第 2 回日本泌尿器病理研究会 (JSUP)

第 2 回日本泌尿器病理研究会
(JSUP)
プログラム
抄録集
2013 年 2 月 2 日(土曜日)
東京慈恵会医科大学南講堂
会長
鷹橋浩幸(東京慈恵会医科大学 病理学教室)
伊藤貴章(医療法人めぐみ会
田村クリニック
泌尿器科)
第2回学術集会開催にあたって
第2回日本泌尿器病理研究会
会長 伊藤貴章(医療法人めぐみ会 田村クリニック)
鷹橋浩幸(東京慈恵会医科大学 病理学教室)
日本泌尿器病理研究会(Japanese Society of Urological Pathology、通称 JSUP)
は、泌尿器科診療において不可欠である病理学的知見につき、泌尿器科医と病
理医が密に情報交換し、診療の質の向上をはかることを目的として 2011 年4月
に三重大学白石泰三、宮崎大学賀本敏行を代表幹事として発足いたしました。
泌尿器医にとって病理学は、日常の診療における病気の診断の根拠となるもの
で最も重要な情報のひとつであります。一方で病理医の立場で考えても組織と
臨床の情報との整合性を保つことや、現場の泌尿器科医がどのように認識して
いるかという情報は重要で、共に密に情報交換することが診療レベルの向上に
最も大切なことであります。しかしながら現状では個別の医療機関内での情報
交換や一般医療機関においては病理報告書を通じてのみの情報交換が主であり
ます.研究会では幅広く情報交換や交流ができればと考えております.
第2回研究会では、全国から 19 演題の応募をいただきました。また最近改訂
されました3つの泌尿器腫瘍の取扱い規約のうち、特に「尿路上皮癌」につい
てその疑問点を名古屋第二赤十字病院の都築豊徳先生に解説していただきます。
また、Indiana University の病理の Grignon 教授に 2012 年 3 月に開かれたIS
UPの腎がん病理のコンセンサスミーティングの内容の解説を拝聴できること
となりました。
第 1 回に引き続き、手作りの会になりますので、いろいろと不手際もあろう
かと思いますがお許しくださいませ。何よりご参加いただく皆様には、是非と
も活発なご議論をいただき、明日からの診療の一助となることを願っておりま
す。どうかよろしくお願いいたします。
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ご案内
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■ 会期・会場
日時: 2013(平成 25)年 2 月 2 日(土)
15 時 〜 19 時 10 分
会場: 東京慈恵会医科大学
高木 2 号館地下南講堂
〒105-8461 東京都港区西新橋 3 丁目 25 番 8 号
TEL 03-3433-1111
会場アクセス
■地下鉄:都営三田線 「御成門」 A5 出口 、日比谷線 「神谷町」3 出口
銀座線 「虎ノ門 」1 出口、丸の内線・千代田線 「霞ヶ関 」 C3 出口
■JR:新橋駅下車 徒歩 12 分(タクシー5 分)、浜松町駅下車 徒歩 15 分(タ
クシー8 分)、東京駅下車 タクシー12 分
■ 受付
会場前で 2 月 2 日(土)14 時から受付を開始します。
参加登録後(参加費(懇親会費こみ)5,000 円 研究会 3000 円 懇親会 2000
円)、ネームカードをお渡しいたします。
すでに会員のかたは年会費の受付もしております。
JSUP 新入会も受付(年会費)しておりますが、本登録は後日 PC でお願いい
たします。
■ 発表者へのご案内
 データの準備
・ 一般演題は発表時間5分、討論2分でお願いいたします。
・ パソコンプレゼンテーション(プロジェクター1面)での発表に限ら
せていただきます。(*スライドは使用できません。)
・ ご自身のノートパソコンまたは USB メモリーでお願いいたします。
・ 動画を含むご発表の場合、再生エラーを防ぐためにご自身のノートパ
ソコンでのご発表をお願いいたします。
 PC 受付
・ 発表の 60 分前までに受付をお願いいたします。
・ Windows の場合は USB メモリーでお持ちいただいたファイルを、当方
の発表用 PC にコピーさせていただきます。発表データのファイル名「演
題番号 氏名」でお願いいたします。
(終了後確実に削除いたします。)
・ PowerPoint での作成をお願いします。
・ 文字化けを防ぐため、念のためフォントは下記のもので作成ください。
 日本語:MS ゴシック、MSP ゴシック、MS 明朝、MSP 明朝
 英 語:Arial, Century, Century Gothic, Times New Roman
・ Mac の場合はご自身のパソコンをご用意いただき「コネクタ」をよろ
しくお願いいたします。
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14:00〜
14:30〜
プログラム
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幹事会
開場
15:00‐15:03 開会の挨拶
伊藤貴章(第2回日本泌尿器病理研究会会長、田村クリニック)
15:03‐15:45
座長:
一般演題
「腎臓」
宮城洋平(神奈川県立がんセンター がん分子病態学)
山本真也(がん研究会有明病院 泌尿器科)
1.腎腫瘍治療方針決定における腎腫瘍生検の有用性
堀 淳一(旭川医科大学 腎泌尿器外科)
2.病理学的に xanthogranuloma が強く疑われた腎細胞癌の一例
室宮泰人(東京女子医科大学 泌尿器科)
3.虫垂炎術前 CT にて偶発的に発見された Xp11.2 転座型腎癌が疑われた症例
高村 剛輔(岡山大学大学院医歯薬総合研究科 泌尿器病態学)
4.淡明細胞成分と微小乳頭状・偽乳頭状成分とが認められた分類不能型腎細
胞癌の1例
鹿股直樹(川崎医科大学 病理学)
5.肺腺癌の腎癌内転移の 1 例
呉秀賢(香川大学 泌尿器科)
6.腎腫瘍との鑑別が困難であった IgG4 関連 inflammatory pseudotumor の 1
例
宍戸俊英(杏林大学 泌尿器科)
15:45-16:30
一般演題
「膀胱
他」
座長: 佐々木毅 (横浜市立大学付属市民総合医療センター 病理部)
鈴木啓悦 (東邦大学医療センター佐倉病院 泌尿器科)
7.膀胱小細胞癌の 1 例
遠藤 匠(東邦大学医療センター佐倉病院
泌尿器科)
8.膀胱腫瘍一塊切除(TURBO)検体に対するアガロースを用いた組織二重包埋法
造住誠孝(正峰会大山病院 泌尿器科)
9.リンパ節転移を伴った膀胱癌微小乳頭型(Micropapillary variant)の 1
例
鑪野秀一(鹿児島大学 泌尿器科)
10.膀胱原発 PEComa の1例
上原 翔(がん研究会有明病院
泌尿器科)
11.尿道背側に発生した腺癌の一例
村嶋隆哉(宮崎大学 泌尿器科)
12. 経 直腸針生検にて認められた骨盤内 Gastrointestinal Stromal Tumor
(GIST)の 1 例
一番ヶ瀬優佳(佐賀大学 泌尿器科)
16:30-17:20
座長:
一般演題「前立腺」
黒岩顕太郎 (九州大学 泌尿器科)
三木健太 (東京慈恵会医科大学 泌尿器科)
13. Gleason score grading コンセンサス(2005 年)以後の、 前立腺生検組織
における院外病理医と院内病理医の Gleason score の相違が、臨床病期 risk
