『赤毛のアン』の世界 『赤毛のアン』の世界

するのを苦手としているからです。
『赤毛のアン』の世界
しばらくして、グリーン・ゲーブルズに到着すると、アンは、
ナディア・ マケックニー 著
手違いがあったこと、マシューとマリラは本当は男の子が欲し
かったことを知り、ショックを受けます。マシューはマリラに、
間違いはあったが自分はアンにいてほしいと思うと言いますが、
マリラはそれが良い考えだと確信を持てません。彼女はアンを
1.アンがグリーン・ゲーブルズに住むようになるいきさつ
1.アンがグリーン・ゲーブルズに住むようになるいきさつ
その晩は泊めますが、翌朝スペンサー夫人の家にアンを連れて
行き、次にどうすべきかを話し合うことにします。その夜、ア
『赤毛のアン』の物語は、1900 年代初期、カナダのプリンス・
ンはとても落ち込み、泣きながら寝入りました。
エドワード島のアヴォンリーという村を舞台にしています。
マリラ・カスバートと彼女の兄マシューは、グリーン・ゲー
■グリーン・ゲーブルズに来る前のアンの生い立ち
ブルズと呼ばれる大きな農園に住んでいます。二人は年をとっ
てきています。マリラは 55 歳くらい、マシューは 60 歳で、農
翌朝、マリラとアンは荷馬車でスペンサー夫人の家に向かいま
園の仕事の手伝いをしてくれる人を必要としています。けれど
す。5マイルの道を行く間、マリラはアンにそれまでの生い立
も、アヴォンリーでよい農場労働者を見つけることはとても難
ちについて尋ねます。アンはマリラに次のような話をします。
しいことです。
ある日、友人の一人で、すぐ近くのホワイト・サンドに住む
アンの両親
スペンサー夫人が、ノヴァ・スコシア州に行き、そこにある養
アンはノヴァ・スコシア州のボリングブロークにある小さな黄
護施設から女の子を引き取るという話を耳にします。彼らは夫
色の家で生まれました。ボリングブロークでは、彼女の父ウォ
人に、彼らのためにもう一人子どもを、11 歳くらいの男の子を、
ルター・シャーリーは高校の教師をしていました。彼女の母は
連れて帰ってくれるように依頼する短い手紙を送ります。彼ら
バーサという名前で、結婚する前は彼女もまた高校の教師でし
は、農園を手伝ってもらう代わりに、その男の子の世話をし、
た。若い夫婦は幼い赤ちゃんがいてとても幸せでしたが、不運
学校に行かせようと思います。けれども、手違いがあり、マシ
にも、アンが生後わずか3カ月の時に、最初にアンの母が、そ
ューが男の子を迎えに駅へ行くと、男の子ではなくアン・シャ
して次に父が高熱で亡くなりました。
ーリーという女の子が待っています。
これにより、地元の人々はとても困りました。というのは、
マシューが何か言う隙もなく、その女の子はマシューに、グ
アンには他に家族がなく、彼女を引き取りたいという人がいま
リーン・ゲーブルズに来て暮らすことにどんなに興奮している
せんでした。けれども、最後には、彼女の両親の家の掃除をし
かを話します。彼女はマシューに、満員の養護施設から出られ
ていたトーマス夫人という女性が彼女を引き取ることに同意し
てどんなにうれしかったかを話します。養護施設はとても悲惨
ました。
なところだったと、アンは言います。マシューはとても申し訳
ない気持ちになり、何と言えばよいか分かりません。手違いが
アンとトーマス家
あったことをアンにどう伝えてよいか分からないので、彼はア
その後8年間、アンはトーマス夫人と彼女の夫とともに暮らし
ンを農園に連れ帰り、自分の代わりにマリラに言わせることに
ましたが、トーマス夫人の夫は大酒飲みでした。彼女は、夫妻
します。
とともにメリーランドに移り、そこでは夫妻の自分より年下の
マシューとアンは荷馬車に乗り込み、グリーン・ゲーブルズ
4人の子どもたちの世話にほとんどの時間が費やされました。
への帰途につきます。農園までの道すがら、彼らはたくさん話
彼女はあまり学校に行かなかったので、ただ一人の友は、寂し
をします。マシューはアンをとても面白い子で、また彼女と話
さのあまりに作り出した想像上の友でした。
をするのは気楽だと思います。これはマシューには珍しいこと
そして事故が起きました。トーマス氏が電車にはねられて亡
です。というのは、彼はとても内気で、いつもは他の人と話を
くなったのです。その後、トーマス氏の母がトーマス夫人と二
『赤毛のアン』の世界 The World of “Anne of Green Gables”
1
人の間の子どもたちを引き取ろうと申し出ましたが、アンは含
『赤毛のアン』の物語は、アンがアヴォンリーでのマリラと
まれていませんでした。かわいそうなアンは別の地元の一家、
マシューとの新しい生活になじんでいくその後の5年間の生活
ハモンド家に送られ暮らすようになりました。ハモンド家は幼
を描いています。
い子どもたちの世話を手伝える人を必要としていたからです。
2.アンの世界に出てくる場所
2.アンの世界に出てくる場所
アンとハモンド家
■プリンス・エドワード島とアヴォンリーとグリーン・ゲーブルズ
ハモンド家は、とても貧しく、森の中の川のそば、他の家から
とても離れた場所に住んでいました。アンは彼らの8人の幼い
子どもたちの世話をするために一生懸命働かなくてはなりませ
プリンス・エドワード島
んでした。アンは春と秋にしか学校に通えませんでした。なぜ
アヴォンリーの町はカナダのプリンス・エドワード島にありま
なら、学校は遠く、冬には歩いて行けず、夏には授業がなかっ
す。これはカナダ東岸沖、ノヴァ・スコシア州のそばにある実
たからです。
在の島です。プリンス・エドワード島は、その美しい自然で有
ハモンド家と暮らして3年たったころ、ハモンド氏もまた事
名ですが、カナダの他の諸地方より暖かく、1月の平均気温は
故で亡くなりました。この後、ハモンド夫人は子どもたちをい
マイナス7度、7月は 19 度です。物語が書かれた当時は、主な
ろいろな親戚のところで暮らすように送り出すと、自分はアメ
産業は農業と漁業でした。
リカへ行ってしまいました。
アヴォンリー
再び、誰もアンを引き取りたいという人がいませんでした。
そのため、彼女は養護施設に行って暮らさなければなりません
アヴォンリーは、キャヴェンディッシュという実在の町を一部
でした。スペンサー夫人が彼女を引き取りに来るまで、そこで
モデルにした、プリンス・エドワード島にある小さな町です。
4カ月暮らしました。
町がある土地は海に突き出ていて、三方を海に囲まれています。
アヴォンリーの人々のほとんどは、野菜や果物をカナダの他
マリラ、アンをいさせることを決意する
の地方に売って生計を立てている農場経営者たちです。ほとん
この話を聞いた後、マリラはアンのことがとても気の毒になり
どの家や農場は美しい街道沿いにあり、この街道は町の中央を
始めます。アンの生い立ちがそれまで本当に寂しく厳しいもの
通っています。
であったことが、マリラには察せられます。彼女はアンをグリ
アヴォンリーには郵便局が1つ、学校が1校、教会が1つあ
ーン・ゲーブルズにいさせるべきだろうかと考え始めます。
りますが、商店やレストランは一軒もありません。プリンス・
間もなく、マリラとアンはスペンサー夫人の家に着き、マリ
エドワード島には電灯がついている町もありますが、アヴォン
ラは何が起きたかを説明します。スペンサー夫人はとても驚き
リーの人々は家の照明にまだオイルランプやろうそくを使って
ますが、子どもたちの世話を手伝ってくれる女の子を探してい
います。鉄道の駅はなく、車もバスも他の車両輸送手段もない
る別の女性を知っているから心配しないようにとマリラに言い
ので、人々は徒歩か、馬や荷馬車に乗って移動します。
ます。この女性は、名前はブリューエット夫人といい、スペン
あまり便利な場所ではありませんが、アンはここが世界中で
サー夫人の家に少し後に到着します。
最も美しい場所と聞いていたので、アヴォンリーで暮らすこと
マリラはブリューエット夫人が親切な女性ではないことをす
にとても興奮しています。
ぐに見て取ります。彼女はアンの赤い髪について意地の悪いこ
とを言い、アンに冷たい口調で話しかけます。マリラはアンが
グリーン・ゲーブルズ
ブリューエット夫人の元に行って暮らすことを考えるのに耐え
グリーン・ゲーブルズ農園はアヴォンリーの街道の端の端、ほ
られず、彼女をグリーン・ゲーブルズにいさせることにします。
とんど森に入ったところにあります。家屋と農園の建物はマリ
アンはようやく本物の家庭を手に入れて、本当に幸せに思いま
ラとマシューの父によって建てられました。二人の父はすごく
す。
内気な男性で、できるだけ近所の人たちから離れたところに住
『赤毛のアン』の世界 The World of “Anne of Green Gables”
2
シャーロットタウン
みたいと思っていたのです!
