X線回折による 機能性酸化物薄膜の評価

14p-1B-4
2015年第76回応用物理学会秋季学術講演会
2015年09月14日 @名古屋国際会議場
合同セッションK シンポジウム
「酸化物半導体の評価技術」
X線回折による
機能性酸化物薄膜の評価
稲葉克彦
株式会社リガク X線研究所
■講演資料(スライドPDF)の解説となるテクニカルノートが リガクジャーナル 2016年春号
に掲載されました。( 次世代機能性酸化物薄膜材料の評価 〜2次元検出器を活用して〜)
ISSN 1883-8456
1
CODEN RJIAAK
X線分析の特徴
•
•
一般に、X線発生源からの特性X線をプローブとして用いる
•
広い領域の平均情報を提供できる
•
結晶構造に関連した情報を取得できる
非破壊的に測定できる (照射ダメージ!)
•
•
•
低真空・大気圧下でも測定できる
特に「X線回折法」は、
成膜されたものの結晶構造の
情報を得る道具として広く浸透
分析深さを視斜角により制御できる
埋もれた界面構造の評価ができる
X線要素技術も進歩
光源、光学素子、検出器
制御・解析ソフトウェア
X線回折による機能性酸化物薄膜の実際
の評価事例を元に、測定・解析の考え方を
解説する。
2
エピタキシャル薄膜研究の広がり (私見)
■エピ膜と基板結晶の結晶構造が同じで格子定数が近いグループ。
→例 Siホモエピ
Diamond型
■エピ膜と基板結晶の結晶構造が同じであるが
格子不整合の程度が大きいグループ。
Diamond型
Zincblende型
→例 Ⅳ-Ⅳ族、Ⅲ-Ⅴ族 化合物半導体
■エピタキシャル膜と基板結晶の結晶構造が異なるグループ。
(バッファ層導入、表面面内方向の成長の利用、
オフ基板の採用、等などの様々な工夫)
tilt/twist
mis-orientation
基板の反り
→例えば、GaN on Sapphire
・大きな格子/熱膨張係数のミスマッチの克服
Diamond型
Zincblende型
Wurtzite型
・・・
参考文献:「X線評価技術等からみたGaNエピタキシャル薄膜」 リガクジャーナルvol.44 no.2 (2013) 2-24
新規機能性材料の探索
⇒複雑な結晶構造の酸化物系材料
酸化物系材料のエピタキシャル成長
結晶構造の対称性が低い・複雑 – 異方性、複雑なドメイン構造
結晶構造の異なる基板上の成長 – 複雑なエピ方位、ドメイン構造
多形制御、準安定相制御
3
試料水平保持型装置 模式図:ゴニオメータの基本は、θ-θゴニオメータと呼ばれる
dはdetectorのd
X線発生部
×
θs
φ
入射光学
系素子
検出器
受光光学系
素子
θd
ω
2θ
χ
Sはsource(線源)のs
参考文献: 稲葉克彦
リガクジャーナル vo.41,no1 (2011) 1-8
2θχ
sample
(goniometer)
θs
実際の装置の制御は、θsとθdによって行われ、ω
ω=θs、2θ=θs+θd という
拘束条件の下で操作され、見かけ上ωと2θ軸という軸と制御されている。
X線源がθs軸で、検出器がθd軸(&2θχ軸)で、試料はφ軸とχ軸で操作されている。
試料またはX線源の操作:ω、χ、φ 3軸
検出器の操作:2θ 1軸
4軸回折計
(英語では、four-circle goniometer)
近年では、検出器の操作がもう一軸(2θχ)増えた、5軸回折計も市販されている。
4
ガラス基板上Al:ZnO薄膜
本研究は、高知工科大学 山本哲也研究室の方々と行った共同研究です。
関連文献・発表
・T. Yamamoto, et al., Phys. Status Solidi., -C 10 (2013) 603-606
・J. Nomoto, et al., Jour. Appl. Phys., 117 (2015) 045304
・岸本 他 リガクジャーナル vol.37,(2006) 3-7
・野本 他 2015年応用物理学会春季講演会 11p-D1-1
・野本 他 2015年応用物理学会秋季講演会 16a-1B-2
5
• ガラス基板上Al添加ZnO薄膜
・ ZnO薄膜:TCO等、多方面で実応用展開
・マグネトロンスパッタ成膜
・Clitical layer(成長初期層)
の導入による配向性の制御
使用装置:薄膜評価用X線回折装置ATX-G
一般に、c軸配向した多結晶薄膜
⇒どのようにして配向性を評価してゆけ
ば良いか?
使用装置: 薄膜評価用試料水平型
X線回折装置SmartLabシステム
・回転対陰極型Cu線源(45kV-200mA)
・2次元検出器 HyPix-3000
成長初期の膜厚の薄い薄膜の評価の
アプローチ
6
・回折ピークの反射指数には
括弧をつけないで表記
Al:ZnO薄膜 2θ/θ測定
ZnO 0002反射
CL層有り
CL層無し
ZnO 1011反射
ZnO 0004反射
・第一段階の定性的な
評価にはこれでOK
・より詳細に解析するなら、
→配向性の度合い
(ロッキングカーブ測定)
→微量相の同定
(GI-XRD測定)
:
・粉末回折パターンとの比較
→000ℓ反射が卓越 (c軸配向)
→「CL層無し」試料では 1011 反射も観測されている。
ところで、2D検出器を活
用すれば、2θ/θ測定と
ロッキングカーブ測定が同時
に行える。
7
Incident
optics
2DDetector
2θ/θスキャン(TDIスキャン)
(ここではχ=0°のデータのみ)
q⊥
q⊥
0004
0004
Sample stage
広域逆格子マップ測定
- skew geometry(tilted with χ-axis)
積層方向(成長方向)を
含む方位の情報
// Surface Normal
φ
ψ
一般的な逆格子マップ
- co-planar geometry(tilted with ω-axis)
0002
1011 0002
ψ
Incident X-rays
1010
2θ
ω
χ
Sample
2θχ
インプレーン 逆格子マップ測定
Without-CL
With-CL
q//
q//
配向性の違いが一目瞭然
1測定 ~10min
8
測定の配置
対称面測定
通常の2θ/θ測定
(アウトオブプレーン)
インプレーン
回折測定
入射X線
回折X線
回折面法線
非対称面測定
基板
(アウトオブプレーン)
GI-XRD測定
非対称面逆格子マップ測定
9
各測定配置の比較
通常の2θ/θ測定
ω固定2θスキャン測定
In-Plane測定
(“薄膜法測定”と呼ばれることもある)
入射X線
出射X線
入射X線
出射X線
入射X線
数nm~
~100nm
~mm
メリット
・条件設定が容易
メリット
・膜からの信号が比較的強い
デメリット
デメリット
・回折に寄与する体積小
・一方向(積層方向)の
情報のみ
・基板の影響大
・どの方向について観察してい
るか解析が極めて複雑
・配向膜やエピ膜の解析には
不向(2θ角の変化に伴い方位
が変わる)
出射X線
メリット
○深さ方向の解析から、表面析出相や界面
反応相の確認、膜の歪み状態の解析も可能
○基板の影響を避けた測定も可能!
