-------------------------------------------------------------------------------------------------■ さろん哲学|Mail News 2012/5/1|# 12 ■ (*Bccでお送りしています) これまで「さろん哲学」にお申込・ご参加された方にご案内しています。 ご案内不要の方はお手数ですがこのメールにそのままご返信ください。 -------------------------------------------------------------------------------------------------━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ --------------------------------------------------------------さ┃ろ┃ん┃哲┃学┃ ━┛━┛━┛━┛━┛ M┃a ┃i ┃ l┃ N┃e┃ w┃ s┃ ━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛ 2012.5.1 http://salon-tetsugaku.g.hatena.ne.jp/ (バックナンバーはHPからご覧いただけます) --------------------------------------------------------------━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 哲学カフェ及び関連イベント情報をお送りします。 みなさんの興味・関心の一助としていただくとともに、 今後ともさろん哲学を応援いただければ幸いです。 なお、このメールニュース掲載のコラムは運営者側の個人的な考えを表したものです。 会の、また哲学の専門領域における統一見解や事象を扱っているものではありません。 予めご了承ください。 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ┃―INDEX― ┃【1】議事録公開:4/15 さろん哲学 第20回「『桜を愛でる』とはどういうことか?」 ┃【2】予約受付中:5/26 さろん哲学 第21回「人間の器について考える」 ┃【3】予約受付中:5/10 朝さろん〈11〉〈現代世界の旅地図(2)〉 ┃【4】予約受付中:5/20 さろん工房 お題「磯野家と野比家が、共同生活する家」 ┃【5】特別企画のお知らせ ┃ ◎予約受付中:6/2-3【さろん哲学 presents 京都ツアー】 ┃ ◎ご 報 告: 4/7 【桜さろん2012 テーマ「春の喜び」】 ┃【6】コラム/エッセイ ┃ ◇『桜を愛でる』 ┃ ◇『スタイロンの〈モラリティ〉』 ┃ ◇『あるがままの異性』 ┃【7】関連イベント情報 ┃*編集後記 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ┏━━━━━━┓ ┃CONTENTS ──────────────────────────────────────── ┗━━━━━━┛ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【1】さろん哲学 第20回「『桜を愛でる』とはどういうことか?」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 第20回さろん哲学が「『桜を愛でる』とはどういうことか?」をテーマに開催されました。 日 時:2012年4月15日(日)15:00∼17:00 テーマ:「『桜を愛でる』とはどういうことか?」 進 行:堀越 場 所:アーキテクトカフェ青山 参加者:16名 HPに議事録を公開しています。 詳細はこちらをご覧ください。 http://kono-lamp.com/salontetsugaku/giji/salon_giji_20.pdf 以下、第20回の司会・堀越からのコメントです ▽日本人に親しみのある「桜」という具体的対象と「愛でる」という 複雑な感じ方を考え、議論しました。少しですが「愛でる」という 感じ方が透けて見えたような気がします。このメールをご覧になる 頃には、さつきやつつじが綺麗な季節を迎えていることでしょう。 これらの花々を眺めながらもう一度「愛でる」について考えてみて は如何でしょうか。 --------------------------------------------------------------━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【2】さろん哲学 第21回「人間の器について考える」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 第21回さろん哲学を「人間の器について考える」のお題で開催します。 