基地・軍隊と人権、暴力 暴力装置の軍隊は移動ではなく縮小

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アジア太平洋反基地東京会議
2006年11月25日-28日
米軍再編と沖縄:基地・軍隊と人権、暴力
暴力装置の軍隊は移動ではなく縮小、解体にむけたネットワークの構築を
高里鈴代
基地・軍隊を許さない行動する女たちの会共同代表
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抑止力、即戦演習、派兵基地―「安全保障」下の軍事基地化された島
1)駐留米軍の活動は、基地面積内に留まるものではない。沖縄全体が駐留地であって、
広大な米軍基地から派生する爆音、演習事故、環境汚染、そして米兵の事故・事件に
より人々の生命と生活は日常的に脅かされている。
2)沖縄は米軍が関与する朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン、そしてイラ
ク戦争への派兵基地として、米軍の戦車、軍服が、緑の迷彩色から茶色の砂漠色の迷
彩色、さらに濃緑色へ変化。今後は、MV22オスプレイ対応の基地建設(沿岸案)。
3)61 年前の米軍上陸から現在にまで、おびただしい数の米兵が駐留した。恒常的に
27000~28000 人の軍隊(2005 年9月現在、22470)と軍属、家族で 50000 人余。
4)米兵、その家族は日米地位協定の身分で、基地外行動は自由であるうえに、フェン
スに囲まれた「基地」での安全・安心な駐留生活が保障されている。
それは、「此処は嘉手納空軍敷地の境界線です。許可のない立ち入りを禁じます。基地
司令官の命による」の警告で基地へ入る者は厳しく制限、管理される。しかし、その
逆はない。「ここは住民地域との境界線です。許可のない立ち入りを禁じます。住民の
命による」と民間地域への立ち入りを制限するゲートは存在しない。
2 殺傷、破壊の訓練が基地・軍隊の目的であり、軍隊は構造的暴力である
2005年7月、高校 2 年生の時に 3 人の米兵から強姦された被害体験を持つ女性が、
止まない米兵の暴力の解決は軍隊の撤退にしかない、と県知事へ書簡を送った。衆・参外
務委員会でこの手紙が沖縄の声をして取り上げられたが、
「米軍と自衛隊があるからこそ日
本の平和と安全が保たれている側面が、すっぽり抜け落ちている。バランスが取れた考え
とは思えない」と町村外相は反論。
戦後 61年にわたる米軍駐留下における、特に女性への性犯罪
1)沖縄戦終結から朝鮮戦争時。沖縄全域はまさに無法地帯。複数の米兵が銃で脅し女性
を、畑、道路、家族の面前から拉致、強姦した。9ケ月の赤ちゃん(1949年)、6歳の
幼女の強姦殺害事件(1955年)と被害はあらゆる年齢にわたる。結果の出産。
2)ベトナム戦時代-
異様に殺気だった米兵のすさまじい暴力はもっぱら基地周辺で米
兵を相手に働く女性たちが受け皿となった。多くが絞め殺される恐怖を経験。事実、貧
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しい沖縄社会のドルの稼ぎ手でもあった女性たちが、毎年 2 人~4 人が絞殺される。
3)復帰後から現在まで- ベトナム戦争後米軍は徴兵制度を志願制度へ、「貧困徴兵制」
米兵の貧困化で、暴力は巧妙、慢性化している。日本の刑法では強姦罪は量刑が軽く、
米軍側は地位協定の地位を盾に米兵を擁護し、裁判での対抗姿勢は被害者に過酷な環境
となる。基地のフェンスは基地と住民社会との境界ではない。
基地と隣接した社会にとっては米軍の休日は子どもたちへの暴力が頻発
1995 年9月4日、3 米兵による 12 歳の少女強姦事件-労働者の休日。
2000 年7月3日、中学 2 年生、就寝中に米兵が侵入、強姦未遂事件-独立記念日
2005 年 7 月3日、10 歳の少女米空軍兵士から強制わいせつの暴力、―独立記念日、
4)軍隊の本質は殺傷と破壊であり、暴力を合法化した機関、組織であり、構造的暴力で
ある。日々の訓練で占領地への差別、女性差別、構造的暴力は軍隊駐留地に共通である。
フィリピン、韓国、ベトナム、そして、イラク。
・ 暴力装置としての軍隊内部にもすさまじい暴力が存在することを表すのが、米軍の
「性暴力ゼロ作戦」。
・ 2002 年アフガニスタン攻撃特殊部隊4兵士が相次ぎ妻を殺害。
・ アルブグレイ刑務所における米軍兵士のイラク人拷問、虐待、性暴力。
