって、浮き 屋根ポンツーンに「円周方向面外曲げモーメント」が : 上板・下板の圧縮荷重による座屈応力 作用した場合、上板・下板で弾性座屈が発生し、座屈し : 縦弾性係数 た断面で負担していた荷重が非座屈断面に配分され、 : ポアソン比 外リム板・内リム板が座屈し、 最終的にはポンツーンの : 上板・下板の厚さ コーナー部において降伏や座屈に至ることが予想され : 上板・下板の幅(半径方向の長さ) る。 代表的な以下の数値を式(3)に代入して、座屈応力を 代表的な以下の数値を代入して、座屈応力を求める 求めると、 と、 E  tD bD E  tD bD 2 = 200,000 (N/mm ) = 0.3 = 4.5 (mm) = 3,000 (mm) = 0.3 = 4.5 (mm) = 700 (mm) 2 200,000  4.5  c , D 4  2     12   1 0.3 2 3,000  = 1.68(N/mm ) 200,000 200,000 4.5  b, R 23.9  2     12   1 0.3 2 700  2 2 (N/mm2) = = 178.5(N/mm2) ・・・・・(6) ・・・・・(2) となる。一般的にポンツーンの材質は SS400 で、その 降伏応力 245(N/mm2)よりもはるかに小さい値であ り、上板・下板は「円周方向面外曲げモーメント」で弾 となり、弾性範囲内での座屈が発生することになる。 また、式(6)において板厚だけを別の代表的な以下の数 値に変更して、座屈応力を求めると、 t R 6.0 (mm) 性範囲内での座屈が生じると予想される。 2 し圧縮側の辺では座屈が生じることになる。この座屈 200,000 6.0  23.9      12 1 0.3 2 700  応力は、周辺四辺単純支持の長方形板として、以下の = 317.4(N/mm2) ・・・・・(7) b, R また、外リム板・内リム板には、面内曲げ荷重が作用 式(3)で算出することができる。 2   となり、塑性域で座屈が発生することになる。外リム 板・内リム板は、 厚さにより弾性座屈あるいは塑性座屈 に分かれることになる。 -3- 3.2 スロッシングシミュレーションからの応力解 の式(8)で表されるフーリエ級数に展開し、この 析 うち剛体変位分である 0 次と 1 次の項を除去し スロッシングシミュレーションにより明らかにした たものを、浮き屋根ポンツーンを上下方向に凹 浮き屋根挙動を基に、浮き屋根の損傷原因を解明する 凸に曲げる変形(鉛直方向のたわみ)として設 ために、浮き屋根の応力解析は以下のとおり行った。 定した。 プログラム 汎用非線形構造解析システム FINAS(核燃 a0  ・・・・・(8) w    a n cos n bn sin  n 2 n 1 料サイクル機構・CRC ソリューションズ 開発) ここで、 モデル w  : ポンツーン部の鉛直変位の周方向分布 a0 an bn ポンツーン一区画(上板・下板・外リム板・ 内リム板・仕切板(2 枚)で区切られた範囲) を抜き出してモデル化 解析方法 : w  から定まる定数 代表例として、北海道製油所の No.40061 タンクと 弾塑性・大変形・座屈解析 No.100651 タンクの応力解析結果を図3および図4 要素 に示す。 シェル要素 図3に示した No.40061 タンクの例では、ポンツー 設定したポンツーンの変形量 ンのコーナー部において降伏や座屈が生じることが応 スロッシングシミュレーションで得られた 力解析結果から解った。 ポンツーン部の鉛直変位の周方向分布を以下 上板 N/mm2 294 245 外リム板 降伏応力 196 147 内リム板 98 仕切板 降伏・座屈 49 (1) 下凸曲げ 0 降伏・座屈 -49 仕切板 内リム板 外リム板 -98 -147 -196 -245 -294 下板 (2)上凸曲げ 図3 No.40061 タンク一次モードのスロッシングに対する応力解析結果 (円周方向応力分布図) -4- 降伏応力 一方、図4に示した No.100651 タンクの例では、降 また、スロッシングシミュレーションで得られた結 伏応力を超えるところはなく、一次モードのスロッシ 果を整理して、上下方向に凹凸に曲げる変形(鉛直方 ングでは損傷に至らないと応力解析から推定された。 