アジアからの生産物と輸出のための実用的手引き 4.食品安全と適性慣行の認証

アジアからの生産物と輸出のための実用的手引き
農産物輸出のための規則、規格および認証
A Practical manual for Producers and Exporters from Asia
FAO 2007
(仮訳)鹿児島大学名誉教授 岡本嘉六
目次
パート 1
輸出のための技術的規則と管理
社会的認証
商業上の品質と表示規則
公正取引
食品安全規則
SA8000
植物防疫規則
食品安全と適性慣行の認証
通関手続き
適性農業慣行(GAP)
特定のアジア太平洋諸国における輸入規則
適性製造慣行の認証
アジアにおいて輸出と品質を支える組織
パート 2
固有の食料品質の認証
自主的認証
地理的指標(GI)
認証についての疑問
ハラール認証
環境に係る認証
アジアにおける水産物の認証
有機農業
ISO 14001 認証
4.食品安全と適性慣行の認証
食品安全認証に対する要望の増大
ヨーロッパのスーパー マーケット・チェーンは、自分達への供給者が GLOBALGAP、
BRC および IFS などの民間の食品安全規格に対して認証されることを益々要求している。
それらの流通網は、多くの欧州諸国で生鮮食品小売の売り上げ高の 60%以上を占めている。
さらに、個々の小売各社は競合他社から自社製品を区別するためにさらに強力な品質要件を
供給者に課すことがある。
アジア市場でも同様に、食品の安全性に関するいくつかの最小限の認証が、地元のスー
パー マーケット・チェーンや地元の農産物加工会社によって要求され、それらの顧客は生
産者の製品を購入するため追加の品質要件を求めるだろう。アジアと国際市場の両方におい
て、農家と食品生産者は食品の安全性規格に対して認証を受けることを益々要求されるだろ
う。
この章は、食品の安全性と適性生産慣行のための様々な種類の自主規格を取上げる。適
正農業慣行 (GAP) のための規格から始める。これらの規格は、資材購入から出荷までの農
業生産工程を網羅することで農家に関連してくる。欧州において多くのスーパーマーケッ
ト・チェーンによって求められる自主規格である GLOBALGAP とともに、アジアで現在作
動している国や地域の GAP 規格を紹介する。本章は、適正製造慣行 (GMP) のための規格
-1-
を記述から始める。それらの規格は、食品を生産するため農産物を処理する農場に主に適用
される。
4.1 適正農業慣行 (GAP)
4.1.1 GAP の紹介
適正農業慣行 (GAP)とは何か?
適正農業慣行とは、「農場の工程において環境、経済、社会の持続可能性と取組み、そ
の結果として安全で品質の高い食品および非食料農産物をもたらす慣行」である(FAO
2003)。
GAP 体系、規格および規制とは何か?
適正農業慣行(GAP)体系、規格および規則は、一連の商品の農場段階における農業慣
行を成文化することを目指して食品業界、生産者団体、政府機関および NGO によって近年
策定された指針である。
GAP 体系、規格および規則はなぜ存在するか?
これらの GAP 体系、プログラムあるいは規格は、世界的な食品の安全と品質について
の懸念が高まっているため存在している。それらの目的は、とくに食品の安全と品質に関す
る取引と政府の規則要件の達成から、より特殊な要件や特定分野の市場まで様々である。そ
れらの目的は、食料供給網における生産物の安全と品質を確保する;食料供給網の統治を修
正することによって新しい市場の利点を掌握する;天然資源の利用、労働者の健康および労
働条件の改善;発展途上国の農家と輸出業者のため新しい市場機会を生み出すなど多様であ
る。
主な利点と課題は何か?