グリーン・ゲーブルズ農園の家は、緑と白の大きな木造家屋
シャーロットタウンはプリンス・エドワード島にある、アヴォ
で、とても手入れの行き届いた裏庭があります。家の両側には
ンリーから約 30 マイル離れた美しい都市です。この町には裕福
果樹園があります。アンが初めて到着する時には、これらの果
な人が多く住み、いろいろな商店やレストラン、コンサートホ
樹は美しい花に覆われています。他にも畑や家畜小屋があり、
ールなどがあります。
すぐ近くには小川もあります。
アヴォンリーの学校を卒業すると、アンはここにあるクィー
家は二階建てです。一階には4部屋あります。マシューが寝
ン学院というカレッジに通います。
る小さな寝室に,食堂,居間、そしてアン、マリラ、マシュー
が多くの時間を過ごす大きな台所です。二階にも4部屋ありま
ニューブリッジ
す。マリラの部屋とアンの部屋、そして裁縫部屋に来客用の寝
ここはブライト・リバーとアヴォンリーの間の小さな町です。
室です。
アヴォンリーの人々は時々この町にあるホールをコンサートや
アンがグリーン・ゲーブルズに到着する時には家はとても整
他の催し物で利用します。
然としていますが、とても冷ややかな感じもします。少しずつ
アンが家に生花や他のちょっとした手を加え、まもなく家は本
ホワイト・サンド
物の家庭になります。
ホワイト・サンドはアヴォンリーから5マイル離れた海岸沿い
の町です。この町にはホワイト・サンド・ホテルという高級ホ
アンの部屋
テルがあります。このホテルは、電灯もあり、夏の数カ月の間
アンの部屋は東向きなので、午前中は日がとてもよく入ります。
アメリカからの旅行者にとても人気があります。
寝室の窓の外側には美しい桜の木があります。彼女はこの木を
■アンを取り巻く自然
「雪の女王」と名付けますが、それは雪のような花で覆われる
からです。
アンがグリーン・ゲーブルズに到着した時は、彼女の部屋の
アンは自然が大好きで、屋外で過ごすのが大好きです。実は、
壁は白く、家具はほとんど何もありません。けれども、物語の
マリラは彼女のことがよく心配になります。というのは、アン
終わりまでには、彼女の部屋はすっかり変わっています。壁に
が花や木に話しかけたり、名前を付けたりするのが好きだから
はきれいなリンゴの花の壁紙が張られ、新しい家具もいくつか
です!
あります。低い白い寝台、鏡、椅子、きれいな花が活けてある
アンはアヴォンリー周辺の田園地帯のすべてが大好きですが、
花瓶が載ったテーブルなどです。
特に好きな場所がいくつかあります。
■アンの世界の他の重要な町
並木道、または歓喜の白路
並木道は、ニューブリッジとアヴォンリーの間の 4~500 ヤード
ブライト・リバー
ほどの長さの一本道です。この道の両側には大きなリンゴの
ブライト・リバーはアヴォンリーから8マイル離れたところに
木々が植えられています。木の枝が花でいっぱいになる春には、
ある町です。アヴォンリーに一番近い駅はこの町にあります。
枝が道の上に垂れ下がり、白い花のトンネルができます。
アンは、アヴォンリーに来る最初の日に、マシューと一緒に
カーモディ・タウン
荷馬車でこの道を通ります。彼女は暮れ始めの夕方の光に照ら
カーモディ・タウンはアヴォンリーに一番近い町です。この町
されたリンゴの花の美しさに目を疑います。彼女がマシューに
には、アヴォンリーの人々が砂糖のような食品や、服を作る生
この道は何というのか尋ねると、マシューは並木道と呼ばれて
地、家や庭で使う他の品々を買う店がいくつかあります。
いると教えます。アンは並木道では十分に美しい感じがしない
と言い、代わりに「歓喜の白路」と呼ぶことにします!
『赤毛のアン』の世界 The World of “Anne of Green Gables”
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アヴォンリーはほとんどの人が知り合いの小さな農業の町なの
バリーの池、または輝く湖水
で、近所の人たちとうまくやって行くことがとても大切です。
バリーの池は、アンが「輝く湖水」と呼ぶのが好きな池です。
アンはアヴォンリーの人々に慣れるのに少し時間がかかり、ア
大きな池で、グリーン・ゲーブルズのすぐ近くにあります。池
ヴォンリーの人々もアンを受け入れるのに少し時間がかかりま
は美しい木々や花々に囲まれ、水の中にはたくさんの魚やカエ
す。けれども、間もなく、彼女にはたくさんの友人ができ、そ
ルがいます。また、中央には大きな木の橋がかかっていますが、
の地域の重要な住民の一人になります。
これは古い木々からできた支柱の上に建っています。
アン・シャーリー
アヴォンリーの子どもたちはこの池やその周りで遊ぶのが大
好きです。アンと親友のダイアナは池のそばの岩の上に座って、
アンは、想像力がとても豊かで、話すのが大好きな感じのよい
おしゃべりしたり、物語を作ったりして、ここで幸せな日々を
11 歳の女の子です。彼女の髪はニンジンのような赤い色で、鼻
たくさん過ごします。
はかわいく、目は大きく緑がかかった灰色です。アヴォンリー
に到着した時には、とても痩せていて、身なりもよくなく、あ
おばけの森
まり魅力的には見えません。けれども、何年か過ぎていくうち
グリーン・ゲーブルズとダイアナの家の間にはとても暗い森が
に、髪は落ち着いた色になり、とてもきれいな、流行に敏感な
あります。アンとダイアナはこの森を「おばけの森」と名付け
若い女性になります。
ます。彼女たちは、恐ろしい人物,例えば首の無い男や,気味
アンはいつも良い子でいようと最善を尽くしますが、それま
の悪い貴婦人、謎めいた子どもの幽霊などがこの森に棲むと想
で実の家族と生活をしたことがなかったため、社会の慣習や、
像し、彼らについてのいろいろな物語を作ってとても楽しみま
どう振る舞えばよいのかがよく分かりません。最初は、このこ
す。
とにより、そして豊かな想像力も相まって、彼女は様々な困っ
けれども,最後には、アンとダイアナはこの遊びをやめなけ
た事態に陥ります。
ればならなくなります。それというのも、自分たちの作った話
アンは(その方が上品な感じ「に見える」と考え)自分の名
を信じ始め、ひどく怖くなり、暗くなってからは森に行けなく
前の最後に「e」を付けてもらうのが好きです。
なるからです!
