投資情報 2015年 6月号

2015年6月5日発行(毎月1回発行)
投資情報
2015 年 6 月号
第 43 9 号
岡地証券調査情報室編
今月の株式市場の見通し..............................................(1)
マーケットアイ............................................................(2)
インバウンド消費関連
今月の参考銘柄..............................................(3)〜(4)
ブリヂストン
三越伊勢丹 HD 電通
トピックス......................................................(5)〜(6)
効率経営への意識高まる
岡地証券
審 査 済
2015年6月5日発行(毎月1回発行)
今月の株式市場見通し
今 月 の 株 式 市 場 の 見 通 し
時価総額はバブル期を上回る
東証 1 部の時価総額は先月、1989 年
末 に 記 録 し た 過 去 最 高 水 準(590 兆
9,087 億円)を抜いた。ただ株式市場は、
それで目標達成感が出たわけではない。
決算発表を機に外国人の日本株への評
価は一段と高まった観がある。足元で
は現物買いが増加しているとみられる。
これらは海外の年金筋が長期保有の目
的で買い入れ始めた可能性がある。東
証 1 部の平均PERは 17.3 倍で海外市
場 と 比 べ て 割 高 と い う こ と で は な い。
今期の企業の業績見通しが、やや慎重
だったことを考えると、期中に上方修
正してくる可能性は高い。そうなると
株価が上昇してもPERはさほど上昇
せず割高感は発生しないということも
ありうる。また為替も対ドルで 121 円
台 に 入 る な ど 円 安 傾 向 が 続 い て い る。
こうしたことも企業収益にはプラスで
ある。
米国株式も堅調
日 々、 発 表 さ れ て い る 経 済 指 標 は、
やや冴えないものが多い。しかし、こ
のため早期の利上げ観測が後退し、そ
の結果、株価の下振れリスクも縮小し
た。米国の企業業績も当初 1-3 月期は
減益と予想されていたが実際には小幅
の増益を確保した。ドル高による業績
の悪化をある程度、織り込んできたこ
とも株価の堅調さの一因である。欧州
でのギリシャ不安や中東での地政学リ
スクなど懸念材料がないわけではない
が株式市場の混乱につながるほどでも
(1)
ないようだ。基調としては金融相場が
続いており幅広い業種に亘って循環物
色が繰り返されそうだ。
押し目待ちに押し目無し
日経平均そのものは緩やかな上昇に
止まりそうだが、好決算と積極的な株主
還元を発表した企業の株価は押し目ら
しいものもなく上昇していくものが出
てきている。一方、過去最高益を更新し
ても今期見通しが事前の予想を下回っ
た銘柄は大きく下落したものも少なく
なかった。今月は、こうした銘柄も大き
く水準訂正してくるとみている。株主総
会のシーズンに入り、新たに自社株買い
などを発表する企業も出てきそうだ。そ
うした企業の株価は素直に買われ、予想
外の上昇に至るケースも出てこよう。
大相場への助走
日本経済はデフレ脱却を目前にして
きたとみている。外国人は、それを見込
んで日本株買いを加速させ始めたよう
だ。もちろん消費者物価が日銀の目標と
する 2%にすぐに届くということではな
いが、そこに行き着く道筋がついたとみ
てよいのではないか。アベノミクスの第
3 の矢である成長戦略も徐々に経済に効
果を与えてきている。日本経済、株式市
場は、これまで越えられなかった高いハ
ードルを越えつつあるのではないか。個
人投資家は、これまで株式の売り方の主
役だった。しかし、早晩、買い方に転じ
る日も近いのではないか。「貯蓄から投
資」への流れも見えてきそうだ。
2015年6月5日発行(毎月1回発行)
マーケ ットアイ
インバウンド 消 費 関 連
息の長い物色テーマに
4 月の訪日外客数は 176 万 4 千人と単月
としては 3 月の 152 万人を大きく上回っ
て過去最高となった。前年同月比でみる
と 43.3%増である。特に中国からの訪日
客が 40 万人超と対前年比で 2.1 倍と増
加した。昨年まで訪日外客数の月別動向
は季節要因などによって増減するケース
が普通だった。しかし今年に入ってから
