超伝導空洞の性能評価

2.2. 内視鏡による内面検査
超伝導空洞の性能評価
京都大学にて開発された内視鏡、「京都カメラシ
1. はじめに
ステム」を使い、空洞内面のアイリス部、赤道溶
本講義の前に行われた加古永治教授の講義「超伝
ます(Fig.1)。KEK で ILC 用超伝導空洞の研究開発
導空洞の基礎 1、2」及び、
「超伝導空洞の周辺技
が始まった 2005 年頃は、溶接欠陥除去のため遠
術」において、空洞の設計、高周波、超伝導の基
心バレル研磨を行っていました(Fig.2)。これは研
礎理論や周辺技術の基礎を学んだ上で、では実際
磨材と水を内部に入れた空洞を、公転運動させる
の空洞性能評価にあたり、具体的にはどの様な対
と共に公転と逆向きに自転運動させる事で、主に
応がなされるのか?を本講義では解説します。対
赤道溶接部を効率よく研磨する処理方法です。そ
象となるのは、ILC 用に研究開発されたニオブ製
の後、溶接技術の向上により省略されました。
接部の検査を行い、空洞内面の初期状態を把握し
1300 MHz 9 セ ル 超 伝 導 空 洞 で す が 、 cERL
(Compact Energy Recovery Linac) の入射器用に開
発された 2 セル超伝導空洞や、主加速空洞 9 セル
超伝導空洞にも同様に当てはめる事が出来ます。
2. 空洞の処理工程;
受け入れ検査から内面検査まで
新しく製造された空洞が KEK に納められた後に
行われる処理工程は以下の通りです。
1.
受け入れ検査
2.
内視鏡による内面検査
3.
Pre-EP、EP-I ( Pre-Electropolishing、
4.
Electropolishing-I )
一次洗浄、温水超音波洗浄、超純水高圧洗
浄 (High Pressure Rinsing ;H.P.R.)
5.
アニール(Anneal)
6.
内視鏡による内面検査
Fig. 1 京都カメラシステム
空洞の電解研磨処理や化学研磨処理、水洗工程の
詳細については、沢辺元明氏の講義を参考にして
下さい。
2.1. 受け入れ検査
空洞のセル間隔、全長、赤道溶接部の厚み、共振
周波数、電場平坦度、パスバンドモードの周波数
と電場強度の測定を行い、空洞の初期状態を把握
Fig. 2 遠心バレル研磨装置
します。
電場平坦度(Field Flatness)=(電場強度の最小値)/
(電場強度の最大値)*100
(2-1)
2.4.一次洗浄、温水超音波洗浄、超純水高圧洗浄
2.3. 電解研磨 (Pre-EP 、EP-I)
Pre-EP(Pre-Electropolishing) はタンク内の電解研
EP が終わると空洞内に超純水を溜めては流す工
磨液の汚染を防ぐため、液を循環させずに行う 5
程を繰り返す、主に EP 液の排出を目的とする一
m 程度の少量研磨です。空洞内面の不純物除去
次 洗 浄 を 行 い ま す (Fig.5) 。 続 い て 、 Degreaser
EP-I
FM20 と超純水を空洞内に溜め、50 ℃の恒温槽に
(Electropolishing-I) と呼ばれる 100 m 程度の初期
沈めて超音波洗浄を約 15 分行います(Fig.6)。最後
多量研磨を行います(Fig.3)。EP-I では液の循環を
に 8 MPa の超純水高圧洗浄を 1 時間程度行います
行います。電解研磨液は
(Fig.7)。EP-I 後の洗浄工程は、EP 液の完全な洗浄
が 目 的 で す 。 こ れ が 終 わ る と
が主目的です。(この後、アニールや内面検査で空
H2SO4(>93%):HF(46%)=10:1 (体積比)
(2-2)
洞内部が大気開放されるためです。)
からなりますが、以前は液組成
HF(46%):HNO3(60%):H3PO4(85%)=1:1:1 (体積比)
(2-3)
からなる CP (Chemical Polishing;化学研磨)が行わ
れていました。これは液を空洞内に注ぎ、テフロ
ン棒で攪拌するだけの簡単な表面処理法です
(Fig.4)。しかしながら EP と比較して高加速電場を
出すのが難しいために、今では部品洗浄や空洞フ
Fig.5 一次洗浄;液抜き
ランジ面の処理に使われています。
Fig. 3 電解研磨装置
Fig.4 化学研磨処理と表面粗さ
Fig.6 温水超音波洗浄
Fig.7 超純水高圧洗浄
2.5. アニール
(Anneal)
縦測定において、要求仕様を満たす性能を達成
空洞製造に使われた個々の材料の残留応力除去
出来ない場合、測定で得られたデータを基に、内
と、ニオブ材に取り込まれた主に水素除去を目的
面検査、局所研磨を施し、縦測定を繰り返します。
とし、真空炉にて 750 ℃、3 時間の熱処理を行い
ます。空洞はチタン製箱に納められ、チタンのゲ
3.1.局所研磨
(Local Grinding)
ッター作用を利用して、効率よく水素を除去しま
ヘッドにダイヤモンドシートを張り付け、欠陥部
す(Fig.8)。
分に押し当て研磨する装置です(Fig.9)。無負荷で
のヘッドの回転数は 12 Volt、3000 rpm、研磨量は
10 Volt、400 番シートで 5 m/10 分、1000 番シー
トで 3m/10 分です。
Fig. 8 アニール用真空炉
2.6. 内視鏡による内面検査
2.3 から 2.5 までの内面処理工程を経て、再度京都
Fig.9 局所研磨装置
温度マッピング装置で、空洞性能を制限する発
カメラにて内面検査を行います。表面処理を行っ
熱箇所を特定し、京都カメラでその場所を確認、
た結果、受け入れ検査時に見つかった欠陥がどう
欠陥があればこの装置で除去します。性能向上の
変化したか、あるいは無かった欠陥が新たに生じ
ための非常に有効な装置です。
たかの確認が目的です。
3.2. プリチューニング
3. 空洞の処理工程;
プリチューニングから縦測定
受け入れ工程が済むと、空洞単体性能試験(縦測
定)を行うための以下の工程が始まります。
1.