マリラ・カスバート
アイドルワイルド
マリラ・カスバートは背が高く、痩せていて、白髪まじりの髪
アンとダイアナは彼女たちの家の近くにある森の木が丸く囲ん
をいつもお団子に結っています。彼女は冷たい感じの厳格な女
だところでままごと遊びをするのが好きです。彼女たちは大き
性ですが、とても公平でもあり、ユーモアのセンスに優れてい
な石を椅子にして、木から木に板を渡して吊るします。この板
ます。
の上に古い皿や他の宝物を並べて飾ります。彼女たちはこの場
マリラは、アンに正しい礼儀を教えるのは自分の義務だと考
え、そのためしばしばアンに腹を立てているように見えます。
所を「アイドルワイルド」と呼びます。
けれども、実は、彼女はアンの言うことなすことの多くをとて
恋人の小道
も面白がっています!何年も過ぎていく間に、彼女は穏やかに、
道沿いに木々や花々がある小道があり、カスバート農園とアヴ
そしてずっと優しくなり、マリラとアンはとても親密になりま
ォンリーの学校の間の田園地帯を通っています。アンとダイア
す。
ナは毎日この道を歩いて学校に通います。彼女たちは、ここが
この本の終わりでマリラが視力を失い始めると、アンは家に
とても美しいので、「恋人の小道」と名付けます。
いて彼女の世話ができるようにと大学の奨学金をあきらめます。
3.アンとアヴォンリーの人々
マシュー・カスバート
マシュー・カスバート
マシュー・カスバートは妹のマリラとともにグリーン・ゲーブ
『赤毛のアン』の世界 The World of “Anne of Green Gables”
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ルズ農園に暮らす農場経営者です。妹と同じく、一度も結婚を
ます。彼女は裁縫のサークルを運営したり、土地の教会でボラ
したことがありません。背が高く、痩せていて、白髪まじりの
ンティアをしたりする、地域社会のとても活動的な一員です。
髪を肩まで垂らしています。彼はとても優しいのですが、とて
けれども、彼女は近所の人たちのうわさ話をするのも大好きで、
も内気でもあり、他の人々、特に女の人たちと話すのをとても
地域の情報はすべて知っています。彼女は窓辺に座って、町の
苦手にしています。けれども彼は、アンとならとても楽に話が
人々が何をしているのかを観察するのに多くの時間を費やして
できるのに気づき、彼女の面白い思いつきや物語を聞くのが大
います。
アンとリンド夫人の最初の出会いは、あまりうまく行きませ
好きです。
マシューはすぐにアンの親友の一人になり、物語を通して、
ん。リンド夫人は、髪がニンジン色だと言ってアンを怒らせ、
アンが間違いをすると目立たないように彼女を支え、彼女がう
アンは、意地悪な人だと言い返してリンド夫人を怒らせます。
まくいっている時は応援します。彼はまた、アンにキャンディ
けれども、アンが謝るとすぐにリンド夫人は彼女を許し、二人
ーや宝石のようなプレゼントを買ってあげるのが大好きです。
はよい友人になります。
物語の終わりでは、(心臓が弱い)マシューは、自分が使って
いる銀行が倒産し、お金をすべて失うと、ショックで亡くなり
フィリップス先生
ます。
フィリップス先生は、アヴォンリーでのアンの最初の先生です。
彼はあまり良い先生ではなく、彼のおじが学校の理事の一人な
ダイアナ・バリー
のでこの職を得ただけでした。実際、彼はほとんどの時間をと
ダイアナ・バリーは、すぐ近くの農園に両親と幼い妹のミニー・
てもきれいな 16 歳のプリシー・アンドリュースに話しかけるの
メイと住んでいる、アンの親友です。彼女は黒い髪と目をして
に費やし、その間、他の子どもたちは好き勝手にしています!
いてとても美しく、いつも流行の服を着ています。彼女はまた
アンはフィリップス先生があまり好きではありません。特に
性格がとてもよく、親切で、アンと同じように本を読むことと
彼が彼女の名前の最後に「e」を付け忘れるためと、彼女の綴り
物語を作ることが大好きです。
を笑うからです!彼は、アンがアヴォンリーに来てからおよそ
アンはとても人気があり、大勢の友人ができますが、物語を
1年後に去ります。
通してダイアナは彼女の親友であり続けます。
ミス・ミュリエル・ステイシー
ギルバート・ブライス
ミス・ミュリエル・ステイシーは、フィリップス先生が去ると、
ギルバート・ブライスは地元の農場経営者の息子で、よく勉強
アヴォンリーの学校に教えに来ます。
ができます。背が高く、緑がかった茶色の目と茶色の髪をして
彼女は若く、流行に敏感で、明るい色の髪に美しい目、そし
いて、アヴォンリーの女の子たちにとても人気があります。ア
て甘い声をしています。彼女はまたとても優れた先生でもあり
ンより2つ年上ですが、父が病気の時に学校を随分休まなけれ
ます。最初は彼女の教え方がとても新しいためにショックを受
ばならなかったので、アンと同じクラスにいます。
ける親たちもいます。例えば、彼女は子どもたちに1日2度運
物語の最初のころ、ギルバートが言ったことがアンの気持ち
動をさせたり、自然の勉強にと子どもたちを戸外に連れ出した
を傷つけます。その後、彼はとても悪かったと思い何度も謝ろ
り、初めての学校劇を計画したりなどします。けれども、アン
うとしますが、とても長い間、彼に対するアンの怒りは静まり
を含め、子どもたちはみな、授業をとても面白くしてくれるの
ません。
で彼女のことが大好きです。彼女は年長の子どもたちがカレッ
この本の最後で、アンはようやく彼を許し、二人は恋に落ち
ジの入学試験に合格するのを手助けするための特別授業を計画
しもします。
始めます!
ステイシー先生は、アンがとても聡明なことに気づき、彼女
リンド夫人
を熱心に励まします。アンは彼女の努力のおかげで、教員養成
リンド夫人はマリラとマシューの隣人で、一番近くに住んでい
のカレッジに入るだけではなく、大学への奨学金も獲得しま
『赤毛のアン』の世界 The World of “Anne of Green Gables”
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す!
冬の数カ月の間に隔週で開かれます。アンを含めメンバーたち
は詩や物語の朗読の練習をし、しばしば町の人々のために演芸
アラン牧師
会やショーを催します。
アラン牧師は、アヴォンリーの教会の新しい牧師です。彼は若
く、面白く、見た目もすてきです。
■アヴォンリー教会
アラン夫人
人々が友人や隣人と会うもう一つの場所は、地元の教会です。
アラン夫人はアラン牧師の妻で、地域の教会の日曜学校のアン
アヴォンリーのほとんどの大人たちは毎週日曜日に教会に行き、
のいるクラスの先生です。彼女は若くきれいで、流行に敏感で、
子どもたちは日曜学校に行きます。慈善コンサートや趣味のサ
優しい笑顔をしています。アンはとてもアラン夫人が好きで、
ークルのような町の社交の催しや活動の多くもまた教会や教会
彼女のようになりたいと思っていますし、アラン夫人はアンの
のメンバーにより計画されます。実際、アンの大好きな町の催
ことを知っている子どもたちの中で一番魅力的な子どもだと思
しの一つは、日曜学校のピクニックで、これは毎年催されます。
っています!アラン夫人はすぐにアヴォンリーでのアンの親友
けれども、アンは、アヴォンリーでの最初の年、危うくこの
の一人になります。
ピクニックに行きそこないそうになります。
ジョシー・パイ
アンとピクニックとなくなったブローチ
ジョシー・パイは、学校でアンと同じクラスにいる女の子です。
アンは初めて参加する教会のピクニックを本当に楽しみにして
彼女はあまり親切でも正直でもなく、アンは彼女のことが好き
います。特に初めてアイスクリームを味わう機会になるからで
ではありません。
す。けれども、ピクニックの前日、マリラは彼女のお気に入り
のブローチがないことに気づきます。彼女はアンが前にそれを
スペンサー夫人
いじっているのを見たことを思い出し、アンにブローチを持っ
スペンサー夫人は、マリラとマシューの依頼を受けて、アンを
ているか尋ねます。アンはマリラにブローチがどこにあるか全
ノヴァ・スコシア州の養護施設からアヴォンリーに連れてくる
く知らないと言いますが、マリラは彼女の言うことを信じませ
裕福な婦人です。
ん。マリラはアンに、ブローチをとったことを認めない限り、
ピクニックに行ってはいけないと言います。
ブリューエット夫人
アンはピクニックにとても行きたく、マリラにそのブローチ
ブリューエット夫人は、スペンサー夫人の友人の一人です。彼
をバリーの池に落としたと言うことにします。それが本当のこ
女は、アンに自分の家に来て、子どもの世話をするのを手伝っ
とではないにもかかわらずです!アンはブローチをなくしたこ
てほしいと思っている意地の悪い婦人です。
とを認めれば、マリラがピクニックに行かせてくれるだろうと
考えます。けれども、これは逆効果となります!マリラは、ア
4.アヴォンリーでの社交生活
4.アヴォンリーでの社交生活
ンをピクニックに行かせるどころか、とても怒り、罰として彼
女を自分の部屋に行かせます。
アヴォンリーには劇場もレストランもありませんが、町の人々
アンはとても落ち込みますが、運よく、ピクニックが始まる
が楽しみにしているいくつかの活動があります。
直前に、マリラはブローチを見つけます。彼女は、自分がアン
にしてもいないことをしたと認めるように強いたことに気づき、
■アヴォンリー討論クラブ
とてもすまなく思います。アンはピクニックに行くことが許さ
れ、ぎりぎりでピクニックに間に合います!
