平成 25 年 9 月 2 日幼稚園 vol.3 尾道市学校図書館支援センター 尾道市教育委員会 昔話絵本、どれも同じと思っていませんか? 「まただ、まただよ」と子どもたちが思わず声に出してしまうような昔話の繰り返しは、そういった幼い子どもの、もののわか り方や受け止め方にもぴったりのように思います。(中村柾子 著 「絵本の本」福音館書店より) 【同じ昔話で大量に出回る絵本たち】 例えば、イギリスの昔話「三びきのこぶた」ですが、尾道市立図書館の検索画面で「さんびきの こぶた」と入力すると、59 件もヒットします。中には DVD や紙芝居もありますが絵本だけでも 40 冊近く存在します。 「ももたろう」にいたっては 102 件のヒット数です。絵はもちろん様々で すが、注目すべき問題は内容そのものにあります。 【だれも食べられない三びきのこぶた】 イギリスで伝わっている「三びきのこぶた」は、1 番目と 2 番目のこぶたがおおかみに食べられ、 3 番目のこぶたは知恵を働かせておおかみから再三逃げることができ、最終的にはそのこぶたがお おかみを大なべでにて食べて「おしまい」になります。しかし、多くの絵本の内容は、1 番目、2 番目こぶたはおおかみに襲われるも、3 番目のこぶたの家に逃れ、おおかみはやけどを負った程度 で「2 度とこぶたたちの前にあらわれませんでした。 」で終わっています。一見、だれも命を落とさ ず平和的に見えますが、子ども達の心には、 「おおかみは生きている。またやってくるかもしれない。 」 という不安感が残り、 「おしまい」にはならないのです。いつまでたっても、こぶたたちはおおかみ が逆襲してくるのではないか、という恐怖に怯えながら生きていかなくてはいけないのです。 「昔話 ごときで大げさな…」と大人は思うでしょう。しかし、子ども達が最も信頼している大人(保護者 や先生たち)が読み聞かせてくれる絵本の時間は、子ども達にとって大事な育ちの時間の一部分で あり、大人たちが責任を負わなくてはいけない時間でもあります。 【大人の都合】 このように、内容を勝手に変更してしまったのは大人たちです。子ども達が望んだのではありま せん。読み手となる大人が、 「こぶたが食べられるなんてかわいそう。 」 「おおかみにも生きる権利が ある。」などと、昔話そのものを感情的思考で解釈し、大人の勝手な都合で捻じ曲げてしまっただけ です。昔話を絵本にする際、このように「食べられる」 「殺される」といった部分を「絵」でも表現 しないといけないという制約ができ、そのような場面を視覚的に子ども達に見せるのはいかがなも のか、と考えた挙句、話そのものを変更させてしまったのです。それでは、本来の昔話が持つ世界 観といったものが子ども達に届くはずもなく、口承文学・伝承文学としての役割を果たすことがで きません。 【気になる絵本は読まない】 以前、ある保育士の方から「『おおかみと七ひきのこやぎ』(絵ホフマン・訳瀬田貞二・福音館書 店)を読みたいのですが、どうも最後の『おおかみしんだ、おおかみしんだ』のところが気になっ て、読みにくくなるのです。」と相談を受けたことがあります。「それなら、あなたが気にならなく なるまで、読まない方がいいでしょう。他にもグリムの昔話はたくさんあるので、納得できる本を 選んで、読んであげてください。」とお答えしました。「これは、ちょっと…」と感じたら、読まな くていいのです。わだかまりなく読むことができる本を選べばいいのです。但し、捻じ曲げられた 昔話はさけるよう留意することが必要です。 子ども達が大好きなお話は何度でも繰り返し読みきかせてあげてください。 日本の昔話 かさじぞう 福音館書店 瀬田貞二再話/赤羽末吉画 6 人の地蔵さんが恩返しする話 くわずにょうぼう 福音館書店 稲田和子再話/赤羽末吉画 欲張り男の望んだ通り飯を食わない女房がやって来た。 こぶじいさま 福音館書店 だいくとおにろく 福音館書店 松居直再話/赤羽末吉画 松居直再話/赤羽末吉画 ひたいに大きなこぶのあるおじいさんがお堂に泊まっていると大 勢の鬼がやって来て…。 かにむかし 岩波書店 木下順二文/清水昆絵 ききみみずきん 岩波書店 川に橋を架けたい大工と鬼の会話が楽しい。 木下順二文/初山滋絵 ご存知「さるかに合戦」のお話 藤六が病気の母からもらった頭巾を被ると鳥や木の会話が聞こえて きました。 瀬田貞二再話/田島征三画 猿の顔が赤いのはおおかみと泥棒が雨漏りを怖がったから…と ふるやのもり 福音館書店 ずいとんさん 福音館書店 いっすんぼうし 福音館書店 石井桃子再話/秋野不矩絵 お椀の舟に箸の櫂。 したきりすずめ 福音館書店 石井桃子再話/赤羽末吉画 すずめのお宿のお話。 うらしまたろう 福音館書店 時田史郎再話/秋野不矩画 誰もが知っている昔話。 うまかたやまんば 福音館書店 やまなしもぎ 福音館書店 平野直再話/太田大八画 かちかちやま 福音館書店 小澤俊夫再話/赤羽末吉画 いう愉快なお話 日野十成再話/斉藤隆夫絵 ずいとんさんという小僧さんがお経をあげていると、どこからか 「ずーいとん」と呼ぶ声がする。 小澤俊夫再話/赤羽末吉画 山姥に追いかけられた馬方は馬まで食べられてしまいます。はら はらドキドキのお話。 病気の母の為山梨もぎに出かけた 3 人兄弟の話 うさぎと狸の息のむ対決。 外国の昔話 三びきのこぶた 福音館書店 イギリスの昔話 おだんごぱん 福音館書店 てぶくろ 福音館書店 三びきのやぎのがらがらどん 福音館書店 ノルウェーの昔話 おおかみと七ひきのこやぎ 福音館書店 グリムの昔話 お母さんヤギの留守の間に狼がやって来て子ヤギを食べてしまった スーホの白い馬 福音館書店 モンゴル民話 馬頭琴の由来。 ゆきむすめ 福音館書店 ロシアの民話 子のないおじいさんおばあさんの所へきれいな女の子がやってきた たなばた 福音館書店 中国に伝わる七夕説話を元にできた愛の物語 パンのかけらとちいさなあくま 福音館書店 リトアニア民話 王さまと九人のきょうだい ランパンパン ロシアの昔話 かまどから飛び出したおだんごぱんは、おじいさん、おばあさんからも、動 物たちからも逃げ出します。 ウクライナの昔話 おじいさんが落としていったてぶくろに、次々と動物たちが入ってきて、 てぶくろははじけそうになります。 岩波書店 中国の民話 評論社 インド民話 三匹のヤギとトロルの対決。 貧乏なきこりのパンを食べた悪魔がお詫びに沼を麦畑に変えた そっくりの兄弟たちが力を合わせて悪い王さまに立ち向かう 王さまに奪われた愛する奥さんを取り戻す為クロどりは王宮に向かう 問い合わせ方法 尾道市民センターむかいしま 子ども図書館「わくわく」内℡:0848−44−0114
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