○界面方向の平均結晶子サイズ
○界面面内の異方性分布
デメリット
・強度は弱いことが多い
正式名称:GI-XRD測定
(Grazing-Incident)
10
“GI-XRD”(Grazing Incident XRD) 測定
(より詳細に表記するならば、
OutOut-ofof-plane GIGI-XRD)
Parallel
Slit
Analyzer
検出器
受光幅
20mm
入射
スリット
10mm
入射X線の断面
入射X線
回折X線
受光幅
20mm
2θ
1mm
試料
多層膜ミラーから
くる入射X線
入射X線 ビーム幅(w)
例えば0.1mm
(入射スリット幅にて調整)
試料表面への
入射角度 (ω)
0.1~0.5°
(サンプルに拠る)
照射幅(L)
L=w/sinω
=0.1/sin(0.2°)
≒28mm
28mm
入射角0.2°の場合の
計算例
入射角のおおよその目安
有機薄膜(ρ≒1.0gr/cm3程度) ⇒0.15~0.2°
軽元素酸化膜、やSi、Alの場合
(ρ≒2.0~4.0gr/cm3程度) ⇒0.25~0.3°
遷移金属酸化膜(ZnOなど)場合
(ρ≒5.0~7.0gr/cm3付近) ⇒0.3~0.35°
遷移金属膜場合
(ρ≒8.0-9.0gr/cm3付近) ⇒0.4~0.45°
重元素金属膜場合
(ρ≒10~20gr/cm3付近) ⇒0.45~0.55°
11
- In-Plane diffraction width(L)
L=w/sinω
sample
Incident
Parallel Slit
Analyzer
Incident angle
(ω)
Diffracted
X-ray
detector
2θχ
fixing ω,2θ, 2θχ、scan with ω
Incident angle dependence
ω-scan
Side view
detector
sample
12
c軸配向ZnOの逆格子シミュレーション
2θ/θスキャンの時の検出器の軌跡
(0002や0004反射だけが観測される)
GI-XRD (ω低角固定、
2θ駆動)スキャンの時の
検出器の軌跡
GI-XRDスキャンの時の
検出器の軌跡の近くに居るのは
この 1 103 反射だけ
⇒強配向やエピ膜(成長軸=c軸)
の場合は、GI-XRDスキャンで、こ
の反射だけが観測される。
13
c軸配向ZnOの逆格子シミュレーション
配向軸の方位ばらつきが50°程度の場合の模式図
(各反射の分布を矢印にて示した。)
2θ/θスキャンの時の検出器の
信号検出領域
GI-XRD (ω低角固定、
2θ駆動)スキャンの時の
検出器の軌跡
2θ/θスキャンの時に000ℓ系列以外の複
数の反射が観測されるようになる。
この場合には、1 104や 1 105などが出現。
v
もう少し配向性が緩くなれば、1103も観測され る
ようになるが、1 101反射はこの領域からかなり
遠いところに居るので、c軸配向が緩く
ならない限りは観測されない。
14
c軸配向とa軸配向が混在した場合の
ZnOの逆格子シミュレーション
1122反射 :
2θ= 67.94°(強い)
2200反射 :
2θ= 66.37°(弱い)
拡大
1103反射 :
2θ= 62.85°(強い)
15
In-plane XRD (GI-InPlane-XRD)と組み合わせて評価
T. Yamada et al., 反応性プラズマ蒸着法によるGa2O3-4wt%添加ZnO薄膜
Out-of-plane XRD
面内方向
と
積層方向
無歪の時の
格子定数
を観測する
ことで判った。
In-plane XRD
100nm以下の膜厚では結晶が歪んでいる。
面内方向 a軸 – 圧縮歪
積層方向 c軸 – 引張歪
膜厚の増加 → 抵抗率減少 → キャリア密度増大
ホール移動度増大
厚さわずか20nmの試料でも評価可能!
16
(La,Sr)MnO3/ZnO/Sapphire
ダブルへテロ構造薄膜
本研究は、三重大学工学部 遠藤研究室の方々と行った共同研究です。
・T. Endo, et al., Trans. Mat. Res. Soc. Jpn., 20th ann. issue (2012) 65-76
・K. Uehara, et al., JJAP 51 (2012) 11PG07
◆ K. Inaba, et al., Adv. Mater. Phys. Chem., 3, (2013) 72-89 (Open Access)
(測定技術についても解説していますので、興味ある方はこちらもご覧ください)
http://dx.doi.org/10.4236/ampc.2013.31A010
17
• 試料: (La,Sr)MnO3/ZnO /c -Sap
(ion beam sputter成長)
・ (La,Sr)MnO3薄膜:マルチフェロイック材料等応用多岐
高温でp型半導体 - n型半導体のZnOとのヘテロ接合
・酸素供給
(分子状酸素、酸素プラズマ)
・成膜温度 650~750℃
格子ミスマッチ ⇒
複雑なドメイン構造(方位関係)を形成
⇒どのようにしてドメイン方位関係を
解き明かしてゆけば良いか?
(LSMOの結晶構造は擬似立方晶として解析)
使用装置: 薄膜評価用試料水平型
X線回折装置SmartLabシステム
・回転対陰極型Cu線源(45kV-200mA)
・2次元検出器 PILATUS-100K
(La,Sr)MnO3 --- Manganite ?
Manganite – MnOOH (Manganese(III) hydroxide oxide)
⇒ 正しくは、Manganate では?
LiTaO3 : Lithium tantalate
LaAlO3 : Lanthanum aluminate
SrTiO3 : Strontium titanate
18
2θ/θ測定:配向性、配向軸の確認
LSMOは、
・110配向が強く、他に111配
向や、001配向も共存
・高温成長のものは、110配向
が顕著
?
LSMO
ZnO c軸
Sap c軸
シャープなピーク →Sap基板由来?