日 時:2012年5月26日(土)15:00∼17:00 テーマ:「『桜を愛でる』とはどういうことか?」 進 行:野田 場 所:エコファームカフェ 632 定 員:16名程度 現在ご予約受付け中です。 詳細はこちらをご覧ください。 http://salon-tetsugaku.g.hatena.ne.jp/ 以下、第21回の司会・野田からのコメントです ▽「器が大きい」とはどういうことか、コンセンサスが ありそうでなさそうです。「器」という言葉を手がか りに、だんだん耳にしなくなりつつある「人間」につ いて考えます。 --------------------------------------------------------------━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【3】朝さろん〈11〉 テーマ:〈現代世界の旅地図(2)〉 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 朝さろんの11th morningを、池澤夏樹『花を運ぶ妹』で開催します。 「旅」をテーマにした、〈現代世界の旅地図〉の2回目です。 故郷を甘美に思う者はまだくちばしの黄色い未熟者である。 あらゆる場所を故郷と感じられる者は、 すでにかなりの力をたくわえた者である。 だが、全世界を異郷と思う者こそ、完璧な人間である 聖ヴィクトルのフーゴー 前回4月の朝さろんには11名というたくさんの方にご参加いただきました。 爽やかな朝の空気のなかで多彩な解釈を聞きながら、読みのわかれるポイ ントがとてもおもしろく、再読の誘惑にかられました。どうもありがとう ございました。 『スティル・ライフ』が「ぼく」という個人の「旅」についての物語だとしたら、 『花を運ぶ妹』は「わたし」と「おまえ」という二人の「旅」の物語です。 1人でする「旅」と2人でする「旅」。 その違いはどこにあるのでしょうか。 あるいは、ほんとうに2人で「旅」をすることができるのでしょうか。 日本を出て、フランス・パリ。そしてインドネシア・バリ島へーー。 今回もひとりひとりの意見に耳を傾けながら、一緒に読んでいきます。 読書に興味のある方、旅好きの方、ご参加をお待ちしています。 お気軽にお越しください。 みなさんと素敵な旅地図(トラヴェル・マップ)を描きたいと思います。 (なお、6月の第3金曜日に夜さろんを開催予定です) 日 時:2012年5月10日(木)6:50∼8:00頃 テーマ:〈現代世界の旅地図(2)〉 本 :池澤夏樹『花を運ぶ妹』(文春文庫) 場 所:渋谷駅近く(ご予約頂いた方にご連絡します) 定 員:8名程度(要予約) バリスタ(進行):芹澤 ご予約受付け中です。 詳細はこちらをご覧ください。 http://kono-lamp.com/asa-salon/ (《朝さろんの本棚》に池澤夏樹『スティル・ライフ』を公開しました) 【開催概要】 《朝さろん》原則、開催月の第2木曜日(但し1月は第3木曜日) 《夜さろん》原則、開催月の第3金曜日(但し12月は第2金曜日) --------------------------------------------------------------━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【4】さろん工房 お題:「磯野家と野比家が、共同生活する家」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ さろん工房、大絶賛稼動中です。 工房ではいつも何かしらのお題(レシピ)を用意しています。 みんなと一緒に、何かを作ってみたい方。 作ることを通じて、じっくりと考えてみたい方。 お申し込み・お問い合わせ、お待ちしております。 現在2つのお題で参加募集中です。 お 題:「磯野家と野比家が、共同生活する家」 ※まだまだ、ご予約受け付けてます! 日 時:5月20日(日)夕方から 場 所:未定(決まり次第、サイトに掲載します) ひと言:家を「開く」のか、「閉じる」のか お 題:「役割の服」 ※ご予約受け付けてます! 日 時:未定 場 所:未定 ひと言:「役割」をファッションに仕立て上げる さろん工房は、いつでも参加募集中です。 参加申し込みがあったお題から随時日時を決めて、催していきます。 予約後のキャンセルは可能です。 専門的な知識や技術は必要ありません。どなたでもご参加いただけます。 ご予約、お待ちしてます。 詳細はこちらをご覧ください。 