受講生のみなさんへ

受講生のみなさんへ
現代社会では、働き過ぎや睡眠不足、精神的な不安や悲
しみ、恐怖感といったマイナスの感情が引き起こされる機
会が増大しています。これらのストレスは、意識のないう
ちに蓄積し、健康を支えている機能に悪影響を及ぼします。
さらに、このストレスが過剰になると、昼間作動する自律
神経の一つである交感神経が過度に緊張してくるため、心
と体の健康にさまざまな弊害をもたらすのです。
この交感神経優位の状態を緩和させる効果のある音楽が、
モーツァルトが作曲した数々の名曲です。モーツァルトの
音楽の持つ特性によって、リラックスモードを誘導する副
交感神経を刺激して、交感神経優位の状態にブレーキをか
けることができます。これにより、交感神経優位の状態に
よって発生するさまざまな病気が、モーツァルトの音楽を
聴き入ることで予防できる可能性が高まるのです。
今日、音楽療法という音楽の力を活用して、人間のさま
ざまな病気の予防や治療を行う方法が、多くの医療施設で
取り入れられています。今回提供する私の音楽療法は、モ
ーツァルトの音楽の中でも、高周波音とゆらぎ音、倍音な
どが効果的に含まれている名曲を聴き入るというシンプル
な方法です。そのため、どなたでも簡単に実践できますし、
副作用もありません。「この病気を防ごう、治そう」とい
う強い気持ちをもち、脳にエネルギーを与えてくれる効果
音を受容することに集中しながら、能動的に聴き入って下
さい。
この通信教育講座を受講することによって、一人でも多
くの方がモーツァルトの音楽療法を身につけ、健康を維持
することで、日々の生活が豊かになり、仕事の生産性が高
まることを願っています。
和合 治久
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1.㖸ᭉߢஜᐽࠍ⏕଻ߔࠆ㧍
●現代社会はストレス社会
●交感神経と副交感神経はバランスが大事
●音楽で副交感神経系の機能を誘導しよう
●人は音楽とともに育ち、生活している
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2.੹‫߆ߩߥ࠻࡞ࠔ࠷࡯ࡕߗߥޔ‬
●高周波と倍音を多く含むモーツァルトの音楽
●音を「聴く」というしくみ
●高周波の音楽ほど脳に刺激を与える
●モーツァルト効果とは?
●細胞レベルにおいても影響を及ぼす
●さまざまな効果があるモーツァルトの音楽
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3.㖸ᭉ≮ᴺߩකቇ⊛ߥᗧ⟵ߣߪ㧫
●音楽のもつ治療的な効果
●医学的分野への4つの応用
●音楽療法の今後
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4.ஜᐽࠍᡰ߃ࠆ↢૕ᯏ⢻ߣߪ㧫
●健康ってなに?
●最初にはたらく生体機能――脳神経系
●生体機能の調節をする内分泌系
●栄養や酸素の運び屋――血液循環系
●異物を排除するはたらき――免疫系
●4つの生体機能が相互に連携して健康を守る
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5.⃻ઍੱߩஜᐽࠍኂߔࠆࠬ࠻࡟ࠬߣߪ㧫
●日常に潜む数々のストレス
●ストレスの特性を知って上手につきあおう
●ストレスから逃げられなくなった現代社会
●ストレスが自律神経のバランスを崩し、体に悪影響を及ぼす
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●聴覚は初期化できる
●音楽療法はまず1日10分から
●視覚や嗅覚も使って相乗効果を!
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7.㖸ᭉ≮ᴺࠍ߁߹ߊ↢ᵴߦขࠅ౉ࠇࠆ
●人間は音に囲まれ音で認知する
●「音楽療法で病気を治そう」と本気で思うことが大切
●日常生活に音楽療法を取り入れよう!
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8.఺∉ജࠍ㜞߼ࠃ߁
●免疫力とは病原体から身を守る力のこと
●生まれながらに備わった「自然免疫力」
●特定の異物と戦って強くなる「獲得免疫力」
●生活習慣の改善が免疫力を高める
●モーツァルト療法で免疫力を高めよう!
