4.高山の地勢

(5)その他参考資料 ④高山の地勢、気候
④高山の地勢、気候
ア)概略
高山市は平成 17 年 2 月、周辺 9 町村と合併して、東は「乗鞍岳」「穂高岳」「槍ヶ岳」西は白山
連峰(両白山地)の「別山」までの大きな市になった。人口は 9 万 6 千人余、標高は市街地で 570
メートルもあって、山に囲まれた地形から生まれる盆地型気候である。冬は大変寒く、氷点下 15
度まで下がることもあり、また雪は一晩に 30 センチ降って 2~3 日降り続くこともある。雪は積も
りに積もって、屋根の上には 1 メートルも乗っていることもある。
夏は、昼間が暑く、しかし夜は涼しくなるという典型的な盆地型の気候で、この盆地型気候は相
当な厳しさを持っているが、その反面、いろんな恩恵もある。厳しい寒さから生まれた強い木材、
涼しい気候から生まれたおいしい野菜、季節と結びついた民俗芸能など、困難を乗り超えて来た力
強さと技術は、厳しい気候があったから生まれたものである。
飛騨国(ひだのくに)は、東西を険しい山に、南北を厳しい河川峡谷(きょうこく)に囲まれて
いる。盆地といえば高山、国府、古川盆地であり、あとは幾筋も伸びる谷筋沿いに、ポツンポツン
と小さな平地が広がっている。飛騨は土地のほとんどが山林で、その森林率は 92.5%に及ぶ。世界
の平均が 30%台、日本国内の平均が 60%台と比べ、際立って森林の面積が多い。
緑豊かな飛騨は日本列島のほぼ中央に位置し、高山盆地は内陸性盆地型気候である。昼夜、夏冬
の気候温度差が大きく、湿度が低い。冬は大変寒く、冷え込むときは氷点下 15 度近くまでも下が
ることがあり、新雪はサラサラとしてホウキでないと除雪できないほどである。
高山盆地の周辺は、北の日本海に流れる宮川、南の太平洋へ流れる飛騨川沿いに、まとまった集
落が小さな平地に広がり、支流の谷沿いにも小集落が多く散在している。また、高山盆地からは東
に乗鞍岳、焼岳、穂高岳、槍ヶ岳、黒部五郎岳、笠ヶ岳、南東に御岳、北西に白山が遠望できる環
境にある。
イ)高山市街地(旧城下町)が所属する高山盆地の地形、地質
高山盆地は北アルプスの傾動、上昇運動による傾動地塊の緩傾斜面に位置している。反対側(長
野県側)の急傾斜面には、糸魚川―静岡線に沿う松本盆地が発達している。松本盆地に比べて、高
山盆地の規模は小さく、形は複雑で、北東から西南走向と、それに直交する北西から南東走向の地
形が支配的である。
高山盆地は一般的に、宮川、川上川、大八賀川沿いに発達する完新世(厚さ 4~10m の沖積層)
の平坦地(海抜 560~600m)を指しているが、盆地西部の中山丘陵、東部の城山、江名子、山口、
北山の各丘陵地も含めた海抜 750m 以下の地形と定義できよう。さらに拡大すれば、盆地北東部に
広がる広大な上野平の台地も含めると、古高山盆地ともいえるさらに広い盆地構造が存在したと考
えられるのである。
高山盆地の北側は、見量山から東へ延びる山稜と千光寺山から西へ続く山稜が、西側は清見町方
面へ高度を高める山地、東側は高度を上げつつ北アルプスへと続く山地、そして南側は東方向へ延
びる位山山脈によって囲まれた盆地である。
位山山脈は海抜 1,000~1,200m の山稜で、日本海側と太平洋側の分水界となっている。盆地の平
坦面から高度差約 300m の直線状の急崖が続いている。これは、第四紀更新世初頭以後の江名子断
層の活動によって、徐々に形成された傾動、隆起地塊であり、高山盆地は江名子断層の活動で相対
的に沈下し形成された構造性の盆地である。
この高山盆地の東中央部に城下町高山を形成し、地形の束縛を受けながら東西南北の街道を発展
させたのである。
ウ)旧城下町中の城郭の地質
風化した錦山溶岩凝灰岩層の岩盤の山頂を平坦にならして、天守閣跡の礎石が据えてある。その
ため、基礎構築のための「石場かち、へとかち」作業は必要ではなかったと思われる。自然地形を
巧みに利用した城の構築であったことが伺われる。
付近に露出している石垣に用いている石材も、大部分はかなり離れた郊外地に産する濃飛流紋岩
で一部に城郭地内で産する丹生川火砕流堆積物がみられる。礎石の周囲や側溝遺構に用いられてい
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(5)その他参考資料 ④高山の地勢、気候
る玉石類は、濃飛流紋岩の円礫、中・古生層のチャートの亜角礫などである。
また、山王峠より南には約 2~3m の火山灰層の堆積がみられるが、城があった城山公園内では
流出し堆積がみられない。
旧城郭を囲む武家屋敷の地形は宮川の河岸段丘で平地をなし、商人地より一段高く武家屋敷群が
構成された。地元ではこの地域を空(そら)町という。
商人町の一帯は宮川の氾濫により形成された平地で、砂礫層の上に商人町群が形成された。水は
けがよく、良好な井戸水にめぐまれ造酒屋の水源にもなっている。砂礫層のため、江戸時代以前に
おける水田耕作の痕跡を見ない。
エ)気象
高山市の気候は、海抜高度が高い所が多いため、東北地方北部や北海道南部と似て夏は涼しく、
冬は雪が多く寒さが厳しい。全体的には内陸気候であり、特に高山地域は盆地のため内陸性が顕著
にあらわれる。飛騨山脈をはじめ標高の高い山岳地域の気候は、山岳気候である。
気温は年平均で 10.6℃、8 月の最高気温平均は 30.1℃、2 月の最低気温平均は-5.7℃。過去の最
高気温の極値は平成 6 年 8 月 8 日の 37.3℃、同じく最低気温の極値は昭和 14 年 2 月 11 日の-25.5℃
となっている。平年の観測日数は、最高気温 25℃以上の夏日は 97.9 日、最低気温 0℃未満の冬日は
123.7 日で、最高気温 0℃未満の真冬日は 12.2 日に及ぶ。なお、最低気温 25℃以上の熱帯夜は 0 日。
風速は年平均 1.4m/s で、一年を通じて風の弱い地域である。
降水量は年 1,733.5mm と飛騨地方の中では比較的少ないところとなっている。
積雪の最深は 128cm(昭和 56 年 1 月 8 日)。
初霜は 10 月 27 日、終霜は 5 月 7 日、初雪は 11 月 14 日、終雪は 4 月 11 日(それぞれ平均値)
で、暖房を必要とする期間はかなり長く、飛騨山脈以西に位置する都市では有数の寒冷地といえる。
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