宇宙開発利用の持続的発展のための “宇宙状況認識(Space Situational

平成 24 年度科学技術戦略推進費
科学技術外交の展開に資する国際政策対話の促進
「宇宙開発利用の持続的発展のための
“宇宙状況認識(Space Situational Awareness: SSA)”
に関する国際シンポジウム」
成果報告書(概要編)
平成 25 年 3 月
財団法人 日本宇宙フォーラム
目
次
1. はじめに ................................................................................................ 1
2. 補助事業の概要...................................................................................... 2
2.1 補助事業の名称 .................................................................................. 2
2.2 補助事業の目的 .................................................................................. 2
2.3 補助事業の項目と内容 ......................................................................... 2
3. 実施結果概要 ......................................................................................... 4
3.1 国際シンポジウムの開催 ....................................................................... 4
(1)開催日時
(2)開催場所
(3)後援
(4)協力
(5)プログラム及び講演概要
4. アンケート調査結果 ................................................................................ 36
5. 総括 ..................................................................................................... 39
6. 謝辞 ..................................................................................................... 41
1.はじめに
スペースデブリ問題は、宇宙開発をリードする米国、ロシア、フランス、ド
イツ等の欧州諸国等先進国であれ、一国では解決できない“人類共通の課題”
である。その課題に対処する第一歩として、昨年度、欧米各国から政策決定ト
ップレベルの関係者を招待し、世界で初めてスペースデブリ問題に関する政策
レベルの公開国際集会を開催することができた。その結果、招待講演者のみな
らず聴講者からもタイムリーな会合であったとの高い評価を得ることができた。
今年度は、昨年度の成果を踏まえて、国際協力をより確実にするための議論
として、
「透明化・信頼醸成措置」を主なトピックスとして開催したものであり、
スペースデブリ問題への対処のための国際対話の必要性が痛感される時は、今
をおいてないものと考える。この機会を捉えて、わが国が積極的に国際貢献を
果たすことは宇宙開発利用において重要な意味を持つものであり、特に、アジ
ア太平洋地域でのリーダとして国際対話の場をタイムリーに提供する意義は大
きく、この機会を逃すと次世代に更に大きな“負の遺産”を残す結果を招きか
ねないため、本会合の早急な開催が必要であるとの認識の元、昨年に続き国際
会合を開催した。
本報告書はその結果をとりまとめたものである。
1
2.補助事業の概要
本国際シンポジウムは、「平成 24 年度文部科学省科学技術戦略推進費」の公募採
択プロジェクトとして、実施したものである。
<補助事業の趣旨>
民間団体の主導による科学・技術外交の展開として、国際的に科学・技術をリード
する産学官の関係者が社会の幅広いステークホルダーの参画を得て、将来に向けて
科学・技術の在り方を議論する国際集会等の開催を支援し、国際的なコミュニケーショ
ンの場の定着を促進する。
2.1 補助事業の名称
科学技術外交の展開に資する国際政策対話の促進
「 宇宙開発利用の 持 続的発 展の た めの “ 宇宙状況認識(Space Situational
Awareness: SSA)”に関する国際シンポジウム」
2.2 補助事業の目的
昨年度の本国際集会で、スペースデブリ問題は国際協力が必須であり、米国、或い
はロシアであろうと一国では解決できない重要な課題であることが再認識された。
しかしながら、この分野での国際協力は容易には達成できないことも認識された。宇
宙開発利用は、今やそれぞれの国々にとって、最も重要な社会基盤を構築するシス
テムであり、また、安全保障上の重要な要素でもあるため、各国が宇宙開発利用の長
期持続性確保に必要な国際ルールを遵守するための「透明性・信頼性」を共有する必
要がある。「透明性」は、情報公開であり、「信頼性」は、2 国間、或いは多国間における
相互理解を意味し、如何に相互で「信頼醸成」を達成するかが、今後の国際協力の成
否を決定する。本年度の国際集会は、この「透明化・信頼醸成」を達成するための共通
認識を得ることを目標とする。特に、わが国が、アジア太平洋諸国間においても本目
標を達成するためにリーダとしての役割を果たすことを目的とする。
2.3 補助事業の項目と内容
宇宙開発利用の持続的発展のための宇宙状況認識に関する国際シンポジウム
今年度の特徴としては、
“アジア太平洋地域における国際協力体制構築の期待”
を副題に掲げて、プログラムを構成した。
具体的には、EU行動規範を起草した関係者から、起草の背景や個々の規定の
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趣旨、更に欧州域内での本行動規範に対する反応等を聴取すると共にEU行動規
範をベースとするものの「国際行動規範」の合意を目指している米国国務省関
係者からは、その背景や趣旨を聴取することとした。
又、わが国では、EU行動規範について、2009年ごろから日EU協議も始まって
おり、2010年4月、日EU定期首脳会議において“同規範に関するEUのイニシアテ
ィブに関して、宇宙分野に係る現在の日EU協力を強化する意図が確認される”
など、日欧政府レベルでの対話が展開されているため、外務省から日EU協議の
進展状況と今後の課題等について報告頂くこととした。また、中国、インド、
韓国、オーストラリア等、アジア太平洋地域諸国からは、各国でのSSA活動(或
いは類似な活動)についての報告を受けることとした。
これらの情報を元に、スペースデブリ問題解決のための国際対話で必要な「透
明化・信頼醸成措置」に関する意見交換を行い、わが国としては、アジア太平洋諸
国間において国際合意を達成するためのリーダとしての役割を果たすことを目的とし
た。
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3.実施結果概要
3.1 国際シンポジウムの開催
(1)開催日時
2013 年 2 月 28 日(木)-3 月 1 日(金)
(2)開催場所
THE GRAND HALL(東京都港区港南 2-16-4 品川グランドセントラルタワー3F)
(3)後援
内閣府宇宙戦略室
総務省
外務省
文部科学省
経済産業省
防衛省
一般社団法人日本航空宇宙工業会
(4)協力(五十音順)
Analytical Graphics Inc.
LSAS Tec 株式会社
株式会社 IHI
株式会社 IHI エアロスペース
スカパーJSAT 株式会社
日本電気株式会社
NEC 東芝スペースシステム株式会社
HIREC 株式会社
富士通株式会社
三菱重工業株式会社
三菱電機株式会社
(5)プログラム及び講演概要
第 1 日:2 月 28 日(木)
開会挨拶
間宮 馨 JSF 理事長
昨年度の「第 1 回シンポジウム」には、国内外からハイランクの来賓、経験
豊かな講演者と約 400 名の一般の方々にご参加を頂きましたが幸い、そのいず
れからも「タイムリーでよく組織化された会合であった」と高い評価を頂きま
した。また、本シンポジウムは文部科学省科学技術戦略推進費により実現して
いますが、同省の事後評価委員会からも高い評価を頂きましたことを、ここに
4
ご報告しておきたいと思います。
さて、昨年度開催した「第 1 回国際シンポジウム」で、スペースデブリ問題
は、米国、ロシアといえども一国では解決できない重要な課題であり、国際協
力が不可欠であるとの結論を得ました。しかしながら、この課題の解決は国際
協力といえども容易ではありません。なぜなら、宇宙開発利用は、今やそれぞ
れの国々にとって、最も重要な社会基盤を構成するシステムであり、また、安
全保障上の重要な要素でもあるからです。
各国が宇宙活動の長期的持続性を確保するためには、幾つかの基本原則に関
する国際合意が必要です。例えば、国連で採択された「スペースデブリ低減ガ
イドライン」の遵守、「国際行動規範」の合意です。そのためには、「透明化・
信頼醸成措置(TCBM)」を共有する必要があります。ここでの「透明化」とは、
情報共有であり、「信頼醸成」とは、2 国間、或いは多国間における相互理解、
疑心暗鬼の排除等を意味します。如何に「透明化・信頼醸成」を達成するかが、
今後の国際協力の成否を決定するものと考えます。
わが国は、本件に関するアジア太平洋地域のリーダとしての役割を自覚し、
上記の目的を達成するために「第 2 回国際シンポジウム」を開催することを決
定した次第です。
本シンポジウムにおいて、全参加者により建設的な議論が展開されることを
期待します。
来賓挨拶
山本一太 宇宙政策担当大臣
私たちの暮らしのさまざまな分野で宇宙空間が利用されて
いる今日において、人工衛星等にとって、スペースデブリ問
題は現実的、具体的な脅威になっておりますが、宇宙環境の
保全は、言うまでもなく一国で成し得るものではありませ
ん。国際的な連携の下で進めることが必要です。日本として
も引き続き最大限の貢献をしてまいるつもりでおります。
日本政府においては、昨年の法改正により内閣府が政府全
体の宇宙開発利用の司令塔機能を担うこととなり、宇宙政策
を政府として一体的に推進していく体制が整ったところで
す。新たな体制の下で本年 1 月 25 日、新しい宇宙基本計画を宇宙開発戦略本部決
定いたしました。この宇宙基本計画にのっとり、国際連合宇宙空間平和利用委員
会(COPUOS)における宇宙活動の長期持続性のための国際ガイドラインや、EU が
提案する「宇宙活動に関する国際行動規範」の作成に積極的に取り組んでまいり
ます。また、スペースデブリ除去技術の研究も進めてまいります。
無限の可能性を秘めた宇宙空間は、全人類にとって未来の公共財とも言うべき
ものであり、宇宙開発利用を持続的に進めていくためには、各国が責任を持って
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この価値観を共有することが大事であると考えております。本日のシンポジウム
の議論が実り多きものとなるようお祈りしつつ、担当大臣としての私のご挨拶と
させていただきます。ありがとうございました。
柳
孝 文部科学省研究開発局宇宙開発利用課長
宇宙開発が始まりましてから、既に 50 年余りが経過して
おります。これまでの宇宙開発利用の進展の中で、既に活動
を終えた人工衛星、ロケット、そしてそれらの破損物が、ス
ペースデブリとなって地球の衛星軌道を周回し、宇宙開発利
用における課題となっております。このようなスペースデブ
リについては、今後の持続的な宇宙開発利用にあたりまし
て、その発生の抑制や監視、こういった対応が重要となって
きております。
このようなスペースデブリに対する国際的な懸念の高ま
りを受けまして、2007 年 2 月 COPUOS の下で、新たに発生するスペースデブリの
量を減少させるためのガイドラインが策定されるなど、スペースデブリ対策が進
められています。わが国におきましてもこのガイドラインに基づき、スペースデ
ブリの低減に向けた衛星の設計、運用が行われています。また、2010 年からは、
同じく COPUOS の下で、スペースデブリの低減も含めたさまざまな課題につきまし
て、専門家の間で積極的な議論が行われていると承知しております。
わが国におきましては、持続的な宇宙開発利用に資するため、さまざまな取り
組みを進めております。文部科学省では、人工衛星等の再突入に関する情報を関
係省庁や国民に提供するなど、地上の安全・安心の確保に努めてきたところでも
あります。引き続き JAXA を通じまして、スペースデブリの発生防止、低減等にか
かる研究開発や国際協力を積極的に推進し、人類の持続的な宇宙開発利用に貢献
