1.1 精巣

1 ♂
1
♂
♀
未分化性腺皮質
退化
卵巣
髄質
精巣
退化
ミューラー管
痕跡
卵管・子宮・膣深部
ウォルフ管
精巣上体・精管・精嚢腺
痕跡
尿生殖洞
尿道・前立腺・尿道球腺
膣前庭・尿道
生殖結節
陰茎
陰核
前庭壁
陰嚢
陰唇
1 ♂
1.1 精巣
1.1.1 精巣下降
/ 鼠径輪(鼠径管
腹腔(腎臓直下にできた精巣)
/ 鼠径部皮下)
/ 陰嚢∗3
■時期 “−” :胎齢(−0:胎生末期)、“+” :生後(+0 :生後すぐ)。単位:“日”。
種
性分化
開始
¾
陰嚢へ下降し終わる時期
牛
40 日
40 日
羊
35 日
35 日
馬
(38 日)
?
豚
30 日
35 日
-0∼+0
犬
38 日
38 日
+30(もっとも遅い。出生直後は腎臓の下。5 日日齢で鼠径輪へ。)
猫
30 日
30 日
+20
兎
16 日
16 日
(40 日=直検で妊娠がわかる最短時間)
胎齢 3 ヶ月
+0∼+7
■機序
1. 腹膜が鼠径部から陰嚢に向かって突出し、鞘状のふくらみ [腹膜鞘状突起] を形成。
2. 精巣を覆う腹膜壁ひだである生殖鼠径靱帯のうち、精巣の後ろ端∼鼠径管までの部分が太く発達(精巣
導帯)。
3. 精巣導帯が、鞘状突起の中を、陰嚢に向かってのびてゆく。
4. 鞘状突起+精巣導帯の伸長+その後の精巣導帯の収縮 =⇒ 下降
アンドロジェン、ミューラー管抑制物質、腹圧、下垂体前葉からの性腺刺激ホルモン etc が関与。
1.1.2 位置
Ru
馬犬
豚
猫
向き
↑
−→
%
%
位置
頭
種
尾
1 ♂
2
1.2 精子
1.2.1 精子の構造
頭部=PAS 反応陽性 .
ヒアルロニダーゼ(卵胞上皮細胞を散開)
アクロシン(透明体を散開) .
頚部=壊れやすい .
尾部 .
中片部=精子のエネルギー産生 .
(ミトコンドリア存在) .
主部 .
終末部 .
細胞質小滴: 成熟期に、頭部の余分な細胞質が、周囲を被膜に囲まれながら放出されたものが、頚部に残存
したもの。精巣上体を移動の間、中片末端まで移動したあと、離れる。
細胞質小滴を持っている精子は、::::::::
未熟精子 (豚で 1%、一般には 0∼1%)
。
射精精子にはほとんどない。
多い ∝ 造精機能 5。
i
1.2.2 精子形成過程
のばす
発達
(胎生期)未分化の胚上皮 =⇒ 索状突起(性索)=⇒ 細長い管(精細管)=⇒ 原始生殖細胞が精細管内に
入り込む =⇒ 精祖細胞∗4 として管壁である基底膜の内側に一列に並ぶ。
細胞数 染色体
精子形成過程
精子完成過程
精祖細胞 (A/A2 /中間/B 型) 1→8
2n
性成熟期になったら、分裂/増殖
一次精母細胞
16
2n
二次精母細胞
32
n
精子細胞
64
n i
精子
64
n
∗4 胎生期では生殖細胞とも呼ばれる
] 減数分裂
変態(尾部を持つようになる)
1 ♂
3
1.2.3 造精
✎ 生殖巣が片一方なかったとき、
卵巣では、卵子・ホルモンとも代償する。
精巣では、代償しないので、精子数は減少し、テストステロンも半分以下にまで減少する。
また、両側性でもテストステロンがわずかにでているので、性欲はある。
• 体温-5 ℃でないと、造精できない。
• 陰嚢の温度を下げるために · · ·
– 陰嚢の表面の多数の ひだ・汗腺。
– 被毛・皮下脂肪 がない。
– 精巣挙筋と肉様膜皮膚の内側で、気温の高いときは引っ張り下げる(対壁からはなす)&陰嚢壁を薄く
したり表面積を広げる。
– 蔓状静脈叢(精索内を下降する精巣動脈が著しく迂曲してコイル状 + 分岐して蔓状に動脈に絡む静脈)によって、動脈
血の温度 5 と拍動 5。
1.3 射精
精巣
精巣上体
セルトリ細胞∗5 の末端を離れる =⇒ 精細管∗6 (曲精細管)腔に遊離 =⇒ 直精細管∗7 =⇒ 精巣網∗8 =⇒ 精
巣輸出管∗9 =⇒ 精巣上体尾部に到達。(尾部の精巣上体管は極太で、精子はここで貯蔵されて)射精の機会を待つ。
1.3.1 精巣上体管
鼠径管
精嚢腺−→
@精丘
−→ 精管 −−−→ 精管膨大部 −−−−−−→射精管−→ 射精口
• 精子は、精巣上体を通過中に、上体管分泌液の作用によって成熟し、受精能を持つ。
• 尾部の精巣上体管は極太で、精子はここで貯蔵されて射精を待つ。
• 精巣上体通過:7∼14 日。尾部に貯蔵された精子の生存日数;20∼26 日間受精力あり。
生殖道内が嫌気的・pH 低い・糖 (果糖・ブドウ糖・マンノース) 少量・K/Na 比が高い・精巣上体液が高張 =⇒
精子の呼吸/解糖 5=⇒ 長命∗10 。
• 精巣上体において死滅した精子は、上体管の上皮細胞によって分解吸収される。
∗5 セルトリ細胞:精細胞の間にあって精細管の基底膜に接して、精細 ∗7 直精細管:曲精細管が精巣縦隔に近づいて、短く細くまっすぐに
胞への栄養供給やこれらの細胞の支持/保護の働きを持つ。エス
なったもの。
トロジェン・インヒビンを分泌。
∗8 精巣網:精巣の上端付近で白膜を貫き、小さな盲嚢状のふくらみを
精細管の外層にある基底膜には、内側に精子を形成する精細胞と
作る。
セルトリ細胞が存在する。
白膜とは、精巣の表面を覆う皮膜で、表層の光沢のある固有鞘膜
∗6 精細管の間隙の結合組織中には、血管や神経が走行しており、ア
の内層に存在する。
ンドロジェンを分泌する間質細胞(ライディッヒ細胞)も存在す ∗9 精巣輸出管:数十本あり、迂曲している。
る。
∗10 精子の長期保存のために、精子の生存に不利な条件/環境を除去
&精子の運動/代謝を抑制しエネルギーの消耗を防止。
ただし、活力が高い/代謝が盛ん ∝ 生存性/受精能力が高い。
1 ♂
4
1.3.2 生殖道
牛 羊
馬 豚犬猫
精管膨大部
.
.
. × . ×
精嚢腺
.
.
+ . ××
膀胱の背面で紡錘形にふくらむ
馬 膠様物 for 殺菌。繁殖季節に。タンパク/K/酵素。
精丘で開口して精管と合流 −→ 射精管。精管膨大部外側。
.
前立腺
伝搬部 体部
. + .
rat/mouse 凝固腺 with 精嚢腺。精子の代謝に関係する電解質。
膀胱/精嚢腺の後方で尿道を取巻く。羊:体部なし・馬:伝搬部なし
.
尿道球腺
陰茎
.
弾 弾
. +× .