アヴォンリーで最も人気のある活動の一つは、アヴォンリー討
■ティー・パーティー
論クラブに行くことです。このクラブは、一種の演劇クラブで、
『赤毛のアン』の世界 The World of “Anne of Green Gables”
6
マリラはアンの過ちではなかったことを説明しにダイアナの
アヴォンリーでとても人気のあるもう一つの社交活動は、ティ
母に会いに行きますが、バリー夫人は話を聞こうとしません。
ー・パーティーを開いたり、ティー・パーティーによばれたり
彼女は、アンは悪い女の子で、ダイアナにはもうアンと遊んで
することです。けれども、アンが開く最初のティー・パーティ
ほしくないと言います。
ーはあまり計画通りには行きません。
実際、アンとダイアナは数カ月後まで再び一緒に遊ぶことを
許されません…。
アンがダイアナの友情を失いそうになるいきさつ
アンがアヴォンリーに来て数カ月後のある秋の日、マリラとマ
アンがミニー・メイと、自分とダイアナとの友情を救ういきさつ
シューは二人とも午後、外出する予定があります。アンが家で
数カ月後のある1月の雪の晩、マリラは外出していて、マシュ
一人ぼっちになるので、マリラはアンにダイアナをお茶に招い
ーとアンはグリーン・ゲーブルズの台所にいます。突然、ダイ
てもよいと言います。外出する前にマリラはアンにケーキとク
アナがその台所に飛び込んできます。彼女は彼らに、3歳の妹
ッキー食べていいし、フルーツジュースも飲んでいいと言い、
ミニー・メイの具合がとても悪く、彼女のことがとても心配だ
フルーツジュースが居間の戸棚の中にあると説明します。アン
と話します。彼女は、両親が外出していて、彼女も若い子守り
は初めてティー・パーティーを開くことになるので、とても張
のメリー・ジョーもどうしてよいか分からないと言います。
り切っています。
マシューは急いで荷馬車で医者を探しにすぐ近くの町に向か
その日の午後、ダイアナが到着すると、二人はお茶の前に室
い、アンとダイアナはダイアナの家に急いで行きます。
外に出て、リンゴをもいで食べることにします。気持ちのよい、
ダイアナの家に着くと、アンはミニー・メイがとても具合が
暖かな日で、彼女たちは午後のほとんどを芝生の上に座り、リ
悪いのを見て取ります。けれども、ミニー・メイにとって幸運
ンゴを食べ、おしゃべりをして過ごします。彼女たちが最後に
なことに、アンはハモンド一家と暮らしていた時に病気の子ど
お茶を飲むために室内に入り、アンは戸棚からフルーツジュー
もをたくさん世話したので、何をすべきか正確に分かっていま
スを出しに行きますが、マリラがあると言った場所にジュース
す。
がありません。しばらく探した後に、彼女はようやく戸棚の一
アンはミニー・メイをベッドに入れ、薬を与えます。最初、
ミニー・メイの容体はさらに悪くなり、アンは彼女が死んでし
番奥にジュースを見つけます。
アンはお茶の用意をしに台所へ行く前に、ジュースの瓶とグ
まうのではないかと心配しますが、彼女に薬を与え続け、つい
ラスをダイアナに手渡し、自由に飲んでねと言います。アンが
にミニー・メイは快方に向かいます。医者がずっと遅れて到着
忙しくしている間、ダイアナはそのフルーツジュースを大きな
するころには、彼女は危険な状態を脱していて、すやすやと眠
グラスで3杯飲みます。けれども、その後、彼女はとても気分
っています。
が悪くなり、家に帰らなければならなくなります。アンは友人
後に、医者はダイアナの両親にアンがミニー・メイの命を救
が何も食べずに家に帰らなければならなかったことでとても落
ったのだと伝えます。これを聞くと、バリー夫人は以前にアン
ち込みます。
についていろいろ悪口を言ったことを深く反省します。彼女は
翌日、マリラはアンを隣人のリンド夫人の家に何かを取りに
アンをお茶に家に招き、アンにいつでも遊びに来ることを歓迎
行かせます。リンド夫人はアンにダイアナの母がアンのことを
すると伝えます。
とても怒っている、ダイアナを酔っぱらわせたから、と教えま
アンとダイアナは再び一緒に遊べることに大喜びし、そして
す!アンはとてもショックを受けます。彼女は走って家に帰り、
彼女たちはその後、物語の最後まで親友であり続けます!
マリラにリンド夫人が言ったことを伝えます。突然、マリラは
5.アンと学校
5.アンと学校
自分がフルーツジュースを居間の戸棚に入れるのを忘れたこと
を思い出します。彼女は、アンがダイアナに彼女のフルーツワ
■アヴォンリーの学校
インを出してしまったに違いないと気づきます。そのワインは
手違いで戸棚の奥にあったのでした。
『赤毛のアン』の世界 The World of “Anne of Green Gables”
7
アヴォンリーの学校は、低く白い木造の建物で、大きな窓があ
っぱり、彼女を「ニンジン!」と呼びます。アンは、
「ニンジン」
ります。アヴォンリーの街道より少し奥に入ったところ、ちょ
と呼ばれるのが大嫌いなので、とてもショックを受け、傷つき
うど森の正面にあり、すぐ近くを小川が流れています。
ます。彼女はかっとして、自分の石板で彼の頭をとても強く叩
学校には一人しか教師がいないので、子どもたちは全員同じ
き、石板は割れてしまいます。
教室で一緒に勉強します。クラスは年齢ではなく、読解力で分
他の生徒たちはみんなこれをとても面白がりますが、フィリ
けられ、生徒たちは木製の机に向かって座り、男の子たちの机
ップ先生はとても怒ります。彼はアンのところにやって来て、
は片側に、女の子たちの机は反対側に置かれています。学校の
なぜそんなことをしたのか尋ねます。アンはギルバートが自分
制服はなく、生徒はみな机の上に自分の石板を置き、その上で
のことを「ニンジン」と呼んだのをみんなに知られたくなく、
筆記や綴りの練習をします。子どもたちはみな、読み、書き、
黙っています。ギルバートは自分のせいでアンが面倒なことに
計算、カナダの歴史を含むいろいろな科目を勉強します。年長
なっているので、申し訳なく思います。彼はフィリップス先生
の生徒たちの多くはシャーロットタウンにあるクィーンズ学院
に、自分が最初にアンに意地の悪いことを言ったのだと伝えよ
というカレッジの入学試験のための勉強もします。学年は9月
うとしますが、フィリップ先生は耳を貸しません。フィリップ
から7月までで、夏に2カ月の休みがあります。
先生は、アンを教室の前に立たせ、その頭上に「アン・シャー
学校給食はありませんので、生徒たちは毎日家から学校に自
リーは短気です。アン・シャーリーは自分の感情を抑えられる
分の昼食を持ってきます。彼らは瓶に入った牛乳も持ってきて、
ようにならなければなりません」という言葉を書きます。
それをすぐ近くの川に入れて、昼食の時間まで冷やしておきま
この後、アンはギルバートにすごく怒っています。彼女はま
す。天気が良いときは、生徒たちは屋外で、木の下や川のそば
たフィリップ先生にも怒っています。特に彼が彼女の名前を(黒
に座って昼食をとるのが好きです。
板に)最後に「e」を付けずに書いたからです。
そして翌日、事態はさらに悪くなります。
お昼休みには、子どもたちはよく屋外の学校のそばの田園地
帯で遊びます。彼らが楽しんですることには、散歩をしたり、
■アン、学校を断念する!
