http://hotwired.goo.ne.jp/original/tsutiya/060214/index.html TOP ABOUT SITEMAP POLICY HELP Hotwired / Column & Interview index / 政策の創造的エミュレーション 現実 2.0 白田秀彰 の 「インターネット の法と慣習」 ネットは中立的であり続け られるか 土屋大洋の「ネット・ポリ ティックス」 COLUMN / INTERVIEW INDEX Text:土屋大洋 PAGE 1 / 2 スタイリストが見た東京カルチャーと 日常風景 この原稿がウェブに載る頃には「IT新改革戦略」が発表されているは ずだ。これは、政府が1994年に高度情報通信社会推進本部を内閣に設置 して以来、積み重ねてきた情報通信政策の最新版になる。1990年代後半 の日本の情報通信はひどく遅れていると内外から批判されていた。米国 政府からも日本の構造改革にはインターネットの導入と通信市場の改革 が必要だと注文がつけられていた。 ‘事件’から‘ビジネス’までITの行 方を確実に捉える 混乱する経済論戦シーンを明解 に読み解く 最近、どこで本買 う? ところが、2000年7月にIT戦略会議が設置され、IT基本戦略が決定さ れると、急速に日本の情報通信市場は動き出した。同年11月には高度情 報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)が成立し、翌年1月に施 行された。同時にIT戦略本部が設置され、e-Japan戦略が決定される。 この頃からADSL(非対称デジタル加入者線)によるブロードバンドが普 及し始め、回線速度はどんどん速くなっていく。「5年以内に超高速アク セス(目安として30∼100Mbps)が可能な世界最高水準のインター ネット網の整備を促進し、必要とするすべての国民が低廉な料金で利用 できるようにする。(少なくとも3000万世帯が高速インターネット網 に、また1000万世帯が超高速インターネット網に常時接続可能な環境の 整備を目指す。)」という目標は、とうてい不可能に見えたが、そうし たネットワークに加入可能というレベルでは前倒しで達成された。2003 年にはe-Japan戦略IIが決定された。 Web2.0的信頼の構 その後、総務省は、政府全体の政策ではないが、2004年にu-Japan戦 略を打ち出し、ユビキタスな情報環境の構築を目指してきた。こうした 政策の積み重ねの延長に「IT新改革戦略」がある。 フランスの「iTMS公開法 案」、支持する? 無論、まだまだ不満もあるだろう。e-Japan戦略IIで取り上げられた七 つの分野(医療、食、生活、中小企業金融、知、就労・労働、行政サー ビス)におけるIT利活用の充実が、分野によっては思ったほど進んでい ない。しかし、政府が最初にインフラの整備に取り組んだ点は評価して いいはずだ。 Vol.33 築(後編) YES: NO: 20644 7322 2006年3月31日(金) 06.11.21 4:57 PM なぜ政府の政策はうまくいったのだろうか。 この質問を、なぜブロードバンドは普及したのか、という点に置き換 えれば、さまざまな理由が考えられる。NTTが加入者線を安く開放した ことが大きいし、それに呼応してソフトバンクのYahoo! BBなどが価格 競争を仕掛けたことで業界の秩序が変わった。光ファイバのFTTHはNTT の独壇場になると思ったら、USENや電力会社が通信に参入してきた。日 1/2 http://hotwired.goo.ne.jp/original/tsutiya/060214/index.html 米接続料交渉を通じた米国からの圧力もあったし、米国のニュー・エコ ノミー好況が日本の構造改革を後押しした(その後、米国のITバブルは はじけてしまうが)。 「家族の携帯を監視するソフ ト」に警告 バイオテロへの備えは万全? ペ ンサイズの血液浄化器 アップル商標裁判:「iTMSは データ転送」と米アップル スティーブ・ジョブズ名言集 (下) 世界の処方薬売り上げトップ10 と今後期待の新薬 注射針を不要にする新技術(下) イラン政府、ブログへの締め付 けを強化(下) オーディオファイ ル形式ガイド (第2回) 人間かロボット か、それが問題だ (第4 回) 作成環境は複合機+デジカメ+年賀 状ソフト? しかし、これをもう一層上の政策のレイヤで見てみれば、政府が慎重 に各国の政策をエミュレートしたからではないだろうか。 