石油ビジネスについて 石油製品の多くは、製造者ごとの差異化が困難であり、また、連産品という特徴があります。 また、石油産業は装置産業であり、コスト削減には製油所の稼働率の向上が必要です。国内 石油製品需要は減少傾向にあり、それに対応するため、 原油処理能力の削減が進みました。 石油精製プロセス 精製過程のイメージ 比重 ナフサ留分 ガソリン 調合装置 改質装置 常圧蒸留 装置 (トッパー) 原油 軽 ナフサ ガソリン 灯油留分 灯油・ ジェット燃料 軽油留分 軽油 分解 ガソリン A 重油 分解装置 減圧 軽油 常圧残油 減圧蒸留 装置 分解 軽油 重油 調合装置 C 重油 潤滑油 製造工程 減圧 軽油 潤滑油 減圧残油 アスファルト 重 国内石油製品需要の推移 (百万キロリットル) 250 200 150 100 50 0 (年度) 重油 8 2001 軽油 2002 灯油 JXホールディングス株式会社 2003 2004 2005 ジェット/ナフサ Annual Report 2015 2006 ガソリン 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 (見通し)(見通し)(見通し) 出典:経済産業省・資源エネルギー庁 石油製品の収益構造 石油製品の収益は、以下の要素によっ て変動します。中でも、白油(ガソリン・ 灯 油・軽 油・A重 油)は販 売 数 量 が 大 きく、そのマージンが収益に大きな影 石油精製販売事業の収益変動要因 ① 数量・製品構成 ④ 固定費増減 ② 原油価格・製品価格・為替レート ⑤ その他 製油所で使用する燃料コスト 響を与えます。 白油マージン ③ 需給バランス 輸出品マージン 潤滑油などのマージン フォーミュラ品タイムラグ 在庫影響 卸売価格体系とマーケットの関係 石油製品の卸売価格は、原油価格やアジアの石油製品市況、国内の需給バランスなど、さまざまな要素を勘案して決定 されます。 海外 WTI 世界経済情勢 ブレント 世界需給バランス 投資マネー アジア需給バランス ドバイ、オマーン シンガポール 石油製品市況 世界の燃料油需給 (新興国が牽引) 石化品市場 輸出入動向(燃料油、石油化学品) 国内 小売価格 製油所稼働率 製品在庫水準 元売仕切 国内需給バランス (内需減少) 国内石油製品(ガソリン・灯油・軽油・A 重油) マージン 国内石油製品マージンは、原油処理能 (円/リットル) 15 平均 平均 12 2011年度 9 力 の 削 減 が 本 格 化した 2010 年 度に 2014年度 2012年度 2010年度 2013年度 大きく改善しましたが、その後、需要 平均 の構造的減少などにより、2013 年度に 平均 平均 は 2009 年度と同水準まで落ち込みま 2009年度 した。2014 年度は高度化法一次告示 平均 6 の対応を完了したことによりさらなる 能力削減が進み、マージンは改善し 3 ました。 0 2009年4月 2010年4月 2011年4月 2012年4月 2013年4月 2014年4月 2015年4月 JXホールディングス株式会社 Annual Report 2015 9 石油ビジネスについて エネルギー供給構造高度化法について 原油の重軽格差拡大や、石油製品需要の白油化といった環境認識の下で告示されたエネルギー供給構造高度化法の旧判 断基準は2014年3月末に期限を迎えました。 原油調達(シェールオイルの増産見込み) 、 (2) 国内の石油需要(ガソリンな 石油業界を取り巻く事業環境については、 (1) 各社の成長戦略(石化シフト、輸出強化、総合エネルギー企業化など) といった点で旧判断基 どの製品マージンの低下) 、 (3) 準施行時点から大きく変化しました。 こうした変化に柔軟に対応しつつ、 原油などの有効利用を促進していくため、 経済産業省は2014年7月末にエネルギー供給 構造高度化法の新たな判断基準を告示しました。 