2016年4月5日発行(毎月1回発行) 投資情報 2016 年4月号 第 449 号 岡地証券調査情報室編 今月の株式市場の見通し..............................................(1) マーケットアイ............................................................(2) 資源国の株価が上昇 今月の参考銘柄..............................................(3)〜(4) セブン&アイHD 物語コーポレーション セコム トピックス......................................................(5)〜(6) 消費増税の有無と株式市場 岡地証券 審 査 済 2016年4月5日発行(毎月1回発行) 今月の株式市場見通し 今 月 の 株 式 市 場 の 見 通 し 世界の株式市場に過熱感 内企業の見通しにも直結してくる部分も 欧米、アジアの主要な株式市場のテク ある。具体的にはキャタピラーの収益動 ニカル指標をみると、多くが警戒シグナ 向はコマツや日立建機の収益見通しに重 ルを発している。騰落レシオ 25 日移動 なってくる。 平均は通常、120%を超えると相場が過 熱していることを示す。米国でもS&P カギを握る為替相場 500 銘柄で算出したものが 146%、ナス 今月上旬に関しては国内企業が海外の ダック 100 銘柄では 135%に達している。 現地法人から受け取った配当金などを円 ドイツ、フランスでも 130%を超えてい に替えるケースが多いため円高に振れや るほか、アジアでは韓国、台湾が 130% すいと言われる。しかし中旬以降は反動 を 超 え て い る。 因 み に 東 証 1 部 で は で円安に向かうと予想している。特に下 125%である。世界の株価は大半が 2 月 旬は 27 日~ 28 日に日銀の金融政策決定 10 日前後を起点に約 1 カ月半、上昇し 会合が予定されていることから、これを てきた。NYダウでは 3 月 11 日~ 21 日 意識した動きも出てこよう。今月も為替 まで 7 連騰を記録するなど急ピッチな上 は上下に大きく変動する場面も想定され 昇も目立っていた。今月はテクニカル面 る。 円 は 対 ド ル で 110 円 ~ 115 円 の レ での過熱を冷やす時間帯に入ってくると ンジを予想している。為替の動きによっ みている。 て物色動向も大きく変化するであろう。 今月前半は建設、小売りを中心とした内 第一四半期決算がポイント 需関連に矛先が向かうであろうが、月後 今月中旬から米企業の 1-3 月期の決算 半は輸出関連が出直ってくる可能性もあ 発表がスタートする。IBM、キャタピ る。日経平均の変動幅は再び大きくなっ ラー、マイクロソフトなどの決算と今後 てくるとみている。ボックス圏の動きで の見通しは世界全体の景気実勢を占う試 あっても、売り買いのチャンスは頻繁に 金石になりそうだ。また主要企業の決算 訪れるであろう。投資スタンスは引き続 動向はFRBの利上げ判断の材料となる き逆張りを継続していくべきであろう。 可能性もある。FOMCは 4 月 26 日~ 今月は財政出動や消費増税をめぐる論議 27 日に開催される。すでに一部で利上 など景気テコ入れに絡んで様々な話題が げの可能性が取り沙汰されている。経済 出てくると思われる。それによって翻弄 指標の改善と企業収益見通しの上向きと されることもありそうだが、そうした局 両方が揃うようだと、その可能性も否定 面をどう捉えて成果につなげるかが株式 できない。また米企業の業績見通しは国 投資の醍醐味であろう。 (1) 2016年4月5日発行(毎月1回発行) マーケ ットアイ 資源国の 株 価 が 上 昇 ブラジル、ロシア経済は不調 ブラジル・ボベスパ指数 昨年の全世界におけるGDP成長率は +3.1%であった。内訳は先進国が +1.9%、 新興国が +4.0%であった。ただ新興国の中 でもブラジルは -3.8%、ロシアは -3.7%と ともにブレーキであった。また今年の成長 率についてもブラジルは -3.5%、ロシアは -1.0%と予測されている。この両国の経済 は資源価格の下落によって深刻な不況に陥 っているのである。特にブラジルは 1930 年代の世界大不況以来の 2 年連続マイナス 成長となる見込みである。かつて世界経済 を先進国に代わって牽引すると予想された ブラジル、ロシア、インド、中国は、それ ( 出所 QUICK) ぞれの頭文字をとってBRICsと呼ばれ ていた。しかし高成長を維持しているのは 環境に明るい兆しは見えない。