日本語(PDFファイル)

第 56 回国際理解・国際協力のための高校生の主張コンクール
地球環境と国連
愛知県代表 千種高校国際教養科
3年
田中優衣
母なる大地の懐に、我ら人の子の喜びはある。大地を愛せよ。大地に生きる人の子ら、その立つ土に感謝せよ!…大木淳夫作詞、佐藤
眞作曲による、混声合唱とオーケストラのためのカンタータ「土の歌」。その最終楽章は大地讃頌との題を持ち、母なる大地への賛美を
高らかに謳いあげています。我々を育て守る大地を愛せよ、そして感謝せよ。この曲の、余りに当然で、また余りに難しい訴えを、今、
私達は真剣に考えねばなりません。
母なる大地は今、満身創痍とも言える状態にあります。その緑の髪は削がれ、熱を帯び、内に秘めていた栄養も枯渇状態です。これは
彼女が、子ども達に黙って全てを与え続けた結果です。始めこそ遠慮がちにその恩恵を被っていた子ども達でしたが、そのうち一人は次
第に成熟し、反抗期を迎えました。反抗期の子どもは母からいかにして奪うかを考えてばかりいます。それでも母はその子に変わらぬ愛
情をそそぎ、何かを与えようと必死になり…その結果が、慢性的な病です。言い換えれば、私達人間が、森林を伐採し資源を貪り、地球
環境に大きなダメージを与えた、ということです。子どもが反抗期を過ぎて大人へと成長し、親孝行をしようと考えるようになるように、
大地の子どもである私達人間も、そろそろ大人にならねばなりません。
大地への孝行とはやはり、その環境を良好に戻すこと、そして保全することです。私達の母への孝行の仕方は、皮肉にも母から奪った
資源から生み出した、様々な技術を駆使したものとなるでしょう。ですが、ここでひとつ問題が生じます。それは、同じ人間の中にも、
その技術を持つものと持たないものがいるということです。そうなると技術を持つもの、つまりは先進国が中心となって環境対策を行う
という構図が当然見えてきます。ですが、本当にそれで良いのでしょうか?
私は以前から、ある国会議員の事務所でボランティアをしています。政党職員となって日本の政治を支えたい、という夢を叶えるため
の第一歩として始めたボランティアでしたが、議員の活動を見ているうちに、環境対策の重要性と、その問題点に気付き始めました。事
務所へ陳情に訪れる人々は、自分の暮らす半径2km 程度の地域の環境対策を求めます。しかし、議員が行おうとするのは最小でも都道
府県単位の環境対策です。一学区ではなく県の排気ガス量が減少すれば良い、というマクロの視点からの対策なのです。
同じことが世界でも起こっています。先進国が行うのは地球温暖化防止や海洋環境保全など、マクロの視点からの環境対策です。し
かし、彼らは忘れています。彼らが繁栄を謳歌するまでの過程で経験した、公害を始めとする国内の環境問題を。しかし実際、現在工
業化を進めている発展途上国のあちこちでそれらが繰り返されているのです。もちろん、環境対策の最終目標は地球全体を視野に入れ
たマクロなものでなくてはなりません。しかし、まず取り組むべきは、ミクロの視点からの環境対策です。先進国にはその主導権を握
るだけの、ミクロな環境汚染への現実的な危機感は残念ながらありません。
そこで必要とされるのが、国際連合の力です。国連の設立主意には、国際的な共通の課題の達成、そしてそのための国際協力とあり
ます。ここで言う共通の課題とは、紛れもなく環境対策です。そしてそのために、先進国も、公害問題に直面している発展途上国も、
そしてこれから工業化を図る国々も、国連の下で協力することが求められているのです。各国間の生々しい利害関係や敵対心を切り捨
て、192 にも上る加盟国全てが一堂に会して話し合うことは、国連総会にのみなし得る業です。それを今、有効に活用しないで他にいつ
すべきでしょう。先進国同士の浮世離れした会合より、今、実際に、何が起こっているのかを現実的に見ている国を交えた会合の方が
有益であることは言うまでもありません。
そしてここで 1 つ、胸に留めておかねばならないのは、この会合の場では全ての国が平等かつ対等であるということです。先進国の
技術をもって発展途上国の環境対策を行う、という形になるため、どうしても先進国優位、発展途上国はそれに請うというイメージが
伴いがちです。議員と陳情者の関係もそうでした。しかし、それは間違いです。日本で、国民が主権者であり議員はその 1 人に過ぎな
いのと同様に、国連では全ての国がその一構成員に過ぎないのです。それらが結集して共通の課題に取り組むのですから、そこに優劣
などあるわけがありません。それが国連のひとつの大きな魅力ともいえます。
わが子に広い視野を持ってもらいたい、というのは母の願いでしょう。しかし、本当に広い視野を持ち、マクロを解決するにはまず、
ミクロをよく理解し、解決することが不可欠です。母の願いを叶えるためにも、ミクロの視点を広められる国連の役割は重要なのです。
我ら人の子が、恩寵の豊かな大地を取り戻し、歌いましょう。
「母なる大地を、ああ、讃えよ大地を、ああ。」と。