M A RU S EPPU

MARUSEPPU
札幌国際大学
丸瀬布の観光振興に関する具体的提案
マウレ山荘を中心として
札幌国際大学
2005. 3
0
札幌国際大学
はじめに
丸瀬布は豊かな自然と、都市では失われた豊かなコミュニティが存在している。
また、国際交流の長い歴史を持ち、異文化に対する寛容性が育まれてきた。
こうした具体的事実は、地域の持つ文化として高く評価され、こうした資産と自然の恵みを旨くリンク
させ、人的資産をコアとした観光資源つくりが求められよう。山形県朝日町のエコ・ミュージアム運
動、イギリスの観光地におけるビーフ・イーターなど観光地の解説者の重要性が認識され始めてい
る。
こうした点に注目すれば、豊かな自然を解説できる人の存在は、大きな観光資源であると推測さ
れる。特に丸瀬布の昆虫愛好会(昆虫生態館の前身)などの存在は、この可能性が十分伺える。
他方 質の高い宿泊施設マウレ山荘の活性化は、人的資産と豊かな自然をリンクすることによっ
て地域活性化の重要な役割を担う点も指摘される。
本調査では、地域の観光資源の再評価とマウレ山荘の活性化を視点に、有機的活用の施策に
寄与しえることを目的に調査した。
またこの調査にあたり、丸瀬布町役場
育委員会
中南秀隆様、昆虫生態館
商工観光課長
高橋秀視様、他観光課の方、教
喜田和孝様、とりわけ調査の折多様な便宜を図って
くださったマウレ山荘管理支配人高野道生様をはじめ、山荘の方のご協力があって完成で
きることができました。厚く御礼申し上げます。
札幌国際大学 丸瀬布活性化プロジェクトチーム一同
1
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AREA ACTIVATION
Ⅰ部
丸瀬布の地域活性化としての観光振興
観光資源の発見と整備に関する調査と提言
(積雪期に関して)
2
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1.
観光集客要素の時代的経緯
地域の観光集客要素は、各顧客のニーズを如何に満足させるかによって、概ね決まる。こ
の集客要素は、日常の社会生活で欠如している要素が、このニーズを形成する主要な内容
である。20 世紀初頭、遊園地が都市の周辺部で隆盛を極めたのも、初期の機械化と分業化
された労働に対する、統合化された技術への驚きと発見の感覚に依拠している。
その後この役割は、イメージによる仮想体験をもたらす映画によって取って代わられた。
その数十年後、W.ディズニーは、映画(イメージ)と遊園地(体験)の合体として、ディズ
ニーランドをLAに創り上げた。
こうした経緯を経て、都市の中の擬似的驚きや発見から、自然と向き合った本当の自然か
らの発見を求める人々が生まれ始めた。こうした中で、自然の残された地域の観光資源が
重要な要素を持ち、多くの人を集客し始めている。屋久島の杉、白峰山系のブナの森、知
床の自然などである。
キーワード
(カテゴリー)
モチベーションのテーマ
(アイテム)
イメージ写真
備考
驚き
万国博
19C-20C 初期
新技術による新しい世界の提
示
シカゴ万博
最初の観覧車
アミューズメント性
遊園地
20C 初期
新技術による新しい世界での
アミューズメント性の追求
NY,コニー
アイランド
映像(イメー
ジ)の具現
化
おどろき
テーマ・パーク
20C 中期以降
街並み保存
世界遺産
ラムサール条約
など
新技術による時空間の拡張と
可能性の提案
ディズニー
ランド
手付かず
の自然、そ
の他、古い
町並みの
面的保護
などがある
本物志向
知識の有無による面白さや興
味に差が生じる。
20C 後半
釧路湿原
3
万国博で
作られた、
遊具を集
めた最初
の遊園地
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2.
丸瀬布の観光資源
丸瀬布には、従来型の観光資源は存在していない。すなわちマスメディアによる集客可能な観光
資源は、存在しないと推測される。しかし先行調査「丸瀬布町観光基本計画の見なおしに係る基
礎調査」と第一回事前調査、から、幾つかの観光対象の存在が認識される。その中心的カテゴリー
の中心テーマは、「自然」「個人対応」「新しい観光形態」である。
すなわち、豊かな自然を生かしたツーリズムメニューの形成である。
自然
個人旅行
インタプリター
住民ガイド
表 整備指針
カテゴリー
アイテム
山
岩
川・渓谷
自然
沢
滝
洞窟
高原
動物
景観
イベント
花・木
ビューポイン
ト
散策ルート
山
滝
川
森
谷
産業
歴史
物語
イベント
観光箇所
武利岳
平和山
金湧山
奇城岩
湧別川
武利川
丸瀬布川
五十一沢
湯ノ沢
砂金沢
鹿鳴滝
山彦の滝
十三の滝
氷穴
風穴
太平高原
ナキウサギ
フラワーロード
ガーデニングコンテスト
イルミネーション
雪明り
芝桜
北コブシ
エゾムラサキツツジ
その他
金湧山
大平高原
湧別川
大平高原の道
88 箇所
山彦の滝.鹿鳴の滝
憩いの森
憩いの森ハイキング
オリエンテーション・コース
伊奈牛鉱山
林業
雨宮 21 号
ふれあいセンター
郷土料理
砂金伝説
金八姉さん
観光祭り
花火大会
PR
PJ
PJ:短期的に具体的施策が適しているアイテム(2∼3 年)
PG:PJ の組み合わせによって面的に整備するアイテム群(5∼10 年)
4
具体案
カヌーなどのアクティビティの可能性
ハイキング型の可能性現状把握(夏季予定)
散策道の整備
標識、地図、足場、滝周辺の整備
現状把握(夏季予定)
現状把握(夏季予定)冬季利用は不可能
生態の把握:ネイチャーツアーの可能性
地域活性化の有効性のあるプログラム
他とリンクした有効活用の方策
現状把握とアクティビティの整備
「冬季散策の魅力」の宣伝方法の確立
観光アクティビティは、現状では不可能である
鹿肉料理の可能性は、ダニが寄生し問題が多い
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3.