GAP 体系、規格および規則の利点は、食品の品質と安全性の改善、市場参入の促進、
許可されている農薬に関する最大残留許容量(MRL)やその他の汚染物質の危害に関する
不適合のリスクの軽減を含め、無数にある。GAP の実施に関連する主な課題には、生産コ
ストの増加、とくに記録の維持、残留検査と認証、ならびに情報とサポート業務の不十分な
利用が含まれる。
4.1.2 地域と国の GAP
4.1.2.1 GLOBALG.A.P.
2007 年 9 月 7 日に、EurepGAP は増大する国際的範囲を反映させるため社名を
GLOBALGAP に変更した。GLOBALGAP は、適正農業慣行の自主的な認証規格と手続き
を設定する民間部門の組織である。元々ヨーロッパのスーパーマーケット・チェーングルー
プによって設立された。GLOBALGAP は、生産者が採用する必要がある適正農業慣行を策
定することによって食品の安全性における消費者の信頼を高めることを目指している。
GLOBALGAP は、労働者の安全、健康と福祉および環境保全に関するいくつかの要件も含
んでいるが、その焦点は食の安全とトレーサビリティにある。GLOBALGAP は、出荷前の
-2-
規格であり、そのことは、認証した生産物が種子を植える前から農場を離れるまでの工程を
認証がカバーすることを意味する。GLOBALGAP は純粋に私的規格であることを心に刻ん
でおく必要がある。
GLOBALGAP は、これまでのところ、果物と野菜、刈取り作物、花と観賞植物、未焙
煎コーヒー豆、茶、豚、家禽、牛と羊、酪農、養殖(鮭)の GAP 規格を開発している。そ
の他の製品の範囲は開発中である(GLOBALGAP のウェブサイトを参照)。
主な要件は?
GLOBALGAP 規格は、生産者が完全な制御と監視のシステムを確立することを求める。
生産物は登録され、それらが育成された特定農場単位まで追跡調査することができる。
GLOBALGAP のルールは、土壌薫蒸剤と肥料の使用などの農場慣行については比較的柔軟
である。農薬貯蔵および残留農薬の制限に関しては厳密な規則がある。さらに、生産物が生
産された方法を記録して正当化することが重要であり、農場慣行について詳細な記録を保持
しなければならない。
認証を取得する方法は?
GLOBALGAP 自体は証明書を発行しないが、登録されている認証機関がそれを行うこ
とを許可している。まず、認証手順を達成する認証機関に連絡する前に、GLOBALGAP の
一般規則と該当する生産物の範囲の管理点を読むことを推奨する。GLOBALGAP の認証を
取得したい農家は、所定の費用を考慮しなければならない。一般的に、登録、検査、認証の
ために支払わなければならない。
個々の生産者および生産者グループの両方が認証を申請でき、その費用は選択した認証
機関と検査に費やす時間によって異なる。
認証機関によって課せられる認証の費用に加えて、生産者は認証を維持するための生産
者年間登録料も払う必要がある。
主な機会と制約
GLOBALGAP 認証を取得するには、生産者または生産者グループは農場の全ての活動
を追跡するため完全な管理システムを必要とする。
これには、管理と財政の十分な能力が求められ、したがって、要件を満たすためには大
規模な生産者がより容易である。
GLOBALGAP に認証された生産者は、GLOBALGAP 認証を要求する小売業者に生産
物を販売する時に利点もある。2007 年 9 月の時点で、GLOBALGAP は 35 の小売業者と食
品サービス加盟員を擁している(ヨーロッパ 34 と日本 1)。
ビジネス関係に焦点を当てた最小限の規格として、GLOBALGAP に関連した特別割増
金や製品表にはない。
4.1.2.2 ASEANGAP
ASEANGAP は、ASEAN 事務局(加盟国代表者)によって推進され、ASEAN 地域の
新鮮な果物と野菜の生産、収穫、収穫後の取り扱い期間における適正農業慣行のための規格
として 2006 年に着手された。ASEANGAP の目的は、ASEAN 域内の各国 GAP プログラ
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ムの調和を強化し、消費者のため果物と野菜の安全性および天然資源の持続可能性を高め、
地域的および国際的に果物と野菜の貿易を促進することにある。
主な要件は何か?
ASEANGAP は、以下をカバーする 4 つのモジュールから成っている。
● 食品の安全性
● 環境の管理
● 労働者の健康、安全および福祉
● 生産物の品質
各モジュールは、単独または他のモジュールと組み合わせて利用できる。このことは、
ASEANGAP の段階的実施、一つのモジュールから次のモジュールへ、個々の国の優先順位
に基づいた実施を可能にする。
認証を取得する方法は?