局所研磨
(Local Grinding)
2.
プリチューニング
3.
仕上げ電解研磨 EP-II ( Electropolishing-II )
4.
1 次洗浄、温水超音波洗浄 、超純水高圧
(Pretuning)
洗浄(H.P.R.)
5.
Class10 クリーンルームでの空洞組立
6.
リークチェック、ベーキング (140 ℃、44
時間)
7.
空洞単体性能試験 (縦測定)
(Pretuning)
空洞の共振周波数を加速器の運転周波数に一致
させ、かつ全てのセルで効率よくビーム加速させ
るために、各セルでの電場強度を一様に揃える工
程です。セルをパッドで挟み込み、アイリス部を
変形させる事で周波数を変えます(Fig.10)。ILC 用
9 セル空洞の場合、運転周波数は 1300 MHz であ
り、チューナー及びピエゾ素子での周波数制御範
囲と、2 K への冷却、空洞内やクライオモジュー
ル内の圧力変化による周波数変化を考慮して、常
温大気圧下で 1297.3~1297.5 MHz に共振周波数を
合わせると共に 98 %以上の Field Flatness を目指
します(Fig.11)。
縦測定の結果、再測定を行う事が決まると、共
振周波数と Field Flatness の測定を行います。Field
Flatness が劣化したり(約 95%未満)、共振周波数が
低くなった場合には再度チューニングします。
は約 9 時間(ポート開 4.5 時間+ポート閉 4.5 時間)
行っていました。温水超音波洗浄共々、性能には
影響がない事をきちんと確認し、時間短縮してい
ます。
3.4. 縦測定に備えた空洞組み立て
5 時間におよぶ洗浄が終わると、唯一開いていた
ポートもフランジで閉じ、密閉します。その状態
Fig.10 Pretuning 装置
でクラス 10 クリーンルームへ空洞を移動し、縦
測定に必要なフランジ、排気系バルブ、入力アン
テナ、出力アンテナ等の取り付けを行います。(ク
ラス 10:0.5 m の粒子<10 個/ft3 、ISO 規格のク
ラス 4;0.1 m の粒子<104 個/m3 に相当します。)
これらの部品や組み立てに使用されるボルト類
は、事前に超音波洗浄、超純水洗浄を行い、クラ
ス 10 で保管しておきます。部品を取り付ける箇
所のフランジを外す前にイオンガン(Fig.12)で十
分に清浄化を行い、また取り付ける部品も同様に
イオンガンで清浄化し、すばやく取り付けを行い
Fig.11 Pretuning
(1296.48MHz, 67.9%→1297.47MHz, 99.6%)
ます。
部品取り付けが完了するとヘリウムガスを用
いてリークチェックを行います。空洞性能試験は
3.3.EP-II、一次洗浄、温水超音波洗浄、超純水
高圧洗浄
超流動ヘリウムに沈めた状態で行いますのでリ
これらの工程は、2 章で説明した工程と基本的に
140℃、44 時間のベーキングを行います(Fig.13)。
は同じです。FM20 を用いた温水超音波洗浄は、
真空シール材である錫メッキされたヘリコフ
以前は 1 時間行っていましたが最近では 15 分に
レックスは、フランジを外した際、フランジ面へ
短縮されました。
の錫の付着が少なく取り扱いが容易です。以前は
ークチェックは非常に重要です。問題なければ
仕上げ電解研磨と呼ばれる EP-II での研磨量は
インジウムリボンを使用していましたが、剥がす
5~20 m ですが、20 m の場合、Field Flatness の
際に空洞内面の汚染が起こり易く、その後、イン
劣化が比較的大きいため、内面検査の結果が不良
ジウムメッキされたヘリコフレックスに変更さ
でない限り、5 m の少量研磨にしています。
れました。さらにベーキング温度が高い方が空洞
2 章の工程と異なるのは超純水高圧洗浄です。
性能が良いという実験結果が出た事から、100℃
空洞内面の清浄化が主目的であり、空洞性能を決
で行っていたベーキングを 120℃に上げました。
める重要な工程ですので、十分な時間をかけて行
しかし、メッキされたインジウムが溶け出す可能
います。空洞の各ポート(ビームパイプポート 2、
性があり、またよりベーキング温度を上げるた
入力カプラーポート 1、高次モードカプラーポー
め、錫メッキに変更、現在 140℃で行っています。
ト 2、モニターポート 1) 開状態で約 2.5 時間、そ
Table 1 インジウムと錫の物理特性
の後、H.P.R.ノズルが上下する下側ビームパイプ
ポートを除き、フランジを用いて各ポート閉状態
インジウム
超伝導転移温度=3.4K、融点=157℃
で 2.5 時間、合計約 5 時間行います。これも以前
錫
超伝導転移温度=3.7K、融点=232℃
スタンドに設置した後、縦測定に必要な温度マ
ッピング装置や X 線マッピング装置の取り付けも
行います(Fig.14)。
測定に必要な装置の設置が済み、また空洞内真
空度が 10-7 Pa 程度に到達すると、バルブを閉じ、
排気系を切り離し、縦測定用クライオスタットへ
空洞を移動、挿入します(Fig.15)。
Fig.12 イオンガン
Fig.13 ベーキング
3.5. 測定用クライオスタットへの移動
ベーキングが終了し、空洞真空が 10-6~10-7 Pa に
到達するとメタルバルブを閉じ、封じ切りにして
クリーンルームから測定スタンドへ移動します。
Fig.15 クライオスタットへの空洞の挿入
挿入が完了すると、排気系の接続、各種ケーブ
ルの接続が行われ、測定開始を待ちます。
4. 空洞単体性能試験
(縦測定)
空洞性能測定は、Fig.15 の様に、縦型クライオス
タットにて行われるため「縦測定(Vertical Test)」