血 弾血血
豚 膠様物 for 膣栓。カウパー腺。尿道が骨盤からでる付近の背側
弾性線維型 (Ru・豚。&陰茎 S 字曲の伸長)
血管筋肉質型 (馬・犬。S 字曲なし。陰茎海綿体の膨張∗11 )
交尾は、血管筋肉型では長時間で圧刺激による。弾性線維型では短時間で温度刺激による(牛人工膣は 40 ℃固定。豚は長時間)
。
食肉目では、陰茎骨(陰茎先端の尿道背側で、陰茎中隔が仮骨したもの)
1.3.3 精子の成熟
• 精巣上体の移動の間に成熟
• 形態的/機能的成熟・運動性。
運動は、♂の生殖道内では抑制されている(精子の生存日数:頭部 < 精管 < 尾部)
。
受精能は♀の生殖器内で一定時間を経過した後に初めて獲得する(精子生存性 : 膣酸性 < 子宮頚塩基性)
。
1.3.4 精子の運動
外部にでると運動性 (+)→ 生殖道内の色々な異物に付着 ⇒ 最後までたどり着けるのは少ない(数千個)。
流走性: 流れに逆らって動く。
走触性: 異物に頭をくっつける。
走化性: 膣粘液 < 子宮粘液 < 卵胞液 に向かいやすい。
日光に 1∼3 分暴露で、活力 4
1.3.5 精子の受精能
♀内で、膨大部に達するまでに、受精能(精子の卵子内への侵入)の獲得を行う。
ハイパーアクチベーション: 前進運動&スタースピン(定位置で尾部の振幅の大きい星形を描くような運動)
先体反応
: ヒアルロニダーゼ(卵丘細胞を結合しているヒアルロン酸を融解 −→ 透明体)
アクロシン(透明体の軟弱化 −→ 囲卵腔)
∗11 陰茎海綿体膨張:陰茎海綿体の血流 4& 坐骨海綿体筋で陰茎 V
の流出 5
1 ♂
5
1.4 精液の性状
■肉眼で
精液量 : 精液管(目盛り付き試験管)で。豚では膠様物をガーゼで分離。
色
: 乳白色∼灰白色。褐色=組織/血液/組織片、緑色=膿汁 etc。
臭気
: 無臭。
雲霧様物: 激しい移動 ∝ 活発な精子数が多い。
pH
: pH 7.0 前後。
粘稠度 : 緬山羊>牛>馬/豚。
■顕微鏡下
精液活力: 正常で 80∼95+ + +。AI 時の液状精液は 60+ + +、凍結精液は 40+ + +。
生存率 : 生体染色で、生存精子はエオジンで染まらない。
精子数 : 血球計算板 etc を用いて。
形態
: 塗沫標本で異常精子/奇形精子。5∼10%
億
ml
億/ml
AI 億
ml
保存℃
期限日
牛
50
5
10
0.5
0.25-0.5
4∼5
4∼5
羊
30
1
30
1
0.2-0.5
4∼5
4∼5
馬
100
80
2.5
10
20-25
4∼5
6∼12hrs
豚
400
250
2
50
50-70
15/6
3/5
犬
7.5
10
0.5
2
1-3
4∼5
3∼4
猫
0.6
0.04
17
■検査
Mb 還元能: メチレンブルー還元時間を測定。活発な精子は色素を還元して無色に。
温度感作 : 温度感作に対する精子の抵抗性。
微生物検査:
2 ♀
6
2 ♀
2.1 卵巣・卵管
卵巣門
腎臓—卵巣提索 (卵巣間膜=子宮間膜前縁)—-− − −− 卵巣—固有卵巣索—子宮角端
卵巣
牛/羊
馬
豚
アーモンド
腎臓
桑実
犬
猫
卵形 (やや扁平)
皮質∗1 と髄質の
位置が逆
排卵
(卵巣嚢)
(豚 etc と同じ)
排卵窩からのみ
広く開く
排卵窩だけ
(馬以外)卵巣門以外、卵巣表面のどこからでも
よく発達。半分
深い。殆ど全体
(卵巣嚢はない)
の卵巣
子宮と
境目なし
突出犬猫と同じ
ロゼット状突出
乳頭状に突出。スリット状に開口。
子宮頚管
輪状ひだ
短く直線。多く
長くらせん状
頭背 → 尾腹へ
の縦襞
斜め
2.1.1 卵子形成過程
染色体
∗2
1∼4 コ
卵祖細胞
一次卵母細胞
2n
(グラーフ卵胞
二次卵母細胞
∗4
一次極体
∗3
)
も
at 卵巣皮質。
i
2n
犬/狐ではここで排卵。
n
n
卵子
n+n
接合体(受精卵)
性成熟&減数分裂
排卵∗5
i
受精 → 二次極体放出∗6
∗1 皮質:一般的な家畜では髄質を取り囲む部分で、種々の発育段階の ∗4 一次極体:一次卵母細胞から分裂した 2 つの細胞のうちの一つ。
多数の卵胞および黄体が存在する。
細胞質を持たない小さな細胞で、受精に関係せず、囲卵腔/卵黄
∗2 卵祖細胞:胎生期のみ増殖し、出生後増えることはない。
周囲腔に放出 → 消失する。
片方の卵子を除去したとき、排卵数・血中のホルモン濃度は代 ∗5 排卵:第二次成熟分裂が完了しない分裂中期に、卵胞の発育限界
償される。排卵周期も変わらない。枯渇の時期は早くなる。
→ 排卵(放線冠に包まれたまま放出される。Ru 馬豚はすぐ消
∗3 グラーフ卵胞:増殖を続けた顆粒層細胞の一部に空隙(卵胞腔)が
失。)
でき、卵胞液が貯留し、十分に成長した卵胞。
∗6 二次極体放出:卵管上部で、精子と卵子が出会い、精子の侵入を受
けてから起こる。
2 ♀
7
2.1.2 排卵 → 黄体形成
• 排卵の機序は、
1. 排卵直前の卵胞は卵巣表面に隆起/突出。内圧を保ちながら膨張。卵胞の頂点は透明(排卵斑)。
2. 突出部分の卵胞壁(スチグマ)が破れる。
3. 卵子&卵胞液&顆粒層細胞の一部が、排出。
• 黄体は、排卵してできた陥没にできる。
• 出血体(血液貯留。Ru:小さい・馬豚:大きい)
2hour
−−−−→ 黄色の大型細胞
が埋める
½(卵胞壁由来。ルチンを持つ)
¾
1week
−−−−→ 球状の大きな
黄色(牛馬羊)
の組織塊 [開花期黄体]
肉色(豚)