木に登ったり、野球をしたり、お互いに本を読み聞かせ合った
り、歌を歌ったり、花を摘んだりすることなどがあります。
アヴォンリーにアンが初めて到着する時は、彼女はそれまで
アンがギルバートの頭で石板を割る事件の翌日、フィリップ先
あまり学校に通っていなかったので、読み書きがあまり得意で
生は生徒たちに、昼食に家に戻ると伝えます。彼は生徒たちに、
はありません。けれども、彼女はとても聡明で、一生懸命勉強
自分が戻った時には着席して自分を待っている状態でいるよう
するので、すぐに成績がよくなり始めます。実際、この本の終
に命じます。彼は、昼食から遅れて戻る生徒は誰であっても面
わりではプリンス・エドワード島の他の生徒全てを負かして、
倒なことになりますよと言います。
大学への奨学金を獲得します。
昼食後、すぐ近くの森に遊びに行く子どもたちがいます。そ
けれども、最初のうちは、物事はいつもそううまくは行きま
こでは男の子たちは木登りをします。男の子たちはとても楽し
せん。
いので、時間を忘れます。突然、男の子たちの中の一人が、フ
ィリップ先生が学校に戻ってくるのが見えると叫びます。子ど
■アンとギルバートと割れた石板
もたちはみな、学校へと走り出します。ほとんどの女の子たち
は先生より先に学校に着くことができます。けれども、男の子
アンがアヴォンリーの学校に通い始めた最初の数週間、ギルバ
たちは、木から降りてこなければならないので、時間が少し余
ート・ブライスは親戚を訪ねていて、町にいません。学校に戻
計にかかります。運の悪いことに、アンは森の、学校から一番
った最初の日、ギルバートはアンに気づきます。彼は彼女に話
離れたほうの端にいるので、他の女の子たちより走って戻るの
しかけようとしますが、彼女は窓の外を眺めて空想にふけって
に時間がかかります。彼女は男の子たちと同時に学校に着きま
いるので、彼に気づきません。ギルバートはアンがわざと自分
すが、先生より少し遅れてしまいます!
を無視していると思い、とても頭にきます。彼はアンの髪をひ
『赤毛のアン』の世界 The World of “Anne of Green Gables”
先生はとても怒り、誰かを罰したいと思います。彼は、その
8
■パイとソース
生徒たち全員を罰するのは大変すぎると思い、アンを選びます。
彼女が男の子たちと一緒に入ってきたという理由で、罰として
彼女を男の子の隣に座らせます。ギルバート・ブライスの隣に!
ある晩、夕食後にマリラはアンに、寝る前に残ったパイとソー
その晩、アンはマリラにもう二度と学校には行かないと言い
スを蓋をしてしまうように頼みます。アンはそうするつもりな
ます。
のですが、その時に空想が始まり、頼まれたこと全てをすっか
マリラはどうしてよいか分からないので、隣人のリンド夫人
り忘れます。
に助言を求めます。リンド夫人はマリラに、アンを家にいさせ
翌朝、アンが目を覚ますと、マリラは外で牛の乳搾りをして
なさいと助言し、アンはすぐに退屈して学校に戻りたいと思う
います。突然、アンは前夜パイとソースをしまい忘れたことを
ようになるでしょうと言います。
思い出します。彼女は台所に走って行きますが、ソースの鍋を
幸いにも、リンド夫人の考えは当たります。少しして、アン
持ち上げた時に、ネズミが鍋に落ちておぼれ死んでいるのに気
は学校に戻る決心をします。アンはまだフィリップ先生が好き
づきます!彼女はネズミをスプーンでソースから取り出し、捨
ではありませんが、二人の間にはその後面倒は起きません。
てます。その後、彼女は外に遊びに行き、そのことを全て忘れ
けれども、ギルバートにとって状況はそう簡単ではありませ
ます。
ん。ギルバートはアンと仲良くなろうと努力しますが、アンは
数時間後、新しい隣人たちが昼食会に来て、マリラはアンを
彼を許そうとしません。それどころか、彼女は学校のテストで
家の中に呼び入れます。みんなで素晴らしい昼食を食べ、マリ
彼よりも高い点を取れるようにと熱心に勉強をし始めます。ギ
ラがデザートを取りに台所に行くまでは、全てがとても順調に
ルバートはアンに自分より高い点を取られたくないので、彼も
進みます。マリラが部屋に戻ってくると、アンはマリラが残っ
また一生懸命勉強し始めます。そのため、アンはさらに熱心に
たパイとソースを持ってきているのに気づくのです!アンは誰
勉強します!この状況がその後5年間続き、そのおかげでアン
にもソースを口にしてほしくないと思い、あわてて食卓につい
は学校の成績がとてもよいのです。
ているみんなにネズミのことを告げます。隣人たちはとてもシ
ョックを受けているようですが、マリラは全くの無言です。彼
6.アヴォンリーでの仕事
6.アヴォンリーでの仕事
女はただソースを台所に下げ、代わりにデザートとして他のも
のを持ってきます。
アヴォンリーの農場経営者たちは、カナダの他の地方で売るた
けれども、後でお客様たちが帰ると、マリラはとても怒り、
めの果物や野菜を栽培しています。しなければならない仕事が
アンを叱りつけます。
たくさんあり、子どもたちは農場で親を手伝い、さらには家畜
の世話を手伝うことを当てにされています。アンは鶏に餌を与
アンは、料理に挑戦する時にも、いくつかとてもおかしな間
えたり、乳牛をすぐ近くの牧草地に連れて行ったりして、マリ
違いをします。
ラとマシューをよく手伝います。
■アン、ケーキを焼く
子どもたちはまた、家事を手伝うことも当てにされています。
そしてマリラは料理も裁縫も掃除もとても上手で、アンに自分
の知っていること全てを教えようと全力を注ぎます。けれども、
ある日、マリラはアンに、アラン牧師夫妻をティー・パーティ
これは必ずしも簡単なことではありません。というのは、アン
ーにグリーン・ゲーブルズに招いたと言います。アンはアラン
は集中するのが苦手で、時々、何かをしている最中に空想にふ
夫人が本当に好きで、彼女のために何かすてきなことをしたい
けり始めるからです。そのため、アンはいくつかとてもおかし
と思い、そのパーティーのためにケーキを作ってもよいかマリ
な間違いをしでかします。例えば、ある時は、彼女は鍋のミル
ラに尋ねます。マリラは同意し、アンはどんなケーキにするか
クを豚の餌入れではなく、毛糸の入った籠の中に空けたり、ま
とても時間をかけて考えます。
た別の時はもっと大変な間違いをしたりします。
ティー・パーティーの日の朝、アンは目が覚めるとひどい風
邪をひいていますが、それでもとてもケーキを作りたいと思い
『赤毛のアン』の世界 The World of “Anne of Green Gables”
9
ます。彼女は午前中ずっとケーキ作りに励みます。オーブンか
ます。けれどもある日、このゲームをしていて、アンは大変面
らケーキを取り出すと、出来栄えは完璧です!
倒なことになります。
その日の午後、アラン牧師夫妻が到着し、全員お茶の席に着
■アン、「挑発」を受けて立つ
アン、「挑発」を受けて立つ
きます。テーブルの上にはいろいろな種類の食べ物がたくさん
並び、アラン牧師夫妻はたくさん食べます。そしてマリラはア
ンのケーキを1切れアラン夫人に勧めます。最初、アラン夫人
ある日、アンの親友のダイアナがクラスの女の子全員を自宅で
はもうたくさん食べたので、断ります。けれども、マリラが、
のティー・パーティーに招きます。お茶の後、彼女たちはみん
アンが特に夫人のためにケーキを作ったことを伝えると、夫人
な庭に出て遊びます。最初のうちは、いつもするゲームをしま
は大きな一切れを受け取ります。夫人は食べ始めますが、マリ
すが、間もなく飽きて、お互いに挑発し合い、ありとあらゆる
ラは彼女の表情から何かおかしいと見て取ります。マリラは自
ことをし始めます。最初は、挑発の内容はとても簡単ですが、
分で食べてみて、ケーキが本当にひどくまずいことに気づきま
時間がたつにつれ、どんどん難しく、危険になります。
す!