と呼ばれます。
Fig.14 スタンドに設置された 9 セル空洞(左)と温
度マッピング装置(右)
スタンドに設置し排気系を接続すると、空洞の
メタルバルブを閉じたまま排気系配管のベーキ
ングを行います。ベーキング終了後、配管の真空
度が空洞内真空度と同等まで良くなると、空洞の
メタルバルブを開きます。
4.1. 液体ヘリウムの注入
液体ヘリウムが通るラインは、事前にヘリウムガ
スで置換しておく事が重要です。(デュワーから液
体ヘリウムを取りだすトランスファーチューブ
も、ヘリウムガスを充填してから差し込みます。)
準備が整うと、クライオスタット内への液体ヘ
リウムの注入を開始します。
Fig.16 液体ヘリウムデュワー
Fig.18 高周波制御系
9 セル空洞の場合、測定は 2 日に渡り行われま
す。初日は室温から液体ヘリウムを注入して 4.2 K
最 大 出 力 400W の ド ラ イ バ ー ア ン プ (Driver
での、翌日は 4.2 K の状態に液体ヘリウムを注入
Amplifier) 後 方 に あ る 方 向 性 結 合 器 (Directional
しながらクライオスタット内を減圧し、超流動ヘ
Coupler)から取り出した出力と、空洞を透過して
リウム状態 (2.17 K 以下。通常は 1.8 K~2 K)での
きた出力の間に PLL(Phase Lock Loop)が組まれて
測定を行います。各々、1000L デュワー1 本を使
い ま す 。 両 信 号 を 周 波 数 変 換 器 (Frequency
用します(Fig.16)。
Converter:1300 MHz を 1 MHz に変換)に通した後、
デュワー内部にポンプでヘリウムガスを送り
位相検出器(Phase Detector)で位相差を検出しま
込み、内圧を上げる事で液体ヘリウムをクライオ
す。位相差 1°あたり 50 mV の出力電圧で、これ
スタット内へ送り込みます。
を Feedback Controller 経由で信号発生器の周波数
4.2. 縦測定の高周波制御系
変調(Frequency Modulation)ポートに入力し、空洞
の共振周波数を追尾します。同時に反射電力が最
Fig.17 は縦測定の全体図を、Fig.18 は高周波制御
低になる様、入力カプラー(Input Coupler)と移相器
系を表します。我々の扱う 9 セル空洞で実際に測
(Phase Shifter)で調整します。
定する高周波電力は、空洞への入力電力(Pin)、空
放射線シールドが開いている様な測定に不適
洞からの反射電力(Pref)、空洞透過電力(Pt)、高次
切な状態であったり、時間当たりの放射線の積算
モードカプラー透過電力(PHOM1、PHOM2)、プロ
上限値(20 Sv/h)を超えた場合には自動的に信号
ーブ電力(Pprobe)ですが、その他に出力ポートが
発生器の出力を切るインターロック(Interlock)回
ある場合はそれも加えます。
路が組み込まれています。
4.3. 測定に必要な計算式
制御室内に置かれた Power Meter に表示される各
電力の値を P’i (i=input、reflect、transmit、HOM1、
HOM2、probe)、各電力ケーブルのロス係数を Ci
とします。ロス係数は事前に液体ヘリウムが十分
溜まった状態で測定しておきます。すると各電力
の実の値は以下の様になります。
Fig.17 縦測定全体図
Pi=P’i * Ci
空洞で消費される実電力 Po は
(4-1)
Po=Pin-Pref-Pt-PHOM1-PHOM2-Pprobe
(4-2)
1) 空洞の無負荷 Q 値 Qo、2) 加
おいて求めたい値、
となります。
空洞の負荷 Q 値(Loaded Q value) を QL、空洞へ
の入力 Pin を切った時、Transmit ポートからの出
力 Pt の減衰時間1/2 (Decay Time;電力が半分にな
る時間)、空洞の共振周波数 fo とすると
QL=2fo1/2/ln2
液体ヘリウムを 4 K から 2 K へ冷却中の測定に
(4-3)
減衰時間は次の様にして求められます。まず検
波ダイオード(極性に注意)に電力 P を入力し、そ
の出力電圧 V0 をオシロスコープで測定します。
その後、P/2 の電力を入力し同様に出力電圧 V1 を
測定します。減衰波形が V0 と V1 を横切る時間間
隔が減衰時間1/2 に相当します。
各ポートに付けられたアンテナの結合定数
(Coupling Constant)をi、Q 値を Qi、空洞の無負荷
速電場 Eacc [MV/m]、3) 表面抵抗値 Rs (Surface
Resistance) []は次の式から得られます。
Qo= QL(1+ in+t+HOM1+HOM2+probe) (4-9)
Eacc=√[(R/Q)W]/Lcavity = √[(R/Q)PoQo]/Lcavity
= Z√(PoQo) (Z=√[(R/Q)]/Lcavity)
(4-10)
ここで=2fo、Lcavity は空洞の有効長、W は空
洞に蓄積される電磁場のエネルギー、
W
2
2


H dV   E dV

2
2
(4-11)
R/Q は加速モードのインピーダンスで、ILC 用 9
セル超伝導空洞では R/Q=1016 []、Z=30.8 にな
ります。
Q 値(Unloaded Q value) を Qo とします。
i =Pi/Po (i = transmit、HOM1、HOM2、probe)
(4-4)
in= L(1+ t + HOM1 + HOM2 + probe)
(4-5)
Rs=G/Qo
(4-12)
ここで G は形状因子(Geometrical Constant)で ILC