しかし株価 インドだけとなっている。インドのGDP の上昇は、すでに何かを読み取っているは は昨年が +7.3%、今年は +7.5%と予測され ずである。ブラジルの場合は現大統領のル ている。 セフ氏の弾劾の審議が始まっている。政権 交代が近いことが経済状況の改善につなが 株価は年初来高値に るとみているのかもしれない。またブラジ ブラジルのボベスパ指数は年初 4 万 ルもロシアも資源国であることから、資源 2,141 ポイントだった。それが直近では 5 価格の底打ちを見たとの判断も株価上昇の 万 1,171 と 21%も上昇している。ロシア 一因とも思える。昨年は新興国バブルが崩 のRTS指数も年初から 18%の上昇であ 壊したとも言われたわけだが、意外にも立 る。逆に最も経済が好調なインドのセンセ ち直りの早い株式市場が、どういったメッ ックス指数は年初の水準に届いていない。 セージを送っているのか意味深長のように この違いは、どこに起因するのかである。 みえる。両国の株価の動向が年後半の世界 相場格言には「強気相場は総悲観の中に生 経済の先行きを暗示している可能性もあ まれる」とある。ブラジル、ロシアの経済 る。 (2) 2016年4月5日発行(毎月1回発行) 参 3 3 8 2 考 銘 柄 セブン&アイHD 資本金 500 億円(884 百万株) 業績動向 (単位:百万円) 決算期 売上高 2013/2 連 4,991,642 2014/2 連 2015/2 連 5,631,820 6,038,948 2016/2 連予 6,150,000 経常利益 当期利益 295,836 339,083 341,484 362,000 EPS (円) 138,064 175,691 172,979 183,000 配 当 (円) 各種指標 156.3 64 株主資本比率 198.8 68 R 195.7 73 外人持株比率 36.7% 207.0 85 浮動株比率 O E 43.2% 7.8% 3.4% ☆セブンイレブンを中核とする流通コングロマリット 国内の小売業としては売上高でイオンに次いで第 2 位である。前期第 3 四半期(2015 年 3 月~ 11 月)までの累計で連結営業利益は 2,610 億円であった。内訳はコンビニが 2,357 億円、金融関連事業が 376 億円、スーパー事業が 4 億円などとなっている。百貨店、 通販事業は赤字だった。 ☆国内店舗は 2 万店に セブンイレブンの国内店舗数は昨年 11 月末時点で 1 万 8,242 店と対前年同期比で 751 店舗増となった。既存店売上高は 2012 年 8 月以来、今年 2 月まで 43 カ月連続プ ラスとなった。1 日当たりの売上げ(平均日販)は推定で約 70 万円である。セブンイ レブンの店舗数は今期も増加していく。今期末までに 2 万店に達する可能性がある。 ☆新たな成長戦略 昨年 11 月より新たな戦略、オムニチャネル「オムニセブン」をスタートさせた。 これはグループ全体の成長戦略としてリアル店舗とネットの融合を目指したものであ る。ネットで注文した商品をセブンイレブンで引渡し、さらについでの買いを誘うと いうものである。その一方で不採算のスーパー事業や百貨店は閉鎖していく。ただ百 貨店、スーパー事業についても「オムニセブン」との相乗効果を狙っており、構造改 革と成長戦略は同時に進行していく。 業種別指数・小売 (3) 2016年4月5日発行(毎月1回発行) 参 考 銘 柄 3097 物語コーポレーション 資本金 27 億円(599 万株) ・業績動向 ☆中 部 地 盤 の外 食 チ ェ ー ン (単位:百万円) 愛 知 県 豊 橋 市 が 発 祥 の 外 食 チ ェ ー ン。 決算期 売上高 経常 利益 焼肉、ラーメン、お好み焼きを中心に国 13.6 単 22,578 1,998 内直営店は 181 店舗、FC店が 168 店舗 14.6 単 26,846 2,099 となっている。売上高の 5 割強が焼肉部 門である。中でも食べ放題コースがある 「焼肉きんぐ」が店舗数で圧倒的で、かつ EPS 配当 当期 利益 (円) (円) 1,081 218.1 27 1,189 215.3 35 15.6 連 33,432 2,407 1,257 209.9 53 16.6 連予 38,786 2,950 1,436 239.6 55 収益の牽引役である。今年 1 月、2 月の月 次売上げ動向を見ると既存店ベースで対 前 年 比 +1.4 %、 全 店 ベ ー ス で +15.9 % と なっている。なお 2 月には新業態として ホルモン専門店を東京・日本橋にオープ ンしている。