第109回医師国家試験 予想問題

第109回医師国家試験 予想問題
初めに
株式会社まなびのデザインでは110回以降の国試受験生向けのメルマガ配信
を企画しております。その一環として109回医師国家試験の「予想問題」を数
問提示してみました。107回の問題にも実臨床を意識した問題が少しずつ組
み込まれており、108回でその割合が大きくなり、多くの受験生に驚きを与
えました。今回作成した予想問題は、今までの国家試験に出題されたことの
ないテーマの中で、実臨床では当たり前のような知識を中心に取り上げてお
ります。
109回ないし110回くらいまでは、従来の過去問ベースの対策で十分合格で
きるでしょうが、近い将来には、それだけでは不十分になる可能性も大いに
ありえます。したがって、109回の受験生は当サイトをあくまで参考程度に利
用していただきたいです。109回の問題が、108回と同様の傾向や難易度で出
題された場合であっても、従来の勉強方法で十分に対応できるかと思います。
国家試験のプロは予備校講師ですが、常に実臨床に接している予備校講師は
極めて少なく、かといって、現場のプロである臨床医の中に国家試験問題に
精通している方は少ないでしょう。現実問題として、国家試験のプロかつ実
臨床のプロという条件を満たす医師はほぼ皆無であり、この新傾向に順応す
るまでに少し時間がかかりそうな印象ではあります。(※あくまで個人的な見
解です)
対策の練りにくい「実臨床に沿った傾向」を研究し、メルマガ配信しようと
いうのが本企画の意図です。具体的な配信開始は2015年3月を予定してお
り、最初は今年度第109回医師国家試験の講評や解説、その後はこれまでの
過去問や実臨床の知見を基に来年度第110回医師国家試験の対策をお届けし
ます。興味のある方は、件名を【メルマガ配信希望】として下記メールアド
レスまでご連絡ください。メルマガ配信の準備が出来次第、案内のメールを
差し上げます。[email protected]
文責) 株式会社まなびのデザイン 代表 民谷健太郎
本コンテンツの改変及び転載は固く禁じます。
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第109回医師国家試験 予想問題
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参照URL: 重症度判定基準
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急性膵炎
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■□要旨
・急性膵炎の重症度は「予後因子」と「造影CT grade分類」とで判定される
・造影CTで「炎症の膵外進展度」と「膵造影不良域」を評価する
・炎症の範囲が広いほど、あるいは、造影不良域が多いほど予後不良となる
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■□解説
急性膵炎のガイドラインは2003に初版が発行され、2007、2010と更新され
http://www.suizou.org/
APCGL2010/
APCGL2010.pdf
ました。 その中で、厚生労働省研究班による急性膵炎の重症度判定基準とい
う項があります。 そのうち「予後因子」は以前の国家試験に何気なく出題さ
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れています。 Ca値が低下する、LDH値が増加する、といったような選択肢を
参照URL: 救急医学会
見たことがあるでしょう 。 「予後因子」と「造影CT grade分類」とで、膵炎
http://www.jaam.jp/html/
dictionary/dictionary/word/
0908.htm
による死亡予測のデータがあります。 後者の「造影CT grade分類」が、日常
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の診療で使われている割に、 これまでの国家試験に出題されたことが無い
テーマなのです。
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■□予想問題
急性膵炎の重症度について正しいものを2つ選べ
a. Ca値が高いほど予後が悪い
b. LDH値が低いほど予後が悪い
c. アシドーシスほど予後が悪い
d. 炎症の膵外進展度は腎下極以遠で予後が悪い
e. 造影CTで造影される領域が多いほど予後が悪い
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正解) c,d
解説)
abcは「予後因子」、deは「造影CT grade分類」からの出題
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第109回医師国家試験 予想問題
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FAST
■□要旨
・FASTは、外傷初療の御作法である
・FASTは循環(Circulation)の異常を見つけるために行われるエコー検査であ
る。
・プローブの当てる箇所は、心膜腔・モリソン窩・脾周囲・ダグラス窩 (+左
右胸腔)
■□解説
日本外傷学会監修の「外傷初期診療ガイドライン(JATEC)」でFAST(Focused
Assessment with Sonography for Trauma)の重要性が述べられています。