認証は、ASEAN 各国の当局によって行われる。
主な機会と制約
ASEANGAP は、生産物規格の調和を強化し、貿易を容易にすることを意図しているの
で、他の ASEAN 諸国への新鮮な果物や野菜の輸出を強化するため認証された生産者にと
って絶好の機会となる。発展途上の ASEAN 諸国のため、ASEANGAP には推奨される慣
行の体系とともに実施の指針とトレーニング資料が含まれているので、国の GAP の策定に
おいてベンチマークとして ASEANGAP を使用する機会がある。加盟国は、調和を達成す
るために ASEANGAP に対する国の GAP プログラムをベンチマークすることができる。
ASEANGAP の主な制約は、新鮮な果物と野菜しかカバーしていないことである。生肉
などの食品安全のリスクが高い生産物をカバーしていない。地域および国際的な流れの中で
まだ非常に新しい規格である。ASEANGAP は、有機生産物や遺伝子組み換え作物(GMO)
フリー生産物の認証のための規格ではない。
4.1.2.3 マレーシア:SALM 認証
マレーシアは、新鮮な果物と野菜部門の認証(SALM)、畜産の認証(SALT)、漁業と
養殖認証(SPLAM)および有機部門認証(SOM)を含む一連の自主的農場認証規格を備え
た第一次生産者のための一連の品質保証プログラムを開発している。マレーシアにおける
GAP 規格の実施は、農業省(DOA)による 2002 年のマレーシア農場認証規格(SALM)
の導入に端を発する。SALM は、適正農業慣行を採用する農場を認証するために設計され
たプログラムであり、持続可能で環境に優しい方法で運営され、消費ため安全な高品質の生
産物を収穫している。
SALM の下で次の 3 つの主な側面が評価されている。
● 農場の環境設定
● 農場慣行の検証
● 農場生産物の安全性
主な要件は何か?
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これらの 3 つの側面の下で、21 の要素が評価され、その内 17 種類の記録を維持しなけ
ればならない。SALM 認証農場から入手可能な情報には、土地利用、土壌の種類、灌漑水
の水源と品質、燻蒸を含む土壌の調整、施肥計画、収穫技術と農場輸送、収穫後の処理と包
装、ならびに農場廃棄物処理が含まれる。
認証を取得する方法は?
農家は、先ず農務省に登録し、監査員チームによる農場訪問を受けなければならず、そ
の報告書が事務局による承認の課題となる。2 回目の農場訪問は、農場認証委員会に対する
技術報告書の準備となる。受理されると、農場は GAP 認証票を受理し、SALM 商標を貼付
する承認が得られる。農場はその後、農場慣行の検証、農産物と水の継続的残留分析を行う。
主な機会と制約
SALM 登録農場は、優先的供給者の資格を得て、差別化製品を提供するため、地元の市
場で優先順位を取得すると報告されている。ただし、認証農場からの生産物に割増金は付い
ていない。SALM 登録農場は、連邦農業マーケティング機関(FAMA)によって管理され
ているブランド化運動の「マレーシア最高」のロゴを使用できる。輸出の最前線では、シン
ガポールとの二国間協定を通じて製品が優遇措置を受ける。
ただし、規格は農業省によって管理、監査および認証されているが、透明性が欠如して
いる。SALM 規格は、他の国や民間の規格との同等性の認可を受けておらず、2007 年 9 月
に GLOBALGAP に対するベンチマークが開始され、この状況を打開するかも知れない。
農畜産業振興機構 2007: マレーシアにおける野菜の販売状況および生産動向などに
ついて~日本産野菜の輸出の可能性を探る~
4.1.2.4 タイ: Q GAP と ThaiGAP 認証
輸出および国内市場の両方における品質と安全性の要件に対応して、タイ政府は、品質
と安全性の「"Q"認証プログラム」の開発、導入、実施に向けた重要な手順を行っている。
"Q"規格は、全ての農産物(作物、畜産、水産) ために使用する"Q"ロゴを備えた食料生産の
各段階を認証するために開発された。農業省は、Q GAP、Q 包装施設、Q 販売店を含むい
くつかの認証票を付与している。品質管理システム:農場生産のための適正農業慣行(GAP)
が国際規格の概念を認証の 3 レベルで修正することによって開発された。レベル 1 は農薬
残留の安全性、レベル 2 は農薬残留の安全性と害虫の不在、レベル 3 は農薬残留の安全性
と害虫の不在に加えて高品質である。
主な要件は何か?