・ 2005 年 5 月 国連人権委員会への調査報告
・ 2005 年 12 月、14 歳のイラク人少女へのレイプ、家族の焼殺、隠滅が発覚。
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経済貢献、私人化、犯罪の矮小化による基地容認への駐留政策
「イラクからの帰還兵3千人を英雄として歓迎して」と、米軍のプレスリリース(’05.4/1)
1)米軍駐留による経済貢献-1996年以降に反基地世論の高まりへの対策として。
「訓練の騒音など負担はあるが、米軍の駐留は地元経済への貢献が顕著だ」-沖縄第2
の雇用の場、県民一人当たり年間3000ドル、米側が独自の経済貢献調査を 2000 年か
ら実施している。
2)軍人、兵士の私人化「よき隣人政策」-駐留米兵を「基地住民」と位置づけ、最大の
人的資源としてアピールする。 英語教師、ボランティア、基地開放、ビーチ清掃。
3)米兵犯罪の矮小化―-米兵はプロフェッショナル、米国内の犯罪率より低い。
「沖縄の社会全般の犯罪発生率と比較してもその半分以下」と、沖縄大使、米領事、米
軍司令官。防衛施設局の鹿屋市への回答。「平成16年における米軍人等の刑法犯の犯罪
検挙数は、米軍人等1000人当たり約2.4件で、我が国の犯罪情勢では、人口10
00人当たり5.4人」。
特に、国連人権委員会の現代的形態の人種主義、人種差別等に関する特別報告者、ドゥ
ドゥ・ディエン氏の沖縄に関する報告に対し、2006年6月の日本政府コメント(反
論)は、米軍兵士の犯罪が2004年以降減少した主張。実際は、イラク派兵による米
兵総数の減少には言及せず、正確性欠く政府反論であり、犯罪を矮小化する意図が有る。
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4)自国兵士の擁護―不平等地位協定の維持―日本の司法制度への抵抗、二国間協定を結
んで米兵の訴追を防ぐ-国際刑事裁判所の否定
2005年11月、対テロ合同演習に参加した沖縄駐留海兵隊員によるフィリピン女性
レイプ事件にも米軍の自国兵士擁護の姿勢が顕著である。
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軍事的国家安全保障を脱軍事化し真の安全保障へ:軍事拡大・強化のための基地建設、
軍隊の移動を許さない闘いをどう連帯していくか
1)在沖海兵隊のグァム移設はさらなる軍事強化であって、
「沖縄の悲願ではない。」
米軍再編で日本政府は抑止力の維持と地元負担軽減であり、「沖縄の悲願に応えた」と
強調するが、
「米軍再編は沖縄の負担軽減にならない」5・15アピール(資料)
「海兵隊8000人グァム移動」は1)危険な現普天間基地の代替施設をキャンプシ
ュワーブ沿岸に新基地建設。2)グアムへ移動、整備費を日本が負担する、が前提条
件。 軍隊の解体こそ真の平和につながる。
2)軍事主義、軍事力安全保障体制を変えていく。日常の軍事化と兵士の私人化、
国内外の運動体との連携を強くしていく、支援態勢をつよめよう。
3)沈黙は暴力への補完である。性暴力、人権侵害の被害者へ精神、社会、法的支援を
保障していく。
4)米軍優位、ジェンダー偏向で不平等な地位協定の改正。暴力に関する法律の整備、
被害者への支援体制。国連、人権会議で(1993 年ウイーン)
、
「武力紛争下における
女性への暴力は戦争犯罪である」→「軍隊長期駐留」にも適用されるべきではない
か
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資料
内部リポート
経済効果
誇示する米軍
日本政府7割負担
「訓練の騒音など負担はあるが、米軍の駐留は地元経済への貢献が顕著だ」
在日米軍の再編協議が本格化しつつあった二〇〇五年一月、在沖米軍は「沖
縄経済に与える米軍基地のインパクト」とタイトルを付けた一冊の内部リポー
トを作成し、こう結論付けた。
A4判二十六ページに、軍用地料や雇用効果などを分析し「米軍基地の存在
が、沖縄に少なくとも十九億ドル(二千四百億円)をもたらしている」と強調。
「県民総生産(GPP)の6%以上、関連収入を含めれば10%になるであろ
う」と駐留意義を経済面から訴えている。
リポートは作成後、上部機関、国防総省、国務省に提出された。
二カ月後、米軍再編協議のため来日したライス米国務長官は、沖縄の負担軽
