特徴ベースによるアニメキャラクターの顔検出

特徴ベースによるアニメキャラクターの顔検出
西田研究室
修士課程 1 年
高山耕平
2011 年 11 月 14 日
1. は じ め に
顔 検 出 (Face Detection)と は 画 像 や 映 像 の 中 か ら 人 の
顔がどこにあるのかを自動で探し出すシステムのこと
で あ る . 顔 認 識 (Face Recognition)は 探 し 出 し た 顔 が 誰
であるのかを判別するシステムである.
実際の人物を対象とした顔検出・顔認識の研究は盛
んに行われており,デジタルカメラ等で実用化されて
いるものも多く存在する.一方で,アニメ・マンガ・
ゲーム等に登場する描かれたアニメキャラクターを対
象とした顔検出・顔認識の研究は少ないといえる.画
像の自動選別やキャラクター検索などアニメキャラク
ターを対象とした顔検出・顔認識にも様々な応用例が
考えられるが,実際の人物とアニメキャラクターは顔
の特徴がかなり異なるので実際の人物の手法をそのま
ま当てはめただけではアニメキャラクターはほとんど
顔検出することができない.
そこで本研究ではアニメキャラクターに特化した
顔検出・顔認識手法の考案を行うことを目的とする.
今回の発表では主に顔検出について述べる.
2. 関 連 研 究
顔 検 出 の 手 法 は 顔 に 不 変 の 特 徴 が 何 か を 考 え ,顔 の
定 義 を 作 成 す る Feature-based approach( 特 徴 ベ ー ス )
と大量の画像データから顔の定義を自動生成する
Image-based approach( 画 像 ベ ー ス )と い う 2 種 類 に 大
き く 分 け る こ と が で き る [1].画 像 ベ ー ス に よ り ア ニ メ
キャラクターの顔検出を行っているものとして
Imager::Anime Face[2]が あ る が , こ れ は 著 作 権 の あ る
アニメキャラクター画像をデータとして与えており,
またユーザによる条件の追加が困難である.よって今
回は著作権のある画像データを用いず,また条件の追
加が行いやすい特徴ベースで行うこととする.
3. 提 案 手 法
することにする.また同時に輝度の差を考えるキャニ
ー 法 [4]を 用 い て エ ッ ジ の 抽 出 も 行 う .
図1にその例を示す.左図の入力画像①から肌色抽
出を行い肌色以外の画素を黒で表したものが②,エッ
ジ抽出を行いエッジを白で表したものが③である.
①入力画像
②肌色抽出
③エッジ抽出
図 1: 肌 色 抽 出 ・ エ ッ ジ 抽 出 を 行 っ た 例
3.2 領 域 分 割
肌色抽出された画素をエッジによって領域分割す
る.肌色抽出されたある画素に隣り合っている画素が
肌色抽出されていればそれらを同じ領域とみなし,肌
色抽出されていない画素やエッジ抽出されている画素
であればそこで止まることにする.これを繰り返すこ
とによって領域分割を行う.
これによって分割された領域を顔候補領域と考え
る.また,この分割された顔候補領域のうち,画素数
が少なかったり,縦横比が適切でないといった明らか
に顔として正しくない領域は除外しておく.
図2にその例を示す.肌色抽出されている左図を領
域分割し,領域ごとに色分けしたものが右図である.
肌色抽出
領域分割
図2:領域分割を行った例
本研究で対象とする顔は皮膚の色が実際の人物に
近いものとする.また顔の向きは正面のものを中心と
し,そこからある程度傾いたものや回転したものも対
象とする.皮膚の色が実際の人物とかけ離れているも
のや,横や後ろを向いている顔は対象外とする.
3.1 肌 色 抽 出 ・ エ ッ ジ 抽 出 ・ 領 域 分 割
実 際 の 人 物 の 肌 の 色 は HSV 色 空 間 に お い て 色 相 が 6
度 ~ 38 度 に 集 中 す る [3].こ れ を も と に 調 査 を 行 っ た 所 ,
色 相 を 0 度 ~ 40 度 の 範 囲 に す る こ と で 95%以 上 の ア ニ
メキャラクターの肌が検出できることが確認できた.
よ っ て 入 力 画 像 内 の 全 て の 画 素 に お い て HSV 色 空 間
で 色 相 が 0 度 ~ 40 度 に 含 ま れ る 画 素 を 肌 色 と し て 抽 出
3.3 顔 判 定
分割した領域ごとにそれが顔かどうか判定を行う.
顔判定の条件として輪郭線(あごのライン)と顔の対
称性を用いることとし,これらの条件をともに満たす
領域を顔として判定することにする.
3.3.1 輪 郭 線 を用 いた顔 判 定
顔の輪郭線は丸形(卵形)に描かれる場合がほとん
どであり,特に輪郭線の下側は髪などで隠れてしまう
ことが少なく,はっきり抽出できることが多い.そこ
で顔候補領域の下側の輪郭線を入力点列として抽出し,
最小二乗法を用いることで二次曲線に近似させる.
これによって得られた二次曲線が顔の輪郭線とし
て確からしいかどうかを最小二乗法の決定係数を用い
ることで顔の判定を行う.決定係数が 1 に近いほど近
似がうまくいったといえる.