もし、Sap基板だとすると、0009反射 ・・・禁制反射
同じように、Si001基板で2θ=32.9°付近にピーク 002反射
参考資料
19
多重反射効果(同時反射効果)
禁制反射の位置にピークが観測される。
-結晶性の良い単結晶の回折測定の際に観測される。
-結晶内での散乱現象を動力学的に扱い、1回散乱だけでなく、多重回の散乱の結果と
(実際には、禁制反射ではない反射のところでも起こっている)
して解釈される。
-表面に平行でない格子面の散乱の寄与
⇒試料表面面内の回転に敏感で、強度が大きく変化する。
→試料面内回転(φ)を少し変えると強度を落とすことも可能。
Si001ウェーハ試料のSi002反射条件で試料を
面内回転させたときの信号強度変動
<11-20>
オリフラと入射X線平行
GaN(0001)
GaN(0003)
GaN(0005)
GaN 0001、0003、0005反射
1.E+06
<1-100>
<11-20>
1.E+05
1.E+04
1.E+03
1.E+02
1.E+01
-6
-40
-30
-20
-10
0
10
20
30
40
試料面内回転角度(°)
φを回してこの位置(配
置)にすれば、多重反射
の信号は殆ど出ない
0
6
12
18
24
30
36
42
48
54
参考文献
M. Renninger ; Zeit. Phys., 106 (1936) 141
J. M. Sasaki, et al., J. Appl. Phys., 29 (1996) 325-330
Zaumseil, Jour. Appl. Cryst., 48, (2015) 528-532
稲葉: リガクジャーナル, vol.44,no2 (2013) 7-15
60
66
20
(φを360°回転)
Sap 0003の場合
参考資料
8000
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
-10
10
30
50
70
90
110
130
150
170
190
210
230
250
270
290
310
330
350
面内回転(φ)角度 [deg]
上図のように、φを360°回してきれいに周期
的なパターンを得るには、φ回転軸と結晶軸とを
精密に一致させておくことが必要。
・・・φ回転軸と試料の間に存在する、直交2軸
のあおり調整軸(Rx-Ry軸)を活用することで、
歳差運動を無くすことができる。
21
ωスキャンロッキングカーブ測定:配向性の度合い
2θ/θ測定
X線発生源
入射角θ
2θ−θ測定
θ−2θ測定
対称配置測定
検出器
出射角θ
Thin film
θ+θ=2θ
substrate
入射角度と出射角度が常に一定になるように測定する。
表面に平行な格子面を測定
2θ/θスキャン
拡大図
最大強度を規格化した
ωスキャンプロファイル
LSMOの110配向成分
ωスキャンの幅はあまり変化していない
参考:ロッキングカーブ測定
ロッキング:rocking
2θ(検出器位置)を固定して、試料のみ回転
方位分布 ⇒方位の揃っている程度の指標
成長条件の違いは、他の成長方位ドメインとの体積比に大きく影響している。
22
参考資料
完全結晶のロッキングカーブ幅
(Darwin-Prinzの式)
高分解能ロッキングカーブ測定
re:古典的電子半径
F
λ
× hkl
2 × re ×
π V sin 2θ
完全性の高い単結晶試料の
結晶性を評価する方法
2
λ:X線の波長
Fhkl:hkl反射の構造因子
ω
X-ray source
2θ:回折角
V:結晶構造単位胞体積
例えば、Ge220反射ならば 0.0033°(約12.5秒)
Si220反射ならば 0.0015°(約5.5秒)
Sample
入射光学系
入射光学系結晶
2θ固定
X-ray source
Multilayer
Mirror
Sample
2θ
ω
Ge Channel Cut Crystals
ω
X-ray source
Sample
Multilayer
Mirror
元来は、2/4結晶光学系で単結晶試料
の結晶性評価 →単なるωスキャン
(2θはオープンスリット)
Ge Channel Cut Crystals
2θ
⇒基板の膜の格子定数の差が大き
な試料系
☞ 2θ/ωスキャン
⇒受光側にアナライザーを入れて
測定する場合も
23
高分解能測定に不可欠なモノクロメータ結晶
参考資料
正確な名称はモノクロメータ・コリメータ結晶
モノクロメータ結晶の役割
⇒平行な光を作る
広がった光
スリットコリメーション
一部が切り出され
平行な光だけとなる
Ge220 4結晶
第二チャンネルカット
モノクロ結晶
入射X線
~22.65°=Ge(220)の回折角
Ge440 4結晶
Ge220 2結晶
第一チャンネルカット
モノクロ結晶
~50.37°=Ge(440)の回折角
~22.65°=Ge(220)の回折角
24
参考資料
選択素子
適切な入射光学系の選択の基準は?
Ge220チャンネルカット 2結晶
ミラーのみ(スリットコリメーション)
Ge220チャンネルカット 4結晶
分解能
(角度発散)
0.05°
(放物面ミラー)
~0.01°
(波長分散広がり)
~0.0033°
(Ge220回折幅)
波長単色性
Kα1+α2(+Kβ)
Kα1
Kα1の一部
1
~1/20
~1/100
相対強度
適用試料
適用測定等
・強度優先の測定(仮測定、定性)
・多結晶試料の配向軸(モザイク性)
評価
ロッキングカーブ幅>0.1°
・強配向試料の逆格子マップ測定
・多結晶の極点測定(要入射ソーラ)
スリット幅を絞って(幅<0.1mm)
・反射率測定(膜厚<150nm)
スリット幅を絞って(幅<0.1mm)
・反射率測定(膜厚100nm以下)
参考:リガクジャーナル
vol.38 (2008) ”薄膜基礎講座 第3回“
参考資料
・ある程度分解能を要する測定
・完全性の高い試料の測定
(ロッキングカーブ半価幅
(ロッキングカーブ半価幅
0.02°~0.1°)
<0.02°)
・エピ試料の極点測定、逆格子マップ ・エピ試料の逆格子マップ
スリット幅を絞って
・反射率測定(膜厚<300nm)
ロッキングカーブ半値幅が
0.02°以下だったら
ロッキングカーブ半値幅が
0.1°以下だったら
Si(001)単結晶基板 004反射の測定プロファイル (2θ/ω)
入射に単結晶モノクロメータ素子を用いない場合、入射X線にはCuKα1特性X線とCuKα2特性X線が含まれている。
この時、CuKα1(λ=1.54059Å)と、CuKα2 (λ=1.5444Å)との強度比(2:1)の加重平均を採って、 波長は
1.5418Å。 表記は、Kαのαの上に横棒を付し CuKα (読み方:Cupper K alpha -bar)として表記する
CuKα1 1.54059Å
Comparison of 2θ/ω scans of Si(004)
1.E+09
1.E+08
1.E+09
slitcollimation
2-bounce Ge(220)
4-bounce Ge(220)
Int. [a.u.]