していくとともに、安心・安全に意を用いてまいる所存でございます。
山﨑和之 外務省総合外交政策局参事官
宇宙の外交・安全保障上の重要性は言うまでもなくますま
す高まっています。先週、2 月 22 日に安倍総理が訪米され、
オバマ大統領と会談をいたしましたけれども、その場におき
ましても日米で包括的な宇宙分野での対話を立ち上げると
いうことを確認しております。また、安倍総理に同行しまし
た岸田外務大臣とケリー国務長官との間でも、日米で宇宙状
況監視協力の取り決めを結ぶべく、交渉を加速化するという
ことで一致しております。このように外交分野でも宇宙に関
する動きというのは、非常に増しておりますけれども、これ
は一つには、日本を取り巻く安全保障上の環境も厳しさを増しているという側面
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もございます。もちろん安全保障だけではなく、民生の分野におきましても、こ
のような宇宙の問題に取り組み、宇宙空間の脆弱性とリスクの増大に対して取り
組んでいくということは、極めて重要なことだと考えております。
外務省でも 24 年 4 月に宇宙室という新たな部署を設置いたしまして、このよう
な宇宙に関する問題を一括して取り扱うような体制を築きました。国際協力をし
ていく場合に、まず重要なのはルールを整備していくことでございます。
宇宙活動に関する国際行動規範を作る動きが加速しております。事故や衝突な
どの可能性を最小化する。スペースデブリの発生低減のため、宇宙物体の意図的
な破壊を差し控える。宇宙物体への接近をもたらす可能性のある運用予定や軌道
の変更、再突入のリスクなどを通報し合う。また、他国による違反の可能性があ
る場合には、協議を要請できるメカニズムを作る。このような目的の行動規範は、
早期に作る必要があり、極めて重要な課題だと考えております。宇宙状況認識活
動は、安全保障分野においても非常に重要だと考えております。他国の宇宙活動
の透明性を確保することは、安全保障においての信頼醸成につながり、これが平
和と安定につながるという重要な目標を帯びているものだと考えております。
須永和男 防衛省防衛政策局次長
防衛省では、宇宙というのはいかなる国家の領域にも属さ
ず、地形等の条約の制限を受けない宇宙空間を利用して、情
報収集、警戒監視および情報通信機能を強化し、わが国の防
衛に万全を期すということに普段から務めております。この
ような観点から、宇宙空間の安定的利用はわが国の安全保障
上、極めて重要な課題であると認識しております。このため、
本シンポジウムのテーマであります人類の持続的宇宙開発利
用に関する議論は、防衛省にとりましても大変大きな意義が
あると考えております。
2008 年の「宇宙基本法」の成立によりまして、防衛省が主体的に宇宙開発利用
を行うことが可能となっております。来年度予算で政府全体の宇宙状況監視のあ
り方に関する内閣府の調査研究と連携いたしまして、防衛省においても防衛目的
に資する宇宙監視状況のあり方に関する調査研究費を計上しております。今後は
防衛と民生両面からの一体的な検討を進めてまいります。宇宙状況監視の重要性
につきましては、2011 年 6 月の日米安全保障協議委員会、いわゆる「2+2」にお
いても言及されておりまして、防衛省も日米同盟を進化させていくための重要な
案件として認識しております。今後、このような日米協力を推進していく上でも、
政府全体の一元的な宇宙状況監視システムの構築の方向性について、わが国の宇
宙政策の司令塔機能を担う内閣府を中心として、関係省庁の連携のもと、早急に
結論を得ることが必要と考えております。防衛省としてもこのような政府の取り
組みに積極的に協力していきたいと考えております。
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最後に、宇宙空間の平和的、かつ安定的に利用のためには、民生、安全保障分
野を問わず国家間の垣根を越えた連携が必要であると考えており、今後ともこの
ような議論の場が継続的に設けられることを期待しております。
基調講演
“新宇宙基本計画と持続的宇宙開発利用”
西本淳哉 内閣府宇宙審議官・宇宙戦略室長
現在、50 ヶ国以上の国々が自国の衛星を持っていますけれ
ども、自ら衛星を開発する能力を持っている国は少ないが、
ますます自前の衛星を持とうという国々は広がってくると
思います。自国の領土・領海、自国の防災、自国の国土の管
理は自前の衛星でやりたいという普通の国としての欲求と
いうのがありますから、衛星を自前で持ちたいというふうな
希望を持っている国が多いわけですけれども、こういう自立
性の確保というのが大事だということです。また、出口を見
据えた宇宙開発をしていくということが大事です。要する
に、研究のための研究ではなくて、宇宙を利用することによ
って産業の活性化や国民生活の向上、行政の高度化・効率化、それから、防災な
ども含めた広義の安全保障の確保、経済の発展といったものに、しっかり役立つ
宇宙開発をしていくのだということ、以上が今後の重要な二つの柱です。
宇宙基本計画の中では、三つの重点課題を挙げています。①安全保障と防災、
②産業の振興、これはしっかりした産業基盤を作るということが重要です。それ
から、③宇宙科学等のフロンティア。この三つを重点課題と置いて施策を進めて
いく。
SSA がいかに重要かということについては、もうここにおられる皆さんはご存
じの方ばかりだと思いますけれども、国際行動規範(Code of Conduct)を実効あ
るものにするためには、宇宙状況監視が非常に重要になってくると思います。こ
の SSA は、宇宙利用を持続性あるものにするために必要であって、かつ、安全保
障上も重要な意味を持っていると思います。宇宙利用に対して干渉する行為とか
妨害とか破壊、あるいは場合によっては宇宙の武装化と言いますか、そういう活
動に対する監視が重要だと思います。国際連携によって宇宙の平和的利用のため
の宇宙状況認識、宇宙状況をしっかり把握していくということが重要になってく
ると思います。SSA は国際連携なしに実現することはなかなか難しいと思います。
国際連携によってマルチでの活動、バイでの活動、さまざまな協力によって、こ
れから日本政府としてもスペースデブリ監視に一定の貢献をしてまいりたいと思
っています。
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“宇宙分野における長期持続性と安全保障のための透明化・信頼醸成措置の追求”
Frank A. Rose 米国国務省次官補代理
今年も本シンポジウムに招待いただき感謝します。また、本シ
ンポジウムが、宇宙環境の長期持続性に対してますます脅威と
なってきたスペースデブリ問題をハイライトする国際会議として年
中行事化することを喜んでいますし、それを企画された JSF に敬
意を表したいと思います。
第一に強調したいのは、現代社会において人工衛星を始めと
する宇宙資産は、欠かすことのできない社会基盤の一つです。
ハリケーンなどの進路予測はその一例です。的確な進路予測
は、多くの人命と財産を守る上で貴重かつ的確な情報を提供し
てくれます。
私は本日の講演で、国際行動規範のような「透明化・信頼醸成措置(TCBM)」を追求
することが、宇宙資産から得られる情報が有益であるがゆえに、宇宙資産を利用し続け
るためにはどのような貢献をすべきかについて述べたいと思います。更に、国連宇宙空
間平和利用委員会(UNCOPUOS)や、国連の TCBM に関する政府専門家会合(GGE)
での活動について、最後に昨年 12 月の ASEAN 地域フォーラムでの宇宙の安全保障に
関する会合にも触れるつもりです。
米国による国際行動規範の目的は、「宇宙活動の安全・安心と長期持続性」の強化で
あり、これは全ての国の利益でもあります。行動規範はまた、米国と宇宙政策、宇宙戦略
等を共有することにより、誤解、誤算、誤認の危険性を減らすことができると共に、このこ
とにより、宇宙環境の安全性と安定性が改善できることを意味しております。
政策立案の手法としては、国が立案する方法の他に、科学者や衛星運用者等からの
提案、即ち、ボトムアップ手法があり、先の UNCOPUOS、GGE での議論が該当しており
ます。UNCOPUOS は過去、スペースデブリ低減ガイドライン作成で実績があり、現在は
長期持続性に関するワーキンググループ会合を開催しております。GGE は、宇宙の安
定性確保のために、単一、2 国間、多国間を通して現実的な解決策について議論し、コ
ンセンサスレポートが起草される予定です。
アジア太平洋地域は、現在宇宙利用国が急激に増加しており、このような状況下で初
めて、宇宙の安全保障に関する ASEAN 地域フォーラム(ARF)が開催され、私も講演の
機会を与えられました。来年以降も、この地域でこのように意義ある会合が開催されるこ
とを期待しています。
我々は災害時だけでなく、日常生活の中でますます宇宙に依存しています。宇宙シ
ステムに対する事故、または無責任な行為は宇宙環境を害するだけでなく、国際社会
が依存するサービスに障害をもたらすことになります。従って、我々は直ぐに TCBM の具
体策の実行のために行動を起こさなければなりません。TCBM は、宇宙環境の長期持
続性、安定性、安全保障を強化します。将来の世代のために宇宙環境を保護すること
は、米国、日本をはじめとする全ての国際社会にとっても不可欠な利益でもあります。
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“米国宇宙政策と国防総省の最近の活動”
Jessica Powers 米国国防総省防衛担当次官補代理室宇宙政策部長
宇宙はどこかの国が所有しているわけではありませんが、全て
の国が依存しています。天気予報、ナビゲーション、地図、減災、
人道支援、電話、インターネット等、様々です。更に宇宙は安全
保障においても重要になってきていますが、一方で人工衛星を
取り巻く宇宙環境は非常にクリティカルな状況になってきていま
す。米国宇宙政策は、全ての国が平和目的の為にまた人類の利
益のために、宇宙にアクセスし、利用し、探査する権利を有して
いると認識しています。2011 年、米国国防総省は、初めて国家
安全保障宇宙戦略を発表しました。これは、宇宙の安全、安定、
安心を目標としています。本戦略に基づき、13 年ぶりに宇宙政策
の見直しも行われました。
米国国防総省は、SSA 情報の質と量を改善する努力を継続し、他国に対して宇宙飛
行の安全性を提供します。宇宙物体データベースの維持、改善のために米国は、他の
国、他の政府機関、企業と協力します。また、透明性や宇宙活動の安全性を担保するた
めに、米国は、衛星運用者と彼らが許す限りの衛星データを共有することを推奨しま
す。グローバルな宇宙活動の促進と、事故、誤認と不信の回避のために、宇宙飛行活
動の共有認識は更に改善されるべきであると、国家安全宇宙戦略は指摘しています。こ
のため、米国は、アジア太平洋地域国であるオーストラリア、日本との協力を進めていま
す。昨年、米国とオーストラリアは、C バンドレーダをオーストラリアに移設することで合意
しました。これにより、東アジア地域に於ける SSN 情報収集能力が改善されます。グロー
バルな SSA センサー能力強化のために、カナダが今年 2 月初めに打上げた宇宙からの
スペースデブリ監視衛星「Sapphir」との協力に米国は合意しました。
国際行動規範の話が本日も先の講演者から既に出ていますが、これがあることによっ
て、宇宙での責任ある行動が担保できます。もし国際行動規範が採択されれば、宇宙で
の責任ある行動のガイドラインになります。全ての宇宙活動国に対するスペースデブリ由
来の事故や事象を減らすことができますし、宇宙での運用の透明性を高めることもできる
わけです。一方で、このように足並みを揃えない国に対しては責任を取ってもらうことに
なります。
米国政府は、政府のニーズを満たすために商業的宇宙活動を最大限に活用し、革
新的技術に投資する等、産業界と幅広く連携します。また、全ての国は国際法に従っ
て、人類の利益の為に宇宙にアクセスし、宇宙を探査し、宇宙を利用する権利があるこ
とを米国国家安全宇宙政策は再認識しています。そして一国だけが宇宙を占拠すること
がないということが、重要になってきます。
現代社会は、ユビキタスな状況であり、繋がっていますので無責任な行動は全員への
被害となってきます。従って、米国は、全ての国が責任ある行動をとることによって、次の
世代の利益を担保することができると言うことを呼び掛けたいと思っています。こうするこ
10
とによって、一ヶ国だけが宇宙環境を占拠することがないということです。
“宇宙の戦略的パートナーシップ”
Major General John W. "Jay" Raymond 米国戦略軍少将(企画・政策担当ディ
レクター)
私は昨年も本シンポジウム参加し、今回はスピーカーとして招
待いただき大変感謝しています。私は、2011 年 1 月から 2012 年
7 月の間、横田基地で第 5 航空隊副司令官として勤務していまし
た。日本で素晴らしい経験をしました。中でも私の任期中に発生
した東日本大震災での支援活動、「TOMODACHI作戦」は、