用 9 セル超伝導空洞では 277 []になります。
4 K および 2 K 以下での High Field 測定では、
β
測定したいモード(~3/9で(4-1)~(4-10)の測定
(4-6)
β
(4-7)
Qi=Qo/i (i=input、transmit、HOM1、HOM2、probe)
(4-8)
ここで Over Coupling とは入力カプラーを空洞内
に入れていくと反射電力が増加する状態、Under
Coupling とは入力カプラーを空洞から引き抜いて
を行い Qt を求め、Po*Qo= Pt*Qt
が成り立つので
Qo= Qt*Pt/Po
(4-13)
Eacc = Z√(PoQo) = Z√(PtQt)
(4-14)
左側縦軸を Qo、横軸を Eacc [MV/m]、右側縦軸を
X 線量として測定値をプロットして空洞性能を評
価します。
5. 縦測定の実際例
この章では縦測定の実際例を示します。
5.1. 4.2 K での測定例
いくと反射電力が増加する状態です。減圧(冷却)
液体ヘリウムの充填が完了した後、最初に行う測
途中では空洞の Q 値が良くなっていくため、測定
定です。ただし 4 K では最大加速電場~10MV/m
途中に Under から Over へ状態が変わらない様、
程で空洞消費電力 Po~200 W になりますので、シ
常に Over Coupling で測定します。
ステムチェックが主な目的の測定です。
もしこの低い加速電場領域で X 線が観測される
様ですと、2 K での高性能達成は厳しくなります。
例として Fig.19 に MHI#24 号機の 3 回目縦測定
超伝導空洞の表面抵抗 Rs[]は温度依存性を持
つ BCS 抵抗と、温度には依存せず空洞表面の状態
で決まる残留抵抗 Rresidual の和で表されます。
結果を示します。この空洞は 4 K の測定から X 線
が観測されました(図中の□)。2 K に冷却後の測定
でも電界放出電子(Field Emission)による X 線の量
が多く、ILC 要求仕様には遠く及ばず、内面検査、
再処理、再測定になりました。
Qo pi-mode initial [1.67-1.73K]
Qo pi-mode final [1.44-1.48K]
Qo pi-mode [4.2K]
ILC spec.
11

2
 

exp  
T
 kB T 
(5-2)
は超伝導電子対のエネルギーギャップです。得ら
れた測定データから最適フィッティングを行い、
10
5
10
4
残留表面抵抗を求めます。この測定での残留表面
抵抗は 13.6 nです。なお、残留表面抵抗が大き
いと Q 値は低くなりますが、得られる最大加速電
10
10
Initial; Stop for Qo<5*10^9
Eacc,max=20.4MV/m
Qo=3.76*10^9
Po=117W
Qt=3.10*10^11
He pres.=1.09kPa
He Temp.=1.67K
9
Final; Stop for Q<5*10^9
Eacc,max=23.2MV/m
Qo=4.17*10^9
Po=136W
Qt=3.02*10^11
He pres.=0.44kPa
He Temp.=1.46K
0
10
10
1
Power Limit
Eacc,max=9.5MV/m
Qo=4.57*10^8
Po=208W
8
100
Xray [Sv/h]
Qo
1000
10
10
R BCS  A
(5-1)
ここで kB は Boltzmann 定数で 1.38×10−23 J/K、2
X-ray pi-initial
X-ray pi-final
X-ray pi-4.2K
MHI#24 3rd. Vertical Test 12/19/2013
Local Grinding(all irises), EP-II(5m), FM_20 2%(50C,15min),
H.P.R.(~5hrs), Baking(140C, 44hrs)
10
Rs=RBCS(T)+Rresidual
20
30
場が必ずしも低くなる訳ではありません。
Fig.21 は 90 年代に 1 セル空洞で研究開発を行
っていた頃に測定した、最大加速電場の温度依存
性を示したグラフです。超流動状態になると最大
加速電場が跳ね上がる事が分かります。
0.1
50
40
Eacc [MV/m]
Fig.19 MHI#24 3rd. V.T. Qo vs. Eacc
5.2. 4.2K から 2 K に冷却中の測定例
Fig.20 と同じく MHI#24 号機 3 回目縦測定におけ
る 4 K から 2 K へ冷却中の測定結果を示します。
Rs [ohm]
Rbcs [ohm]
-6
10
MHI#24 3rd. Vertical Test 12/19/2013
Local Grinding(all irises), EP-II(5m), FM_20 2%(50C,15min),
H.P.R.(~5hrs), Baking(140C, 44hrs)
A [
Surface Resistance
Rs=277/Qo []
Fig.21 最大加速電場の温度依存性
Rs=A*(1/T)*exp(-/kT)+Rres
Value
Error
-7
10
0.00011653
液体ヘリウムは 2.17 K(約 3 kPa)で相転移して超
流動ヘリウムになりますが、超流動状態になると
冷却効率が極めて高くなり液体内の熱が素早く
伝わるため、Fig.22 で示す様に沸騰は液面のみで
起こる様になります。
0.00013017
/k [K]
18.051
3.3236
Rres [
Chisq.