図3の左図に入力点列を白色で,右図に求めた二次
曲線を黄色で示す.近似した二次曲線がほぼ輪郭線と
一致していることが分かる.
表 1 : AnimeFace, OpenCV と 提 案 手 法 の 検 出 率 の 比 較
結
果
TP
提案
手法
370 枚
(75.1%)
66 枚
(13.4%)
57 枚
(11.7%)
FP
FN
入力点列の検出
二次曲線の近似
図3:輪郭線を用いた顔判定の例
3.3.2 対 称 性 を 用 い た 顔 判 定
顔というものは左右が対称的になっており,特に目
や髪は左側と右側の両方の領域に存在することがほと
ん ど で あ る .そ こ で 顔 候 補 領 域 を 含 む 探 査 領 域 (図 4 左
の 赤 い 四 角 で 囲 ま れ た 領 域 )に 含 ま れ る 画 素 の う ち 肌
色 抽 出 さ れ て い な い も の を 取 り 出 し , そ れ ら を 3.2 と
同じ手法で領域分割する.そして分割した領域ごとに
k-means 法 と 呼 ば れ る 手 法 で 色 ク ラ ス タ リ ン グ を 行 う
ことでその領域内の主要な色を求める.
目や髪が対称的にある場合,それらを含む領域は主
要な色がほとんど同じであると考えられるので,分割
した領域の中に複数の色クラスタが類似している 2 つ
の領域があるかどうかを調べることで顔かどうかを判
定する.図4の右図は 2 つの領域の色クラスタがそれ
ぞれどのクラスタと対応しているかを示したものであ
る.
分割した領域と探査領域
Anime
Face
OpenCV
OpenCV
(ア ニ メ )
(実 際 の 人 物 )
350 枚
(71.0%)
0枚
(0.0%)
143 枚
(29.0%)
140 枚
(28.4%)
3枚
(0.6%)
350 枚
(71.0%)
66 枚
(13.3%)
1枚
(0.2%)
426 枚
(86.4%)
表 中 の TP(True Positive)は 画 像 内 で 顔 の 部 分 の み 結
果として検出できた(成功した)ことを意味し,
FP(False Positive)は 顔 の 部 分 は 検 出 で き た が , 顔 以 外
の 部 分 も 検 出 し て し ま っ た こ と を 意 味 す る . FN(False
Negative) は 顔 の 部 分 を 検 出 で き な か っ た こ と を 意 味
する.
表 1 に 示 し た 通 り ,提 案 手 法 の 結 果 は AnimeFace や
OpenCV よ り も False Negative( 顔 検 出 で き な か っ た )
の 割 合 が 小 さ く ,True Positive( 顔 検 出 で き た )の 割 合
が大きい結果となった.結果の一例を図5に示す.顔
として検出された領域を青四角で囲んでいる.
図5:提案手法の適用例
5. ま と め と 今 後 の 課 題
本研究では肌の色や輪郭線や対称性といった特徴
を用いてアニメキャラクターの顔検出を行う手法を提
案した.これにより事前に画像データからデータベー
スを作らず,入力画像のみを用いてアニメキャラクタ
ーの顔検出が既存手法よりも高い精度でできることが
確認できた.
今後の課題としては,他の顔判定の条件を加えるこ
とで顔検出の精度を上げることがあげられる.また,
目や髪等の特徴を抽出し,肌の色やあごの形状といっ
たすでに取得してある特徴と組み合わせて顔認識(キ
ャラクターが誰であるのかの判別)を行っていく.
色クラスタの比較
文
献
図4:対称性を用いた顔判定の例
[1] E. Hjelmas & B.K.Low, “Face Detection: A Survey”,
4. 実 験 結 果
493 枚 の ア ニ メ キ ャ ラ ク タ ー を 含 む 様 々 な 画 像 を 入
力として顔の検出がどの程度成功するか比較実験を行
っ た . 比 較 対 象 と し て Imager::AnimeFace と オ ー プ ン
ソ ー ス ラ イ ブ ラ リ で あ る OpenCV の Face Detection[5]
を用いた.これらはともに事前に大量の画像データを
与 え る 画 像 ベ ー ス に よ る 手 法 で あ る . ま た OpenCV に
関しては事前に与える画像データをアニメキャラクタ
ーと実際の人物の2種類用意し,実際の人物を対象と
した顔検出でアニメキャラクターがどの程度検出でき
るのかも確かめた.その結果を表1に示す.
[2]
[3]
[4]
[5]
Computer Vision and Image Understanding, Vol. 3,
No. 3, pp. 236-274, Sept. 2001.
Imager::AnimeFace –anime face detection demo
http://anime.udp.jp/face-detect/
Sherrah, J. & Gong, S (2001). “Skin Color Analysis”,
CvOnline.
Retrieved
April
17,
2006
from
http://homepages.inf.ed.ac.uk/cgi/rbf/CVONLINE/en
tries.pl?TAG288
J. Canny, “A Computational Approach to Edge
Detection”, IEEE Trans. Pattern Analysis and
Machine Intelligence, vol.8, pp. 679-698, 1986.
Face Detection –OpenCV Wiki.
http://opencv.willowgarage.com/wiki/FaceDetection