1week
• 不妊 −−−−→ 退行 (白体 (灰白色)。牛:赤体 (鉄錆色)) [発情 (周期) 黄体]。
妊娠 −→“妊娠黄体”(長く持続)。分娩後退行して白体。
• [閉鎖卵胞] 卵巣皮質中の卵胞のうち、成熟して排卵/黄体形成するものは一部で、大部分の卵胞は排卵せ
ず、発育の途中で萎縮/退行する。
排卵窩: 馬の、卵巣門∗7 の反対側にある狭いくぼみで、胚上皮に覆われている。
馬の卵巣は殆ど全面が漿膜に覆われており、排卵はこの部分からのみ行える。
卵巣嚢: 卵管間膜の一側が卵巣につながり∗8 、卵巣との間に作られた嚢状構造∗9 。
受精 : 卵管膨大部で起こる。犬では卵管峡部。(卵子受精能は 6∼12 時間。犬は 2 日間)
犬は、減数分裂する前に排卵。卵管中で減数分裂(それ以前に精子と出会っても受精できない)。
2.2 子宮∗10
双角子宮:馬山羊(豚犬猫)内腔に隔壁がなく単一の腔所。前方が左右の子宮角に分
裂。豚犬猫は分角子宮(双角と分裂の中間。豚ではわずかに隔壁。)
分裂子宮:牛緬羊
縦の隔壁が内腔を左右に二分。単一の内腔(真の子宮体)
は子宮頚近くの一部分だけ。
重複子宮:兎 etc
膣のみが融合。子宮は融合せず左右 2 本の管。
子宮小丘: Ru に特有の構造。個数に種差がある。
子宮内膜の表面で、子宮の縦軸に沿ってボタン状の隆起物が配列したもの。
この部位の粘膜には筋線維と子宮腺がない。
妊娠期にこの部分に脈絡膜絨毛が侵入して結合し、胎盤を形成する。
子宮膣部: 牛, 馬の外子宮口の開口部が、膣腔内に半球状に突出。
膣前端は、子宮膣部を中心に前方に入り込んでいる(膣円蓋)
。
∗7 卵巣門:卵巣間膜(腹膜壁である子宮広間膜の前端部)が卵巣の ∗9 卵管の腹腔端は漏斗状の “卵管漏斗” で腹腔に開いており、その
一側に付着し、この付着縁(間膜縁)から卵巣に神経/脈管が出
周縁は不規則な花びら状の “卵管采” となっている。卵管漏斗の
入りしている部分。
深みに丸い卵管腹腔口がある。子宮端は “卵管子宮口” で子宮角
∗8 卵巣と卵管との間に直接のつながりはない。
内に開口している。
∗10 子宮の動脈:卵巣 A 子宮枝・膣 A 子宮枝・子宮 A
3 生殖機能のホルモン支配
8
3 生殖機能のホルモン支配
½
¾
光周期(季節繁殖動物)
/
o
/
o
o
/
o
/
o
外部刺激
視床下部
=>
O OO O
生物的遠隔刺激
(匂い・音・形)
O
O
OO O
3
F B1
OO
²
F B2
下垂体
下垂体後葉 4
=
QQQ
QQQ
QQQ
2
F B3
Q(
²
¤
¡ 1
o
/ 生殖子)
性腺(内分泌
性欲・性行動
£
¢
_
1
n
n
n
nnn
5
1
nnn 1
v
n
²
¤
¡
/ 乳腺 o o/ o/ o/ o/ o/ o/ 生物的接触刺激(温度・圧)
胎盤・子宮 5
£第二次性徴 ¢
直線:ホルモン支配、波線:神経支配、二重線:神経線維、FB:フィードバック(計 3 本)
3.1 哺乳動物の生殖系ホルモン
分泌母地
略称
視床下部
GnRH 性腺刺激 h
LH/FSH の分泌/放出
CRH ACTH 放出 h
ACTH の分泌∗1 。室傍核/正中隆起部に特に多い∗2 。
PIF
ホルモン名
作用
PRL 放出抑制因子 下垂体前葉の PRL の合成/分泌 5
視床-∼後葉 OT
オキシトシン
子宮収縮・乳汁射出 (3.3.2 節参照)
下垂体前葉 LH
黄体形成 h
卵胞成熟・排卵誘起・黄体形成/機能維持・プロゲステロン/アンド
ロジェン 合成/分泌・精巣間質細胞刺激
FSH 卵胞刺激 h
卵胞発育促進・精細管刺激・精子形成
ACTH副腎皮質刺激 h
副腎皮質ホルモンの分泌
PRL プロラクチン
乳腺発育・乳汁産生/分泌・そ嚢乳
松果体
性腺
メラトニン
性腺機能 5・4(羊系)
エストロジェン
発情徴候の発現・♀副生殖器の発育・♀二次性徴の発現・FB・乳
腺乳管系の発達
胎盤
ジェスタージェン
子宮内膜の着床性増殖・妊娠維持・FB・乳腺胞系の発育
アンドロジェン
♂副生殖器の発育・♂二次性徴・精子形成促進・性行動/攻撃性
リラキシン
恥骨結合・仙腸結合の弛緩(産道拡張)
インヒビン
FSH の分泌抑制
hCG 人絨毛性性腺刺激 h LH 様作用(妊娠黄体機能の補強)
eCG 馬絨毛性性腺刺激 h FSH 様作用(妊娠場に副黄体形成・妊娠の維持)
子宮
PL
胎盤性ラクトジェン 妊娠黄体の維持・乳腺発育・成長促進
PG
プロスタグランジン 黄体退行・子宮収縮
∗1 β エンドロフィンの分泌促進 →GnRH の分泌 5→ ストレス環 ∗2 小型神経細胞で合成 → 軸索内を移動 → 正中隆起外側部に運ば
境下の性腺機能不全に関与か。
れる → 下垂体門脈血中から放出
3 生殖機能のホルモン支配
9
1. 副生殖器を支配する性腺ホルモン [性ステロイドホルモン]
2. 性腺における生殖子の産生とホルモン分泌を支配する下垂体前葉のホルモン [性腺刺激ホルモン]
3. 下垂体前葉ホルモンの分泌を支配する視床下部のホルモン
4. 下垂体後葉ホルモン(♀)
5. 子宮/胎盤で産生されるホルモン(♀)
フィードバック
1. LH・FSH→ 視床下部
2. アンドロジェン・エストロジェン・ジェスタージェン → 視床下部
3. インヒビン −→FSH
3.2 視床下部-下垂体-性腺軸∗3
/ 視床下部
ED
Ä?
ÄÄ
Ä
4 7
1
ÄÄ
G
² ~ BC
3 下垂体 o
ED
@
??
