佐久総合病院 後期臨床研修プログラム (平成 29 年度) 心臓血管外科

佐久総合病院
後期臨床研修プログラム
(平成 29 年度)
心臓血管外科
1
地
域
医
療
部
心臓血管外科後期研修プログラム
プログラム責任者:心臓血管外科部長 竹村隆広
1.概要と目的
心臓血管外科は当院外科の一グループとして、長野県のほぼ 1/4 にあたる東信地区全域を診療圏とし
ています。人口は多くありませんが、心臓血管外科施設集約化の結果、診療圏で唯一の施設として医
療を行っており、心臓大血管手術約 200 例(胸部ステントグラフト治療、経皮的大動脈弁置換術を含む)、
腹部大動脈瘤、末梢血管症例 120 例程度の手術を行っています。スタッフは現在常勤医師 7 名(心臓
血管外科専門医 4 名)で 1 名が海外留学中です。
手術手技としては各手技において低侵襲手術を積極的に導入しており、まだ導入施設の少ない 3D 内
視鏡も完備し、手技によって完全内視鏡下での手技を施行しています。冠動脈バイパス術(CABG)で
はオフポンプ冠動脈バイパス術が 90%以上で、大伏在静脈採取は研修医が内視鏡的に採取しています。
また、4年前より左小開胸の MICS CABG を導入しており、内胸動脈採取は 3D 内視鏡を用いて完全内
視鏡下に施行しています。僧帽弁疾患は基本的に右小開胸の MICS で施行し、心内操作は完全内視鏡下
に施行しています。変性性疾患はほぼ全例に形成術を施行しています。弁膜疾患で最も症例の多いの
は大動脈弁疾患ですが、症例に応じ研修医も執刀の機会があります。また、最新の放射線装置を備え
たハイブリッド手術室があり、2015 年より経皮的大動脈弁移植術(TAVI)を開始し、年間に 30 例程
度の手術数があります。大動脈疾患に関しては上記ハイブリッド手術室を駆使し、胸部、腹部ともに
ステントグラフト治療を積極的に施行しています。
当院の大きな特徴としては、補助人工心臓治療および組織バンクの運営が上げられます。平成 22 年
より左室補助人工心臓(LVAD)治療を開始し、現在東京大学からの支援をいただき、主に植込型 LVAD
治療を1年に2例程度、多職種チーム医療で行っています。また、他施設で少ない組織バンクを院内
に有しており、ヒト同種弁、同種大動脈等の採取、凍結、保存、ならびに使用を行い、ホモグラフト
を使用した大動脈弁置換術、Ross 手術などが可能です。また、当科は循環器内科と密接に関連し、ハ
ートチームを形成しています。今後、循環器診療は外科と内科の垣根が下がりオーバーラップしてい
くことが予想されます。外科においてもカテーテル操作等は今後必須の時代であり、後期研修医期間
に循環器内科を 6 ヶ月間ローテーションするコースとなっています。また循環器病センターとして、
多職種でのチーム医療を従来以上に推進し、大学病院等とは異なる研修が可能と考えます。
また、重症心不全治療、弁膜症治療、ステントグラフト治療のそれぞれの分野で、日本をリードする
3名の先生に定期的においでいただき、指導を受けています。当科ではここ数年間に3名の後期研修
医が在籍していますが、教育としては研修医を中心に、定期的なウエットラボの開催、院内での講演
会や勉強会開催、学会への積極的参加、外科手技の評価方法の推進などを行っています。
2.目標
外科専門医取得のための消化器外科、胸部外科等の研修は外科グループ内で行い、第一段階として外
科専門医の取得を目標とします。また、併せて心臓血管外科医として必要な、診断、全身評価、術中・
術後の管理、心臓血管外科医としての基本的手術手技を習得し、3年間で簡単な人工弁置換術、腹部
大動脈瘤手術(ステントグラフト術を含む)、末梢血管手術などの術者になり心臓血管外科医としての
基礎を習得することを目標とします。
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3.研修内容
