SDAシリーズ 3種類のジッタ計測方法について

アプリケーション・ブリーフ
LAB WM452 : SDAシリーズ 3種類のジッタ計測方法について
レクロイ社製シリアルデータアナ
ライザ(SDA シリーズ)は、信号に合
わせて 3 種類のジッタ計測方法が選
択できます。 このアプリケーション
ブリーフでは、3 種類の方法につい
てそれぞれのジッタ成分の特定方法
とどんな時にどの方法を使うべきか
を解説します。
SDA シリーズでジッタを計測するに
は、まず “Analysis” メニューか
ら “Serial data analysis configuration “ を選択します。する
と画面下部にシリアルデータ解析専
用のメニューが現れます。(あるい
は、オシロスコープのフロントパネ
ルにある“serial data” ボタンを
押しても同じメニューが現れます。)
メニューの左側にある四角いボタン
の “Jitter” を押すと、ジッタ解
析メニューのタブが現れま
す。”Jitter” タブを選択すれば、
メニューの “measurement” の下の
選択肢か
ら、”Conventional”、”Effective”
、”MJSQ”`の3つのジッタ計測法を
選択することができます。この中か
らひとつを選択するとオシロスコー
プは取り込んだ全てのデータからジ
ッタを計算し、結果をパラメータ計
測値としてグリッドの下側に表示し
ます。P1, P2,P3 のパラメータ計測
値表示がそれぞれ、トータル・ジッ
タ(Tj)、ランダム・ジッタ(Rj)、デ
タミニスティック・ジッタ(Dj)です。
オシロスコープが新しいトリガで波
形を捕捉するごとに、ジッタ計測値
が更新されます。これは、パラメー
タ計測機能をリセットした時から開
始した捕捉した全波形に含まれた全
てのサイクルに渡って計算された数
値です。
Tj の計算方法
3つのジッタ計測法は、レクロイ社
が特許を持つ “正規化 Q スケール法
“によって、どれも同じ方法でトー
図1.: シリアルデータ解析モードでのジッタ・タブメニュー。Conventional
法による Dj のブレークダウンが表示されています。また、画面中央の赤い
斜めの直線が Q スケール解析の結果を表します。
タル・ジッタを計算します。これは、
タイムインターバル・エラーの計測
値の統計的な解析によって出した数
値です。MJSQ 法にのっとりランダ
ム・ジッタとデタミニスティック・
ジッタの計測値は合計されます。オ
シロスコープは図.1 のように Q スケ
ール解析の結果を表示します。画面
中央のふたつの斜めの直線の傾きと
グリッドの最上部におけるこの二つ
の直線が離れた距離が Rj と Dj の
値を表すのです。 Rj は時々、残留
ジッタ (remaining ジッタ)解釈さ
れることがあります。また Dj と違っ
てランダムに発生するジッタ Rj は
ジッタの発生源と理解されているこ
とがあります(これは正しくありま
せん。)
Tj の値はビット・エラー・レートの
関数であることは、非常に大切なこ
とです。ビット・エラー率は “BER”
と表記されますが、これはビット・
エラー・レートを示すものではない
ので注意してください。それぞれの
3つの計測方法で、ユーザは BER
を選択することができます。SDA の
デフォルト設定は BER= 1 x 10-12
ですが、もし別の BER で計算したい
場合は変更することができます。
Tj ブレークダウンのアルゴリズム
ジッタ計測方法では Tj を Rj と Dj
に分離する方法が異なります。Tj、
Rj、Dj の計算方法はひとつではあり
ませんし、ジッタの計算を解説した
資料もありません。詳細を知りたい
方は文末の資料を参照してください。
MJSQ 法はファイバチャンネルの仕
様の一部です。MJSQ とは “Methodologies for Jitter and Signal
1
レクロイのウェブサイトには、この他にも無料でダウンロードできる最新技術資料があります。
→ ウェブサイトへジャンプ
Quality Specifications” の略です。
この方法はシリアルデータ伝送のジ
ッタ計測に広く使われるようになり
ました。MJSQ では、Dj はデュアル・
ディラック形状であり、ふたつのガ
ウス分布関数がビットエラーレート
が大きくなるに従って増加するとい
うモデルに基づいています。(詳細
は文末の資料を参照してください。)
SDA に搭載されている MJSQ ジッタ計
測法は、Rj,Dj を推定するための手
法です。ほとんどのエンジニアにと
っては、希望するビットエラーレー
ト(例えば 10-12など)のデータを
オシロスコープで一度に捕捉するこ
とは殆んど不可能です。これは現在
のオシロスコープのメモリ容量では
とても足らないからです。従って、
オシロスコープを使ったジッタ計測
値はあくまで計算によって予測され
た数値です。