1.E+07
1.E+06
CuKα2
1.5444Å
1.E+08
1.E+07
Kβ
W-Lα
1.E+06
69.07
69.12
69.17
1.E+05
1.E+04
1.E+03
61.00
63.00
65.00
67.00
69.00
2θ/ω [deg]
26
入射X線に含まれる波長のチェック
参考資料
Si(001)単結晶基板 004反射の測定プロファイル (2θ/ω)
★CuKα1線の位置より少し低角度側(短波長側)に肩のようなものが現れることがあります。この波長のX線は「K衛
星線(サテライト)」または、「非図表線」と呼ばれています。電子を原子に衝突させたときに生ずる電子孔は、ふつう
は一つですが、場合によっては(確率論的に)、二つの電子孔を生ずることもあります。このように、通常とは異なる電
子準位の状態によって、少し波長の短いX線が生じた結果と理解されています。
参考文献:仁田勇 監修「X線結晶学 下巻」 丸善刊(1961)、荒木源太郎著 「原子物理学」 培風館刊 (1964)
27
Si(001)単結晶基板 004反射の測定プロファイル (ω)
slit collimation
G220_2bc
G220_4bc
G440_4bc
強度[任意単位]
参考資料
-0.06
-0.04
-0.02
0.00
0.02
試料回転角度[°]
0.04
0.06
測定されるωスキャンロッキングカーブ幅には、試料由来分の広がりと、光学系由来の広がりが重畳している。
完全結晶Siの004反射のロッキングカーブ幅は約0.001°(3.6秒)であるが、上図に示した全てのピークの幅は、
全てこの数値よりも大きい。従って、上図に示したプロファイルは、Si単結晶基板の結晶性を表すロッキングカー
ブ幅というよりも、光学系由来成分を評価していることになる。
28
参考資料
Angular Resolution of a Beam Conditioner with Different Monochromators
0.03
2結晶光学系であると、
ある回折角度の近傍で
は分解能が良いが、
広範囲で高い分解能は
得られない
100
80
arcsec
0.02
degree
角度発散 分(解能
Ge220 channel-cut
Ge400 channel-cut
Ge220 four crystal
Ge440 four crystal
4結晶光学系であると、
回折角度の広い範囲
で高い分解能の測定
が可能である。
60
GaAs 004
ZnSe 004
ZnO 11-20
CaF2 004
LN/LT 3-300
YAG 008
Si 220
Sap 0006
ZnO 0002
GaN 0002
SrTiO3 002
Spinel 004
0.01
40
)
Ge440-4結晶光学系
であると、2θ>120°
の高角の回折でも高
い分解能が得られる
20
0.00
0
0
20
40
60
80
Bragg angle θ B / deg
試料の回折角(θ)
2結晶の光学系であっても、
うまく選べば4結晶光学系よりも高い分解能
29
In-plane逆格子マップ エピ方位関係の解析
LSMOの結晶方位について
表面法線方向と表面面内方向で観測される結晶軸の組合せ
表面面内の結晶軸
表面法線方向に
観測される結晶軸
(2θ/θ測定で観測される)
[111]
6回対称
[110]
2回対称
[001]
4回対称
(In-Plane測定で観測される結晶方位)
[111]
[110]
○
X
○
X
(観測されない)
正確には[1 1 0]
(観測されない)
△
○
○
正確には[1 1 1]
□
(観測されない)
○
X
[001]
正確には[1 1 0]
○
○
正確には[100]
PL-LT
PL-HT
ZnO/Sap基板表面の対称性
(6回対称)との組合せを考える。
注意:オフ基板の場合には、基板表面の対称
性が崩れて異方性が存在する場合もある。
場合によっては、極点測定や非対称
面の逆格子マップ測定の結果と
組み合わせて解析。
K. Inaba, et al., Adv. Mater. Phys. Chem.,
3, (2013) 72-89
ML-LT
ML-HT
30
実際にはこれだけ複雑なエピタキシャル方位関係の
ドメインが共存していると考えられる。
31
Sapphire基板上の
α-MoO3 エピタキシャル薄膜
本研究は、大阪工業大学 矢野研究室の方々と行った共同研究です。
・八木 他、2014春季応物予稿, 17p-E10-3.
・稲葉 他,2014秋季応物予稿, 19p-12A-3.
・K. Koike, et al., JJAP 53 (2014) 05FJ02
・K. Inaba, et al., IWZnO-2014 C08
本会16日 6.3酸化物エレクトロニクス」16a-2H-3 にて、
r 面Sapphire基板上にMBE成長したWO3 エピ膜の結晶性、
エレクトロクロミック特性の報告もあります。
32
• 試料: α-MoO3 /c -Sap
(MBE成長、成長温度350℃、厚さ100nm)
・ MoO3 薄膜: ワイドギャップ半導体酸化物、エレクトロクロミック応用 ・・・
・相転移があるため結晶多形が存在、結晶構造の対称性が低い
α-MoO3 : 室温安定相 --- orthorhombic
β-MoO3 : 準安定相 --- monoclinic
使用装置: 薄膜評価用試料水平型
X線回折装置SmartLabシステム
例えば、立方晶系(cubic)では結晶構造の対称性
・回転対陰極型Cu線源(45kV-200mA)
が高く、3つのa軸は等価であるため区別する必要
・HyPix-3000多次元検出器
が無いが、対称性が低くなると、等価ではないため、
個々の結晶軸方位を区別して議論しなくてはならな
い。(物性との相関もある)
更に、複雑なドメイン構造(方位関係)を形成するこ
とも多い。
⇒どのように方位関係を解き明かしてゆけば良いか?
33
・α-MoO3 の結晶構造:b軸に垂直な二重シート状構造
空間群 P bnm (斜方晶系)
a =3.96290Å
空間群の設定に注意
Pnmaの設定の場合とは
b =13.8649Å
a,b,c軸の入替必要
c =3.69756Å
・H. Negishi et al., Phys. Rev.,
B : Condensed Matter, 69
(2004) 0641111.
★特に斜方晶系の場合には、空間群の設定が何で
ある場合についての結晶格子軸長や面指数、反射
指数で議論しているかを要確認
MoO6
octahedron
b
c
a
a軸、c軸は原子配列が異なる
ので、区別して議論したい。
2θ/θ測定結果から、b軸配向であることをまず確認。
[100](010)MoO 3 / /[1100](0001)Sap
・エピタキシャル方位
[001](010)MoO 3 / /[1120](0001)Sap
同時に成立
★ 「orthorhombic system」 →これまでの和訳は 「斜方晶系」
2014年(世界結晶年)日本結晶学会で議決された方針として、「直方晶系」という
呼び方をできるだけ使うことが推奨されている。
http://www.crsj.jp/activity/Orthorhombic.html
34
非対称面のφスキャンの結果
(2θ/θ配置のまま、傾きは、
χ軸で操作=skew配置)
α-MoO3 のb軸
110反射 (2θ=24.1°)
試料を約74度傾けた配置で測定
a軸の面内方位の分布がどのようになっているかを観測
60
60
60
60
60
α-MoO3
110反射
の2θは
約24.1度
6回対称の回折ピークを観測(30度の回転ドメインを含む).