規格は 8 つの管理点、それらの要件およびそれらを検査する方法を定めている。それら
の管理点は、水源、栽培場所、農業用有害物質、生産物保管と敷地内輸送、データ収集、病
気と害虫が不在の農産物生産、高品質の農業生産の管理および収穫後の取扱いである。最初
の 5 つの管理点がレベル 1 の認証に、1~6 の管理点がレベル 2 の認証に、8 つの全ての管
理点がレベル 3 の認証にそれぞれ求められる。
認証を取得する方法は?
規格は無償であり、政府によって管理されている。国の農産物食品規格局(ACFS)が
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認定機関となり、農務省が認証と実務機能を行っている。農家は申込書と関連書類を地元の
農業研究開発部(OARD)に提出し、そこが検査を実施する。農家は検査結果を伝えられ、
是正措置の実施方法を詳述するため数日間が与えられる。GAP 検査様式は OARD に提出さ
れ、そこが GAP 認証小委員会に付託する。この小委員会は情報をまとめて食品安全管理委
員会に送付し、そこが GAP 認証書を発行する。
主な機会と制約
現在、Q GAP に対する認証は手数料が免除されている。この規格体系は農務省によっ
て監査と認証の両方が行われている。このシステムと認証票は、国際的なベンチマークが行
われていない。国際的にベンチマークを行うことができる規格を作るために、タイ商工会議
所はタイ政府と連携して ThaiGAP 開発に乗り出した。本書の出版時点で、タイの利害関係
者と GLOBALGAP との ThaiGAP に関する連携は始まったばかりである。ThaiGAP は、
2008 年末までに GLOBALGAP のベンチマークを入手する計画である。
農研機構 2013:アジアにおける GAP 普及・支援事例-ThaiGAP の事例
4.1.2.5 日本:JGAP 認証
JGAI 協会(Japan Good Agricultural Initiative;現在の日本 GAP 協会)は、日本に
おける適正農業慣行の一般的規格(JGAP)を確立することによって農産物の安全性を確保
するシステムを構築するため、2005 年に日本の生産者グループによって結成された。農水
省は、JGAP が国の規格になるだろうと 2006 年 6 月に発表し、それはいくつかの民間小売
業者と現在の農水省 GAP 規格が同じ傘の下なることを意味した。国内および国際的な小売
業者によるこの規格の認知を強化するため、GLOBALGAP に対する JGAP のベンチマーク
を実施することを決定した。GLOBALGAP のベンチマークは 2007 年 8 月に完了した。
主な要件は何か?
JGAP 規格は 4 つの章に分けられている。
● 肥料、種子、生産物の取扱いに関する必須管理点を含む食の安全性
● 水、土壌、エネルギー、近隣敷地を含む環境への配慮
● 最低賃金と訓練を含む労働者の福祉と安全
● 記録保持とトレーサビリティを含む販売管理
認証を取得する方法は?
JGAP は、JGAP の方針を導く最高権威を持つ運営委員会によって管理されている。運
営委員会は規格と一般的規則を策定する技術委員会と、供給者や小売業者の幅広い利害関係
者グループを代表する理事会を擁している。認証は、資格のある第三者の民間部門の監査員
によって行われる。
主な機会と制約
JGAP は、農業の規模、環境と法律上の問題、施設と言語の面における日本農業の特定
の機能を反映することから、日本の農家に機会を提供する。JGAP の課題は、小規模農家の
間で低コストで GAP を実施することにある。農家と個々の小売業者の GAP システムの調
和を組織することである。
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JGAP は、新たに承認された修正チェックリスト(AMCL)のベンチマーク手順に関し
て GLOBALGAP に対してベンチマークを受けており、必須管理点に関してのみベンチマー
クされている。JGAP ロゴは、販売の最終ポイントではなく、業界における取引のためにの
み利用されるだろう。
4.1.2.6 中華人民共和国:青果物認証と ChinaGAP 認証
中国政府は、食料供給網における国の農産物と食品の認証システムを確立し、農業に認
証を導入するため 2 つの GAP プログラムを開発した。これらの 2 つの GAP プログラムは、
農業を刺激し、食品の安全性に関連しているリスクを軽減し、農産物供給網の様々 な部門
を調整するとともに、国際的な適正農業慣行の規格および関連する認証・認定活動の発達を
刺激することを意図している。農業省は中国の国内市場のため適正農業慣行を発展させる青
果物規格を開発する一方、ChinaGAP は国際市場に供給するため中国政府と GLOBALGAP
によって共同で開発されている。正式なベンチマークの手順を開始するため 2006 年 4 月に
GLOBALGAP との間で覚書が調印された。
主な要件は何か?