自然を中心にした観光活動の現状
近年、先進国では、都市化が進み豊かな自然との触れ合いが少なくなった。こうしたことを背景
に、自然への関心が非常に高くなっている。こうした傾向は、日常生活や、余暇活動にも現れてい
る。前者に置いては、庭先の草花をより美しく見せるガーデニングブームが上げられる。後者は、フ
ラワー観光、ネィチャー観光、森林浴ツアー、農村観光など多様な自然をテーマにした余暇活動
が挙げられる。こうした都市生活者の嗜好性に着目し、多様な経済活動を進めてきた。表「自然を
テーマにした観光資源の代表例」はこの例である。
表 自然をテーマにした観光資源の代表例
名称・箇所
農村観光
道の駅
マオイの丘
(空知/長沼町)
自然観光の
中継地
コンキリエ
(厚岸町)
余暇活動の
新しい TYPE
サンガーデン
(恵庭町)
自然観光
然別湖ネィチャーセ
ンター
(鹿追町)
概要
道の駅の一角に農産物直売上を設け
た。
観光途中の農産物購買、近隣の温泉
と野複合目的による観光活動の創出
など
経済効果
H14 年度の売り
上げは、4 億円
弱である。
地域の魚介類を中心に、野菜など広
範囲な素材を提供し、その場で調理し
て食べる、新しいタイプの食事どころ。
道の駅を併設しているといった利点も
あってかなり成功している。
霧多布湿原湿原
と釧路の中間地
点に位置し、通
過箇所となって
いたが、ワンスト
ップ箇所として
機能している。
果物がり中心の
地域観光が、ガ
ーデニングと対
応した生花業の
農家の適切な対
応によるニュー
ビジネス、スモー
ルビジネスが生
まれた。
自然保護の重要
性を温泉地で開
設した。子供向
き大型温泉施設
とは異なったモ
チベイション作り
のきっかけを作
った
住宅地、恵み野のガーデニングと歩調
を合わせたこの店舗は、札幌からの集
客もしている。
近隣の農家も花の苗の直販をしてい
る。新しいスタイルのロードサイドショッ
プとして注目される。
近隣のホテルの魅力度創くり
然別温泉のもう一つの魅力づくり。ナ
キウサギなど希少動物の生息を生かし
た保護観察ツアーなど今後期待できる
内容がある。
5
備考
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4.
自然を対象とした宿泊施設
近年、ネイチャーツアー、やネイチャートレッキングが観光メニューとして各地域で盛んになって
いる。こうした観光活動は、地域の自然に詳しい人の理解と協力が不可欠である。
鶴居村のホテル DAITOU は、写真家の経営するホテルで早朝の釧路湿原のネイチャーツアー
を企画している。宿泊客の多くの人は、このネイチャーツアーをするためにここに泊まっている。す
なわち釧路市周辺で宿泊し、ネイチャーツアーに参加するのは時間的に不可能である。また、宿
泊施設もナチュラリストの好まれる、山小屋風インテリアによってまとめられている。
ホテルの需要は一定程度存在し、特に熟年層の人気が高く曜日による偏りが少ない点も特徴で
ある。
丸瀬布のマウレ山荘は、このホテルの設備に比較して、さらに高い質を持ちネイチャーツアーに
よる集客が考えられる。資料では、「ナキウサギ」「蝦夷鹿」などの存在が報告されており、小動物の
可能性も高い。山彦の滝までの早朝トレッキングで高い確率の遭遇の可能性があれば、かなりの
集客が望められる。
マウレ山荘
シックなマウレ山荘のロビー
ネイチャーツアーによって集客をしているホテル DAITOU
6
熟年層がターゲットのため充実した温泉
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(適切な規模の先行事例):然別のネイチャ−センター
ここでは、自然保護を含めた、自然に優しいアクティビティを用意している。
また夜には、温泉街の宿泊客を対象に 自然ガイドをしている。予想に反して、
多くの宿泊客(熟年夫婦多い)が、参加していた。
カラオケやお酒ではなく、自然に親しみたい少数派が、少しずつ増え始めてきたのは事実である。
然別湖
ネイチャーセンターのアクティビティ
夜にセンター前で開催される然別の自然紹介
7
ネィチャーセンターの内部
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5.
昆虫生態館を中心とした活動の活性化:丸瀬布のコア
学習公共施設は市町村に多く点在している。しか
しその多くは、行政の中心の企画によって進められ
てきた。この行政中心の形態は、多くの場合活発な
運営、活動が難しく、その施設の活用が至って、貧
弱である。
しかし丸瀬布の昆虫生態館は、昆虫同好会を前身
「昆虫生態館の前身」の昆虫愛好家が創った
に持つ活動の歴史の長い施設である。
「昆虫の家」:民家施設
写真は、昆虫生態が観察できる場所を、同好会で作
り活動をしていた当時の民家の模型である。
この地域の特徴は、オオゴマダラ蝶の生息地とし
て有名であり、多くの蝶愛好家が、その収集に訪れ
ている。かつては町内の越後屋旅館が、その宿泊の
中心であったが、近年ではそうした傾向は、あまり
見られないようである。
この昆虫生態館は、非常に高いレベルの施設であ
る点は、愛好家では有名である。蝶の生息が実際に
観察できるドームも併設され、日本でも屈指の規模
を持っている。この施設は、近年多くの地域で作ら
オオゴマダラ蝶 (昆虫生態館)
れているネチャ−センターとは異なり、潤沢な人材
を持つことは、この町の財産であり観光集客に活かすことが重要である。
この町の昆虫生態館を生かすことが可能な背景
① オオゴマダラ蝶は、里に飛来するのは、殆どが雄で捕獲しても資源の枯渇には結びつ
かない。種の保存は、自然の破壊がなければ、殆ど可能である。また、蝶の生息期が、
2 週間と短く昆虫採集も一つのあり方であると考えられる。
② オオゴマダラ蝶の繁殖技術が既に昆虫クラブで確立しており、保護に対する準備は十
分になされている。
③ オオゴマダラ蝶の採集後の、標本化などの技術指導の体制も昆虫クラブによって可能
である。
隣接する憩の森との複合的活用によって、自然体感学習
型観光の可能性は高く、東京など都市の修学旅行の新しい
アイテムと考えられる。プロモーションする価値も指摘さ
れる。
こうした施設を核とした、観光活動による地域活性化のプログラ
ム作りが求められよう。
関東以北最大規模の蝶観察ドーム
8
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6.
観光資源
丸瀬布には豊かな自然に依拠した観光資源が存在している。しかし、こうした資源は、他
の地域の人に充分に知らされておらず、活かされていない点が指摘される。
代表的な資源について考察をする。
山彦の滝・鹿鳴の滝
武利岳方面に存在する滝は、インターネットで紹介されている。したがって、かなりの人
が知っている。しかし、北海道全体から評価すると、丸瀬布の集客のための観光資源とは
言い難い。
しかし、冬季においては、この魅力は各段に増え、集客の観光資源となりうることは充分指摘されよう。
しかし、単なる口コミなどでは、波及効果が遅く、何らかの仕組みづくりが必要である。
夏季の山彦の滝
駐車場から滝までの散策路:案内板がほしい
美しい風景が見られるが、水量の少なさに欠点がある。
植栽などの工夫による保水性の高い森林整備
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冬季の山彦の滝
冬季の山彦の滝は、氷柱となり美しい光景を生み出している。閉鎖ゲートから、子供ずれでは
概ね1時間程度(大人のみでは45分)で、滝まで着くことができる。しかし、歩行のための遊歩道の
整備は多様な面から難しく、スノーシューが必要な状態である。近年スノーシューの人気も高く、持
参できる人もあるが、一般的な家庭には常備されていない。したがってゲートまでのアクセスとスノ
ーシューをセットとした有料型の観光活動も考えられよう。
この氷柱は、観光地としても充分対応でき、流氷観光、氷柱観光として観光価値は、充分考えら
れる。また、旭川、紋別ラインの旭川よりに位置し、流氷観光‐丸瀬布宿泊‐氷柱ウォーキング等の
ツアーメニューは、道外客の動機付けには充分である。
スノーシューは、スキーなどと違って、直ぐ使え
るようになる利点がある。本州客と共にアジアからの
観光客に、非常に喜ばれる点は推測されよう。
流氷観光以上の、観光化もありうる。
確保したいスノーシュー
写真 左中
左下
ゲートからの風景
氷柱の大きさ(大学院観光振興研究
室による調査)
右
10
山彦の滝の氷柱
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7.
