CONTENTS 「花見」新宿御苑 KT 随 想 北京で鍛え,香港で酔いしれ,バンコクで癒された我が駐在記 …………………………………………………………… <岩尾英之>… 202 シリーズ解説 日本の伝統食品(第1回) マサバへしこ…………………………………………………………… <小坂康之>… 204 シリーズ解説 果実とその加工品の話(第7回) 果実・果汁飲料と機能性成分(5) β−クリプトキサンチンの疫学研究… …………………………… <杉浦 実>… 211 連載エッセー:食の遠近画法 路線… …………………………………… <五明紀春>… 220 海外技術・マーケット情報 最近のエネルギードリンクのトレンド………………………………………………………222 飲料におけるターゲット・マーケティング…………………………………………………223 バイオガス設備を有した先進的で持続可能な農場…………………………………………226 特殊インクによる革新的なインタラクティブパッケージ・デザイン……………………228 2012年キャンメーカーサミット東京での講演……………………………………………231 慢性疾患の進行を抑える食品の処方…………………………………………………………233 性別固有の健康問題……………………………………………………………………………236 心臓を強化する各種の健康食品………………………………………………………………238 風水樹花徒然記☆8 春爛漫桜樹咲く……………………………………… <大場秀章>… 241 特別解説:遺伝子解析からみた日本食の栄養特性… …………………… <宮澤陽夫>… 244 特別解説:1時間でコシヒカリを見分ける技術 ― LAMP 法を用いた迅速簡易品種判別 ―… ………………… <岸根雅宏>… 249 業界トピックス:缶コーヒー「春夏の陣」開幕 昨年以上にブランド攻防激化… …… 254 業界の話題…………………………………………………………………………………………… 255 今月の統計…………………………………………………………………………………………… 258 最近の技術雑誌から………………………………………………………………………………… 260 野菜・果物を巡って(第五十二話) 多様化するアスパラガス… …… <吉田企世子>… 265 缶詰技術研究会 http://kangiken.net/ 随想 ュウ)のジャンルに入る。アルコール度数は55度 くらいである。これを小さなグラスで一気に「干 北京で鍛え,香港で酔いしれ, バンコクで癒された我が駐在記 杯!」(ガンベイ,乾杯)する。文字通り飲み干 すのである。これを「日中友好のために!」とか 「○○さんの健康のために!」とか繰り返す訳で ある。 いわ お ひで 中国式宴会では,一人で白酒は飲んではいけな ゆき 岩 尾 英 之 い,つまり誰かに声を掛けて乾杯するのが礼儀で (一般社団法人 全国清涼飲料工業会 専務理事) ある。当時の事務所の首席代表(所長)はお酒が 弱かったので,もっぱら次席の私が杯を重ねてい 今まで海外3カ国,4都市で通算16年余り駐在 たことから,中国側からはよく「あなたが酒席代 した。ここでは3都市での駐在時に経験したお酒 表だ」と言われていた。そして翌日は, 「答礼宴」 にまつわる話しをしてみたい。 である。今度は私達が招待側となって中国側を接 待するのである。またまた乾杯である。 「干了 ●酒席代表?(中国・北京)● 吧!(飲み干しましょう)」の声が響く。茅台酒 1984年9月に初めて中国,北京に降り立った。 の高梁の香りに包まれ,心地よく(時には深く!) 当時の中国は76年に毛沢東,周恩来が死去し,79 酔いながら宴会の夜は更けていき,日中友好の輪 年から対外開放政策がスタート,まさに世界への が広がる宴会続きの3年間であった。 門戸が開かれたばかりであった。ただし北京の街 は薄暗く,人々は紺や緑の人民服に身を包み,普 ●白蘭地(ブランデー)で中華料理?(香港)● 及し始めたテレビでは,山口百恵主演の「赤い疑 1989年10月より5年弱,香港に駐在した。返還 惑」シリーズ(中国題名「血疑」)に皆夕方はテ 前の当時の香港は物価もまだ安く,狭い国土なが レビの前に釘付けになっていた。 らイギリスの統治下で何事もきわめて効率的,合 理的で,かつ古いものと新しいものがマッチして 3年間の駐在期間中,東北地方を中心に業務で いる魅力ある都市であった。 よく出張したが,当時はどこに行っても「熱烈歓 迎!」であった。到着すると駅まで向かえに来て 香港と言えば,広東料理が有名であるが,その くれ,会談,そして会食,歓迎宴である。そこで 中でも広東省東部の汕頭市(スワトウ)が発祥と 登場するのが「茅台酒」(マオタイ酒)である。 いわれる潮州料理のお店が比較的多い。この料理 1972年9月,日中国交正常化の宴会で,当時の田 は初めに「工夫茶」と言われる鉄観音の濃いお茶 中角栄首相(今でも中国人に有名な日本人の一人 が一口で飲める小さな器で出てくる。消化をよく である)と周恩来首相が杯を交わしたお酒で,日 するためと言われている。濃いフカヒレスープな 本人にも名が知られるようになった。 ど日本人の口にもよく合う料理も多い。 茅台酒は,中国貴州省特産の高粱(カオリャン) 当時も潮州料理での宴会が多かったが,その際 を主な原料とする蒸留酒であり,「白酒」(バイチ のアルコールは,ビールは「嘉士伯」(カールス バーグ) ,白蘭地(ブランデー)は「藍帯 馬爹利」(コルドンブルー)の水割りをよ く飲んだ。香港ではお店へのお酒の持ち込 みはほとんど自由であった。当時私は香港 に隣接していた広東省深セン市に電車通勤 していたことから,宴会といえば国境の免 マオタイ酒 食品と容器 周恩来首相と田中角栄首相の乾杯 202 税店でブランデーを買っていくのが常であ 2013 VOL. 54 NO. 4 まれているが,タイ語では名詞を修飾する単語は 必ず後ろに付くので「ビアシン」と呼ばれる。シ ンとは「獅子(ライオン)」であり,ロゴマーク も獅子である。 もう一つが,タイ・ビバレッジ社が製造する 「CHANG BEER」(チャーンビール)である。チ カールスバーグ ャーンとは象であり,こちらのロゴマークは象で コルドンブルー ある。 った。これを香港では水割りで飲むことが多いが, 中国広東省の関係者との宴会では,ブランデーグ ラスに入れて「乾杯!」となるのである。もった いない飲み方ではあったが,これが中国南部の宴 会スタイルであった。 ちなみに広東省では白酒は滅多に飲まない。中 国酒と言えば,もっぱら「紹興酒」である。また 香港のホワイトカラーの人々は一般的にあまりお シンハービール 酒を飲まない。だが駐在員は夜総会(ナイトクラ チャーンビール ブ)や当時流行し始めた韓国カラオケでももっぱ もともとタイのビールといえば,ビアシンであ らブランデーの水割りを飲むので,当時ブランデ ったが,1995年ビアチャーンが低価格で市場に参 ーの消費量は香港がかなり多かったようである。 入し,急速にシェアを伸ばした。現在のビール市 場は,全体の75%余りが低価格帯ビール,15%く ●獅子VS象ビール!!(タイ・バンコク)● らいがビアシン,残りの10%余りが外国ブランド 2008年1月より4年余りタイ・バンコクに駐在 などのプレミアム市場となっている。現在ではブ した。タイは熱帯気候で年間平均気温29度,年中 ンロード社も低価格帯に商品を投入し,シェア1 温暖な気候で,人々は敬虔な仏教徒が多く,人当 位を奪還している。キリン食生活研究所の2011年 たりも柔らかく,胸の前に手を合わせる挨拶(ワ の世界のビール消費量調査によれば,タイは175 イという)で微笑む姿は美しい。「微笑みの国」 万kLで24位であった。前年比2%増である。隣 と言われる所以である。物価も安く駐在しやすい 国のベトナムは13位,前年比14%の伸びに比較す 国である。 ると少ない。 お酒に対しては比較的厳しい規制を引いており, 一般的にタイではホワイトカラーの人々はアル 街中のお店ではアルコールの販売時間が制限され コールを嗜まない人が多い。特にビールは低価格 ている。通常販売できる時間は,11時~14時,17 帯が主体ということからもブルーカラーの飲み物 時~24時のみである。またタイでは仏教関係の祝 といった印象が強い。宴会の乾杯では我々はビー 日や選挙の前日,当日は終日販売が禁止されるし, ルであるが,彼らは水が多い。よって中国のよう レストランでも飲めない。選挙関係は飲んで暴れ に一気に飲み干す乾杯はない。穏やかな国民性の るからとか色々通説があるが,自宅で買い置きの ごとく,飲み方もやさしい国であった。 生ぬるい空気を肌に感じ,喧噪と活気のあふれ お酒を飲む分には問題がない。 さてタイのビールである。2大メーカーが競っ たバンコクの屋台に腰掛け,通りを歩く人を眺め ている。一つはブンロード・ブリュワリー社が製 ながら,よく冷えたビアシンを飲んでいると,何 造する「SINGHA BEER」である。日本では(シ か心が安らかな気持ちになるのは私だけであろう ンハービール)の名前でタイのビールとして親し か。 食品と容器 203 2013 VOL. 54 NO. 4 ◆ 第1回 ◆ ❖シリーズ解説❖ 日本の伝統食品 マサバへしこ こ さ か・や す ゆ き 東京水産大学食品生産学 科卒業,福井県立大学大 学院生物資源学研究科修 了。福井県立小浜水産高 等学校を経て,現在,福 井県立若狭高等学校教諭, 東京海洋大学非常勤講師, 福井県立大学非常勤講師。 博士(生物資源学) 小 坂 康 之 も報告されている2)。マサバへしこの製造技術は, ◆1.はじめに ◆ 本来極めて腐敗しやすいマサバを長期に保存する マサバへしこは,福井県若狭地方を中心に生産 手段として生み出されたとされるが,近年,独特 される糠漬けの一種であり,約20%の食塩で7日 の呈味が全国に知られるようになり,生産量は増 間塩漬けしたマサバを約7カ月間米糠に漬け込ん 大する傾向にある。 ぬか で発酵・熟成させ製造される(写真1)。このた ◆2.製造における課題 ◆ めマサバへしこの塩味は極めて強いが,発酵・熟 成にともないうま味が増強され,適度な酸味も付 生産量の増加を背景として,生産者の間では7 与されることから,地域の伝統食品として定着し カ月以上に及ぶ発酵・熟成期間の短縮や生産の通 ている。 年化などが模索されている。消費者からは,へし マサバへしこの独特の呈味は,発酵・熟成中に こに含まれる10%前後の食塩含量の低減が求めら 遊離アミノ酸と酸可溶性ペプチドおよび有機酸が れている。へしこ生産をめぐるこれらの課題を解 大きく増加することによって醸成されることがす 決するには,へしこの製造原理を深く理解するこ 1) でに明らかにされている 。また,近年ではこれ とが必要である。 らのエキス成分の中に,高血圧抑制作用や脂質代 しかしながら,へしこの呈味に寄与する成分の 謝の改善作用を有する成分が含まれていること 生成を含めて,その品質形成のメカニズムに関し ➡ 生鮮マサバ ➡ 20%食塩 塩漬け(7日間) ➡ 糠漬け(7カ月) へしこ 写真1 マサバへしこの製造工程 (カラー写真を HP に掲載 C015) 食品と容器 204 2013 VOL. 54 NO. 4 ◆ マサバへしこ てはほとんど研究例が見られず,品質制御に必要 より,ガスクロマトグラフ-質量分析計で分析し な知見は乏しい。このため,へしこの品質制御は, た。 今日もなお生産者の経験に依存せざるを得ないの ◆4.結果 ◆ が現状である。塩漬け工程では「両手いっぱいの (1)微生物の消長と化学成分の変化 塩(魚体に対し約20%)を入れる」,糠漬け工程 では「夏を越えないとうま味が出ない」,「せ(塩 しん 製造過程における微生物の消長を検討した結果, たる 漬け時の滲出液)を樽上部に満たす」,「7カ月以 塩漬けと糠漬け初期には,一般生菌数を計測する 上の糠漬けが必要」などの生産者の経験に基づい た技術がある。本報告では,著者らが,へしこの PCA 培地,真菌類の選択培地である PDA 培地お よび主に乳酸菌の選択培地である2.5% NaCl-GYP 品質形成メカニズムを明らかにするために実施し 培地における生菌数が大幅に増加することから, た研究の成果をへしこの製造技術の原理,つまり 原料由来の細菌や酵母,カビなどの多様な微生物 「うまいへしこをつくる条件」の解明にあわせ① が増殖していることが推測された。糠漬け期間の 微生物の消長と化学成分の変化,②熟成温度と食 経過とともに,PCA 培地および PDA 培地で計 塩含量の影響,③微生物の役割,④香気に関連す 測される生菌数が減少し,これらに代わって10% NaCl-GYP 培地における生菌数が大きく増加して, る揮発性成分の生成の点から総括する。 糠漬け7カ月後には2.5% NaCl-GYP 培地と同程 ◆3.材料および方法 ◆ 度の106cfu/g となった。さらに16 SrRNA の塩基 背開きにしたマサバに20%の食塩を撒布して7 配列から微生物を同定した結果,糠漬け1カ月目 日間塩漬けした後,米糠に漬け込み,塩漬け時の から通性嫌気性の好塩性乳酸菌 Tetragenococcus 魚体からの滲出液で樽を満たし,重石をして7カ halophilus が優占種となり,5カ月目以降は本種 月間自然環境温度下または10~30℃で発酵・熟成 以外の微生物は全く検出されなかった(第1図)。 させた。食塩含量を変化させる実験では,塩漬け へしこ市販品(4検体)の微生物相も検討した結 時の加塩量を10,15,または20%として同様に 果,80%以上が T. halophilus であり,へしこ完 20℃で発酵・熟成させた。微生物の増殖を抑制す 成品の微生物相は極めて単純であることが示され るために抗生物質を添加したへし 25℃で7日間好気培養して測定し た。主要な微生物は16 SrRNA 遺 伝子の塩基配列から同定した。へ しこ魚肉の熱水抽出エキス中のタ ンパク質を5% TCA で除去した 後,全自動アミノ酸分析計(JCL500/V2)とキャピラリ電気泳動 装 置(Agilent Technologies) に 供し,遊離アミノ酸と有機酸をそ れぞれ測定した。へしこの揮発 性成分は,舩津らの方法3)に従い, 固相マイクロ抽出法(SPME)に 食品と容器 100 (B) その他 80 6 微生物相 (%) 2.5%食塩添加 GYP 培地を用いて 7 (A) 生菌数(対数値)/g こモデルを作成した。生菌数は, 5 4 60 40 T. halophilus 20 3 0 2 原 料 塩 漬 け 後 1 3 5 7 糠漬け期間 (月) 原 料 塩 漬 け 後 1 3 5 7 糠漬け期間 (月) 第1図 へしこの製造中における魚肉の生菌数と微生物相の変化 生菌数(A)は2.5% GYP 培地を用いて好気培養で測定した。 16 SrRNA 遺伝子の塩基配列から T. halophilus を同定した(B)。 205 2013 VOL. 54 NO. 4 ◆ ❖シリーズ解説❖ 日本の伝統食品 た4)。 の増殖とよく対応し(第3図),糠漬け期間の経 マ サ バ へ し こ の 製 造 過 程 で は,NaCl 含 量 は 過とともに大きく増加し , それに伴い pH は5.4前 10%前後で推移し(第2図),水分活性は0.80前 後まで低下した。さらに樽内は飽和に近い濃度の 後であった。また,乳酸の生成量は T. halophilus 食塩水で満たされ嫌気的な環境となることが推察 水分量 (%) 食塩含量 (%) される。このような嫌気的で低 pH,高 80 15 10 5 0 塩濃度の環境下で,好気性の一般生菌数 と真菌数が徐々に減少し,最終的な菌相 60 は好塩性乳酸菌である T. halophilus を 40 主体とする非常に単純な構成となること が明らかとなった。つまり生産者が受け 20 継ぐ「両手いっぱいの塩(魚体に対し約 0 原 料 塩 漬 け 後 1 3 5 7 原 料 20%)を入れる」,「せ(塩漬け時の滲出 塩 1 3 5 7 漬 け 糠漬け期間 (月) 後 糠漬け期間 (月) 液)を樽上部に満たす」,「7カ月以上 の糠漬けが必要」は樽内の菌相を通性嫌 気性の好塩性乳酸菌 T. halophilus を優 第2図 へしこの製造中における魚肉の食塩含量と水分量の変化 占種とする合理的な技術であり,その結果,乳酸 3 の生成により,適度な酸味の付与や菌相を安定化 乳酸 (g/100g) させるために必要な pH の低下などの環境を作り 出すことが明らかとなった。 2 (2)熟成温度と食塩含量の影響 へしこの食味の主体となる遊離アミノ酸と酸可 溶性ペプチドおよび有機酸の生成に及ぼす熟成温 1 度と食塩含量の影響を,好塩性乳酸菌の挙動との 関連で検討した。すなわち,加塩量を20%として 0 原 料 塩 漬 け 後 1 2 3 4 5 6 熟成温度を10,20,30℃または10℃から1カ月ご 7 とに5℃ずつ温度を上昇させて30℃に到達した後, 糠漬け期間 (月) 再び1カ月ごとに5℃ずつ,20℃まで温度を低下 させた試験区(10~30℃),あるいは,加塩量を 第3図 へしこの製造中における魚肉の乳酸含量の変化 生菌数(cfu/g) 8 10,15または20%として熟成温度を 8 A 20℃としてへしこを発酵・熟成させ, B 製造過程における生菌数の変化を, 2.5%または10% NaCl-GYP 培地を 6 6 ●:10℃ ▲:20℃ ■:30℃ ◆:10-30℃ 4 用いて検討し,遊離アミノ酸と酸可 4 溶性ペプチドおよび乳酸の生成量を 測定した。 2 2 0 2 4 6 8 0 2 4 6 GYP 培地における生菌数は,培 地中の食塩濃度や好気・嫌気の培養 熟成期間(月) 食品と容器 8 第4図 各熟成温度における生菌数の変化 条件に関わらず,各試験区ごとに同 A:2.5% NaCl-GYP 培地 B:10%NaCl-GYP 培地 様の傾向を示した(第4図)。いず 206 2013 VOL. 54 NO. 4 ◆ マサバへしこ れの試験区も,熟成温度の上昇は生菌数の変化に 験の結果,熟成温度では,30℃>20℃>10℃の順 ほとんど影響を及ぼさず乳酸の生成量は変化しな でうま味の評価が高く,10℃では魚肉の色も白く いが,遊離アミノ酸と酸可溶性ペプチドは発酵・ 評価が低かった。加塩量では10%のへしこで酸味 熟成期間を通じて緩やかに増加し,最終 4 的な生成量を大きく増加させた(第5, 有機酸量(g/100g) 6図)。 加塩量を変化させて発酵・熟成させ たへしこ10%,15%,および20%試験 区の魚肉の食塩含量は,それぞれ7.2%, 11.6%,および12.8%であったのに対し 3 :その他 2 :酢酸 1 て米糠のそれらは9.0%,14.6%,および 17.6%だった。食塩含量の減少は GYP :乳酸 0 培地における生菌数を大幅に増加し,乳 10 20 酸の生成量も著しく増加させた(第7, 30 10-30 熟成温度(℃) 8図) 。これらのことから,乳酸の生成 第5図 各熟成温度における有機酸の生成 量は好塩性乳酸菌の増殖に依存 果として乳酸の生成量を増大さ せることが推察された。 一方,遊離アミノ酸・酸可溶 性ペプチドの生成量も10%加塩 区でもっとも高かったが,15% と20%加塩区の遊離アミノ酸・ 酸可溶性ペプチド生成量(g/100g) 乳酸菌の増殖を促進し,その結 4 遊離アミノ酸生成量(g/100g) し5),食塩含量の減少は好塩性 A 3 2 1 0 0 2 4 6 酸可溶性ペプチドの生成量には 8 4 B ●:10℃ ▲:20℃ ■:30℃ ◆:10-30℃ 3 2 1 0 0 2 4 6 8 熟成期間(月) ほとんど差異が見られなかった 第6図 各熟成温度における遊離アミノ酸(A)と 酸可溶性ペプチドの生成量(B) (第9図)。遊離アミノ酸・酸可 溶性ペプチドの生成量は米糠中 の食塩含量ではなく,むしろ魚 以上の結果から,有機酸の主 成分である乳酸は好塩性乳酸菌 による米糠中の糖質の乳酸発酵 A B 生菌数(cfu/g) 肉中の食塩含量に依存した。 によって生成するが,遊離アミ ●:10% ▲:15% ■:20% ノ酸と酸可溶性ペプチドの生成 は好塩性乳酸菌の増殖に依存し ない異なるメカニズムで生成す ることが示唆された。 ここでは示さないが,官能試 食品と容器 熟成期間(月) 第7図 加塩量における生菌数の変化 A:2.5% NaCl-GYP 培地 B:10% NaCl-GYP 培地 207 2013 VOL. 54 NO. 4 ◆ ❖シリーズ解説❖ 日本の伝統食品 が強く評価が低かった。これらのことから生産 消費者のニーズにあわせた減塩には,加塩量15% 者の受け継ぐ「夏を越えないとうま味が出ない」, 前後が適当であることが推測された。 (3)微生物の役割 「両手いっぱいの塩(魚体に対し約20%)を入れ 熟成温度と食塩含量の影響を検討した結果,へ る」は,へしこに濃厚なうま味と適度な酸味を与 しこ魚肉中の遊離アミノ酸と酸可溶性ペプチドは える重要な条件であることが推察された。また, 好塩性乳酸菌の増殖に依存して生成する乳酸とは 8 異なるメカニズムで生成することが示唆された。 有機酸量 (g/100g) :その他 つまり,へしこの呈味の生成における微生物の役 :酢酸 6 割を明らかにするために,抗生物質を添加したへ :乳酸 しこモデルを試作し,遊離アミノ酸,酸可溶性ペ 4 プチドと乳酸の生成量を検討した。第1表には設 定した試験区を示した。すなわち試料AとBは抗 2 生物質を添加しない対照区であるが,試料Bには 抗生物質の溶媒であるエタノールを加えた。試料 0 10 15 加塩量 (%) CとDはクロラムフェニコール,ペニシリン,お 20 よびシクロヘキシミドの3種の抗生物質を混合物 として,試料EとFはクロラムフェニコールを単 第8図 各加塩量における有機酸量 独で添加した。また, 3 2 1 0 試料CとEは全工程 4 酸可溶性ペプチド生成量(g/100g) 遊離アミノ酸生成量(g/100g) 4 ●:10% ▲:15% ■:20% 0 2 4 6 で,試料DとFは糠 3 質を添加した。 2 各試験区の生菌数 の 変 化 を,2.5 % 食 1 0 8 漬け工程から抗生物 塩添加 GYP 培地を 0 2 4 熟成期間 (月) - - + + + + - - + + - - - - + + - - を第2表に示した。 塩漬け 糠漬け - - + - + - - - + + + + 208 糠漬けとともに生菌 期間中105 から106cfu/g の範囲 製造工程 抗生物質の濃度:クロラムフェニコール 0.43%,ペニシリン 0.02%, シクロヘキシミド 0.01%。エタノール(溶媒)の終濃度は最大で 0.5% 食品と容器 用いて検討した結果 数が大きく増加し,発酵・熟成 第1表 抗生物質を添加したへしこモデルの調整 A B C D E F 8 試料 A および B は 第9図 加塩量における遊離アミノ酸と酸可溶性ペプチドの変化 抗生物質 試料 クロラムフェ シクロ ペニシリン ヘキシミド ニコール 6 エタノール - + + + + + で推移した。この結果は第1図 に示した結果とよく一致してい た。抗生物質を添加したへしこ モデルでは,全工程で添加した 試料CとEでは塩漬け後から生 菌 数 は102cfu/g ま た は そ れ 以 下で推移し,好塩性乳酸菌はほ とんど増殖しなかった。糠漬け 2013 VOL. 54 NO. 4 ◆ マサバへしこ ステル類やアルデヒド類が発酵・熟成とともに検 工程から抗生物質を添加した試料DとFでも糠 漬け3カ月後また5カ月後には生菌数が10 cfu/ 出されるようになった(第11図)。また,香気の g またはそれ以下となり,好塩性乳酸菌の増殖が 官能検査を行った結果,糠漬け3カ月目以降にへ 強く阻害されたことが示された。図示はしないが, しこ特有の香りが強まることが確かめられ,糠漬 PCA 培地および PDA 培地を用いても同様の結 けの後期に検出されるアルコールおよびエステル 果が得られ,一般生菌と真菌類の増殖も阻害され などの揮発性成分がへしこの香気に大きく関わ 2 ることが示唆された。へしこの製造においては, 6) ていることを確認した 。これらの試料A~Fに おける乳酸と遊離アミノ酸の最終的な生成量を検 「“しらとり”(糠漬け後期に樽表面に発生する膜 討した結果を第10図に示した。第10図Aによる 状の菌体の呼び名)が出ると風味が良くなる」と と,抗生物質の添加により乳酸の生成は強く抑制 されている。“しらとり”の詳細は今後の検討が された。これは,好塩性乳酸菌の増殖が阻害され 必要であるが糠漬け後期に香りが良くなることを ていることと対応していた。一方,遊離アミノ酸 生産者は経験上理解していた。 の生成量には抗生物質添加の影響はほとんどみら ◆5 まとめ ◆ れなかった(第10図B)。これらのことから,遊 離アミノ酸は好塩性乳酸菌ではなく,原料由来の へしこの製造過程では,高塩分や“せ”による 酵素作用によって生成することが強く示唆された。 (4)香気に関連する揮発性成 第2表 抗生物質を添加したへしこモデルの発酵・熟成中に (log cfu/g) おける生菌数の変化 分の生成 へしこの品質要素の一つであ る香気の生成過程を明らかにす ることを目的として,発酵・熟 成中の揮発性成分の変化を検討 した。揮発性成分は,吸着剤と し て Carboxen/PDMS を 用 い た SPME 法によりヘッドスペース の揮発性成分を捕集し,吸着した 試料 原料 塩漬け後 A B C D E F 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 4.0 4.2 - 2.7 - 4.1 ら検出される揮発性 成分の種類は,大き く増加した。その傾 向は糠漬け3カ月目 以降に顕著だった。 原料マサバでは検出 5 7 6.4 6.4 2.2 4.3 - 3.6 5.2 4.7 2.5 3.2 2.4 2.3 6.5 6.2 2.3 - 2.4 - 6.4 5.0 - 2.2 2.1 - 2.5 :酢酸 :その他 遊離アミノ酸 (g/ 100g) もに,マサバ魚肉か 3 A :乳酸 有機酸 (g/ 100g) 熟成期間の経過とと 1 -は生菌数が 2.0(log cfu/g)未満であることを示す。 4 で分析した。発酵・ 発酵・熟成期間(月) 生菌数は 2.5%食塩添加 GYP 培地を用いて好気培養により測定した。 成分をガスクロマト グラフ−質量分析計 嫌気的な環境下で米糠由来の炭水化物を発酵基質 3 2 1 B 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 0 A ー B ー D C + + 抗生物質 E + F + A ー B ー C D + + 抗生物質 されない酢酸および 第10図 へしこの発酵・熟成にともなう有機酸と遊離アミノ酸の 生成に及ぼす抗生物質の影響 エタノールの他,エ 7カ月後の魚肉中の有機酸(A)と遊離アミノ酸(B)の含量を示した。 食品と容器 209 E + F + 2013 VOL. 54 NO. 4 ◆ ❖シリーズ解説❖ 日本の伝統食品 の褐色の色調は発酵・熟成過程の 高温期に発現する。さらに香気は 発酵・熟成過程の後期に発現する ことから,これらの品質の形成か ら見ても夏季の高温期を含む長期 間の発酵熟成がきわめて重要であ ることが示唆された。このように へしこの品質は菌相の主体となる 好塩性乳酸菌の作用だけでなく, 魚肉内在性のプロテアーゼや非酵 素的な化学反応などを含む複雑な 過程を通じて形成されており,多 量の食塩を用いて長期間発酵・熟 成させる伝統的な技法はきわめて 合理的なものであることが確認さ 第11図 へしこの発酵・熟成にともなう揮発性成分の変化 れた。従って,現代的ニーズに対 応して製造法を見直す場合にも, として通性嫌気性の好塩性乳酸菌 T. halophilus これらの品質形成過程を十分に考慮することが強 が増殖し,本種を主体とするきわめて単純な微生 く望まれる。 物相が形成されることが示された。従って,10% 全国各地にはへしこのように生産者の技術の伝 前後の食塩含量は微生物相の形成に大変重要と考 承によって製造が行われている伝統食品がまだま えられる。一方,呈味成分の主体である遊離アミ だ数多くある。様々な食品があふれ,食文化も多 ノ酸および酸可溶性ペプチドは,主に原料由来の 様化する中,本研究のような伝承技術の合理性を 酵素作用により発酵・熟成過程全体を通じて生成 科学的に証明することは,我が国古来の伝統食品 することから,長期の発酵・熟成が不可欠と考え の継承を図るうえで今後ますます重要になると考 られた。本報告では触れなかったがへしこの独特 える。 参 考 文 献 1)伊藤光史・赤羽義章:マサバとマサバへしこの一般成 processing of heshiko produced by aging salted 分ならびにエキス成分の比較.日水誌 1999;65:878 mackerel with rice bran through conventional practices in the Wakasa bay area, Fukui, Japan. Fish -885. Sci. 2012;78:463−469. 2)伊 藤光史・赤羽義章:マサバへしこの製造中の一般 5)小坂康之・木下由佳・大泉 徹:マサバへしこの製造 成分ならびにエキス成分の変化.日水誌 2000;66: 過程における呈味成分の生成に及ぼす熟成温度と食塩 1051-1058. 含量の影響.日水誌 2010;76:392-398. 3)舩津保浩・加藤一郎・川﨑賢一・小長谷史郎・白井一 成:マルソウダ加工残滓から調製した魚醤油と数種ア 6)K osaka Y and Ooizumi T:Effects of microbial ジア産魚醤油との揮発性成分の比較.日水誌 2001; growth inhibition by antibiotics on the production 67:489−496. of taste-active components during the processing 4)K osaka Y, Satomi M, Furutani A, and Ooizumi of heshiko produced by aging salted mackerel with T : Microfloral and chemical changes during the 食品と容器 rice bran. Fish Sci. 2012;78:735−742. 210 2013 VOL. 54 NO. 4 ⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話 第7回 果実・果汁飲料と機能性成分(5) β-クリプトキサンチンの疫学研究 す ぎ う ら・み の る 京都工芸繊維大学大学院 修了。民間企業を経て, 農林水産省果樹試験場入 省,現在(独)農業 ・ 食品 産業技術総合研究機構果 樹研究所カンキツ研究領 域主任研究員。 薬学博士(東京大学) 杉 浦 実 ●1.はじめに ● キサンチン,β-クリプトキサンチンの6種がある。 