すでに店舗展開は北海道か ら沖縄まで拡大している。 9735 資本金 663 億円(218 百万株) セコム ・業績動向 ☆サービスは高度化 (単位:百万円) 経常 利益 EPS 配当 当期 利益 (円) (円) 収益を牽引したのは企業向けの警備サー 決算期 売上高 ビスである。監視カメラシステムやICカ 13.3 連 765,635 113,618 63,658 291.7 105 14.3 連 822,228 126,677 69,876 320.1 115 15.3 連 840,722 136,688 75,392 345.4 125 16.3 連予 866,000 131,000 80,200 367.5 135 ードを利用した入退室チェックシステムな どが好調だった。近年、同社の事業も人の 目や迅速な対応が中心となっていた時代か らセンサーやネットを活用した機械化が進 展している。これによってサービスの高度 化と人件費の削減を両立させている。今年 に入って顧客施設に侵入した不審なドロー ンを早期に発見し、早期対応を支援する「セ コム・ドローン検知システム」の販売を開始。 公共施設や企業の研究所などでニーズがあ りそうだ。 (4) 2016年4月5日発行(毎月1回発行) ト ピ ッ ク ス 消費増税の有無 と 株 式 市 場 三党合意から、やがて 4 年 ものとして世界経済の大幅な収縮と説明 消費税の引き上げを柱とした社会保障 した。 と税の一体改革は、2012 年 8 月、当時 の野田内閣が成立させた。法案成立に向 伊勢志摩サミット前に決断か けて同年 3 月から民主党、自民党、公明 5 月 26 日~ 27 日に開かれるサミット 党の 3 党が修正協議を行い、その合意の での主要議題は政治・外交から環境問題 結果として可決成立させたものである。 まで多岐に亘る。しかしメインとなるの 法案には 2014 年 4 月に消費税を 5%か は世界経済である。議長国である日本が ら 8 % に、2015 年 10 月 に は 8 % か ら 自国の経済政策について明確な方向を示 10%に引き上げることが定められてい すことは不可欠であろう。先月 16 日に た。しかし引き上げについては「景気弾 初会合となった「国際金融経済分析会合 力条項」によって経済環境が悪化した場 (座長、石原大臣)」ではサミット前まで 合は見送りを判断してもよいことになっ に一つの結論を出してくると思われる。 て い た。2014 年 11 月、 安 倍 首 相 は この会合においても足元の経済指標や株 2015 年 10 月に予定していた消費税の引 式市場の動向なども吟味されるものと思 き上げの延期を国民に求め衆議院の解散 われる。会合は 5 回以上、行われる予定 と総選挙の実施を表明した。2014 年 4 である。サミット前までの重要なタイム 月に消費増税を行った結果、景気が予想 スケジュールとしては、4 月 27 日~ 28 外に落ち込んだことが主因だった。実質 日の日銀金融政策決定会合、5 月 18 日 GDPの推移を暦年ベースでみると の国内 1 ~ 3 月期GDP速報値がある。 2014 年は 0%に止まった。安部首相は 特にポイントになるのはGDPの発表で 解散表明会見において、「2017 年 4 月の あ る。 昨 年 10-12 月 期 が 年 率 換 算 で 引き上げについては景気判断条項を付す -1.1%となったわけだが、仮に 1-3 月期 ことなく確実に実行する」と明言した。 もマイナスということになると国内景気 つまり法案から景気判断条項を削除した は失速する可能性が高まってくる。また のである。首相は自ら退路を断って、日 1-3 月期の数値を踏まえて 4-6 月期の見 銀ととともに景気浮揚に全力を注いでき 通しもマイナスともなると、政府は増税 たわけだが、2015 年のGDP成長率も を先送りするだけに止まらず早急に大型 +0.4%と目標の 2%超には届かなかった。 の景気対策を打つ必要に迫られるであろ 首相の最近の国会答弁では「リーマン・ う。もちろん逆に 1-3 月期のGDPがプ ショックや大震災のような重大な事態が ラスと出れば、消費増税が決定される可 発生しない限り、確実に実施する」とし 能性が高くなる。GDP以外では 4 月の ている。この中で重大な事態に含まれる 日銀金融政策決定会合における政策と黒 (5) 2016年4月5日発行(毎月1回発行) ト 田総裁の景気認識も安倍首相の判断に大 ピ ッ ク ス 注目のタイムスケジュール きな影響を与えそうだ。なお可能性とし ては低いであろうが増税の有無の判断が サミットの後ということもないとは言い 切れない。 