しばらくすると、アンが好きではないジョシー・パイという
マリラはアンに何の香料をケーキに入れたのか尋ねます。ア
名の女の子が、アンにダイアナの家の屋根に上り、そのてっぺ
ンはマリラにバニラしか使わなかったと言い、使ったバニラの
んを歩いて渡れるかと挑発します。アンはそんなことはしたく
瓶をマリラに見せます。マリラは瓶の匂いを嗅ぎ、中身が薬で
はありませんが、怖がっているのをジョシーに知られたくない
あることに気づきます。マリラは何が起きたのか察します。彼
ので、同意します。ダイアナや他の女の子たちはみなこれはと
女はその前の週に薬の瓶を割ってしまったので、代わりに古い
ても馬鹿げた思いつきだと考え、アンを止めようとしますが、
バニラの瓶に薬を入れたのです。アンはバニラではなく、その
アンは言うことを聞こうとしません。女の子たちが見つめる中、
薬をケーキに使ってしまったのです!マリラはアンに、バニラ
アンはダイアナの家の屋根に上り、そのてっぺんを歩いて渡り
を使う前になぜ匂いを嗅いでみなかったのか尋ねます。アンは
始めます。
マリラに、風邪で鼻が詰まっているので、何の匂いもしないと
最初は全て順調に進みますが、その後で彼女はつまずいて倒
れ、屋根から家の反対側の庭に転がり落ちます。他の女の子た
告げます!
この後、アンはとても落ち込み、泣きながら自分の部屋に走
ち全員、彼女が大丈夫か確かめに駆け寄ります。彼女たちはア
って行きます。けれども、すぐアラン夫人が上がって来て、ア
ンが死んでしまったのではないかと心配します。けれども、幸
ンに話しかけます。アラン夫人は、ケーキがどんな味がするか
運にも、木のおかげで直接落ちずにすみ、脚を痛めただけでし
は重要なことではなく、大切なのはその気持ちなのだとアンに
た。
教えます。これを聞いて、アンは気持ちが楽になり、さらにア
少し後に、ダイアナの父が、とても痛がっているアンをグリ
ラン夫人のことが好きになります!
ーン・ゲーブルズに抱きかかえて連れていきます。マリラは大
変ショックを受け、すぐに医者を呼びに行きます。医者はアン
7.アンの世界の遊びとゲーム
7.アンの世界の遊びとゲーム
の脚が折れていると言います。かわいそうにアンは、脚がよく
なるまで7週間寝ていなければなりません!
アヴォンリーの子どもたちは学校に行っていない時や農場で家
の手伝いをしていない時は、遊ぶのが好きです。おもちゃやゲ
アンと友人たちがとても好きなもう一つのゲームは、自分たち
ームをあまり持っていないので、彼らは外でたくさん遊び、よ
の大好きな物語や詩の有名なシーンを演じることです。これは
く自分たちのゲームを発明します。
あまり危険そうには思えませんが、実はこのゲームでもアンは
ある夏、アヴォンリーの子どもたちの間で「挑発」ゲームを
面倒に巻き込まれます。
することが流行ります。このゲームでは、子どもたちは互いに
■アン、川で流される
アン、川で流される
難しいことや危険なこと、例えば塀の上を歩く、高い木に登る
というようなことを、できるものならやってみろと挑発し合い
『赤毛のアン』の世界 The World of “Anne of Green Gables”
10
ある日、アンとダイアナと何人かの友人たちは、学校で勉強し
彼女はアンが家にいないのだと思いますが、少し後で、アンが
ている悲しい詩の一場面を演じるためにバリーの池に行くこと
自分の部屋で、暗闇の中、ベッドに横たわっているのを見つけ
にします。その詩は、ボートで川を下る、死に瀕した美しい婦
ます。マリラはアンの様子を見にベッドのそばに寄り、手にし
人についてのものです。彼女たちはアンがその美しい婦人を演
たろうそくの明かりで、アンの髪がすごくひどい緑色をしてい
じ、ダイアナと他の女の子たちはその詩の他の登場人物になる
るのに気づきます!
ことにします。計画は、アンがボートで池を横切り、橋の下を
マリラはアンに、髪の毛をどうしたのかと尋ねます。アンは、
通ってゆっくり進み、そして他の女の子たちは反対側の場所で
マリラの留守中に家に来た行商の人から黒いヘアカラーを買っ
待つというものです。
たと説明します。行商の人は、それで彼女の髪が美しい黒髪に
女の子たちが池に着くと、アンはボートに乗り、横たわりま
なるとアンに言いましたが、髪は黒くならずに、緑色になった
す。友人たちはボートを押し出し、それから急いで池の周りを
のでした!
走って反対側に行き、アンを待ちます。最初は全て計画通りに
マリラはアンに髪を洗ってみるように言います。けれども、
進みますが、アンが池の真ん中の橋の近くにいる時に、ボート
アンは1週間家から出ず、何度も何度も髪を洗いますが、ヘア
が水でいっぱいになり始めます!アンは泳げないので、とても
カラーは落ちません。ついには、マリラはアンに髪を短く切ら
怖い思いをします。けれども、その時、彼女は橋の支柱が古い
なければならないと言います。アンはこのことでとても悲しく
木々でできていて、いくつかの場所では、その木の枝の切り残
なり、落ち込みますが、同意するしかありません。
りが支柱から突き出ていることを思い出します。ボートが橋の
翌日、アンが奇妙なショートカットで学校に来ると、他の子
どもたちはみんなとてもびっくりします。
下をゆっくりと流れる時に、彼女はなんとかそれらの枝の一本
に乗り移ります。
けれども、この体験は全く悪いことばかりでもありません。
しばらくのちに、彼女の友人たちはボートが橋の下から出て
この後、アンは自分の赤い髪がそれまで思っていたほどひどく
きて、沈むのを目撃します。彼女たちは助けを求めに走って行
はないと分かり、自分の髪が好きになり始めます。そして、髪
き、アンは橋の下に、上ることも降りることもできないまま取
が伸び、以前より落ち着いた色の美しい髪になり始めると、さ
り残されます。
らに満足します。
アンの友人たちは助けてくれる人を誰も見つけられなく、そ
のためアンは橋の下に長いこといます。細い枝の上に立ってい
アンが欲しいと憧れているもう一つのものは、流行の服です。
るのは難しく、アンはとても疲れ、怖くなり始めます。しかし
けれども、アンとマリラが流行に対して考え方が異なるので、
その時、偶然にも、ギルバート・ブライスがボートで通りかか
流行の服を手に入れるのはほとんど黒髪と同じくらい難しいの
ります。彼はアンを救いだし、アンはようやく少しだけ彼のこ
です。
とが好きになります!
■マリラ、アンにドレスを作る
8.アンと髪型とファッション
8.アンと髪型とファッション
アヴォンリーでは、マリラを含め女性は家族の衣類のほとんど
多くの若い女性たちと同じく、アンも自分の外見を気にします。
を手作りします。彼女たちは最新の流行の生地や型紙を、カナ
美しい赤い髪をしていますが、彼女はそれが大嫌いで、おとぎ
ダの他の地方、つまりすぐ近くのカーモディ・タウンの店か行
話にでてくる美しい貴婦人のような黒い髪にあこがれます。し
商の人たちから手に入れます。
かし、ある日、このあこがれが彼女を面倒に巻き込みます。
アンが初めてアヴォンリーに到着する時には、彼女がとても
古い服をたった一着しか持っていないので、マリラは何着か新
■アン、髪の色を変える
■アン、髪の色を変える
しい服を作ってあげることにします。けれども、彼女がその服
をアンにあげても、アンは少しもうれしそうには見えません。
ある晩、マリラが帰宅すると、家はとても暗く静かです。最初、
『赤毛のアン』の世界 The World of “Anne of Green Gables”
マリラがどうしたのか尋ねると、アンはその服はかわいくない
11
し、流行に合っていないと説明します。アンはマリラにどんな
マシューはアンがかわいそうだと思います。12 月なので、彼は
服が流行っているかを教え、代わりにその中から一着作っても
クリスマスに彼女に新しい服を買ってあげることにします。彼
らえないかと頼みます。けれどもマリラは新しい流行の服を奇
はマリラが流行の服をどう思っているか知っていますが、彼が
妙だと考え、断ります。アンは他の女の子たちみんなと同じよ
アンにクリスマスプレゼントとして服を与えても、文句は言え
うに変なかっこうに見えても少しも構わないと説明しようとし
ないだろうと考えます。唯一の問題は、彼は今まで一度も女の
ますが、マリラは耳を貸しません。
子の服を買ったことがなく、どこで買えばよいのか分からない
けれども、アンはすぐに自分をかわいく見せる面白い方法を
ことです!
