地域課題研究ゼミナール支援事業 行政課題等を漫画等でわかりやすく市民に紹介するための調査研究 指導教員 金城大学短期大学部 美術学科 准教授 新井浩 参加学生 南部唯称・沼田佳奈・鍋島小百合・松谷結実・相森千恵・井元梨恵子・角屋沙耶・河村元太 越村紗千子・酒井優実・酒井諒・清水涼加・関口瑠・谷口匠・丹保唯・藤住和樹・中田真愛 新田弥生・福嶋彩也夏・福島基起・北條尚子・堀圭太・松陰公美・松陰友美・山崎真湖 吉居咲弥・頼震謙・木村美紀 1.調査研究成果要約 市民には馴染みが薄く興味関心が低いと思われる行政課題等を、漫画を用いて表現し興味をもっても らうことを試みた。今回は白山市が抱えるライフラインの老朽化に関わる問題と取り組みについて、学 生が主体となって学習、調査し漫画化した。行政が作成する“問題点を解説する漫画”とは違い、学生 が市民と同じ目線で問題や課題を取り上げることで、疑問点や問題点を市民の方が共感できる内容を目 指した。 2.調査研究の目的 若者やお年寄りが身近に感じづらい行政課題等を、親しみある表現を使い関心をもってもらうための 実用漫画を作成する。今回は老朽化が進むライフライン施設の設備の必要性と取り組みについて取り上 げ、学生による分かりやすい視点で周知する。また、従来はこうした行政の取り組みを漫画で発信する 場合、図解しただけの漫画になる傾向があるが、描き手である学生視点の疑問点や問題提起を極力残し、 解説漫画の可能性を探る。 3.調査研究の内容 ①白山市総務部と連携し、行政課題を漫画で伝えることの有効性や白山市(特に旧河内村、旧吉野谷村 など山間部)ライフラインの老朽化について勉強会を開催する。 (7 月) ②実態を把握するために現地に伺い、聞き取りや取材を行う。(10 月) ③白山市地域づくり塾との意見交換を行い、分かりやすく伝えるポイントを絞り込む。 (12 月) ④チームごとに漫画の登場人物やストーリーを作成し、大まかな下案を作成する。(11 月〜) ⑤実作に入る前に連携団体に意見を貰い、再度内容を検討する。 (12 月) ⑥漫画制作。 (1 月〜) ⑦表紙、目次、漫画以外の情報ページ等のデザインを作成。(2 月) ⑧印刷、製本。(2 月下旬予定) ⑨成果物についてのアンケートや意見交換を連携団体や市民に行い、今後の社会と連携した実用漫画の 制作の企画を進める。(2 月下旬予定) 4.調査研究の成果 7 月にマンガ・キャラクターコースの学生全体へ向けたミーティングを行い、 漫画を使った解説表現、 並びに、今回取り組む研究課題についてのレクチャーを行った。その後、研究生を中心に制作する方向 を決定し、夏休み明けから取材、漫画原案の作成に取りかかる。その内容を白山市行政経営室や白山市 地域づくり塾の方々に見て頂き内容を調整した。ご意見を頂いたことで内容は改善された一方で、ネー 25 地域課題研究ゼミナール支援事業 ム(内容)に時間を費やした結果、制作スケジュールと学生達の卒業制作が同時進行する事態となって しまい、現在も制作中だが、2 月中に完成させ、完成後、アンケートを実施し、成果を確認する予定で ある。 ○全体ミーティング 7 月 27 日(月) 2 年生、研究生 28 名 ・ 「公共性のある漫画とは情報を伝える漫画」など解説を 主体とする漫画例を紹介 ・先輩たちの取り組みを紹介(御経塚遺跡、加賀の千代 女など物語漫画でない取り組み) ・今回取り組む白山市の行政課題である「ライフライン の老朽化」についての、白山市行政経営室の北村光志 氏によるレクチャー等 ○夏期休暇及び 10 月〜 公共漫画の例や各自治体の取り組みなどの例を各自、調 査する。スケジュール等から、研究生 4 名を中心に、2 年生や教員がサポートして制作を進めることを確認。 ○実地調査、取材 10 月 28 日(水) 教員 1 名 研究生 3 名 (見学地)白山市河内市民サービスセンター/河内村の 公民館・図書館/白山市鳥越市民サービスセンター/瀬 波トンネル/研修交流館「白山里」/白山中宮温泉スキー 場跡地/ 前回に引き続き、北村氏に引率してもらい白山市の公共 施設などを調査、取材した。研究生で作画方針、スケ ジュールの確認等を行い、それぞれ原案作りに取りかか る。 ○漫画原案づくり〜作画 12 月以降(週一度の定例打ち合わせ) ・それぞれが分担して描いた内容を一つの作品にまとめ、 内容を調整する。 ・漫画原案を作成し、白山市行政経営室や白山市地域づ くり塾の方々に 12 月、1 月と 2 回見て頂き、意見を反 映させる。制作スケジュールを確認し作画分担を行い、 現在はそれぞれが作画を制作している。 5.来年度の調査研究計画 次年度以降もマンガ・キャラクターコースの授業内において取り組むにあたり、以下の 3 点を考慮し ながら継続していく予定である。 26 地域課題研究ゼミナール支援事業 ①漫画作画に重点をおいて計画していたが、扱う事柄についての調査・研究方法を改善する。 ②今回取り組む課題だけでなく、これから周知していく課題についても漫画化していく。 ③漫画以外にもショートムービーの作成やインターネットでの公開など、周知する方法の研究を行う。 当初、行政の課題をどの樣に届けるのかという内容面については、白山市の意向が強くあるものと考 えており、複数人でとりくむ漫画制作の実技的な側面を強く考えて制作に入った。しかし内容を白山市 地域づくり塾の方々にご意見をもらったと ころ、行政課題について学び、どういった 意見を持つのかという点を求められている と感じた。漫画によって分かりやすく行政 課題を描きだすことは一定の評価があった が、学生目線の意見は弱いものとなった。 こうした課題を漫画化する場合に必要な取 材方法と考察手法を改善し、より深く捉え ることができるよう発展させていきたい。 6.調査研究に対する地域からの評価 漫画制作の中心となるストーリー内容について、途中経過のものを白山市地域づくり塾の方々に、読 んで頂き、計 2 回意見を頂いた。頂いたご意見はストーリー構成に反映させ制作を進めた。普段から漫 画に親しんでいない方も多くいらっしゃったようだが、漫画に親しみのない広い層の方々が読者として 想定されるので貴重な意見であった。また、漫画制作については進行がやや遅れており現在も制作中で あるが、2 月中を目途に製本を完成させたい。本ができた時点で、前述の白山市地域づくり塾の方々や 一般の方に読んでいただきアンケートを実施する予定である。 (ストーリーに関するご意見抜粋) ・全般的に字数が多いように思う。 ・たくさんの施設やインフラが今後どうなるのか、どうすればいいのか、ほかにもあるのではないか、 という疑問があるのではないか。 ・特定すると全体の問題が見えない。地域限定(山ろく地域)に捉えられるのではないか。 ・古いとかボロボロなどの表現は緩和された。使っている側の思いが見られるが、地域住民が使ってい た部分で少し弱い。 ・日頃から何気なく使っているインフラ(道路、トンネル、水道)や公共施設(学校、体育施設、公民 館、図書館など)は誰が管理し(地域・行政)、誰の費用(みんなの税金)で使わせてもらっている かがわからないので、「これって、どうなっているのか」という問題提起が改善された。 ・たくさんの施設やインフラが今後どうなるのか、どうすればいいのか、ほかにもあるのではないか、 という疑問が弱い。 ・全体として将来負担に対する答えがわかりにくく、若い世代がどうすべきかを少し加えた方がよいの ではないか。 27
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