まとめ
本調査を通じて、冬季のマウレ山荘を中心としたツーリズムメニューは下記の内容が挙
げられよう。本章では徒に多様性を列挙するのではなく、高い誘客が見こめるものに絞っ
て提案した。事前調査では、スノーモービルでの温根湯温泉山越えなどの可能性を検討し
たが、丸瀬布役場ですでに過去に実施されており、採算性等からの判断も役場の意見と一
致し、不可能と判断した。また、夏季調査で確認すべきナキウサギの生息実態をも配慮し、
こうしたプロモーションは、時代に逆行すると判断した。
(提案メニュー)
オホーツク流氷観光
⇒
丸瀬布マウレ山荘(In) ⇒
昆虫生態館(見学) ⇒
スノーシューの貸し出し
憩の森散策 ⇒ マウレ山荘(泊):夜空観察等 ⇒
山彦の滝ウォーキング ⇒
翌朝
昆虫生態館
⇒
郷土資料館
⇒
マウレ山荘(Out)
7:00
木工館
スノーシューの返却
木工の町の理解
世界的ピアノの製作技術
○スノーシューは、昆虫同好会の所有であるが、昆虫生態館の入場料と込みでの料金設定で、維持費を徴収することに
よって当面解決を図る。
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冬季のウォキング
MAP
冬季のウォーキングは、
最低早朝8時出発が望ましい。
昼からでは、日没、
温度の変化、熊の出現
の可能性などがある。
鹿鳴の滝は、未踏となって
いる。
このエリアは、蝦夷鹿が見られる
地域である。良く見られるのは、
道路脇が雪解けが始まる時期で、
草本の新芽を探しに現れる。
(丸瀬布役場商工観光課)
スノーシュー利用が必要。
初心者には、ゲートから
取りつき口まで(30分)が
練習に適切。
武利川の冬景色も良い。
武利岳方面これより南
冬季車両通行禁止
道路から滝までの遊歩道は、スノー
シューで、10分程度の道のりである。
滝までの道は、危険はなく天候が良け
れば快適である。氷柱の裏側にも回る
ことが可能である。
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ACTIVATION OF THE MOUTAIN CATTAGE
第Ⅱ部
マウレ山荘活性化プロジェクト
− ブランド・マーケティングからの視点 −
13
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1.はじめに
第Ⅱ部においては、マウレ山荘での宿泊体験、基本データ等を基に、ブランド・マーケティング
の観点から、マウレ山荘活性化の方策について提言する。
2.基本データ
(1) マウレ山荘施設概要
マウレ山荘施設概要については(表 1)の通りである。
(表 1)マウレ山荘施設概要
項目
①法人名
②施設名
③代表者
④資本金
⑤創業
⑥施設数
⑦客室数
⑧最大収容人員
⑨宿泊施設
⑩料飲施設
⑪入浴施設
⑫年間平均稼働率
⑬1 泊 2 食平均客単価
⑭平均滞在日数
⑮主要客層
⑯役員・従業員数
⑰業務別従業員数
(2)
データ
株式会社 丸瀬布観光振興公社
マウレ山荘
代表取締役社長 熊木匡典
1 億円
2001 年 4 月 28 日
本館1棟、コテージ 3 棟
本館 20 室、コテージ 3 棟
本館 72 名、コテージ 18 名
和室 4 室、温泉付和室 1 室、洋室 12 室、温泉付特別室 3 室
5 ヶ所(レストラン:
「レイラ」40 席、「パシパ」70 席、宴会場:
「エミナ」70 名、「208」15 名)
温泉大浴場、温泉露天風呂、温泉家族風呂
約 70%(トップ:7∼8 月、オン:6・9 月、オフ:12∼3 月)、
トップとオフでは稼働率格差約 2 倍
10,000∼12,000 円
1泊
年齢 40∼50 代(夏休み:家族客、平日:中年夫婦)、本州・道央
からのリピーター有
役員 6 名(内常勤 1 名)
、従業員 29 名(常時雇用のパート等を含
み、臨時雇用者は含まない)
フロント 5 名、接遇 8 名、調理 8 名、総務・経理 2 名、支配人、
施設担当などその他 6 名
マーケティング情報
マウレ山荘のマーケティングに関する情報は(表 2)の通りである。
(表 2)マウレ山荘マーケティング関連情報
①基本コンセプト
オホーツクの大自然につつまれた、やすらぎのスコットランド風リゾートホテル
②特色
自然、温泉、山菜料理
③温泉・浴場(○:あり、△:一部あり、×:なし)
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温泉(内風呂)
露天風呂付客室
露天風呂
貸切風呂
サウナ
○
○
×
○
×
④食事(○:あり又は可能、△:応相談、×:なし又は不可)
部屋食(夕食)
部屋食(朝食)
夕食種類
×
×
○
⑤客室タイプ・設備(○:あり、×:なし)
客室にバ
和室
洋室
特別室
プール
ス・トイレ
ジャグジー
×
掛け流し
△
朝食種類
バイキング
エステ
その他
○
○
○
○
×
×
コテージ
⑥同行者(○:あり又は可能、△:応相談、×:なし又は不可)
ペット同伴
1 人宿泊
子供料金
乳幼児対応
○
○
○(70%)
○(50%)
⑦プラン(○:あり又は可能、△:応相談、×:なし又は不可)
学生割引
ファミリー
カップル
レディース
宴会
記念日
×
○
○
×
○
×
特別料理
体験
ゴルフ
スキー
その他
○
○
×
×
○
⑧アクティビティ(○:対応可、△:応相談、×:対応不可)
テニス
ゴルフ
貸しスキー
ライン下り
釣り
○(パークゴルフ)
×
×
×
○(釣堀)
陶芸
乗馬
文化施設
レジャー施設
その他
×
×
○(昆虫生態 ○(いこいの森キ
絵画
マウンテンバイク
館)
ャンプ場)
⑨眺望(○:良好、△:限定的、×:なし)
山
海
川
湖
その他
○
×
○
×
星空
⑩アクセス等(○:便利、△:やや不便又は応相談、×:なし)
自家用車
路線バス
鉄道駅
空港
○
△
△
×
アーリーチェックイン
レイトチェックアウト
駐車場
送迎
○
○
△
△
⑪直接販売の販促媒体(○:積極的またはあり、△:限定的、×:なし)
雑誌