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9.㓸ਛജࠍ㜞߼ࠃ߁
●集中力が低下している現代人
●ストレスによる精神面への悪影響
●ドーパミンとセロトニンの密接な関係
●モーツァルトで集中力を高めよう!
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10.⧎☳∝ࠍ᠄ㅌߒࠃ߁
●花粉症の症状はアレルギー反応
●花粉症が生じるメカニズム
●花粉症を克服するためには?
●花粉症の症状を悪化させる活性酸素
●コルチゾールの増加を食い止めろ!
●モーツァルトと食事で花粉症を撃退する体質をつくろう!
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11.ࡕ࡯࠷ࠔ࡞࠻ߢ࠳ࠗࠛ࠶࠻
●肥満とは「脂肪組織が過剰に蓄積した状態」
●「活動代謝」と「基礎代謝」
●なぜ食べ過ぎてしまうのか
●モーツァルトの曲で食べすぎを抑える
●モーツァルトの音楽が及ぼすダイエット効果
●リバウンドの心配も無用!
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12.ࠬ࠻࡟ࠬࠍ⸃ᶖߒࠃ߁
●ストレス社会から抜け出すための翼を手に入れよう
●1日10分の音楽鑑賞が生む大きな効果
●生活に合わせたモーツァルト療法の実践
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♪ ♪
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現代社会はストレス社会
現代社会は、さまざまな肉体的あるいは精神的なストレ
スに満ちあふれています。そのために、多くの社会人はイ
ライラ感がつのる一方、不安や恐れという感情も高まり、
睡眠不足や倦怠感に悩まされています。こうした生活状態
が日々続くと、意志とは無関係に作用する自律神経系に多
大な悪影響がもたらされ、結果的に高血圧や糖尿病、ある
いは脳梗塞などの生活習慣病が発生しやすい状況になって
きます。つまり、人間が本来バランスを維持していた脳神
経系のはたらきに異常をきたし、ホルモン系や免疫系とい
った健康を支える機能にもマイナスの影響が及んでくるの
です。
とりわけ、都会で仕事をされている会社員は、出勤から
職場に到着するまでのあいだ、ラッシュアワー時の異常な
までの過密環境や不快な騒音にさらされるため、精神的な
苦痛を強いられ、不快な気持ちが発生し、目や耳から入力
される感覚神経を介して、免疫機能の低下を余儀なくされ
ています。
この意味で、免疫力低下によって、あるいはストレスに
起因するストレスホルモンの分泌過剰によって、感染症や
がん、アレルギーなどの免疫疾患がたいへん発生しやすく
なっているのです。
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交感神経と副交感神経はバランスが大事
こうした21世紀型の病気を‘音楽’という耳から入って
くる聴覚情報によって予防したり、治療することができれ
ば、これほどありがたいことはありません。
音楽には、それを構成する音の特性として、リズムやメ
ロディ、ピッチあるいは音の高低や一定の音の波形の繰り
返しとなるようなゆらぎなどの成分があります。さらに、
音の高低となる周波数同士がぶつかりあって、さらに高い
周波数になるという倍音効果もあります。こうした音の特
性は、楽曲によってさまざまに異なっていますが、これら
の特性を生かして、現代社会人の健康を確保できることが
わかってきました。
人体の機能を調節するための自律神経系には、交感神経
倍音
音の周波数同士がぶつかり合っ
てより高い周波数が生じた音の
こと
系と副交感神経系の2つがあります。昼間の活動時間帯は
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交感神経系が、夜間の睡眠時間帯は副交感神経系がはたら
いています。この2つの神経系がバランスよく作用してい
れば、病気になる可能性は低くなります。
アドレナリン
自律神経のひとつである交感神
経から分泌され、血管の収縮を
引き起こす物質のこと
活性酵素
白血球のひとつである顆粒球や
細胞内ミトコンドリアで酸素か
ら発生する分子であり、酸化力
が強いスーパーオキシドや過酸
化水素がそれに該当する
しかし、そのバランスが崩れてくると、健康上、大きな