http://kono-lamp.com/salonkoubou/ (4/22に開催した「編みゅにけーしょん」のレシピを公開しました) --------------------------------------------------------------━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【5】特別企画のお知らせ ◎予約受付中:6/2-3【さろん哲学 presents 京都ツアー】 ◎ご 報 告: 4/7 【桜さろん2012 テーマ「春の喜び」】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎予約受付中 【さろん哲学 presents 京都ツアー】 大好評で企画が進行中です。 旅行企画としては決して少なくない数の方から、 ご予約や相談のご連絡もいただいてますので随分愉しい旅になること請合いです。 哲学カフェだけでなく、 みんなで宿房に泊まって朝の勤行をしたり、 美味しい京料理を食べたり、 自由時間に散策や買い物をエンジョイしてもらったり。 開催時期はいよいよ来月! 第1週末(6/2,3の土日、1泊2日)です☆ 奮ってご参加ください。 京都ツアーにつきまして、 確定版のツアー・スケジュールや参加費、 そして最終的な参加のとりまとめをご案内する メールニュース「京都ツアー特別号」を発行します。 (既にご予約いただいている方にも別途ご連絡を差し上げます) ・特別号発行は《5月12日頃》の予定 ・参加の最終申込みは《5月19日頃》(特別号にてご案内) ・部分的に参加いただける場合は個別にご相談・対応しますのでご安心を♪ 気になっている方、このGW期間にぜひご検討ください☆ * いつもの都心を離れて、旅へ。 哲学カフェをしながら旅をする、 そんな試みがあったらおもしろいんじゃないか。 旅情に浸りながら行く先々の景勝を愛で、 旅先で会った人たちと交流し、 いま、ここ を再考するための場所を設け、 旅への/からの視線に思いを馳せる――。 1日目のカフェフィロさんとの協力による哲学カフェ、 また宿泊施設となる宿房(僧房)についてスタッフが鋭意調整してます。 京都在住のさろん哲学のスタッフとも強力に連携中。 みなさんお楽しみに♪ 参加希望の最終取りまとめは【5月中旬】くらいに行う予定です。 今後もメールニュースやHP等で随時ご案内をお送りしています。 ご興味のある方、プランのご希望・ご質問のある方、お気軽にご連絡ください♪ みなさまのご参加をお待ちしています! ☆予約受付中☆ ◎さろん哲学 presents 京都ツアー 日時:2012年6月2日(土)∼3日(日) 1泊2日 ※全行程、もしくは任意の一部行程へ自由に参加可能です♪ 費用:実費のみ(1万5千円程度?(交通費除く)) ※なるべく低予算で充実した内容を目指してます 企画内容:(一部は予定です) 【6/2日(土)】 ・カフェフィロさんとの協力企画による「京都・哲学カフェ」 ・その他、京都の哲学カフェ及び講演会等への参加(予) ・ワークショップや体験型企画への参加(予) ・懇親会 ・宿房(僧房)へ宿泊 ・哲学枕投げ(仮) 【6/3日(日)】 ・朝の勤行体験 ・自由時間 ・さろん哲学「例会」@京都 ・解散式(予) ・団体記念撮影 など ご質問・ご予約はこちらからどうぞ。 [email protected] ──────────────────────────────────────────────── ────────────────── ◎ご 報 告 【桜さろん2012 テーマ春の喜び】 4月7日(土)晴天 新宿御苑にて「桜さろん」を行いました。参加者は12名。 満開の桜の下、みんなでサンドイッチを作ったり、 お互いに出し物を披露し合って楽しみました。 来年はまた違った趣で、さろん的お花見をやってみようと思います。 ご参加いただいたみなさま、どうもありがとうございました。 桜さろん2012 日時:4月7日(土)12:00∼16:00 場所:新宿御苑内 会費:¥1500 ※こちらで軽食と飲み物を用意しています。 入場料:新宿御苑への入場料¥200を、別途ご負担ください。 --------------------------------------------------------------━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【6】コラム/エッセイ ▽【桜を愛でる】 堀越 睦 ▽【スタイロンの〈モラリティ〉】 芹澤 ▽【あるがままの異性】 志村 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▽【桜を愛でる】 堀越 睦 日本人は桜が好きである。今日私達が目にする桜の7∼8割はソメイヨシノというたった 一つの品種である。自家不和合性という、同じおしべとめしべの間では受粉できない性質 ゆえに、接木や挿木のみの方法により大量に複製(これをクローン(栄養繁殖)と呼ぶ) されてきたからだ。