臨床試験における膵炎の発生についての詳細はこちら

日本イーライリリー株式会社
トルリシティの情報提供について
謹啓
時下、ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。
ご確認頂きましたトルリシティに関する情報につきまして、別途の通りご案内申し上げます。
今回提供致します情報は医療関係者のご要望に応じてご提供させて頂くものでございます。従い
まして、貴院での参考資料としてのみご使用いただき、貴院の外部への持ち出しはお控えいただ
きますようお願い申し上げます。
なお、本邦でのトルリシティの【効能・効果】、【用法・用量】は下記の通りでございますのでご留意
の程お願い申し上げます。
今後とも、弊社製品をご愛顧賜りますようよろしくお願い申し上げます。
謹白
記
【効能・効果】
2 型糖尿病
【用法・用量】
通常、成人には、デュラグルチド(遺伝子組換え)として、0.75 mg を週に 1 回、皮下注射する。
※本剤の使用に際し、最新の添付文書をご参照ください。
以上
〒651-0086
神戸市中央区磯上通 7-1-5
【トルリシティ®皮下注 0.75mg アテオス®(デュラグルチド(遺伝子組換え)注射液)】
デュラグルチド
膵炎
本文書には、本邦承認外のデュラグルチドの用法・用量を一部含んでおりますので、ご注意ください。
本邦におけるデュラグルチドの承認用法用量
通常、成人には、デュラグルチド(遺伝子組換え)として、0.75 mg を週に 1 回、皮下注射する。
使用上の注意 1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(2) 膵炎の既往歴のある患者[「重要な基本的注意」の項参照]
使用上の注意 2. 重要な基本的な注意
(9) 急性膵炎が発現した場合、本剤の投与を中止し、再投与しないこと。急性膵炎の初期症状(嘔吐を伴う持続
的な激しい腹痛等)があらわれた場合は、使用を中止し、速やかに医師の診断を受けるよう指導すること。
(10) 胃腸障害が発現した場合、急性膵炎の可能性を考慮し、必要に応じて画像検査等による原因精査を考慮す
るなど、慎重に対応すること。
使用上の注意 4. 副作用(2)重大な副作用(類薬)
急性膵炎:急性膵炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛等の
異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、膵炎と診断された場合には、本剤を
再投与しないこと。
要約
• 2 型糖尿病(T2DM)患者は、一般集団と比較して膵炎を発現するリスクが高いことが認められています
[Noel, 2009; Girman, 2010; Urushihara, 2012]。
• グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬を投与した患者において急性膵炎が報告されています
[Ahmad, 2008; Dore, 2009]。しかし、その後の解析では、GLP-1 受容体作動薬の使用と膵炎の発現との
因果関係に関して確定的な判定結果は得られていません[Dore, 2009; Garg, 2010; Elashoff, 2011; Singh,
2013]。
• デュラグルチドの投与により臨床的に意味のある膵酵素の上昇を認めました。しかしながら膵酵素の上昇は、
インクレチン関連薬を含む実薬対象群においても認められました[社内資料]。
• 膵酵素上昇のみの場合、急性膵炎の予測因子にはなりません[社内資料]。
• 国内第 2 相及び第 3 相臨床試験のうち、経口血糖降下薬単剤との併用療法を検討した GBDQ 試験におい
て、スルホニル尿素薬(SU)併用群の 2 例が膵炎と判定されました。これらの症例の詳細を表 1 に示します。
その他の国内第 2 相及び第 3 相臨床試験では膵炎の発現は認められませんでした[社内資料]。
• 外国第 2 相及び第 3 相臨床試験において、外部判定委員会により判定した被験者 151 例のうち、デュラグ
ルチド投与群 5 例(0.1%)、シタグリプチン投与群 3 例(0.7%)プラセボ投与群 1 例(0.1%)が膵炎と判定さ
れました[社内資料]。