?? 2 5 8
@A ? ² ¢ BC
性腺 (卵巣) /
GF
6
GnRH(F SH − RH ・LH − RH )
F SH ・LH
Estrogen/P rogesterone
1. FSH-RH を出して、FSH 分泌を刺激
2. FSH は卵胞を発育させ、卵胞から少量の E を分泌。
3. E による正のフィードバックにより、LH-RH 分泌を刺激。
4. LH-RH を分泌し、LH 分泌を刺激。
5. LH は FSH との協同作用により卵胞を発育させ、大量の E を分泌させる。
また、P も分泌するので E とともに発情徴候を示す。
6. 大量の E によるフィードバックにより、
7. FSH-RH5・LH-RH4。
8. LH の一過性の放出(LH サージ)を起こす −→ 排卵。
卵胞が壊れるので E5。黄体ができ P4。
9. P はフィードバックして LH5。
3.2.1 ヒトの閉経
1. FSH-RH を出して、FSH 放出を刺激
2. FSH が発育させるべき卵胞が存在しない =FSH がどこにも作用しない。
3. エストロジェンは分泌されない。そのために視床下部へのフィードバックも起こらない。
4. 上位は抑制されないので働き続け、FSH は分泌され続ける −→ 更年期障害。
∗3 視床下部-下垂体-性腺軸は、ホルモンによりつながっているため、
どれか一つが機能しないだけで、このサイクルが維持できずホメ
オスタシスが保てなくなる。
3 生殖機能のホルモン支配
10
3.3 視床下部ホルモン
3.3.1 性腺刺激ホルモン gonadotropin 放出ホルモン(GnRH)
生理作用 下垂体前葉に作用し、LH・FSH の 産生/放出を促進。
天然/合成のいずれも、FSH/LH 両方を放出する(→LHRH/FSHRH ではなく GnRH と呼ぶ)。
LH サージの時期には、外部より放出した GnRH に対する下垂体前葉の反応性は特に高くなり、この反応
性はエストロジェンにより付与される(エストロジェンの下垂体前葉レベルの正のフィードバック)
。
FB(-)=正中隆起・室傍核、FB(+)=視索前野・前視床下部
■GnRH の応用
• 下垂体機能チェック(人)。卵胞嚢腫∗4 の治療(獣)。
• 類縁物質(GnRH-analogue)
– 構造を一部変えたもの。天然型より生理活性が高い。
– 生理活性が高すぎる → 一過性に LH/FSH を放出 →LH/FSH のストックが枯渇 = 抑制作用。
– 子宮内膜症∗5 、前立腺肥大∗6 の治療(いずれも人)。
– LHRH をシリコン etc の中に入れて皮下に埋める → 徐々に放出される →LH が徐々に分泌される
→ 視床下部 etc は「妊娠している」と見なす → 新しい卵胞の発育を抑制 = 避妊薬。
3.3.2 オキシトシン
分布 : 視床下部-下垂体後葉
合成 視床下部室傍核・視室上核の神経分泌細胞。
貯蔵 分泌顆粒中に貯蔵後、神経線維を通って、下垂体後葉で。
放出 視床下部に到達したインパルスによって、血中に。
作用 : 子宮平滑筋の収縮
分娩時に陣痛
乳汁を排出
→ 精子が子宮から卵管に移動するのを助ける。
→ 胎仔の娩出に役に立つ。胎仔による拡張刺激で分泌 4
乳腺の腺胞を取り巻く筋上皮細胞を収縮させ、腺胞にたまっている乳汁を排出。
感受性: ジェスタージェンプロゲステロンで 5、エストロジェンで 4。
∗4 特に牛において、卵胞が排卵することなく長く存続して質的に変 ∗5 性周期を止める → 卵巣の働きを止める → 子宮内膜の肥厚が止
性した異常な卵胞。一般に、正常卵胞の発育限度を超えて異常に
まる。?
発育したもの。持続性の強い発情徴候を示すことがある。“黄体 ∗6 「GnRH→LH→ アンドロジェン」を止める → 前立腺が小さく
嚢腫” もある。
なる。?
3 生殖機能のホルモン支配
11
3.4 下垂体(前葉)ホルモン
3.4.1 卵胞刺激ホルモン FSH・黄体形成ホルモン LH
♂
FSH
精細管(セルトリ細胞
∗7
♀
)に作用し、精子形成
過程の減数分裂前を促進(後段はアンドロジェ
∗8
卵胞を発育刺激 (卵胞上皮細胞 4・卵胞液の分泌・卵胞
腔の形成)。
LH との共同でエストロジェン分泌。
ン) 。
精細管径 4。精巣を発育刺激。
LH
ライディッヒ細胞の分化/増殖を刺激 →
アンドロジェン
∗9
の合成/分泌を促進 →
減数分裂後の精子の成長 4
発育した胞状卵胞を FSH と共同で成熟させる。
卵胞上皮細胞のエストロゲンの合成/分泌を促
進。
卵胞を破裂、排卵させる(以下参照)
。
✎ 成熟した卵胞が排卵するためには、前葉からの LH の急激な一過性の上昇 [LH サージ] が必要。
卵胞発育 → 血中エストロジェン濃度 4→ 視床下部における GnRH の分泌 4 & 下垂体の感受性 4=⇒LH サージ
感作
✎ 黄体形成:LH/FSH ; 卵胞上皮細胞/内卵胞膜細胞 + LH の作用 −→ 黄体形成(プロゲステロン分泌)
3.4.2 プロラクチン
視床下部から PIH(合成分泌に抑制的)。TRH・E・授乳・性的刺激で 4
♂: (アンドロジェンと協同して)前立腺/精嚢腺 etc の副生殖腺の発育を促進。
♀: 乳腺の発育・泌乳に関与(催乳ホルモン/乳腺刺激ホルモンとも)
。
鳩=そ嚢を肥大させ、そ嚢乳の分泌を促進。
ラット/マウス=黄体刺激作用(黄体の形態維持)・ジェスタージェンの分泌を促進。
∗7 FSH は、間質細胞を刺激しない。
∗9 アンドロジェンには精子形成促進作用があるので、LH はアンド
∗8 精子形成過程の後段はアンドロジェンに依存し、FSH が成熟精
ロジェンを介して間接的に精細管に働き、FSH と共同して精子
子の出現を早めることはない。
形成を促進する。
3 生殖機能のホルモン支配
12
3.5 性腺ホルモン
3.5.1 アンドロジェン(雄性ホルモン)
種類 テストステロン・アンドロステンジオン
分泌 LH→ ライディッヒ細胞。副腎・卵巣 (卵胞膜細胞)・胎盤。
作用 (ライディッヒ細胞 → 精細管 と局所作用)
– ♂の副生殖器(特に精嚢腺と前立腺)の発育/機能の促進・♂の二次性徴を発現
上皮細胞の分泌能 4−→ 精漿成分フラクトース/クエン酸/ホスファターゼ etc の分泌を支配。
– ♂型行動(攻撃性の亢進 etc)を刺激。
– 精子形成(減数分裂以後)
– 蛋白質同化作用(窒素の尿中排泄量 5→ 窒素が組織タンパクとして蓄積 =⇒BW4)
– 負のフィードバック(視床下部を介して、下垂体前葉の GTH(FSH/LH)分泌 5)。
■Androgen sterility