分類に与える影響
曽我 倫久人(愛知県がんセンター中央病院、泌尿器科)
14. 左臼蓋部に巨大な転移性腫瘤を形成した前立腺癌の 1 例
坂口 大(今給黎総合病院 泌尿器科)
15. 前立腺 Mucinous adenocarcinoma の 1 症例
松田 良一郎(鹿児島大学 泌尿器科)
16. 前立腺針生検における異型腺管の病理診断に対する PIN カクテル
(P504S+p63)、cytokeratin 5、D2-40 の免疫染色パネルの有用性の検討
黒田直人(高知赤十字病院・病理診断科部)
17. 基底細胞マーカーp63 陽性前立腺癌
内田克典(三重大学大学院医学系研究科、腫瘍病理学)
18.日本における前立腺ラテント癌の経時的動向
車 英俊(東京慈恵会医科大学 泌尿器科)
19.前立腺尖部正中の尿道腹側領域の生検:生検方法と臨床的意義
岡田洋平(埼玉医科大学総合医療センター 泌尿器科)
Coffee Break(‐17:30)
17:30-18:10 教育講演
「改定された取扱い規約に関する疑問点 特に尿路上皮癌について」
都築豊徳 名古屋第二赤十字病院病理診断科
座長
長嶋洋治
頴川 晋
18:10‐19:00
(横浜市立大学大学院医学研究科 分子病理学)
(東京慈恵会医科大学 泌尿器科)
特別講演
「Classification of Renal Cell Carcinoma: The 2012 ISUP Revision」
David Grignon, MD
Indiana University, Indianapolis, IN
座長
白石泰三
(三重大学医学部
腫瘍病理学)
19:00‐19:05 次期会長挨拶 (那須保友 都築豊徳)
代表 那須保友(岡山大学大学院新医療開発センター)
19:05‐19:10 閉会の挨拶
鷹橋浩幸(第 2 回日本泌尿器病理研究会会長
学教室)
19:10‐懇親会
東京慈恵会医科大学病理
カフェテラス「リーベ」研究会場に隣接(高木 2 号館地下 1 階)
抄録集
一般演題
腎臓1-6
膀胱他7-12
前立腺13-19
教育講演
特別講演
1.腎腫瘍治療方針決定における腎腫瘍生検の有用性
旭川医科大学腎泌尿器外科
堀 淳一 玉木 岳 岩田達也
松本成史
柿崎秀宏
【諸言】
分子標的薬隆盛の現在、腎癌の治療においては以前のサイトカイン療法に代わ
って分子標的薬が多く使用され、ガイドラインに沿った使用経験が蓄積されて
いる。術前に腎癌と診断されながら、摘出標本の病理所見で腎癌以外の組織型
であることも臨床において時に経験する。最近我々は、病理診断及びその後の
治療方針の一助とするため、適応症例と判断した場合には積極的に腎腫瘍生検
を施行している。我々の施設での腎腫瘍生検の有用性につき検討した。
【対象・方法】
2008 年以降、17 症例(男 11 例、女 6 例、年齢 51~80 歳、中央値 69 歳)で腎
腫瘍生検を施行した。腎腫瘍生検の適応は、全身状態不良や進行性で即時の手
術適応のない症例で、今後の治療方針決定の参考とするためであり、具体的に
は腎癌と腎癌以外の組織型の鑑別、あるいは腎癌における淡明細胞型と非淡明
細胞型との鑑別などを目的とした。15 例はエコーガイド下、2 例は CT ガイド下
で生検施行し、生検前の画像で腫瘍壊死が疑われる場合には、確実な診断を目
指して生検時迅速病理診断を併用した。
【結果】
12 例で腎癌、5 例で尿路上皮癌であった。生検前後で診断が変わった症例は 2
例あり、ともに生検前診断は腎癌で、生検により尿路上皮癌と診断された。腎
癌のうち淡明細胞型が 7 例、非淡明細胞型が 5 例であった。淡明細胞型のうち 6
例で sunitinib、1 例で temsirolimus を使用した。また、非淡明細胞型のうち 3
例で sunitinib、1 例で temsirolimus、1 例は全身状態不良で、生検後 best
supportive care となった(転帰は不明)。5 例で術中迅速診断を併用した。生
検に伴う有害事象を 2 例で認めた。1 例は needle tract implantation で、腎尿
管全摘後 3 ヶ月で癌死した。もう 1 例は生検結果が壊死組織のみであり、迅速
診断を併用しなかった弊害と考えられた。
【結論】
腎癌における薬物療法の方針は淡明細胞型か非淡明細胞型か、またリスク分類
などで異なるため、治療前の組織学的診断が必要となる症例がある。さらに、
生検により腎癌なのか尿路上皮癌なのかの鑑別も可能である。以上から、腎腫
瘍生検は適応症例においては効果的な診断ツールであると考える。
2.病理学的に xanthogranuloma が強く疑われた腎細胞癌の一例
東京女子医科大学病院 泌尿器科
室宮泰人 近藤恒徳 剣木崇文 柴原瑠美 山田浩史
高木敏男 飯塚淳平 小内友紀子 田邉一成
大前憲史
吉田一彦
症例は 78 歳男性。2000 年に左腎細胞癌(RCC)にて他院で左腎摘除術を施行され
ている。術後 12 年目の CT において右腎下極に 5cm 大の腫瘤を指摘された。当
院にて施行した造影 CT では、内部が単純で高吸収、皮髄相では辺縁を中心にリ
ング状の不均一な早期濃染を認め、腎実質相で wash out、腫瘍中央部は造影効
果の無い腫瘍を認めた。辺縁は不整で周囲脂肪織および腎筋膜後葉への浸潤が
疑われ、内部に壊死巣を伴っていると考えられた。術前診断は右 RCC cT3aN0M0
stageⅢと診断した。5cm 大の腫瘍であったが、片腎であるため、腎機能温存目
的に 2012 年 7 月、開腹右腎部分切除術を施行した。肉眼的には割面は黄色で出
血性、脂肪組織での周囲との境界は不明瞭な 3×3cm 大の腫瘤であった。術後の
病理組織学検査の結果は Inflammatory pseudotumor(xanthogranuloma)との診断
を得たが、詳細に病理標本を見直したところ、clear cell carcinoma と考えら
れ る 所 見 を 一 部 に 認 め 、 最 終 的 に は clear cell carcinoma with
xanthogranulomatous inflammation との確定診断を得た。xanthogranuloma と
RCC の合併はまれであり、文献的考察を含め報告する。
3.虫垂炎術前 CT にて偶発的に発見された Xp11.2 転座型腎癌が疑われた症例
高村 剛輔 1)
神原 太樹 2) 弓狩 一晃 3) 和田 耕一郎 1)
小林 泰之 1)
江原 伸 1)
那須 保友 1) 公文 裕巳 1)
田中 健大 4) 柳井広之 4)
黒田直人 5)
1)岡山大学大学院医歯薬総合研究科 泌尿器病態学
2)津山中央病院 泌尿器科
3)広島市立広島市民病院 泌尿器科
4)岡山大学医学部・歯学部附属病院 病理診断科
5)高知赤十字病院 病理診断科
杉本 盛人 1)
抄録 31 歳女性。急性虫垂炎のため、近医外科を受診。初診時 CT にて右嚢胞性
腎癌と転移性肝癌を指摘され、虫垂炎術後に精査加療目的にて当院紹介された。
CT ガイド下肝腎生検を施行し、未分化高悪性度の尿路上皮癌と病理診断された。
PET-CT、骨シンチでは多発骨転移が確認され、右腎盂癌、肝転移、骨転移とし
て、GCP(GEM,CDDP,PTX)化学療法を 2 コース施行した。各コース後の評価 CT
はいずれも PD で、頭蓋骨、左卵巣、両副腎、右乳腺に新たな転移の出現、原発