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【トルリシティ®皮下注 0.75mg アテオス®(デュラグルチド(遺伝子組換え)注射液)】
2 型糖尿病患者における膵炎/GLP-1 受容体作動薬と膵炎
T2DM 患者は、一般集団と比較して急性膵炎を発現するリスクが高いことが認められています。これは、T2DM に
伴う複数の臨床的因子、および急性膵炎の既知または推定的なリスク因子とされる肥満に起因します[Noel,
2009; Girman, 2010; Urushihara, 2012]。主として市販後自発報告および後ろ向き試験の文献報告を通じて、グ
ルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬などのインクレチン関連薬を投与した患者においても、急性膵炎が
報告されています[Ahmad, 2008; Dore, 2009]。しかし、これらの薬剤と膵炎及び膵癌との関連性を示す報告も
あれば[Elashoff, 2011; Singh, 2013]、そのような関連性を認めなかった報告もあり[Dore, 2009; Garg, 2010]、
後ろ向き試験の報告およびメタ解析の結果には一貫性がありません。
米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)は、GLP-1 受容体作動薬の使用と膵炎及び膵癌との因果
関係に関して最終的な結論に達していません。レビューが行われたデータは全体として懸念を否定していますが、
さらに多くのデータが入手可能になるまで、膵炎は今後もこれらの薬剤に伴うリスクであると考えられます。FDA
および EMA は、引き続きこの安全性シグナルを調査します。したがって、臨床および非臨床を含むエビデンス全
体に基づき、GLP-1 受容体作動薬の投与に伴う膵炎などの膵臓関連有害事象報告は慎重に解釈する必要があ
ります。ただし、FDA および EMA は、これらの薬剤の製品情報または添付文書には最新の情報が十分に反映さ
れていると結論付けています[Egan, 2014]。
デュラグルチドの臨床試験における膵酵素の変動及び膵炎
①膵酵素
デュラグルチドの臨床試験では、T2DM 患者の集団における膵酵素の生理的な変動に対する理解を深めるととも
に、デュラグルチドが膵外分泌に及ぼす潜在的な作用を評価することを目的に、膵炎の潜在的なバイオマーカー
としてアミラーゼ値(膵アミラーゼおよび総アミラーゼ)およびリパーゼ値をモニタリングしました。 デュラグルチドの
臨床試験では、ベースラインにおいて、基準値上限を超える膵酵素の上昇が認められました(試験横断的に 2.8%
~25.1%の患者でリパーゼが上昇)[社内資料]。
デュラグルチドは、最長 104 週間の投与期間においてベースライン時からの膵酵素値を有意に上昇(最小二乗平
均値)させました。デュラグルチド 1.5 mg※(※本邦未承認用量)でデュラグルチド 0.75 mg よりも大きな上昇が認
められました。リパーゼ(膵臓の検査項目 3 つのうち最も感度が高いと考えられる)のベースライン時からの上昇
(最小二乗平均値)は、デュラグルチド 1.5 mg※投与群が約 16%~20%の範囲、デュラグルチド 0.75 mg 投与群
が 11%~17%の範囲でした。デュラグルチド 1.5mg※投与群及び 0.75mg 投与群のほとんどの患者で膵酵素は
基準値の範囲内でした。デュラグルチド投与下における検査値が基準値上限(ULN)を上回った患者の割合およ
び著しいはずれ値に関する評価において、デュラグルチドの両用量は同程度であり、これは臨床的に有意義な酵
素の上昇に関して両用量が同等であることを示唆しています。さらに、膵酵素の上昇はデュラグルチド又はその他
のインクレチン関連薬(シタグリプチン、エキセナチドの 1 日 2 回投与)だけでなくメトホルミンでも認められており、
更に、程度は小さいもののインスリングラルギンでも認められています[社内資料]。
デュラグルチドの臨床試験の成績全体を踏まえると、実臨床下において、無症候性の患者に対して定期的な膵酵
素検査を実施することに臨床的価値は認められません。第 2 相および第 3 相試験で膵酵素を定期的に測定しま
したが、急性膵炎の発症を予測できませんでした[社内資料]。