α-MoO3
(110)法線
α-MoO3
a軸
φ (degree)
111反射 (2θ=34.9°)
α-MoO3
c軸
試料を約79度傾けた配置で測定
~74°
α-MoO3 のb軸
34
26
34
26
34
26
34
26
34
26
34
34度→26度→34度の周期で現れる12本の回折ピークを観測.
α-MoO3
111反射
の2θは
約34.9度
φ (degree)
2θ/θの測定結果から、b軸が表面法線方向に立っていることが分かった→次はa軸やc軸が面内方位のど
の方向に居るのかを知りたい。そのため、表面から傾いた格子面で、強度が強いことが期待される低次数の
反射( 111反射と110反射 )について、φスキャンを行った。
α-MoO3
(111)法線
~79°
α-MoO3
a軸
47°
・八木 他、2014春季応物, 17p-E10-3.
参考資料
α-MoO3
c軸
α-MoO3
(101)法線
35
試料の配置:対称配置と非対称配置
表面から角度αだけ傾いた格子面を測定するときの二つの配置
“Skew geometry”
“co-planar geometry”
対称配置 (傾き角を「あおり軸」で調整)
非対称配置 (傾き角をω軸で調整)
試料回転軸(ω)
試料回転軸(ω)
回折格子面
あおり軸 0°
傾きα
回折格子面
試料
試料
入射X線
入射X線
面法線
面法線
回折X線
2θ
回折X線
2θ
ω=2θ/2 ±α
参考文献: 表和彦 「ぶんせき」 (2002) no.11, pp.623-629
測定反射:150反射 2θ=41.0°
極点測定からエピタキシャル方位を決める
①強度がそこそこ強い
②2θが低角(多少格子が歪んでも変化量少)
③僅かに長さの異なるa軸とc軸を区別できる。
★051反射は禁制反射なので出現しない
α-MoO3 のb軸
131反射 2θ=40.0°
150反射 2θ=41.0°
α-MoO3
(150)法線
④ Sap 11-23反射 2θ=43.3°
→入射X線の波長を敢えて単色化しないで測定することで、
波長の広がりの寄与のために、多少2θ値の異なる基板の反
射も同じ極点図の中に出てくるとエピ方位の議論が簡単
~35°
α-MoO3 のc軸
~74°
37
逆格子マップ測定と極点測定
参考資料
地球に準えて
考えてみる
<逆格子マップ測定>
<極点測定>
逆格子空間の原点を通る一定の断面(平面)
逆格子空間の2θ/ω=一定の断面(曲面)
2θ/ωスキャン
=ボーリング
→1次元の情報φ回転
⇒狙いを外す可能性
2θ/ωスキャ
ンのライン
北極
極点測定=地図
逆格子マップ
=地質図
地表面上の分布の情報
地下に隠された埋蔵金
北極
測定する回折点
付近の切り出さ
れた断面
φ回転
測定する回
折点付近の
切り出され
た断面
膜
赤道
基板
・原点を通る平面断面 (リンゴの縦割り、経度一定の断面)
・表面面内について異方性がある場合には、
「経度何度のところで縦割りするか」について検討必要
一般には、基板のピークを探してからそれを基準に測定
・上図で横に輪切り(表面に平行)にすれば、In-plane逆格
子マップ測定となる。
赤道
・中心からの距離(=2θ)一定の曲面
(リンゴの皮を剥くような感じ)
・特定の反射(正確には「特定の面間隔の反射」)を
狙い撃ちして、その信号の分布を評価している。
38
参考資料
一般的な(試料水平型)ゴニオメータによる極点測定時の
ゴニオメータの動きの模式図
測定は、χ軸ステップ、
φ軸スキャン
β面内回転
(φ軸)
入射X線
高さ制限スリットを用いて
入射X線の整形が必要
例えば 10mm→1mm
回折X線
測定したい回折面の
d値(格子面間隔)
→2θを決め、その位置
に検出器を固定し、
試料の面内回転(φまた
はβ)とあおり軸(χまた
はα)を走査させて測定
試料
試料は傾けて測定するため
試料水平ではなくなる
χ軸
試料のあおりの動きは単軸操作(χ軸)で判り易い
が、90度傾いた方向(α=0度→InPlane測定)の配
置のとき、ライン状の入射X線の長手方向と試料が
直交するため、強度ロスが大きい。
39
参考資料
試料水平型 InPlane軸ゴニオメータによる極点測定時のゴニオメータの動き
常に試料水平のまま、表面面内方向(InPlane測定方向)から
試料表面法線方向(2θ/θ測定方向)まで連続的に測定可能
β面内回転
(φ軸)
入射光学系の軌跡
検出器の軌跡
試料
10mm
入射X線ビーム幅
1.0mm
入射X線
・ライン状ビームのままで可
・積層方向からIn-plane方向
まで連続的に測定可
回折X線
2θχ
受光面積
高さ1mmx幅20mm
受光スリット 1mm
(直交受光Parallel Slit Analyzer
を二つセットで使っても可)
検出器
Parallel Slit
Analyzer
デバイリングに沿って、傾いた回折ベクトルを追いかけるようにゴニオメータを走査させる。
(ω-2θ-2θχ軸ステップ、φスキャン)→2θと2θχは一定値(固定)ではない
40
参考資料
試料水平のままの極点測定
事例:
水熱合成
ZnO単結晶
・この面がどんな指数かを調べたい・・・
・このままロッキングカーブ測定や極点を
行って結晶方位の評価したい・・・
極点測定データ
{10-11}
“Crystal Growth and Crystal Technology, 4”, Sendai,
Japan, May,24,2008 N_24AM1_II_8C_3
41
測定配置と装置構成
χステップ、2θ/ω連動スキャン
(TDIスキャン)
Incident
optics
(CBO-f )
Incident
optics
広域逆格子マップ測定
Detector
φ
Incident
X-rays
2Dモード
ψ
Sample stage
2θ
ω
Incident
optics
χ
Sample
Incident
angle
(by ω-axis)
Sample rotation
(φ-axis)
Receiving optics
2θχ
Detector
インプレーン 逆格子マップ測定
0Dモード
φステップ、2θχ/φ連動スキャン
Sample
stage
In-Plane(2θχ)
Axis
42
逆格子マップ測定 配置の説明
広域逆格子マップ測定
- skew geometry(tilted with χ-axis)
// Surface Normal
φ
積層方向(成長方向)を
含む方位の情報
ψ
結晶性の乱れを伴う薄膜、
複雑なエピ方位の評価に
有効
一般的な逆格子マップ
- co-planar geometry(tilted with ω-axis)
ωステップ、2θ/ω スキャンなど
・スリット幅やアナライザー使用にて2θの分
解能を作る
・高角入射、低角取出しの配置
→1D検出器で高速逆格子マップ測定が有効
ψ
ω-step、2θ一定の露光測定など
χステップ、2θ/ωスキャンなど
Incident X-rays
結晶性の良いエピ膜の
評価に有効
2θ
ω
χ
Sample
極薄膜や結晶性の乱れを
伴う薄膜、複雑なエピ方位
の薄膜、界面層の評価に
有効
2θχ
インプレーン 逆格子マップ測定
表面面内の情報
43
φステップ、2θχ/φスキャンなど
参考資料
一般的な逆格子マップ測定 非対称面の測定 二つの配置 -1
Grazing-Exit geometry : ω > 2θ/2
入射ビーム幅 Lin
(1mm)
高角入射
出射ビーム幅
Lout
1D検出器が活躍
低角取り出し
ω
Thin film
2θ-ω
2θ
detector angle
substrate
試料表面での入射X線
のフットプリント W
L
L
out
・細いビームとして出射されるので、受光スリットは細くしてよい。 W = in =
sin ω sin (2θ - ω )
・入射角が大きいので入射X線は試料深くまで到達。