向のたわみ)はスロッシング量が上昇側と下降側に差 これは、スロッシングシミュレーションで得られた を持つこと(非線形性)に起因するとして、この非線 最大スロッシング高さがそれぞれ表1のとおりであり、 形量を線形のスロッシング高さから求める方法を提案 スロッシング高さが小さいため、浮き屋根ポンツーン した 4)。 を上下方向に上下方向に凹凸に曲げる変形(鉛直方向 のたわみ)も小さいからである。 シミュレーション結果 最大スロッシング高さ (m) 40061 3.3 100651 1.1  1.04 1 r r ここで、1,up 表 1 スロッシングシミュレーションで得られた 最大スロッシング高さ タンク No. 1,up 1 r ・・・・・(9) :上昇側スロッシング量 :平均スロッシング量 :タンク半径 N/mm2 上板 294 245 内リム板 外リム板 降伏応力 196 147 仕切板 98 (1) 下凸曲げ 49 0 外リム板 仕切板 内リム板 -49 -98 -147 -196 下板 -245 降伏応力 (2)上凸曲げ -294 図4 No.100651 タンク 一次モードのスロッシングに対する応力解析結果 (円周方向応力分布図) -5-  1  E I  max  ・・・・・(13) M  0.36  1     Rm Rm   3.3 国内法基準類における応力解析 「審査基準検討会」では、速度ポテンシャル理論に よるスロッシング高さの線形解は以下の式(10)で表さ ここで、 M  1 れ、線形解では円周方向の液面上昇量分布は同一平面 : 「円周方向面外曲げモーメント」 : 係数 上にあるため、ポンツーンには面外変形が生じないと k 1    16 EI     k R 4   m  している。  r J1  i  R   i i  r , max   cos  ・・・・・(10) J1  i  ここで、 I  ここで、 i  における r , : 任意の位置  r ,  r   i max i スロッシング高さ : タンク半径方向位置 : タンク円周方向角度 k  B : タンク側壁での i 次モードの 最大波高 : 第一種ベッセル関数 J の ここで、 : ポンツーン慣性二次モーメント Rm : ポンツーン重心半径 k : 浮力に相当するバネ定数  B : 液比重 : ポンツーン幅(半径方向) ・・・・・(15) 1 dJ 1  x dx 0 の i 番目の正根 この「円周方向面外曲げモーメント」による応力は、 で、  1 1.841 以下の式(16)で算定することとしている。 2 5.331 3 8.536 R ・・・・・(14) M Z eff ・・・・となる。 b1  : タンク半径 ここで、 b1 Z  eff そこで、ポンツーンへ作用する「円周方向面外曲げ ・・・・・(16) : ポンツーン円周方向曲げ応力 : ポンツーン有効断面係数 モーメント」の基となる非線形スロッシング効果によ このポンツーン有効断面係数は、前述した上板・下 る液面増分として、スロッシングシミュレーションで 板・内リム板・外リム板の座屈を考慮し、一部の断面を 得られた結果を整理したものを取り入れ、以下の式 無効として算出するようにしている。 (11)で算出することを提言している。  1 0.04  max  cos 2 タンク側壁での一次モードの最大波高は速度ポテン シャル理論に基きは以下の式(17)で算出できるため、 ・・・・・(11) これら一連の提言で、応力の算定までが行える。 ここで、  : 非線形スロッシング効果による 液面増分 :  円周方向角度 2 D  1  max   0.837  Sv T   2g 1  ここで、 D このスロッシングシミュレーション結果を整理した g ・・・・・(17) : タンク直径 ものはポンツーン自体の面外変形量であるため、それ T1 : 重力加速度 : 一次モードのスロッシング固有周期 に見合う液面増分はポンツーンの浮力に相当するバネ Sv : 速度応答スペクトル を介しての変形量を関係付けられるとし、以下の式 4.二次モードのスロッシングに対する応力解析 (12)で算出することを提言している。  