研究内容:乳がんのホルモン依存性と抗癌剤感受性 08A123 細江麻子 <実験概要> 化学療法による乳がんの治療効果が高まる一方で、薬剤耐性乳がんの克服は臨床において非常に重 要な課題である。そんな中、手術不能又は再発乳がんに対して有効であると2011年に承認された薬剤 が、エーザイ株式会社のエリブリン(ハラヴェン®)である。2011年に新たな乳がん治療薬として承認さ れた。従来の乳がん治療薬に比べ全生存期間を優位に延長することが証明されており、手術不能又は 再発乳がんの治療薬として期待されている。しかし、今後はエリブリンに対しても乳がんは耐性を獲 得していくことが懸念されている。 本研究では、薬剤耐性乳がんに対する治療法を確立するために、アドリアマイシン耐性細胞、エリブ リン耐性細胞、タモキシフェン耐性細胞の樹立と耐性化機構の解明を試みた。あわせて、ホルモンと抗 がん剤との併用による相乗効果が期待できるのかを解明するためにホルモン依存性細胞の樹立も試み た。依存性細胞とは、乳がんの増殖因子である女性ホルモン(エストラジオール、プロゲステロン)を細 胞培養時に暴露させることで細胞増殖能を活性化させた細胞のことを指す。タモキシフェンの作用機 序は乳がん細胞上に発現したエストロゲン受容体の抑制作用であり、エリブリンの作用機序は乳がん 細胞のチューブリン重合を阻害し、微小管の伸長を抑制することで正常な紡錘体形成を妨げることで ある。ホルモン剤によって細胞増殖能を活性化させることにより、抗がん剤の作用点に対する働きが増 強するのではないかという仮説を立て、それを検証するためにもホルモン依存性細胞の樹立を試みた。 <薬剤耐性・依存性細胞の樹立方法> 全量 5ml の培養フラスコ内に暴露させる薬剤を加え、薬剤耐性・依存性細胞の樹立を行った。 <実験方法> ・MTT アッセイ ・Real Time PCR 法 <実験結果・考察> 本研究では薬剤耐性乳がん細胞とホルモン依存性乳がん細胞の樹立を行うことができた。今後の課 題として、細胞の薬剤耐性化や感受性増大した起因が、意図的に加えたホルモン剤によって活性化し ているのか、培地内に含まれている増殖因子によるものなのか明らかにするために、透析血清などを 用いて種々の増殖因子を含まない培地で検討していく必要があると考えた。
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