このうち体内でビタミンAに変換されるのはα- β-クリプトキサンチンは日本のウンシュウミ カロテン,β-カロテン,β-クリプトキサンチン カン(以下,ミカン)に特徴的に多く含まれてい の3種である。プロビタミンAとしての機能につ るカロテノイド色素の一種である。我々はこれま いては多くの分子レベルでの研究が行われている での研究から,ミカンを食べる習慣を有する日本 が,近年,プロビタミンAとしての働き以外にも, 人の血中β - クリプトキサンチン値は欧米人と比 がんや循環器系疾患,糖尿病などの生活習慣病に べて顕著に高いことを見いだしてきた。現在,国 対する予防効果等,新たな生体調節機能が次々と 内主要ミカン産地である静岡県三ヶ日町の住民を 明らかになってきた。現在,がんや心筋梗塞,糖 対象にした栄養疫学調査(三ヶ日町研究)を継続 尿病,肝臓疾患など様々な生活習慣病の発症に酸 的に行っているが,これまでに血中β - クリプト 化ストレスが関与することが多くの研究で明らか キサンチンレベルと動脈硬化や肝疾患,メタボ になっているが,カロテノイド類はその化学構造 リックシンドローム等の様々な生活習慣病リスク 上に二重結合を多く含むために抗酸化作用が大き とに有意な負の関連があることを見いだしてきた。 本稿では,β-クリプトキサンチンに関する最近 く,酸化ストレスから身を守ることで様々な病気 の疫学研究の知見について紹介する。 の予防に役立つのではないかと考えられている。 ●3.日本人のβ-クリプトキサンチン 摂取量と血中レベル ● ●2.ヒト血中に存在する主要な カロテノイド ● ヒト血中に存在する主要なカロテノイド6種の うちβ-クリプトキサンチンの生体調節機能に関 カロテノイドは果物・野菜に多く含まれている 離同定されている。人は普段の食生活において する研究についてはβ-カロテンやリコペン等に 比較して著しく遅れている。β-クリプトキサン 様々な食品からカロテノイドを摂取しているが, チンは日本のミカンに高濃度で含まれるが(100 血中に存在する主要なカロテノイドには,リコペ ン,α-カロテン,β-カロテン,ルテイン,ゼア gのミカン1個に約1mg),我が国のようにミカ 天然色素成分で,これまでにおよそ750種類が単 食品と容器 ンを日常的に食す習慣がない諸外国では血液中の 211 2013 VOL. 54 NO. 4 ⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話 β-クリプトキサンチン濃度が低く,他のカロテ 響していることを明らかにした2)。また2カ月前 ノイドほど重要視されなかったと思われる。我が のミカン摂取量も有意に影響していることから, β-クリプトキサンチンの体内における半減期が 国ではミカンが最も消費量の多い国産果樹で,日 本にはβ-クリプトキサンチンの摂取量や血中濃 極めて長いことが推察された。 これまで主に欧米から報告されているカロテノ 度の高い人が諸外国とは比較にならないほど多い と考えられる。そのため,β-クリプトキサンチ ンが日本人の健康に対して大きく貢献してきたの イドの摂取量と血中レベルに関するデータをみる と,β-クリプトキサンチンの食品から摂取して ではないかと推察される。 いる量はβ-カロテン等のカロテノイドに比べて 我々はミカン産地の住民を対象にした調査から, 血中β-クリプトキサンチンレベルがミカンの摂 数十分の1と極めて少ないのに対して,血中濃度 取頻度に依存して著しく上昇することを報告し た1)。β-クリプトキサンチンはミカンに特徴的 ない。また各カロテノイドの摂取量と血中レベル との相関はいずれの報告においてもβ-クリプト に多く含まれているが,オレンジにはミカンの10 分の1程度以下しか含まれていないため,ミカン キサンチンが最も高い相関関係にある。これらの データは,β-クリプトキサンチンが他のカロテ 産地住民の血中レベルは欧米での報告に比べて極 ノイド類に比べて体内に吸収・蓄積されやすいこ めて高い(第1図)。 とを示している。実際に我々は三ヶ日町研究の被 のオーダーは他のカロテノイド類とさほど変わら さらに我々は血中β-クリプトキサンチン濃度 験者について,食事調査の結果からカロテノイド の年内季節変化と食生活習慣との関連について1 年間に渡り調査したところ,血中β-クリプトキ データベースを用いて各被験者の1日当たりの主 サンチン濃度に影響する要因は食品ではミカンの 出し,血中濃度との関連を調査した3)。その結果, みであること,またミカンの摂取量以外の要因で 1番摂取量の多いカロテノイドはルテインであり, β-クリプトキサンチンのおよそ6倍である1日 要なカロテノイド6種について推定摂取量を算 は,年齢,性,喫煙習慣,飲酒習慣,肥満度が影 当 た り 約1.92mg( 女 性 被 験 者 4 の幾何平均値)摂取していた。 2番目に多いのがβ-カロテン 血中β-クリプトキサンチン濃度(µmol/L) 三ヶ日町 北海道 で(同1.70 mg),3番目にゼア キ サ ン チ ン( 同0.70 mg), β- 3 アメリカ イギリス クリプトキサンチンの摂取量 2 フランス は4番目であった(同0.31 mg)。 北アイルランド 一方,血中濃度を測定すると, 1 摂取量では6種類中4番目だっ た β-ク リ プ ト キ サ ン チ ン だ オランダ スペイン 0 殆ど 週に 毎日 毎日 食べない 3個以下 1~3個 4個以上 ミカンの摂取頻度 0 1 2 血中β-クリプトキサンチン濃度(µmol/L) 第1図 ミカンの摂取頻度別にみた血中β-クリプトキサンチンレベルと 各地域別にみた血中レベルの国際比較 左:ミカン摂取頻度と血中β-クリプトキサンチンレベルとの関連をミカンシーズンの1 月に静岡市で調査した。 右:三ヶ日町研究(4月に実施)での女性被験者の平均値とこれまでに報告されている 他の地域でのデータと比較した。引用文献1)より改変 食品と容器 212 が,血中濃度はルテインの約2.6 倍も高く1.46µmol / L であった。 また摂取量と血中濃度との相関 係数が最も高いのはβ-クリプ トキサンチンであった。このこ とから,β-クリプトキサンチ ンはカロテノイドのなかでも特 2013 VOL. 54 NO. 4 β-クリプトキサンチンの疫学研究 た 文ではいずれもリスク低下と関連有りとしている。 に吸収性が良く体内に溜まりやすいことが推察さ ほとん 一方,直腸がんでは殆どの論文で関連は認めら れる。 れていない。カロテノイドに着目した発がんリス ●4.国内外の疫学研究からみた β-クリプトキサンチンの特徴 ● クとの関連を検討した報告はまだ多くないが,現 在のところ,肺がんに対するβ-クリプトキサン 欧米のカロテノイドに関する疫学研究を調べる と,興味深いことにカロテノイドの中ではβ-ク チンの予防効果の可能性は特に大きいと考えられる。 リプトキサンチンのみに関連が認められたとする は,フィンランドで行われた調査において,食事 結果が,肺がん,糖尿病,間接リウマチ等で報告 から摂取したカロテノイドのうち糖尿病発症のリ スクを有意に下げていたのはβ-クリプトキサン 一方,2型糖尿病発症リスクとの関連について されている。 カロテノイド類は活性酸素の害から体を守る働 チンのみであったと報告している11)。また関節リ きがあり,がんに対して予防効果があるのではな いかと以前から考えられていたが,β-カロテン ウマチや炎症性関節炎リスクとの関連でも,カロ テノイドの中ではβ-クリプトキサンチンのみに のサプリメントを投与した大規模な臨床試験では リスク低下との関連が認められたとする複数の研 逆に喫煙者の肺がんリスクを高めるという結果が 究結果が米国や欧州から報告されている12 ,13)。さ 相次ぎ,カロテノイドのがん予防についての研究 らに,オランダアルンヘルンで行われた血中レベ は期待を裏切る結果となった 4, 5) 。しかしながら, ルと総死亡リスクとの関連を調査した研究では, 最近の疫学研究ではカロテノイドの中でも特にβ -クリプトキサンチンが肺がんに対して優れた予 カロテノイド6種の中で総死亡比と血中レベルと に最も強い逆相関が認められたのはβ-クリプト 防効果があるのではないかとする研究結果が相次 キサンチンであったと報告されている14)。 いで報告されるようになってきた6−8)。また海外 日本国内におけるカロテノイドに関する疫学研 の大規模な7つのコホート研究をまとめたメタア 究は,がんや糖尿病指標など幾つかの報告がある ナリシスにおいても,有意なリスク低減効果が認 められたのはβ-クリプトキサンチンのみであっ が,最近,メタボリックシンドロームリスクとの 関連が報告されている。調査した集団のうち,男 9) た 。興味深いのは喫煙者でのリスクを低下させ 性被験者においてはカロテノイドのうちメタボ ることである。カロテノイドは消化管から吸収さ リックシンドロームのリスクと有意な負の関連が 認められたのはβ-クリプトキサンチンとβ-カロ れた後,様々な組織に移行することがこれまでに 明らかにされているが10),β-クリプトキサンチ テンのみであった15)。また最近,加齢黄斑変性と ンはその化学構造上に水酸基を1つ有することで の関連が報告された。群馬県高崎市の住民を対象 他のカロテノイドと比較して生体利用性の高いこ にした調査から,血中カロテノイドレベルと加齢 2) とが指摘されている 。そのため肺への組織移行 黄斑変性リスクとの関連を調べた結果,カロテ ノイドではβ-クリプトキサンチンのみに有意な 性も高いことが予想され,喫煙により発生した肺 での過剰な酸化ストレスに対してβ-クリプトキ 負の関連が認められたと報告されている16)。近年, サンチンが有効に機能しているのではないかと考 欧米においてルテインが加齢黄斑変性の予防に有 えられる。詳細は今後の研究に期待したい。 効とする研究が数多く行われているが,この研究 その他,比較的報告数の多いものとしては,前 立腺がん,乳がん等があるが,どちらのがんにお ではルテイン・ゼアキサンチンにおいては有意な 関連は認められなかった。β-クリプトキサンチ いても関連有りとする論文がおよそ半数であった。 ンがヒト網膜の黄斑部に集積するかどうかは現在 また子宮がんとの関連では近年報告されている論 のところ不明であるが,日本人の加齢黄斑変性に 食品と容器 213 2013 VOL. 54 NO. 4 ⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話 β-クリプトキサンチンが役立っている可能性を 究レベルで検討した報告は極めて少なかった。そ こで我々は血中β-クリプトキサンチンレベルと 示唆するデータとして大変興味深い。 肝機能との関連を解析した結果,これまで全く知 ●5.三ヶ日町研究での知見 ● られていなかった新たな関連のあることを見いだ した17,18)。 果樹研究所では,平成15年度より静岡県引佐郡 三ヶ日町(現浜松市北区三ヶ日町)の住民約1,000 基本健診などの血液検査で肝機能の指標値と 人を対象とした栄養疫学調査(三ヶ日町研究)を 継続的に実施している。三ヶ日町では住民の多く して,ALT(アラニンアミノ基転移酵素),AST (アスパラギン酸アミノ基転移酵素),γ-GTP がミカン産業に従事しているため,ミカンの摂取 (ガンマグルタミン酸アミノ基転移酵素)の3種 量が著しく多い地区といえる。また一方で殆どミ 類がよく測定される。いずれもアミノ酸代謝に働 カンを食べない住民もいる。そのため,血中β - く重要な酵素で,ALT は肝臓に最も多く,AST クリプトキサンチン値が幅広く分布している集団 であり,β-クリプトキサンチンの有用性を疫学 は心筋,肝臓,骨格筋,腎臓等に多く存在する酵 的に検出しやすいという利点がある。これまでの 研究から,血中β-クリプトキサンチンレベルの 脱し血中に漏出してくるために検査値が高くな る。またγ-GTP は肝臓-胆道系に分布し,アル 高い人では様々な生活習慣病のリスクが有意に低 コール摂取などで敏感に高くなることが多いため, いことが分かった。 5−1.肝機能障害リスクとの関連 アルコール性肝障害の指標として用いられてい る。まずアルコール摂取によるγ-GTP の上昇と 近年の臨床研究から肝臓病患者の血清中抗酸化 血清中β-クリプトキサンチンレベルとの関連を 物質の量が健常者よりも低下していることから, 肝臓病に酸化ストレスが関わっているとする多く 調べた。その結果,第2図aに示すように血中γ -GTP 値は1日当たりのエタノール摂取量が多い の知見が得られ,果物・野菜を日頃から豊富に摂 ほどその数値は高くなるが,毎日25g以上のエタ 取することが正常な肝機能維持のために有効では ノール(瓶ビール大1本以上)を摂取していても, 血中β-クリプトキサンチンレベルが高いグルー 素で,これらの組織が障害を受けると酵素が逸 ないかと考えられてきた。しかしながら,疫学研 プではγ-GTP 値がかなり低いこと a b P<0.001 vs 1g未満群 血中γ-GTP(IU/L) 血中γ-GTP(IU/L) 50 30 ○:1g未満 ▲:1-25g ■:25g以上 70 が分かった17) (第2図b)。アルコー ルは肝臓で代謝されるが,その代謝 過程において過剰なフリーラジカル 50 P<0.001 vs l低位群 30 (活性酸素種)が発生し,これが肝 機能障害の原因の1つとも考えられ ている。β-クリプトキサンチンは アルコール性肝障害に対して防御的 10 10 1g未満 1-25g 25g以上 1日当たりのエタノール摂取量 低 中 高 血中のβ-クリプトキサンチンレベル 第2図 1日当たりの飲酒量別にみた血中γ- GTP 値と β-クリプトキサンチンとの関係 a:1日当たりのアルコール摂取別にみた血中γ- GTP 値 b:飲酒量別に血中β-クリプトキサンチンレベルで3分割したときの各分位での 調整血中γ- GTP 値(年齢,肥満度,血清脂質値,喫煙・運動習慣で調整)引 用文献17)より改変 食品と容器 214 に働いているのではないかと考えら れる。 また,糖尿病のような高血糖状態 では通常よりも酸化ストレスが増大 していることが近年の研究から明ら かになっており,この酸化ストレス は肝細胞にも障害を与えることが考 2013 VOL. 54 NO. 4 β-クリプトキサンチンの疫学研究 えられる。実際に糖尿病群・糖尿病予備群・正常 今回,男女876名を対象に動脈硬化の一指標であ 群で ALT 値を比較すると高血糖群ほどこの数値 る,上腕動脈-足首動脈間での脈波速度と血中β -クリプトキサンチンレベルとの関連を解析した。 が高く,肝機能が低下していることが確認できた その結果,血中のβ-クリプトキサンチンレベル (第3図a)。ところが高血糖であっても血中のβ -クリプトキサンチンレベルが高いグループでは が高い人達の中で動脈硬化が進行していると考え ことが明らかとなった (第3図b)。 られる脈波速度の高い人(≧16.8 m / 秒)のリス クは,血中のβ-クリプトキサンチンレベルが低 今回の調査は,肝炎ウイルスや肝疾患を有する 人はデータから除外しているため,β-クリプト い人達に比べて約1/2程度であることが明らか となった(第4図)。β-クリプトキサンチンを豊 キサンチンは初期段階での肝臓機能低下に対して 富に含むミカンの摂取は動脈硬化の予防に有効で 有効である可能性が考えられる。 ある可能性が今回の調査結果から示唆された。 この数値が正常群とほぼ変わらないレベルである 18) 5−2.動脈硬化リスクとの関連 5−3.インスリン抵抗性リスクとの関連 動脈硬化は加齢とともに進行するが,食事や喫 インスリン抵抗性とはインスリンの効き具合が 煙,飲酒などの生活習慣の違いによって影響され 悪い状態を意味する。すなわち,同じだけ血糖を ることが分かっており,また,高血圧,高脂血症, 下げるのに必要なインスリン量が多い場合があり, 糖尿病,肥満などの疾病も動脈硬化の促進要因と この時,インスリン抵抗性が高い(インスリン感 されている。一方,果物の摂取,特に柑橘類の摂 受性が悪い)と表現する。このインスリン抵抗性 取は循環器系疾患の予防に有効であることが多く はインスリン分泌低下と共に,糖尿病の発症や状 の疫学研究から明らかになっている。そこで三ヶ 態に大きく関わっており,特にインスリン非依存 日町研究において,動脈硬化リスクとの関連につ 型糖尿病(2型糖尿病)の患者で重要な病態であ かんきつ 19) いて調査を行った 。この調査では脈波速度を測 る。現在糖尿病でなくてもインスリン抵抗性が高 定することで評価を行った。動脈硬化が進んだり い人ではそうでない人に比べて糖尿病に罹る率が あるいは動脈の内径がせまくなったりすると脈の 高くなること 伝わり方は早くなるが,この原理を応用して動脈 が近年の疫学 の硬さを脈波速度で詳細に評価することができる。 研究から明ら 40 㻳㻟㻓㻑㻓㻔㻃㼙㼖㻃 ḿᖏ⩄㻃 30 㻳㻟㻓㻑㻓㻔㻃㼙㼖㻃 ḿᖏ⩄㻃 20 10 b 㻳㻟㻓㻑㻓㻘㻃㼙㼖㻃 న⩄㻃 20 䕵䠌ḿᖏ㻃 䕜䠌㧏⾉⢶䟺ሾ⏲ᆵ㻎⢶ᑺ䟻㻃 0 0 ḿᖏ㻃 ሾ⏲ᆵ㻃 ⢶ᑺ㻃 㻃 ୯㻃 㧏㻃 ⾉୯䛴䃈㻐䜳䝮䝛䝌䜱䜹䝷䝅䝷䝰䝝䝯 第3図 耐糖能別にみた血中 ALT 値とβ-クリプトキサンチンとの関係 a:耐糖能別にみた血中 ALT 値,b:耐糖能別に血中β-クリプトキサンチンレ ベルで3分割したときの各分位での調整血中 ALT 値(性,年齢,肥満度, 血圧値,血清脂質値,喫煙・運動習慣,飲酒量で調整)引用文献18)より改変 食品と容器 215 2 動脈硬化リスク(オッズ比) a ⾉୯㻤㻯㻷䟺㻬㻸㻒㻯䟻ೋ ⾉୯㻤㻯㻷䟺㻬㻸㻒㻯䟻ೋ 40 かか P<0.05 1 0 低 中 高 血中のβ-クリプトキサンチンレベル 第4図 血中β-クリプトキサンチンレ ベル別にみた動脈硬化リスク 性,年齢,肥満度,血糖値,血圧値,血清 脂質値,喫煙・運動習慣・飲酒量で調整し てロジスティック回帰分析により多変量調 整オッズ比(95%信頼区間)を求めた。 引用文献19)より改変 2013 VOL. 54 NO. 4 ⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話 かとなっており,またインスリンの過剰な分泌は 解析したところ,閉経女性ではβ-クリプトキサ 血圧の上昇や脂質代謝の異常も引き起こし,動脈 ンチンの血中濃度が高い人ほど骨密度が高く(第 硬化を引き起こす原因にもなる。今回,我々はイ 6図a),また骨密度低値出現のリスクが有意に ンスリン抵抗性を空腹時血糖値とインスリン値か 21) 低いことが明らかになった(第6図b) 。これ ら次式で算出した。 HOMA 指数=空腹時血糖値(mg /dL)× らの関連はビタミン,ミネラル等の影響を統計学 的に取り除いても有意であったことから,β-ク インスリン値(mU/ L)÷ 405 リプトキサンチンは骨代謝に対して何らかのプラ 血中のインスリン値そのものでもインスリン抵 スの影響を及ぼしているものと考えられる。また 抗性を判断する1つの目安となるが,インスリン ミカンの高摂取グループ(平均でおよそ3個)で 抵抗性から糖尿病に進行した人では,むしろイン も同様のリスク低下が認められた。一方,男性や スリン値が低くなる。そのため我々は調査した時 閉経前の女性ではこのような有意な関連は認めら れず,またβ-カロテンやリコペンなどβ-クリプ 点で糖尿病と考えられる人(空腹時血糖値が126 mg/dL 以上)あるいは糖尿病歴を有する人を除 外して解析した。その結果,血中β-クリプトキ トキサンチン以外のカロテノイドではこのような サンチンレベルが高い人達の中で,インスリン抵 また近年,健康な骨を維持する上でビタミンC 抗性が高いと考えられる高 HOMA(3以上)の の重要性が指摘されている。これはビタミンCが リスクは,血中β - クリプトキサンチンレベルが 抗酸化作用を有するとともに骨組織の形成に重要 低い人達に比べて約1/2程度であることが明ら なコラーゲンの合成に必要な栄養素であるためで 有意な関連は認められなかった。 20) ある。三ヶ日町研究において,閉経女性での血中 β-クリプトキサンチンレベルと骨密度値とに有 かとなった(第5図) 。 5−4 骨密度との関連 果物の摂取は健康な骨を維持するために重要な 意な関連が認められたことから,次にビタミンC とβ-クリプトキサンチンの摂取量が骨密度値とどの 食品であることが近年明らかになりつつある。そ こで三ヶ日町研究においても骨密度調査を平成17 ように関連するかについて解析を行った。その結果, ビタミンCとβ-クリプトキサンチンの両方の摂 傾向性 P=0.016 P<0.05 1 P<0.05 a b 骨密度低値リスク(オッズ比) 0.60 骨密度(mg/cm2) インスリン抵抗性リスク(オッズ比) 年度より開始した。ベースラインデータを用いて 0.55 0.50 P<0.05 1 0 低 中 高 血中のβ-クリプトキサンチンレベル 第5図 血中β-クリプトキサンチンレベ ル別にみたインスリン抵抗性リ スク 0 0.45 最低位群 第2位群 第3位群 最高位群 最低位群~第3位群 最高群 血中のβ-クリプトキサンチンレベル 第6図 血中β-クリプトキサンチンレベル別にみた骨密度と 骨密度低値リスク 性,年齢,肥満度,血圧値,血清脂質値,喫煙・ 飲酒・運動習慣で調整してロジスティック回帰 a:年齢,身長,体重,閉経後の年数,喫煙・飲酒・運動習慣,サプリメント使用状況 分析により多変量調整オッズ比(95%信頼区間) および総摂取カロリーで補正して骨密度値(95%信頼区間)を求めた。b:ロジスティック 回帰分析により多変量調整オッズ比(95%信頼区間)を求めた。引用文献21)より改変 を求めた。引用文献20)より改変 食品と容器 216 2013 VOL. 54 NO. 4 β-クリプトキサンチンの疫学研究 第1表 ビタミンCとβ-クリプトキサンチンの摂取量別にみた骨密度低値リスク 取量が多い場合に おいてのみ,骨密 β-クリプトキサンチン摂取量 度低値のリスクが 低摂取群( 0~0.96 mg/d) 高摂取群(0.97~7.91 mg/d) 有意に低いことが n 明らかとなった 22) (第1表) 。興味 ビタミンC摂取量 深いことにミカン に含まれているビ OR 95% CI n OR 95% CI 摂取群 113 (47−169 mg/d) 1.00 (Reference) 34 0.73 0.27~1.99 高摂取群 36 (170−625 mg/d) 0.52 110 0.42 0.19~0.93* 0.18~1.52 年齢,身長,体重,閉経後の年数,喫煙・飲酒・運動習慣,サプリメント使用状況及び総摂取カロリー で補正してロジスティック回帰分析により多変量調整オッズ比(95%信頼区間)を求めた。* P<0.05 引用文献22)より改変 タミンCだけでは 足りず,さらに別 の果物,野菜からビタミンCを摂取する必要があ の発症に酸化ストレスの関与が指摘されるように ることも判明した。 最近,我々はβ-クリプトキサンチンと骨粗しょ なってきており,過大な酸化ストレスに暴露され う症発症リスクとの関連について縦断研究から興 味深い知見を得た23)。閉経女性の血中β-クリプ が高くなると考えられている。そこで三ヶ日町研 究において,血中β-クリプトキサンチンレベル トキサンチン濃度が橈骨における骨密度値と有意 とメタボリックシンドロームリスクとの関連を に正相関を示すことは前述したが,縦断解析では 喫煙習慣別に検討を行った24)。その結果,非喫煙 者では血中β-クリプトキサンチン濃度とメタボ る喫煙者ではメタボリックシンドロームのリスク とう 調査開始時に既に骨粗しょう症であった被験者を 除く閉経女性187名を対象にした。調査開始から 4年後に再び骨密度を測定し,調査開始時の血中 リックシンドロームリスクとに有意な関連は認め られなかったが,喫煙者においては血中β-クリ β - クリプトキサンチン値と骨粗しょう症発症リ プトキサンチン濃度が低いほどメタボリックシン スクとの関連について縦断的に解析を行った。そ の結果,血中β-クリプトキサンチン濃度が高かっ ドロームのリスクが有意に高くなる傾向が認めら れた(第8図)。この調査結果から,β-クリプト た人では低かった人達に比べて骨粗しょう症の発 キサンチンの豊富なミカンの摂取が喫煙者におけ 症リスクが約92%も低くなることが分かった(第 3 骨粗しょう症発症リスク(オッズ比) 7図)。食事調査の結果から,リスクが下がった 人達のミカン摂取量を調べると,毎日およそ4個 程度のミカンを食べていたことも分かった。 今回調べたカロテノイド6種の中でこのような 関連が認められたのはβ-クリプトキサンチンの みであった。β-クリプトキサンチンの豊富なミ カンは閉経に伴う骨密度の低下に有効ではないか と考えられる。今後は詳細なメカニズム解明を行 P<0.05 1 0 低 うとともに臨床試験でミカンの効果を検証する予 中 高 血中のβ-クリプトキサンチンレベル 定である。 第7図 血中β-クリプトキサンチンレベル別に みた4年間での骨粗しょう症発症リスク 5−5 メタボリックシンドロームリスクとの関連 果物の摂取がメタボリックシンドロームの予防 に有効である可能性が近年明らかになりつつある。 また最近の研究から,メタボリックシンドローム 食品と容器 2 217 年齢,身長,体重,閉経後の年数,喫煙・飲酒・運動習慣, サプリメント使用状況および総摂取カロリーで調整してロジ スティック回帰分析により多変量調整オッズ比(95%信頼区 間)を求めた。引用文献23)より改変 2013 VOL. 54 NO. 4 ⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話 れる。また最近我々は,喫煙と飲酒に よって酸化ストレスが相乗的に増大する こと3),これらの過剰な酸化ストレスの 消去にβ-クリプトキサンチンが役立っ ているのではないかとする知見を得てい る。このことからもβ-クリプトキサン チンが飲酒や喫煙が原因で起きる生活習 3 非喫煙者 傾向性 P=0.659 2 1 0 低 慣病に対して特に有効なのではないかと 考えられる。 5−6 他の主要なカロテノイド類と の比較 三ヶ日町研究ではβ-クリプトキサン チン以外にも血中に存在する主要なカ メタボリックシンドロームリスク(オッズ比) 防的に働いているのではないかと考えら メタボリックシンドロームリスク(オッズ比) るメタボリックシンドロームに対して予 中 2 喫煙者 傾向性 P=0.036 1 0 低 高 血中のβ-クリプトキサンチンレベル 中 高 血中のβ-クリプトキサンチンレベル 第8図 血中β-クリプトキサンチンレベル別にみた メタボリックシンドロームリスク 性,年齢,肥満度,アルコール摂取量,運動習慣,総摂取カロリー で調整してロジスティック回帰分析により多変量調整オッズ比 (95%信頼区間)を求めた。引用文献24)より改変 ロテノイド5種について同様に検討を行ってい 疾患ではいずれも有意な関連が認められたが,β -クリプトキサンチンやβ-カロテンほどの強い負 る(第2表)。これまでの調査結果を6種のカロ テノイドについて要約すると,メタボリックシン ドロームや動脈硬化リスクとの関連ではβ-クリ の関連性は認められなかった。これに対して,ル プトキサンチンよりもβ-カロテンにおいてより な関連性は認められなかった。 テインとゼアキサンチンでは殆どの疾患とも有意 強く認められた。一方,肝機能障害リスク(アル ●おわりに ● コール性・非アルコール性),インスリン抵抗性 リスク,骨粗しょう症リスク,酸化ストレスリス クにおいては,β-クリプトキサンチンが最も強 カロテノイドはいずれも9個の共役二重結合か らなる炭素数22のポリエン部を共通構造に有して い負の関連性が認められた。同じプロビタミンA 活性を有するα-カロテンでは,骨粗しょう症リ おり,これらは強力な抗酸化活性を有する。しか スク,非アルコール性の肝機能障害リスク以外の ノイドと疾患リスクとに特徴的な関連がみられた しながら三ヶ日町研究においてそれぞれのカロテ 第2表 三ヶ日町研究から明らかになった血中カロテノイドレベルと各疾患リスクとの関連性 肝機能障害 動脈硬化 インスリン 抵抗性 骨粗しょう症 メタボリック シンドローム 酸化ストレス アルコール性 非アルコール 血中γ- GTP 性血中 ALT 上腕−下肢動 脈間での脈波 速度 HOMA-IR 橈骨遠位 1 / 3 での骨密度 喫煙者での メタボリスク 喫煙・飲酒に よる酸化スト レス 関連性の指標 カロテノイド リコペン ○ - - △ - - ○ α - カロテン ○ - ○ △ - ○ ○ β - カロテン ◎ ○ ◎ ○ △ ◎ ◎ β - クリプトキサンチン ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ○ ◎ ルテイン - - - - - - - ゼアキサンチン - - - △ - - - 引用文献 17) 18) 19) 20) 21, 22, 23) 24) 3) ◎:リスクとの顕著な負の関連性あり,○:有意な関連性あり,△:関連する傾向あり,-:関連性なし 食品と容器 218 2013 VOL. 54 NO. 4 β-クリプトキサンチンの疫学研究 ことから,単に抗酸化作用のみに起因した生体調 ではないかと考えられる。β-クリプトキサンチ 節機能ではないことが推察される。ポリエン部の ンは他のカロテノイドにはない優れた生体調節機 両末端にどのような構造を有するかの違いにより, 能を有することが考えられるが,どのようなメカ 吸収性や代謝,また組織や細胞での局在性が異な ニズムによるものなのかは今後の研究成果に期待 ることで特徴的な生体調節機能を発揮しているの したい。 参 考 文 献 1)M . Sugiura et al., Serum concentration of β- cryptoxanthin in Japan reflects the frequency of Satsuma mandarin (Citrus unshiu Marc.) consumption. J Health Sci. 2002 ; 48(4): 350−353. 2)M. Sugiura et al., Multiple linear regression analysis of the seasonal changes in the serum concentration of beta-cryptoxanthin. J Nutr Sci Vitaminol(Tokyo). 2004 ; 50(3): 196−202. 3)M. Sugiura et al., Synergistic interaction of cigarette smoking and alcohol drinking with serum carotenoid concentrations: findings from a middle- aged Japanese population. Br J Nutr. 2009 ; 102(8): 1211 −1219. 