1 0.09  max  cos 2 4.1 概要 ・・・・・(12) 二次モードのスロッシングにより浮き屋根ポンツー さらに、この非線形スロッシング効果による液面増 ンを半径方向に収縮させる変形が生じることは、本誌 分を用いて、梁理論に基き「円周方向面外曲げモーメ で報告したとおりである。この収縮変形が「水平面内 ント」は、以下の式(13)で表している。 曲げモーメント」および「円周方向圧縮力」につなが るが、これによる強度に関しての研究は、本誌で報告 -6- した以前には見当たらない。 代表的な以下の数値を式(20)に代入して、座屈応力 浮き屋根ポンツーンに「水平面内曲げモーメント」 を求めると、 E  tD bD 及び「円周方向圧縮力」が作用した場合の応力状態と 損傷に至るメカニズムを、3.1項と同様に一般的な 材料力学の定式により説明する。 図2に示すように、 「水平面内曲げモーメント」によ (N/mm2) = 200,000 = 0.3 = 4.5 (mm) = 3,000 (mm) って、最大収縮位置のポンツーンでは、外リム板に圧 2 縮荷重、 上板・下板には外リム板側が圧縮になる面外曲 b, D げ荷重が作用する。また、最小収縮位置のポンツーン では、内リム板に圧縮荷重、上板・下板には内リム板側 200,000  4.5  23.9      12 1 0.3 2 3,000  2   =9.72(N/mm2)・・・・・(21) が圧縮になる面外曲げ荷重が作用する。 外リム板あるいは内リム板が圧縮荷重を受けた場合 の座屈応力は、式(1)と同様にして、以下の式(18)で算 となり、上板・下板は「水平面内曲げモーメント」によ り弾性範囲内での座屈が生じることが予想される。 出することができる。 「円周方向圧縮力」によって、ポンツーンの全板に t R E  c , R 4  2   2 12   1   bR ここで、 c, R 2     は圧縮荷重が作用する。 ・・・・・(18) 外リム板あるいは内リム板が圧縮荷重を受けた場合 の座屈応力は、式(18)で算出することができる。上板 : 外リム板・内リム板の 圧縮荷重による座屈応力 あるいは下板が圧縮荷重を受けた場合の座屈応力は、 式(1)で算出することができる。 外リム板を想定して、代表的な以下の数値を式(18) に代入して、座屈応力を求めると、 E  tD bD メント」および「円周方向圧縮力」が作用した場合、 (N/mm2) = 200,000 = 0.3 = 6.0 (mm) = 700 (mm) 上板・下板で弾性座屈が発生し、 座屈した断面で負担し ていた荷重が非座屈断面に配分され、 外リム板・内リム 板が座屈し、 最終的には降伏に至ることが予想される。 4.2 スロッシングシミュレーションからの応力解 2 c , R 200,000 6..0  4     12 1 0.3 2 700  2   = 53.12(N/mm2) よって、浮き屋根ポンツーンに「水平面内曲げモー 析 スロッシングシミュレーションにより明らかにした ・・・・・(19) 浮き屋根挙動を基に、浮き屋根の損傷原因を解明する となり、外リム板は「水平面内曲げモーメント」によ ために、浮き屋根の応力解析は3.2項に示した方法 り弾性範囲内での座屈が生じることが予想される。 から以下に変えて実施した。  また、上板・下板には、面内曲げ荷重が作用し、圧縮 構造および変形の対称状態を考慮し、1/4 周 側では座屈が生じることになる。この座屈応力は、式 のポンツーンを抜き出してモデル化 (3)と同様にして、以下の式(20)で算出することができ  る。 b, D E 23.9   12 1 2 ここで、 b, D 2 t D   b D   設定したポンツーンの変形量 スロッシングシミュレーションで得られた 2   ・・・・・(20)  : 上板・外板の面内曲げ荷重による 座屈応力 モデル ポンツーンの変形(縮み)量を与えた。 代表例として、北海道製油所の No.100651 タンクの 応力解析結果を図5に示す。 -7- N/mm2 外リム板 294 降伏応力 245 半径方向への 収縮(縮み) 196 内リム板 147 98 上板 49 0 図5 No.100651 タンク 二次モードのスロッシングに対する応力解析結果 (Mises 相当応力分布図) 図5に示した No.100651 タンクの例では、変形(縮 楕円形)変形と一様圧縮変形との重ね合わせとして近 み)量の大きい側の広い範囲で、塑性座屈が生じるこ 似し、オーバリング変形によって作用する「水平面内 とが応力解析結果から解った。 曲げモーメント」は、以下の式(24)で表わしている。 また、スロッシングシミュレーションで得られた結 果を整理して、ポンツーンを半径方向へ収縮させる変 形(縮み)量をスロッシング高さから求める方法を提 E I M x 6.25  2  x Rm ここで、 M x 4) 案した 。 Ix  2 max 0.082  2 ・・・・・(22) ここで、  2 2 1  2 2  2   max   R  ・・・・・(24)  m  2 : 水平面内曲げモーメント : ポンツーンの断面二次モーメント : タンク側壁でのニ次モードの最大波高 : 係数 1 : デッキ板面外変形量 とタンク側壁で  2 の 2 次モードの最大波高max とを関係付 : 最大縮み量(半径分) : 二次変形の和/2(≒二次モードの スロッシング高さ) ける係数で、ポンツーン断面剛性による 影響を表したもの 4.3 国内法基準類における応力解析 「水平面内曲げモーメント」及び「円周方向圧縮力」 の基となるポンツーン半径方向変位量は、スロッシン  A  ・・・・・(25) 1 exp 14,500 R 2  m   2 : ポンツーン半径方向変位量とデッキ板面 グシミュレーションで得られた結果を整理したものを 外変形量とを関係付ける係数 取り入れ、以下の式(23)で算出することを提言してい 2 0.082  Rm ( Rm の単位:m) る。 u r 0 0.082  2 (単位:m) ・・・・・(23) ここで、 ur 0 : ポンツーン半径方向変位量  : デッキ板面外変形量 この変位は外周ポンツーンのオーバリング(oval: -8- また、一様圧縮変形による「円周方向圧縮力」は、 参考文献 1) 三浦ら,出光技報,浮き屋根式タンクのスロッシン 以下の式(26)で表している。  2   max  N  2.08  2  E A R   ・・・・・(26)  m  2 ここで、 N : 円周方向圧縮力 A : ポンツーン構成部材の断面積 グシミュレーション,VOL.47,NO.3,2004 2) 危険物保安技術協会, 屋外タンク貯蔵所浮屋根審査 基準検討会 報告書,平成 16 年 9 月 3) 寺前ら,石川島播磨技報,過大なスロッシングを受 けるタンク浮屋根の最終強度,第 24 巻,第 6 号, 「水平面内曲げモーメント」および「円周方向圧縮 力」からの応力の算出は、以下の式(27)および式(28) 昭和 56 年 11 月 4) 三浦,石油学会 第 35 回装置研究討論会,十勝沖 で算定することとしている。 Mx Z x  eff b 2  ここで、 b 2 Z x  eff Aeff 日 ・・・・・(27) : ポンツーン水平面内曲げ応力 : ポンツーン有効断面係数 N c 2   Aeff ここで、 c 2 地震によるタンク損傷と対策,平成 16 年 12 月 9 ・・・・・(28) : ポンツーン円周方向圧縮応力 : ポンツーン有効断面積 タンク側壁での 2 次モードの最大波高は速度ポテン シャル理論に基く線形解であり、以下の式(29)で算出 できるため、これら一連の提言で、応力の算定までが 行える。 2 D  2  max   0.073   Sv T   2g 2  ここで、 T2 ・・・・・(29) : 二次モードのスロッシング固有周期 5.おわりに (1) 浮き屋根の応力状態と損傷メカニズムを、一般的 な応力計算式を使用して整理した。 (2) スロッシングシミュレーションを実施し、その結 果を用いての応力解析により、平成 15 年十勝沖地 震時のスロッシングによる損傷原因を解明した。 (3) この応力解析と、本誌で報告したスロッシングシ ミュレーション結果が取り入れられて策定された 国内法基準類での浮き屋根の強度評価の方法との 関連性についてまとめた。 -9-
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