巣・肝転移の増大を認めた。病理組織の再検討目的に転移性頭蓋骨腫瘍・乳腺
腫瘍を摘出。各種免疫染色にて詳細な検討を行ったところ、TFE3 抗体にて陽性
染色を示し、Xp11.2 転座型腎癌と病理診断された。進行性腎癌としてテムシロ
リムス 25mg/週での投与を開始。2 コース施行後の CT では新たに膵臓転移が確
認されたものの、その後 2 コース施行後の CT では病変の増大・新病変の出現無
く、SD と判断された。今回我々は切除した転移巣から診断した Xp11.2 転座型腎
癌に対してテムシロリムスを使用し、一時的 SD を得ることが出来た。若干の文
献的考察を加え報告する。
4.淡明細胞成分と微小乳頭状・偽乳頭状成分とが認められた分類不能型腎細
胞癌の1例
鹿股直樹* 黒田直人# 森谷卓也*
*川崎医科大学 病理学 2 #高知赤十字病院
病理診断科部
症例:72 歳、男性。
2012 年 1 月末頃から右肩痛を自覚。6 月末頃から全身倦怠感・経口摂取困難・
体重減少(14kg 減)あり 7 月下旬に近医受診。CT で左腎腫瘍および腹部大動脈
瘤を認め、川崎医大泌尿器科へ加療目的で紹介・入院された。左腎癌(T2N1M1:
StageⅣ 肺・副腎・C4/5/7 転移あり MSKCC:intermediate risk)の臨床診断
のもと、8 月 30 日経腹的左腎摘除術施行。
肉眼像を提示する。
顕微鏡的には、淡明あるいは好酸性胞体を持つ細胞のシート状・胞巣状構造か
らなる部分と、微小乳頭状あるいは偽乳頭状などと思われる成分とが認められ
た。後者の成分はリンパ管侵襲をしばしば示すものであった。免疫染色では CD10
+ (淡明な方により強い)、CK7 + (ほぼ乳頭状部分のみで強陽性)、34βE12 + (乳
頭状部分のみ陽性)、CD117 陰性、HMB45 陰性、ALK (ニチレイ kit) 陰性、TFE3
陰性、cathepsin K 陰性、melanosome 陰性、Melan A 陰性であった。
5.肺腺癌の腎癌内転移の 1 例
呉秀賢 1、内藤宏仁 1、土肥洋一郎 1、松岡祐貴 1、矢野敏史 1、加藤琢磨 1、林田
有史 1、平間裕美 1、上田修史 1、杉元幹史 1、宮内康行 2,山下資樹 2,
渋谷信介 3、羽場礼次 3、筧善行 1
香川大学医学部泌尿器科 1
KKR 高松病院泌尿器科 2
香川大学医学部附属病院病理部 3
症例は 78 歳、女性。平成 24 年 1 月咳嗽で前医受診。CT で左腎上極に直径 5 ㎝
の不均一に造影される腫瘤と両肺に最大直径 3 ㎝の多発する腫瘤を認めたため
当科を紹介受診。腎癌多発肺転移と診断し、後腹膜鏡下左腎摘除術を施行した。
病理組織は淡明細胞癌+腺癌 pT1bN0M1 (PUL、HEP、OSS) で、淡明細胞型腎癌
内に腺癌の小結節を認め、腎癌内腺癌転移の所見であった。術後 20 日頃から肺
病変の急激な増悪及び胸水貯留による呼吸困難が出現し、全身状態が悪化した。
そのため術後 26 日目よりテムシロリムスを開始した。その際の胸水の細胞診で
はクラスV、肺腺癌であった。そこで原発性肺腺癌の増悪による病状悪化と診
断し、呼吸内科に転科して加療したが、全身状態悪化のため術後 41 日目に永眠
された。癌内癌転移はまれではあるが、ドナー腫瘍は肺癌、レシピエント腫瘍
は腎癌が多いとされている。本症例もこれに当てはまる。その理由として腎癌
は結合組織が少なく、毛細血管に富み、グリコーゲンが豊富なためと想定され
ている。一方、肺は腎癌の転移好発臓器であるため、腎腫瘍と併存する肺腫瘍
が見られた際には多くの場合は腎癌の肺転移だと考えて間違いない。しかし、
肺腫瘍の病理診断が確定していない限り、今回の症例のように常に腎癌と原発
性肺癌の重複癌の可能性も考慮すべきだと考える。
6.腎腫瘍との鑑別が困難であった IgG4 関連 inflammatory pseudotumor の 1
例
杏林大学泌尿器科
宍戸俊英
IgG4 関連疾患は IgG サブクラスのひとつである IgG4 の血清レベルの上昇と、病
変組織への IgG4 陽性形質細胞の浸潤、および線維化を特徴とする腫瘤形成性・
硬化性の慢性疾患である.臨床的には,その腫瘤形成傾向から,しばしば肉芽
腫性疾患、リンパ腫、癌との鑑別を要する。今回、左腎門部に発生した IgG4 関
連 inflammatory pseudotumor の 1 例を経験したので報告する。
症例は 64 歳の男性。2012 年 8 月 1 日下痢を主訴に当院消化器内科受診。2 か月
前より左背部痛も自覚していたため腹部 CT を施行したところ左腎盂腫瘍を疑わ
れ当科紹介となった。当科受診時尿所見に異常なく、尿細胞診も classⅡであっ
た。造影 CT で腎門部に径 3cm 大で内部不均一に造影される腫瘤を認め腎細胞癌
と診断した。また、MRI では左腎盂に径 35mm 大の腫瘤を認め、T1 強調像で腎実
質と等信号、T2 強調画像で不均一な低~高信号を呈し、拡散強調画像では高信
号を呈する腫瘤を認めた。また、腎杯の拡張も認められたため腎盂癌も否定で
きなかった。10 月 2 日腹腔鏡下にまず左腎摘除術を行い、摘出腎の腫瘍部を術
中迅速病理へ提出した。迅速病理診断では形質細胞浸潤をともなう結節性線維
性病変を認めるも明らかな悪性所見を認めず、腎摘除術のみで手術終了とした。
永久標本の病理診断は腎門部脂肪組織から発生した Inflammatory pseudotumor
で、IgG 陽性形質細胞が多数浸潤しており、その 10~20%が IgG4 陽性であった。
特に悪性所見を認めず、腎門部に発生した IgG4 関連 Inflammatory pseudotumor
と診断した。現在、全身病変評価中である。
7.膀胱小細胞癌の 1 例
遠藤 匠 1)、岡 了 1)、杉浦 恵子 1)、矢野 仁 1)、直井 牧人 1)、西見 大輔 1)、
梶 幸子 2)、神谷 直人 1)、高波 眞佐治 1)、蛭田 啓之 2)、鈴木 啓悦 1)
1) 東邦大学医療センター佐倉病院
2) 東邦大学医療センター佐倉病院
泌尿器科
病院病理部
今回我々は比較的稀である膀胱小細胞癌の 1 例を経験したので、若干の文献
学的考察を加えて報告する。症例は 44 歳男性。既往歴に脊椎損傷を認める。平
成 24 年 4 月上旬より肉眼的血尿を自覚。同年 5 月 23 日、精査加療目的に当科
初診となった。初診時の軟性膀胱鏡では、膀胱左壁に浮腫状の石灰化を伴う巨
大な隆起性病変を認めた。尿細胞診は classⅢであった。CT 及び MRI 上、膀胱
左側壁に 8cm 大の骨盤壁浸潤を伴う腫瘍並びに両側骨盤内リンパ節転移を認め
た。以上より、膀胱癌 cT4N2M0 stageⅣの診断に至った。同年 6 月 26 日に経尿
道的膀胱腫瘍切除術を施行。病理結果は、尿路上皮癌の成分は認められず、神
経内分泌マーカーの chromograninA・synaptophysin が陽性、NCAM が陰性であり、
small cell carcinoma、pT2、INFb、ly1、v0 の診断となった。その後、同年 7
月 17 日に両側尿管皮膚瘻造設術施行後、同年 7 月 30 日よりエトポシド・シス
プラチンによる化学療法を開始し現在 5 コース目を施行中である。画像上は PR
であり、今後は膀胱全摘除術を予定している。
8.膀胱腫瘍一塊切除(TURBO)検体に対するアガロースを用いた組織二重包埋
法
正峰会大山病院 泌尿器科 1)
兵庫医科大学 病院病理部 2)