株式市場の反応は 増税が見送られた場合、株式市場はこ れを好感して大幅高する可能性は十分あ る。安倍首相は前回の衆院選と同様にア ベノミクスの継続について国民に審判を 委ねる形で、7 月に衆参同日選挙を行う ことも想定される。ただ増税が見送られ るということは先行きの景気が下向きで あることを認めたかたちとなるため、企 ( 出所 日経新聞 ) 業をはじめ消費者のマインドにも少なか らずマイナス影響を与えそうだ。増税の が発生する。企業はこれに備え 10-12 月 見送りは景気拡大と財政改革の二兎を追 期には在庫の積み増しに動く。つまり増 う政策は頓挫したことになる。このこと 税が決まると生産活動は活発化してくる からアベノミクスの成長戦略そのものの のである。株価も緩やかに水準訂正に向 見直しを求める声も強まりそうだ。財政 かうと予想される。5 月を境に政治、経 再建を棚上げにすることは出来ない以 済、株式市場の景色は大きく変わるであ 上、景気を早期に立ち直らせ 2018 年 4 ろう。増税が決断されたほうがよいのか、 月には引き上げが可能な経済環境を整え それとも今は先送りしたほうがよいのか なければならない。現在と 1 年後と景気 は、ある程度、時間が経過してみないと の実勢はどう変化しているであろうか。 結論は出ないかもしれない。いずれにし 安倍政権は選挙の結果如何に係らず剣が ても政府が基礎的財政収支(プライマリ 峰に立たされるであろう。 ーバランス)の均衡化を目指す以上、さ 次に増税を決断した場合はどうか。株価 らなる増税が続くことになる。景気拡大 は短期的には大きく下落しそうだ。しか を優先するのか、財政再建を優先するの し景気の見通しは不透明感が薄れてくる かといった命題は安倍政権だけが抱える であろう。来年 1-3 月期においては住宅 問題ではないのである。 や自動車、家電購入などの駆け込み需要 (6) 投資情報第449号 2 2016年4月5日発行(毎月1回発行) 016年4月5日発行(毎月1回発行) 編集人・森 裕恭 発行所・岡地証券株式会社(名古屋市中区栄3-7-26)電 話 052 (261) 6111 当社ホームページ http://www.okachi-sec.co.jp/ 【取引に係る諸経費等】 ○国内の金融商品取引所に上場されている株券の売買を行うにあたっては、約定代金 に対して最大 1.2420%(ただし、最低 2,700 円)の委託手数料(消費税込)が必要 となります。 ○外国金融商品市場等における外国株券の委託取引では約定代金に対して最大 1.2420%(ただし、最低 2,700 円)の国内取次手数料(消費税込)と現地委託手数 料等(当該諸費用は、その時々の市場状況、現地情勢等に応じて決定されますので、 その金額等をあらかじめ記載することはできません。)が必要となります。 ○外国金融商品市場等に上場している外国株券の国内店頭取引については、お客様に 提示する売買仕切価格に手数料相当額が含まれている為、別途手数料を頂戴するこ とはありません。売買仕切価格は、前日の取引所価格などを基準に合理的かつ適正 な方法で算出した社内基準価格を仲値として、仲値と売買仕切価格との差がそれぞ れ 2.50%(手数料相当額)となるように設定したものです。 ○外国株券の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際の為替レートは、外国為替市 場の動向をふまえて当社が決定した為替レートによるものとします。 ○株券の売買を行うにあたっては、株価の変動による損失が生じるおそれがあります。 ○外国株券等の取引では、為替レートの変動によるリスクがあります。 ○信用取引を行うにあたっては、売買代金の 30%以上で、かつ 100 万円以上の委託 保証金が事前に必要です。信用取引は、小額の委託保証金で多額の取引を行うこと ができることから、損失の額が差し入れた委託保証金を上回るおそれがあります。 ○お取引にあたっては、「契約締結前交付書面」をよくお読みください。 ○外国金融商品市場等に上場している外国株券等の取引に当たっては、「外国株券等 の取引に関する重要事項」ならびに「外国株券等の国内店頭取引について」をよく お読みください。 商 号: 岡地証券株式会社 第一種金融商品取引業者 東海財務局長(金商)第5号 加 入 協 会: 日本証券業協会 指定紛争解決機関: 特定非営利活動法人 証券・金融商品あっせん相談センター この資料は岡地証券調査情報室が各種のデータにもとづき参考までに作成したものです。 ご投資にあたってはご検討のうえ投資家ご自身でご判断ねがいます。
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