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【トルリシティ®皮下注 0.75mg アテオス®(デュラグルチド(遺伝子組換え)注射液)】
なお、国内第 2 相及び第 3 相臨床試験においても、デュラグルチド投与後にリパーゼ値及び総アミラーゼ値の増
加がみられましたが、膵炎に関連する症候や症状は認められませんでした[社内資料]。
②膵炎
デュラグルチドの国内外の臨床試験において、患者が急性または慢性膵炎の既往歴を有する場合には臨床試験
への参加から除外しました。治験責任医師が膵炎と診断した患者の場合、治験薬の投与中止を必須とし、再投与
を禁止しました[社内資料]。
<国内臨床試験>
国内第 2 相および第 3 相臨床試験では、急性膵炎(疑いも含む)を専門医で構成される外部判定委員会によって
判定しました。また、第 3 相臨床試験では、治験薬投与開始以降にリパーゼ値又はアミラーゼ値が ULN の 3 倍
以上になった場合、症状がなくてもリパーゼ値又はアミラーゼ値の再測定、腹部単純コンピュータ断層撮影(CT)
又は腹部造影 CT もしくは核磁気共鳴画像診断法(MRI)を実施し、以下の 3 項目のうち 2 項目に該当するとき、
急性膵炎と診断しました[社内資料]。
①急性膵炎の特徴である腹痛がある
②アミラーゼ値又はリパーゼ値が ULN の 3 倍以上である
③CT 又は MRI で急性膵炎に特徴的な所見がある
結果、GBDQ 試験[デュラグルチド 0.75mg の経口血糖降下薬単剤(SU、ビグアナイド、α-グルコシダーゼ阻害薬、
チアゾリジン誘導薬又はグリニド)との併用療法]の SU 併用群の 2 例のみが外部判定委員会により膵炎と判断さ
れました。2 例の詳細を以下表 1 に示します。なお、国内臨床薬理試験では、膵炎の有害事象は認められません
でした[社内資料]。
表 1. 国内臨床試験(GBDQ 試験)での膵炎報告例の詳細[社内資料]
被験者 1(GBDQ 試験:SU 併用群)
治験担当医師の報告:薬剤性急性膵炎
被験者は 40 歳代、男性。ベースラインの BMI は 30.5 kg/m2、糖尿病罹病期間は 4 年。
Visit 1 時点でグリメピリド 2mg、ピタバスタチンカルシウムを使用。
試験期間中、治験薬以外の GLP-1 受容体作動薬及び DPP-4 阻害薬は使用しなかった。
(本事象の治験薬との因果関係:否定できない)
経過
デュラグルチド 0.75 mg の皮下投与を開始。
- 33 日目
- 5 日目
膵炎を疑う症状は見られなかったが、臨床検査にてリパーゼ値の増加(206 U/L)、
(Visit 5)
膵アミラーゼ値の増加(97 U/L)が認められた。
再測定及び CT 検査を実施。再測定の結果、リパーゼ値が 68 U/L、膵アミラーゼ値が
34 U/L へ減少していたが、CT 検査の結果から薬剤性急性膵炎と診断され、試験を
0 日目
中止。
(発現日)
なお、膵炎の典型的な徴候及び症状は認められていないことから、重篤ではないと判断
された。
21 日目
臨床検査にて、リパーゼ値が 28 U/L、膵アミラーゼ値が 17 U/L へ減少していることが
(中止時 Visit) 確認され、薬剤性急性膵炎は回復したと判断された。
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【トルリシティ®皮下注 0.75mg アテオス®(デュラグルチド(遺伝子組換え)注射液)】
被験者 2(GBDQ 試験:SU 併用群)
治験担当医師の報告:膵酵素異常
被験者は 70 歳代、女性。本試験参加の 4 ヵ月前に膵腫瘤と診断されていた。
併用薬として、グリメピリド、酸化マグネシウム、ファモチジン、カンデサルタンシレキセチル、ラタノプロ
スト及びニプラジロールを使用していた。
(本事象の治験薬との因果関係:なし)
経過
- 50 日目
デュラグルチド 0.75mg の皮下投与を開始。
腫瘍マーカーの上昇が認められた。同日の膵アミラーゼ値は 26 IU/L、リパーゼ値は
- 22 日目
28 IU/L であった。
- 20 日目
0 日目
(発現日)
1 日目
2 日目
3 日目
6 日目
7 日目
16 日目
超音波内視鏡検査の結果、膵腫瘤は治験薬投与前と比べて変化はなかった。