辞書でエミュレートとは「模倣、競争、対抗、張り合い」といった意 味とされている。これは単なる複製としてのコピーではない。薬師寺泰 蔵は『テクノヘゲモニー』(中公新書、1989年)の中でヨーロッパの国 々や米国、それに日本は技術のエミュレーションによって台頭してきた としている。ここでエミュレーションは「模倣+α」だとされている。α とは、競争と他の技術との連結である。つまり、優れた先行する技術を 競争的に模倣し、自分の環境や新しい情勢に対応する形で別の技術と連 結したり、新しい要素を上乗せしたりすることで創造的な発展が進むと いう。 薬師寺の議論は「技術」のエミュレーションだが、私は「政策」のエ ミュレーションも重要ではないかと思う。つまり、各国は情報通信のよ うな新しい領域の政策は、これまでの歴史的な流れの延長では作れな い。むしろ、先行している国の政策を研究・分析し、それを自国に合わ せた形で取り入れていく。技術のエミュレーションは特許や著作権とい う形で保護されているが、政策は保護されていない。政策の文言をその ままコピーするような事態は滅多に起きないだろうが、それぞれの国の 実情に合わせてエミュレートされることは頻繁に起きているだろう。 例えば、日本に先行してADSLが韓国で普及したとき、「韓国ででき ることがなぜできないのか」という声が政府やNTTを動かす世論になっ た。そして、韓国や日本でブロードバンドが普及すると今度は米国で、 「アジアにブロードバンドで負けてしまっている。米国の競争力を取り 戻さなくてはならない」と米国で論じられるようになった。 土屋大洋の「ネット・ポリティックス」 Back Number Column & Interview index TOP/NEWS HEADLINE | MATRIX | COLUMN/INTERVIEW | WEB VOTER | Print / Text Only Version NEWS WATCHERS TALK | WEBMONKEY | BLOG TOP ABOUT SITEMAP POLICY HELP Produced by 2006 NTT Resonant Inc. under license from Wired Digital Inc. 06.11.21 4:57 PM 2/2 http://hotwired.goo.ne.jp/original/tsutiya/060214/02.html TOP ABOUT SITEMAP POLICY HELP Hotwired / Column & Interview index / 政策の創造的エミュレーション 現実 2.0 白田秀彰 の 「インターネット の法と慣習」 ネットは中立的であり続け られるか PAGE 3 / 2 土屋大洋の「ネット・ポリ ティックス」 COLUMN / INTERVIEW INDEX スタイリストが見た東京カルチャーと 日常風景 ‘事件’から‘ビジネス’までITの行 方を確実に捉える 混乱する経済論戦シーンを明解 に読み解く 最近、どこで本買 う? Vol.33 築(後編) NO: 20644 7322 2006年3月31日(金) 06.11.21 4:58 PM こうしたアジアからの刺激を受けたのが米国上院議員だったアル・ゴ アだった。彼はHPCC(High Performance Computing and Communication)構想を打ち出し、ハイテク・セネター(上院議員)と あだ名された。そのゴアが副大統領候補として1992年の大統領選挙に 撃って出たときの政策が「情報スーパーハイウェー構想」だった。大統 領候補のビル・クリントンとゴアのコンビが大統領選挙に勝利すると、 情報スーパーハイウェー構想は「国家情報基盤(NII:National Information Infrastructure)構想へと衣替えする。政府主導の構想は民 間主導へと置き換わるものの、インターネット革命、情報革命の主役と なったのは米国だった。 この米国の政策に驚いた各国は次々とその政策をエミュレートしてい く。韓国のKII(Korean Information Infrastructure)構想やヨーロッ パのバンゲマン・レポート、後のe-Europeなどである。そして、日本の IT基本戦略、e-Japan戦略へとつながっていく。 技術としてのITはエミュレーションが非常に簡単である。