• マウス・ラット etc の♀で、生後 1 週間以内にアンドロジェンを投与すると、その個体が不妊症を示すこ
と。一生卵胞発育せず、排卵サイクルを持たない。
• 視床下部の神経系が♂型に変わる。
• 臨界期に種差がある。モルモット:胎齢 30∼65 日、兎:胎齢 22∼23 日、緬羊:∼胎齢 60 日。
3.5.2 エストロジェン(発情ホルモン。卵胞ホルモン)
種類 エストロン (E1 )・エストラジオール (E2 最強)・エストリオール (E3 E の代謝物)
分泌 卵胞顆粒層(内卵胞膜細胞・卵胞上皮細胞)
。黄体細胞・精巣・副腎・クローバー・人の胎盤(estriol)
LH
F SH
下垂体 −−→ 内卵胞膜細胞 −→ アンドロジェン −→ 卵胞上皮細胞 −−−→ エストロジェン
作用
– ♀の副生殖器の発育/機能の促進∗10 。
– 発情徴候(スメア像)。ジェスタージェンも関与。
– 小卵胞の発育促進。(兎) 黄体機能延長。
– 乳管系の発育を促進(腺胞はジェスタージェン)。
– ♀の第二次性徴の発現。
– フィードバック(大量+長期間 →FSH/LH 分泌 5、排卵前の急激 4→LH サージ)。
– 分娩時 E/P 比 4−→E 子宮運動 4+ 胎児の産道拡張刺激 −→ オキシトシン 4
∗10 E+♀:卵管運動の亢進。卵管子宮端を収縮 → 受精卵をしばらく
とどめる。子宮内膜の発育増殖/充血の促進。子宮筋の増殖肥大・
自発運動を促進、オキシトシン感受性 4。子宮頚管の弛緩/粘液
分泌を促進。膣粘膜を肥厚し上皮細胞の角化を促進。外陰部の充
血/腫大/弛緩。
3 生殖機能のホルモン支配
13
3.5.3 ジェスタージェン(黄体ホルモン)
種類 プロゲステロン
牛馬羊
分泌 黄体・胎盤牛羊馬の妊娠後半・卵胞排卵前に一過性の分泌 兎ハム
作用
LH
FSH・プロラクチン
ラット LH・プロラクチン
– 子宮内膜の着床性増殖(胚着床の準備状態。エストロジェンの先行作用を受けた子宮内膜 −→ 上皮
の増殖・子宮腺の樹枝状の分岐発達・多量の子宮乳分泌 −→ 内膜基質を浮腫状にする。
)
– 子宮筋の自発運動∗11 5、オキシトシン感受性 5。
– 胚着床以後の妊娠維持(胎盤からも分泌している、緬羊・馬・モルモット)∗12 。
– 乳腺の腺胞系の発育促進(エストロジェンとともに)。
– フィードバック作用(大量+長期間 → 視床下部 →FSH/LH 分泌 5、適量+短時間 →LH サージ)。
– 少量+E−→ 発情徴候 4。
– エストロジェンとの相互作用。エストロジェンがある比率存在すれば促進、同量のときは拮抗。∗13
促進 · · · 着床反応・脱落膜反応・着床性増殖・乳腺反応 etc
拮抗 · · · 子宮運動の促進・膣粘膜角化・子宮頚管弛緩・発情誘起
応用 LH 抑制(排卵抑制)作用の強い 19-ノルテストステロン誘導体で、経口避妊薬・家畜の発情周期の同期化。
■プロゲステロンと流産防止
✎ 流産防止のために妊娠早期に P−→ 胎仔の性分化が進んでいたら、胎仔は半陰陽。
羊・豚・犬で。遺伝性の時もある。
初潮前の生後 6 ヶ月の頃に、陰核が肥大し♂ホルモンを分泌するようになる。
治療のためには、生殖腺(子宮)の摘出・肥大部分の外科的切除。
3.5.4 リラキシン
分泌 黄体豚/馬/ラット・子宮兎/モルモット(エストロジェンとプロゲステロン両方の刺激で)・胎盤兎/馬/犬/猫
発情周期中は低い →(牛/人/兎)妊娠中期に急激に濃度 4→ その濃度で維持 → 分娩直後 5。
作用
∗14
エストロジェンが作用しているときのみ惹起。
妊娠の維持 妊娠中期、子宮の自発運動を抑制。
分娩を助ける 分娩期、頚管の拡張と骨盤靱帯の弛緩。
∗11 子宮筋の自発運動:卵管の子宮端の括約筋を弛緩して、卵子の子宮
内侵入を可能にする。子宮頚管の収縮と濃厚粘液の分泌。
∗12 P の胚着床以後の妊娠維持:子宮内膜の分泌機能の亢進・子宮運
動の抑制、子宮頚管の緊縮。
∗13 ジェスタージェンの作用の多くは、エストロジェンの作用が先行
する必要がある。
∗14 リラキシンの作用:
– 子宮の自発運動 5(モルモット/マウス/ラット)
– 子宮頚管の拡張(牛/豚/ラット/マウス/人)
– 恥骨結合(モルモット/マウス)の弛緩。
仙腸結合(牛/緬羊)の弛緩。
– 乳管の発育。
3 生殖機能のホルモン支配
14
3.5.5 インヒビン
分泌 ♂セルトリ細胞・♀卵胞上皮細胞
FSH によって、合成/放出促進
作用
– FSH の選択的 5(ネガティブフィードバック)。LH5∗15
– GnRH とともに、雌雄の生殖機能を調節。
応用 卵胞嚢腫の診断
3.6 子宮および胎盤ホルモン
3.6.1 絨毛性性腺刺激ホルモン
妊娠初期に卵胞を発育させ、黄体を刺激して黄体を持続させ(妊娠を維持させ)る。
連続投与により抗体産生。
■馬絨毛性性腺刺激ホルモン eCG(または PMSG)
分泌 妊娠初期。内膜杯子宮内膜に隆起して形成される。
血清中に多量に出現。MW:53k と大きいので尿中に排泄されない。投与したら高濃度が持続。
作用 FSH と類似。LH 作用も若干ある。
妊娠 → 血中に PMSG 出現 → 新しい卵胞の発育 →(黄体化して)副黄体形成 → ジェスタージェン分泌
=⇒ 妊娠維持。♂に投与すると精子形成。
応用 卵胞発育障害の治療・過剰排卵誘起処置(「強い FSH 作用と弱い LH 作用 → 卵胞発育」を利用)
■人絨毛性性腺刺激ホルモン hCG
分泌 妊娠初期、胎盤絨毛の栄養細胞から分泌 −→ 尿中に排泄。
作用 LH と同様(排卵誘起・黄体刺激作用)
妊娠初期の受精卵着床時の黄体機能の増強。
応用 過剰排卵を誘起。免疫学的に妊娠診断キット
3.6.2 胎盤性ラクトジェン
分泌 胎盤(霊長類/齧歯類/Ru のみ)
作用 プロラクチンと類似(乳腺の発育・泌乳・そ嚢乳の分泌促進)
。
黄体刺激作用(齧歯類)
∗15 GnRH が下垂体に作用しているとき、GTH 産生細胞の GnRH
受容体数 5→LH 分泌が若干 5。
3 生殖機能のホルモン支配
15
3.6.3 プロスタグランジン
■局所ホルモン local hormone 標的器官 or その近接組織で合成され、ほぼ直達的に作用を発揮するオータコ
イド。
分泌 子宮内膜・胎盤(分娩時)
作用 黄体退行ホルモン
–
(子宮/胎盤)子宮(平滑筋)収縮
–
(精漿)子宮/卵管の自発運動
∗16
F2α 黄体退行
−→ 陣痛の発現
4→ 精子の受精部位までの移送 4。
(牛・羊・豚・モル)
応用 発情の同期化。分娩誘起(豚の計画的分娩∗17 )。人工流産や黄体遺残 etc 繁殖障害の治療。子宮蓄膿症の
治療?