MJSQ 法では Rj と Dj のジッタ分布
の数値補間により Tj を計算します。
Rj は、正規化された Q スケール解析
により求められたジッタのシグマ値
を平均化することにより決定されま
す。左右ふたつのガウス分布につい
てそれぞれひとつのジッタ計測値が
表示されます。図2では、左側と右
側のガウス分布について Rj のシグ
マ値はそれぞれ 1.28ps と 1.434ps
です。パラメータ計測値の表示フィ
ールドには P3 として両者の平均値
1.31ps が表示されています。
Dj の計測値は Q スケール解析では
斜めのふたつの直線上で Q=0 の位置
(画面の一番上の位置)での直線の
離れた距離がジッタ計測値に相当し
ます。図2で 23.48ps、画面上のふ
たつの直線の距離は 2.35div. です。
業界標準の計算法でジッタを計測
したいときにはMJSQ法をお勧め
します。
Effective 法はバスタブ曲線を解
析して Tj をブレークダウンします。
これはオシロスコープ以外の測定機
(例えば BERT など)を使って Rj と
Dj の値を計測する唯一の方法です。
これらの測定機では実際の波形を解
析することができないからです。レ
クロイ社の方法では設定した BER
2
図 2: MJSQ 解析 Dj ブレークダウンは MJSQ 法では選択できません。
(ビットエラー率)に応じてトータ
ルジッタ曲線を異なる幅でプロット
します。その結果 Rj と Di の値に直
接比例した傾きと間隔を持つ直線を
描きます。この方法では Rj と Dj の
測定値は、しばしば MJSQ 法で測定し
た値と同じようになります。.
Effective 法は、同じ計測法を採
用する BERT などの他の測定機での
ジッタ計測値をレクロイ社の SDA シ
リーズで計測した値と比較したい場
合に使います。
Conventional 法は、波形を詳細に
解析することによって最も正確に
Dj を計測することをねらっていま
す。レクロイ社のアルゴリズムによ
って、Pj(周期性ジッタ)、DCD(デ
ューティサイクル歪み)、DDj(デー
タ依存性ジッタ)を計測します。DJ
Breakdown
ボタンを押すと、パラメータ測定
値の表示エリアにこれらのジッタ成
分の測定値が表示され、それがどの
ようにトータルジッタに影響するか
を知ることができます。図1にシリ
ア ル デ ー タ ア ナ ラ イ ザ を
Conventional 法 に 設 定 し 、 DJ
Breakdown を ON にした状態を示し
ます。このモードでは、パラメータ
表示エリアの P4 から P6 にそれぞれ、
Pj、DCD、DDj が表示されます。
Conventional 法は、周期性ジッタ
とデータ依存性ジッタの原因に関す
る 新 た な 洞 察 を 提 供 し ま す 。 Pj
Breakdown タブを選択すると周波数
毎の Pj の詳細な計測値が一覧表に
表示されます(図3)。この情報を解
析することにより、システム上で何
が Pj をひきおこしているのかを突
き止めるヒントが得られます。
デ ー タ 依 存 性 ジ ッタ は 、
Synchronous N Cycle Plot 法と ISI
法(符号間干渉)の二つによって測
定することができます。ジッタ測定
に使える信号が繰り返しパターンで
ない場合には ISI 法をお使い下さい。
トータルジッタ計測値から Dj 計測
値を減算した値が Rj の値となりま
す。
指定した BER(ビットエラー率)
での Dj を最も正確に、かつ直接計測
したいときに Conventional 法をお
使い下さい。
参考文献:
ファイバーチャンネルに関する
MJSQ の資料:
http://www.t11.org/ftp/t11/pub/f
c/mjsq/04-101v5.pdf
トータルジッタを計測する方法の比
較資料(正確さや安定性など)
http://www.lecroy.com/tm/Library/WhitePapers/PDF/LeCroy_Jit
ter_Methods_DesignCon2007.pdf
Rj と Dj に関する6つの話 j
http://www.lecroy.com/tm/Library/WhitePapers/PDF/WP_TechBri
ef_Rj_and_Dj.pdf
SDA の原理と操作法
http://www.lecroy.com/tm/Library/WhitePapers/PDF/SDA_Theory.pdf
SDA 操作マニュアル l
http://www.lecroy.com/tm/library
/manuals/SDA/OperatorsManual/SDA-OM-E
_Rev_F.pdf
図 3: 周期性ジッタ(Pj)ブレイクダウン.
3
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