無論、そこ には特許や著作権などで保護された知的財産があるが、ソフトウェアは コピーし、改変していくことで進化が進んでいる。オープンソースはそ れをラディカルに追求して成り立っている。しかし、それと同時に政策 もまた競争的に模倣され、拡散し、発展していっているのではないだろ うか。 Web2.0的信頼の構 フランスの「iTMS公開法 案」、支持する? YES: ブロードバンドにつながる政策を振り返ってみると、まず1990年、政 府の政策ではないが、NTTがVI&P(Visual, Intelligent & Personal)構 想を発表した。インターネットがまだ一般にはほとんど普及していな かった頃である。1991年にはシンガポールのリ・クワン・ユー首相が 「IT2000:インテリジェント・アイランド」構想を発表し、情報通信技 術への投資がシンガポールの発展に不可欠であることを示した。 日本の情報通信政策が成功したのは、慎重に各国の政策をウォッチ し、都合の良いところだけうまく取り込み、発展させたからだろう。例 えば、当初の世論が強かったのに取り入れなかった例は周波数のオーク ションである。最初に米国でPCS(Personal Communication System)の周波数割り当てに用いられて成功した。この時点ではオーク ションは好評価だったが、第三世代携帯電話の割り当てに欧州で使われ てテレコム・メルトダウンにつながる失敗をした。そこで総務省はオー クションにきわめて慎重な立場をとるようになっている。 しかし、政策でできる選択肢はそれほど多くない。政策は市場を歪め るものだ。正常に機能している市場を歪める政策は難しい。逆に、市場 が正常に機能した結果、ネットワーク産業が独占に進んだ場合、政府は あえて市場に介入して市場を歪めようとするかもしれない。政府はその ために非対称規制を設定したり、補助金を出したり、目標を設定したり 1/2 http://hotwired.goo.ne.jp/original/tsutiya/060214/02.html 「家族の携帯を監視するソフ ト」に警告 バイオテロへの備えは万全? ペ ンサイズの血液浄化器 アップル商標裁判:「iTMSは データ転送」と米アップル スティーブ・ジョブズ名言集 (下) 世界の処方薬売り上げトップ10 と今後期待の新薬 注射針を不要にする新技術(下) イラン政府、ブログへの締め付 けを強化(下) オーディオファイ ル形式ガイド (第2回) 人間かロボット か、それが問題だ (第4 回) 作成環境は複合機+デジカメ+年賀 状ソフト? TOP/NEWS HEADLINE | MATRIX | することができるだろう。ところが、インターネットがこれだけ普及す ると、政策に関する情報を持っているのは政府当局だけではない。事業 者の側にも、在野の研究者にもさまざまな政策情報が蓄積されている。 そうした中で政府が大胆な政策をとるのは難しい。各国の政策を相互に 参照しながら、理論武装し、妥当性を主張しながら政策を展開していく ことになる。 日本にとって難しいのは、モデルとなる政策事例が少なくなってきた ことだ。1990年代後半まで、日本の情報通信政策は、米国のAT&T分割 というテンプレートをいかに日本市場に適用するかで議論されてきた。 しかし、NTTの分割問題は一応の解決を示すとともに、インターネット という黒船もやってきた。政策をリセットしなくてはならなくなった。 ますます他国の政策を創造的にエミュレートする必要に迫られてきてい る。日本の情報通信政策は先端から先導へ変わってきているとe-Japan の評価専門調査会報告書は指摘している。「IT新改革戦略」は、ITを使っ た構造改革を促すテンプレートとして、各国に参照されるものになるの だろうか。 土屋大洋の「ネット・ポリティックス」 Back Number Column & Interview index COLUMN/INTERVIEW | WEB VOTER | Print / Text Only Version NEWS WATCHERS TALK | WEBMONKEY | BLOG TOP ABOUT SITEMAP POLICY HELP Produced by 2006 NTT Resonant Inc. under license from Wired Digital Inc. 06.11.21 4:58 PM 2/2
© Copyright 2024 Paperzz