強度が取れる(厚い)エピタキシャル薄膜の時に有効
参考文献: 小林信太郎 稲葉克彦
リガクジャーナル vo.41,no1 (2011) 1-8
44
参考資料
一般的な逆格子マップ測定 非対称面の測定 二つの配置 -2
Grazing-incident geometry : ω < 2θ/2
入射ビーム幅 Lin
(1mm)
出射ビーム幅
Lout
低角入射
2θ
ω
Thin film
W=
substrate
Lout
Lin
=
sin ω sin (2θ - ω )
試料表面での入射X線
のフットプリント W
・出射されるビームは広がるので、受光光学素子に注意。(PSAまたはアナライザが望ましい)
・入射角が浅くできるので、強度の弱い薄い膜のときに有利。
45
結果と考察 アウトオブプレーン広域逆格子マップ測定 -1
Sap00012
Sap01110
・回折ピークの反射指数表記
が2桁になるときは、下線を
付して表示
0.8
Sap0228
Sap[0001]
Sap0336
0.6
Sap0006
qz [1/A]
0.4
Sap0114
MoO 3 [010]
Epitaxial
component
0.2
Sap[0110]
MoO 3 1k 0
MoO3 a*-c*
0.0
MoO 3 0k 1
0.2
0.4
0.6
0.8
MoO 3 1k 1
b軸に直交
q// [1/A]
46
結果と考察 アウトオブプレーン広域逆格子マップ測定 -2
Sap00012
d0100 = 1.3903Å
Sap01110
⇒ b = 13.903Å
Sap0228
qz [1/A]
文献値
13.8649Å
0.8
k=10
k=9
0.6
k=8
k=7
Sap0336
k=6
0.4
k=5
k=4
k=3 0.2
k=2
k for hkl
of MoO3
1k 0
1k 1
k=1
0.2 0k 1
0.0
0.4
0k 2 1k 2
0.6
0.8
直交格子
(直方晶系)
q// [1/A]
47
参考資料
•
逆格子マップ 測定データを解析する上での注意点
1 2
2θ
= sin ( )
d λ
2
ゴニオ角度から逆空間座標
への変換
格子定数の広がり
のばらつき
Qz
表面法線
2θ epi
2θ
1
2
)cos( sub − ωsub −Δω)
= sin (
d⊥ λ
2
2
2θ epi
2θ
1
2
qx =
= sin (
)sin ( sub − ωsub −Δω)
d // λ
2
2
qz =
epi(224)
+ω
2θ/ω
Qzからの傾き:α
α
•
モザイク広がり
のばらつき
−ω
Δω
sub(224)
λ = 2dsinθ
Qzの軸が、2θ/θ(∴ω=2θ/2)の
軸、結晶軸と一致していることが大前提!
film
substrate
Qx
積層方向の結晶軸
の軸立て調整!
48
結果と考察 In-plane逆格子マップ測定
エピ成長成分
Sapphire
Sap3300
[0001]
α-MoO3
[100]
[010 ]
紙面垂直が
MoO3のb軸
Sap2240
[010]
[010 ]
MoO 3 103
[100]
[100 ]
MoO 3 301
Sapphire
[1 1 00]
[100]MoO 3
MoO 3 202
/ / [1100]Sap
[001]MoO 3
MoO 3 200
MoO 3 002
MoO 3 201
/ / [1120]Sap
MoO 3 002
Sap1120
MoO 3 200
一軸(b軸)配向成分
Sapphire
[0001]
α-MoO3
MoO 3 101
[010]
[1 1 00]
Sapphire
49
極性方位の判定
“Polarity determination by XRD”
・Nishikawa and Matsukawa1) : reported the anomalous dispersion effect
・Mariano and Hanneman2) : reported polarity determination of ZnO crystal using
continuous XX-ray spectrum from Cu target
Using X-ray wavelength @absorption edge
Structure Factor for X-ray scattering
F(hkl) ≠ F(-h-k-l)
F(hkl) =∑ ( f 0, j + ∆f ' j +i∆f' ' j ) exp(2πi(hx j + ky j + lz j ))
j
普段は無視できる項だが、構成元素の吸収端近傍
のX線を使う場合には無視できない
f0 j is the atomic scattering factor for jth atom,
∆f’j and ∆f’’j are the anomalous atomic dispersion correction terms for jth atom,
(xj, yj, zj) are the coordinates of jth atom in the unit cell
Necessary to use XX-ray wavelength at absorption edge of constituent atoms
GaGa-K edge at 0.11957nm
Znnm
--- far away from Cu Kα1 (λ=0.154056nm)
Zn-K edge at 0.12833
0.12833nm
Au Lα radiation (λ=0.127634nm ) ☞ Ga and Zn
GaN,GaAs…
ZnO,ZnSe…
1) S. Nishikawa and K. Matsukawa, Proc. Imp. Acad. Japan, 4 96 (1928)
2) A.N. Mariano and R.E. Hanneman, J. Appl. Phys., 34 384 (1963).
・H. Tampo et al., Appl. Phys. Lett., 87 (2005) 141904
50
測定装置の構成 = 一般的な高分解能XRD装置と同じ
単に2θ/ω 測定を行うだけで試料が分光したプロファイルを与える
ω
X線源
Au 40kV-150mA
放物面人工多層膜
ミラー
Sample
2θ
入射光学系
検出器
+適度の角度発散のある入射X線
+適度の波長広がりのある入射X線
★モノクロメータ結晶を入れてAuL
α1特性線だけを切り出せば
★モノクロメータ結晶を入れてAuLα
CuKα
が実現可能
CuKα1特性線で行うのと同じ高分解能XRD/XRR
特性線で行うのと同じ高分解能XRD/XRRが実現可能
51
r面サファイア基板上のa面成長GaN
K.Inaba and H. Amano, Physica Status Solidi –B 244 (2007) 1775-1779
10000
100000
{30-30} @phi=90
{22-42} @phi=180
{30-30} @phi=270
{22-42} @phi=00
c
10000
c
GaK edge
1000
1000
100
0.105
100
0.110
0.115
0.120
0.125
0.130
{30-30}反射は無極性方位で
あるため差が出ない
0.135
0.105
0.110
0.115
0.120
0.125
0.130
0.135
{22-42}反射は極性の影響が現れ
{22-42}と{22-4-2}との差が出る
横軸=波長(単位 nm)
52
ZnO bulk
Polarity determination with 0006 reflection
Incident
X-ray
Diffracted
X-ray
AuLα1
1000000
900000
(Zn-polar side)
800000
Int. [a.u.]