は右肩上がりに増加している。増えたの
は中国、韓国からだけではなくタイ、ベ
トナム、米国、カナダ、英国、フランス
( 出所 日経新聞 )
なども単月としては過去最高を記録して
いる。一人当たりの消費額では中国人が
性ではなく今後も継続していきそうであ
17 万 6 千円と他を圧倒。「爆買い」と言
る。高島屋(8233)は買い上げ金額の高
われるように百貨店やドラッグストアで
い訪日客を対象に「VIP会員証」の発
まとめ買いする傾向に変化はない。一方、
行を始めた。来店時には通訳に加えて接
欧州からの観光客は宿泊施設を重視して
客専門の「コンシェルジュ」が買い物を
おり、高級ホテルやリゾート地のコンド
サポートする。他の小売店も様々なアイ
ミニアムに連泊しているという。日本の
デアを模索し、インバウンド消費の獲得
魅力は訪日客によって広く発信されてい
を目指している。今年の訪日客は年間で
るようであり、それが新たな旅行客を招
1,500 万人と予想されているが足元のペ
くという好循環も起きている。
ースでは、これを大きく上回る可能性が
高い。小売店では訪日客の来店が月を追
小売業の客単価は上昇
うごとに増加していきそうだ。小売業は、
内閣府が発表した 4 月の景気ウォッチ
これまで国内景気の動向によって収益が
ャー調査でも首都圏の百貨店ではインバ
左右されてきたが、これからは訪日客を
ウンド効果によって客単価が上昇してい
多く取り込むことによって月次売上高は
ることが示された。こうした動きは一過
対前年比でプラス基調が続きそうだ。
(2)
2015年6月5日発行(毎月1回発行)
参
5 1 0 8
考
銘
柄
ブリヂストン
資本金 1,263 億円(783 百万株)
業績動向
決算期
(単位:百万円)
売上高
2012/12 連 3,039,738
2013/12 連 3,568,091
2014/12 連 3,673,964
2015/12 連予 3,980,000
経常利益 当期利益
285,043
434,793
463,212
501,000
EPS
(円)
171,605
202,053
300,589
319,000
配 当
(円)
各種指標
219.3
32
株主資本比率
258.1
57
R
383.8
100
外人持株比率 31.6%
407.3
120
浮動株比率
O
52.4%
E 15.5%
3.9%
☆世界トップのタイヤメーカー
世界シェア 14.6%を持つ。2008 年以降、トップの座を仏ミシュランと争い続けている
が僅差でトップを維持している。なおタイヤは乗用車だけでなくトラック、バス、鉱山
車両、航空機用なども手掛けており、これらにおいても高いシェアを持っている。
☆多角化部門がやや低調
今期、第一四半期(1-3 月期)の決算をみると主力のタイヤ部門は増益を確保した。
国内販売は落ち込んだが米国、欧州、アジアでは対前年比でプラスとなった。とりわ
け中国での販売は大幅増加となった。一方、不振だったのが多角化部門。これにはス
ポーツ用品、自転車、自動車部品事業などが含まれている。第一Qの多角化部門の営
業利益は 68 億円と対前年比で 36 億円の減少となった。
☆中間決算に期待
4-6 月期に関しては、前年の収益が落ち込んでいるため、これとの比較になること
から大幅増益となる可能性が大である。8 月上旬頃と予想される中間決算発表時には
通期見通しに対する進捗率は 50%を超えてくるであろう。通期見通しが上方修正され
るかどうかは利益率の高い鉱山用タイヤの販売がどの程度、回復しているかがカギと
なる。
業種別指数・ゴム
(3)
2015年6月5日発行(毎月1回発行)
参
考
銘
柄
3099
三越伊勢丹HD
資本金 501 億円(394 百万株)
・業績動向
☆ 08 年 4 月の経営統合によって誕生
三越日本橋店と伊勢丹新宿店はともに
決算期 売上高
業界トップを争う旗艦店。近年、訪日外国
人客の来店が増加。前期の免税品売上高は
335 億円と前の期の約 2 倍に拡大。今期も
免税品売上げは好調に推移しそうだ。4 月
(単位:百万円)
経常
利益
EPS
配当
当期
利益 (円) (円)
13.3 連 1,236,333 34,217
14.3 連 1,321,512 38,440
25,292
64.1
10
21,166
53.7
11
15.3 連 1,272,130 34,563
29,886
75.7
11
16.3 連予 1,300,000 35,000
25,000