外傷患者を診察する上で、優先的に重視されるのがABCDEとなります。
その中の循環(C)の評価では、胸部・骨盤レントゲンとFASTが重要です。
救急外来で簡便に出来る画像検査のがポータブルのレントゲンとエコー検査
なのです。
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FASTの具体的な手法についての説明は成書に譲るとして、その目的と、具
体的に何を見ているのかを押さえれば国試としては十分かと思われます。
外傷に関する臨床問題が増えているなかで、FAST単独での出題はまだありま
せん。
プローブの当てる部位と、エコーフリースペースが生じうる場所をチェックし
ましょう。
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■□予想問題
出典:H26年 救急専門医試験 問題2より
外傷診療のFAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)につい
て誤っているのはどれか。1つ選べ。
(a)心嚢腔には頭側を見上げるようにアプローチする。
(b)肝下縁と右腎の境界を観察する。
(c)右胸腔へのアプローチでは上位肋間背側を用いる。
(d)脾周囲には背側肋間からアプローチする。
(e)Douglas窩の評価は導尿後に行う。
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正解) e
解説)
b Morison窩
e FASTは迅速に行われる。エコーは一般的に尿が残っている方が見やすい
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GCS (Glasgow Coma Scale)
■□要旨
・GCSは意識レベルを評価する指標の一つ
・E(開眼),V(言語音声反応),M(最良の運動反応)で評価される
・外傷初療においてもGCSは重要な位置を占め、今後の更なる出題が予測さ
れる
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■□解説
意識状態の評価には様々なスケールが用いられますが、有名なのがJCS、
GCS、AVPU(小児での意識レベル指標)あたりでしょうか。今までの国家試験
には出題されていなかったGCSが108回の問題で出題されました。前述の
JATECにおける”ABCDE”のうち、D(中枢神経の異常)の項目でGCSは重要な評
価項目の一つとして位置付けられています。
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(したがって、今後の外傷の臨床問題ではJCSではなくGCSに変わることも予
測されます)
108F20が該当する問題になりますが、3点刻みの選択肢であり、解答が容易
だったように思えます。これはもしかしたら「GCSは一度出題したので、今
後は容赦なく出題する」という出題者側からのメッセージなのかもしれませ
ん。(※あくまで個人的な感想です)
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出題のバリエーションとしては、
・E, V, Mそれぞれを切り出して問われるパターン
・計算問題 or 1点刻みで問われるパターン
この2パターンが予想されます。
どちらにも対応できるよう確認しておきましょう。
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■□予想問題
自発開眼はなく、呼びかけでも開眼しないが、痛み刺激で開眼する。痛み刺
激でうなり声をあげるが、意味のある発語はみられない。また、痛み刺激で
右上下肢は全く動きがみられないが、左上下肢は払いのける動作を示す。
Glasgow Coma Scaleによる評価として正しいのはどれか。(108F20改題)
a E0
b E1
c E2
d E3
e E4
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正解) c
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第109回医師国家試験 予想問題
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参考URL
http://www.ncchd.go.jp/
center/benshoku/
for_medicalperson/docs/
manual.pdf
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先天性胆道閉鎖症のスクリーニング
■□要旨
・母子健康手帳の中に便色カードが掲載されている
・白色便を早期発見することで胆道閉鎖症のスクリーニングの役割を担う
・手術時日齢が高いほど、術後20年生存率が低くなる。
■□解説
胆道閉鎖等の早期発見のための便色カードが、平成24年度より全国の母子
健康手帳に掲載されることが義務付けられました。ご存知の通り、白色便が
先天性胆道閉鎖症を診断するための良いヒントになり、術後20年生存率は手
術時日齢と負の相関があることが報告されています。このように便色カード
は公衆衛生・小児科どちらの領域としても重要なテーマなのです。このカー
ド自体、国家試験での出題がまだ成されていないので今回取り上げておりま
す。