造住誠孝 1) 2) , 廣田誠一 2)
【背景】膀胱癌に対しての経尿道的切除術(TURBT)は標準的治療として確立され
ており、診断・治療のために重要な術式である。しかし、切除された検体は断
片化や変性を伴うため正確な病理診断が困難という欠点がある。近年、内視鏡
下に一塊として腫瘍を切除する Transurethral resection of bladder tumor in
one piece (TURBO)が病理組織学的診断に適した術式として報告された(J Urol.
2000 Mar;163(3):878-9.)。今までに TURBO 検体に関しての組織切片作製の取扱
い方法に関しての検討はなされておらず、今回、アガロース二重包埋法を応用
して良好な組織標本作製が可能であったため報告する。
【方法】Agarose MP (Roche) を 2%水溶液となるよう調整し電子レンジを用いて
溶解させる。アガロース溶液を TURBO 検体をのせた容器に注ぎ、室温で冷却す
る。10 分ほどで溶液はゲル化し、検体がアガロースに包まれたブロックとなる
(一次包埋)。トリミングし、検体の最大割面に平行となるように約 3mm 間隔で
スライスする。割面が薄切面となるようにパラフィン包埋を行う(二次包埋)。
通常の標本作製と同様に薄切・封入・染色を行う。
【結果】乳頭状腫瘍のように Polypoid な検体であっても組織の立体構築が保た
れたままの切り出しが可能であり、粘膜面に対して垂直な割面の標本作製が可
能であった。一塊切除検体であるため、断片化・変性のない良好な組織切片が
得られた。
【考察】膀胱癌の病理診断においてはその良悪性のみならず、浸潤の有無・浸
潤癌の場合の深達度の判断は以後の治療方針に関して重要な意味を持ち、検体
処理の不具合に基づく曖昧な病理診断は患者の不利益に直結する。しかし、
TURBT により得られる検体は断片化や変性が強く、診断に苦慮することも少なく
ない。同様に内視鏡を用いて一塊切除する術式として、内視鏡的粘膜下層剥離
術(endoscopic submucosal dissection: ESD)が早期胃癌の治療法の一つとして
確立されており、我々は胃 ESD 検体の標本作製法として Agarose を用いた二重
包埋法を考案し、その有用性を報告している(J Clin Pathol. 2010; 904-9)。
この方法を TURBO 検体に応用して組織標本を作製することで良好な組織切片作
成が可能であった。一塊切除術およびアガロース二重包埋法を用いることで、
より正確な病理組織診断が可能となると考えられた。
9.リンパ節転移を伴った膀胱癌微小乳頭型(Micropapillary variant)の 1
例
鹿児島大学泌尿器科
鑪野秀一
症例は 69 才、男性。主訴は肉眼的血尿。右尿管口を巻き込む結節型広基性の膀
胱腫瘍が認められ、TURBT を施行した結果、Invasive urotherial carcinoma (UC),
high grade の診断であった。術前化学療法(GC 療法)を 2 クール施行後、2012
年 8 月腹腔鏡下膀胱全摘除術、骨盤内リンパ節郭清術、代用膀胱造設術を施行
した。病理結果は Invasive UC, micropapillary variant で右腸骨リンパ節に
も micropapillary pattern をとる転移が認められた。
膀胱癌の Micropapillary variant は 1994 年 Amin らにより初めて報告された、
浸潤性尿路上皮癌の稀な特殊型である。通常の尿路上皮癌と比較して予後不良
とされ、放射線療法や BCG、化学療法は効果が低く、pT1 でも膀胱全摘除術を行
った方がよいと報告されている。本邦での膀胱癌 Mocropapillary variant の報
告は自験例を含めて 10 例と少ない。今回、我々はリンパ節転移を伴った膀胱癌
Micropapillary variant を経験したので、文献的考察を含めて報告する。
10.膀胱原発 PEComa の1例
がん研有明病院泌尿器科 1)、同病理部 2)
上原 翔 1)、砂倉 瑞明 1)、田中 一 1)、秋山 佳之 1)、助川 玄 1)、吉川 慎一 1)、
湯浅 健 1)、浦上 慎司 1)、増田 均 1) 、山本 真也 1)、福井 巌 1)、米瀬 淳二 1)、
井下 尚子 2)、石川 雄一 2)
症例は 56 歳女性。肉眼的血尿を主訴に前医受診。腹部 CT にて膀胱頭側の膀胱
壁に広範に浸潤する 6.2×4.5×5.5cm の腫瘍を指摘され、当科に紹介された。
尿細胞診 classⅡ、膀胱鏡にて膀胱内腔はほぼ正常であった。pheochromocytoma、
mesenchymal tumor、liposarcoma、MFH などが鑑別に挙がり、膀胱部分切除骨盤
リンパ節郭清術が施行された。摘出した腫瘍は径 4.8×4.5×2.6cm、病理組織学
的所見では淡好酸性紡錘形細胞が密に増生する像を認めた。免疫組織化学所見
では、Chromogranin−、synaptophysin−、desmin−、SMA+、S100−、HHF35−、CD34
−、AE1/AE3−、MIB-1 index:2.5%、HMB45+、melan-A−であった。また染色体検査
では 3 番と 10 番に相互転座が認められた。以上の所見より、染色体の相互転座
を伴う、膀胱原発 Others Neoplasms with perivascular epithelioid cell
differentiation (PEComa)と診断した。 術後4ヶ月現在再発転移は認められ
ていない。若干の文献的考察を加え、報告する。
11.尿道背側に発生した腺癌の一例
宮崎大学医学部泌尿器科
村嶋隆哉、向井尚一郎、秋岡貴弘、深尾理、中原梢、北悠希、上別府豊治、
月野浩昌、上村敏雄、分田裕順、賀本敏行
宮崎大学医学部病理学講座構造機能病態学分野
佐藤勇一郎、浅田祐士郎
宮崎大学医学部附属病院病理部
丸塚浩助
【症例】79 歳、女性
【既往歴】糖尿病、高血圧
【現病歴】2011 年 8 月頃から排尿時の違和感を自覚。2012 年 2 月尿閉にて前医
受診。排尿障害の原因検索中に尿道背側に石灰化を伴う腫瘤を認め、精査加療
目的で当科紹介となった。
【検査所見】CT:尿道背側に径 3 センチ大の動脈相で造影され、石灰化を伴う
腫瘤を認めた。MRI:T2W1 にて淡い高信号を呈する同様の腫瘤を認め、造影効果
を認めた。
エコー上は石灰化のため腫瘤を正確に同定できず、触診では膣前壁に硬い腫瘤
を触知した。圧痛は認めなかった。
膀胱・尿道鏡では明らかな異常所見を指摘できなかった。
尿細胞診:クラスⅢ(炎症による反応性異型の疑い)
【経過】傍尿道腫瘤(腫瘍)の診断にて、経膣的に腫瘤切除を施行した。尿道
と腫瘤は強く癒着しており、剥離に難渋した。
【病理組織】腫瘤は筋層を伴う大腸粘膜、腺腫、そして浸潤性増殖を示す腺癌
組織から構成されていた。
【考察】傍尿道嚢腫もしくは尿道憩室内に発生した腸上皮化成を伴う腺癌を推
定したが、固有筋層を疑う所見を伴っており、原発部位、最終診断をどのよう
に判定すべきか苦慮している。なお、画像、術中所見上は消化管との連続性を
疑う所見は無い。
12.経直腸針生検にて認められた骨盤内 Gastrointestinal Stromal Tumor
(GIST)の 1 例
一番ヶ瀬優佳 1)生駒彩 1)徳田雄治 1)矢ケ部知美 2)北村浩晃 3)増田正憲 4)魚住二郎 1)