強度
[任意単位]
+c
ZnO 0006
ZnO 0006_Rv
700000
Zn-K absorption edge
600000
500000
AuLα2
400000
吸収端より長波長側
では強度同じ
300000
Incident
X-ray
-c
Diffracted
X-ray
(O-polar side)
200000
100000
0
1.25
1.26
1.27
1.28
1.29
1.30
1.31
Wavelength
波長 [A] [A]
F0006 > F000-6 for Au-Lα1
“Crystal Growth and Crystal Technology, 4”,
Sendai, Japan, May,24,2008
N_24AM1_II_8C_3
新型トポグラフ装置 “XRTmicron”
53
エピタキシャル薄膜を生成するための土台である
単結晶基板の結晶性・欠陥評価
・X線出力(MicroMax-007HF(DW))
・40kV 30mA(Cuターゲット)
・50kV 24mA(Moターゲット)
HR-XTOPカメラ
XTOPカメラ
・高感度・高解像度X 線カメラ(XTOPカメラ)
・ピクセルサイズ:5.4um
・ピクセル数:3326×2504
・撮影エリア:18.0mm×13.5mm
・デジタル分解能:16bit(65,536階調)
・超高解像度X 線カメラ(HR-XTOPカメラ)
・ピクセルサイズ:2.4um
・ピクセル数:3326×2504
・撮影エリア:8.0mm×6.0mm
・デジタル分解能:16bit(65,536階調)
X線発生部
背面
入射X線
試料
装置内部の写真
4H-SiC 透過トポ像
54
市販 2” sapphireウェーハ (両面研磨、厚さ330um)
透過 セクショントポ
回折ベクトル:-3300
2θB=29.9°/入射角=14.95°
カメラ:XTOP
露光時間:20sec/枚
撮影枚数:1001枚
測定間隔:10um
実測セクショントポ画像
の一枚
欠陥に対応した
強い回折線像
表面
3Dセクショントポ像
裏面
① Stepping section
topography
検
表面
出
10um step
器
② Reslicing in
parallel with the
wafer surface
裏面
試料結晶
表面
③ Dislocation images
in parallel plane with
the wafer surface
ステッピング
実測エリア
格子面
裏面
格子欠陥
小
微
CTのように画像データを
再構築した後、リスライス
することにより、深さ方向
の像を得る。
ット
スリ
刻印部
入射X線(Mo)
55
2インチ GaN単膜(~2µm) 付き c面サファイア基板 (裏面梨地)
透過トポ像
X線源 MoKα
g
Sapphire反射指数:3360
g
Sapphire反射指数: 3300
Sapphire反射指数: 6600
56
サファイア(α-Al2O3)単結晶の結晶構造
参考資料
・本来は菱面体格子(三回回反対称)であるが、扱いの簡便さのため、六方格子にて表現することが多い。
・サファイアの結晶構造や面指数表記については、
望月圭介 「サファイア単結晶の結晶面指数表記」 Jour. Flux Growth, vol.2, (2007) 20-22 参照
hexagonal cell setting
rhombohedral cell setting
空間群: R3c (No.167 setting 1)
空間群: R3c (No.167 setting 2)
a = 0.514 nm, α = 55.26 deg
a = 0.47062 nm, c = 1.29933 nm
・結晶構造の描画には、
Vestを用いました。
Al : (0.000, 0.000, 0.352)
O : (0.306, 0.000, 0.250)
アルミニウム
http://jp-minerals.org/vesta/jp/
Al : (0.355, 0.355, 0.355)
O : (0.553, -0.053, 0.250)
酸素
c/6
★この菱面体格子と関係する結晶面がいわゆる r 面
⇒菱面体格子にとれないwurtzite構造ではr 面は定義されない
まとめに代えて
材料別にみた一般的な評価手段・評価項目
多結晶的
単結晶的
X線回折測定
分類
Ⅳ族
Ⅲ-Ⅴ族
半導体エピ膜 Ⅲ-N族
Ⅱ-Ⅵ族
その他
半導体ポリ膜
半導体アモルファス膜
バリア膜
配線膜
一般電極
電極膜
透明電極
low-k
high-k
強誘電体膜
保護膜
有機薄膜
media
磁性膜
圧電結晶
超伝導体
基板
バルク
ナノテク材料
57
メジャーな材料
Si,SiGe,SiC・・・
GaAs,AlGaAs,InP・・・
GaN,AlN,InN,BN・・・
ZnO,ZnSe・・・
FeSi2・・・
poly-Si、μc-Si・・・
a-Si、a-SiN・・・
Ta,TaN,Ti,SiN,・・・
Cu,Al・・・
CoSi2,NiSi,W,Pt,Ir・・・
ITO,ZnO,CdO・・・
ZrO2,HfAlOx,SiON・・・
PZT,SBT,BST,AlN・・・
DLC・・・
低分子,高分子,液晶
Co,CoCrPt・・・
次世代メディア FePt,CoPt,グラニュラー・・・
head
NiFe/Ta・・・
その他
MnGaAs, エピFe・・・
LN,LT,SiO2,Langasite,AlN,BBO・・・
YBCO,La2CuO4,MgB2・・・
Si,GaAs,Sap,SiC,ZnO,YSZ,STO,LSAT・・・
被覆基板(ITO/Gl)、窓材(CaF2,BaF2)
ナノ粒子、Photonic結晶、メソポーラス材
定性
結晶子
方位解析
・配向性
歪
固溶体
組成
△
△
△
○
△
◎
○
◎
◎
○
○
○
○
△
△
○
△
△
-
△
○
△
○
○
○
○
○
△
○
○
○
○
○
○
△
△
△
△
○
○
◎
◎
△
◎
◎
◎
△
◎
○
○
◎
△
◎
○
◎
△
○
△
△
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○
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○
○
○
○
○
○
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△
○
○
○
○
○
○
○
△
◎
◎
◎
△
△
○
◎
△
△
△
○
◎
△
△
△
○
○
○
○
△
-
反射率測定
格子定数 リラックス度
◎
◎
◎
○
△
○
△
△
△
△
△
△
○
○
△
○
◎
○
◎
○
◎
◎
◎
○
△
△
△
○
○
-
小角散乱
測定
膜厚評価・
界面評価
密度
粒子/空孔
サイズ分布
◎
◎
◎
△
△
◎
◎
○
○
○
○
◎
◎
○
◎
○
◎
○
◎
◎
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△
△
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○
○
△
△
◎
◎
○
○
○
○
◎
◎
○
◎
○
○
○
◎
◎
○
△
△
○
◎
◎
◎
凡例:◎ 頻繁に評価する、○ よく評価する、△ 時々評価する、- 殆ど評価しない
参考:リガクジャーナル vol.38 (2008) ”薄膜基礎講座 第1回“
58
ご紹介できなかったアプリケーション事例・・・
・非極性成長GaNエピ膜 - 結晶方位のズレ、結晶の反り、極性評価・・・
・ZnOバルク単結晶 - アニール処理と結晶性、極性評価、ファセット面・・・
・NiSi2電極材料 - in-situ高温XRDによる熱膨張係数(粉末と薄膜の違い)
・極薄high-k 膜 - 膜厚と結晶化、格子歪、結晶子サイズ・・・
・グラニュラー磁性膜 - 結晶子サイズ/粒子サイズの異方性・・・
・ZnOナノ結晶 - 結晶子サイズとサイズ分布、格子歪・・・
・有機薄膜 – ペンタセン薄膜相の構造解析
・有機高分子薄膜 – 高温in-situXRD測定による結晶化/非晶質化
・RE-複合酸化物セラミクス - 希土類元素置換と酸素多面体変形・・・
・複雑なドメイン構造を有するエピタキシャル薄膜の解析
59
参考資料
High-resolution XRDに関する教科書・参考文献
D.K. Bowen, and B.K. Tanner, “High resolution X-ray Diffraction and
Topography”, Taylor & Francis, CRC Press, 1998.