■対向流機構 CCM(Counter Current Mechanism) 子宮で産生された PGF2α は、循環系を介して全身を巡るのではなく、CCM によって卵巣に到達する(緬羊・
モルモット)。
子宮で産生された PGF2α → 子宮 V→ 卵巣 V→ 卵巣 A(卵巣 V に密着蛇行)→ 卵巣 → 黄体退行
■黄体退行と子宮との関係
牛/羊/豚/モル: 子宮から PGF2α (黄体退行因子)放出 → 黄体期に子宮をとると、黄体が退行しない。
黄体維持期間 ∝ 切除量(子宮を全摘出すると退行しにくくなり、妊娠期間ぐらい黄体が持続する)
犬/猫
: 黄体退行因子は子宮からでていない → 子宮切除の有無/量には無関係。
3.7 松果体ホルモン-メラトニン
分泌 松果体(・網膜・ハーダー腺・腸管・脳脊髄液)
作用
– 生物時計の支配下にあり、合成分泌は暗期∗18 に 4。恒暗条件で概日りズム。
– 性成熟に抑制的。ex 性腺機能 5(短日型季節繁殖動物∗19 では、促進)
– 羊/山羊:短日に発情(メラトニン 4 で性ホルモン 4)
馬:長日に発情(メラトニン 5 で性ホルモン 5)
応用 短日動物に、繁殖季節以外の時に皮下移植して発情誘起
∗16 PGF2α による黄体退行:血管収縮作用による卵巣血流量 5& ∗17 豚の計画的分娩は、PG による黄体退行 etc の作用を利用してい
GTH の 黄 体 維 持 効 果 に 対 す る 拮 抗 作 用 。子 宮 静 脈 血 中 の
る。豚の多頭産による圧死を防ぐため、飼育農場の営業時間内に
PGF2α 濃度は、発情周期の末期に黄体の退行に先行して起
出産させるようにする時に使用。
こる。
光刺激
∗18 メラトニン:ほ乳類では、網膜 −→ 視床下部 → 上顎交感神経 →
松果体 という経路で伝達され、メラトニン合成系酵素の活性を
変える。
∗19 季節繁殖動物は、山羊・馬・羊・猫 etc の♀。狸・鹿は♂であっ
ても夏場は LH5/無精子である。
4 生殖周期
16
4 生殖周期
幼弱期は微量なアンドロジェン/エストロジェンで GnRH 分泌 5−→ 春期発動∗1 で視床下部の閾値が上昇
周年繁殖動物: 妊娠しない限り、ある一定間隔で性周期を繰り返す動物。
牛・豚・犬・兎・シバヤギ。
季節繁殖周期: ある一定の季節に限って生殖活動がみられる動物。
発現には、日照時間・温度・栄養・異性の存在 etc が必要。
短日:緬山羊。長日:馬・猫・野鳥 etc。
完全生殖周期: 妊娠が成立したときにみられる完全な形の生殖周期。
卵胞発育 → 排卵 → 受精 → 着床 → 妊娠 → 分娩 → 泌乳
不妊生殖周期: 不完全生殖周期・発情周期とも。家畜が妊娠しない場合に繰り返す性周期。
完全発情周期: 発情の周期的変化を構成する相が、排卵を境に、卵胞相と黄体相からなるもの。
卵巣周期が規則的に繰り返され、ほぼ排卵に同調して発情が起こる。
不完全発情周期: 黄体相を欠くもの。交尾刺激を欠く場合には、形成された黄体はジェスタージェン分泌能
を欠き、機能はない。
ラット・マウス・ハムスター。
4.1 偽妊娠
犬
不妊の場合にも、黄体は妊娠期に匹敵するぐらいの期間・機能を発揮し、子宮や乳腺は妊娠期と似たよう
な発育を示す。
猫
交尾刺激により排卵が起こり、機能黄体が存在する=偽妊娠となる(P 分泌能は低く、臨床症状はない)。
4.2 出血
牛: 黄体退行時、未経産牛で∗2 。 ただし外部にはでないで、子宮頚管が赤くにじむ程度。
発情期に、エストロジェンによって子宮小丘/その間の毛細血管が充血/拡張 → 黄体退行 → 血液が滲出
=⇒ 発情終了後に出血。
犬: 発情前期に、エストロジェン 4→ 子宮内膜の毛細血管が充血/拡張 =⇒ 卵胞発育時に出血(発情出血)
人: 黄体退行期に、プロゲステロン 5→ 子宮粘膜の増殖した細胞が維持できなくなる → 脱落により出血。
ラット:
[プラセンタルサイン] 胎盤形成時に、わずかに出血する。
絨毛が発育したあと胎盤が発育したとき、胎盤と結合しない部分の絨毛が剥がれ落ちたもの。
犬の場合、帯状の胎盤なので子宮側の胎児によってせき止められる。一番子宮側の胎児の分だけ出現。
∗1 春期発動:生殖可能な状態になるまでの過程(性成熟過程)の開
性成熟:交尾できる状態。♂受精可能な精子の射出・♀生殖機能
始。生殖巣の急激な発育・♂精細管に精子出現・♀排卵可能な大
を全うできる状態での排卵
卵胞の発育開始。
∗2 経産牛:妊娠して子宮が拡大・血管 4→ 分娩後 子宮サイズは元
に戻るが血管はそのままでコイル状になる → 血圧 5。
4 生殖周期
17
4.3 不完全生殖周期の種差
種
繁殖発情排卵 偽妊娠 出血
牛
周年 多 自然
すぐに
+ 卵胞期 → 自然排卵 → 機能黄体形成(黄体期) −→ 退行 →。
交尾の有無に関係なく、排卵・黄体形成。
人
周年 多 自然
犬
周年 単 自然
+ 牛型と同様(期間が長い)
+
+ 卵胞期 → 排卵 → 機能黄体形成(=偽妊娠・発情休止期)→ 無発情期 →。
[無発情期] 非繁殖期で、次の繁殖期までの数ヶ月間は卵巣は休止状態。
ラット
周年 多 自然
+
SM
卵胞期 → 排卵 −−→ 機能黄体形成 [完全発情周期]=偽妊娠。
SM なし
−−−−−→ 非機能黄体 [不完全発情周期] プロゲステロン合成能がなく、副生殖器
に黄体期の変化がない。
兎
周年 - 交尾
+
SM
卵胞発育 −−→ 排卵 → 機能黄体 → 偽妊娠。
SM ない
−−−−−→ 卵胞閉鎖 → 新たな卵胞発育 ⇒ 卵巣には常に発育卵胞が存在 =⇒
卵胞期が持続 [持続発情]。”発情周期”という単語は使わない。
猫
長日 多 交尾
+
[不完全発情周期] 卵胞発育 → 卵胞閉鎖 =⇒GnRH4 しない卵胞期は終了 →
新たな卵胞発育=発情の回帰。兎とは異なり、発情は持続しない。
SM
不完全発情周期 −−→ 排卵 → 偽妊娠
4 生殖周期
18
4.3.1 遅延着床 delayed implantation
• (妊娠が成立した)完全生殖周期中にある。
• 胚が子宮に入り直ちに子宮内膜に着床するのでは、しばらく浮遊状態を続けた後、ある条件が整ったとき
に着床すること。
• 見かけ上の妊娠期間は延長する。
• 完全生殖期間中に組み込まれる ミンク・アザラシ・熊∗3 ・ジャイアントパンダ
泌乳相と繁殖季節が至適な環境に合致するように妊娠期間を延長している。
泌乳中に受精が起こった場合だけ組み込まれる カンガルー・ラット
泌乳中は胚は浮遊したまま生存を続け、泌乳が終わればすぐに着床する。
ジャイアントパンダの絵 ∗3 4 ヶ月ぐらい遅延する。冬眠直前に着床し、冬眠中に出産。
5 受精・妊娠
19
5 受精・妊娠
5.1 胎盤
無脱落膜胎盤
肉眼的
組織学的
母胎の欠損
種
散在性胎盤
上皮絨毛性
殆どない
馬・豚
多胎盤
結合組織絨毛性
軽微
Ru