新聞
折込広告・チラシ
広報誌
丸瀬布町広報誌
△(じゃらん・
×
△(北見管内)
タブロイド版「やまなみ」
きままいい旅)
自社 HP
ⅰモード対応
予約機能
その他
○
×
○
⑫宿泊客集客チャンネル比率(平成 15 年度実績)
直客比率がほぼ 100%(内インターネット予約約1%)
⑬宿泊客地域別比率(平成 15 年度実績)
道内客:58%(内網走管内 46%、石狩管内 31%、その他道内 23%)、道外客:9%、団体等
により不明 33%
⑭宿泊客団体比率(平成 15 年度実績)
個人:67%、団体 33%(会社の慰安旅行が中心)
⑮外国人比率(平成 15 年度実績)
日本人:100%、外国人 0%
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(3)
網走支庁管内観光入込客数の概要
平成 15 年度下期の網走支庁管内の主要な観光地点の観光入込客数について、観光入込客数
の上位 10 ヵ所と管内のイベント等のうち、観光入込客数の上位 5 件はそれぞれ(表 3)、(表 4)の
通りである。
(表 3)平成 15 年度下期管内観光地点のうち、観光入込客数の上位 10 ヵ所(単位:千人、%)
順位
市町村名
観光地点名
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
留辺蕊町
美幌町
網走市
網走市
網走市
留辺蕊町
網走市
美幌町
女満別町
置戸町
道の駅「おんねゆ温泉」
美幌峠
おーろら
天都山展望台
博物館網走監獄
北海道きつね村
オホーツク流氷館
峠の湯びほろ
女満別空港
勝山温泉ゆうゆ
下期
(10∼3 月)
181.0
155.9
152.8
134.8
119.3
109.5
104.5
93.8
73.0
62.0
前年同期
前年度比
158.5
166.1
201.6
126.2
121.1
62.7
92.7
98.6
72.0
72.0
114.2
93.9
75.8
106.8
98.5
174.6
112.7
95.1
101.4
86.1
(表 4)平成 15 年度下期管内イベント等のうち、観光入込客数の上位 5 件(単位:千人)
順位
1
市町村名
網走市
2
3
4
5
紋別市
北見市
北見市
紋別市
名称
あばしりオホーツク流氷
まつり
もんべつ流氷まつり
北見冬まつり
北見菊まつり
もんべつ海産まつり
開催時期
2/7~2/11
2/11~2/15
2/7,8
10/15~11/3
冬季
参加者数
167.0
観光入込客
84.0
95.5
56.0
54.5
26.3
76.4
1.1
27.3
21.0
平成 16 年度上期の網走支庁管内の主要な観光地点の観光入込客数について、観光入込客数
の上位 10 ヵ所と管内のイベント等のうち、観光入込客数の上位 5 件はそれぞれ(表 5)、(表 6)の
通りである。
(表 5)平成 16 年度上期管内観光地点のうち、観光入込客数の上位 10 ヵ所(単位:千人、%)
順位
市町村名
観光地点名
1
2
3
4
5
6
7
美幌町
小清水町
留辺蕊町
網走市
網走市
東藻琴村
網走市
美幌峠
小清水原生花園
道の駅「おんねゆ温泉」
博物館網走監獄
天都山展望台
藻琴山温泉芝桜公園
オホーツク流氷館
上期(4∼9
月)
997.1
447.8
329.2
245.8
206.6
179.7
150.9
16
前年同期
1018.5
467.4
346.9
284.1
225.6
189.2
161.1
前年度比
97.9
95.8
94.9
86.5
91.6
95.0
93.7
札幌国際大学
8
9
10
女満別町
留辺蕊町
上湧別町
150.0
138.8
132.6
女満別空港
北海道きつね村
チューリップ公園
173.0
148.0
142.7
86.7
93.8
92.9
(表 6)平成 16 年度上期管内イベント等のうち、観光入込客数の上位 5 件(単位:千人)
順位
1
2
3
4
市町村名
紋別市
東藻琴村
上湧別町
滝上町
5
北見市
名称
もんべつ観光港まつり
芝桜まつり
チューリップフェア
童話村たきのうえ芝桜ま
つり
北見ぼんちまつり
参加者数
216.0
158.0
136.2
135.0
観光入込客
172.8
145.0
135.2
135.0
前年度比
109.1
92.9
95.2
103.8
217.0
41.0
91.1
丸瀬布町の観光入込客数の概要は(表 7)、(表 8)の通りである。
(表 7)平成 15 年度下期丸瀬布町観光入込客数
観光客入込客数総数
15 年度 前年度
前年度
下期
下期
対比(%)
28.9
33.3
86.8
(内訳)日帰り客
15 年度 前年度
前年度
下期
下期
対比(%)
17.2
27.2
63.2
(内訳)道外客
15 年度 前年度
下期
下期
1.4
1.7
(内訳)宿泊客
15 年度 前年度
下期
下期
11.7
6.1
前年度
対比(%)
82.4
前年度
対比(%)
191.8
(表 8)平成 16 年度上期丸瀬布町観光入込客数
観光客入込客数総数
16 年度 前年度
前年度
上期
上期
対比(%)
133.6
134.2
99.6
日帰り客
16 年度 前年度
前年度
上期
上期
対比(%)
114.1
112.1
101.8
(内訳)道外客
16 年度 前年度
上期
上期
6.6
6.7
(内訳)宿泊客
16 年度 前年度
上期
上期
19.5
22.1
前年度
対比(%)
98.5
前年度
対比(%)
88.2
(単位:千人)
(内訳)道内客
15 年度 前年度
前年度
下期
下期
対比(%)
27.5
31.6
87.0
宿泊客延数
15 年度 前年度
前年度
下期
下期
対比(%)
12.9
6.7
192.5
(単位:千人)
(内訳)道内客
16 年度 前年度
前年度
上期
上期
対比(%)
127.0
127.5
99.6
(内訳)宿泊客延数
16 年度 前年度
前年度
上期
上期
対比(%)
21.6
24.6
87.8