高度化法一次告示(2010年7月5日∼ 2014年3月31日) 高度化法二次告示(2014年7月31日∼ 2017年3月31日) 内容 内容 我が国の重質油分解装置の装備率を2013 年度までに13% 程度 我が国の残油処理装置の装備率を2017 年 3 月末までに50% 程度 まで引き上げることを目標として、石油精製各社は現状の装備率に へ引き上げることを目標として、石油精製各社は現状の装備率に 応じた3段階の改善率を達成することが義務付けられた。 応じた3段階の改善率を達成することが義務付けられた。 装備率の定義 装備率の定義 <分子> <分子> 残油流動接触分解装置、 残油熱分解装置、 残油水素化分解装置 残油流動接触分解装置、 残油熱分解装置、 残油水素化分解装置 流動接触分解装置、 重油直接脱硫装置、 溶剤脱れき装置 <分母> <分母> 常圧蒸留装置 常圧蒸留装置 重質油分解装置の装備率 = 重質油分解装置の能力 常圧蒸留装置の能力 残油処理装置の装備率 = 残油処理装置の能力 常圧蒸留装置の能力 改善率 改善率 国全体の装備率を10% →13% へ 国全体の装備率を45% →50% へ 各社の目標は以下の通り 各社の目標は以下の通り 計画提出時の装備率 目標改善率 計画提出時の装備率 目標改善率 10% 未満 10% 以上13% 未満 13% 以上 45% 以上 30% 以上 15% 以上 45% 未満 45% 以上55% 未満 55% 以上 13% 以上 11% 以上 9% 以上 目標達成に向けた対応 目標達成に向けた対応 <分子での対応> <分子での対応> 改良工 事や装置稼働率の向上 石油製品・石化製品の生産切り替え体制構築などによる改善や 石油の安定供給への配慮を要件として追加 10 <分母での対応> <分母での対応> 廃棄のみ(公称能力の削減は不可) 公称能力の削減も可 <事業再編促進措置> <事業再編促進措置> 親子会社または兄弟会社であればグループとして対応可 企業間共同対応の場合、 原油処理能力削減量の融通可、など JXホールディングス株式会社 Annual Report 2015 国内製油所と原油処理能力 * 数値は 2008 年 12 月末から2015 年 6 月末における処理能力の変移 単位: (千バーレル/日) 出光興産(株) ・北海道製油所 140→ 160 JX日鉱日石エネルギー (株) ・ 室蘭製油所 180→ 0 日本海石油(株) ・富山製油所 60→ 0 コスモ石油(株) ・堺製油所 80→ 100 東燃ゼネラル石油(株) ・堺工場 JX日鉱日石エネルギー (株) ・ 水島製油所 490→ 380 帝石トッピング・ プラント (株) ・ 頸城製油所 5→ 0 145 鹿島石油(株) ・鹿島製油所 274→ 253 156 コスモ石油(株) ・千葉製油所 大阪国際石油精製(株) ・ 大阪製油所 出光興産(株) ・ 徳山製油所 120→ 0 JX日鉱日石エネルギー (株) ・ 仙台製油所 220 115 極東石油工業(同) ・千葉製油所 175→ 152 出光興産(株) ・千葉製油所 西部石油(株) ・ 山口製油所 200 120 出光興産(株) ・ 愛知製油所 160→ 175 コスモ石油(株) ・ 坂出製油所 140 → 0 JX日鉱日石エネルギー (株) ・ 大分製油所 160→ 136 コスモ石油(株) ・ 四日市製油所 175→ 132 昭和四日市石油(株) ・ 四日市製油所 210→ 255 太陽石油(株) ・ 四国事業所 120→ 118 JX日鉱日石 エネルギー (株) ・ 麻里布製油所 富士石油(株) ・袖ヶ浦製油所 192→ 143 東亜石油(株) ・京浜製油所 185→ 70 東燃ゼネラル石油(株) ・川崎工場 335→ 258 JX日鉱日石エネルギー (株) ・ 根岸製油所 340→ 270 東燃ゼネラル石油(株) ・ 和歌山工場 170→ 132 127 南西石油(株) ・ 西原製油所 出典:石油連盟資料より当社加工 100 千バーレル/日 会社名 JXグループ *1 東燃ゼネラルグループ *2 出光興産(株) 昭和シェル石油グループ *3 コスモ石油(株) その他*4 日本合計 2008年12月末 1,891 836 640 515 635 417 4,934 2015年6月末 *1 1,426 698 535 445 452 361 3,917 差 –465 –138 –105 –70 –183 –56 –1,017 *1. 