R
13.628e-09
3.2578e-09
0.18674
0.99403
NA
NA
Rres=13.6n
-8
10
-9
10
0.2
0.25
0.3
0.35
0.4
0.45
0.5
0.55
0.6
1/Temp. [1/K]
Fig.20 MHI#24 3rd. V.T. Rs vs. 1/Temp.
この測定は空洞の表面抵抗と残留表面抵抗を
求めるのが目的です。表面抵抗は Qo が最も大き
くなる Eacc~3.5 MV/m で測定を行っています。
Fig.22 液体ヘリウムの沸騰の様子
(Wikipedia より)
沸騰した液体ヘリウムが空洞性能に影響した
と考えられる測定例を次に示します。この測定の
目的は、磁気シールドの有無で残留表面抵抗がど
5.3. 2 K での測定例:40 MV/m を達成した空洞
う変わるのかを調べる事でした。測定条件として
2 K での高性能達成が最重要課題ですが、ここで
は、クライオスタット内の磁気シールドを取り除
最大加速電場 40 MV/m 以上を出した空洞の測定
き、空洞周りをほとんど穴の開いていない磁気シ
例を示します。
ールドで覆っています。(Fig.23)。
測定結果を Fig.24 に示します。5 MV/m 位(Po~
5.3.1. 40 MV/m を達成した空洞:MHI#12
50 W、Fig.27 の 4 K 測定参照)から Q 値が落ちて
MHI#12 号機は KEK STF(Superconducting RF Test
いるのが分かりますが、これは沸騰によって発生
Facility;超伝導高周波試験開発棟)での量子ビーム
した泡がシールド内から抜けられずに溜まり、空
計画(Quantum Beam Project)用空洞の 1 台で、9 セ
洞の冷却を妨げた結果と考えられます。2 K では
ル空洞では日本国内で初めて 40 MV/m を超えた
この様な性能劣化は全く見られません。
空洞となりました(Fig.25)。
MHI#12[Quantum Beam Cavity] 2nd. Vertical Test 12/08/2010
EP-II(35~40mA/cm2, 10m), Water flow(1.5hrs),
FM_20 2%(50C,2hrs), H.P.R.(12hrs)
11
10
Qo pi-mode initial [1.68-1.99K]
Qo pi-mode final [1.47-1.75K]
Qo pi-mode [4.2K]
ILC spec.
5
X-ray pi-initial
X-ray pi-final
10
4
10
Qo
100
10
9
10
Initial; Power Limit Final; Power Limit
Eacc,max=40.0MV/m Eacc,max=40.7MV/m
Qt=1.77*10^11
Qt=1.71*10^11
Qo=5.82*10^9
Qo=6.18*10^9
1
Po=290W
Po=282W
He pres.=3.07kPa
He pres.=1.44kPa
He Temp.=1.99K
He Temp.=1.75K
Power Limit, no-X-ray
Eacc,max=8.5MV/m
Qo=4.52*10^8
Po=170W
0.1
50
8
10
X-ray [Sv/h]
1000
10
10
0
10
20
30
40
Eacc [MV/m]
Fig.23 磁気シールドで覆われた HITACHI#02
10
11
HITACHI 9cell Cavity HITACHI#02 8th. Vertical Test 03/13/2014
No Surface Treatment
With Cav. Mag. Shield-Tokin, Without Cryo Magnetic Shield-Tokin
X-ray pi 4.2K
Qo pi-mode [4.2K]
Fig.25 MHI#12 2nd. V.T. Qo vs. Eacc
Rs [ohm]
Rbcs [ohm]
10
10
5
10
10
9
10
Pin. constant, but Pref. increase
No X-ray
Eacc,max=5.9MV/m
Qo=4.16*10^8
Po=87W
10
10
20
10
-8
10
-9
10
30
Eacc [MV/m]
Fig.24 HITACHI#02
-7
Value
Error
A [
0.0001554
9.7636e-05
/k [K]
18.573
1.6974
Rres [
11.927e-09
5.7255e-10
Chisq.
0.37025
NA
R
0.99579
NA
Rres=11.9n
1
8
0
Xray [Sv/h]
100
Surface Resistance
Rs=277/Qo []
1000
Qo
10
Rs=A*(1/T)*exp(-/kT)+Rres
4
10
10
-6
MHI#12[Quantum Beam Cavity] 2nd. Vertical Test 12/08/2010
EP-II(35~40mA/cm2, 10m), Water flow(1.5hrs),
FM_20 2%(50C,2hrs), H.P.R.(12hrs)
8th. V.T.