佐賀大学医学部泌尿器科 1)同地域医療支援学講座 2)同腫瘍内科 3)同病因病態
科学講座 4)
緒言)
前立腺発生と思われる骨盤内 Gastrointestinal Stromal Tumor(GIST)を報
告する。
症例) 74 歳男性。3 ヶ月前より下腹部違和感を自覚し、腹部膨満、排便・排尿困難を
主訴に前医を受診した。CT にて骨盤内に径 10x8cm の腫瘤を認め、2012/7/19 当科を
紹介され初診した。 前立腺肥大症の薬物加療中(2012 年 6 月の PSA:3.2 ng/ml)のほ
かは特記すべき既往歴なし。初診時の腫瘍マーカーは CEA:1.3, PSA:5.628, NSE:22.2,
IL-2R:445 であった。直腸診上、前立腺は超鵞卵大、表面不整で直腸を圧排していた。
膀胱鏡ファイバーも挿入可能で、膀胱粘膜や前立腺粘膜は保たれており、前立腺中葉肥
大様の腫瘤突出を認めた。下部消化管ファイバーでも粘膜に異常なし。経直腸超音波で
は、全体的に血流豊富で、内部不均一、形状も不整であるが、かろうじて前立腺の輪郭
を捉える事が可能。右葉は内部に低エコー領域も認めた。MRI で腫瘍 11.2×8.5×8.1cm、
分葉状、内部は変性壊死出血を伴っており、前立腺と直腸の間に位置し、腫瘍前面は前
立腺尖部~尿道との境界不明瞭、前立腺中部~基部・精嚢・膀胱後壁・直腸は圧排され
ているが境界は明瞭なことから、前立腺原発腫瘍の可能性が否定できなかった。経直腸
生検では、大型で大小不整を伴う棍棒状核と好酸性胞体を有する紡錘形細胞が主体で、
束状、或いは不規則な配列、一部柵状配列構造を認めた。浸潤性に増殖し、免疫染色で
CK AE1/AE3 (-), CD45 (-), vimentin (+), desmin (-), s-100 (-), α-sma (-), myogein
(-), CD34 (+), c-kit/CD117 (+), ALK-1 (-), ER (-), PgR (-)であった。細胞分裂像
は見られないが、腫瘍径 10cm 超で Gastrointestinal Stromal Tumor (GIST) , High Risk
と診断した。2012/8/2 上記診断より腫瘍内科にて、イマチニブ 400mg 内服を開始し、
2012/10/4
MRI で腫瘤は 11.2×8.5cm から 7.6×6.6cm まで縮小。浮腫と血小板減少の
ため 2 週間一時中止したが、
更なる腫瘍縮小を期待して 10 月 4 日よりイマチニブ 200mg
から再開中であり、今後、摘出手術を行う方針である。
まとめ) 最終的には摘出標本での確認を待たねばならないが、自験例は臨床的背景や
病理学的、免疫組織学的態度も前立腺間葉由来 GIST の報告と一致していた。
13.Gleason score grading コンセンサス(2005 年)以後の、 前立腺生検組
織における院外病理医と院内病理医の Gleason score の相違が、臨床病期 risk
分類に与える影響
愛知県がんセンター中央病院、泌尿器科
曽我 倫久人、小倉 友二、林 宣男
遺伝子病理診断部
谷田部恭
【緒言】Gleason score grading コンセンサス(2005 年)以後の、紹介元の院
外病理医と院内病理医との病理判断の相違が、臨床病期 risk 分類に与える影響
を検討した。
【対象、方法】
対象は、2009 年 1 月から、2011 年 3 月までに、他院で前立腺癌と診断され、当
院に治療目的にて紹介された 204 例とした。院外病理医(72 施設)と、院内病
理医の診断による GS、それに伴う risk 分類(D’Amico risk 分類)について比較
検討した。
【結果】院外病理医が前立腺癌と診断した症例の 6 例で、院内病理医は良性と
診断した。院外病理医の各 GS と、院内病理医の診断が一致する率は、全体では、
59.8%(122/204)であった。院内病理医により前立腺癌と診断された 198 例に
おいて、risk 分類を行い、比較検討を行った。院外病理医の診断による risk 分
類と、院内病理医の診断による分類の一致する率は、全体では、83.3%(165/198)
であった。各 risk 群における一致率は、low risk は 85.2%(52/61)、intermediate
risk は 71.4%(45/63)、high risk は 91.9% (68/74)であり、intermediate risk
で有意に一致率が低かった(P<0.0001)。
【結語】
Gleason score grading コンセンサス以後も、院内病理医と、院外病理医との
GS の相違により、特に intermediate risk においてリスク分類に不一致が起こ
ることが確認され、治療方針に影響がでる可能性が示唆された。
14.左臼蓋部に巨大な転移性腫瘤を形成した前立腺癌の 1 例
今給黎総合病院泌尿器科
坂口 大、立和田 得志、小原
安雄、西山
賢龍、中目
康彦
症例は 71 歳、男性。平成 24 年 9 月 25 日、増強する左股関節痛を主訴に、当院
整形外科を受診した。CT、MRI にて左臼蓋部、股関節部から恥骨、坐骨にかけて、
骨硬化像を伴う破壊性変化、その周囲に著明な腫瘤性病変を認めた。10 月 1 日
に CT ガイド下生検を施行され、病理組織検査では前立腺癌の転移と診断された。
そのため 10 月 5 日に当科紹介初診。PSA 1348ng/ml と異常高値であった。CT で
は同部位の他に転移巣は認めず、骨シンチでも左臼蓋部以外に異常集積を認め
なかった。10 月 6 日よりホルモン治療(MAB)を開始した。直腸診にて前立腺は
soft で硬結は触れず、経直腸エコーでも異常所見を認めなかったため、10 月 9
日に系統的前立腺針生検を 12 か所行った。病理組織検査にて前立腺癌を認めた
のは 12 か所中 2 か所のみで、1 か所は GS3+4=7、1 か所は GS4+4=8 であったが、
いずれも 10%未満でごくわずかな癌しか検出されなかった。10 月 10 日より左
臼蓋部への緩和的放射線照射(45Gy/15fr)を開始した。治療開始後 1 カ月後の
PSA 460.8ng/ml であった。
PSA 異常高値および画像上での左臼蓋部巨大転移などの臨床所見と前立腺生検
の病理所見が解離した症例であり、その後の治療経過を含め報告する。
15.前立腺 Mucinous adenocarcinoma の 1 症例
松田 良一郎 鑪野 秀一、五反田
鹿児島大学病院 泌尿器科
丈徳、榎田
英樹、中川
昌之
患者は 72 歳 男性。2012 年 3 月 PSA 4.88 ng/ml を指摘され前医泌尿器科を初
診。Pvol 15.3ml。生検で GS 4+3=7 Adenoca. (2/12)。cT1cN0M0。7 月 9 日に 当
院紹介初診され、病理標準化を行ったところ
Prostate : Adenocarcinoma, needle biopsy
#4 G.S. 3+4=7 [pattern 3, 25%, 3mm/12mm; pattern 4, 17%, 2mm/12mm]
#8 G.S. 4+3=7 [pattern 3, 4%, 0.5mm/12mm; pattern 4, 13%, 1.5mm/12mm]
Hyperplastic prostate, [#1-3, 5-7, 9-12], needle biopsy