超音波内視鏡下穿刺吸引術が行われた。超音波内視鏡下穿刺吸引術の 2 時間後、
膵酵素の急激な増加(膵アミラーゼ値:1035 IU/L、リパーゼ値:3157 IU/L)及び上腹
部圧痛が認められた。
膵酵素の増加は、超音波内視鏡下穿刺吸引術により引き起こされたと考えられた。
CT 検査の結果、急性膵炎を示唆する所見は認められなかった。急性膵炎疑いに対し
て、ウリナスタチンの静脈内投与が行われた。急性膵炎疑いのため、入院期間及び
絶食期間が延長となった。
膵酵素は急速に減少した(膵アミラーゼ値:107 IU/L、リパーゼ値:52 IU/L)。当該
事象は急性膵炎ではなく、膵酵素異常と考えられた。
経口食の摂食が開始された。同日の膵アミラーゼ値は 28 IU/L、リパーゼ値は
23 IU/L であった。
経口食の摂食後に軽度の圧痛は認められたが、翌日、上腹部圧痛は軽快したため、
ウリナスタチンの投与を終了した。同日の膵アミラーゼ値は 22 IU/L、リパーゼ値
25IU/L。
膵アミラーゼ値は 26 IU/L、リパーゼ値は 28IU/L。
膵酵素異常は軽快し、被験者は退院した。
アミラーゼ値は 97 IU/L(基準値:33~120 IU/L)であった。腹痛の再発は認められ
ず、被験者は通常どおり経口食を摂食することができた。同日時点で膵酵素異常は回
復したと判断された。
<海外臨床試験>
デュラグルチドの臨床試験では、膵炎が疑われるイベントを確定するため、膵炎の分野の専門医で構成する外部
委員会(臨床評価項目委員会[clinical endpoint committee:CEC])が判定を行い、これによりデュラグルチド投
与に伴う膵炎リスクの特徴を明らかにしました。以下の基準に合致した事象は CEC により評価されました[社内
資料]。
①治験担当医師により膵炎が報告された場合
②原因不明の高度又は重篤な腹痛が認められた場合
③症状及び画像診断の結果に関係なく、リパーゼ値、膵アミラーゼ値又は総アミラーゼ値の上昇(ULN の 3 倍
を超える)が認められた場合
外国第 2 相および第 3 相臨床試験では、膵酵素上昇が確認された被験者を含め、被験者 151 例において膵炎
の判定を要する事象が発現しました。これらの 151 例のうち、9 例(デュラグルチド投与群 5 例;プラセボ投与群 1
例;シタグリプチン投与群 3 例)が判定によって膵炎と確認されました。デュラグルチド投与群の膵炎 5 例は、2 例
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【トルリシティ®皮下注 0.75mg アテオス®(デュラグルチド(遺伝子組換え)注射液)】
が急性、2 例が慢性、及び 1 例がタイプ不明と分類されました。これらの患者の中で、ベースラインのトリグリセリ
ドが高値を示した患者はいませんでした。全般的に、デュラグルチド投与群における膵炎症例の半数以下が「高度」
として報告され、半数以下の症例が「重篤」と判断されました。死亡に至った症例及びデュラグルチドと因果関係が
否定できない壊死性膵臓炎又は出血性膵炎の症例はありませんでした[社内資料]。
まとめ
デュラグルチドの投与開始後、持続的な重度の腹痛などの膵炎の兆候及び症状を注意深く観察してください。胃
腸障害が発現した場合、急性膵炎の可能性を考慮し、必要に応じて画像検査等による原因精査を考慮するなど、
慎重なご対応をお願いします。膵炎が疑われる場合には、デュラグルチドの投与を中止してください。膵炎が確認
された場合には、デュラグルチドの再投与はしないでください[添付文書]。デュラグルチドは膵炎の既往のある患
者における評価は行われていません。膵炎の既往のある患者には他の糖尿病治療薬をご検討ください[社内資
料]。
最終更新日:2016 年 2 月 29 日(GML_GLP050_PANCREATITIS_v2.0)
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日本イーライリリー株式会社 社内資料
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[TLC05000]
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