4)The effect of vitamin E and beta carotene on the incidence of lung cancer and other cancers in male smokers. The Alpha-Tocopherol, Beta Carotene Cancer Prevention Study Group. N Engl J Med. 1994 ; 330(15): 1029−1035. 5)G . S. Omenn et al., Effects of a combination of beta carotene and vitamin A on lung cancer and cardiovascular disease. N Engl J Med. 1996 ; 334(18) : 1150−1155. 6)J . M. Yuan et al., Prediagnostic levels of serum beta-cryptoxanthin and retinol predict smokingrelated lung cancer risk in Shanghai, China. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2001; 10(7): 767−773. 7)J. M. Yuan et al., Dietary cryptoxanthin and reduced risk of lung cancer : the Singapore Chinese Health Study. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2003 ; 12 (9): 890−898. 8)L. E. Voorrips et al., A prospective cohort study on antioxidant and folate intake and male lung cancer risk. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2000 ; 9(4) : 357−365. 9)S. Männistö et al., Dietary carotenoids and risk of lung cancer in a pooled analysis of seven cohort studies. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2004 ; 13(1): 40−48. 10)H . H. Schmitz et al., Concentrations of selected carotenoids and vitamin A in human liver, kidney and lung tissue. J Nutr. 1991 ; 121(10): 1613−1621. 11)J. Montonen et al., Dietary antioxidant intake and risk of type 2 diabetes. Diabetes Care. 2004 ; 27(2): 362−366. 12)J. R. 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J Epidemiol. 2005 ; 15(5): 180 −186. 18)M. Sugiura et al., Serum carotenoid concentrations are inversely associated with serum aminotransferases in hyperglycemic subjects. Diabetes Res Clin Pract. 2006 ; 71(1): 82−91. 19)M. Nakamura et al., High beta-carotene and betacryptoxanthin are associated with low pulse wave velocity. Atherosclerosis. 2006 ; 184(2): 363−369. 20)M. Sugiura et al., The homeostasis model assessment -insulin resistance index is inversely associated with serum carotenoids in non-diabetic subjects. J Epidemiol. 2006 ; 16(2): 71−78. 21)M . Sugiura et al., Bone mineral density in postmenopausal female subjects is associated with serum antioxidant carotenoids. Osteoporos Int. 2008 ; 19(2): 211−219. 22)M. Sugiura et al., Dietary patterns of antioxidant vitamin and carotenoid intake associated with bone mineral density: findings from post-menopausal Japanese female subjects. Osteoporos Int. 2011 ; 22 (1): 143−152. 23)M. Sugiura et al., High serum carotenoids associated with lower risk for bone loss and osteoporosis in post-menopausal Japanese female subjects: Prospective cohort study. PLoS One 2012 ; 7(12): e52643. 24)M. Sugiura et al., Associations of serum carotenoid concentrations with the metabolic syndrome: interaction with smoking. Br J Nutr. 2008 ; 100(6): 1297−1306. 2013 VOL. 54 NO. 4 食の遠近画法 73 連載エッセー いればましだ,と聞いたことがある。一口に「数 路 線 ご みょう とし 学者」と言っても,それだけ細かく専門分化して いるということであろう。一口に「画家」と言っ ても,ズブの素人の両親に,その世界を窺い知る はる 五 明 紀 春(女子栄養大学教授) ことなど出来るはずもなかったであろう。 ○ 入学式シーズンである。全国700を超える大学 今思うと不思議であるが,筆者は,中学校に入 る頃まで,将来は画家になるものと決めていた。 の中から一つを選んで,校門をくぐった新入生は, 小学校に上がる前から,猿や犬や鶏をちょこ ある意味で生涯の「路線」を選択したことになる。 ちょこ描いたというので,両親は「画才」に驚い しかし,右も左もわからない若者には,この選 たらしい。間の悪いことに,美術展でそこそこ賞 択が,厳しい試練となるのもやむを得ない。そも をもらったばかりに,周囲の眼も筆者を,画家の そも,一つの路線を選ぶことは,同時に他の路線 卵として見るようになってしまっていた。自分自 を棄てることでもあるからだ。 どれであろうと,本人にはまったく未知の路線 身もすっかりその気になっていたのである。 小学校6年の時,家庭訪問の担任が, 「画家に であることに変わりない。いちいち試してみるに したい」と意気込んでいる母に「子供の将来を短 は人生は短すぎる。選んだ路線が親や教師のお仕 兵急に決めつけないように」と言っていたのを思 着せである場合,悩みはことのほか深刻になる。 「五月病」である。 い出す。他の道を急いで閉ざすことはない,と言 その上,いったん乗った路線からの乗り換えは いたかったらしい。 「画才」も並のものと,先生にはお見通しだっ 容易ではない。新幹線に乗って,新横浜あたりで たのであろう。事実,その後,薄紙を剥ぐよう 降りられればいいが,まごまごして気がついたら に画家志望は消えていき,高校に入った時には, 名古屋を後にしていた,などとなる。もはや引き すっかり忘れてしまっていた。担任の予測は正確 返しも出来ず,不幸にして落伍するほかなくなる。 だった。画家から「他の道」へと,筆者の関心は 妙な話だが,こうして毎年のこと,大学とし 見事に逸れて行ってしまったのだから。というわ て,入学式直後から,新入生の「乗り間違え」に けで,今日に至ったという次第である。 神経を尖らすことになるのである。本人のために は,早めに進路変更させることも,「導入教育」 その代わりに,というと変だが,二つ違いの弟 が美術の学校に進み,今では楽器などの木工芸品 のポイントといえよう。実際,入学式で「袖擦れ を制作している。きっと弟には,女子大での筆者 合った」だけで退学する新入生も,過去珍しくな の日常など思いも寄らないであろうし,筆者には, い。専門性の高いコースほど仕方ない。この「導 また,弟の世界は垣間見ることさえ出来ない,と 入教育」も時間が経つと「励ますべきか,諦めさ いう思いである。 せるべきか」の判断はかなり難しくなる。 「画才」に感心していた両親が,画家の世界を さて,路線選択が個人の域を超えて集団になる 本当はどう見ていたのだろう。しかし,筆者の気 と,引き返しはおろか,途中下車もほとんど不可 持ちが絵から離れていくのを見るにつけ,いつし 能となる。それが「路線」というものである。小 かそのことをまったく口にしなくなった。 は山岳遭難から大は戦争までだ。戦前,日本人を てんてつき 火の玉のように駆り立てた大日本帝国の路線は, あの時,担任の先生の「転轍機」が働かなかっ たら,筆者は「画家路線」を大した才能もなくひ 惨憺たる敗戦によって,ようやく息の根を止める た走っていたのだろうか。が,今となっては永久 ことが出来た。さらに「一億玉砕路線」を突き進 に答は出ない。 んでいたら,今ごろ日本民族はどうなっていたか 予測の限りではない。それが「路線」の怖さであ 数学者が百人集まって,話の通じる相手が一人 食品と容器 220 2013 VOL. 54 NO. 4 (平成14)されて十年,その検証の動きが始まっ る。 ている。 ○ 女子大から男女共学への転換に勝る大学の「路 旧カリから現行カリへの「路線転換」に際して 線転換」はないであろう。以前より,18才人口激 は,管理栄養士業務における厨房業務(食事づく 減に直面して,少なからぬ女子大が共学に踏み り)の位置づけをめぐって,激しい議論が交わさ 切った。成功事例もあるが失敗事例もあるようだ。 れた。現行カリは,管理栄養士の「脱厨房」を進 志願者プールの倍増は魅力だが,計算どおりには める暴挙,との声すらあった。案の定,以来,養 いかない。 成課程の学生の意識は「路線転換」してしまった ようだ。現在,20代管理栄養士は,すべて新カリ ご他聞に漏れず,筆者の大学でも,一頃,共学 への転換をめぐって「路線論争」が持ち上がった。 世代である。 しかし,この論争も程なく鎮火して今になる。男 「路線転換」により,カリキュラム上,管理栄 子トイレの増設は,建物構造上困難だとの些末な 養士(マネージメント)と栄養士(オペレーショ 議論もあったが,何より,創設者の敷いた「女子 ン)の業務が分離されたため,皮肉なことに両資 教育路線」を乗り超えるだけの理由がなかったか 格は並列化の様相を呈することになった。上位資 らである。単に,サバイバルを図るとの脆弱な理 格と下位資格の関係が混乱し,現場で困惑してい 由では,教育機関の「路線」を転換することは出 る若い管理栄養士の声がしきりに耳に届くように 来ない。若者に志を持たせ,有為の人材として教 なった。「食事づくり」の現場で,管理栄養士が 育し,世に送り出すためには,新たな哲学(理 宙に浮いてしまったとの指摘が多い。現行カリは 念)が用意されねばならないからだ。経営的観点 破綻を来しつつある。 元来,管理栄養士(上位資格)は,栄養士(下 を超える理由が求められる。 これに気がつくのに,さして時間はかからな 位資格)の業務を包摂し,それを高度化し,拡張 かった。そもそも,自分たちの学校は,経営を度 することで,その「上位性」が担保されるはずの 外視したところから始まったという当たり前のこ ものである。 しかし,この簡単な理屈を無視して「路線転 とに気がついたからである。 換」が図られたと言わざるを得ない。あたかも, 社名変更は,企業の路線転換にほかなるまい, と外部者は見る。そこには企業戦略の新展開以上 調理実務の切り離しが,管理栄養士の「上位性」 の「哲学の転換」を読み取らざるを得ない。つま の「証し」であるかのような錯誤に囚われていた り「創業の精神」はどこに行ったのか,変わった のであろう。 したがって,現行カリの検証に当たっては, のか,変わらないのか,外部者は目を凝らして見 ている。そこには重大なリスクが懸かっていると 「路線の再転換」を避けて通れない。一切の行き 考えるからである。当然,内部では熾烈な「路線 がかりを捨てて,現場からの自由闊達な議論が待 対立」があったはず,と考える。企業も人間集団 たれている。 ○ である以上,束ねる「哲学」が必要だからである。 乗り換えることも,降りることも,転換するこ 企業の「路線」とは,トップの恣意を超えたもの とも難しい。その厄介なものが「路線」である。 のはずである。 明治維新も戦後改革も,つまるところ国家の かといって,「路線」なくしては,行動指針が定 「路線転換」であった。要するに革命である。一 まらない。万事,動きが取れなくなってしまう 国における「路線転換」には流血の惨事が伴うこ のである。「路線」は,日常の思考経済でもある。 とは,繰り返し歴史の教えるところである。 だから人はみな競って「路線」に乗り込みたがる。 しかし,安易な惰性と背中合わせなのも「路線」 ○ である。 管理栄養士養成課程に今のカリキュラムが導入 食品と容器 221 2013 VOL. 54 NO. 4 ● 海外技術情報● 最近のエネルギードリンクのトレンド ( Finding the Next Big Things ) Beverage World(USA)p. 8( ’ 12・9 )文献 № 5816 ココナツウォーター,リラクセーションドリン ク,ヘンプ1)飲料,リビドー2)ショット,二日酔 い対策ドリンク。これらは特定の効能を求める消 費者に狙いを定めた数少ないニッチ飲料カテゴ リーだが,もしあるとすれば,このうちのどれが 次の大ヒット飲料になるであろうか。 それを水晶玉なしに予言するのは難しいが,飲 料市場トレンドは明らかにエネルギーのカテゴ リーに一つの可能性を暗示している。そのカテゴ リーはかなり前から市場に出回っていて,高価格 帯ながら確かな成長を続けてきた。しかしながら, エネルギーと水分補給にハーブエネルギーをブレンドした “ROCKSTAR RECOVERY” 二,三のブランドに支配されたこのエネルギーカ ネス愛好者を狙ったアイソトニック飲料3)である。 テゴリーは,既に飽和状態にあり,楽勝を当てに 機能性の中では健康とウエルネスが重要である。 する便乗製品が氾濫しているとしばしばいわれて Euromonitor International 社の業界アナリスト いるものの,それらのほとんどは成功しなかった。 である J. Feliciano 氏は,一部の消費者は,機能 しかしここへ来て,息が長いと思われるいくつか 性と低カロリーのみを求めるのに対し,別の消費 のサブセグメントが出現してきた。 者はその上に健康とウエルネスの表示を求めると 昨年,このカテゴリーで前年を上回った製品は, 言う。 疲労回復飲料またはハイブリッド飲料である。代 エネルギーカテゴリーの中で,Starbucks 社は 表的なのは,ティーベースのエネルギードリンク Refreshers という商品ライン,すなわち本物の Monster Rehab,およびレモネードのようなフ フルーツを使った RTD,VIA(インスタント粉 ルーツジュースと同ブランドのハーブエネルギー 末スティック),手作りドリンクを導入した。「現 ドリンクをブレンドし,エネルギーと水分を補給 在,消費者に提供されているものに,ナチュラル する Rockstar Recovery である。エネルギード 甘味料のブレンドがある。人口甘味料や100%砂 リンクにはランクされていないが,AriZona RX 糖で甘味付けされたものほど甘くなく,カロリー は Symphony IRI 社データによると,2011年エ を抑えてある」と同氏は言う。 ネルギードリンク売り上げ20位に相当するという 手作りおよび RTD の Refreshers は本物のフ (同製品は RTD ティーにリストされている)。 ルーツジュースで作られており,ステビアでナ もう一つのハイブリッドエネルギー飲料が, チュラルに甘味付けされている。手作り飲料はそ Battery Hydro で あ る。 そ れ は,Euromonitor れぞれ100カロリー以下(Tall, Grande,Venti 各サ International 社によると,変化する消費習慣に対 イズ),Starbucks VIA Refreshers はショ糖を含 応すべく,フィンランドでは400mL ボトル,チリ み,一杯8オンスでわずか35カロリーである。 では330 mL 缶というように,国によって異なるサ 「消費者の Starbucks Refreshers 飲料の楽しみ イズと容器で昨年発売された。微炭酸で,カフェ 方を,当社は一から見直している」と Starbucks インとビタミンが入った,アスリートとフィット 社世界飲料革新部門担当役員である B. Smith 氏 食品と容器 222 2013 VOL. 54 NO. 4 は言う。「伝統的なコーヒーおよびコーヒー飲 Beverage Marketing 社 取 締 役 の G. Hemphill 料 と 違 い,Starbucks Refreshers 飲 料 に は グ 氏は一つの飲料カテゴリーの将来の成功を特定す リ ー ン コ ー ヒ ー( 生 豆 ) 抽 出 成 分 が 入 っ て い るのは難しいとしながらも,市場はより健康に良 る。Starbucks Refreshers 飲料は,100%アラビ い飲料製品の方向に向かっており,当該製品には カコーヒー豆の天然成分であるカフェインとエネ 新機軸ないしはそれ以上の斬新なものがまさに出 ルギーを強化して消費者に届け,新しいタイプの 現しようとしていると語る。 コーヒー体験を提供する。本物のフルーツジュー (訳注) 1 )ヘンプ:大麻,マリファナ。(大辞泉) 2 )リ ビドー:精神分析で,人間に生得的に備わって いる衝動の原動力となる本能のエネルギーをいう。 (大辞泉) 3 )Isotonic(アイソトニック)飲料:水にミネラル類 や糖分を配合し,体液に近くして体内に吸収され やすい状態にした飲料。(大辞泉) スに組み合わせると,エネルギーがナチュラルな 成分で強化された止渇性飲料になる。Starbucks Refreshers 飲料はまた,1杯で1日に必要とさ れるビタミンCの50%以上を供給する低カロリー ドリンクである」と同氏は続けた。 (常盤恭徳) ● 海外技術情報 ● 飲料におけるターゲット・マーケティング ( Targeting Demographics in Beverage Marketing ) Beverage Industry(USA)p. 37( ’ 12・10 )文献 № 5822 アメリカ合衆国は18世紀に,広く雑多な人種を 自国に受け入れ一つの共通文化に融合させること によって,「人種のるつぼ」という呼び名を受け た。そのため,多くの消費者向け包装製品(CPG) 企業は,消費者について,および消費者の民族性, 性別,価値観,地理的位置によってその購買行動 がどのような影響を受けるかについて,多くの時 間を費やし調査を実施する。その結果,企業は消 費者により良く伝わるマーケティングプログラム ヒスパニック系はスポーツ飲料を特に好む を強化する機会が得られる。 これらのデモグラフィック1)に対するマーケ ではないことである。ヒスパニック系は出身国, 2) ティングの選好 は,いくつかは全体像を反映す 年齢,世代などの多様なセグメント個々に,CPG るが,それ以外では大衆とかけ離れる。ヒスパ ブランドと関わり,関係を構築するやり方を持っ ニック系アメリカ人は全米で急速に成長中の消費 ていると Symphony IRI 社は言う。同社リポー 者グループであり,全人口の16%を構成する,と トによれば,製造業者や小売業者は,ヒスパニッ シカゴに拠点を置く Symphony IRI グループは ク系が一般の人に比べ,クラブストア3)で20%, 報告する。過去10年間で43%伸び,他と比べ8% 大規模小売店では36%も多く消費することを知る 近く多くの CPG を消費して,今年は購買力で1.3 必要がある。加えて,ヒスパニック系は家族と栄 兆ドルに達するという。 養摂取を最重要視する。しばしば一から料理する 極少セグメントを認知 ことが好きで,家族全員で買い物をするのが普通 しかしながら,重要なのはヒスパニック系消費 である。ということは,子供たちが購買に対して 者をひとくくりの大きなグループにまとめるべき 食品と容器 強い影響力を持っているといえる。 223 2013 VOL. 54 NO. 4 製品の選好 レシピを継承する本格的な RTD ビールミックス ヒスパニック系は広範囲のカテゴリーのブラン の Tecate Michelada を発売した。 ドを購入するが,他のデモグラフィックよりずっ 「ビールミックスは US ではメキシコ系アメリ と人気の飲料カテゴリーがある。Mintel 社によ カ人に人気があり,過去3年間持続して成長して れば,ヒスパニック系は56%がスポーツドリンク いる」と Tecate のマーケティング担当副社長 F. を最もよく飲んでいるようだ(白人38%,アフ Palau 氏は説明する。「この新しい商品ラインは, リカ系アメリカ人50%,アジア系39%)。ヒスパ 多少の付加価値があって,その場ですぐに楽しめ ニック系の間でのスポーツドリンクの人気は,効 るビールを好む消費者にとってはうってつけであ 能があるという多くの肉体労働者層のほか比較的 る」と言う。 若年層にも支えられていると同社はリポートする。 デジタル化 アルコール市場では,ビールが最も人気があ ことデジタルメディアとなると,ヒスパニック る。ヒスパニック系は他の民族グループより輸入 系を始め,大きな影響を受けているいくつかのグ ビールを6%多く飮み,さらに合衆国では最大の ループがある。ヒスパニック系とアフリカ系は, テキーラ愛飲グループでもある(ヒスパニック系 他のグループよりもオンラインで調べてから購 の27%以上がテキーラを飲む)。別の角度からみ 入することがずっと多いようだと The Hartman ると,最も好まれないアルコール飲料はワインで, Group の Demeritt 氏は言う。オンラインで調べ 全体の33%に対して,23%である。 て購入する人の割合は一般的に28%だが,アフリ カ系は44%,ヒスパニック系は36%と一般を上回 「多くのヒスパニック系アメリカ人,特にメキ シコ系は母国ではワインに親しむことがなかった。 る。 ワインを飲む文化や伝統が無かったからである。 「推測だが,特にヒスパニック系は,伝統的に しかし,これはこれから数年で変わると期待する 自分たちが使用してきた製品が,米国の主要な食 し,もう既にその数字は上昇している。2005年か 料品店にあるかどうか分からないという文化的ま ら2010年の間に毎月ヒスパニック系に飲まれたワ たは歴史的理由に基づき,まずはオンラインでそ イングラス数は約50%も増えた。これらの多くの の製品を探そうとすることが多いようである」と ヒスパニック系のワイン消費者は第二,第三世代 同氏は言う。 であるが,文化順応レベルがワインの消費習慣に そうしたヒスパニック系にとって,Facebook 影響を与えているのである」と Mintel 社上級ア または Twitter は満足度が高い手段といえるかも ナリストの L. Ahuile 氏は明言する。 しれない。ヒスパニック系の約36%が,それらは このグループに対するマーケティングとなる 企業側からの情報発信の一つの好ましい方法であ と,すべてのメディアを使った発信と2言語コ り12%は Twitter が良好な消費者への到達手段で ミュニケーションが重要だ。Mintel 社によれば, あるという。これらの数字は大きくはないが,統 36%のヒスパニック系が TV コマーシャルに興 計的には一般の人達より高い。アフリカ系は,連 味があり,38%が TV 番組に合わせてスケジュー 絡手段として Facebook または Twitter が良いが ル を 調 整 す る と い う。 さ ら に,The Hartman 電子メールも良いという。電子メールは消費者へ Group 社(ワシントン州,Bellevue 市)社長の L. の連絡手段として,一般の人達の50%に対してア Demeritt 氏は,一部のヒスパニック系はパッケー フリカ系の62%が良好なツールだと答えている。 ジにスペイン語があるのを好むと付け加える。た これはいくつかのニューメディアを,ヒスパ いていの場合,広告をスペイン語にして欲しいと ニック系とアフリカ系のどちらも,一般の人達, いう程のものではないが,描かれる肖像は自分と 特に白人より良好なツールと考えていることを示 似た人たちであって欲しいと思っている。 している。 同様に,ミレニアル世代(18歳から29歳)も分 先月,White Plains 社が,伝統的な Michelada 食品と容器 224 2013 VOL. 54 NO. 4 析結果や意見については,ソーシャルメディアを シャルメディアマーケティング戦略を持つことが 信頼しているようである。しかし,購入に際して 重要である。 は,彼らは伝統的な小売店を好むと RedPrairie 新しい消費者セグメント 社(Atlanta 市)はリポートする。そのリポート ヒスパニック系やミレニアル世代を始めとする によると,彼らの店内購入の選好いかんにかかわ 消費者グループに加え,新しい消費者セグメント らず,小売業者や製造業者が,オンライン,小売 である“ハートランド(アメリカ中西部)”消費 店でのクイックレスポンスコード経由,携帯電話, 者グループが認識されてきた。このグループは, ソーシャルメディア等,至る所に製品情報を展開 全米消費者の60%に該当するが,大部分のブラン する必要があることも指摘している。 ドからは正当に扱われず,かつ見過ごされてき イノベーションの推進 たと消費者参加団体 Access Brand Strategies 社 (テネシー州,Brentwood 市)主席ストラテジス ヒスパニック系は米国で最も成長しているグ トの P. Jankowski 氏は言う。 ループだが,ミレニアル世代はベビーブーマーに 次ぐ規模の世代であり,飲料業界で多くの革新を 「多くのブランド意思決定者がハートランドの 推進する役割を担っていると Technomic 社(シ 文化的な微妙な差異を無視し,この地域に適した カゴ)は言う。2018年までに,ミレニアル世代全 作戦行動が出来ていない」「多くの代理店や顧客 員が米国内法でアルコール飲用可能年齢に達する。 は一つですべてに通ずる戦略を採用してしまう。 そして,その世代は既に成人飲料市場で存在感を この新しいセグメントを知らないというのもある 示していると同社は言う。ミレニアル世代はクラ が,多くの場合,自分たちになじみの無い文化に フトビール,ブティックスピリッツ(少量の高級 深くかかわるのが怖いからだ」と氏は語る。 新しいハートランド消費者グループは中西部, ブランド酒),ワインの甘味フレーバー特性など のトレンドの推進に関与している。実際,彼らは 南西部,そして南東部の数カ所に居住し,信念 国産ライトビール,ハードサイダー,カクテル, (宗教ではない),共同体,家族を始めとする一定 の中心的価値観で結ばれている。 赤ワインブレンドや Moscato(イタリア産白ワイ 「各飲料ブランドは自分たちが新しいハートラ ン)を年長の人達より頻繁に飲用する。 Technomic 社によると,この世代は他のどの ンド消費者グループとどうやって意思疎通するか 世代よりも,飲食店でもそれ以外の場所でも新し を強く意識する必要がある。通信方法がとても重 い飲料を試すようである。 要で,かついかにして測定可能な結果を作り出す 「ミレニアル世代は成人向け飲料の最大トレン かという,ある種の文化的ニュアンスがそこには ドのいくつかを間違いなく推進しており,今後数 ある。だから,その意味で彼らの文化に適切に関 年間はそれが続くだろう」と Technomic 社副社 与しなくてはならない」と P. Jankowski 氏は言う。 (常盤恭徳) 長で成人向け飲料動向分析リーダーの D. Henkes 氏は言う。しかし,これは均質なグループではな いと思う。その規模と固有の多様性故に,供給者 (訳注) 1)人口統計学的属性,つまり性別,年齢,地域,所 や流通業者から小売業者やレストラントオーナー 得,職業,学歴,家族,構成などその人の持つ社会 に至るまですべての飲料関係事業者は,ミレニア 経済的な特質データをいう。デモグラフィック分析 ル世代とかかわる際には,成人向け飲料の状況や 消費について,極めて戦略的でなければならない。 つまり,彼らは過去の世代よりずっとソーシャル 2)経済学(ミクロ経済学)の消費者行動理論で使用 される概念 3)会員制ディスカウントストア メディア通であるから,彼らに到達するにはソー 食品と容器 を基にしてターゲット・マーケティングを実施する。 225 2013 VOL. 54 NO. 4 ● 海外技術情報 ● バイオガス設備を有した先進的で持続可能な農場 ( Stahlbush Island Farms : A Model of Self-Sufficiency ) Food Engineering(USA)p. 43( ’ 12・11 )文献 № 5827 持続可能な農場経営ビジネスは成り立つかとい う疑問に対する1つの回答が,ここに紹介するオ レ ゴ ン 州 の 農 場,Stahlbush Island Farms で あ る。Chambers 夫妻が経営するこの農場は1990年 以来2桁成長を続けている。1985年にこの農場を 拓いて以来,夫妻は食糧生産の持続可能性に意を 注いできた。その最も顕著な成果がバイオガスシ ステムで,これによって同社は自身が作り出すよ りも多い CO2を大気から除去することに成功し, Food Engineering 誌主催の2012年「サステナブ B.Chambers 氏とバイオガスシステム ルプラント・オブ・ザ・イヤー」賞を獲得した。 てん 二人は結婚早々 352エーカーの小麦と甜菜農地 るテクノロジーやグリーンなビジネスはアメリカ を始めた。二人とも農家の出身で共に農業経済学 自体の食糧自給への可能性をも秘めているといえ を学んだが,「最初に始めた小麦と甜菜ではこの る。