2009 年度第1回東大本番レベル模試 1 地理 B 採点基準 単答記述問題 誤字,脱字,漢字間違いは0点。 2 論述問題 ①「設問別加点基準」に基づき加点する。また,その他各問題の主旨に適した解答にも 適宜加点する。ただし,満点を超える得点は与えない。 ② 3 以下の「共通減点基準」に基づき減点する。 共通減点基準 ① 加点要素における誤字・脱字および漢字の間違いは1点減点。 ② 下線の付け忘れは1点減点。 ※ もしできれば答案に「下線のつけ忘れです。次回から気をつけましょう」等と記入して, 生徒に指導していただけると幸いです。 ③ 字数オーバーは1点減点。 *減点しなくていい要素,その他の注意 ④ 地理用語に関して,漢字の新字体/旧字体や,スロヴェニア⇔スロベニア,パキス タン⇔パーキスターンといったカタカナ表記の通念の範囲内での異体に関しては減 点はしない。 ⑤ 加点要素以外で誤った記述があった場合,その部分は0点だが,減点はしない。 ⑥ 加点項目は内容的に整合性が取れていればよく,字句の順序や表現は必ずしも完全 に一致していなくてもよい。 ⑦ 4 文章が未完のものも減点しない。 採点記号について 1。<□□□□> 加点ポイント 2。□□□□× 事実に誤認あり 3。□□□□? 文意不明 4。□□✔□□ 誤字あり/脱字あり 1/9 5 設問別採点基準 第1問 【配点 20 点】 設問A 配点(1)1 点,(2)3 点, (3)3 点,(4)3 点 (1)エスチュアリー(または三角江) (2)(解答例)波が穏やかで水深の深い入り江であるため,船舶の航行に適した港湾が立 地しやすく,後背地となる周囲の平野も広大だから。(57 字) 加点事項(3 点で打ち切り) ★(1)における「エスチュアリー(または三角江)」の正解が前提 1点 ① 水深の深い(または波の穏やかな)入り江(または河口) ② 広大な後背地(ヒンターランド)をもつ(広い平野のなかにある・湾奥が平野である) 2点 ③ 良港が発達する 1点 ※「漁港」は加点しない。 ④ 船舶の航行に適した地形である 1点 (3)(解答例)奥羽山脈を越える季節風が,太平洋側で雨を降らせて乾燥したのちに,日 本海側では下降気流となるため,フェーン現象が起きる。 (59 字) 加点事項(3 点で打ち切り) ① 「フェーン」「フェーン現象」の語が使われていること または,フェーン(現象)の説明がなされていること(風が山を越えるとき風下では高 温乾燥になることが書けていれば十分) ② 2点 夏の(または南東の,または奥羽山脈<など風向が特定できる地名等>を越える,ま たは太平洋側から吹く)季節風(またはモンスーン)[が①の現象をもたらしていること] 1点 ③ [②の季節風が]太平洋側で雨を降らせること(または上昇して雲を作ること)+日本海 側で乾燥すること(乾燥した下降気流となること) 1点 (4)(解答例)冷湿な北東風やませの影響で日最高気温は低いが,都市化によるヒートア イランド現象で夜の気温低下が小さく日最低気温は高い。 (59 字) 加点事項(3 点で打ち切り) ① 「北東」の語を風向として用いていること+その風がやませであること(またはその 風が寒冷な(寒冷で湿潤な)性質を持つこと) ② 1点 「都市化」の語をヒートアイランド(「熱の島」)現象(または人工排熱の増加,土地 2/9 被覆の変化などヒートアイランド現象やその要因を適切に説明したもの)と結びつけてい ること 1点 ③ (8 月の気温の特徴として)日最高気温(昼の気温,日中気温)が(比較的)低いこと 1点 ④ (8 月の気温の特徴として)日最低気温(夜の気温,夜間気温)が(比較的)高いこと 1点 設問B 配点(1)3点,(2)2点,(3)1点,(4)4点 (1)ア−チョンチン イ−メキシコシティ ウ−サンパウロ エ−東京 完答で 3 点,2∼3 個の正解で 2 点,1 個の正解で 1 点 (2) (解答例)硫黄分の多い地元産石炭を,脱硫処理をせずに大量消費するため。 (30 字) 加点事項(2点で打ち切り) ★(1)における「ア−チョンチン」の正解が前提 ① 使用する石炭の硫黄分が多いこと(または石炭の品質が低いこと) 1点 ※ 「安価な石炭」など,石炭自体の性質・品質にかかわらないものは不可) ※ 石炭が中国産であることはあってもよいが,それのみでは加点しない。 ② 脱硫装置が普及していないこと(または脱硫処理をしていないこと,または環境への 配慮が不十分であること,または公害対策が進んでいないこと) ③ 1点 石炭が大量に使用されること(エネルギー供給を石炭に依存していること) 1点 (3)酸性雨 ★(1)の正解は前提としない 解答通り(または「硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)[硫酸イオンや硝酸イオン] が(雨とともに)降下する現象」のように酸性雨を正しく説明したもの) 1点 (4)(解答例)標高の高いメキシコ高原上の都市であるため,酸素濃度が低く,自動車の 排ガスが不完全燃焼を起こしやすい。また,盆地に発達した都市であるため,汚染され た大気が滞留し,外部へ拡散しにくい。(90 字) ★(1)における「イ−メキシコシティ」の正解が前提 加点事項(4 点で打ち切り) ① 「不完全燃焼」の語を,メキシコシティの標高の高さ(または酸素濃度の薄さ)と結 びつけていること 2点 ※ 不完全燃焼を自動車等の整備不良や環境対策の遅れと結びつけたものは,「自然的要 因」ではないので加点しない。 3/9 ② 自動車のエンジン(またはボイラーなど)が「不完全燃焼」によって有害物質を発生 させること ③ 1点 「滞留」の語を,盆地地形(またはメキシコ市がかつて湖底にあったこと)と結びつ けていること ④ 2点 汚染された大気が「滞留」によって拡散しないこと 第2問 1点 【配点 20 点】 設問 A 配点:(1)2点,(2)4点,(3)4点 (1)ア―韓国,イ―日本,ウ―中国,エ―ヨーロッパ 完答で 2 点,1∼3 個の正解で 1 点 (2)(解答例)他国が旧式設備の過剰に苦しむ中,輸出指向型の造船業育成政策の下,近 代的施設と安い生産コストにより競争力を高めたから。(58 字) 加点事項(4 点で打ち切り) ★(1)における「ア―韓国」の正解が前提(イ・エは不正解でも可) ① イ(日本)やエ(ヨーロッパ)の造船生産低下の要因 1) 過剰な生産設備があった 2) 生産設備の老朽化(または技術革新の遅れ) 3) 高い人件費(または生産コスト) 4) 構造的な不況業種となった ⇒ 以下のいずれかで 1 点 1点 ② 韓国の開発独裁体制(または財閥を中心とした産業振興) ③ 韓国が輸出指向型の造船業育成を行ったこと ④ 韓国が傾斜生産方式を行ったこと ⑤ 韓国造船業が近代的(または大規模)生産設備を整備したこと ⑥ 韓国造船業が技術革新を進めたこと ⑦ 韓国の安い人件費(または生産コスト) ⑧ 韓国造船業が国際競争力を高めたこと ⑨ 工業発展/経済発展によって輸出が増加し,自国の水運需要が増加したこと 1点 1点 1点 1点 2点 1点 1点 (3)(解答例)石油危機後の海運需要の減退や,円高による国際競争力低下の一方で,知 識集約型産業・サービス産業への転換が進行したから。(58 字) 加点事項(4 点で打ち切り) ★(1)における「イ―日本」の正解が前提 ① 石油危機(または低成長期)で需要が減退したこと 4/9 2点 ② (2)の①に挙げた以下の要因のいずれか 1点 1) 過剰な生産設備があった 2) 生産設備の老朽化(または技術革新の遅れ) 3) 高い人件費(または生産コスト) 4) 構造的な不況業種となった 1点 ③ 円高による国際競争力の低下 ④ 韓国(など新興国)との競争激化 ⑤ 産業構造全体の転換(または知識集約型産業・サービス産業への転換,または「重厚 長大」から「軽薄短小」への転換) 2点 は同じ意味であれば表現は問わない ※ ⑥ 1点 遠洋漁業衰退による船舶の国内需要の減少 1点 設問 B 配点:4点 (解答例)造船は自動化困難な工程が多いが,高い技能を持つ人材が大量に定年退職する 一方次世代の層が薄く,生産技術の維持が難しい。