帯状胎盤
内皮絨毛性
あり
食肉目
脱落膜胎盤
盤状胎盤
血絨毛性
著しい
血内皮性
人・猿
齧歯
5.2 胎膜
絨毛膜
位置
機能
一番外側
胎盤を介して、胎仔∼母胎の連絡。絨毛
が生じて子宮内膜に侵入し結合
尿膜
絨毛膜内側に接する
尿膜管で膀胱に連絡。一次破水・胎餅
羊膜
一番内側
二次破水 etc
胎餅 尿膜に、糸状の結合組織によって連結している、オリーブ色・暗褐色の塊。
絨毛膜/尿膜に生じた変性脱落細胞。
5 受精・妊娠
20
5.3 (妊娠検査)
牛
non-return
妊娠 (+)
日
遅いほど
40
直腸検査
発情の停止
子宮蓄膿症や子宮結核と鑑別
胎膜触診
38∼40
不妊角側の胎膜のスリップ
子宮 A 振動
80∼90
妊角側で律動的に起こる血管壁の振動
頚管粘液検査
35
子宮頚管粘液採取器で。
粘着性
粘着性で糊状/ゼリー状。
圧片標本
細かく切断されたひも状
P 濃度
21∼24
>1ng/ml(血清/乳精)。>10ng/ml(全乳)
E 注射
18∼20
5 日以内に発情が回帰しない。黄体遺残を誤診
超音波
20
胎嚢の存在(30 日以降 1cm の胎仔)
。
馬
直腸検査
cf. 右表
膣検査
充血がなく乾燥・外子宮口の閉鎖 etc
膣粘液検査
スタンプスメア
灰白色不透明・粘着性・乾燥後光沢
顕微鏡検査
粘液球/凝集塊・線毛上皮細胞
ホルモンの検出
1 子宮の収縮性の消失・柔軟化。
2 妊角肥大・妊角側の子宮動脈肥大
3 子宮の沈下・子宮広間膜前縁の触知
4 胎仔の触知
PMSG
40
血中
E
150
尿中
P
16/17
乳汁中 or 血中
超音波
14∼20
胎胞。18 日以降、心拍。
E 注射
月 直腸検査
6 妊角側の子宮動脈の振動
8 胎仔の運動
数日発情ない。黄体遺残を誤診
豚
超音波
ドップラー
母胎の心拍より速い心拍。
エコー
妊娠子宮の内容から
B モード
18∼21
胎嚢の存在(25 日以降 胎仔)
膣粘膜組織検査
30∼90
核分裂・細胞が 2∼5 層・基底部の隆起がない・核配列の規則性は様々・脱落なし
直腸検査
子宮動脈の振動
18∼21
外腸骨 A と比較
90
(E 濃度)
22∼31/80
外腸骨 A
<2(∼2
子宮 A
ヶ月>2。4 ヶ月∼=1)
エストロジェンの尿中排泄量の増加
P 濃度
21
次回発情予定前後に、血液・唾液・糞便から。
E 注射
17
発情発現しない。黄体遺残を誤診
6 人工繁殖
21
6 人工繁殖
6.1 精液∗1
6.1.1 希釈
増量・栄養の供給・低温ショックからの保護・pH の緩衝・浸透圧と電解質バランス・細菌の増殖抑制・耐糖能のために。
希釈ショックを受けないように、緩徐に低温で行う。
卵黄系 卵黄中にリピッド・レシチン(低温ショックに有効)。
卵黄リン酸緩衝液 (卵黄球で精子の運動が明視できない)
卵黄クエン酸ソーダ液 (牛)
卵黄クエン酸ソーダ糖液 (豚)
牛乳系 牛乳は加熱して使用。豚には粉乳糖液(ポリザノン)を使用
6.1.2 保存
低温の液体精液(豚)
・-196 ℃の液体窒素による凍結精液。
■凍結精液 -130 ℃以下で保存。融解は、4∼5 ℃(庭先では 30∼40 ℃∼数十秒)
。
1. 一次希釈
A 液(上記希釈液)で 5 倍以内に −→60∼90 分かけて 5 ℃下げる。
2. 二次希釈
最終希釈精液量の半分になるように A 液で再希釈 −→5 ℃の B 液(希釈液+グリセリン)を徐々に加える。
3. ストローに詰めグリセリン平衡(3∼16 時間 4∼5 ℃に静置)。
4. 凍結。
■凍害 グリセリン・DMSO etc で防止。
✎ 精子細胞内に速やかに侵入。
氷点 5 し氷晶量 5。
グリセリン自体電解質をよく溶かすので塩害防止。
• 細胞内水分の凍結(凍結速度が速いとき)
• 精子細胞外の凍結
– 氷晶の成長による機械的破壊
– 溶液中の氷結による濃縮下 −→ 塩害・pH の変化・細胞の脱水 etc
∗1 cf. 採取は p.4、性状は p.5
6 人工繁殖
22
6.1.3 注入
射精
注入場所
方法
牛
膣
子宮内
直腸膣法・頚管鉗子法
羊
膣
頚管内
ピペット注入式
馬
頚管/子宮
外子宮口内
豚
頚管/子宮
頚管内
ゴムカテーテル式
犬
膣
膣深部
シリンジを接続したストロー
長い柄の先端に注入嘴管と注入筒
6.2 繁殖機能の人為的支配
6.2.1 季節外繁殖
光の調節 馬の 12∼2 月に長日処理 −→ 卵巣活動早まる。7∼8 月では繁殖季節の延長。
緬山羊の 春∼夏に短日処理 −→ 発情早まる。
ホルモン 羊にプロジェステロン −→PMSG−→1∼5 日後に発情。
メラトニンを短日繁殖動物に。
6.2.2 発情の同期化
卵胞発育・排卵抑制 プロゲステロン(卵胞の発育成熟を一時的に抑制 −→ 発育程度がそろったら抑制を解除)
黄体の機能を調節 子宮刺激(ヨード剤 −→ 子宮内膜の炎症 −→PGF2α 放出)・PGF2α
黄体退行の時期をそろえ、卵胞の発育/排卵を一斉に起こす。
6.2.3 分娩誘起
合成グルココルチコイド: 36∼96 時間後。胎盤停滞起こしやすい。
PGE2 ・PGF2α
: エストロジェン併用で胎盤停滞 5。
6 人工繁殖
23
6.3 体外受精
体外培養
未成熟卵 −
−−−−→ 成熟卵
体外受精
+
受精能獲得/先体反応をした精子 =⇒ 桑実胚∼胚盤胞まで発生 −→ 移植。
未受精卵の採取 • 注射器による卵子の吸引採取(直径 6mm 以上の卵胞からでは、培養結果に再現性がない。)
• 卵巣皮質の細切
• 経膣採卵(過剰排卵処置後、生体内/内視鏡 etc で回収)
∗2
卵子の評価 卵丘細胞層が、厚く卵子に密着して付着しているもの(I 型)のみ使用。
卵子の成熟培養 第 2 減数分裂中期まで。
精子の成熟培養 受精能獲得・先体反応を誘起。
イオノフォア A 処理
Ca2+ (先体反応を誘起)透過
ヘパリン処理 ♀生殖洞内にも含まれており、卵子の侵入率が増加。
前培養
卵子と精子の結合 1. 媒精。受精。
2. 発生培養。卵子周囲の精子を除去。
3. 受精率の検査。10∼18 時間後の胚子で、精子尾部/第 2 極体/雌雄前核の有無を確認。
4. 体外受精胚の培養。継続培養 (7∼10 日間培養を延長)/共培養∗3 /化学物質の添加 (β-メルカプトエタノー
ル∗4 )
6.4 胚移植
過剰排卵の誘起: FSH/PMSG
発情の同期化 : PGF2α 。発情が 2 日以上ずれると受胎率 5、3 日以上で受胎しない。cf.6.2.2
人工授精&排卵: LH/hCG
胚の回収
胚の評価
: 開腹手術(緬山羊・豚では唯一)・子宮頚管経由(バルーンカテーテルを子宮腔内に入れて)
AI 後 (日)
場所
胚
3∼4
卵管内
4∼8 細胞
卵管灌流 (Ru=上行性・馬豚=下行性)
5
∼子宮膣上部
8∼16 細胞
卵管灌流・子宮角灌流
6
子宮角先端
16 細胞∼桑実胚