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■□予想問題
次の画像は平成24年度より母子健康手帳に掲載されることが義務づけられる
ようになった項目である。このカードについて適切な記述はどれか。3つ選
べ。
a. 出生時の新生児が対象である。
b. 便色を評価するためのカードである。
c. 術後の予後は手術時日齢が高いほど良い。
d. 胆道閉鎖症のスクリーニングに適している。
e. ビタミンK欠乏による頭蓋内出血をきたす疾患の早期発見に有用である。
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正解) b, d, e
解説)
a 「生後2週」「生後1か月」「生後1∼4か月」という記入欄がある
c 手術時日齢が高いほど術後の予後が悪い → 早期発見が有用
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第109回医師国家試験 予想問題
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NIHSSスコア
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参考URL
NIHSSスコア
http://melt.umin.ac.jp/
nihss/nihssj-set.pdf
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■□要旨
・NIHSSは 脳卒中重症度評価スケールの一つである
・t-PA治療の治療効果判定にも用いられる指標となる
・簡便な身体診察での評価項目 (高得点ほど重症。42点満点)
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■□解説
脳
塞に対するt-PA静注療法の適応において、2012年10月のガイドライン
改定で発症3時間以内から4.5時間以内に延びたことは有名な話ですが、実臨
床でt-PAがどのように用いられているのかを知ることも重要です。
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t-PAの静注療法は、奏功すればみるみるうちに改善が見て取れます。その効
果判定の指標に用いられるのがNIHSSスコアなのです。と同時に、t-PAは出
血のリスクが高まりますので
塞内出血が出現した際に治療中止の指標にも
なりえるのでNIHSSは実臨床で重要な役割を占めています。
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現場の話を少しだけすると、t-PAは1時間かけて持続静注を行う薬剤です。
(投与量は、体重によって決められます 本邦では0.6mg/kg)「集中治療がで
きる施設」というのが使用できる条件の一つになっています。
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t-PA投与中の一時間は15分おき、その後8時間までは1時間おき、そして以降
から投与開始して24時間以内は2時間おきにNIHSSスコアで治療効果判定を
rt-PA静注療法 治療指針
行っていくのです。
http://www.jsts.gr.jp/img/
rt-PA02.pdf
具体的なNIHSSの評価項目については、参考リンクをご覧になって一読して
!
いただければと思います。
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■□予想問題
脳卒中におけるt-PA静注療法について誤っているものはどれか。2つ選べ。
a. 合併症に症候性頭蓋内出血がある
b. 発症後4.5時間以内が条件に含まれる
c. 治療の効果判定は主にNIHSSスコアで行われる
d. PTやAPTTの値は治療の適応とは無関係である
e. 急性大動脈解離の合併例では積極的な適応となる
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正解) d,e
解説)
d,eは適応のチェック項目に含まれる。
禁忌の中に、PT・APTTの延長や、急性大動脈解離の合併等がある。
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第109回医師国家試験 予想問題
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高血圧の初療
■□要旨
・高血圧の診療ガイドラインが2014年4月に改訂された
・高血圧初療の第一手は白衣高血圧と二次性高血圧の除外
・スクリーニングとして、採血と腎血管エコーが適切
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■□解説
当たって当然の予想ですが、初めて高血圧を指摘されて(あるいは自分で気
づいて)外来受診するというパターンが出題されるでしょう。これまでの過去
問でも既出の出題パターンなのですが、「健康診断で高血圧を初めて指摘さ
れた」というくだりから始まるエピソードが該当します。
2014年4月に高血圧の治療ガイドラインが発行されました。5年ぶりの改訂
ということで話題になっているので、関連項目が出題されることが予測され
ます。
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「血圧が高い」ことを指摘されてきた方へのアプローチは、まず白衣高血圧