そのため、花の色も咲く時期もほとんど同じとなり、満開時に並木の 下に立つと、視界全てが花で満たされる感覚になる*1。この満開が年度の切り替わり時期 とも重なるため、別れや出会いの思い出とも結び付き易く、今日でも愛され続けているの かもしれない。桜さろん2012では、参加者のご協力のお蔭により「即興で描かれた油絵」 や「意表を突く言葉遊び」等の多彩な春の喜びがその場で表現され、大変愉しいひと時を 過ごせたと思う。そこで改めて「桜を愛でる」ということについて考えてみたい。 満開時の心地よさとは何か。桜に身を晒すことで、長い冬のストレスからの解放感を体感 できるからだろう。熊野宏昭教授は言う『運動した後に休むと気持ちがいいのはなぜか。 それは、ストレスを加えた後に、それを取り除くことによって脳の中のバランスを回復す る仕組みが働き、心身が「リラクセーション」状態になるからである。…私たちの心身を ゴムまりに例えると、そこに一方向から力が加わって生じたへこみが、ストレスがたまっ た状態に相当する。一方、脳の中には、身体と心を一定の状態に保つ視床下部と呼ばれる コントロールセンターがあり、ゴムまりが破裂しないように調節をしている。視床下部は 自律神経やホルモンの働きによって身体の働きを調節し、脳の他の部分と協調して、心の 働きも維持している。ストレスがたまると視床下部がフル回転をして、ゴムまりのへこみ を押し戻そうとするのであるが、そこでストレスの原因が取り除かれると、ゴムまりがす みずみまできれいに膨らんでリフレッシュされたリラクセーションの状態になる…』*2。 散り際に想う情趣はどうか。日本人の意識がハイカラな外装の影に深く無常観や「ものの あはれ」によって規定されていることは、既に多くの文学者や歴史家によって指摘されて きた*3。無常観や情趣は私達に古くから刷り込まれている感じ方なのであろう。徒然草は 言う『花はさかりに、月はくまなきをのみ見るものかは。雨に向かひて月を恋ひ、たれこ めて春のゆくへ知らぬも、なほあはれに情け深し。咲きぬべきほどの梢、散りしをれたる 庭などこそ見どころ多けれ。歌の詞書にも、「花見にまかれりけるに、はやく散り過ぎけ れば」とも、「さはる事ありてまからで」なども書けるは、「花を見て」といへるに劣れ ることかは。花の散り、月のかたぶくを慕ふならひはさることなれど、ことにかたくなな る人ぞ、「この枝、かの枝散りにけり。今は見どころなし」などは言ふめる』*4。花や月 は完全でみごとなものだけが見どころがあり、自然の情趣を表しているとは限らない。不 完全な、欠けたものにも、しみじみとした良さはあるというのだ。 他にも挙げるべき感情や考え方もあるだろうが、上述した2つのような全く異なる複数の 感情を同時に合わせ持つことが「桜を愛でる」という感じ方なのであろう。だからこそ、 愛でている際に 自己を俯瞰している ような、自己と一定の距離を感じることがあるの ではないか。一見すると相反している異質な感情や考え方を雑然と同居させたままに受け 入れるこの態度こそは、加藤周一が「雑種文化」と指摘し、丸山真男が「精神的雑居性」 と呼んだ「日本人の思想」*3なのではないか。日本人の中に雑然と同居し、ときに統合や 止揚される多様な感じ方や考え方を参加者個々人が持ち寄って俎上に乗せ、俯瞰し、考え 直すことができる場として「さろん」が機能できるなら、きっとそこには「哲学」がある はずと信じている。 *1) *2) *3) *4) 佐藤俊樹著:桜が創った「日本」 岩波新書 朝日新聞東京版:2011年4月5日夕刊 丸山真男著:日本の思想 岩波新書 吉田兼好著:徒然草「花はさかりに」(第137段) --------------------------------------------------------------────────────────────────────────────────── ▽【スタイロンの〈モラリティ〉】 芹澤 友人に写真好きがいるのでその影響もあってか自分も少しは写真に色気を出して好きな 写真家を半ダース程用意しとかなきゃダメかなぁなんて思っても特になにかを準備した りするわけではない、くらいの程度には写真好きなわたし。 それでもそういう 準備 を抜きにわたしにも好きな写真家というのがいるわけです。 ブルース・ウェーバー(Bruce WEBER)とヘルムート・ニュートン(Helmut NEWTON) の2人。まぁ、かなり有名な写真家だからこの名前を出したところでわたしの個性みたい なもんをアピールできるわけではないのだけど(そのつもりもない)。ブルースはファッ ション写真家として、ヘルムートはエロティシズム溢れる写真なんかで知られてると思い ます。そんなブルースの写真が鮮烈に刻み込まれたときの話。 彼の写真はそれまでにも(有名だから)雑誌なんかで目にしていたはずだが、その写真を 見た時にようやくまともに彼の名前を覚えた。写真は本の装丁に使われていた。 