3.ブランド・マーケティングの観点からのマウレ山荘活性化の方策
(1)
ブランド・マーケティングとは
ここではブランド・マーケティングを、「顧客に対して提供する価値を基に、顧客との関
係性の強化を図り、新たな価値の提供を見出そうとするアプローチ」と定義する。ブラン
ド重視の背景には、次のような現状がある。ひとつは、競争の激化により値引きに類するプ
17
札幌国際大学
ロモーションの施策が行われ、それによりこれまでのブランドの価値が低下し、価格競争に限界が
起こっていることであり、もうひとつは、数々のプロモーションの施策が「話題性」重視で、顧客が有
するブランドイメージの一貫性が図りにくくなっていることである。ブランド・マーケティングの概念を
図に表すと(図 1)のようになる。
(図1)ブランド・マーケティングの概念図
ブランド基本価値
(実現したいこと)
ブランドの顧客の特定
強みとなる自社資源
顧客が得る価値
(求めていること)
自社の事業活動
事業化領域
(実現できること)
多くの価値を顧客に提供するには、相対的な差別化を行う必要があり、そのためには競争力が
必要となる。旅行の形態が個人客や小グループが主体となり、人によって求めるものや重視するも
のが異なってきており、より一層顧客満足度を高め、常に競争相手より勝る顧客志向が必要とされ
る。また、リピーター率の向上には、施設(ハード)のみならず、サービス(ソフト)の改善が必要であ
り、価格に見合ったサービスの提供が望まれる。
18
札幌国際大学
(2)
ブランド・マーケティングの検討
分析の手段には、顧客・自社・競争相手の観点から考察する「3C 分析」や、自社の強み・弱み、
自社にとっての機会・脅威の観点から考察する「SWOT 分析」などがある。自社の強みを従業員に
質問すると、回答がまちまちになることがあるが、自社の強みや顧客満足度の向上に関して全員で
考えることが大切である。顧客満足度調査については次のような点に留意したい。
・ 客室にあるアンケートの回収率は極めて低いので、チェックアウト時に全ての顧客に調査協力
を依頼する。
・ 支配人が従業員と随時面談を行い、生の声を拾う。
・ 定例の報告会を開催し、問題点が発生すればすぐに対応を考えるようにする。
・ 顧客満足度調査の各分野の相関を調べ、どの分野の不満が全体的な不満(低い満足度)に
つながるのかを確認する。
・ 顧客に指摘された点について、改善後に情報公開する。(不満が改善された場合、リピーター
となって戻ってくる場合がある。)
・ 業務マニュアルを策定し、社員全員が一定レベルの応対をできるようにする。
・ モニター宿泊を定期的に実施し、目標の点数化により従業員の士気を高める。
(3)
ブランド・マーケティングの実施
(第 1 段階)約束されてきたブランドの基本価値を確認する。
(第 2 段階)顧客戦略の立案を行う。
(第 3 段階)競争力のある戦略的なアイデアを策定する。
(第 1 段階)約束されてきたブランドの基本価値の確認
考察、確認する内容は次の通りである。
① ブランドが対象とするロイヤルユーザー
② ブランドが持つ価値と顧客に対する約束
③ ブランドの醸し出す雰囲気
④ ブランドから感じられる感覚や気分
⑤ ブランドから得られる物理的・機能的な効用
(第 2 段階)顧客戦略の立案
社内に蓄積している顧客データや消費者調査データを活用し、製品(サービス)のカテゴリーに
おけるニーズを把握すると同時に、顧客がブランドに対して感じている価値観を特定する作業を行
い、顧客について把握する。顧客の基本属性や価値観と消費者行動の相関を以下の点に留意し
て検証する。
・ ブランドの利用者は誰であるか?
・ 年齢、性別、ライフスタイルは?
・ ブランドの売上は特定の顧客に依存しているか?
・ 一人当たりのブランド購入量や購入頻度に差はあるか?
・ 自社製品(サービス)のヘビーユーザーの特徴は?
19
札幌国際大学
・ 自社製品(サービス)の選択理由は何か?
消費者調査においては、定性調査と定量調査がある。定性調査においては、購買経験、購買
場所、動機、目的、重視ポイント、利用ブランド、満足・不満足な点、情報接点などの購買実態や、
知名度、イメージ、好きあるいは嫌いな点、購買傾向の程度などのブランドへの態度や、選択する
あるいはしない理由、継続の意向、感想などのブランドへの評価を行い、回答を一覧にし、ブランド
に対する態度や行動に影響を与える要因毎にグルーピングして、評価属性を導き出し、それらをま
とめて要約した価値を抽出する。定量調査においては、約束した価値の重視度合いや、自社や競
合ブランドにおける約束した価値の評価や、自社ブランドに対するロイヤルティの程度によって顧
客をグループ化する。
投資効率を判断するには、顧客行動のみの CRM データだけでなく、マインドレベルのデータを
組み合わせて((図 2)を参照)、潜在/既存や行動/意識などのマトリックスで検討する必要があ
る。
コミットメント
(図 2)CRM とブランド・コミットメントのマトリックス
認知しない→
認知理解する→
好意を持つ→
愛着を持つ→
非認知層
残留層
ファン層
拒否層
ライト層
コア層
↑
↑
↑
いつも利用
時々利用
たまに利用
カテゴリー消費量(CRM)
憧れ層
↑
全く利用せず
(第 3 段階)競争力のある戦略的なアイデアの策定
顧客層をセグメントに分けたうえで、以下の点に留意してロイヤルティを高めるべき層はどこかを
検討し、どのサービス品質を向上させれば顧客満足度の向上につながるかを分析し、その顧客層
の満足度向上に努める。実際には顧客グループの規模や成長の可能性、自社のブランドのシェア
向上の可能性やマーケティング施策の効率性、投資収益性、資源や技術力の観点から実現可能
性を検証して、総合的に勘案する必要がある。
・ どの顧客に対して、どのような戦略を実行するのか?
・ この顧客が期待している価値は何か?
・ この価値を提供することにより、顧客とブランドの関係はどう変わるか?
・ 競合との差別化を図るためのポイントは何か?
・ 差別化を表現するための具体的な行動は何か?