日米パートナーシップの典型だったと思います。
米国戦略軍(USSTRATCOM)は、2010 年の国家宇宙政
策、2011 年の国家安全宇宙戦略に基づいて、様々な活動を展
開してます。
まず、データ共有プログラムですが、①緊急サービスとして、公的な合意書無しで如
何なるユーザに対してもスペースデブリ接近情報を提供(1 日に、20~30 件)、②基本サ
ービスとしては、ユーザ登録することにより、Space-Track.org サイトで、スペースデブリ情
報を提供(185 ヶ国、88,000 人)、③アドバンスト・サービスとして、SSA 共有合意書の署
名により、現状では 35 の企業と合意、10 の国際機関と調整中で、高度な情報提供を行
っています。③の例としては、打上げ前の接近予測アセスメントとして、高精度軌道予測
データによる打上げトラジェクトリのスクリーニングの実施、②の例としては、リエントリ予
測(例えば、UARS 衛星落下)、衛星等の TLE 情報の提供、①としては、接近アセスメン
ト情報(小惑星 2012 DA14 の接近など)の提供を行っています。
次に、統合宇宙作戦(Combined Space Operations:CSpO)については、これを実施
することで、抑止力の強化、ミッション保証の改善、対抗力の強化、参加国間のリソース
の最適化が可能となる等の利益が得られます。また、CSpO の実施は、宇宙の持続性、
安定性、また宇宙の自由なアクセスや利用により米国政府を支援することになること、宇
宙の平和利用や責任ある行動を促進することは、2 国間、多国間での TCBM を推奨す
ること、更に、現在と将来のスペースデブリ環境に関する理解をパートナに提供する等、
米国政府を支援することに繋がるわけです。
北朝鮮のテポドン 2 対応についても、この事件により、CSpO の重要性が証明されまし
たし、CSpO は、パートナーシップとコミュニケーションの点で、有用性が認識されまし
た。
日本在勤中、私は FPF-5 レーダを視察する機会を得て、その性能に感心させられま
した。非常に優れた性能を有しているからです。我々は、宇宙監視の合意やパートナー
シップの展開に関して強い期待を抱いています。
最後に、本シンポジウムが定例化することを期待しています。
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多国間国際協力
“持続可能な宇宙活動のためのフランスのアプローチ”
Gerard Brachet 国連透明化・信頼醸成措置専門家グループフランス代表メン
バー
フランスは、1965 年以降、宇宙技術開発や人工衛星の応
用分野で特別な役割を担ってきました。まず、1965 年 11 月、
アルジェリアからフランス初(世界で 3 番目)の人工衛星を打
上げました。1970 年には南米ギアナ射場から人工衛星を打
上げ、1979 年にはフランスの設計によるアリアン初号機の打
上げが行われました。更に、1986 年、初の地球観測衛星
SPOT、1995 年、初の軍事機密衛星 Helios、2011 年地上空間
分解能 70cm のデュアルユース衛星 Pleiades を打上げました。
そして、2013 年 2 月現在、世界の商業衛星の 50%以上がクー
ルー射場(南米ギアナ)からの 212 回のアリアンロケットにより
打上げられています。
フランスは 2012 年末現在、305 の飛行物体を登録し、内、運用中と運用を終了したも
のが 114 個、及びロケット上段部や関連機器が合計 191 個、更に、破片類を約 250 個登
録しています。現在、フランス政府は安全保障ミッション衛星を含めて 20 機衛星を運
用、EUTELSAT 通信社は、フランス政府の認可の下、26 機静止衛星を登録していま
す。また、最近では、Astrium サービス社は、SPOT-6 衛星を自己資金で打上げ、2013
年末には SPOT-7 を打上げる予定です。
フランスは、軌道上で初めてスペースデブリ衝突事故にあった国です。軍事用実験衛
星 Cerise が、破裂したアリアン-1 ロケット上段部の破片と衝突、この衝突事故以降、各
国でスペースデブリ問題が注目を集めるようになりました。その後、宇宙機関間デブリ調
整会議や国連宇宙空間平和利用委員会科学技術小委員会を通じて、スペースデブリ
低減ガイドラインの制定に貢献しました。
宇宙活動に関する法整備面では、2008 年に私企業による宇宙活動の免許制(ライセ
ンス制)を、2011 年には衛星運用者が、衛星の打上げ、軌道上運用中、運用終了後の
再突入時において、スペースデブリ発生の最小化に努めるよう規定しました。また、私が
UNCOPUOS 議長時に、宇宙活動の長期持続性に関する活動を各国に訴え、2008 年
に最初の非公式会合が開催されました。その後、国連でも本案件が検討され、2010 年
には正式に「宇宙活動のための長期持続性ワーキンググループ」が立ち上げられまし
た。並行して、「宇宙活動のための国際行動規範」についても、2007-2008 年ごろ、フラ
ンスは議論をリード、その後リード役は EU 議長へバトンタッチされました。更に、「透明
化・信頼醸成措置」に関する国連の政府専門家グループ会合においても、フランスは積
極的に関与しています。本専門家グループは、2013 年夏、報告書を纏める予定です。
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“国連宇宙空間平和利用委員会科学技術小委員会 2013 年会合結果紹介”
堀川 康 国連宇宙空間平和利用委員会議長
昨年の第 1 回 SSA シンポジウムでは、国連宇宙空間平和利用
委員会(UNCOPUOS)科学技術小委員会(STSC)下に、2010 年
設置された宇宙活動の長期持続に関するワーキンググループに
ついて紹介しましたが、本日はその後の活動状況を報告します。
2013 年 2 月 11~22 日の間開催された STSC 会合おいて、グ
ループ A(持続的宇宙利用)、グループ B(SSA)、グループ C(宇
宙天気)、グループ D(監査体制)が、個別会合を 7 回開催、更に
合同会議、ワークショップ、シンポジウム等、積極的な活動を展開
しました。それぞれのワーキンググループで議論されたガイドライ
ンについて紹介します。
ワーキングループ A:整理すべき事項として、①地球観測や宇宙サービスについて
は、国際電気通信連合(ITU)規則を参考した整理、②自然災害関連の持続的宇宙開
発に対する状況認識活動について、③人材育成、データアクセス・処理に関する国際
協力について、④宇宙活動能力整備に関する支援のための国際協力について、⑤法
規制に関する国際協力に関することについて等。
ワーキンググループ B(SSA):①スペースデブリについては、スペースデブリの観測・
スペースデブリ発生及増殖に対する対策について、またスペースデブリの自然落下やコ
ントロールドリエントリーに関する事前通報について、②宇宙システムの運用について
は、スペースデブリの接近解析、衝突回避運用等について、③SSA 活動支援に必要な
ツールについては、衛星運用者、SSA 組織やコンタクト情報のディレクトリー、宇宙物体
に関する情報収集・情報共有・情報普及について。
ワーキンググループ C(宇宙天気):①宇宙天気データの収集、共有、校正、普及に
ついて、②宇宙天気モデルや予測ツールの高度化について、③宇宙天気モデルや予
報情報に関する情報共有とその普及活動について、④宇宙及び地上システムの設計、
打上げ、運用における宇宙天気の影響を最小限に抑えるための情報の普及について、
⑤宇宙天気に関する人材育成について。
ワーキンググループ D(監査体制):①宇宙活動に関する国際協力の促進、②宇宙活
動の長期持続性に関する経験の共有、③宇宙天気情報の編集と効果的な普及、④規
則や技術に関するアウトリーチ活動と教育、⑤宇宙活動長期持続性強化のための非政
府組織的活動の奨励、⑥それぞれの国おける宇宙活動の監視を実行する際には、“宇
宙活動の長期持続性”を考慮すること等、12 項目が議論されました。
13
“宇宙活動の長期持続性に関する活動報告”
Ken Hodgkins 米国国務省宇宙・先端技術室長
本日は、幾つかポイントに絞って、お話します。
① 宇宙の利用は、地球上で持続可能な発展で不可欠な役割を
演じます。
ベトナムの例を紹介します。ベトナムは人口が集中しているた
め、自然災害が発生した場合、甚大な被害を受けることになりま
す。そのため、ベトナム政府は、日本から地球観測衛星を調達す
ることを決定し、衛星データによる自然災害防止、減災に役立て
ようとしています。このような自然災害対策に衛星データを利用
することは、ベトナムだけでなく宇宙先進国である米国、日本も同
じです。
② 持続的発展のための国連の役割
1959 年国連が宇宙の平和利用が人類へ利益をもたらすことを認識すると共に、宇宙
活動の国際協力を促進するために UNCOPUOS を立ち上げました。その下に、科学技
術小委員会(STSC)や法律小委員会(LSC)を設置し、スペースデブリ低減ガイドライン
の策定や宇宙活動に関する 4 つの条約と 1 つの協定を作成しました。4つの条約とは、
宇宙条約(月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律
する原則に関する条約)、宇宙救助返還協定(宇宙飛行士の救助及び送還並びに宇
宙空間に打ち上げられた物体の変換に関する協定)、宇宙損害責任条約(宇宙物体
により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約)、宇宙物体登録条
約(宇宙空間に打ち上げられた物体の登録に関する条約)、協定は、月その他の天
体における国家活動を律する協定です。他にはリモートセンシング原則、宇宙で
の原子力利用原則等が、法律小委員会において作成されました。
③ 変化する宇宙環境
当初宇宙開発利用は限定された先進国によって進められてきましたが、現在は、約
70 の国、国際機関、政府関連機関等により衛星が利用されています。利用形態として、
商業利用、科学利用等様々です。その代償として、スペースデブリが増加し、米国が公
表しているデータベースによると、10cm 以上の物体が、約 20,000 個です。これに対し
て、様々な警告も発せられています。
宇宙開発利用の急速な進歩により、宇宙を利用する機会もまた進化しています。
COPUOS とその小委員会は、これらの情勢をモニターするために世界的なレベルでユ
ニークな議論の場を提供しています。
14
特別講演
“「プラネテス」”
幸村 誠 漫画家
私の漫画「プラネテス PLANETES」は、ギリシャ語で惑星という
意味です。ギリシャ語の本来の意味の中には、惑うもの、drifter
みたいな意味合いもあると聞いています。まさに「我々というもの
は、人間というもの」は、迷いながら少しずつだんだんと前進し
て、やっと宇宙までやってきたなという、そのような意味をタイトル
に込めてこの漫画を描いていました。そもそも宇宙ゴミ問題を題
材として選んだ切っ掛けは、八坂哲雄先生著「宇宙のごみ問題」
に若いころ出会い、漫画にしようと思いました。この本が私に沢山
のインスピレーションをくれました。
舞台設定は、2060 から 2070 年代を想定して、そのころは恒常的に宇宙空間で居住
するものがあり、主人公は、スペースデブリ回収専用宇宙船を操っています。スペースデ
ブリの回収は容易いことではないと承知しています。回収のためにはスペースデブリ密
度の濃いところに飛んで行くので、船体はいつも小さなスペースデブリが当たって穴だら
け、それをだましだまし使っているという、そんな宇宙船であろうと想像して描きました。ま
た、このような活動を支える基地が必要で、それを月面都市としました。月面といっても、
放射線対策のために地下深くに居住区を作り、様々な人々が生活を営んでいるというの
を想像しました。電車も描きました、月の地下が、地下鉄のような交通機関で月での活
動の幅が更に広がると考えました。勿論、地下には宇宙船の発着が可能な宇宙港ありま
す。回収船で回収したスペースデブリは、月に持ち帰って資源ゴミとして再利用されると
考えました。
とにかく私は、宇宙空間の華やかさ、フロンティアを突き進む夢のある人間たち、エネ
ルギーに、バイタリティに溢れた人間たちの活動もあるでしょうが、その一方で、普段は
顧みられない、このまま開発が進めば縁の下で必要になってくるだろう、そうした人たち
を描くのが好きです。
先ほど、ドナルド・ケスラーさんにお会いすることができました。漫画の中で、テロリスト
が宇宙の巨大構造物を爆破しようとする話を考えました。それは、テロリストがケスラー・
シンドロームを引き起こすためです。1 枚の絵を描くのに 2 日かけたものがあります。この
1 枚の絵で、端的にケスラー先生の提唱なさったケスラー・シンドロームというのが、どれ
だけ恐ろしい事態かというものを表現してみたかったのです。
スペースデブリが私たちを苦しめる前に、どこかで私たちが切り開き、フロンティアを開
拓していく情熱と、等量ぐらいに宇宙ゴミについて神経を割いていかないと、ゴミの発生
と片付けの量のつり合いが取れなくなって、いつか地球がスペースデブリの幕に覆われ