アメリカで消費されるフルーツと野菜の半 先長期的にはやっていけないと分かり,カボチャ 分は輸入品だと妻の K. Chambers 氏は指摘する。 栽培に転換,その後自家加工工場さらにはバイオ 収穫期に収穫し,出荷すべきときに出荷するとい ガスプラントの設置へと進んできた」と夫の B. う今のままのやり方でも自分たち経営者のことだ Chambers 氏は語る。 け考えるならそれでOKだが,一般の従業員(250 1日に75~80トンの加工廃棄物と貯蔵作物を投 名)や収穫期のみの季節要員(350名)にとって 入する同社のバイオガスプラントは,発生するメ はその恩恵は及ばないし,農地の活用の面でも無 タンで20気筒,2,200馬力のタービンを回し,自 駄があると氏は言う。 社で消費する2倍の電力を電力会社に送っている。 緊縮財政の船出 ガス回収後に残った残渣(同社に言わせれば「栄 借金は3年以内に返すと手堅い経営を続けてき 養分」だが)は,有機肥料に転換され,いまや た同社だが,だからといって製品のイノベーショ 5,000エーカーとなった同社の農場で使用されて ンなど新しい取り組みを控えているわけではない。 「財務管理も勿論大事なことだけれど,新しい製 いる。 品や新しいテクノロジーに挑戦しようという気持 エネルギーの再利用はそれだけに留まらない。 タービンのクーラントはエコノマイザー(中古の ちが必要だ」と氏は言う。「そのためには人が言 ボイラーに熱交換器を付けただけのものだが)に うことに耳を傾けることが必要で,それによっ 送られ,そこで発生した熱でスチームを作り,加 てこの会社の仕事は広がってきた。以前,(著名 工工場などで用いる。さらに,タービンから得ら な料理研究家の)マーサ・スチュアートの料理 れた潜熱で来シーズン用のカボチャの種子の保存 教室に参加していた人が,そこで使われていた 室の温度調節を行ったりもしている。 Stahlbush 社のカボチャピューレを見て,『これ この持続可能性の好循環はひとり Stahlbush 社 は消化がよくてペットの餌にとても良い』と言う にとっての成功だけでなく,そこに内包されてい のを聞いて Nummy Tum-Tum と名前のドッグ 食品と容器 226 2013 VOL. 54 NO. 4 フードを商品化した結果,いまやそれがこの会社 同社バイオガスシステムの心臓部は90万ガロン で3番目のブランドになった」と氏は述懐する。 の容量を持つ2基のコンクリート製ダイジェス そうした経験から同社はフェイスブックなどの ター(消化反応装置)と,それらよりやや小さめ ソーシャルメディアでの消費者とのコミュニケー の,半球形の屋根を持つダイジェスター1基から ションを積極的に行っている。健康に良い食品を なっている。この小さいほうのダイジェスター 求める傾向は,所得の多寡に関わらずどの階層の は大きさとしては3,000m3 で,大きいダイジェス 人にも共通しており,一番よく聞かれるのは『こ ターの5分の4だが,ガスの貯蔵能力としては2 れはどこで作ったものですか?』という質問だと 倍の能力を有している。設計は,ヨーロッパで いう。こうした消費者の声を受けて有機農法への 100基のバイオマスシステムのエンジニアリング 移行が始まり,現在その割合は同社の農地全体の 実績を持つオーストリアの AAT Abwasser 社の 30%に達している。ただ,それよりももっと人々 手になるもので,交互変水圧発酵方式を採用して の共感を得ているのが「持続可能性」という同社 いる。撹拌器などの機械的な装置は使わず,バイ のコンセプトである。同社が1997年に認証を受け オガスでミキシングを行う。原料素材がサイロの た Food Alliance(食糧同盟)というプログラム 外部タンクに入って,徐々に下方へ向かっていき は,オレゴン州立大とワシントン州立大がケロッ ながら内部タンクに移り,これを温度の上げ下げ グ財団の援助を受けて始めたものだが,その認証 やベント穴の開閉で圧力を変化させることによっ の対象は食糧のみならず農地の土壌や用水,作業 て撹拌を促す仕組みである。初期投資は高くつく の方法,野生生物の保全といったものにまで及ん が,発電というだけでなく,廃水の処理,その他 でいる。因みに,Stahlbush 社の農地ではワシの 環境汚染につながるような問題への対応も可能な つがいが2組,アオサギのつがいが65組確認され システムになっているという。 かくはん ており,これが害虫の自然駆除にもなっている。 このシステムは,「コーラのビンを開けるとガ この持続可能性の追求がさらに進んで,同社 スの泡が湧き上がっていくようなもので,しっか で は 製 品 用 の 冷 凍 バ ッ グ に Cadillac Products りメンテナンスをすれば100年はもつだろう」と Packaging 社が開発した100%生分解性の素材を B. Chambers 氏は言う。ただ,原料となる廃棄 使っている。バッグの外装にはクラフト紙を用い, 物は何でもいいというわけではなく,pH 調整や, これに印刷を施しているが,他社にも同じような 温度,その他のコントロールは慎重にやらなけれ ものを使って欲しいという立場から,同社ではこ ばならないという。 の技術を特許化しない方針としている。 稼動開始後,最初の26カ月間で Stahlbush 社の エレガントなデザイン バイオガスシステムは18ギガワットを発電,2012 生分解のバッグもさることながら,Stahlbush 年は11,000 MW h に達すると目されている。5名 社がもっと力をいれているのがバイオガスで, のスタッフがシステムに習熟するにつれて,現在 2006年に石油と天然ガスの価格が高騰し始めてか までにエネルギーの回収率は70%に達しており, らは,代替エネルギーの確保が同社にとっては大 将来的には100%も可能だと思う,と同社は言う。 きなテーマとなった。オレゴン州では代替エネル 4つのビジネスパートの調和 ギーの生産者には1kWh あたり5セントの補助 Stahlbush 社の主なビジネスとしては,第1に 金や,代替エネルギープロジェクトのエンジニア 農場,第2にその農産物を使った食品加工とバイ リングコストの半額負担,税額控除,等々の奨励 オガスプラント,そしてそれらを支えるための機 措置があり,銀行などの協力もあって普通なら7 械や設備の製作というものがある。同社が抱える ~10年掛かるプロジェクトの投資回収が,こうし 問題の1つが人手の確保で,今後事業を持続して た補助などのおかげで同社の場合4年程度で済み いくためには人間の代わりを務める技術が必要だ そうだという。 という。例えば,同社では一般の農場にはまだ普 食品と容器 227 2013 VOL. 54 NO. 4 及していない最新の GPS 機能を備えた自社仕様 野菜とフルーツの生産ということだけにとどま のベリー用収穫機16台を自前で作った結果,これ らず,持続可能性という,より広い視点から食品 まで100万ドル以上の経費節減につながったとい 加工やバイオガスプラント事業などへの取り組み う。 を進めてきた同社だが,今後も単にエネルギーの 持続可能性とはまた,自分の属するコミュニ 自給ということだけでそれを終わりにするのでは ティーを持続させることでもあるという考え方か なく,さらに大きな持続可能性の実現に向けて取 ら,同社は地域貢献のため100万食分の野菜とフ り組んでいきたいというのが同社の主張である。 (大池静男) ルーツをオレゴン州食料バンクに寄付している。 ● 海外技術情報 ● 特殊インクによる革新的なインタラクティブパッケージ・デザイン ( Inkredible Interactive Innovations ) Packaging Digest(USA)p. 52( ’ 12・10 )文献 № 5823 消費者の注意を引き留める方法としてインタラ クティブな商品包装の効果はすでに実証されてい る。中でも,高性能特殊インクほど包装デザイ ナーに注目されているものはない。幅広い応用の 可能性を持ちながら従来の印刷工程を利用でき, 商品の独自性を強調するためのインタラクティブ な商品包装を可能にする。 単純にブランドを示し利用方法の説明や栄養価 の表示をするだけでなく,有益なさまざまの情報 を提供する商品包装がこの10年ほどの間に著しい 伸長を遂げてきた。インタラクティブな商品包装 は店頭で商品を選択しようとするその瞬間に消費 者の注意を引き付けるだけでなく,実際に商品の 消費量を高める効果があることを販売開拓に携わ る人々は経験している。その最もよい例はコカ・ コーラ社が2001年に採用開始した“6×2フリッ 冷えると青色に発色 ジパック”である。コカ・コーラ社の調査では, 清涼飲料は冷やされていてすぐに飲める状態にし もう1つ大ヒットしたものとしてクアーズライ てあれば陳列棚に置かれているものに比べ消費さ トの山々の色調が変化する図柄の容器がある。示 れる可能性が70%高くなるという。従来の3×4 温インクを用いてアルミ缶や瓶ラベルの山々の図 パックと異なり6×2フリッジパックは消費者が 柄を青く変化させるデザインにしたところ最初の 車のトランクから取り出してそのまま冷蔵庫に貯 年に売り上げが3%増加し,その勢いが今でも続 蔵できるように設計されたものである。フリッジ いている。2012年初め , 業界誌 Beer Marketer’ s パック採用の1年後,コカ・コーラクラシックは Insights はクアーズライトがアンハイザー・ブッ 3.3%,スプライトは3.2%の売り上げ増を記録し シュの旗艦商品であるバドワイザーにとって代わ た。 り全米第2位の売り上げとなったと報じている。 食品と容器 228 2013 VOL. 54 NO. 4 コカ・コーラ,クアーズのいずれも飲料容器の 太陽の描写が現れ,「このカップはコーヒーを注 改善により商品の売り上げを大きく押し上げるこ いだときに目覚めました。弊社のコーヒーはあな とができることを示している。インタラクティブ たにも同様の効果を提供します」と印字されてい な包装の採用は少数の限られたブランド商品にと る。飲み物が冷めるに従って昼間から夜の光景に どまらず,全米の食品・飲料業界に広まってきて 変化して“夜遊び”を連想させるアルコール飲料 いる。 用の示温ラベルのように,日々の時間の経過に似 高度のインパクトをもたらす簡単な答え せた表現を特殊インクで表現することで暗示効果 特殊インクは簡単で費用を掛けずに消費者の注 を持たせることもできる。 目を引くインパクトと機能性を実現するさまざま 飲み物を飲用している間に容器が変化して,か な方法を提供する。実際上すべての商品包装が何 つて親しんだ飲料の容器形状,色彩,ロゴ,書体 らかの印刷が施されているので,従来の装飾用イ を想起させるというように,消費者に若いころの ンクから機能性を付加したものに切り替えるこ 懐かしいブランドを思い起こさせる“回顧志向” とは簡単にできる。そのため,複雑な 3-Dパッ 効果を持たせるためにも,示温インク,フォトク ケージの製作やQRコードの運用に必要な基本設 ロミックインクあるいは蛍光性インクが利用できる。 計の実現サポートといった他のインタラクティブ 商品イメージを高める パッケージングコンセプトのような高額な費用を 商品の視覚的イメージを大きく変えずに,消費 必要としない。そしてまたほとんどすべての容器 者が慣れ親しんだ商品包装の効果をさらに高めて に利用できる。いくつかの面白い例を挙げれば, 特別なメッセージを適切なタイミングで消費者に 温度変化に応じて色が変わるサーモクロミック 届けるために,示温インクやフォトクロミックイ ンクのような特殊インクを利用することもできる。 (示温)インク,光照射により色が変化するフォ トクロミックインク,暗闇で発光する蓄光インク, 示温インクを使用して,缶が冷やされたときに兵 見る角度で色が変わる真珠光沢インク,手触りで 士の画像が現れるようにした軍隊をたたえる販売 分かるタクタイル(触感)インク等がある。 促進用のモンスターエナジードリンクの例もある。 特殊インクが商品に力を与える このコンセプトを利用して,イベント会場向けや 特殊インクは大きな成功を収めている例がいく スポンサーのメッセージ入りのキャンペーン向け つかあるが用途が限られたニッチ商品だという 限定商品の包装に活用するなど,スポーツ,休暇, 誤った認識が持たれている。だが,実際にはその イベントに結び付けて商品のプロモーション効果 ユニークかつ人々を引き付ける性能が,商品包装 を高めることもできる。同様に,特定の商品は特 を消費者に対して強い訴え掛けをするものに変え 定の場面に対する消費者の心情と強いつながりを てくれる一連の素晴らしい可能性を切り開くもの 持っており,特殊インクで商品包装を装飾するこ である。種類を問わずほとんどあらゆる商品の包 とでこの心情を思い起こさせることもできる。休 装に利用でき,より長く消費者の記憶に残る反応 暇のシーン,家族での一大イベント,夏の旅行, を引き出す商品包装にすることができるのだ。 人々の絆,余暇,キャンドルライト・暖炉を囲ん 高度の表現力 だ集い,パーティーといった出来事を想起させる 特殊インクは商品に結び付く前向きな連想を生 図柄のいずれも熱,冷却,太陽光,ブラックライ トに反応する特殊インクで商品包装に表現できる。 み出す暗示的効果を与え,商品の主要な利点を表 現する強力な機能を持っている。商品が消費され 商品と特定の環境との関連付け ている間に,その商品の最も重要な特徴を強調す ある種の製品は特定の環境と強い関連性を有し る画像を表示させるようにすることもできる。そ ており,特殊インクはいろいろな形でそうした関 の一例として,ある飲料用カップの試作品は示温 連付けの機会を提供する。太陽の光に晒されると インクを使い,熱い飲み物を入れたとたんに空と 無色であったものが発色するフォトクロミックイ 食品と容器 さら 229 2013 VOL. 54 NO. 4 殊インクで印刷し商品イメージを拡大することが できる。例えば,見慣れた図柄にフォトクロミッ クインクを加えれば,冷蔵庫に入れると直ちに色 とりどりに発色するステッカーができる。同様に, フォトクロミックインクでも“即応変異”効果が 利用できる。いろいろのゲーム,マネーカード類, 収集用の図柄など活用できる例を挙げればきりが ない。ナイトクラブで飲料の缶や瓶に添付された 蛍光カードでポーカーゲームを楽しむというのは どうだろうか。90年代に大流行した“メンコ”の 形を変えてブームの再来を狙うこともできる。 人生をより楽しいものに 商品包装によって消費者,とりわけ子供たちに 楽しみを与えることもできる。示温インクやフォ トクロミックインクは,温度の変化や太陽光の照 射に敏速に反応して現れたり消えたりするパズル フォトクロミックインクはアウトドア 向け製品に面白みを添える や迷路,あるいは隠された目標を作るのに最適で, シリアルの箱の裏面やその他の容器の平面は,こ の種のグラフィックに理想的な場所となる。 ンクは,アウトドア向けのバーベキューソース, スポーツ飲料,スナック,清涼飲料,ビール,レ 機能性の高い容器 モネード,クーラードリンクのような製品に新た インタラクティブな特殊インクに機能的な役割 を持たせることもできる。飲料カップの中に熱い な命を吹き込む効果を演じることができる。 消費者が商品に接する時間の増大 飲料が入っていることを示して警告を与える“高 特定の温度に反応するように処方された特殊イ 温表示”変色蓋がその一例である。これは蓋成形 ンクを用いて商品を使用中の特定の時間に表示を の前にプラスチック樹脂に示温顔料を添加したも 出現させるようにすることができ,また,単にい のである。また,示温インクはピザの箱のような くつかの文字を隠しておくだけでなくそれぞれ異 暖かい食べ物の宅配用容器の温度表示や飲料容器 なる温度で反応する複数の示温インクで複雑な図 の残量表示にも利用できる。入出庫管理用防犯タ 柄を作ることもできる。このように特殊インクを グにも蛍光インクや示温インクはいろいろな使い 使うことで商品包装が発するメッセージに応じて 方ができる。商品包装に大きな販売力を持たせる 消費者が反応する時間を大きく引き延ばすことが 双方向性を実現するという点で特殊インクは極め 可能になる。 て優れている。ブランドを差別化し,消費者が満 多様な用途 足して繰り返し同じブランド商品を買い続けるよ 特殊インクの力を生かせるのは缶や瓶の表面 うにする多様な方法を可能にする。人々に新たな に限ったことではない。ステッカー,クーポン 段階の喜びを与え,商品をより価値あるものにす 券,あるいは薄いディスクのようなものでも,特 る。 食品と容器 230 (桜田三郎) 2013 VOL. 54 NO. 4 ● 海外技術情報 ● 2012 年キャンメーカーサミット東京での講演 ( The Canmaker Summit 2012 : Family Reunion ) The Canmaker(USA)p. 28( ’ 12・11 )文献 № 5828 9月27~28日, 東 京 で 開 催 さ れ た キ ャ ン メ ー 用して,顧客の製品のブランド力を高めるのだと カーサミットに製缶会社,材料メーカー,飲料 いう。その例として,2007年に示温インクや広口 メーカー等が集まり,金属包装に関わる世界を代 のボトル缶を採用したクアーズライトのケースス 表する企業が講演を行った。 タディーが紹介された。 ▪キリンビール社 Atapattu 氏は,ブランドオーナーに対して透 日本のビール市場では,アルミ缶が市場の70% 明性を確保する大切さ,技術担当者にとどまらず のシェアを占める。サミット1日目は,キリン マーケティング担当者にアピールすることの大切 ビール社による基調講演で幕を開け,キリンビー さについて強調した。特殊な缶サイズ,容量,今 ル社のパッケージング技術開発センターの石井課 までにない表面仕上げ等により,缶をマーケティ 長代理が,会社の沿革と金属缶使用の歴史につい ングのツールとして使用している米国の地ビール て講演を行った。キリンビール社は,1870年にア 会社が,容器を瓶から缶に切り替えるきっかけと メリカの W. Copeland 氏が,日本初のビール会 もなった。今後は,アジアにも缶のメリットをア 社として設立した「Spring Valley」を起源とし ピールしていくという。 ている。今日では,年間の売り上げが256億ドル また,Atapattu 社長は,アルミ缶のリサイク (約2兆円)となり,欧州やブラジルにも事業を ル性についても言及し,ウォルマートが発表し たサステナビリティーに関するスコアカードを 拡大している。 キリン社が初めてアルミ缶を採用したのは1973 紹介した。このスコアカードでは,容量16オン 年で,209径の蓋だった。1985年には,206径に切 ス(480 mL)の各容器について,サステナビリ り替え,1994年には日本で初めて204径の蓋を採 ティーを示したものである。アルミ缶のポイント 用した。缶胴の重量は,1994年から変わってい が最も高い9ポイントで,アルミテックボトル缶 なかったが,昨年,350mL 缶の重量を12.1g から が7ポイントと続いた。PET ボトルが5.4ポイン 11.5g に削減した。また,キリン社は,東洋製罐 ト,インパクト成形アルミ缶が3.4ポイント,ガ の「ダイヤモンドカット缶」を初めて採用した企 ラス瓶はわずか1.3ポイントだった。 ボール社は,容器の軽量化にも取り組んでい 業でもあり,アルミの小型ビール樽缶,アルミボ る。2011年,ボール社が米国で完了させた蓋の軽 トル缶,TULC 缶等も採用してきた。 ▪ボール社(Ball Corp.) 量化プログラムにより,年間1万トン以上のアル 飲料缶メーカー世界最大手であるボール社から ミ使用量を削減したという。また,リサイクルア は,アジア・パシフィックの G. Atapattu 社長が ルミを用いた「ReAl」技術の開発により,イン 講演を行った。Atapattu 氏は,価値創造と,容 パクトアルミエアゾール缶の重量を10%削減した。 器のイノベーションやわくわくするような容器を 2010~2011年にかけて,ボール社は,エネルギー 提供することで,顧客が事業を拡大する手助けを 効率を,製缶事業で6.2%,アルミスラグ事業で する取り組みについて述べた。ボール社の容器イ は10%向上させた。また,水資源効率については, ノベーションの多くが,顧客とのコラボレーショ 製缶事業で0.8%,スラグ事業で39%の改善となった。 ンによるものであるという。顧客のゴールやマー ▪大和製罐 ケットを理解し,ボール社の技術やノウハウを応 大和製罐からは,国際事業部の辻本取締役が, 食品と容器 231 2013 VOL. 54 NO. 4 価値の創造について講演を行った。1990年以前の ▪新日鉄 技術革新は,缶の用途を拡大する目的だったが, 新日鉄は,この講演の翌日に,住友金属と合併 それ以降は付加価値のある缶の開発を重要視する し新日鉄住金(NSSMC)となり,世界第2位の ようになったという。2011年の大和製罐の生産缶 スチールメーカーとなった。講演では,同社の樋 数は96億缶で,そのうち2P缶が40億缶,3P飲 口副社長が,最新の開発について発表した。3P 料缶が37億缶,ニューボトル缶(NBC)が7億 缶に使われるブリキ材は,これまで一回圧延だっ 2,500万缶,食缶が4億6,700万缶,ミニボトル缶 たが,二回圧延(DR)材に切り替わりつつある (MBC:フィルムタイプ含む)が1億8,900万缶, という。また,新日鉄は,ロックウェル硬さ80~ WORC(広口リシール缶)が1億4,700万缶であった。 85,厚さ0.13 mm の DR10材を製造できる唯一の スチールメーカーである。 大和製罐の開発技術には,1994年のラミネー トスチール缶,2000年の NBC など,世界初の技 新日鉄,住友商事,メタルワンの合弁企業で 術が数多くある。2005年には,米国に DS コンテ あるタイの Siam Tinplate 社でも,製品の一部を ナーズ社を設立し,ラミネートスチール材を使っ DR 材に切り替えつつあるという。また,新日鉄 たエアゾール缶の製造を開始した。辻本氏は,大 と中国の武漢鋼鉄の合弁会社である武鋼新日鉄 和製罐がこれまで行ってきた技術開発について, (武漢)ブリキ有限公司では,2013年第4四半期 「人々の生活を豊かにする容器提供を追い求める」 に,生産能力がブリキ40万トン,ブリキ原版40万 という,至ってシンプルな理念に基づいている, トンの工場を立ち上げる。樋口副社長は,中国に と述べた。 おける2015年のブリキ需要量は,2009年が230万 ▪ラッセルシュタイン社 トンだったのに対し,330万トンから370万トンに (ThyssenKrupp Russelstein) 拡大すると予想されると述べた。 ▪ノベリス社(Novelis) ドイツのブリキメーカーであるラッセルシュタ イン社からは U.Roeske 社長が講演を行った。原 世界の主要アルミメーカーであるノベリス社か 材料が不足している中,対応策はダウンゲージ らは,アジア地区を統括する S.Maudgal 社長が だという。同社が,1970年代から達成したダウ 講演を行った。ノベリス社の売り上げの61%が飲 ンゲージ率について,3P食缶が23%,王冠が 料缶向けであり,今後10年間で4~5%の成長が 26%,DI 飲料缶が20%,エアゾール缶が3%薄 見込まれているが,その成長をけん引するのは主 肉化された。しかし,さらなるダウンゲージが必 にビールだという。また,ノベリス社は,世界最 要だという。例えば,ペルーの企業が製造して 大のリサイクルネットワークの構築に取り組んで いる0.17 mm の王冠が,南米市場で出回っている。 おり,2012年9月には,韓国の Yeongju に最新 食缶に関しては,ポーランドの Can-Pack 社が, のリサイクル工場を立ち上げた。また,2年後 0.12 mm 材を使用した73×110 mm の食缶ライン には,ブラジルの Pindamonhangaba 工場にリサ の導入を進めていて,2009年のキャンメーカーサ イクル工場を立ち上げる。他のリサイクル工場は, ミットで公開された厚さ0.10 mm の缶にかなり近 イタリアの Pieve Emmanuel,ドイツのデュッセ づいた製品が出ようとしている。 ルドルフと Nachterstedt に位置する。ノベリス 330mL の DI スチール飲料缶については,材料 社は,製品のリサイクル率を2010年の33%から 厚さの基準が0.205 mm であるが,現在10~20% 2020年に80%まで引き上げることを目標としてい 薄肉化された材料の開発が進められているという。 る。現在は39%で,2015年には50%まで持ってい また,成形ステップの少ない深絞り缶用に,拡径 きたい考えである。 率が40%以上可能な材料も検討されており,これ ▪ピースボート (Peace Boat) により高度な形状やフォーマットの実現が可能に 日本の NGO であるピースボートの山本代表は, 東日本大震災後,石巻の「木の屋」の缶詰工場か なるという。 食品と容器 232 2013 VOL. 54 NO. 4 ら流された缶を,60万缶拾い集めたエピソードに ループ企業の垂直統合により,真のイノベーショ ついて講演を行った。集められた缶は, 「希望の ンの実現を目指すという。その垂直統合の一環と 缶」として有名になった。 して,東洋製罐は昨年,米国の設備メーカーで ▪東洋製缶 ある Stolle 社を買収した。また,2014年前半には, 東洋製罐からは,三木会長が講演を行った。三 タイにラミネート工場を設置する予定で,TULC 缶の世界展開の拠点となる。 木会長は,金属缶がサステナビリティーに優れて いることを強調し,より付加価値の高い製品を開 さらに,2013年には,BPA フリーの塗料を用 発することの必要性について述べた。また,ドラ い た 蓋 で あ る BPANIA(BPA non intentional イ成形技術を使った TULC 缶について説明した。 added)エンドを発売する。三木会長は,東洋製 罐がこれまで製造してきた製品を紹介し,金属缶 三木会長は,2006年にスペインで開催された のメリットを列挙し,講演を締めくくった。 キャンメーカーサミットで,TULC 缶の技術を 金属缶は,私たちの日常生活の一部であり,生 日本国外に展開する計画を発表している。日本に は,TULC 缶のラインは20本ある。この4年間で, 活を豊かにしてくれるものである。人々にとって, 中国とタイに3本のラインを新設し,2013年には 金属缶が存在していることは当然のことであり, ライセンスを供与したイランの Sherkate TULC 金属缶なしでは生活できないことに気づいていな Iranian 社が,生産を開始する。東洋製罐は,グ いのである。 (野呂佳菜子) ● 海外技術情報 ● 慢性疾患の進行を抑える食品の処方 ( The Chronic Disease Food Remedy ) Food Technology(USA)p. 23( ’ 12・10 )文献 № 5820 最近のゲノムの研究の結果,心血管疾患,がん, れており,最近のゲノム研究による発見を通じ食 糖尿病,肥満症といった慢性疾患の進行を,食事 事がなぜ病気の予防に効果があるのかが具体的に 療法程度の簡単な対処方法で抑えることができる 分かってきた。植物性食物はビタミン,抗酸化物 ようになるかもしれない。 質,その他を合わせ何百種類もの生物活性化合物 食事内容の改善で慢性疾患の進行を抑える を含んでおり,これが体内に摂取されると触媒作 技術革新が進み,健康増進を図り,多様な調理 用が働いていろいろな変化を生じさせる。具体的 法が利用できる現代においても,地球上に最も普 には植物性食物に含まれる生物活性化合物が,細 及している食物はほとんど人間の健康維持・改善 胞や各種酵素,ホルモンおよび DNA と相互に作 に役立たない。飽和脂肪類と添加された糖類が多 用して慢性疾患を生じさせる遺伝子の発現や細胞 く含まれ,繊維質が少なく,精製穀類と畜肉を主 の変化を抑制する役割を果たす。例えば,トマト とする食事を摂取する人々が増加している。こう の中に存在する化合物リコペンは,前立腺がん, した食習慣が心血管疾患,ある種のがん,肥満 肺がん,膀胱がんのリスクを下げるという研究結 症,ならびに2型糖尿病を招く要因となっている。 果があり,ブルーベリーやイチゴなどのアントシ 2008年に全世界で死亡した人々の63%が慢性疾患 アニンが豊富に含まれる食物は,心血管疾患によ を死因とするものであったが,主に野菜類,果実 る死亡率を著しく低下させると結論付けた研究も 類,全粒の穀物が摂取される社会では疾病や身体 ある。 ぼうこう 障害の発生率が低い。以前から植物性食物の多量 酸素ラジカルが DNA を攻撃する 摂取と慢性疾患が反比例の関係にあることが示さ 多くの慢性疾患が少なくとも部分的には酸素ラ 食品と容器 233 2013 VOL. 54 NO. 4 ジカル,つまり,活性酸素種によって引き起こさ 悪性遺伝子は緑色野菜が嫌い れる炎症や損傷に起因している。人体の代謝過程 研究者たちは心血管疾患発現のリスクを高める の副産物である活性酸素種は小さい不安定な分 要因となるいくつもの遺伝子と遺伝子変異体を特 子で細胞を構成するタンパク質や DNA のような 定済みで,高コレステロール症の発症を招きやす 複雑な分子に有害な変化を生じさせることがあ くしたり,動脈内のプラーク形成リスクの増大と る。酸素ラジカルは電子が1つ足りないため,健 関係しているもの,高血圧と関係しているものも 康な細胞を攻撃してその電子を取り込み細胞を破 ある。それぞれの疾患にどの遺伝子がどういう役 壊する引き金となる。喫煙,飲酒,紫外線,不適 目を果たしているのかを見極めるための研究が進 切な食習慣は人間の体内で活性酸素種を生じる原 められているが,その中で染色体 9 p21が心臓疾 因となる。酸素ラジカルの中には,細胞がエネル 患を予測する上で最も重要な遺伝子として浮上し ギーを作り出し感染症に対抗する手助けとして不 てきている。マギル,マクマスター両大学の研究 可欠なものもあるが,活性酸素種が過剰になると 者は,染色体9p21を持ち,かつ,野菜類(特に 酸化的ストレスの原因となる。体内には酸化的ス 生の緑色葉菜類)と果実類を少なくとも1日に2 トレスを防止するための酵素機構があり,抗酸化 回摂取する人は心臓疾患発症のリスクが低いこと 物の存在もその一部である。抗酸化物は足りない を明らかにした。さらに, 9 p21染色体を持つ人 電子を補って安定化したり,酸素ラジカルそのも で野菜類の摂取が最も少なかった人は,他の人に のを分解する働きをする。人体は酸化ストレスに 比べて心臓発作のリスクが2倍という結果であっ 対応するだけの十分な抗酸化物質を生成できない た。両大学の研究では毎日野菜類と果実類を最も ため,植物性食物のような抗酸化物の元となる成 多量に摂取する人々は,心臓発作や脳卒中に罹患 分を多量に含む食物の摂取が重要である。酸化ス するリスクが30%も低いことが示された。心血管 トレスはさらに酸素ラジカルを生成する引き金と 疾患の発症に大きな役割をするものとして特定さ なり,DNA を損傷させる原因となる。