と二次性高血圧の除外を考えます。疫学的には本態性が約9割で、残り1割が
二次性となるので頻度は低いのですが、本態性の治療と異なるのでまずは症
候性の高血圧を除外することから始めます。
二次性高血圧は、大きく「血管性」と「内分泌性」に分かれます。前者は腎
血管性高血圧や大動脈炎症候群、後者は原発性アルドステロン症、Cushing症
候群、甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫等が該当し、そのスクリーニングとし
て、腎血管エコーと採血(レニン活性、アルドステロン)を調べます。
特徴的な外見から、Basedow病やCushing症候群は診断の当たりが付けやす
いのですが、アルドステロン症の類や褐色細胞腫(頻度としては稀です)は特異
的な身体所見が無いのが特徴ですので、採血が重要になります。
試しに過去問の「アルドステロン症」や「褐色細胞腫」の臨床問題を眺めて
みてください。
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例えば108回ではD問題の53が上記のパターンに当てはまります。健診で高
血圧を指摘された38歳女性に対する初療を問われている問題です。特徴的な
身体所見や外見は無く、Naがほぼ正常上限、Kも正常下限という微妙な採血
結果です。これを有意と取るならアルドステロン症、「ときに頭痛や動悸が
する」「心電図で軽度左室肥大所見あり」を有意とみなすなら褐色細胞腫の
可能性が高くなります。いずれにせよ、この時点ではどちらの疾患かは判断
できないので、スクリーニングとなりうる検査を選択することが次の一手と
なります。「次に行う検査」なので、簡便で侵襲性が低く、感度が高いもの
を選ぶと、腹部単純CTと血漿レニン活性/アルドステロン濃度比が正解とな
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第109回医師国家試験 予想問題
ります。(選択肢が微妙だったので、結果的には割れ問になりましたが、良問
の類に含まれると思います)
他にも108回D問題の28のような出題が典型的でしょう。血圧が高い以外に
は特記すべき身体所見がなく、Na高値・K低値からレニン活性とアルドステ
ロンを検査項目に含めています。レニンもアルドステロンもどちらも高値で
あり続発性アルドステロン症のパターンを認めており、案の定、腎動脈に狭
窄に認めるという出題でした。この問題は「33歳女性が2か月前の健康診断
で高血圧を指摘され来院した」という一文から始められています。
このように「高血圧を初めて指摘された」から始まる冒頭では、本態性高
血圧の生活指導の問題や、上述の二次性高血圧の問題というように展開させ
ることができるので、109回でも数問は出題されることが予測されます。
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■□予想問題
33歳の女性。2か月前の健康診断で高血圧を指摘され来院した。1年前の健
康診断時は正常血圧であった。既往歴と家族歴とに特記すべきことない。脈
拍76/分、整。血圧 180/110mmHg。身体診察上も有意な異常所見は得られな
かった。ここ2か月間の家庭血圧は、収縮期血圧が160以上、拡張期血圧が
110以上で精査を希望されている。
次にすべき検査は何か。3つ選べ。(108D28, 108D53改題)
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a. 腎血管エコー
b. MIBGシンチグラフィ
c. 血漿レニン活性値測定
d. 血漿アルドステロン値測定
e. 選択的副腎静脈血サンプリング
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正解) a,c,d
解説)
白衣高血圧が除外されているので、二次性高血圧の有無を検索します。まず
はスクリーニングで採血と腎血管エコーを行い、精査を進めていきます。レ
ニン・アルドステロン以外では、電解質(特にNa, K, Cl)が重要であり、想定さ
れる疾患によっては、コルチゾール・ACTHや、fT3・fT4・TSH、血中・尿中
カテコラミンを追加することがあります。
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雑記1:非典型所見
■□要旨
・典型的な症例プレゼンテーションの中の「非典型所見」に注意!
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■□解説
108回の医師国家試験をざっと眺めてみての感想ですが、「実臨床」に則
した出題の割合が多くなったように思えます。古典的な国試問題では「典型
的な所見」のみが列挙されているので、一部を拾うことが出来れば、診断が
容易にできることが可能でした。しかし、107回・108回の臨床問題の本文中
には、ノイズというか、診断には無関係な情報が紛れ込むものもあり、現実
を意識した記述が多くなったような印象があります。
例を挙げると、108C29では、意識障害の原因を問うており、低血糖を疑う
というところまでは今まで通りなのですが、本文中には意識障害をきたすSU
剤の記載以外に、ACE阻害薬の内服歴も記されております。特にここで混乱
することはありませんが、より本物の症例に近くなっているように思えまし
た。従来であれば、高血圧やACE阻害薬はその症例に関係なければ記載が省
かれていたはずです。また、108D49はアニサキスの問題ですが、キーワード