(組織標本 #4, 8 では、adenocarcinoma が密集した異型腺管や、融合腺管、
篩状腺管を形成している。篩状腺管の中には、粘液の貯留もみられる)
という結果であった。既往歴は高血圧のみであった。10 月 9 日に LRP 施行。最
終病理結果は
Prostate : Mucinous adenocarcinoma, [35x30x25mm, 25g, single lesion,
lt/ant(TZ-PZ), 11mm, Gleason score:3+4=7, EPE0, RM0, ly0, v0, pn0, sv0,
pT2aN0], resection
Lymph node : No metastasis of carcinoma, 0/4, [right obutrator:0/2, left
obutrator:0/2], dissection
という結果であった。術後 PSA は 0.1ng/ml 以下であった。
前立腺粘液癌の発生頻度は 0.4%程度との報告であるが、25%以上の細胞外 mucin
を含んでいることから診断された。signet ring cell を含むグループは high
grade の前立腺癌と考えられ、5 年生存率は 0%と非常に悪いという報告もあった
が、近年の報告ではこれらに当たらない予後の症例も散見される。病理学的に
も「すべての粘液腺癌を Gleason score 4+4=8 とすべき」という意見と、「粘液
を無視して構築そのもので診断すべき」という意見が分かれているとのことで
あるが、今回この 1 例を報告する。
16.前立腺針生検における異型腺管の病理診断に対する PIN カクテル
(P504S+p63)、cytokeratin 5、D2-40 の免疫染色パネルの有用性の検討
高知赤十字病院・病理診断科部
黒田直人
【はじめに】前立腺の針生検診断において異型腺管の量が少ない場合や腺管の
密在する萎縮腺管・過形成病変に類似した病変の診断を行う際には、時に良性
と悪性との鑑別に苦慮することも少なくない。以前に演者は異型腺管の評価に
おける、基底細胞マーカー―としての D2-40 の免疫染色の有用性を報告した。
今回、PIN カクテル(P504S+p63)(BC4A4(p63), Biocare Medical, CA, USA)、
cytokeratin 5(XM26, Novocastra, UK)、D2-40(D2-40, DAKO, Denmark)の抗
体パネルを使い、前立腺針生検での異型腺管に適用し、その有用性を検討した。
【材料と方法】2012 年 1 月から 12 月の期間において高知赤十字病院・泌尿器科
で施行された前立腺の針生検診断において、病理診断で HE 標本において異型腺
管と判断され、上記の抗体パネルの免疫染色を施行した 14 症例の 20 病変につ
いて検討した。
【結果】上記パネルを用いて 20 病変のすべてにおいて病理診断が解決した。最
終診断の内訳は conventional adenocarcinoma, acinar type が 13 病変、
hyperplasia (postatrophic) が 5 病変、high grade PIN が 2 病変であった。
癌病変では AMACR 陽性で、p63、cytokeratin 5、D2-40 にて基底細胞が認識さ
れず、良性病変ではいずれのマーカーにても基底細胞が残存していた。
【まとめ】前立腺針生検標本の異型腺管における評価に PIN カクテル、
cytokeratin 5、D2-40 のパネルは有用であると考えられる。しかし、病変の量
が絶対的に少ない場合には慎重な最終診断が望まれる。PIN カクテルは自動免疫
染色装置で染色が可能であり、異型腺管と基底細胞の有無の評価が非常に容易
であることから病理診断には特に有用と考えられる。
17.基底細胞マーカーp63 陽性前立腺癌
内田 克典 1, 2、Jonathan I Epstein2、白石 泰三 1
1
三重大学大学院医学系研究科、腫瘍病理学
2
Department of Pathology, Johns Hopkins Hospital
基底細胞の有無は前立腺癌の病理診断の重要な指標であり、導管腺癌や基底細
胞癌などの一部の特殊型を除き、通常の腺癌は基底細胞が欠如している。稀で
はあるが基底細胞マーカーである p63 がびまん性に陽性を示す腺癌が存在する。
その概要を紹介する。
対象;2007 年から 2011 年までの期間に Johns Hopkins Hospital で診断したコ
ンサルテーション症例約 70000 例
結果;70 例の基底細胞マーカーp63 陽性前立腺癌を経験した。69 例は針生検症
例、1 例は TUR-P 症例であった。平均年齢 63.3 歳、グリソンスコアは 3+3=6: 54
例、3+4=7: 7 例、4+3=7: 5 例、4+5=9: 1 例、5+4=9: 2 例、5+5=10: 1 例であっ
た。形態的には萎縮腺管状、胞巣状、索状の増殖を示していた。
まとめ;非常に稀ながら基底細胞マーカーである p63 が陽性を示す前立腺癌は
存在する。形態的には萎縮亜型の腺癌と類似しており、導管腺癌や基底細胞癌
とは異なる形態的特徴を有している。確定診断のために基底細胞マーカーの免
疫染色を行う場合や免疫染色に主眼を置いた前立腺癌病理診断を行う場合は、
p63 陽性前立腺癌の存在を認知し、その可能性を踏まえた判断が望まれる
18.日本における前立腺ラテント癌の経時的動向
車 英俊 1、岡安美央子 2、木戸雅人 1、山本順啓 1、古里文吾 2、木村高弘 1、
鷹橋浩幸 2、頴川 晋 1
1
東京慈恵会医科大学泌尿器科、2 同病理学講座
【目的】前立腺癌の罹患率は世界的に増加しており、特にアジア諸国ではその増加率は
著しい。PSA スクリーニングの普及や生検などの診断技術の進歩による検出率の向上が
その一因と考えられているが、単に診断される割合が増えているだけならば真に前立腺
癌が増えているとはいえない。この疑問に答えるため、病理解剖で初めて見つかる前立
腺ラテント癌の約 25 年間の動向を調査した。
【対象と方法】東京慈恵会医科大学関連施設で病理解剖が行われた、生前に前立腺がん
と診断されていない男性の症例を対象とした。1983 年から 1992 年の間に剖検された症
例群(A 群)627 例と 2009 年から 2011 年の間に剖検された症例群(B 群)107 例を比較
した。前立腺は4 mm のステップセクションとし、HE 染色で評価した。各群症例につき、
年齢、前立腺重量、ラテント癌の有無、癌の体積、および、分化度を比較検討した。
【結果】A 群の平均年齢は 62.2 歳(0 – 92 歳)、B 群は 69.0 歳(24 – 92 歳)で、両群
に差は見られなかった。前立腺重量の平均は、A 群 24.9 g、B 群 32.3 g で有意に B 群
で増大していた(p<0.01)。A 群では、前立腺は 20 歳代まで徐々に増大し、30 歳代でプ
ラトーになる。60 歳代から再度増大を始めるが、その増加は緩やかで最終的に 80 歳代
以降でもプラトー期の約 1.15 倍の重量であった。一方、B 群では、30 歳代のプラトー
期ですでに A 群の 1.5 倍の重量となり、さらに 60 歳代から急速に再増加し、80 歳代以
降ではプラトー期の 1.8 倍の重量に達していた。ラテント癌は A 群で 20.5%、B 群で