ChinaGAP 認証は、2 層の取組み方を採用する。二級認証農家は GLOBALGAP システ
ムに基づく「必須要件(major musts)」を満たすだけで良いが、一級認証は必須要件(major
musts)と準必須要件(minor musts)の全てを満たすことを求められる。一級 ChinaGAP
認証は、GLOBALGAP 認証と互換性があると予想される。
認証を取得する方法は?
認証と認定に関する中国の法律は 2003 年 11 月に発行され、国務院は、認証手順と検査
官の訓練、試験機関および監査員を管理、運営および承認するため「認証と認定管理機関
(CNCA)」を認可した。CNCA は、ChinaGAP の体系、規則および訓練の文書を発行し、
2007 年半ばの時点で中華人民共和国の 18 省で認証と認定の最初の試験的活動を始めた。
主な機会と制約
ChinaGAP は、中国農家が農業生産の品質と安全性を向上するための機会となる。一級
認証の要件はきわめて高度なので、中国農家の限られた数だけが認証を取得できるだろう。
本書を刊行した時点で、217 の企業が ChinaGAP に基づいて運営しており、116 の企業が
ChinaGAP を既に認証されていた。GLOBALGAP とのベンチマークも、近い将来に有効に
なるだろう。
食品分析開発センター 2010:中国における農産物安全確保の取組み-CHINAGAP の
動向に焦点をあてて-
4.1.2.7 インド:IndiaGAP
本書を刊行した時点で、インド農産物加工食品輸出開当局は IndiaGAP 規格の開発に着
手していた。その規格の目的の一つは、インドの農業生産者にヨーロッパ市場を開放するた
め、GLOBALGAP とのベンチマークの認識を得ることである。
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4.2 適性製造慣行(GMP: good manufacturing practice)認証
4.2.1. 国際食品基準(IFS: International Food Standard)認証
2002 年にドイツの小売り業者が食品安全管理 システムの国際食品規格(IFS)と呼ば
れる共通の規格を開発した。2003 年にフランス食品小売業者(かつ卸売業者)が IFS 作業
グループに参加し、規範文書の現在の版の開発に貢献した。IFS 規格は、食品の安全性を確
保し、小売業者の商標が付いた食料品に係る生産者の品質水準を監視する均一な手法として
設計されている。この規格は、農業生産に続く食品加工の全ての段階に適用可能である。
主な要件は何か?
IFS プログラムは認証の次の 2 つのレベルを可能とする。
● 「基礎レベル」は国際的な食品業に対する最小限の要件とみなされる
● 「高レベル」は食品業界における優れた規格とみなされる。
「基礎レベルの規格」は 230 項目を含む一方、より高いレベルの規格」はそれに追加の
60 の基準がある。さらに、その部門の「最高の慣行」の証明を希望する会社に対して 46 の
推奨事項が策定されている。規格のそれぞれの基準について、適格性と基準の水準に応じて
所定の数のポイントが割り当てられている。認証票(基礎または高レベル)は、獲得したポ
イント数に応じて交付される。
認証を取得する方法は?
IFS 認証は、監査の範囲が監査の行われる施設に限定されるという意味で施設固有のも
のであるが、その施設で生産された製品の全ての種類を考慮しなければならない。再評価の
頻度は年に一度である。既に 2 回確認され、季節の生産物に関係しない「高レベル」の認
証については、再評価の頻度を 18 ヶ月まで減らせる。認証費用は認証機関によって異なる
が、平均は 1 施設の監査のため 1.5 日間で 2,000 米ドルである。
機会と制約
IFS 認証は、ドイツとフランスのほとんど全ての小売業者およびその他の欧州諸国の多
数の小売店によって要求される。現時点では、小売業者は私的ラベル食料品の供給者に対し
てだけ IFS 認証を要求している。
アジアにおける IFS に認証された供給者の数はまだ少ないが、ヨーロッパにおいてこの
規格の使用が増加し、アジアにおいて IFS 認可を受けた認証機関の数が増えているので、
IFS 認証規格の認証を取得することによって欧州市場での競争力を強化する輸出業者のた
めの絶好の機会となっている。
2.2. 4. 安全で高品質の食品(SQF)コード
安全で高品質の食品(SQF)コードは、1996 年に西オーストラリア州農業省によって
設立された。2003 年に、規格の世界的所有者が米国の食品マーケティング研究所(FMI)
に譲渡し、現在、SQF コードは FMI の下に設立され SQF 研究所によって管理されている。
主な要件は何か?
