Int 赤外線加熱方式のコールドウォール型 CVD 装置による 酸化物薄膜

赤外線加熱方式のコールドウォール型 CVD 装置による
酸化物薄膜の合成
1. 研究概要
本研究では気相反応を抑制し、高濃度で原料を供給で
きるコールドウォール型熱 CVD 装置を作製した。同装
置を用い、Ti(OCH(CH3)2)4{TTIP}及び Ti(C3H7O)2 ‐
(C11H19O2)2{Ti(OiPr)(DPM)}を原料としてTiO2 薄膜を合
成し、既存のホットウォール型装置と、反応特性及び特
徴について比較検討した。
2. 実験操作
本研究で用いたコールドウォール型装置の反応部の概
要を Figure.1、実験条件を Table.1 に示す。反応部は石
英管を用い、内部に配置したシリコン基板(I.D.5mm,
length 10mm)部のみを、赤外線導入加熱装置を用い加
熱し、薄膜を成長させた。析出した薄膜はX線回折によ
って同定した。さらに、マイクロスケールの溝が彫られ
たシリコントレンチ基板上に成膜させ、その被覆性を走
査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。
○佐藤 晃
佐野 智紀、西村 敏晴
係を Table.2 に示す。ホットウォール型装置では、
1056.15K 以上でルチルが成膜するという実験結果を得
ているが、本装置では 773.15K でルチルが成膜した。そ
の理由については、本装置の特徴である高速成膜(高濃
度),気相反応の抑制による成膜過程の違いなどが考えら
れる。
アナターゼ
ルチル
Int
東海大学大学院 工学研究科
東海大学 工学部
Cold
d
20
30
40
50
60
2θ
Hot
70
t
Fig.2 反応温度 773.15K でのX線回折パターン
Table.2 コールドウォール型装置による温度と結晶種
573.15~773.15K
773.15~1073.15K
Fig.1 装置反応部概要図
Table.1 実験条件
キャリアーガス(N2)流量
蒸発器温度
酸化剤ガス(O2)
流量調整ガス(N2)流量
圧力
成膜温度
100sccm
318.15K
100sccm
100sccm
7Torr
573.15~1073.15K
3. 結果及び考察
3.1 酸化チタンの結晶系
反応温度 773.15K で成膜させた TiO2 のX線回折パタ
ーンを Figure.2 に示す(原料:TTIP)。上部がコールドウ
ォール型で成長させた薄膜のX線回折結果であり、下部
がホットウォール型で成長させた薄膜のX線回折結果で
ある。白点がルチル、黒点がアナターゼと同定されたピ
ークである。773.15K では、コールドウォール型装置の
み、ルチルのピークが見られる。反応温度と結晶種の関
アナターゼ
アナターゼ,ルチル
3.2 凹凸被覆性
Ti(OiPr)(DPM)を原料として用い、反応温度 873.15K
でシリコントレンチに成長させた薄膜の SEM 写真を
Figure.3 に示す。左がホットウォール型装置、右がコー
ルドウォール型装置で成長させた膜である。ホットウォ
ール型ではトレンチ上部のみ TiO2 が成膜し、トレンチ
深部では成膜していない。
コールドウォール型装置では、
トレンチ内部深くまで、TiO2 が成膜している。ホットウ
ォール型装置では気相反応により、
活性な中間体ができ、
成膜している可能性が高いのに対して、コールドウォー
ル型装置では気相反応が抑制され、比較的低活性な化学
種より成膜しているため、トレンチの深部でも成膜可能
であると考えられる。
あ
Fig.3 トレンチシリコンの SEM 写真