63.4
11
の月次売上高は前年同月比で 7.4%増だっ
た。商品別にみると雑貨が 60.1%増、家
電が 43.6%増と突出した伸びを見せてい
る。この伸びの大半が訪日客と想定され
る。今月は中元商戦が本格化する。国内の
個人消費も上向いており収益環境は明る
さを増している。
4324
資本金 746 億円(288 百万株)
電 通
・業績動向
☆広告業界のトップ
決算期 売上高
国内ではトップ、海外では第 5 位の売上
(単位:百万円)
経常
利益
げ規模を持つ。前期は情報通信関連、金融、 13.3 連 1,941,223 59,027
保険関連の広告出稿が好調だった。近年、 14.3 連 2,309,359 82,538
スマホ向け広告などデジタル領域でも売上 15.3 連 728,626 134,295
げを伸ばしている。グループ全体の売上高 15.12 連予 664,900 100,000
の約 3 割がデジタル領域で占められるよう
になった。また海外でもビジネスを展開。
前期で海外事業の売上げが全体の 50%に達
した。アジア向けの広告ビジネスが拡大し
てきている。今後の中期成長のカギとなる
のはグローバルとデジタルということにな
る。今期は 8 月の世界陸上に関連した広告
出稿が収益に寄与しそう。
(4)
EPS
配当
当期
利益 (円) (円)
36,336
145.8
32
38,800
140.9
33
79,846
276.9
55
63,500
220.2
70
2015年6月5日発行(毎月1回発行)
ト
ピ
ッ
ク
ス
効率経営への意 識 高 ま る
積極化する株主還元
億円を上限とした自社株買いを実施す
上場企業の 2015 年の配当総額は前年
る。ファナック、青山商事が上場企業の
度に比べ 6%増の約 10 兆 3 千億円が見
平均である配当性向を大幅に上回る還元
込まれている。これは最終利益との割合
を実施できるのは潤沢な資金を確保でき
でみる配当性向は約 3 割に達することに
ていることが背景である。ファナックの
なる。これに自社株買いを加えた総還元
場合、3 月末時点の手元資金は 9,912 億
性向は 4 割強となりそうだ。企業が株主
円に積み上がっている。これに長期の運
還元に積極的となった理由は複数あるよ
用資金を足した剰余金は 1 兆 4 千億円と
うだが、その一つに企業統括指針(コー
なる。今後も業績が増益基調を続けてい
ポレートガバナンス・コード)の導入が
くとすれば配当性向を 8 割に引き上げた
ある。これは政府の成長戦略の一環であ
としてもキャッシュは増え続けていく。
り上場企業は社外取締役の起用だけでな
青山商事でも 3 年程度であれば期間利益
く株主の意見を取り入れた経営を求めら
を全て株主に還元しても財務面で問題が
れる。上場企業はこの指針に従わなけれ
生じることはないはずである。実は上場
ばならない。株主との対話を重視しなれ
企業の約半数が実質無借金であり、手元
ばならないのも必然である。ファナック
資金は約 100 兆円規模に膨らんでいる。
(6954)は配当性向を、これまでの 3 割
つまり今期、上場企業の配当が 10 兆円
から 6 割に高めると発表。自社株買いと
に乗せたとしても、その金額は手元資金
合わせた総還元性向を 5 年平均で最大 8
の 1 割に過ぎないのである。
割 と す る と ア ナ ウ ン ス し た。 同 社 の
2015 年 3 月期の 1 株当たり配当は 636
日米の比較
円 62 銭 と、 そ の 前 の 期 の 170 円 06 銭
米国企業前期の総還元性向は約 8 割と
から 3.7 倍に増加した。青山商事(8219)
推計されている。配当性向では差はほと
は今年 1 月に発表した中期経営計画の中
んどないが米国企業の自社株買いのレベル
で今後 3 年間、総還元性向を 130%にす
は日本を大きく上回っているのである。
る方針を明らかにした。同社の今期配当
このことが日米企業のROEの差につな
は前期比 80 円増配の 155 円見込みであ
がっている部分もある。日本企業の平均
る。配当性向は 75%になる。加えて 20
ROEは約 8%であるが米国は、その 2 倍
(5)
2015年6月5日発行(毎月1回発行)
ト
ピ
ッ
ク
ス
近いと言われている。近年、ROEの数
値を経営目標に掲げる企業が増えてき
たが、それでも全体の 3 割程度に過ぎ
ない。自社株買いは株主還元の一策であ