減を求める大野功統防衛庁長官(当時)に「米軍がドイツから撤退した際には、
地域経済に影響が及ぶという声があった」と、大規模な米軍削減は経済的に打
撃が大きいとけん制した。
ライス発言は、米軍基地の地元経済への貢献を強調したリポートの内容とピ
タリと重なる。
アキレスけん
在沖米軍が地元経済への影響について、初めて詳細なリポートを作成したの
は一九九六年、米兵暴行事件の直後だった。
「県民の反基地世論が高まり、日米両政府とも大幅な基地返還に手をつけざ
るを得なくなっていた。在沖米軍の存在意義をアピールし、組織を守るには『地
元経済への貢献』しかなかった」。当時を知る米軍関係者は、リポート作成の
背景をこう明かす。
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沖縄サミットが開かれた二〇〇〇年にも作成。米軍は「経済効果」をアピー
ルする戦略を一層強める。
最新調査は、主に〇三年米会計年度の工事の発注や、物資を購入する各軍約
二十組織の企業との契約額などを積算。基地内の病院や学校の消耗品、備品購
入まで一ドル単位で集計し、米軍消費支出額を七百三十七億円とはじき出した。
また、県の統計が米軍支出と軍用地料、軍雇用者所得だけを基地関連収入と
しているのに対し、米軍の調査は日本政府が支出する光熱費や、基地所在自治
体への調整交付金まで加え、額が膨らんでいる。
リポートはさらに、沖縄の政府への際立った財政依存、賃金水準の低さ、全
国二倍の失業率なども詳細に分析。脆弱な経済構造が“アキレスけん”と見抜
いている。
見えない実態
米軍は基地の「経済貢献」を強調するが、沖縄の基地を財政的に支えている
のは、日本政府だ。基地関連収入二千四百十一億円のうち、七割に当たる千六
百七十五億円を日本側が負担している。同収入は、算出方法が統一されていな
い上、県経済全体への影響も見えにくく、明らかになっていない。
県の統計では米軍支出額が五百二十三億円とされ、米軍の調査より二百億円
以上も少ない。県はドルと円の両替総額が把握できた一九八四年当時のデータ
を基に「推計」しており、実態とは必ずしも一致しない。
基地経済から脱却するための「痛み」を最小限に抑えながら、米軍基地の整
理・縮小を加速させるためにも、まず、基地経済の実態を正確に把握すること
が求められている。
在日米軍再編に伴い、海兵隊七千人の削減、嘉手納基地以南の基地の大規模
(千五百ヘクタール)返還の可能性も示されている。第一部は、経済的に基地
への依存を深めてきた実態を現場から報告する。(「脱基地」取材班・知念清
張)
[ことば]
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基地依存度 県統計で県民総所得に占める基地関連収入は本土復帰の197
2年の15・6%に比べると、2002年には5・2%に低下。一方、金額ベ
ースでは780億円から1931億円と増加傾向が続いている。
ご意見・提言募ります
ファクス098(860)3482、E メール [email protected]
在沖米軍の内部リポートは間接効果も含
め、基地関連収入は「県民総生産(GPP)
基地関係収入の米軍と県比較表
の10%になるであろう」と記述している
摘発数66件、前年比7件増
年 2 月 3 日(金)
県内の米軍犯罪
2006
琉球新報
県警捜査一課は2日、2005年の米軍構成員の刑法犯摘発状況を発表した。
摘発件数は66件で前年比7件増加、摘発人数は65人で7人減少した。凶悪
犯は2件、4人で、いずれもタクシー強盗。粗暴犯は前年比5件減の7件、窃
盗犯は前年比5件増の28件だった。
凶悪犯罪のうちの1件は昨年4月14日夜に発生。米軍基地内に住む当時1
6―18歳の3少年が、名護市内のコンビニエンスストアで車を止めていたタ
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クシー運転手の男性を殴り、現金約3千円を奪って逃走した。3人は同月19
日に強盗致傷容疑で逮捕された。
もう1件は昨年5月11日未明に発生。在韓米陸軍所属の二等兵=当時(2
0)=が、沖縄市上地の路上でタクシーに乗車し、後部座席から運転手を羽交
い締めにして現金5千円と10ドルを奪って逃走した。米兵は通報で駆けつけ
た警察官に強盗容疑で逮捕された。
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