てしまうのではという恐怖に、この漫画を描いて以来 10 年ずっと苛まれています。
15
“長期持続可能な宇宙環境のためのデブリ管理戦略”
Donald J. Kessler 国家研究会議 NASA 軌道デブリ計画評価委員会議長
地球に帰還した宇宙機の表面を観察すると、元々の太陽系を
構成する一部であるメテオロイド以上に、多くの人工物体、アル
ミ、チタン、塗料、銅、シリコン、回路基盤材料、原子力電池の冷
却材(金属ナトリウム・カリウム)を確認することができます。
スペースデブリ問題に関する歴史を振り返ってみたいと思いま
す。1976 年まではスペースデブリに関するプログラムは一切あり
ませんでした。理由はスペースデブリに関する誤解が多かったた
めに、対応するためのプログラムがなかったのです。何をやれば
よいかも分かりませんでした。その後カタログ化が進むとスペース
デブリの数は衛星やロケット機体の破裂によって増加しているということが分かってきまし
た。そこで初期は、破裂を回避するために燃料を空にする対応をまずとりましたが、これ
は短期的な処置です。そこで長期的な対応として、25 年ルールを作りました。更にシー
ルディングする方法が提案されましたが、シールディングにより使用材料が増加するの
で、これはスペースデブリの増加の潜在的要因となります。かつて、宇宙太陽光発電衛
星が提唱されましたが、これほどの巨大構造物を宇宙で構築すると、他の衛星やスペー
スデブリとの衝突確率がかなり高くなるため、とんでもない結果をまねくことになります。
そこでスペースデブリ問題の対応のための計画、①衛星を守る。②軌道環境を守る。③
地上の人々を守る。の3つが立てられました。①はデブリバンパーなる訳ですが、これで
問題が解決できるわけではないので、スペースデブリ・アセスメント・システムとして、①~
③の横断的な対応を考えることにしました。例えば、スペースデブリの数は 10cm 以上の
ものはカタログ化し、それより小さいもの、例えば 2cm くらいまでは高度別の密度分布を
様々なデータから推測しています。これがスペースデブリ分布モデルとして提供されて
います。
2010 年から 2 年間、NRC で、私を議長とする NASA のスペースデブリプログラムに関
する評価委員会が、1995 年以来 2 度立ち上げられました。限られた予算の中で、審議を
進め、2011 年秋に報告書を纏めました。予算の関係で、短期的課題に関することしかで
きませんでした。スペースデブリモデル、観測、保護、低減、再突入、衝突回避、リスク解
析等について、宇宙機関間、国際協力、商業分野での協力の面でも議論しました。
NASA は長期的に何をなすべきかをキチンと説明できるまで検討していなかったため
に、プログラムを提案できなかったので、予算も配分されませんでした。しかし重要なの
は、NASA がどうすべきかではなく、国際間で何をすべきかを議論すべきなのです。
今後のスペースデブリ衝突可能性が高い場所を衛星軌道別に見ると、高度
600-1,000km、軌道傾斜角 82 度及び 98 度が挙げられます。その他にも、上記高度付
近で、軌道傾斜角 65 度、71 度、74 度付近も危険です。しかし、これは別の考え方をする
と、多くの衛星がほぼ同じ軌道にあると、将来的には効率的に除去ができることを意味し
ています。宇宙では、軌道面を変更するには多くのエネルギーが必要ですから、重要な
16
ポイントです。ただし、現在提案されているスペースデブリ除去方法(レーザー、テザー、
大面積の帆等)は、未解決問題が山積です。
静止衛星軌道での衝突は中低高度に比べると相対速度が 0.5km/sec と小さいために
中低高度より問題は楽ですが、衝突問題がなくなる訳ではありません。そこで、一つ提
案があります。静止衛星では、相対的に太陽による摂動が大きくなり、放置すると赤道面
に対して、±約 15 度の軌道傾斜角変動を起こします。従って、これを考慮して、最初か
ら 7.3 度の傾斜角を持たせると傾斜角変動がなくなり、南北制御が不要となります。こう
すると地上のアンテナに駆動系を付加する必要がありますが、既にこのような対応をとっ
ているところもあります。しかし、これも長期的にみると根本的解決策ではありません。
是非皆さんで、宇宙を長期的に、持続して利用できるようにするための方策を考えて
下さい。
第 2 日:3 月 1 日(金)
多国間国際協力
“欧州宇宙機関の“クリーン・スペース・イニシアティブ”
Kai-Uwe Schrogl 欧州宇宙機関(ESA)政策部長
宇宙に対するクリーン・テクノロジーとは、宇宙計画の環境イン
パクトの軽減に貢献することと定義しています。即ち、宇宙及び地
球におけるオーバーオールなライフサイクルを考慮すること、また
宇宙活動に起因する残留物や汚染物質の管理を意味していま
す。EU が提唱した国際行動規範を ESA としては、技術的観点か
ら実現方法を検討しようとして、この“クリーン・スペース・イニシア
ティブ”を提案しました。このイニシアティブは 4 本柱で構成してい
ます。①エコ・デザイン。例えば、打上げ射場の設計に対する配
慮や、衛星の設計寿命の長期化がこれに該当します。②グリー
ン・テクノロジー、例えば、クリーンな水力発電を使う、③スペースデブリ低減、④スペー
スデブリの環境改善、これはスペースデブリの除去も含みます。
スペースデブリの改善策について紹介します。まず、リスクの低減です。宇宙開発の
持続性ですが、NASA、ESA の予測によると、これ以上の打ち上げがなくなってもスペー
スデブリの数は増加すること、また年々スペースデブリ衝突回避マヌーバの実行回数が
増加しています。2009 年、米露衛星衝突事故発生と同様なリスクが、ESA の衛星に対し
ても、今後 50 年以内に、7.5~11%と予測されています。更に、今後年間 5 機以上の能
動的デブリ除去を実現することで、スペースデブリの急増を抑えることが可能となる国際
協力の必要性を指摘しています。次に、現在 ESA が実施している活動を紹介します。一
つ目は、静止衛星の墓場軌道への自動化検討(ROGER、2010 年)、能動的スペースデ
ブリ除去技術開発検討(2010-2011 年)などです。
これらを実現するために、2012 年、欧州衛星運用センター(ESOC)でワークショップを
開催し、ロードマップを纏めました。2020 年を目標に技術開発を実施します。2012 年、
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関係者と準備活動を実施、その成果を踏まえて、まず次の 2 年間で最終決定に必要な
研究開発を実施します。
“持続的宇宙開発のための透明化・信頼醸成措置と多国間イニシアティブ”
Ben Baseley-Walker 国連軍縮研究所プログラムリード
宇宙インフラの利用は現在社会において様々な利用形態が出
現しています。一方でこれらの宇宙インフラは今、スペースデブリ
問題で長期的利用の面で危機的状況にあります。また、人類の
宇宙活動は、軍事、民生両面で境界がなくなりつつあります。宇
宙はまた、危機管理のツールとして重要です。国境安全保障、水
を始めとした地球資源管理、軍事活動、災害警報、減災等。
政策面からみて、宇宙の安全保障はますます重要性が増して
います。国際的な観点からも、関係国の急増、合法的・非合法的
な側面、国際政治等、考察が必要です。
さて、TCBM ですが、これについては様々な方からの報告があ
りました。UNIDIR としては、TCBM をこのように理解しています。TCBM は、国際平和や
安全保障の強化、各国間における信頼性の展開、理解増進、安定的関係への貢献な
どにより、友好的な国際協力のための場の創設、改善に資するものと考えています。
TCBM は、恐怖心を軽減したり、諸国間の信用構築に効果的であり、国際協力の促
進や国際平和と安全保障の強化も可能で、軍縮、軍備制限合意、情報共有にも有効な
手段としても期待されています。
ロシアが提案した TCBM に関する政府専門家会合(GGE)は 2012 年 6 月に第 1 回会
合が開催されました。私、ローズ氏、ブラッシェ氏はこのメンバーです。15 ヶ国が参加し
ています。EU が提唱している国際行動規範は、具体的であり、例えば、宇宙を紛争から
守ることを約束し、宇宙は国家安全保障の機軸であることを認識させてくれるものです。
TCBM は、宇宙活動に対する安全保障や予見の可能性に対する重要な第一歩で
す。
“国連透明化・信頼醸成措置専門家グループ会合に関する考察”
Tiffany Chow 米国セキュアワールド財団プロジェクト
マネージャ
宇宙の持続性とは、人類が平和目的で長期に亘って平和目
的と社会経済の利益のために宇宙活動が可能なことを確実なも
のとすることです。持続性に関する脅威とは、スペースデブリ、宇
宙が混雑していること、様々な干渉、宇宙天気、ならず者の行動
です。解決のためには、国際協力が必要です。
宇宙分野における TCBM は、事故を減らす、誤解を減らす、
不信を減らすことに貢献し、戦略的安定、平和と安全保障、国際
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協力を推進します。また、TCBM で考慮すべき事項は、SSA データの共有を今後ますま
す進めること、事故を事前に防ぐこと、不意の事故対応(太陽活動の活発化などによ
る)、活動の検証、センサーの配置方法等です。
透明性の強化のためには、政策や予算の公表、宇宙計画のデュアル・ユース化、趣
旨の明確化、混乱と疑念の軽減が必要です。
GGE だけが宇宙活動の持続性に貢献する唯一の組織ではありません。UNCOPUOS
における長期持続性ワーキンググループ活動や、提案中の国際行動規範の議論も重
要です。更に、ハーモナイゼーションが鍵になると考えています。
アジア太平洋地域諸国からの報告
“中国の宇宙政策と宇宙開発計画”
Shouping Li 北京工科大学宇宙法研究所長
中国の宇宙政策と宇宙活動についてまず紹介します。宇宙政
策についてはこれまで 3 回宇宙政策白書が発行されました。
2001 年、2006 年、2011 年の 3 回です。これらの白書では政策と
共に宇宙活動について紹介されています。宇宙活動の目的に
ついて以下の 4 項目が謳われています。①地球や宇宙に関する
理解を深めること、②人間の文明と社会の進展と促進、全人類へ
の利益のため、③経済的発展、科学・技術の発展、国家の安全
と社会の進歩等の要求にマッチすること、④中国の国家主権や
利益の保護、国としての競争力の構築、の 4 点です。更に、宇宙
活動に関する 5 つの原則も盛り込まれています。科学的な開発、独立的な開発、平和的
な開発、革新的な開発、オープンな開発です。科学的な開発は今後の中国の宇宙活動
を支える中核的活動であり、2000 年に温家宝氏が盛り込みました。また、平和的な開発
については、宇宙活動は一国が支配するものではなく各国が協力して開発していくもの
として原則に組み込まれました。更に、革新的な開発を行うことで新たな知識を獲得しよ
うとしています。並行してこれらを確実に実行するために、科学の進展、産業の発展等
に必要な法整備も進めました。また、今後 5 年計画では、衛星利用、有人飛行、深宇宙
探査を優先することを決定しました。
今後の宇宙プログラムでは、まず(1)基盤の強化として、長征5号(大型・液酸液水)、
長征6号(小型)、長征7号(中型)の開発と、三つ目の打上げ射場の建設です。南に位
置するハイナン島です。次は、(2)キープロジェクトの推進です。即ち、有人飛行を継続し
て宇宙ステーションの実現、月探査として月面着陸と帰還を目指しています。(3)は、人
工衛星開発です。特に北斗(Baidou)は測位衛星で、既に打上げは始まっており、2020
年にコンステレーションが完成します。地球観測衛星計画も進めています。(4)として、宇
宙産業の育成も進めています。(5) スペースデブリについても取り組みを行っています。
技術的にはスペースデブリの観測の実施、法的処置によりスペースデブリの低減を担保
したいと考えています。将来的には宇宙法の制定を目指しており、それによりスペース
19
デブリの低減化に拍車が掛かるものと考えています。(6)国際協力の推進に関しては、国
連の枠組みでの協力、アジア太平洋地域での協力(APSCO)、途上国との協力強化と
先進国との付加価値協力の 3 原則に基づき実施しています。
中国の宇宙活動は包括的な政策がありません。科学技術産業部門と、軍部との統制
が取れていません。バラバラです。実際問題として、共同の宇宙政策の遂行は困難で
す。
“インドの宇宙政策と宇宙開発計画”
Rajeswari Pillai Rajagopalan インド安全研究財団シニアフェロー
インドにおける最近の話題は、2007 年中国の ASAT 実施によ
り、安全保障の見直し、インドの政策の再評価、インドの ASAT に
関する議論、公式には宇宙の軍事化への反対等があります。
インドには明確な宇宙政策がありません。国の発展のために宇
宙技術の利用を宇宙計画の中で重要視しています。国の発展の
ために技術が重要である一方、軍事的安全保障を強固にするた
めには技術の重要性は切り離せません。インドは、軍事的潜在
能力を持つ民生技術の獲得を目指しています。航空宇宙関連技