With Cavity Magnetic shield,
Without Cryostat Magnetic shield
40
0.1
50
-10
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
1/Temp. [1/K]
Fig.26 MHI#12 2nd. V.T. Rs vs. 1/Temp.
Fig.26 からこの空洞の残留表面抵抗は 11.9 n
と求まりますが、最大加速電場 23 MV/m で制限さ
れた MHI#24 号機の残留表面抵抗 13.6 n (Fig.20)
とあまり変わらない事が分かります。
5.3.2. 40 MV/m を達成した空洞:HITACHI#02
ILC 用 9 セル超伝導空洞の研究開発を KEK と行っ
を打ち破る最大加速電場 50 MV/m を達成しまし
た(Fig.29)。
ていた日立製作所が、2012 年度に製造した 9 セル
10
空洞 2 号機です(Fig.27)。
HITACHI 9cell Cavity HITACHI#02 [With HOM Couplers]
2nd. Vertical Test 07/12/2012
EP-II(20m), Water flow(1.5hrs), FM_20 2%(50C,15min),
H.P.R.(8MPa, ~7hrs), Baking(140C, 48hrs)
5
X-ray pi-initial
X-ray pi-final
10
4
10
10
Qo
100
9
Initial; Power Limit Final; Quench
Eacc,max=40.2MV/m Eacc,max>40.9MV/m
X-ray; 0mSv/h
X-ray; 0mSv/h
Qo=5.58*10^9
Qo=6.05*10^9
Po=306W
Po=291W
Qt=1.89*10^11
Qt=1.98*10^11
He pres.=1.89kPa
He pres.=0.56kPa
He Temp.=1.83K
He Temp.=1.51K
10
Power Limit
Eacc,max=9.1MV/m
Qo=5.04*10^8
Po=172W
8
0
10
20
30
10
Xray [Sv/h]
1000
10
10
10
1
Eacc [MV/m]
Fig.27
HITACHI#02 2nd. V.T. Qo vs. Eacc
この空洞の測定では 40 MV/m まで全く X 線が
出ないという驚くべき結果となりましたが、測定
前に全てのアイリスの研磨を行っていました。そ
の後に行われた空洞の測定でもアイリス研磨は X
線低減に非常に有効である事が分かり、今では標
準的な処理工程の 1 つに加えられています。
HITACHI 9cell Cavity HITACHI#02 [With HOM Couplers]
2nd. Vertical Test 07/12/2012
EP-II(20mm), Water flow(1.5hrs), FM_20 2%(50C,15min),
H.P.R.(8MPa, ~7hrs), Baking(140C, 48hrs)
Rs [ohm]
Rbcs [ohm]
10
-6
Rs=A*(1/T)*exp(-/kT)+Rres
Value
Error
Surface Resistance
Rs=277/Qo []
A [
10
0.00011359
0.00012285
/k [K]
17.859
3.4192
Rres [
12.691e-09
4.8912e-09
Chisq.
R
0.14295
0.99664
NA
NA
-7
X-ray
10
10
5
10
4
1000
100
10
9
10
8
10
Power Limit
Freq.=1299.470MHz
Eacc,max=50.4MV/m
Qo=3.41*10^9
Po=194W
1
Qt=3.96*10^11
He pres.=3.16kPa
He Temp.=2.00K
0
10
20
30
40
50
0.1
60
Eacc [MV/m]
0.1
50
40
Qo pi-mode [1.79-2.00K]
Xray [Sv/h]
Qo pi-mode initial [1.72-1.83K]
Qo pi-mode final [1.15-1.51K]
Qo pi-mode [4.2K]
ILC spec
11
Qo
11
10
ERL 2cell Cavity #2 5th. V.T. Mar.06, 2012
[With Five HOM Pickup Antennas;Type-II(male pin)]
EP-II(5m), Water flow(1.5hrs), FM_20 2%(50C,30min),
HPR(8MPa, ~6hrs), Dry overnight in HPR room
Fig.29 cERL 2cell #02 5th. V.T. Q vs. Eacc
これまで KEK で測定を行った空洞は、RRR=
130~800 (RRR:Residual Resistivity Ratio 残留抵抗
比。値が高い程純度、熱伝導率が高い。) のニオ
ブ材で製造されてきましたが、この範囲では RRR
によらず、最大加速電場の上限はほぼ 40 MV/m で
した。そのため、最大加速電場を決めているのは
表面磁場であると考えられ、40 MV/m に対応する
磁場として約 1700 Oe が、我々の採用している空
洞形状(Hsp/Eacc=41.4 Oe/MV/m)の臨界表面磁場
と考えられてきました。しかしながら、この 2 セ
ル空洞の結果から、臨界表面磁場は約 2100 Oe に
改められる事となりました。これは Cornell 大学
の結果[1]に次ぐ世界で 2 例目の結果になります。
5.4. 2 K での測定例:性能の出ない空洞
前章の結果とは異なり、性能が出なかった空洞の
10
Rres=12.7n
-8
測定例を示します。
5.4.1. MHI#24 4 回目の縦測定
10
-9
0.2
0.25
0.3
0.35
0.4
0.45
0.5
0.55
0.6
1/Temp. [1/K]
Fig.28 HITACHI#02 2nd. V.T. Rs vs. 1/Temp.