43.0%にみられ、その差は年齢を経るほど大きくなり、70 歳代では A 群 30.5%、B 群
43.9%、80 歳代では、A 群 42.9%、B 群 65.2%の症例でラテント癌が発見された。前
立腺癌体積は、A 群で平均 230.4 mm3、B 群で 1,111.1 mm3 と B 群で有意に増加していた
(p<0.01)。臨床的意義のある癌の指標とされる癌体積 500 mm3 以上の症例は、A 群で
9.6%、B 群で 26.1%に見られた。分化度は、A 群に合わせて 1985 年度版前立腺癌取扱
規約にのっとって分類すると、各年齢階層で B 群の方がより低分化型が多い傾向がみら
れた。
【結論】1983-92 年と比較すると、2009-11 年の症例では、前立腺重量が増加し、ラテ
ント癌の発生も増加していた。さらに、体積が大きく分化度の低い癌の割合が多くなっ
ていた。この事実は、前立腺癌の人種差、発生要因、自然史を検討する上で極めて重要
な意味を持つと考えられる。
19.前立腺尖部正中の尿道腹側領域の生検:生検方法と臨床的意義
岡田洋平 1)、川上理 1)、内島豊 2)、山田拓己 1)
1) 埼玉医科大学総合医療センター 泌尿器科
2) 赤心クリニック 泌尿器科
<背景>
前立腺尖部は癌の好発部位であるが、尖部腹側の生検は困難であり癌を見逃す
可能性がある。さらに尖部正中の尿道腹側領域の生検は尿道出血の危険が高く、
経会陰的生検法によっても通常は行われない。今回われわれは尿道腹側領域の
生検を安全に行う方法を開発し、その臨床的意義を検討した。
<対象と方法>
対象は PSA20 以下で経会陰前立腺生検を行った 115 例。全身麻酔導入後に載石
位をとり 14Fr カテーテルを留置。経直腸エコーで前立腺を観察後、会陰正中 5mm
側方から生検針を刺入し、para-sagital(腹側、背側)、far-latetal(腹側、
背側)の左右 8 箇所、及び尿道背側、尿道腹側の計 10 か所の生検を行った。尿
道腹側領域の生検は尿道全長を観察下におき、生検針をすすめた。年齢、PSA、
前立腺体積、癌の有無、Gleason Score、尿道出血の有無、その他合併症を記録
した。
<結果>
年 齢 46–88( 中 央 値 70 )、 PSA 3.6–20.0ng/ml( 中 央 値 8.4) 、 前 立 腺 体 積
14.1–131ml(中央値 31.9)、直腸診陽性は 29 例(25.2%)であった。癌陽性の 48
例(41.7%)のうち、尿道腹側領域の癌陽性は 27 例(23.5%)であり、他の 9 箇所の
生検部位の癌陽性(8 – 14%)より多くの癌を検出した。尿道腹側領域 1 か所単独
の癌陽性が 7 例(6.1%)で、全例 Gleason Score 3+3 であった。複数個所癌陽性
例のうち、尿道腹側領域が最も high grade で同部位の生検により Gleason Score
が up grade したのは 2 例(1.7%)であった。生検直後の尿道出血を 3 例(2.6%)に
認めたが、自然軽快した。入院期間の延長、治療を要する合併症を生じなかっ
た。
<考察>
尿道全長を描出することにより前立腺尖部正中の尿道腹側領域の生検を安全に
行うことができた。同部位の生検は癌の陽性率が高いが high grade の癌は少な
く、significant cancer の発見を目的とする臨床的意義に関しては今後の検討
を要する。
教育講演
「改定された取扱い規約に関する疑問点
て」
都築豊徳
特に尿路上皮癌につい
名古屋第二赤十字病院病理診断科
2011 年 4 月に腎盂・尿管・膀胱取り扱い規約第1版(以下規約と略す)が発
刊された。規約の病理項目は異型度分類に WHO/ISUP 分類を採用するなど、従来
の概念から大幅な変更がなされた。2013 年 1 月号の European Urology に
International Consultation on Urological Diseases (ICUD)からの膀胱癌に
対する提言が発表された。著者は規約及び ICUD 双方の編集に携わる機会を得て、
ICUD の編集に規約の内容が盛り込まれている。従って規約と今回の ICUD の提言
との間に齟齬はほとんどなく、規約は現在の世界標準を示す書物と言うことが
出来る。その反面、規約の中の種々の項目で、誌面の関係から解説が十分され
ていない項目も存在する。
本講演では規約に関する質問で多い項目(TUR-BT 標本での pT stage の方法、
TUR-BT 標本での固有筋層の判定、膀胱癌 pT3a の診断基準、尿細胞診と WHO/ISUP
の相関)の解説を行う。併せて、ICUD で上記項目がどのように解説されている
かも示す。
特別講演
Classification of Renal Cell Carcinoma: The 2012 ISUP Revision
David Grignon, MD
Indiana University, Indianapolis, IN
Since the publication of the World Health Organization Classification of
renal tumors in 2004, there have been significant advances in the
identification of types of renal cell carcinoma (RCC) that had not been
recognized as specific entities. At the United States – Canadian Academy of
Pathology meeting in 2012, the International Society of Urologic Pathology
(ISUP) held a consensus conference devoted to renal neoplasia. A revision of
the 2004 WHO Classification of Renal Tumors was proposed to include newly
recognized entities and to further clarify previously included entities. In this
presentation the 2012 ISUP classification will be reviewed with a focus on
the newly recognized tumors including tubulocystic RCC, acquired cystic
kidney disease-associated RCC, clear cell papillary RCC, RCC of the
hereditary leiomyomatosis and RCC syndrome and the renal cell neoplasm of
oncocytosis. Translocation associated RCC will also be reviewed. Lastly other
potential new entities that have not yet been formally recognized will be
discussed.