術者が民生から軍事の方向に流れ始めています。
2000 年代初期、インドでは宇宙の軍事化政策に関する再検討を行いました。米国ブ
ッシュ政権時代のミサイル防衛に対する反応、インド自体のミサイル防衛に対する興味、
中国に対する対抗心、中国やパキスタンからの脅威に対抗するためのミサイル防衛、ミ
サイル防衛協力の一環としての技術移転等、インド政策の中に苛立ちのサインが読み
取れます。
今後の協力課題としては、スペースデブリの回収、スペースデブリ観測等の SSA 活
動、海上監視(MDA)、CBM 等が考えられます。
“オーストラリアによる宇宙の持続性促進のための活動”
Georgina Downer 在日本国オーストラリア大使館二等書記官
オーストラリアでは、民生関連の事項を所掌する「宇宙ユニッ
ト」、国際行動規範、GGE 等を所掌する「外務省」、SSA の「防衛
省」があります。
2011 年に制定された宇宙産業政策によると、国際協力の強
化、安定した宇宙環境のための貢献等が掲げられています。
宇宙の持続性に関する研究としては、スペースデブリの自動レ
ーザ追跡技術開発があります。
SSA 分野では、米国との協力として、南半球でセンサーが不足
している弱点を補強するために 2010 年協力協定を締結、2012 年
には更なる能力向上を目指した協定に合意しました。
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オーストラリアでは、宇宙活動は企業と大学だけで実施するよう規定されています。
オーストラリアは、宇宙活動の国際行動規範に関して積極的に活動しています。
また、UNCOPUOS 長期持続性ワーキンググループのグループ D においては、共同
議長の役割を担っています。
“KARI 宇宙計画と SSA 活動”
Eun Kyou Kim
韓国航空宇宙研究院衛星情報研究センター・衛星運用室長
韓国航空宇宙研究院(KARI)は、1989 年設立、航空宇宙分野
の研究開発を通じて、韓国経済並びに国民の生活の向上に貢
献 す る こ と を 目 指 し て い ま す 。 職 員 は 1,000 名 、 年 間 予 算
$300M。日本、米国、インド、イスラエル、フランス、ロシアを始め
とした国際協力を積極的に進めています。
地 球 観 測 衛 星 計 画 を 重 点 的 に 推 進 中 で す 。 1999 年 の
KOMPSAT-1(空間分解能:6.6m)、2006 年の KOMPSAT-2(同:
1m) 、2012 年 、H2A ロ ケット で打上 げた KOMPSAT-3(同:
0.7m)、2014 年打上げ予定の KOMPSAT-3A は、空間分解能
0.55m、2013 年打上げ予定の KOMPSAT-5 は、SAR 衛星です。
その他にも、静止衛星 COMS は、気象観測、海色センサー、Ka バンド通信も可能で、
2010 年打上げ、現在も運用中です。衛星運用は、大田市(KARI 本部)の他、ノルウェ
ー、ミクロネシア、南極の地上局ネットワークにより実施しています。
SSA 活動は、中国の ASAT 以降、活動を開始。現在は、衝突回避マヌーバ等様々な
研究開発を進めています。ROSAT、Phobos-Grunt、Cosmos1484 等の落下に際して研
究活動を実施しました。米国 JSpOC との連携も進めており、2012 年 1 年間で合計 46 件
の CSM を受領しました。UNCOPUOS 活動、国際行動規範等にも積極的に対応してい
ます。
韓国としては、国連メンバー国の一員として、スペースデブリ観測等、今後も継続して
活動を推進する所存です。
“マレーシアの宇宙政策と宇宙開発計画”
Noordin Bin Ahmad マレーシア科学技術革新省国家宇
宙庁(ANGKASA)副長官
国家宇宙政策は 2020 年までを視野に入れて、宇宙開発が経
済社会の発展、国家安全保障強化を支援することを目指すもの
としています。具体的には、宇宙インフラ構築、産業振興、安全
保障の推進、革新的宇宙技術を通じて利益を国民が享受できる
などが重要であるとして、7 つの指針が示されました。
①宇宙を知識のフロンティアと位置付ける、②宇宙の商業活
動の推進、③宇宙技術開発の加速、④地方の宇宙産業振興、
21
⑤人的資源開発、⑥効果的な統治、⑦国際関係と外交。今回のシンポジウムでは、宇
宙活動の持続性がフォーカスされていますが、我が国の宇宙政策には、まだ、その点が
含まれていないのが他の諸国との違いと認識しています。とは言いつつも、国際協力や
ガバナンスを軽視しているわけではありません。
これら 7 つの指針に対応して、7 つのプログラムを設定しています。①新たな知識の獲
得と科学的発見としては、マレーシアの地理的特性として、赤道上空軌道衛星計画の
強化を目指します。②技術革新と商業展開としては、官民共同による技術革新を可能
にするための基金の設置を決定しました。③地方産業育成では、育成プログラムを推進
します。④宇宙技術開発の加速では、戦略的推進を目指します。⑤人的資源開発で
は、官民一体となった訓練センターを設置しました。⑥効果的ガバナンスとしては、宇宙
活動法の制定を目指します。⑦外交では、宇宙技術の災害管理応用、国連やその他の
国際協力の推進を目指します。
これらのプログラム実施には多くのチャレンジが必要ですが、国家としての能力向上、
革新的技術習得、産業育成を目指し、引き続きゴールを目指して宇宙活動を推進しま
す。
“ベトナムの宇宙政策と宇宙開発計画”
Pham Anh Tuan ベトナム科学技術アカデミーベトナム国家衛星センター所
長
2020 年を視野に入れた宇宙技術開発戦略は以下を目指しま
す。①宇宙に係る調査研究、国際協力に関する政策、法的枠組
みの構築、②宇宙技術インフラ構築、③宇宙技術に関する国家
計画の推進、④地上局製造技術の習得、⑤小型地球観測衛星
の開発、⑥ロケット技術の習得、⑦高度な技術を有する技術者育
成、⑧宇宙技術の産業、教育、健康管理等への利用。
宇宙関連 5 条約に関しては、宇宙条約は批准済みですがその
他はまだまだです。
次に、ベトナム国家衛星センター(VNSC)計画について紹介し
ます。ハノイ郊外に VNSC 設立のため、日本からの円借款により 2020 年完成を目標に
建設が始まっています。VNSC では、宇宙関連の人材育成、インフラ建設、技術移転等
のセンターを目指しています。
地球観測衛星計画は、2017 年及び 2020 年打上げの、LOTUSat-1、LOTUSat-2 計
画を進めています。センサーは、X バンド SAR です。今年度から設計フェーズに着手し
ました。並行して、光学センサー衛星(VNREDSat-1)計画を、フランスの ODA により推
進しています。本衛星は 130kg 程度の小型地球観測衛星で、空間分解能は、2.5m(パ
ンクロ)、マルチスペクトラムで 10m となっています。後継の VNREDSat-1b は、ベルギー
からの ODA により開発を進めています。ハイパースペクトラムセンサーを搭載し、2017
年の打上げを目指しています。
22
通信衛星は、2008 年に打上げた VINSAT-1 を運用中です。サービス域は、ベトナム、
ラオス、カンボジア、タイ、マレーシアの一部です。VINASAT-2 は、2012 年 5 月に打ち
上げ、顧客としては、ラオス、カンボジア、マレーシアの産油、銀行、財務関連ビジネス
です。
ベトナムの宇宙活動は、まだ始まったばかりです。今後は衛星ビジネスの展開ととも
に、国連を中心とした国際協力を展開します。
“日本の宇宙政策外交”
西永知史 外務省総合外交政策局宇宙室長
昨年度、外務省内に宇宙室が立ち上がりました。そこで、外務
省が取り組んでいる宇宙に係る外交政策推進状況を報告しま
す。
まず、民生及び安全保障両分野における宇宙空間活用に関
する国際的規範作りですが、EU が提案した「宇宙活動に関する
国際行動規範」策定に向けた国際的な議論に積極的に参加して
います。2013 年は、複数回の多国間専門家会合に参加し、署名
のための外交会議開催を目指しています。本テーマに関して、
我が国はアジア諸国を始め、アウトリーチ活動を積極的に展開
する所存です。次に、UNCOPUOS で展開中の長期持続性につ
いてのベストプラクティス・ガイトライン作りにも積極的に貢献します。
二つ目の取り組みは、宇宙をめぐる国際協力の推進です。ODA も活用しつつ、我が
国の衛星・地上設備を新興国に展開し、新たな市場を創出します。既にトルコ、ベトナム
で成果が上がっており、タイ国とも協議が進んでいます。次は、地球規模の課題への取
組みへの貢献です。気候変動、防災、森林保全、違法伐採対策、資源・エネルギー等、
多岐に亘ります。ASEAN 防災ネットワーク構築構想を進めています。更に、2 国間・多国
間国際協力及び対話も進めています。宇宙に関する包括的日米対話の立上げ、カナ
ダ、英国、EU との宇宙協議を今後推進します。
最後が、宇宙安全保障の確保です。宇宙への自由なアクセスの確保、他国の宇宙活
動の透明性確保、安全保障分野での一層の宇宙開発利用の推進です。安全保障分野
では、日米宇宙協力を推進しています。日米安全保障協議委員会(「2+2」、2011 年 6
月)において、SSA や、宇宙を利用した海洋監視(MDA)をはじめとする具体的協力分
野を特定しました。安全保障分野での宇宙利用の推進として、SSA 協力体制の構築、準
天頂衛星システムの安全保障分野での利用拡大、IGS 計画の維持、拡充・強化などで
す。また、JAXA 法が改定され、JAXA が安全保障目的での活動ができることが明文化さ
れました。
23
“マウイデブリ国際シンポジウム SSA フォーラム”
Jeanne Unemori Skog マウイ商工会議所会頭兼 CEO
マウイ島で毎年開催している「AMOS Conference」は、昨年が
13 回目になります。第 12 回目までは、スペースデブリ等の光学観
測技術を中心とした国際会合でしたが、昨年はじめて宇宙政策
に関するプログラムとして、“SSA 政策フォーラム“を展開しまし
た。パネルディスカッション形式で、以下の三つのパネルを開催
しました。
① 米国の宇宙政策
② 国際協力
③ 商業・民生 SSA
国際協力パネルディスカッションで、欧州の仏、独、伊からの代表者と、日本から JSF
を招待して、各国の SSA 活動の現状報告と米国との国際協力の可能性などについて議
論しました。議論の中で、欧州は EU としての SSA の取り組みと、国家プログラムとしての
取り組みがあり、そのバランスをどのようにとっていくかが重要であるとの意見がありまし
た。また、各国とも予算問題がありますので、国際協力は SSA 活動の推進のために有効
な方法であるとの意見がフランスからありました。
各国の宇宙政策は日々変化していますし、各国の宇宙活動、特に SSA 活動に関する
状況も日々変化しています。このような状況下で、昨年、SSA 政策フォーラムを開催した
意義は大きかったと思っています。会合の参加者からも SSA 政策フォーラムを来年以降
も続けて欲しいとの要望を頂きました。我々としては、今後とも、このような宇宙政策の議
論の場を提供したいと思っていますので、是非、ご参加下さい。
パネルディスカッション
トピックス: アジア太平洋地域における国際協力体制構築の期待
モデレータ: ティファニー・チャウ(SWF)、及び吉冨 進(JSF)
<パネリスト>(敬称略)
<パート1>アジア諸国代表
リ シューピン(中国)
ラジェスワリ・ピライ・ラジャゴパラン(インド)
キム ウンギュ(韓国)
ノーディン・ビン・アーマド(マレーシア)
パム・アン・チュアン(ベトナム)
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<パート2>世界のオピニオンリーダ
フランク・ローズ(米国)
ジェラール・ブラシェ(フランス)
ドナルド・ケスラー(米国)
ベン・ベイズリーウォーカー(国連)
青木節子 慶應義塾大学総合政策学部教授
鈴木一人 北海道大学大学院法学研究科教授、プリンストン大学国際地域研
究所客員研究員
<討議概要>
その1: アジアの代表者によるパネルディスカッション
トピック①アジア諸国からの持続的宇宙活動に対する期待
(吉冨)
それでは、①今回参加頂いたアジアからの参加国から、持続的宇宙開発利用実現の
ために何が必要か、あるいは今回の会合に参加して感じたこと、印象等を披露して
頂きたい。
(リ:中国)
・宇宙活動の持続性は、安全性と安全保障に係る問題でもあると思いますが、私は、
宇宙活動の安定には二つの重要なポイントがあると思っています。一つ目は、宇宙
活動の安全性とセキュリティを確保すること、二つ目は全ての国が自由に宇宙を探
査し、かつ宇宙利用を楽しむことができるようにするということです。
(ラジャゴパラン:インド)
・宇宙開発利用の持続可能性については多くの議論が始まっていますが、持続可能
性をどのように担保するか、それにはどんな問題があるかということですが、現状
ではスペースデブリが増え、宇宙が輻輳する中で多くの国が宇宙利用に参加するよ
うになって来ています。この新たな宇宙利用者には、国家だけでなく民間も参入し
ていますので、民間の宇宙開発利用に対して、誰が責任を取るのか、国が取るのか
