妊娠のしくみについて - 八重垣レディースクリニック

yaetama 新聞
第5号
平成 26 年 11 月
妊娠はどのようにして成立するのか、皆さんはご存知ですか?何となく知ってはいるけれど細かいところ
までは良く分からない…、恥ずかしいけれど実はあまり知らない…など、その理解度は人それぞれだと思
います。ここで、妊娠成立のしくみをおさらいしておきましょう!少し長いですが、お付き合いください!
Q 妊娠のしくみとは?
A.以下に妊娠のしくみをご説明します。
① 卵胞発育
まず、月経が始まると、卵巣では卵胞発育がスタートします。「卵胞」とは、簡単に言えば卵子
が入った袋です。個人差はありますが、一度に数個~最大千個の卵胞が発育を開始します。
卵胞発育は下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)によって促され、大きくなった
卵胞からはエストロゲン(E2)という女性ホルモンが作られるようになります。この頃エコーで
卵巣をモニタリングすると黒っぽい穴のようなものが見えるようになってきますよね。あれが卵胞
なのです(右図)。
卵胞は一度にたくさん発育を開始しますが、全部が大きくなるわけではありません。その中でも
エストロゲンを多く作れる優秀な卵胞が1個だけ選択されて発育を継続していきます。
卵胞のエコー写真
② 排卵
卵胞の大きさが 20mm ぐらいに達すると下垂体から黄体形成ホルモン(LH)が大量に分泌され、その刺激で排卵が促され
ます。ちなみに排卵日が近づくと膣内ではおりものが分泌されるようになります。おりものの量が増えるのは、「排卵が近いです
よ」と体が教えてくれるサインなのです。
夫婦生活を持っていただくのはちょうどこのタイミングがベストで、膣内に射精された精子は子宮の入り口を通って中に入
り、そこからさらに卵子との出会いの場である卵管まで自力で進んでいきます。しかしその道のりにはとても厳しい生存競争が
あって、どれぐらい厳しいかというと、仮に膣内に 1 億個の精子が射精されたとして、卵子のところまで行けるのはだいたい 100
個ぐらいだと言われているほどです(確率にしてわずか 0.0001%!)。
排卵してしぼんだ卵胞のあとは黄体と呼ばれる組織に変化し、黄体ホルモン(P:プロゲステロン)を分泌します。黄体ホルモン
には体温を上昇させる作用があるため、基礎体温は高温期に入ります。
③ 卵子のピックアップ
排卵によって卵巣から飛び出した卵子は、卵管の先端にある触手のような卵管采に捕まえられ、卵管の中に入ります。そし
て、卵管の中で待ち構えていた精子と出会います。
④ 受精
厳しい生存競争を勝ち抜いてきた精子はやっと卵子に出会いますが、ここでも一番を争って競争します。そして、精子が 1 個
だけ卵子の細胞内に侵入し、受精が成立します。
ところで、卵子は排卵後 24 時間以上が経つと受精能力を失ってしまいます。もし、夫婦生活を持つタイミングがずれて精
子の到着が遅れると、せっかくの受精のチャンスはなくなってしまうのです。
⑤ 着床
卵子と精子が出会って受精が起こると、受精卵(胚)は細胞分裂を繰り返しながら 4~5 日かけて卵管から子宮へと移動し
てきます。そして、6~7 日目頃には子宮内膜に潜り込んで着床が成立します。着床した後も胚は発育を続け、やがて赤ちゃん
に成長していきます。
妊娠は、奇跡の連続によって起こるのだなぁ~ということを改めて感じます。このような妊娠に関する基礎を知っていただ
いていると、普段の診療内容や検査の意義などが理解しやすくなるのではないでしょうか。
いくつもの過程を経て、はじめて妊娠は成立します。言いかえると、どこか 1 カ所でもうまくいかなければ妊娠はできま
せん。妊娠しにくい原因はご夫婦それぞれ違いますが、男性側と女性側のどちらに原因があるかは半々の割合だと言わ
れており、両者に原因があるケースも少なくありません。まずはご夫婦がそろって検査を受けていただき、原因を見つけ
ることが妊娠の第一歩となるのです。
発行:八重垣レディースクリニック
胚培養士