とりわけ, れた遺伝子は,その他の慢性疾患にも関係してい 慢性的酸化ストレスは遺伝子の働きをつかさどる る。染色体 9 p21の遺伝的変異体は乳がん,膀胱 メカニズムに悪影響を与える。近年,遺伝子転写 がん,膵臓がんを含めいろいろのタイプのがんに に重要な役割を果たす DNA のメチル化が,がん 関係している。 り か ん すい の重要なバイオマーカーとして浮上してきている。 アリシン,アントシアニン,シンナムアルデヒ しゅよう 腫瘍抑制遺伝子の働きを鈍らせる高メチル化は, ド,インドール,イソチオシアネート,リグニ 腫瘍増殖の発現と関連している。 ン,ルテイン,リコペン,レスベラトロールなど 最近の研究では,食物に含まれるある種の生物 の植物性食物由来の化合物は,抗炎症,抗腫瘍形 活性化合物が,DNA のメチル化を抑えがんの進 成,および抗増殖特性を有することが示されてい 行を抑えることが分かってきている。緑茶のエピ る。また,ある種の植物性食物は,栄養の供給源 ガロカテキン 3−ガレート(EGCG),大豆のゲニ である血管を取り除きがん細胞の増殖を抑える働 ステイン,および緑色野菜のイソチオシアネー <異常血管新生と関連を有する疾病> トなどの化合物は,DNA の高メチル化を減少さ せ,腫瘍抑制遺伝子の発現を増加させることが示 されている。DNA の異常メチル化は肥満症とも 関係していて2型糖尿病,その他の肥満症に関連 する疾患の要因になる可能性があり,がんにおい て DNA のメチル化を抑制する効果が示された食 物の化合物が,肥満症に関連する症状の緩和にも 有効な働きをする可能性がある。 食品と容器 ・アルツハイマー病 ・ニューロパシー,神経障害 ・慢性創傷 ・多発性硬化症 ・関節炎 ・末梢動脈障害 ・冠動脈疾患 ・肥満 ・がん ・脳卒中 ・勃起不全 ・乾癬(かんせん) ・子宮内膜症 ・酒さ(皮膚病の一種) 出典: 血管新生基金 www.angio.org 234 2013 VOL. 54 NO. 4 きをする。 <抗血管新生の効果が確認されている食物の例> 食物でがんや肥満を退治する アーティチョーク ニンニク エンドウ 血管は人体のすべての臓器を構成する細胞に酸 リンゴ ショウガ ペッパー 素,グルコース,その他の必須栄養素を供給して バジル ニンジン カボチャ いる。酸素や栄養素を細胞に供給しなければ臓器 黒コショウ 緑茶 ローズマリー ブルーベリー ケール ニラ チンゲン菜 レンズ豆 ホウレン草 ブロッコリー ライ豆 サツマイモ 芽キャベツ キノコ トマト キャベツ マスタードグリーン タラゴン コリアンダー ナツメグ タイム シナモン オリーブ ウコン も細胞組織も機能不全に陥り最後は衰微してしま う。一般に,月経・妊娠,負傷時のような限られ た状況を除き体内の血管の量は生まれた時から成 人に至るまで一定である。通常,体内では酵素, ホルモン,タンパク質,遺伝子による複雑なシス テムによって血管の成長が制御されている。この 血管制御システムが正常に機能しないといろいろ な慢性疾患が発症する。あらゆる形態のがんが新 血管形成に依存しており,まずわずかに有害転帰 リスクがある細胞の微視的なクラスターとして出 コラードグリーン 玉ネギ カブ エンダイブ オレガノ クレソン フェンネル パセリ 冬カボチャ 出典: www.eattodefeatcancer.org 現した後,存続に必要な栄養素を供給する血管を 獲得した時に増殖を開始し害を及ぼすようになる。 重を防止するのみならず過体重に起因する2型糖 これまで血管新生阻害剤による治療法が開発さ 尿病を予防するための栄養バランスの調整とも一 体のものである。 れてきたが,マサチューセッツ州ケンブリッジ の血管新生基金の責任者でメディカル・ディレ 何十年にもわたり世界中の研究機関が追及して クターであるウィリアム・リー医師のグループ きたがん,肥満症,その他の慢性疾患に対する解 は,血管新生を阻害する化合物を含む一連の食材 決策は農産物にあるのかもしれない。特定されて を特定した。その中にはアーティチョーク,ベ いる植物化学物質と腫瘍細胞の異常血管新生を防 リー,ニンニク,緑茶,アブラナ科の野菜,レモ ぎ,細胞と DNA を守る効果のあるその他の植物 ン,マッシュルーム,ナツメグ,玉ネギ,パセリ, 性化合物との間には相乗効果があると思われる。 トマト,ターメリックなどがある。血管新生を抑 それ以上に,抽出した植物性化合物のサプリメン える上でそれらの食材の多くが薬物療法と同様の トでなく,植物性食物を丸ごと摂取することが毒性 効果を有している可能性がある。不十分な血管形 リスクや生物活性ロスを排除することにつながる。 成は冠状動脈の疾患や脳卒中につながる一方,過 健康を維持する処方 剰な血管形成はがんや肥満症の要因となる。従っ 人々を悩ませている主要な慢性疾患の多くが, て,血管新生の阻害というがんの対処法が肥満症 不適切な食物摂取を中心とする不健康な習慣の結 とその関連の疾患の治療の鍵となることも考えら 果であるように思われる。「遺伝子は我々の祖先 れる。酸素と栄養源を供給する新たな血管の成長 から引き継がれた運命であるが,環境がその遺伝 が脂肪細胞の増殖を促進する。リー医師によれば, 子の働き方に強い影響を与えている」とリー医師 血管形成が多いほど脂肪の塊は成長する。食欲を は言う。これまで豊富で安全な食物を入手できる 抑えて体重と余分な脂肪を減らすという従来から ようにするという点では多くの進展がもたらされ の考えを脂肪細胞を餓死させるという考えに置き たが,野菜・果実類の生物活性植物化学物質がが 換えることが可能かどうかは,今後を待たねばな んの強い特性の発現を抑制し,慢性疾患につなが らないが,血管新生抑制作用があると思われる食 る細胞変化を左右するものであるという知見から, 材はカロリーも低いので,結果は同じことになる。 毎日三度の食事に何を摂取すべきかは今や明らか 血管新生を制御するということは,肥満症や過体 だ。 食品と容器 235 (桜田三郎) 2013 VOL. 54 NO. 4 ● 海外技術情報 ● 性別固有の健康問題 ( Gender-Specific Nutrition ) Food Technology(USA)p. 67( ’ 12・9 )文献 № 5813 総合的な健康増進の観点からは,特に年をとる る防御力を高める。給餌管理により動脈硬化と に従い,その抗酸化作用のためにビタミン C,E なったハムスターにキチン-グルカン食物繊維を やカロテノイドなど、男女とも同じような栄養素 定期的に与えたところ,動脈の硬化が抑制された を求める。また,心臓血管の健康や健全な認知機 (Deschamps et al., 2009)。また体重過多気味の 能など理由は違っても,同じようにオメガ3脂肪 高コレステロール血症患者を対象とした臨床実験 酸を求める。しかし,関心を向ける特定の健康問 では,キチン-グルカン食物繊維摂取により血中 題については,男女で分かれるところである。例 トリグリセリド値および血漿中酸化 LDL コレス えば女性は心臓疾患,更年期障害,骨や消化器官 テロール値が低下した。 の健康に関心が高く,一方男性ではエネルギーや 妊娠と更年期:鉄分,オメガ3脂肪酸,大豆イ 持久力,筋肉量維持,前立腺疾患などに興味を示 ソフラボンは,女性に特有の妊娠,更年期にある す人が多い。以下に性別固有の健康問題と,有効 人を助けてくれる。月経のため,女性の鉄分ニー とされる栄養素を取り上げる。 ズは男性の少なくとも2倍となり,さらに出産が 女性の健康 多量のニーズを生む(Fortitech,2010)。出生前 心臓疾患:女性の3分の1以上が心臓に何らか の脳や眼の発達を助けるオメガ3脂肪酸は,妊娠 の問題を抱えており,心臓病は死因としてがんを 中の母体および胎児にとって重要であり,またア 上回る(米心臓協会)。毎年アメリカ人女性の31 ラキドン酸や DHA も胎児の発育に欠かせない。 人中1人が乳がんが死因で亡くなるのに対し,心 大豆イソフラボンの一種ゲニステインは更年 期症状を和らげる。純粋なゲニステインである 臓病は3人に1人である。 心臓病のリスク低減に有効な成分には大豆,植 DSM Nutritional Products 社の geniVidaTM はほ 物ステロール,水溶性食物繊維,およびコレステ てりなどを抑え(短期的効果),骨を健康に保つ ロール値に有効なベータグルカンがある。いくつ (長期的効果)。プラセボを使った臨床試験では, かの乳タンパク質は血圧に効果があるとされてい 1日に geniVida を1錠(30 mg)服用したところ, る。またオメガ3脂肪酸には心拍の安定化・血中 脂質および血流の改善・血管の抗炎症作用などが 更年期にある女性のほてり症状が回数・持続時間 共に著しく軽減された。Helios 社の EstroG-100 あるとされる。オメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸 は自社 GRAS 認定の植物性サプリメントで,韓 (n-3 LC-PUFAs) は女性の心臓発作リスク低減に 国伝統の薬草3種を含み,更年期症状のつらさや 寄与することが,49~83歳のスウェーデン人女性 頻度を抑える。 骨の健康:骨の育成と維持に貢献度の高いカル 約35,000人のデータにより示された。 2012年 IFT 年 次 総 会・ 食 品 展 で は Stratum 社 の Artinia TM シウムとビタミンDは,あらゆる年齢層の女性に 不可欠である。マグネシウムやリンも骨の構造と の 健 康 効 能 が 議 論 さ れ た。 強度に重要な役割を果たす。 Aspergillus niger(クロコウジカビ)由来のキチ ン-グルカン食物繊維で不溶解性/溶解性双方の 骨細胞の減少は更年期に先立って加速し,減少 利点を兼ね備え,動脈の健康維持や人体生来の抗 率は男性の10倍にもなる。この状態が閉経後も10 酸化作用を後押しする。キチン-グルカン食物繊 年ほど続き,やがて減少率は年間0.2~0.5%に戻 維の摂取は酸化した LDL コレステロールに対す る。ビタミンK−2 の1種である天然のメナキノ 食品と容器 236 2013 VOL. 54 NO. 4 ン−7 は,人体のカルシウム利用最適化により骨 気がある。チアミン(ビタミンB1)・リボフラビン の健康を保つとされる。定期的に摂取すれば,加 (ビタミンB2)・ナイアシン(ビタミンB3)は 齢に伴う骨強度の低下リスクを抑制できる。PL ATP をつくる代謝サイクルに欠かせない物質で Ⓡ Thomas & Co. 社の MenaquinGold にはカルシ あり,ほかに葉酸・コバラミン(ビタミンB12 )・ ウムやビタミン D,オメガ3脂肪酸といった骨に ピリドキシン(ビタミンB6)などがある。 筋肉増強/回復:乳清タンパク質は分枝鎖アミ 良い栄養素との相乗効果が望める。 Ingredion 社 Aquamin TM は海草 Lithothamnion ノ酸を含むことから筋肉量の増加に役立つ。ロイ 由来で,カルシウム・マグネシウムのほか亜鉛・ シンは筋肉の維持と回復に不可欠だが,人体内で 鉄・セレニウムなど74種ものミネラル類を含む。 は生成できないため食物から摂取する必要がある (米国乳製品輸出協会= USDEC)。 骨形成を促進し,骨粗しょう症などの治療にも利 用できる(O’ Gorman et al., 2012)。骨芽細胞の 米国スポーツ医学会議では,乳清タンパク質が 働きおよび前骨芽細胞株における石灰化を後押し 筋肉の発達に果たす役割を再検証した(USDEC, するとの研究結果も出ている。 2012)。コネチカット大学准教授 J. Volek 博士に より9カ月間の耐性強化プログラムが実施され, イヌリン・フルクトオリゴ糖・ポリデキスト 濃縮乳清タンパク質か大豆タンパク質を20gず ロースなどのプレバイオティクスも骨の健康を支 Ⓡ つ,トレーニングを行わない日は朝食後,普段は える。Ingredion 社 NutraFlora は短鎖フルクト Ⓡ オリゴ糖(scFOS )で,ミネラル類が消化器官 トレーニング直後に摂取した。「9カ月後には被 内で吸収されるために最適な pH 条件をもたらす 験者全員に筋肉量の増加がみられた。乳清タンパ 短鎖脂肪酸生成作用により,ミネラル吸収を促進 ク質摂取グループでは3.3 kg と,同大豆タンパク する。NutraFlora は scFOS 95%でミネラル吸収 質グループの1.8kg に比べて明らかに増加率が高 のほか,カルシウム保持・骨密度・骨中カルシウ く,これは分枝鎖アミノ酸によるものと考えられ ムレベルを改善する。 る」と同氏は言う。 消化器官の健康:女性は消化器官の健康に関心 協和発酵 USA 社の SustamineTM はL−アラニ が高く,プロバイオティクスやプレバイオティク ル−L−グルタミン結合ジペプチドで,素早く体 スの効能もよく知っている。フルクトオリゴ糖・ 内に吸収される構造を持ち,運動後の水分補給か イヌリン・難消化性マルトデキストリン・ポリデ ら運動中のエネルギー保持まで幅広く使うことの キストロースなどのプレバイオティクスは,細菌 できるサプリメントである。L−グルタミンの血 バランスを一定に保つことで腸内環境を整える。 中濃度比較実験では,Sustamine を服用した健康 乳酸菌やビフィズス菌といったプロバイオティク な人のほうが,L−グルタミンそのものを服用し スも女性にとってはおなじみである。 た同被験者より高かった(Harris et al., 2012)。 前立腺疾患:アメリカ人男性の前立腺がんは, Ganeden Biotech 社の胞子形成プロバイオティ Ⓡ クス GanedenBC30 は免疫・消化作用を補助す 皮膚がんに次いで多い。死因では肺がんに次いで るとして本年8月に GRAS 認定を受けた。天然 2番目であり,年間約24万人が患者と診断され, の有機物質層が遺伝子を擁する細胞核を守るため, そのうち約28,000人が亡くなっている。約6人に 食品製造工程における高温や長期保存・胃酸・腸 1人が,その生涯で前立腺がんと診断され,36人 内消化液にさらされても変質しない。 に1人が亡くなる。 男性の健康 トマトに多く含まれる赤色カロテノイド=リコ 持続エネルギーと持久力:炭水化物が主なエネ ペンは抗酸化性が高く,前立腺の健康に役立つ。 ルギー源とすると,D−リボースは ATP 生成を また紫外線による肌へのダメージを和らげること 促して細胞エネルギーを最適レベルに保つ。一方 が明らかとなり,皮膚や心臓にも良いとされる。 (力丸みほ) ビタミンB類は持続性と持久力に優れるとして人 食品と容器 237 2013 VOL. 54 NO. 4 ● 海外技術情報 ● 心臓を強化する各種の健康食品 ( Strengthening the Heart ) Food Technology(USA)p. 75( ’ 12・10 )文献 № 5821 2011年,アメリカ心臓協会は2020年までに全米 む)で毎日摂取すると LDL 酸化・血中脂質増加・ における心臓疾患による死亡を20%削減するとの 酸化ストレス・炎症作用を抑制し,心臓血管機能 目標を設定した。目標達成には食生活の改善が鍵 を促進する。 ▪レーズン:「レーズンは食物繊維やカリウ となる。AHA は15年以上にわたり,メーカーに 赤白の Heart-Check マーク表示許可を与えるこ ム,抗酸化性物質が豊富で血圧抑制などの効能 とで消費者の心臓に良い食品購入を援助してきた。 さ ら に2011年,Heart-Check 認 証 プ ロ グ ラ ム を があり,心臓病を予防する」と California Raisin 拡張・改善し,魚やナッツなど一価/多価不飽和 月の心臓病学会・科学セッションにおける研究発 脂肪酸に富む食品にも同マークの表示を許可した。 表によると,男女46名の高血圧症患者予備軍をラ またナトリウムに関する許容値を見直し,認定食 ンダムにグループ分けし,片方はスナックとして 品の加糖制限と食物繊維含有量増加のための指針 レーズンを,もう一方はレーズンや野菜果物が を実行に移すなど,メーカーにとっては消費者の 入っていない市販スナックを1日3回,12週間摂 求める食品を生み出しやすい環境が整いつつある。 取させる試験を行ったところ,レーズン摂取グ 以下に例を挙げる。 ループには収縮期血圧の有意な低下が4・8・12 丸ごと使える素材 週目に見られた。また同グループにおいて弛緩期 ▪リンゴ:閉経後の女性が1日に乾燥リンゴ75 血圧は試験期間を通して2.4~5.2 mmHg 低下した。 Marketing Board の J.Painter 氏は言う。本年3 gを摂取したところ,たったの3カ月で動脈硬化 レーズンには LDL コレステロール値および 性コレステロール値が有意に低下した(Chai et LDL 酸化抑制効能もあり,現在は糖尿病患者を al., 2012)。試験では任意に指名した160名の被験 被験者とする研究を行っていると同氏。 者を2つのグループに分け,一方に乾燥リンゴを, ナッツ類 もう一方に乾燥プラムを,それぞれ1日に75g 摂 ▪アーモンド:1オンス当たり13gの不飽和脂 取させた。3カ月を経過した時点で乾燥リンゴを 肪,1gの飽和脂肪を含み,元来無コレステロー 食べたグループでは,血清中総コレステロール値 ルである。他にタンパク質6g,食物繊維3.5g, が9%・LDL コレステロール値が16%低下した。 カルシウム75 mg,ビタミンE7.4 mg,リボフラ ▪イモ類:紫芋にはアントシアニンやカロテノ ビン0.3 mg,ナイアシン1mg が含まれる。アー イドなどの抗酸化性物質が多く含まれる。臨床試 モンド1オンスで1日当たりのビタミンE摂取目 験では平均 BMI が29の高血圧症患者18名を,6 安量の35%を補える。過去17年間で9回にわたる ~8個の紫芋を1日2回摂るグループとイモ類抜 臨床実験の結果はアーモンドのコレステロール値 きのグループに分けて4週間過ごさせた後,4週 に対する効能を立証し,ナッツ類に心臓疾患リス 間は全く異なる食生活をさせた。被験者に目立っ クを軽減するとの健康表示が認可されるきっかけ た体重増加はなく,弛 緩期血圧は4.3%・収縮期 となった。 し か ん ▪クルミ:タンパク質・多価不飽和脂肪・ビタ 血圧は3.5%低下した(Vinson et al., 2012)。 ▪ブドウ:赤/紫ブドウおよび同加工品は心臓 ミン類・ミネラル類・食物繊維・抗酸化性物質・ の健康に良いという(Vislocky and Fernandez, オメガ3脂肪酸に富む。2型糖尿病患者24名の被 2012)。生食またはジュース(コンコード種を含 験者を,1日56g のクルミを強化した食事とクル 食品と容器 238 2013 VOL. 54 NO. 4 ミを入れない食事をそれぞれ自由摂取するグルー 大クッキングオイルのひとつに数えられ,家庭に プにランダム分けしたところ,8週間後,クルミ 常備することが望ましい。オメガ3アルファリノ 強化食グループの血管内皮機能が有意に改善した レン酸が10 mL 当たり2gと多く,オメガ9/オ (Ma et al., 2010)。これはクルミの摂取が心臓病 メガ6脂肪酸も含む。食生活の中で飽和脂肪を リスクの軽減につながり得ることを示している。 キャノーラ油に切り替えれば LDL コレステロー ❖ピスタチオ:16名の被験者の制限食の一部と ル値を下げることができる。CanolaInfo 社によ して,1日に0g・42g・84gを摂取するグルー ると,FDA は飽和脂肪をキャノーラ油に置き換 プに分けて3週間後,ピスタチオ摂取グループで えると心臓疾患リスクを軽減できるとのラベル表 は LDL コレステロール値が6%低下した。ただ 示を認可している。 し,血清中総コレステロールおよび HDL コレス ❖オリーブ油:初期の動脈硬化患者の内皮機能 テロール,トリグリセリドの値に有意な変化はな を改善する(Widmer et al., 2012)。臨床試験では かった(Baer et al., 2012)。 1日に通常のオリーブ油30 mL と EGCG 添加オ ❖ピーカンナッツ:含有脂肪の約60%を一価不 リーブ油30 m L を4カ月間摂取した場合の内皮機 飽和,同30%を多価不飽和が占め,残りわずかに 能および炎症・酸化ストレスを比較した。結果は, 飽和脂肪を含む。食べるとガンマトコフェロール 2つのグループに差はなく,オリーブオイル投与 値が倍増し,LDL コレステロールの酸化が33% で炎症が有意に緩和されることが分かった。 も抑制される(Hudthagosol et al., 2011)。試験 ❖ オ キ ア ミ 油: ラ ッ ト 実 験 に お い て Aker では男女16名の被験者を,毎日ピーカンナッツを BioMarine 社 の オ キ ア ミ 油 SuperbaTM に よ る 前 丸ごと約3オンス摂る,同量を水と混ぜる,およ 処置で心筋梗塞(=MI)発作後の左心室拡張と びピーカンナッツ抜きだが等価の栄養成分からな 心臓肥大が緩和された(Fosshaug et al., 2011)。 る対照食を摂る3つのグループに分けた。ピーカ Superba を予め与えるグループと対照給餌グルー ンナッツ丸ごと摂取のグループでは,LDL コレ プとにラットを分け,14日後に MI を誘発させた。 ステロールの酸化が2時間後に30%,3時間後に MI 発作後7日目にラットの心エコー検査を行い, 33%,8時間後に26%低下した。 対照給餌グループからランダムに選んだラットを ベータグルカン オキアミ油/対照給餌グループに再度分け,7週 ❖大麦:Cargill 社の Barliv TM 間継続した。オキアミ油を予め与えたラットは左 大麦ベータグル カンは本年1月カナダ保健省より,新規の食物繊 心室拡張・心臓重量・肺重量が有意に抑制された。 維素材として同国内での使用認可を得た。全粒大 Superba は純度の高い天然の EPA/DHA 源でも 麦由来の水溶性ファイバーであり,コレステロー あり,天然抗酸化性物質アスタキサンチンにも富 ル値を下げるとの臨床試験結果も出ている。欧米 む。ユニークなのは,そのオメガ3脂肪酸の多く においても Barliv で作られた認定製品に,心臓 がリン脂質結合型であることだ。 植物ステロール 血管関連の疾病リスクを軽減するとの表示が可能 「植物ステロールの血中 LDL コレステロール となった。 ❖オーツ麦:CreaNutrition AG 社の OatWell Ⓡ 値抑制効能が,昨今の研究で次々と明らかになっ により生物活性ベータグルカンを1日3g摂ると, ている」と ADM Natural Health & Nutrition 社 LDL コレステロール値を有意に下げる効果があ の S. O’ Brien 氏は語る。脱脂粉乳あるいは準脱 る(Wolever et al., 2010)。OatWell を1日2食, 脂粉乳に植物油脂を入れたもので植物ステロー 4週間食べた被験者の LDL コレステロール値が ルを1日に2g摂ると,高コレステロール血症 平均5.5%下がった。 患者の LDL コレステロール値が低下した(Casas- 油脂 Agustench et al., 2012)。「わが社の植物ステロー ❖キャノーラ油:キャノーラ油は健康に良い5 ル CardioAidTM は FDA から19カテゴリーの食品 食品と容器 239 2013 VOL. 54 NO. 4 での使用に関し GRAS 認証を取得した。さらに Frutarom USA 社 が2011年11月 に 発 売 し た カナダでも,マーガリンや乳製品などでの植物ス Benolea Ⓡ はオリーブ葉抽出物で,心臓血管の健 テロールの使用が認可された」と同氏は言う。 康をサポートし,この成分の血圧降下作用は,血 Smart Balance Ⓡ HeartRight Ⓡ 中脂質・血糖値にも良い影響を与える。また抗酸 Fat Free Milk は Ⓡ 1回分量に Cargill 社 CoroWise を0.4g 含むこと 化性が高く,フリーラジカルによる細胞損傷から によって,無調整乳よりカルシウム・タンパク 血管を守る。 質が共に25%多く,DHA/EPA オメガ3脂肪酸・ ❖ココアエキス:フラバノールは植物栄養素の ビタミンDを含む。Corazonas Foods 社でもス 独特な組み合わせから成り,血管と血流の健康に ナック菓子等に CoroWise を使用している。 寄与する。Mars Botanical 社の CocoaVia Ⓡ はコ 新規抽出物 コアフラバノールを多く含む。一酸化窒素を健康 ❖ ト マ ト エ キ ス:DSM Nutritional Products 的な値に保つことで酸素と栄養素の流れが維持さ Ⓡ 社の Fruitflow を使った臨床試験では,健全な れる。 血小板凝集機能を維持し,血流を改善することが タンパク質 示された。成分は水溶性のトマト由来濃縮物で, 大豆タンパク質は心臓に対する健康効能と関連 シロップと粉末状があり,生物活性を有する3種 づけられ,乳清など乳タンパク質は高血圧症に対 の画分が基本になっている。 する効果に注目が集まっている。いずれを摂取し ❖オリーブエキス:PL Thomas 社の Hytolive Ⓡ ても収縮期血圧を抑制することが分かった(He はオリーブの主要フェノール成分ヒドロキシチロ et al., 2011)。高血圧症予備軍およびステージ1 ソールの高度濃縮物である。Hytolive 粉末100mg 高血圧症患者352名を被験者とする3段階のラン には,テーブルオリーブ10個分あるいは,バージ ダム化二重盲検試験において,大豆タンパク質・ ンオイル1/2L分のヒドロキシチロソールが含 乳タンパク質・高 GI 精製炭水化物(コントロー まれる。2011年,欧州食品安全機関はオリーブ果 ル)を1日40g,8週間摂取したところ,大豆タ 実や油に含まれる成分の摂取と血中脂質の酸化損 ンパク質・乳タンパク質を摂取した人は収縮期血 傷抑制との間の因果関係が確立したとの結論に達 圧が有意に低下した。 (力丸みほ) した。 別刷り合本をご利用下さい 食品成分の栄養・機能の基礎と新素材の利用技術 B5判/本文100ページ 定価2,500円(送料別) 近年,消費者の健康および健康食品への関心はますます高まり,食品会社でもこれら消費者のニーズに合った製 品の開発が一段と進められている。本書は食品成分の栄養や機能と健康との関連およびこれら素材の利用技術につ いて専門の研究者に解説願った。 《内容》健康志向食品および飲料開発の底流/食品と健康−とくに食品栄養表示基準制度/健康と栄養(1)タンパ ク質と健康/健康と栄養(2)油脂と健康/健康と栄養(3)炭水化物と健康/健康と栄養(4)ビタミン・ミネラルの 生理作用/素材各論(1)炭水化物系:①難消化性オリゴ糖,糖アルコールの機能と利用/素材各論(2)炭水化物系: ②食物繊維素材の機能と利用/素材各論(3)タンパク質系:タンパク質,ペプチド,アミノ酸の機能と応用/素材 各論(4)脂肪系:n−3系多価不飽和脂肪酸の生理機能と応用/素材各論(5)ビタミン・ミネラル系:ビタミン・ ミネラル系の素材と利用/素材各論(6)抗酸化成分:抗酸化成分の機能と利用 缶 詰 技 術 研 究 会 電話 0 3(36 63)7251 ファックス 03( 3663)7253 食品と容器 240 2013 VOL. 54 NO. 4 風水樹花徒然記 ☆ 8 に重なり,花は図案化され校章に採り入れられ, 春爛漫桜樹咲く イタサイタサクラガサイタ’の一文が載った。ま おお ば ひで 後のことになるが昭和初期の国語教科書には‘サ た,一斉に咲き同時に散るソメイヨシノは軍人に あき 大 場 秀 章 も愛され,‘同期の桜’なる言葉をも生んだ。 (東京大学名誉教授) ソメイヨシノの 春を告げる花に雪国のマンサク,庭木のウメやロ 親となったのはエ ウバイなどがある。だが,多くの人にとって春の ドヒガンとオオシ 気分はサクラの開花とともにやってくるのではな マザクラという野 いだろうか。その証拠というわけではないけれど, 生で,観賞用に栽 桜前線の動向は毎年,紙上やテレビでも話題になる。 植もされるサクラ 今に続く桜ブームを生んだのはどうやらソメイ である。ただ,竹 ヨシノの登場が関係しているらしい。自然界には 中要博士らの研究 ないこの人工のサクラが市中に植栽されるように によれば,単純に両種を交配しただけでは,ソメ なったのは早くても幕末で,広めたのは東京の巣 イヨシノ似のサクラ(これをイズヨシノという) 鴨に近い染井村の植木屋で,初め「吉野桜」と呼 はできてもソメイヨシノそのものはできないらしい。 んでいた。古来より桜の名所として名高い奈良の 写真2 ソメイヨシノ花 ☆エドヒガン☆ 吉野山にあやかったのだろう。 片親となったエドヒガンは,東アジアに広く分 布し,日本では九州から東北地方に産し,里山の 雑木林や深山の麓に多い。その名前のとおり春の 彼岸の頃に花咲く。北日本は別にして,共存する 他の落葉樹が未だ開葉する前に開花するため花は ひときわ目を惹く。 サクラの仲間(サクラ属,Cerasus)は木本だ が,多くは短命で,桜の老木といわれる大半はこ のエドヒガンである。エドヒガンには枝が下垂す 写真1 ソメイヨシノの並木。千葉県館山市 る個体が多くみられ,古来からこれをシダレザク 一時は小石川植物園や博物局天産部にも関わっ ラとかイトザクラと た藤野寄命はこのサクラを研究し,明治33年刊行 呼んできた。枝の張 の「日本園芸学雑誌」に成果を発表し,このサク りを保つのに重要な ラにソメイヨシノの名を与えた。 物質であるリグニン ふ じ の ぎ め い ソメイヨシノは開葉前に開花が始まるため,葉 の分泌が少ないと下 のない花だけからなる樹冠が出来する。人工の産 垂型になる。老木も 物であるソメイヨシノは挿木で殖やされるため, 加齢とともにその分 どの樹も遺伝的には酷似していて,どの木もほぼ 泌量が低下するため 同時に開花開葉する。散る時期もほぼ同時で,見 か枝が垂れ下るもの 事な花吹雪が大地を淡い桜色に染めていく。 が多い。京都の丸山 新生のソメイヨシノは明治という新時代,それ 公園,青梅市の梅岩 を動かす明治政府のシンボル的な存在にもなった, 寺,高尾山周辺の高 と私はみる。その開花は誕生した学校等の入学式 楽寺,金南寺など, ヒガン,ヤエベニシダレ 食品と容器 241 写真3 八重咲き花をもつエド 2013 VOL. 54 NO. 4 う ら べ −31年)の著者卜部(吉田)兼好も,八重桜は昔, 各地にシダレザクラの名木がある。 エドヒガンに似て東京などで公園等に植栽され 奈良の都にしか無かったものだが,この頃は世間 ている小ぶりなサクラ,その多くがコヒガンザク にも多くなって来たと書いている。 ラである,エドヒガンを片親に,マメザクラをか 鎌倉時代末期に登場したらしいこの八重桜は, け合わせて作出されたものと推定されている。マ 奈良の八重桜とは別系統の,交配による人工のサ メザクラの花は小ぶりで,その遺伝子の影響によ クラで,その片親は前述した関東地方南部に分布 るためかエドヒガンに較べ,コヒガンザクラの花 が限定されるオオシマザクラである。京都で急速 は小さい。