問題が発生します。
たとえば、現代人の消化管機能は著しく低下しています
が、この原因に交感神経優位の生活状態があります。睡眠
不足や働き過ぎなど、交感神経優位の状況で日々の生活を
送っていると、神経末端からアドレナリンが過剰に分泌さ
れるために、消化管の機能が低下したり、消化酵素の分泌
力が減少して、消化不良や便秘が生じてくるのです。した
がって、ここにブレーキをかける必要がありますが、精神
状態が緊張のままで持続すると、なかなか副交感神経系に
スイッチが入りません。
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音楽で副交感神経系の機能を誘導しよう
一方、最近、耳から入力される音のある特性によって、
簡単にその副交感神経系の機能を誘導できることがわかっ
てきました。この事実は、忙しく過ごしている現代人にと
っては、たいへん意義のあることです。聴覚という人間の
五感の一つを100%活用する方法である100%リスニングに
よって、短時間で導入が可能なのです。
一般的に、音楽の力を活用して、人間のさまざまな病気
を予防あるいは治療する方法を「音楽療法:ミュージック
テラピー」といいます。テラピーの一つであるので、「こ
のテラピーによって病気を予防する」という決心、あるい
は「絶対に治してみせる」という決意があって、その効果
は飛躍的に向上します。したがって、娯楽の要素が強い音
楽鑑賞とは、根本的に質を異にしているといえます。
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要ポイント
重
聴覚を100%活用し、強い決意を持って聴くことによっ
て効果が飛躍的に向上する。
人は音楽とともに育ち、生活している
人間は基本的に一生涯、音楽とともに育っているといっ
ても過言ではありません。母の羊水の中にいる胎児のとき
には、母の心拍や自身の心拍の一定のリズムを母の骨導音
を介して感受しています。母の子守歌や童謡は、優しい子
供の心に深く浸透して心に刻まれます。そのために、多く
の高齢者が幼いときに刻まれた歌を聞くと、生みの母の温
かな姿や故郷の風景を回想して、精神を癒すことができる
のです。
音楽を活用して病気を治していくという音楽療法の原型
は、医療の発達していなかった時代にとくによくみられま
す。たとえば、病人を神前に横臥させて、シャーマンが音
楽に合わせて祈りを捧げ、癒しや回復を乞うていた時代も
ありました。当時の医療には、宗教と音楽が不可欠であっ
たのです。
音楽療法には、歌を唄ったり楽器を演奏する「能動的音
楽療法」と音楽を静かに集中して聴き入る「受動的音楽療
法」の2つが知られています。病気の予防のために、一定
の時間帯に音楽に合わせて体操を行うNHKラジオ体操は、
広義の意味では、能動的音楽療法と考えられます。しかし、
厳密に考えると、運動という体を動かす要因が、聴き入る
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という要素に加わるために運動音楽療法になり、100%音
楽療法というジャンルに入るとは言えません。
現在、私が研究しているモーツァルトの音楽を活用した
方法は、受動的音楽療法に属しています。これは、有効な
音楽特性をもつ曲を聴き入るという簡単な方法で、現代社
会人の交感神経優位の状態にブレーキをかけることができ
ます。交感神経優位でアドレナリンや活性酸素の過剰な状
態に起因する生活習慣病の予防や治療に活用できると同時
に、高齢化の中で増大する在宅医療の中でも大いに導入で
アドレナリン
自律神経のひとつである交感神
経から分泌され血管の収縮を引
き起こす物質のこと
きると期待されています。
したがって、音楽は、21世紀に増加すると予想される多
くの生活習慣病に対して改善効果を発揮すると考えられ、
今後、人間の健康を維持したり確保するうえで、なくては
ならない「聴く薬」になると期待されているのです。
活性酵素
白血球のひとつである顆粒球や
細胞内ミトコンドリアで酸素か
ら発生する分子であり、酸化力
が強いスーパーオキシドや過酸
化水素がそれに該当する
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要ポイント
重
モーツァルト音楽を聴き入ることによって、交感神経優
位の状態にブレーキをかけることができる。
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