ウィリアム・スタイロン(William Stylon, 1925-2006)『タイドウォーターの朝 (A Tidewater Morning)』(1993)。アメリカの南部を生涯に渡って描き続けた作家の 短編集。写真はモノクロで3人の若い少(青)年と1匹の犬が川(湖?)に飛び込もうとして いる。 スタイロンの作品から受ける印象の1つであり、彼に言及する際にもっともよく指摘され ることが〈モラリティ〉、気高さと孤高さを持つ倫理感。そのスタイロン特有の〈モラリ ティ〉と、装丁の写真から喚起されるイメージがわたしにはすごく一致したしたものとし て感得された記憶がある。個人的な感想だから他の人も同じように感じるとは思わないけ ど、それでもブルースの写真それだけで なにか を感じ取るには充分だと思う。ブルース のことはよく知らないけど、スタイロンと同じく非常に独特の<モラリティ>を持ってい るんだろうと思う。 スタイロンの作品には、 ・『暗闇に横たわれ(Lie Down in Darkness)』(1951) ・『ナット・ターナーの告白(The Confessions of Nat Turner)』(1967) ・『見える暗闇 (Darkness Visible)』(1990) なんかがある。 とりわけ有名なのは映画化された『ソフィーの選択(Sophie's Choice)』(1979)だろ う(メリル・ストリープはこの作品(1982)でオスカー主演女優賞を獲得した)。ポーラ ンド出身でナチの収容所で非情な選択をした経験を持つソフィーが主人公。ホロコースト を生き延びた彼女はその後アメリカに渡り、彼女に好意を寄せる2人の男性との間で葛藤 する。ごく大雑把にいえばそんなあらすじなんだけど、この小説のなかにとても有名な一 節がある(いま手元にないからおぼろだが、だいたいこんな感じ)。 問:「教えてください。アウシュヴィッツにおいて、神よ、あなたはどこにいたのですか?」 答:「人間はどこにいたのだ」 このようなスタイロンの〈モラリティ〉の手触りは読む者に熟考を迫るし、安直な判断を 否定される気がするし、なにより凡そ 問題 とされるものについて個人の思考をふり絞っ て立ち向かうことを求めている(同時にそれは、何を"問題"として捉えるか、という点に 達している)。こういう知性/感性を備えた存在が同時代人としてあることの頼もしさと 意義について、日本の作家なんかもエセーのなどで語っている。スタイロンの〈モラリテ ィ〉を受けながら、それに親和するように自身の〈モラリティ〉について述べる形で。 そんなことのいろいろが、わたしにはブルース・ウェーバーという写真家と彼の写真とセ ットで記憶されている。こうしてブルースはわたしのなかで特別な写真家になった。 じゃあヘルムート・ニュートンは? というと、、、特に思い出すなにかがあるわけじゃないんです。 やっぱり彼の写真の独特で強烈なエロティシズムが全身にビビビっと来たのかなぁと思う けどよくわかんないです。 それでもこの2人は好きな写真家です。 --------------------------------------------------------------────────────────────────────────────────── ▽【あるがままの異性】 志村 素のまま、あるがままでいられない違和感とは、例えるなら、合コンのような場で感じる 違和感かもしれない。あらゆるスペックに意識を奪われ、あるがままの異性が見えない。 そのような情報飢餓に晒されると、若かりしわたしは深い虚無に落ちたものだ。 あした朝目覚めて、人類の総ての記憶が無くなって、誰が誰なのか分からなくなってしま ったら。それでも、「男・女」の形は揺るがない事実として、わたしを刺激してくれるこ とだろう。辺りを見回してみる。わたしと似ているけど、何かが違う異性を持つ存在に、 わたしはきっと惹きつけられることだろう。 今も昔も変わらないテーゼ、それは「わたしはいつ、いかにして異性を発見するのか」。 異性とは、わたしと異なること。異なると思えること。見つけようと自分の身辺をくまな く探しても見つからない。 視点を変えてみる、遠くを眺めてみる。変わりゆく雲の姿形。輝く山の頂き。色づく木々 の萌色。水面の揺らぎ。月の満ち欠け。結晶化された文化。感覚。わたしが何を考えよう と変わらない事実。異性という事実の感覚。 ふと見ればいつも近くにいる。あるがままに異性を放つ者たち。わたしと似ているようで、 何かが違う者。その存在をわたしはきっと、心底ありがたいと思うことだろう。 あなたはもう、異性を見つけましたか? --------------------------------------------------------------━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【7】関連イベント情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 哲学カフェ関連イベントやおもしろスポット、その他おすすめ情報などをご紹介します。 --------------------------------------------------------------【dialogue / symposium】 ▽大阪・京都文化講座『哲学・思想の宇宙をめぐる−大阪・京都の思索の系譜』 (2012年度立命館大阪プロムナードセミナー) 「京都の哲学者・西田幾多郎とギリシア哲学」日下部吉信 「賭けの思考 九鬼周造の偶然論を巡って」檜垣立哉 など 日 時:2012年5月8日より (全8回) 場 所:立命館大阪キャンパス 演習室2+多目的室 参加費:事前申込み http://www.ritsumei.jp/life-09/e09_10kyo.html ▽思想・哲学から探るファッション史∼スペクタクルな社会の文化変容 (文化服装学院 生涯学習ファッション・オープンカレッジ) 講師:板井広明(東京大学医学系研究科特任研究員) 日時:2012年5/10∼5/24日18:00∼20:30 (毎週木曜) 場所:文化服装学院 参加費:9500円 http://www.bunka-fc.ac.jp/opencol/index.html ▽書評カフェ『〈対話〉のない社会』 日 時:5月23日(水)19:00-20:30 場 所:青山アーキテクト・カフェ 参加費:2000円(ソフトドリンクビュッフェ付き) ゲスト:中島義道さん 本 :中島義道『〈対話〉のない社会』、PHP新書 進行役:寺田俊郎(カフェフィロ) http://www.cafephilo.jp/news/news_2.html#0523 ▽筑波大学公開講座「哲学カフェ」 美味しいコーヒーを飲みながら, 哲学者を交えてみんなでいろんなテーマについて自由に話そう! 日時:2012年5月27日(日)14時∼17時 場所:筑波大学共同利用棟 主催:筑波大学教育推進部社会連携課 講師:筑波大学人文社会系教員 定員:20名 http://www.tsukuba.ac.jp/community/extension/up_pdf/20120215133402.pdf ▽茶の湯で哲学する その13「綺麗さび」 各界からゲストをお招きしてお話を伺う空門サロン。 ご参加の皆様の交流の場です。 日時:5月14日(月)19時∼20時 (18時開場) 18時開場、講座開始までのひとときをご自由におくつろぎください。 19時∼19時40分 講義 19時40分∼20時 質疑応答 会費:2,500円(ウェルカムドリンク一杯付き 抹茶orビール) 会場:茶友倶楽部空門 東京都中央区日本橋3−8−16 ぶよおビル2F http://www.koomon.com/j_salon.html ▽第27回ビデオデータセッション 公開型のデータセッションですので、事前にご連絡いただければどなたでも参加できます。 みなさまのご参加、お待ちしております。 南保輔(成城大学)「パーティのリハーサルにおいてディレクタのしていること」 五十嵐素子(上越教育大学)「一斉授業における会話のやりとり」 日時:2012年5月12日(土) 場所:成城大学 参加費:無料 https://sites.google.com/site/akiya0427/seijo_data?pli=1 ▽第65回 美術史学会全国大会 日時:2012年5月18日 (金) ∼ 5月20日 (日) 会場:國學院大學 渋谷キャンパス 「ヘンリー・フュースリの詩的模倣論と人体造形」松下哲也(國學院大学) 「再出現の雪村筆《倣法常牧谿瀟湘八景図巻中軸》」吉田智美(同志社大学) 「大正期におけるレオナルド・ダ・ヴィンチの受容の一側面」冨田真理子(東京外国語大学) http://www2.kokugakuin.ac.jp/taikai65/index.html http://wwwsoc.nii.ac.jp/jahs2/c-zenkokutaikai/program-2012-5.html ▽クルミドの朝モヤ クルミと珈琲。 マージュ西国分寺を舞台に繰り広げられる、 こどものための大人の物語。 事前のご予約は必要ありませんので、 ぜひふらっと、お気軽にお訪ねいただけましたら幸いです。 日 時:概ね毎週日曜 9:00∼11:00 参加費:500円 (飲み物代) 申込み:事前予約不要 場 所:クルミドコーヒー(西国分寺) http://ameblo.jp/kurumed/entry-11214491122.html --------------------------------------------------------------【art / sound】 ▽『カントリーガール』(映画) 京都の高校生ハヤシは、自分の街の伝統に全く興味がない。 