Fig.28 からこの空洞の残留表面抵抗は 12.7 n
と求まりますが、号機同様、Fig.20 の値と
Fig.19 で示した MHI#24 号機は電解研磨 5 m を行
い、4 回目の測定になりました。測定結果を Fig.30
に示します。4 K では特に何事も起こらず終了し
ました。
1.7 K まで冷却しての測定で、15 MV/m 付近か
あまり変わらない事が分かります。
ら X 線が出始め、
20 MV/m を超えた辺りから Field
5.3.3. 50 MV/m を達成した空洞:cERL#02
ました。しかしながらこの Quench で Q が回復、
cERL(Compact Energy Recovery Linac)の入射器用
に開発された 2 セル空洞ですが、それまでの常識
高性能を期待しましたが 26 MV/m で再度 Quench
Emission による Q の落ちが激しくなり Quench し
しました。この Quench にて表面が汚染された様
で矢印先に劣化しました。Field Emission が酷く、
X 線量も増大しました。この空洞は 4 回測定しま
したが最後まで Field Emission を克服出来ません
でした。
Qo pi-mode initial [1.66-1.73K]
Qo pi-mode final [1.35-1.39K]
Qo pi-mode [4.2K]
ILC spec.
X-ray pi-initial
X-ray pi-final
MHI#24 4th. Vertical Test 01/23/2014
EP-II(5m), FM_20 2%(50C,15min),
H.P.R.(~5hrs), Baking(140C, 44hrs)
11
10
5
10
4
10
Fig.32 MHI#23 1st. V.T. セルフパルス
10
10
100
9
10
Initial; Stop for Qo<5*10^9
Eacc,max=11.7MV/m
Qo=1.28*10^9
Po=112W
Power Limit
Eacc,max=9.6MV/m Qt=2.78*10^11
He pres.=1.23kPa
Qo=4.69*10^8
He Temp.=1.70K
Po=209W
Final; Stop for Q<5*10^9
Eacc,max=12.0MV/m
Qo=3.18*10^9
Po=48W
Qt=2.74*10^11
He pres.=0.25kPa
He Temp.=1.36K
8
10
0
10
20
30
40
Xray [Sv/h]
Qo
1000
10
なお、セルフパルス中にエージング(Aging)され
て空洞性能が上がる事もあります。
5.4.3. MHI#08 1 回目の縦測定結果
1
温度マッピング装置や局所研磨装置が使われ始
めた頃の測定ですが、1 回目の縦測定では最大加
0.1
50
Eacc [MV/m]
速電場 16 MV/m で Quench/Selfpulse が起こり、性
Fig.30 MHI#24 4th. V.T. Qo vs. Eacc
能が制限されました。結果を Fig.33 に示します。
5.4.2. MHI#23 1 回目の縦測定
MHI#08 1st. Vertical Test 07/09/2009
E.P.(20m), Ethanol rinse in Cold-bath(1hr),
U.P.W rinse in Hot-bath(1hr), H.P.R.(8hrs)
11
10
続いて MHI#23 号機 1 回目の縦測定結果を Fig.31
に示します。この空洞は最大加速電場としては 31
X-ray pi-initial
X-ray pi-final
Qo pi-mode initial [1.62-1.82K]
Qo pi-mode final [1.65-1.68K]
Qo pi-mode [4.2K]
10
10
(Selfpulse:欠陥部で発熱し Quench すると高周波
電力が空洞に入らないため冷却されて発熱箇所
Qo
MV/m を達成しましたが、そこでセルフパルス
Initial;
Eacc,max=15.8MV/m
Qt=1.67*10^11
Qo=1.12*10^10
Po=24W
He pres.=1.67kPa
He Temp.=1.79K
selfpulse
9
10
が再度超伝導になり電力が入る様になる事を繰
Eacc,max=8.2MV/m
Qo=4.45*10^8
Po=159W
Xray=31Sv/h
り返す)を起こし性能制限されました。Fig.32 にセ
8
ルフパルスを起こしている様子を示します。
10
Qo pi-mode initial [1.75-1.84K]
Qo pi-mode final [1.42-1.54K]
Qo pi-mode [4.2K]
ILC spec.