ると同時にROEを高める有効な手段
でもある。いずれにしても日本企業はあ
り余る資金をどのように活用して成長
戦略につなげていくのか、そしてどうい
ったタイミングで、その果実を株主に分
配していくのかである。一見、成長分野
への投資と自社株買いを同時に行うこ
( 出所 日経新聞 )
とは矛盾した行動のようにみえるが経
営目標にROEが入っていれば整合的
高いマーケットシェアを持っていたと
ということになる。
しても、それが企業の将来を保証するも
のではない。ファナックは経営目標にR
変わる優良企業の条件
OEを掲げていない。目標としているの
かつてであれば無借金経営で、安定配
は利益の額である。手元資金は将来の
当、業界トップの企業規模といったこと
M&Aに備えたものという。日本企業は
が条件だった。現在は株主との対話を重
これまでにない株主還元と成長戦略の
視して高いROEと積極的な株主還元
二兎を追う経営に移行しようとしてい
を実現すること、さらには時代の流れの
る。こうした企業の行動こそがアベノミ
一歩、先を読んで動く意思決定の速さを
クスと称される経済政策の第 3 の矢な
持っていることなどが挙げられる。ほん
のかもしれない。日本の潜在成長力はG
の数年前まで、液晶テレビで一時代を築
DPで年率換算 0.5%程度と言われてい
いたシャープが今や存亡の危機に直面
る。この潜在成長力を引き上げなければ
している。富士フイルムは本業の写真フ
単に物価が上昇しただけでは真のデフ
ィルム事業が消滅していく過程の中で
レ脱却とは言えない。企業の成長戦略と
多角化に成功し今でも高収益企業に止
日本の潜在成長力が結びつくかどうか
まっている。仮に現在、二桁のROEと
がカギである。
(6)
投資情報第439号 2
2015年6月5日発行(毎月1回発行)
015年6月5日発行(毎月1回発行)
編集人・森 裕恭 発行所・岡地証券株式会社(名古屋市中区栄3-7-26)電 話 052
(261)
6111
当社ホームページ http://www.okachi-sec.co.jp/
【取引に係る諸経費等】
○国内の金融商品取引所に上場されている株券の売買を行うにあたっては、約定代金
に対して最大 1.2420%(ただし、最低 2,700 円)の委託手数料(消費税込)が必要
となります。
○外国金融商品市場等における外国株券の委託取引では約定代金に対して最大
1.2420%(ただし、最低 2,700 円)の国内取次手数料(消費税込)と現地委託手数
料等(当該諸費用は、その時々の市場状況、現地情勢等に応じて決定されますので、
その金額等をあらかじめ記載することはできません。)が必要となります。
○外国金融商品市場等に上場している外国株券の国内店頭取引については、お客様に
提示する売買仕切価格に手数料相当額が含まれている為、別途手数料を頂戴するこ
とはありません。売買仕切価格は、前日の取引所価格などを基準に合理的かつ適正
な方法で算出した社内基準価格を仲値として、仲値と売買仕切価格との差がそれぞ
れ 2.50%(手数料相当額)となるように設定したものです。
○外国株券の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際の為替レートは、外国為替市
場の動向をふまえて当社が決定した為替レートによるものとします。
○株券の売買を行うにあたっては、株価の変動による損失が生じるおそれがあります。
○外国株券等の取引では、為替レートの変動によるリスクがあります。
○信用取引を行うにあたっては、売買代金の 30%以上で、かつ 100 万円以上の委託
保証金が事前に必要です。信用取引は、小額の委託保証金で多額の取引を行うこと
ができることから、損失の額が差し入れた委託保証金を上回るおそれがあります。
○お取引にあたっては、「契約締結前交付書面」をよくお読みください。
○外国金融商品市場等に上場している外国株券等の取引に当たっては、「外国株券等
の取引に関する重要事項」ならびに「外国株券等の国内店頭取引について」をよく
お読みください。
商 号: 岡地証券株式会社
第一種金融商品取引業者
東海財務局長(金商)第5号
加 入 協 会: 日本証券業協会
指定紛争解決機関: 特定非営利活動法人
証券・金融商品あっせん相談センター
この資料は岡地証券調査情報室が各種のデータにもとづき参考までに作成したものです。
ご投資にあたってはご検討のうえ投資家ご自身でご判断ねがいます。