が重要になってきます。技術的にも新しい技術が導入されてきているのでこれも重
要です。これらの問題解決は単一の国ではできないので、国際協力が必要というこ
とです。宇宙の持続的可能性のためにスペースデブリの観測が重要で、米国の SSN
やロシアの観測網、欧州等があります。それぞれの国は宇宙活動の持続性を保って
いきたいと思っていますが、これらの国々はそれを実行するための技術、或いは経
済的な余裕がありません。従って、国際協力、地域協力が必要になってきます。
(キム:韓国)
・宇宙活動は持続可能で無ければいけない。そのためには責任ある行動を宇宙主体
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でとる必要があります。そのため、国際社会が様々な努力をしてきています。その
一つの例が宇宙活動に関する行動規範です。TCBM を進める上で、この国際行動規範
が非常に重要と考えています。韓国はこの行動規範を制定することを支持していま
すし、全ての宇宙利用国もこの行動規範に賛同すべきですが、国際的な合意を得る
ためにはこれらの国の要求を反映した内容である必要があります。また、行動規範
は、各国の技術レベルを考慮したものでなければなりません。技術レベルをあまり
にも高くしすぎると、宇宙開発技術力の低い国はそれを達成することができませ
ん。
(アーマド:マレーシア)
・宇宙活動の持続可能性を担保するためには、その範囲を規定する必要があります。
国が持続可能性を感じるためには経済的な側面も重要です。先進国のみが利益を享
受し、新規参入国は、新たな規制の犠牲者になると感じないようなものとすべきで
す。
(チュアン:ベトナム)
・ベトナムの宇宙活動はまだ始まったばかりですが、先進国が行動規範等を制定し
ようとしていることには感謝しています。海洋で既に国際問題が起こっています
が、宇宙ではこのようなことが起こらないようにすべきと思います。ベトナムはこ
のような国際行動規範作りや、持続可能に関する議論には積極的に対応したいと考
えています。
(吉冨)
・アジアの中では、中国、インド、日本は宇宙活動の先進国、一方、韓国、マレー
シア、ベトナムの宇宙活動はまだまだこれからという状況にありますが、今後、宇
宙活動の持続可能性や、国際行動規範の議論を進める際には、先進国と途上国間の
バランスを考える必要があると思いますが、リさん、ラジさんこの点についてどの
ようにお考えでしょうか。
(リ)
・宇宙活動の持続性とは何かを知りたいと思って、ブラシェさんにその点を聞きま
した。宇宙活動の安全性、安全保障を担保することが必要と考えます。世界は 140
~150 の国が存在しますが、全ての国が宇宙活動をできるわけではありませんので、
地域ごとの協力体制構築が必要を思います。例えば、アジアでは宇宙活動に現時点
で携わっている国はまだ少数ですが、未参入国も含めた地域の協力体制を構築する
必要があります。欧州の ESA のような組織が、アジア地域でも必要ではないかと思
います。
26
(ラジャゴパラン)
・SSA を含め、どの分野で協力するかを特定することも重要です。この 2 日間でい
ろんな議論がありましたが、能動的デブリ回収は、技術的にも、また二国間、多国
間間の協力関係構築の観点からも重要です。アジアでは海上監視に関しては、既に
インド洋で競争、競合も始まっています。海上の安全保障保護はアジアにとって重
要で、インド、日本、中国然りです。更に、航空の監視も重要です。今年 2 月 15
日、ロシアに隕石が落下しました。その直後小惑星の地球大接近もあり、これらの
問題も重大です。これら全て通じて重要なのが情報共有です。二国間、多国間、地
域間の国際協力では、情報を共有し、同じ認識を持つことが重要になってきます。
・このような協力を前進させるためには、地域レベル、または国際レベルで進める
方法があります。潜在的に緊張関係にある 2 国間では、2 国間での TCBM という方法
もあります。2 国間の緊張緩和策としては、二国間でまず、打上げの事前通告、ク
リティカルな再突入情報の通知、宇宙で兵器を利用しない等、信頼性醸成措置(CBM)
があります。アジアにおいては、特に 2 国間の不信、疑心暗鬼の払拭が重要な課題
です。
・TCBM はインドとしても重要で有効な手段であると思いますが、他にも方法がある
と思います。インドは、法的拘束力が必要ではないかと思っていますし、法的拘束
力がなくてもよいものは何かを整理するのも重要です。また、EU が提唱している国
際行動規範は、政治的拘束力という一面があります。その点、国際レベルでは非常
に緩やかなルールであると言えますが、一方で、国によっては、厳格なルールとし
て施行する場合もあると思われます。行動規範に賛同する、しないに係らず、これ
は一種の試行です。
・何れにしても、インドとしては、包括的な方法を支持します。
(吉冨)
・法的なルール作りとともに、宇宙活動参入国に対して、衛星や関連デブリの監視、
更には昨日のケスラーさんの講演で紹介のあった新しい衛星軌道の使い方等、技術
的な課題がありますが、この点について韓国、マレーシア、ベトナムではどのよう
にお考えでしょうか。
(キム)
・我々は技術がまだ未成熟ですから、先進国からいろいろ学びたいと思っています。
技術とルールのバランスが大事です。ただし、宇宙活動の途上国は、例えばスペー
スデブリの監視能力を持っていませんので、これらの活動については、二国間とか
ではなく、包括的な枠組みが必要と思います。
・宇宙の持続性確保のためには統合化された方法が必要ですが、宇宙技術保有国と
非保有国の間で、簡単に合意できるものではないことも承知しています。しかし、
合意すべきとの意思を持つことは重要です。
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(チュアン)
・ベトナムはまだまだ保有する衛星は少なく、今後日本と今後様々な情報提供等を
はじめとした国際協力を進めたいと思っています。
その2: 世界のオピニオンリーダーによるパネルディスカッション
トピック②国際行動規範と国連 TCBM/GGE 活動の見通し
トピック③アジア太平洋地域における国際協調への期待
(吉冨)
それでは時間になりましたので、第 2 部に移行します。
第 2 部では、②国際行動規範合意の今後の見通しと、国連 TCBM/GGE 議論の方向性、
③アジア太平洋地域における国際協調への期待(日本に対する期待、日本に対する
助言)について討議したいと思います。そこで、今回発言の機会がなかった青木先
生と、鈴木先生からまず簡単なコメント頂きたいと思います。
(青木)
・まず②についてですが、宇宙の規範は既にあるということ、そして、それはかな
り十分なもの、適切なものがあるということは私たちが認識しなければいけないこ
とだろうと思います。国連憲章の 2 条 4 項は、武力による威嚇、または武力の行使
を禁止しています。これは地上でも宇宙でも変わりがないので、もしこの規範、原
則が守られるのであれば、新たな取り決めはあまり必要ないということにもなりま
す。また、国連で宇宙についての五つの条約があり、そのうちの四つには、ほとん
どの宇宙活動国が加盟国となっているので、これをどう守っていくかが大事です。
また、宇宙関係条約は、国家がどう行動しなければいけないかということは規定し
ていても、実際に紛争が起きたときに、それをどう解決していくのかという実体的
な法と手続法がないので、行動規範ではそのような際の協議システム、紛争解決の
システムも用意しているとか、異常が発生したとき、他国の衛星に自国の衛星が非
常に近づくときに、それをあらかじめ通報する制度や、事故が起きたときに早く教
える制度なども新しく付け加えられた要素と言えます。
・TCBM と行動規範とガイドラインはどういう位置関係にあるのか、さまざまな定義
はあると思いますが、TCBM というのは、法の欠缺(けんけつ:適用すべき法の規定
がかけていること)しているところ、アイデア、ノーション、コンセプトというよ
うなものです。その中で、一部具体化した、あるいは、それ以外の要素も含んだも
のが行動規範として結実していく、法的拘束力は持たないけれども、新しい規範を
作り上げていく文書と考えられます。更に、具体的に実施するためのガイドライン
を作るという規定があり、国連 COPUOS の科学技術小委員会(STSC)で作っている
ベストプラクティスガイドラインズなどはこれに当ります。行動規範は主権の尊重
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は原則の中にうたわれていますので、行動規範が法的拘束力を持たないということ
は、非常に賢い選択で、今さまざまある TCBM の考え方の中の一部をよりよく実現
していくものではないかと考えます。
(鈴木)
・パネルディスカッションのテーマとして、日本の役割はどういうものであるべき
かということでしたので、宇宙活動の持続性に関する日本の展望ということで、日
本がこれまで宇宙の持続的利用可能性の問題について、どのように扱ってきたのか
ということをお話します。日本は、JAXA が中心となって、宇宙開発国として責任あ
る行動をとっています。例えばロケットの上段ステージである 2 段目、3 段目のも
のを確実にスペースデブリにしないようにするなど、さまざまな内規に基づくセル
フレギュレーションを行ってきたことは確かであろうと思います。にもかかわら
ず、日本はスペースデブリの問題の緊急性について、あまり重要性を見出してこな
かった部分があるのではないか、それは、スペースデブリのリスクが必ずしも高く
はないということに起因しています。しかし、日本はこうしたことが今、世界的に
問題になっていて、何らかの形で、この問題を解決していく方法を見出さなければ
ならないという認識は強く持っていたであろうと思われます。
・しかし、新たな行政の枠組みが去年の夏に作られ、それ以降、だんだん意識が変
わってきつつあります。先ほど外務省の西永室長もお話しされていましたが、外務
省にも宇宙室ができて、これから宇宙に関する外交的な問題、国際問題を解決して
いくという枠組みができました。また、内閣府には宇宙戦略室という部署ができ、
日本全体で包括的な宇宙政策を行うということが進んでいます。また、多国間で、
特にアジア太平洋地域において、日本が積極的に宇宙の持続的利用についてのリー
ダーシップをとっていくことが可能になったというのが、去年からスタートした新
しい行政的な枠組みの中で進んでいます。こうした中で、日本における宇宙の安全
保障の問題、スペースセキュリティの問題も変わりつつある状態にあります。一つ
は、国際的な要請というか、今回のシンポジウムもそうですが、さまざまな議論の
場が生まれて、その中で、日本もある程度、国際的な責任を担わなければならない
ということが求められています。そういう意味では、このシンポジウムを開くとい
うことにも見られるように、宇宙外交の中でプライオリティの高いテーマになりつ
つあります。また、宇宙問題、特にスペースデブリの問題については、防衛省も積
極的にやっていかなければならないという機運が盛り上がっています。更にアジア
においては、日本と中国がそれぞれ、このような問題についての関心を示していま
す。国際政治的には非常に面白い状況ですが、そうした役割も日本はこれからも担
っていくだろうと思われます。
(チャウ)
青木先生、鈴木先生、ありがとうございます。さて、宇宙活動の持続性について、
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過去どのような議論が進められていたのでしょうか。数年前までは全くこの問題は
議論されてきませんでしたが、最近になって議論が活発化し、よい方向に向ってい
ると思います。国際行動規範、TCBM に関する政府専門家ワーキンググループ活動、
UNCOPUOS における長期持続性ワーキンググループ活動が、有機的に連携して議論さ
れています。これらの議論に利害関係者がとりこまれていることもよいことと思い
ます。しかし、問題は今後です。2、3 年後、宇宙活動の持続性を確かなものとする
ためにこれで十分なのか、更なる処置が必要かという点です。今後、この問題はど
うなるのでしょうか。
(ローズ)
チャウさん、あなたは現在進めている対応策が協調的で成功するものと楽観視して
いますが、わたしは、別の見方をしてみたいと思います。宇宙の安全保障や持続性
についての歴史を見てみると、宇宙環境の安全性と、宇宙環境の長期持続性は相互
に関連しつつ、大きな進展をみたと思います。かつての米ソによる宇宙での原子兵
器使用に関する調整の成果です。両国間には共通性はありませんが、よいことであ
るという共通の認識があったからです。当時、宇宙での核兵器使用はいいアイデア
だとして、互いがそれを使用して衛星破壊を実行してしまっていたら、電離層に多
くの放射線が蓄積し、現在のような有人宇宙活動は不可能であったと思います。こ
れが、第 1 の安全保障交渉の成功事例です。第 2 が、1967 年の宇宙条約です。2007
年のスペースデブリ低減ガイドラインもそれに匹敵します。具体的な課題には具体
的な対応策が必要です。
(チャウ)
ベイズリーウォーカーさん、何か補足がありますか。