見つけ出します。
最初、彼はカーモディ・タウンのある店に行ってみることに
します。そこは男性が経営しているからです。けれども、その
■アン、帽子を飾る
店に着くと、若い女性がカウンターの向こうで接客しているの
を発見します。マシューは女性にとても恐怖心を持っているの
翌日、マリラはアンを初めてアヴォンリーの教会に連れて行こ
でとても緊張して、何が欲しいのかを彼女に伝えることができ
うと思います。けれども、午前中頭痛がし、アンは一人で行か
ません。結局、彼は欲しくもない砂糖や他の品物を買って店を
なければならなくなります。アンは新しい服のうちの一枚を着
出ます。
て飾りのない新しい帽子をかぶり、マリラに出かけのあいさつ
この後、彼は自分で服を買うのはあきらめ、隣人のレイチェ
をして家を出ます。
ル・リンド夫人に助けを求めることにします。リンド夫人もマ
教会へ行く途中、アンはきれいな赤と黄色の花が咲いている
リラがアンに着せている服はあんまりだと思っているので、手
野原を歩きます。彼女は花を摘んで、それで帽子を飾ってもっ
伝えることをとても喜びます。彼女は、生地を買うだけではな
とかわいくしようと思います。彼女が教会に着くと、みんなは
く、自分で服を作ろうと申し出ます。彼女はアンに、リボンが
彼女のおかしな帽子を見てとてもびっくりしますが、そのこと
いっぱい付いた華やかな茶色の服を作ります。
について何か言う人は誰もいません。
この後、マリラは、マシューにリンド夫人にもう服を頼んで
その後、アンは教会から家に帰る途中で花を捨てます。それ
ほしくないので、アンに他の女の子たちが着ているようなかわ
でマリラには彼女が何をしたのか分かりません。
いい服を作り始めます。そして、間もなくして、アンはアヴォ
ンリーで最も流行に敏感な女の子の一人になります!
数日後、マリラが隣人のリンド夫人を訪ねて行くと、夫人は
マリラにアンのおかしな帽子について全て話します。
9.L
9.L. M. モンゴメリとアン
マリラは家に帰ると、アンになぜそんな変なことをしたのか
尋ねます。アンは他の大勢の女の子たちは帽子に布でできた花
を付けていると答えます。アンは、帽子に本物の花を付けるの
『赤毛のアン』は、カナダの作家ルーシー・モード・モンゴメ
と、布でできた花を付けるのとの違いが分からないと言いま
リによって書かれました。
す!けれども、マリラは意見を異にし、アンが帽子を本物の花
ルーシー・モンゴメリは 1874 年 11 月 30 日にカナダのプリン
で飾ることをもう許しません。
ス・エドワード島にあるクリフトンという町で生まれました。
けれども、最後には、アンは流行の服を手に入れることに成
彼女はヒュー・ジョン・モンゴメリと彼の若い妻クララの間の
一人っ子でした。
功します。
ルーシーが生後わずか 21 カ月の時に、彼女の母は病気で亡く
■マシュー、アンに服を買う!
マシュー、アンに服を買う!
なりました。この後、彼女の父は彼女をすぐ近くのキャヴェン
ディッシュに住むクララの両親と暮らすように送り、自分はカ
ナダ北部に移ります。
少したった後に、マシューはアンが友人たちと遊んでいるのを
見て、彼女が友人たちと違った格好をしていることに気づきま
ルーシーの祖父母は、郵便局を運営していたのですが、とて
す。かわいい流行の服を着ていない女の子はアンだけなので、
も冷たく厳格でした。彼らはキャヴェンディッシュのノース・
『赤毛のアン』の世界 The World of “Anne of Green Gables”
12
ショアにある大きな農園で暮らしていました。その家では子ど
や詩を新聞に発表し始めました。
もはルーシーだけでしたので、近くに家族や友人たちが大勢住
大学を終えた後、彼女はお金が必要なので、教師の職に就き
んでいましたが、一人で過ごすことが多かったのでした。彼女
ました。けれども、彼女は優れた教師ではありましたが、作家
はとても寂しかったので、想像上の友人を発明し、話しかけま
一本でやっていきたいと強く思っていました。
した。
1898 年、彼女の祖父が亡くなると、
(彼女の作り出した登場人
農園は自然に囲まれていて、ルーシーは外で遊ぶのが大好き
物アンとまさに同じように)祖母と一緒に暮らすために家に戻
でした。まさに彼女の作り出した有名な登場人物アンと同じよ
りました。彼女はキャヴェンディッシュに戻り、書く時間も増
うに、野原で花を摘んだり、海の近くで遊んだり、木に登った
え、幸せでした。
りして、数々の幸せな日々を過ごしました。
1901 年、彼女はハリファックスに旅行しました。そこにいる
6歳の時、ルーシーは地元の学校に通い始めました。彼女は
間に、一人の友人が彼女に新聞社での仕事を提供しました。彼
物語や詩を読むこと、また書くことも大好きな頭の良い、想像
女は約1年、そこで記者として働きましたが、それは彼女が本
力が豊かな女の子でした。
当にやりたいと思っていたことではありませんでした。
1890 年、15 歳の時に、彼女はカナダ西部のプリンス・アルバ
翌年、彼女はキャヴェンディッシュに戻り、そこで雑誌や新
ートという町に行き、父と彼の新しい妻と暮らしました。彼女
聞のために物語を書き続けました。
はプリンス・アルバートには1年住み、そこで高校に通いまし
1905 年から 1906 年の間に、彼女は最初の小説、
『赤毛のアン』
たが、父の新しい妻とうまくいかず、あまり幸せではありませ
を執筆しました。仕上がると、彼女はそれをいくつかの会社に
んでした。このころ、彼女は自作の詩やエッセイを新聞社に送
送りました。最初は出版したいと考える会社はどこもありませ
り始め、シャーロットタウンの地方紙に初めて彼女の詩を掲載
んでしたが、彼女はあきらめませんでした。そして、1908 年、
してもらいました。
アメリカのボストンにある一社がついにこの本を出版しました。
翌年、彼女はキャヴェンディッシュの祖父母の家に戻り、そ
本はすぐにベストセラーとなりました。
こで高校を卒業しました。
その後数年、ルーシーは祖母とハリファックスに住み続けま
1893 年、シャーロットタウンにあるプリンス・オブ・ウェー
した。この間、他の小説2作とアン・シリーズの次の本、『アン
ルズ・カレッジの教師養成コースの入学試験を受けました。彼
の青春』を執筆しました。彼女はとても有名になり、お金がた
女はこの試験で優秀な成績を収め、学生 264 名中5番目でした。
くさん入るようになり始めました。彼女に会いたい、
『赤毛のア
カレッジを終えた後、彼女はとても勉強を続けたいと思いま
ン』の美しい家を見たいと思って、本のファンがプリンス・エ
した。けれども、当時は、女性には就職の機会がほとんどなく、
ドワード島まで来るようになり始めました。
家が女の子を大学に通わせるためにお金を出すのは一般的では
1911 年、ルーシーの祖母が亡くなり、この後少しして、アン
ありませんでした。彼女は、自分の授業料を払うお金を貯める
は教会の牧師ユーアン・マクドナルドと結婚しました。
ために、田舎の学校の教師の職に就くことにしました。
スコットランドを長く旅行した後、オンタリオ州リースクデ
ルーシーは人気のある教師で、熱心に仕事をしました。彼女
ールに引っ越し、ユーアンはそこで牧師の職を得ました。二人
は 100 ドル貯めましたが、それではまだ十分ではありませんで
はここに 1911 年から 1926 年まで住み、3人の息子、チェスタ
した。結局は、祖母が大学に払うのに必要としていた残りの 80
ー・キャメロン、ヒュー・アレクサンダー、ユーアン・スチュ
ドルを出して彼女を援助しました。
アートに恵まれました。
1895 年、ルーシーはノヴァ・スコシア州に移り、ダルハウジ
この間、ルーシーは 11 冊の小説を執筆して大成功を収めまし
ー大学で1年間英語の勉強をしました。ここは当時女子学生を
たが、いつも順風とはいきませんでした。1914 年、次男のヒュ