遺伝的にコヒガンザクラに近似のシキ に増えた八重桜は,オオシマザクラが幕府の置か ザクラ(四季桜)は秋にも開花する。 れた鎌倉から京都に運ばれ京都で雑種が生れて広 まったか,あるいは鎌倉周辺で発見された八重桜 ☆オオシマザクラ☆ の株が京都に運び込まれたか,いずれかであった サクラの栽培品種育成に重要な貢献をしたのは であろう。鎌倉周辺の寺社などにも愛でる桜が多 オオシマザクラである。その自然分布は房総半島 かったらしいことが「東鑑」の記述などからも推 南端,三浦半島,伊豆半島及び伊豆七島という比 察される。 卜部兼好は一重を好み八重桜を嫌っているが, 較的狭い範囲に限定される。 八重桜への愛好は増加の一途を辿った。やがて固 葉にクマリン配糖体を多く含み,塩漬けや陰干 にすると芳香を発散する。桜餅に用いる桜葉はオ 有の特徴をもつ栽培品種も登場するようになった。 オシマザクラのものである。木の成長が速く,太 鎌倉時代に続く室町時代のことであった。 平洋戦争後の燃料不足の時代には重要な薪炭材と 興味深いことは八重桜は実成りが悪く,多くは して三浦半島などでの植林が盛んだった。燃料革 接木あるいは挿木で殖やされたと考えられる。こ 命で薪炭の需要が激減し放置された植林地の一部 のことは当時すでにその技術が確立していたこと はオオシマザクラの保存林とされ,昨今観賞に訪 を意味する。同じ形状を保つ八重桜が接木や挿木 れる人も多い。 によって方々に植えられ広まっていったのだろう。 また広まる過程で,他とは異なる八重桜を求める ☆八重咲きのサクラ登場☆ 欲望も高まっていったにちがいない。それが,色 桜といえば,花は一重のものばかりでなく八重 や花びらのかたちや数,重なり具合など異なる になった桜,すなわちサトザクラがある。野生の 数々のサクラの生成を支えたのだろう。八重桜と サクラは一重で,八重咲きは変異株で,あっても いう括りとは別に‘桐谷’のような源氏名が生ま きわめてまれである。サトザクラ(里桜)は八重 れていったものと思われる。源氏名の多くは今日 咲きのサクラの総称で,交配によって作出された の栽培品種に該当する,といってよい。観桜では 人工のサクラである。 単に八重桜ではなく,‘桐谷’とか‘楊貴妃’な ど,源氏名が会話の間を飛び交ったことであろう。 主に詩歌や古文書の記録から桜の歴史を詳述し た「櫻史」は,桜についての貴重な文献である。 ☆江戸の園芸とサクラ☆ 国語学者の山田孝雄が1941年に著した。同書によ れば平安時代中期までは八重咲きの桜といえばカ 戦国時代に不向きな園芸は一次下火となったが, スミザクラの八重咲き品と推定される‘奈良の八 江戸開幕後,再び脚光を浴びただけではなく,一 重桜’しかなかったようだ。 種のブームともいえる園芸狂の時代が到来した。 八重咲きのサクラが詩歌に登場するのは鎌倉時 それには二代秀忠,三代家光と園芸好きの将軍が 代後期の承久の乱(1221年)以降である。それが 続いたことも大きい。 植えられていたのは西園寺公経の北山の別荘など, 京都郊外の山荘であった。名高い「徒然草」 (1330 食品と容器 開幕からおよそ80年経た1681年に水野元勝によ り日本最初の園芸書「花壇綱目」が刊行された。 242 2013 VOL. 54 NO. 4 綱目とは分類の意味で,同書には桜類は40品が収 録されていた。10種ほどしかない野生種以外の人 工のサクラの作出数が増えていたことを,数字は 示している。 各地で観桜も復活し,大名や市井の人々が名所 や寺社などの桜樹を訪ね歩いたのだろう。江戸中 い がん さい おうひん 期の宝暦8(1758)年に「怡顔斎櫻品」が刊行さ れた。怡顔斎は著者,松岡玄達(恕庵)の号で, 「櫻品」の稿本は1716年には完成していた。同書 図2 隅田川。「江戸名所花暦」(1827年刊) には69のサ クラが採録 ザクラも植えられていた。東北地方や北海道で山 されてお のサクラといえば,それはオオヤマザクラである。 り,享保年 花と葉は同時に開出するが花時には葉は紅変し, 間には実に 一層赤味が増す。ひとつの花序につく花の柄は軸 多数の栽培 から段ちがいに出るヤマザクラとちがって,傘の 品種があっ 柄のように一ヶ所から出る。 さて多くの人が好むサクラはと問えば,ソメイ たことが判 図1 「怡顔斎櫻品」(1758年刊)の一部 る。「櫻品」 ヨシノを別にしてヤマザクラの名をあげる人がほ は花序と花, とんどだ。ヤマザクラは西日本から東北地方南部 枝垂生(枝が下垂する型)では枝葉を図示しただ にかけて分布するが,南部を除く東北地方や新潟 けでなく,巻頭にはこの書が用いる用語を図を用 県には少ないか産せず,北海道には分布しない。 いて提示した。そのため「櫻品」に載ったサクラ 私の経験では多くの人がヤマザクラを,山に自然 の解説は明解で,正体も判明しているだけでなく, に生える自生のサクラの意味で用いており,その その多くが今日に伝わっていることが判っている。 なかにはオオヤマザクラや植栽から逃げ出したり 放置されたソメイヨシノなどが含まれていた。か ☆ヤマザクラとオオヤマザクラ☆ ならずしも[山桜]イコール[(種としての)ヤ マザクラ]ではないことに注意がいる。 サトザクラの片親となったオオシマザクラは関 東南部の自生種であり,江戸の園芸の隆盛にとも ヤマザクラを広めたひとつは本居宣長の,‘敷 ないサトザクラの育種が江戸でも行われるように 島の大和心を人問わば朝日に匂う山桜花’の歌で なったのは自然であった。吉宗は江戸庶民への娯 あろう。この歌にいうヤマザクラは山の桜ではな 楽の提供としてレクリエーションを兼ねて,飛鳥 く,正真正銘のヤマザクラだと解される。ヤマザ 山や隅田川堤などに多くの櫻樹を植えた。もっと クラは近畿地方などでは山の中腹に多く,その開 も墨堤などにサクラを植えたのは大勢の人が来て 花の季節は同所的に生える常緑のカシやシイ,ヒ 堤が踏み固められ丈夫になることを意図したもの ノキなどの針葉樹の深緑と調和した幽玄な色模様 だったようだ。ヤマザクラが多かったが,それ以 を醸し出す。殊に朝日が山肌を照らす朝方はなお 外のサクラも植えられた。こうして出来した花見 さらである。 の名所に集う人々を描いた浮世絵も数多く残され 紙数が尽きたのでここには書かないが,日本の ている。江戸そして東京では,ヤマザクラよりも 野生のサクラ類には低木状のサクラである,マメ 早く開花するオオシマザクラにも人気があった。 ザクラ,タカネザクラ,チョウジザクラ,ミヤマ 花は大き目で,純白のものが好まれたようだ。そ ザクラなどが加わる。多様なサクラを産する日本 れとは正反対に花が色濃く,開花が遅いオオヤマ はサクラの国と呼ばれるのにふさわしい。 食品と容器 243 2013 VOL. 54 NO. 4 ● 特別解説 ● 遺伝子解析からみた日本食の栄養特性 み や ざ わ ・て る お 東北大学大学院農学研 究科食糧化学専攻博士 課程修了。東北大学農 学部助手,助教授等を 経て,現在,東北大学 大学院農学研究科生物 産業創成科学専攻機能 分子解析学分野教授。 農学博士 宮 澤 陽 夫 は白人に比べ動脈硬化症の発症年齢は遅いが,ハ 1.長寿国と日本食 ワイで育った二世は一世である親より動脈硬化発 日本人の平均寿命は延び続け,現在では最も長 症年齢が若年化し,三世四世では白人と差がほと 寿の国のひとつになった。日本人は寿命が長いだ んどなくなると報告されている。癌の罹患率を調 けでなく,自立して生活できる期間を示す健康寿 べた研究でも同様の結果が得られている。これは, 命も世界一である。日本を長寿国にした要因のひ 親世代が日本の食習慣を続けているのに対して, とつは,欧米諸国と異なる独自の食文化と食生活 子供たちやその孫は,米国人の食生活に同化した に負うところが大きい。日本人の食事は,米を中 ためと推測されている。同様に日本から米国に移 心として,農畜水産物の多様な食素材ときめ細か 住した日本人も,食習慣の欧米化により,癌罹患 な調理法が特色である。世界とくに発展著しい米 率が日本在住日本人より増加したことが示されて 食文化のアジア地域の人々の健康増進には,日本 いる。ブラジルの日系人は,肉中心の食事に変化 食の健康特性の理解と活用が重要である。長寿国 したことで心筋梗塞が増え,平均寿命が17年近く 日本の要因には,医薬の進歩,生活衛生環境の向 も短くなったと報告されている。このような研究 上もあるが,欧米諸国と異なる独自の食生活・食 からも,日本食が健康食と考えられるようになっ 文化の影響が大きい。日本人の食事は,米飯を中 た。 がん 心に,魚介類,野菜,大豆などの伝統素材に,肉, り 食事の摂り方を対象とした疫学調査や,食事の 牛乳,油脂,果実などが豊富に加わり,多様性に 中の特徴的な成分の栄養学的な研究は行われてき あふれた調理法が特色で,健康の維持増進にはこ ているが,食事そのものの研究はない。日本食と の食文化の有効活用が大切である。また,摂取す その食素材が含む個々の成分の生体機能に関する る脂質やタンパク質は良質で,新鮮な水産物の割 研究は,数多くある。しかし,1日3食の日本食 合が高く,欧米諸国と異なっている。これを世界 や欧米食を摂取した時の,遺伝子発現や生体機能 に明確に発信する必要がある。近年,日本人の食 への影響を評価して,摂取食事まるごとの違いに 事は世界からその美味しさとともに健康食として よる健康への影響を研究した例は過去にない。 お い 注目されている。ヒトを対象にした疫学調査では, また,現在長寿である高齢者が,子供の頃に 日本人の食事が健康に好影響を及ぼすことが報告 摂っていた食事など,年代別にどの時期のどの内 されている。ハワイ移民の調査研究では,日本人 容の日本食が健康増進に好ましいのか,日本食自 食品と容器 244 2013 VOL. 54 NO. 4 体の有益性に関しても,世界に向けて発信できる 養士が日本人と米国人のそれぞれ1週間分(21 科学的証拠に現状は欠けている。 食)の献立を作成した。これを調理し,できた食 そこで私たちは,日本食,米国食を摂取した時 事は凍結乾燥,粉砕し,粉食としてラットに給与 の生体組織における遺伝子発現と生体成分への影 した(ヒトひとりの1週間分は,ラット1群8匹 響の比較,長寿と健康増進に有効な一定年代(昭 の3週間分の給与期間になった)。 和~平成期)の日本食の特定,長寿に有利な一定 遺伝子発現量は,日本食と米国食を給与した の成長・生育期(乳幼児期から壮・老年期まで) ラット肝臓について評価した。肝臓にしたのは, に推奨されるべき日本食の特定を目的として,動 摂取した食餌の栄養成分はほとんどが肝臓を経 物試験とヒト試験により研究を進めてきている。 るからであった。RNeasy Midi Kit でラット肝臓 から RNA を抽出し,DNA マイクロアレイ解析 2.日本食と米国食の実験 に供した。DNA マイクロアレイは,10,399の遺 ファストフード化の影響が指摘されている。そこ 伝子発現が解析できる CodeLink(UniSet Rat I, Affymatrix)を用いた。また,Real-time PCR 装 で,伝統的日本食,現在の日本食,米国食につい 置を使用した定量 RT-PCR 法で,ピックアップし て,はじめにラットに一定期間これらの食事を与 た遺伝子の発現量を測定した。総 RNA サンプルは えた後,肝臓の遺伝子発現パターンを比較検討し cDNA にし,プライマーを加え,さらに DyNAmo て,食事内容の違いによる生体への影響の差異を SYBR Green qPCR kit(Finnzymes, Espoo) を 調べた(第1図)。 用いて PCR 反応を行った。このとき同時に内 生活習慣病の増加の背景に,食生活の欧米化や 伝統的な日本食は1960年代の国民栄養調査から, 部 標 準 に hypoxanthine guanine phosphoribosyl 現代日本食は2002年国民健康・栄養調査から献立 transferase(HPRT)を用いて遺伝子発現量を補 を作成した。日本食自体は,「その年代の日本人 正した。分析装置は real-time PCR system(DNA が1人1日に摂取する食品,栄養素等を満たす食 Engine Option 2 System, MJ Research)を使用 事」と定義した。米 国食は2001~02年に 米国保健社会福祉 省(DHHS)が実施 した全米保健栄養調 査(NHANES) と Continuing Survey of Food Intakes by Individuals(CSFII) を指標に,「その年 代の米国人が1人 1日に摂取する食 品,栄養素等を満た す食事」と定義した。 ラットへの給与飼料 を作成するにあたり, 食品の摂取量と栄養 素の摂取量を明確に するために,管理栄 食品と容器 第1図 食べ物を摂取した後の肝臓の遺伝子発現解析法 245 2013 VOL. 54 NO. 4 し,SYBER green の蛍光強度によって遺伝子発 3.栄養実験と遺伝子発現 現量を評価した。プライマーの塩基配列は,オペ ロンバイオテクノロジー社で作成した。 1960年代の日本食(100g当たり:416 kcal,脂 質4g,タンパク質 14g, 炭 水 化 物80 g)は,ごはん,麺 類,魚,さしみ,豆 腐, 煮 物, て ん ぷ そ ら,味噌汁,漬物な どであり,現代日本 食(100g 当 た り: 442 kcal,脂質12g, タンパク質19g,炭 水化物64g)は,ご はん,生姜焼き,か つ丼,寿司,サンド イッチ,スパゲティ, サ ラ ダ, オ ム ラ イ ス, 味 噌 汁 な ど で あ り, 米 国 食(100 g当たり:450 kcal, 第2図 伝統的日本食の遺伝子発現の特徴(現代日本食と比較して) 脂質13g,タンパク 質20g,炭水化物63 g ) は, パ ン, ス テーキ,オートミー ル,マフィン,ハン バーガー,フライド チキン,魚のマリネ, コーヒーなどであっ た。摂取カロリーに 大差ないが,伝統的 日本食は脂質が少な く炭水化物の摂取量 が多い。給与後の体 重に有意差はなかっ たが,食餌摂取量は 日本食が米国食より 多かった。血清と肝 臓 の 脂 質( 中 性 脂 肪)濃度は日本食で 第3図 米国食の遺伝子発現の特徴(現代日本食と比較して) 食品と容器 246 低く,米国食は日本 2013 VOL. 54 NO. 4 食より高かった。血清と肝臓のコレステロール濃 具体的には,米国食では DNA 修復に関与す 度も,伝統的日本食や現代日本食はどちらも米国 る GADD45A や BRCA 1 ,解毒作用に関与する 食より低かった。 AFAR などの遺伝子発現強度が増大した。対照 リ ン 脂 質 ヒ ド ロ ペ ル オ キ シ ド(PCOOH) は 的に,伝統的日本食では,ストレス応答遺伝子の 生 体 膜 の 酸 化 ス ト レ ス マ ー カ ー で あ り, 血 清 ATF 3 や MAPK18P, 解 毒 に 働 く CYP 3 A な ど PCOOH は動脈硬化の危険因子であることが報告 の発現量は低い。これは食べ物に対する生体の認 され,また,認知症者では赤血球に PCOOH が 容性の差と考えることができた。米国食でストレ 蓄積した老化赤血球が循環血に増えることが知ら ス応答遺伝子が強く発現するということは,米国 れる。老化赤血球はガス交換能が低下していて抹 食には生体が異物と認識する成分が他の食事より 消組織への酸素供給に支障がでる。さらに,脂肪 多く含まれることが推定され,認容性に低下をも 肝から肝癌発生の過程では肝臓 PCOOH の著増 たらすと考えられた。これに対し,伝統的日本食 が認められる。飼育後,血清 PCOOH 値に食餌 で修復遺伝子や解毒遺伝子の発現が低いのは,生 間で差はないが,肝臓の PCOOH 値は伝統的日 体へのストレスが少ないためと考えられた。日本 本食が最も低いことが分かった。日本食,とくに 食は,“からだにやさしい”のである。 伝統的日本食は肝臓への酸化ストレスが少ないと さらに肥満に関係する代謝遺伝子も解析してみ 推測された。 た。米国食では,糖代謝,脂質・ピルビン酸代謝, 脂肪酸代謝,コレステロール代謝などに関与する 4.日本食は“からだにやさしい” 遺伝子発現が日本食より低いとともに,その活性 このような栄養実験で有意に発現量が増減する 化に関わる転写因子の発現の低値が日本食と比較 肝臓の遺伝子は,およそ全遺伝子の5~6%であ すると明らかであった。すなはち,米国食のよう る。当初,数週間の飼育期間で細胞の遺伝子発現 な組成の食事では,代謝能が低下して体内に糖や 量が影響を受けるとは予想もしなかったが,いざ 脂肪が蓄積され,炎症を引き起こしやすくし,肥 実験を進めてみると案外変化するので驚きであっ 満や糖尿病など生活習慣病の発生を助長すること た。食品もいわゆるエピジェネティクス * の重要 になると考えられた。一方,日本食では米国食と な因子であることの裏付けとも感じた。長年の食 逆方向の遺伝子発現を観測することができ,同じ 習慣が個人の性格や将来の疾病にまで関係するこ エネルギー摂取であっても旺盛な代謝が繰り返さ とは,この実験成績をみても明らかであった。 れるため肥満や生活習慣病にはなりにくいのでは 1 ないかと推察された。 日本食をコントロールとして(日本食と比較し て)米国食で増加した遺伝子にはストレス応答遺 5.日本食の素晴らしさの科学的エビ デンス 伝子が多かった。エネルギー(糖質)代謝や脂質 代謝に関与する遺伝子発現は,日本食と比較して 米国食で低かった。伝統的日本食では最もこの代 食品の個々の成分が生体に与える影響を検証す 謝関連遺伝子の発現が強かった(第2図,3図)。 る研究は,これまでにも数多くある。私たちが開 発したこのような手法で,食事のメニューそのも のを総合してまるごと遺伝子レベルで食事ごとに * 1) エピジェネティクス(epigenetics)とは,一般的 比較した研究は,過去にない。本来ヒトは,栄養 には「DNA 塩基配列の変化を伴わない細胞分裂後も を食物まるごととして体内に摂取する生物なので, 継承される遺伝子発現あるいは細胞表現型の変化を研 このように食事全体がからだに与える影響を検証 究する学問領域」である。ただし,歴史的な用法や研 できたことは,大変意義深いと考えている。 究者による定義の違いもあり,その内容は必ずしも一 まとめると,日本食は,からだへの親和性が高 致したものではない。 食品と容器 く,脂質や糖質の代謝を活発にすることが遺伝子 247 2013 VOL. 54 NO. 4 レベルで確認された。その結果,日本食では米国 降,急速に欧米化したからである。これにともな 食と同じエネルギー量を摂取しても,旺盛な物質 い,脂質過剰摂取のために動脈硬化症,糖尿病, 代謝が繰り返されるため肥満になりにくいことが 癌など生活習慣病が増えた。日本食は健康的とい 示唆された。 われるが,欧米化前の伝統的日本食が健康上有益 50年前に比べると現在の1年間の1人当たりの ではないかと考えられる。WHO は,日本人の健 消費量は,米は120 kg が60 kg に半減したのに対 康寿命が世界一になった理由に,脂質摂取の少な し,肉類は6kg が30 kg に増加,油脂類も4kg さを挙げている。これは伝統的日本食の効能なの から15 kg に増えている。日本食の素材組成も大 であって,近年の食事の欧米化によってその効果 きく変化している。カロリーが高く脂質代謝され は妨げられている可能性がある。確かに日本人の にくい欧米食に近づいている。 健康寿命を延ばしたのは,伝統的日本食を食べて きた世代である。 今後は,ヒト試験によるデータの集積が重要で あり,さらに,フレンチ,イタリアンあるいは 私たちは,DNA マイクロアレイを用いて,日 ヨーロッパさらにアジア地域も含め世界の多様な 本食の有益性を遺伝子発現レベルで評価した。こ 地域の食べ物とその年代別の栄養と遺伝子発現の れまで,食事成分や素材,疫学で評価されてきた 比較研究が期待される。 栄養評価が,ニュートリゲノミクス手法で包括的 かつ詳細に評価できるようになった。この手法は, まとめ 理想的な栄養バランスを有する食事の企画や疾病 を予防する食事の設計に極めて有効であると考え 日本の食事は,40年ほど前から大きく変わって られている。 きた。供給量では,米が半減し,肉と油脂類が約 4倍に増えた。これは日本の食事が高度成長期以 参 考 文 献 1)Satoshi Sasaki : The value of the National Health Miyoshi, Takeya Tsutsumi, Teruo Miyazawa, and Nutrition survey in Japan. Lancet, 378, 1205−6 Katori Ishibashi, Toshiharu Horie, Kazuhiro Imai, (2011) Toru Todoroki, Satoshi Kimura, Kazuhiko Koike 2)M ichael R Reich, Naoki Ikegami, Kenji Shibuya, : Oxidative stress in the absence of inflammation Keizo Takemi : 50years of pursuing a health society in a mouse model for Hepatitis C Virus-associated in Japan. Lancet, DOI : 10. 1016/50140−6736(11) hepatocarcinogenesis. Cancer Research, 61, 4365−70 60274-2 (2011) (2001) 3)宮 澤陽夫:遺伝子解析で実証された日本食の有益性. 日経 CME,2007年4月号 . 6)Akira Asai, Fumitaka Okajima, Kiyotaka Nakagawa, D a i g o I b u s u k i , K y o k o T a n i m u r a , Y a s u s h i 4)都築毅,武鹿直樹,中村祐美子,仲川清隆,五十嵐美 Nakamura, Mototsugu Nagao, Makiko Sudo, 樹,宮澤陽夫:現代日本食と現代米国食を給与した Taro Harada, Teruo Miyazawa, Shinichi Oikawa : ラットの肝臓における網羅的遺伝子発現解析.日本栄 Phosphatidylcholine hydroperoxide-induced THP- 養・食糧学会誌,61,255−64(2008) 1 cell adhesion to intracellular adhesion molecule-1. Journal of Lipid Research, 50, 957−65(2009) 5)K yoji Moriya, Kiyotaka Nakagawa, Tomofumi Santa,Yoshizumi Shintani, Hajime Fujie, Hideyuki 食品と容器 248 2013 VOL. 54 NO. 4 特別解説 ● ● 1時間でコシヒカリを見分ける技術 ― LAMP 法を用いた迅速簡易品種判別 ― き し ね ・ま さ ひ ろ 京都大学農学部卒業, 同大学院生命科学研究 科博士後期課程修了。 2007 年4月より, (独) 農研機構食品総合研究 所食品素材科学研究領 域研究員。 博士(生命科学) 岸 根 雅 宏 1.はじめに 2.DNA 分析による品種判別 米穀機構が実施している「米の消費動向調査 デンプンが大部分を占める米粒も,葉や根と (平成23年度平均値)」によると,消費者が精米購 いったイネの他の部分と同様に「細胞」から成 入時に重視する点(複数回答可)として,「品種 る1つの組織であり,その細胞1つ1つの中に (51.4%)」は「価格(77.8%)」につぐ第2位に挙 DNA が入っている。その一部を大量に増やす手 げられており,半数強の消費者が品種を重視して 法を用いることで,いわば DNA を「拡大」し いることが示されている。そのため,JAS 法に て品種を見分けることに利用できる。その DNA よって品種表示義務のある精米・玄米に限らず, を増やす手法の1つが,ポリメラーゼ連鎖反応 本来は表示義務のない米飯,米菓や日本酒などの (Polymerase Chain Reaction; 以 下 PCR) と 呼 米加工品においても,パッケージに品種名を強調 ばれる方法で,DNA を増やす酵素であるポリメ 表示する例が多数見受けられる。精米や米加工品 ラーゼと,その酵素が働く「足場」となるプライ における品種表示は,その表示義務の有無に関わ マーと呼ばれる短い DNA 配列さえあれば,任意 らず,消費者が商品選択する際の重要な判断材料 に選んだ範囲だけを大量に増やすことができる。 となっていることから,適正な表示が強く求めら 当研究所では,ランダムに設計したプライマーを れているが,意図的な品種偽装や,生産・流通段 使って PCR 分析を行うと品種によって DNA の 階における意図しない品種の混入・取り違えがこ 増え方が異なることを利用して,米の主要品種を れまで度々問題となってきた。 判別する手法を1997年に開発した1)。2001年には, そこで利用されるのがそれぞれの品種に固有の この技術を基にして,コシヒカリかどうかを見分 DNA の分析技術であり,目視等では判別困難な けるコメ判別用 PCR キット(タカラバイオ)が 精米や米加工品においても品種を正しく見分ける 発売され2),コシヒカリの種苗管理や品種偽装の ことができる。本稿では,LAMP 法という新た 抑制に貢献してきた。 な遺伝子増幅法を利用して,1時間以内に品種を これまでに,PCR 法を用いた米の品種判別技 見分けることができる迅速簡易手法について従来 術は当研究所を含めた様々な機関で開発されて 法と比較しつつ解説を行う。 きた。それらは用いる技術や増幅する DNA 領 域は異なるものの,実験手順としてはいずれも 食品と容器 249 2013 VOL. 54 NO. 4 ① 試 料 の 粉 砕( 1 ~ 数 時 間 ), ② DNA 抽 出 と 濁,もしくは蛍光試薬による検出により,電気 DNA 濃度測定(1時間~1日),③ PCR 法によ 泳動などによる増幅産物の確認を必要としない, る DNA 増幅(2~4時間),④電気泳動による などが挙げられる。筆者らは,LAMP 法による 増幅 DNA の検出(1~2時間)から成り,結果 DNA 増幅・検出と簡易 DNA 抽出を組み合わせ を得るまでに少なくとも半日から2日を要してい ることで,1時間以内に簡単な装置で品種を判別 た。また,PCR 法による DNA 増幅反応を行う できる手法の開発に至った4)。 にはチューブの温度を秒単位でコントロールする 3.LAMP 法を利用した品種識別の利点 特殊な装置が必要であり,また,増幅 DNA の検 出を行う電気泳動にも専用の装置が必要であった。 3−1.迅速 そのため,収穫期に大量にかつ多種類の米が流通 LAMP 法を利用した品種判別法の最大の特徴 する検査・流通現場や,出荷までの短時間での検 は,分析時間が短いことであり,その具体的な操 査が求められる食品加工現場では利用することが 作手順については第1図に示した。DNA 抽出に 難しく,委託検査や事後検査となることが大半で ついては,精米・玄米・炊飯米あるいは葉を粉砕 あった。 なしに直接チューブに入れ,抽出液①中で激しく かくはん これらの問題点を解消するため筆者らは,PCR 30秒間撹拌した後,抽出液②と混合,1分間遠心 法に替えて,近年開発された新規な遺伝子増幅 した上清が DNA 試料となる。試料数によって時 法 で あ る「LAMP(Loop-Mediated Isothermal 間は異なるものの,数点の試料であれば10 〜 20 3) Amplification)法 」の活用を検討した。LAMP 分で終了する。さらに,LAMP 反応は,抽出し 法の原理については開発元の栄研化学のウェブサ た DNA 溶液を LAMP 反応液に加え,63℃で40 イ ト(http://loopamp.eiken.co.jp/) を 参 照 い た 分間保温するだけである。反応液には DNA 増幅 だくとして,その利点は,①反応が最短15分程度 があれば蛍光を発する試薬が含まれており,反応 で終了する,②60~65℃の一定温度に保温するだ 終了後のチューブに UV を照射して発光の有無を けで反応が進行するため特別な機器を必要としな 確認することで,反応終了と同時に DNA 増幅の い,③ DNA 増幅反応の副産物による反応液の白 判定を行うことが可能である。これら一連の操作 によって,DNA 抽出 から DNA 増幅,検出 までを1時間程度で行 うことが可能となった。 3−2.現場での分析 従 来 の PCR 法 を 利 用した品種判別におい ては少なくとも,PCR 反応を行うサーマルサ イクラーと呼ばれる専 用機器,増幅検出のた めの電気泳動装置と泳 動像撮影装置が必要で あ っ た。 ま た,DNA 抽出などは複雑な操作 第1図 LAMP 法を利用した米品種判別の分析手順 DNA 抽出操作に約15分,DNA 増幅から確認に45分の計1時間程度で分析が終了する。 食品と容器 250 が必要な場合が多く, ある程度の設備の整っ 2013 VOL. 54 NO. 4 た実験室でなければ,分析を行うこ 0.25 とが困難であった。 1% LAMP 法を用いた品種判別にお 0.20 ける必要機器は,第1図に示すよう 濁度 クスミキサー(撹拌機),簡易遠心 0.05 手順が非常に少なく操作も比較的容 料を採取した現場で直接分析を実施 0.00 0 を詰めた段ボール箱1つを持ち込み, その場で分析を行えることを確認し 5 10 15 20 25 30 -0.05 反応時間(分) することも可能である。実際に筆者 らは,ある弁当工場に必要機器など 100% 0.10 機と UV 照射器だけである。また, 易であるため,実験室に限らず,試 25% 0.15 に60~65℃の保温槽(ヒートブロッ ク,ウォーターバス等),ボルテッ 5% 第2図 LAMP 法による異品種混入検出(濁度による検出) コシヒカリに他の品種が1,5,25%混入した精米試料を用いて,混入品種の検出 感度を比較した。反応液が濁れば(= 濁度が上がれば),DNA 増幅と判定する。 た。 で分析した結果を用いる。得られた分析結果はパ 3−3.微量混入の検出 ターン化され,それを基準品種の分析結果と照合 米の品種検査において多くの場合問題となるの して品種を同定する。例えば,5つのプライマー は,意図の有無に関わらず,他品種の混入が疑 (それぞれAもしくはBという分析結果が得られ われるケースである。従来の PCR 法においては, る)で試料を分析し,ABABB というパターンが 一般的に50グラムの米を一括粉砕した試料の一部 得られれば「品種X」,BABBA なら「品種Y」, から DNA を抽出・分析する定性検査を行い,他 BBAAB なら「品種Z」といった判定を行う。用 品種の混入が認められる場合には,さらに25粒を いるプライマーの数を増やせば,より正確な判定 サンプリングし,それぞれを独立に分析すること を行うことが可能となるが,その反面,実験操作 で混入率(1粒検出されれば4%混入と判定,2 や結果の照合操作が煩雑となる。 