(ベイズリーウォーカー)
私は、ローズさんに同意します。また、あなたの楽観主義は、非常にさわやかです。
楽観的に進むことを願っています。我々が外交において過去何も起こらなかったと
いう良い経験を持っています。我々は、宇宙兵器の更なるテストを見たくありませ
ん。TCBM は中々捉えどころのない道だと思います。宇宙への依存度は、多くの国、
特にアジア諸国においては重要度が更に増すものと見ています。新しい衛星、新し
い技術、安全保障と持続性に対しては、新しい脅威があると思っています。そして、
我々が持続性を担保する方法は当然進化しなければなりません。
(ケスラー)
私は、それで十分とは言えないと思います。 我々は開放性と透明度が正しい方法
だと思えるわけです。しかし、技術的な問題がまだありますが、関係性を構築した
後に本当の問題が始まるわけです。実際に宇宙で事業を行っているわけです。誰も
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意図的に問題を起こそうとしていません。偶然です。ですから問題の基本において、
どのようにアプローチすべきかを教育しなければなりません。どうしたら違うやり
方が出来るかを教えるべきです。時には今必要なことが禁止されるかもしれませ
ん。例えば、NRC の会合で法律の専門家から、別の国の衛星に触ることは出来ない
と言われました。それは、戦争行為だと言うことだそうです。その衛星は他の国が
所有しているからです。しかし、信頼醸成をすればそれは許されます。それでも法
的な枠組みを作ってそのようなことをしなければならないのです。それにはこうし
たいという動機が必要です。例えば、もう少し燃料を使って長く運用したいが、そ
れをやらなかったからと言って、何も起こらないだろうと。顧客を満足させたいと
簡単に思ってしまいます。イリジウムが最初考えられたときは、25 年で全ての衛星
が再突入するだろうと考えられていました。しかし、もう少し長く運用すれば設け
ることができると考えることができます。従って、全てがスムースに行くかどうか
は疑問です。
(ブラッシェ)
・私は一歩下がって発言したいと思います。スペースデブリとその脅威に焦点を当
て過ぎていると思います。スペースデブリだけでなく、長期に亘る持続性をみてい
かなければなりません。勿論、いろんなことをやらなければ、それは実現できませ
ん。例えば、バリューユースのイニティアティブを考えたときに、幅広い視点から
物事を考える必要があります。スペースデブリから資産を守るという単純なことで
はありません。TCBM/GGE と行動規範はトップダウンのアプローチで、現状未だ結論
が出ていませんが、来年になるとはっきりしてくると思います。一方地に足の付い
たアプローチが UNCOPUOS のワーキンググループ活動で、これはボトムアップのア
プローチです。この方が長期持続性担保のためのアプローチがされています。ただ
し、ボトムアップのアプローチは時間が掛かりすぎる欠点もあります。このような
二つのアプローチが分離することがない様にすべきです。従って、先ほどローズさ
んやベイズリーウォーカーさんが仰ったとおり、これには時間が必要です。
(鈴木)
・先ほど、チャウさんが言われたとおり、楽観的な視点で考えてみたいと思います。
それには法的な枠組みが必要です。今、TCBM/GGE、行動規範、UNCOPUOS 長期持続性
等、様々な活動が展開されています。これは緊急避難的な措置です。しかし、スペ
ースデブリを回収して、軌道を完全にクリーンアップすることこそが、重要な課題
です。初期の段階で合意にたどり着けなければ、将来になると、合意にたどり着け
るのは更に困難だと思います。従って、徐々にスペースデブリの低減を行っていけ
ば、最終ゴールである全てのスペースデブリ回収が可能になると思います。
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(青木)
それでは、私は二つの間のコメントを出したいと思います。まず、行動規範は今後、
数年後に採択されると思っていますが、これに参加しない国もある訳ですが、それ
ぞれの国が国内法を整備する必要があると思います。また、ケスラー先生が仰った
ように能動的なスペースデブリ回収は困難な問題があります。能動的回収は誰が責
任を取るか、オーナーシップは誰か等、スペースデブリの定義は何か等、複雑な要
素があります。ですが、これがキチンと機能しなければ、一部の国のみが独占的に
宇宙を利用できるという風になってしまいます。相互信頼ができればよい方向に進
めることができると思います。そういう意味で、TCBM が大事だと思っています。
(ベイズリーウォーカー)
私からは国レベルでの実施について話したいと思います。TCBM、行動規範等が合意
されたとしても、まだ有効ではありません。様々な措置は、最終的にはそれぞれ国
の政策や、法整備へ落とし込んでいくことが必要です。ケスラー先生が仰ったよう
に、これは犯罪であるという風になったときに、政府の基準にそっていることを担
保する必要があります。例えば、ドイツ政府の例を紹介します。ドイツ政府は行動
規範等を取り込むことを既に決定しています。
(吉冨)
フロアーからの質問です。マレーシアのアーマドさんからも指摘がありましたが、
例えば、TCBM は今年内に決着すると聞いています。先進国だけでこれを決めてしま
った場合、途上国にとってはハードルが高いものになってしまうとの心配と共に、
日本は TCBM/GGE に入っていないので、やはり同じような状況になるのではとの懸
念があります。また、ASAT のような行為に対して、法的な枠組みを考えるのかと言
う質問も来ています。
(ベイズリーウォーカー)
GGE は、14 ヶ国が参加しており、先進国、途上国が入り混じっています。従って、
バランスのとれものになっていると思います。とは言え、あらゆる国を GGE にいれ
ることは出来ません。国連で GGE の立上げについて議論した際、TCBM と共に、サイ
バー(情報)に関する GGE も立ち上げることになっていました。従って、GGE は様々
な意見が反映していると言えます。非メンバー国からの意見聴衆も可能なようにし
てあります。国連の GGE はどれも 14 人以上の人数を入れことを禁止しています。
宇宙の兵器に関してはその定義が困難で、40 年以上に亘って決まっていません。従
って、宇宙の兵器とは何かを明確にしない限り、本件の解決は出来ません。
(チャウ)
それでは三番目の話題に移りましょう。③アジア太平洋地域における国際協調への
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期待(日本に対する期待、日本に対する助言)、更には GGE の当事者でない国々の
意見をどのように反映することができるかについてです。
(ベイズリーウォーカー)
GGE のアウトプットは、事務局長への報告という形になります。委員会と総会に提
出されますが、法的な拘束力はありません。また、GGE メンバーはどこかの国の代
表者ではありません。政府が適任者を選び、選ばれた人が議論に参加すると言うこ
とです。TCBM 等については地域ごとに連携することが可能です。多国間、地域間の
連携は既に進められています。
(鈴木)
オーナーシップについて議論されていません。GGE の決定は法的拘束力はないわけ
ですが、決定することで、帰属意識が生まれるというメリットがあります。拘束力
のない規範は、自主的にコミットすることを意味します。従って、最終的には、国
際的に支持する仕組みはこれしかありません。去年、UNDIR はオーストラリアや、
アジアで長期持続性に関する会合を開くことができ、日本政府からの支援頂き、成
功を収めることが出来ました。これは非常に重要なことです。このような会合を開
催することで、意思決定に自分も参加していると言う意識を持つことが可能です。
(ケスラー)
日本のリーダーシップですが、日本は重要な位置にいると思います。日本は IADC
の中でメンバーとして歴史を知っていますので、同じことをアジア太平洋地域の中
で、それぞれの国に教育し、共同研究、共同開発ができる立場にあります。そうす
ることで、自分がやっていることが、国際社会がやっていることの一部であると認
識することで、帰属意識が生まれます。
(ブラッシェ)
日本がこのようなシンポジウムを開催していますが、これは是非、継続して頂きた
いと思います。日本は、スペースデブリ観測手段を持っていますし、その能力を向
上させたいと考えていると思いますし、日本と米国とでそのような話し合いが持た
れていると思います。また、オーストラリアもこの分野で重要な役割を担っていま
す。オーストラリアは GGE メンバーではありませんが、意見の提出等かなり積極的
です。メンバーでなくても意見の提出は可能です。ケスラー先生が仰っていました
が、IADC は非常にパワフルなグループです。IADC は国家のグループではなく、宇
宙機関のグループです。IADC は非常に細かな作業を実施します。IADC の決定は、
コンセンサスベースの技術的決定が出てきます。それを知識としてどのように変え
ていくかが課題です。IADC で纏められたガイドラインが非常に強力なコンセンサス
に基づいたものあれば、プレゼンスも強くなります。
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(ケスラー)
私もそのとおりだと思います。
(青木)
日本がどのようなリーダーシップを果たせるかについてですが、日本は情報共有者
としての役割を果たすことができると思います。衛星のことや宇宙状況認識につい
て、情報提供者となることができると思います。リーダとして言うことは、指導者
としてではなく、仲間としてということだと思います。信頼醸成措置により、持続
可能な宇宙活動を実現することができると思います。
来場者からの質問:ASAT について
(ローズ)
ASAT は、確かに米国が 1985 年に実施しました。今から考えれば、これはやるべき
ではなかったと思います。しかし、やってしまったからこそ、多くの教訓を得まし
た。もし、やるとなると、他の衛星等に危害を及ぼさない高度、場所でやるべきで
す。2007 年 ASAT が実施されてしまいました。この実験により発生したスペースデ
ブリが、国際宇宙ステーションに接近すると言う事態が発生しています。一方で、
皮肉にもこのスペースデブリは自国の衛星に対しても危害を及ぼすということを
認識すべきです。つまりアメリカの軍の幹部が秩序ある宇宙の使用、宇宙の交通ル
ールが必要だと言っています。誰よりも軍が如何に宇宙に依存しているかと言うこ
とを認識すべきです。そのために宇宙の環境を維持すべきなのです。
(吉冨)
どうもありがとうございました。予定の時間を若干オーバーしましたが、一部のア
ジアの国からの意見を踏まえて、日本に対する期待やサジェスチョンもいただきま
した。この 2 日間のシンポジウムの結果は、後日、レポートにまとめて皆さんに配
付できるようにするつもりですので、よろしくお願いします。
それから、プレゼンテーションいただいた資料についても、JSF のウェブサイト
に近々アップしますので、そちらからダウンロードしていただければと思います。
このパネルをこれで閉めたいと思います。ご協力ありがとうございました。パネ
ラーの方もありがとうございました。
以上
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閉会挨拶
間宮 馨 JSF 理事長
お陰さまで 2 日間のシンポジウムを無事終了することができました。この間、延べ 450
名のご参加を頂き、嬉しく思っています。また、今回はインターネット中継も実施し、こ
ちらも延べ 2,000 名の方々が聴講されたようで、このシンポジウムのインパクトは非常に
大きかったのではないかと思っています。
この 2 日間様々な講演を聞かせて頂きました。中々聴き応えのある難しい内容も多
かったのではないかと思います。また、最後のパネルディスカッションを聞いてつくづく
思うのは、日本に対する期待というよりも、このような場に対する期待の大きさです。青
木先生が情報共有と仰いましたが、皆がこの問題についてよく知っておかなければい
けないという中で、このような機会が非常に少ない訳です。我々の日ごろの生活の中
では接することができない世界を、この 2 日間垣間見ることができて、何がしかの理解
を得ることができたことは非常に貴重なことではないかと思います。しかも日本だけで
はなく途上国からも何ヶ国か参加して頂きました。このようなアジア太平洋地域の方々
にも参加いただいた上で、情報が共有できることは貴重なことではないかと思いまし
た。
先進国からもお忙しい中、ローズさんはじめ主要な方々にご参加頂き、内容のある
議論を展開して頂いたことに対して感謝申し上げます。
来年からもこのような場を設けていきたいと思いますので、来年もまた、ご参加頂け
たらと思います。
海外からお越しいただいた方々も含め、ご参加頂いた皆様本当に有難う御座いまし
た。
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4.アンケート調査結果
全般について
(1)第1部 講演について