SQF プログラムは、食料供給網の全てに関係している食品産業のために設計された完全
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に統合された自主的な食品安全と品質管理の実施要領である。その体系は、Codex 規格の
HACCP 指針に基づいている。
様々な種類の食料製品供給者のため 2 つの認証プログラムが確立されている。
● SQF 1000:一次生産者およびそれらが関係する問題(収穫前生産、収穫、一次
産品の調整)に特化
● SQF 2000:食品業界およびそれらが関係する問題(原料・成分、加工・調理食
品、飲料、またはサービス業)に特化。
それぞれのプログラムには、3 つの認証レベルがある。
● レベル 1(食品安全の基礎)
:この認証は、会社が前提条件プログラム(PP:GAP
や GMP)および基本的な食品安全管理を実施していることを保証する
● レベル 2(承認された HACCP 食品安全計画):この認証は、会社が前提条件プ
ログラムおよび HACCP 手法に基づいて食品安全計画を実施していることを保
証する
● レベル 3(包括的な食品安全と品質管理システムの構築):この認証は、会社が
前提条件プログラムおよび HACCP の原則に基づき低品質の事故を防ぐ食品安
全計画を実施していることを保証する。
レベル 2 を実施するには、生産者はレベル 1 に加えて追加の要件を遵守しなければなら
ない。同様に、レベル 3 の実施には、生産者はレベル 2 に加えて追加の要件を遵守しなけ
ればならない。各レベルについて、許容範囲なしで規定の遵守が義務付けられている。
認証を取得する方法は?
認可され認定された認証機関で働く登録された SQF 監査員のみが、SQF コードに対す
る認証を行える。レベル 1 を達成したら、供給者は SQF ウェブサイトで利用できる SQF
登録に入力する。
主な機会と制約
SQF 認証は、供給者へ多くの利点と価値を提供する。一つの国際的に認められた自主規
格を遵守することにより、SQF は、様々な規格に対する複数の監査を受ける必要性を減ら
し、供給者が様々な一連の認証規格の監査を満たすための資源を別に活用できる。SQF は、
主に食品製造業者に販売する一次生産者のために設計された企業取引規格であり、そのため
製品のラベルはない。
2.3. 4. 英国小売協会規格 (BRC)
BRC 規格は英国小売協会(BRC)によって開発された民間の自主規格である。この規
格は、消費者の健康を保護し、英国の小売業者が英国食品安全法を満たすことを可能にする
ため設定されている。したがって BRC 規格は、食料品供給者の監査のための共通の基礎を
小売業者に提供する手法と見なすことができる。この規格の使用は、HACCP 原則の採用と
実施、文書化され、効果的な品質管理システムの設定、ならびに作業環境、製品、工程およ
び人員の管理を要求する。あらゆる食料供給会社に適用することができる。
BRC 規格の適用は、第三者による認証を求める。認証製品は、BRC ロゴを付けて市場
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で区別される。
2.4. 4. ISO 22000
ISO 22000 規格は、食品安全管理システムの設定を促進するために開発された。HACCP
原則とともにトレーサビリティ対策が組み込まれている。ISO 22000 は、欧州連合食品飲
料産業連盟(CIAA)、ホテル・レストラン国際協会(IH&RA)、国際食品小売業委員会 (CIES )
の世界食品安全イニシアチブ(GFSI)ならびに世界食品安全機関(WFSO)の協力を得て
国際標準化機構(ISO)によって作成された。したがって、ISO 22000 は、全世界の国の食
品安全管理システムの要件を非政府、自発的な基礎の上に調和させる。食料供給網 (作物
生産者、飼料生産者、食料生産者、加工業者、卸売業者、小売業者)のあらゆる利害関係者
は、この規格を適用できる。ISO 22000 は、単独または他の管理システム規格と組み合わ
せて使用できる。ISO ロゴマークは製品には使用できない。
4.2.5 アジアにおける GAP と GMP のための国の支援組織および認証組織
(注:リンクされているページが現在表示されない。おそらく、一覧表があったのでは)
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