粒なら8%・・・)を定量する手法が用いられて 今回実用化した「コシヒカリ LAMP 判別キッ いる。しかし,一度目の定性検査の結果は分析条 ト(ニッポンジーン)」では,2つのプライマー 件や分析者の主観に左右される部分も多く,特に (検査液)だけを用いてコシヒカリか否かを簡易 微量の場合には混入を正しく判断するのは難しい。 に判定できるよう設計した(第3図)。コシヒカ 一方,LAMP 法を用いた品種判別法において は,意図的に他品種を混入させた精米10グラムの 分析を行った結果,少なくとも1%の混入サン プルにおいても安定的に DNA の増幅が確認され た(第2図)。LAMP 法による分析結果は,反応 液の蛍光発色(あるいは白濁)として客観的に判 定可能であるため,微量混入の検出においては PCR 法よりも安定した検出が可能である。 4.コシヒカリ LAMP 判別キット 従来の PCR 法での品種判別においては,基本 的に試料から抽出した DNA を複数のプライマー 食品と容器 第3図 コシヒカリ LAMP 判別キット 251 2013 VOL. 54 NO. 4 場での利用も想定される。 リは稲の最大の病害である「いもち病」に弱く, いもち病に対する抵抗性遺伝子を持っていないこ 5−1.米の流通・加工現場における出荷前検査 とが知られている。いもち病抵抗性遺伝子の1つ 米の検査や加工を終えてから出荷までの短時間 Pii に着目した場合,主要品種のほとんどは Pii に分析し,問題が認められた時点で出荷を停止す を持つ一方,コシヒカリだけは非抵抗性の対立遺 ることができる。 伝子を持つことが知られている。そこで,非抵抗 5−2.店頭や水田におけるオンサイト検査 性の対立遺伝子の領域でコシヒカリを検出するプ 水田や商品が並ぶ店頭において,その場で分析 ライマー,Pii 遺伝子領域でコシヒカリ以外の主 し,即座に結果を得ることができる。 要品種を検出するプライマーを設計した。両プラ 5−3.中学・高校など教育現場での活用 イマーは,分析キットにおいては他の試薬と混合 学生にとって身近な米品種を対象とすること, した形で,それぞれ検査液①,②と表示されてお 必要機器の少なさ,また授業時間内(1~2時 り,試料から抽出した DNA を両検査液で分析す 間)に実験を納められることから,教育現場での ることによって,(Ⅰ)コシヒカリ,(Ⅱ)コシヒ 実践にも好適である。 カリとコシヒカリ以外の品種が混在,(Ⅲ)コシ 6.今後の展開 ヒカリ以外の品種,の3パターンに判定できる (第4図)。同キットによる判別可能品種は第5図 LAMP 法を用いた品種判別技術は,本稿で述 に示す通りであり,比較的流通量の少ない一部の べたように検査者にとって多くの利点があり,今 品種がコシヒカリと誤判定されてしまうものの, 後の普及が期待される。一方,技術開発者にとっ 一般に流通する主要品種のほとんどは正しく判定 て は,LAMP 法 の 簡 易 性 を 活 か す た め に い か できることを確認した。 に少ないプライマーで品種判定をできるように するかが大きな課題となる。これまでのところ, 5.想定される利用場面 LAMP 法を利用した品種判別法の実用化は,コ LAMP 法を利用した品種判別技術は,従来の シヒカリだけに限定されているが,今後は,コシ PCR 法の代替としてすぐに利用可能であるとと ヒカリ以外の主要品種など多様なニーズに応じた もに,短い分析時間,簡易な分析操作の利点を生 技術開発に挑戦していきたい。 かして,以下のような従来分析が困難であった現 発色パターン I II III IV 陽性 陽性 陰性 陰性 陰性 陽性 陽性 陰性 コシヒカリ コシヒカリとコシヒ カリ以外の品種が混 在 コシヒカリ以外の品 種 再検査 コシヒカリ検査液① コシヒカリ検査液② 判定 第4図 コシヒカリ LAMP 判別キットによる品種判定例 (カラー図表を HP に掲載 C016) 食品と容器 252 2013 VOL. 54 NO. 4 第5図 コシヒカリ LAMP 判別キットによる判定可能品種 参 考 文 献 1)大 坪研一,藤井剛,橋野陽一,豊島英規 , 岡留博司, 3)N otomi, T. H., Okayama, H., Masubuchi, T., 中村澄子,川崎信二(1997)RAPD 法を用いた国内 Yonekawa, K., Watanabe, K., Amino, N. and Hase, 産精米の品種判別技術,食科工,44,386−390. T.(2000)Loop-mediated isothermal amplification of DNA. Nucleic Acid Res., 28, E 63. 2)大 坪研一,中村澄子,今村太郎(2002)米の PCR 品 種判別におけるコシヒカリ用プライマーセットの開発, 別刷り合本をご利用下さい 4)岸 根雅宏,奥西智哉(2011)LAMP 法を利用したコ シヒカリの高精度・迅速識別,食科工,58,591−596. 農化,76,388−397. 水 の 話 水は地球上のすべての物質と深い関わりをもち,生物の生命活動や人間の生活,文化,産業に重要な役割を演じ ています。本誌ではこの水の科学的知見から応用までをあらゆる角度から取り上げ,専門の方々に解説していただ きました。ご希望の方は,電話またはファックスで下記あてお申し込み下さい。 B5判 本文162ページ 定価3,000円(送料別) 《内容》 水の科学〔1〕水と生命の誕生と進化/〔2〕水の不思議:水と水溶液/〔3〕水の新たな利用法(機能水)とそ の評価 水と食品〔1〕食品中の水の状態/〔2〕食品加工と水/〔3〕微生物と水/〔4〕調理と水の関わり/〔5〕 お茶類と水 水と生活・文化〔1〕日本人と水利用,健全な水循環を目指して/〔2〕水道水の安全性とおいしさ /〔3〕容器入り飲用水の国際規格:食文化と商売の観点から(1)(2)/〔4〕おいしい水とまずい水(水質・ 成分との関係)/〔5〕水道水とミネラルウオーターはどう違う? −その境界をめぐって− 水と産業〔1〕清 涼飲料と水/〔2〕醸造と水/〔3〕水の新しい利用:精密洗浄用機能水と超臨界水/〔4〕海洋深層水/〔5〕紫 外線殺菌装置の現況 水と健康〔1〕体液とそのはたらき/〔2〕体液の代謝調節とその異常/〔3〕スポーツと 水/〔4〕肌と水 缶 詰 技 術 研 究 会 電話 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1 ファックス 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3 食品と容器 253 2013 VOL. 54 NO. 4 業 T 界 O ト P ピ I ッ C ク S ス 缶コーヒー「春夏の陣」開幕 昨年以上にブランド攻防激化 雑な味わいを広く訴求。今春夏の新商品として 「ダイドーブレンド ブレンド微糖」「同ブレンド BLACK」「同ブレンド WHITE BLACK」「同ブ レンドアイスコーヒー微糖」など新発売。「ブレ 缶コーヒーの「春夏の陣」が開幕した。昨年は ンド イズ ビュ-ティフル」というブランドコ 1~2%の成長を果たした缶コーヒーだが,メー ンセプトとともに,ブレンドによる豊かで複雑な カー別に勝ち組,負け組が鮮明化し,明暗がはっ 味わいを様々なカテゴリーで訴求。更に4月から きり出た。 「同ブレンドミルクコーヒー」も発売。PET タイ 約3億6千万ケースある市場の中で,消費者の プの微糖ミルクコーヒーで新たな魅力を提案する。 健康意識の高まりを背景にした微糖,ブラックへ 「タリーズ」の伊藤園は,「バリスタズブラッ のトレンドは今年も続くと見られ,特にブラック ク」が好調に推移。今年3月から285ミリリット は,まだ成長が見込めるカテゴリーと言える。ま ルボトル缶「ブラック」を春夏向けにリニューア た,リキャップ缶は約4千万ケースとパイは小さ ル発売するとともに,同商品のエクステンション いものの,昨年は20%近い伸びを達成し,今年も として「ライトスタイル」も新発売した。 期待感は大きい。 アサヒ飲料「ワンダ」は,今年も主力の「モー 「ブラック」「微糖」の品揃え強化 ニングショット」と「金の微糖」を軸に展開す 日本コカ・コーラの「ジョージア」は,「エメ る。新たな動きは1月から投入した「大人ワン ラルドマウンテンブレンド」と「ヨーロピアン」 ダ」で,缶コーヒーのボリュームゾーンである40 の2本柱を軸とした戦略を継続し,今年も2つの 代,50代をターゲットに狙う。「大人ワンダ」第 ブランドをさらに強化する。成長分野であるボト 1弾の「ザ・スタンダード」は,大人にとっても ル缶も引き続き注力し,パッケージにおけるイノ コーヒーにとっても大切であると考えた「洗練」 ベーションに加え,市場ではテレビ CM などの 「情熱」「力強さ」「やさしさ」の4つの要素を取 広告活動と連動した自販機および店頭における積 り入れた力強くやさしい味わいが特長の缶コー 極的な市場展開,ニーズに合わせたきめ細やかな ヒー。第2弾の「ザ・ブラック」は400グラムボ コミュニケーション活動に注力する。 トル缶で新発売。成長カテゴリーであるボトル缶 サントリー食品インターナショナルは,主力4 ブラックコーヒーに参入。そのほか「ゼロマック 商品である「贅沢微糖」「レインボーマウンテン スプレミアム」や「特製カフェオレ」も導入する。 ブレンド」「無糖ブラック」「カフェオレ」に,昨 UCC 上島珈琲は,「ブラック無糖プラチナア 年8月に投入した「超」を加えた主力5商品を中 ロマ」リキャップ缶300グラムと「ザディープブ 心に展開。また,ボトル缶の「ボスシルキーブ ラック無糖」リキャップ缶400グラムを新発売。 ラック」「同シルキードリップ微糖」と,PET ボ これは今年から本格稼働した滋賀工場の製造技術 トルの「ボスとろけるカフェオレ」もリニューア を活用し従来の香りとコクをさらに進化させた商 ル発売した。 品だ。 キリンビバレッジの「ファイア」は,主力の ポッカサッポロフード&ビバレッジは,「アロ 「挽きたて微糖」を中心にボトル缶などの新カテ マックスファンタジスタ」を軸足に取り組む。中 ゴリーにも挑む。新カテゴリーとしては400グラ 身は,ブラジル産の高級豆を中心としたブレンド ムのボトル缶ブラックコーヒー市場に参入。「燻 で,香料は一切使用せず,独自製法によってコー 製珈琲ブラック」を3月から発売した。更に「ア イスオレ微糖」や「キリマンブルー」なども加え, ヒーが持つ本来の「香り・コク・苦味」が楽しめ る味わいが特長。「アロマックス」以外にも「ポッ 自販機の品揃えを強化する。 カコーヒー」「ビズタイム冴えるブラック」「がぶ ボトル缶の拡充目立つ 飲みミルクコーヒー」などもラインナップする。 昨年,新生「ダイドーブレンド」ブランドとし (業界誌記者 井上拓郎) て生まれ変わったダイドードリンコは,引き続き ブレンドへの独自のこだわりが引き出す豊かで複 食品と容器 254 2013 VOL. 54 NO. 4 業界の話題 日本食糧新聞社・食サーチ(http://news.nissyoku.co.jp/)より 食品ヒット大賞,新技術・食品 肪分ゼロの新規商品である。着 した。国産ミネラルウオーター 開 発 賞 特 集: 第26回( 平 成24 色料を使用せず,カロリーも従 2リットル PET ボトルの5月 年度)新技術・食品開発賞講評 来のものに比べ55%と大幅に の製造分から順次切り替え,今 カットした商品である。 後は500mL 前後の小容量への (日食 2013/02/22 日付) ●選考委員長(農林水産・食 「濃密ギリシャヨーグルト 品産業技術振興協会参与)岩元 PARTHENO(パルテノ)」(森 同移行は,消費材流通業界の 睦夫氏 食品製造業の高い技術 永乳業)は,クリームチーズ様 企業が主体となっている日本 力示す消費者ニーズに対応した の濃厚な食感を持ったヨーグル TCGF(ザ・コンシューマー・ 4品を表彰 トである。高たんぱく質ヨーグ グッズ・フォーラム)内のサス 第26回「 新 技 術・ 食 品 開 発 ルトでは,避けられないとされ テナビリティプロジェクト委員 賞」には9社から応募があった。 た苦味を抑制するなど課題解決 会に参加するアサヒ飲料,伊藤 すべてが独創性に富んだ技術を に取り組み,独自技術により新 園, キ リ ン ビ バ レ ッ ジ,サン もとに消費者のニーズに対応し 商品開発に成功した。 トリー食品インターナショナ 導入を検討していく。 開発された商品で,改めてわが 「雪印 こんがり焼ける と ル,日本コカ・コーラの5社が 国の食品製造業の高い技術力を ろけるスライス」(雪印メグミ 実施するもの。同プロジェクト 示すものであった。 ルク)は,焼けた時の香りと焼 の委員長の三宅占二キリンホー 9名の審査員により,商品の き色が欲しいというニーズに対 ルディングス社長は2月25日の 特徴,技術の新規性,学会など 応して開発されたもので,これ 会見で「こういう活動を通じて, での評価,市場性などの視点か までにないとろけるタイプの 賞味期限に対する消費者への正 ら評価を行った結果,全員一致 チーズである。原料のナチュラ しい理解を広めていきたい」と で以下の4商品を選考した。 ルチーズや乳由来糖質の配合に 意気込みを語った。 「日本のごはん」(越後製菓) は,これまでの無菌包装米飯の 関する技術開発が新製品誕生に つながった。 今回の対象商品は,賞味期限 が1年以上のアサヒ飲料「アサ ヒ おいしい水」,伊藤園「磨 持つ欠点を解消するため,炊飯 前の超高圧処理による吸水の促 清涼飲料大手5社,国産水の賞 かれて,澄みきった日本の水」, 進,無菌化を実現し,さらにポ 味期限「年月表示」に移行 配 キリンビバレッジ「キリン ア リプロピレン単一素材フィルム 送環境負荷を低減 ルカリイオンの水」,サントリー による包装の薄型軽量化に成功 (日食 2013/03/01 日付) 食品インターナショナル「サ した。再加熱後の米飯は,糊化 清涼飲料大手5社は,国産ミ 度が高く食味にも優れ,また消 ネラルウオーター2リットル 化性が高いため離乳食や高齢者 PET ボトルの賞味期限を年月 <解説> 食にも適する。 日表示から年月表示へと移行す ◆“過剰”鮮度にメス 鍵は 「ネスレ クレマトップ ゼ る。表示方法も業界内で標準化, ントリー天然水」,日本コカ・ コーラ「森の水だより」の5品。 消費者の正しい理解 ロ」(ネスレ日本)は,独自に 消費者に分かりやすい漢字表記 清涼飲料大手5社が賞味期限 開発した膜濃縮タンパクの微粒 とする。日別配送・管理による 1年超の清涼飲料での賞味期限 子を液中で安定的に分散させる 物流拠点間の転送で排出される 表示方法を年月までとし,国産 技術をもとに開発された。これ CO2 の削減や,店舗での先入れ ミネラルウオーター2リット までのホワイトナーに代わる脂 先出しなどの作業の軽減を期待 ル PET ボトル製造分から取り 食品と容器 255 2013 VOL. 54 NO. 4 組むことの意味は,資源を大切 社の食品・日用品企業の経営者 る都道府県や一部の市などが対 にして社会を末永く存続させて らが1000人規模で集まって交流 応している。 いくため製配販が一体となって し成功事例を共有する会合「グ 骨子では指示,命令などにつ “過剰”な鮮度管理にあえてメ ローバル・サミット」を6月12 いて消費者庁が対応することを スを入れようとすることにある。 日から14日まで東京都中央区の 明記しているが,消費者庁は地 消費者の正しい理解が得られれ 帝国ホテル東京で四半世紀ぶり 方などに出先がない組織なので, ば,この持続可能性追求の手法 に日本で開催する。今回の5社 現行の監視・指導体制を維持せ は内外に広く受け入れられるも の国産ミネラルウオーター2 ざるを得ない状況だ。表示ルー のになるだろう。わが国は東日 リットル PET ボトルからの賞 ルの解釈はすでに消費者庁に移 本大震災を経験しているだけに, 味期限表示方法の変更という取 管しているが,監視・指導体制 資源の重要性を消費者が理解す 組みが,日別配送・管理に起因 について厚労省,農水省などと る素地は既に形成されている。 する物流拠点間転送での排出 の新たなすみ分けは今後の課題 5 社 は 日 本 TCGF の メ ン CO2 を削減することに寄与する だ。 バ ー 企 業。 日 本 TCGF は, 食 ことや,店舗での先入れ先出し ただ,消費者による監視は強 品・日用品の事業を将来にわ などの作業の軽減を可能にする める。現行の JAS 法では「適 たって安定して続けていくた などの成功事例としてグローバ 正でない食品表示のために一般 め,非競争分野での連携が不可 ル・サミットの場で報告され,世 消費者の利益が害されている」 欠との意識を共有する製配販の 界に発信されるかも注目される。 と,消費者や企業などから申し 出があれば,消費者庁と農水省 企業が,環境課題の解決策,震 災対策の共有化,消費者とのコ 消費者庁,食品表示法案 骨子 が審査している。現行の食衛法 ミュニケーションのあり方の3 固まる 監視・指導で調整 ではこの規定がないが,食品の 分野で活動する非営利団体。食 (日食 2013/03/04 日付) 安全性についても,食品表示法 では申し出による審査を行う。 品・日用品の国際団体ザ・コン 消 費 者 庁 は 食 品 表 示 法( 仮 シューマー・グッズ・フォーラ 称)案の骨子をまとめた。JAS さらに景品表示法などで運用さ ム(TCGF)の理事会参加企業 法,食品衛生法,健康増進法の れている,政府が認めた消費者 の呼び掛けで同会員企業を中心 三法の食品表示の部分を一元化 団体による差し止め請求権の導 に29社が集まり,11年8月に結 した。その中の表示の監視・指 入も検討中だ。 成,サステナビリティプロジェ 導体制について,厚生労働省, クト(委員長社=キリンホール 農林水産省と調整していること を(1)食品を摂取する際の安 ディングス),震災対策共有化 が1日までに分かった。両省が 全性(2)一般消費者の自主的, プロジェクト(委員長社=イオ 監視・指導を継続する方向だ。 合理的な食品選択の確保にした。 ン),消費者コミュニケーショ 消費者庁は4月上旬にも法案を JAS 法が品質に関する適正な ンプロジェクト(委員長社=花 国会に提出する予定。 表示を目的としていたため,品 王)の3プロジェクトで課題の 現 行 の JAS 法 で は 農 水 省, 食品表示法案の骨子では目的 質にこだわらなくても良くなる 検討を始めている。5社が参加 農政局,旧農政事務所である各 ため原料原産地表示の対象拡大 するのはサステナビリティプロ 地の地域センター,都道府県が への道が開けた。消費者庁は中 ジェクト。震災後の資材調達を 表示を監視・指導している。同 食・外食でのアレルギー表示な めぐる課題をきっかけに原料・ 一都道府県内だけ流通している どとともに,法案を国会に提出 資材と関連するプロセスの標準 食品は,都道府県が行政指導や した後に新たな表示基準として 化を検討している。 行政処分をかけられる。また食 検討していく。 TCGF は, 世 界70カ 国 約400 食品と容器 衛法,健康増進法は保健所のあ 256 2013 VOL. 54 NO. 4 農研機構,多様な用途のイネ紹 かも本来籾に蓄えられる栄養分 にフォーカスしながら,丸の内 介 近畿農政 局「 消 費 者 の 部 が茎や葉にしっかり蓄えられ糖 で働く女性の平日の「朝」「昼」 屋」で展示中 度が高く発酵しやすい。稲穂が (日食 2013/03/08 日付) コメの新需要を開拓する多様 少ないため倒伏しにくく,栽培 「夜」の過ごし方の実態と理想 を調べた。 朝 活 女 子 に「 ど ん な朝活を 性に優れる。 会場で説明に当たる農研機構 行っているのか」を聞いたとこ を多くの人に知ってもらおうと, 近畿中国四国農業研究センター ろ,「自宅でストレッチやヨガ 農林水産省の試験研究機関・農 企画管理部情報広報課十鳥博課 などの軽い運動」40.7%がトッ 研機構は,同省近畿農政局の 長は「コメ離れが進む一方,多 プで,以下「読書」38.9%, 「外 「消費者の部屋」で「多様性の 様化する市場ニーズに対応した 国語や資格取得のための自宅で ある新しいイネ を 創 る!」 を 新品種が続々誕生している。日 の勉強」29.6%,「ウオーキン テーマに,地元・近畿中国四国 本ではコメ余りだが世界では飢 グ・ジョギング」同,「自宅で 農業センターで育成した多様な 餓に苦しむ人が多く,将来的な 美容ケアやボディメンテナン 用途を持つイネを,29日まで展 食糧問題を踏まえても品種開発 ス」18.5%と続き,健康や美容 示している。 の基本に立ち返り,主食用多収 を 意 識 し た“ 健 美 系 ”の「朝 性品種の開発も進めていきた 活」が多く上位に入った。 な新品種が誕生している。これ つく 会場では,新形質米と粗飼料 専用イネの株や玄米標本を展示 い」と話していた。 「朝活」の目的は,8割近く するとともに,栽培作業性や収 問 い 合 わ せ は, 同 局 消 費・ が「朝時間を有効に活用したい 穫後の食味,栄養成分などの特 安全部消費生活課(電話075・ か ら 」 と 回 答。 次 い で「朝に 徴をポスターを活用して詳しく 451・9161)まで。 行ったほうが1日のリズムが作 れると思うから」51.9%,「朝 紹介している。 新形質米では,柔らかくもち もちした食感で,冷めても硬く ならず,弁当やおにぎりに最適 森永製菓,女性のライフスタイ から活動することで気持ちが前 ル調査 朝活願望派が61% 向きになると思うから」44.4% (日食 2013/03/22 日付) などの回答があり,「朝活」に な低アミロース米「姫ごのみ」 森 永 製 菓 は, 東 京・ 丸 の 内 よる心や身体へのポジティブな のほか,ピラフやチャーハン, エ リ ア で 働 く25~45歳 の 女 性 影響を期待している様子がうか 麺など加工調理用に向く高アミ 412人対して「ライフスタイル がえた。「朝活を行う前後での ロース米「ホシユタカ」,米粉 調査」を実施(3月6~7日・ 生活の変化」でも「生活にメリ や飼料用米など,米粉や飼料用 ネット調査)し,内容を公表し ハリが付いた」55.6%が最も多 米として新用途を開拓する多収 た。その結果,61.7%の女性が く,「健康状態が良くなった」 穫米「ホシアオバ」,胚芽が大 「朝活に興味がある」“朝活願望 37%,「1日の活動がアクティ きく健康機能性に優れる巨大胚 派”で,13.1%が「朝活をして ブになった」35.2%が上位を占 芽米「はいごころ」など。 いる」“朝活女子”であること め,実際に「朝活」がポジティ が分かった。 ブな影響を与えている傾向がみ 一方,普及が進む飼料用米と えた。 は異なり,牛への給餌を視野に 近年,自分磨きのため,朝の 入れ,発酵粗飼料用専用イネ 出勤前の時間を有効に活用して, として誕生した「たちあやか」 ジョギングやウオーキング,ヨ では45.6%が「アクティブに生 (中 生),「たちすずか」(晩 生) ガなどの体力アップや外国語会 活するためには食事以外にもサ を紹介。牛が消化しにくい籾の 話,資格取得などスキルアップ プリメントや栄養ドリンク,ゼ 部分が少ない半面,消化されや を目的とした「朝活」が注目さ リー飲料なども必要だと思う」 すい茎や葉の部分を多くし,し れている。同調査では「朝活」 と回答した。 な か て お く て もみ 食品と容器 257 また,今回のアンケート調査 2013 VOL. 54 NO. 4 今月の統計 (金額・百万円) 180,000 (数量・千kg) 900,000 800,000 160,000 700,000 140,000 600,000 120,000 500,000 100,000 400,000 80,000 300,000 60,000 200,000 数量(千kg) 40,000 100,000 金額(百万円・CIF) 20,000 0 0 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 第1図 一般缶詰の輸入推移 (数量・千kg) 60,000 (金額・百万円) 18,000 50,000 数量(千kg) 15,000 40,000 金額(百万円・FOB) 12,000 30,000 9,000 20,000 6,000 10,000 3,000 0 0 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 第2図 一般缶詰の輸出推移 (数量・千kg) 7,000 (数量・千kg) 350,000 6,000 300,000 2002年 2002年 250,000 5,000 2007年 2012年 200,000 2007年 2012年 4,000 150,000 3,000 100,000 2,000 50,000 1,000 0 0 水産 果実 野菜 ジャム他 食肉 水産 第3図 一般缶詰品種別輸入数量 果実 野菜 ジャム他 食肉 第4図 一般缶詰品種別輸出数量 第1表 一般缶詰の輸入,輸出数量・金額(2012年1月~12月) 数量・千kg 水産 50,031 果実 280,892 野菜 312,379 ジャム他 17,595 食肉 60,787 総計 721,684 (参考:ペットフード) 145,928 食品と容器 輸 入 前年比 金額・百万円 105.2 30,660 98.6 40,345 103.6 40,335 97.0 4,145 92.0 25,110 100.5 140,595 98.1 38,230 前年比 数量・千kg 121.9 4,894 107.4 489 106.5 1,619 97.3 142 96.9 1 107.5 7,145 104.5 601 258 輸 出 前年比 金額・百万円 197.5 2,598 121.3 357 86.0 1,069 163.7 92 1 147.3 4,117 97.4 558 前年比 189.6 91.8 92.1 141.8 137.9 102.6 2013 VOL. 54 NO. 4 今月の統計 第2表 化粧品の過去10年間の1月~12月製造出荷金額(経済産業省資料)および輸出・入金額(財務省資料) 年別 出荷金額(億円) 増加指数 2002年 14,342 100 2003年 14,377 2004年 輸出額(億円) 増加指数 輸入額(億円) 増加指数 648 100 1,283 100 100 665 103 1,466 114 14,221 99 767 118 1,604 125 2005年 15,056 105 837 129 1,635 127 2006年 14,997 105 934 144 1,655 129 2007年 15,107 105 1,022 158 1,785 139 2008年 15,071 105 1,109 171 1,716 134 2009年 13,902 97 1,052 162 1,536 120 2010年 14,220 99 1,275 197 1,791 140 2011年 14,048 98 1,292 199 1,674 130 240 出荷 輸出 輸入 220 このグラフは2002年(平成14年)を100として指数で表したもの 200 180 160 140 120 100 80 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 第5図 化粧品製造出荷金額および輸出・入金額過去10年間の推移 第3表 平均気温,降水量,日照時間 平 均 気 温 (℃) 平年差 前年差 2012年 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2013年 1月 2月 月間 8.8 -0.6 +0.7 月間 14.5 -0.1 +0.0 月間 19.6 +0.7 +1.1 月間 -0.7 -1.4 21.4 月間 +0.6 -0.9 26.4 月間 +1.7 +1.6 29.1 月間 +2.4 +1.1 26.2 月間 +0.9 -0.1 19.4 月間 -0.6 -2.2 12.7 月間 -1.4 -0.2 7.3 月間 -0.6 +0.7 5.5 下旬 -1.6 -0.9 5.5 月間 -0.3 +0.8 6.2 3月 上旬 +3.6 +3.6 11.6 中旬 +3.8 +5.6 13.4 注)平年値は1981年~2010年の月,旬平均値 食品と容器 (3月中旬まで・東京) 降 水 量 (mm) 平年比(%) 前年比(%) 144.5 118.5 231.0 185.0 130.0 25.0 214.5 154.5 154.0 69.0 70.0 2.0 30.0 17.0 15.5 *:暫定値 259 123 95 168 110 85 15 102 78 166 135 134 11 53 56 46 195 123 108 159 239 10 91 129 137 116 140 4 32 18 62 日 照 時 間 (h) 平年比(%) 前年比(%) 149.7 162.4 195.4 125.3 181.3* 236.0 164.4 156.6 153.3 166.9 212.5 65.7 173.7 69.6 82.9 92 93 113 102 126 135 140 117 105 95 113 135 104 130 150 70 80 134 119 97 140 99 111 107 89 116 173 117 494 122 ☆2012年8月号から新平年値を使用(気象庁調査) 2013 VOL. 54 NO. 4 最近の技術雑誌から 〔解説〕特集2―食品取扱い者の健康管理と清潔― 野村良信:食と健康,57(3)54~61('13) 国 内 編 〔解説〕特集―国際標準化への岐路に立つHACCP認証 ~自治体HACCP認証,FSMA(米国食品安全強化 法)など~― 月刊HACCP,19(3)19~50('13) ○東京都食品衛生自主管理認証制度の現状と今後の展望 /GFSIグローバル・マーケット・プログラムなど 国際規格を参考に認証基準の検討始まる…小澤悠作 ○特別アンケート/自治体におけるHACCP推進事業お よびHACCP認証事業の現状 ○米国食品安全強化法(FSMA)の最新状況… 寺原正紘 ○食品製品協会(FPA)HACCPワークショップテキスト 「HACCP:食品安全に対する体系的アプローチ」第 7章より/HACCP計画を開発するための最初の作業 栄 養 ・ 健 康 〔解説〕特集―食事からの微量元素摂取と注目される問 題― FFIジャーナル,218(1)5~27('13) ○摂取不足が問題になる必須微量元素―特に,亜鉛と鉄 を中心に………………………………………横井克彦 ○微量ミネラルの過剰摂取―日本人のヨウ素摂取は過剰 水準か…………………………………………吉田宗弘 ○化学形態が問題になる微量元素―ヒ素の場合を例に …………………………………花岡研一・臼井将勝 〔解説〕卵を食べると心臓に悪い? 