・具体例の話を聞ければよかった。
・ネットで調べられる内容とかデブリの話は内容が少し期待外れだったが宇宙
の有効利用には避けては通れないと思います。デブリは今後増加していきま
すが、どの程度の精度で監視できるのかどのように低減(処分)されるのか、
あまり理解できなかった。各国がルールを守り情報共有、協力する必要があ
ることは理解できました。ケスラー先生のお話は有用でした。
・多国間国際協力の講演は少し退屈でした。
・可能な範囲でプレゼン資料があるとありがたい。
・幸村さんの講演を見に来た。もちろんそれも素晴らしかったが、外交面のあ
まり普段聞かない話を聞けて良かった。Kessler 博士の technical な内容が非
常に興味深かった。
・各々に質問ができるようにしてほしかった。一方的な話だけでは、理解が進
まないのでは。
・各国の取組みやポリシーの紹介等、大変興味深かったが、テーマが深遠のた
め若干具体性に欠けた印象がありました。
・アジア各国の宇宙開発・長期持続性、SSA への取り組みは興味深かった。パネ
ルセッションでの意見も同様。
・2 日目しか聞いていないが、内容が一般的でもう少し各国のオリジナル、具体
例を話してほしかった。
・アジア諸国の宇宙利用の状況が興味深かった。
・講師に幸村誠氏も招いて学生等も興味を持つように考えた点は将来への布石
としては面白いと感じました。リ・シューピン氏の発表の同時通訳がわかり
にくかった(本人の英語は分かりやすかったが…)ラジェスワリ・ピライ・
ラジャゴパラン氏の同時通訳はわかりやすかった。
・①新宇宙基本計画(西本淳哉)②フランスのアプローチ(Gerard Brachet)
③プラネテス(幸村誠)④デブリ管理戦略(Don Kessler)の内容が具体的で
わかりやすく興味がもてた。
・ケスラー先生の話が一番始めにあった方が、今回のシンポジウムのテーマの
1つである。スペースデブリについてわかったと思います。幸村先生はケス
ラー先生との対談の方が良かったと思います。
・昨年より内容が充実されてきたと思います。
・もう少し各国の既得権益といった難しい部分もふまえて説明がほしかった。
・ケスラーさんの話は、これまでのデブリ対策に対して別の観点からの意見が
あり、大変興味深かった。
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・昨年の第 1 回に比べて、斬新さがなかった。漫画家を呼んだりアジアからた
くさん呼んできたり、工夫は感じられたが「なんか前にも聞いた話だな」と感
じる部分が少なからずあった。
(2)第2部 パネルディスカッションについて
・CoC、TCBM、UNCOPUOS W/G で充分なのか、といった質問に対する各パネリスト
の意見は興味深かった。
・スペースデブリの問題についてアジア各国の状況が聞けたのは大変良かった。
・途上国の意見が入っていてよかった。
・デブリ問題に対する解決策がより具体的にわかりました。
・特に Part-2 でこの 2 日間の総括的議論ができた点がよかった。
・パネリストの方の意見に対して他のパネリストの方がコメントしたりと、そ
れぞれの立場の人の意見を聞くことができて面白かった。
・各国の宇宙関係者の意見が聞けたことは参考になりました。
・アジアの方にもっと意見を言ってもらいたかった。
・盛り上がってよかったと思います。
・特に後半がおもしろかった。青木・鈴木両先生の分析はさすが学者だなと思
ったが、ある意味おもしろかった。
・インドの法的専門家の方の発言からは学ぶことが多かった。
(3)SSA シンポジウム全般について
・本テーマが産業、商業界にとって具体的にどのようなビジネスモデルをもた
らすのかわかりやすく、社会(stakeholder)に説明を継続していただきたい。
・同時通訳のスキルが十分でない(一人)
、初日のプログラム・時間のマネジメ
ントが悪い、発表者はすべてスライドの用意を望む。
・宇宙活動の主要国のロシアの参加がなかったのは残念であった。通訳者の中
に発言者についていけない人がいて、通訳した内容が断片的になって意味不
明となっているところがあった。改善を望む。
・アジア諸国の宇宙政策、今後の計画についてもっと詳しく知る機会がほしい。
アジア諸国の宇宙産業発展のために、日本の宇宙産業界としてどのような貢
献ができるのか、もっと議論を深める必要がある。
・日本がどう進むべきか、日本の専門家を中心としたパネルディスカッション
も良いのではないでしょうか(日本の SSA センター構想等をテーマに)
・前回の報告書がたいへん詳しくすばらしかった。お手数とは思いますが期待
しています。
・定着化し、毎年の開催を期待しています。
・通訳はもう少し技術用語に詳しい人にした方が良い。途中で数センテンス話
が抜けることがあり、意味や論理が通じない翻訳となったケースが多々ある。
・先進国と発展途上国の意見が聞けたことは良かった。デブリ問題に対して考
えてみようと思いました。
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・やはり各講演後に質疑応答を持った方がよい。時間を守るより聞く人の満足
度が高くなる。
・中立的に、各国の意見が自由に交換出来る場として更に発展されることを期
待します。
・デブリに焦点があたりすぎていた。防衛省(日本)の方から、具体的な見解
がきけたらなお良いと思いました。
・具体的、各国の検討内容が出ると良い。
・前半の講演内容が昨年と同じでマンネリな感じがあったと思います。難しい
かもしれませんが、今後も続けるのであれば、もう少し工夫が必要では。
・Networking のレセプションはたいへんよかった。多くのこのようなシンポジ
ウムの懇親会が有料化している中で無料であることは「気安く参加できる」
という意味で大変良かった。スポンサー集めはたいへんだったのでしょうが、
ぜひ続けてください。
・プレゼン資料が提供されるとありがたい。JAXA のデブリ活動全般の紹介を望
む声があった。中国、インドの発表者の人選が良かった。彼らのフランクな
説明が TCBM の基本と思われる。米国の何人かは発表に熱意が内容に見受けら
れた。
・宇宙利用の推進と産業・商業界がやる気になる環境作りに尽力してください。
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5.総括
昨年に続き、2 回目のシンポジウムを無事終了することができたのは、来賓としてご
挨拶頂いた方々、講演頂いた方々、パネルディスカッションに参加して頂いた方々は
勿論、2 日間に亘り、熱心にご聴講いただいた延べ 450 名の来場者方々のお陰と大変
感謝している。
取り分け、国会期間中のご多忙のなか、一民間団体が主催した国際集会であるに
も拘らず、山本宇宙政策担当大臣はじめ、柳文部科学省研究開発局長宇宙開発利
用課長、山崎外務省総合外交政策局参事官、須永防衛省防衛政策局次長の方々か
ら来賓のご挨拶を頂いた。また、講演者としても、わが国の宇宙開発利用の司令塔で
ある西本内閣府宇宙戦略室長、米国からは、昨年に続きスペースデブリ問題を総括
する立場にある、フランク・ローズ国務次官補代理を始め、ジェシカ・パワーズ米国国
防総省防衛担当次官補代理室宇宙政策部長、ジョン・レイモンド米国戦略軍企画・政
策担当ディレクターの方々から、基調講演を頂いた。
多国間国際協力セッションでは、ジェラルド・ブラシェ仏 TCBM/GGE 代表メンバー、
堀川 UNCOPUOS 議長、ケン・ホジキンス米国務省宇宙・先端技術部長をからお話を
頂いた。
また、今年のシンポジウムでは、スペースデブリ問題の深刻さに警鐘を鳴らしたドナ
ルド・ケスラー元 NASA 研究者と、「ケスラー・シンドローム」という現象を一般市民に漫
画「PLANETES」で紹介したことにより、スペースデブリ研究者間で誰もが知っている漫
画家幸村氏にも特別講演を頂いた。最近、宇宙に興味を持ち始めた日本の若者の中
でも、この「PLANETES」はエポックメーキング作品であったことを裏付けるように、多く
の学生が今回のシンポジウムに参加していた。
二日目は、国際機関の代表として、欧州宇宙機関(ESA)及び国連軍縮研究所
(UNIDIR)から講演を頂いた。更に、今年度は、アジア太平洋地域の代表者として、中
国、インド、韓国、マレーシア、ベトナム、オーストラリアからの代表者を招待し、また、
日本の外務省からも昨年新たに設置された宇宙室の西永室長からの外交政策につい
て講演頂いた。
昨年の第 1 回目会合では、SSA 分野での日本に対する期待が欧米の関係者から投
げかけられ、その期待に応えるべく第 2 回目を開催にこぎ着けることができた。我が国
では、本年 1 月、新たな宇宙基本計画が策定され、従来の基本計画に比べ、計画書
のあちこちに SSA 活動の重要性が盛り込まれたことにより、内閣府宇宙戦略室、外務
省、防衛省などで様々な活動が展開されるようになった。
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地球を取り巻く宇宙環境は、ますます混雑の度合いを含め、更に、昨年あたりから
太陽活動の活発化と、中低高度のデブリの高度低下の進行が早まることにより、従来
年に 2 回行われていた、有人宇宙施設である国際宇宙ステーションのスペースデブリ
衝突回避マヌーバが、年5~6 回行われれたり、ソユーズ緊急帰還機での待機を余儀
なくされる状況になった。
このような状況を国民の皆様に周知できる機会はこれまで全く無く、JSF が昨年初め
てその場を文部科学省の支援の下、提供出来、今年も継続出来た。日本に対する期
待もさることながら、日本国内でこのような場を提供することの意義を国内外の関係者
から、主催者である JSF は認識させられた。
日本国内で初めて昨年開催したスペースデブリ問題の政策レベルの公開シンポジ
ウムが、図らずもこの 1 年間、国内外でかつて無いほど様々な進展をみた。国際的に
は、国際行動規範合意に向けた活動、国連の長期持続性に関する議論と同時に各国
政府代表者による透明化、信頼醸成措置に関する議論等が進められ、日米間の宇宙
関連包括協議の場の立上げ、国内では宇宙基本計画の見直しにより、SSA 活動の民
生及び国家安全保障両面での議論が始まるなど目覚ましい活動が展開されたことは、
本シンポジウム主催者として、これ以上ない喜びである。
以上
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6.謝辞
今回のシンポジウムは、文部科学省“平成 24 年度科学技術戦略推進費”に基づき
実施させて頂いた。スペースデブリ問題は、国家的課題であることは言を俟たない。こ
れに敢えて、一民間団体としてチャレンジさせて頂いたことに対して文部科学省に重
ねて感謝申し上げる。
また、今回のシンポジウム開催にあたり、来賓として参画頂いた山本一太大臣はじ
め、政府要人の方々、講演をお引き受け頂いた国内外の講演者のご協力なくして今
回のシンポジウムの成功はありえなかった。深く感謝申し上げる。
内閣府宇宙戦略室、外務省、文部科学省、経済産業省、防衛省、一般社団法人日
本航空宇宙工業会から後援を頂いたことに対しても感謝申し上げる。
更に、シンポジウム開催、交流会の実施面で、ご協力頂いた企業スポンサー11 社
(Analytical Graphics Inc.、LSAS Tec 株式会社、株式会社 IHI、株式会社 IHI アエロス
ペース、スカパーJSAT 株式会社、日本電気株式会社、NEC 東芝スペースシステム株
式会社、HIREC 株式会社、富士通株式会社、三菱重工業株式会社、三菱電機株式
会社)に感謝申し上げる。社団法人日本航空宇宙工業会は、シンポジウムの周知活
動の面でお世話になった。併せて感謝申し上げる。
最後に、本シンポジウム開催にあたり適切なご指導・ご助言を頂いた戸田勧実行委
員会委員長(元 JAXA 理事)、佐藤 亨(京都大学大学院教授)、青木節子委員(慶應
義塾大学教授)、鈴木一人委員(北海道大学教授、米国プリンストン大学客員研究
員)、角南篤(政策研究大学院大学准教授)に感謝申し上げる。また、本シンポジウム
を陰で支えて頂いた有限会社トリプルエイ・コミュニケイションズ他関連企業の方々に
も感謝申し上げる。
本事業は、以下の体制で実施した。
総括責任者 間宮 馨
実施責任者 吉冨 進
企画担当
小林功典
招待担当
白石 剛
経理担当
斉藤峰子
周知担当
伏島康男
運営担当
青木定生
運営担当
大西伸和
運営担当
榎 知子
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発
作
行
成
印刷・製本
平成 25 年 3 月
財団法人日本宇宙フォーラム
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台 3-2-1
新御茶ノ水アーバントリニティビル2階
URL:http://www.jsforum.or.jp/
株式会社三千和商工
本書及び内容についてのお問合せは、下記にお願いします。
財団法人日本宇宙フォーラム 宇宙利用事業部
Tel:03-6206-4903
Fax:03-5296-7010
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