臨床部門
(1)1 年目
6 ヶ月間:心臓血管外科研修
・心臓血管外科医として診断の基礎、手術適応、全身評価方法等を取得する。
・開胸、閉胸、開腹、閉腹等の手技を取得し、手技の術者となる。
・手術の第2助手を行い、簡単な手術において第1助手を行う。
・末梢血管吻合等の手技を習得し、簡単な末梢動脈手術等を行う。
・腹部ステントグラフト術での内腸骨動脈コイル塞栓術および末梢動脈疾患血管内治療の助手、
術者を行う。
・下肢静脈瘤手術の第1助手を行い、簡単な手術では術者となる。
6 ヶ月間:消化器外科または胸部外科または循環器内科研修
・外科専門医取得のため、基本的知識、手技を取得する
(2)2 年目
6 ヶ月間:消化器外科または胸部外科または循環器内科研修
・希望に応じて循環器内科、麻酔科等での研修も可能。
6 ヶ月間:心臓血管外科研修または消化器外科または胸部外科または循環器内科研修
・通常の手術での第1助手を行う。
(心臓、腹部大動脈、ステントグラフトなど)
・人工心肺の装着手技を習得し、実施する。
・心房中隔欠損症などの簡単な心臓手術、腹部大動脈瘤手術、末梢血管外科手術、下肢静脈瘤手
術の術者となる。
・1 年目に引き続きコイル塞栓術、末梢動脈疾患血管内治療の術者等になり、本年内にステント
グラフト実施医を取得する。
(3)3 年目
心臓血管外科研修
3 年間のまとめとして、診断、適応、患者管理等を後輩に指導できる。
基本的心臓血管外科手術手技を安全に施行できることを目標とする。
・簡単な人工弁置換術、左前下行枝への冠動脈バイパス手技、腹部大動脈瘤(開腹、ステントグ
ラフト)の術者となる。
・緊急手術等への対応、他診療科とのマネジメントなどができる。
・左室補助人工心臓(LVAD)の管理、組織バンクでの組織管理などができる。
後期研修 1,2 年目での目標手術症例数(1 年間心臓外科に在籍の場合)
術者:20
血栓除去術::5
大腿動脈-大腿動脈
バイパス術:5
血管形成術
コイル:10
第1助手:20
開心術:5
大動脈瘤ステンド
グラフト手術:10
末梢血管:5
第 2 助手:80
開心術:50
胸部大血管:10
大動脈瘤ステンド
グラフト手術:20
腹部大動脈瘤
開心術:3
専門医取得点数にならないが、開閉胸、大腿動脈の露出・吻合はそれぞれ 30 例程度可能
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学術部門
1 年目:地方会での症例報告と同症例の和文報告
2 年目:日本胸部外科学会、心臓血管外科学会等の総会での演題発表
和文症例報告
3 年目:総会での演題発表と原著論文の執筆
その他研修内容
(1)ウエットラボ 1~2 回/月
(2)BEAT,YOUCAN を使用した OPCAB 吻合トレーニング
(3)循環器内科との合同カンファレンス
毎週 1 回
(4)麻酔科、多職種との合同カンファレンス 2 回/月
(5)循環器内科との勉強会
毎週 1 回
(6)海外学会参加費用への補助あり
研修責任者名
竹村隆広
研修責任者の役職
心臓血管外科部長、東京女子医科大学非常勤講師、東京慈恵会医科大学非常
勤講師、信州大学
臨床教授
医師数
7名
他科研修の可能性
可能
研修終了後の進路
希望により当科スタッフとなり、さらに専門的研修を続行することが可能。
また、東京慈恵会医科大学、東京女子医科大学等への進路が可能
関連施設
なし
関連大学医局
東京慈恵会医科大学
海外の関連施設
なし
4.専門医教育施設の認定状況
当院は、心臓血管外科専門医認定機構の認定施設となっている。
5.平成 27 年度学会発表件数
33 件:日本胸部外科学会定期学術集会,日本血管外科学会学術総会,心臓血管外科学会学術総会,
日本冠疾患学会学術集会 ほか
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