日本泌尿器病理研究会 会則
第1条(名称)
1.本研究会は、日本泌尿器病理研究会(以下「本会」という)と称する。
本会の英文名称は、Japanese Society of Urological Pathology 称し、略称を
JSUP と称する。
第2条(目的)
1. 本会は、泌尿器科疾患の臨床・基礎病理学的研究を幅広く行い、もって泌尿
器科疾患のよりよい治療法を探り、患者の疾患予後,QOL の向上を図ること
を目的とする。
第3条(事業)
本会は、第2条に掲げる目的を達成するため、以下の事業を実行する
(1)学術集会、研究会等の開催
(2)学会誌、その他出版物の刊行
(3)研究及び調査
(4)内外の関連学術団体等との連絡及び協力
(5)その他本会の目的を達成するために必要な事業
2.
本会は、会員に対して1年に1回以上の事業報告を行う。
第4条(会員)
会員は、本会の目的および趣旨に賛同する個人・団体とする。
会員には個人参加の正会員と団体参加の賛助会員を設ける。
本会への入会は、幹事会の承認を得る事とする。
第5条(会費)
会員は会費を納めるものとする。
会費の運用細則は,別に定める。
第6条(役員)
本会には次の役員をおく。
代表幹事
幹事
2名
(病理 1 名
泌尿器 1 名)
若干名
会計監事
1名
顧問
若干名
役員に係る運営細則は、別に定める。
第7条(幹事会)
1. 本会の議決機関として幹事会を設ける。
2. 幹事会の運営細則は、別に定める。
第8条(会計)
1. 本会の会計年度は、毎年 4 月1日に始まり翌年 3 月 31 日に終わる。
2. 本会の運営費は、会費、寄付金、利子その他をもって当てる。
3. 会計監事は、年1回会計監査を行い幹事会に報告し承認を得る。
4. 本会の予算および決算は、幹事会の議決を要する。
5. 本会は、会員に対して1年に1回以上の会計報告を行う。
6. 本会の会計報告については総会で決議を経る。
第9条(入会・退会等)
1. 入会を希望する者は、所定の手続きに従い事務局に届け出るものとする。
2. 退会する会員は、所定の手続きに従い事務局に届け出るものとする。
3. 連続して 2 年間会費を納付しない会員は、幹事会の決議により退会したと認
定することができる。
4. 以下の各号に該当する会員は、幹事会の決議を経て除名することができる。
(1) 本会の名誉を傷つける行為をした会員
(2) 本会の目的に沿わない行為をした会員
(3) 本会の活動を誹謗中傷した会員
(4) その他社会的に許容されない行為等をした会員
第10条(会則改定・施行)
本会則を改定するには、幹事会の決議を必要とする。
本会則に定めのない事項は、幹事会において協議され決議する
第11条(事務局)
1.本会の事務局・連絡先は以下の施設に置く。
2.事務局には事務局員を若干名置くことができる。
〒206-0033
東京都多摩市落合1-32-1ペペリビル5F
医療法人めぐみ会 田村クリニック 泌尿器科 伊藤貴章
e-mail:[email protected] ホームページ:http://www.jsup.org/
2011 年4月1日:発効
日本泌尿器病理研究会 運営細則
第1条(会費)
1. 正会員の年会費は 2,000 円とする。
2. 賛助会員の年会費は 50,000 円とする。
第2条(役員)
1. 代表幹事は幹事の互選で選ばれ、本会を代表する。
2. 幹事は本会の運営に関する事項を協議し決定する。
会計監事は本会の正会員とし、本会の会計を監査する。
顧問は本会運営に関して助言する。
役員は幹事会の推薦によって定められる。
任期は2年とし、再任を妨げない。
第3条(幹事会)
幹事会は代表幹事の召集により開催される。
幹事会は幹事と会計監事で構成される。
幹事会は幹事の過半数(委任状を含む)の出席で成立する。
幹事会の意思決定は出席者の過半数の賛成で成立する。
執行部メンバー
(2011 年4月より)
顧問
代表幹事
白石泰三(病理)
賀本敏行(泌尿器)
(病理)
幹事
鷹橋浩幸
都築豊徳
長嶋洋治
村田晋一
(泌尿器)
幹事
伊藤貴章(兼:事務局担当)頴川
那須保友
三木健太
晋,黒岩顕太郎
鈴木啓悦
山本真也
(五十音順)
会計監事
鷹橋浩幸(兼任)
補則
製薬会社等企業の社員が正会員を希望する場合についての申し合わせ
希望者が本会の目的と趣旨に賛同しており、幹事会の承認を経て正会員となる
ことができる。
第 2 回日本泌尿器病理研究会(JSUP) プログラム 抄録集
2013 年 2 月 1 日発行
編集 第 2 回JSUP 伊藤貴章 鷹橋浩幸
発行 日本泌尿器病理研究会事務局
〒206-0033 東京都多摩市落合 1-32-1 ぺぺリビル5F
医療法人めぐみ会 田村クリニック 泌尿器科 伊藤貴章
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