そればかりか同じ高校に通う仲間たちと、 外国人観光客から金を騙しとる毎日を送っているのだった。 そんなある日、伝統の世界に生きる見習い舞妓にハヤシが恋に落ちたのをきっかけに、 全てが少しずつうまくいかなくなってゆく…。 監督:小林達夫 脚本:渡辺あや 音楽:SuiseiNoboAz 出演:藤村聖子ほか 公開:2012年 http://www.eurospace.co.jp/detail.html?no=388 http://b.hatena.ne.jp/articles/201103/2108 ▽第1回 世田谷映像祭 2012 「世田谷映像祭」は映像作家によるアニメーションや映像作品の 上映会を気軽に楽しんでいただけるイベントです。 映像鑑賞の合間には食事や飲み物を楽しみながら、 DJやVJによって演出された会場でリラックスした時間をお過ごしください。 日時:5月13日(Sun)18:00∼23:00 料金:1,500円(1ドリンク込) 場所:STUDY(世田谷線・松陰神社前駅より 徒歩10秒) 住所:東京都世田谷区若林4-20-7 1F http://maginigh.tumblr.com/post/21830366001/2012-5-13-sun-18-00-23-00 ▽逗子海岸映画祭 逗子海岸映画祭、今年も開催!! 出演:竹中直人、細野晴臣、鶴田真由、他 主宰:CINEMA CARAVAN 4/28(土)∼5/6(日) 開場:11:00∼(15:00より有料 上映19:00∼) 入場料:一日/一般2,000円 高校生以下1.000円 19時以降/一般1,000円 高校生以下500円 小学生以下無料 http://cinema-amigo.secret.jp/movie/000152.html ▽Ritual Exchange 坂本美雨、U-zhaan、清水ひろたか、SOURなど 音楽フィールド以外でも様々なシーンで活躍する音楽家を迎え、 アートユニット「Overture」とのコラボレーションライブを開催します。 (アニメーション&ライブドローイング) 日時:5月8日(火) 開場 18:00 / 開演 19:00 料金:予約3000円 / 当日3500円(ドリンク別) 場所:六本木スーパーDX https://www.super-deluxe.com/room/217/ ▽SUPER MAMA 写真展 世界的に有名なフォトグラファー LESLIE KEE氏が手がけた写真展「SUPER MAMA」を、 ユニクロ銀座店12階フロア「GINZA SPECIAL」で4月24日から開催します。 写真展のタイトルは「SUPER MAMA」。 私たち全ての人間が、生まれて最初に感じる「母と子の絆」に着目しました。 日程:2012年4月24日(火)∼5月6日(日) 場所:ユニクロ銀座店 12階 「GINZA SPECIAL」 営業時間:11:00∼21:00 --------------------------------------------------------------【house / cafe】 ▽阿佐ヶ谷住宅 http://danchi100k.com/file0092/index.html イベントではないのですが・・・ 私ことスタッフ志村が住まう杉並区阿佐ヶ谷に、戦後10年、発足間もない住宅公団と 建築家、前川國男により設計された「阿佐ヶ谷住宅」という、 当時も今も「異界」を感じさせるユニークな集合住宅があります。 そこはプライベートでもパブリックでもない、微妙な境界で仕切られ、 草花もどこからともなくやってきて、勝手に住み着いてしまう 不思議で気持ちの良い空間となっています。 天気のいい日に、散歩にでもいらしてみてください。(スタッフ志村) ▽はら塾カフェ http://ameblo.jp/harajukucafe/ 原宿で開催しているカフェ感覚のやわらかな学びとつながりの場です。 様々な分野で活躍しているワークショップデザイナーがバリエーション豊富なコンテンツをお届けします ♪ 各メンバーについてはプロフィール欄をどうぞ! ▽国立本店 http://honten.chub.jp/ 「国立デザインセンター」が主催運営する「BOOK & CAFE」です。 「中央線デザイン倶楽部」のひとつの活動拠点であると同時に、 デザインに興味のあるすべての人と街に開かれた場所です。 「国立本店4代目店長」募集中。 --------------------------------------------------------------【Special Issue - That's what our LOVE is -】 ▽"love elevator" http://www.youtube.com/watch?v=8vfAxSKAnio ご存知タムくんの繊細で優しいタッチで描かれる、 どこまでもあたたかくて切ない、そしてやさしいショートムービー。 