ブランドの基本価値と顧客戦略をベースに戦略的なアイデアの創出を行うわけであるが、まず、
次のような「問題点と課題の分析」を行なうことから始める。
・ 直面する問題点(例として「○○が(必要だが)できていない」)と課題(例として「○○が(必要
だが)できるか」)を洗い出す。
・ 問題点と課題をグループ化して、下位の課題が上位の課題を解決するための必要条件になる
20
札幌国際大学
ように整理する。
次に以下の点に留意しながら「ヒストリーの分析」を行なう。
・ 事業の原点(創業の理念やエピソード、創業当初の顧客像など)
・ 事業の変曲点(事業環境変化での対応、製品やサービスの拡大、ターゲット顧客の変更、成
功した製品やサービス、成功したキャンペーンなど)
売上高は客数と客単価の積であるが、客数に関してはどのチャンネルが有効か、客単価につい
ては、商品の種類に応じた価格の差を考えておく必要がある。
そして、事業活動の環境要件と基本的な構造を理解すべく事業シミュレーションを行う。ブランド
による優位性は決して永続的なものではなく、事業環境の変化に従いブランドの価値も変動する。
いかに商品ブランドを位置づけ、コーポレートブランドの価値を高めていくか、ブランド戦略には基
本価値を守るという側面と、技術とビジネスモデルの革新を通じてブランドを活性化する側面の両
方が必要となる。
(4)
ブランドに対する顧客接点の具体的な方策
売り上げの拡大とマーケティング投資の効率化を通じた利益率向上を実現するには、ブランドが
提供する価値の伝達(情報)と接点(体験)に対する重点投資が必要となる。ここで言う「情報」とは、
広告、パブリシティ、情報提供、プロモーション、社会活動などを指すが、具体的な方策は以下の
通りである。
(広告・パブリシティの活用促進)
・ 自治体との協力
・ 他の観光・宿泊施設との共同広告
・ 記事としての掲載
・ イベント情報の定期的な発信
(インターネット対策)
・ インターネット等での直接販売
・ 損益分岐点を基準に、季節と曜日を勘案して値引きの限度額を明示し徹底する
・ 内容の充実(最初の 3 秒間で印象づける)
・ 定期的なメンテナンス(新着情報、期間限定プラン、季節料理、イベント情報等)
・ 検索エンジンの強化(定期的にアクセス数とヒット率を集計)
・ 近隣の観光情報、特産品情報、交通機関時刻表情報の掲示
・ 宿泊旅行の日程が組めるコンテンツ
また、ここで言う「体験」とは接客、購入(利用)、アフターサービス、顧客サービスなどを指すが、具体的
な方策は以下の通りである。
(コンセプト改革)
・ 施設のイメージやストーリー性がハード・ソフトから伝わってくるか
・ コンセプトあるいは、マウレ山荘の特性であるという、①温泉、②食事、③何もない静けさとリン
クしたイベントの実施
21
札幌国際大学
・ 丸瀬布町の優位性(都会の子供を対象とした昆虫採集イベント、鉄道ファンを対象とした SL イ
ベントなど)を生かしたイベントの実施(イベント実施の際のスタッフ不足は大学生のインターン
シップ等を活用)
(顧客ニーズ多様化への対応)
・ アメニティを中心に顧客がサービスを選択し、それに応じた料金体系
・ 顧客が選択できる食事プラン(段階設定し、料理を追加)
・ 顧客に喜ばれるメニューは何か調理場以外の意見も活用
・ 適切なサービス提供とホスピタリティ(特に、リピーターとなっている顧客への対応)
・ 遠距離来館者への割引施策
(地元客の確保)
・ 通常料金を併記することにより割安感を強調
・ 日帰り客・入浴客の住所録への記入依頼、宿泊割引券の配布
・ 紹介特典
・ 地域独自の法事プラン
(館内消費の底上げ)
・ 売店の販売強化(営業時間延長、POP 広告、部屋付け対応、特産品通信販売)
・ バー営業によるドリンク・デザートサービス
・ チェックイン時のオプショナルメニューセールス
・ 接客係のさりげない飲料セールス
・ チェックイン時、チェックアウト時の優待券配布
22
札幌国際大学
STUDENTS’ SAGGESTIONS
Ⅲ 部
(1)
(2)
学生の提言編
マウレ山荘の現状と対策 −内部環境の改善−
マウレ山荘プロジェクト
23
札幌国際大学
マウレ山荘の現状と対策 −内部環境の改善−
札幌国際大学観光学部観光学科 3 年
五十嵐ゼミナール A 班
今回私達はマウレ山荘に実際宿泊し、調査し、検討した結果、今後マウレ山荘の大いなる発展の
ためにはこのままの状態ではいけないと考えた。そこで今回は内部環境から改善できる点をまとめ、
いくつか提案したいと思う。
1.マウレ山荘の現状
まず、マウレ山荘の実態を把握するためマウレ山荘の現状を列挙してみた。まだこの他にもあっ
たが、その中から内部環境のものを選んだものである。
<強み>
・地産地消の料理 → 地元で採れたギョウジャにんにくや、その他山菜を使った料理
・豊富なアメニティグッズ
・源泉かけ流しのお風呂 → 特別室やコテージには源泉かけ流し風呂がある
・夜中に大浴場を使用できる → 午後 12 時から翌 9 時までの入浴が可能
・大人数で泊まれる木造のコテージ → 5 人用、8 人用と大人数で泊まれる
・雰囲気が良い → ロビーの暖炉などによって洋館を感じられる
・送迎サービスがある
このような強みはこのまま伸ばしてほしいので、弱みに注目したいと思う。
<弱み>
・経営方針が不明瞭
・コンセプトが統一されていない → スコットランド風の建物にもかかわらず、和食など箸で食べら
れる料理を主体としている
・魅力的な宿泊プランが少ない
・広告宣伝活動が少ない → 地元の折り込みチラシやじゃらん、HP などに広告を出しているが、
道内または管内に留まっている
・地元客が少ない → 近くにあるやまびこ温泉にお客様を取られている。これは入浴料金が少し
高いためだと思われる
・食事が冷めている → 朝のバイキングでは、冷たくなった料理がそのまま置いてあるなどした。ま
た、バイキングの担当従業員が1人しかいなかったので、料理の差し
替えが出てくるのも遅かった
・売店の営業時間が短い
以上のようなことがあげられる。では次に私達の考える理想について述べることにする。
24
札幌国際大学
2.理想
理想は、2つある。まず1つめはコンセプトを明確にすることによって、今後の方向性を確立して
いくこと。2つめはコンセプトに沿ったプランやイベントを展開していくことにより冬季の集客数をアッ
プさせたいということである。
3.理想と現実のギャップ
私達の理想とマウレ山荘の現状には大きなギャップが生じる。自然の中にあるという最高の条件
に立地し、一つ一つの素材は強みとしているが、コンセプトや経営方針、建物などを総合的に見る
と、効果は弱まると考える。そして、コンセプトの統一が不充分であるなどから、従業員のサービス
にばらつきがある。その結果として理想とのギャップが起こる。これらのギャップを解消するため、5
つの課題を設定し、今後の対策を考案した。
4.課題
①「コンセプトを明確にする」
②「閑散期の集客アップを図る」
③「魅力的なプランを企画する」