迎え入れてくれた大学の一つでした。
ー・アレクサンダーが生まれてすぐ亡くなりました。この後、
ルーシーは大学での一年をとても楽しみました。彼女は流行
彼女は長いこととても悲しみました。彼女をとても暗い気持ち
に敏感で、面白い、若い女性だったので、たくさんの友人がい
にさせたもう一つのことは、1914 年から 1918 年まで続いたヨー
ました。彼女は一生懸命勉強し、今まで以上に多くのエッセイ
ロッパでの戦争でした。ヨーロッパはカナダからはとても離れ
『赤毛のアン』の世界 The World of “Anne of Green Gables”
13
ているにもかかわらず、大勢のカナダ人の若者たちが志願して
花子が 10 歳の時、学校の寮に入り、そこでそれからの 10 年
間を過ごしました。
闘いに行き、彼女の知り合いの青年たちもたくさん死傷しまし
た。
最初、花子は新しい学校に慣れるのに苦労しました。他の女
戦争の数年は彼女の夫にとっても辛いものでした。というの
の子たちのほとんどが裕福な家の出身で、また、毎日英語を話
は、これらの青年の家族に辛い知らせを告げるのは、牧師とし
さなければならなかったからです。でも、彼女は熱心に勉強し、
ての彼の役目だったからです。このころ、彼はその後一生苦し
すぐに学校が楽しくなり始めました。先生の多くがカナダ出身
められる精神の病にかかり始めます。
だったので、英語だけではなく、外国の習慣や考え方も学ぶこ
1926 年、ルーシーとユーアン、そして彼らの2人の息子たち
とができました。彼女は読書が大好きで、学校の図書館にある
はオンタリオ州のハルトン・ヒルズに引っ越し、そこでユーア
英語の本をたくさん読みました。
ンは新しい職を得ました。彼らはそこに 1935 年までいましたが、
花子が 16 歳の時、学友の一人が彼女を佐々木信綱という有名
1935 年にユーアンが退職すると、息子たちのそばに住むために
な歌人に引き合わせました。彼女が佐々木の娘に英語を教え、
トロントに移りました。この間中、ルーシーは素晴らしい小説
その代わりに彼は花子に和歌を教えました。この勉強のおかげ
を書き続けました。
で、彼女を美しい日本語の書き方を理解し始めました。
ルーシー・モード・モンゴメリは 1942 年4月 24 日、アン・
この少し後で、花子は、有名な作家森鷗外によって日本語に
シリーズの最後の本を仕上げた直後に、オンタリオ州で亡くな
訳されたハンス・クリスチャン・アンデルセンの本を読みまし
りました。
た。彼女は鷗外の美しい言葉にとても感銘を受け、自分も翻訳
生涯で、ルーシー・モード・モンゴメリは短編 530 作、詩 500
者になることを考え始めました。
編、エッセイ 30 本の他に小説 20 作を発表し、今も世界で最も
17 歳の時、彼女は女性の権利を考えるグループに参加しまし
人気のある作家の一人です。
た。当時、日本では、女性の地位はとても低く、女性には職業
や教育の機会があまりありませんでした。この事を花子は憂え、
10.村岡花子とアン
10.村岡花子とアン
これを変えるために何かしたいと思いました。彼女はそのグル
ープの雑誌を作る手伝いをし、また、その雑誌に詩を発表しま
村岡花子は『赤毛のアン』を日本語に訳した最初の人です。
した。
村岡花子は 1893 年に山梨県で、安中はなとして生まれました。
20 歳の時、東洋英和を卒業し、東洋英和の姉妹校で英語教師
8人兄弟の長子でした。彼女の父逸平は静岡出身のお茶の商人
として働くために山梨へ行きました。彼女はそこに 1919 年まで
で、母の名はてつといいました。両親ともキリスト教徒でした。
在籍しました。ここでの数年の間、彼女はたくさんの詩や物語
彼女が5歳の時、一家は山梨を出て、東京の南品川に移り、
を雑誌に発表し、1917 年には最初の本『炉辺』を発表しました。
そこで父は茶の商売を続けました。花子は地元の小学校に通い
1919 年、花子は東京に戻り、東京、銀座にあるキリスト教関
始めましたが、父は早くから彼女がとても聡明なのに気づき、
係の本を出版する会社の翻訳者兼編集者として働く口を得まし
もっと良い学校に行かせたいと考えました。
た。ここで働いている間に、彼女は、印刷会社の経営者の村岡
彼は、マーサ・J・カートメルというカナダ人によって 1884
儆三に恋をしました。彼らは 1919 年に結婚し、翌年、息子道雄
年に設立された東京、麻布にある東洋英和女学校という女学校
が生まれました。
についての評判を聞いていました。その学校はキリスト教徒の
花子はそれからの数年を幼い子どもの世話をして過ごしまし
女子に優れた教育を施していたので、彼は花子をそこに行かせ
た。けれども、その後 1923 年に関東大震災が東京を襲い、他の
たいと思いました。けれども、一つ問題がありました。この学
多くの会社とともに、儆三の会社も倒産しました。一家はお金
校はとても費用がかかり、彼はとても貧しかったのです。彼女
を必要とし、花子は再び翻訳者兼編集者として働き始めました。
をそこに行かせるのは不可能に思えましたが、彼はあきらめず、
1926 年、花子と儆三は自分たちの出版と印刷の会社(青蘭社)
最後にはなんとか彼女のためにその学校に行く奨学金を手に入
を立ち上げました。その同じ年、とてもかわいがっていた幼い
れることができました。
息子道雄が病気で亡くなりました。この出来事の後、彼女は子
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どもたちのために良いことをしたいと心に決めました。
このころ、日本には年長の子ども向けのよい日本語の本があ
まりなく、花子は彼らが楽しんで読めように英語の本を訳すこ
とを決意しました。彼女は息子が少し大きくなったら読んであ
げたいと思っていたマーク・トウェインの『王子と乞食』とい
う英語の本のことを思い出しました。彼女はそれを翻訳するこ
とにし、この本は 1927 年に出版されました。
それからの数年はとても忙しくなりました。1932 年、花子は
NHK のラジオ番組の仕事を得て、『子供の新聞』という人気コー
ナーの司会を務めました。(彼女は 1941 年までこの番組で働き
続けました。)彼女はまた本を翻訳し続け、また、妹の娘みどり
を養子にしました。
1939 年、ヨーロッパで戦争が勃発すると、花子の友人たちも
含め、多くの外国出身者が日本を去り始めました。友人たちの
一人でロレッタ・ショーというカナダ人の宣教師は、日本を去
る直前に、花子に『赤毛のアン』を1冊渡しました。ショーは
花子に、戦争が終わったら、この本を日本の女の子たちに紹介
してくれるように頼みました。
花子はすぐにその本の翻訳を始めましたが、英語の本は許可
されていなかったので、隠れて翻訳しなければなりませんでし
た。戦争中、彼女はこの本に取り組み続けました。
1945 年に戦争が終わると、優れた英語の本の日本語版への需
要がおこり始め、花子も再び本を翻訳、出版し始めました。
それから数年にわたり、花子は何度も『赤毛のアン』を世に
出そうと努力しますが、著名な作家によって書かれたものでは
なかったために、興味を持つ会社はどこもありませんでした。
けれども花子はあきらめずに努力し、1952 年にようやく『赤毛
のアン』の最初の日本語版が出版されました。本は一夜にして
成功を収めました!
それから7年間、花子はこのシリーズの他の9冊の本を翻訳
し、出版しました。
花子は、晩年まで、外国の本の素晴らしい翻訳を通して日本
の若い人々を勇気づけ続けるとともに、女性や子どもの教育の
機会を向上させようと働き続けました。
村岡花子は 1968 年、東京の自宅で亡くなりました。彼女の『赤
毛のアン』の翻訳は、今日にいたるまでとても愛されています。
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