10
Final; Quench/Selfpulse
Eacc,max=31.3MV/m
Qo=9.35*10^9
Po=110W
Qt=3.14*10^11
He pres.=0.63kPa
He Temp.=1.54K
9
Initial; Quench/Selfpulse
Eacc,max=31.7MV/m
Qo=8.60*10^9
Po=123W
Qt=3.22*10^11
He pres.=1.78kPa
He Temp.=1.81K
Power Limit
Eacc,max=9.2MV/m
Qo=4.99*10^8
Po=180W
10
8
0
10
20
5
30
10
4
20
30
40
1000
100
10
1
0.1
50
40
温度マッピング装置は 2 セル赤道部 180°に発
熱を観測します(Fig.34)。測定終了後、京都カメラ
1000
100
10
1
で発熱箇所を調べると Fig.35 の様な欠陥が見つか
りました。Fig.36 は局所研磨装置でその欠陥を除
去していく様子です。
欠陥除去後、EP-I を 50 m、EP-II を 20 m 行い
再測定した結果を Fig.37 に示します。最大加速電
0.1
50
Eacc [MV/m]
Fig.31 MHI#23 1st. V.T. Qo vs. Eacc
この様な空洞では、発熱が観測される場所に明確
な欠陥が存在する事が多いです。
10
4
Fig.33 MHI#08 1st. V.T. Qo vs. Eacc
Xray [Sv/h]
10
10
X-ray pi-initial
X-ray pi-final
Qo
10
0
10
Eacc [MV/m]
MHI#23 1st. Vertical Test 10/03/2013
Local Grinding, EP-II(5m), FM_20 2%(50C,15min),
Baking(140C, 44hrs), H.P.R.(~6hrs)
11
10
5
X-ray [Sv/h]
Final;
Eacc,max=16.0MV/m
Qt=1.66*10^11
Qo=1.30*10^10
Po=21W
He pres.=1.08kPa
He Temp.=1.67K
selfpulse
10
場が 16 MV/m から 27 MV/m に上がっており、局
所研磨が空洞性能を回復させるのに効果的であ
る事が分かります。
ILC 建設を考慮して、最近では限られた測定回
数(1 空洞あたり 2~3 回)で ILC 要求仕様を満たす
事を最重要課題とし、受け入れ時から積極的に局
所研磨を行っています。
5.5. Passband Modes での測定
加速モード TM010 パスバンドモード(Passband
Modes)の電場強度の様子を Fig.38 に示します。
Fig.34 MHI#08 1st. V.T. 発熱箇所
Fig.38 Passband Modes の電場強度分布
通常は加速モードであるモードで測定します
Fig.35 MHI#08 発熱箇所に見つかった欠陥
が、このモードはつのセル全てに同じ強度を持
つ電場が立ちます。そのため、あるセルの最大加
速電場が低いと、そのセルで空洞全体の最大加速
電場が制限されます。そのセルに電場の立たない
モードを選んで測定を行えば、その次に電場の低
いセルが分かり、これを繰り返す事で全てのセル
の最大電場を求める事が出来ます。
Fig.36 MHI#08 局所研磨装置による欠陥修復
Eacc.max [MV/m]
11
10
Qo pi-mode final [1.57-1.73K]
Qo pi-mode [4.2K]
Eacc.max of each cell [MV/m]
Diamond sheet #400 200 分、#1000 60 分研磨
MHI#08 2nd. Vertical Test 10/29/2009
Local Grinding(2cell equator) & EP-I(20+30m)
EP-II(20m), Water flow(1.5hrs), FM_20 2%(50C,1hr),
U.P.W rinse in Hot-bath(1hr), H.P.R.(9hrs)
5
X-ray pi-final
10
4
10
Qo
10
9
10
100
10
1
Eacc,max=8.0MV/m
Qo=4.57*10^8
Po=148W
8
10
1000
0
10
20
30
40
Eacc [MV/m]
Fig.37 MHI#08 2nd. V.T. Qo vs. Eacc
0.1
50
X-ray [Sv/h]
Final; Quench/selfpulse
Eacc,max=26.8MV/m
Qt=1.64*10^11
Qo=1.09*10^10
Po=69W
He pres.=1.35kPa
He Temp.=1.73K
10
MHI#09 3rd. V.T. 12/16/2009
50
40
30
 mode; Eacc,max=27.0MV/m
Quench@2cell
20
10
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
Cell No.
Fig.39 MHI#09 3rd. V.T.
各セルの最大加速電場
Passbands mode による
MHI#09 号機 3 回目の縦測定において、その様
にして求めた各セルの最大加速電場を Fig.39 に示
します。この場合、2 セルの Quench で空洞全体が
27 MV/m に制限されていますが、他のセルは 34
MV/m 以上であり、2 セルの発熱箇所を修復すれ
ば 34 MV/m 以上の加速電場を得られる可能性が
高いと予想出来ます。
こうして、2 K 冷却後にはまず加速モードであ
るモードで測定し、その結果に応じて適当なパ
スバンドモードを選び、モード毎の各セルの最大
加速電場や発熱箇所、X 線量や分布の測定を行い
ます。パスバンドモードでの測定は空洞のエージ
ングも兼ねており、最後にもう 1 度モードで測
定、最終結果として回の縦測定が終了します。
6. 終わりに
超伝導空洞の理論的内容の講義はたくさんあり
ますが、実際の現場ではどの様な事が行われてい
るのかを解説しているのはあまりないかと思い
ます。このテキストで現場の様子や、測定でどの
様な事が行われているのかを知っていただき、ま
た興味を持っていだだけますと幸いです。
今回は「加速空洞」に関する内容でしたが、こ
の空洞を「加速器」に仕上げるまでにはまだたく
さんの工程があります。興味がありましたら是非
リニアコライダー建設に参加していただきたい
と思います。
参 考 文 献
[1] R.L.Geng, et al., "High gradient studies
for ILC with single-cell re-entrant shape
and
elliptical
shape cavities made of
fine-grain and large-grain niobium", in
Proceedings of PAC07, Albuquerque NM,USA,
pp.2337-2339
[2] 加古永治、
”超伝導空洞の基礎”
、OHO '14 テ
キスト
[3] 沢辺元明、
”超伝導空洞の表面処理”
、OHO '14
テキスト
[4] 仲井浩孝、
”クライオジェニックス”
、OHO '14
テキスト
[5] 増澤美佳、”超伝導空洞の磁気シールド”、
OHO '14 テキスト
[6] 古屋貴章、
”超伝導空洞の基礎”
、OHO '06 テ
キスト
[7] 加古永治、
”超伝導空洞の高周波設計”、OHO
'06 テキスト
[8] 野口修一、
”超伝導加速空洞”
、OHO '87 テキ
スト
”超伝導加速空洞”
、OHO '11 テキ
[9] 野口修一、
スト