④「レストラン対策」
⑤「リピーターの確保」
以上の5点である。この課題は先程、「マウレ山荘の現状」のところで挙げられた弱みの中から私
達が考え、早急に改善が必要と思われるものを5つに絞ったものである。ではこれら5つの項目に
ついて詳しく説明する。
(1)コンセプトを明確にする
マウレ山荘の HP、マウレメインによるとマウレ山荘のコンセプトを次ぎのようにうたっている。「北の
大地のぬくもりが、憩いと安らぎをお約束いたします。スコットランド風リゾートホテル、マウレ山荘」と
いった感じである。このようにマウレ山荘はスコットランド風のリゾートホテルと題し、「スコットランド」
を売りにしているが、考えてみるとスコットランドの要素は青い三角屋根に白い壁といった古城的な
建物と、ロビーの内装の一部くらいでその他には何もない。さらに、スコットランドといってもイメージ
がわきにくいと思わないだろうか。
そこで私達はコンセプトを一転して、「大自然にたたずむ小さな洋館」をコンセプトとしてアピール
してはどうかと考えた。このコンセプトはもちろん全従業員に定着させることが更なる課題となる。コ
ンセプトの統一によって食事や内装などを統一し、なお一層の「非日常」を味わえる空間を作るとい
うものである。
(2)閑散期の集客
冬季の集客数が少ないので、道外への情報発信と地元客の集客を増やす。地元発信というのは、
冬の網走管内への道外客入り込み数は 4,997,400 人と言われる。また、丸瀬布への入り込み客数
は 15 年度 163,000 人、うち道外 8,000 人、道内 155,000 人となっている。マウレ山荘は道外客より
も地元客の集客に目をつけているが、このように決して少なくない道外客を見逃してはいけないと
25
札幌国際大学
言うことを認識してもらいたい。「マウレ山荘」のことを知っている人はどのくらいいるだろうか。恐らく
ごくわずかであろう。これらの人に向けてもっとマウレ山荘をアピールしていくことが大切である。
しかし、何事にも身近な人に愛されるものでなければうまくいかない。地域に根付いたものでなけ
れば成長はありえず、道外の集客を図る中オホーツク圏にまで渡る広範囲の地元客にも目を向け
ることが大切である。
ここからは余談だが、このように地元との協力が大切になっているということで、よさこいチームを
結成して団結力を高めると同時に丸瀬布町とマウレ山荘の名前を売ることもできるのではないかと
思う。よさこいチームの名称は「丸瀬布町&舞うレー」というのはどうだろう。
(3)魅力的な宿泊プランを企画する
<今あるプラン>
・なべプラン
・中華プラン
・カップルプラン
etc…
今あるプランは、他のホテルでも行っているようなものなので、これをやめて以下のプランを提案
したい。
<提案するプラン>
・秋の紅葉狩り
・冬の夜空の天体観測
閑散期の対策
・雪中スポーツ
・大人数での宿泊可能な合宿
・ペットと一緒 → コテージはペットと泊まれるので、これをプランとして強調することによって、ペッ
トを飼っている人々を対象に売り込む戦略である。
・体験教室 → 昆虫採集や木を使って工作する教室など地元の特徴をいかした教室を開くもの
である。
(4)レストラン対策
これは改築するということではなく、館内になる2つのレストランを使い分けるということである。
①レイラ
高級料理:丸瀬布自体に高級なレストランがないので、珍しい料理を食べたいという地元をターゲ
ットとする。
郷土料理:地元でよく食べられている料理を提供する。
オーダーメイド料理:山菜取りなどで採った食材を持ち込んで調理をする。
シニアメニュー:マウレ山荘の客層で 40 代以上が多いことと、丸瀬布町自体高齢者が多いというこ
とで、シニアメニューを作るべきだと思う。これは 50 歳以上の人々をターゲットにしたもので、低カロ
リーでヘルシーなメニューである。
26
札幌国際大学
②パシパ
広く一般に食べられている料理を提供する。〔和食・洋食・中華〕
(5)リピーターの確保
まず、リピーターを増やすために、①サービスの質の向上と差別化 ②イベントを行うという2点を
あげてみた。
(具体的な方策)
・お客様を名前で呼ぶようにする
・夏の宿泊客に、冬(10 月∼3月)の宿泊優待券を渡す
・紹介特典をつける
・冬ならではの企画
・ストーリー性のある企画
「冬ならではの企画」とは、例えば氷のキャンドルで道を作る、かまくらの中での食事をするなどで
ある。「ストーリー性のある企画」とは、夏に行った企画とつながりを持たせる企画である。例えば夏
のうちに花を押し花にする教室を開いて、冬にはその押し花を使って氷のキャンドルを作る。そして、
イルミネーションにするという企画である。
5.まとめ
・コンセプトを明確にする
・マウレ山荘のオリジナリティを高めることにより、他の宿泊施設との差別化を図る
・イベントを取りいれたプランを作る
このような点からコンセプトと現状のギャップを解消し、改善していけるのではないかと考える。
27
札幌国際大学
マウレ山荘プロジェクト
札幌国際大学観光学部観光学科 3 年
五十嵐ゼミナール B 班
マウレ山荘活性化に対する、私達の班の発表の結論は、閑散期である冬季に主に団体客を取り込
み、稼働率を上げ、道内団体客だけではなく、道外団体客にも目を向けるというものです。その一
例としては、旅行代理店に売り込み、道東ツアーなどに組み入れてもらうことと、口コミの利用者に
より、丸瀬布の知名度が上がり集客に繋がるのではないでしょうか。
マウレ山荘の利用客の現状は、高野支配人から頂いた資料からは、利用客地域別比率では道
内客が大半を占め、団体比率では大半を個人客が占めています。また、利用客層は通年で 40∼
50 代の中年層、特に夏休み期間中は家族連れに利用されています。マウレ山荘の利用客は夏季
に集中し、冬季は低調です。
次に丸瀬布町の観光資源についての感想を述べたいと思います。温泉は広範囲(網走管内)で
見てみると他の温泉地ほど有名でなく、ロケーションについては、自然は豊かだが同じ風景が続き
感動がありません。SL 機関車は北海道遺産に選ばれましたが、知名度は低く、魅力も充分とは言
えず即観光の起爆剤にはならないのではないでしょうか。木材加工品は私達がマウレ山荘を訪れ
て初めて知ったように、特産物として知る機会がなかなかありません。山彦の滝や太平高原牧場は、
知名度が低く、観光バスの経由地にはなっていません。
つづいて、マウレ山荘に宿泊してみての感想です。温泉は、やまびこ荘と客を二分しています。
マウレ山荘の利用客は地元客が中心ですが、遠方や海外からの利用客が少ないと思います。コテ
ージは、実際に泊まった学生からの感想を聞きますと、本館と離れているため、入浴・食事に不便
を感じたということでした。施設は、スコットランド風というテーマ性から見ますと、概観と内部にギャ
ップが生じているように思います。また売
店で販売されている地元農家の作ったア
イスクリームですが、これはホテル利用者
しか知ることがなく、もったいなく思いま
す。
