クロック発振器の安定性 - Teledyne LeCroy

LeCroy Application Brief
No. LAB 1006
クロック発振器の安定性
クロック発振器の周波数安定性の計測
発振器は数多くの周波数 /周
期の不安定性を持っています。製
造メーカは発振器の性能を「ショ
ート・ターム」、
「ロング・ターム」
、
環境による周波数安定性の3 つ
に分けて規定しています。
環境に依存する安定性は、発振
器の出力周波数と位相に影響し
ます。動作温度、機械的な振動、
電源の変動、その他の環境変化で
す。図1はコールド・スタート時
のウォームアップ過程でのクロ
ック信号の安定性を計測した例
です。実際の発振器の出力信号が
一番上の波形(ch2 )に表示され
ています。一番下の波形(トレー
図1:クロック発振器の温度による安定性の計測
ス B )は、デバイス内部の平均
動作温度のトレンド・グラフです
(1mV = 1℃)。
スタートアップ時にはデバイ
ス内部の温度が 2,000 秒間に約
8 度 C 上昇しています。この期
間中に発振器の周期の変動は±
25ps でした。これは上から 3 番
目の波形(トレース C )
、すなは
ちタイム・インターバル・エラー
のジッタトラック波形のトレン
ド・グラフをスムージングした波
形から読み取れます。タイム・イ
ンターバル・エラーは理想的なク
ロック周期が一定サイクル経過
後に実際の信号でどのようにず
図2:クロック信号の1 ms 間の周期変動の解析例 (ロングターム・ジ
れたかを測定します。上から 4 番
ッタ測定)
目の波形(トレース A )は
“tie@lv” というパラメータのト
を見るとピークトゥピーク変動
レンド・グラフで、それをスムー
で±100 ps あまりの変動である
ジングした波形(トレース C )
ことがわかります。動作温度自体
と重ねて表示されています。これ
の影響は少ないことがわかりま
す。
LeCroy Application Brief
No. LAB 1006
図2の例にある「ロングター
ム・スタビリティ」では、クロッ
ク信号の発振タイミングに緩や
かなドリフトがあることがわか
ります。ロングターム・スタビリ
ティは一般的に「エージング」を
含みますが、環境に依存するドリ
フトは含まれません。水晶発振器
のエージングは電気的、機械的な
様々な要因で発生します。ロング
ターム・スタビリティは通常、
ppm の 単 位 で 表 さ れ ま す 。
10ppm とは、1ms 間にクロック
周期が 10ns だけずれることと
等価です。
△ t=1ms*(10/1,000,000) =10 ns
図3: 400MHz クロックの 1191 サイクル分のジッタ測定
「ショートターム・スタビリテ
ィ」は発振器内部のノイズに起因
多くの発振器の製造メーカが
です。 位相ノイズは狭帯域のス
し、出力波形の位相変調を表しま
ショートターム・スタビリティが
ペクトラム・アナライザ(電圧分
す。時間軸では、
「ジッタ」とし
測定時間長によって左右される
解能が 12-16 ビット)
、または特
て定義されています。この方法の
ことをなんとか解決しようとし
殊な位相ノイズ測定システムで
最大のデメリットは、測定するタ
ています。ひとつの方法は「アラ
測定されます。
イムウィンドウの大小によって
ン分散」を使うことです。アラン
結果が大きく左右されることで
分散は、隣接する周波数と基本周
レクロイの「ジッタ・タイミン
す。測定タイムウィンドウが長く
波数との誤差を使います。通常は、
グ解析」の最大のメリットは、ロ
なるほど、測定されたジッタのピ
周波数カウンタを使って発振器
ングタームとショートタームの
ークトゥピーク値が大きくなる
の出力周波数のばらつきを測定
測定が同じ測定器で可能である
の で す 。 図 3 に 400MHz の
します。
ことです。ロングメモリと
SMART トリガ機能により、ク
SAW 発振器のジッタ測定例 を
示します。周期の平均値は
ショートターム・スタビリティ
ロック信号と他の現象を同時に
2.4999ns です。また、ジッタの
は、周波数軸上でも位相ノイズと
捕捉することができます。ジッタ
rms 値は 7ps 、ジッタのピーク
して定義されます。位相ノイズは、
測定とジッタの発生原因の究明
トゥピーク値は 35ps です。.注
発振器出力の周波数スペクトル
が効率よく行えることも他に無
意すべき点は、この発振器の製造
の形状でわかります。 典型的な
いメリットです。例えば、動作温
メーカはジッタのピークトゥピ
位相ノイズは、キャリア周波数か
度や供給電圧の変動などです。
ーク値を 1,000 サイクル間でし
ら 10kHz オフセットをかけたと
か規定していないことです。
ころのノイズレベルが –100dBc