の「イカ」や本文の全体から判断すればアニサキスだと分かるのですが、「飲
酒後」という情報に引っ張られてしまえば急性膵炎が想起されてしまい、実
際に急性膵炎を疑った受験生もいたようです。
まだ出題例はありませんが、「温泉に行っていない」と明記された「レジ
オネラ肺炎」や、「最近の歯科治療歴は無い」と敢えて書かれた「感染性心
内膜炎」、が今後は出題されることになるでしょう。なぜならば、温泉歴の
あるレジオネラや、歯科治療歴のあるIEよりも、そうでない例の方が実臨床
では多いからです。従来の、温泉→レジオネラ、歯科治療→IE、インコ飼育
→クラミジア、というような安直なキーワード飛び付きの勉強法では対応し
切れなくなりそうです。一部のキーワードに飛び付くのではなく、本文の情
報を前から順に(病歴→身体所見→検査所見の順に)読みながら推論を組み立て
るという当たり前の姿勢が求められるようになるでしょう。
ひとまず、迷ったときは、一度俯瞰的な視点になって全体像をつかむよう
心がけることが重要です。そこで、最も「らしい」疾患は何か?という問いを
投げかけ続けることが重要なのではないでしょうか。典型的な症例プレゼン
テーションの中に「非典型所見」が紛れ込む、そんなご時世です。
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第109回医師国家試験 予想問題
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■□予想問題
・温泉に行っていないレジオネラ肺炎
・歯科治療歴の無い感染性心内膜炎
・DM高齢女性の無痛性心筋
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・ST上昇の無い心筋
塞
塞(non-STEMI) ※付記 実は過去問に、non-STEMIを思わせる出題がありました。それが
107C27なのです。高血圧の56歳男性が突然前胸部をきたすという病歴で始ま
り、特記すべき身体所見の異常は無く、WBC正常、AST正常・LDH正常・CK
正常上限、心電図でST−T変化なし、心エコーで壁運動異常なし、という症
例が出題されています。この時点で不安定狭心症や前述のnon-STEMIが否定
できないので、心筋トロポニンTを追加して、実臨床では心臓カテーテル検査
に進めるだろうという症例が必修で出題されているのです。
この問題から得られる教訓としては、「キーワード飛び付きは危険」とい
うことです。心電図が正常かつ心エコーが正常だからといって、ACS(急性冠
症候群)は否定できません。全体像をみて判断することが重要だということを
今一度強調させてください。
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雑記2:時系列
■□要旨
・時系列に強くなる!
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■□解説
108B50は新傾向の部類に入る問題の一つとしてカウントされるでしょう。
すべての診療には当てはまることではありませんが、一部のmanagementに
おいて、診療の順序・作法が重要になることが実臨床では多々あります。細
菌性髄膜炎の出題は108回では3問出題されていますが(108B50,51、
108D50、108I78)、 細菌性髄膜炎は稀な疾患であり、内科的Emergencyと
称されるくらい、時間との戦いが重要になる疾患の一つです。つまり、治療
までの時間が予後に影響を与えるような緊急性の高い疾患なのです。もちろ
ん、抗菌薬の投与がキモになるのですが、どのタイミングが相応しいのかを
問うたのが108B50です。髄液の培養で起炎微生物を同定したいので、髄液検
査の前に抗菌薬を投与してしまうと培養の結果に影響を与えることがありま
す。現実的には髄液に移行するまでのタイムラグが生じるために腰椎 刺の
前後で抗菌薬投与をする施設もありますが、ガイドライン的には、髄液検査
の直後に速やかに抗菌薬を投与するというのが正解となります。
他にも「さ・る・も・ちょう・しん・き」という救急外来初療の有名な語
呂なども時系列を考えるには有用です。救急車が搬送されてきたときには、
酸素(さ)・静脈ルート(る)・モニター(も)が第一選択となり、そこから超音波
(特にFAST)、心電図、胸部レントゲン(ポータブル)が必要かどうかを考えると
いうように、診療の手順ないし作法が問われることがしばしば見受けられま
す。過去の出題に、上部消化管出血を疑わせる症例で、aの選択肢に「直腸
診」があって、これに飛び付きたくなってしまうところに、eに「バイタルサ
インの確認」という正解の選択肢が、という問題がありました。(※医師国家
試験の性質上、文字数の少ない選択肢がaに、そして文字数の順に並ぶことが
多いのです)
診療の手順・作法を問う問題が増えてきているのは近年の特徴なのではな
いでしょうか。最後に、まだ出題されていないDKAの治療過程で生じる合併
症についての予想問題を提示します。
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第109回医師国家試験 予想問題
■□予想問題
45歳男性、めまい、嘔気および嘔吐を主訴に来院し、精査の結果、糖尿病
性ケトアシドーシスと診断された。生理食塩水の点滴静注と短時間型インス
リン持続静注とで治療開始となった。来院時の検査所見は次の通りである。