では、この状況から集客に繋げるには
春∼夏期
どのようにしたらよいのか、いくつかの提
案をしたいと思います。
魅力的な観光資源として、私達が注目
冬期
したのは山彦の滝(右図参照)です。冬季
になりますと、夏とは違った見事な氷柱を
持つ素晴らしい景観になります。山彦の滝
への道は 11 月下旬から通行止めになってしまう様ですが、このような魅力的な冬の資源があるの
に生かせないというのはもったいない気がします。夏と冬とでは違った景観をみせる観光資源、こ
れは新たな価値の発見ではないでしょうか。
閑散期である、冬季の集客を図るために、周りから注目を集めるイベントを行ってみてはどうかと
28
札幌国際大学
思い、クリスマス期間中のイベントについて考えてみました。
まず、現在館内に展示している絵の製作者である障害者の方々にクリスマスの絵を描いてもらい、
それを展示します。これは絵だけではなく、彫刻品や美術品なども含みます。クリスマス期間だけで
はなく、季節の移り変わりを絵で表現することによって訪れたお客様の目を楽しませ、地元のお客
様にとっては小さな美術展感覚を味わっていただくことが出来るのではないでしょうか。次に、暖炉
にツリーの飾りつけなどを行うと、暖炉とスキー板などの装飾によってクリスマスの雰囲気が一層引
き立てられると思います。スコットランドの色合いを高めるには、「スコットランドバンズ」というパンを
提供してはどうでしょうか。また、個人客に対して送付する DM をクリスマスカードで送り、体験プラン
に、丸瀬布町の特産物である木材を使ってのオーナメントや木のおもちゃ作りをメニューに用意し
たり、丸瀬布町の木材で作られたオーナメントの販売を行なうのはどうでしょうか。これは、売店に木
材加工品が現在でも販売されており、作りも凝っていて、その加工技術があればオーナメント作り
にも期待が持てると思います。地元乳製品を使ったお菓子や飲料の販売は、「地産地消」にもなり
ますし、バーカウンターにドリンク類のディスプレーやケーキのショーケースを配置すれば、注目を
集めて館内の売り上げにつながるのではないでしょうか。
また、冬季に使われていないパークゴルフ場とそこま
での道のりを使ったイベントを考えてみました。こちらは
クリスマス期間を過ぎ、華やかなムードから落ち着いた
雰囲気になった 1∼2 月のイベントとして考えました。言
葉で言ってもなかなか想像がつかないと思いましたので、
こちらの 2 つの画像を参考例としてあげさせて頂きま
す。
丸瀬布町の木を利用して、イルミネーションで彩り、マ
ウレ山荘からパークゴルフ場の道のりに「光の道」を作る。
これは軽井沢の画像を見ていただければ想像がつくと
思います。また、身近な例で言いますと札幌市の札幌駅
ホワイトクリスマスin軽井沢(長野県)
前通りの街路樹に彩られたイルミネーションを想像してい
ただければと思います。アイスキャンドルを作り
マウレ山荘からパークゴルフ場までの道のりに光を灯します。
これは、長野県諏訪市の画像を見ていただければと思い
ます。アイスキャンドルでのイベントは今や道内各地で見
られますが、代表的なものと致しましては小樽市の「小樽
雪あかりの路」だと思います。冬季パークゴルフ場にかま
くらを作り、中で温かい料理を提供する。これは元々マ
ウレ山荘の冬季プランの中にあります「鍋プラン」に組み
入れて見てはどうかと思います。また鍋料理で餅をいた
だくのであれば同じく既存のプランの「もちつきプラン」
にも組み入れは可能だと思います。イルミネーションの
中を歩いて行かれるのも趣があると思いますが、マウレ
山荘とパークゴルフ場の間に馬車を運行させ、歩くのと
29
諏訪アイスキャンドル(長野県)
札幌国際大学
は違った感じを得ることができ、心に残る思い出になる
のではと思います。
全体的にマウレ山荘は周りから注目させるための宣伝活動をもっと積極的に行う必要があると思
います。旅行代理店への宣伝活動を行いツアーの中に組み入れたり、ホームページへの掲載の
強化が挙げられます。マウレ山荘のホームページにある空室状況は毎日更新され、とても感心した
のですが、マウレ山荘の詳細を知るような情報が少なく、他の宿泊施設と比較して物足りなさを感じ
ました。北見管内の折込チラシは継続し、他に雑誌への掲載(特にイベント紹介の特集)や、駅構
内にパンフレットを設置してJR利用客からの集客に繋げてはいかがでしょうか。
全体的に、冬季利用客を見込むならば、まずは町おこしが必要だと思います。利用客に対して環
境を整えることが大切であり、地域がマウレ山荘に対して関心を持たなければ何も始まらないでしょ
う。地域住民がマウレ山荘や丸瀬布町をもっと広めるという志を持ち、ともに課題に取り組む姿勢を
持たなければならないと思います。そして、従業員はホスピタリティの向上に努めるだけではなく、
現状に満足しないで常に新しい取り組みを打ち出し、課題を改善していくことが重要であると思い
ます。高齢者の方が多い丸瀬布町において、イベント等の実施に際してスタッフが不足するのであ
れば、私達のような学生をインターンシップ等で活用してみてはいかがでしょうか。まずは、丸瀬布
町の知名度を上げ、マウレ山荘の集客につなげていくことが必要に思います。
30
札幌国際大学
Materials
第Ⅳ部
資料編
31
札幌国際大学
夏季 アクティビティ整備モデル
1.
最近の博物館は、かつての展示概念から脱却して、新しいコンセプトによって展示されている。
① 参加型の展示
② 体系的に展示するのではなく生態学的な世界を作って示す
③ 多世代に楽しめる展示方法
しかし、最近は展示から実際の場所で観察する傾向へと変化している。こうした、意識によって街
づくりを進めている町に、山形県朝日町がある。殆ど集客のない農村地域が日本のエコ・ミュージ
アム発祥の地である。象徴としての空気神社は、非常に有名である。周辺には、キャンプ場、自然
観があり、自然観察の拠点として位置づけられている。役場周辺には、創遊館が造られ、図書館、
展示場、ホール、があり、エコ・ミュージアムの活動拠点となっている。
丸瀬布にも同様な施設が点在しているが、ネットワーク性と求心性の配慮がかけている点が指摘
される。
朝日町の事例
町
キャンプ地
創遊館
自然観
象徴としての空気神社
自然観併設キャンプ場
32
札幌国際大学
調査メンバー
地域観光資源活性化メンバー(Ⅰ部、Ⅳ部担当)
ディレクター 札幌国際大学観光学部
スタッフ
教授(工博) 中鉢令兒
札幌国際大学大学院観光学研究科
2年目 葛西洋三
1年目 鈴木健太郎 田上耕作 黄奎達
マウレ山荘活性化プロジェクトメンバー(Ⅱ部、Ⅲ部担当)
ディレクター
スタッフ
(A 班)
札幌国際大学観光学部
専任講師
五十嵐元一
札幌国際大学観光学部観光学科 3 年
逢坂佳恵、沖田亘、小篭美里、長土居侑太、橋谷真成、
平井嘉一、白惠炅
(B 班)
泉祥子、河野絵美、斉藤一恵、田中綾香、田村麻由、
泊佳希、保木英里、森田昌孝
本調査は、札幌国際大学観光研究センターの補助を受けています。
33