V. Holý, U. Pietsch, and T. Baumbach, “High-Resolution X-Ray Scattering from
Thin Films and Multilayers”, Springer Tracts in Modern Physics, 1999.
P. F. Fewster, “X-Ray Scattering from Semiconductors”, Imperial College Press,
2000.
M. Birkholz, “Thin Film Analysis by X-Ray Scattering”, Wiley-VCH Verlag
GmbH & Co., 2006.
仁田勇 監修「X線結晶学 上・下巻」 丸善 刊(1961)
菊田惺志著 「X線回折・散乱技術 上」 東大出版会刊 物理光学実験 15 (1992)
菊田惺志著 X線散乱と放射光科学
http://webpark1275.sakura.ne.jp/ProfKikuta/
60
参考資料
薄膜測定技術に関連した参考文献
「リガクジャーナル 薄膜X線測定法 基礎講座」
・最新版のリガクジャーナルはリガクwebsiteにて無料
ダウンロードできます。
http://www.rigaku.co.jp/
・過去のリガクジャーナルは、会員サイト(登録無料)に
てダウンロードできます。
61
参考資料
リガク会員サイトでは、リガク関連装置を活
用して薄膜材料評価を行っている論文の
リストをご覧いただけます。
http://www.rigaku.co.jp/members/indexlogin.html
ndexlogin.html
62
参考資料
X線の全反射と屈折率
• X線に対する物質の屈折率 n
n = 1 − δ − iβ < 1
・屈折率nが1より僅かに小さいため、大気側
から物質表面に極低入射したときに全反射
現象が起こる。
 re λ2 
'
δ =
 N 0 ρ ∑ xi (zi + f i ) ∑ xi M i
i
i
 2π 
 r λ2 
β =  e  N 0 ρ ∑ xi f i '' ∑ xi M i
i
i
 2π 
Snellの法則
sin (π / 2 − θ )
n=
sin (π / 2 − θ ' )
θ < θ c ≅ 2δ では全反射が起こる
θc:全反射臨界角度(約0.2°~0.5°)
θ
θ
θ'
θ > θc
θ = θc
θ < θc
63
参考資料
X線反射率プロファイルの例とデータの解釈
表面からの反射波と界面から
の反射波が干渉する
0
臨界角度θ
臨界角度θ
10 cc
↓
↓
密度ρ
密度ρ -1
振動の周期Δθ
振動の周期Δθ
↓
↓
膜厚d
膜厚d
10
θ
θ’
d
Reflectivity
-2
10
-3
高角度での振動減衰率
高角度での振動減衰率
↓
↓
表面・界面のラフネスσ
表面・界面のラフネスσ
10
振動の振幅
振動の振幅
-4
10
↓
↓
密度のコントラスト
密度のコントラスト
-5
10
0
ラフネスσ1
ラフネスσ2
ラフネスσ3
2
4
2θ/θ (degree)
密度ρ1
密度ρ2
密度ρ3
膜厚d1
膜厚d2
6
8
高角度での強度減衰率
高角度での強度減衰率
↓
↓
表面のラフネスσ
表面のラフネスσ
・厚さ 1~数百nmまで.多層構造でもOK .
・X線回折ではないので、非晶質でもOK.
・可視光に不透明でもOK.
・表面、界面が粗い場合には解析が難しくなる.(目安 <5nm)
・表面すれすれに入射するので入射スリットは細くする.
64
参考資料
お勧めの教科書・参考文献
– X線反射率測定・解析 編 –
・“X線反射率測定入門”
講談社サイエンティフィック刊 桜井健次編 (2009)
・“薄膜X線測定法 基礎講座 第5回 X線反射率測定 ”
八坂 美穂:リガクジャーナル vol.40, no.2, (2009) 1-9
英語版: “X-ray thin-film measurement techniques V. X-ray reflectivity
measurements” M. Yasaka: Rigaku Journal, vol. 26、no.2, (2010) 1-9
・“X線反射率による膜構造測定における不確かさ”
表 和彦・伊藤 義泰 : 表面科学, vol.27, (2006) 642-648
・“X線反射率法の応用について -薄膜・多層膜の埋もれた層・界面の密度、膜厚、
ラフネスの決定- ”
桜井 健次: 応用物理 vol.78(2009)224-230
・“X線反射率法による薄膜の精密構造評価”
小島 勇夫: 「理学電機ジャーナル」 vol.30、(1999)4-10
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参考資料
エピタキシャル成長薄膜の格子変形
<完全マッチングの場合>(リラックス度=0)
界面の格子定数一致
→界面垂直方向に弾性変形
→対称性の変化
<完全リラックスの場合>
方向のみ一致
→格子定数はバルク値
→対称性は変わらず
(★熱膨張率差も格子変形を引き起こす)
膜
基板
・逆格子マップ測定
・In-Plane測定
組成の変化
→格子定数の変化
?
面内の格子定数が変化
→積層方向の格子定数
も変化(弾性変形)
表面面内方向と積層方向の格子面間隔を
独立に計測することが必要
66