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尿所見:蛋白(-)、糖3+、ケトン体2+。血液所見:赤血球 468万、Hb 13.9g/dl、
Ht 42%、白血球 12,300(好中球75%、好酸球1%、好塩基球1%、単球6%、リ
ンパ球17%)、血小板27万。血液生化学所見:血糖 610mg/dl、HbA1c 5.8%(基
準4.3-5.8)、総蛋白 7.5g/dl、アルブミン 3.9g/dl、尿素窒素 12mg/dl、クレア
チニン 0.6mg/dl、尿酸 6.9mg/dL、総コレステロール 246mg/dl、トリグリセ
リド 190mg/dl、総ビリルビン 0.9mg/dl、AST 10IU/l ALT 16IU/l、LD 177IU/
l(基準176-353)、ALP 174IU/l(基準115-359)、アミラーゼ 950IU/l(基準37160)、Na 131mEq/l、K 4.4mEq/l、Cl 97mEq/l。CRP 1.0mg/dl。動脈血ガス分
析(自発呼吸、room air):pH 7.25、PaCO2 28Torr、PaO2 102Torr、HCO312mEq/l。
治療の過程で、今後起こりうる可能性が高い検査結果を2つ選べ。
(105G67改題)
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a. pH 7.12
b. 血糖 420mg/dl
c. Na 152mEq/l
d. K 5.6mEq/l
e. Ht 55%
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正解) b, c
解説) インスリン投与により細胞内飢餓が改善されケトン体産生が低下し、
アシドーシスの改善が期待される(a×)。またインスリンの作用で、血糖とKが
細胞内に取り込まれるので、血糖は降下し、低カリウム傾向となる(b○, d×)。
生理食塩水投与により脱水が補正されるので、血液濃縮の逆が起こる。(e×
Htはむしろ下がる)
血漿浸透圧の式は、2[Na] + [Glu]/18 + [BUN]/2.8 で与えられるが、DKAや
HHSでは[Glu]と[BUN]の値が一般に高いので、血漿浸透圧を保とうとして[Na]
値は低くなる。本症例では、その結果がNa 132mEqなので、[Glu]や[BUN]の
値が適正化するに連れて、それまで身を引いていた[Na]がだんだん高くなり
高調性脱水が目立つようになることがある。(c○)
!
さて、従来の国試の問われ方としては、DKAの初療は、生理食塩水・イン
スリンの二本柱が主でした。その後のマネジメントが実臨床では重要で、前
述のような低K傾向と高Na傾向といった電解質異常にアプローチしていきま
す。具体的には、前者に対してはカリウム補充を、後者に対しては自由水補
充目的で5%Glu成分を追加で補液していきます。
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第109回医師国家試験 予想問題
このように治療後の病態を推測・予測しながら、次の一手を打っていくこ
とが重要なのです。DKA初療その後のマネジメントに焦点を置いて予想して
みました。
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雑記3:陰性所見
■□要旨
・有意な陰性所見を見逃さずに診断の根拠にする!
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■□解説
臨床問題の本文の情報について。陽性所見だけではなく、今後は陰性所見
の記述も重要になってくるでしょう。
例えば、気管支喘息発作では気胸の合併がなければ胸部レントゲン写真は
ほぼ正常となるはずです(あっても過膨張所見くらいでしょう)。急性
桃腺炎
の診断に用いられるCentor’s Criteriaでは、「咳嗽がない」という項目が重要
ですし、市中肺炎ガイドライン(2007年刊行)に記載されている「細菌性肺炎
と非定型肺炎の鑑別」では、「基礎疾患が無い」「胸部聴診所見が乏しい」
「末梢白血球数が正常」というような項目が含まれています。
つまり、診断基準の中に「陰性所見」が含まれている疾患は要注意です。
古典的な国試問題でいうと、ALSの四大陰性所見や、Parkinson病での「MRI
所見なし」というようなトピックが相当します。典型的な症例プレゼンテー
ションでの「典型的な陰性所見」も大切です。
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以上、雑記も含めて109回の国家試験の予想問題を紹介させていただきま
した。冒頭でも述べましたが、予想問題が重要なのではなく、従来通りの「直
近の過去問ベースの演習」が最重要です。自分の力を信じて、本番は良いパ
フォーマンスを発揮できるよう、皆様の御健勝をお祈り申し上げます。
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第109回医師国家試験 予想問題
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バージョン履歴
2014/02/05・・・Web版公開
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2014/02/06・・・Web版問題追加及び誤字修正
PDF版を公開
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