(58 字) 加点事項(4 点で打ち切り) 1点 ① 造船には(自動化の難しい)高度な技術・技能を必要とする ② 高技能保有者(または「職人的ノウハウを持つ労働者」等,同意可)が定年(退職) 2点 する(またはその技能(ノウハウ)が失われる) ※単に「高齢化」だけでは加点しない。「高齢者の退職」に関する言及が必要 ③ ②の技能・技術を継承する世代の労働者の層が薄い(人材が少ない)/高齢技能者層 から低齢技能者層への伝達が行われにくい状況である 1点 ④ 大量の定年退職に伴う退職金・年金等の負担が大きい ⑤ (高齢者の退職により)労働力が不足すること 設問C 2点 1点 配点:(1)2点,(2)4点 (1)(解答例)多様な物資を輸送するための,規格化された箱型の容器。(26 字) 加点事項(2 点で打ち切り) ① さまざまな物資(または雑貨,または小口貨物)の輸送に用いる容器/貨物を入れる ための容器 ② 1点 規格化されている(または大きさが決まっている)/積み重ねが容易/積み下ろしが 1点 容易 1点 ③ (おもに鉄鋼やアルミニウムなど)金属製 ④ 箱型容器/直方体の容器 ※ その他,コンテナの特長・利便性などを述べたものは加点しない 1点 5/9 (2)(解答例)費用や利便性で優れたプサン港をハブ港湾として小型船舶に積み替えて地 方港に直接輸送する方が,日本の大港湾での積み替えや高コストの国内陸上輸送の利用に 比べ有利だから。(89 字) 加点事項(4点で打ち切り) ① プサン港が「ハブ」(または「ハブ」港,「ハブ」港湾など)となっていること(また は,プサン港から日本の地方港へ輸送していること) 1点 ※ 「プサン港→日本の各港への輸送」であることの説明・ニュアンスが必要.「プサン 港→韓国・中国の各港への輸送」となっている場合は加点しない。 ② プサン港の日本の港湾に対する優位性(日本の港湾の劣位性としての説明でも同じ) 以下の項目で各 1 点加点するが 2 点で打ち切り ⇒ 1) プサン港の方が港湾使用料が安い 2) プサン港の方が港湾労働者の人件費が安い 3) プサン港の方が利用コストが安い(上の 1)や 2)とは重ねて加点しない) 4) プサン港の方が利用できる日数が多い(または利用時間が長い) 5) プサン港の方が(通関など)各種手続きが簡素 6) プサン港の方が「利便性」が高い(上の 4)や 5)とは重ねて加点しない) ③ 日本の大港湾での積み替え(または日本の港湾をハブ港湾とすること)は不利 ④ 日本の陸上輸送を利用することはコスト面で不利 ⑤ 海上輸送の方が陸上輸送よりコストが低いこと 第3問 1点 2点 1点 配点 20 点 設問 A 配点:(1)2点,(2)2点,(3)2点,(4)3点 (1)A−製造業出荷額 B−卸売業販売額 C−小売業販売額 完答で 2 点,1∼2 個の正解で 1 点 (2)(解答例)仙台・広島・福岡など中心地機能の高い地方都市で大きいから。(29 字) ★(1)における「B−卸売業販売額」の正解が前提 加点事項 A ① 都市名の例示=札幌・仙台・広島・福岡のうち 2 つ以上 ② 地方の中心都市(地方中枢都市,中心地機能が高い地方都市)の数値が(人口比に比 べ)高い 1点 B(別解) 6/9 あわせて 1 点 あわせて 1 点 ① 都市名の例示=大阪・名古屋 ② (中心地機能が極めて高い)大都市の数値が著しく(突出して)高い ※ A と B が混ざり合ってもよいが,B の都市は「地方中枢都市」ではないので注意。 1点 (3)地方自治において,都道府県とほぼ同格の高い権限を得られる。(29 字) 加点事項(2 点で打ち切り) ① 地方自治上の権限が高まる 1点 ② 都道府県と同格に扱われる 1点 ※「条例が制定できる」は加点しない. 