城 内 文 吾・ 菅 野 道 廣:New Food Industry,55 (3)15~20('13) 〔解説〕特集―食品製造現場の殺菌・除菌技術― ジャパンフードサイエンス,52(3)49~53('13) ○食品添加物除菌剤『バリアス−1 ONE』 ……………………………………大一産業株式会社 … …………株式会社イシダ ○電解次亜水生成機『i-CL15』 〔解説〕特集―食品機能の評価法と製品開発― 食品と開発,48(3)4~15('13) ○糖化ストレスの評価法と抗糖化食品の開発 …………………………………八木雅之・米井嘉一 ○プロバイオティクスの評価システム構築と製品化への 新展開…………………………………………齋藤忠夫 ○腸内常在菌の代謝産物の解析とプロバイオティクスを 用いた腸管内代謝産物コントロールによる寿命伸長 効果……………………………………………松本光晴 〔解説〕特集2―異物対策と食の安全/関連有力企業の 展開と製品 PartⅡ ― 食品包装,57(3)35~41('13) ○不良錠剤を高精度検出/エッジの微小な欠けも確実に 検知………………………ライオンエンジニアリング ○ホコリ・清浄効果の“見える化”へ/新型の多機能ク リーンルームライトを提案………………シーズシー ○異物混入対策で効果発揮/飛散防止機能備えた紫外線 ランプ……………………………………………アルゴ ○昆虫・異物混入を抑制できる蛍光ランプ/引き合い高 まる長寿命タイプ「L2」…………………エバーライツ ○3次元形状検査装置「3D-MicroJr」/インライン食 品検査用に低価格化を実現……ワイエムシステムズ ○水に強いアルコール製剤を販売/濡れた場所でも除菌 効果を持続………………………………紀ノ國フーズ ○iPadなど活用の衛生管理システム/分析・集計・記 録・報告を一元化……………………………… FSM 〔解説〕健康食品の市場動向と素材・技術研究 編集部:食品と開発,48(3)21~74('13) 〔解説〕特集―新開発の機能性食品― 食品と科学,55(3)65~77('13) ○機能性食品で日々の健康を維持しよう………酒井重男 バイオテクノロジー 〔解説〕海洋バイオマスからのバイオディーゼル燃料生産 田中 剛・吉野知子・武藤正記:化学と生物,51 (3)183~188('13) 添 加 物・副 材 料 〔解説〕急変する原料情勢,対策急ぐみそ業界/収益性 の改善を最優先に,いかにブランド価値を守るか 酒類食品統計月報,54(13)17~27('13.2) 〔解説〕植物における音の影響 佐藤優紀:化学と生物,51(3)196~198('13) 食 品 衛 〔解説〕特集―お肉をおいしくたくさん食べたい!― フードケミカル,29(3)17~51('13) ○食肉加工品をよりおいしく,より魅力的にするための 技術・考え方…………………………………江頭俊彦 生 〔解説〕特集1―ボツリヌス食中毒とその対策― 小崎俊司・梅田 薫:食と健康,57(3)10~18('13) 食品と容器 260 2013 VOL. 54 NO. 4 最近の技術雑誌から ○肉・魚介類をやわらかくおいしくする果実調味料「梅 ソフト」…………………………………………朝木宏之 ○かたい肉を,やわらかく,おいしくする畜肉・魚介類 加工用品質改良剤製剤『ソフテーストⓇ』のご紹介 ………………………………………………小島麻美 ○澱粉による食肉製品のおいしさ・品質向上 ……………………………………………五十嵐信人 ○肉の臭みを抑える調理専用ワインの開発……小柳 淳 ○輸入食肉~米国・豪州~の取り組み……………編集部 ○肉加工品のおいしさ,ボリューム,コスト性に寄与す る素材,添加物,技術…………………………編集部 〔解説〕レトルト食品の生産個数変化 日本缶詰協会:缶詰時報,92(3)13~20('13) 〔解説〕特集―おいしいレトルト― フードケミカル,29(3)57~66('13) ○おいしいレトルト……………………………五味雄一郎 ○レトルト食品のおいしさに役立つ素材,添加物,技術 …………………………………………………編集部 食 一 般 〔解説〕トライアルユーザーが価値を評価/リピーター の増加で見えてきた加工米飯のネクストステージ 総合食品,36(9)25~35('13.2) 飲 料 ・ 醸 造 〔解説〕清酒市場,需要確保で復権に手応え/~2012 年上位銘柄の出荷動向~ 酒類食品統計月報,54(13)2~16('13.2) 〔解説〕即席めん,価値競争で市場最高に挑む/技術革 新で袋めんが再生,カップも好ペース 酒類食品統計月報,54(13)70~80('13.2) 〔解説〕数字で見る12-13年のビール類市場/9年連続 マイナス阻止なるか 酒類食品統計月報,54(13)28~31('13.2) 〔解説〕特集―パン・菓子のマーケットを探る― 食品工業,56(5)33~60('13.3/15) ○パンの消費および生産の現状と今後の動向…中峯准一 ○スイーツの“流行”はどこから生まれるのか~注目の スイーツとトレンド~………………………平岩理緒 ○ベーカリー最新トレンドと日本のパン食文化 ……………………………………………清水美穂子 ○パンに使われるジャムの話……………………川手浩司 ○スイーツ最新事情…………………………………編集部 〔解説〕12年清涼飲料市場,3年連続で成長/新商品 など寄与し炭酸が好調 酒類食品統計月報,54(13)49~57('13.2) 〔解説〕続伸の国産水VS反動減の輸入水/明暗を分け るミネラルウォーター市場 総合食品,36(10)41~48('13.3) 〔解説〕コンビニ弁当の調査 堀口恵子:New Food Industry,55(3)36~44('13) 〔解説〕特集―2012年の清涼飲料市場と2013年の戦略 /過去最高を更新した清涼飲料生産量,市場拡大に 終わりはないのか?― Beverage Japan,36(2)36~106('13.3) ○過去最高の生産量を記録した2012年 ○2012年の新製品発売動向 ○内容量の多様化が進む ○自販機の進化 ○新しい販売チャンネルを模索する ○業界再編が進むか? ○活性化するプラント投資 ○2013年の市場を見通す ○主要ブランド別の動向 ○2012年 会社別 新発売品一覧 〔解説〕特集―パン・菓子の改良材&応用技術― 食品工業,56(6)44~66('13.3/30) ○製菓・製パン用品質改良素材 …寺林由佳理・早川夕紀子・吉田和雄・杵川洋一 ○アルファー澱粉の付着性低減技術とベーカリー製品へ の応用…………………………………………長畑雄也 ○加工でん粉,ペクチン,レシチンによる製菓・製パン の品質改良……………………………………鴻野 健 ○パン用カルシウム「ふわカル」の添加効果 ………………………………………………森木洋一 食 品 加 工・保 蔵 〔解説〕年間特集―食品の品質保証技術― 食品機械装置,50(3)54~58('13) ○植物繊維を用いた米粉麺製造技術の開発……常見崇史 缶びん詰・レトルト食品 〔解説〕青物缶詰,内食化追い風に順調に推移/急激な 円安シフトで輸入品は採算危機 酒類食品統計月報,54(13)45~48('13.2) 食品と容器 品 〔解説〕特集―冷凍・冷蔵・鮮度保持技術― 食品機械装置,50(3)63~91('13) 261 2013 VOL. 54 NO. 4 最近の技術雑誌から ○食品の品質低下を防ぐ冷凍保存技術…………鈴木 徹 ○食品冷却の省エネ技術/食品工場の排熱を活用して省 エネを図る技術の紹介………………………江原 誠 ○食品鮮度保持における冷凍・冷蔵設備 …………………………………嶋田芳和・伊藤 崇 ○大型PET飲料カートン 鉄道輸送による擦れ防止対 策について………………………平山賢一・吉井孝平 ○バーチャル試験による大型重量貨物の転倒防止評価 ……………………星野裕昭・石井勇太・高木雅広 ○カーナビゲーションシステムの包装改善 ………………………………………………加藤和也 ○タンク付きウォシュレットの地球と人にやさしい包装 ………………………………………………廣松隆明 ○「明治チューブでバター1/3」のユニバーサルデザイ ンに配慮した容器改善 ……………………大平祐歌・東 俊二・関場 裕 ○500mLPETボトルの握りやすさ定量評価について ………………………………………………曽我智浩 ○プロセスチーズの品質劣化指標の特定と品質維持条件 のマップ化……………………………………下浦博之 ○トップ プレケア エリそでボトルの使用性改善 ……………………………………………前田健一郎 ○スタンディングパウチの黄変抑制技術の開発 ……………………佐藤千織・相良幸一・加藤恭一 市場調査 ・ 流 通 〔解説〕特集―海外食品市場への道筋― 食品と科学,55(3)57~64('13) ○これからの食品の輸出戦略……………………有路昌彦 機 械 ・ 設 備 〔解説〕特集―食品分析技術と品質保証― 食品機械装置,50(3)59~62('13) ○最新の放射線測定器……………………………多田 誠 管 理 技 術 〔解説〕特集―清涼飲料製造の周辺技術― ジャパンフードサイエンス,52(3)17~48('13) ○清涼飲料用フレーバーの開発動向……………綾 武 ○エリスリトールの特性と応用…………………鍛冶 孝 ○清涼飲料製造プロセスのインライン管理…大世古光弘 ○高耐熱PET広口容器成形の挑戦とビジネスチャンス ………………ポール アトキン・三浦由紀子(訳) ○微生物モニタリングのトレンド管理方法―微生物迅速 検査装置バイオメイテクター<ZERO1-SX>の開発 ―………………………………池松靖人・後藤田龍介 容 〔解説〕特集1―3.11を経たニッポンの食品包装― 食品包装,57(3)17~34('13) ○今こそ包装の本質的な価値を見直そう!/次世代に何 を残せるかが“日本ブランド”信用回復のカギに ………………………………………………有田俊雄 ○世界初“焼き立てパン”を5年保存/4層構造のアル ミパウチで酸化・腐敗を防止し実現…………さつき ○シーンに合わせた多様なメニューを提案/容器をフル 活用した赤ちゃん用ミルクも…………非常食研究所 ○災害備蓄用の保存水をPETボトルで/東京都「備蓄 条例」施行を前に法人需要開拓が加速 …………………………三菱レイヨン・クリンスイ ○回答者の半数は非常食を家庭で備蓄/「非常食と缶詰 に関する調査」で浮上する消費者マインド ……………………マルハニチロホールディングス ○2年間保存可能な缶入りチョコ発売/金属缶と脱酸素 剤の組み合わせで実現………………………森永製菓 器 ・包 装 〔解説〕3年連続プラス成長遂げた段ボール市場/今期 4年連続プラス成長の予測か 酒類食品統計月報,54(13)58~64('13.2) 〔解説〕特集―第50回全日本包装技術研究大会優秀発 表― 包装技術,51(3)3~73('13) ○大型重量物製品の包装改善/−各部位の共振周波数確 認による緩衝材の適正化とコストダウン-……田村 祥 ○ベアリングの包装箱における改善事例………金丸正明 ○段ボール箱の含水率を指標とした胴ぶくれのリスクマ ネジメントの提案 ………………東山 哲・原 早弥香・吉田 拓・ 門田恭明・橋本政明・大塚淳弘 ○輸送環境ハザード計測における新しいサービスの提案 ………………………………………………川口和晃 ○北海道の農産物輸送に適した「安全率」設定について ………………………………………………高島義英 食品と容器 〔解説〕世界大手包装カンパニーの成長戦略と挑戦/ボー ル(Ball)社(前編)/金属缶包装市場で世界をリード 村内一夫:食品包装,57(3)56~58('13) 環 境 問 題 〔解説〕複合化する中国の重金属汚染土壌と今後の展望 三好恵真子・姉崎正治:New Food Industry,55 (3)21~35('13) 〔解説〕2012年度工場における環境問題対応に関する 調査結果 日本缶詰協会:缶詰時報,92(3)2~10('13) 262 2013 VOL. 54 NO. 4 最近の技術雑誌から Understanding and Combating Food Flaud 海 外 編 J. Spink and D. C. Moyer… ………………………30~35 邦文の題名は内容に従って付けてありま すので,原題と異なる場合があります。 ○開発の初期段階での無駄排除が効果的 ご興味のある雑誌・記事がございました らいつでも閲覧できますので,当会宛ご 連絡ください。 ○ホエープロテイン研究開発の進歩 Eliminating Waste at the Front End of Innovation J. S. Farnbach and C. L. Kuesten…………………36~43 Dairy in‘Wheys’You’ ve Never Seen Before D. E. Pszczola… ……………………………………46~57 ○視力の維持と脳の健康に効果的な食材 Keeping Eyesight and Memory Sharp Packaging Digest (USA) Vol. 49 Dec. (2012) L. M. Ohr… …………………………………………59~63 ○チューブ表面のフル印刷技術 ○ノロウイルスの検出と対策の研究状況 Packaging Makeover Creates Tip-Top Tubes Targeting Norovirus J. Spinner… …………………………………………20~23 N. H. Mermelstein… ………………………………64~67 ○カップ / トレイの省スペース高速搬送ライン Dairy Line Is Short on Space, Long on Flexilbility Food Processing (USA) Vol. 74 Jan. (2013) J. Mans… ……………………………………………24~25 ○2013年食品産業の見通し:注目すべき5つの事象 ○季節商品の包装設計時のヒント Hot Topics for 2013 10 Tips for Designing Seasonal Packaging D. Fusaro… …………………………………………26~33 ○2013年フレーバーと成分のトレンド M. Connors… ………………………………………26~27 Flavor and Ingredient Trends for the New Year Prepared Foods (USA) Vol. 182 Jan. (2013) M. Anthony, Ph. D.…………………………………35~41 ○2013年からの新製品開発会議 ○2013年食品工場運営のトレンド調査 New Products Conference : To 2013 and Beyond Labor, Not Energy, the Concern in 2013 W. A. Roberts, Jr.……………………………………19~26 D. Phillips… …………………………………………51~56 ○シリアルバーの最新トレンド Satisfying Cereal Bars Food Engineering (USA) Vol. 85 Jan. (2013) W. A. Roberts, Jr.……………………………………33~37 ○2023年の食品工場:ビジュアル工場の台頭 ○胃腸の健康のための成分 Food Plant 2023 Ingredients for Gastrointestinal Health K. T. Higgins……………………………………… 89~100 ○廃棄物を埋め立てから再生へ K. Shelke, Ph. D.… ………………………… NS 3~ NS17 ○フードサービス新製品開発の3分野 Trash to Cash Stay Ahead of the Food Curve K. T. Higgins………………………………………103~112 ○食品の安全,品質とプロセス制御 L. Edwards… ………………………………………67~75 ○ハーブやスパイスのフレーバートレンド Safeguard Your Brands with Process Control Where Flavors Meet W. Labs……………………………………………115~128 A. Karapetian and J. Troiola………………………87~95 Food Manufacture (GBR) Vol. 88 Jan. (2013) ○豆類を使用した健康食品処方の策定 ○チーズ作りの伝統 Stabilization and Formulation Science K. Fitzpatrick et al.……………………………… 97~103 Tasty Tradition G. Scattergood………………………………………14~15 Food Technology (USA) Vol. 67 Jan. (2013) ○レトロ菓子復活への模索 ○食品に関する消費者の買い物行動 Cult Classics Shopping the Perimeter L. Searby… …………………………………………21~22 ○バイオプラスチックのための生検 A. E. Sloan……………………………………………20~29 ○食品詐欺についての理解と闘い 食品と容器 Biopsy for Bioplactics 263 2013 VOL. 54 NO. 4 最近の技術雑誌から P. Gander… ………………………………………………42 Physiological Drop of Citrus Fruits Y. Sun et al… ………………………………… C37~ C42 Beverage Industry (USA) Vol. 104 Jan.(2013) ○デヒドロジンゲロンの in vitro での抗真菌作用とその ○健康効能強化にシフトするジュース市場 殺菌作用特性 Finding the Goodness Inside In vitro Antifungal Activity of Dehydrozingerone J. Haderspeck… ……………………………………14~18 and its Fungitoxic Properties ○スーパーマーケットでのシェア競争 I. Kubra et al.… …………………………… M64~ M69 ○塩化ベンザルコニウムを含有する消毒剤の安全性試験 Competing for Consumer Share J. Haderspeck… ……………………………………38~40 S afety Studies Conducted on a Sanitizing Agent ○飲料市場でのクロージャーの役割 Containing Benzalkonium Chloride Put a Cork in It L. Dolan et al.… …………………………… T119~ T127 J. Haderspeck… ……………………………………44~46 2012 New Product Development Survey Food & Beverage Packaging (USA) Vol.77 Jan./Feb. (2013) S. Cernivec… ………………………………………52~62 ○新しい包装容器 ○2012年新製品のトレンド調査 New Packages Beverage World (USA) Vol. 132 Jan. (2013) ………………………………………………10~15 ○非アルコール飲料のトレンドと新製品 ○持久力を証明する軟包装業界 Non-Alcohol Trends & Innovation Growing Flexible Packaginf Industry Proves J. Cirillo…………………………………………………6~9 Its Staying Power ○アルコール飲料のトレンドと新製品 ………………………………………………22~24 Alcohol Trends & Innovation Fruit Processing (DEU) Vol. 22 Jan./Feb. (2013) J. Cioletti… …………………………………………10~16 ○ナリンギンはレモンジュースの生来の成分? ○2013年各種飲料の予測 The 2013 Forecast Is Naringin a Natural Component of Lemon Juice ? A. Kaplan… …………………………………………32~47 A. Gledhill et al.… ………………………………… 6~11 The Canmaker (GBR) Vol. 26 Jan. (2013) Int. Bottler & Packer (GBR) Vol.87 Jan. (2013) ○中国の製缶設備メーカーの変遷 ○ベールを脱いだ新タイプの Fusion ボトル Do Your Research on Equipment Suppliers Prototype Unveiled………………………………………28 C. loy… ……………………………………………………19 Int. Bottler & Packer (GBR) Vol. 87 Feb. (2013) ○ Ball 社(ヨーロッパ)の軽量アルミ2ピース缶 ○次世代のインクジェットプリンター Featherweight Champion Next Generation Printers J. Nutting… …………………………………………28~30 ○ Can-Pack 社(ポーランド)の薄肉3ピース缶 ……………………………………………………10 Lightweighing’ s Plan of Action Cereal Foods World (USA) Vol. 58 Jan./Feb. (2013) J. Nutting… …………………………………………32~33 ○全粒粉グルテンフリー,エッグフリーのパスタ Journal of Food Science (USA) Vol. 78 Jan. (2013) Whole Grain Gluten-free Pastas ○未活用のツルアズキの栄養学的ポテンシャル T. S. Kahlon et al.………………………………………… 4~7 ○ブルーベリー:シリアルを完全にする「スーパーフル Nutritional Potential of Rice Bean(Vigna Umbellata) : An Underutilized Legume ーツ」 R. Katoch… …………………………………… C8~ C16 B lueberries : A “Super Fruit” Complement to ○柑橘類の生理落果の植物化学的プロファイルと抗酸化 Cereals 活性 V. I. Petrova and E. J. Kennerry Phytochemical Profile and Antioxidant Activity of ………………………………………………13~17 食品と容器 264 2013 VOL. 54 NO. 4 することがある。味わってみたいと思いつつ,残 野菜・果物を巡って (第五十二話) 念ながらいまだに活用していない。日本での流通 はわずかであるが,ヨーロッパでは一般的な野菜 として使われているようである。しかし,かつて, 多様化するアスパラガス よし だ き よ ロンドンに滞在した折には見かけた記憶がない。 こ グリーンアスパラガスやホワイトアスパラガス 吉 田 企 世 子 とは品種が異なり,糖度が高く,柔らかい食感に (女子栄養大学名誉教授) 特徴があるとのこと。表皮の色はアントシアニン で,これは抗酸化成分のポリフェノールでもある。 50数年も前のことであるが,特別なお客様をお 招きした折に登場するのが,缶詰のホワイトアス 生活習慣病の予防や疲れ目の回復に効果があると パラガスで,これを使うと,贅沢な雰囲気が味わ されている。 えて嬉しく,豊かな気分になったものである。高 近年,よく見かけるのがミニアスパラガスであ 価な缶詰なので日常的な食材ではなく,貴重な扱 る。茎の細いアスパラガスを10cm 程度の長さで いであった。 若取りしたもので,調理の際には下処理が必要な く,簡単に料理がつくれるので,人気がある。タ 缶詰を開けるときは缶の底部に缶切りをあてる よう,注意された。頭部から開けると,軟らかく イやフィリピンなどからの輸入品が主であるが, 形のよいアスパラガスの先端部に傷がつくからと 長崎県産なども流通している。 のことである。開缶してみると,なるほどと納得 最近,目にするようになったアスパラソバー したのである。しかし,いつ頃からか,店頭に生 ジュは,アスパラガスとは別種であるが,姿が似 鮮のグリーンアスパラガスが並ぶようになり,当 ていることから,「森や野のアスパラガス」と呼 初はこれが珍しく,食べ方にも不安があったが, ばれているようである。これは栽培が難しいとの どんどん普及し,現在ではこちらが主体となって こと。日本で流通しているものは,フランスで山 いる。 野に生育したものを採取し,冷凍や冷蔵で空輸さ ホワイトアスパラガスは土を寄せて,光が当た れたものである。オクラのようなねばねばした食 らないように白く栽培したものであり,グリーン 感が特徴である。味は淡泊でくせがないので,サ アスパラガスは日光をあびながら地上に伸びたも ラダやスープなどに適する野菜である。 アスパラガスはユリ科の多年生草本で,茎葉は のであることを知ったのは大学に在籍した折であ 高さ1.5m位になり,細かく分枝する。若茎は多 る。 肉質で,これを食用としている。 健康志向に後押しされて,緑黄色野菜であるグ リーンアスパラガスの人気が高まり,簡単な形態 娘時代,活け花を習った折にアスバラガスの茎 なので,利用しやすい点もあって消費量が伸びて 葉を用いたことがあるが,その頃はアスパラガス いる。 といえば,細く枝分かれした葉のことで,食用と しての生鮮アスパラガスを味わう機会は全くな ヨーロッパではアスパラガスといえばホワイト かった。 アスパラガスのことで,春を告げる野菜として親 アスパラガスは,かなり長い期間,収穫できる しまれている。もちろん,グリーンアスパラガス という特徴がある。播種後,2~3年目から収穫 も普及している。 かつて,ホワイトアスパラガスは,ほとんどが を始め,5~6年で成株となり,10~15年くらい 缶詰に加工されていたが,現在は生鮮野菜として 収穫を続けることができるのである。かつて長野 も販売されるようになった。ほろ苦さを感じる独 県の生産農家のハウスで収穫体験をしたことがあ 特の風味と歯ごたえに特徴がある。 るが,その折に,高く伸びた茎葉の根元に食べご ろのアスパラガスが伸びている状況を目にして, 時折,デパートなどで,紫アスパラガスを目に 食品と容器 265 2013 VOL. 54 NO. 4 る。グルタチオンは加齢とともに肝臓で合成され 植物体の不思議なことを感じたことである。 アスパラガスの歴史を辿ると,ウクライナ,東 にくくなるので,食品からの摂取が大切である。 ヨーロッパ,ヨーロッパの地中海沿岸地方からイ アミノ酸の一種であるアスパラギン酸が多いの ギリスまで自生が見られるので,初めは自生のも もアスパラガスの特徴である。この成分は体内で のを採取して利用していたのであろうとの記述が エネルギー代謝を活発にし,疲労回復を早める効 ある。ギリシャ,ローマ時代になって,栽培が始 果がある。また,体内で生成されたアンモニアを まり,紀元前3~2世紀には種子増殖,多年にわ 尿として排泄する作用があり,イライラや不眠症 たる収穫の記録も見られるとのこと。漸次ヨー を防ぐ効果が期待できる。また末梢血管を拡張し ロッパ全土に普及し,17世紀にはアメリカに導入 て,血圧を下げるので,高血圧を改善し,動脈硬 されたのである。 化の予防に効果を発揮するとされている。 アスパラガスは植物の生長点の部分になるので, 日本へは観賞用アスパラガスが18世紀に,明治 初年に食用種が導入された。当初はその形態から 収穫後の呼吸作用が大きく,成分変動が激しい野 マツバウド,西洋ウドと呼ばれ,またオランダキ 菜である。新鮮であればあるほど軟らかく,美味 ジカクシとも呼ばれたと記録されている。 しい。購入したら,その日の内に使いきるのが原 現在の主産地は北海道,長野県,秋田県などの 則である。呼吸作用によって,先ず甘味成分であ 寒冷地と佐賀県,長崎県,香川県などの西南暖地 る糖分が分解する。また旨味成分のグルタミン酸 である。国産品が減る秋から2月頃まではオース をはじめ,アスパラギン酸,その他のアミノ酸が トラリア,メキシコ,タイ,ペルー,アメリカな 変化する。一方,リグニンのような組織を硬くす どから輸入されている。 る成分が増加するのである。 アスパラガスの中でも栄養成分の多い品種は太 調理の際には根元の非常に硬い部分だけは切り 陽を浴びて育ったグリーンアスパラガスで,各種 落とすが,少し硬くても皮を剥いて加熱すると軟 のビタミン類が含有される。特に葉酸が多いの らかく食べられる。 で,貧血気味の人,妊婦,認知症が気になる年代 ホワイトアスパラガスはゆでるときにレモン汁 の人などには適した野菜である。穂先の部分には を少し加えるときれいな色に仕上がる。フラボノ ルチン,グルタチオンなどの抗酸化成分が含まれ イド系の色素がレモンのクエン酸の働きによって る。グルタチオンは,強い抗酸化力を持ち,活性 白色が保持されるためである。グリーンアスパラ 酸素の働きを抑えて,しわ,たるみなどといった ガスにレモン汁を入れると緑色のクロロフィルが 老化を防止するほか,がんの予防効果が期待でき 褐色に変化してしまう。 編 集 後 記 ●福島の原発事故から丸二年を迎えました。 第54巻 第4号 FOOD & PACKAGING 平成25年4月 1 日発行 除染や復興は遅々として進まず,廃炉の方法にいたっ ては,見通しも答えもないままです。それでも原発再稼 働の方針だけが示されています。 発行所 缶 景気だけはこれまでの沈滞ムードから一変し,なにや 〒103−0002 東京都中央区日本橋馬喰町 1−8−4 TEL 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1 定 価 FAX 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3 1部 800円 Eメール:[email protected] 年間 8,000円 郵便振替 0 0 1 5 0 − 0 − 4 2 2 1 5 (送 料 共) 井 俊 夫 編 集 人 荒 ら春の兆しのようです。花見の宴とならないことを祈っ ています。 ●そうこう考えていると,新生日本の結局行き着くとこ ろは? 不安を感じずにはいられません。 “行く川のながれは絶えずして,しかももとの水にあ 発 行 人 らず。”と,方丈記のように諦め,悟りを開こうなどと は思いたくありません。 食品と容器 詰 技 術 研 究 会 −禁無断転載− (山) 田 嶋 一 乱丁・落丁本はお取り替えいたします。 266 雄 印 刷 所 大和サービス株式会社 2013 VOL. 54 NO. 4
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