方法
子宮灌流
: 優秀胚/優良胚/普通胚のみ使用。凍結時は優良胚のみ。∗5
受精卵の保存 : 凍結。室温では 1 日以内、∼10 ℃では 2 日以内に使用。
移植
: 外科的・人工授精用の精液注入器と極細のストロー。牛:桑実胚∼胚盤胞、豚:4 細胞期
∗2 卵子の評価
• II 型=薄く剥離部分が多く、1/3 が卵子に密着。
• III 型=完全に裸。
• IV 型=膨潤し、蜘蛛の巣状に卵細胞に付着。
∗3 牛の卵管上皮細胞・卵丘細胞・胚子栄養膜細胞・線維芽細胞を胚
と共培養させると、胚の発生が促進。
∗4 β-メルカプトエタノール+6∼8 細胞 −→ 胚盤胞の発生率 4。
∗5 胚の評価(変性部位による)
優秀胚・優良胚(10%以下)
・普通胚(10∼30%)
・不良胚(30
∼50%)・廃棄胚(未受精卵/8 細胞以下の胚/変性卵)
7 その他
24
7 その他
7.1 失位
7.1.1 胎仔の失位
陣痛/産道の異常・胎児の死・過大・助産者による早期破水・胎仔摘出の不手際
強烈な陣痛・著しく遅延した分娩。
胎勢 最多。頭・前肢 (球節屈折 etc)・後肢 (飛節屈折 etc) の失位。頭・前肢の失位は多い。
胎向 下胎向・側胎向
胎位 横腹位・横背位・縦腹位・縦背位
■失位以外の難産
胎仔過大 真性(長期在胎)・比較的(骨盤が小さい)
奇形
双胎 牛。手近な胎仔から摘出。
子宮の失位 子宮捻転・子宮ヘルニア
産道の異常 骨盤狭窄(低栄養/慢性疾患/初産)・子宮頚管の狭窄/閉鎖(裂傷による癒着・瘢痕化 etc)・膣/陰門の狭
窄(線維腫/平滑筋腫・初産 etc)
7.1.2 失位整復の概念
• 失位部が骨盤腔=母畜を前低後高に起立させ、胎仔を腹腔内に推退させる。
先進部・整復部分に綱をつけて、失位を予防。用手で行う(子宮の損傷を回避)
。無理なら産科挺。
• 整復位置が上位になるように母胎を位置させる。
• 胎水の喪失=微温の滅菌粘滑液を子宮内に注入。
• 腹腔深く把握困難=母胎を仰臥すれば、導入が容易
• 胎仔の推退は陣痛休歇、牽引/摘出は陣痛発作の時に。
■切胎術
• 胎仔を全形のまま摘出できない場合に、母体内で切断して小分けする。∗1
• 心臓を刺す or 大血管を切断して絶命させる。
• 前低後高で起立させる。
皮上切開 手術は迅速だが、骨の断端が子宮壁を損傷しやすい。皮膚を切皮したのと同じ位置で、骨/筋肉を切断。
皮下切開 子宮壁の損傷を防ぐので、なるべくこの方法で。皮膚を長く切皮し十分に剥離して、深部で骨を切る。
産科用器械は裏へ
∗1 胎仔切半=縦位・横位・奇形で内臓摘出が無意味
内臓摘出=体躯過大・水腫胎・気腫胎。
7 その他
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7.2 潜在精巣
• 馬・犬で多い。遺伝的内分泌疾患(馬では優性遺伝だが、年とともに下降する場合も)。
• 高温のため造精できない(牛の夏期不妊症と同じ理由)。アンドロジェン分泌能も害される。
• 家畜では片側が多い(左右同率。片側でも妊娠させることはできる。ただし、遺伝病なので繁殖に用いない)。
• 腹腔内/鼠径部に滞留し、体温(以上)の環境にさらされる。
• 犬では 1%(猫は最も少ない)。
• アンドロジェン 5−→ 精巣上体 5。豚の原因は、精巣導帯の異常発育である。
7.2.1 治療
外科的: 陰嚢内固定手術。
鞘状突起を破る。
• 造精機能は戻る。
• 総鞘膜に囲まれていないので、ぶらぶらする。
腫瘍化する確率が極端に高くなる =⇒ ある年齢以上で摘出
内科的: 豚/犬は、下垂体ホルモン投与では下降しない。
7.3 犬の乳腺腫瘍
転移
転移
• 1/2/3 乳腺 −−→ 腋窩リンパ節、4/5 乳腺 −−→ 鼠径リンパ節。肺転移(肝臓)。
• 炎症性乳ガンは、もっとも進行が速く、転移も多い。
治療 摘出・抗エストロジェン製剤 etc。
外科手術は禁忌。腋窩リンパ節も摘出しない(浸潤のないとき)
。
良性では、摘出手術時に全摘を行うと、再発率低下・再発時触診しやすい・初回発情前では発生 5。
✎ 猫では、肺転移(肝臓・腎臓)。悪性度高い。
7 その他
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7.4 尿膜水腫・羊膜水腫
尿膜水腫
羊膜水腫
頻度
多い
少ない
原因
尿膜絨毛膜機能不全
遺伝的/先天的異常胎仔
尿膜水の調節不可能
胎仔の嚥下障害
胎仔
正常/小さな双胎
奇形
胎膜
尿膜絨毛膜の異常
異常なし
腹部膨満
急速(妊娠後期)
緩徐(妊娠中期∼)
貯留液
水様透明の漏出液
シロップ状で粘稠
症状
胎盤停滞/重度子宮炎
胎盤停滞
除去後
急速に充満
穿刺緩徐・帝王切開再充満しない
予後
不良
良
症状=腹部の膨大・食欲不振・呼吸促迫・飲水過多・起立困難。
治療=胎水の除去・人工流産・帝王切開・廃用。
7.5 フリーマーチン
• 牛で、異性双胎/異性多胎の時に、♀胎子が不妊症を起こすこと。∗2
• 機序
1. 胎膜の癒合が起こり、血液が交流する。
2. H-Y 抗原が♀胎仔に移動する。
3. ♀がキメラ(XX/XY)になる。
4. ♀胎仔の不妊症(フリーマーチン)。
• 癒合は、♀が性分化する、40 日以前におきることが必要条件。(8%は性分化してから融合している)
• フリーマーチンは単体動物のみ。多胎動物では癒合自体発生しにくい。
• 食用にする分には、キメラ個体でも十分。
7.5.1 半陰陽
真性半陰陽: 一つの個体で、卵巣と精巣の両方の生殖巣を持っているか、両者の組織が混在した卵精巣を持っ
ているもの。
多くは XX。まれにキメラ(XX/XY 両方の染色体を同一個体が持つ)やモザイク(染色体組成
の異なる細胞が同一個体で混在。XY/XYY)が存在。
仮性半陰陽: ♂/♀の一方の生殖巣を持ちながら、外部生殖器や二次性徴は反対の性のものを示すこと。ex.
雄性仮性半陰陽=精巣&陰唇。
∗2 複数の卵子を排卵する確率は 1/80 で、1/200 ぐらいの確率で異
性である。
7 その他
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7.6 胚の子宮内移行
• 排卵した側の子宮角ではなく、反対側の子宮角に着床すること∗3 。
• 排卵数の多い側から少ない側の子宮角に胚が分散し、左右の胚数の均等化と、胚の生育に必要なスペース
の確保が図られる。
それでもスペースができなかったら、間引きが起こる(間の胚が死んでゆく)
。
• 産子数の多い、豚・犬で起こりやすい。
犬では、反対側からきた胚は、より子宮体側に並ぶ。
豚では、左右どちらの子宮角でも、左右の胚が交互に並んでいる。一度子宮体に全胚が降りて、その後一斉にあ
がってくるためらしい。
• 重複子宮では、子宮体がないため起こらない。
∗3 受精卵は、通常排卵された側の子宮角に着床する。