日本海石油(株)、鹿島石油(株)、大阪国際石油精製(株)および、水島製油所、鹿島製油所の コンデンセートスプリッターを含む *2. 東燃ゼネラルグループは極東石油工業(同)を含む *3. 昭和シェル石油グループは東亜石油(株)、昭和四日市石油(株)、西部石油(株)を含む (株) *4. その他は富士石油(株)、南西石油(株)、太陽石油(株)、帝石トッピング・プラント JXホールディングス株式会社 Annual Report 2015 11 石油化学品について 石油化学品の製造プロセス 石油精製 石油化学 輸入ナフサ 生産ナフサ ナフサ留分 接触改質 エチレン 石油化学用 ナフサ ガソリン 灯油 分解 プロピレン B-B 留分 LPG 重質 NGL 粗製軽油など 肥料用など 分解油 オフガス・ 分解重油 改質生成油 軽油 残渣油 接触分解 副生ガス 抽出・蒸留 重油 精留 芳香族 石油化学品の収益構造 石油化学品は、 種類によって価格決定方法が異なります。JXグループが主力とするパラキシレンやベンゼンは大手需要家と の交渉によって決まります。 ナフサ 東アジア市況に影響される ベンゼン パラキシレン ACP*(Asia Contract Price) 一般の 精製会社 付加価値 パラキシレン 毎月の先決方式 パラキシレン マージン トルエン エチレン プロピレン ナフサ市況、東アジア市況に 影響される * 大手メーカー(当社含む)、大手ユーザー間の価格交渉(個別 ・ 相対。 アジア需給を反映し、指標価格を決定。) 12 JXホールディングス株式会社 Annual Report 2015 キシレン ナフサ 原油 一般の 化学会社 CHECK 芳香族の主な用途とJXグループのプレゼンス アジア地域のパラキシレン需要 JXグループは芳香族を主力製品に据えており、うちパ ラキシレンの供給能力は年間 312 万トンを誇ります。 (百万トン) 40 ポリエステルやペットボトルの原料となるパラキシ +6% /年 30 レンは、経済成長を背景に、アジア地域で需要拡大が 20 見込まれています。 10 0 (暦年) 2010 2011 2012 2013 2014 2015 出典:当社推定 パラキシレン誘導品の主な用途 ベンゼン誘導品の主な用途 パラキシレン ベンゼン フェノール スチレンモノマー シクロヘキサン アルキルベンゼン ポリスチレン ナイロン繊維 (パンティストッキング) 合成洗剤 高純度テレフタル酸 TV の枠 ペットボトル ポリエステル繊維 カップ麺の 容器 最終製品であるポリエステル需要の拡大を背景に、パラキシレンマージンは高水準で推移してきましたが、足元では、最大 需要地である中国の景気動向への不安や、アジア域内でパラキシレン製造装置の新増設が予定されていることなどから、 一時的に軟調に推移しています。 (単位:ドル/トン) 平均価格 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 ACP* 903 1,103 1,119 1,020 999 1,162 1,555 1,510 1,401 1,105 対原油マージン 514 660 556 425 493 550 754 732 639 498 対ナフサマージン 389 511 351 309 369 388 585 583 486 353 * ACP 未決の月についてはスポット価格の平均値を採用 ($/トン) 2,000 1,500 パラキシレン (ACP) 1,000 対原油 PXマージン 対ナフサ PXマージン 500 0 (年度) 2010年4月 2011年4月 2012年4月 2013年4月 2014年4月 2015年4月 JXホールディングス株式会社 Annual Report 2015 13
© Copyright 2024 Paperzz