必見です。 Written, Directed and Edited by wisut ponnimit ▽"I'm Here - A love story in an absolut world- " http://www.youtube.com/watch?v=Qow5_R0ab7w http://www.imheremovie.com/ 「マルコヴィッチの穴」「かいじゅうたちのいるところ」でおなじみ、 スパイク・ジョーンズが2010年に発表した約30分の短編映画。 図書館でサポート業務に従事している主人公ロボット。 そのロボット同士の、痛いくらい切ないロマンスを描いて全世界を涙で濡らしたSFロマンス。 I'm Here(ココニイルヨ) の意味を想うとき、 まぎれもなくそこには暖かい血が流れていることでしょう。 ぜひフルでご覧いただきたい。 Written, Directed and Edited by Spike Jonze ▽"Love Sick" http://www.youtube.com/watch?v=JFDAvcwDPTA&feature=related 数多くのフィルムコンペでプライズを受けたショートフィルム。 ひと目惚れに運命を覚えた男が、全力で彼女を追いかける。 ひねりの効いた、ユーモラスな作品です。 Written, Directed and Edited by Kevin Lacy, Starring Josh Cameron, Tatum Langton, Heather Maughn, Kristina Reese, Tristan Phillips, Music Composed and Performed by Randin Graves ▽"What is love?" http://www.youtube.com/watch?v=Eak9Q6r4kvo&feature=fvwrel フランスのカートゥーン。 軽快なフレンチポップス∼シャンソンにのせて、 パリを舞台に展開するストーリー。 目まぐるしく絵が動き生き生きとした様子が伝わります。 ラストシーン、少ない描線で描かれたパリの街並は圧巻です。 Written, Directed and Edited by Louis Clichy --------------------------------------------------------------━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ┏┯━━━━━━━━━┓ 編 集 後 記 ┠────────────────────────────────┤ ┗┷━━━━━━━━━┛ ご機嫌いかがでしょうか。 メールニュース第12号をお届けします。 みなさんGWをいかがお過ごしですか。 自分は連休を利用していま台湾に来ています。 嘘です。連休の谷間の仕事組のひとりです。 ここ数日はすっかり暑くなりました。 きょう5月1日は八十八夜。 青葉は日に日に繁りを増してきていて、 夏の到来を目と肌で感じさせてくれます。 こんな時ひとは黙って、さとう宗幸を聴くんでしょうね。 さて。 来月はついに「京都ツアー」です。 12日頃にメールニュース特別号にてご案内を送りますので、 どうぞご覧ください。 きっとご満足いただけるとおもいます。 ご参加お待ちしています。 それでは次号でお会いしましょう。 (編集:芹澤) さろん哲学|Mail News 2012/5/1 次号(6月上旬発行予定) *Mail NewsのバックナンバーはHPからご覧いただけます。 ──────────────────────────────────────────────── ================== さろん哲学 ∼あたまのピクニック∼ ================== ◇さろん哲学にお知らせいただいたお名前・メールアドレスなどの個人情報は、 当方からのお知らせのためだけに使用いたします。 また、ご本人の同意なく、第三者に提供することはありません。 ◇「Mail News」の無断転載はご遠慮ください。転載を希望される場合はご連絡をお願いします。 バックナンバーはHPからご覧いただけます。 ◇ご意見・ご感想は…「Mail News」編集担当まで [email protected] ◇「さろん哲学」Webサイト http://salon-tetsugaku.g.hatena.ne.jp/ 「朝さろん」Webサイト http://kono-lamp.com/asa-salon/ 「さろん工房」Webサイト http://kono-lamp.com/salonkoubou/ ◇編集・発行:さろん哲学 "copyright (c) 2011−2012 さろん哲学. 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