1点 ③ 区が設置される ④ 市民の意識が高まる ⑤ 企業誘致など対外的な場面でセールスポイントとなる ⑥ 財源が拡大する/税収が増える 1点 1点 1点 ※「国から補助金が出る」「国からの補助金が増加する」は加点しない. ⑦ 事務処理が効率化できる 1点 (4)高度な小売業集積により広域からの買い回り客を吸引するうえ,周辺都市からの通 勤・通学者による最寄り品の購買が盛んだから。(59 字) ★(1)における「C−小売業販売額」の正解が前提 加点事項(3 点で打ち切り) ① 小売業者(小売機能)が集積(集中)している(または高級商店街などが成立してい 1点 る) ② 大都市には(小売業以外のさまざまな)吸引力(魅力)がある ③ 広域(郊外)から(買い回り品の購入者を)集客する 1点 ④ 他都市からの通勤(通学)者が(最寄品を)消費する 1点 1点 設問 B 配点:(1)1点,(2)2点,(3)3点,(4)5点 (1)合計特殊出生率 このまま (2)(解答例)若年層の移民が多く流入するうえ,彼らの出生率も高いから。(28 字) 加点事項 ① ※ 移民(または外国人労働者)の流入が多い ② 1点 亡命・亡命者は不可 ①が若年層(20∼30 歳代)であるため+出生率が高い 7/9 1点 (3)(解答例)東欧革命・ソ連崩壊に伴う社会の混乱から,出生率が低下し死亡率が高ま ったが,安定化とともに人口減少が下げ止まりつつある。 (59 字) 加点事項 1980 年代末∼1990 年代初めにおける政治・社会体制の転換 ① 以下のいずれかで 1 点 ⇒ 1) 東欧(東ヨーロッパ)革命(または東欧民主化,東欧の春など同義可) 2) (旧)ソ連崩壊(またはソ連分裂,ソ連消滅など同義可) 3) 社会主義圏(または東側陣営)の崩壊など(同義可) 4) 社会主義(計画経済)から資本主義(自由主義経済・市場経済)への転換など(同 義可) ② ①の転換による社会の混乱(または社会不安・経済の混乱・生産低下・福祉の低下な ど)による出生率の低下(または死亡率の上昇) ※ 1点 「出産を控えた・避けた」「自殺率が高まった」「医療・福祉が崩壊し死者がぞうか した」など具体的表現も可 ※ ただし「戦乱による死者の増大」などはイ群の国々には当てはまらないので不可 1点 ③ 国外への人口流出(同義可) ④ (近年は,2000 年代は)社会の安定により減少率が低下している(または下げ止まり つつある) 1点 (4)(解答例)イタリアは高齢化による自然減少国だが,EU 拡大等に伴い東欧からの移 民流入が増大したため社会増加率が上昇した。フランスでは移民は抑制傾向だが,家族手 当・育児支援等の少子化対策や多様な家族形態の受容により出生率が高まり自然増加率が 上昇した。(118 字) 加点事項(5 点で打ち切り) ① イタリアは高齢化(または少子高齢化)が進んでいる(または人口が自然減少してい 1点 る) ② イタリアは移民流入が増大している(または社会増加が大きい) ※ 1点 とくにルーマニア系移民の増大に触れているものは,さらに 1 点加点 1点 ③ (②の理由として)EU の東方(または中東欧)への拡大 ④ フランスは少子化対策が進んでいる ⑤ フランスでは家族手当/各種育児支援制度/育児休業制度等が充実している 1点 1点 ※ 「フランスは少子化対策が進み,家族手当等が充実している」の場合は2点 ※ 「フランスでは家族手当・各種育児支援制度が充実している」の場合は1点 ⑥ フランス社会では(シングルマザーなど)多様な家族形態が受容されている/事実婚 が認められている 1点 8/9 ⑦ 出生率(または合計特殊出生率,または自然増加率)が上昇している ⑧ フランスでは移民は規制(または抑制)されている 9/9 1点 1点
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